(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】荷電粒子線治療装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20220617BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61N5/10 H
(21)【出願番号】P 2018065175
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 淳一
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-512014(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0163799(US,A1)
【文献】特開2016-144573(JP,A)
【文献】特開平11-128376(JP,A)
【文献】特開平06-154348(JP,A)
【文献】特許第5508553(JP,B2)
【文献】特開2016-106756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に向けて荷電粒子線を照射する照射部と、
前記患者の患部の位置を検出する患部位置検出部と、
前記患部位置検出部で検出した前記患部の位置に基づいて、前記照射部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記荷電粒子線の照射軸と直交する平面方向における前記患部の位置の変動に追従するように、前記平面方向における前記荷電粒子線の照射位置を調整し、
前記照射軸に沿った深さ方向における前記患部の位置が予め定めた範囲外にな
り、荷電粒子線が、前記患部の中の前記深さ方向において予め定めた位置とは異なる位置に照射される場合は、前記荷電粒子線の照射を中断し、前記患部の位置が前記予め定めた範囲内に戻ったら前記荷電粒子線の照射を再開する、荷電粒子線治療装置。
【請求項2】
前記患部位置検出部は、前記患部のCT画像を取得するCT装置を備える、請求項1に記載の荷電粒子線治療装置。
【請求項3】
前記患部位置検出部は、前記患者の体表の動きを検知し、前記体表の動きから推定することによって前記患部の位置を検出する、請求項1又は2に記載の荷電粒子線治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載の治療装置が知られている。この治療装置は、患者の患部の動きに追従するように放射線の照射を行う、いわゆる動体追跡治療を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、荷電粒子線を用いて治療を行う場合、照射位置の患部の深さ方向(照射軸に沿った方向)における位置調整は、荷電粒子線のエネルギーを調整することで飛程を変更することによって行われる。すなわち、荷電粒子線を用いて導体追跡治療を行う場合、患部が深さ方向に変動したときに、荷電粒子線の飛程を変更する必要が生じる。荷電粒子線のエネルギーを瞬時に調整することは困難であり、患部の深さ方向の変動に対して、荷電粒子線の飛程が十分に追従できない場合がある。例えば、荷電粒子線の飛程の変更が完了した時には、深さ方向において患部が更に別の位置へ移動することがある。この場合、荷電粒子線が予定していない箇所に照射され、患部に対する荷電粒子線の照射精度が低下する。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、荷電粒子線の患部に対する照射精度を向上できる荷電粒子線治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の荷電粒子線治療装置は、患者に向けて荷電粒子線を照射する照射部と、患者の患部の位置を検出する患部位置検出部と、患部位置検出部で検出した患部の位置に基づいて、照射部を制御する制御部と、を備え、制御部は、荷電粒子線の照射軸と直交する平面方向における患部の位置の変動に追従するように、平面方向における荷電粒子線の照射位置を調整し、照射軸に沿った深さ方向における患部の位置が予め定めた範囲外になった場合は、荷電粒子線の照射を中断し、患部の位置が予め定めた範囲内に戻ったら荷電粒子線の照射を再開する。
【0007】
