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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】カード及びカードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/455 20140101AFI20220617BHJP
   B42D 25/46 20140101ALI20220617BHJP
   B29C 43/20 20060101ALI20220617BHJP
   B29C 43/58 20060101ALI20220617BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220617BHJP
   B42D 25/305 20140101ALN20220617BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20220617BHJP
【FI】
B42D25/455
B42D25/46
B29C43/20
B29C43/58
B32B27/00 G
B42D25/305 100
B29L9:00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018068027
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019177570
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】川口 圭介
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-082374(JP,A)
【文献】特開2002-187389(JP,A)
【文献】特開2012-183739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 15/00
B42D 25/00-25/485
B41M 1/00- 3/18
B41M 7/00- 9/04
B29C 43/20
B29C 43/58
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層及びコア基材層を有し、かつ前記表層と前記コア基材層との間の一部の領域に、軟化層を有する、積層体を提供すること、
前記積層体の前記表層に熱プレス面を押し当てて、前記積層体を熱プレスすること
を含み、
前記軟化層のガラス転移温度が、前記表層及び前記コア基材層のガラス転移温度よりも低く、それによって、前記熱プレスによって、前記軟化層を軟化させて、前記軟化層上の前記表層に前記熱プレス面の表面形状を転写しつつ、前記軟化層が存在しない箇所の前記表層の表面形状を維持するようにする、
カードの製造方法。
【請求項2】
前記積層体の提供において、前記表層を印刷により提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記印刷が、シルク印刷又はオフセット印刷である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記積層体が、前記表層と前記コア基材層との間の少なくとも一部の領域に、中間層を更に有しており、前記中間層のガラス転移温度が、前記軟化層のガラス転移温度よりも高い、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記軟化層の少なくとも一部が、前記表層と前記中間層との間の一部の領域、及び/又は前記中間層と前記コア基材層との間の一部の領域に存在している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記熱プレスの設定温度が、前記表層のガラス転移温度より低い、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記コア基材層が、中間コア基材層、及び前記中間コア基材層の両側に存在している最外コア基材層で構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記最外コア基材層が、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイドからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
表層及びポリエチレンテレフタレート層を有し、かつ前記表層と前記ポリエチレンテレフタレート層との間の一部の領域に、軟化層を有する、積層体を提供すること、
前記積層体の前記表層に熱プレス面を押し当てて、前記積層体を熱プレスすること
を含み、
前記軟化層のガラス転移温度が、前記表層のガラス転移温度よりも低く、それによって、前記熱プレスによって、前記軟化層を軟化させて、前記軟化層上の前記表層に前記熱プレス面の表面形状を転写しつつ、前記軟化層が存在しない箇所の前記表層の表面形状を維持するようにする、
