(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】ガス除害システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/68 20060101AFI20220617BHJP
B01D 53/38 20060101ALI20220617BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20220617BHJP
B01D 53/76 20060101ALI20220617BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
B01D53/68 220
B01D53/38 ZAB
B01D53/78
B01D53/76
B01D53/68 200
B01D53/14 210
(21)【出願番号】P 2018040431
(22)【出願日】2018-03-07
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中森 理
(72)【発明者】
【氏名】大橋 伸一
(72)【発明者】
【氏名】梅本 昭吾
(72)【発明者】
【氏名】横山 徹
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-076750(JP,A)
【文献】特開平11-123313(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0334736(US,A1)
【文献】特表2016-530096(JP,A)
【文献】特開2004-261777(JP,A)
【文献】国際公開第2008/096466(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34- 53/73
B01D 53/74- 53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01D 53/14- 53/18
C02F 1/02- 1/18
B01B 1/00- 1/08
B01D 1/00- 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理ガスを処理する除害システムであって、
前記被処理ガスを洗浄水により洗浄する洗浄室を少なくとも備える除害装置と、
キャリアガスが供給されて前記キャリアガスと被処理水とを気液接触させ、前記キャリアガスを加湿して排出する加湿塔と、
前記加湿されたキャリアガスを冷却して水分の少なくとも一部を凝縮させることにより、除湿されたキャリアガスを生成して排出する除湿塔と、
前記被処理水を加温しつつ前記加湿塔に対して前記被処理水を循環させる第1の循環経路と、
を有し、
前記除害装置からの洗浄排水が前記被処理水として前記加湿塔に供給される、除害システム。
【請求項2】
前記洗浄排水は前記第1の循環経路を介して前記加湿塔に供給され、前記加湿塔から流出する水の少なくとも一部を、前記洗浄排水に含まれる成分が濃縮された濃縮水として排出する、請求項1に記載の除害システム。
【請求項3】
冷却水を冷却しつつ前記除湿塔に対して循環させる第2の循環経路を備え、
前記除湿塔において前記加湿されたキャリアガスと前記冷却水とを気液接触させて前記加湿されたキャリアガスを冷却する、請求項1または2に記載の除害システム。
【請求項4】
前記除害装置において、前記被処理ガスの酸化分解を行なう反応室が前記洗浄室の前段に設けられ、酸化分解された被処理ガスが前記洗浄室に供給される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の除害システム。
【請求項5】
前記洗浄排水に含まれる成分を除去する処理が行われた処理水として、前記除湿塔から水が排出される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の除害システム。
【請求項6】
前記処理水が、前記洗浄水の少なくとも一部として前記洗浄室に供給される、請求項5に記載の除害システム。
【請求項7】
前記洗浄室から排出される処理ガスの少なくとも一部が、前記加湿塔に供給される前記キャリアガスの少なくとも一部として供給される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の除害システム。
