(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】光半導体素子及び光伝送装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/107 20060101AFI20220617BHJP
【FI】
H01L31/10 B
(21)【出願番号】P 2018108966
(22)【出願日】2018-06-06
【審査請求日】2021-03-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人新エネル ギー・産業技術総合開発機構、「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513065077
【氏名又は名称】技術研究組合光電子融合基盤技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】下山 峰史
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-147352(JP,A)
【文献】特開2015-046429(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105576072(CN,A)
【文献】特開2018-082089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/08-31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の屈折率及び第1の光吸収係数を備えた第1の半導体層と、
第2の屈折率及び第2の光吸収係数を備え、前記第1の半導体層上に形成された第2の半導体層と、
を有し、
前記第2の屈折率は、前記第1の屈折率より大きく、
前記第2の光吸収係数は、前記第1の光吸収係数より大きく、
前記第1の半導体層は、
p型の第1の領域と、
n型の第2の領域と、
前記第1の領域と前記第2の領域との間
のn型の第3の領域と、
前記第1の領域と前記第3の領域との間のi型の第4の領域と、
前記第2の領域と前記第3の領域との間のi型の第5の領域と、
を有し、
前記第2の半導体層は、前記第1の領域、前記第4の領域及び前記第3の領域上に形成されていることを特徴とする光半導体素子。
【請求項2】
前記第2の領域は前記第3の領域よりも高濃度でn型不純物を含有することを特徴とする請求項
1に記載の光半導体素子。
【請求項3】
前記第1の領域にオーミック接触する第1の金属膜と、
前記第2の領域にオーミック接触する第2の金属膜と、
を有することを特徴とする請求項1
又は2に記載の光半導体素子。
【請求項4】
前記第1の領域は、
前記第1の金属膜と接する第6の領域と、
前記第4の領域と接する第7の領域と、
を有し、
前記第6の領域は前記第7の領域よりも高濃度でp型不純物を含有することを特徴とする請求項
3に記載の光半導体素子。
【請求項5】
前記第1の半導体層の前記第2の半導体層と接する領域にリセスが形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【請求項6】
平面視で前記第1の半導体層と前記第2の半導体層とが重なり合う光電変換部と、
前記光電変換部に繋がるモード変換部と、
を有し、
前記モード変換部内で、前記第1の半導体層は、前記光電変換部に近づくほど幅が広くなる平面形状を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光半導体素子を有することを特徴とする光伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子及び光伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの処理能力への要求が高まるにつれ、データ送受信帯域の拡大が望まれている。電気信号でのデータ伝送には限界が迫りつつあり、光信号の適用が求められている。光信号を電気信号に高効率で変換するためには、損失の低減のために、電気信号を処理する装置に光部品を集積化することが有効である。そこで、近年では、シリコン(Si)基板上に種々の光部品を構成するSiフォトニクスとよばれる分野の研究及び開発が注目を集めつつある。
【0003】
これまで、Siフォトニクスに関し、種々の光半導体素子が提案されているが、十分な光電変換効率を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、光電変換効率を向上することができる光半導体素子及び光伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
光半導体素子の一態様は、第1の屈折率及び第1の光吸収係数を備えた第1の半導体層と、第2の屈折率及び第2の光吸収係数を備え、前記第1の半導体層上に形成された第2の半導体層と、を有する。前記第2の屈折率は、前記第1の屈折率より大きく、前記第2の光吸収係数は、前記第1の光吸収係数より大きい。前記第1の半導体層は、p型の第1の領域と、n型の第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間のn型の第3の領域と、前記第1の領域と前記第3の領域との間のi型の第4の領域と、前記第2の領域と前記第3の領域との間のi型の第5の領域と、を有する。前記第2の半導体層は、前記第1の領域、前記第4の領域及び前記第3の領域上に形成されている。
【0007】
光伝送装置の一態様は、上記の光半導体素子を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、光電変換効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】参考例に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
【