平面方向における荷電粒子線の照射位置の調整は、速やかに行うことができる。従って、制御部は、平面方向における患部の位置の変動に追従するように、平面方向における荷電粒子線の照射位置を速やかに調整することができる。これにより、荷電粒子線の照射位置は、平面方向における患部の位置の変動に良好に追従することができる。一方、深さ方向における荷電粒子線の照射位置の調整は、荷電粒子線のエネルギーを変更する必要があるため、時間を要する。従って、制御部は、照射軸に沿った深さ方向における患部の位置が予め定めた範囲外になった場合は、荷電粒子線の照射を中断し、患部の位置が予め定めた範囲内に戻ったら荷電粒子線の照射を再開する。すなわち、制御部は、深さ方向における患部の位置のずれが小さく、予定した箇所に荷電粒子線を照射できるときは、荷電粒子線の照射を行う。制御部は、深さ方向における患部の位置のずれが大きい時には、予定していない箇所に荷電粒子線が照射されないように、照射を中断することができる。これにより、照射部は、予定していない箇所に荷電粒子線を照射することを抑制することができる。以上により、荷電粒子線の患部に対する照射精度を向上できる。
【0008】
患部位置検出部は、患部のCT画像を取得するCT装置を備えてよい。この場合、患部位置検出部は、患部の位置を正確に検出することができる。
【0009】
患部位置検出部は、患者の体表の動きを検知し、体表の動きから推定することによって患部の位置を検出してよい。この場合、患部位置検出部は、CT装置などの大掛かりな装置を用いることなく、患部の位置を検出できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、荷電粒子線の患部に対する照射精度を向上できる荷電粒子線治療装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る荷電粒子線治療装置を示す図である。
【
図2】実施形態に係る荷電粒子線治療装置の照射部等を拡大して示す図である。
【
図3】実施形態に係る荷電粒子線治療装置のCT装置を含む図である。
【
図5】荷電粒子線治療装置による荷電粒子線治療の手順を示すフローチャートである。
【
図6】(a)は、治療計画マップの腫瘍想定位置を示し、(b)は、CT装置による腫瘍実測位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る荷電粒子線治療装置について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る荷電粒子線治療装置1は、放射線療法によるがん治療等に利用される装置であり、イオン源(不図示)で生成した荷電粒子を加速して荷電粒子線として出射する加速器3と、荷電粒子線を被照射体へ照射する照射部2と、加速器3から出射された荷電粒子線を照射部2へ輸送するビーム輸送ライン21と、を備えている。照射部2は、治療台4を取り囲むように設けられた回転ガントリ5に取り付けられている。照射部2は、回転ガントリ5によって治療台4の周りに回転可能とされている。治療台4上には荷電粒子線治療の対象である患者15が載置される。
【0014】
図2は、
図1の荷電粒子線治療装置の照射部2付近の概略構成図である。なお、以下の説明においては、「X軸方向」、「Y軸方向」、「Z軸方向」という語を用いて説明する。「Z軸方向」とは、荷電粒子線Bの基軸AXが延びる方向であり、荷電粒子線Bの照射の深さ方向である。なお、「基軸AX」とは、後述の走査電磁石6で偏向しなかった場合の荷電粒子線Bの照射軸とする。
図2では、基軸AXに沿って荷電粒子線Bが照射されている様子を示している。「X軸方向」とは、Z軸方向と直交する平面内における一の方向である。「Y軸方向」とは、Z軸方向と直交する平面内においてX軸方向と直交する方向である。
【0015】
まず、
図2を参照して、本実施形態に係る荷電粒子線治療装置1の概略構成について説明する。荷電粒子線治療装置1はスキャニング法に係る照射装置である。なお、スキャニング方式は特に限定されず、ラインスキャニング、ラスタースキャニング、スポットスキャニング等を採用してよい。
図2に示されるように、荷電粒子線治療装置1は、加速器3と、照射部2と、ビーム輸送ライン21と、制御部7(制御部)と、を備えている。
【0016】
加速器3は、荷電粒子を加速して予め設定されたエネルギーの荷電粒子線Bを出射する装置である。加速器3として、例えば、サイクロトロン、シンクロトロン、シンクロサイクロトロン、ライナック等が挙げられる。なお、加速器3として予め定めたエネルギーの荷電粒子線Bを出射するサイクロトロンを採用する場合、エネルギー調整部20(
図1参照)を採用することで、照射部2へ送られる荷電粒子線のエネルギーを調整(低下)させることが可能となる。なお、シンクロトロンは出射する荷電粒子線のエネルギーを容易に変更できるため、加速器3としてシンクロトロンを採用する場合には、エネルギー調整部20を省略してもよい。この加速器3は、制御部7に接続されており、供給される電流が制御される。加速器3で発生した荷電粒子線Bは、ビーム輸送ライン21によって照射ノズル9へ輸送される。ビーム輸送ライン21は、加速器3と、エネルギー調整部20と、照射部2と、を接続し、加速器3から出射された荷電粒子線を照射部2へ輸送する。
