(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/475 20060101AFI20220617BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20220617BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20220617BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
A61F13/475 200
A61F13/53 200
A61F13/533 100
A61F13/51
(21)【出願番号】P 2017252887
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 幾哉
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-219144(JP,A)
【文献】特開2015-016218(JP,A)
【文献】特開2006-034496(JP,A)
【文献】特開2008-125761(JP,A)
【文献】特開2014-147461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/475
A61F 13/53
A61F 13/533
A61F 13/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部両側部にそれぞれ外方に延出する後部フラップを有し、着用者の体液排出部を含む領域に配設された本体吸収体と、前記後部フラップに配設されたフラップ吸収体とを備えた
生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッドのいずれかの吸収性物品であって、
前記本体吸収体とフラップ吸収体とが連続する一体の吸収体によって構成され、前記フラップ吸収体の肌側にシート材が配設されるとともに、前記シート材には前記フラップ吸収体と重なる領域に表裏を貫通する多数の開孔が設けられ、前記フラップ吸収体と本体吸収体とに跨る領域の肌側面に、非肌側に窪ませた圧搾溝が、前記フラップ吸収体から前記本体吸収体に向けて後方に傾斜する方向に延びるとともに、吸収性物品の長手方向に間隔を空けて複数形成されている
とともに、前記圧搾溝は左右対で設けられ、左右の圧搾溝が吸収性物品の幅方向中央部に所定の離隔幅を有するように配置されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記圧搾溝は、前記フラップ吸収体から前記本体吸収体に向けた方向に対して連続的又は間欠的に延びている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記圧搾溝は、前記フラップ吸収体から前記本体吸収体に向けて徐々に溝幅が小さくなる平面形状で形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記圧搾溝は、前記フラップ吸収体から前記本体吸収体に向けて徐々に溝深さが深くなるように形成されている請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記開孔の平面形状は、円形からなるか、前記フラップ吸収体から前記本体吸収体に向けて後方に傾斜する方向に長い略楕円形からなる請求項1~4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記開孔の平面形状が、前記フラップ吸収体から前記本体吸収体に向けた方向に長い略楕円形からなり、前記開孔の長軸方向と前記圧搾溝の延びる方向とがほぼ一致している請求項1~5いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主には生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッド、トイレタリー等に使用される吸収性物品であって、詳しくは後部両側部にそれぞれ外方に延出する後部フラップを有し、この後部フラップにフラップ吸収体が配設された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上記吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在するとともに、肌側の両側部にそれぞれ肌側に向けて突出する左右一対の立体ギャザーを形成するギャザー不織布が長手方向に沿って配設されたものが知られている。
【0003】
就寝時などにおける使用に適した夜用の生理用ナプキンでは、下着に対する固定をより確実に図るとともに、臀部側からの後漏れを効果的に防止するため、ナプキンの長手方向中間両側部に設けた下着のクロッチ部分を折り返して使用するウイング状フラップの他に、着用者の臀部を覆うため、後部両側部にもそれぞれ外方に延出する後部フラップを設けたものが存在する。
