(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】BTN1A1に免疫特異的に結合する抗体及び分子並びにそれらの治療的使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20220617BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220617BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220617BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220617BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220617BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20220617BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K39/395 T
A61K39/395 N
C12N15/13
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2018528346
(86)(22)【出願日】2016-12-01
(86)【国際出願番号】 US2016064436
(87)【国際公開番号】W WO2017096051
(87)【国際公開日】2017-06-08
【審査請求日】2019-11-27
(32)【優先日】2015-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517407383
【氏名又は名称】ストキューブ アンド シーオー., インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】517407394
【氏名又は名称】ボード オブ レゲンツ, ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ステファン スングハン ヨー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジョセフ スレース
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン フセシェング リン
(72)【発明者】
【氏名】アムリシュ シャルマ
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】PLOS ONE ,2011年,6(9) e24432, p1-11
【文献】The Journal of Immunology,2010年,vol.184,p3514-3525
【文献】Journal of Biological Chemistry ,1998年, vol.273, No.7,p4171-4179
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
A61P 15/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を含む分子であって、該抗原結合断片が、
(i)(a)下記を含む重鎖可変(V
H)領域:
(1)配列番号7のアミノ酸配列を有するV
H CDR1;
(2)配列番号8のアミノ酸配列を有するV
H CDR2;及び
(3)配列番号9のアミノ酸配列を有するV
H CDR3;並びに
(b)下記を含む軽鎖可変(V
L)領域:
(1)配列番号19のアミノ酸配列を有するV
L CDR1;
(2)配列番号20のアミノ酸配列を有するV
L CDR2;及び
(3)配列番号21のアミノ酸配列を有するV
L CDR3、
(ii)(a)下記を含む重鎖可変(V
H)領域:
(1)配列番号10のアミノ酸配列を有するV
H CDR1;
(2)配列番号11のアミノ酸配列を有するV
H CDR2;及び
(3)配列番号12のアミノ酸配列を有するV
H CDR3;並びに
(b)下記を含む軽鎖可変(V
L)領域:
(1)配列番号22のアミノ酸配列を有するV
L CDR1;
(2)配列番号23のアミノ酸配列を有するV
L CDR2;及び
(3)配列番号24のアミノ酸配列を有するV
L CDR3、
(iii)(a)下記を含む重鎖可変(V
H)領域:
(1)配列番号13のアミノ酸配列を有するV
H CDR1;
(2)配列番号14のアミノ酸配列を有するV
H CDR2;及び
(3)配列番号15のアミノ酸配列を有するV
H CDR3;並びに
(b)下記を含む軽鎖可変(V
L)領域:
(1)配列番号25のアミノ酸配列を有するV
L CDR1;
(2)配列番号26のアミノ酸配列を有するV
L CDR2;及び
(3)配列番号27のアミノ酸配列を有するV
L CDR3、又は
(iv)(a)下記を含む重鎖可変(V
H)領域:
(1)配列番号16のアミノ酸配列を有するV
H CDR1;
(2)配列番号17のアミノ酸配列を有するV
H CDR2;及び
(3)配列番号18のアミノ酸配列を有するV
H CDR3;並びに
(b)下記を含む軽鎖可変(V
L)領域:
(1)配列番号28のアミノ酸配列を有するV
L CDR1;
(2)配列番号29のアミノ酸配列を有するV
L CDR2;及び
(3)配列番号30のアミノ酸配列を有するV
L CDR3
を含む、前記分子。
【請求項2】
前記V
H領域が配列番号3のアミノ酸配列を含み、かつ前記V
L領域が配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項1記載の分子。
【請求項3】
前記抗原結合断片が、グリコシル化BTN1A1に優先的に結合する、請求項1記載の分子。
【請求項4】
前記抗原結合断片が、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの半分未満のKdでグリコシル化BTN1A1に結合し、ここで、任意に、該抗原結合断片が、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの少なくとも10倍小さいKdでグリコシル化BTN1A1に結合する、請求項3記載の分子。
【請求項5】
前記抗原結合断片が、非グリコシル化BTN1A1に対して示される蛍光強度(MFI)の少なくとも2倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する、請求項3記載の分子。
【請求項6】
前記抗原結合断片が、位置N55、N215、N449、又はこれらの任意の組合せにおけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクし、ここで、任意に、該抗原結合断片が、位置N55及びN215におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする、請求項3記載の分子。
【請求項7】
前記抗原結合断片が、配列番号31~41からなる群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも7個の連続するアミノ酸を有するBTN1A1のエピトープに免疫特異的に結合する、請求項1記載の分子。
【請求項8】
前記エピトープが、配列番号34の少なくとも7個の連続するアミノ酸を含む、請求項7記載の分子。
【請求項9】
前記エピトープが、配列番号35の少なくとも7個の連続するアミノ酸を含む、請求項7記載の分子。
【請求項10】
前記エピトープが、配列番号40の少なくとも7個の連続するアミノ酸を含む、請求項7記載の分子。
【請求項11】
前記エピトープが、配列番号31~41からなる群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、又は少なくとも12個の連続するアミノ酸を含む、請求項7記載の分子。
【請求項12】
前記エピトープが、配列番号31~41からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項11記載の分子。
【請求項13】
前記抗原結合断片が、1μM以下の解離定数(Kd)で、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する、請求項1~12のいずれか一項記載の分子。
【請求項14】
前記抗原結合断片が、100nM以下、10nM以下、又は5nM以下の解離定数(Kd)で、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する、請求項13記載の分子。
【請求項15】
前記分子が抗体である、請求項1~14のいずれか一項記載の分子。
【請求項16】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項15記載の分子。
【請求項17】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項15記載の分子。
【請求項18】
前記抗体が、IgG、IgM、又はIgAである、請求項15記載の分子。
【請求項19】
前記分子が、Fab'、F(ab')2、F(ab')3、一価scFv、
又は二価scF
vである、請求項1~14のいずれか一項記載の分子。
【請求項20】
前記分子が組換え産生される、請求項1~19のいずれか一項記載の分子。
【請求項21】
BTN1A1を発現する細胞の増殖を阻害する
ための医薬組成物であって
、請求項1~20のいずれか一項記載の分
子を含む、前記
医薬組成物。
【請求項22】
前記細胞が癌細胞である、請求項21記載の
医薬組成物。
【請求項23】
前記癌細胞が、肺癌細胞、前立腺癌細胞、膵臓癌細胞、卵巣癌細胞、肝臓癌細胞、頭頸部癌細胞、乳癌細胞、及び胃癌細胞からなる群から選択される、請求項22記載の
医薬組成物。
【請求項24】
前記癌細胞が肺癌細胞である、請求項22記載の
医薬組成物。
【請求項25】
前記肺癌細胞が非小細胞肺癌(NSCLC)細胞である、請求項24記載の
医薬組成物。
【請求項26】
前記NSCLC細胞が扁平上皮NSCLC細胞である、請求項25記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.分野)
本発明は、全体として、癌免疫学及び分子生物学の分野に関する。本明細書に提供されるのは、抗BTN1A1抗体又はBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する他の分子、及びこれらの治療的使用である。
【背景技術】
【0002】
(2.背景)
ヒト及び他の哺乳動物の免疫系は、それらを感染及び疾患から防御する。いくつかの刺激性及び抑制性のリガンド及び受容体は、感染に対する免疫応答を最大化すると同時に、自己免疫を制限する厳格な制御系を提供する。最近、抗PD1抗体又は抗PDL1抗体などの、免疫応答を調節する治療法が、一部の癌治療において有効であることが見出された。しかしながら、免疫系を調節することにより疾患を安全かつ効果的に治療する新しい治療法の開発は、とりわけ、転移性癌にとって、差し迫ったニーズであり続けている。本明細書に記載される組成物及び方法は、これらのニーズを満たし、かつ他の関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0003】
(3.概要)
本明細書に提供されるのは、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子である。いくつかの実施態様において、該分子は、抗BTN1A1抗体である。
【0004】
いくつかの実施態様において、該分子は、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及び/又はN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、1以上のグリコシル化モチーフに免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。
【0005】
いくつかの実施態様において、該分子は、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有し、ここで、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりもグリコシル化BTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N55、N215、及び/又はN449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N55でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N215でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、1以上のグリコシル化モチーフに優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N55及びN215でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N215及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N55及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N55、N215、及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。
【0006】
いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの半分未満のKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの少なくとも10倍小さいKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。
【0007】
いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示される蛍光強度(MFI)の少なくとも2倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIの少なくとも5倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。
【0008】
いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及び/又はN449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、BTN1A1の1以上のグリコシル化モチーフを免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN215におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215及びN449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及びN449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。
【0009】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、BTN1A1に免疫特異的に結合し、かつ表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVH又はVLドメインを含む、抗原結合断片を有する分子である。一実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVHドメインとVLドメインの両方を含む抗原結合断片を有することができる。別の実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVH CDRを含む抗原結合断片を有することができる。別の実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVL CDRを含む抗原結合断片を有することができる。さらに別の実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810の少なくとも1つのVH CDR及び少なくとも1つのVL CDRを含む抗原結合断片を有することができる。
【0010】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(a)(1)配列番号7、10、13、及び16からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVH CDR1;(2)配列番号8、11、14、及び17からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVH CDR2;並びに(3)配列番号9、12、15、及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVH CDR3:を含む重鎖可変(VH)領域;又は(b)(1)配列番号19、22、25、及び28からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVL CDR1;(2)配列番号20、23、26、及び29からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVL CDR2;並びに(3)配列番号21、24、27、及び30からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVL CDR3:を含む軽鎖可変(VL)領域:を含む抗原結合断片を有する。
【0011】
また本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される抗BTN1A1抗体のVH鎖、VL鎖、VHドメイン、VLドメイン、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及び/又はVL CDR3をコードする単離された核酸分子である。さらに提供されるのは、これらの核酸分子を含むベクター及び宿主細胞である。
【0012】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、本明細書に記載されるBTN1A1エピトープを(例えば、用量依存的な様式で)競合的に遮断する抗原結合断片を有する。該BTN1A1エピトープは、本明細書に記載されるSTC810のエピトープであることができる。いくつかの実施態様において、該分子は、本明細書に記載されるBTN1A1のエピトープに免疫特異的に結合する抗原結合断片を有することができる。該BTN1A1エピトープは、本明細書に記載されるSTC810のエピトープであることができる。いくつかの実施態様において、該BTN1A1エピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を有する。
【0013】
いくつかの実施態様において、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子は、抗グリコシル化BTN1A1抗体を含む、抗BTN1A1抗体である。該抗体はモノクローナル抗体であることができる。該抗体はヒト化抗体であることができる。該抗体はヒト抗体であることができる。該抗体は、IgG、IgM、又はIgAであることができる。
【0014】
いくつかの実施態様において、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子は、Fab'、F(ab')2、F(ab')3、一価scFv、二価scFv、又は単一ドメイン抗体である。
【0015】
いくつかの実施態様において、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子は組換え産生される。いくつかの実施態様において、該分子は、イメージング剤、化学療法剤、毒素、又は放射性核種にコンジュゲートされる。
【0016】
また本明細書に提供されるのは、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子、及び医薬として許容し得る担体を含む組成物である。さらに本明細書に提供されるのは、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子及び補助剤を含むキットである。
【0017】
また本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。また本明細書に提供されるのは、本明細書に提供される分子を用いて、細胞を化合物とコンジュゲートされた本明細書に提供される分子と接触させることにより、化合物をBTN1A1を発現する細胞に送達する方法である。該化合物は、本明細書に記載されるイメージング剤、治療剤、毒素、又は放射性核種であることができる。該化合物は、抗BTN1A1抗体とコンジュゲートされることができる。該コンジュゲートは、ADCなどの、本明細書に記載される任意のコンジュゲートであることができる。該細胞は癌細胞であることができる。該細胞は、癌細胞と正常細胞の両方を含む細胞の集団であることもできる。
【0018】
また本明細書に提供されるのは、抗BTN1A1抗体を含む、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子の有効量を投与することにより、対象における免疫応答を調節する方法である。免疫応答を調節することは、(a)T細胞活性化を増大させること;(b)T細胞増殖を増大させること;及び/又は(c)サイトカイン産生を増大させることを含むことができる。
【0019】
また本明細書に提供されるのは、BTN1A1を発現する細胞を、抗BTN1A1抗体を含む、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子の有効量と接触させることにより、該細胞のT細胞依存的アポトーシスを増強する方法である。また本明細書に提供されるのは、BTN1A1を発現する細胞を、抗BTN1A1抗体を含む、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子の有効量と接触させることにより、該細胞の増殖を阻害する方法である。該細胞は癌細胞であることができる。
【0020】
さらに、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子の有効量を対象に投与することにより、該対象における癌を治療する方法である。いくつかの実施態様において、該分子は、抗BTN1A1抗体である。いくつかの実施態様において、該分子は、抗グリコシル化BTN1A1抗体である。いくつかの実施態様において、該治療は、免疫応答を活性化するか、又は対象におけるT細胞の活性化及び増殖を促進することができる。いくつかの実施態様において、該分子は癌細胞に結合し、癌細胞の破壊をもたらす免疫応答を誘導する。いくつかの実施態様において、癌細胞の破壊は、該分子のADCC活性によって媒介される。いくつかの実施態様において、癌細胞の破壊は、該分子のCDC活性によって媒介される。
【0021】
いくつかの実施態様において、該対象は転移性癌を有する。該癌は、血液癌又は固形腫瘍であることができる。いくつかの実施態様において、該癌は、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫からなる群から選択される血液癌である。いくつかの実施態様において、該癌は、乳癌、肺癌、胸腺癌、甲状腺癌、頭頸部癌、前立腺癌、食道癌、気管癌、脳腫瘍、肝臓癌、膀胱癌、腎臓癌、胃癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、精巣癌、結腸癌、直腸癌、及び皮膚癌からなる群から選択される固形腫瘍である。該皮膚癌は、黒色腫性皮膚癌又は非黒色腫性皮膚癌のいずれかであることができる。
【0022】
いくつかの実施態様において、該方法は、本明細書に記載されるBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子の対象への全身投与を含む。いくつかの実施態様において、該分子は、静脈内、皮内、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、又は局所に投与される。いくつかの実施態様において、該方法は、第二の抗癌療法を対象に投与することを含み、これは、外科的療法、化学療法、生物学的標的療法、低分子標的療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、免疫療法、又はサイトカイン療法であることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
(4.図面の簡単な説明)
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに示すために含まれる。本発明は、これらの図面のうちの1つ又は複数を、本明細書に提示される具体的な実施態様の詳細な説明と組み合わせて参照することにより、より良く理解することができる。
【0024】
【
図1】
図1-ヒトBTN1A1の線形構造。
図1は、2つの免疫グロブリンドメイン(V-セット、C2-セット_2)及び2つのタンパク質相互作用ドメイン(PRY、SPRY)を含む、ヒトBTN1A1の線形構造を示している。
【0025】
【
図2】
図2-ヒトBTN1A1のサブクローニング。C-末端flagタグを有するヒトBTN1A1の全コード配列(CD)を、標準的なクローニング法を用いて、pcDNA3にサブクローニングした。
図2に示されているように、上のバンドはベクター骨格に対応し、下のバンドはflagタグを有するヒトBTN1A1のCDに対応する。
【0026】
【
図3】
図3-293T細胞におけるグリコシル化特異的突然変異体及び野生型BTN1A1の発現。部位特異的突然変異誘発を用いて、特異的突然変異をヒトBTN1A1の細胞外ドメインにおけるグリコシル化部位(N55Q、N215Q、及びN55QとN215Qの複合)で行った。野生型BTN1A1とその突然変異体形態の両方の発現が
図3に示されている。示されているように、BTN1A1の複合突然変異体(N55QとN215Q)は発現せず、BTN1A1のグリコシル化がその発現に極めて重要であることを示した。
【0027】
【
図4】
図4-BTN1A1はN-結合型グリコシル化される。細胞外ドメインを発現する組換えヒトBTN1A1タンパク質を模擬(-)又はPNGアーゼFのいずれかで1時間処理し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)に供し、クマシー染色した。
図4に示されているように、明白なシフトがPNGアーゼF処理レーンで認められ、BTN1A1のN-結合型グリコシル化を示している。矢印に対応するバンドはPNGアーゼFタンパク質である。
【0028】
【
図5】
図5-全長ヒトBTN1A1タンパク質における推定グリコシル化部位。ヒトBTN1A1の全長配列(配列番号1)をN-結合型グリコシル化部位(Nx[ST]パターン予測ソフトウェア(http://www.hiv.lanl.gov/content/sequence/GLYCOSITE/glycosite.html)に入力した。このソフトウェアによって同定された3つの候補グリコシル化部位は、
図5に示される配列において赤で強調されている。
【0029】
【
図6】
図6-BTN1A1の細胞外ドメインのグリコシル化部位における高度の相同性。3つの種(ヒト(Homo sapiens)、マウス(Mus musculus)、及びウシ(Bos taurus))由来の確認済みのBTN1A1配列をuniprot(www.uniprot.org)から収集し、グリコシル化部位予測ソフトウェア(http://www.hiv.lanl.gov/content/sequence/GLYCOSITE/glycosite.html)に供し、clustal W2(http://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalw2/)を用いて整列させた。
図6に示されているように、グリコシル化部位(出現順に、それぞれ、配列番号49~54)は、種を越えて進化的に保存されている。
【0030】
【
図7】
図7A-抗CD3/CD28刺激による活性化後のマウスT細胞における細胞表面BTN1A1の高い誘導。未感作のマウスT細胞を、2日間、模擬刺激するか(左)又は抗CD3(5ug/ml)及び抗CD28(5ug/ml)で刺激し、フローサイトメトリー解析に供した。
図7Aは、模擬処理細胞と比較したCD3/CD28刺激細胞における細胞表面BTN1A1の高い誘導を示している。
【0031】
図7B-抗CD3/CD28刺激による活性化後のマウスT細胞における細胞表面BTN1A1の高い誘導。未感作のマウスT細胞を、2日間、模擬刺激するか(赤色)又は抗CD3(5ug/ml)及び抗CD28(5ug/ml)(オレンジ色)で刺激し、フローサイトメトリー解析に供した。BTN1A1の発現を二次抗体のみの対照と比較した。
図7Bは、模擬処理細胞と比較したCD3/CD28刺激細胞における細胞表面BTN1A1の高い誘導を示している。青色の曲線は、アイソタイプ対照である。
【0032】
【
図8】
図8-骨髄細胞はB16-Ova黒色腫細胞のBTN1A1発現を誘導する。B16-Ova細胞の細胞外BTN1A1を抗体のみの対照又はFITC-BTN1A1抗体で染色することにより検出し、BTN1A1発現レベルを、フローサイトメトリーを用いて調べた。「BM」という用語は骨髄を表す。
【0033】
【
図9】
図9-マウス抗ヒトBTN1A1抗体のドットブロット解析。
図9Aは、ドットブロット解析の結果を示している。これを用いて、マウス抗ヒトBTN1A1モノクローナル抗体の糖特異性を解析した。6×Hisがタグ付けされた抗原BTN1A1-ECDをPNGアーゼFで処理して、N-グリコシル化を除去した。ポリクローナル抗体を陽性対照に使用した。BTN1A1の種特異性を試験するために、ヒトIgG1 Fc領域がタグ付けされたヒト及びマウスBTN1A1を使用した(ヒトBTN1A1-Fcについては、レーン1~4及びマウスBTN1A1-Fcについては、レーン5~8)。「ECD」という用語は、細胞外ドメインを表す。
図9Bは、
図9Aに示されたドットブロットの配置図を提供している。
【0034】
【
図10】
図10-マウス抗ヒトBTN1A1モノクローナル抗体のFACS解析。ヒトBTN1A1-2NQ(すなわち、N55QとN215Q)及びヒトBTN1A1 WTを一過性トランスフェクションによりHEK293T細胞で発現させた。hBTN1A1の表面発現を、STC702、STC810、STC819、STC820、STC821、STC822、STC838、及びSTC839と表記される抗BTN1A1モノクローナル抗体を用いるFACS解析により測定した。抗BTN1A1ポリクローナル抗体を陽性対照として使用した。
【0035】
【
図11】
図11-固定されたSTC810 MAbに対するBTN1A1-Fc及びBTN1A1-His結合の表面プラズモン共鳴解析。
図11A:プロテインA-CM5チップ上に固定されたSTC810に対する可溶性BTN1A1-Fcタンパク質(2倍希釈で、2~64nM)のリアルタイム結合を示すセンサーグラム。固定されたタンパク質を含まないフローセルを非特異的結合の対照として使用し、提示されたデータから差し引いた。
図11B:プロテインA-CM5チップ上に固定されたSTC810に対する可溶性BTN1A1-Hisタンパク質(4倍希釈で、2~64nM)のリアルタイム結合を示すセンサーグラム。
【0036】
【
図12】
図12-BTN1A1-Fcのエピトープマッピング。STC810及びBTN1A1(ECD)-FcをAg-Ab架橋に供し、高質量MALDIにより分析した。
図12は、R41、K42、K43、T185、及びK188を含む、STC810に架橋されたBTN1A1(ECD)-Fcのアミノ酸残基を示している。
【0037】
【
図13】