【0017】
照射部2は、患者15の体内の腫瘍(患部)14に対し、荷電粒子線Bを照射するものである。荷電粒子線Bとは、電荷をもった粒子を高速に加速したものであり、例えば陽子線、重粒子(重イオン)線、電子線等が挙げられる。具体的に、照射部2は、イオン源(不図示)で生成した荷電粒子を加速する加速器3から出射されてビーム輸送ライン21で輸送された荷電粒子線Bを腫瘍14へ照射する装置である。照射部2は、走査電磁石6、四極電磁石8、プロファイルモニタ11、ドーズモニタ12、ポジションモニタ13a,13b、マルチリーフコリメータ24、及びディグレーダ30を備えている。走査電磁石6、各モニタ11,12,13a,13b、四極電磁石8、及びディグレーダ30は、照射ノズル9に収容されている。このように、収容体に各主構成要素を収容した照射ノズル9によって照射部2が構成されている。なお、四極電磁石8、プロファイルモニタ11、ドーズモニタ12、ポジションモニタ13a,13b、及びディグレーダ30は省略してもよい。
【0018】
走査電磁石6は、X軸方向走査電磁石6a及びY軸方向走査電磁石6bを含む。X軸方向走査電磁石6a及びY軸方向走査電磁石6bは、それぞれ一対の電磁石から構成され、制御部7から供給される電流に応じて一対の電磁石間の磁場を変化させ、当該電磁石間を通過する荷電粒子線Bを走査する。X軸方向走査電磁石6aは、X軸方向に荷電粒子線Bを走査し、Y軸方向走査電磁石6bは、Y軸方向に荷電粒子線Bを走査する。これらの走査電磁石6は、基軸AX上であって、加速器3よりも荷電粒子線Bの下流側にこの順で配置されている。
【0019】
四極電磁石8は、X軸方向四極電磁石8a及びY軸方向四極電磁石8bを含む。X軸方向四極電磁石8a及びY軸方向四極電磁石8bは、制御部7から供給される電流に応じて荷電粒子線Bを絞って収束させる。X軸方向四極電磁石8aは、X軸方向において荷電粒子線Bを収束させ、Y軸方向四極電磁石8bは、Y軸方向において荷電粒子線Bを収束させる。四極電磁石8に供給する電流を変化させて絞り量(収束量)を変化させることにより、荷電粒子線Bのビームサイズを変化させることができる。四極電磁石8は、基軸AX上であって加速器3と走査電磁石6との間にこの順で配置されている。なお、ビームサイズとは、XY平面における荷電粒子線Bの大きさである。また、ビーム形状とは、XY平面における荷電粒子線Bの形状である。
【0020】
プロファイルモニタ11は、初期設定の際の位置合わせのために、荷電粒子線Bのビーム形状及び位置を検出する。プロファイルモニタ11は、基軸AX上であって四極電磁石8と走査電磁石6との間に配置されている。ドーズモニタ12は、荷電粒子線Bの線量を検出する。ドーズモニタ12は、基軸AX上であって走査電磁石6に対して下流側に配置されている。ポジションモニタ13a,13bは、荷電粒子線Bのビーム形状及び位置を検出監視する。ポジションモニタ13a,13bは、基軸AX上であって、ドーズモニタ12よりも荷電粒子線Bの下流側に配置されている。各モニタ11,12,13a,13bは、検出した検出結果を制御部7に出力する。
【0021】
ディグレーダ30は、通過する荷電粒子線Bのエネルギーを低下させて当該荷電粒子線Bのエネルギーの微調整を行う。本実施形態では、ディグレーダ30は、照射ノズル9の先端部9aに設けられている。なお、照射ノズル9の先端部9aとは、荷電粒子線Bの下流側の端部である。
【0022】
マルチリーフコリメータ24は、制御部7からの信号に基づいて、照射軸方向と垂直な平面方向における荷電粒子線Bの照射野60を規定するものであり、複数の櫛歯を含む遮線部24a,24bを有している。遮線部24a,24bは、互いに突き合わせるように配置されており、これらの遮線部24a,24b間には、開口部24cが形成されている。当該開口部24cによって荷電粒子線Bの照射野が規定される。マルチリーフコリメータ24は、開口部24cに荷電粒子線Bを通過させることで、荷電粒子線Bのうち、照射野の周縁部に照射された部分を遮蔽する。なお、荷電粒子線をスキャニング法で照射する際は、荷電粒子線を走査して荷電粒子線が照射される経路によって荷電粒子線の照射野が規定される。この際、マルチリーフコリメータ24を用いて照射野の端部における荷電粒子線を遮蔽することで、ペナンブラ(線量分布の切れ)が改善する。
【0023】
また、マルチリーフコリメータ24は、Z軸方向と直交する方向に遮線部24a,24bを進退させることで、開口部24c、すなわち照射野の位置及び形状を変化することが可能となっている。さらに、マルチリーフコリメータ24は、リニアガイド28で照射軸方向に沿って案内されており、Z軸方向に沿って移動可能になっている。このマルチリーフコリメータ24は、ポジションモニタ13bの下流側に配置されている。