【0004】
このような後部フラップを有する吸収性物品において、前記後部フラップにも吸収体を配置し、体液を吸収できるようにしたものが開発されている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【0005】
また、下記特許文献2においては、後部フラップに配置された吸収体の肌側を覆うシート材に、開孔又はスリットが設けられて通液可能になされた吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-119020号公報
【文献】特開2006-34495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、2に記載された吸収性物品では、後部フラップにフラップ吸収体が配設されているため、このフラップ吸収体に体液が吸収できるようになるが、フラップ吸収体が本体部の吸収体とは別体の吸収体として設けられているため、大量の体液がフラップ吸収体に吸収された場合、フラップ吸収体が容量オーバーとなって体液があふれ、漏れが生じるおそれがあった。
【0008】
また、フラップ吸収体が装着時における体圧などによる圧力を受けると、フラップ吸収体に吸収された体液が表面に逆戻りしたり、漏れが生じたりするおそれがあった。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、臀部側の吸収量を増加させ、かつ臀部側からの後漏れを防止した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、後部両側部にそれぞれ外方に延出する後部フラップを有し、着用者の体液排出部を含む領域に配設された本体吸収体と、前記後部フラップに配設されたフラップ吸収体とを備えた生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッドのいずれかの吸収性物品であって、
前記本体吸収体とフラップ吸収体とが連続する一体の吸収体によって構成され、前記フラップ吸収体の肌側にシート材が配設されるとともに、前記シート材には前記フラップ吸収体と重なる領域に表裏を貫通する多数の開孔が設けられ、前記フラップ吸収体と本体吸収体とに跨る領域の肌側面に、非肌側に窪ませた圧搾溝が、前記フラップ吸収体から前記本体吸収体に向けて後方に傾斜する方向に延びるとともに、吸収性物品の長手方向に間隔を空けて複数形成されているとともに、前記圧搾溝は左右対で設けられ、左右の圧搾溝が吸収性物品の幅方向中央部に所定の離隔幅を有するように配置されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明は、後部両側部にそれぞれ外方に延出する後部フラップを有する、いわゆる夜用の生理用ナプキンなどの使用に適した吸収性物品であって、吸収体として、着用者の体液排出部を含む領域に配設された本体吸収体と、前記後部フラップに配設されたフラップ吸収体とを備えている。
【0012】
本発明に係る吸収性物品では、前記本体吸収体とフラップ吸収体とが連続する一体の吸収体によって構成されているため、フラップ吸収体に吸収された体液が本体吸収体に移行しやすく、フラップ吸収体に吸収可能な体液の総量が増加でき、臀部側の吸収量が増加できる。
【0013】
一方、通常の夜用生理用ナプキンでは、肌面に対する密着性を高め、横漏れを防止するため、肌側の両側部にそれぞれ肌側に向けて突出する左右一対の立体ギャザーを形成するシート材(サイド不織布)が長手方向に沿って配設されているが、本発明に係る吸収性物品では、このシート材の前記フラップ吸収体と重なる領域に表裏を貫通する多数の開孔が設けられているため、前記立体ギャザーを越えて外側に流れた体液が、前記開孔を通ってフラップ吸収体に吸収でき、臀部側からの後漏れが防止できる。
【0014】
また、本発明に係る吸収性物品では、前記フラップ吸収体と本体吸収体とに跨る領域の肌側面に、非肌側に窪ませた圧搾溝が、所定の方向に延びるとともに、吸収性物品の長手方向に間隔を空けて複数形成されているため、前記開孔を通過した体液が前記圧搾溝に沿ってフラップ吸収体から本体吸収体に向けて液移行しやすくなり、フラップ吸収体に体液が溜まりにくく、臀部側の吸収量が増加できるとともに、臀部側からの後漏れが防止できるようになる。
【0015】
更に、前記圧搾溝が、前記フラップ吸収体から前記本体吸収体に向けて後方に傾斜して形成されているため、前記圧搾溝に沿って移行する体液を、本体吸収体の後方領域に液移行できるようになる。この後方領域は、体液排出部及びその近傍で吸収された体液が吸収体の内部を拡散する範囲の影響を受けにくいため、体液が移行しやすいとともに、本体吸収体の広い範囲を体液吸収用として活用できるようになる。加えて、前記圧搾溝は左右対で設けられ、左右の圧搾溝が吸収性物品の幅方向中央部に所定の離隔幅を有するように配置されていることにより、圧搾溝を伝わって流れた体液が中央部に集中するのを避けることができるようになる。
