(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】シリカエアロゲルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/16 20060101AFI20220617BHJP
【FI】
C01B33/16
(21)【出願番号】P 2017225588
(22)【出願日】2017-11-24
【審査請求日】2020-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000127307
【氏名又は名称】株式会社イノアック技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】夛田 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】大田 英生
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104003406(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102167337(CN,A)
【文献】特開2000-034117(JP,A)
【文献】特開昭60-204614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカエアロゲルの製造方法であって、
水と、ケイ酸ナトリウムと、酸触媒と、多価アルコールと、を混合する湿潤ゲル調製工程と、
前記湿潤ゲルの乾燥工程とを、含み、
前記ケイ酸ナトリウム100質量部に対して、前記多価アルコールの配合量が80~800質量部であり、
前記多価アルコールの重量平均分子量が1000以下であるか、又は、
前記多価アルコールが、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、芳香族ジオール、脂環式ジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノペンタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンから選択されるシリカエアロゲルの製造方法
(ただし、前記湿潤ゲル調製工程として、ケイ素源溶液、油相、界面活性剤および補助界面活性剤により調製されたマイクロエマルジョンを用いて湿潤ゲルを調製するものを除く)。
【請求項2】
シリカエアロゲルの製造方法であって、
水と、ケイ酸ナトリウムと、酸触媒と、多価アルコール及びアニオン性界面活性剤とを混合する湿潤ゲル調製工程と、
前記湿潤ゲルの乾燥工程とを、
含み、
前記多価アルコールの重量平均分子量が1000以下であるか、又は、
前記多価アルコールが、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、芳香族ジオール、脂環式ジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノペンタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンから選択されるシリカエアロゲルの製造方法
(ただし、前記湿潤ゲル調製工程として、ケイ素源溶液、油相、界面活性剤および補助界面活性剤により調製されたマイクロエマルジョンを用いて湿潤ゲルを調製するものを除く)。
【請求項3】
シリカエアロゲルの製造方法であって、
水と、ケイ酸ナトリウムと、酸触媒と、多価アルコールとを混合する湿潤ゲル調製工程と、
前記湿潤ゲルの乾燥工程とを、
含み、
前記多価アルコールが
、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、芳香族ジオール、脂環式ジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノペンタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンから選択されるシリカエアロゲルの製造方法
(ただし、前記湿潤ゲル調製工程として、ケイ素源溶液、油相、界面活性剤および補助界面活性剤により調製されたマイクロエマルジョンを用いて湿潤ゲルを調製するものを除く)。
【請求項4】
シリカエアロゲルの製造方法であって、
水と、ケイ酸ナトリウムと、酸触媒と、アニオン性界面活性剤とを混合する湿潤ゲル調製工程と、
前記湿潤ゲルの乾燥工程とを、
含み、
前記アニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸2ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムから選択されるシリカエアロゲルの製造方法