図13-BTN1A1-Fcのエピトープマッピング。STC810及びBTN1A1(ECD)-HisをAg-Ab架橋に供し、高質量MALDIにより分析した。
図13は、R68、K78、T175、S179、及びT185を含む、STC810に架橋されたBTN1A1(ECD)-Hisのアミノ酸残基を示している。
【0038】
【
図14】
図14-未変性又は変性条件におけるBTN1A1 WT、N55Q、N215Q、及び2NQ突然変異体のウェスタンブロット解析。(上のパネル)HEK293T細胞に、野生型BTN1A1、並びにN55Q、N215Q、及び2NQ(すなわち、N55QとN215Q)を含む突然変異体BTN1A1の発現ベクターを一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、全細胞溶解物を調製し、タンパク質を未変性SDS-PAGEで分離した。ゲルを、STC810に対する抗体を用いる免疫ブロット解析に供した。(下のパネル)上で調製された細胞溶解物をβ-メルカプトエタノールにより還元し、煮沸により変性させた。試料をSDS-PAGEで分離し、STC810に対する抗体を用いる免疫ブロット解析に供した。BTN1A1-Fcを陽性対照として使用した。
【0039】
【
図15】
図15-共焦点顕微鏡法によるSTC810抗体の免疫蛍光解析。HEK293T細胞に、野生型BTN1A1(BTN1A1 WT)及び突然変異体BTN1A1(BTN1A1-2NQ(すなわち、N55QとN215Q))の発現ベクターを一過性にトランスフェクトした。細胞をカバーガラスの上にプレーティングし、BTN1A1に対する一次抗体(STC810)及びマウスIgGに対する二次抗体でプロービングした。青色の染色は、核を染色するDAPIである。
【0040】
【
図16】
図16-前立腺腫瘍におけるBTN1A1発現の免疫組織化学的検査。癌患者由来の前立腺組織のホルマリン固定パラフィン包埋切片をマウス抗ヒトBTN1A1抗体を用いるBTN1A1の免疫染色に供し、ヘマトキシリン対比染色を伴って、3,3'-ジアミノベンジジン(DAB)により可視化した(パネルB、3μg/mlのSTC810;パネルD、5μg/mlのSTC810)。マウスIgGを陰性対照として使用した(パネルA、3μg/mlのマウスIgG;パネルC、5μg/mlのマウスIgG)。
【0041】
【
図17】
図17-OPAL染色による前立腺腫瘍試料中のBTN1A1発現。各々の蛍光からDAPI、CD8、サイトケラチン、及びBTN1A1(STC810)を分離する多重スペクトルデータからの非混合合成画像。多重化染色アプローチは、各々の抗体用のチラミドシグナル増幅(TSA)増幅免疫蛍光標識とDAPI対比染色の連続適用からなる。免疫蛍光標識の前に、4つ全ての抗原を単一のマイクロ波工程で賦活化する。各々の標識サイクルは、一次抗体、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートされた二次抗体、及び蛍光色素にコンジュゲートされたTSAの適用からなる。各々のTSA-蛍光色素コンジュゲートを適用した後、試料をマイクロ波で再び処理して、一次抗体及び二次抗体をストリッピングすると、共有結合され、かつマイクロ波曝露に対して回復力が非常に高いTSA-蛍光色素コンストラクトが残る。試料をPerkinElmer製のVectra(登録商標)多重スペクトルスライド解析システムを用いてイメージングし、スライド1枚当たり25カ所の目的の視野を自動取得した。重合せ画像は、右下のパネルに示されている。
【0042】
【
図18】
図18-STC810は、全T細胞で処理されたhBTN1A1過剰発現PC3細胞においてアポトーシスをもたらした。T細胞を、抗体の存在下、抗CD3抗体(100ng/ml)及びIL-2(10ng/ml)で活性化させた。1:10の癌細胞:T細胞比をこの試験で使用した。抗体(STC810)処理によって引き起こされたPC3細胞(前立腺癌細胞)のアポトーシスを、リアルタイムイメージングシステムIncuCyte ZOOM(Essen Bioscience)及びグリーンカスパーゼ3/7蛍光基質(10μM、Essen Bioscience)を使用することによりモニタリングした。
図18Aは、グリーンカスパーゼ3/7蛍光PC3細胞で染色されたアポトーシス細胞を示している。
図18Bは、抗体による処理から120時間後のPC3細胞の相対的アポトーシスの計算を示している。
図18Cは、プレート上のPC3細胞の密集度によってモニタリングしたときの癌細胞の増殖を示している。
図18Dは、抗体による処理から120時間後のPC3細胞の相対的増殖の計算を示している。
【0043】
【
図19】
図19-Duolinkアッセイ。Duolinkアッセイは、一般に、単一のタンパク質-タンパク質相互作用を検出するための以下の6つの工程: 1.標的一次抗体とともにインキュベートすること; 2. PLAプローブの「PLUS」及び「MINUS」を添加すること; 3.コネクターオリゴをハイブリダイズさせること; 4.完全なDNA環を形成させるためのライゲーション; 5.ローリングサイクル増幅;並びに6.蛍光プローブを添加して、相互作用を明らかにすることを含む。
【0044】
【
図20】
図20-STC810によるBTN1A1のリソソーム内在化。ポリ-L-リジンカバーガラス上で培養されたBTN1A1 WT又はBTN1A1 2NQ過剰発現293T細胞を、1時間、10μg/mL STC810で処理し又は処理せず、その後、DuoLink試薬を用いて、STC810 5ug/mL及び抗LAMP1 1ug/mLで共染色すると、BTN1A1とリソソームマーカーとの共局在を示す緑色蛍光が生じた(
図22B)。緑のスポット及び核を定量し、その比をチャートに表した(
図22A)。エラーバーはSEMを示している。
*P=0.04
【0045】
【
図21】
図21-FACSによるBTN1A1 WT及びBTN1A1 2NQ発現の検出。BTN1A1 WT、BTN1A1 2NQ、又は空ベクター(EV)を過剰発現するHEK293T細胞のFACS解析。flag発現は、HEK293T細胞におけるBTN1A1(WT又は2NQ; flagタグ化)の発現を示している。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(5.詳細な説明)
B7ファミリーの共刺激分子は、免疫細胞の活性化及び阻害を推進することができる。関連ファミリーの分子-ブリロフィリン(buryrophilin)-も、B7ファミリーメンバーと同様の免疫調節機能を有する。ブチロフィリン、サブファミリー1、メンバーA1(「BTN1A1」)は、I型膜糖タンパク質かつ乳脂肪球皮膜の主要成分であり、B7ファミリーとの構造的類似性を有する。BTN1A1は、乳中の脂肪滴の形成を調節する主要なタンパク質として知られる(Oggらの文献、PNAS, 101(27):10084-10089(2004))。BTN1A1は、T細胞を含む免疫細胞で発現される。組換えBTN1A1による処理は、T細胞活性化を阻害し、EAEの動物モデルを防御することが見出された(Stefferlらの文献、J. Immunol. 165(5):2859-65(2000))。
【0047】
BTN1A1は、癌細胞でも特異的かつ高度に発現される。癌細胞のBTN1A1はグリコシル化されてもいる。BTN1A1の発現を用いて、癌診断を助けるだけでなく、癌治療の有効性を評価することもできる。
【0048】
本明細書に提供されるのは、抗BTN1A1抗体及びBTN1A1に免疫特異的に結合することができる他の分子、並びに癌診断を提供し、癌治療を評価し、又は免疫細胞の活性を調節する際の及び癌を治療する際のそれらの使用方法である。
【0049】
(5.1.定義)
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「a」、「an」、及び「the」という冠詞は、1つ又は複数の該冠詞の文法的対象を指す。例として、抗体(an antibody)は、1つの抗体又は複数の抗体を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「ブチロフィリン、サブファミリー1、メンバーA1」又は「BTN1A1」という用語は、哺乳動物、例えば、霊長類(例えば、ヒト、カニクイザル(cyno))、イヌ、並びに齧歯類(例えば、マウス及びラット)を含む、任意の脊椎動物源由来のBTN1A1を指す。別途規定されない限り、BTN1A1は、様々なBTN1A1アイソフォーム、そのSNP変異体を含む関連BTN1A1ポリペプチド、並びに限定されないが、リン酸化BTN1A1、グリコシル化BTN1A1、及びユビキチン化BTN1A1を含む、BTN1A1の様々な修飾形態も含まれる。本明細書で使用される場合、グリコシル化BTN1A1は、N55、N215、及び/又はN449グリコシル化を有するBTN1A1を含む。
【0051】
ヒトBTN1A1(BC096314.1 GI: 64654887)の例示的なアミノ酸配列を、潜在的グリコシル化部位を太字にしかつ下線を付して、以下に提供する:
【0052】
【0053】
ヒトBTN1A1(BC096314.1 GI: 64654887)の核酸配列をコードする例示的なものを、以下に提供する:
【0054】
【0055】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「抗体」という用語は、特異的な分子抗原に結合することができ、かつ2つの同一のポリペプチド鎖対(ここで、各々の対は、1つの重鎖(約50~70kDa)及び1つの軽鎖(約25kDa)を有し、各々の鎖の各々のアミノ末端部分は、約100~約130又はそれより多くのアミノ酸の可変領域を含み、かつ各々の鎖の各々のカルボキシ末端部分は定常領域を含む)から構成される、ポリペプチドの免疫グロブリン(又は「Ig」)クラス内のB細胞のポリペプチド産物を指す(Borrebaeck(編)(1995)、抗体エンジニアリング(Antibody Engineering)、第2版、Oxford University Press.; Kubyの文献(1997)、免疫学(Immunology)、第3版、W.H. Freeman and Company, New Yorkを参照)。ここで、特異的な分子抗原には、標的BTN1A1が含まれ、これは、BTN1A1ポリペプチド、BTN1A1断片、又はBTN1A1エピトープであることができる。本明細書に提供される抗体としては、モノクローナル抗体、合成抗体、組換え産生抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「モノクローナル抗体」という用語は、単一の細胞クローンもしくはハイブリドーマ又は単一の細胞に由来する細胞の集団の産物である抗体を指す。モノクローナル抗体は、単一分子免疫グロブリン種を産生するために、免疫グロブリン遺伝子をコードする重鎖及び軽鎖から組換え法によって産生された抗体を指すことも意図される。モノクローナル抗体調製物内の抗体のアミノ酸配列は実質的に均一であり、そのような調製物内の抗体の結合活性は実質的に同じ抗原結合活性を示す。対照的に、ポリクローナル抗体は、集団内の様々なB細胞から得られ、これは、特異的抗原に結合する免疫グロブリン分子の組合せである。ポリクローナル抗体の各々の免疫グロブリンは、同じ抗原の異なるエピトープに結合することができる。モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の両方を産生する方法は当技術分野で周知である(Harlow及びLaneの文献、抗体:実験マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)及びBorrebaeck(編)、抗体エンジニアリング:実践ガイド(Antibody Engineering: A Practical Guide)、W.H. Freeman and Co., Publishers, New York, pp. 103-120(1991))。
【0057】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「ヒト抗体」という用語は、ヒト可変領域及び/もしくはヒト定常領域又はヒト生殖系列免疫グロブリン配列に対応するこれらの部分を有する抗体を指す。そのようなヒト生殖系列免疫グロブリン配列は、Kabatらの文献(1991)、免疫学的に興味深いタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242に記載されている。ここで、ヒト抗体は、BTN1A1に結合し、かつヒト生殖系列免疫グロブリン核酸配列の天然の体細胞変異体である核酸配列によってコードされる抗体を含むことができる。
【0058】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来し又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同である一方、該鎖の残りが、別の種に由来し又は別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同である抗体、並びに所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体の断片を指す(米国特許第4,816,567号;及びMorrisonらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984)を参照)。
【0059】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「ヒト化抗体」という用語は、ネイティブな相補性決定領域(「CDR」)残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類などの非ヒト種の対応するCDR(例えば、ドナー抗体)由来の残基に置き換えられているヒト免疫グロブリン(例えば、レシピエント抗体)を含むキメラ抗体を指す。場合によっては、ヒト免疫グロブリンの1以上のFR領域残基が対応する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を有することができる。これらの修飾は、抗体性能をさらに精緻化するために行われる。ヒト化抗体の重鎖又は軽鎖は、少なくとも1つ又は複数の可変領域の実質的に全てを含むことができ、該可変領域では、CDRの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのCDRに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を有し得る。さらなる詳細については、Jonesらの文献、Nature, 321:522-525(1986); Riechmannらの文献、Nature, 332:323-329(1988);及びPrestaの文献、Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596(1992); Carterらの文献、Proc. Natl. Acd. Sci. USA 89:4285-4289(1992);並びに米国特許第6,800,738号、第6,719,971号、第6,639,055号、第6,407,213号、及び第6,054,297号を参照されたい。
【0060】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「組換え抗体」という用語は、組換え手段によって調製、発現、作製、又は単離される抗体を指す。組換え抗体は、宿主細胞内にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現された抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニック及び/もしくはトランスクロモソーマルである動物(例えば、マウスもしくはウシ)から単離された抗体(例えば、Taylor, L. D.らの文献、Nucl. Acids Res. 20:6287-6295(1992)を参照)、又は免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製、発現、作製、もしくは単離された抗体であることができる。そのような組換え抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来するものを含む、可変及び定常領域を有することができる(Kabat, E. A.らの文献(1991)、免疫学的に興味深いタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照)。組換え抗体は、インビトロ突然変異誘発(又はヒトIg配列についてトランスジェニックな動物を使用する場合は、インビボ体細胞突然変異誘発)を受けることもあり、そのため、該組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列のVH及びVL配列に由来し、かつこれに関連するが、インビボのヒト抗体生殖系列レパートリーに天然には存在しない配列であり得る。
【0061】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「中和抗体」は、BTN1A1とその天然のリガンドとの結合を遮断し、BTN1A1によって媒介されるシグナル伝達経路及び/又はその他の生理的活性を阻害する抗体を指す。中和抗体のIC50は、中和アッセイでBTN1A1の50%を中和するのに必要とされる抗体の濃度を指す。中和抗体のIC50は、中和アッセイで0.01~10μg/mlの範囲に及ぶことができる。
【0062】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「抗原結合断片」という用語及び類似の用語は、抗原に免疫特異的に結合し、かつ抗原に対するその特異性及び親和性を抗体に付与するアミノ酸残基を含む抗体の部分を指す。抗原結合断片は、抗体の機能性断片と呼ぶことができる。抗原結合断片は、一価、二価、又は多価であることができる。
【0063】
抗原結合断片を有する分子としては、例えば、Fd、Fv、Fab、F(ab')、F(ab)2、F(ab')2、単鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、又は単一ドメイン抗体が挙げられる。scFvは、一価scFv又は二価scFvであることができる。抗原結合断片を有する他の分子としては、例えば、そのような抗原結合断片が結合活性を保持する限り、重鎖もしくは軽鎖ポリペプチド、可変領域ポリペプチド、もしくはCDRポリペプチド、又はこれらの部分を挙げることができる。そのような抗原結合断片は、例えば、Harlow及びLaneの文献、抗体:実験マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory, New York(1989); Myers(編)、分子生物学及び生物工学:包括的卓上参考書(Molec. Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference)、New York: VCH Publisher社; Hustonらの文献、Cell Biophysics, 22:189-224(1993); Pluckthun及びSkerraの文献、Meth. Enzymol., 178:497-515(1989)、並びにDay, E.D.の文献、先端免疫化学(Advanced Immunochemistry)、第2版、Wiley-Liss社、New York, NY(1990)に記載されているのを見出すことができる。抗原結合断片は、少なくとも5個の連続するアミノ酸残基、少なくとも10個の連続するアミノ酸残基、少なくとも15個の連続するアミノ酸残基、少なくとも20個の連続するアミノ酸残基、少なくとも25個の連続するアミノ酸残基、少なくとも40個の連続するアミノ酸残基、少なくとも50個の連続するアミノ酸残基、少なくとも60個の連続するアミノ残基、少なくとも70個の連続するアミノ酸残基、少なくとも80個の連続するアミノ酸残基、少なくとも90個の連続するアミノ酸残基、少なくとも100個の連続するアミノ酸残基、少なくとも125個の連続するアミノ酸残基、少なくとも150個の連続するアミノ酸残基、少なくとも175個の連続するアミノ酸残基、少なくとも200個の連続するアミノ酸残基、又は少なくとも250個の連続するアミノ酸残基のアミノ酸配列を有するポリペプチドであることができる。
【0064】
抗体の重鎖は、アミノ末端部分が約120~130個又はそれより多くのアミノ酸の可変領域を含み、かつカルボキシ末端部分が定常領域を含む、約50~70kDaのポリペプチド鎖を指す。定常領域は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいて、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、及びミュー(μ)と呼ばれる、5つの異なるタイプのうちの1つであることができる。異なる重鎖はサイズが異なり:α、δ、及びγは、約450個のアミノ酸を含有し、一方、μ及びεは、約550個のアミノ酸を含有する。軽鎖と組み合わされると、これらの異なるタイプの重鎖は、IgGの4つのサブクラス、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含め、それぞれ、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMという、抗体の5つの周知のクラスを生じる。重鎖はヒト重鎖であることができる。
【0065】
抗体の軽鎖は、アミノ末端部分が約100~約110個又はそれより多くのアミノ酸の可変領域を含み、かつカルボキシ末端部分が定常領域を含む、約25kDaのポリペプチド鎖を指す。軽鎖のおおよその長さは、211~217アミノ酸である。定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)又はラムダ(λ)と呼ばれる、2つの異なるタイプがある。軽鎖アミノ酸配列は当技術分野で周知である。軽鎖はヒト軽鎖であることができる。
【0066】
抗体の可変ドメイン又は可変領域は、通常、軽鎖又は重鎖のアミノ末端に位置し、重鎖では約120~130アミノ酸の長さ、軽鎖では約100~110アミノ酸の長さを有し、各々の特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性に関して使用される抗体の軽鎖又は重鎖の部分を指す。可変ドメインは、異なる抗体間で配列が大きく異なる。配列のばらつきはCDRに集中しており、一方、可変ドメイン内のばらつきの小さい部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。軽鎖及び重鎖のCDRは、主に、抗体と抗原との相互作用に関与する。本明細書で使用されるアミノ酸位置の付番は、Kabatらの文献(1991)、免疫学的に興味深いタンパク質の配列(Sequences of proteins of immunological interest)(U.S. Department of Health and Human Services, Washington, D.C.)、第5版に見られるような、EUインデックスによるものである。可変領域はヒト可変領域であることができる。
【0067】
CDRは、免疫グロブリン(Igもしくは抗体)VH β-シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(H1、H2、もしくはH3)のうちの1つ、又は抗体VL β-シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(L1、L2、もしくはL3)のうちの1つを指す。したがって、CDRは、フレームワーク領域配列内に散在する可変領域配列である。CDR領域は当業者に周知であり、例えば、抗体可変(V)ドメイン内の最も超可変性の領域として、Kabatによって定義されている(Kabatらの文献、J. Biol. Chem. 252:6609-6616(1977); Kabatの文献、Adv. Prot. Chem. 32:1-75(1978))。また、CDR領域配列は、保存されたβ-シートフレームワークの一部ではなく、そのため、様々な立体構造を取ることができる残基として、Chothiaによって構造的に定義されている(Chothia及びLeskの文献、J. Mol. Biol. 196:901-917(1987))。両方の用語法が当技術分野で十分に認識されている。標準的な抗体可変ドメイン内のCDRの位置は、数多くの構造の比較によって決定されている(Al-Lazikaniらの文献、J. Mol. Biol. 273:927-948(1997); Moreaらの文献、Methods 20:267-279(2000))。超可変領域内の残基の数は異なる抗体で様々に異なるので、標準的な可変ドメイン付番方式では、標準的な位置に対する追加の残基に、従来、残基番号の次にa、b、cなどの番号が付けられている(Al-Lazikaniらの文献、上記(1997))。そのような術語体系も同様に当業者に周知である。
【0068】
例えば、標準的な表記に従って定義されるCDRを下の表1に示す。
表1:CDR定義
【表1】
【0069】
また、1以上のCDRを共有結合的に又は非共有結合的に分子に組み込んで、それをイムノアドヘシンにすることができる。イムノアドヘシンは、CDRをより大きいポリペプチド鎖の一部として組み込むことができるか、CDRを別のポリペプチド鎖に共有結合的に連結することができるか、又はCDRを非共有結合的に組み込むことができる。CDRは、イムノアドヘシンが対象となる特定の抗原に結合するのを可能にする。
【0070】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、CDRに隣接する可変ドメイン残基を指す。FR残基は、例えば、キメラ、ヒト化、ヒト、ドメイン抗体、ダイアボディ、直鎖抗体、及び二重特異性抗体中に存在する。FR残基は、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0071】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、抗体との関連において使用されるときの「単離された」という用語は、抗体が、細胞物質又は細胞もしくは組織源由来の他の夾雑タンパク質及び/又は抗体が由来する他の夾雑成分を実質的に含まないか、或いは化学合成される場合、化学前駆物質又は他の化学物質を実質的に含まないことを意味する。「細胞物質を実質的に含まない」という言葉は、抗体が、それが単離されるか又は組換え産生される細胞の細胞成分から分離されている抗体の調製物を含む。したがって、細胞物質を実質的に含まない抗体には、(乾燥重量で)約30%、20%、10%、又は5%未満の異種タンパク質(本明細書において「夾雑タンパク質」とも呼ばれる)を有する抗体の調製物が含まれる。ある実施態様において、抗体が組換え産生される場合、それは、培養培地を実質的に含まず、例えば、培養培地は、タンパク質調製物の容量の約20%、10%、又は5%未満に相当する。ある実施態様において、抗体が化学合成によって産生される場合、それは、化学前駆物質又は他の化学物質を実質的に含まず、例えば、それは、タンパク質の合成に関与する化学前駆物質又は他の化学物質から分離されている。したがって、そのような抗体の調製物は、(乾燥重量で)約30%、20%、10%、5%未満の化学前駆物質又は目的の抗体以外の化合物を有する。夾雑成分としては、限定されないが、抗体の治療的使用を妨害する物質を挙げることもでき、また、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質を挙げることができる。ある実施態様において、抗体は、(1)Lowry法(Lowryらの文献、J. Bio. Chem. 193: 265-275, 1951)によって決定したとき、抗体の95重量%超、例えば、99重量%まで、(2)スピニングカップシーケネーターを用いて、N-末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、又は(3)クマシーブルー染色もしくは好ましくは銀染色を用いた還元もしくは非還元条件下でのSDS-PAGEによって均一になるまで精製される。抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、単離された抗体には、組換え細胞内のインサイチュの抗体が含まれる。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。具体的な実施態様において、本明細書に提供される抗体は単離されている。
【0072】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「核酸」、「核酸分子」という用語及び他の類似の用語は互換的に使用されており、DNA、RNA、mRNAなどを含む。
【0073】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、核酸分子との関連において使用される「単離された」という用語は、核酸分子が、該核酸分子の天然の源に存在する他の核酸分子から分離されている核酸分子であることを意味する。さらに、「単離された」核酸分子、例えば、cDNA分子は、他の細胞物質、又は組換え技法によって産生される場合は、培養培地を実質的に含まないものであるか、又は化学合成される場合は、化学前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まないものであることができる。具体的な実施態様において、本明細書に提供される抗体をコードする核酸分子は単離又は精製されている。
【0074】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「結合する」又は「結合すること」という用語は、分子間の相互作用を指す。相互作用は、例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、及び/又はファンデルワールス相互作用を含む、非共有結合的相互作用であることができる。抗体と標的分子、例えば、BTN1A1の単一のエピトープとの間の全体的な非共有結合的相互作用の強度が、そのエピトープに対する抗体の親和性である。「結合親和性」は、通常、分子(例えば、結合タンパク質、例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合的相互作用の合計の強度を指す。
【0075】
結合分子X、例えば、抗体のその結合パートナーY、例えば、抗体の同族抗原に対する親和性は、通常、解離定数(KD)によって表すことができる。低親和性抗体は、通常、抗原にゆっくりと結合し、速やかに解離する傾向があるのに対し、高親和性抗体は、通常、抗原により速く結合し、より長く結合した状態に留まる傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当技術分野で公知であり、これらのいずれかを本開示の目的のために使用することができる。「KD」又は「KD値」は、当技術分野で公知のアッセイによって、例えば、結合アッセイによって測定することができる。KDは、例えば、対象となるFab型の抗体及びその抗原を用いて実施される、放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)で測定することができる(Chenらの文献(1999) J. Mol Biol 293:865-881)。KD又はKD値は、例えば、BIAcoreTM-2000もしくはBIAcoreTM-3000(BIAcore社, Piscataway, NJ)を用いたBiacoreによる表面プラズモン共鳴アッセイを使用することによるか、又は例えば、OctetQK384システム(ForteBio, Menlo Park, CA)を用いたバイオレイヤー干渉法によって測定することもできる。