図2A】参考例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図2B】参考例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図2C】参考例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図2D】参考例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図2E】参考例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図3A】第1の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す上面図である。
【
図3B】第1の実施形態に係る光半導体素子における半導体領域のレイアウトを示す図である。
【
図3C】第1の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
【
図4A】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その1)である。
【
図4B】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図5A】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その2)である。
【
図5B】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図6A】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その3)である。
【
図6B】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図7A】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その4)である。
【
図7B】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図8A】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その5)である。
【
図8B】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図9A】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その6)である。
【
図9B】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図10A】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その7)である。
【
図10B】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その7)である。
【
図11A】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その8)である。
【
図11B】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その8)である。
【
図12A】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その9)である。
【
図12B】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その9)である。
【
図13A】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その10)である。
【
図13B】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その10)である。
【
図14A】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その11)である。
【
図14B】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その11)である。
【
図15A】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その12)である。
【
図15B】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その12)である。
【
図16A】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その13)である。
【
図16B】第1の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その13)である。
【
図17】第2の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
【
図18】第3の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
【
図19】第3の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図20】第3の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図21】第4の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
【
図22】第5の実施形態に係る光伝送装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
光部品のうち、光の合分波や変調等の処理を行う部分については、過剰損失を避けるため光を吸収しない特性が求められる。一方で、光信号を電気信号に変換(E/O変換)するための受光部には、光を吸収する特性が求められる。これらの要求を満たす材料の候補として、波長が1.2μm~1.6μmの近赤外光に対し、受光部にGeを、それ以外の部分にSiを用いる組み合わせが挙げられる。この波長の近赤外光はSiに対して透明であり、かつGeに吸収されやすい。
【0011】