(ただし、前記湿潤ゲル調製工程として、ケイ素源溶液、油相、界面活性剤および補助界面活性剤により調製されたマイクロエマルジョンを用いて湿潤ゲルを調製するものを除く)。
【請求項5】
シリカエアロゲルの製造方法であって、
水と、ケイ酸ナトリウムと、酸触媒と、多価アルコール及び/又はアニオン性界面活性剤とを混合する湿潤ゲル調製工程と、
前記湿潤ゲル中の水をエタノールで置換する工程と、
前記湿潤ゲルの乾燥工程とを、
含むシリカエアロゲルの製造方法
(ただし、前記湿潤ゲル調製工程として、ケイ素源溶液、油相、界面活性剤および補助界面活性剤により調製されたマイクロエマルジョンを用いて湿潤ゲルを調製するものを除く)。
【請求項6】
シリカエアロゲルの製造方法であって、
水と、ケイ酸ナトリウムと、酸触媒と、多価アルコール及び/又はアニオン性界面活性剤とを混合する湿潤ゲル調製工程と、
前記湿潤ゲルを疎水化する工程と、
前記湿潤ゲルの乾燥工程とを、
含むシリカエアロゲルの製造方法
(ただし、前記湿潤ゲル調製工程として、ケイ素源溶液、油相、界面活性剤および補助界面活性剤により調製されたマイクロエマルジョンを用いて湿潤ゲルを調製するものを除く)。
【請求項7】
前記ケイ酸ナトリウム100質量部に対して、
前記多価アルコールの配合量が80~800質量部である、請求項2、3、5
又は6に記載のシリカエアロゲル製造方法。
【請求項8】
ケイ酸ナトリウムの、SiO
2とNa
2Oのモル比{下式(1)で表される}が、1.0~5.0である、請求項1~
6のいずれかに一項に記載のシリカエアロゲル製造方法。
式(1):モル比=a/b×1.032
aはSiO
2の質量であり、bはNa
2Oの質量である。
【請求項9】
前記多価アルコールの重量平均分子量が1000以下であるか、又は、前記多価アルコールが、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、脂環式ジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノペンタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンから選択される請求項5
又は6に記載のシリカエアロゲル製造方法。
【請求項10】
前記アニオン性界面活性剤の配合量が、前記ケイ酸ナトリウム100質量部に対して、
1~100質量部であることを特徴とする、請求項2、4、5
又は6のいずれか一項に記載のシリカエアロゲル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細粒子を造粒することで高い断熱性を示すシリカエアロゲルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゲルは、低密度で空隙率の高い乾燥ゲル体の総称であり、湿潤ゲルを乾燥させて得られる多孔質体である。
シリカ化合物を原料とする一般的なシリカエアロゲルの細孔径は、空気の平均自由行程である67nm以下であり、気体分子同士の衝突(対流による熱伝達)がほとんどないため、気体成分の熱伝導率の影響を無視することができ、シリカエアロゲルの熱伝導率が低くなる。
また、シリカエアロゲルの細孔径(50nm程度)が小さく細孔径分布が狭いほど、可視光領域波長のMie散乱の影響を受けにくく、透明度が増す。シリカエアロゲルの断熱性はその内部細孔径に依存するため、透明度が高いエアロゲルは熱伝導率が低くなる。
非常に小さな細孔径を有する多孔構造であるシリカエアロゲルは、シリカの一次粒子(直径1nm程度)が、弱い結合力でニ次粒子(直径5~10nm)を形成し、その二次粒子が弱い結合力で結合してできた構造を有する。従って、シリカエアロゲルは、非常に脆いという特徴を有している。そのため、エアロゲル単独での使用は困難で、用途が限定されていた。しかし近年、省エネルギー技術が注目される中、シリカエアロゲルは、その低い熱伝導率、即ち、高い断熱性に、その価値を見出され研究が盛んとなっている。
【0003】
一般的なシリカエアロゲルは、液相反応であるゾル-ゲル法により合成される。出発物質であるシリカ化合物を加水分解し、重縮合して得られる湿潤ゲルを、アルコール溶媒存在下で、前記アルコール溶媒の臨界点以上の超臨界条件で乾燥(超臨界乾燥)して作製することができる。
シリカ化合物として、シリコーンアルコキシド(特許文献1~3)やケイ酸ナトリウム(特許文献4、5)を用いる調製手法が提案されている。
具体的には、テトラメトキシシランといったシリコーンアルコキシドは、アルコール等の有機溶媒中で水、触媒との混合により加水分解される。さらに縮重合され、ゾル状態を経て、湿潤ゲルを形成し、乾燥されてシリカエアロゲルとなる。