【0076】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、分子は、そのような結合が抗体のその同族抗原に対する特異性及び親和性を示す場合、第二の分子に「免疫特異的に結合する」ことができると言われる。抗体は、そのような結合が抗体の抗原認識部位を含む場合、抗原の標的領域又は立体構造(「エピトープ」)に免疫特異的に結合する。特定の抗原に免疫特異的に結合する抗体は、他の抗原が、例えば、免疫アッセイ、BIACORE(登録商標)アッセイ、又は当技術分野で公知の他のアッセイによって決定したとき、抗原認識部位によって認識されるある程度の配列又は立体構造類似性を有する場合、他の抗原により低い親和性で結合することができる。抗体一般は、全く無関係な抗原に結合しない。一部の抗体(及びその抗原結合断片)は、他の抗原と交差反応しない。抗体は、他の分子に、免疫特異的ではない形で、例えば、FcR受容体に、抗原認識部位を含まない抗体の他の領域/ドメイン、例えば、Fc領域中の結合ドメインのおかげで結合することもできる。
【0077】
グリコシル化部位を含む抗原又は抗原のエピトープに免疫特異的に結合する抗体又は抗原結合断片は、グリコシル化形態又は非グリコシル化形態の両方の抗原又はエピトープに結合することができる。いくつかの実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化抗原又はエピトープよりもグリコシル化抗原又はエピトープに優先的に結合する。優先的結合は、結合親和性によって決定することができる。例えば、非グリコシル化BTN1A1よりもグリコシル化BTN1A1に優先的に結合する抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKd未満のKdでグリコシル化BTN1A1に結合することができる。いくつかの実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの半分未満のKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの少なくとも10倍小さいKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの約75%、約50%、約25%、約10%、約5%、約2.5%、又は約1%であるKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。
【0078】
優先的結合は、結合アッセイによって決定し、かつ例えば、蛍光強度(「MFI」)によって示すこともできる。例えば、グリコシル化BTN1A1に優先的に結合する抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIよりも高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合することができる。いくつかの実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIの少なくとも2倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIの少なくとも3倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIの少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、又は少なくとも20倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。
【0079】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、分子は、抗原もしくはエピトープ、又はその特定のグリコシル化部位のグリコシル化を「免疫特異的にマスクする」と言われ、(1)抗原又はエピトープがグリコシル化されることができないように、非グリコシル化抗原又はエピトープのグリコシル化部位を遮断するか、又は(2)グリコシル化抗原もしくはエピトープに又はグリコシル化抗原もしくはエピトープの特定のグリコシル化部位で結合し、グリコシル化の生理的効果、例えば、グリコシル化によって媒介される下流のシグナル伝達を妨げるかのいずれかのその能力を指す。例えば、BTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする抗体又は抗原結合断片は、(1)非グリコシル化BTN1A1のグリコシル化部位を遮断し、そのグリコシル化を妨げるか、又は(2)グリコシル化BTN1A1に結合し、グリコシル化の生理的効果、例えば、グリコシル化によって媒介される免疫抑制効果を妨げるかのいずれかの抗体又は抗原結合断片を指す。別の例として、N55及びN215におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする抗体又は抗原結合断片は、(1)非グリコシル化BTN1A1のN55及びN215を遮断し、N55及びN215のグリコシル化を妨げるか、又は(2)N55及びN215でグリコシル化されているBTN1A1に結合し、グリコシル化の生理的効果、例えば、グリコシル化によって媒介される免疫抑制効果を妨げるかのいずれかの抗体又は抗原結合断片を指す。
【0080】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「担体」という用語は、それとともに治療薬が投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントのアジュバント(完全もしくは不完全))、賦形剤、安定化剤、又はビヒクルを指す。「医薬として許容し得る担体」は、利用される投薬量及び濃度でそれに曝露されている細胞又は哺乳動物にとって無毒である担体であり、これは、水及び油などの、滅菌液であることができ、油には、石油、動物、植物、又は合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などが含まれる。
【0081】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「ベクター」という用語は、核酸分子を宿主細胞に導入するために使用される物質を指す。使用のために適用可能なベクターとしては、例えば、発現ベクター、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター、エピソーム、及び人工染色体が挙げられ、これらは、宿主細胞の染色体への安定な組込みのために作動可能な選択配列又はマーカーを含むことができる。さらに、ベクターは、1以上の選択可能マーカー遺伝子及び適切な発現制御配列を含むことができる。含めることができる選択可能マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質もしくは毒素に対する耐性を提供し、独立栄養欠損を補い、又は培養培地中にない重要な栄養を供給する。発現制御配列は、当技術分野で周知である構成的及び誘導性プロモーター、転写エンハンサー、転写ターミネーターなどを含むことができる。2以上の核酸分子(例えば、抗体の重鎖と軽鎖の両方)が共発現されることになる場合、両方の核酸分子を、例えば、単一の発現ベクター又は別々の発現ベクターに挿入することができる。単一ベクター発現のために、コード核酸を、1つの共通の発現制御配列に機能的に連結するか、又は異なる発現制御配列、例えば、1つの誘導性プロモーター及び1つの構成的プロモーターに連結することができる。核酸分子の宿主細胞への導入は、当技術分野で周知の方法を用いて確認することができる。そのような方法としては、例えば、核酸解析、例えば、mRNAのノーザンブロットもしくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、又は遺伝子産物の発現についての免疫ブロッティング、又は導入された核酸配列もしくはその対応する遺伝子産物の発現を試験する他の好適な解析方法が挙げられる。核酸分子は、所望の産物(例えば、本明細書に提供される抗BTN1A1抗体)を産生するのに十分な量で発現されることが当業者によって理解され、また、発現レベルを当技術分野で周知の方法を用いて最適化して、十分な発現を得ることができることがさらに理解される。
【0082】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「宿主細胞」という用語は、核酸分子をトランスフェクトされた特定の対象細胞及びそのような細胞の子孫又は潜在的な子孫を指す。そのような細胞の子孫は、後続の世代で生じ得る突然変異もしくは環境的影響又は宿主細胞ゲノムへの核酸分子の組込みが原因で、核酸分子をトランスフェクトされた親細胞と同一でなくてもよい。
【0083】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「対象」という用語は、治療、観察、及び/又は実験の対象となる動物を指す。「動物」には、脊椎動物及び無脊椎動物、例えば、魚類、甲殻類、爬虫類、鳥類、特に、哺乳動物が含まれる。「哺乳動物」には、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、霊長類、例えば、サル、チンパンジー、類人猿、及びヒトが含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「癌」又は「癌性」という用語は、典型的には、調節されない細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理的状態を指す。癌の例としては、血液癌及び固形腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、癌患者に関連して使用されるときの「治療する」、「治療すること」、「治療」という用語は、癌の重症度を低下させるか、又は癌の進行を阻止しもしくは減速させる行為を指し、これは、(a)癌の増殖を阻害するか、又は癌の発症を停止させること、及び(b)癌の退縮を引き起こすか、又は癌の存在と関連する1以上の症状を遅延もしくは最小化することを含む。
【0086】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「治療的有効量」という用語は、所与の疾患、障害、もしくは疾病、及び/又はこれらに関連する症状の重症度及び/又は持続期間を低下させ及び/又は改善するのに十分である薬剤(例えば、本明細書に記載される抗体又は本明細書に記載される任意の他の薬剤)の量を指す。治療剤を含む、薬剤の治療的有効量は、(i)所与の疾患、障害、もしくは疾病の進展もしくは進行の低下もしくは改善、(ii)所与の疾患、障害、もしくは疾病の再発、発症、もしくは発生の低下もしくは改善、及び/又は(iii)別の療法(例えば、本明細書に提供される抗体の投与以外の療法)の予防もしくは治療効果の向上もしくは増強に必要な量であることができる。本開示の物質/分子/薬剤(例えば、抗BTN1A1抗体)の治療的有効量は、個体の病状、年齢、性別、及び重量、並びに該物質/分子/薬剤が個体において所望の応答を誘発する能力などの要因によって異なり得る。治療的有効量は、該物質/分子/薬剤の任意の毒性又は有害効果を治療的に有益な効果が上回る量を包含する。
【0087】
本明細書で使用される場合、及び別途規定されない限り、「投与する」又は「投与」という用語は、体外に存在している状態の物質を、患者に、例えば、粘膜、皮内、静脈内、筋肉内送達、及び/又は本明細書に記載されるもしくは当技術分野で公知の任意の他の物理的送達方法によって注射するか又は別の方法で物理的に送達する行為を指す。疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を治療する場合、該物質の投与は、通常、該疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状の発症後に行われる。疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防する場合、該物質の投与は、通常、該疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状の発症前に行われる。
【0088】
(5.2 BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子)
本明細書に提供されるのは、抗BTN1A1抗体を含む、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子である。いくつかの実施態様において、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片は、BTN1A1の断片、又はエピトープに結合する。いくつかの実施態様において、該BTN1A1エピトープは、線形エピトープであることができる。いくつかの実施態様において、該BTN1A1エピトープは、立体構造エピトープであることができる。いくつかの実施態様において、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に提供される分子は、BTN1A1の免疫抑制機能を阻害する。
【0089】
N-グリコシル化は、小胞体(ER)で開始され、その後、ゴルジでプロセシングされる翻訳後修飾である(Schwarz及びAebiの文献、Curr. Opin. Struc. Bio., 21(5): 576-582(2011))。このタイプの修飾は、オリゴ糖から構成される予め形成されたグリカンを、NXTモチーフ(-Asn-X-Ser/Thr-)の内部に位置するアスパラギン(Asn)側鎖アクセプターに転移する膜関連型オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)複合体によってまず触媒される(Cheung及びReithmeierの文献、Methods, 41: 451-459(2007); Helenius及びAebiの文献、Science, 291(5512):2364-9(2001))。予め形成されたグリカンからのサッカリドの付加又は除去は、それぞれ、N-グリコシル化カスケードを細胞及び位置依存的な形で厳密に調節する一群のグリコシルトランスフェラーゼ及びグリコシダーゼによって媒介される。
【0090】
いくつかの実施態様において、該分子は、BTN1A1の1以上のグリコシル化モチーフに選択的に結合する抗原結合断片を有する。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、グリコシル化モチーフを有する糖ペプチド及び隣接するペプチドに免疫特異的に結合する。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、3次元でグリコシル化モチーフのうちの1つ又は複数の近くに位置するペプチド配列に免疫特異的に結合する。
【0091】
いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%未満のKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。ある実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの50%未満のKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、30%、40%、50%未満のKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。さらなる態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの少なくとも10倍小さいKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。
【0092】
特定のBTN1A1アイソフォーム又は変異体の特異的グリコシル化部位は、その特定のBTN1A1アイソフォーム又は変異体の位置55、215、又は449のアミノ酸と様々であり得る。これらの状況において、当業者であれば、配列アラインメント及び当技術分野における他の共通の知識に基づいて、上で例示されているヒトBTN1A1のN55、N215、及びN449に対応する任意の特定のBTN1A1アイソフォーム又は変異体のグリコシル化部位を決定することができるであろう。したがって、本明細書に提供されるのは、非グリコシル化BTN1A1アイソフォーム又は変異体と比べてグリコシル化形態のBTN1A1アイソフォーム又は変異体に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子でもある。BTN1A1アイソフォーム又は変異体のグリコシル化部位は、上で提供されているヒトBTN1A1配列のN55、N215、及びN449の対応する部位であることができる。
【0093】
いくつかの実施態様において、該分子は、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及び/又はN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、1以上のグリコシル化モチーフに免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。
【0094】
いくつかの実施態様において、該分子は、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有し、ここで、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりもグリコシル化BTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N55、N215、及び/又はN449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N55でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N215でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、1以上のグリコシル化モチーフに優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも位置N55及びN215でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも位置N215及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも位置N55及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも位置N55、N215、及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。
【0095】
優先的結合は、結合親和性によって決定することができる。例えば、グリコシル化BTN1A1に優先的に結合する抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKd未満のKdでグリコシル化BTN1A1に結合することができる。いくつかの実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの半分未満のKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの少なくとも10倍小さいKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの約75%であるKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの約50%であるKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの約25%であるKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの約10%であるKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの約5%であるKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの約2.5%であるKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの約1%であるKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。
【0096】
優先的結合は、例えば、蛍光強度(「MFI」)によって示される結合アッセイで決定することもできる。例えば、グリコシル化BTN1A1に優先的に結合する抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIよりも高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合することができる。いくつかの実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIの少なくとも2倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIの少なくとも3倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIの少なくとも5倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIの少なくとも10倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIの少なくとも15倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、抗体又は抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIの少なくとも20倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。
【0097】
いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及び/又はN449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、BTN1A1の1以上のグリコシル化モチーフを免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN215におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215及びN449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及びN449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。
【0098】
(5.2.1.抗体及び抗原結合断片を有する他の分子)
いくつかの実施態様において、抗BTN1A1抗体又は抗グリコシル化BTN1A1抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、又はIgEであることができる。抗BTN1A1抗体又は抗グリコシル化BTN1A1抗体は、キメラ抗体、親和性成熟抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体であることもできる。抗BTN1A1抗体又は抗グリコシル化BTN1A1抗体は、ラクダ化抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体であることもできる。いくつかの実施態様において、抗BTN1A1抗体又は抗グリコシル化BTN1A1抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であることができる。
【0099】
抗体は、鳥類及び哺乳動物を含む、任意の動物源から産生することができる。いくつかの実施態様において、抗体は、ヒツジ、ネズミ(例えば、マウス及びラット)、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、又はニワトリのものである。さらに、より新しい技術は、ヒトコンビナトリアル抗体ライブラリー由来のヒト抗体の開発及びそのスクリーニングを可能にする。例えば、バクテリオファージ抗体発現技術は、引用により完全に本明細書中に組み込まれる米国特許第6,946,546号に記載されているように、特異的抗体が動物免疫の非存在下で産生されるのを可能にする。これらの技法は、Marksの文献(1992); Stemmerの文献(1994); Gramらの文献(1992); Barbasらの文献(1994);及びSchierらの文献(1996)にさらに記載されており;これらの文献は、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
【0100】
様々な動物種でポリクローナル抗体を産生する方法、並びにヒト化、キメラ、及び完全ヒトを含む、様々なタイプのモノクローナル抗体を産生する方法は当技術分野で周知である。例えば、以下の米国特許は、そのような方法の実施可能な説明を提供しており、引用により本明細書中に組み込まれる:米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,196,265号;第4,275,149号;第4,277,437号;第4,366,241号;第4,469,797号;第4,472,509号;第4,606,855号;第4,703,003号;第4,742,159号;第4,767,720号;第4,816,567号;第4,867,973号;第4,938,948号;第4,946,778号;第5,021,236号;第5,164,296号;第5,196,066号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,420,253号;第5,565,332号;第5,571,698号;第5,627,052号;第5,656,434号;第5,770,376号;第5,789,208号;第5,821,337号;第5,844,091号;第5,858,657号;第5,861,155号;第5,871,907号;第5,969,108号;第6,054,297号;第6,165,464号;第6,365,157号;第6,406,867号;第6,709,659号;第6,709,873号;第6,753,407号;第6,814,965号;第6,849,259号;第6,861,572号;第6,875,434号;第6,891,024号;第7,407,659号;及び第8,178,098号(これらの文献は、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。
【0101】
抗BTN1A1抗体又は抗グリコシル化BTN1A1抗体を含む、BTN1A1又は特にグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子は、ポリペプチドの産生に有用な当技術分野で公知の任意の方法、例えば、インビトロ合成、組換えDNA産生などによって産生することもできる。ヒト化抗体は、組換えDNA技術によって産生することができる。本明細書に記載される抗体は、組換え免疫グロブリン発現技術を用いて産生することもできる。ヒト化抗体を含む免疫グロブリン分子の組換え産生は、米国特許第4,816,397号(Bossら)、米国特許第6,331,415号及び第4,816,567号(どちらもCabillyらに対するもの)、英国特許GB 2,188,638号(Winterら)、並びに英国特許GB 2,209,757号に記載されており;これらの文献は、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。ヒト化免疫グロブリンを含む免疫グロブリンの組換え発現のための技法は、Goeddelらの文献、遺伝子発現技術(Gene Expression Technology)、酵素学の方法(Methods in Enzymology)、第185巻、Academic Press(1991)、及びBorrebackの文献、抗体エンジニアリング(Antibody Engineering)、W. H. Freeman(1992)に見出すこともでき;これらの文献は、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。組換え抗体の作製、設計、及び発現に関するさらなる情報は、Mayforthの文献、抗体の設計(Designing Antibodies)、Academic Press, San Diego(1993)に見出すことができる。
【0102】
ある実施態様において、抗BTN1A1抗体又は抗グリコシル化BTN1A1抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを用いる上記のファージディスプレイ法を含む、当技術分野で公知の種々の方法によって作製することができる(米国特許第4,444,887号及び第4,716,111号;並びに国際公開WO 98/46645号、WO 98/50433号、WO 98/24893号、WO 98/16654号、WO 96/34096号、WO 96/33735号、及びWO 91/10741号を参照)。ヒト抗体は、機能的な内在性免疫グロブリンを発現することはできないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを用いて産生することができる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体をランダムに又は相同組換えによってマウス胚性幹細胞に導入することができる。或いは、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子に加えて、ヒト可変領域、定常領域、及び多様性領域をマウス胚性幹細胞に導入することができる。マウス重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子を、相同組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入によって個別に又は同時に機能しないようにすることができる。特に、JH領域のホモ接合性欠失は、内在性抗体産生を妨げる。修飾された胚性幹細胞を増殖させ、胚盤胞に顕微注入して、キメラマウスを生じさせる。その後、キメラマウスを交配させて、ヒト抗体を発現するホモ接合性子孫を生じさせる。トランスジェニックマウスを、従来の方法を用いて、選択された抗原、例えば、BTN1A1ポリペプチド又はグリコシル化BTN1A1ポリペプチドの全て又は一部で免疫する。該抗原に対するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いて、免疫されたトランスジェニックマウスから得ることができる(例えば、米国特許第5,916,771号を参照)。このトランスジェニックマウスが有するヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再編成し、その後、クラススイッチング及び体細胞突然変異を経る。したがって、そのような技法を用いて、治療的に有用なIgG、IgA、IgM、及びIgE抗体を産生することができる。ヒト抗体を産生するためのこの技術の概説については、Lonberg及びHuszarの文献(1995、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Int. Rev. Immunol. 13:65-93)を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を産生するこの技術並びにそのような抗体を産生するためのプロトコルの詳細な議論については、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、国際公開WO 98/24893号、WO 96/34096号、及びWO 96/33735号;並びに米国特許第5,413,923号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、第5,545,806号、第5,814,318号、及び第5,939,598号を参照されたい。さらに、Abgenix社(Freemont, Calif.)及びMedarex(Princeton, N.J.)などの会社に、上記の技術と同様の技術を用いて、選択された抗原に対するヒト抗体を提供することを請け負わせることができる。