【0016】
請求項2に係る本発明として、前記圧搾溝は、前記フラップ吸収体から前記本体吸収体に向けた方向に対して連続的又は間欠的に延びている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項2記載の発明では、フラップ吸収体から本体吸収体に向けて液移行しやすくする観点から前記圧搾溝を連続的に形成してもよいし、装着時に吸収性物品の後部を臀部の形状に沿ってフィットしやすくする観点から前記圧搾溝を間欠的に形成してもよい。
【0018】
請求項3に係る本発明として、前記圧搾溝は、前記フラップ吸収体から前記本体吸収体に向けて徐々に溝幅が小さくなる平面形状で形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項3記載の発明では、前記圧搾溝を、前記フラップ吸収体から前記本体吸収体に向けて徐々に溝幅が小さくなる平面形状で形成することにより、フラップ吸収体において前記開孔を通過した体液が圧搾溝の溝内に流入する機会が増え、圧搾溝の表面を流れて本体吸収体に液移行しやすくなるとともに、圧搾溝の表面を流れる体液が、本体吸収体に向かうに従って、側壁に接触しやすくなるため、圧搾溝の側壁から吸収体に効率よく吸収できるようになる。
【0020】
請求項4に係る本発明として、前記圧搾溝は、前記フラップ吸収体から前記本体吸収体に向けて徐々に溝深さが深くなるように形成されている請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項4記載の発明では、前記圧搾溝を、前記フラップ吸収体から前記本体吸収体に向けて徐々に溝深さが深くなるように形成することにより、前記フラップ吸収体から前記本体吸収体に向けて吸収体の密度が徐々に高くなる密度勾配が設けられるため、毛管作用によってフラップ吸収体から本体吸収体に向けて液移行しやすくなる。
【0022】
請求項5に係る本発明として、前記開孔の平面形状は、円形からなるか、前記フラップ吸収体から前記本体吸収体に向けて後方に傾斜する方向に長い略楕円形からなる請求項1~4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0023】
上記請求項5記載の発明では、前記開孔の平面形状として、円形又は楕円形としている。略楕円形とした場合には、体液が開孔を通過する際に楕円形の長軸方向に沿って拡散しやすいため、楕円形の長軸方向をフラップ吸収体から本体吸収体に向けて後方に傾斜する方向とするのが望ましい。
【0024】
請求項6に係る本発明として、前記開孔の平面形状が、前記フラップ吸収体から前記本体吸収体に向けた方向に長い略楕円形からなり、前記開孔の長軸方向と前記圧搾溝の延びる方向とがほぼ一致している請求項1~5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0025】
上記請求項6記載の発明では、前記開孔の平面形状を楕円形とした場合において、この楕円形の長軸方向と圧搾溝の延びる方向とをほぼ一致させることにより、体液が開孔を通過する際に楕円形の長軸方向に沿った体液の流れと、圧搾溝に沿った体液の流れとがほぼ一致するため、圧搾溝に沿って本体吸収体に向けた体液の流れがより一層生じやすくなる。
【発明の効果】
【0026】
以上詳説のとおり本発明によれば、臀部側の吸収量を増加させ、かつ臀部側からの後漏れが防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
【
図4】体液の移行状態を示す、生理用ナプキン1の後部の平面図である。
【
図5】体液の移行状態を示す、生理用ナプキン1の後部の断面図である。
【
図6】圧搾溝12を間欠的とした場合の平面パターンである。
【
図7】変形例に係る生理用ナプキン1の後部の平面図である。
【
図8】変形例に係る生理用ナプキン1の断面図(
図1のVIII-VIII線矢視図)である。
【
図9】変形例に係る生理用ナプキン1の後部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0029】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、
図1~
