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特許7090416ガラス母材を作製するための上向き圧潰プロセス及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】ガラス母材を作製するための上向き圧潰プロセス及び装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20220617BHJP
   C03B 37/012 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
C03B20/00 E
C03B37/012 A
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017220135
(22)【出願日】2017-11-15
(65)【公開番号】P2018083751
(43)【公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-10-27
(31)【優先権主張番号】62/425,274
(32)【優先日】2016-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515174489
【氏名又は名称】ヘレーウス クオーツ ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quartz North America LLC
【住所又は居所原語表記】100 Heraeus Boulevard, Buford, GA 30518, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】チウリン マ
(72)【発明者】
【氏名】カイ フエイ チャン
(72)【発明者】
【氏名】エヴァン ピー. グリーン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ イー. ビーバーズ ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】カール ポネイダー
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-053333(JP,A)
【文献】特開平06-056453(JP,A)
【文献】特開平04-042831(JP,A)
【文献】特開2006-193397(JP,A)
【文献】特開平10-167744(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01182173(EP,A1)
【文献】特開平04-270132(JP,A)
【文献】国際公開第2016/118144(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/022151(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 20/00
C03B 37/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量、外周、少なくとも1つの独立した積み重ねられたコアロッド、及び前記少なくとも1つのコアロッドを取り囲み、前記コアロッドからギャップにより分離されるクラッドを有するガラス体からガラス母材を生成する装置であって、
前記クラッドの頂部に固定された頂部カラーであって、前記クラッドの外径とほぼ同じ、またはそれよりも小さい外径を有する、頂部カラーと、
前記クラッドの底部に固定された底部カラーであって、前記クラッドの前記外径よりも小さい、またはそれとほぼ同じのいずれかの外径を有する、底部カラーと、
少なくとも1つのスペーサーであって、その上に、前記少なくとも1つのコアロッドが載置される、少なくとも1つのスペーサーと、
前記底部カラー及び前記少なくとも1つのスペーサーの両方を保持及び支持して、それにより、前記ガラス体の外面に接触することなく、前記ガラス体の多くとも全重量を支持する底部カラーホルダー及び真空ユニットであって、前前記装置からガスをから除去し、またはそれにガスを導入する、底部カラーホルダー及び真空ユニットと、
前記頂部カラーを保持及び支持する頂部カラーホルダー及び真空ユニットであって、前記装置からガスを除去し、またはそれにガスを導入する、頂部カラーホルダー及び真空ユニットと、
前記ガラス体を加熱し、前記クラッドを前記少なくとも1つのコアロッド上に圧潰させ、前記ギャップを閉じ、かつ前記ガラス母材を生成する発熱体を有する加熱ゾーンを規定するフレームと、
を備え、
前記装置は、前記底部カラー、前記頂部カラー、またはその両方により支持される前記重量を測定するためのロードセルをさらに含む、装置。
【請求項2】
前記底部カラーホルダー及び真空ユニットは、垂直方向に制御された速度V1で移動するように構成され、かつ前記頂部カラーホルダー及び真空ユニットは、前記垂直方向に制御された速度V2で移動するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
一定の振動摂動が、前記速度V2に重畳され、リップルが、前記発熱体の中心の前記ガラス体の粘度を反映するロードセル測定値に現れる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのコアロッド及びクラッドの間の界面をエッチングし、清浄し、及び乾燥させるための高温圧潰の間に適用される反応性界面処理ガスをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記反応性界面処理ガスは、六フッ化硫黄、酸素、塩素、フッ素、四フッ化珪素、三フッ化窒素、四フッ化炭素、及びフルオロホルムからなる群から選択される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
ガラスディスクをさらに含み、前記ガラスディスクは、真空が前記底部カラーホルダー及び真空ユニットならびに前記頂部カラーホルダー及び真空ユニットの両方から適用される時、前記頂部カラーが前記ガラスディスク上に圧潰し、前記ガラス母材の頂部の先端が引っ張られるように、前記頂部カラーの内径よりもわずかに小さい外径を有し、前記少なくとも1つのコアロッド及び前記クラッドの頂部及び前記頂部カラーの内側に位置す、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
クランプ部材を含むグリッパまたはチャックシステムをさらに備え、前記クランプ部材は、前記底部カラーまたは前記底部カラーホルダーと、真空ユニットと、前記クランプ部材を前記フレームに取り付け且つ前記クランプ部材の垂直方向の正確な直線運動を可能する取り付け部材と、に接触して前記ガラス体を位置決めし且つ移動させるように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記ガラス母材の品質を保証するために、前記ガラス母材の1つ以上の幾何学的または導波路特性を決定するための母材測定デバイスをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも前記底部カラーホルダー及び真空ユニット、前記頂部カラーホルダー及び真空ユニット、ならびに前記発熱体の間及びそれらの間でのデータのフローを管理するコントローラーをさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
最小のクラッド-コア導波路の歪みを有するガラス母材を生成するための上向き圧潰プロセスであって、
重量、外周、ならびにギャップにより分離された少なくとも1つの独立したコアロッド及びクラッドを有するガラス体を提供する工程と、
頂部カラーを前記クラッドの頂部に、かつ底部カラーを前記クラッドの底部に固定する工程と、
フレームに位置決めされた加熱ゾーンの下方に位置する底部カラーホルダー及び真空ユニットで前記底部カラーを支持する工程と、
前記底部カラーホルダー及び真空ユニットが、前記ガラス体の外面に接触することなく、前記ガラス体の多くとも全重量を支持するように、前記少なくとも1つのコアロッドが載置され、前記底部カラーホルダー及び真空ユニットで支持される少なくとも1つのスペーサー上の前記クラッドの内部の前記少なくとも1つのコアロッドを支持する工程と、
前記頂部カラーを前記加熱ゾーンの上方に位置する頂部カラーホルダー及び真空ユニットで支持する工程と、
前記加熱ゾーンに位置する発熱体の中心から所定の距離に前記ガラス体を位置決めする工程と、
前記クラッドを前記少なくとも1つのコアロッド上に圧潰させ、それにより、前記ギャップを閉じるために、かつ前記ガラス母材を生成するために、前記加熱ゾーンを通って上向きに前記ガラス体を供給する工程と、
を備え、
垂直方向に制御された速度V1で前記底部カラーホルダー及び真空ユニットを移動させる工程ならびに垂直方向に制御された速度V2で前記頂部カラーホルダー及び真空ユニットを移動させる工程をさらに含む、プロセス。