E/O変換の効率は受光部の性能を表す重要な指標である。PIN型フォトダイオード(photo diode:PD)のようにキャリアの増倍作用を有さないPDにおいては、受光素子に入射する光子数に対して光電流を生み出すキャリアの生成数の比である量子効率によってE/O変換効率が決定される。これに対してアバランシェフォトダイオード(avalanche photo diode:APD)は、フォトキャリアの増倍作用を有し、実質的な受光感度を増大させることができるため、微弱な光信号の受信に好適な素子である。APDにおける増幅の原理は、イオン化によるキャリアの増倍にある。空乏層内の光吸収によって発生したキャリアが、強い電界によって加速されて大きな運動量を持つと、結晶格子と衝突した際にイオン化によって新たな電子-正孔対(キャリア)を生み出す。生み出されたキャリアがさらに新しいキャリアを生み出すという連鎖反応により雪崩(アバランシュ)的にキャリア数が増幅されることで、変換効率が増幅される。
【0012】
ここで、APDの動作を特徴づける重要な2つの指標であるブレークダウン電圧及びイオン化率比について説明する。PN接合に印加する逆方向電圧を増していくと、ある電圧を境にして、イオン化によるキャリア生成が急激に増加して逆方向電流が急増する。この電圧がブレークダウン電圧とよばれる。ブレークダウン電圧は、APDの材料及び構造に依存するが、一般にAPDのブレークダウン電圧はPIN型PDの動作電圧に比べて数倍から数10倍程度大きい。また、キャリア(電子又は正孔)が単位距離を走行するときに生成する電子-正孔対の数がイオン化率とよばれ、イオン化率は材料に依存する。イオン化率は電子と正孔とのそれぞれについて別個に定義され、この比はイオン化率比とよばれる。伝統的にイオン化率比kは、電子のイオン化率αに対する正孔のイオン化率βとして定義され、すなわちk=β/αで表される。APDの低雑音性の観点から、イオン化率αとイオン化率βとは大きく相違していることが望ましく、イオン化率比kは1から大きく離れていることが望ましい。これは、電子及び正孔は電界中で互いに逆方向の加速を受けるため、イオン化率α及びイオン化率βの差が小さい場合は、生成したキャリアが往復を繰り返すことになって過剰雑音が増大するからである。そして、Geのイオン化率比kが約2程度であるのに対し、Siのイオン化率比は、電界強度に依存するが、1/10から1/50程度であり、1から大きく離れている。従って、APDにおいて雪崩増幅を起こさせる増倍層の材料としてはGeよりもSiの方が好ましい。
【0013】
また、低雑音性に関し、APDの構造の一つとして過剰雑音の発生を避けることを目的として、光吸収層と増倍層とを分離したSACM(separated absorption charge and multiplication)構造がある。
【0014】
(参考例)
ここで、SiフォトニクスにおいてSACM構造を採用したAPDの参考例について説明する。
図1は、参考例に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
【0015】
参考例に係る光半導体素子900は、シリコン(Si)基板911、Si酸化膜912及びSi層913を含むSOI(silicon on insulator)基板910を有する。Si層913はn型Si領域926、及び平面視でn型Si領域926を間に挟む2つのn+Si領域922を含む。n+Si領域922はn型Si領域926よりも高濃度でn型不純物を含有する。n型Si領域926上にi型Si層925が形成され、i型Si層925の表面にp-Si領域923が形成されている。p-Si領域923上にi型ゲルマニウム(Ge)層933が形成され、i型Ge層933の表面にp+Ge領域934が形成されている。Si層913、p-Si領域923を含むi型Si層925、及びp+Ge領域934を含むi型Ge層933の積層体を覆うようにSi酸化膜931が形成されている。Si酸化膜931には、n+Si領域922に達する開口部931N、及びp+Ge領域934に達する開口部931Pが形成されている。開口部931Nを通じてn+Si領域922に接する金属膜934N、及び開口部931Pを通じてp+Ge領域934に接する金属膜934PがSi酸化膜931上に形成されている。
【0016】
このように構成された光半導体素子900は、p+Ge領域934/i型Ge層933/p-Si領域923/i型Si層925/n型Si領域926の積層体を含む。この積層体に逆方向電圧を印加することで、i型Ge層933で光吸収によって発生したキャリアのうち電子がi型Si層925に導入され、i型Si層925の電界で加速されて増幅される。
【0017】
なお、i型Ge層933への光の入射はSi層913を介して行われる。すなわち、光半導体素子900はSi層913を光導波路としており、Si層913を伝播してきた光がエバネッセント光結合によってi型Ge層933へと入射する。このとき、i型Ge層933とSi層913とは、i型Si層925及びp-Si領域923の厚さの分だけ離れており、この距離の分だけ損失が生じやすく、光電変換効率が低くなってしまう。このため、高い信号雑音強度比を得にくい。
【0018】
また、Si層913からみてi型Ge層933の後方に金属膜934Pがあるため、i型Ge層933で吸収しきれなかった光の一部が金属膜934Pに吸収されることがある。金属膜934Pによる光吸収は、光電変換に対して有効なフォトキャリアを生み出さない無効吸収であるため、受光感度及び光電変換効率が低くなってしまう。
【0019】
これらの理由から、この参考例では十分な光電変換効率を得ることができない。
【0020】
更に、光半導体素子900には製造が困難という課題もある。ここで、光半導体素子900の製造方法について説明する。
図2A~
図2Eは、参考例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図である。
【0021】
先ず、
図2Aに示すように、SOI基板910を準備し、Si層913を所定のサイズに加工する。次いで、n型不純物のドーピングを行うことでn型Si領域926及びn
+Si領域922を形成する。
【0022】
次いで、
図2Bに示すように、酸化膜マスク(図示せず)を用いて、n型Si領域926上にSi結晶をホモエピタキシャル選択成長させることでi型Si層925を形成する。その後、i型Si層925の表面にp型不純物のドーピングを行うことでp
-Si領域923を形成する。その後、Si層913及びi型Si層925に注入されたドーパント、すなわちn型Si領域926、n
+Si領域922、p
-Si領域923に含まれるドーパントを電気的に活性化させるために高温の活性化アニール処理を行う。p