また、シリカ化合物として、ケイ酸ナトリウムを用いる場合には、ケイ酸ナトリウム水溶液は、酸イオン交換樹脂の充填層を通過して、アルカリ金属イオンを除去した酸性のゾル溶液とされる。アルカリ触媒との混合によりゾル溶液を中性とし、加熱により湿潤ゲルを形成し、乾燥されてシリカエアロゲルとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第4402927号
【文献】米国特許第4432956号
【文献】米国特許第4610863号
【文献】特開2015-189661号公報
【文献】特開2016-003159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3等に示されるようなシリコーンアルコキシドを使用した既存のシリカエアロゲルは、溶媒としてアルコールを使用しているため、揮発性が高く、得られた湿潤ゲルが空気中に曝されると、湿潤ゲル中の有機溶媒が、短時間のうちに揮発していまい、超臨界乾燥を行う前に、割れたり、収縮し易いという問題があった。
また、特許文献4、5等に示されるような、ケイ酸ナトリウムを使用したエアロゲルは、ケイ酸ナトリウム水溶液をイオン交換樹脂に通過させて酸性水溶液を調製する必要があり、ケイ酸ナトリウム水溶液をイオン交換する工程と湿潤ゲルを作る工程が別々なため、製造プロセスが複雑になっていた。
従って本発明の目的は、量産性が高く、簡便な製造工程で作製が可能なシリカエアロゲルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、鋭意研究を行い、水と、ケイ酸ナトリウムと、多価アルコールと、及び/又は、アニオン性界面活性剤を混合して得た湿潤ゲルを乾燥させることで、前記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は下記の通りである。
本発明(1)は、
シリカエアロゲルの製造方法であって、
水と、ケイ酸ナトリウムと、多価アルコールと、及び/又は、アニオン性界面活性剤を混合する湿潤ゲル調製工程と、
前記湿潤ゲルの乾燥工程とを、含むシリカエアロゲルの製造方法である。
本発明(2)は、
前記ケイ酸ナトリウムの配合量100質量部に対して、
前記多価アルコールの配合量が80~800質量部である、前記発明(1)のシリカエアロゲル製造方法である。
本発明(3)は、
前記ケイ酸ナトリウムの、SiO2とNa2Oのモル比{下式(1)で表される}が、1.0~5.0である、前記発明(1)又は(2)のシリカゲル製造方法である。
式(1):モル比=a/b×1.032
aはSiO2の質量であり、bはNa2Oの質量である。
本発明(4)は、
前記多価アルコールの重量平均分子量が1000以下である、前記発明(1)~(3)のいずれかのシリカエアロゲル製造方法である。
本発明(5)は、
前記アニオン性界面活性剤の配合量が、
前記ケイ酸ナトリウムの配合量100質量部に対して、
1~100質量部であることを特徴とする、前記発明(1)~(4)のいずれかのシリカエアロゲル製造方法である。
本発明(6)は、
前記湿潤ゲル調製工程において、触媒をさらに添加することを特徴とする、前記発明(1)~(5)のいずれかのシリカエアロゲル製造方法である。
本発明(7)は、
前記触媒の配合量が、
前記ケイ酸ナトリウムの配合量100質量部に対して、
1~500質量部であることを特徴とする、前記発明(1)~(6)のシリカエアロゲル製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明のシリカエアロゲルの製造方法について詳述する。
1.シリカエアロゲルの製造方法
本発明におけるシリカエアロゲルは、水と、ケイ酸ナトリウムと、多価アルコールと、及び/又は、アニオン性界面活性剤を混合して調製した湿潤ゲルを乾燥させることによって製造される。
本形態に係るシリカエアロゲルは、低密度の乾燥ゲルであれば、特に限定されない。超臨界乾燥法を用いて得られたエアロゲルだけでなく、通常の乾燥過程によるキセロゲル、凍結乾燥によるクライオゲル等も含む。
【0008】
なお、本明細書において、前記原料が混合されたのち、またゲル化していない水溶液をゾル溶液と呼ぶ。本明細書では、ゲル化が始まったあとにおいて、ゲル化していない水溶液分もゾル溶液と呼び、これらを区別することなく用いる場合がある。
本明細書において、湿潤ゲルとは、シリカエアロゲルが、ゲル化後のゾル溶液の残液等の液体を含む状態を示す。
本明細書において、単に水と記載した場合には、水の純度は特に限定されないが、水の純度により透明度が高い湿潤ゲルと熱伝導率の低いシリカアエロゲルが得られるため、イオン交換水以上の純度であることが好ましい。イオン交換水は、水道水等を、イオン交換膜を透過させて精製した水であり、電気抵抗度で1×1010Ω・cm以上であることが好ましい。