【0024】
制御部7は、例えばCPU、ROM、及びRAM等により構成されている。この制御部7は、各モニタ11,12,13a,13bから出力された検出結果に基づいて、加速器3、走査電磁石6、四極電磁石8、及びマルチリーフコリメータ24を制御する。
【0025】
また、荷電粒子線治療装置1の制御部7は、荷電粒子線治療の治療計画を行う治療計画装置100と接続されている。治療計画装置100は、治療前に患者15の腫瘍14をCT等で測定し、腫瘍14の各位置における線量分布(照射すべき荷電粒子線の線量分布)を計画する。具体的には、治療計画装置100は、腫瘍14に対して治療計画マップ(治療計画情報)を作成する。治療計画装置100は、作成した治療計画マップを制御部7へ送信する。
【0026】
スキャニング法による荷電粒子線の照射を行う場合、腫瘍14をZ軸方向に複数の層に仮想的に分割し、一の層において荷電粒子線を治療計画において定めた走査経路(スキャニングパターン)に従うように走査して照射する。そして、当該一の層における荷電粒子線の照射が完了した後に、隣接する次の層における荷電粒子線Bの照射を行う。このように、Z軸方向に分割された層状の領域ごとに一層ずつ照射が繰り返されることで、三次元的な腫瘍14の全体に荷電粒子線Bの照射が行われる。
【0027】
制御部7の制御に応じた走査電磁石6の荷電粒子線照射イメージについて、
図4(a)及び(b)を参照して説明する。
図4(a)は、深さ方向において複数の層に仮想的にスライスされた腫瘍14を、
図4(b)は、深さ方向から見た一の層における荷電粒子線の走査イメージを、それぞれ示している。
【0028】
図4(a)に示すように、腫瘍14は照射の深さ方向において複数の層に仮想的にスライスされており、本例では、深い(荷電粒子線Bの飛程が長い)層から順に、層L
1、層L
2、…層L
n-1、層L
n、層L
n+1、…層L
N-1、層L
NとN層に仮想的にスライスされている。また、
図4(b)に示すように、荷電粒子線Bは、ビーム軌道TLを描きながら層L
nの複数の照射スポットに対して照射される。すなわち、制御部7に制御された照射ノズル9は、ビーム軌道TL上を移動する。
【0029】
上記の治療計画マップには、治療台4上に位置決めされると想定される腫瘍14の位置(以下「腫瘍想定位置」という)の情報が含まれている。また、治療計画マップには、上記の腫瘍想定位置に対する荷電粒子線Bの走査経路の情報が含まれている。制御部7は、治療計画マップに定められた腫瘍想定位置及び走査経路を読み出し、原則的には、当該腫瘍想定位置を照射予定位置とし、当該照射予定位置に対して走査経路に従って荷電粒子線の照射が行われるように照射部2を制御する。従って、原則的には、治療台4上の患者15の腫瘍14が腫瘍想定位置から変動がなければ、腫瘍想定位置及び走査経路に従って、荷電粒子線Bが走査され照射されることになる。
【0030】
なお、上記の「腫瘍想定位置」、「照射予定位置」、及び後述する「腫瘍実測位置」は、何れも、腫瘍14の三次元形状や三次元的な位置(X,Y,Zの3軸の並進方向の位置、及びX,Y,Zの3軸周りの回転方向の位置)を含む概念である。また、XY平面内における腫瘍14の位置の変動は、荷電粒子線Bの照射軸(基軸AX)と直交する「平面方向」における変動に該当する。また、Z方向における腫瘍14の位置の変動は、照射軸に沿った「深さ方向」における変動に該当する。
【0031】
更に、
図2に示すように、荷電粒子線治療装置1は、荷電粒子線Bの照射中において、治療台4上における患者15の腫瘍14の位置を検出する患部位置検出部50を備えている。このような位置測定部としては、例えば、X線CT装置や、DR(デジタルラジオグラフィー)等が採用される。以下の説明では、荷電粒子線治療装置1が、患部位置検出部50として、CT装置40を備えているものとして説明する。
【0032】
CT装置40は、CBCT装置(コーンビームCT装置)と呼ばれるタイプのCT装置であり、照射部2に対する治療台4上の腫瘍14の位置を正確に認識する目的で使用される。具体的には、荷電粒子線治療に先立ち、治療台4にセッティングされた状態における患者15の断層画像(CT画像)がCT装置40を用いて作成され、このCT画像に基づいて患者15の腫瘍14の位置が認識される。
【0033】