-Si領域923を含めたi型Si層925の厚さは700nm程度である。
【0023】
続いて、
図2Cに示すように、別の酸化膜マスク(図示せず)を用いて、p
-Si領域923上にGe結晶をヘテロエピタキシャル選択成長させることでi型Ge層933を形成する。次いで、i型Ge層933の表面にp型不純物のドーピングを行うことでp
+Ge領域934を形成する。更に、i型Ge層933に注入されたドーパント、すなわちp
+Ge領域934に含まれるドーパントの電気的活性化のために高温のアニール処理を行う。活性化アニールに必要な温度はSi層とGe層とで異なるため、アニール処理はそれぞれ別個に必要となる。p
+Ge領域934を含めたi型Ge層933の厚さは1μm程度である。
【0024】
その後、
図2Dに示すように、Si層913、p
-Si領域923を含むi型Si層925、及びp
+Ge領域934を含むi型Ge層933の積層体を覆うようにSi酸化膜931を形成する。続いて、n
+Si領域922に達する開口部931NをSi酸化膜931に形成し、開口部931Nを通じてn
+Si領域922に接する金属膜934NをSi酸化膜931上に形成する。
【0025】
次いで、
図2Eに示すように、p
+Ge領域934に達する開口部931PをSi酸化膜931に形成し、開口部931Pを通じてp
+Ge領域934に接する金属膜934PをSi酸化膜931上に形成する。
【0026】
理論的には、このようにして光半導体素子900を製造することができる。
【0027】
ところが、Siフォトニクスには、Si系CMOS(complementary metal-oxide-semiconductor)トランジスタ等の製造と同様の高精細のプロセス技術を採用できるという利点があるが、上記の製造方法には、このような高精細なプロセス技術をそのまま採用することができない。これは、i型Si層925及びi型Ge層933に伴う段差が大きいためである。一般に、高精細プロセス技術では、焦点深度の小さなステッパ等を用いた露光が行われるため、基板上に存在する段差が大きいほど、焦点がぼやけやすい。上記のように、p-Si領域923を含めたi型Si層925の厚さは700nm程度であり、p+Ge領域934を含めたi型Ge層933の厚さは1μm程度であり、これらに伴う段差は極めて大きい。従って、i型Si層925やi型Ge層933に伴う大きな段差が基板上に存在する状態で露光が行われるため、焦点がぼやけてしまう。また、高精細プロセスに用いられるフォトレジストは粘性が低いために高段差を覆い切れないという問題も発生する。このため、光半導体素子900を高精細に製造することは極めて困難である。
【0028】
一般に、動作速度の観点からAPDの素子容量は小さいことが好ましい。APDの素子容量は主として空乏層(i型半導体層)の形状に依存し、空乏層の厚さに反比例し、断面積に比例する。光半導体素子900では、i型Ge層933が空乏層に相当し、SOI基板910の厚さ方向でi型Ge層933がp+Ge領域934とn型Si領域926とに挟まれているため、素子容量はi型Ge層933がSOI基板910の厚さ方向で厚いほど小さくなる。従って、素子容量の低減のためにはi型Ge層933は厚いことが好ましい。更に、i型Ge層933には、p+Ge領域934のための厚さも必要とされる。これらの理由から、p+Ge領域934を含めたi型Ge層933の厚さは1μm程度である。また、i型Si層925には倍増作用のための厚さが必要とされ、p-Si領域923を含めたi型Si層925の厚さは700nm程度である。
【0029】
また、オーミック接触のために、p型不純物のドーピングによりp+Ge領域934を形成するが、厚さ方向で適切な不純物プロファイルが得られる条件でGe層のドーピングと活性化アニールを含む熱履歴とを制御することは容易ではない。Ge層のドーパント活性化に必要な温度はSi層に比べ低いため、酸化膜の形成や電極の形成といった工程で受ける熱履歴の影響も考慮する必要がある。よって、酸化膜や電極の形成に使用できる装置等にも制約が生じることになる。例えば、活性化アニール及び熱履歴の影響によりp型不純物がi型Ge層933に深く拡散したのでは、i型Ge層933による光吸収に影響が及んでしまう。
【0030】
このように、参考例に係る光半導体素子900には、特性及び製造プロセスに関して改良の余地がある。本発明者は、これらの知見に基づいて鋭意検討を行い、以下のような実施形態に想到した。以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。以下の説明では、同一又は対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は省略することがある。
【0031】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態は、APDを含む光半導体素子に関する。
図3Aは、第1の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す上面図である。
図3Bは、第1の実施形態に係る光半導体素子における半導体領域のレイアウトを示す図である。
図3Cは、第1の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
図3Cは、
図3A及び
図3B中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0032】
図3A~
図3Cに示すように、第1の実施形態に係る光半導体素子100は、Si基板111、Si酸化膜112及びSi層113を含むSOI基板110を有する。光半導体素子100は、導波路領域141、モード変換部142及び光電変換部143を含む。導波路領域141では、Si層113が光導波路の形状に加工されている。モード変換部142では、Si層113が光モード変換器の形状に加工されている。
【0033】