【請求項11】
前記速度V2に一定の振動摂動を重畳する工程及び前記発熱体の中心で前記ガラス体の有効粘度を測定するためにロードセルを使用する工程をさらに含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記加熱ゾーンの温度及び加熱電力を制御するために、前記ロードセルによる測定を使用する工程をさらに含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記コアロッド及びクラッドの間の界面を、エッチングし、清浄し、乾燥させるために、前記高温圧潰時に反応性界面処理ガスを適用する工程をさらに含む、請求項10~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記頂部カラーが、前記少なくとも1つのコアロッド及び前記クラッドの頂部に位置するガラスディスク上に、かつ前記頂部カラーの内側に、圧潰して、前記ガラス母材の頂部の先端が、引っ張られるように、前記底部カラーホルダー及び真空ユニットならびに前記頂部カラーホルダー及び真空ユニットの両方から真空を適用する工程をさらに含む、請求項10~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
クランプ部材を含むグリッパまたはチャックシステムを使用して、前記ガラス体を位置決めする工程をさらに含み、前記クランプ部材は、前記底部カラーまたは前記底部カラーホルダーと、真空ユニットと、前記クランプ部材を前記フレームに取り付け且つ前記クランプ部材の垂直方向の正確な直線運動を可能する取り付け部材と、に接触させるように構成されている、請求項10~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記ガラス母材の1つ以上の幾何学的または導波路特性を決定するために、母材測定デバイスを使用して、前記ガラス母材の品質を保証する工程をさらに含む、請求項10~15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
いかなる汚染物または堆積物が前記ガラス母材の表面に形成されないように、前記加熱ゾーンの前記発熱体に使用される、任意のガスをパージする工程をさらに含む、請求項10~16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
コントローラーを使用して、少なくとも前記底部カラーホルダー及び真空ユニット、前記頂部カラーホルダー及び真空ユニット、ならびに前記発熱体の間及びそれらの間のデータのフローを管理する工程をさらに含む、請求項10~17のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は一般に、細長いガラスコンポーネントを製造すること、より詳細には、最小のクラッド-コア導波路の歪みを有するこのようなコンポーネントを作製するためのプロセス及び装置を使用すること、に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバーの設計及び応用に関する応用科学及び工学の分野は、ファイバー光学として知られている。光ファイバーは、ガラス(シリカ)を人髪よりもわずかに太い直径まで線引きすることにより作製された柔軟で透明なファイバーである。光ファイバーは、ほとんどの場合、ファイバーの2つの端部間に光を伝送させるために最も頻繁に使用され、光ファイバー通信で広く使用され、より長い距離にわたる、かつワイヤーケーブルよりも高い帯域幅(データ速度)の伝送を可能にする。ファイバーは、信号が損失の低減した高容量のファイバーに沿って進むために、金属ワイヤーの代わりに使用される。加えて、ファイバーは、金属ワイヤーを苦しめる問題である電磁界干渉の影響も受けない。ファイバーは、照明にも使用され、ファイバースコープの場合のように、画像を伝達するために使用されて、従って、閉鎖空間での調査を可能にするように束でまとめられている。特別に設計されたファイバーは、光ファイバー感知器及びファイバーレーザーなどの他の様々な用途にも使用される。
【0003】
光ファイバーは通常、屈折率がより低い透明クラッド材料に取り囲まれた透明コアを含む。ファイバーを導波路として機能させる内部全反射の現象により光がコアに保持される。多くの伝搬経路または横モードをサポートするファイバーは、マルチモードファイバーと呼ばれ、シングルモードをサポートするものは、シングルモードファイバーと呼ばれる。
【0004】
今日では、厳密な光ファイバーのカットオフ波長の仕様を満たさなければならず、それらの仕様を達成するための歩留まり損失は許容されない。カットオフ波長は、シングルモード光ファイバーが、この波長未満でマルチモードファイバーとして機能する波長として定義することができる。または、換言すれば、カットオフ波長は、シングルモード光ファイバーにおいてこの波長を超えてシングルモード動作が確実になる波長として定義することができる。目下、カットオフ波長が、光ファイバーケーブル仕様の作成時に定義する最も重要なパラメータの1つであることを、多くのネットワークプランナーは認識している。
【0005】
従来の下向き線引きシステム及びプロセスに固有の問題を解決するために、装置及び光ファイバー母材を製造するためにその装置の使用する、関連する上向き圧潰プロセスの第1の目的は、導波路(クラッド-コア)歪み効果を最小限に抑えること、おそらく除去することである。第2の目的は、従来の下向き線引きシステム及びプロセスに固有の無駄及びアセンブリの問題を最小限に抑えること、おそらく除去することである。第3の目的は、その後のファイバー線引きにおける最高の生産性のための、優れた幾何学的形状及び導波路特性を有する最大の母材サイズを達成することである。第4の目的は、最高品質の(最も清浄で乾燥した)RITまたはRIC母材界面を達成することである。第5の目的は、(それらを互いに溶接することなく)シリンダーの内部に任意の長さの複数の独立したコアロッドの積み重ねを可能にすることであり、従って、それらの重量が、アセンブリ内で完全にかつ独立して支持されて、貴重で高価なコアロッド及びシリンダーに対するオーバークラッドプロセスでほぼゼロの無駄を達成する。さらなる目的は、オンライン先端加工を可能にし、ほぼ100%の完成した母材の歩留まりを達成することである。
【0006】
さらなる目的は、正確な位置合わせ及び母材の形状の制御のための、水平(X-Y)面における、母材を作製するために使用されたガラス体の浮動位置決め及び垂直(Z)方向における正確な直線移動の両方を可能にすることである。さらに別の目的は、1つ以上のロードセルで、加熱中のガラス体の挙動を監視することである。さらに別の目的は、正確な寸法制御のために物理学及び質量の保存を使用して、従来のオンライン測定及びフィードバック制御の費用を削減することである。
【0007】
別の目的は、母材界面を、エッチングし、清浄し、かつ乾燥させるために、反応性ガスを使用することである。(1)母材の外面との直接接触を回避し、(2)真空開始時に、界面が外部環境から、特に、装置の発熱体(例えば、炉)内部の汚染物質から、遮蔽されるように、母材アセンブリを完全に密封する、という本質的な清浄プロセスを提供することが、さらに別の目的である。関連する目的は、母材の外面に接触することなく、母材重量を支持することである。他の関連する目的は、製造プロセス中に母材への側方または横方向の力を防ぐことであり、母材の湾曲を最小限に抑え、または除去することである。さらに別の目的は、例えば、エアーライン、気泡、ファイバーの破損、及び損失の問題を防止することにより、母材の品質またはファイバー界面を改善することである。
【0008】
有限要素モデリングを使用して、最適な上向き線引きレシピを効率的に開発することも目的である。関連する目的は、開発中に必要な試験の数を低減させることにより、貴重な炉生産能力を節減することである。さらに別の関連する目的は、特に、母材の2つの端部において、炉の加熱及びガラスフローの複雑な熱物理学の正確な理解を可能にすることであり、良好な母材の最終量及び光ファイバー歩留まりを「絞り」取ることができる。
【0009】
さらに別の目的は、装置及び光ファイバー母材を製造するためにその装置の使用する関連する上向き圧潰プロセスと組み合わせて、カメラシステム及びパターン化されたバックグラウンドを有する母材測定能力を提供することである。関連する目的は、導波路の幾何学的特性の自動化された、非破壊的な、生産性に優れた測定法を提供することである。さらに別の関連する目的は、母材のユーザーに、導波路品質の付加価値のある保証及び光ファイバー線引きを微調整する潜在的な機会を提供することである。
【0010】
