(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20220617BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20220617BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20220617BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20220617BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20220617BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20220617BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20220617BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
H01L29/78 652C
H01L21/28 301B
H01L21/28 301R
H01L27/06 102A
H01L29/48 D
H01L29/78 652H
H01L29/78 652J
H01L29/78 652M
H01L29/78 652T
H01L29/78 657A
H01L29/78 658A
H01L29/78 658E
H01L29/78 658H
H01L29/86 301D
(21)【出願番号】P 2018214291
(22)【出願日】2018-11-15
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 広信
(72)【発明者】
【氏名】岡本 康宏
(72)【発明者】
【氏名】久田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】新井 耕一
(72)【発明者】
【氏名】町田 信夫
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-164440(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039071(WO,A1)
【文献】特開2017-108030(JP,A)
【文献】特開2015-149346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28、21/336、21/8234、
27/06、
29/12、29/47、29/78、29/872
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなり、且つ、表面および裏面を有する第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の表面上に形成された前記第1導電型の半導体層と、
前記半導体層内に形成され、且つ、前記第1導電型と反対の第2導電型の第1不純物領域と、
前記第1不純物領域内に形成され、且つ、前記半導体層よりも高い不純物濃度を有する前記第1導電型の第2不純物領域と、
前記第2不純物領域と前記半導体層との間の前記第1不純物領域上に、ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極を覆うように形成され、且つ、前記第1不純物領域の一部および前記第2不純物領域の一部を開口する開口部を有する層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に形成され、且つ、前記開口部内において前記第1不純物領域および前記第2不純物領域に電気的に接続されたソース電極と、
前記半導体基板の裏面に形成されたドレイン電極と、
を有し、
前記第1不純物領域の下部の前記半導体層には、再結合層が形成され、
前記再結合層は、前記再結合層の直下に位置している前記半導体層よりも高い点欠陥密度を有する、または、前記半導体層に金属が添加された層であ
り、
前記開口部は、前記半導体層のうち、前記第1不純物領域が形成されていない領域も開口し、
前記ソース電極は、前記開口部内において前記半導体層にも接続されている、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1導電型は、n型であり、
前記第2導電型は、p型であり、
前記第1不純物領域および前記半導体層は、pn型ダイオードを構成し、
前記pn型ダイオードの動作時に、前記第1不純物領域から流れるホールと、前記半導体基板から流れる電子とが、前記再結合層において結合する、半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記再結合層の下部の前記半導体層に、基底面転位が存在している、半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記再結合層の厚さは、1.5μm以上である、半導体装置。
【請求項5】
請求項
1に記載の半導体装置において、
前記第1不純物領域内に形成され、且つ、前記第1不純物領域よりも高い不純物濃度を有する前記第1導電型の第3不純物領域を更に有し、
前記開口部内において、前記第
3不純物領域上および前記第2不純物領域上にシリサイド層が形成され、
前記開口部内において、前記ソース電極は、
前記シリサイド層を介して前記第2不純物領域
に接続され、
前記第3不純物領域および前記シリサイド層を介して前記第1不純物領域に接続され、且つ、前記半導体層に直接接続されている、半導体装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の半導体装置において、
前記ソース電極は、バリアメタル膜、および、前記バリアメタル膜上に形成された導電性膜を有し、
前記バリアメタル膜は、チタン膜若しくは窒化チタン膜、または、チタン膜上に窒化チタン膜が形成された積層膜である、半導体装置。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1不純物領域は、平面視において前記開口部を内包するように形成されている、半導体装置。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体層は、前記半導体基板上に形成された前記第1導電型の第1半導体層、前記第1半導体層上に形成された前記第1導電型の第2半導体層、および、前記第2半導体層上に形成された前記第1導電型の第3半導体層を有し、
前記第1不純物領域は、前記第3半導体層内に形成され、
前記第2不純物領域は、前記第1半導体層よりも高い不純物濃度を有し、
前記再結合層は、前記第2半導体層に前記金属が添加された層である、半導体装置。
【請求項9】
(a)炭化珪素からなり、且つ、その表面上に第1導電型の半導体層が形成された前記第1導電型の半導体基板を準備する工程、
(b)前記半導体層内に、前記第1導電型と反対の第2導電型の第1不純物領域を形成する工程、
(c)前記第1不純物領域の下部の前記半導体層内に、再結合層を形成する工程、
(d)前記第1不純物領域内に、前記半導体層よりも高い不純物濃度を有する前記第1導電型の第2不純物領域を形成する工程、
(e)前記(d)工程後、前記第2不純物領域と前記半導体層との間の前記第1不純物領域上に、ゲート絶縁膜を形成する工程、
(f)前記ゲート絶縁膜上に、ゲート電極を形成する工程、
(g)前記ゲート電極を覆うように層間絶縁膜を形成する工程、
(h)前記層間絶縁膜に、前記第1不純物領域の一部および前記第2不純物領域の一部を開口する開口部を形成する工程、
(i)前記開口部内において前記第1不純物領域および前記第2不純物領域に電気的に接続するように、前記層間絶縁膜上にソース電極を形成する工程、
(j)前記半導体基板の裏面にドレイン電極を形成する工程、
を有し、
前記再結合層は、前記再結合層の直下に位置している前記半導体層よりも高い点欠陥密度を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程では、第1マスクを用いたイオン注入によって、前記第1不純物領域を形成し、
前記(c)工程では、前記第1マスクを用いたイオン注入によって、前記再結合層を形成し、