【請求項8】
前記処理ガスを前記加湿塔に供給する配管を備え、
前記処理ガスの発生量と前記キャリアガスの供給量との差に基づき、前記処理ガスの一部が前記配管から外部に排出され、あるいは前記配管に対して外部から前記キャリアガスが補充される、請求項7に記載の除害システム。
【請求項9】
前記除湿塔から排出された前記キャリアガスを前記加湿塔に送る配管を備え、前記加湿塔と前記除湿塔との間で前記キャリアガスが循環する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の除害システム。
【請求項10】
前記第1の循環経路内に、前記被処理水をろ過するフィルタを備える、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の除害システム。
【請求項11】
被処理ガスを処理する除害方法であって、
前記被処理ガスを洗浄水により洗浄して洗浄排水を排出する工程と、
キャリアガスが供給されて前記キャリアガスと被処理水とを気液接触させ、前記キャリアガスを加湿して排出する加湿塔と、前記加湿されたキャリアガスを冷却して水分の少なくとも一部を凝縮させることにより、除湿されたキャリアガスを生成して排出する除湿塔と、前記被処理水を加温しつつ前記加湿塔に対して前記被処理水を循環させる第1の循環経路と、を有する蒸発装置の前記加湿塔に前記洗浄排水を前記被処理水として供給する工程と、
を有し、
前記洗浄排水に含まれる成分を除去する処理が行われた処理水として、前記除湿塔から水を排出する、除害方法。
【請求項12】
前記除湿塔から排出された水を前記洗浄水の一部として使用する、請求項11に記載の除害方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理ガス中に含まれる有害成分を除去するガス除害システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程などの各種のプロセスからは、有害成分を含むガス、例えばフッ素化合物を含むガスやケイ素化合物を含むガスが発生する。これらのガスは、通常、除害装置によって無害化したのちに処理ガスとして外部に排出されることが多い。除害装置は、例えば、燃焼や触媒を用いた熱分解、あるいはマイクロ波プラズマによる処理を被処理ガスに対して行なう反応部と、反応部で処理されたガスが供給される湿式スクラバー(水スクラバー)とから構成されている。有害成分を含む被処理ガスは反応部において酸化分解され、酸化分解後の無機成分は湿式スクラバーなどで水中にトラップされ、その結果、無害化されたガスが処理ガスとして系外に排出される。被処理ガスに含まれる有害成分が水に溶けやすい物質である場合には、反応部を設けることなく、湿式スクラバーのみで除害装置が構成される場合もある。
【0003】
除害装置に設けられる湿式スクラバーは、有害成分や酸化分解によって生じた無機成分を確実にトラップするために多量の水を使用するので、取水量や排水量の増加を招く。トラップ用の水すなわち洗浄水を湿式スクラバー内で循環使用することもあるが、循環使用した場合には洗浄水には、有害成分、あるいは他の無機成分が含まれることとなり、洗浄水における有害成分の濃度によっては有害成分の再揮散が発生するおそれがある。水の使用量を減らすために洗浄水の循環割合を大きくした場合には、それに応じて再揮散の可能性も高くなる。したがって、再揮散の恐れなく、除害装置に供される洗浄水の量を削減することが望まれている。
【0004】
また、除害装置の湿式スクラバーからの排水には有害成分が含まれることがあるが、除害装置からの有害成分を含む排水の処理方法として、特許文献1は、電気式脱塩装置を構成するイオン交換樹脂層に排水を通過させることを開示している。特許文献2は、フッ素化合物を含むガスを除害処理したときに生ずる排水を電気透析工程により処理することを開示している。特許文献3は、除害装置からの無機酸を含む排水を活性炭と弱塩基性アニオン交換樹脂とによって処理することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2006-515536号公報
【文献】特開2004-174439号公報