光電変換部143において、例えば、Si層113は矩形の平面形状に加工されている。Si層113は、光電変換部143への光の入射方向に垂直な方向に順に並ぶ、p+Si領域121A、p-Si領域121B、i型Si領域124、p-Si領域123、i型Si領域125及びn+Si領域122を含む。p+Si領域121A及びp-Si領域121Bはp型領域121に含まれる。p-Si領域123はp型領域121とn+Si領域122との間にあり、i型Si領域124はp型領域121とp-Si領域123との間にあり、i型Si領域125はn+Si領域122とp-Si領域123との間にある。例えば、p+Si領域121Aはボロン(B)を1.5×1019cm-3~2.5×1019cm-3の濃度で含有する。例えば、p-Si領域121BはBを1.5×1018cm-3~2.5×1018cm-3の濃度で含有する。例えば、p-Si領域123はBを0.5×1018cm-3~1.5×1018cm-3の濃度で含有する。例えば、n+Si領域122はリン(P)を0.5×1019cm-3~1.5×1019cm-3の濃度で含有する。p型領域121は第1の領域の一例である。n+Si領域122は第2の領域の一例である。p-Si領域123は第3の領域の一例である。i型Si領域124は第4の領域の一例である。i型Si領域125は第5の領域の一例である。p+Si領域121Aはp-Si領域121Bよりも高濃度でp型不純物を含有し、p+Si領域121Aは第6の領域の一例であり、p-Si領域121Bは第7の領域の一例である。
【0034】
p-Si領域121B、i型Si領域124及びp-Si領域123上にi型Ge層133が形成されている。i型Ge層133の屈折率及び光吸収係数は、Si層113の屈折率及び光吸収係数よりも大きい。
【0035】
なお、i型の半導体層には意図的な不純物のドーピングが行われていないが、i型の半導体層が僅かな不純物、例えば1×1015cm-3以下の濃度の不純物を含んでいてもよい。
【0036】
Si層113及びi型Ge層133の積層体を覆うようにSi酸化膜131が形成されている。Si酸化膜131には、p+Si領域121Aに達する開口部131P、及びn+Si領域122に達する開口部131Nが形成されている。開口部131Pを通じてp+Si領域121Aにオーミック接触する金属膜134P、及び開口部131Nを通じてn+Si領域122にオーミック接触する金属膜134NがSi酸化膜131上に形成されている。金属膜134P及び金属膜134Nは、例えばアルミニウム(Al)を含む。
【0037】
このように構成された光半導体素子100は、電気的に金属膜134Pと金属膜134Nとの間に直列に並んだp型領域121(p+Si領域121A及びp-Si領域121B)、i型Si領域124、p-Si領域123、i型Si領域125並びにn+Si領域122のAPDのSACM構造を含む。このAPDの構造に逆方向電圧を印加することで、i型Ge層133で光吸収によって発生したキャリアのうち電子がi型Si領域125に導入され、i型Si領域125の電界で加速されて増幅される。つまり、i型Ge層133が光吸収層として機能し、i型Si領域125が増倍層として機能する。
【0038】
このとき、i型Ge層133がSi層113と接しているため、Si層113からi型Ge層133に光が伝播するに際して損失は小さく、モード結合性に優れ、高い受光感度が得られる。また、i型Ge層133に金属膜を接触させる必要がないため、光半導体素子900のような金属膜による入射光の無効吸収を避け、無効吸収に伴う受光感度の低下を抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態では、APDの素子容量に関し、i型Ge層133が空乏層に相当し、i型Ge層133はSOI基板110の表面に平行な方向でp型領域121とn+Si領域122とに挟まれている。上述のように、APDの素子容量は空乏層の厚さに反比例し、断面積に比例する。従って、本実施形態では、i型Ge層133がSOI基板110の厚さ方向で薄いほど断面積が小さく、素子容量が小さくなる。また、素子容量はi型Ge層133のSOI基板110の表面に平行な方向の寸法が大きいほど小さくなる。このため、動作速度の観点から、i型Ge層133は薄いことが好ましく、本実施形態の構造は高精細なプロセス技術に適している。
【0040】
更に、本実施形態では、モード変換部142により導波路領域141の光導波路内に強く閉じ込められていた導波光モードが広げられ、i型Ge層133への結合性が向上する。従って、受光感度を向上させることが可能である。
【0041】
更に、以下に説明するように、製造プロセスに関しても光半導体素子900に比べて優れている。
図4A~
図16Aは、第1の実施形態に係る光半導体素子100の製造方法を示す上面図であり、
図4B~
図16Bは、第1の実施形態に係る光半導体素子100の製造方法を示す断面図である。
図4B~
図16Bは、それぞれ
図4A~
図16A中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0042】
先ず、
図4A及び
図4Bに示すように、SOI基板110を準備し、Si層113を加工する。例えば、Si基板111の厚さは400μm~600μm、Si酸化膜112の厚さは1.5μm~2.5μm、Si層113の厚さは200nm~300nmである。Si層113は、電子線(electron beam:EB)リソグラフィ及び誘導結合型プラズマ(inductively coupled plasma:ICP)ドライエッチングにより加工することができる。例えば、Si層113は、導波路領域141では一方向に延びる直線状に加工し、モード変換部142では導波路領域141から光電変換部143に向かって広がる平面形状に加工し、光電変換部143では矩形の平面形状に加工する。
【0043】
次いで、
図5A及び
図5Bに示すように、p
-Si領域121Bを形成する予定の領域を開口する開口部152を備えたフォトレジストマスク151をSOI基板110上に形成する。フォトレジストマスク151はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。その後、p型不純物のイオン注入を行うことにより、Si層113にp
-Si領域121Bを形成する。
【0044】
続いて、
図6A及び
図6Bに示すように、フォトレジストマスク151を除去し、p
-Si領域123を形成する予定の領域を開口する開口部154を備えたフォトレジストマスク153をSOI基板110上に形成する。フォトレジストマスク153はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。次いで、p型不純物のイオン注入を行うことにより、Si層113にp