上記目的を達成するために、装置及び最小のクラッド-コア導波路の歪みを有するガラス母材を作製するためにその装置を使用する関連する上向き圧潰プロセスが提供される。装置は、重量、外周、ならびにギャップにより分離されたコアロッド及びクラッド(「シリンダー」)を有するガラス体を受け入れる。装置は、クラッドの頂部に固定された頂部カラー(頂部カラーは、クラッドの外径とほぼ同じ、またはそれよりも小さい外径を有する)、クラッドの底部に固定された底部カラー(底部カラーは、クラッドの外径よりも小さい、またはそれとほぼ同じのいずれかの外径を有する)、少なくとも1つのスペーサー(独立した積み重ねられたコアロッドはスペーサー上に載置される)、底部カラー及び少なくとも1つのスペーサーの両方を保持及び支持して、それにより、ガラス体の外周に接触することなく、ガラス体の全重量を支持する底部カラーホルダー及び真空ユニット(底部カラーホルダー及び真空ユニットは、装置からガスをから除去し、またはそれにガスを導入する)、頂部カラーを保持及び支持する頂部カラーホルダー及び真空ユニット(頂部カラーホルダー及び真空ユニットは、装置からガスを除去し、またはそれにガスを導入する)、ならびにオーバークラッド若しくは線引きタワーの構造体、またはガラス体を加熱し、クラッドをコア上に圧潰させ、ギャップを閉じ、ガラス母材を生成する発熱体及び規定された加熱ゾーンを有するフレーム、を含む。
【0011】
関連する上向き圧潰プロセスは、最小のクラッド-コア導波路の歪みを有するガラス母材を生成する。プロセスは、重量、外周、ならびにギャップにより分離されたコアロッド及びクラッド(「シリンダー」)を有するガラス体を提供する。頂部カラーは、クラッドの頂部に固定され、底部カラーは、クラッドの底部に固定されている。底部カラーは、線引きタワー内に位置決めされた加熱ゾーンの下方に位置する底部カラーホルダー及び真空ユニットにより支持される。独立した積み重ねられたコアロッド(すなわち、一緒に溶接されていない)は、底部カラーホルダー及び真空ユニットが、ガラス体の外周に接触することなく、ガラス体の全重量を支持するように、積み重ねられたコアロッドが載置され、底部カラーホルダー及び真空ユニットに支持された少なくとも1つのスペーサー上で支持される。頂部カラーは、加熱ゾーンの上方に位置する頂部カラーホルダー及び真空ユニットで支持される。ガラス体は、位置決めされ、加熱ゾーンに位置する発熱体の中心に対して所定のレシピで上向きに移動する。ガラス体が加熱ゾーンを通って上向きに送り込まれる時、クラッドは、コアロッド上に圧潰し、それによりギャップを閉じ、ガラス母材を生成する。
【0012】
上の一般的な記載及び次の詳細な記載の両方は、本発明の例示的記載であり、限定的記載ではないことを理解すべきである。
【0013】
本発明は、添付の図面と関連づけて読まれる時、次の詳細な記載から最もよく理解される。一般的な慣行に従って、図面の種々の特徴は、共通の尺度をもたないことが強調される。これに対して、種々の特徴の寸法は、明確にするために適宜拡大または縮小される。次の図が、図面に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ガラスの細長いコンポーネントを形成する上向き圧潰プロセスに使用される装置の主要コンポーネントを示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態による光学コンポーネントを製造するために使用されるガラス体の透視側面図である。
図3A】上向き圧潰プロセスのFEMシミュレーションにおける4つの工程を示し、発熱体内に位置決めされたガラス体を示す。
図3B】上向き圧潰プロセスのFEMシミュレーションにおける4つの工程を示し、発熱体内に位置決めされたガラス体を示す。
図3C】上向き圧潰プロセスのFEMシミュレーションにおける4つの工程を示し、発熱体内に位置決めされたガラス体を示す。
図3D】上向き圧潰プロセスのFEMシミュレーションにおける4つの工程を示し、発熱体内に位置決めされたガラス体を示す。
図4A】プロセスの実行が低温側であることを示す比較的大きな振幅を反映するロードセル測定値「リップル」を示す。
図4B】プロセスの実行が高温側であることを示す比較的小さな振幅を反映するロードセル測定値「リップル」を示す。
図5図1に示される装置と組み合わせて使用される母材測定デバイスの一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
光ファイバーは一般に、2つの別個のプロセスで作成される。最初に、コアロッドが調製され、次に、母材が、ロッドインチューブ(RIT)プロセス若しくは気相堆積ロッドインシリンダー(RIC)プロセスにより、または外付気相堆積法(OVD)プロセスなどの別のオーバークラッドプロセスにより、作成される。次に、作成された母材は、炉の内部で加熱され、光ファイバーに線引きされる。2つのプロセスのうちの最初のプロセスを完了する、光ファイバー母材を製造するための従来のプロセス及び装置は、光ファイバーRITオーバークラッド装置の提供を含むことがある。
【0016】
オーバークラッド装置は、垂直旋盤、垂直旋盤の各端部に設置されたチャック、垂直旋盤の両端部の間を垂直に移動するための垂直旋盤内のキャリッジ、キャリッジに設置された酸水素バーナー、キャリッジに設置された炉、垂直旋盤の端部に設けられた真空ポンプ、真空ポンプを垂直旋盤の端部に接続するカップラー、ならびにキャリッジの垂直移動、酸水素バーナーの流速、及びチャックの回転を制御するための垂直旋盤の外側のコントローラーを含む。炉は、ガラス管を予熱または加熱して、ガラス管でコアロッドをオーバークラッドする。
【0017】
実際には、母材の外径は、従来のRITオーバークラッド装置では、90mm以下に制限される。その制限は、酸水素バーナーでの非効率的な加熱により課される。さらに、ハンドルは、最上端部から、コアロッドの重量に対し別個の支持を提供するために、(RITオーバークラッドチューブと同じ長さの)シングルコアロッドに溶接されなければならない。これにより、2つの欠点:(1)短いコアロッド材料を有効に使用することができないことによる、コアロッド材料の無駄、及び(2)特に、酸水素トーチでの、ハンドルのコアロッドへの溶接によりもたらされ、エッチング(プロセスに対するさらなる費用)されない場合、特に、1,383nmでのファイバー減衰を増加させる可能性のある、コアロッドの表面上での表面水酸化物(OH)の取り込み、がもたらされる。
【0018】
さらに最近では、石英ガラス管、ロッド、または圧潰したオフラインロッドシリンダー(ORIC)の母材は、下端部が軟化してストランドを形成し始めるように、垂直方向に、石英ガラスコンポーネント(例えば、シリンダー、インゴット、または未圧潰RIC)を、加熱ゾーンを含む装置(例えば、炉)に導入することにより、製造されている。次に、ストランドは、1セット以上のプーラーホイールを含む引っ張りデバイス内に置かれる。ストランドの線引き速度は、プーラーホイールの速度により制御され、これは、形成ゾーンの温度または粘度及びホイールにより支持されるストランドの重量に応じて、下向きの力または上向きの力のいずれかが印加されてもよい。形成は、ダイの助けなしに達成される。従って、ストランドの寸法は、石英ガラスコンポーネントの供給速度、加熱ゾーンの温度、及びプーラーホイールの速度により制御される。
【0019】
従来のORICプロセスでは、合成高純度ガラス製のシリンダー(通常、長さ3m、外径約200mm)は、高純度のガラスコアロッド上に圧潰させて、界面のギャップにおいて、熱及び真空で、光ファイバー母材を形成する。母材は通常、シリンダーの元の直径よりも極めて小さい直径で、連続的に下向きに線引きされる。十分な真空は、界面の圧潰を容易にし、かつ、軟化したガラスを介してコアロッドの重量を支持するために、シリンダー及びコアロッドの間のギャップに適用されなければならない。シリンダーに対するコアロッドの移動を防止するためには、真空が不可欠である。さもなければ、得られた母材のクラッド-コア比が歪むことになり、それらから線引きされたファイバーが必要な導波路仕様(カットオフ波長など)を満たさなくなる。複雑で高価な母材の外径測定及びフィードバック制御は、下向き圧潰、延伸、及び線引きプロセスにも必要とされ、このような制御でさえ、正確な母材形状(低い母材湾曲またはひずみ及び直径の変動を含む)ならびにクラッド-コアの歪みのない導波路特性を達成することが困難である。下向き線引きプロセスにおけるこの固有の導波路の歪み効果は、大部分は、溶融ガラス及び炉内の非付着コアロッドに作用する重力及び真空力に起因しており、外側クラッドガラスは、内部コアロッドガラよりも高温で、より速く下向きに流れる。
【0020】
従来の下向き線引きシステム及びプロセスでは、元のシリンダーまたはクラッドサイズに近い外径を有する、最大の母材を製造することには著しい困難がある。プロセスの始動時及び終了時に、相当量の良好な母材ガラスが無駄になり、母材の形状及び導波路特性が、形状、クラッド-コア比、コア偏心率、及び湾曲のようなパラメータの点で、要求された仕様から大きく離れている。従って、従来の母材システム及びプロセスは、明確な欠点を有する。
【0021】