前記
(d)工程と前記
(e)工程との間に、前記第1マスクは除去される、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項
10に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程の前記イオン注入には、水素またはヘリウムが使用される、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項
11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体層は、前記半導体基板上にエピタキシャル成長法によって形成され、
前記再結合層の下部の前記半導体層に、基底面転位が存在している、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項
12に記載の半導体装置の製造方法において、
前記再結合層の厚さは、1.5μm以上である、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項
9に記載の半導体装置の製造方法において、
(k)前記(d)工程と前記(e)工程との間に、前記第1不純物領域内に、前記第1不純物領域よりも高い不純物濃度を有する前記第1導電型の第3不純物領域を形成する工程、
(l)前記(h)工程と前記(i)工程との間に、前記開口部内において、前記第
3不純物領域上および前記第2不純物領域上に、シリサイド層を形成する工程、
を更に有し、
前記開口部は、前記半導体層のうち、前記第1不純物領域が形成されていない領域も開口し、
前記開口部内において、前記ソース電極は、
前記シリサイド層を介して前記第2不純物領域
に接続され、
前記第3不純物領域および前記シリサイド層を介して前記第1不純物領域に接続され、且つ、前記半導体層に直接接続される、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項
14に記載の半導体装置の製造方法において、
前記ソース電極は、バリアメタル膜、および、前記バリアメタル膜上に形成された導電性膜を有し、
前記バリアメタル膜は、チタン膜若しくは窒化チタン膜、または、チタン膜上に窒化チタン膜が形成された積層膜である、半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項
9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(h)工程では、前記開口部は、平面視において前記第1不純物領域に内包されるように形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
(a)炭化珪素からなり、且つ、表面および裏面を有する第1導電型の半導体基板を準備する工程、
(b)前記半導体基板の表面上に、エピタキシャル成長法によって、前記第1導電型の第1半導体層を形成する工程、
(c)前記第1半導体層上に、エピタキシャル成長法によって、金属が添加された前記第1導電型の第2半導体層を形成する工程、
(d)前記第2半導体層上に、エピタキシャル成長法によって、前記第1導電型の第3半導体層を形成する工程、
(e)前記第3半導体層内に、前記第1導電型と反対の第2導電型の第1不純物領域を形成する工程、
(f)前記第1不純物領域内に、前記第1半導体層よりも高い不純物濃度を有する前記第1導電型の第2不純物領域を形成する工程、
(g)前記(f)工程後、前記第2不純物領域と前記第3半導体層との間の前記第1不純物領域上に、ゲート絶縁膜を形成する工程、
(h)前記ゲート絶縁膜上に、ゲート電極を形成する工程、
(i)前記ゲート電極を覆うように層間絶縁膜を形成する工程、
(j)前記層間絶縁膜に、前記第1不純物領域の一部および前記第2不純物領域の一部を開口する開口部を形成する工程、
(k)前記開口部内において前記第1不純物領域および前記第2不純物領域に電気的に接続するように、前記層間絶縁膜上にソース電極を形成する工程、
(l)前記半導体基板の裏面にドレイン電極を形成する工程、
を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項
17に記載の半導体装置の製造方法において、
前記金属は、鉄またはニッケルである、半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項
17に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1半導体層内に、基底面転位が存在している、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、炭化珪素基板を用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、バンドギャップが広く、最大絶縁電界がシリコン(Si)と比較して約一桁大きいことから、SiCは、Siに代わるパワーデバイスの材料として注目されている。SiC基板を用いたパワーデバイスでは、オン抵抗の低減を目的として、pn型ボディダイオードだけでなく、ショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)を半導体チップ内に内蔵する場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1および非特許文献1には、pn型ボディダイオードおよびショットキーバリアダイオードを内蔵したSiC基板を用いたパワーデバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】K. Kawahara et al., "Impact of Embedding Schottky Barrier Diodes into 3.3 kV and 6.5 kV SiC MOSFETs", ICSCRM2017 TU.D2.8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SiC基板を用いたパワーデバイスでは、SiC基板上にドリフト層としてエピタキシャル層を形成することが一般的に行われている。SiCからなるエピタキシャル層には多種の欠陥が形成されており、欠陥の多くはバルク基板であるSiC基板から伝播したものである。エピタキシャル層は、基底面に対して数度(例えば5度)傾けた面上に、エピタキシャル成長法によって形成されるため、(0001)基底面に含まれる線状の結晶欠陥である基底面転位(BPD:Basal Plane Dislocation)は、電子とホールとの再結合エネルギーに応じて、SiC基板からエピタキシャル層の表面に向かって成長する。また、基底面転位が成長する際には、ショックレー型積層欠陥がエピタキシャル層中に形成されることが知られており、積層欠陥は、電子とホールとの再結合により促進される。
【0007】
ここで、SiC基板を用いたMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)では、pn型ボディダイオードに電流が流れた際に、基底面転位において、p層から注入されたホールとSiC基板から注入された電子とが再結合することにより、積層欠陥が拡大し、SiC結晶の抵抗が増大する問題がある。すなわち、半導体装置の性能が劣化するという問題がある。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0010】
一実施の形態である半導体装置は、炭化珪素からなり、且つ、表面および裏面を有する第1導電型の半導体基板と、半導体基板の表面上に形成された第1導電型の半導体層と、半導体層内に形成され、且つ、第1導電型と反対の第2導電型の第1不純物領域と、第1不純物領域内に形成され、且つ、半導体層よりも高い不純物濃度を有する第1導電型の第2不純物領域と、を有する。また、半導体装置は、第2不純物領域と半導体層との間の第1不純物領域上に、ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、ゲート電極を覆うように形成され、且つ、第1不純物領域の一部および第2不純物領域の一部を開口する開口部を有する層間絶縁膜と、を有する。また、半導体装置は、層間絶縁膜上に形成され、且つ、開口部内において第1不純物領域および第2不純物領域に電気的に接続されたソース電極と、半導体基板の裏面に形成されたドレイン電極と、を有する。ここで、第1不純物領域の下部の半導体層には、再結合層が形成され、再結合層は、再結合層の直下に位置している半導体層よりも高い点欠陥密度を有する、または、半導体層に金属が添加された層である。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される一実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1の半導体装置の要部断面図である。