-Si領域123を形成する。
【0045】
その後、
図7A及び
図7Bに示すように、フォトレジストマスク153を除去する。続いて、p
-Si領域121Bの形成や、p
-Si領域123の形成と同様の要領で、フォトレジストマスクの形成、イオン注入及びフォトレジストマスクの除去を2回行い、p
+Si領域121A及びn
+Si領域122を形成する。Si層113のうち、p
-Si領域121Bとp
-Si領域123との間がi型Si領域124であり、p
-Si領域123とn
+Si領域122との間がi型Si領域125である。
【0046】
次いで、
図8A及び
図8Bに示すように、SOI基板110上にSi酸化膜131Aを形成する。Si酸化膜131Aは、例えば化学気相成長(chemical vapor deposition:CVD)法により形成することができ、Si酸化膜131Aの厚さは15nm~25nmとする。その後、アニールを行うことにより、Si層113に注入したp型不純物及びn型不純物を活性化させる。アニールは、例えば900℃~1100℃の温度、0.5分間~2分間の時間で行う。
【0047】
その後、同じく
図8A及び
図8Bに示すように、i型Ge層133を形成する予定の領域を開口する開口部156を備えたフォトレジストマスク155をSi酸化膜131A上に形成する。フォトレジストマスク155はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。例えば、開口部156の全長は25μm~35μm、全幅は1.5μm~2.5μmとする。
【0048】
続いて、
図9A及び
図9Bに示すように、Si酸化膜131Aのドライエッチングにより、Si酸化膜131Aに開口部132を形成する。次いで、フォトレジストマスク155を除去する。
【0049】
その後、
図10A及び
図10Bに示すように、開口部132の内側でSi層113上にi型Ge層133を形成する。i型Ge層133は、例えば減圧(low pressure:LP)CVD法により形成することができ、その厚さは150nm~250nmとする。例えばi型Ge層133はメサ状にヘテロエピタキシャル成長する。
【0050】
次いで、
図11A及び
図11Bに示すように、Si酸化膜131A上にi型Ge層133を覆うようにSi酸化膜を、例えばCVD法により形成し、Si酸化膜131Aを含むSi酸化膜131を形成する。
【0051】
その後、
図12A及び
図12Bに示すように、開口部131Pを形成する予定の領域を開口する開口部158P、及び開口部131Nを形成する予定の領域を開口する開口部158Nを備えたフォトレジストマスク157をSi酸化膜131上に形成する。フォトレジストマスク157はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。i型Ge層133の厚さが150nm~250nmであるため、高精度で露光を行うことができる。
【0052】
続いて、
図13A及び
図13Bに示すように、p
+Si領域121Aに達する開口部131P、及びn
+Si領域122に達する開口部131NをSi酸化膜131に形成する。開口部131P及び開口部131Nは、例えばドライエッチングにより形成することができる。次いで、フォトレジストマスク157を除去する。
【0053】
その後、
図14A及び
図14Bに示すように、開口部131P及び開口部131Nが埋まるようにしてSi酸化膜131上に金属膜134を形成する。金属膜134としては、例えばAl膜をスパッタリング法により形成する。
【0054】
続いて、
図15A及び
図15Bに示すように、金属膜134Pを形成する予定の領域、及び金属膜134Nを形成する予定の領域を覆うフォトレジストマスク159を形成する。フォトレジストマスク159はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。
【0055】
次いで、
図16A及び
図16Bに示すように、金属膜134のドライエッチングを行うことにより、金属膜134P及び金属膜134Nを形成する。その後、フォトレジストマスク159を除去する。
【0056】
このようにして第1の実施形態に係る光半導体素子100を製造することができる。
【0057】
この方法では、段差が小さいために、低粘度で薄いフォトレジスト剤を用いて全面を覆うことが可能であり、高精細の加工が可能となる。フォトレジスト剤の露光を行う際に焦点をぼやけさせる程の大きさの段差が生じないため、終始、高精細で露光を行うことができる。また、金属膜134Pがオーミック接触する対象がSi層であるため、厚さ方向で適切な不純物プロファイルを得やすい。更に、仮に、金属膜134Pがオーミック接触するp+Si領域121Aを形成するためのイオン注入が過剰になったとしても、その下方に光吸収層が存在しないため、光吸収への影響は極めて小さい。
【0058】
また、参考例の光半導体素子900の製造方法と比較して、i型Si層925の形成に相当する工程やGe層へのメタルコンタクト形成が不要となり、工数を削減することができる。
【0059】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、APDを含む光半導体素子に関する。
図17は、第2の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
図17は、第1の実施形態に関する
図3A及び
図3B中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0060】
図17に示すように、第2の実施形態に係る光半導体素子200では、光半導体素子100中のp
-Si領域123に代えてn
-Si領域223が設けられている。例えば、n
-Si領域223はPを0.5×10
18cm
-3~1.5×10
18cm
-3の濃度で含有する。n
+Si領域122はn
-Si領域223よりも高濃度でn型不純物を含有し、n
-Si領域223は第3の領域の一例である。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0061】