本発明の実施形態によると、導波路(クラッド-コア)歪みがほとんどなく、かつ無駄及び費用が大幅に低減した、存在することが知られている最大外径及び長さを有する(すなわち、外径約200mm(従来の外径は、約150mmに制限される)、長さ約3m、または元のシリンダー若しくはクラッドとほぼ同じサイズ)の母材を生じる装置及び上向き圧潰プロセスが提供される。従来の光ファイバー母材は、外径が90~150mmである。新式の上向き圧潰プロセスでは、ORICクラッド内の積み重ねられたコアロッドが下方から支持されており(コアロッドが圧潰プロセスにおいてクラッドに対して移動しないので)、全体ORICアセンブリは、母材が、図1に示され、かつ以下に記載されるように、連続的に圧潰されて上向きに線引きされるので、炉に対して上に移動する。装置及び上向き圧潰プロセスは:(1)最大の既知のオーバークラッドシリンダーを用いて、圧潰のみのプロセスで作製することができるので、最大の既知の母材を製造し、(2)ほぼ100%のオーバークラッド及び完成した(先端加工された)母材歩留まり(無駄がほぼない)、ならびに統合されたオンライン母材先端加工プロセス(加工時間及び加熱工程の節減)を含む新式で簡略化された(例えば、オンライン測定またはフィードバック制御)プロセスのために、費用を低減し、(3)可変で任意の長さのコアロッドが固定され、積み重ねられ、支持された本質的に低い導波路(クラッド-コア)歪みのために、導波路品質を改善し、(4)反応性ガス(例えば、SF)が、界面の改善及びコアロッドD/d比の低下(導波路コアに近い界面)ために、多くとも約1大気圧(すなわち、真空を必要としない)で界面に適用されることを可能にする。
【0022】
コアロッドのD/d比は、(光が伝搬する)コアロッドの外径の導波路コアの直径との比であり、「D」はコアロッドの外径であり、「d」は導波路コアの直径である。比は、RITまたはRIC母材を使用してコア容量拡大を規定する際に、光ファイバーを生産する人にとって非常に重要である。コアロッドのD/d比が減少するにつれて、界面は、導波路コアに近づき、これは、コアロッドに必要なガラスの相対量が減少する(一方、クラッド内のガラスの量を増加させる必要がある)ことを意味する。これは、同じコアロッド製造設備では、コアロッドを製造する能力(または光ファイバーコアに対する等価容量)は、おおよそD/dの2乗に比例する(例えば、D/dを3.3から2.3に低減させることにより、コア容量が倍増する)ことも意味する。しかし、コアロッドD/dを低減させることは、そこで指数関数的に増加する光パワー伝播のために、オーバークラッド材料の純度及び界面品質に対し重要な課題を提示する。従って、(例えば、SFを用いた)界面における、より積極的なガスエッチング、清浄、及び乾燥プロセスが、低いコアロッドD/dで必要とされるであろう。要するに、より低いD/d比(すなわち、界面がコアに近い)は、母材の製造者が(a)高価な投資なしにコア容量を容易に拡大すること、及び(b)コアに近い屈折率を有するより複雑で進歩した光ファイバー設計を実現すること、を可能にする。
【0023】
図1に関して、光ファイバー母材を製造する装置10が示されている。装置10は、垂直に配置されたフレーム12を含む。底部から頂部に、フレーム12は、下部開口端部、予熱または下部絶縁ゾーン14、加熱ゾーン16、後加熱または上部絶縁ゾーン17、後加熱冷却、焼きなまし、及びオーブンガスパージゾーン18、及び下部開口端部に対向する上部開口端部を有する。加熱ゾーン16は、発熱体(通常、オーブンまたは炉)により、好ましくは、500℃~2,300℃、より好ましくは、1,000℃~2,300℃、さらに好ましくは、1,500℃~2,300℃の温度に加熱することができる。より詳細には、発熱体は、環状構成であることが好ましい。発熱体は、フレーム12の加熱ゾーン16を形成するために、フレーム12内または周囲に位置決めされることが好ましい。不活性ガスは、発熱体の酸化を防ぐために高温で発熱体に注入される。
【0024】
図2に関して、ガラス体20は、光ファイバー母材を製造するために使用される。ガラス体20は、円筒形または管状構成である。ガラス体20は、長さLを有し、これは、第1の端部22、すなわち上端部22から、対向する第2の端部24、すなわち下端部24まで及ぶ。縦軸Xは、対向する第1の端部22及び第2の端部24の間に及ぶ。好ましくは、ガラス体20の第1の端部22及び第2の端部24の両方は、直角切断端部である。
【0025】
ガラス体20は、導波路光ファイバーコアを含むガラスコアまたはコアロッド30、及びコアロッド30を取り囲むガラスクラッド32からなることが好ましい。より詳細には、コアロッド30は、ガラス体20の幾何学的中心に形成され、ガラス体20の長さLに沿って延びることが好ましい。クラッド32は、コアロッド30上に、ガラス体20の長さLに沿ってコアロッド30を放射状に囲むように形成されることが好ましい。クラッド32は、共通の中心線に沿って位置合わせされた同軸配置でコアロッド30を取り囲んでいる。ギャップ31は、最初は、コアロッド30及びクラッド32の間に存在する。クラッド32は、外径「OD」を有する。
【0026】
クラッド32は、純粋石英ガラスまたはドープ石英ガラスであってもよい。しかし、クラッド32は、高純度の非ドープまたはドープ石英ガラスであることが好ましい。コアロッド30は、適切な屈折率プロファイルを達成するために、ドープ領域及び非ドープ領域を有するほぼ高純度な石英ガラスであることが好ましい。クラッド32及びコアロッド30は、それぞれ、溶融石英または内付気相堆積法、外付気相堆積法、及び気相軸付堆積法を含む1種以上の化学気相堆積法(CVD)などの任意の適切なプロセスにより形成されてもよい。コアロッド30の中心のコア材料は通常、母材から線引きされたファイバーを通過する光信号の内部反射を可能にするために、周囲のクラッド32内の材料の屈折率よりも大きい屈折率を有し、その結果、有効な導波路がもたらされる。
【0027】
図1に戻ると、第1のカラーまたは頂部カラー40は、クラッド32の頂部に固定されている。頂部カラー40をクラッド32に固定する他の機構を使用することができるが、頂部溶接部42が好適である。頂部カラー40の外径は、クラッド32の外径とほぼ同じ、またはそれよりも小さい。第2のカラーまたは底部カラー44は、クラッド32の底部に固定されている。底部カラー44をクラッド32に固定する他の機構を使用することができるが、底部溶接部46が好適である。底部カラー44の外径は、クラッド32の外径よりも小さい、またはほぼ同じのいずれかである。頂部カラー40及び底部カラー44は双方とも、中空のリング状コンポーネントである。
【0028】
積み重ねられたコアロッド30は、クラッド32の内部に位置決めされ、次に、長いスペーサー50の頂部に載置される短いスペーサー48の頂部に載置される。上向き圧潰プロセス後に長いスペーサー50が母材に溶接されていないことを確実にするために、短いスペーサー48は、長いスペーサー50の頂部に設けられており、次に、底部カラー44から容易に取り出すことができる。長いスペーサー50は、長いスペーサー50の下方に位置する底部カラーホルダー及び真空ユニット52により支持される。底部カラーホルダー及び真空ユニット52はまた、底部カラー44を、その名称が示すように保持し、これを支持している。母材アセンブリ(クラッド32に固定された頂部カラー40及び底部カラー44と共に、ガラス体20の積み重ねられたコアロッド30及びクラッド32を含む)ならびに底部カラーホルダー及び真空ユニット52は最初に、オーブンガスパージゾーン18の上方に位置する頂部カラーホルダー及び真空ユニット54に装着される。(底部カラーホルダー及び真空ユニット52ならびに頂部カラーホルダー及び真空ユニット54は、装置10が、装置10のいずれかの端部で、装置10からガスを除去するか、すなわち、真空を作るか、またはそれにガスを導入するかのいずれかを可能にする。頂部カラーホルダー及び真空ユニット54はまた、頂部カラー40を、その名称が示すように保持し、これを支持している。)次に、ガラス体20は、加熱ゾーン16、より詳細には、加熱ゾーン16の発熱体に対して位置決めされ、発熱体を通って上向きに移動する。底部カラーホルダー及び真空ユニット52は、加熱ゾーン16の下方に把持され、支持される。頂部カラーホルダー及び真空ユニット55は、加熱ゾーン16の上方に把持され、支持される。加熱工程を開始する前に、頂部溶接部42(従って、クラッド32の頂部)は、最初に頂部溶接部42への熱衝撃を回避するために、発熱体の中心より所定の距離下方に置かれる。(「所定の」とは、事前に決められたことを意味し、従って、所定の特性は、何らかの事象の前に、決定し、すなわち、選択し、または少なくとも知らなければならない。)例えば、この距離は、約350mmであってもよい。
【0029】