【
図3】本願発明者らによる計算結果を示すグラフである。
【
図4】実施の形態1の半導体装置の要部断面図である。
【
図5】本願発明者らによる計算結果を示すグラフである。
【
図6】本願発明者らによる計算結果を示すグラフである。
【
図7】実施の形態1の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図20】実施の形態2の半導体装置の要部断面図である。
【
図21】実施の形態2の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図32】実施の形態3の半導体装置の要部断面図である。
【
図33】実施の形態3の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲などを含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップなども含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合などを除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素などの形状、位置関係などに言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0014】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0015】
また、断面図および平面図において、各部位の大きさは実デバイスと対応するものではなく、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。また、断面図が平面図と対応する場合においても、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。
【0016】
また、実施の形態で用いる図面においては、図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。
【0017】
また、以下の実施の形態で「Aの直下に位置しているB」などと表現したときは、AとBとの関係は、互いに直接接している場合も含み、互いの間に他の構成物がある場合も含む。言い換えれば、AとBとの関係は、平面視において重なっていることを意味する。なお、「直下」の代わりに「直上」と表現したときも、同様の関係が成り立つ。
【0018】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造>
図1は、本実施の形態の半導体装置である半導体チップの要部断面図であり、半導体チップは、n型のMISFETが形成されるMISFET領域MRと、pn型ダイオードおよびショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)が形成されるダイオード領域DRとを含む。
【0019】
本実施の形態で使用される半導体基板(基板)SBは、炭素および珪素を含む化合物半導体基板であり、具体的には、窒素(N)のようなn型の不純物が導入された炭化珪素(SiC)基板である。半導体基板SBの不純物濃度は、例えば1×1019/cm3である。半導体基板SBは、表面と、表面と反対側の面である裏面とを有し、半導体基板SBの裏面には、裏面電極として、例えばアルミニウム(Al)膜と金(Au)膜とが積層された導電性膜からなるドレイン電極DEが形成されている。
【0020】
半導体基板SB上には、n型の不純物が導入されたエピタキシャル層(半導体層)EPが形成されている。エピタキシャル層EPの厚さは例えば10μmであり、エピタキシャル層EPの不純物濃度は、素子の定格耐圧に依存するが、ここでは例えば1×1016/cm3である。エピタキシャル層EPは、本実施の形態の半導体装置のドリフト層であり、MISFET領域MRにおいて上下方向に流れる電流の経路となる。
【0021】
エピタキシャル層EPの表面に近い領域において、エピタキシャル層EP内には、アルミニウムのようなp型の不純物が導入されたボディ領域(不純物領域)BRが形成されており、ボディ領域BR内には、窒素のようなn型の不純物が導入されたソース領域(不純物領域)SRが形成されている。ソース領域SRは、MISFETのソース領域を構成し、エピタキシャル層EPは、MISFETのドレイン領域を構成している。ボディ領域BRのうち、ソース領域SRとエピタキシャル層EPとに挟まれた領域が、MISFETのチャネル領域となる。
【0022】
また、ボディ領域BR内には、アルミニウムのようなp型の不純物が導入され、ボディ領域BRよりも高い不純物濃度を有するコンタクト領域CRが形成されている。コンタクト領域CRは、主に、ボディ領域BRとソース電極SEとの接触抵抗を低減させ、ボディ領域BRを所定の電位(ソース電位)に固定させるために設けられている。
【0023】
ボディ領域BRの厚さ、すなわちエピタキシャル層EPの上面からの深さは、例えば0.4μmであり、ボディ領域BRは、エピタキシャル層EPの下面までは達していない。ソース領域SRの厚さは、例えば0.15μmであり、ボディ領域BRの厚さよりも薄い。コンタクト領域CRの厚さは、例えば0.2μmであり、ボディ領域BRの厚さよりも薄いか、ボディ領域BRの厚さと同じである。
【0024】
ソース領域SR上には、例えば250nmの厚さを有するフィールド絶縁膜(素子分離膜)FIが形成されている。フィールド絶縁膜FIは、後述するように、酸化シリコン膜である絶縁膜IF1と、多結晶シリコン膜PS1が酸化されることで形成された酸化シリコン膜との積層膜であるが、本実施の形態では説明の簡略化のため、この積層膜を単層のフィールド絶縁膜FIとして図示している。
【0025】
チャネル領域となるボディ領域BR上には、MISFETのゲート絶縁膜GFが形成され、ゲート絶縁膜GF上には、MISFETのゲート電極GEが形成されている。また、ゲート電極GE上には、キャップ膜として絶縁膜IF2が形成されている。ゲート絶縁膜GFおよびゲート電極GEは、ソース領域SRの一部およびエピタキシャル層EPの一部の上方にも形成されている。ゲート電極GEの一方の端部は、フィールド絶縁膜FI上に位置し、他方の端部は、ゲート絶縁膜GFを介してエピタキシャル層EP上に位置している。ゲート電極GE下のボディ領域BRが、MISFETの動作時におけるチャネル領域となる。
【0026】
ゲート絶縁膜GFは、例えば酸化シリコン膜のような絶縁膜であり、例えば50nmの厚さを有する。ゲート電極GEは、導電性膜であり、例えば燐(P)のようなn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜であり、例えば200nmの厚さを有する。絶縁膜IF2は、例えば窒化シリコン膜のような絶縁膜であり、例えば150nmの厚さを有する。
【0027】
エピタキシャル層EP上には、ゲート電極GEなどを含むMISFETを覆うように、層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜ILは、例えば酸化シリコン膜のような絶縁膜であり、例えば250nmの厚さを有する。層間絶縁膜ILには、ボディ領域BR、コンタクト領域CRおよびソース領域SRの各々の一部を開口する開口部(コンタクトホール)OPが形成されている。
【0028】
また、開口部OP内において、ソース領域SR上およびコンタクト領域CR上には、シリサイド層SIが形成されている。シリサイド層SIは、例えばニッケルシリサイドからなる。
【0029】