このように構成された光半導体素子200は、電気的に金属膜134Pと金属膜134Nとの間に直列に並んだp型領域121(p+Si領域121A及びp-Si領域121B)、i型Si領域124、n-Si領域223、i型Si領域125並びにn+Si領域122のAPDの構造を含む。このAPDの構造に逆方向電圧を印加することで、i型Ge層133で光吸収によって発生したキャリアのうち電子がi型Si領域125に導入され、i型Si領域125の電界で加速されて増幅される。つまり、i型Ge層133が光吸収層として機能し、i型Si領域125が増倍層として機能する。
【0062】
そして、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。更に、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と比較してi型Ge層133に強く電界が印加されやすいため、高速特性の点で好ましい。その一方で、第1の実施形態では、増倍層として機能するi型Si領域125に強く電界が印加されやすいため、増倍率の点で好ましい。
【0063】
ここで、第2の実施形態に係る光半導体素子200の製造方法について説明する。光半導体素子200の製造方法では、先ず、第1の実施形態と同様にして、開口部154を備えたフォトレジストマスク153の形成までの処理を行う(
図6A及び
図6B)。次いで、n型不純物のイオン注入を行うことにより、Si層113にn
-Si領域223を形成する。その後、第1の実施形態と同様にして、フォトレジストマスク153の除去以降の処理を行う。このようにして、第2の実施形態に係る光半導体素子200を製造することができる。
【0064】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、APDを含む光半導体素子に関する。
図18は、第3の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
図18は、第1の実施形態に関する
図3A及び
図3B中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0065】
図18に示すように、第3の実施形態に係る光半導体素子300では、Si層113のp
-Si領域121B、i型Si領域124及びp
-Si領域123にリセス313が形成され、i型Ge層133に代えて、リセス313を埋めるようにしてi型Ge層333が形成されている。つまり、光半導体素子300はバットジョイント型構造を採用している。例えば、リセス313の深さは80nm~120nmである。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0066】
このように構成された光半導体素子300は、電気的に金属膜134Pと金属膜134Nとの間に直列に並んだp型領域121(p+Si領域121A及びp-Si領域121B)、i型Si領域124、p-Si領域123、i型Si領域125並びにn+Si領域122のAPDの構造を含む。このAPDの構造に逆方向電圧を印加することで、i型Ge層333で光吸収によって発生したキャリアのうち電子がi型Si領域125に導入され、i型Si領域125の電界で加速されて増幅される。つまり、i型Ge層333が光吸収層として機能し、i型Si領域125が増倍層として機能する。
【0067】
そして、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第3の実施形態によれば、より高効率でi型Ge層333に電界を印加することができる。更に、Si層113の上面を基準としたi型Ge層333の上面の高さが、i型Ge層133の上面の高さよりも低いため、露光の精度をより高めることができる。
【0068】
ここで、第3の実施形態に係る光半導体素子300の製造方法について説明する。
図19~
図20は、第3の実施形態に係る光半導体素子300の製造方法を示す断面図である。
【0069】
先ず、第1の実施形態と同様にして、Si酸化膜131Aへの開口部132の形成までの処理を行う。次いで、フォトレジストマスク155を除去する(
図9A及び
図9B)。その後、Si酸化膜131Aをマスクとして、Si層113をエッチングすることでリセス313を形成する。リセス313は、例えばICPドライエッチングにより形成することができる。
【0070】
続いて、
図20に示すように、リセス313を埋めるようにSi層113上にi型Ge層333を形成する。i型Ge層333は、例えばLPCVD法により形成することができ、その厚さは150nm~250nmとする。例えばi型Ge層333はリセス313からメサ状にヘテロエピタキシャル成長する。
【0071】
その後、第1の実施形態と同様にして、Si酸化膜131の形成以降の処理を行う。このようにして、第3の実施形態に係る光半導体素子300を製造することができる。
【0072】
第3の実施形態の製造方法では、第1の実施形態と比較するとリセス313の形成に伴う処理の分だけ工数が増加する。ただし、光半導体素子300の外部に、光ファイバへの光入出力に使われるグレイティングカプラ等のSi層113へのリセスの形成が必要な光部品が搭載される場合には、マスクレイアウトの変更等により工数の増加を回避することができる。
【0073】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、APDを含む光半導体素子に関する。
図21は、第4の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
図21は、第1の実施形態に関する
図3A及び
図3B中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0074】
図21に示すように、第4の実施形態に係る光半導体素子400では、光半導体素子300中のp
-Si領域123に代えてn
-Si領域223が設けられている。例えば、n
-Si領域223はPを0.5×10
18cm
-3~1.5×10
18cm
-3の濃度で含有する。n
-Si領域223は第3の領域の一例である。他の構成は第3の実施形態と同様である。
【0075】