【0009】
1-1.原料
1-1-1.ケイ酸ナトリウム
ケイ酸ナトリウムは、Na2O・nSiO2・mH2Oの分子式で表される。係数nはSiO2・Na2Oのモル比であり、SiO2及びNa2O成分の重量比とモル比の関係は次の式1で示される。
モル比=(a/b)×1.032 式1
ここで、aはSiO2の質量、bはNa2Oの質量であり、定数である1.032は、SiO2の分子量とNa2Oの分子量の比である。一般に、製造されているケイ酸ナトリウムのモル比(n値)は、0.5~5.0である。
【0010】
本発明に用いられるケイ酸ナトリウムは、Na2O・nSiO2の構造であればよく、n値は、特に限定されない。従って、ケイ酸ナトリウムのn値は、一般に製造されていない0.5~5.0の範囲外のものでもよいが、入手の容易であるため、0.5~5.0が好しい。本発明に用いられるケイ酸ナトリウムは、他の原料と混合する前に水に溶解させ、ケイ酸ナトリウム水溶液として用いることができる。その場合に、n値が、1未満の場合には結晶性であり、水への溶解性が容易ではないため、水への溶解が容易である1.0~5.0がより好ましい。n値が1.0~5.0のケイ酸ナトリウムは、水溶性が高く、粉末や液体での入手が可能であるため、ケイ酸ナトリウム水溶液の濃度は容易に調整が可能である。
また本発明に用いられるケイ酸ナトリウム水溶液の濃度は、特に限定されず、ケイ酸ナトリウムを含む水溶液であればよい。例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液の濃度は10質量%~90質量%とすることができる。製造しやすい粘度になる濃度に調整すればよい。
【0011】
また、本発明におけるケイ酸ナトリウムに加え、さらにシリコーンアルコキシドやその誘導体を含ませることができる。シリコーンアルコキシドやその誘導体は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されない。例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランオリゴマー、テトラエトキシシランオリゴマー、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、モノヘキシルトリエトキシシラン等を用いることができる。前記シリコーンアルコキシドやその誘導体は、複数を組み合せて用いることができる。複数を用いる場合には、その組み合わせ及び配合比率は、目的に応じて選択することができる。
【0012】
1-1-2.多価アルコール
多価アルコールは、1つの分子に2個以上の水酸基を有する化合物であり、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されない。
多価アルコールは、溶媒和効果により、ゾル溶液中のケイ酸ナトリウムの拡散性を向上させる。ケイ酸ナトリウムが拡散することにより、ケイ酸ナトリウム分子間の距離が拡がり、ゲル化時の粒子形成速度を抑制できる。そのため、一次粒子であるシリカ粒子の凝集を抑制でき、系内全体で、均一な大きさの二次粒子が形成され、二次粒子がち密に凝集した湿潤ゲルが形成される。従って「細孔径が小さくなり、その分布も狭くなる。
一方、エタノール等の1価アルコールを含む場合には、1価のアルコールが、急速にケイ酸ナトリウムと脱水反応を起こし、系内で局所的に、一次粒子及び二次粒子の凝集が起こる。その場合に、二次粒子であるシリカの大きさは不均一であり、かつ局在的である。従って、二次粒子はち密なゲルを形成できず、不均一な二次粒子が凝集した湿潤ゲルを形成するため、細孔径が大きくなり、さらに、局所的に凝集化が進んだ二次粒子が固体として析出しやすくなる。
また、多価アルコールは、有機溶媒として相対的に高い沸点を有し、得られた湿潤ゲルを空気中に曝しても、容易に揮発しない。そのため、乾燥を行う前に、割れたり、収縮したりすることがない。
【0013】
本発明における多価アルコールの分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量で、1000以下が好ましく、700以下がより好ましく、50~650がさらに好ましい。
多価アルコールは、一般的に分子量が大きくなると、固体になったり、水溶性及び蒸気圧が低下するため、本発明における溶解(配合)や乾燥において、配合時間がかかったり、溶け残りのおそれや乾燥時間が長くなる等が発生する。また分子量が大きくなると、立体障害による影響で溶媒和が低下して、ケイ酸ナトリウムの拡散性が低くなり、結果として細孔径が大きくなる。