層間絶縁膜IL上には、開口部OP内を埋め込むように、ソース領域SRおよびコンタクト領域CRに電気的に接続するソース電極SEが形成されている。すなわち、ソース電極SEは、シリサイド層SIを介してソース領域SRに接続され、コンタクト領域CRおよびシリサイド層SIを介してボディ領域BRに接続されている。このように、ソース電極SEは、ソース領域SRおよびコンタクト領域CRとオーミック接続し、ソース領域SRおよびボディ領域BRには、ソース電極SEからソース電位が供給される。
【0030】
ソース電極SEは、バリアメタル膜、および、バリアメタル膜上に形成された導電性膜を有する。バリアメタル膜は、チタン(Ti)膜若しくは窒化チタン(TiN)膜、または、チタン膜上に窒化チタン膜が形成された積層膜であり、導電性膜は、アルミニウム膜である。
【0031】
また、開口部OPは、エピタキシャル層EPのうち、ボディ領域BRが形成されていない領域も開口している。すなわち、
図1には2つのボディ領域BRが図示されているが、この2つのボディ領域BRの間のエピタキシャル層EPが、開口部OP内において露出している。ソース電極SEは、開口部OP内においてエピタキシャル層EPに直接接続されており、ソース電極SEとエピタキシャル層EPとは、ショットキー接続されている。すなわち、開口部OP内において、SBDが形成されている。
【0032】
また、ボディ領域BRおよびエピタキシャル層EPは、ボディダイオードとしてpn型ダイオードを構成している。すなわち、ダイオード領域DRには、SBDとpn型ダイオードとが形成されている。
【0033】
本実施の形態の主な特徴として、ボディ領域BRの下部のエピタキシャル層EPに再結合層RECが形成されていることが挙げられる。このような再結合層RECを設けることで、pn型ダイオードの動作時に、ボディ領域BRから流れるホールと、半導体基板SBから流れる電子とが、再結合層RECにおいて結合するため、エピタキシャル層EPに存在している基底面転位BPDで積層欠陥が増加することを抑制できる。その結果、MISFETのオン抵抗の増加を抑制することができるので、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0034】
以下に、本願発明者らが検討した検討例の半導体装置を用いて、このような本実施の形態の特徴について詳細に説明する。
【0035】
<検討例の半導体装置と、その問題点>
図2は、検討例の半導体装置である半導体チップの要部断面図である。なお、
図2は断面図であるが、抵抗成分R1、R2などの図示を見易くするため、
図2では一部のハッチングを省略している。また、以下の説明では、本実施の形態との相違点を主に説明し、本実施の形態と重複する箇所の説明は省略する。
【0036】
図2に示されるように、検討例の半導体装置も本実施の形態と同様に、MISFET、SBDおよびボディダイオードであるpn型ダイオードを備えている。しかし、検討例では本実施の形態と異なり、ボディ領域BRの下部に再結合層RECが形成されていない。
【0037】
上述のように、SiCからなる半導体基板SBを用いたデバイス特有の課題として、基底面転位BPDにおいてホールと電子とが再結合すると積層欠陥が増殖し、オン抵抗が増加することが知られている。例えば、MISFETにおいてソースとドレインとに逆方向に電圧が印加された場合に、インバータ回路のボディダイオードであるpn型ダイオードが通電状態となり、
図2に示される電子およびホールが流れる。このホールが基底面転位BPDに注入されると、上記の問題が発生する。
【0038】
このような問題を防ぐ方法として、pn型ダイオードと並列接続するように、半導体チップ内にSBDを内蔵することで、pn型ダイオードの動作時において、ホールが基底面転位BPDに注入されることを防止している。すなわち、SBD内蔵の半導体チップは、pn型ダイオードがオンしない構造となっている。
【0039】
図3は、pn型ダイオードおよびSBDのドレイン電流(ID)およびドレイン-ソース間電圧(VD)の特性について、本願発明者らが計算した結果を示すグラフである。
図3には、半導体チップに求められる定格耐圧が6500V、3300Vおよび1200Vである製品について、各々のpn型ダイオードの特性が示されている。
【0040】
6500V品および3300V品については、半導体チップ内にSBDを内蔵することで、pn型ダイオードがオンしない状態を保つことができるが、1200V品では、pn型ダイオードの動作電圧が低下し、pn型ダイオードがオンしてしまう恐れがあることが判った。
【0041】
1200V品は、6500V品および3300V品と比較して、ドリフト層(エピタキシャル層EP)の厚さが薄く、抵抗成分R2が小さい。このため、ボディ領域BRとエピタキシャル層EPとのpn接合部に加わる電圧VD・R1/(R1+R2)の値が大きくなる。従って、トランジスタの定格電流値(300A/cm2)の電流を流すと、pn型ダイオードがオンするため、ホールが基底面転位BPDに注入され、積層欠陥が増加してしまう。すなわち、1200Vよりも高耐圧の製品では半導体チップ内にSBDを内蔵することで、積層欠陥の増加を抑制できていたが、1200V品では、半導体チップ内にSBDを内蔵するだけでは、積層欠陥の増加を抑制するには不十分であることが、本願発明者らの検討により判った。
【0042】
<本実施の形態の半導体装置の主な特徴>
本実施の形態の半導体装置は、検討例の問題を考慮して発案されたものである。上述のように、本実施の形態の半導体装置の主な特徴は、ボディ領域BRの下部のエピタキシャル層EPに再結合層RECが形成されていることである。再結合層RECは、再結合層RECの直下に位置しているエピタキシャル層EPよりも、高い点欠陥密度を有し、高いシート抵抗を有する。再結合層RECは、エピタキシャル層EPの内部に形成されている層であり、エピタキシャル層EPの下面には達しない位置に形成されている。また、再結合層RECは、エピタキシャル層EP内に存在している基底面転位BPDの上部に形成されている。また、再結合層RECは、ボディ領域BRに接していてもよいが、ボディ領域BRと再結合層RECとの間に薄いエピタキシャル層EPが存在するように、再結合層RECは、ボディ領域BRと離間していてもよい。すなわち、再結合層RECは、ボディ領域BRと基底面転位BPDとの間に設けられていることが重要である。
【0043】
このような再結合層RECを設けることで、pn型ダイオードの動作時に、ボディ領域BRから流れるホールと、半導体基板SBから流れる電子とが、再結合層RECにおいて結合するため、ボディ領域BRから流れてくるホールが、基底面転位BPDに到達し難くなる。基底面転位BPDで積層欠陥が増加すると、電流が流れるドリフト層(エピタキシャル層EP)に、高抵抗の層が形成されることになる。その結果、MISFETのオン抵抗が増加してしまう。
【0044】
また、本実施の形態では、再結合層RECはボディ領域BRの下部に選択的に設けられており、MISFETの電流経路およびSBDの電流経路には、高抵抗の再結合層RECが設けられていない。このため、オン抵抗の増加を抑制できる。このように、pn型ダイオードの電流経路に選択的に再結合層RECを設けることによって、基底面転位BPDでの積層欠陥の増加を抑制することができるので、MISFETのオン抵抗が増加する問題を抑制し、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0045】
以下に、
図4および
図5を用いて、再結合層RECで結合されるホールと、基底面転位BPDで発生する積層欠陥との関係について説明する。
図4は、
図1と同様の断面図であるが、各構成の寸法を記入した図となっている。このため、
図4では、ソース電極SEの図示が省略され、一部のハッチングおよび符号も省略されている。
図5は、再結合層RECに注入されるホール濃度と、再結合層RECの厚さとの関係について、本願発明者らが計算した結果を示すグラフである。なお、
図6は、
図5と同様の目的のグラフであるが、後述の実施の形態2に関連するものである。
【0046】
図4に記入された寸法を基にした面積によって規格化したMISFETを、定格ドレイン電流密度300A/cm
2においてインバータ回路に使用した際、pn型ダイオードには、電流密度300A/cm