カードの製造方法。
【請求項10】
表層及びコア基材層を有しており、
前記表層と前記コア基材層との間の一部の領域に、軟化層を有しており、かつ
前記軟化層が存在している前記領域上の前記表層の領域が、前記領域以外の領域と異なる表面形状を有している、
カード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード及びカードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICカード等のカードの表面形状を構成する手段として、種々の手段が提案されている。
【0003】
特許文献1では、カード本体部に記録部材を接着する加圧手段と記録部材との間に、所与の面内弾性率及び表面粗さを有する緩衝部材を配し、この緩衝部材を介して加圧手段から記録部材に圧力を加えることを特徴とするカードの製造方法が開示されている。特許文献1では、この方法により、平坦な表面を有するカードを作製できるとしている。
【0004】
また、特許文献2では、PET-G樹脂からなる白色の支持層と該支持層の外面に、ポリカーボネートとPET-G樹脂のポリマーアロイ樹脂からなる層を有する基材をカード用基材とするSIMカードを該基材から打ち抜いて製造するSIMカードの製造方法において、外面基材層に対して、溶剤成分として、ジアセトンアルコールとジイソブチルアルコールを主溶剤とし、塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合体を主要樹脂成分として含むシルクスクリーンメジウムインキを用いて下引き印刷をした後、オフセット絵柄印刷を行い、その後、打ち抜き刃型を用いてSIMカードを打ち抜きすることを特徴とするSIMカードの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-338310号公報
【文献】特開2015-43169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カードの用途によっては、好ましい外観を与える目的等のために、異なる表面の状態を同一面上に有するカードを提供することが望まれることがある。しかしながら、従来の方法においては、カードの表面は、プレス板や緩衝部材等のように、製造工程においてカードの表面となる平面に直接的に接触した部分の表面形状が反映されることとなるため、所望の表面形状が得られないことがあった。プレス板や補材に事前に彫刻等を施しておけば部分的に任意の表面形状に加工できるが、量産性やコストの問題がある。
【0007】
また、特許文献2のように、熱プレスを行わずにカードを製造した場合、オフセットオーバープリントによってマット調の表面形状となることや、印刷に使用するブランケットの影響により、インクが毛羽立つことにより、所望の表面形状が得られないことがあった。
【0008】
そこで、カードの最外層の材質を局所的に変更することなく、カードの表面の一部の状態を容易に所望の状態とすることができる、カードの製造方法を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉表層及びコア基材層を有し、かつ前記表層と前記コア基材層との間の少なくとも一部の領域に、軟化層を有する、積層体を提供すること、
前記積層体の前記表層に熱プレス面を押し当てて、前記積層体を熱プレスすること
を含み、
前記軟化層のガラス転移温度が、前記表層及び前記コア基材層のガラス転移温度よりも低く、それによって、前記熱プレスによって、前記軟化層を軟化させて、前記軟化層上の前記表層に前記熱プレス面の表面形状を転写しつつ、前記軟化層が存在しない箇所の前記表層の表面形状を維持するようにする、
カードの製造方法。
〈態様2〉前記積層体の提供において、前記表層を印刷により提供する、態様1に記載の方法。
〈態様3〉前記印刷が、シルク印刷又はオフセット印刷である、態様2に記載の方法。
〈態様4〉前記積層体が、前記表層と前記コア基材層との間の少なくとも一部の領域に、中間層を更に有しており、前記中間層のガラス転移温度が、前記軟化層のガラス転移温度よりも高い、態様1~3のいずれか一項に記載の方法。
〈態様5〉前記軟化層の少なくとも一部が、前記表層と前記中間層との間の少なくとも一部の領域、及び/又は前記中間層と前記コア基材層との間の少なくとも一部の領域に存在している、態様4に記載の方法。
〈態様6〉前記熱プレスの設定温度が、前記表層のガラス転移温度より低い、態様1~5のいずれか一項に記載の方法。
〈態様7〉前記コア基材層が、中間コア基材層、及び前記中間コア基材層の両側に存在している最外コア基材層で構成されている、態様1~6のいずれか一項に記載の方法。
〈態様8〉前記最外コア基材層が、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイドからなる群より選択される、態様7に記載の方法。