図3にも示されるように、CT装置40は、患者15にX線を照射するX線管41を備えている。X線管41は照射ノズル9の両側に1つずつ設置されている。また、CT装置40は、各X線管41からのX線をそれぞれ検出するX線検出器42を2つ備えている。一組のX線管41とX線検出器42とは、治療台4を挟んで互いに反対側の位置に配置されている。X線管41とX線検出器42とは、上記の回転ガントリ5によって支持され回転可能に構成されており、一体として治療台4の周りに回転する。X線管41からX線が照射され、治療台4上の患者15を通過したX線がX線検出器42に検出され、X線検出器42には患者15のX線画像データが取得される。患部位置検出部50は、3D患部トラッキング装置51を備える。3D患部トラッキング装置51は、制御部7の中に組み込まれている。このX線画像データは制御部70の3D患部トラッキング装置51に送られ、制御部7は上記X線画像データに基づいて、所定の演算による画像再構成処理を実行し、患者15の内部のCT画像を生成する。制御部7は、このCT画像に基づいて、治療台4上における患者15の腫瘍14の実際の位置を得る。
【0034】
3D患部トラッキング装置51は、各X線検出器42から入力されるリアルタイム映像から、瞬時のオプティカルフローを計算して動きベクトルを計算する、撮影方向毎に設けられた動きベクトル計算装置52A、52Bと、該動きベクトル計算装置52A、52Bによって得られる2方向の動きベクトルから、3次元の動きベクトルを計測する3次元(3D)合成ベクトル計算装置71と、該3D合成ベクトル計算装置71の出力をベクトル積分して3次元的な移動量を計算する3D移動量計算装置72と、とを含んで構成されている。
【0035】
動きベクトル計算装置52A、52Bは、X線検出器42から連続画像を入力するための連続画像入力装置54Aと、該連続画像入力装置54から入力される画像を今回の画像として記憶するための今回画像メモリ56Aと、該今回画像メモリ56Aに一旦記憶させた画像を前回の画像として記憶するための前回画像メモリ58Aと、今回及び前回の画像メモリ56A、58Aの差からオプティカルフローを計算するオプティカルフロー計算装置60Aと、該オプティカルフロー計算装置60Aの出力を合成して動きベクトルを計算するための合成ベクトル計算装置62と、を含んで構成されている。
【0036】
荷電粒子線Bの照射中には、制御部7は、上記のCT装置40で得られる腫瘍14の実際の位置(以下「腫瘍実測位置」という)を取得する。また、制御部7は、照射開始の時点では、治療計画装置100から、治療計画マップに含まれる腫瘍想定位置を取得している。従って、制御部7は、腫瘍実測位置と腫瘍想定位置とのずれを算出することで、腫瘍14の位置の変動を把握することができる。制御部7は、平面方向における(XY平面内における)腫瘍14の位置の変動を把握し、深さ方向における(Z方向における)腫瘍14の位置の変動を把握する。
【0037】
制御部7は、平面方向における腫瘍14の位置の変動に追従するように、平面方向における荷電粒子線Bの照射位置を調整する。すなわち、制御部7は、平面方向における腫瘍実測位置と腫瘍想定位置との間でずれが発生している場合、腫瘍実測位置に合わせて照射予定位置及び走査経路を補正する。制御部7は、補正後の照射予定位置に補正後の走査経路で荷電粒子線Bが照射されるように照射部2を制御する。なお、制御部7は、照射前の位置合わせの際に、照射位置のずれを補正することができる。制御部7は、更に、照射前の位置合わせ後にも、患者の腫瘍14が動く場合に、当該動きに追従して照射位置を制御できる。制御部7による具体的な処理の一例については、後述する。
【0038】
制御部7は、深さ方向における腫瘍14の位置が予め定めた範囲外になった場合は、荷電粒子線Bの照射を中断し、腫瘍14の位置が予め定めた範囲内に戻ったら荷電粒子線Bの照射を再開する。制御部7は、深さ方向における腫瘍実測位置と腫瘍想定位置との間でのずれ(位置ずれの量)を把握する。制御部7は、ずれが所定の閾値の範囲内であるか否かを判定する。制御部7は、ずれが閾値以下であると判定した場合は、荷電粒子線Bの照射を継続する。一方、制御部7は、ずれが閾値より大きいと判定した場合は、荷電粒子線Bの照射を中断する。荷電粒子線Bを中断する方法は特に限定されず、例えば、加速器3からの荷電粒子線Bの出射を一時的に停止する方法、高周波加速電極の停止や、ビームチョッパー電極によりイオン源からのビームの軌道を変更し加速させないなどの方法を採用してよい。制御部7は、ずれ量を取得し続け、ずれ量が閾値以下となったタイミングで、荷電粒子線Bの照射を再開する。制御部7による具体的な処理の一例については、後述する。
【0039】
続いて、
図5~
図6を参照し、荷電粒子線治療装置1の作動を含め、荷電粒子線治療装置1による荷電粒子線治療の手順について説明する。ただし、荷電粒子線治療装置1の制御内容は、以下の手順に限定されるものではない。
【0040】
(照射開始工程:
図5のS1)