2の電流が流れる可能性がある。本実施の形態のMISFETおよびSBDからなる単位セルにおいて、ダイオード領域DRの占める面積の比率は5/7である。このため、ダイオード領域DRだけの面積によって規格化すれば、電流密度420A/cm
2の電流がダイオード領域DRに流れる計算になる。
【0047】
本実施の形態のような、SBDが内蔵され、且つ、定格耐圧が1200VのMISFETの場合、
図3に示されるように、ダイオード領域DR全体の電流のうち、SBDに約2/3の電流が流れ、pn型ダイオードに約1/3の電流が流れる。pn型ダイオードの電流の1/2がホール電流だとすると、70A/cm
2のホール電流が流れ、n型のエピタキシャル層EPにホールが注入されると見積もることができる。
【0048】
ここで、pn型ダイオードに流れるホール電流成分は以下の式(1)で表され、ホール濃度は以下の式(2)で表すことができる。
【0049】
Ih=q・Dh・pn/sqrt(Dh・tp)、Dh=k・T・uh/q
式(1)
p(x)=(pn-pn0)exp(-x/(Dh・tp))+pn0
式(2)
Ihはホール電流、qは素電荷、Dhはホールの拡散係数、pnはpn界面におけるn層側のホール濃度、pn0は熱平衡状態でのn層中のホール濃度、tpはホールの再結合速度、kはボルツマン定数、Tは温度、uhはホール移動度、xはpn界面からの距離である。
【0050】
図5では、ホールの再結合速度をパラメータとして用いて、70A/cm
2のホール電流が再結合層RECに流れ込んだ際のホール濃度の深さ分布が示されている。
【0051】
エピタキシャル層EPにおけるホールの再結合速度が1μsecとすると、1×1017/cm3台のホールがドリフト層の深い位置まで拡散し、基底面転位BPDで再結合する。そこで、ホールの再結合速度が10nsecの再結合層RECを、基底面転位BPDの上部のエピタキシャル層EPに挿入し、再結合層RECの厚さを1.5μm以上とすることで、再結合層RECを通過するホール濃度は、1×1016/cm3以下まで低減される。エピタキシャル層EPへ注入されるホール濃度が低いため、基底面転位BPDにおいて、ホールの再結合によって発生する積層欠陥がほとんど発生しなくなる。
【0052】
すなわち、ここではエピタキシャル層EPの不純物濃度は1×1016/cm3であり、ホール濃度をエピタキシャル層EPの不純物濃度以下とすることで、基底面転位BPDにおけるホールの再結合を抑制することができる。
【0053】
<本実施の形態の半導体装置の製造方法>
以下に、
図7~
図19を用いて、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する。なお、各構成の不純物濃度および厚さなどのように、既に説明を行ったパラメータについては、それらの説明を省略する。
【0054】
図7は、エピタキシャル層EPが形成された半導体基板SBの準備工程を示している。なお、
図7では、基底面転位BPDを図示しているが、
図8以降の図面では図面を見易くするため、基底面転位BPDの図示を省略する。
【0055】
まず、表面、および、表面と反対の面である裏面を有する半導体基板SBを準備する。半導体基板SBは、炭素および珪素を化合物半導体基板であり、具体的には、n型の不純物が導入された炭化珪素(SiC)基板である。
【0056】
次に、基底面に対して5度傾けた半導体基板SBの表面上に、エピタキシャル成長法によって、エピタキシャル層EPを形成する。エピタキシャル層EPをn型とするためには、エピタキシャル成長法で使用されるガスに、例えば窒素(N2)ガスを導入することで達成でき、導入する窒素の量を調整することで、エピタキシャル層EPの不純物濃度を所望の濃度に設定することができる。
【0057】
図8は、ハードマスクHM1、ボディ領域BRおよび再結合層RECの形成工程を示している。
【0058】
まず、エピタキシャル層EP上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、例えば酸化シリコン膜としてTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜のような絶縁膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング処理によって、この絶縁膜をパターニングすることで、エピタキシャル層EP上に、選択的に複数のハードマスクHM1を形成する。次に、複数のハードマスクHM1をマスクとしてアルミニウムをイオン注入することで、エピタキシャル層EP内にp型のボディ領域BRを形成する。ここで、複数のハードマスクHM1は除去せずに残しておく。
【0059】
次に、複数のハードマスクHM1をマスクとして、例えば水素(H)をイオン注入することで、ボディ領域BRの下部に再結合層RECを形成する。イオン注入は複数回に分けて行い、加速エネルギーを100~400KeVの範囲内とし、全ドーズ量を2×1016/cm2とする。本実施の形態では、再結合層RECの厚さは1.5~2.0μmである。再結合層RECは、ボディ領域BRと基底面転位BPDとの間に設けられていればよく、ボディ領域BRに接していてもよいし、ボディ領域BRと離間していてもよい。
【0060】
このように、ボディ領域BRおよび再結合層RECの形成工程に、同じハードマスクHM1を使用しているため、新たなマスクを製造する必要がなく、製造工程を簡略化することができる。
【0061】
なお、注入された水素は後述の各製造工程中において拡散し、最終的に、水素が注入された箇所は、点欠陥として存在することになる。また、イオン注入によってエピタキシャル層EPの深い位置に再結合層RECを形成するため、イオン注入には、質量の軽い元素を用いることが好ましい。そのような元素として、水素の代わりにヘリウム(He)を用いることもできる。
【0062】
図9は、サイドウォールスペーサSWおよびソース領域SRの形成工程を示している。
【0063】
まず、複数のハードマスクHM1を覆うように、ボディ領域BR上に、例えばCVD法によって、例えば酸化シリコン膜を形成する。次に、この酸化シリコン膜に対して異方性エッチング処理を行うことで、酸化シリコン膜をスペーサ状に加工し、複数のハードマスクHM1の各々の側面上にサイドウォールスペーサSWを形成する。
【0064】
なお、上記異方性エッチング処理には、例えばドライエッチング処理が使用されるが、ドライエッチング処理に晒されるボディ領域BRの上面は、ドライエッチング処理によるダメージを受けることが考えられる。しかし、ドライエッチング処理に晒されるボディ領域BRは、MISFETのソース領域SRが形成される領域であり、MISFETのチャネル領域およびSBDが形成される領域でないため、MISFETおよびSBDの性能低下などの観点において、ドライエッチング処理を用いることは、特に問題にならない。
【0065】
次に、複数のハードマスクHM1と、それらの側面に形成されたサイドウォールスペーサSWとをマスクとして、例えば窒素をイオン注入することで、ボディ領域BR内にn型のソース領域SRを形成する。ソース領域SRは、ボディ領域BRの中央部に形成され、平面視においてボディ領域BRに内包されるように形成される。すなわち、互いに隣接する2つのボディ領域BR同士の間には、ボディ領域BRおよびソース領域SRが形成されていないエピタキシャル層EPが存在し、このエピタキシャル層EPとソース領域SRとの間には、0.5μm程度の幅を有するボディ領域BRが存在している。
【0066】
その後、ウェットエッチング処理を用いて、複数のハードマスクHM1、および、それらの側面に形成されたサイドウォールスペーサSWを除去する。ここで、互いに隣接する2つのボディ領域BR同士の間のエピタキシャル層EPの上面は、後にSBDが形成される領域となるため、良好なショットキー接続を行うために、このエピタキシャル層EPの上面にはエッチングによるダメージを少なくすることが好ましい。従って、ハードマスクHM1およびサイドウォールスペーサSWの除去には、ウェットエッチング処理を用いることが好ましい。
【0067】
図10は、コンタクト領域CRの形成工程を示している。
【0068】
まず、ボディ領域BRの一部を選択的に開口するレジストパターンRP1を形成する。次に、レジストパターンRP1をマスクとして、アルミニウムをイオン注入することで、ボディ領域BR内にp型のコンタクト領域CRを形成する。コンタクト領域CRは、ソース領域SRに接する位置に形成され、平面視においてボディ領域BRに内包されるように形成される。その後、アッシング処理などによって、レジストパターンRP1を除去する。