また、分子量が小さくなりすぎると、分子が安定せず分解することがあり、取り扱いが困難になる。
【0014】
ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法によって測定することができる。例えば、カラムとしてTSKgel SuperMultiporeHZ-M(東ソー株式会社製)を用いた、GPC測定装置(東ソー株式会社製、HLC-8320 GPC EcoSEC)によって測定することができる。
具体的な測定例を下記に詳述する。GPC測定装置のヒートチャンバー中でカラムを40℃に安定させ、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を毎分1mlの流速で流す。ここに、多価アルコールの濃度を0.05~0.6質量%になるようにTHFで調製した試料溶液を50~200μl注入する。注入された試料は前記カラムにより分離され、分子量の大きなものから検出セルに導入され、その濃度が検出される。一般に検出器は、UV吸光計やRI(屈折率)検出器が用いることができる。試料の重量平均分子量は、数種の単分散ポリスチレン標準試料のGPC測定結果により作成された検量線のから、ポリスチレン換算値として算出することができる。
検量線は数種類の標準ポリスチレン試料について、前記GPC測定を行い、その結果を横軸にリテンションタイム、縦軸に分子量の対数の曲線として作成することができる。
標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical社製や東ソー社製の標準ポリスチレンが使用できる。検量線を作成するための標準ポリスチレン試料の分子量は、例えば、6×102、2.1×102、4×102、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを複数用いることができ、これらのGPC測定結果に基づいて、検量線を作成することができる。
【0015】
本発明において用いられる多価アルコールは、例えば、2価アルコールとしては、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール等の脂肪族ジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールA、シクロヘキサンジオール等の芳香族ジオール又は脂環式ジオールを挙げることができる。
また、3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノペンタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンを挙げることができる。
これらの多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、多価アルコール以外の有機溶媒を多価アルコールと組み合わせて用いてもよく、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されない。有機溶媒は、例えば、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノールを挙げることができる。
【0016】
1-1-3.アニオン性界面活性剤
アニオン性界面活性剤は、水に溶けたときに、疎水基のついている部分がマイナスイオンに電離する界面活性剤である。
多価アルコールと同様に、アニオン性界面活性剤は、ゾル溶液中でのケイ酸ナトリウムの拡散性を向上させる。従って、上述したように、細孔径が小さく、その細孔径の分布の狭い湿潤ゲルを形成することができる。
【0017】
本発明に用いられるアニオン性界面活性剤は、特に限定されず、例えば、ラウリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油ナトリウム等の脂肪酸セッケン類;オクチルサルフェート、ラウリルサルフェート、ラウリルエーテルサルフェート、ノニルフェニルエーテルサルフェート等の硫酸エステル類;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等の硫酸エステル塩類;ラウリルスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート等のスルフォン酸エステル類;ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム等のスルフォン酸エステル塩類;トリイソプロピルナフタレンスルホネート、ジブチルナフタレンスルホネート等のアルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム;ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物、モノオクチルスルホサクシネート、ジオクチルスルホサクシネート、ラウリン酸アミドスルホネート、オレイン酸アミドスルホネート、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム等のスルフォン酸塩類;ラウリルホスフェート、イソプロピルホスフェート、ノニルフェニルエーテルホスフェート等のリン酸エステル類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸2ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸2ナトリウム等のスルホコハク酸塩類;ウリルジメチルアミンオキシド;ミリスチルジメチルアミンオキシド;ステアリルジメチルアミンオキシド;ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド;ポリオキシエチレンヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド;が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記アニオン性界面活性剤のうち、ゾル溶液に分散、又は、溶解しやすいためHLB値が10以上のものが好ましく、さらに湿潤ゲルの透明度が高く、シリカアエロゲルの熱伝導率が低くできるため、HLB値が10以上の硫酸エステル塩類、スルフォン酸塩類及びスルホコハク酸塩類がより好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸2ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルナトリウムがさらに好ましい。
ここで、本発明に用いられるアニオン性界面活性剤のHLB値とは、親水性-疎水性バランス(HLB)値を意味し、小田法により求められる。小田法によるHLB値の求め方は、「新・界面活性剤入門」第195~196頁及び1957年3月20日槙書店発行 小田良平外1名著「界面活性剤の合成と其応用」第492~502頁に記載されており、HLB値=(無機性/有機性)×10で求めることができる。
【0018】
1-1-4.その他
その他の添加物として、ゲル化を促進するための触媒を添加することができる。触媒としては、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されず、例えば、有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、サリチル酸、没食子酸、安息香酸、フタル酸、ケイ皮酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、アジピン酸が、無機酸としては、塩酸、次亜塩素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、炭酸、リン酸、ホスホン酸が挙げられる。これらの触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。触媒としては酸解離定数pKaの値が小さいものが好ましく、特に硫酸、塩酸等が好ましい。
【0019】
また、アニオン性界面活性剤による気泡を抑制するため、消泡剤を添加することができる。消泡剤としては、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されず、例えば、エマルジョン型シリコーン系消泡剤、自己乳化型シリコーン系消泡剤、オイル型シリコーン系消泡剤、コンパウンド型シリコーン系消泡剤、変性シリコーン系消泡剤等のシリコーン系消泡剤;ポリオキシエチレン―ポリオキシプロピレンブロック共重合体、アルコールアルコキシレート、低分子量EO含有界面活性剤等のポリエーテル系消泡剤;が挙げられる。これらの消泡剤は、一種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。破泡効果に優れる点でシリコーン系消泡剤が好ましく、特にゾル溶液との相溶性に優れる点からエマルジョン型シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0020】
1-2.シリカエアロゲルの製造方法
下記に、本発明におけるシリカエアロゲルの製造方法の一例を詳述する。
1-2-1.湿潤ゲルの調製工程
所定量の多価アルコール、水、又は多価アルコールと水の水溶液のいずれかを容器に入れる。
【0021】