【文献】特開2002-301332号公報
【文献】特表2015-527930号公報
【文献】特表2016-530096号公報
【文献】米国特許第9120033号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0129410号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
湿式スクラバーを備える除害装置では、上述したように取水量や排水量の増加を招く。
【0007】
本発明の目的は、排水の排出量を削減しつつ、被処理ガス中の有害成分の除去を確実に行なうことができるガス除害システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
排水を減容する方法としては、排水を加熱して水だけを気化させる蒸発法が知られているが、沸点近くまで排水を加熱する必要があって、エネルギー消費量が大きい。また減圧蒸留などの方法を用いる場合には、排水を沸点近くまで加熱する必要はないが、装置の一部を耐圧仕様にする必要があり装置が高価となる。そこで本発明者らは、比較的温和な条件で水の蒸発を達成するキャリアガス式蒸発装置に着目し、本発明を完成させた。キャリアガス式蒸発装置とは、加湿塔において比較的温度の高い条件で被処理水とキャリアガスとを気液接触させて被処理水中の水分を水蒸気としてキャリアガスに移行させてキャリアガスを加湿し、次に、水蒸気を含むキャリアガスを除湿塔において冷却し、キャリアガス中の水蒸気を凝縮させるものである。明らかに、被処理水中の水分が除湿塔における凝縮水に移行したので、被処理水としては減容が達成されたことになる。このようなキャリア式ガス蒸発装置の詳細な構成は、例えば、特許文献4あるいは特許文献5に記載されている。気液接触により気体を加湿する際に気液接触の効率を高めるものとして、特許文献6は、バブリングカラムを多段に設けることを開示している。また気液接触により気体を冷却し気体中の水分を凝縮させる際に気液接触の効率を高めるものとして、特許文献7は、バブリングカラムを多段に設けることを開示している。
【0009】
したがって本発明のガス除害システムは、被処理ガスを処理する除害システムであって、被処理ガスを洗浄水により洗浄する洗浄室を少なくとも備える除害装置と、キャリアガスが供給されてキャリアガスと被処理水とを気液接触させ、キャリアガスを加湿して排出する加湿塔と、加湿されたキャリアガスを冷却して水分の少なくとも一部を凝縮させることにより、除湿されたキャリアガスを生成して排出する除湿塔と、被処理水を加温しつつ加湿塔に対して被処理水を循環させる第1の循環経路と、を有し、除害装置からの洗浄排水が被処理水として加湿塔に供給される。
【0010】
本発明のガス除害システムでは、排出される濃縮水は、除害装置の洗浄室から送られてくる洗浄排水に比べて、洗浄排水に含まれる成分の濃度は高いが排水量としては小さくなっている。除湿塔において凝縮した凝縮水を除害装置における洗浄水として使用することが可能であり、それにより、外部から供給される洗浄水の量すなわち取水量も低減することができる。
【0011】
本発明のガス除害方法は、被処理ガスを処理するガス除害方法であって、被処理ガスを洗浄水により洗浄して洗浄排水を排出する工程と、キャリアガスが供給されてキャリアガスと被処理水とを気液接触させ、キャリアガスを加湿して排出する加湿塔と、加湿されたキャリアガスを冷却して水分の少なくとも一部を凝縮させることにより、除湿されたキャリアガスを生成して排出する除湿塔と、被処理水を加温しつつ加湿塔に対して被処理水を循環させる第1の循環経路と、を有する蒸発装置の加湿塔に洗浄排水を被処理水として供給する工程と、を有し、洗浄排水に含まれる成分を除去する処理が行われた処理水として、除湿塔から水を排出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、除害装置からの排水の排出量を削減しつつ、被処理ガス中の有害成分の除去を確実に行なうことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の一形態のガス除害システムの構成を示す図である。
【
図2】別の実施形態のガス除害システムの構成を示す図である。
【
図3】さらに別の実施形態のガス除害システムの構成を示す図である。
【