【0069】
図11は、各不純物領域に対する熱処理工程を示している。
【0070】
まず、エピタキシャル層EPの上面および半導体基板SBの裏面を覆うように、カーボン(C)膜CFを形成する。次に、エピタキシャル層EPおよび半導体基板SBに対して、例えば1700~1800℃の熱処理を施すことで、半導体基板SB、エピタキシャル層EP、ボディ領域BR、ソース領域SRおよびコンタクト領域CRに含まれる不純物を活性化させる。この熱処理は比較的高温であり、シリコンの融点を超える温度であるため、この熱処理は、多結晶シリコン膜などからなるゲート電極GEの形成前に行うことが好ましい。その後、カーボン層CFを除去する。
【0071】
図12は、絶縁膜IF1および多結晶シリコン膜PS1の形成工程を示している。
【0072】
まず、エピタキシャル層EP上に、例えばCVD法によって、例えば酸化シリコン膜からなり、例えば20nmの厚さを有する絶縁膜IF1を形成する。次に、絶縁膜IF1上に、例えばCVD法によって、例えば100nmの厚さを有する多結晶シリコン膜PS1を形成する。多結晶シリコン膜PS1を構成する材料には、SiCよりも酸化速度が速い半導体であるシリコンを用いることが好ましい。
【0073】
次に、多結晶シリコン膜PS1の一部を選択的に覆うレジストパターンを形成する。次に、レジストパターンをマスクとしてドライエッチング処理を行うことで、レジストパターンから露出している多結晶シリコン膜PS1を除去する。この時、絶縁膜IF1がエッチングストッパ膜として機能している。次に、アッシング処理などによって、レジストパターンを除去する。次に、多結晶シリコン膜PS1をマスクとしてウェットエッチング処理を行うことで、多結晶シリコン膜PS1に覆われていない絶縁膜IF1を除去し、ソース領域SRの一部、エピタキシャル層EPの一部、および、これらの間に形成されているボディ領域BRを露出させる。この露出されたボディ領域BRが、MISFETのチャネル領域となる。
【0074】
絶縁膜IF1の除去には、ドライエッチング処理ではなくウェットエッチング処理を用いているため、チャネル領域となるボディ領域BRの上面がダメージを受けることを防ぐことができる。これにより、MISFETのオフ電流の増大などの性能低下が起きることを抑制できる。
【0075】
また、ウェットエッチング処理では、パターニングの位置合わせ精度が比較的低い。すなわち、エッチング対象の膜の上部にマスクパターンを形成し、このマスクパターンをマスクとしてウェットエッチング処理を行った場合、上記膜の端部が、マスクパターンの端部よりも内側に後退しやすい。そして、この後退量を制御することが困難であるという問題がある。
【0076】
これに対し、本実施の形態では、まずドライエッチング処理によって多結晶シリコン膜PS1を精度よく加工し、次にウェットエッチング処理によって絶縁膜IF1を加工している。多結晶シリコン膜PS1の下の絶縁膜IF1の厚さが20nm程度であり、比較的薄いため、絶縁膜IF1を開口するために行うウェットエッチング処理の時間を短縮することができる。従って、ウェットエッチング処理によるエッチング対象の膜の後退量を最小限に抑えることができるため、ウェットエッチング処理による加工精度を高めることができる。これにより、チャネル長方向におけるMISFETの幅を縮小することができるので、MISFETの高集積化が可能となる。
【0077】
図13は、ゲート絶縁膜GFおよびフィールド絶縁膜FIの形成工程を示している。
【0078】
まず、エピタキシャル層EPおよび多結晶シリコン膜PS1に対して熱酸化処理を行うことで、絶縁膜IF1から露出しているソース領域SR、ボディ領域BRおよびエピタキシャル層EPの各々の上面に、酸化シリコン膜からなり、例えば50nmの厚さを有するゲート絶縁膜GFを形成する。この時、多結晶シリコン膜PS1も酸化され、多結晶シリコン膜PS1全体が酸化シリコン膜となる。ここでは、多結晶シリコン膜PS1が酸化された酸化シリコン膜と、多結晶シリコン膜PS1の下に存在していた絶縁膜IF1との積層膜を、フィールド絶縁膜FIとして図示している。なお、フィールド絶縁膜FIの厚さは、例えば250nmである。
【0079】
フィールド絶縁膜FI1とゲート絶縁膜GFとは、何れも酸化シリコン膜からなり、互いに接続されて一体となっているが、ゲート絶縁膜GFが形成されている箇所が、実質的にMISFETのゲート絶縁膜として機能するため、ここではこれらを区別している。
【0080】
図14は、多結晶シリコン膜PS2および絶縁膜IF2の形成工程を示している。
【0081】
まず、ゲート絶縁膜GF上およびフィールド絶縁膜FI上に、例えばCVD法によって、例えば200nmの厚さを有するn型の多結晶シリコン膜PS2を形成する。次に、多結晶シリコン膜PS2上に、例えばCVD法によって、例えば窒化シリコン膜からなり、例えば150nmの厚さを有する絶縁膜IF2を形成する。
【0082】
【0083】
フォトリソグラフィ技術および異方性エッチング処理を用いて、ソース領域SRおよびコンタクト領域CRの上方に位置している、絶縁膜IF2の一部を選択的に除去する。次に、加工された絶縁膜IF2をマスクとして、異方性エッチング処理を行うことで、多結晶シリコン膜PS2がパターニングされて、ゲート電極GEが形成される。ゲート電極GEの端部は、フィールド絶縁膜FI上に位置している。また、チャネル領域となるボディ領域BRの上面には、ゲート絶縁膜GF、ゲート電極GEおよび絶縁膜IF2が存在している。
【0084】
図16は、層間絶縁膜ILおよび開口部OPの形成工程を示している。
【0085】
まず、フィールド絶縁膜FI上および絶縁膜IF2上に、例えばCVD法によって、例えば酸化シリコン膜からなり、例えば250nmの厚さを有する層間絶縁膜ILを形成する。次に、ソース領域SR、コンタクト領域CR、および、2つのボディ領域BRの間のエピタキシャル層EPを開口するレジストパターンRP2を形成する。次に、このレジストパターンRP2をマスクとして異方性エッチング処理を行うことで、層間絶縁膜ILおよびフィールド絶縁膜FIを除去し、層間絶縁膜ILに開口部OPを形成する。
【0086】
これにより、開口部OP内において、ソース領域SRおよびコンタクト領域CRが露出され、2つのボディ領域BRの間のエピタキシャル層EPは、残されたフィールド絶縁膜FI、多結晶シリコン膜PS2および絶縁膜IF2によって覆われている。すなわち、SBDが形成される領域が、フィールド絶縁膜FI、多結晶シリコン膜PS2および絶縁膜IF2によって覆われている。その後、アッシング処理などによって、レジストパターンRP2を除去する。
【0087】
図17は、シリサイド層SIの形成工程を示している。
【0088】
サリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)技術によって、ソース領域SR上およびコンタクト領域CR上に、低抵抗のシリサイド層SI1を形成する。シリサイド層SI1は、具体的には次のようにして形成することができる。まず、開口部OP内において、ソース領域SR上およびコンタクト領域CR上、シリサイド層SI1形成用の金属膜を形成する。この金属膜は、例えばニッケルからなる。次に、600~700℃程度の熱処理を施すことによって、ソース領域SRおよびコンタクト領域CRに含まれる材料と、金属膜とを反応させる。これにより、ソース領域SR上およびコンタクト領域CR上に、ニッケルシリサイド(NiSi)からなるシリサイド層SI1が形成される。その後、未反応の金属膜を除去する。
【0089】
図18は、開口部OP内において残されていたフィールド絶縁膜FI、多結晶シリコン膜PS2および絶縁膜IF2の除去工程を示している。
【0090】
まず、開口部OP内において、2つのボディ領域BRの間のエピタキシャル層EPを開口するレジストパターンRP3を形成する。次に、レジストパターンRP3をマスクとしてウェットエッチング処理を行うことで、開口部OP内のフィールド絶縁膜FI、多結晶シリコン膜PS2および絶縁膜IF2を、順次除去する。その後、アッシング処理などによって、レジストパターンRP3を除去する。
【0091】