図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液ともいう。)を速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部Hを含むナプキン長手方向の所定の区間内において肌側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成する、肌当接面側の両側部に長手方向のほぼ全長に亘って設けられたサイド不織布7、7とを備え、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、ほぼ体液排出部Hに相当する吸収体側部位置に左右一対のウイング状フラップW、Wが形成されるとともに、これより後部側(臀部側)の後部両側部にそれぞれ外方に延出する後部フラップW
B、W
Bが形成されたものである。なお、図示例では、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体4をクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5で囲繞しているが、この被包シート5は設けなくてもよい。また、図示しないが、前記透液性表面シート3の非肌側に隣接して、前記透液性表面シート3とほぼ同形状の親水性の不織布などからなるセカンドシートを配設してもよい。
【0030】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非肌側面(外面)にはナプキン長手方向に沿って1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0031】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0032】
〔吸収体〕
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。前記吸収体4の目付は、300~750g/m2、好ましくは300~400g/m2とするのがよい。
【0033】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0034】
前記吸収体4は、着用者の体液排出部Hを含む領域に配設された本体吸収体10と、前記後部フラップWBに配設されたフラップ吸収体11とを備えている。前記本体吸収体10は、前記吸収体4のうち、体液排出部Hにおける吸収体幅で吸収体4の前端から後端に亘ってほぼ等幅に形成された部分である。一方、前記フラップ吸収体11は、前記吸収体4のうち、生理用ナプキン1の後部両側部において、前記本体吸収体10より側方に延出する部分である。
【0035】
本生理用ナプキン1では、
図1及び
図3に示されるように、前記本体吸収体10とフラップ吸収体11とが連続する一体の吸収体によって構成されている。つまり、前記本体吸収体10とフラップ吸収体11とは分離していない一つの吸収体によって構成され、前記フラップ吸収体11の幅方向内側が生理用ナプキン1の長手方向の全長に亘って前記本体吸収体10と接続している。これらの境界は必ずしも明確である必要はないが、ほぼ体液排出部Hにおける吸収体幅で生理用ナプキン1の長手方向に延びる部分を本体吸収体10と定義し、後部両側部において両側に延出する部分をフラップ吸収体11と定義することができる。
【0036】
図1及び
図3に示されるように、前記フラップ吸収体11と本体吸収体10とに跨る領域の肌側面に、非肌側に窪ませた圧搾溝12、12…が、前記フラップ吸収体11から本体吸収体10に向けて後方に傾斜する方向に延びるとともに、生理用ナプキン1の長手方向に間隔を空けて複数形成されている。前記圧搾溝12は、フラップ吸収体11に吸収された体液を、該圧搾溝12に沿って本体吸収体10に移行するためのものである。
【0037】
前記圧搾溝12は、吸収体4の肌側面からの圧搾により吸収体4のみを窪ませて形成してもよいし、
図3に示されるように、被包シート5によって囲繞された吸収体4の前記被包シート5の肌側面からの圧搾により、被包シート5及び吸収体4を一体的に窪ませて形成してもよい。少なくとも、前記透液性表面シート3及びギャザー不織布7が前記圧搾溝12の空間を保持しながら圧搾溝12を覆うように設けられていればよい。
【0038】
前記圧搾溝12は左右対で設けられ、左右の圧搾溝12、12が生理用ナプキン1の幅方向中央部に所定の離隔幅Aを有するように配置されている。前記離隔幅Aとしては、これらの圧搾溝12を伝って流れた体液が中央部に集中するのを避けるため、35~60mmとするのがよい。
【0039】
前記圧搾溝12は、左右にそれぞれ生理用ナプキン1の長手方向に間隔を空けて複数本ずつ設けられている。ナプキン長手方向に配置する数としては、2~5本が好ましく、図示例では3本設けられている。ナプキン長手方向に隣り合う圧搾溝12、12のナプキン長手方向の間隔Bは、10~30mmとするのがよい。この間隔Bは、各部で均等でもよいし、フラップ吸収体11に吸収される体液の量が前側の方が後側より多いことを考慮して、相対的に前側が小さく、後側が大きくなるようにしてもよい。
【0040】
前記圧搾溝12は、