装置10を使用する母材を製造する上向き圧潰プロセスは、図1に関して説明される。ガラス体20は、このような光ファイバー母材などの光学コンポーネントを形成するために加熱され、軟化し、かつ引き延ばされるフレーム12を通過する。より詳細には、ガラス体20の下端部24は、プロセスの開始時にフレーム12に安定した仕方で位置決めされ、次に、ガラス体20は、フレーム12を通して上向き(すなわち、従来の下向きとは反対の)方向に進むことが好ましい。フレーム12では、ガラス体20は、加熱ゾーン16内でゾーンごとの仕方で、加熱される。母材は、オーバークラッドギャップ31を圧潰してコアロッド30をオーバークラッドシリンダーまたはクラッド32に融着させる溶融変形により、連続的に生成される(かつ任意に、母材は、プロセス中に、頂部カラーホルダー及び真空ユニット54ならびに底部カラーホルダー及び真空ユニット52により印加される引っ張り力または圧縮力のいずれかにより、延伸する/引き延ばすまたは縮める/圧縮することができる)。
【0030】
一実施形態では、ガラス体20は、2つの別個のガラスコンポーネント:積み重ねられたコアロッド30及びクラッド32、の同軸アセンブリである。より詳細には、コアロッド30は、固体のシリンダーロッドの形態であり、クラッド32は、積み重ねられたコアロッド30を取り囲む中空のオーバークラッドシリンダーの形態である(すなわち、ロッドインシリンダーアセンブリ)。同軸アセンブリでは、ガラスアセンブリが加熱ゾーン16に入る前に、積み重ねられたコアロッド30及びクラッド32は、融着していない。
【0031】
ガラス体20の本実施形態の同軸アセンブリが、フレーム12を通って上向きに進むにつれて、コアロッド30及びクラッド32は、所定の温度で、2つのガラスコンポーネントが軟化して融着するのに十分な時間加熱されて、一体化かつ接続されたガラス体20を形成する。(「一体的」とは、追加の部分なしにそれ自体で完全なものである一体成形部品または単一の一体的部品を意味し、すなわち、部品は、別の部品と一体として形成された1つのモノシリック片の部品である。)より詳細には、2部分からなるガラス体20の連続する部分は、加熱ゾーン16に接近し、加熱ゾーン16で加熱され、クラッド32及びコアロッド30は、軟化し、軟化したクラッド32は、コアロッド30上に圧潰し、それらと融着する。次に、少なくとも1つの、より好ましくは、複数の「すぐに線引きできる」母材は、得られたモノリシックガラス体20から、ファイバーに直接線引きされてもよい。
【0032】
ガラス体20の本実施形態の同軸配置は、好ましくは、500℃~2,300℃、より好ましくは、1,000℃~2,300℃、最も好ましくは、1,500℃~2,300℃の温度に加熱される。クラッド32のコアロッド30への軟化及び圧潰は、より好ましくは、1000℃~2,200℃、より好ましくは、1,300℃~2,000℃、最も好ましくは1600℃~1800℃の温度で起こる。軟化して圧潰したクラッド32の、軟化したコアロッド30との融着は、好ましくは、1,000℃~2,200℃、より好ましくは、1,300℃~2,200℃、最も好ましくは、1,600℃~2,200℃の温度で起こる。しかし、ガラス材料の組成及びスループットなどの他の因子は、クラッド32がコアロッド30上に圧潰し、それらと融着する温度にも影響を及ぼすことを、当業者らは理解するであろう。
【0033】
コアロッド30及びクラッド32の間の融着界面は、装置10のいくつかのコンポーネントにより、清浄であることが保証される。例えば、双方ともに密閉された底部カラーホルダー及び真空ユニット52ならびに頂部カラーホルダー及び真空ユニット54は、上向き圧潰プロセスが真空で動作することを可能にする。底部カラーホルダー及び真空ユニット52ならびに頂部カラーホルダー及び真空ユニット54はまた、母材アセンブリ(特に、界面)を、発熱体(例えば、炉)内の潜在的な汚染物質及び外部環境から隔離する。炉及び外部環境は、特に、汚染物の界面への侵入を避けることが困難な真空開始プロセス中の、従来のプロセスの代表的な汚染源である。加えて、反応性界面処理ガスは、界面を、エッチングし、清浄し、かつ乾燥させるために使用することができる。
【実施例
【0034】
次の実施例は、本発明の全体的な本質をより明確に示すために含まれる。これらの実施例は、本発明の例示的なものであり、本発明を限定するものではない。
【0035】
FEM(有限要素モデリング)を使用して、シリンダーへの熱衝撃を回避し、シリンダーが適時の圧潰に必要な温度に到達して完了させるために、シリンダーの移動及びオーブンの加熱速度を組み合わせたシミュレーションによりプロセスレシピを開発する。これらのシミュレーションの助けを借りて、図3A図3B図3C、及び、図3Dに示されるように、レシピを確認して、標準的な手順として、クラッド32の頂部を予熱して、クラッド32及びコアロッド30の間の界面の圧潰(すなわち、ガラス体20のギャップ31を閉じること)を開始した。これらの4つの図は、予熱段階(A-B)、ヒーターの中心における滞留時間、及び進行中の上向き圧潰を単に表そうとするシミュレーションにおける4つの代表的な瞬間のスナップショットである。完全なシミュレーションは、動的プロセス全体の中の温度プロファイルの進行を示す。スナップショットは、本プロセスの一部の重要な瞬間を示す。
【0036】
図3Aは、オーブンが1,860秒間加熱された後の、シリンダーの移動が始まる直前の加熱ゾーン16、ガラス体20、及び底部カラー44の温度プロファイルを示す。図3Bは、ガラス体20の頂部が加熱ゾーン16の底部に達する時の、プロセス中の2,840秒におけるガラス体20の温度プロファイルを示す。図3Cは、ガラス体20の頂部が加熱ゾーン16の中心に達し、7分間、その動きが一時停止した時の、プロセス中の4,280秒におけるガラス体20の温度プロファイルを示す。図3Dは、プロセス中の5,000秒におけるガラス体20の温度プロファイルを示す。ガラス体20の頂部は、加熱ゾーン16の中心より上方に移動している。ガラス体20及びコアロッド30は、加熱ゾーン16の中心より約100mm上方において、圧潰に必要な温度に達する。FEMシミュレーションは、加熱ゾーン16の内部のガラス温度、粘度、応力、及びフローに関する情報を提供する。FEMシミュレーションを使用して、約290mmの長さを有する加熱ゾーン16(及び発熱体)に対し、レシピを効率的に特定し、これにより、必要な実際の試験の数を最小限に抑えた。
【0037】
加熱ゾーン16の発熱体を加熱するために使用される代表的なレシピは、30分間50kW、10分間100kW、10分間150kW、10分間200kW、220kW(または幾分低い最大電力、例えば、212kW)であり、プロセスの定常状態になる。装置10の底部に位置する底部カラーホルダー及び真空ユニット52は、速度V1で移動し、装置10の頂部に位置する頂部カラーホルダー及び真空ユニット54は、速度V2で移動する。通常、プロセスの開始時では、V1=V2である。代表的なレシピでは、2分間で100kWに到達した後、6分間、V1=V2=13.5mm/分である。次に、アセンブリを4分間停止させる。4分間の一次停止の後、頂部溶接部42が発熱体の中心に到達するまで、アセンブリを13.5mm/分で再度上昇させる。頂部溶接部42が発熱体の中心に到達すると、アセンブリを6分間停止させる。その後、定常状態での圧潰のために、アセンブリをV1=V2で再度上昇させる。
【0038】
頂部溶接部42が加熱ゾーン16の中心より約110mm~約135mm上方にある時、底部カラーホルダー及び真空ユニット52の真空ポンプを作動させる(すなわち、オンにする)。このような起動は、矢印56の方向に真空を引き、頂部カラー40内の圧力を減少させ始める。頂部カラー40内の圧力が減少し終える時、クラッド32の頂部は、圧潰していることになり、ギャップ31は、閉じていることになり、クラッド32は、密封されていることになるか、またはコアロッド30と融着していることになる。この瞬間に、真空は、底部カラーホルダー及び真空ユニット52でポンピングを続ける一方、圧力が約1気圧に到達するまで、頂部カラー40にガス(例えば、窒素ガスN)を裏で充填する。次に、頂部カラー40を大気に接続する。
【0039】
頂部カラーホルダー及び真空ユニット54の真空ポンプを作動して(すなわち、オンにして)、矢印58の方向に真空を引くことができる。同様に、加熱ゾーン16の発熱体に使用されるガス(典型的には、アルゴン、ヘリウム、または最も典型的には、窒素などの不活性ガス)のパージは、矢印60の方向に発熱体にガスを導入することにより、達成することができる。ガスパージは、ガラス体20の外面上でのすすの発生及び発熱体の酸化を防止するために、ガラス体20の外面及び発熱体の表面の間で起こる。発熱体の頂部でのガスパージは通常、プロセスの開始から行われている。プロセス中またはプロセス後に、すすまたは他の堆積物が母材の表面に形成されないように、適切なパージ率(例えば、9m/h)を特定することが重要である。
【0040】
底部溶接部46が加熱ゾーン16の中心より所定の距離(例えば、約500mm)下方にある時、発熱体の電力は、直線的に減少し始める。底部溶接部46が加熱ゾーン16の中心に到達する時、発熱体の電力は、所定の終了電力値(例えば、約150kW~約160kW)であるべきである。この終了電力を維持しながら、アセンブリは依然として、まだ短い距離(例えば、約50mm)を上昇し続けるはずである。このプロセス工程は、終了段階の温度上昇を抑制し、底部付近のガラスの過熱及び急落を回避する。