ここで、ドライエッチング処理ではなくウェットエッチング処理を用いているため、SBDのショットキー接続を行うエピタキシャル層EPの上面がダメージを受け、エピタキシャル層EPの上面が荒れることを防ぐことができる。
【0092】
【0093】
まず、開口部OP内を埋め込むように、層間絶縁膜IL上に、例えばスパッタリング法によって、バリアメタル膜を形成し、バリアメタル膜上に導電性膜を形成することで、バリアメタル膜および導電性膜を有するソース電極SEを形成する。バリアメタル膜は、例えばチタン膜若しくは窒化チタン膜、または、チタン膜上に窒化チタン膜が形成された積層膜であり、導電性膜は、例えばアルミニウム膜である。
【0094】
開口部OP内において、ソース電極SEは、シリサイド層SIを介してソース領域SRに接続され、コンタクト領域CRおよびシリサイド層SIを介してボディ領域BRに接続されている。このように、ソース電極SEは、ソース領域SRおよびコンタクト領域CRとオーミック接続される。
【0095】
また、開口部OP内において、エピタキシャル層EPのうち、ボディ領域BRが形成されていない領域は、ソース電極SEに直接接続されており、ソース電極SEとエピタキシャル層EPとは、ショットキー接続される。すなわち、開口部OP内において、SBDが形成される。
【0096】
その後、半導体基板SBの裏面に、例えばスパッタリング法を用いて、例えばアルミニウム膜および金膜の積層の導電性膜からなるドレイン電極DEを形成することで、
図1に示される構造を得られる。
【0097】
なお、ドレイン電極DEを形成する前に、半導体基板SBの裏面に窒素をイオン注入することで、半導体基板SBよりも高い不純物濃度を有するn型の不純物領域を形成してもよい。また、半導体基板SBの裏面とドレイン電極DEとの間に、ニッケル膜を堆積し、このニッケル膜に対してレーザアニール処理を行うことで、ニッケルシリサイドからなるシリサイド層を形成してもよい。ここでレーザアニール処理によって加熱を行うのは、エピタキシャル層EP上に形成されている素子が過熱されることを防ぐためである。
【0098】
以上により、本実施の形態の半導体装置が製造される。
【0099】
(実施の形態2)
以下に、
図20を用いて、実施の形態2の半導体装置を説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点を主に説明する。
【0100】
実施の形態1では、開口部OP内にSBDを形成していたが、実施の形態2では、開口部OP内にSBDを形成せず、開口部OP内の全体にボディ領域BRが形成されており、SBDを形成する代わりにpn型ダイオードの面積が大きくなっている。すなわち、ボディ領域BRは、平面視において開口部OPを内包するように形成されている。言い換えれば、開口部OPの直下全体には、ソース領域SRおよびコンタクト領域CRを介して、ボディ領域BRが形成されている。また、開口部OP内において、2つのソース領域SR上、および、2つのソース領域SRに挟まれたコンタクト領域CR上に、シリサイド層SIが形成されている。従って、ソース領域SRおよびボディ領域BRは、シリサイド層SIを介してソース電極SEに電気的に接続されている。
【0101】
実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、ボディ領域BRの下部に再結合層RECが形成されている。従って、ボディダイオードであるpn型ダイオードの動作時に、ボディ領域BRから注入されるホールは再結合層で再結合するため、ドリフト層中のホール濃度は増加しない。従って、基底面転位BPDにおけるホールの再結合を抑制することができ、基底面転位BPDにおける積層欠陥の増加を抑制することができる。
【0102】
また、実施の形態1と比較して、半導体チップ内にSBDを内蔵しないため、単位セルの縮小が可能であり、単位面積当たりのオン抵抗が低減する。または、同じオン抵抗で比較すると、チップ面積の低減が可能となる。
【0103】
図6は、本願発明者らが計算した結果を示すグラフである。
図6は、
図5とはSBDが無い点で異なるが、
図5と同様に、再結合層RECに注入されるホール濃度と、再結合層RECの厚さとの関係を示している。
【0104】
実施の形態2では、SBDが無く、pn型ダイオードのみを有しているため、同じ電流値でもホール電流が3倍になる。
図6では、ホールの再結合速度をパラメータとして用いて、210A/cm
2のホール電流が再結合層RECに流れ込んだ際のホール濃度の深さ分布を示している。そこで、ホールの再結合速度が10nsecの再結合層RECを、基底面転位BPDの上部のエピタキシャル層EPに挿入し、再結合層RECの厚さを3.4μm以上とすることで、再結合層RECを通過するホール濃度は、1×10
16/cm
3以下まで低減されている。
【0105】
<実施の形態2の半導体装置の製造方法>
以下に、
図21~
図31を用いて、実施の形態2の半導体装置の製造方法を説明する。実施の形態2の製造方法は、実施の形態1で説明した
図7の工程までは、実施の形態1の製造方法と同様である。
【0106】
図21は、
図7に続く製造工程を示しており、ハードマスクHM2、ボディ領域BRおよび再結合層RECの形成工程を示している。
【0107】
まず、エピタキシャル層EP上に、例えばCVD法によって、実施の形態1のハードマスクHM1と同じ材料からなる絶縁膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング処理によって、この絶縁膜をパターニングすることで、エピタキシャル層EP上に、選択的に複数のハードマスクHM2を形成する。次に、複数のハードマスクHM2をマスクとしてアルミニウムをイオン注入することで、エピタキシャル層EP内にp型のボディ領域BRを形成する。ここで、複数のハードマスクHM2は除去せずに残しておく。
【0108】
次に、複数のハードマスクHM2をマスクとして、例えば水素(H)をイオン注入することで、ボディ領域BRの下部に再結合層RECを形成する。イオン注入は複数回に分けて行い、加速エネルギーを100~400KeVの範囲内とし、全ドーズ量を2×1016/cm2とする。実施の形態2では、再結合層RECの厚さは3.4~5.0μmである。再結合層RECは、ボディ領域BRと基底面転位BPDとの間に設けられていればよく、ボディ領域BRに接していてもよいし、ボディ領域BRと離間していてもよい。なお、実施の形態2でも、水素の代わりにヘリウム(He)を用いることもできる。
【0109】
図22は、サイドウォールスペーサSWおよびソース領域SRの形成工程を示している。
【0110】
まず、実施の形態1と同様の手法によって、複数のハードマスクHM2の各々の側面上にサイドウォールスペーサSWを形成する。
【0111】
次に、複数のハードマスクHM2と、それらの側面に形成されたサイドウォールスペーサSWとをマスクとして、例えば窒素をイオン注入することで、ボディ領域BR内にn型のソース領域SRを形成する。ソース領域SRは、ボディ領域BRの中央部に形成され、平面視においてボディ領域BRに内包されるように形成される。その後、ウェットエッチング処理を用いて、複数のハードマスクHM1、および、それらの側面に形成されたサイドウォールスペーサSWを除去する。
【0112】
図23は、コンタクト領域CRの形成工程を示している。
【0113】
まず、ボディ領域BRの一部を選択的に開口するレジストパターンRP4を形成する。次に、レジストパターンRP4をマスクとして、アルミニウムをイオン注入することで、ボディ領域BR内にp型のコンタクト領域CRを形成する。コンタクト領域CRは、ソース領域SRに接する位置に形成され、平面視においてボディ領域BRに内包されるように形成される。その後、アッシング処理などによって、レジストパターンRP4を除去する。
【0114】
図24は、各不純物領域に対する熱処理工程を示している。
【0115】
まず、実施の形態1と同様の手法によって、カーボン膜CFを形成する。次に、エピタキシャル層EPおよび半導体基板SBに対して、例えば1700~1800℃の熱処理を施すことで、半導体基板SB、エピタキシャル層EP、ボディ領域BR、ソース領域SRおよびコンタクト領域CRに含まれる不純物を活性化させる。その後、カーボン層CFを除去する。
【0116】
図25は、絶縁膜IF1および多結晶シリコン膜PS1の形成工程を示している。