【0103】
いくつかの実施態様において、抗BTN1A1抗体又は抗グリコシル化BTN1A1抗体は、キメラ抗体、例えば、非ヒトドナー由来の抗原結合配列が異種の非ヒト、ヒト、又はヒト化配列(例えば、フレームワーク及び/又は定常ドメイン配列)に移植されている抗体である。一実施態様において、非ヒトドナーはラットである。一実施態様において、抗原結合配列は合成によるものであり、例えば、突然変異誘発(例えば、ヒトファージライブラリーのファージディスプレイスクリーニングなど)によって得られる。一実施態様において、キメラ抗体は、マウスV領域及びヒトC領域を有することができる。一実施態様において、マウス軽鎖V領域はヒトκ軽鎖に融合している。一実施態様において、マウス重鎖V領域はヒトIgG1 C領域に融合している。
【0104】
キメラ抗体を産生する方法は当技術分野で公知である。例えば、Morrisonの文献、1985, Science 229:1202; Oiらの文献、1986, BioTechniques 4:214; Gilliesらの文献、1989, J. Immunol. Methods 125:191-202;並びに米国特許第6,311,415号、第5,807,715号、第4,816,567号、及び第4,816,397号を参照されたく;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。非ヒト種由来の1以上のCDR及びヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を含むキメラ抗体は、例えば、CDR-グラフティング(EP 239,400号;国際公開WO 91/09967号;及び米国特許第5,225,539号、第5,530,101号、及び第5,585,089号)、ベニアリング又はリサーフェシング(EP 592,106号; EP 519,596号; Padlanの文献、1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498; Studnickaらの文献、1994, Protein Engineering 7:805;及びRoguskaらの文献、1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:969)、並びに鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)を含む、当技術分野で公知の種々の技法を用いて産生することができ;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
【0105】
組換えキメラ抗BTN1A1抗体の産生のための例示的なプロセスは、以下のこと: a)従来の分子生物学の方法によって、マウス抗BTN1A1(又は抗グリコシル化BTN1A1)モノクローナル抗体のCDR及び可変領域がヒト免疫グロブリン由来のFc領域に融合している抗体重鎖をコードし、それを発現する発現ベクターを構築し、それにより、キメラ抗体重鎖の発現用のベクターを産生すること; b)従来の分子生物学の方法によって、マウス抗BTN1A1(又は抗グリコシル化BTN1A1)モノクローナル抗体の抗体軽鎖をコードし、それを発現する発現ベクターを構築し、それにより、キメラ抗体軽鎖の発現用のベクターを産生すること; c)これらの発現ベクターを従来の分子生物学の方法によって宿主細胞に移して、キメラ抗体の発現用のトランスフェクトされた宿主細胞を産生すること;並びにd)キメラ抗体を産生するように、従来の細胞培養技法によって、トランスフェクトされた細胞を培養することを含むことができる。
【0106】
組換えヒト化抗BTN1A1抗体の産生のための例示的なプロセスは、以下のこと: a)従来の分子生物学の方法によって、CDR及びドナー抗体結合特異性を保持するのに必要とされる可変領域フレームワークの最小部分がマウス抗BTN1A1(又は抗グリコシル化BTN1A1)モノクローナル抗体などの非ヒト免疫グロブリンに由来し、抗体の残りの部分がヒト免疫グロブリンに由来する抗体重鎖をコードし、それを発現する発現ベクターを構築し、それにより、ヒト化抗体重鎖の発現用のベクターを産生すること; b)従来の分子生物学の方法によって、CDR及びドナー抗体結合特異性を保持するのに必要とされる可変領域フレームワークの最小部分がマウス抗BTN1A1(又は抗グリコシル化BTN1A1)モノクローナル抗体などの非ヒト免疫グロブリンに由来し、抗体の残りの部分がヒト免疫グロブリンに由来する抗体軽鎖をコードし、それを発現する発現ベクターを構築し、それにより、ヒト化抗体軽鎖の発現用のベクターを産生すること; c)これらの発現ベクターを従来の分子生物学の方法によって宿主細胞に移して、ヒト化抗体の発現用のトランスフェクトされた宿主細胞を産生すること;並びにd)ヒト化抗体を産生するように、従来の細胞培養技法によって、トランスフェクトされた細胞を培養することを含むことができる。
【0107】
どちらの例示的な方法に関しても、宿主細胞に、そのような発現ベクターを共トランスフェクトすることができ、これらの発現ベクターは、異なる選択可能マーカーを含有することができるが、重鎖及び軽鎖をコードする配列を除いて、同一であることが好ましい。この手順は、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの同等の発現をもたらす。或いは、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方をコードする単一のベクターを使用してもよい。重鎖及び軽鎖のコード配列は、cDNAもしくはゲノムDNA又はその両方を含むことができる。組換え抗体を発現させるために使用される宿主細胞は、大腸菌(Escherichia coli)などの細菌細胞、又はより好ましくは、真核細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞もしくはHEK-293細胞)のいずれかであることができる。発現ベクターの選択は宿主細胞の選択に依存し、選択された宿主細胞において所望の発現及び調節特徴を有するように選択することができる。使用することができる他の細胞株としては、CHO-K1、NSO、及びPER.C6(Crucell, Leiden, Netherlands)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、種特異的なコドン使用バイアスを占め、タンパク質発現を増強するように宿主細胞を選択する場合、コドン使用を最適化することができる。例えば、CHO細胞発現の場合、抗体をコードするDNAは、モンゴルキヌゲネズミ(Cricetulus griseus)(チャイニーズハムスター卵巣細胞はこれに由来している)によって優先的に使用されるコドンを組み込むことができる。コドン最適化の方法を利用して、所望の宿主細胞による発現の改善を促進することができる(例えば、Wohlgemuth, I.らの文献、Philos. Trans. R. Soc. Lond. B Biol. Sci. 366(1580):2979-2986(2011); Jestin, J. L.らの文献、J. Mol. Evol. 69(5):452-457(2009); Bollenbach, T.らの文献、Genome Res. 17(4):401-404(2007); Kurland, C. G.らの文献、Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 31:191-219(1984); Grosjean, H.らの文献、Gene 18(3): 199-209(1982)を参照)。
【0108】
いくつかの実施態様において、抗BTN1A1抗体又は抗グリコシル化BTN1A1抗体は、モノクローナル抗体であることができる。いくつかの実施態様において、抗BTN1A1抗体又は抗グリコシル化BTN1A1抗体は、ポリクローナル抗体であることができる。BTN1A1ポリペプチド又はグリコシル化BTN1A1ポリペプチドに特異的な抗体を産生するために、動物に、抗原、例えば、BTN1A1ポリペプチド又はグリコシル化BTN1A1ポリペプチドを接種することができる。多くの場合、抗原を別の分子に結合させ又はコンジュゲートして、免疫応答を増強する。コンジュゲートは、動物で免疫応答を誘発するために使用される抗原に結合している任意のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は非タンパク質性物質であることができる。抗原接種に応答して動物で産生される抗体は、種々の個々の抗体産生Bリンパ球から作られる種々の非同一分子(ポリクローナル抗体)を有する。動物におけるポリクローナル抗体産生のための正確な条件を考慮すると、動物の血清中の抗体のほとんどは、動物が免疫された抗原性化合物上の集合的エピトープを認識する。
【0109】
この特異性を親和性精製によってさらに増強し、対象となる抗原又はエピトープを認識する抗体のみを選択することができる。モノクローナル抗体(MAb)を作製する方法は、ポリクローナル抗体を調製する方法と同じように始めることができる。いくつかの実施態様において、マウス及びラットなどの齧歯類をモノクローナル抗体の作製において使用する。いくつかの実施態様において、ウサギ、ヒツジ、又はカエル細胞をモノクローナル抗体の作製において使用する。ラットの使用は周知であり、特定の利点を提供することができる。マウス(例えば、BALB/cマウス)がルーチンに使用され、通常、高い割合の安定融合体を生じる。
【0110】
ハイブリドーマ技術は、BTN1A1ポリペプチド又はグリコシル化BTN1A1ポリペプチドで既に免疫されたマウス由来の単一のBリンパ球と不死骨髄腫細胞(通常、マウス骨髄腫)との融合を伴う。この技術は、同じ抗原又はエピトープ特異性を有する無制限の量の構造的に同一の抗体(モノクローナル抗体)を産生することができるように、単一の抗体産生細胞を無限の数の世代にわたって増殖させる方法を提供する。
【0111】
一実施態様において、抗体は、軽鎖を欠く、ラクダ科動物抗体に由来する、好ましくは、重鎖ラクダ科動物抗体に由来する免疫グロブリンの単一可変ドメインであり、これは、VHHドメイン配列又はNanobodies(商標)として知られている。Nanobody(商標)(Nb)は、天然に存在する単鎖抗体の最小機能性断片又は単一可変ドメイン(VHH)であり、当業者に公知である。これらは、ラクダ科動物に見られる重鎖のみの抗体に由来する(Hamers-Castermanらの文献、Nature, 363(6428):446-8(1993); Desmyterらの文献、Nat Struct Biol., 3(9):803-11.(1996))。「ラクダ科動物」の科においては、軽ポリペプチド鎖を欠く免疫グロブリンが見られる。「ラクダ科動物」は、旧世界ラクダ科動物(フタコブラクダ(Camelus bactrianus)及びヒトコブラクダ(Camelus dromedarius))並びに新世界ラクダ科動物(例えば、アルパカ(Lama paccos)、リャマ(Lama glama)、グアナコ(Lama guanicoe)、及びビクーニャ(Lama vicugna))を含む。単一可変ドメイン重鎖抗体は、本明細書において、Nanobody(商標)又はVHH抗体と表記される。Nbの小さいサイズ及び特有の生物物理的特性は、一般的でない又は隠れたエピトープの認識に関して及びタンパク質標的の空洞又は活性部位内への結合に関して、従来の抗体断片を凌駕する。さらに、Nbは、多重特異性及び多価抗体として設計し、レポーター分子に結合させ、又はヒト化することができる。Nbは安定であり、胃腸系の中で存在し続け、かつ容易に製造することができる。
【0112】
特異性が異なる2つの抗原結合部位を一体化して、単一のコンストラクトにすると、二重特異性抗体は、優れた特異性を有する2つの別々の抗原を1つにまとめることができ、したがって、治療剤としての大きな可能性を有する。二重特異性抗体は、各々異なる免疫グロブリンを産生することができる2つのハイブリドーマを融合することにより作製することができる。二重特異性抗体は、2つのscFv抗体断片を接続すると同時に、完全な免疫グロブリン中に存在するFc部分を削除することにより産生することもできる。そのようなコンストラクト中の各々のscFv単位は、合成ポリペプチドリンカーによって互いに接続された重(VH)及び軽(VL)抗体鎖の各々に由来する1つの可変ドメインから構成されることができ、後者は、免疫原性を最小限に抑えながら、タンパク質分解に対する耐性を最大限に残すように、遺伝子改変されていることが多い。それぞれのscFv単位を、2つのscFv単位を架橋する短い(通常、10アミノ酸未満の)ポリペプチドスペーサーの組込みを含む、いくつかの技法によって接続し、それにより、二重特異性単鎖抗体を生成させることができる。したがって、得られる二重特異性単鎖抗体は、単一のポリペプチド鎖上に特異性の異なる2つのVH/VL対を含有する種であり、ここで、それぞれのscFv単位中のVHドメイン及びVLドメインは、これら2つのドメイン間の分子内会合を可能にするのに十分に長いポリペプチドリンカーによって隔てられており、かつこのように形成されるscFv単位は、例えば、一方のscFv単位のVHドメインともう一方のscFv単位のVLの間の望ましくない会合を妨げるのに十分に短く保たれたポリペプチドスペーサーによって互いに近接して繋がれている。
【0113】
BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子の例としては:(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VH及びCH1ドメインからなる「Fd」断片;(iii)単一の抗体のVL及びVHドメインからなる「Fv」断片;(iv)VHドメインからなる「dAb」断片;(v)単離されたCDR領域;(vi)2つの連結されたFab断片を含む二価断片であるF(ab')2断片;(vii)VHドメイン及びVLドメインが、これら2つのドメインを会合させて、結合ドメインを形成するのを可能にするペプチドリンカーによって連結されている、単鎖Fv分子(「scFv」);(viii)二重特異性単鎖Fv二量体(米国特許第5,091,513号を参照);並びに(ix)遺伝子融合によって構築された多価又は多重特異性断片であるダイアボディ(米国特許出願公開第20050214860号)が挙げられるが、これらに限定されない。Fv、scFv、又はダイアボディ分子は、VHドメインとVLドメインを連結するジスルフィド架橋の組込みによって安定化することができる。scFvがCH3ドメインに接続しているミニボディを作製することもできる(Huらの文献、Cancer Res., 56(13):3055-61(1996))。
【0114】
抗体様結合ペプチドミメティックスも実施態様において企図される。Muraliらの文献、Cell Mol. Biol., 49(2):209-216(2003)には、軽装化抗体として作用し、かつより長い血清半減期及びあまり煩雑でない合成方法という特定の利点を有するペプチドである、「抗体様結合ペプチドミメティックス」(ABiPs)が記載されており、この文献は、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
【0115】
(5.2.2.抗BTN1A1抗体)
BTN1A1に免疫特異的に結合する計68種のモノクローナル抗体をクローニングし、特徴付けた(下の表4)。例えば、STC810と表記される抗体(STC838とも呼ばれる)は、高い親和性でのグリコシル化特異的結合を示した(STC810とhBTN1A1-Fcの間のKDは、Biacoreによると1.81nM、Octetによると2.12nMであると決定された)。以下で詳細に記載されるように、モノクローナル抗BTN1A1抗体、例えば、STC810の処理は、癌細胞のT細胞依存的アポトーシスを増強し、癌細胞の増殖を阻害し、BTN1A1のリソソームへのグリコシル化依存的内在化ももたらした。STC810のエピトープも本明細書に提供される。したがって、特異的な配列特徴を有する抗BTN1A1抗体、特異的エピトープに免疫特異的に結合する抗BTN1A1抗体、及び癌治療におけるこれらの使用も本明細書に提供される。
【0116】
ある実施態様において、本明細書に提供される抗BTN1A1抗体は、本明細書に記載されるモノクローナル抗体STC810、又はそのヒト化変異体のVHドメイン、VLドメイン、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及び/又はVL CDR3を含む。ある実施態様において、該抗BTN1A1抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリンアミノ酸配列又はその変異体のVH FR1、VH FR2、VH FR3、VH FR4、VL FR1、VL FR2、VL FR3、及び/又はVL FR4をさらに含むことができる。
【0117】
ある実施態様において、該抗BTN1A1抗体は、6つ未満のCDRを含む。いくつかの実施態様において、該抗体は、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及び/又はVL CDR3からなる群から選択される1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つのCDRを含むか又はこれらからなる。具体的な実施態様において、該抗体は、本明細書に記載されるモノクローナル抗体STC810又はそのヒト化変異体のVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及び/又はVL CDR3からなる群から選択される1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つのCDRを含むか又はこれらからなる。具体的な実施態様において、該抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリンアミノ酸配列又はその変異体のVH FR1、VH FR2、VH FR3、VH FR4、VL FR1、VL FR2、VL FR3、及び/又はVL FR4をさらに含む。
【0118】
具体的な実施態様において、該抗体は、ヒト化抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合断片、又はこれらの任意の組合せである。特定の実施態様において、該抗体は、ヒト化モノクローナル抗体又はその抗原結合断片である。
【0119】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)本明細書に提供される抗BTN1A1抗体がBTN1A1ポリペプチド(例えば、細胞表面に発現されたもしくは可溶性のBTN1A1)、BTN1A1断片、又はBTN1A1エピトープに結合するのを(例えば、用量依存的な様式で)競合的に妨害する、及び/或いは(ii)本明細書に提供される抗BTN1A1抗体(例えば、ヒト化抗BTN1A1抗体)によって結合されるBTN1A1エピトープに結合する、ヒト化抗体を含む、抗体である。他の実施態様において、該抗体は、本明細書に記載されるモノクローナル抗体STC810又はそのヒト化変異体がBTN1A1ポリペプチド(例えば、細胞表面に発現されたもしくは可溶性のBTN1A1)、BTN1A1断片、又はBTN1A1エピトープに結合するのを(例えば、用量依存的な様式で)競合的に妨害する。他の実施態様において、該抗体は、本明細書に記載されるモノクローナル抗体BTN1A1又はそのヒト化変異体(例えば、ヒト化抗BTN1A1抗体)によって結合される(例えば、認識される)BTN1A1エピトープに結合する。
表2a:マウスモノクローナル抗ヒトBTN1A1抗体STC810の重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域の配列
【表2】
表2b:マウスモノクローナル抗ヒトBTN1A1抗体STC810のCDR配列
【表3】
【0120】
したがって、本明細書に提供されるのは、以下の配列特徴を有するBTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(a)(1)配列番号7、10、13、もしくは16のアミノ酸配列を有するVH CDR1;(2)配列番号8、11、14、もしくは17のアミノ酸配列を有するVH CDR2;及び(3)配列番号9、12、15、もしくは18のアミノ酸配列を有するVH CDR3:を含む重鎖可変(VH)領域;並びに/又は(b)(1)配列番号19、22、25、もしくは28のアミノ酸配列を有するVL CDR1;(2)配列番号20、23、26、もしくは29のアミノ酸配列を有するVL CDR2;及び(3)配列番号21、24、27、もしくは30のアミノ酸配列を有するVL CDR3:を含む軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、(a)(1)配列番号7、10、13、もしくは16のアミノ酸配列を有するVH CDR1;(2)配列番号8、11、14、もしくは17のアミノ酸配列を有するVH CDR2;及び(3)配列番号9、12、15、もしくは18のアミノ酸配列を有するVH CDR3:を含む重鎖可変(VH)領域;並びに/又は(b)(1)配列番号19、22、25、もしくは28のアミノ酸配列を有するVL CDR1;(2)配列番号20、23、26、もしくは29のアミノ酸配列を有するVL CDR2;及び(3)配列番号21、24、27、もしくは30のアミノ酸配列を有するVL CDR3:を含む軽鎖可変(VL)領域を有する抗体である。該抗体はモノクローナル抗体であることができる。該抗体はヒト化抗体であることができる。
【0121】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(1)配列番号7、10、13、もしくは16のアミノ酸配列を有するVH CDR1;(2)配列番号8、11、14、もしくは17のアミノ酸配列を有するVH CDR2;及び/又は(3)配列番号9、12、15、もしくは18のアミノ酸配列を有するVH CDR3:を含む重鎖可変(VH)領域を有する抗原結合断片を有する。いくつかの実施態様において、該重鎖可変(VH)領域は、(1)配列番号7、10、13、もしくは16のアミノ酸配列を有するVH CDR1;及び(2)配列番号8、11、14、もしくは17のアミノ酸配列を有するVH CDR2を含む。いくつかの実施態様において、該重鎖可変(VH)領域は、(1)配列番号7、10、13、もしくは16のアミノ酸配列を有するVH CDR1;及び(3)配列番号9、12、15、もしくは18のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(1)配列番号7、10、13、もしくは16のアミノ酸配列を有するVH CDR1;及び(3)配列番号9、12、15、もしくは18のアミノ酸配列を有するVH CDR3:を含む重鎖可変(VH)領域を有する抗原結合断片を有する。
【0122】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、配列番号7、10、13、又は16のアミノ酸配列を有するVH CDR1を含む重鎖可変(VH)領域を有する抗原結合断片を有する。VH CDR1は、配列番号7のアミノ酸配列を有することができる。VH CDR1は、配列番号10のアミノ酸配列を有することができる。VH CDR1は、配列番号13のアミノ酸配列を有することができる。VH CDR1は、配列番号16のアミノ酸配列を有することができる。
【0123】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、配列番号8、11、14、又は17のアミノ酸配列を有するVH CDR2を含む重鎖可変(VH)領域を有する抗原結合断片を有する。VH CDR2は、配列番号8のアミノ酸配列を有することができる。VH CDR2は、配列番号11のアミノ酸配列を有することができる。VH CDR2は、配列番号14のアミノ酸配列を有することができる。VH CDR2は、配列番号17のアミノ酸配列を有することができる。
【0124】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、配列番号9、12、15、又は18のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を有する抗原結合断片を有する。VH CDR3は、配列番号9のアミノ酸配列を有することができる。VH CDR3は、配列番号12のアミノ酸配列を有することができる。VH CDR3は、配列番号15のアミノ酸配列を有することができる。VH CDR3は、配列番号20のアミノ酸配列を有することができる。
【0125】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は:(1)配列番号7のアミノ酸配列を有するVH CDR1;(2)配列番号8のアミノ酸配列を有するVH CDR2;及び/又は(3)配列番号9のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を有する抗原結合断片を有する。
【0126】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は:(1)配列番号10のアミノ酸配列を有するVH CDR1;(2)配列番号11のアミノ酸配列を有するVH CDR2;及び/又は(3)配列番号12のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を有する抗原結合断片を有する。
【0127】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は:(1)配列番号13のアミノ酸配列を有するVH CDR1;(2)配列番号14のアミノ酸配列を有するVH CDR2;及び/又は(3)配列番号15のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を有する抗原結合断片を有する。
【0128】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は:(1)配列番号16のアミノ酸配列を有するVH CDR1;(2)配列番号17のアミノ酸配列を有するVH CDR2;及び/又は(3)配列番号18のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を有する抗原結合断片を有する。
【0129】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖可変(VH)領域を有する抗原結合断片を有する。該分子は抗体であることができる。該抗体はモノクローナル抗体であることができる。該抗体はヒト化抗体であることができる。
【0130】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(1)配列番号19、22、25、又は28のアミノ酸配列を有するVL CDR1;(2)配列番号20、23、26、又は29のアミノ酸配列を有するVL CDR2;及び(3)配列番号21、24、27、又は30のアミノ酸配列を有するVL CDR3:を含む軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。
【0131】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(1)配列番号19、22、25、又は28のアミノ酸配列を有するVL CDR1;及び(2)配列番号20、23、26、又は29のアミノ酸配列を有するVL CDR2:を含む軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(1)配列番号19、22、25、又は28のアミノ酸配列を有するVL CDR1;及び(3)配列番号21、24、27、又は30のアミノ酸配列を有するVL CDR3:を含む軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(2)配列番号20、23、26、又は29のアミノ酸配列を有するVL CDR2;及び(3)配列番号21、24、27、又は30のアミノ酸配列を有するVL CDR3:を含む軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。
【0132】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、配列番号19、22、25、又は28のアミノ酸配列を有するVL CDR1を含む軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。VL CDR1は、配列番号19のアミノ酸配列を有することができる。VL CDR1は、配列番号22のアミノ酸配列を有することができる。VL CDR1は、配列番号25のアミノ酸配列を有することができる。VL CDR1は、配列番号28のアミノ酸配列を有することができる。
【0133】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、配列番号20、23、26、又は29のアミノ酸配列を有するVL CDR2を含む軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。VL CDR2は、配列番号23のアミノ酸配列を有することができる。VL CDR2は、配列番号26のアミノ酸配列を有することができる。VL CDR2は、配列番号29のアミノ酸配列を有することができる。
【0134】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、配列番号21、24、27、又は30のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。VL CDR3は、配列番号21のアミノ酸配列を有することができる。VL CDR3は、配列番号24のアミノ酸配列を有することができる。VL CDR3は、配列番号27のアミノ酸配列を有することができる。VL CDR3は、配列番号30のアミノ酸配列を有することができる。
【0135】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(1)配列番号19のアミノ酸配列を有するVL CDR1;(2)配列番号20のアミノ酸配列を有するVL CDR2;及び/又は(3)配列番号21のアミノ酸配列を有するVL CDR3を有する軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。
【0136】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(1)配列番号22のアミノ酸配列を有するVL CDR1;(2)配列番号23のアミノ酸配列を有するVL CDR2;及び/又は(3)配列番号24のアミノ酸配列を有するVL CDR3を有する軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。
【0137】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(1)配列番号25のアミノ酸配列を有するVL CDR1;(2)配列番号26のアミノ酸配列を有するVL CDR2;及び/又は(3)配列番号27のアミノ酸配列を有するVL CDR3を有する軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。
【0138】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(1)配列番号28のアミノ酸配列を有するVL CDR1;(2)配列番号29のアミノ酸配列を有するVL CDR2;及び/又は(3)配列番号30のアミノ酸配列を有するVL CDR3を有する軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。
【0139】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。該分子は抗体であることができる。該抗体はモノクローナル抗体であることができる。該抗体はヒト化抗体であることができる。