前記多価アルコールと水の水溶液の濃度は、特に限定されず、ケイ酸ナトリウム等と混合しやすい濃度であればよい。例えば、多価アルコールと水の比は、1:9~9:1とすることができる。
【0022】
続いて、所定量のケイ酸ナトリウムを前記多価アルコール、水、又は、多価アルコールと水の水溶液の、いずれかの入った容器に混合する。前記多価アルコール、水、又は、多価アルコールと水の水溶液の、いずれかと、ケイ酸ナトリウムの配合量は特に限定されないが、例えばケイ酸ナトリウム100質量部に対して、前記多価アルコール、水、又は、多価アルコールと水の水溶液のいずれか、の配合量は、80~800質量部とすることができる。
【0023】
ここで所定量のアニオン性界面活性剤を混合することができる。アニオン性界面活性剤の配合量は特に限定されないが、例えばケイ酸ナトリウムの100質量部に対して、アニオン性界面活性剤の配合量は、1~100質量部とすることができる。
【0024】
さらに、ここで所定量の触媒を混合することができる。触媒の配合量は特に限定されないが、例えばケイ酸ナトリウム100質量部に対して、触媒の配合量は、1~500質量部とすることができる。
【0025】
前記混合された水溶液を完全にゲル化するまで静置し、湿潤ゲルを得る。ゾル溶液のゲル化温度は特に限定されないが、20~60℃が好ましい。ゲル化温度が20℃未満であると、シリカ粒子の成長が促進されず、ゲル化が十分に進行するまでに時間を要する。一方、ゲル化温度が60℃を超えると、シリカ粒子の成長が著しく促進されるため、粒子径が大きくなりやすい。
【0026】
1-2-2.乾燥工程
得られた湿潤ゲルを容器内のエタノールに浸漬し、撹拌しながら容器内のエタノールを繰り返し交換して、湿潤ゲル中の溶媒をエタノールに置換する。
続いて、湿潤ゲルを、シランカップリング剤を含むエタノール中に浸漬し、撹拌して湿潤ゲル表面の疎水化処理を行う。
その後、湿潤ゲルの乾燥が行われる。ここで乾燥方法としては公知の方法で乾燥することができ、特に限定されない。例えば、乾燥時にシリカエアロゲルが壊れ難いため、超臨界乾燥が好ましい。超臨界乾燥としては、例えば、湿潤ゲルを80℃、20MPaの二酸化炭素の超臨界流体中に浸漬させ、乾燥を行い、シリカエアロゲルを得る方法が挙げられる。
【0027】
1-2-3.湿潤ゲルの物性
1-2-3-1.全光線透過率測定
湿潤ゲルの可視光線に対する透明度は、最終的に得られるシリカエアロゲルの熱伝導率に影響を及ぼす。湿潤ゲルの透明度が高いと、湿潤ゲルは、より微細な細孔を有しており、乾燥後のシリカエアロゲルの熱伝導率も低くなる。
湿潤ゲルの透明度は、全光線透過率を測定し、全光線透過率を透明度とする。全光線透過率は、公知の方法で測定することができ、例えば、JIS K7361-1:1997に準拠して、紫外可視赤外分光光度計を用いて測定することができる。
【0028】
1-2-3-2.曇り度(Haze値)測定
湿潤ゲルの曇り度は、最終的に得られるシリカエアロゲルの熱伝導率に影響を及ぼす。湿潤ゲルの曇り度が低いと、湿潤ゲルは、より微細な細孔を有しており、シリカエアロゲルの熱伝導率も低くなる。湿潤ゲルの曇り度は、公知の方法で測定でき、例えば、全光線透過率測定を行い、全光線透過光量と散乱光量を測定し、散乱光量を全光線透過光量で除した値を曇り度とすることができる。全光線透過率の測定も、公知の方法で測定することができ、例えば、JIS K7361-1:1997に準拠して、紫外可視赤外分光光度計を用いて測定することができ、曇り度は、JIS K7136:2000に準拠して、算出することができる。
【0029】
1-2-3-3.目視観察
湿潤ゲルに固体析出があった場合には、乾燥工程において、析出した固体を起点として破損するおそれがある。シリカエアロゲルは、非常に脆いため、わずかな破損があっても全体が壊れるおそれがある。そのため目視観察によって固体析出がないことを確認する。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
(原料)
実施例及び比較例では、シリカエアロゲルの原料として、以下のものを用いた。
・ケイ酸ナトリウム水溶液:モル比3.0,ケイ酸ナトリウム濃度50質量%
・イオン交換水 :電気抵抗率1×1010Ω・cm以上
・多価アルコール1 :エチレングリコール(和光純薬工業社製)、重量平均分子量=62.07
・多価アルコール2 :ジエチレングリコール(和光純薬工業社製)、重量平均分子量=106.12
・多価アルコール3 :ポリエチレングリコール200(和光純薬工業社製)、重量平均分子量=200
・多価アルコール4 :ポリエチレングリコール600(和光純薬工業社製)、重量平均分子量=600
・多価アルコール5 :グリセリン(和光純薬工業株式会社)、重量平均分子量=92.09
・アルコール :メタノール(和光純薬工業社製)