【0041】
底部溶接部46が発熱体の中心より短い距離(例えば、約50mm)上方にある時、プロセスは完了する。この位置では、発熱体の電源を完全にオフにし、アセンブリの移動を同時に停止する。ガラス体20のクラッド32の下端部24への完全な圧潰を保証するために、プロセスが停止した後、真空ポンピングを短期間(例えば、1~2分間)維持することができる。終了段階の加熱レシピが100%正しい場合、真空を維持することは必要ではないが、余分な時間真空を維持することは、底部カラー44を変形するリスクを伴うこともある。
【0042】
ロードセル68を使用して、底部カラー44により支持される総重量を測定した。わずかな一定の振動摂動が頂部カラー及び真空ユニット54の速度V2に重畳され、かつ底部カラーホルダー及び真空ユニット52の速度V1が一定に保たれる場合、「リップル」は、図4A及び図4Bに示されるようなロードセル表示曲線に現れることが判明した。「リップル」の振幅が大きいほど、プロセスは低温になる。これは、より低温のプロセスでは、発熱体の中心の軟化したガラスがより硬くなり、振動の力をアセンブリの底部に移すことがよりできるためである。一定の発熱体の出力設定では、この情報は、プロセスが、発熱体の実際の状態に起因して、わずかにより高温側にあるか、またはわずかに低温側にあるかを示す。例えば、図4Aは、比較的大きな振幅、従って、低温側のプロセスを示し、図4Bは、比較的小さな振幅、従って、高温側のプロセスを示す。この知識に基づいて、プロセスの終了電力を決定することができ、すなわち、プロセスが低温である程、終了電力が高い必要がある。この「リップル」振幅は基本的に、発熱体の中心におけるガラス体20の真の粘度測定であり、パイロメータでのガラス表面温度測定よりもはるかに信頼性が高い。
【0043】
従って、装置10及び関連する上向き圧潰プロセスは、振動運動を課すことにより発熱体の中心でガラス体20の粘度測定を可能にする。母材アセンブリの頂部の位置に、小さな振動を課す。平行して、母材アセンブリの重量をロードセル68により測定する。ロードセル68の測定は、発熱体の中心におけるガラス体20の粘度の間接測定を提供する。この情報を使用して、例えば、(以下で検討される)コントローラー88を使用して加熱ゾーン16の温度/加熱力を制御することができる。
【0044】
従来の下向き線引きプロセスと明確に異なる点として、積み重ねられたコアロッド30は、真空で支持される代わりに、積み重ねられたコアロッド30の底部のスペーサー48で支持され、本質的には、オーバークラッド及び線引きプロセスの間に、クラッド32に関してコアロッド30の位置を固定する。換言すれば、上向き圧潰プロセスは、クラッド-コア導波路の歪み、それ故のファイバーカットオフ波長の問題をもたらす可能性があるコアロッドの移動を防ぐための真空を必要としない。また、従来の下向き線引きプロセスとは対照的に、加熱ゾーン16内の溶融ガラスの上方及び下方の両方のガラスの重量は、上向き線引きプロセスの頂部カラー40及び底部カラー44により十分に支持され、これは、重力及び真空力により加熱ゾーン16内で通常引き起こされるクラッド-コア導波路歪み効果を本質的に除去する。この差異は、発熱体または圧潰温度が低温側で作用する時に、上向き圧潰プロセスがはるかに耐性をもつことを可能にする(その理由は、ガラスが、真空からの圧力差を変換するのに十分に軟化しておらず、コアロッド30を支持するからである)。
【0045】
上向き圧潰プロセスはまた、コアロッド30の重量を支持するために真空を必要としないために、コアロッド30及びクラッド32の間のギャップ31の分圧(多くとも大気圧またはもう少し高い、通常、約1,100mbar)を可能にする。それ故、六フッ化硫黄(SF、室温で取り扱いが安全である)などの反応性界面処理ガスは、金属粒子または表面水酸化物(OH)などの任意の潜在的な界面汚染をエッチングするために、界面処理ガスの矢印62の方向に高温圧潰の間に自由に適用することができる。六フッ化硫黄に加えて、他の好適な反応性界面処理ガスとしては、酸素(O)、安全上の懸念が生じるであろうが塩素(Cl)、フッ素(F三フッ化窒素(NF)、四フッ化ケイ素(SiF)、四フッ化炭素(CF)、及びフルオロホルム(CHF)が挙げられる。母材界面をエッチングし、清浄し、かつ乾燥させるための反応性界面処理ガスの使用は、界面の改善、光ファイバー品質の改良(ファイバー破断、気泡、損失、またはエアーラインの低減)、及びコアロッドのD/d比の低下を生じる。
【0046】
前の段落で述べたように、上向き圧潰プロセスは、特異なコア-クラッドガラスフローまたは導波路の歪み効果をはるかに受けにくい。その理由は、積み重ねられたコアロッド30が、スペーサー48で下から支持され、(ガラスを軟化させる)加熱ゾーン16の上方及び下方の両方のガラスの重量も支持されるからである。このような支持は、制御されていないガラスフロー及び歪みの問題を解消する。それ故、過度の加熱または重力及び真空力からのクラッド-コア導波路の歪みのリスクにさらさずに、低粘性ガラス材料(高F-ドープクラッド32など)を加工する本来の利点がある。これは、F-ドープクラッド32材料を用いた特定のクラスのファイバー設計に、重要な加工上の利点を提供する。
【0047】
図1に戻ると、頂部カラー40の内径よりもわずかに小さい外径(すなわち、通常、約126mm)を有するガラスディスク70が、コアロッド30及びクラッド32の頂部に、かつ頂部カラー40の内部に置かれる。ディスク70は、約5cmの厚さであってよい。プロセスの始動中に、頂部溶接部42の発熱体の中心への6分間の滞留時間の後、底部カラーホルダー及び真空ユニット52ならびに頂部カラーホルダー及び真空ユニット54の両方から、真空を適用する。真空は、頂部カラー40をディスク70上に圧潰させる。V2=V1であるクラッド32の残りの定常状態での圧潰前に、V2>V1に設定することにより、クラッド32の頂部の先端を引っ張る。結果は、低費用のかつ高歩留まりのオンライン母材先端加工プロセスであり、これは、後続のファイバー線引きに最も容易で、かつ最も有効な母材を生じる。統合されたオンライン母材先端加工プロセスは、従来のオフライン先端加工プロセスよりも、相当量の労力及び費用の両方を節減する(例えば、余分な加熱工程を節減する)。
【0048】
界面の圧潰が開始されており、続いている時に、V2がV1よりも高く設定されている場合、上向き圧潰プロセスはまた、クラッド32の元の直径よりも極めて小さい直径を有する母材を延伸または上向きに線引きすることもできる。延伸された(または圧縮された)母材の直径は、質量の保存の法則による直線的な垂直速度V1及びV2の精密な設定により正確に制御することができる。しかし、良好な母材ガラスの始動損失は、従来の下向き線引きプロセスの場合よりも、上向き圧潰プロセスの場合にはるかに小さく、それ故、それは、延伸母材に対する有意な費用節減をもたらすことができる。
【0049】
上向き圧潰プロセスはまた、完成した母材のための完全に非接触のプロセスである。その理由は、(ガラ
スを軟化させる)加熱ゾーン16の上方及び下方の両方のガラスの重量が、頂部カラー40及び底部カラー44により支持される一方、母材の外面自体が触れられていないからである。母材の接触、それ故の任意の側方または横方向の力の回避は、プーラーホイールが常に、プロセス全体を通して母材と接触しており、かつ母材に力を印加する従来の下向き線引きプロセスとは異なり、非常に清浄な母材表面及び湾曲が非常に小さい母材の両方をもたらす。
【0050】
多くの従来の下向き線引きプロセスでは、小さな接触領域が、プーラーホイール及び母材外周の間に存在する。このような接触は、母材表面に不純物または汚染物質を導入する可能性がある。加えて、プーラーホイールは、(より長い母材の場合に悪化し、すなわち、湾曲が、単純なひずみの場合に母材の長さの2乗として増加する)母材の湾曲を引き起こす下向き線引きプロセスにおける側方の力をかける可能性がある。過度の圧力が、母材のガラス表面に損傷を与える可能性があるので、プーラーホイールにより母材に印加することができる接触力の量は制限される。従って、単一のプーラーホイールセットで印加することができるより大きい引っ張り力を必要とする大きい母材の場合、複数のプーラーホイールセットは、母材を支持するのに必要な合計垂直(摩擦)力を達成するために、異なるレベルで母材に適用されてもよい。しかし、複数のプーラーホイールセットは、装置の高さ及び費用の両方を増加させる。さらに母材の低湾曲は、実際に達成するのは困難だが複数のプーラーホイールセットが正確に位置合わせされる場合、複数のプーラーホイールセットでのみ達成することができる。非接触上向き圧潰プロセスは、母材に加えられる側方の力がないために、非常に小さい湾曲を有する母材を生じる。
【0051】