【0140】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(a)(1)配列番号7、10、13、もしくは16のアミノ酸配列を有するVH CDR1;(2)配列番号8、11、14、もしくは17のアミノ酸配列を有するVH CDR2;及び/又は(3)配列番号9、12、15、もしくは18のアミノ酸配列を有するVH CDR3:を含む重鎖可変(VH)領域;並びに(b)(1)配列番号19、22、25、もしくは28のアミノ酸配列を有するVL CDR1;(2)配列番号20、23、26、もしくは29のアミノ酸配列を有するVL CDR2;及び/又は(3)配列番号21、24、27、もしくは30のアミノ酸配列を有するVL CDR3:を含む軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。該分子は抗体であることができる。該抗体はモノクローナル抗体であることができる。該抗体はヒト化抗体であることができる。
【0141】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(a)(1)配列番号7のアミノ酸配列を有するVH CDR1;(2)配列番号8のアミノ酸配列を有するVH CDR2;及び/又は(3)配列番号9のアミノ酸配列を有するVH CDR3:を含む重鎖可変(VH)領域;並びに(b)(1)配列番号19のアミノ酸配列を有するVL CDR1;(2)配列番号20のアミノ酸配列を有するVL CDR2;及び/又は(3)配列番号21のアミノ酸配列を有するVL CDR3:を含む軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。該分子は抗体であることができる。該抗体はモノクローナル抗体であることができる。該抗体はヒト化抗体であることができる。
【0142】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(a)(1)配列番号10のアミノ酸配列を有するVH CDR1;(2)配列番号11のアミノ酸配列を有するVH CDR2;及び/又は(3)配列番号12のアミノ酸配列を有するVH CDR3:を含む重鎖可変(VH)領域;並びに(b)(1)配列番号22のアミノ酸配列を有するVL CDR1;(2)配列番号23のアミノ酸配列を有するVL CDR2;及び/又は(3)配列番号24のアミノ酸配列を有するVL CDR3:を含む軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。該分子は抗体であることができる。該抗体はモノクローナル抗体であることができる。該抗体はヒト化抗体であることができる。
【0143】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(a)(1)配列番号13のアミノ酸配列を有するVH CDR1;(2)配列番号14のアミノ酸配列を有するVH CDR2;及び/又は(3)配列番号15のアミノ酸配列を有するVH CDR3:を含む重鎖可変(VH)領域;並びに(b)(1)配列番号25のアミノ酸配列を有するVL CDR1;(2)配列番号26のアミノ酸配列を有するVL CDR2;及び/又は(3)配列番号27のアミノ酸配列を有するVL CDR3:を含む軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。該分子は抗体であることができる。該抗体はモノクローナル抗体であることができる。該抗体はヒト化抗体であることができる。
【0144】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、(a)(1)配列番号16のアミノ酸配列を有するVH CDR1;(2)配列番号17のアミノ酸配列を有するVH CDR2;及び(3)配列番号18のアミノ酸配列を有するVH CDR3:を含む重鎖可変(VH)領域;並びに(b)(1)配列番号28のアミノ酸配列を有するVL CDR1;(2)配列番号29のアミノ酸配列を有するVL CDR2;及び(3)配列番号30のアミノ酸配列を有するVL CDR3:を含む軽鎖可変(VL)領域を有する抗原結合断片を有する。該分子は抗体であることができる。該抗体はモノクローナル抗体であることができる。該抗体はヒト化抗体であることができる。
【0145】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVH領域及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVL領域を有する抗原結合断片を有する。該分子は抗体であることができる。該抗体はモノクローナル抗体であることができる。該抗体はヒト化抗体であることができる。
【0146】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、STC810と表記されるマウスモノクローナル抗体又はそのヒト化抗体バージョンである。ヒト化STC810抗体は、本明細書に記載されるSTC810のVH領域、VL領域、又はVH領域とVL領域の両方を有することができる。ヒト化STC810抗体は、本明細書に記載されるSTC810の6つのCDR領域(VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3)を有することもできる。ヒト化STC810抗体は、STC810の6つ未満のCDR領域を有することもできる。いくつかの実施態様において、ヒト化STC810抗体は、STC810の1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのCDR領域(VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3)を有することもできる。
【0147】
例えば、アミノ酸置換を生じさせる部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介性突然変異誘発を含む、当業者に公知の標準的な技法を用いて、本明細書に提供される抗原結合断片又は抗体をコードするヌクレオチド配列に突然変異を導入することができる。ある実施態様において、誘導体は、もとの分子と比べて、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換、又は2未満のアミノ酸置換を含む。具体的な実施態様において、誘導体は、1以上の予測される非必須アミノ酸残基で行われる保存的アミノ酸置換を有する。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換である。類似の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、電荷を持たない極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。或いは、突然変異を、例えば、飽和突然変異誘発によって、コード配列の全て又は一部に沿ってランダムに導入することができ、得られる突然変異体を生物学的活性についてスクリーニングして、活性を保持する突然変異体を同定することができる。突然変異誘発の後、コードされているタンパク質を発現させることができ、かつ該タンパク質の活性を決定することができる。
【0148】
一実施態様において、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に提供される分子は、マウスモノクローナル抗体STC810、又はその抗原結合断片、例えば、VHドメイン又はVLドメインのアミノ酸配列と少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有することができる。一実施態様において、本明細書に提供される分子は、配列番号3又は5に示されるアミノ酸配列と少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有することができる。さらに別の実施態様において、本明細書に提供される分子は、上の表2に示されるVH CDRアミノ酸配列及び/又はVL CDRアミノ酸配列と少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一であるVH CDR及び/又はVL CDRアミノ酸配列を有することができる。
【0149】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、ストリンジェントな条件下(例えば、フィルターに結合したDNAに対する6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でのハイブリダイゼーションと、その後の0.2×SSC/0.1%SDS中、約50~65℃での1回以上の洗浄)、極めてストリンジェントな条件下(例えば、フィルターに結合した核酸に対する6×SSC中、約45℃でのハイブリダイゼーションと、その後の0.1×SSC/0.2%SDS中、約68℃での1回以上の洗浄)、又は当業者に公知の他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、表2に示されるVH及び/又はVLドメインのうちのいずれか1つをコードするヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされるVHドメインのアミノ酸配列及び/又はVLドメインのアミノ酸配列を有することができる(例えば、Ausubel, F.M.ら編、1989、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、第I巻、Green Publishing Associates社及びJohn Wiley & Sons社、New York、6.3.1~6.3.6及び2.10.3ページを参照)。
【0150】
別の実施態様において、本明細書に提供される分子は、ストリンジェントな条件下(例えば、フィルターに結合したDNAに対する6×SSC中、約45℃でのハイブリダイゼーションと、その後の0.2×SSC/0.1%SDS中、約50~65℃での1回以上の洗浄)、極めてストリンジェントな条件下(例えば、フィルターに結合した核酸に対する6×SSC中、約45℃でのハイブリダイゼーションと、その後の0.1×SSC/0.2%SDS中、約68℃での1回以上の洗浄)、又は当業者に公知の他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、表2に示されるVH CDR及び/又はVL CDRのうちのいずれか1つをコードするヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされるVH CDRのアミノ酸配列又はVL CDRのアミノ酸配列を有することができる(例えば、Ausubel, F.M.ら編、1989、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、第I巻、Green Publishing Associates社及びJohn Wiley & Sons社、New York、6.3.1~6.3.6及び2.10.3ページを参照)。
【0151】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、表2に示されるVH CDRのアミノ酸配列もしくはVL CDRのアミノ酸配列をコードする単離された核酸、又はストリンジェントな条件下(例えば、フィルターに結合したDNAに対する6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でのハイブリダイゼーションと、その後の0.2×SSC/0.1%SDS中、約50~65℃での1回以上の洗浄)、極めてストリンジェントな条件下(例えば、フィルターに結合した核酸に対する6×SSC中、約45℃でのハイブリダイゼーションと、その後の0.1×SSC/0.2%SDS中、約68℃での1回以上の洗浄)、もしくは当業者に公知の他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、表2に示されるVH CDR及び/もしくはVL CDRのいずれか1つをコードする核酸配列の相補体にハイブリダイズする単離された核酸でもある。
【0152】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、表2に示されるVHドメインのアミノ酸配列及び/もしくはVLドメインのアミノ酸配列をコードする単離された核酸、又はストリンジェントな条件下(例えば、フィルターに結合したDNAに対する6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でのハイブリダイゼーションと、その後の0.2×SSC/0.1%SDS中、約50~65℃での1回以上の洗浄)、極めてストリンジェントな条件下(例えば、フィルターに結合した核酸に対する6×SSC中、約45℃でのハイブリダイゼーションと、その後の0.1×SSC/0.2%SDS中、約68℃での1回以上の洗浄)、もしくは当業者に公知の他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、表2に示されるVH及び/もしくはVLドメインのいずれか1つをコードするヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズする単離された核酸でもある。
【0153】
いくつかの実施態様において、該単離された核酸は、配列番号4の配列、又はストリンジェントな条件下(例えば、フィルターに結合したDNAに対する6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でのハイブリダイゼーションと、その後の0.2×SSC/0.1%SDS中、約50~65℃での1回以上の洗浄)、極めてストリンジェントな条件下(例えば、フィルターに結合した核酸に対する6×SSC中、約45℃でのハイブリダイゼーションと、その後の0.1×SSC/0.2%SDS中、約68℃での1回以上の洗浄)、もしくは当業者に公知の他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号4のヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズする配列を有することができる。
【0154】
いくつかの実施態様において、該単離された核酸は、配列番号6の配列、又はストリンジェントな条件下(例えば、フィルターに結合したDNAに対する6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でのハイブリダイゼーションと、その後の0.2×SSC/0.1%SDS中、約50~65℃での1回以上の洗浄)、極めてストリンジェントな条件下(例えば、フィルターに結合した核酸に対する6×SSC中、約45℃でのハイブリダイゼーションと、その後の0.1×SSC/0.2%SDS中、約68℃での1回以上の洗浄)、もしくは当業者に公知の他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号6のヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズする配列を有することができる。
【0155】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、例えば、抗体への任意のタイプの分子の共有結合的付着によって化学的に修飾することができる。例えば、限定されないが、抗体誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞性リガンド又は他のタンパク質への連結などによって化学的に修飾されている抗体が含まれる。数多くの化学修飾のいずれかを、限定されないが、特異的な化学的切断、アセチル化、製剤化、ツニカマイシンの代謝的合成などを含む、既知の技法によって実施することができる。さらに、抗体は、1以上の非古典的アミノ酸を含むことができる。
【0156】
本明細書に提供される分子は、当業者に公知のフレームワーク領域(例えば、ヒト又は非ヒト断片)を有することができる。該フレームワーク領域は、例えば、天然又はコンセンサスフレームワーク領域であることができる。具体的な実施態様において、本明細書に提供される抗体のフレームワーク領域はヒトのものである(例えば、ヒトフレームワーク領域のリストについては、Chothiaらの文献、1998, J. Mol. Biol. 278:457-479を参照されたく、これは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。Kabatらの文献(1991)、免疫学的に関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)(U.S. Department of Health and Human Services, Washington, D.C.)、第5版も参照されたい。
【0157】
STC810のBTN1A1エピトープを架橋解析によってマッピングした。表3は、BTN1A1-FcとSTC810の架橋ペプチドをまとめたものであり、これは、STC810のBTN1A1エピトープ(配列番号31~33)を表している。
図12は、STC810についてのBTN1A1(ECD)-Fc抗原の合成エピトープを示している:
【化3】
【0158】
表4は、BTN1A1-HisとSTC810の架橋ペプチドをまとめたものであり、これは、STC810のBTN1A1エピトープ(配列番号36~39)を表している。
図13は、STC810についてのBTN1A1(ECD)-His抗原の合成エピトープを示している。
【0159】
【化4】
表3: nLC-orbitrap MS/MSによって解析されたSTC810とBTN1A1-Fcの架橋ペプチド。
【表4】
表4: nLC-orbitrap MS/MSによって解析されたSTC810とBTN1A1-Hisの架橋ペプチド。
【表5】
【0160】
したがって、また本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるBTN1A1エピトープを(例えば、用量依存的な様式で)競合的に遮断する抗原結合断片を有する分子である分子である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、STC810のBTN1A1エピトープを(例えば、用量依存的な様式で)競合的に遮断する抗原結合断片を有する分子である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、本明細書に記載されるBTN1A1のエピトープに免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、STC810のBTN1A1エピトープに免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する。該分子は抗体であることができる。該抗体はモノクローナル抗体であることができる。該抗体はヒト化抗体であることができる。
【0161】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるBTN1A1エピトープを(例えば、用量依存的な様式で)競合的に遮断する抗BTN1A1抗体である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるSTC810のBTN1A1エピトープを(例えば、用量依存的な様式で)競合的に遮断する抗BTN1A1抗体である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される抗BTN1A1抗体は、本明細書に記載されるBTN1A1のエピトープに免疫特異的に結合する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される抗BTN1A1抗体は、STC810のBTN1A1エピトープに免疫特異的に結合する。
【0162】
いくつかの実施態様において、該分子は、BTN1A1エピトープを(例えば、用量依存的な様式で)競合的に遮断する抗原結合断片を有し、ここで、該BTN1A1エピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、BTN1A1のエピトープに免疫特異的に結合する抗原結合断片を有し、ここで、該BTN1A1エピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を有する。該BTN1A1のエピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、又は少なくとも15個の連続するアミノ酸を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも6個の連続するアミノ酸を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも7個の連続するアミノ酸を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも8個の連続するアミノ酸を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも9個の連続するアミノ酸を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも10個の連続するアミノ酸を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも11個の連続するアミノ酸を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも12個の連続するアミノ酸を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも13個の連続するアミノ酸を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも14個の連続するアミノ酸を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも15個の連続するアミノ酸を有することができる。該分子は抗体であることができる。該抗体はモノクローナル抗体であることができる。該抗体はヒト化抗体であることができる。
【0163】
いくつかの実施態様において、該分子は、BTN1A1エピトープを(例えば、用量依存的な様式で)競合的に遮断する抗原結合断片を有し、ここで、該BTN1A1エピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、BTN1A1のエピトープに免疫特異的に結合する抗原結合断片を有し、ここで、該BTN1A1エピトープは、配列番号31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、又は41のアミノ酸配列を有する。該BTN1A1のエピトープは、配列番号31のアミノ酸配列を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号32のアミノ酸配列を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号33のアミノ酸配列を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号34のアミノ酸配列を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号35のアミノ酸配列を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号36のアミノ酸配列を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号37のアミノ酸配列を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号38のアミノ酸配列を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号39のアミノ酸配列を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号40のアミノ酸配列を有することができる。該BTN1A1のエピトープは、配列番号41のアミノ酸配列を有することができる。
【0164】
ある実施態様において、本明細書に提供される分子は、BTN1A1、グリコシル化BTN1A1、又はこれらのポリペプチドもしくはポリペプチド断片もしくはエピトープに対する高い親和性を有する。一実施態様において、本明細書に提供される分子は、既知の抗体(例えば、本明細書の別所で論じられている市販のモノクローナル抗体)よりもBTN1A1抗体に対する高い親和性を有する抗BTN1A1抗体であることができる。具体的な実施態様において、本明細書に提供される分子は、本明細書に記載される又は当業者に公知の技法(例えば、BIAcoreアッセイ)によって評価したとき、既知の抗BTN1A1抗体よりも2~10倍(又はそれよりも)高いBTN1A1抗原に対する親和性を有することができる抗BTN1A1抗体であることができる。これらの実施態様に従って、抗体の親和性は、一実施態様において、BIAcoreアッセイによって評価される。
【0165】
ある実施態様において、本明細書に提供される分子は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、又は0.1nM以下の解離定数(Kd)でBTN1A1、グリコシル化BTN1A1、又はこれらのポリペプチドもしくはそのポリペプチド断片もしくはエピトープに結合する抗原結合断片を有することができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、500nM以下のKdを有する抗BTN1A1抗体であることができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、200nM以下のKdを有する抗BTN1A1抗体であることができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、100nM以下のKdを有する抗BTN1A1抗体であることができる。いくつかの実施態様において、50nM以下のKdを有する抗BTN1A1抗体であることができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、20nM以下のKdを有する抗BTN1A1抗体であることができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、10nM以下のKdを有する抗BTN1A1抗体であることができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、5nM以下のKdを有する抗BTN1A1抗体であることができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、2nM以下のKdを有する抗BTN1A1抗体であることができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、1nM以下のKdを有する抗BTN1A1抗体であることができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、0.5nM以下のKdを有する抗BTN1A1抗体であることができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される分子は、0.1nM以下のKdを有する抗BTN1A1抗体であることができる。
【0166】
ある実施態様において、本明細書に提供される分子は、BTN1A1の活性を遮断又は中和することができる。該分子は、中和抗体であることができる。中和抗体は、BTN1A1とその天然リガンドとの結合を遮断し、BTN1A1及び/又はその他の生理的活性によって媒介されるシグナル伝達経路を阻害することができる。中和抗体のIC50は、中和アッセイで0.01~10μg/mlの範囲であることができる。中和抗体のIC50は、10μg/ml以下であることができる。中和抗体のIC50は、8μg/ml以下であることができる。中和抗体のIC50は、6μg/ml以下であることができる。中和抗体のIC50は、4μg/ml以下であることができる。中和抗体のIC50は、2μg/ml以下であることができる。中和抗体のIC50は、1μg/ml以下であることができる。中和抗体のIC50は、0.8μg/ml以下であることができる。中和抗体のIC50は、0.6μg/ml以下であることができる。中和抗体のIC50は、0.4μg/ml以下であることができる。中和抗体のIC50は、0.2μg/ml以下であることができる。中和抗体のIC50は、0.1μg/ml以下であることができる。中和抗体のIC50は、0.08μg/ml以下であることができる。中和抗体のIC50は、0.06μg/ml以下であることができる。中和抗体のIC50は、0.04μg/ml以下であることができる。中和抗体のIC50は、0.02μg/ml以下であることができる。中和抗体のIC50は、0.01μg/ml以下であることができる。
【0167】
BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に提供される分子は、抗BTN1A1抗体であることができる。本明細書に提供される抗体には、合成抗体、モノクローナル抗体、組換え産生抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、及び上記のもののいずれかの機能性断片が含まれるが、これらに限定されない。機能性断片の非限定的な例としては、単鎖Fv(scFv)(例えば、単一特異性、二重特異性などを含む)、Fab断片、F(ab')断片、F(ab)2断片、F(ab')2断片、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、Fd断片、Fv断片、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及びミニボディが挙げられる。
【0168】
特に、本明細書に提供される分子には、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、例えば、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を含む分子が含まれる。本明細書に提供される免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスのものであることができる。
【0169】
本明細書に提供される分子は、単一特異性、二重特異性、三重特異性抗体、又はより高次の多重特異性抗体であることができる。多重特異性抗体は、本明細書に記載されるBTN1A1の異なるエピトープに特異的であることができ、又はBTN1A1ポリペプチドと異種エピトープ、例えば、異種ポリペプチドもしくは固体支持体材料の両方に特異的であることができる。具体的な実施態様において、本明細書に提供される抗体は、BTN1A1ポリペプチドの所与のエピトープに単一特異的であり、他のエピトープに結合しない。
【0170】
(5.2.3.修飾及び誘導体)
BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する上記の分子のいずれかの結合特性を、所望の特性を示す変異体のスクリーニングによってさらに改善することができる。例えば、そのような改善は、当技術分野で公知の様々なファージディスプレイ法を用いて行うことができる。ファージディスプレイ法において、機能的抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を保有するファージ粒子の表面に提示される。特定の実施態様において、そのようなファージを用いて、レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒト又はマウス)から発現される、Fab及びFv又はジスルフィド結合安定化Fvなどの抗原結合断片を提示することができる。対象となる抗原に結合する抗原結合断片を発現するファージは、抗原を用いて、例えば、標識抗原又は固体表面もしくはビーズに結合したもしくは捕捉された抗原を用いて選択又は同定することができる。これらの方法で使用されるファージは、通常、fd及びM13を含む繊維状ファージである。抗原結合断片は、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質のいずれかとの組換え融合タンパク質として発現される。抗体又は本明細書に記載される抗原結合断片を有する他の分子を作製するために使用することができるファージディスプレイ法の例としては、Brinkmanらの文献、J Immunol Methods, 182:41-50(1995); Amesらの文献、J. Immunol. Methods, 184:177-186(1995); Kettleboroughらの文献、Eur. J. Immunol., 24:952-958(1994); Persicらの文献、Gene, 187:9-18(1997); Burtonらの文献、Adv. Immunol. 57:191-280(1994); PCT公開WO 92/001047号; WO 90/02809号; WO 91/10737号; WO 92/01047号; WO 92/18619号; WO 93/11236号; WO 95/15982号; WO 95/20401号;及び米国特許第5,698,426号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号、及び第5,969,108号に開示されている方法が挙げられ;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
【0171】
上の参考文献に記載されているように、ファージ選択の後、ファージ由来の抗体コード領域を単離し、これを用いて、ヒト化抗体を含む全抗体又は任意の他の所望の断片を作製し、例えば、以下で詳細に記載されているように、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、及び細菌を含む、任意の所望の宿主で発現させることができる。例えば、当技術分野で公知の方法、例えば、PCT公開WO 92/22324号; Mullinax, R. L.らの文献、BioTechniques, 12(6):864-869(1992);及びSawaiらの文献、Am. J. Reprod. Immunol. 34:26-34(1995);並びにBetter, M.らの文献、Science 240:1041-1043(1988)に開示されている方法を用いて、Fab、Fab'、及びF(ab')2断片を組換え産生するための技法を利用することもでき;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。単鎖Fv及び抗体を産生するために使用することができる技法の例としては、米国特許第4,946,778号及び第5,258,498号; Huston, J. S.らの文献、Methods in Enzymology 203:46-88(1991); Shu, L.らの文献、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA) 90:7995-7999;並びにSkerra. A.らの文献、Science 240:1038-1040(1988)に記載されている技法が挙げられ;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
【0172】
ファージディスプレイ技術を用いて、抗BTN1A1抗体もしくは抗グリコシル化BTN1A1抗体、又は本明細書に記載されるBTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する他の分子の親和性を増大させることができる。この技法は、本明細書に記載されるコンビナトリアル法で使用し得る高親和性抗体を得るのに使用することができる。親和性成熟と呼ばれるこの技術は、突然変異誘発又はCDRウォーキング及びそのような受容体もしくはリガンド(又はこれらの細胞外ドメイン)又はその抗原性断片を用いた再選択を利用して、初期抗体又は親抗体と比較したときにより高い親和性で抗原に結合する抗体を同定する(例えば、Glaser, S. M.らの文献、J. Immunol. 149:3903-3913(1992)を参照)。単一のヌクレオチドではなく、全コドンを突然変異誘発すると、アミノ酸突然変異の半ランダムレパートリーが得られる。その各々が単一のCDR中で1アミノ酸変化だけ異なり、かつ各々のCDR残基に対して各々の可能なアミノ酸置換を表す変異体を含有する、変異体クローンのプールからなるライブラリーを構築することができる。固定された突然変異体を標識抗原と接触させることにより、抗原に対する結合親和性が増大した突然変異体をスクリーニングすることができる。当技術分野で公知の任意のスクリーニング法を用いて、抗原に対する結合力が増大した突然変異抗体を同定することができる(例えば、ELISA)(例えば、Wu, H.らの文献、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA) 95(11):6037-6042(1998); Yelton, D. E.らの文献、J. Immunol. 155:1994-2004(1995)を参照)。軽鎖をランダム化するCDRウォーキングを使用することもできる(Schierらの文献、J. Mol. Biol. 263:551-567(1996)を参照)。
【0173】
ランダムな突然変異誘発をファージディスプレイの方法と協調して用いて、改善されたCDR及び/又は可変領域を同定することができる。或いは、ファージディスプレイ技術を用いて、有向突然変異誘発(例えば、親和性成熟又は「CDR-ウォーキング」)により、CDR親和性を増大させる(又は減少させる)ことができる。この技法は、標的抗原又はその抗原性断片を用いて、初期抗体又は親抗体と比較したときにより高い(又は低い)親和性で抗原に結合するCDRを有する抗体を同定する(例えば、Glaser, S. M.らの文献、J. Immunol. 149:3903-3913(1992)を参照)。
【0174】
そのような親和性成熟を達成する方法は、例えば: Krause, J. C.らの文献、MBio. 2(1) pii: e00345-10. doi: 10.1128/mBio.00345-10(2011); Kuan, C. T.らの文献、Int. J. Cancer 10.1002/ijc.25645; Hackel, B. J.らの文献、J. Mol. Biol. 401(1):84-96(2010); Montgomery, D. L.らの文献、MAbs 1(5):462-474(2009); Gustchina, E.らの文献、Virology 393(1):112-119(2009); Finlay, W. J.らの文献、J. Mol. Biol. 388(3):541-558(2009); Bostrom, J.らの文献、Methods Mol. Biol. 525:353-376(2009); Steidl, S.らの文献、Mol. Immunol. 46(1):135-144(2008);及びBarderas, R.らの文献、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA) 105(26):9029-9034(2008)に記載されており;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
【0175】
本明細書に提供されるのは、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する上記の分子のいずれかの誘導体であって、抗BTN1A1抗体又は抗グリコシル化BTN1A1抗体であり得るが、「親」(又は野生型)分子と比べて、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれより多くのアミノ酸置換、付加、欠失、又は修飾を有する、誘導体でもある。そのようなアミノ酸置換又は付加は、天然の(すなわち、DNAによってコードされた)又は非天然のアミノ酸残基を導入することができる。そのようなアミノ酸は、グリコシル化されたり(例えば、マンノース、2-N-アセチルグルコサミン、ガラクトース、フコース、グルコース、シアル酸、5-N-アセチルノイラミン酸、5-グリコールノイラミン酸などの含有量が改変されたり)、アセチル化されたり、ペグ化されたり、リン酸化されたり、アミド化されたり、既知の保護/遮断基によって誘導体化されたり、タンパク質分解的切断を受けたり、細胞性リガンド又は他のタンパク質に連結されたりなどすることができる。いくつかの実施態様において、炭水化物修飾の改変は、以下のもの:抗体の可溶化、抗体の細胞内輸送及び分泌の円滑化、抗体会合の促進、立体構造完全性、並びに抗体媒介性エフェクター機能のうちの1つ又は複数を調節する。いくつかの実施態様において、炭水化物修飾の改変は、炭水化物修飾を欠く抗体と比べて、抗体媒介性エフェクター機能を増強する。抗体媒介性エフェクター機能の改変をもたらす炭水化物修飾は当技術分野で周知である(例えば、Shields, R. L.らの文献、J. Biol. Chem. 277(30): 26733-26740(2002); Davies J.らの文献、Biotechnology & Bioengineering 74(4): 288-294(2001)を参照されたく;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。炭水化物含有量を改変する方法は当業者に公知であり、例えば、Wallick, S. C.らの文献、J. Exp. Med. 168(3): 1099-1109(1988); Tao, M. H.らの文献、J. Immunol. 143(8): 2595-2601(1989); Routledge, E. G.らの文献、Transplantation 60(8):847-53(1995); Elliott, S.らの文献、Nature Biotechnol. 21:414-21(2003); Shields, R. L.らの文献、J. Biol. Chem. 277(30): 26733-26740(2002)を参照されたく;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
【0176】
いくつかの実施態様において、ヒト化抗体は誘導性抗体である。そのようなヒト化抗体は、1以上の非ヒトCDR中に、アミノ酸残基の置換、欠失、又は付加を含む。ヒト化抗体誘導体は、非誘導性ヒト化抗体と比較したとき、実質的に同じ結合、より良い結合、又はより悪い結合を有することができる。いくつかの実施態様において、CDRの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸残基は突然変異させられており、例えば、置換され、欠失させられ、又は付加されている。
【0177】
本明細書に記載される分子及び抗体は、限定されないが、特異的な化学的切断、アセチル化、製剤化、ツニカマイシンの代謝的合成などを含む、当業者に公知の技法を用いる化学修飾によって修飾することができる。一実施態様において、誘導性分子又は誘導性抗体は、親分子又は親抗体と同様又は同一の機能を保有する。別の実施態様において、誘導性分子又は誘導性抗体は、親分子又は親抗体と比べて改変された活性を示す。例えば、誘導性抗体(又はその断片)は、親抗体よりも強固にそのエピトープに結合するか、又は親抗体よりもタンパク質分解に耐性があることができる。
【0178】
誘導体化抗体における置換、付加、又は欠失は、抗体のFc領域中のものであることができ、それにより、1以上のFcγRに対する抗体の結合親和性を修飾する役割を果たすことができる。1以上のFcγRに対する結合が修飾された抗体を修飾する方法は当技術分野で公知であり、例えば、PCT公開WO 04/029207号、第WO 04/029092号、第WO 04/028564号、第WO 99/58572号、第WO 99/51642号、第WO 98/23289号、第WO 89/07142号、第WO 88/07089号、並びに米国特許第5,843,597号及び5,642,821号を参照されたく;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。いくつかの実施態様において、該抗体又は他の分子は、活性化FcγR、例えば、FcγRIIIAに対する改変された親和性を有することができる。好ましくは、そのような修飾は、改変されたFc媒介性エフェクター機能も有する。Fc媒介性エフェクター機能に影響を及ぼす修飾は当技術分野で周知である(米国特許第6,194,551号、及びWO 00/42072号を参照)。いくつかの実施態様において、Fc領域の修飾は、改変された抗体媒介性エフェクター機能、他のFc受容体(例えば、Fc活性化受容体)への改変された結合、改変された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)活性、改変されたC1q結合活性、改変された補体依存的細胞傷害性活性(CDC)、貪食活性、又はこれらの任意の組合せを有する抗体を生じさせる。
【0179】
ADCCは、FcRを発現する抗原非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞の表面に結合した抗体を認識し、その後、標的細胞の溶解を引き起こす(すなわち、標的細胞を「死滅させる」)細胞媒介性反応である。主なメディエーター細胞はNK細胞である。NK細胞はFcγRIIIのみを発現し、FcγRIIIAは活性化受容体であり、かつFcγRIIIBは阻害受容体であり;単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する(Ravetchらの文献(1991) Annu. Rev. Immunol., 9:457-92)。ADCC活性は、標的細胞の溶解が半最大となる抗体又はFc融合タンパク質の濃度として表すことができる。したがって、いくつかの実施態様において、溶解レベルが野生型対照による半最大溶解レベルと同じとなる、本発明の抗体又はFc融合タンパク質の濃度は、野生型対照自体の濃度よりも少なくとも2、3、5、10、20、50、100倍低い。さらに、いくつかの実施態様において、本発明の抗体又はFc融合タンパク質は、野生型対照と比較して、より高い最大標的細胞溶解を示すことができる。例えば、抗体又はFc融合タンパク質の最大標的細胞溶解は、野生型対照の最大標的細胞溶解よりも10%、15%、20%、25%、又はそれより大きいものであることができる。
【0180】
本明細書に記載される分子及び抗体は、増強された効力を有するように修飾されることができる。いくつかの実施態様において、該分子及び抗体は、エフェクター機能に関して、例えば、ADCC及び/又は補体依存的細胞傷害性(CDC)を増強するように修飾される。いくつかの実施態様において、これらの治療的分子又は抗体は、Fc受容体を保有するキラー細胞との増強された相互作用を有する。ADCCなどのエフェクター機能の増強は、Fc領域に1以上のアミノ酸置換を導入することを含む、様々な手段によって達成することができる。また、システイン残基をFc領域に導入し、この領域における鎖間ジスルフィド結合形成を可能にすることができる。ホモ二量体抗体は、改善された内在化能力並びに/又は増大したCDC及びADCCを有することもできる。Caronらの文献、J. Exp Med., 176:1191-95(1992)及びShopes, Bの文献、J. Immunol., 148:2918-22(1992)。増強された抗癌活性を有するホモ二量体抗体を、ヘテロ官能性クロスリンカーを用いて調製することもできる。Wolffらの文献、Cancer Research, 53:2560-65(1993)。さらに、二重のFc領域を有し、それにより、増強されたCDC及びADCC能力を有することができる抗体又は分子を人為的に作製することができる。Stevensonらの文献、Anti-Cancer Drug Design 3:219-30(1989)。
【0181】
Fc領域のグリコシル化パターンを改変することもできる。いくつかの抗体グリコシル化形態は、ADCCを含むエフェクター機能に対するプラスの効果を有すると報告されている。したがって、Fc領域の炭水化物成分の改変、特に、コアフコシル化の低下も、増強された治療効力を有することができる。Shinkawa T,らの文献、J Biol. Chem., 278:3466-73(2003); Niwa R,らの文献、Cancer Res., 64:2127-33(2004); Okazaki A,らの文献、J Mol. Biol. 336:1239^19(2004);及びShields RL,らの文献、J Biol. Chem.277:26733-40(2002)。選択されたグライコフォームを有する本明細書に記載される抗体又は分子を、グリコシル化経路阻害剤、グリコシル化経路内の特定の酵素の活性が欠如又は低下している突然変異体細胞株、グリコシル化経路内の遺伝子発現が増強されているか又はノックアウトされているかのいずれかの改変細胞、並びにグリコシダーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼによるインビトロリモデリングの使用を含む、いくつかの手段によって産生することができる。Fc領域のグリコシル化を修飾し、抗体又は抗原結合断片を有する他の分子の治療効力を増強する方法は当技術分野で公知である。Rothmanらの文献、Molecular Immunology 26: 1113-1123(1989); Umanaらの文献、Nature Biotechnology 17: 176-180(1999); Shieldsらの文献、JBC 277:26733-26740(2002); Shinkawaらの文献、JBC 278: 3466-3473(2003); Bischoffらの文献、J. Biol. Chem. 265(26):15599-15605(1990);米国特許第6,861,242号及び第7,138,262号、並びに米国公開第2003/0124652号;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。当業者であれば、本明細書に提供される抗体及び分子を、増強された治療効力を有するように、当技術分野で公知の任意の方法によって修飾することができることを理解するであろう。
【0182】
誘導性分子又は抗体は、哺乳動物、好ましくは、ヒトにおいて、親分子又は抗体の改変された半減期(例えば、血清半減期)を有することもできる。いくつかの実施態様において、そのような改変は、15日超、好ましくは、20日超、25日超、30日超、35日超、40日超、45日超、2カ月超、3カ月超、4カ月超、又は5カ月超の半減期をもたらす。哺乳動物、好ましくは、ヒトにおけるヒト化抗体又は他の分子の増大した半減期は、哺乳動物における該抗体又は他の分子のより高い血清力価をもたらし、そのため、該抗体もしくは他の分子の投与の頻度を低下させ、かつ/又は投与されることになる該抗体もしくは他の分子の濃度を低下させる。増大したインビボ半減期を有する分子又は抗体は、当業者に公知の技法によって作製することができる。例えば、増大したインビボ半減期を有する分子又は抗体は、FcドメインとFcRn受容体の相互作用に関与することが確認されたアミノ酸残基を修飾する(例えば、置換する、欠失させる、又は付加する)ことにより作製することができる。本明細書に記載されるヒト化抗体を改変して、生体半減期を増大させることができる(例えば、米国特許第6,277,375号を参照)。例えば、本明細書に記載されるヒト化抗体を、増大したインビボ又は血清半減期を有するように、Fc-ヒンジドメインで改変することができる。
【0183】
増大したインビボ半減期を有する本明細書に記載される分子又は抗体は、該抗体又は抗体断片に高分子量ポリエチレングリコール(PEG)などのポリマー分子を付着させることにより作製することができる。PEGは、多官能性リンカーの有無を問わず、PEGの該分子もしくは抗体のN-又はC-末端への部位特異的コンジュゲーションによるか、又はリジン残基上に存在するε-アミノ基を介して、該分子又は抗体に付着させることができる。生物学的活性の最小限の損失をもたらす線状又は分岐状ポリマーの誘導体化を使用することができる。コンジュゲーションの程度をSDS-PAGE及び質量分析によって厳重にモニタリングし、PEG分子の抗体への適切なコンジュゲーションを保証することができる。未反応のPEGは、例えば、サイズ排除又はイオン交換クロマトグラフィーによって、抗体-PEGコンジュゲートから分離することができる。
【0184】
本明細書に記載される分子又は抗体は、免疫原性応答を実質的に伴わずに哺乳動物循環系に注射することができる組成物を提供するために、Davisらの文献(米国特許第4,179,337号を参照)に記載されている方法及びカップリング剤によって修飾することもできる。Fc部分の除去は、抗体断片が望ましくない免疫学的応答を誘発する可能性を低下させ、したがって、Fcがない抗体を予防的又は治療的処置に使用することができる。上記のように、抗体は、他の種で産生された又は他の種由来の配列を有する抗体を動物に投与することにより生じる有害な免疫学的帰結を軽減し又は消失させるために、キメラ、部分的に又は完全にヒトのものになるように構築することもできる。
【0185】
(5.2.3.融合体及びコンジュゲート)
本明細書に提供されるのは、抗BTN1A1抗体及び抗グリコシル化BTN1A1抗体を含む、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子である。いくつかの実施態様において、そのような分子は、他のタンパク質との融合タンパク質として発現されるか、又は別の部分に化学的にコンジュゲートされる。
【0186】
いくつかの実施態様において、該分子は、Fc部分を有する融合タンパク質であり、ここで、該Fc部分は、アイソタイプもしくはサブクラスによって異なることができ、キメラもしくはハイブリッドであることができ、及び/又は例えば、エフェクター機能、半減期の制御、組織への接近可能性を改善し、安定性などの生物物理学的な特性を強化し、かつ産生の効率を改善する(より低コストにする)ように修飾することができる。開示されている融合タンパク質の構築において有用な多くの修飾及びそれを行う方法は当技術分野で公知であり、例えば、Mueller, J. P.らの文献、Mol. Immun. 34(6):441-452(1997), Swann, P. G.の文献、Curr. Opin. Immun. 20:493-499(2008)、及びPresta, L. G.の文献、Curr. Opin. Immun. 20:460-470(2008)を参照されたい。いくつかの実施態様において、該Fc領域は、ネイティブのIgG1、IgG2、又はIgG4 Fc領域である。いくつかの実施態様において、該Fc領域は、ハイブリッド、例えば、IgG2/IgG4 Fc定常領域を有するキメラである。該Fc領域に対する修飾には、Fcγ受容体及び補体への結合を妨げるように修飾されたIgG4、1以上のFcγ受容体への結合を改善するように修飾されたIgG1、エフェクター機能(アミノ酸変化)を最小化するように修飾されたIgG1、(典型的には、発現宿主を変更することにより)グリカンが改変された/グリカンを含まないIgG1、並びにFcRnへのpH依存的結合が改変されたIgG1が含まれるが、これらに限定されない。該Fc領域は、ヒンジ領域全体、又はヒンジ全体に満たない領域を含むことができる。
【0187】
別の実施態様は、その半減期を増大させるFcRへの結合が低下しているIgG2-4ハイブリッド及びIgG4突然変異体を含む。代表的なIG2-4ハイブリッド及びIgG4突然変異体は、Angalらの文献、Molec. Immunol. 30(1):105-108(1993); Muellerらの文献、Mol. Immun. 34(6):441-452(1997);及び米国特許第6,982,323号に記載されており;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。いくつかの実施態様において、IgG1及び/又はIgG2ドメインは欠失しており、例えば、Angalらの文献には、セリン241がプロリンと置き換えられているIgG1及びIgG2が記載されている。
【0188】
いくつかの実施態様において、該分子は、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、又は少なくとも100個のアミノ酸を有するポリペプチドである。
【0189】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子であって、少なくとも1つの部分に連結しているか、又は該部分に共有結合しているか、又は該部分との複合体を形成する分子である。そのような部分は、診断剤又は治療剤としての分子の効力を増大させる部分であることができるが、それに限定されない。いくつかの実施態様において、該部分は、イメージング剤、毒素、治療的酵素、抗生物質、放射性標識ヌクレオチドなどであることができる。
【0190】
本明細書に提供される分子は、治療的部分(又は1以上の治療的部分)を含むことができる。本明細書に提供される分子は、細胞毒素、例えば、細胞増殖抑制剤もしくは細胞破壊剤、治療剤、又は放射性金属イオン、例えば、α-放射体などの、治療的部分にコンジュゲートされた又は組換え融合させられた抗体であることができる。細胞毒素又は細胞毒性剤には、細胞にとって有害である任意の薬剤が含まれる。治療的部分としては、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン(decarbazine));アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパ(thioepa)、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)、並びにシスプラチン);アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧名、ダウノマイシン)及びドキソルビシン);抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧名、アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC));オーリスタチン分子(例えば、オーリスタチンPHE、オーリスタチンF、モノメチルオーリスタチンE、ブリオスタチン1、及びソラスタチン10; Woykeらの文献、Antimicrob. Agents Chemother. 46:3802-8(2002)、Woykeらの文献、Antimicrob. Agents Chemother. 45:3580-4(2001)、Mohammadらの文献、Anticancer Drugs 12:735-40(2001)、Wallらの文献、Biochem. Biophys. Res. Commun. 266:76-80(1999)、Mohammadらの文献、Int. J. Oncol. 15:367-72(1999)を参照されたく、これらは全て、引用により本明細書中に組み込まれる);ホルモン(例えば、グルココルチコイド、プロゲスチン、アンドロゲン、及びエストロゲン)、DNA修復酵素阻害剤(例えば、エトポシド又はトポテカン)、キナーゼ阻害剤(例えば、化合物ST1571、メシル酸イマチニブ(Kantarjianらの文献、Clin Cancer Res. 8(7):2167-76(2002));細胞毒性剤(例えば、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン(colchicin)、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルコルチコイド(glucorticoid)、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン並びにこれらの類似体又はホモログ、並びに米国特許第6,245,759号、第6,399,633号、第6,383,790号、第6,335,156号、第6,271,242号、第6,242,196号、第6,218,410号、第6,218,372号、第6,057,300号、第6,034,053号、第5,985,877号、第5,958,769号、第5,925,376号、第5,922,844号、第5,911,995号、第5,872,223号、第5,863,904号、第5,840,745号、第5,728,868号、第5,648,239号、第5,587,459号に開示されている化合物);ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、R115777、BMS-214662、並びに例えば、米国特許第6,458,935号、第6,451,812号、第6,440,974号、第6,436,960号、第6,432,959号、第6,420,387号、第6,414,145号、第6,410,541号、第6,410,539号、第6,403,581号、第6,399,615号、第6,387,905号、第6,372,747号、第6,369,034号、第6,362,188号、第6,342,765号、第6,342,487号、第6,300,501号、第6,268,363号、第6,265,422号、第6,248,756号、第6,239,140号、第6,232,338号、第6,228,865号、第6,228,856号、第6,225,322号、第6,218,406号、第6,211,193号、第6,187,786号、第6,169,096号、第6,159,984号、第6,143,766号、第6,133,303号、第6,127,366号、第6,124,465号、第6,124,295号、第6,103,723号、第6,093,737号、第6,090,948号、第6,080,870号、第6,077,853号、第6,071,935号、第6,066,738号、第6,063,930号、第6,054,466号、第6,051,582号、第6,051,574号、及び第6,040,305号によって開示されているもの);トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、カンプトテシン;イリノテカン; SN-38;トポテカン; 9-アミノカンプトテシン; GG-211(GI 147211); DX-8951f; IST-622;ルビテカン;ピラゾロアクリジン; XR-5000;サイントピン; UCE6; UCE1022; TAN-1518A; TAN 1518B; KT6006; KT6528; ED-110; NB-506; ED-110; NB-506;及びレベッカマイシン);ブルガレイン; DNAマイナーグルーブ結合剤、例えば、Hoescht色素33342及びHoechst色素33258;ニチジン;ファガロニン;エピベルベリン;コラリン;β-ラパコン; BC-4-1;ビスホスホネート(例えば、アレンドロネート、シマドロント(cimadronte)、クロドロネート、チルドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、ネリドロネート、オルパンドロネート、リセドロネート、ピリドロネート、パミドロネート、ゾレンドロネート)、HMG-CoA還元酵素阻害剤(例えば、ロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、スタチン、セリバスタチン、レスコール、ルピトール、ロスバスタチン、及びアトルバスタチン);アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、米国特許第6,277,832号、第5,998,596号、第5,885,834号、第5,734,033号、及び第5,618,709号に開示されているもの);アデノシンデアミナーゼ阻害剤(例えば、リン酸フルダラビン及び2-クロロデオキシアデノシン);イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(登録商標));トシツモマブ(Bexxar(登録商標)))、並びにこれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、包摂化合物、及びプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