図1に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向線Lに対して中心線が所定の角度αで傾斜して形成されている。前記角度αとしては、15~60°とするのが好ましい。ナプキン長手方向に配置された複数の圧搾溝12、12…について前記角度αをほぼ同一に形成することにより複数の圧搾溝12、12…が平行に配置されるようにするのが好ましいが、フラップ吸収体11に吸収された体液を本体吸収体10の後方に液移行させることにより、本体吸収体10の後方部分を有効利用するため、前側寄りに配置された圧搾溝12の方が角度αが小さくなるようにしてもよい。
【0041】
前記圧搾溝12は、
図1に示される例では、溝幅が全長に亘ってほぼ等幅の連続する直線によって形成されているが、これに限るものではない。圧搾溝12の平面形状の変形例については後段で詳述する。
【0042】
前記圧搾溝12は、吸収体4の幅方向及び長手方向の中間部分、すなわち吸収体の外縁に達しない領域に形成されている。前記圧搾溝12のナプキン幅方向外側の端縁12aは、フラップ吸収体11に位置するとともに、フラップ吸収体11の外方側の側縁より幅方向内側(ナプキン長手方向中心線CL側)に位置している。
【0043】
前記圧搾溝12のナプキン幅方向外側の端縁と、フラップ吸収体11の側縁との最小離隔距離Cは、圧搾溝12に沿って拡散した体液がフラップ吸収体11の側縁から漏れるのを防止するため、5mm以上、好ましくは10~20mmとするのがよい。
図1~
図3に示されるように、肌側に突出する左右一対の立体ギャザーBS、BSが形成される生理用ナプキン1において、前記圧搾溝12のナプキン幅方向外側の端縁12aは、生理用ナプキン1の前後端部で前記立体ギャザーBSを形成するサイド不織布7が折り畳まれた状態で吸収体4側に接着された部分7aより、ナプキン幅方向外側に位置するのが好ましい。後段で詳述するように、この部分のサイド不織布7に通液用の開孔13が施されるため、この開孔13を通過した体液が圧搾溝12の溝内に入り込んで圧搾溝12の表面を流れやすくなる。
【0044】
一方、圧搾溝12のナプキン幅方向内側の端縁12bは、本体吸収体10に位置するとともに、ナプキン長手方向中心線CLに達しない領域に位置している。より具体的には、肌側に突出する左右一対の立体ギャザーBS、BSが形成される生理用ナプキン1において、前記圧搾溝12のナプキン幅方向内側の端縁12bは、生理用ナプキン1の前後端部で前記立体ギャザーBSを形成するサイド不織布7が折り畳まれた状態で吸収体4側に接着された部分7aより、ナプキン幅方向内側に位置するのが好ましい。
【0045】
〔サイド不織布〕
前記透液性表面シート3の幅寸法は、
図2の横断面図に示されるように、本体吸収体10の幅寸法よりも若干長めとされ、体液排出部Hを含むナプキン長手方向の所定の区間内において本体吸収体10を覆うだけに止まるとともに、前記フラップ吸収体11が配設された後部区間において前記フラップ吸収体11の内側を若干覆うだけに止まり、それより外方側は前記透液性表面シート3とは別のサイド不織布7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイド不織布7が配設されている。
【0046】
かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13~23g/m2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0047】
前記サイド不織布7は、
図2及び
図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置から不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、所定の位置に所定のフラップ部が形成されている。このフラップ部は、ほぼ体液排出部Hに対応する部分の両側部に左右一対のウイング状フラップW、Wを形成するとともに、これより後部側(臀部側)の後部両側部に後部フラップW
B、W
Bを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよび後部フラップW
B、W
Bの外面側にはそれぞれ粘着剤層(図示せず)が備えられ、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを基端部の折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するとともに、前記後部フラップW
Bをショーツの内面に止着するようになっている。
【0048】
一方、前記サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1又は複数本の、図示例では3本の糸状弾性伸縮部材9、9…が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では