まず、治療台4上に患者15が載置され、荷電粒子線治療装置1の位置合わせ用レーザマーカ(図示せず)を用いて、患者15の位置決めが行われる。具体的には、事前に治療計画マップで定められた腫瘍想定位置に、患者15の腫瘍14の位置を合わせることを目標として、治療台4が移動される。当該位置合わせが完了したら、制御部7は、腫瘍14に対する荷電粒子線Bの照射を開始する。
【0041】
(患部位置検出工程:
図5のS10)
上記のS1の処理の後、制御部7の制御に基づいてCT装置40が駆動され、患者15の内部のCT画像が取得される。このCT画像に基づいて、制御部7は、患者15の腫瘍14の位置を検出する。これにより、制御部7は、照射部2に対する相対的な腫瘍14の実際の位置(腫瘍実測位置)を認識する。
【0042】
(深さ方向変動判定工程:
図5のS20)
制御部7は、CT装置40による検出結果に基づいて深さ方向における腫瘍14の位置の変動が無いか否かを判定する。制御部7は、深さ方向における腫瘍14の位置が予め定めた範囲内であれば変動が無いと判定し、範囲外であれば変動があると判定する。制御部7は、治療計画装置100の治療計画マップを読み出し、治療計画マップに含まれる腫瘍想定位置と走査経路とを認識する。そして制御部7は、腫瘍実測位置と腫瘍想定位置との深さ方向における位置ずれを算出する。ここで算出される位置ずれは、深さ方向(Z方向)における並進方向のずれである。このようなZ方向の並進方向のずれを「ΔZ」と呼ぶ。例えば、腫瘍想定位置に対して、Z方向のずれの許容値として閾値「ΔZ
TH」を設定する。この場合、制御部7は、「ΔZ≦ΔZ
TH」であれば、深さ方向の腫瘍14の位置の変動が無いと判定する。制御部7は、「ΔZ>ΔZ
TH」であれば、深さ方向の腫瘍14の位置の変動が有ると判定する。
【0043】
制御部7は、腫瘍14のどの部分を基準位置として判定を行ってもよい。例えば、
図4(a)に示すように、腫瘍想定位置での腫瘍14の下端SPの位置を基準位置D
0とした場合、基準位置D
0から上下に「ΔZ
TH」だけ離れた位置に判定位置D
1,D
2が設定される。制御部7は、S10での検出結果に基づく腫瘍実測位置における腫瘍14の下端SPが判定位置D
1,D
2との間、又は判定位置D
1,D
2上に位置する場合は、深さ方向の腫瘍14の位置の変動が無いと判定する。制御部7は、S10での検出結果に基づく腫瘍実測位置における腫瘍14の下端SPが判定位置D
1よりも下側、又は判定位置D
2よりも上側に位置する場合は、深さ方向の腫瘍14の変動が有ると判定する。なお、閾値「ΔZ
TH」の大きさはどのように設定されてもよい。
【0044】
(照射中断工程:
図5のS30)
制御部7は、S20にて深さ方向における腫瘍14の位置の変動が有ると判定した場合、荷電粒子線Bの照射を中断する。その後、S10へ戻り、同様の処理を繰り返す。
【0045】
(照射継続・再開工程:
図5のS40)
制御部7は、S20にて深さ方向における腫瘍14の位置の変動が無いと判定した場合、荷電粒子線Bの照射を継続する。なお、S30で荷電粒子線Bの照射が中断されていた状態から、腫瘍14の位置が予め定めた範囲内に戻った場合、制御部7は、S20において深さ方向における腫瘍14の位置の変動(基準位置である腫瘍想定位置からの変動)が無くなったと判定する。これによってS40へ移行した場合、制御部7は、荷電粒子線Bの照射を再開する。
【0046】
(平面方向変動判定工程:
図5のS50)
制御部7は、S10での検出結果に基づいて、平面方向における腫瘍14の位置の変動が無いか否かを判定する。例えば、
図6(a)に示されるように、制御部7は、治療計画装置100の治療計画マップを読み出し、治療計画マップに含まれる腫瘍想定位置P0と走査経路Q0とを認識する。そして制御部7は、腫瘍実測位置P1と腫瘍想定位置P0との位置ずれを算出する。ここで算出される位置ずれは、荷電粒子線Bの照射方向(Z方向)に直交する面(XY平面)内における、並進方向のずれ及び回転方向のずれである。上記並進方向のずれには、X方向のずれ、Y方向のずれの2軸方向のずれが含まれ、前者を「ΔX」、後者を「ΔY」と呼ぶ。また、上記回転方向のずれは、すなわちZ軸周りの回転方向のずれであり、これを「ΔΦZ」と呼ぶ。制御部7は、予め設定しておいた閾値と、取得したΔX、ΔY及びΔΦZとを比較する。制御部7は、ΔX、ΔY及びΔΦZの全部が閾値以下であれば、平面方向の腫瘍14の位置の変動が無いと判定する。制御部7は、S50にて平面方向における腫瘍14の位置の変動が無いと判定した場合、腫瘍想定位置P0と走査経路Q0に基づいて荷電粒子線Bの照射を継続し、S70へ移行する。制御部7は、ΔX、ΔY及びΔΦZの少なくとも何れかが閾値を超えていれば、平面方向の腫瘍14の位置の変動が有ると判定する。