図4】さらに別の実施形態のガス除害システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の一形態のガス除害システムを示している。このガス除害システムは、半導体製造工程などで発生して有害成分を含むガスを被処理ガスとして、被処理ガスから有害成分を除去して処理ガスとして排出するものである。図において、実線で描かれた配管は液体のための配管を示し、破線で描かれた配管は気体のための配管を示している。
【0016】
図1に示すガス除害システムは、大別すると、除害装置10と加湿塔20と除湿塔30とによって構成されている。加湿塔20と除湿塔30とはキャリアガス式蒸発装置を構成するものである。除害装置10は、被処理ガスが供給されて被処理ガスの酸化分解を行なう反応室11と、湿式スクラバーとして機能する洗浄室12と、を備え、両者が隔壁13によって隔てられた構造を有する。隔壁13には、反応室11内で酸化分解された被処理ガスを洗浄室12に送るために、貫通孔14が形成されている。反応室11には、被処理ガスを反応室11に供給するための配管51が接続している。ここでは、燃焼によって被処理ガス中の有害成分を酸化分解させるので、配管51には空気も供給されて被処理ガスと混合されるようになっている。もっとも被処理ガスの酸化分解は、燃焼以外の手段によって行なわれてもよい。例えば、触媒などを用いる熱分解によって酸化分解を行なってもよいし、反応室11内にマイクロ波プラズマを生起させてプラズマにより被処理ガスの酸化分解を行なってもよい。被処理ガスにおける酸素分圧によっては、配管51において空気を被処理ガスに混入させなくてもよい。
【0017】
洗浄室12には、酸化分解後の被処理ガスに対して洗浄水を噴霧する噴霧器15が設けられている。被処理ガスは、噴霧器15から噴霧される洗浄水によって洗浄(スクラビング)され、処理ガスとして洗浄室12の上部から配管52を介して外部に排出される。洗浄水は外部から供給されるものであり、洗浄水の供給のために洗浄水配管17が設けられて噴霧器15に接続している。被処理ガス中の有害成分の酸化分解により生成する成分(分解成分)は、洗浄水によってトラップされる。洗浄室12の下部には、分解成分がトラップされた水を一時的に貯える貯水部16が形成されている。洗浄室12には、気液接触を促進するための充填物を設置してもよい。貯水部16は、隔壁13の下端と除害装置10の底面との間の隙間を介して反応室11にも広がっており、燃焼で生じた粉塵類が貯水部16に落下するようにもなっている。貯水部16には、トラップされた分解成分を含む洗浄排水をオーバーフローで排出する配管18が接続されている。
【0018】
加湿塔20は、キャリアガスが供給されてキャリアガスを被処理水とを気液接触させ、キャリアガスを加湿するものである。キャリアガスとしては、例えば空気や窒素などが用いられる。加湿されたキャリアガスは、加湿塔20の上部に接続した配管53を介して加湿塔20から排出される。加湿塔20には、気液接触のために、キャリアガスに対して被処理水を噴霧する噴霧器26が設けられている。加湿塔20の内部には、気液接触を促進するための充填物を設置してもよい。また加湿塔20の内部は、特許文献6に開示されているような、バブリングカラムを必要に応じて多段に設けたような構造であっても構わない。加湿塔20の下部には被処理水を一時的に貯える貯水部21が形成され、さらに、被処理水を排出する配管22が接続している。配管22は、被処理水を加湿塔20に循環させるための循環配管23と、後述する濃縮水として被処理水を排出する配管24とに分岐している。配管24は、加湿塔20の貯水部21から被処理水を直接排出するように接続されていてもよい。循環配管23には被処理水を加熱するための熱交換器25が設けられており、循環配管23の先端は上述した噴霧器26に接続している。配管22、循環配管23及び熱交換器25によって、被処理水を加温しつつ加湿塔20に対して被処理水を循環させる第1の循環経路が構成されている。除害装置18から排出される洗浄排水の配管18は循環配管23に接続しており、洗浄排水が被処理水に合流して被処理水として加湿塔20を循環するようになっている。
【0019】