再度図1に戻ると、装置10は任意に、フレーム12に取り付けられたグリッパシステム80を含んでもよい。好適なグリッパシステム80は、本願の譲受人Heraeus Tenevo LLC & Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KGによる「グリッパデバイスを使用した低湾曲の細長いガラスコンポーネントの形成」という名称の、2015年1月22日に出願された国際特許出願第PCT/US2015/012471号に、より完全に記載される。一実施形態では、グリッパシステム10をフレーム12に取り付けることにより、グリッパシステム80は装置10に含まれる。
【0052】
グリッパシステム80は、クランプ部材82及びクランプ部材82をグリッパシステム80に取り付ける取り付け部材84を含む。グリッパシステム80は、フレーム12の長さに平行して、垂直に移動することがある(Z方向として、図1に定義される)。取り付け部材84は、クランプ部材82のX方向及びY方向(すなわち、X-Y平面内の任意の位置)への並進運動を可能にする。(必要または好ましいのいずれでもないが、特に、炉ではなくトーチが、発熱体であるならば、回転を可能にするチャックシステムが使用されることもある。)一実施形態では、取り付け部材84は、アームの移動を制御するために、リニアベアリングまたはリニアレール及びモーター、例えば、手動またはサーボモーター駆動上に取り付けられた一対のアームを含むX-Y平面にある。取り付け部材84は、さらに低摩擦デバイスであり、従って、外部物体によりクランプ部材82に印加される力は、クランプ部材82が外部物体に抵抗力を印加することよりもむしろ、クランプ部材82が、取り付け部材84に沿って歪められることをもたらすことになる。
【0053】
母材が形成されると、グリッパシステム80は、クランプ部材82を移動して、底部カラー44または(図1に示すような)底部カラーホルダー及び真空ユニット52に接触させることにより、取り付けてもよい。クランプ部材82は、好ましくは、母材に接触すべきではない。底部カラー44を損傷させることなく、クランプ部材82が下部カラー44の周りにしっかりと適合するように、クランプ部材82は、底部カラー44の逆の形状を有する凸領域を有するようにサイズ設定されてもよい。クランプ部材82は、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52の外面の全てまたは(図1に示されるような)一部のみに接触することがある。例示的な実施形態では、クランプ部材82は、ケイ酸カルシウム、アスベスト、圧縮ガラス、またはセラミックファイバー(例えば、ロックウール)または高温ゴム(例えば、シリコーンまたはフルオロポリマーエラストマー)などの高温圧縮性材料で作製されてもよい。
【0054】
底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52の中心を決定して、次に、クランプ部材82を移動させて、X方向の中心に位置合わせすることにより、クランプ部材82はまず、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52の中心に位置合わせされる。一部の実施形態では、クランプ部材82は、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52の推定中心、例えば、所望の移動経路に基づく予想される中心、に位置合わせされてもよい。他の実施形態では、クランプ部材82を底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52により正確に位置合わせするために、装置10は、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52の中心に位置することができる感知素子、ならびに感知素子の出力から中心を決定するためのコンピュータをさらに含んでもよい。感知素子は、1つ以上のレーザーデバイス、カメラ/ビジョンシステム、または機械的接触(ダイヤルインジケータ)システムを含んでもよい。例示的な実施形態では、感知素子は、グリッパシステム80に取り付けられてもよく、またはグリッパシステム80の外部に、例えば、フレーム12に取り付けられてもよい。別の実施形態では、感知素子、例えば、カメラは、グリッパシステム80及びフレーム12の両方の外部にあってもよい。グリッパシステム80は、位置ずれを防止するためのさらなる部材を含むので、グリッパシステム80が、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52の中心と完全に位置合わせする必要はない。
【0055】
クランプ部材82が位置合わせされると、クランプ部材82は、X方向の取り付け部材84の移動により、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52と接触する。取り付け部材84、任意の好適な機構、例えば、X-Y平面の一対のアームを制御するために使用されるモーター、により移動してもよい。取り付け部材84が低摩擦デバイスであるので、クランプ部材82が、中心に正しく位置合わせされていない状態で、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52に取り付けようとする場合、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52のクランプ部材82を押す力は、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52が移動する代わりに、クランプ部材82を位置合わせされた位置に移動することになる。取り付け部材84は、クランプ部材82が底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52に取り付けると、クランプ部材82の動きを防止するために係合及び離脱され得る係止機構をさらに含んでもよい。クランプ部材82が位置に移動している間、係止機構は解かれているので、クランプ部材82は、クランプ部材82に印加される任意のさらなる力で依然として位置がずれているが、モーターで移動してもよい。クランプ部材84が底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52に接触すると、係止機構が係合されて、X-Y平面内のクランプ部材82のさらなる移動を防止する。
【0056】
位置ずれを検出するために、一実施形態では、クランプ部材82が底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52に取り付けるプロセス中に生じる反力を感知して反力を測定するために、グリッパシステム80は、ロードセルなどの力感知デバイスをさらに含む。ロードセルは、クランプ部材82、各ロードセルの歪ゲージ(示されない)に印加された力を、電気信号に変換するトランスデューサである。次に、電気信号は測定され、歪みゲージに印加される力に相関する。例示的なロードセルとしては、油圧ロードセル、空気圧ロードセル、及び歪みゲージロードセルが挙げられる。クランプ部材82が、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52の中心に適切に位置合わせされないならば、反力は、クランプ部材82が適切に位置合わせされる場合より大きいであろう。力感知デバイスを用いて反力を測定することにより、位置ずれは、クランプ部材82が底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52の移動をもたらすのに十分な力を底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52に印加する前に、検出及び補正されることがある。一実施形態では、力感知デバイスは、低摩擦取り付け部材84と共に使用されてもよく、クランプ部材82が取り付け部材84上を位置合わせされた位置まで移動するのを可能にするために、クランプ部材82が底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52に取り付けられる速度が、予想よりも大きい反力に応答して遅い。例示的な実施形態では、クランプ部材82は、約50mm/分~約100mm/分の範囲の速度で、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52に向かって移動することがある一方、いかなる位置ずれも、力感知デバイスで検出されないが、速度は、位置ずれが検出される場合、約10mm/分~約25mm/分に低減した。他の用途では、クランプ速度は、これらの範囲を超えてもよい。
【0057】