図3に示されるように、外側に1回折り返して積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、少なくとも体液排出部Hを含むナプキン長手方向の所定の区間内において、
図2に示されるように、外側に傾斜しながら肌側に起立する直線状の立体ギャザーBS、BSが左右一対で形成されている。
【0049】
前記サイド不織布7は、前記フラップ吸収体11が配設された後部両側部において、前記フラップ吸収体11の肌側を覆っている。前記立体ギャザーBSを形成する部分又はナプキン長手方向の前後端部で前記立体ギャザーBSを形成する部分が折り返して積層された状態で吸収体4側に接着された部分7aは、前記本体吸収体10とフラップ吸収体11との境界部に、これら本体吸収体10及びフラップ吸収体11に跨るように設けられ、これより外方側には、サイド不織布7の一重シート部分が延在している。
【0050】
前記サイド不織布7には、前記フラップ吸収体11と重なる領域に、表裏を貫通する多数の開孔13、13…が形成されている。前記開孔13は、前記フラップ吸収体11と厚み方向に重なる領域のみに形成され、それ以外の領域には形成されていない。また、前記開孔13は、前記立体ギャザーBSを形成するサイド不織布7が折り返して積層された状態で吸収体4側に接着された部分7aより幅方向外側に配置されたサイド不織布7の一重シート部分に形成されている。
【0051】
前記開孔13は、生理用ナプキン1の長手方向及び幅方向に沿って正格子状又は千鳥格子状に多数配置するのが好ましい。前記開孔13が設けられた領域の開孔率は、通液性を良好にするとともに、開孔13を通じた逆戻りを防止するため、10~30%であるのが好ましい。
【0052】
前記開孔13の平面形状としては、
図1に示される例は円形であるが、楕円形や多角形など、通液性が確保されていれば任意の形状で形成できる。1つ当たりの大きさ(面積)は、通液性を良好にするため、0.5~25mm
2であるのがよい。
【0053】
次に、以上の構成からなる本生理用ナプキン1の作用効果について説明する。本生理用ナプキン1では、上述の通り、前記本体吸収体10とフラップ吸収体11とが連続する一体の吸収体4によって構成されているため、フラップ吸収体11に吸収された体液が本体吸収体10に移行しやすく、フラップ吸収体11が容量オーバーになることがなく、臀部側の吸収量が増加できる。すなわち、フラップ吸収体11に吸収された体液は、吸収体の内部を拡散することによって、これに連続する本体吸収体10に素早く移行でき、フラップ吸収体11に体液が溜まりにくい構造であるため、フラップ吸収体11の吸収能力が向上できる。
【0054】
また、本生理用ナプキン1では、上述の通り、フラップ吸収体11の肌側を覆うサイド不織布7に多数の開孔13、13…が形成されているため、
図4及び
図5に示されるように、立体ギャザーBSを越えて外側に流れた体液が、前記開孔13を通過してフラップ吸収体11に吸収され、臀部側からの後漏れが防止できる。
図4に示されるように、一度に大量の体液が排出された場合などにおいて、体液が肌面を伝うなどして、立体ギャザーBS又はこの立体ギャザーBSを形成するサイド不織布7が折り返して積層された状態で吸収体4側に接着された部分7aを越えて外側に流れる場合があるが、この場合でも、前記開孔13を通過して体液がフラップ吸収体11に吸収されるため、生理用ナプキン1の外側に漏れ出る可能性が大幅に低減できる。
【0055】
また、本生理用ナプキン1では、上述の通り、前記フラップ吸収体11と本体吸収体10とに跨る領域の肌側面に、非肌側に窪ませた圧搾溝12が、所定の方向に延びるとともに、生理用ナプキン1の長手方向に間隔を空けて複数形成されているため、前記開孔13を通過した体液が前記圧搾溝12に沿ってフラップ吸収体11から本体吸収体11に向けて液移行しやすくなり、フラップ吸収体11に体液が溜まりにくいため、臀部側の吸収量が増加できるとともに、臀部側からの後漏れが防止できるようになる。
【0056】
更に、前記圧搾溝12が、前記フラップ吸収体11から本体吸収体10に向けて後方に傾斜して形成されているため、前記圧搾溝12に沿って移行する体液が、体液排出部H及びその近傍で吸収された体液の拡散領域の影響を受けにくい本体吸収体11の後方領域に向けて液移行するようになる。本生理用ナプキン1のような夜用の生理用ナプキンにおいては、装着時における着用者の姿勢として臥位が多いため、体液排出部H及びその近傍で吸収された体液が重力によって後方に拡散しやすい傾向にある。したがって、この領域の吸収容量を確保しておかなければならないため、フラップ吸収体11から本体吸収体10に移行させるのは、体液排出部Hからの拡散領域にできる限り影響が少ない本体吸収体10の後方領域とするのが、本体吸収体の広い範囲を体液吸収用として有効利用する点、及び体液の漏れを防止する点から望ましい。