〈態様9〉表層及びポリエチレンテレフタレート層を有し、かつ前記表層と前記ポリエチレンテレフタレート層との間の少なくとも一部の領域に、軟化層を有する、積層体を提供すること、
前記積層体の前記表層に熱プレス面を押し当てて、前記積層体を熱プレスすること
を含み、
前記軟化層のガラス転移温度が、前記表層のガラス転移温度よりも低く、それによって、前記熱プレスによって、前記軟化層を軟化させて、前記軟化層上の前記表層に前記熱プレス面の表面形状を転写しつつ、前記軟化層が存在しない箇所の前記表層の表面形状を維持するようにする、
カードの製造方法。
〈態様10〉表層及びコア基材層を有しており、
前記表層と前記コア基材層との間の少なくとも一部の領域に、軟化層を有しており、かつ
前記軟化層が存在している前記領域上の前記表層の領域が、前記領域以外の領域と異なる表面形状を有している、
カード。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カードの最外層の材質を局所的に変更することなく、カードの表面の一部の状態を容易に所望の状態とすることができる、カードの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明のカードの製造方法を説明する図である。
図2図2は、本発明の一態様のカードの層構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《カードの製造方法》
カードを製造する本発明の方法は、
表層及びコア基材層を有し、かつ表層とコア基材層との間の少なくとも一部の領域に、軟化層を有する、積層体を提供すること、
積層体の表層に熱プレス面を押し当てて、積層体を熱プレスすること
を含み、
軟化層のガラス転移温度が、表層及びコア基材層のガラス転移温度よりも低く、それによって、熱プレスによって、軟化層を軟化させて、軟化層上の表層に熱プレス面の表面形状を転写しつつ、軟化層が存在しない箇所の表層の表面形状を維持するようにする。
【0013】
本明細書におけるガラス転移温度(Tg)とは、JIS K7121(1987年)に準拠して、加熱速度10℃/minの昇温条件で熱流束示差走査熱量測定(熱流束DSC)により求めた中間点ガラス転移温度(℃)をいい、試験片の状態調節についてはJIS K7121の『一定の熱処理を行なった後、ガラス転移温度を測定する場合』を採用するものとする。
【0014】
本発明者らは、上記の方法により、カードの表面の材質を局所的に変更することなく、カードの一部の表面形状を容易に所望の形状とし、それによって好ましい外観を与えることができることを見出した。このことを、図1を参照して、各工程について言及しながら説明する。なお、印刷により表層を積層させた場合、オフセット印刷におけるブランケット、シルク印刷におけるメッシュの凹凸及び/又は毛羽立ちに起因して、表層を積層させた時点において凹凸形状(マット形状)が生じる。各図におけるジグザグ線は、かかる凹凸形状を誇張して示したものであり、実際の縮尺とは必ずしも一致していないことに留意されたい。
【0015】
まず、図1(a)に示すように、表層10及びコア基材層40を有し、かつ表層10とコア基材層40との間の少なくとも一部の領域に、軟化層30を有する、積層体を提供する。
【0016】
この積層体は、図1(a)に示すように、表層10とコア基材層40との間の少なくとも一部の領域に、随意の中間層20を更に有していてよい。この中間層20のガラス転移温度は、軟化層30のガラス転移温度よりも高くてよい。積層体が中間層20を有する場合、軟化層30の少なくとも一部が、表層10と中間層20との間の少なくとも一部の領域、及び/又は中間層20とコア基材層40との間の少なくとも一部の領域に存在していてもよい。
【0017】
次いで、図1(b)に示すように、積層体の表層10に熱プレス面を押し当てて、積層体を熱プレスする。
【0018】
このとき、熱プレスの温度を調節して、ガラス転移温度が高い表層、随意の中間層及びコア基材層のガラス転移温度を軟化させずに、軟化層を軟化させる。
【0019】
その結果、軟化層30上の表層10の領域10aに存在していた微細な凹凸が、軟化層30に伝播する。その後、熱プレスを解放すると、図1(c)に示すように、表層10の領域10aは、領域10a以外の領域と異なる表面形状、特に平坦な熱プレス面を用いた場合には平坦な形状(グロス形状)を有することとなる。同様に、凹凸のある熱プレス面を用いることにより、表層10の領域10aの形状をマット形状とすることもでき、特に、表層10を印刷によって形成した場合には、表層10の領域10aの形状を他の領域とは異なる凹凸のマット形状とすることもできる。
【0020】
積層体の提供においては、表層は、印刷により積層させてもよく、又はシートの配置により積層させてもよいが、印刷、特にオフセット印刷又はシルク印刷により積層させることが、表層を積層したときに、マット形状をその表面に生じさせることにより、その後に積層体を熱プレスしたときに、軟化層上の表層と、軟化層が存在しない箇所の表層との表面形状の差異が大きくなりやすくなるため、本発明の作用がより顕著に現れる。