・アニオン性界面活性剤1:ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸2ナトリウム、pH=8.0、固形分20%、HLB=30.2
・アニオン性界面活性剤2:アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、pH=8.0、固形分20%、HLB=27.3
・アニオン性界面活性剤3:ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、pH=8.0、固形分20%、HLB=31.9
・アニオン性界面活性剤4:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、pH=8.0、固形分20%、HLB=29.4
・アニオン性界面活性剤5:ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルナトリウム、pH=7.5、固形分20%、HLB=28.7
・触媒 :硫酸濃度、10質量%(和光純薬工業社製)
【0031】
(湿潤ポリマーの調製)
表1に示す配合に従い、40質量部のイオン交換水と40質量部の多価アルコール1を配合して多価アルコール水溶液を得た。次に多価アルコール水溶液80質量部に対し、20質量部のケイ酸ナトリウム水溶液、1.0質量部のアニオン性界面活性剤1、5.0質量部の硫酸を配合してゾル溶液を得た。この組成物を室温で10分放置することで湿潤ゲルを得た。
(乾燥工程)
得られた湿潤ゲルをエタノールに浸漬し、撹拌しながらエタノールを繰り返し交換し、溶媒置換を24時間行った。次に、ゲル表面を疎水化するため、ヘキサメチルジシラザンのエタノール溶液(濃度20質量%)中に浸漬し、撹拌しながら疎水化処理を24時間行った。その後、この湿潤ゲルを80℃、20MPaの二酸化炭素中に浸漬させ、超臨界乾燥を12時間行ってシリカエアロゲルを得た。
(実施例2-16及び比較例1-2の調製)
表1、表2及び表3に示す原料を配合した以外は、実施例1と同様にして乾燥ゲルを得た。
【0032】
<評価>
(湿潤ゲルの評価)
上記のようにして作製した実施例及び比較例の湿潤ゲルについて、下記に示す方法に従い評価した。
・全光線透過率の測定
紫外可視近赤外分光光度計 V-650(日本分光株式会社製)を用いて測定した。
評価基準 「◎」は「全光線透過率が85%以上」を、「○」は「全光線透過率75%以上85%未満」を、「△」は「全光線透過率が60%以上75%未満」を、「×」は「全光線透過率が60%未満」をそれぞれ示す。
・曇り度(Haze値)の測定
紫外可視近赤外分光光度計V-650(日本分光株式会社製)を用いて測定した。
評価基準 「◎」は「Haze値が5%以下」を、「○」は「Haze値が5%超10%以下」を、「△」は「Haze値が10%超20%以下」を、「×」は「Haze値が20%超」を、それぞれ示す。
・目視評価
固体析出の有無を目視で評価した。
評価基準 「○」は「固体析出がない」を、「×」は「固体析出がある」をそれぞれ示す。
【0033】
(乾燥ゲルの評価)
上記のようにして作製した実施例及び比較例の乾燥ゲルについて、下記に示す方法に従い評価した。
・密度の測定
JIS K6400に準じて、見掛け密度として常温下で測定した。
・熱伝導率の測定
熱伝導率測定装置HC-072(英弘精機株式会社製)を用いて測定した。
【0034】
(フレキシブルエアロゲルコンポジットの作製と熱伝導率評価)
また、下記には本発明によるシリカエアロゲルの製造方法の例として、シリカエアロゲルのゾル成分をポリオレフィン系連続気泡発泡体に充填し、ゲル化させ、フレキシブルエアロゲルコンポジットを作製した結果を示す。
表皮付きポリオレフィン系連続気泡発泡体(厚み2mm)を表皮層がついたまま、セパラブルフラスコに収納できる大きさに裁断し、平積みで5枚積層した上に、錘の目的でステンレスの板を乗せ、セパラブルフラスコ内を真空状態にした。
真空引き後、実施例1のゾル溶液を導入し、裁断した端面から発泡体内部へゾル溶液を導入した。実施例1と同様に湿潤ゲル化させ、乾燥させ、フレキシブルエアロゲルコンポジットを得た。
熱伝導率測定装置HC-072(英弘精機株式会社製)を用いて熱伝導率を測定したところ、0.016W/m・kであった。
【0035】
(評価結果)
実施例の評価結果から本発明によって得られたシリカエアロゲルの熱伝導率は非常に低い。また本発明によるフレキシブルエアロゲルコンポジットの熱伝導率も非常に低いことが明らかである。以上のことから本発明によって得られるシリカエアロゲル及びフレキシブルエアロゲルコンポジットは非常に優れた断熱材として使用できることが理解できる。
【0036】
【0037】
【0038】