【0057】
以下、上記生理用ナプキン1の変形例について説明する。前記圧搾溝12は、
図1では連続して圧搾した連続的な凹溝によって形成されているが、
図6に示されるように、圧搾部12aと非圧搾部12bとを交互に配置した間欠的に形成してもよい。前記圧搾溝12を連続して形成した場合には、フラップ吸収体11から本体吸収体10に向けての液移行がしやすくなる。一方、間欠的に形成した場合には、非圧搾部12bの存在により吸収体が変形しやすくなり、装着時に生理用ナプキン1の後部を臀部の形状に沿ってフィットしやすくなる。なお、間欠的とした場合にも、非圧搾部12bは、これに隣接する圧搾部12aの圧搾の影響を受けて窪むため、全体的な圧搾溝12に沿った体液の流れは確保できる。間欠的に形成するパターンとしては、
図6に示されるように、(A)点線、(B)1列のドット、(C)複数列のドットなどを例示することができる。
【0058】
図7に示されるように、前記圧搾溝12は、前記フラップ吸収体11から本体吸収体10に向けて徐々に溝幅が小さくなる平面形状で形成してもよい。すなわち、フラップ吸収体11における溝幅が相対的に大きく形成され、幅方向内側に向けて徐々に溝幅が小さくなっている。前記圧搾溝12の平面形状としては、三角形又は台形とすることができる。これにより、フラップ吸収体11における溝幅が相対的に大きいため、前記開孔13を通過した体液が圧搾溝12の溝内に流入する割合が増え、圧搾溝12の表面を流れて本体吸収体10に液移行されやすくなる。また、本体吸収体10に向かうに従って圧搾溝12の溝幅が小さく形成されているため、この圧搾溝12の溝内を流れる体液が側壁に接触する機会が増加し、側壁から吸収体4内に効率よく吸収されるようになる。更に、前記圧搾溝12を加工する際、同じ高さのエンボス凸部によって同じ力で圧搾した場合、エンボス凸部先端の面積が小さな内側部分の方が、エンボス凸部先端の面積が大きな外側部分より圧力(単位面積当たりの力)が大きくなる。このため、圧搾溝12の溝幅が小さな内側部分では、吸収体4を大きな圧力で圧搾でき、吸収体4の復元力によるエンボス加工後の戻りが少なく、エンボス加工による溝深さを深く保持することができるのに対して、圧搾溝12の溝幅が大きな外側部分では、圧力が小さいため、エンボス加工後の吸収体4の復元力によって溝深さが若干浅くなる。これによって、圧搾溝12底部の吸収体の密度が、溝幅が小さな内側部分が相対的に密で、溝幅が大きな外側部分が相対的に疎となる密度勾配が設けられるため、この吸収体内部を拡散する体液の毛管作用により、密度が相対的に密な内側に拡散しやすくなるという効果も奏されるようになる。
【0059】
図8に示されるように、前記圧搾溝12は、フラップ吸収体11から本体吸収体10に向けて徐々に溝深さが深くなるように形成してもよい。つまり、前記圧搾溝12を加工する際、エンボス凸部の高さが、本体吸収体10側の方がフラップ吸収体11側より高く形成されたものを用いてもよい。これによって、フラップ吸収体11から本体吸収体10に向けて吸収体4の密度が徐々に高くなる密度勾配が設けられ、毛管作用によってフラップ吸収体11から本体吸収体10に向けて液移行しやすくなる。溝深さの変化の割合としては、本体吸収体10側の最大溝深さに対して、フラップ吸収体11側の溝深さは、10%~80%、好ましくは20%~50%とするのがよい。
【0060】
図9に示されるように、前記開孔13の平面形状は、フラップ吸収体11から本体吸収体10に向けて後方に傾斜する方向に長い略楕円形としてもよい。すなわち、略楕円形の長軸方向が、フラップ吸収体11から本体吸収体10に向けて後方に傾斜する方向に延びている。体液が開孔13を通過する際、体液が開孔13の形状に変形しながら通液するため、楕円形の長軸方向に沿って拡散しやすくなる。この開孔13の長軸方向は、前記圧搾溝12が延びる方向と同様に、フラップ吸収体11から本体吸収体10に向けて後方に傾斜する方向であるため、この圧搾溝12の延びる方向に更に液拡散が生じやすくなる。
【0061】
このとき、
図9に示されるように、前記開孔13の長軸方向と圧搾溝12の延びる方向とがほぼ一致するように形成するのが望ましい。これにより、開孔13によって楕円形の長軸方向に拡散しやすくなった体液を、前記圧搾溝12の延びる方向に更に拡散しやすくなる。
【0062】
〔他の形態例〕
上記形態例では、フラップ吸収体11の肌側にサイド不織布7が配設されていたが、前記サイド不織布7を配設せずに、透液性表面シート3を生理用ナプキン1の外縁まで延在させ、前記透液性表面シート3の所定の領域に前記開孔13を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…被包シート、7…サイド不織布、10…本体吸収体、11…フラップ吸収体、12…圧搾溝、13…開孔