除湿塔30は、配管53を介して加湿塔20から加湿されたキャリアガスが供給され、このキャリアガスを冷却水と気液接触させることによってキャリアガス中の水分の一部を凝縮させるものである。水分の一部が凝縮されて除去されたキャリアガスは、除湿されたキャリアガスとして、除湿塔30の上部に接続した配管54を介して除湿塔30から外部に排出される。除湿塔30には、気液接触のために、キャリアガスに対して冷却水を噴霧する噴霧器36が設けられている。除湿塔30の内部には、気液接触を促進するための充填物を設置してもよい。また除湿塔30の内部は、特許文献7に開示されているような、バブリングカラムを必要に応じて多段に設けたような構造であっても構わない。除湿塔30の下部には冷却水を一時的に貯える貯水部31が形成され、さらに、冷却水を排出する配管32が接続している。配管32は、冷却水を除湿塔30に循環させるための循環配管33と、処理水として冷却水を排出する配管34とに分岐している。循環配管33には冷却水を冷却するための熱交換器35が設けられており、循環配管33の先端は上述した噴霧器36に接続している。配管32、循環配管33及び熱交換器35によって、冷却水を冷却しつつ除湿塔30に対して冷却水を循環させる第2の循環経路が構成されている。
【0020】
次に、本実施形態のガス除害システムにおける除害処理について説明する。このガス除害システムでは、被処理ガスは、まず除害装置10の反応室11において酸化分解され、その後、隔壁13の貫通孔14を経て洗浄室12に供給される。湿式スクラバーとして機能する洗浄室12において、分解成分が洗浄水にトラップされ、洗浄後の被処理ガスは、処理ガスとして、配管52を外部に排出される。一方、洗浄水にトラップされた分解成分は、洗浄排水として配管18を介して排出され、加湿塔20の被処理水に合流する。
【0021】
加湿塔20では、キャリアガスが供給されるとともに、第1の循環経路を介して加温された被処理水が循環し、キャリアガスと被処理水との接触により、被処理水の水分の一部が水蒸気としてキャリアガスに移行する。このようにして加湿されたキャリアガスは、配管53を介して除湿塔20に送られる。被処理水には配管18から送られてきた洗浄排水が合流しているが、被処理水の加温及び循環と、被処理水とキャリアガスとの気液接触を継続すると、水分がキャリアガスに継続的に移行するので、循環する被処理水中の分解成分濃度が上昇する。ガス除害システムの起動時には分解成分を含まない被処理水を使用していたとしても、ガス除害システムの運転を継続するにつれて洗浄室12からの洗浄排水における分解成分濃度よりも循環する被処理水中の分解成分濃度が高くなる。被処理水中の分解成分濃度が所定の値よりも高くなったら、被処理水の一部を、洗浄排水に含まれる成分すなわち分解成分の濃度が高められた濃縮水として配管24から外部に排出する。あるいは、例えば操業の終了後に加湿塔20から被処理水の全部を濃縮水として排出してもよい。排出した濃縮水に対しては、適切な排水処理を行なえばよい。ここでは洗浄排水は配管18から循環配管23に合流しているが、洗浄排水とキャリアガスとの気液接触が実現できるのであれば、洗浄排水を被処理水として加湿塔20に直接供給してもよい。
【0022】
除湿塔30では、加湿塔20から配管53を介して加湿されたキャリアガスが供給されるとともに、第2の循環経路を介して冷却された冷却水が循環し、キャリアガスと冷却水との接触により、キャリアガス中の水分が凝縮して冷却水に移行する。水分の凝縮によりキャリアガスは除湿されたことになり、除湿されたキャリアガスは配管54を介して外部に排出される。冷却水の冷却及び循環と、冷却水とキャリアガスとの気液接触を継続すると、キャリアガス中の水分が冷却水に継続的に移行するので、冷却水の量が増加する。ここで、もともと被処理ガス中に含まれる有害成分の種類によっては、被処理水中にトラップされた分解成分においても有害である可能性があり、その場合、分解成分がキャリアガス中に移行しないよう注意を要する。加湿塔20において、被処理水中の分解成分の種類や量によってはキャリアガス中への多少の再揮散の可能性はあるが、除湿塔30における冷却水のスクラビングにより冷却水中にトラップされるため、排ガス中に分解成分が排出されることはない。また冷却水中にトラップされる分解成分の量は微量であるので、冷却水がある程度まで増加したら、冷却水の一部を、分解成分を除去する処理、言い換えれば洗浄排水に含まれる成分を除去する処理が行われた処理水として配管34を介して外部に排出することができる。