このように構成された光半導体素子300は、電気的に金属膜134Pと金属膜134Nとの間に直列に並んだp型領域121(p+Si領域121A及びp-Si領域121B)、i型Si領域124、n-Si領域223、i型Si領域125並びにn+Si領域122のAPDの構造を含む。このAPDの構造に逆方向電圧を印加することで、i型Ge層333で光吸収によって発生したキャリアのうち電子がi型Si領域125に導入され、i型Si領域125の電界で加速されて増幅される。つまり、i型Ge層333が光吸収層として機能し、i型Si領域125が増倍層として機能する。
【0076】
そして、第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。更に、第4の実施形態によれば、第3の実施形態と比較してi型Ge層333に強く電界が印加されやすいため、高速特性の点で好ましい。その一方で、第3の実施形態では、増倍層として機能するi型Si領域125に強く電界が印加されやすいため、増倍率の点で好ましい。
【0077】
ここで、第4の実施形態に係る光半導体素子400の製造方法について説明する。光半導体素子400の製造方法では、先ず、第3の実施形態と同様にして、開口部154を備えたフォトレジストマスク153の形成までの処理を行う(
図6A及び
図6B)。次いで、n型不純物のイオン注入を行うことにより、Si層113にn
-Si領域223を形成する。その後、第3の実施形態と同様にして、フォトレジストマスク153の除去以降の処理を行う。このようにして、第4の実施形態に係る光半導体素子400を製造することができる。
【0078】
第1~第4の実施形態に係る光半導体素子は、例えば、電気信号の処理を行う半導体装置と光半導体素子とをSi基板上に集積した集積回路に好適であり、高速光通信を実現することができる。例えば、コンピュータの中央処理装置(central processing unit:CPU)とメモリとの間の高速光通信や、CPU同士の間の高速光通信に好適である。特に、次世代の大容量光インターコネクト用途に有望である。
【0079】
なお、第1、第2の半導体層の材料はSi及びGeに限定されず、例えば、第1の半導体層としてSi層を用い、第2の半導体層としてSixGe1-x層(0≦x<1)又はGe1-xSnx層(0≦x<1)を用いることができる。
【0080】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、光半導体素子を含む光伝送装置に関する。
図22は、第5の実施形態に係る光伝送装置の構成を示すブロック図である。
【0081】
図22に示すように、光伝送装置500は、制御回路501、受光器502及び発光器503を含む。受光器502は第1~第4の実施形態のいずれかに係る光半導体素子を含んでおり、光導波路を通じて光信号OS1を入力し、電気信号ES1に変換して出力する。発光器503は電気信号ES2を入力し、光信号OS2に変換して出力する。制御回路501は受光器502及び発光器503を制御する。制御回路501はバンプ等を介して受光器502及び/又は発光器503上にフリップチップ実装されていてもよく、ボンディングワイヤ等を介して受光器502及び発光器503に接続されていてもよい。
【0082】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0083】
(付記1)
第1の屈折率及び第1の光吸収係数を備えた第1の半導体層と、
第2の屈折率及び第2の光吸収係数を備え、前記第1の半導体層上に形成された第2の半導体層と、
を有し、
前記第2の屈折率は、前記第1の屈折率より大きく、
前記第2の光吸収係数は、前記第1の光吸収係数より大きく、
前記第1の半導体層は、
p型の第1の領域と、
n型の第2の領域と、
前記第1の領域と前記第2の領域との間のp型又はn型の第3の領域と、
前記第1の領域と前記第3の領域との間のi型の第4の領域と、
前記第2の領域と前記第3の領域との間のi型の第5の領域と、
を有し、
前記第2の半導体層は、前記第1の領域、前記第4の領域及び前記第3の領域上に形成されていることを特徴とする光半導体素子。
(付記2)
前記第1の領域にオーミック接触する第1の金属膜と、
前記第2の領域にオーミック接触する第2の金属膜と、
を有することを特徴とする付記1に記載の光半導体素子。
(付記3)
前記第1の領域は、
前記第1の金属膜と接する第6の領域と、
前記第4の領域と接する第7の領域と、
を有し、
前記第6の領域は前記第7の領域よりも高濃度でp型不純物を含有することを特徴とする付記2に記載の光半導体素子。
(付記4)
前記第3の領域がn型であり、
前記第2の領域は前記第3の領域よりも高濃度でn型不純物を含有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記5)
前記第1の半導体層の前記第2の半導体層と接する領域にリセスが形成されていることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記6)
平面視で前記第1の半導体層と前記第2の半導体層とが重なり合う光電変換部と、
前記光電変換部に繋がるモード変換部と、
を有し、
前記モード変換部内で、前記第1の半導体層は、前記光電変換部に近づくほど幅が広くなる平面形状を有することを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記7)
前記第1の半導体層がSi層であり、
前記第2の半導体層がSixGe1-x層(0≦x<1)であることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記8)
前記第1の半導体層がSi層であり、
前記第2の半導体層がGe1-xSnx層(0≦x<1)であることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記9)
付記1乃至8のいずれか1項に記載の光半導体素子を有することを特徴とする光伝送装置。
【符号の説明】
【0084】
100、200、300、400:光半導体素子
113:Si層
121:p型領域
121A:p+Si領域
121B:p-Si領域
122:n+Si領域
123:p-Si領域
124、125:i型Si領域
133:i型Ge層
134P、134N:金属膜
141:導波路領域
142:モード変換部
143:光電変換部
223:n-Si領域
313:リセス
333:i型Ge層
500:光伝送装置