【0047】
(追従制御工程:
図5のS60)
制御部7は、S50にて平面方向における腫瘍14の位置の変動が有ると判定した場合、腫瘍14の位置の変動に追従するように、平面方向における荷電粒子線Bの照射位置を調整する。制御部7は、算出されたΔX、ΔY及びΔΦZに基づき、当該ΔX、ΔY及びΔΦZと同量の補正量で、照射予定位置及び走査経路を補正(変換)する。すなわち、
図6(b)に示されるように、補正後の照射予定位置P’は、補正前の照射予定位置P(すなわち、治療計画マップの腫瘍想定位置P0と同じ位置)に対して、全体的に、+ΔX,+ΔYだけ並進移動させ、+ΔΦZだけ回転移動させた位置となる。また、補正後の走査経路Q’のパターンは、補正前の走査経路のパターン(すなわち、治療計画マップの走査経路Q0と同じ経路)に対し、全体的に、+ΔX,+ΔYだけ並進移動させ、+ΔΦZだけ回転移動させたパターンとなる。S50の処理が完了したら、制御部7は、補正後の照射予定位置P’及び補正後の走査経路Q’に基づいて、荷電粒子線Bの照射を行う。また、S70の処理へ移行する。
【0048】
なお、例えば、制御部7が一回目のS60にて追従制御を行った後、二回目のS50の処理を行うときに、平面方向における腫瘍14の位置が同じままである場合、二回目のS50では、制御部7は、腫瘍想定位置P0に対する腫瘍実測位置P1のずれとして一回目と同様のΔX、ΔY及びΔΦZを取得する。また、制御部7は、二回目のS60において、一回目と同様の照射予定位置P’及び走査経路Q’を取得する。この場合、二回目のS60以降の荷電粒子線Bの照射位置は、一回目のS60で設定された照射予定位置P’及び走査経路Q’から、見た目上、変化が無いように見える。一方、制御部7が一回目のS60にて追従制御を行った後、二回目のS50の処理を行うときに、平面方向における腫瘍14の位置が更に変動した場合、二回目のS50では、制御部7は、腫瘍想定位置P0に対する腫瘍実測位置P1のずれとして一回目とは異なるΔX、ΔY及びΔΦZを取得する。また、制御部7は、二回目のS60において、一回目とは異なる照射予定位置P’及び走査経路Q’を取得する。この場合、二回目のS60以降の荷電粒子線Bの照射位置は、一回目のS60で設定された照射予定位置P’及び走査経路Q’から変化する。なお、制御部7が一回目のS60にて追従制御を行った後、二回目のS50の処理を行うときに、平面方向における腫瘍14の位置が腫瘍想定位置P0に戻った場合、制御部7は、腫瘍想定位置P0と走査経路Q0に基づいて荷電粒子線Bを照射する。この場合、二回目のS50以降の荷電粒子線Bの照射位置は、一回目のS60で設定された照射予定位置P’及び走査経路Q’から、変化する。
【0049】
(照射完了判定工程:
図5のS70)
制御部7は、腫瘍14に対する荷電粒子線Bの照射が完了したか否かを判定する。制御部7は、層L
1~L
Nの全てに対して荷電粒子線Bを照射した場合、照射が完了したと判定する。制御部7は、S70において荷電粒子線Bの照射が完了していないと判定した場合、S10へ戻り、同様の処理を繰り返す。
【0050】
(照射停止工程:
図5のS80)
制御部7は、S70において腫瘍14に対する荷電粒子線Bの照射が完了したと判定した場合、荷電粒子線Bの照射を停止する。これにより、
図5に示す処理が終了する。
【0051】
なお、制御部7は、物理的には、例えば、CPU、RAM、ROM、補助記憶装置、キーボード及びマウス等の入力装置、ディスプレイ等の出力装置、通信モジュールなどを含むコンピュータシステムとして構成されている。そして、制御部7をなすコンピュータシステムにおいて所定の照射制御プログラムが実行されることで、上述したようなS1~S80を実行するように、荷電粒子線治療装置1が作動される。上記のような工程S1~S80は、制御部7の制御下で自動的に進行されてもよく、オペレータの操作に従ってバッチ的に進行されてもよい。
【0052】
なお、S10の腫瘍14の位置検出工程を行う頻度(すなわちS10~S70の処理を行う頻度)は特に限定されない。例えば、制御部7は、荷電粒子線Bの照射中は、常時、S10~S70の処理を繰り返してよい。または、制御部7は、所定の時間間隔に基づいて、S10~S70の処理を繰り返してよい。または、制御部7は、照射対象となる層Lが切り替わるタイミングで、S10~S70の処理を実行してよい。なお、操作者がスイッチの操作によって照射停止の実行、非実行の判断ができるようになっていてもよい。
【0053】
次に、本実施形態に係る荷電粒子線治療装置1の作用・効果について説明する。
【0054】