【0023】
本実施形態でのガス除害システムでは、配管54を介して排出される排ガスによって持ち出される水分を無視すると、洗浄室12からの洗浄排水が、有害成分の分解によって生成した成分が濃縮された濃縮水と、そのような成分をほとんど含まない処理水とに分けられて排出されたことになる。これにより、被処理ガス中の有害成分の除去を確実に行ないつつ、除害装置からの排水の排出量を削減できたことになる。
【0024】
図2は、本発明の別の実施形態のガス除害システムを示している。
図1に示すガス除害システムにおいて配管34から排出される処理水中に含まれる有害成分もしくは分解成分の量は微量であるので、除害装置10の洗浄室12における洗浄水として利用できるものである。そこで
図2に示す別の実施形態のガス除害システムでは、
図1に示すシステムにおいて、配管34を洗浄水配管17に接続し、処理水を洗浄水の一部として利用するようにしている。その結果、外部から供給されるべき洗浄水の量を削減することができ、取水量を減らすことができる。また
図2に示すガス除害システムでは、被処理水中の分解成分濃度が高くなって固形物が発生したときに備えてこの固形物を除去するために、加湿塔20から被処理水を排出する配管22にフィルタ27を設けている。
【0025】
さら
図2に示すガス除害システムでは、洗浄室12から排出される処理ガスをキャリアガスとして使用することにより、加湿塔20及び除湿塔30からなるキャリアガス式蒸発装置に対するキャリアガスの補給量を削減している。処理ガスをキャリアガスとして使用するために、処理ガスの配管52が加湿塔20に接続している。このとき、処理ガスの発生量とキャリアガスの必要量とが一致するとは限らない。そこで処理ガスの発生量がキャリアガスの必要量よりも多い場合には、処理ガスの一部を配管52から排出ガスとして外部に排出する。逆に処理ガスの発生量がキャリアガスの必要量よりも少ない場合には、外部から補給ガスとしてキャリアガスを配管52に注入する。
【0026】
図3は、本発明のさらに別の実施形態のガス除害システムを示している。
図2に示すシステムでは、洗浄室12からの処理ガスをキャリアガスとして使用しているが、
図3に示すシステムでは、除湿塔30から排出される排ガスを再びキャリアガスとして使用することにより、キャリアガスの補給量を削減している。そのため
図3に示すガス除害システムは、
図2に示すシステムにおいて、除湿塔30からの排ガスの配管が加湿塔20に接続し、その代わり、洗浄室12からの処理ガスは配管54を介して外部に排出されるようにしたものである。
【0027】
以上の説明では、除害装置10には被処理ガスが供給されて被処理ガスの酸化分解を行なう反応室11が設けられるものとした。しかしながら本発明は、除害装置10に反応室11を設けない構成とすることも可能である。
図4は、
図3に示すものと同様のガス除害システムであるが、除害装置10には反応室11が設けられていない点で
図1に示すものとは異なるガス除害システムを示している。
図4に示したガス除害システムでは、反応室が設けられていないので、被処理ガスは、洗浄室12に直接導入され、洗浄室12において噴霧器15から噴霧される洗浄水によって洗浄処理される。この洗浄排水には、被処理ガスに由来する有害成分が含まれていることになる。
図4に示すガス除害システムにおいては、洗浄室13でトラップされた有害成分を含む濃縮水が、加湿塔20を循環する被処理水から配管24を介して排出される。除湿塔30からは有害成分を含まない処理水を得ることができる。
図1あるいは
図2に示すガス除害システムにおいても、除害装置10において反応室を設けない構成とすることができる。
【0028】
上述した各実施形態のガス除害システムでは、除湿塔30において冷却水とキャリアガスとを気液接触させているが、除湿塔30では気液接触は必須の要件ではなく、キャリアガスを冷却してキャリアガス中の水分を凝縮できるものであれば、任意の構造の除湿塔を使用することができる。その場合、キャリアガスからの凝縮水が処理水として除湿塔30から排出され、あるいは除害装置10の洗浄室12に供給される洗浄水の一部として使用される。
【符号の説明】
【0029】
10 除害装置
11 反応室
12 洗浄室
15,26,36 噴霧器
20 加湿塔
25,35 熱交換器
27 フィルタ
30 除湿塔