【0021】
積層体が中間層を有する態様においては、表層が色材を含有しておらず、かつ中間層が色材を含有していてよい。
【0022】
以下では、本発明の各工程のために用いる物について説明する。
【0023】
〈表層〉
表層としては、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のうちの軟化層よりもガラス転移温度が高い樹脂の層を用いることができる。この樹脂は、例えば熱プレスの設定温度よりもガラス転移温度が高い樹脂であってよい。
【0024】
熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。
【0025】
紫外線硬化性樹脂としては、例えばポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート系樹脂が挙げられる。
【0026】
また、表層は、顔料、染料等の色材を含有していてよい。
【0027】
〈中間層〉
中間層は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のうちの軟化層よりもガラス転移温度が高い樹脂を含有していてよい。かかる樹脂は、例えば熱プレスの設定温度よりもガラス転移温度が高い樹脂であってよい。かかる樹脂としては、表層に関して挙げた樹脂を用いることができる。
【0028】
また、中間層は、顔料、染料等の色材を含有していてよい。
【0029】
〈コア基材層〉
コア基材層は、軟化層よりも高いガラス転移温度を有する層であってよい。ここで、コア基材層のガラス転移温度は、コア基材が多層の積層体である場合には、コア基材層において最も外側に位置する層、すなわち「最外コア基材層」のガラス転移温度である。
【0030】
コア基材層は、単層であってもよく、又は中間コア基材層及び中間コア基材層の両側に存在している最外コア基材層で構成されていてもよい。コア基材層が単層である場合には、コア基材層として、例えば最外コア基材層として以下に言及する樹脂を用いることができる。
【0031】
特に、アンテナ等を有するインレットをカードに組み込む場合には、コア基材層は、最外コア基材層及び中間コア基材層で構成されていることが、製造上の観点から好ましい。
【0032】
(最外コア基材層)
最外コア基材層としては、例えばポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド等を用いることができる。特に、最外コア基材層は、ポリエチレンテレフタレート層であることが、ポリエチレンテレフタレートの結晶性により、ポリエチレンテレフタレートが軟化層の存在による圧迫に耐えるのに十分な剛性が、ガラス転移温度を超える温度でも維持され、その結果、軟化層上の表層に熱プレス面の表面形状がより良好に転写する観点から好ましい。
【0033】
(中間コア基材層)
中間コア基材層は、随意の樹脂で構成されている層であってよい。中間コア基材層のガラス転移温度は、軟化層のガラス転移温度よりも低くてよい。
【0034】
中間コア基材層としては、最外コア基材層に関して挙げた樹脂に加え、例えば非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET-G)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂等、及びこれらのポリマーアロイを用いることができる。
【0035】
〈軟化層〉
軟化層は、表層とコア基材層との間の少なくとも一部の領域に配置される層である。軟化層は、表層及びコア基材層よりも低いガラス転移温度を有する層である。この層は、熱プレスの設定温度よりも低いガラス転移温度を有する層であってよい。
【0036】
積層体が中間層を更に有する場合、軟化層は、少なくとも一部が、表層と中間層との間少なくとも一部の領域、及び/又は中間層とコア基材層との間の少なくとも一部の領域に配置される。
【0037】
軟化層としては、例えば塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂等を用いることができる。
【0038】
軟化層の厚さは、特に限定されないが、表層を印刷により積層させた場合には、表層の表面粗さよりも大きいことが、表層の凹凸を吸収して表面を平坦化する観点から好ましい。
【0039】
〈熱プレス機〉
熱プレス機は、平坦な熱プレス面、又は凹凸のある熱プレス面を有する随意の熱プレス機を用いることができる。熱プレス面の表面形状によって、軟化層が存在している領域上の表層の領域の熱プレス後の表面形状を定めることができる。
【0040】
熱プレスの設定温度は、例えば表層のガラス転移温度よりも低い温度で、かつ軟化層のガラス転移温度よりも高い温度としてよい。具体的な熱プレスの設定温度は、各層のガラス転移温度に応じて適宜選択することができるが、例えば、100℃以上、110℃以上、120℃以上であってよく、また、170℃以下、160℃以下、150℃以下であってもよい。