【0117】
まず、実施の形態1と同様の手法によって、エピタキシャル層EP上に絶縁膜IF1を形成し、絶縁膜IF1上に多結晶シリコン膜PS1を形成する。
【0118】
次に、多結晶シリコン膜PS1の一部を選択的に覆うレジストパターンを形成する。次に、レジストパターンをマスクとしてドライエッチング処理を行うことで、レジストパターンから露出している多結晶シリコン膜PS1を除去する。次に、アッシング処理などによって、レジストパターンを除去する。次に、多結晶シリコン膜PS1をマスクとしてウェットエッチング処理を行うことで、多結晶シリコン膜PS1に覆われていない絶縁膜IF1を除去し、ソース領域SRの一部、エピタキシャル層EPの一部、および、これらの間に形成されているボディ領域BRを露出させる。この露出されたボディ領域BRが、MISFETのチャネル領域となる。
【0119】
図26は、ゲート絶縁膜GFおよびフィールド絶縁膜FIの形成工程を示している。
【0120】
まず、実施の形態1と同様な熱酸化処理を行うことで、絶縁膜IF1から露出しているソース領域SR、ボディ領域BRおよびエピタキシャル層EPの各々の上面に、ゲート絶縁膜GFを形成する。この時、多結晶シリコン膜PS1も酸化され、多結晶シリコン膜PS1全体が酸化シリコン膜となる。これにより、多結晶シリコン膜PS1が酸化された酸化シリコン膜と、多結晶シリコン膜PS1の下に存在していた絶縁膜IF1との積層膜からなるフィールド絶縁膜FIが形成される。
【0121】
図27は、多結晶シリコン膜PS2および絶縁膜IF2の形成工程を示している。
【0122】
実施の形態1と同様の手法によって、ゲート絶縁膜GF上およびフィールド絶縁膜FI上に多結晶シリコン膜PS2を形成し、多結晶シリコン膜PS2上に絶縁膜IF2を形成する。
【0123】
【0124】
まず、実施の形態1と同様の手法によって、絶縁膜IF2の一部を選択的に除去する。次に、加工された絶縁膜IF2をマスクとして、異方性エッチング処理を行うことで、多結晶シリコン膜PS2がパターニングされて、ゲート電極GEが形成される。
【0125】
図29は、層間絶縁膜ILおよび開口部OPの形成工程を示している。
【0126】
まず、実施の形態1と同様の手法によって、層間絶縁膜ILを形成する。次に、フォトリソグラフィ技術および異方性エッチング処理を用いて、ソース領域SRおよびコンタクト領域CRが露出するように、層間絶縁膜ILに開口部OPを形成する。
【0127】
図30は、シリサイド層SIの形成工程を示している。
【0128】
実施の形態1と同様の手法によって、ソース領域SR上およびコンタクト領域CR上に、低抵抗のシリサイド層SI1を形成する。実施の形態2では、実施の形態1と異なり、開口部OPの底部全体にシリサイド層SIが形成される。
【0129】
【0130】
実施の形態1と同様の手法によって、開口部OP内を埋め込むように、層間絶縁膜IL上に、ソース電極SEを形成する。開口部OP内において、ソース電極SEは、シリサイド層SIを介してソース領域SRに接続され、コンタクト領域CRおよびシリサイド層SIを介してボディ領域BRに接続されている。このように、ソース電極SEは、ソース領域SRおよびコンタクト領域CRとオーミック接続される。
【0131】
その後、実施の形態1と同様の手法によって、半導体基板SBの裏面に、ドレイン電極DEを形成することで、
図20に示される構造を得られる。
【0132】
(実施の形態3)
以下に、
図32を用いて、実施の形態3の半導体装置を説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点を主に説明する。
【0133】
実施の形態1では、半導体基板SB上に、ドリフト層として単層のエピタキシャル層EPを形成し、エピタキシャル層EP内にボディ領域BRを形成し、その後、ボディ領域BRの下部のエピタキシャル層EP内に、例えば水素をイオン注入することによって、再結合層RECを形成していた。実施の形態3では、ドリフト層として3層のエピタキシャル層EP1~EP3を形成し、これらのうちのエピタキシャル層EP2が再結合層RECを構成している。
【0134】
具体的には、実施の形態1では、水素が注入された領域が最終的に点欠陥を構成し、点欠陥密度を高くすることで再結合層RECが構成されていた。実施の形態3の再結合層RECは、点欠陥密度を高めるのではなく、鉄またはニッケルなどの金属を不純物として添加することで構成されており、このような金属が添加されたエピタキシャル層EP2自体が、再結合層RECを構成している。
【0135】
例えば、上記金属が鉄の場合、SiC中の鉄は、バレンスバンドとコンダクションバンドとから離れた位置に深いエネルギー準位を形成し、再結合中心を構成している。すなわち、このエネルギー準位に電子とホールと注入されると、これらが再結合する。また、鉄のような金属は、各製造工程中の熱によって拡散し難いため、添加されている金属は、最終的に再結合層REC内に留まっている。
【0136】
また、エピタキシャル層EP1は、例えば1×1016/cm3の不純物濃度を有し、例えば8~10μmの厚さを有する。基底面転位BPDは、エピタキシャル層EP1内に存在している。金属が添加されたエピタキシャル層EP2は、例えば1×1017/cm3の不純物濃度を有し、例えば1.5~2.0μmの厚さを有する。エピタキシャル層EP3は、エピタキシャル層EP1よりも高い不純物濃度を有し、例えば1×1017/cm3の不純物濃度を有し、例えば0.3~0.4μmの厚さを有する。
【0137】
ボディ領域BRは、エピタキシャル層EP3内に形成され、例えば0.3~0.4μmの厚さを有する。ボディ領域BRの下面は、エピタキシャル層EP3内に位置していてもよいし、エピタキシャル層EP2内に位置していてもよい。また、実施の形態3でも実施の形態1と同様に、エピタキシャル層EP3のうち、ボディ領域BRが形成されていない領域にソース電極SEが直接形成されていることで、SBDが形成されている。
【0138】
このように、実施の形態3においても、再結合層REC(エピタキシャル層EP2)を用いることで、pn型ダイオードの動作時にボディ領域BRから注入されるホールが再結合層RECで電子と結合するので、基底面転位BPDにおける積層欠陥の増加を抑制することができる。
【0139】
<実施の形態3の半導体装置の製造方法>
以下に、
図33を用いて、実施の形態3の半導体装置の製造方法を説明する。実施の形態3では、実施の形態1と同様の半導体基板SB上に、エピタキシャル成長法を用いてエピタキシャル層EP1を形成し、エピタキシャル層EP1上に、エピタキシャル成長法を用いてエピタキシャル層EP2を形成し、エピタキシャル層EP2上に、エピタキシャル成長法を用いてエピタキシャル層EP3を形成する。
【0140】
その後、ボディ領域BRおよびソース領域SRなどの各構成を形成するが、それらの製造方法は、実施の形態1とほぼ同様であるので、それらの製造方法の説明は省略する。
【0141】
なお、実施の形態3のような3層のエピタキシャル層EP1~EP3を用いて、実施の形態2の半導体装置を製造することも可能である。その場合、エピタキシャル層EP2の厚さは、実施の形態3よりも厚く、例えば3.4~5.0μmとする。
【0142】
以上、本願発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0143】
例えば、上記実施の形態ではSBDを例示したが、SBDに代えてJBS(Junction Barrier Schottky)ダイオードを適用してもよい。JBSダイオードは、SBDの一種であり、ソース電極SEとショットキー接続されるn型のエピタキシャル層EP内に、複数のp型不純物領域が互いに離間するように配置された構造を有する。
【符号の説明】
【0144】
BR ボディ領域
CF カーボン膜
CR コンタクト領域
DE ドレイン電極
DR ダイオード領域
EP、EP1~EP3 エピタキシャル層
FI フィールド絶縁膜
GE ゲート電極
GF ゲート絶縁膜
HM1、HM2 ハードマスク
IF1、IF2 絶縁膜
IL 層間絶縁膜
MR MISFET領域
OP 開口部
PS1、PS2 多結晶シリコン膜
REC 再結合層
RP1~RP4 レジストパターン
SB 半導体基板
SE ソース電極
SI シリサイド層
SR ソース領域
SW サイドウォールスペーサ