要約すれば、グリッパシステム80は、母材アセンブリ重量(約350kg以上であり得る)を支持するのに役立ち、従来の完全接触プーラーホイールシステムに取って代わる。グリッパシステム80は、正確な位置合わせ及び母材の形状の制御ならびに母材先端加工プロセスのための、水平(X-Y)面における母材を作製するために使用されたガラス体20の浮動位置決め、及び垂直(Z)方向における正確な直線移動を可能にする。特に、グリッパシステム80が組み込まれる時、装置10は、母材上の側方または横方向の力を回避し、それにより、母材の湾曲を最小限に抑え、おそらく除去する。ロードセルを使用して加熱中のガラスの挙動を監視することができ、物理学(質量の保存)を使用して寸法を正確に制御することを可能にする(従来のオンライン測定及びフィードバック制御の費用を削減する)。
【0058】
加えて、装置10及び関連する上向き圧潰プロセスは、母材測定デバイスと組み合わせて使用することができる。好適な母材測定デバイスは、本願の譲受人Heraeus Tenevo LLC & Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KGによる「光ファイバー母材の幾何学的特性を決定するための方法及び装置」という名称の、2014年8月8日に出願された国際特許出願第PCT/US2014/050368号に、より完全に記載されている。
【0059】
図5は、光ファイバー母材100の1つ以上の幾何学的特性を決定するのに適した母材測定デバイス90の実施形態の概略図である。図5を参照すると、デバイス90は、2次元パターン92及び画像キャプチャユニット94を含む。図5に示される実施形態では、画像キャプチャユニットは、デジタルカメラである。図5に示される実施形態に示される母材測定デバイス90は、長手方向軸に関して光ファイバー母材100を回転させるように構成された支持体及び駆動体96を含む。光ファイバー母材100の右端部を位置決めする、図5に示される支持体及び駆動体96の部分は、母材100を回転させるように構成された支持体及び駆動体96も含む。支持体及び駆動体96は、一体的構造体であってよく、または支持体及び駆動体は、別個のコンポーネントであってよい。支持体は、母材100を、2次元パターン92及び画像取込ユニット94の間に位置合わせするように構成され、その結果、キャプチャされた画像は、母材100を通して見た場合、2次元パターン92のものである。
【0060】
母材測定デバイス90を使用する1つの例示的な方法としては、長手方向軸、外径及び外周を有する光ファイバー母材100を設ける工程と、母材100の長手方向軸に平行な長さ及び母材100の外径より大きい幅を有する2次元パターン92を設ける工程と、母材100が2次元パターン92及び画像キャプチャユニット94の間に位置合わせされるように配置された画像キャプチャユニット94を設ける工程と、母材100を長手方向軸に関して回転させ、母材100の外周に沿って2つ以上の異なる点での母材100を通して見られる2次元パターン92の第1の複数の画像を取得する工程と、第1の複数の画像から、母材100の少なくとも1つの幾何学的特性を決定する工程と、が挙げられる。
【0061】
母材測定デバイス90及び関連する方法に従って決定することができる光ファイバー母材100の幾何学的特性または特性は、直径、扁平率、D/d比、オーバークラッドOD/ID比、コアロッド30の偏心率、及び完成した母材100のコア偏心率、ならびに全体的な母材の湾曲を含む。従って、母材測定デバイス90及び関連する方法は、導波路及び幾何学的特性の、自動化された非破壊の生産性に優れた測定を提供する。それらは、母材100のユーザーのための導波路品質の付加価値の保証及び光ファイバーを生成するプロセスを微調整する潜在的な機会も提供する。
【0062】
コントローラーは、2つのコンポーネント間のデータのフローを管理または指示する(すなわち、通信を容易にする)ハードウェアデバイスまたはソフトウェアプログラムである。装置10は、コントローラー88を含む。コントローラー88は、例えば、ロードセル68、グリッパシステム80からのデータ、頂部カラーホルダー及び底部カラーホルダーならびに真空ユニット52、54、ならびに真空及び処理ガスシステムから、データを取得する能力、ならびに装置10の他のコンポーネント及び関連する上向き圧潰プロセスを制御するそのデータを使用する能力を提供する。コントローラー88は、当業者らに周知の仕方で、最適な加熱及び移動プロセスレシピを効率的に保証するために、予め設定された制御プログラムまたはルーチンをプログラムしている。より具体的には、コントローラー88は、例えば、速度V1及びV2、ガスの流速、ならびに真空ポンプの圧力を規定することができる。コントローラー88は、生産のための強力で再現可能な「ワンボタン」の自動化プロセスを保証するのに役立つ。
【0063】
上向き圧潰プロセスの重要な利点は、導波路(クラッド-コア)歪みの最小化、おそらく除去である。導波路の歪みの原因は、従来のプロセスに固有のかつ上向き圧潰プロセスでは除去された、コアロッド及び溶融ガラスへの重力及び真空力である。導波路の歪みは、RIT/RIC分野では、あるとしても、ほとんど対処されない問題である。問題認識の欠如は、例えば、とりわけ、ファイバーカットオフ波長の不具合をもたらす可能性のある実際の導波路(クラッド間)歪み効果について気にすることなく、簡単なガラスロッドのような光学母材を扱う傾向があったので、過去の光ファイバーの要求性能が、それほど厳しくなかったためであることがある。
【0064】
モバイル通信規格の主要段階を示す世界的に接続されたデバイス、クラウドサービス、5G(第5世代のモバイルネットワークまたは第5世代のワイヤレスシステム)、及びIndustry 4.0(または第4産業革命、サイバー物理システムを含む製造技術における自動化及びデータ交換の最新動向、インターネット・オブ・シングス、及びクラウドコンピューティング)、ならびに他の進歩は、帯域幅に対する指数関数的に増加する需要を引き起こしている。それ故、光ファイバー製造業者は、その出力及び生産性を増加させなければならない。次世代の光ファイバー製造の場合、高速で線引きされる非常に大きな母材が必要とされる。上向き圧潰プロセスの結果は、数日間の中断のない光ファイバー線引きを持続して、生産性及び光ファイバー出力を増加させ、かつ費用を低減して母材のユーザーのためにファイバー歩留まりの改善を実現することができる「すぐに線引きできる」の固体母材である。
【0065】
上向き圧潰プロセスは当然、上向き線引き(及び任意に延伸または圧縮)、ならびに頂部カラー40を圧潰させ、頂部カラー40の外径をクラッド32の外径に適合させることによる低費用の上向き先端加工を含む。上向き圧潰プロセスのこれらのさらなる特徴は、質量の保存及びガラスフローの正確な物理学による従来の下向き線引きプロセスよりもはるかに正確かつ安価に行うことができる。線引き/延伸及び先端の特徴を含む上向き圧潰プロセスは、母材の端部で最小の導波路の歪みを有するほぼ100%の先端加工された母材の歩留まりも達成することができる(すなわち、より「良好な」ガラス)。上向き圧潰プロセスでは、良好な母材のガラス歩留まりが、従来の下向き線引きプロセスの始動に使用される無駄な犠牲的な出発材料がなく、ほぼ100%であることを指摘する価値もある。そして、頂部カラー40及び底部カラー44に使用される材料の消費も、上向き圧潰プロセスでは最小である。
【0066】
シングルオーバークラッド上向き圧潰プロセスが上に記載されている。しかし、このプロセスは、スペーサー48の外径を増加させることならびに最大加熱電力及び終了電力を微調整することなどの、些瑣末な変更を伴う複数のオーバークラッド「ギャップ」ジャケットチューブまたはシリンダーに適用することができる。さらに、上向き圧潰プロセスは、クラッドの内径の適合が不要な、明確な利点を有する2倍の(または3倍以上の)長さのクラッド32に適応することもできる。(すなわち、従来の下向き線引きプロセスの場合のように、頂部クラッドの内部のコアロッドを支持する底部クラッドの内径がより小さい)。その理由は、積み重ねられたコアロッド30の重量が下から完全に支持されるからである。
【0067】
本発明の好ましい実施形態の上の記載は、特許請求の範囲により規定されるような本発明を限定するよりはむしろこれを例示するものとみなすべきである。容易に理解されるように、上述の特徴の多数の変形及び組み合わせは、特許請求の範囲に記載されたような本発明から逸脱することなく利用することができる。このような変更は、本発明の趣旨及び範囲からの逸脱とみなされず、全てのこのような変形は、次の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。例えば、本文書で広く列挙されている全ての範囲は、それらの範囲内に、より広い範囲に属する全てのより狭い範囲を含むことが明示的に意図される。当業者らに理解されるように、本プロセスに含まれる特定の工程は、省略され得ること、特定のさらなる工程が追加され得ること、及び工程の順序は、記載された具体的な順序から変更され得ること、も明示的に意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5