【0041】
《カード》
図2(a)及び(b)に示すように、本発明のカード100は、
表層10及びコア基材層40を具備しており、
表層10とコア基材層40との間の少なくとも一部の領域に、軟化層を具備しており、かつ
軟化層30が存在している領域上の表層10の領域10aが、領域10a以外の領域と異なる表面形状を有している。
【0042】
図2(b)に示すように、本発明のカード100は、表層10とコア基材層40との間の少なくとも一部の領域に、随意の中間層20を更に有していてよい。この中間層20のガラス転移温度は、軟化層30のガラス転移温度よりも高くてよい。本発明のカード100が中間層20を有する場合、軟化層30の少なくとも一部が、表層10と中間層20との間の少なくとも一部の領域、又は、図2(a)に示すように、中間層20とコア基材層40との間の少なくとも一部の領域に存在していてもよい。
【0043】
また、上記で言及したように、コア基材層は、単層であってもよく、又は図1(c)に示すように、中間コア基材層44、及び中間コア基材層44の両側に存在している最外コア基材層42で構成されていてもよい。
【0044】
中間層を有するカードの態様においては、表層が色材を含有しておらず、かつ中間層が色材を含有していてよい。
【実施例
【0045】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0046】
《カードの作製》
まず、カードを構成する中間コア基材層の両面側に、最外コア基材層を配置し、これらを120℃、16トン、14分の条件で、平坦な熱プレス面を用いて熱プレスした。
【0047】
次いで、軟化層、中間層、及び表層を、表1に示す順番となるように配置した。軟化層は、シルク印刷により、積層させる面の一部に積層させ、中間層及び表層は、オフセット印刷により、積層させる面の全体に積層させた。
【0048】
次いで、これらを上記と同じ条件で、平坦な熱プレス面を用いて熱プレスして、実施例1~2及び比較例1~3のカードを作製した。
【0049】
各層を構成する材料は、以下のとおりである:
表層:アクリレート系樹脂を主成分としたUVオフセットインキ(実施例1~2及び比較例1~2、Tg147℃、1μm)、ポリエステル系シルク印刷用インキ(比較例3、Tg70℃、2μm)
中間層:アクリレート系樹脂を主成分としたUVオフセットインキ(Tg147℃、1μm)
軟化層:塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(Tg75℃、2μm)
中間コア基材層:PETGフィルム(Tg74℃、700μm)
最外コア基材層:PETフィルム(実施例1~2並びに比較例1及び3、Tg80℃、50μm)、PETGフィルム(比較例2、Tg74℃、50μm)
【0050】
《評価》
作製したカードの外観を目視により観察し、軟化層が存在している領域と、その他の領域とが異なる表面形状を有しているか否かを評価した。以下の表1においては、異なる表面形状を有しているもの、具体的には、表層がある領域の表面が、他の領域の表面よりも平坦であり、グロス状の外観を有しているものを〇、有していないものを×とした。
【0051】
また、カードの軟化層が存在している領域の表面強度を、カードの表面を爪で擦過して、軟化層が存在している部分の傷つきが見られるか否かを評価した。軟化層が存在している領域における傷つきが見られなかったものを〇、見られたものを×とした。
【0052】
結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1から、表層と中間層との間の少なくとも一部の領域、又は中間層とコア基材層との間の少なくとも一部の領域に、軟化層が存在しており、かつ軟化層のガラス転移温度が、表層、中間層及び最外コア基材層のガラス転移温度よりも低い、実施例1及び2のカードは、所望の外観及び良好な表面強度が得られていることが確認できよう。
【0055】
これに対し、比較例1のカードは、軟化層が最外に存在しており、軟化層が存在している領域とその他の領域とが異なる表面形状を有していたものの、軟化層が存在している領域の表面強度が良好ではなかった。
【0056】
比較例2のカードは、コア基材層のガラス転移温度が軟化層のガラス転移温度よりも低いため、熱プレス時に表層の表面の微細な凹凸形状がコア基材層に吸収され、その結果、一様なグロス状の表面形状が形成されていた。
【0057】
また、比較例3のカードは、表層のガラス転移温度が軟化層のガラス転移温度よりも低いため、熱プレス時に表層の表面の微細な凹凸形状が平坦化され、その結果、一様なグロス状の表面形状が形成されていた。
【符号の説明】
【0058】
10 表層
10a 軟化層が存在している領域上の表層の領域
20 中間層
30 軟化層
40 コア基材層
42 最外コア基材層
44 中間コア基材層
100 カード
200 熱プレス機
図1
図2