さらに、本明細書に提供される分子は、所与の生物学的応答を修飾する治療的部分又は薬物部分にコンジュゲートするか、又は組換え融合させることができる抗体である。治療的部分又は薬物部分は、古典的な化学治療剤に限定されるものとみなすべきではない。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を保有するタンパク質、ペプチド、又はポリペプチドであることができる。そのようなタンパク質としては、例えば、毒素、例えば、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素、コレラ毒素、もしくはジフテリア毒素;タンパク質、例えば、腫瘍壊死因子、γ-インターフェロン、α-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、アポトーシス物質、例えば、TNF-γ、TNF-γ、AIM I(国際公開WO 97/33899号を参照)、AIM II(国際公開WO 97/34911号を参照)、Fasリガンド(Takahashiらの文献、1994、J. Immunol.、6:1567-1574)、及びVEGF(国際公開WO 99/23105号を参照)、抗血管形成物質、例えば、アンギオスタチン、エンドスタチン、もしくは凝固経路の構成要素(例えば、組織因子);又は生物応答修飾物質、例えば、リンホカイン(例えば、インターフェロンγ、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-5(「IL-5」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、インターロイキン-7(「IL-7」)、インターロイキン9(「IL-9」)、インターロイキン-10(「IL-10」)、インターロイキン-12(「IL-12」)、インターロイキン-15(「IL-15」)、インターロイキン-23(「IL-23」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、及び顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)など)、もしくは成長因子(例えば、成長ホルモン(「GH」))、又は凝固作用物質(例えば、カルシウム、ビタミンK、組織因子、例えば、限定されないが、ハーゲマン因子(第XII因子)、高分子量キニノーゲン(HMWK)、プレカリクレイン(PK)、凝固タンパク質-第II因子(プロトロンビン)、第V因子、第XIIa因子、第VIII因子、第XIIIa因子、第XI因子、第XIa因子、第IX因子、第IXa因子、第X因子、リン脂質、及びフィブリン単量体)を挙げることができる。
【0192】
さらに、本明細書に提供される抗体は、治療的部分、例えば、放射性金属イオン、例えば、α-放射体、例えば、213Bi、又は限定されないが、131In、131LU、131Y、131Ho、131Smを含む、放射性金属イオンをポリペプチドにコンジュゲートするのに有用な大環状キレート化剤にコンジュゲートすることができる。ある実施態様において、該大環状キレート化剤は、リンカー分子を介して抗体に結合させることができる1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-四酢酸(DOTA)である。そのようなリンカー分子は、当技術分野で一般に知られており、各々引用により完全に組み込まれる、Denardoらの文献、1998, Clin Cancer Res. 4(10):2483-90; Petersonらの文献、1999, Bioconjug. Chem. 10(4):553-7;及びZimmermanらの文献、1999, Nucl. Med. Biol. 26(8):943-50に記載されている。
【0193】
BTN1A1に免疫特異的に結合する本明細書に提供される抗体にコンジュゲートされる又は組換え融合させられる治療的部分又は薬物は、所望の予防的又は治療的効果を達成するように選択されるべきである。ある実施態様において、該抗体は、修飾抗体である。臨床医又は他の医療従事者は、どの治療的部分又は薬物を本明細書に提供される抗体にコンジュゲートし又は組換え融合させるかを決定するときに、以下のこと:疾患の性質、疾患の重症度、及び対象の状態を考慮すべきである。
【0194】
いくつかの実施態様において、該部分は、酵素、ホルモン、細胞表面受容体、毒素(例えば、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素(すなわち、PE-40)、ジフテリア毒素、リシン、ゲロニン、又はヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質)、タンパク質(例えば、腫瘍壊死因子、インターフェロン(例えば、α-インターフェロン、β-インターフェロン)、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、又はアポトーシス物質(例えば、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-β))、生物応答修飾物質(例えば、例えば、リンホカイン(例えば、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」))、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、もしくはマクロファージコロニー刺激因子(「M-CSF」))、又は成長因子(例えば、成長ホルモン(「GH」)))、細胞毒素(例えば、細胞増殖抑制剤又は細胞破壊剤、例えば、パクリタキソール(paclitaxol)、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン(colchicin)、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)、モノメチルオーリスタチンE(MMAE;例えば、ベドチン)、及びピューロマイシン、並びにこれらの類似体又はホモログ)、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン(decarbazine))、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパ(thioepa)、クロラムブシル、メルファラン、BiCNU(登録商標)(カルムスチン; BSNU)、及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、並びにシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)、シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧名、ダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧名、アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))、或いは抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)であることができる。
【0195】
そのような治療的部分を抗体にコンジュゲートする技法は周知であり;例えば、Amonらの文献、「癌療法における薬物の免疫標的化のためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy)」、モノクローナル抗体及び癌療法(MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY)、Reisfeldら(編), 1985, pp. 243-56, Alan R. Liss社に所収); Hellstromらの文献、「薬物送達のための抗体(Antibodies For Drug Delivery)」、制御薬物送達(CONTROLLED DRUG DELIVERY)(第2版)、Robinsonら(編), 1987, pp. 623-53, Marcel Dekker社に所収); Thorpeの文献、「癌療法における細胞毒性剤の抗体担体:概説(Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review)」、モノクローナル抗体, 84:生物学的及び臨床的応用(MONOCLONAL ANTIBODIES '84: BIOLOGICAL AND CLINICAL APPLICATIONS)、Pincheraら(編), 1985, pp. 475-506に所収);「癌療法における放射性標識抗体の治療的使用の解析、結果、及び将来的展望(Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、癌の検出及び治療のためのモノクローナル抗体(MONOCLONAL ANTIBODIES FOR CANCER DETECTION AND THERAPY)、Baldwinら(編), 1985, pp. 303-16, Academic Pressに所収; Thorpeらの文献、Immunol. Rev. 62:119-158(1982); Carterらの文献、Cancer J. 14(3):154-169(2008); Alleyらの文献、Curr. Opin. Chem. Biol. 14(4):529-537(2010); Carterらの文献、Amer. Assoc. Cancer Res. Educ. Book. 2005(1):147-154(2005); Carterらの文献、Cancer J. 14(3):154-169(2008); Chariの文献、Acc. Chem Res. 41(1):98-107(2008); Doroninaらの文献、Nat. Biotechnol. 21(7):778-784(2003); Ducryらの文献、Bioconjug Chem. 21(1):5-13(2010); Senterの文献、Curr. Opin. Chem. Biol. 13(3):235-244(2009);及びTeicherの文献、Curr Cancer Drug Target. 9(8):982-1004(2009)を参照されたい。
【0196】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される分子をペプチドなどのマーカーにコンジュゲートして、精製を容易にすることができる。いくつかの実施態様において、該マーカーは、ヘキサ-ヒスチジンペプチド(配列番号55)、インフルエンザ血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する血球凝集素「HA」タグ(Wilson, I. A.らの文献、Cell, 37:767-778(1984))、又は「flag」タグ(Knappik, A.らの文献、Biotechniques 17(4):754-761(1994))である。
【0197】
いくつかの実施態様において、該部分は、アッセイで検出することができるイメージ剤であることができる。そのようなイメージ剤は、酵素、補欠分子族、放射性標識、非放射性常磁性金属イオン、ハプテン、蛍光標識、リン光分子、化学発光分子、発色団、発光分子、生体発光分子、光親和性分子、有色粒子、又はリガンド、例えば、ビオチンであることができる。
【0198】
いくつかの実施態様において、酵素には、限定されないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが含まれ;補欠分子族複合体には、限定されないが、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが含まれ;蛍光物質には、限定されないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、又はフィコエリスリンが含まれ;発光物質、例えば、限定されないが、ルミノール;生体発光物質には、限定されないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びイクオリンが含まれ;放射性物質には、限定されないが、ビスマス(213Bi)、炭素(14C)、クロム(51Cr)、コバルト(57Co)、フッ素(18F)、ガドリニウム(153Gd、159Gd)、ガリウム(68Ga、67Ga)、ゲルマニウム(68Ge)、ホルミウム(166Ho)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、ランタニウム(140La)、ルテチウム(177Lu)、マンガン(54Mn)、モリブデン(99Mo)、パラジウム(103Pd)、リン(32P)、プラセオジム(142Pr)、プロメチウム(149Pm)、レニウム(186Re、188Re)、ロジウム(105Rh)、ルテミウム(97Ru)、サマリウム(153Sm)、スカンジウム(47Sc)、セレン(75Se)、ストロンチウム(85Sr)、硫黄(35S)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、スズ(113Sn、117Sn)、トリチウム(3H)、キセノン(133Xe)、イッテルビウム(169Yb、175Yb)、イットリウム(90Y)、亜鉛(65Zn);様々な陽電子放射断層撮影法を用いる陽電子放射金属、並びに非放射性常磁性金属イオンが含まれる。
【0199】
イメージ剤は、当技術分野で公知の技法を用いて、直接的に、又は中間体(例えば、例えば、当技術分野で公知のリンカー)を介して間接的に、抗原結合断片を有する分子にコンジュゲートすることができる。診断薬として使用される本明細書に記載される抗体及び他の分子にコンジュゲートすることができる金属イオンについては、例えば、米国特許第4,741,900号を参照されたい。いくつかのコンジュゲーション法は、例えば、抗体に付着した、ジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA);エチレントリアミン四酢酸; N-クロロ-p-トルエンスルホンアミド;及び/又はテトラクロロ-3-6α-ジフェニルグリコウリル-3などの有機キレート化剤を利用する金属キレート錯体の使用を含む。モノクローナル抗体を、グルタルアルデヒド又は過ヨウ素酸塩などのカップリング剤の存在下で、酵素と反応させることもできる。フルオレセインマーカーとのコンジュゲートを、これらのカップリング剤の存在下で又はイソチオシアネートとの反応によって調製することができる。
【0200】
本明細書に記載される分子を第二の抗体にコンジュゲートして、Segalによって米国特許第4,676,980号に記載されている抗体ヘテロコンジュゲートを形成させることができる。そのようなヘテロコンジュゲート抗体は、ハプテン(例えば、フルオレセイン)に、又は細胞マーカー(例えば、4-1-BB、B7-H4、CD4、CD8、CD14、CD25、CD27、CD40、CD68、CD163、CTLA4、GITR、LAG-3、OX40、TIM3、TIM4、TLR2、LIGHT、ICOS、B7-H3、B7-H7、B7-H7CR、CD70、CD47)に、又はサイトカイン(例えば、IL-7、IL-15、IL-12、IL-4、TGF-β、IL-10、IL-17、IFNγ、Flt3、BLys)もしくはケモカイン(例えば、CCL21)にさらに結合することができる。
【0201】
本明細書に記載される分子は、固体支持体に付着させることができ、これは、免疫アッセイ又は標的抗原の精製もしくは本明細書に記載される抗体もしくは抗原結合断片への結合を介して該支持体に固定されている標的抗原に結合することができる他の分子の精製に有用であることができる。そのような固体支持体としては、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0202】
本明細書に提供されるのは、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する任意のそのような抗体、抗原結合断片、及び該抗原結合断片を有する分子をコードする核酸分子(DNA又はRNA)でもある。本明細書に提供されるのは、そのような核酸分子の伝達又は複製が可能であるベクター分子(例えば、プラスミド)でもある。該核酸は、一本鎖、二本鎖であることができ、かつ一本鎖部分と二本鎖部分の両方を含むことができる。
【0203】
(抗体-薬物コンジュゲート(ADC))
本明細書に提供される分子は、BTN1A1の細胞への内在化をもたらすことができるので。本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される任意の抗BTN1A1抗体を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)でもある。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、STC810又はそのヒト化変異体を抗体として有するADCである。
【0204】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、以下の式(Ia)及び(Ib)の抗体-薬物コンジュゲートを含む、抗体-薬物コンジュゲート:
【化5】
又はその医薬として許容し得る塩であり;
式中:
Aは、抗原結合断片を有する分子であり;
2つの図示されたシステイン残基は、A中の開裂したシステイン-システインジスルフィド結合に由来するものであり;
各々のX及びX'は、独立に、O、S、NH、又はNR
1であり、ここで、R
1はC
1-6アルキルであり;
W
aは、=N-、=CH-、=CHCH
2-、=C(R
2)-、又は=CHCH(R
2)-であり; W
bは、-NH-、-N(R
1)-、-CH
2-、-CH
2-NH-、-CH
2-N(R
1)-、-CH
2CH
2-、-CH(R
2)-、又は-CH
2CH(R
2)-であり;ここで、R
1及びR
2は、独立に、C
1-6アルキルであり;
CTXは細胞毒素であり;
Rは任意の化学基であるか;又はRは存在せず;
各々のL
1、L
2、及びL
3は、独立に、-O-、-C(O)-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2-、-NH-、-NCH
3-、-(CH
2)
q-、-NH(CH
2)
2NH-、-OC(O)-、-CO
2-、-NHCH
2CH
2C(O)-、-C(O)NHCH
2CH
2NH-、-NHCH
2C(O)-、-NHC(O)-、-C(O)NH-、-NCH
3C(O)-、-C(O)NCH
3-、-(CH
2CH
2O)
p、-(CH
2CH
2O)
pCH
2CH
2-、-CH
2CH
2-(CH
2CH
2O)
p-、-OCH(CH
2O-)
2、-(AA)
r-、シクロペンタニル、シクロヘキサニル、非置換フェニレニル、並びにハロ、CF
3-、CF
3O-、CH
3O-、-C(O)OH、-C(O)OC
1-3アルキル、-C(O)CH
3、-CN、-NH-、-NH
2、-O-、-OH、-NHCH
3、-N(CH
3)
2、及びC
1-3アルキルからなる群から選択される1又は2個の置換基によって置換されたフェニレニルからなる群から選択されるリンカーであり;
a、b、及びcは、各々独立に、0、1、2、又は3の整数であり、但し、a、b、又はcのうちの少なくとも1つは1であり;
各々のk及びk'は、独立に、0又は1の整数であり;
各々のpは、独立に、1~14の整数であり;
各々のqは、独立に、1~12の整数であり;
各々のAAは、独立に、アミノ酸であり;
各々のrは、1~12であり;
mは、1~4の整数であり;
nは、1~4の整数であり;かつ
【化6】
結合は、単結合又は二重結合を表す。
【0205】
式(Ib)の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)のある実施態様において、Rは、本明細書に定義される、W、(L1)a、(L2)b、(L3)c、Z、W-(L1)a-(L2)b-(L3)c、(L1)a-(L2)b-(L3)c-Z、及びW-(L1)a-(L2)b-(L3)c-Zからなる群から選択される。ある実施態様において、Rは、W、(L1)a、(L2)b、(L3)c、及びW-(L1)a-(L2)b-(L3)cからなる群から選択される。ある実施態様において、Rは、Z、(L1)a-(L2)b-(L3)c-Z、及びW-(L1)a-(L2)b-(L3)c-Zからなる群から選択される。
【0206】
式(Ib)の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)のある実施態様において、Rは、検出可能なプローブである。ある実施態様において、Rは、蛍光団、発色団、放射性標識、酵素、リガンド、抗体、又は抗体断片である。ある実施態様において、Rは、リガンド(例えば、前立腺特異的膜抗原などの腫瘍細胞、又はHIV感染細胞などのウイルス感染細胞上の受容体に特異的なリガンド)である。
【0207】
式(Ib)の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)のある実施態様において、Rは、アミド、N-(C1-6アルキル)アミド、カルバメート、N-(C1-6アルキル)カルバメート、アミン、N-(C1-6アルキル)アミン、エーテル、チオエーテル、ウレア、N-(C1-6アルキル)ウレア、又はN,N-ジ(C1-6アルキル)ウレア結合を介して、リンカー分子の残りの部分に結合している。
【0208】
式(Ia)又は(Ib)の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)のある実施態様において、各々のL1、L2、及びL3は、-NHC(O)-、-C(O)NH-、-(CH2CH2O)p、-(CH2CH2O)pCH2CH2-、-CH2CH2-(CH2CH2O)p-、-OCH(CH2O-)2、-(AA)r-、非置換フェニレニル、並びにハロ、CF3-、CF3O-、CH3O-、-C(O)OH、-C(O)OC1-3アルキル、-C(O)CH3、-CN、-NH-、-NH2、-O-、-OH、-NHCH3、-N(CH3)2、及びC1-3アルキルからなる群から選択される1又は2個の置換基によって置換されたフェニレニルからなる群から独立に選択され;ここで、a、b、及びcは、各々独立に、0又は1であり;かつ各々のp及びrは、独立に、1、2、又は3である。ある実施態様において、L1、L2、及びL3のうちの1つ又は複数は、-(AA)r-であり、ここで、-(AA)r-はValCitである(例えば、第一のアミノ酸はバリンであり、第二のアミノ酸はシトルリンであり、かつrは1である)。ある実施態様において、L1、L2、及びL3のうちの1つ又は複数は、-(AA)r-であり、ここで、-(AA)r-はValAlaである(例えば、第一のアミノ酸はバリンであり、第二のアミノ酸はアラニンであり、かつrは1である)。ある実施態様において、L1、L2、及びL3のうちの1つ又は複数は、-C(O)OH及び-NH2によって置換されたフェニレニルである。ある実施態様において、L1、L2、及びL3のうちの1つ又は複数は、-C(O)O-及び-NH-によって置換されたフェニレニルである。ある実施態様において、L1、L2、及びL3のうちの1つ又は複数は、-OC(O)-及び-NH-によって置換されたフェニレニルである。ある実施態様において、L1、L2、及びL3のうちの1つ又は複数は、-O-及び-NH-によって置換されたフェニレニルである。ある実施態様において、L1、L2、及びL3のうちの1つ又は複数はパラアミノベンジル(PAB)であり、これは、-C(O)O-、-OC(O)-、又は-O-で任意に置換されている。ある実施態様において、L1は-(CH2)q-であり、L2は存在せず、L3は存在せず、CTXは、アミド結合を介して(L1)a-(L2)b-(L3)cに結合している。ある実施態様において、L1は-(CH2)q-であり、L2は-(OCH2CH2)p-であり、L3は存在せず、CTXは、アミド結合を介して(L1)a-(L2)b-(L3)cに結合している。ある実施態様において、L1は-(CH2CH2O)p-であり、L2は-(CH2)q-であり、L3は存在せず、CTXは、アミド結合を介して(L1)a-(L2)b-(L3)cに結合している。ある実施態様において、各々のL1は、-(CH2CH2O)pCH2CH2-及び-CH2CH2-(CH2CH2O)p-からなる群から独立に選択され、L2は存在せず、L3は存在せず、CTXは、アミド結合を介して(L1)a-(L2)b-(L3)cに結合している。ある実施態様において、各々のL1は、-(CH2)q-、-(CH2CH2O)p、-(CH2CH2O)pCH2CH2-、-CH2CH2-(CH2CH2O)p-、及び-C(O)-からなる群から独立に選択され、L2はVal-Citであり、L3はPABであり、CTXは、アミド結合を介して(L1)a-(L2)b-(L3)cに結合している。ある実施態様において、各々のL1は、-(CH2)q-、-(CH2CH2O)p、-(CH2CH2O)pCH2CH2-、-CH2CH2-(CH2CH2O)p-、及び-C(O)-からなる群から独立に選択され、L2はVal-Citであり、L3はPABであり、CTXは、アミド結合を介して(L1)a-(L2)b-(L3)cに結合している。ある実施態様において、各々のL1は、-(CH2)q-、-(CH2CH2O)p、-(CH2CH2O)pCH2CH2-、-CH2CH2-(CH2CH2O)p-、及び-C(O)-からなる群から独立に選択され、L2はVal-Alaであり、L3はPABであり、CTXは、アミド結合を介して(L1)a-(L2)b-(L3)cに結合している。
【0209】
式(Ia)又は(Ib)の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)のある実施態様において、CTXは、チューブリン安定化剤、チューブリン脱安定化剤、DNAアルキル化剤、DNAマイナーグルーブ結合剤、DNAインターカレーター、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、ジャイレース阻害剤、タンパク質合成阻害剤、プロテオソーム阻害剤、及び代謝拮抗物質からなる群から選択される。
【0210】
式(Ia)又は(Ib)の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)のある実施態様において、CTXは化学療法剤である。当業者は、例えば、Chu, E.、DeVite, V. T.の文献、2012、医師の癌化学療法薬マニュアル2012(Physicians' Cancer Chemotherapy Drug Manual 2012)(Jones & Bartlett Learning Oncology)及び同様の文書に開示されている適切な化学療法剤を認識しているであろう。
【0211】
ある実施態様において、CTXは、任意のFDA承認化学療法剤であってもよい。ある実施態様において、CTXは、癌治療に利用可能な任意のFDA承認化学療法剤であってもよい。
【0212】
ある実施態様において、CTXは、アルキル化剤、アントラサイクリン、細胞骨格破壊物質(タキサン)、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDAC)、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、キナーゼ阻害剤、モノクローナル抗体、ヌクレオチド類似体、ペプチド抗生物質、白金系薬剤、レチノイド、ビンカアルカロイド又はその誘導体、及び放射性同位体からなる群から選択される。
【0213】
ある実施態様において、CTXは、アクチノマイシン、全トランス型レチノイン酸、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビンからなる群から選択される。
【0214】
ある実施態様において、CTXは、チューブリン安定化剤、チューブリン脱安定化剤、DNAアルキル化剤、DNAマイナーグルーブ結合剤、DNAインターカレーター、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、ジャイレース阻害剤、タンパク質合成阻害剤、プロテオソーム阻害剤、及び代謝拮抗物質からなる群から選択される。
【0215】
ある実施態様において、CTXは、アクチノマイシンD、アモナファイド、オーリスタチン、ベンゾフェノン、ベンゾチアゾール、カリケアマイシン、カンプトテシン、CC-1065(NSC 298223)、セマドチン、コルヒチン、コンブレタスタチンA4、ドラスタチン、ドキソルビシン、エリナファイド、エムタンシン(DM1)、エトポシド、KF-12347(レイナマイシン)、メイタンシノイド、メトトレキセート、ミトキサントロン、ノコダゾール、プロテオソーム阻害剤1(PSI 1)、ロリジンA、T-2毒素(トリコテセン類似体)、タキソール、チューブリシン、Velcade(登録商標)、及びビンクリスチンからなる群から選択される。ある実施態様において、CTXは、オーリスタチン、カリケアマイシン、メイタンシノイド、又はチューブリシンである。
【0216】
ある実施態様において、CTXは、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)、ピロロベンゾジアゼピン(PDB)、カリケアマイシンγ、メルタンシン、又はチューブリシンT2である。ある実施態様において、CTXは、MMAE又はMMAFである。ある実施態様において、CTXはPDBである。ある実施態様において、CTXはチューブリシンT2である。ある実施態様において、CTXは、チューブリシンT3又はチューブリシンT4であり、これらの構造は、以下に提供されている:
【化7】
。
【0217】
したがって、本明細書に提供されるコンジュゲートタンパク質又は融合タンパク質は、本明細書に記載される任意の抗BTN1A1抗体又は抗原結合断片を含むことができる。一実施態様において、本明細書に提供されるコンジュゲートタンパク質又は融合タンパク質は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVH又はVLドメインを含む。一実施態様において、本明細書に提供されるコンジュゲートタンパク質又は融合タンパク質は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVHドメインとVLドメインの両方を含む。別の実施態様において、本明細書に提供されるコンジュゲートタンパク質又は融合タンパク質は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVH CDRを含む。別の実施態様において、コンジュゲートタンパク質又は融合タンパク質は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVL CDRを含む。さらに別の実施態様において、本明細書に提供されるコンジュゲートタンパク質又は融合タンパク質は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810の少なくとも1つのVH CDR及び少なくとも1つのVL CDRを含む。
【0218】
いくつかの実施態様において、提供されるコンジュゲートタンパク質又は融合タンパク質は、本明細書に記載されるBTN1A1エピトープを(例えば、用量依存的な様式で)競合的に遮断する抗原結合断片を含むことができる。該BTN1A1エピトープは、本明細書に記載されるSTC810のエピトープであることができる。いくつかの実施態様において、提供されるコンジュゲートタンパク質又は融合タンパク質は、本明細書に記載されるBTN1A1のエピトープに免疫特異的に結合する抗原結合断片を含むことができる。該BTN1A1エピトープは、本明細書に記載されるSTC810のエピトープであることができる。いくつかの実施態様において、該BTN1A1エピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を有する。