平面方向における荷電粒子線の照射位置の調整は、速やかに行うことができる。すなわち、深さ方向を調整するには、エネルギーを変換するための機器をビームが通過する必要があるが、このような機器は、エネルギー変換機構を動かすのに時間がかかる。一方、平面方向は走査電磁石に対して電気的な補正を加えるだけで可能となるため、速やかに照射位置を調整することができる。従って、平面方向における荷電粒子線Bの照射位置の調整は、患部位置検出部50からの信号を制御部7にリアルタイムで入力させ、照射軸に対して補正を加える処置を実施することにより、速やかに行うことができる。従って、制御部7は、平面方向における腫瘍14の位置の変動に追従するように、平面方向における荷電粒子線Bの照射位置を調整する。これにより、荷電粒子線Bの照射位置は、平面方向における腫瘍14の位置の変動に良好に追従することができる。一方、深さ方向における荷電粒子線Bの照射位置の調整は、荷電粒子線Bのエネルギーを変更する必要があるため、時間を要する。従って、制御部7は、深さ方向における腫瘍14の位置が予め定めた範囲外になった場合は、荷電粒子線Bの照射を中断し、腫瘍14の位置が予め定めた範囲内に戻ったら荷電粒子線Bの照射を再開する。すなわち、制御部7は、深さ方向における腫瘍14の位置のずれが小さく、予定した箇所に荷電粒子線Bを照射できるときは、荷電粒子線Bの照射を行う。制御部7は、深さ方向における腫瘍14の位置のずれが大きい時には、予定していない箇所に荷電粒子線Bが照射されないように、照射を中断することができる。これにより、照射部2は、予定していない箇所に荷電粒子線Bを照射することを抑制することができる。以上により、荷電粒子線Bの腫瘍14に対する照射精度を向上できる。
【0055】
患部位置検出部50は、腫瘍14のCT画像を取得するCT装置40を備える。この場合、患部位置検出部50は、腫瘍14の位置を正確に検出することができる。
【0056】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、下記のような変形例を構成することも可能である。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0057】
例えば、上述の実施形態では、患部位置検出部50は、CT装置40を備えていた。これに代えて、患部位置検出部50は、患者15の体表の動きを検知し、体表の動きから推定することによって患部の位置を検出してよい。患部位置検出部50は、CT装置40などの大掛かりな装置を用いることなく、患部の位置を検出できる。この場合、患部位置検出部50は、患者15の体表を撮影するカメラなどを備えてよい。
【0058】
また、上述の実施形態では、制御部7が一回目のS60にて追従制御を行った後、二回目のS50の処理を行うときに、制御部7は、腫瘍想定位置P0に対する腫瘍実測位置P1のずれを算出した。これに代えて、制御部7は、二回目のS50の処理を行うときに、一回目のS60で補正した照射予定位置P’に対する腫瘍実測位置P1のずれを算出してよい。この場合、一回目のS60の処理から腫瘍14が移動していない場合、制御部7は、二回目のS60の演算を省略することができる。
【0059】
上述の実施形態では、補正後の照射予定位置への照射が、スキャニング法における走査電磁石6の走査によって実現されるが、本発明はこの方式には限定されない。例えば、本発明は、ブロードビーム照射方式で、マルチリーフコリメータ24(
図2)の開口状態によって荷電粒子線Bの照射野が規定される方式に適用されてもよい。この場合、照射制御工程S109で、マルチリーフコリメータ24の開口部24cの位置(例えば、X,Y,ΦZ位置)が、制御部7によって、補正後の照射予定位置P’に対応するように制御されてもよい。
【0060】
また、患者コリメータが使用される方式であれば、照射制御工程S109においては、マルチリーフコリメータ24の制御に代えて、患者コリメータの位置が制御されてもよい。すなわち、患者コリメータの位置(例えば、X,Y,ΦZ位置)が、制御部7によって、補正後の照射予定位置P’に対応するように制御されてもよい。この場合、患者コリメータの位置を移動させるためのアクチュエータが設けられ、当該アクチュエータが制御部7に制御されるようにしてもよい。
【0061】
また、上述のような、走査電磁石6の走査の制御と、マルチリーフコリメータ24の開口部24cの位置の制御と、が並行して実行されてもよい。また、実施形態の荷電粒子線治療装置1は、走査電磁石6及びマルチリーフコリメータ24を両方とも備えるものであるが、これらの構成要素を両方備えることは必須ではなく、適宜省略されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…荷電粒子線治療装置、2…照射部、7…制御部、14…腫瘍(患部)、15…患者、40…CT装置(患部位置検出部)、50…患部位置検出部、B…荷電粒子線。