【0219】
(5.3 組成物)
本明細書に提供されるのは、BTN1A1(グリコシル化BTN1A1を含む)に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子を有する組成物でもある。いくつかの実施態様において、該組成物は、抗BTN1A1抗体(抗グリコシル化BTN1A1抗体を含む)を有する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及び/又はN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、1以上のグリコシル化モチーフに免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。
【0220】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子を有する組成物であり、ここで、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりもグリコシル化BTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N55、N215、及び/又はN449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N55でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N215でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、1以上のグリコシル化モチーフに優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも位置N55及びN215でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも位置N215及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも位置N55及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも位置N55、N215、及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。
【0221】
いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの半分未満のKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの少なくとも10倍小さいKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。
【0222】
いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIの少なくとも2倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIの少なくとも5倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。
【0223】
いくつかの態様において、本明細書に提供されるのは、位置N55、N215、及び/又はN449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする抗原結合断片を有する分子を有する組成物である。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、BTN1A1の1以上のグリコシル化モチーフを免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN215におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215及びN449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及びN449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。
【0224】
いくつかの実施態様において、該組成物は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVH又はVLドメインを含む抗原結合断片を有する分子を有することができる。一実施態様において、該組成物は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVHドメインとVLドメインの両方を含む抗原結合断片を有する分子を有することができる。別の実施態様において、該組成物は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVH CDRを含む抗原結合断片を有する分子を有することができる。別の実施態様において、該組成物は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVL CDRを含む抗原結合断片を有する分子を有することができる。さらに別の実施態様において、該組成物は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810の少なくとも1つのVH CDR及び少なくとも1つのVL CDRを含む抗原結合断片を有する分子を有することができる。
【0225】
いくつかの実施態様において、該組成物は、本明細書に記載されるBTN1A1エピトープを(例えば、用量依存的な様式で)競合的に遮断する抗原結合断片を有する分子を有することができる。該BTN1A1エピトープは、本明細書に記載されるSTC810のエピトープであることができる。いくつかの実施態様において、該組成物は、本明細書に記載されるBTN1A1のエピトープに免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子を有することができる。該BTN1A1エピトープは、本明細書に記載されるSTC810のエピトープであることができる。いくつかの実施態様において、該BTN1A1エピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を有する。
【0226】
いくつかの実施態様において、該組成物は、少なくとも0.1重量%の本明細書に記載される抗体又は他の分子を有することができる。いくつかの実施態様において、該組成物は、少なくとも0.5重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、又はそれを上回る抗BTN1A1抗体又はBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する他の分子を有することができる。他の実施態様において、例えば、該抗BTN1A1抗体又はBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する他の分子は、該組成物の重量の約2%~約75%、約25%~約60%、約30%~約50%、又はこれらの中の任意の範囲を占めることができる。
【0227】
該組成物は、活性成分としての抗BTN1A1抗体又はBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する他の分子と医薬として許容し得る担体とを有する医薬組成物であることができる。該医薬組成物は、1以上の追加の活性成分をさらに含むことができる。医薬として許容し得る担体は、動物における、より詳細には、ヒトにおける使用について、連邦政府もしくは州政府の規制当局に承認されているか、又は米国薬局方、欧州薬局方、もしくは他の一般に認められた薬局方に記載されている担体であることができる。
【0228】
本明細書に記載される抗体又は他の分子を活性成分として有する医薬組成物の調製は、引用により本明細書中に組み込まれる、レミントンの医薬化学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第18版、1990によって例示されているように、本開示に照らして、当業者に公知である。さらに、動物(ヒトを含む)への投与については、調製物が、FDA生物学的製剤基準室(FDA Office of Biological Standards)によって要求される、滅菌性、発熱性、一般的な安全性、及び純度の標準を満たすべきであるということが理解される。
【0229】
医薬として許容し得る担体には、液体、半固体、すなわち、ペースト、又は固体の担体が含まれる。担体又は希釈剤の例としては、脂肪、油、水、生理食塩水溶液、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、増量剤など、又はこれらの組合せが挙げられる。医薬として許容し得る担体としては、当業者に知られているような、水性溶媒(例えば、水、アルコール/水溶液、エタノール、生理食塩水溶液、非経口ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム、リンガーのデキストロースなど)、非水性溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、及び注射可能な有機エステル、例えば、エチルオレエート)、分散媒体、コーティング(例えば、レシチン)、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば、抗菌剤又は抗真菌剤、抗酸化剤、キレート化剤、不活性ガス、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール)、等張剤(例えば、糖類、塩化ナトリウム)、吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン)、塩類、薬物、薬物安定化剤(例えば、緩衝剤、アミノ酸、例えば、グリシン及びリジン、炭水化物、例えば、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなど)、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、色素、水分(fluid)及び栄養補給剤、同様のこのような材料、並びにこれらの組合せを挙げることができる。任意の従来の媒体、薬剤、希釈剤、又は担体が、レシピエントにとって有害であり、又はそれに含まれる組成物の治療的有効性にとって有害である場合を除き、それを、本方法を実施する際に使用するための投与可能な組成物中で使用するのが適切である。医薬組成物中の様々な成分のpH及び正確な濃度は、周知のパラメータに従って調整される。本開示のある態様に従って、該組成物を、任意の好都合かつ実際的な方法で、すなわち、溶解、懸濁、乳化、混合、カプセル化、吸収、摩砕などによって、担体と組み合わせることができる。そのような手順は、当業者にとってルーチンである。
【0230】
いくつかの実施態様において、医薬として許容し得る担体は、水性pH緩衝溶液であることができる。例としては、緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量((例えば、約10アミノ酸残基未満の)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジン;単糖、二糖、及びグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート化剤、例えば、EDTA;糖アルコール、例えば、マンニトールもしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;並びに/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商標)が挙げられる。
【0231】
いくつかの実施態様において、医薬として許容し得る担体は、滅菌液、例えば、水及び石油、動物、植物、又は合成起源の油を含む油、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などであることができる。水は、特に、医薬組成物が静脈内投与されるときの担体であることができる。生理食塩水溶液並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液も、特に、注射溶液用の液体担体として利用することができる。好適な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、ポリソルベート-80などが挙げられる。該組成物は、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、又はpH緩衝化剤を含むこともできる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、持続放出製剤などの形態を取ることができる。
【0232】
本開示のある実施態様は、それが、固体、液体、又はエアロゾルの形態で投与されるかどうか、及びそれが注射などの投与経路のために滅菌されている必要があるかどうかに応じて、異なるタイプの担体を有することができる。該組成物は、静脈内、皮内、経皮、髄腔内、動脈内、腹腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、筋肉内、皮下、粘膜、経口、局所(topically)、局所(locally)への、吸入(例えば、エアロゾル吸入)による、注射による、注入による、連続注入による、標的細胞の直接的な局所灌流浴(localized perfusion bathing)による、カテーテルによる、洗浄液による、脂質組成物(例えば、リポソーム)中での、又は当業者に知られているような他の方法もしくは上記の任意の組合せによる投与のために製剤化されることができる(例えば、引用により本明細書中に組み込まれる、レミントンの医薬化学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第18版、1990を参照)。通常、そのような組成物は、液体の溶液又は懸濁液のいずれかとして調製することができ;注射前に液体を添加することにより、溶液又は懸濁液を調製するための使用に好適な固体形態を調製することもでき;かつ調製物を乳化することもできる。
【0233】
抗BTN1A1抗体又はBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する他の分子を遊離塩基形態、中性形態、又は塩形態の組成物へと製剤化することができる。医薬として許容し得る塩としては、酸付加塩、例えば、タンパク質性組成物の遊離アミノ基とともに形成されるもの、或いは例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、もしくはマンデル酸のような有機酸とともに形成されるものが挙げられる。遊離カルボキシル基とともに形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、もしくは水酸化第二鉄などの無機塩基;又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、もしくはプロカインのような有機塩基から誘導することもできる。
【0234】
さらなる実施態様において、本明細書に提供されるのは、脂質を有する医薬組成物である。脂質は、特徴として水に不溶性であり、かつ有機溶媒で抽出可能である物質のクラスを広範に含むことができる。例としては、長鎖脂肪族炭化水素及びその誘導体を含有する化合物が挙げられる。脂質は、天然のものであるか又は合成されたものである(すなわち、人間によって設計もしくは産生される)ことができる。脂質は生体物質であることができる。生体脂質は当技術分野で周知であり、これには、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質、スフィンゴ糖脂質、糖脂質、スルファチド、エーテル及びエステル結合脂肪酸を含む脂質、重合性脂質、及びこれらの組合せが含まれる。当業者により脂質と理解される本明細書に具体的に記載される化合物以外の化合物を使用することもできる。
【0235】
当業者であれば、組成物を脂質ビヒクル中に分散させるのに利用することができる技法の範囲に精通しているであろう。例えば、抗体を、当業者に公知の任意の手段によって、脂質を含む溶液中に分散させ、脂質とともに溶解させ、脂質とともに乳化させ、脂質と混合し、脂質と組み合わせ、脂質と共有結合させ、脂質中の懸濁物として含有させ、ミセルもしくはリポソームとともに含有させもしくはミセルもしくはリポソームと複合体化させ、又は別の形で脂質もしくは脂質構造と関連させることができる。分散は、リポソームの形成をもたらすこともあるし、もたらさないこともある。
【0236】
通常、組成物の成分は、別々に又は単位剤形中で混合されて、例えば、ドライ凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として、活性剤の量を表示したアンプル又はサシェなどの密閉容器中に供給される。組成物が注入によって投与されることになる場合、それを、滅菌された医薬品等級の水又は生理食塩水を含む注入ボトルで分配することができる。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与前に混合され得るように、滅菌注射用水又は生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0237】
各々の治療的に有用な組成物中の活性成分の量は、好適な投薬量が化合物の任意の所与の単位用量で得られるように調製することができる。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品の棚寿命、及び他の薬理学的検討事項などの因子は、そのような医薬製剤を調製する当業者によって企図されることができ、したがって、種々の投薬量及び治療レジメンが望ましい場合がある。
【0238】
単位用量又は投薬量は、対象における使用に好適な物理的に分離された単位を指し、各々の単位は、その投与、すなわち、適切な経路及び治療レジメンとの関連において上で考察された所望の応答を生じるように計算された所定の量の医薬組成物を含む。治療の回数と単位用量の両方に従って、投与される量は、所望の効果によって決まる。患者又は対象に投与される本実施態様の組成物の実際の投薬量は、身体的及び生理的な要因、例えば、対象の体重、年齢、健康、及び性別、治療されている疾患の種類、疾患浸透の程度、過去の又は併用している治療的介入、患者の特発性疾患、投与経路、並びに特定の治療物質の有効性、安定性、及び毒性によって決定されることができる。他の非限定的な例において、用量は、投与1回当たり、約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重から約1000ミリグラム/kg/体重以上まで、及びその中から引き出される任意の範囲であることができる。本明細書に記載される数から引き出される範囲の非限定的な例において、約5ミリグラム/kg/体重~約100ミリグラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重~約500ミリグラム/kg/体重などの範囲を上記の数に基づいて投与することができる。投与に対して責任がある医師は、いかなる場合も、組成物中の活性成分の濃度及び個々の対象についての適切な用量を決定することになる。
【0239】
当業者であれば理解しているように、本明細書に記載される組成物は、治療調製物の特定の性質によって限定されない。例えば、そのような組成物は、生理的に許容される液体、ゲル、又は固体担体、希釈剤、及び賦形剤と一緒に製剤中に提供することができる。これらの治療調製物は、他の治療剤と同様の方法で、例えば、家畜を用いる獣医学的使用のために、及びヒトにおける臨床的使用のために、哺乳動物に投与することができる。一般に、治療効力に必要とされる投薬量は、使用の種類及び投与の様式、並びに個々の対象の特定の必要性によって異なる。ヒト患者を含む、動物患者に投与される組成物の実際の投薬量は、身体的及び生理的な要因、例えば、体重、疾患の重症度、治療されている疾患の種類、過去の又は併用している治療的介入、患者の特発性疾患、及び投与経路によって決定されることができる。投薬量及び投与経路に応じて、好ましい投薬量及び/又は有効量の投与の回数は、対象の応答によって異なり得る。投与に対して責任がある医師は、いかなる場合も、組成物中の活性成分の濃度及び個々の対象についての適切な用量を決定することになる。
【0240】
(5.4 治療的使用及び治療方法)
BTN1A1は、癌細胞で特異的かつ高度に発現する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、癌治療におけるBTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子の治療的使用である。いくつかの実施態様において、これらの分子は、BTN1A1を発現する癌細胞に結合し、これらの癌細胞の破壊をもたらす免疫応答を誘導する。抗BTN1A1抗体(例えば、STC810又はそのヒト化変異体)を含む、本明細書に提供される分子は、癌細胞のT細胞依存的アポトーシスを増強し、癌細胞の増殖を阻害することができる。
【0241】
抗BTN1A1抗体(例えば、STC810又はそのヒト化変異体)を含む、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に提供される分子は、BTN1A1のリソソームへの内在化を引き起こすことができる。したがって、また本明細書に提供されるのは、本明細書に提供される分子を用いて、細胞を化合物とコンジュゲートされた本明細書に提供される分子と接触させることにより、化合物をBTN1A1を発現する細胞に送達する方法である。該化合物は、本明細書に記載される、イメージング剤、治療剤、毒素、又は放射性核種であることができる。該化合物は、抗BTN1A1抗体とコンジュゲートすることができる。該コンジュゲートは、ADCなどの、本明細書に記載される任意のコンジュゲートであることができる。該細胞は癌細胞であることができる。該細胞は、癌細胞と正常細胞の両方を含む細胞の集団であることもできる。癌細胞はBTN1A1を特異的かつ高度に発現するので、本明細書に記載される分子を用いて、正常細胞ではなく、癌細胞への特異的な薬物送達を達成することができる。
【0242】
抗BTN1A1抗体(例えば、STC810又はそのヒト化変異体)を含む、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に提供される分子は、対象における免疫応答を調節することができる。本明細書に提供される分子は、T細胞活性化を促進することができる。本明細書に提供される分子は、T細胞増殖を促進することができる。本明細書に提供される分子は、サイトカイン産生を増大させることができる。本明細書に提供される分子は、BTN1A1を発現する細胞のT細胞依存的アポトーシスを増強し、又はBTN1A1を発現する細胞の増殖を阻害することもできる。
【0243】
したがって、本明細書に提供されるのは、抗BTN1A1抗体(例えば、STC810又はそのヒト化変異体)を含む、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子の有効量を投与することにより、対象における免疫応答を調節する方法である。免疫応答を調節することは、(a)T細胞活性化を増大させること;(b)T細胞増殖を増大させること;及び/又は(c)サイトカイン産生を増大させることを含むことができる。
【0244】
また本明細書に提供されるのは、BTN1A1を発現する細胞を、抗BTN1A1抗体(例えば、STC810又はそのヒト化変異体)を含む、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子の有効量と接触させることにより、該細胞のT細胞依存的アポトーシスを増強する方法である。本明細書に提供されるのは、BTN1A1を発現する細胞を、抗BTN1A1抗体(例えば、STC810又はそのヒト化変異体)を含む、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子の有効量と接触させることにより、該細胞の増殖を阻害する方法でもある。該細胞は癌細胞であることができる。
【0245】
いくつかの実施態様において、これらの分子を用いて、T細胞の活性化又は増殖におけるBTN1A1の抑制的活性を阻害することにより、癌を治療することができる。したがって、本明細書に提供されるのは、BTN1A1シグナル伝達を阻害又は遮断することにより、対象の免疫系を上方調節する際のこれらの分子の使用である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、BTN1A1がT細胞に結合するのを遮断するためのこれらの分子の使用である。
【0246】
いくつかの実施態様において、これらの分子は、ADCC又はCDC機構を介する癌細胞の破壊をもたらす。いくつかの実施態様において、これらの分子は、増強されたADCC活性を有するように改変される。いくつかの実施態様において、これらの分子は、増強されたCDC活性を有するように改変される。例えば、これらの分子は、Fc受容体を保有するキラー細胞との増強された相互作用を有するように改変されることができる。改変抗体又はFc-融合タンパク質を含む、そのような改変分子を産生する方法は本明細書に記載されており、かつ当技術分野で公知でもある。
【0247】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、BTN1A1を過剰発現する対象における疾患又は障害を治療するための、抗BTN1A1抗体及び抗グリコシル化BTN1A1抗体を含む、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子の使用である。いくつかの実施態様において、該対象におけるBTN1A1の発現レベルは、参照レベルよりも高い。参照レベルは、健常個体の集団におけるBTN1A1の平均又は中位の発現レベルであることができる。参照レベルは、試料集団の発現レベルの統計解析によって決定することもできる。
【0248】
また本明細書に提供されるのは、抗BTN1A1抗体及び抗グリコシル化BTN1A1抗体を含む、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子の治療的使用である。いくつかの実施態様において、該分子は、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及び/又はN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、1以上のグリコシル化モチーフに免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。
【0249】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、非グリコシル化BTN1A1よりもグリコシル化BTN1A1に優先的に結合する抗原結合断片を有する分子の治療的使用である。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N55、N215、及び/又はN449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N55でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N215でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも、位置N449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、1以上のグリコシル化モチーフに優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも位置N55及びN215でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも位置N215及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも位置N55及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりも位置N55、N215、及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に優先的に結合する。
【0250】
いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの半分未満のKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの少なくとも10倍小さいKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。
【0251】
いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIの少なくとも2倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIの少なくとも5倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。
【0252】
いくつかの態様において、本明細書に提供されるのは、位置N55、N215、及び/又はN449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする抗原結合断片を有する分子の治療的使用である。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、BTN1A1の1以上のグリコシル化モチーフを免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN215におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215及びN449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及びN449におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。
【0253】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVH又はVLドメインを含む抗原結合断片を有する分子の治療的使用である。一実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVHドメインとVLドメインの両方を含む抗原結合断片を有することができる。別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVH CDRを含む抗原結合断片を有する分子の治療的使用である。別の実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVL CDRを含む抗原結合断片を有することができる。さらに別の実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810の少なくとも1つのVH CDR及び少なくとも1つのVL CDRを含む抗原結合断片を有することができる。
【0254】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるBTN1A1エピトープを(例えば、用量依存的な様式で)競合的に遮断する抗原結合断片を有する分子の治療的使用である。該BTN1A1エピトープは、本明細書に記載されるSTC810のエピトープであることができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるBTN1A1のエピトープに免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子の治療的使用である。該BTN1A1エピトープは、本明細書に記載されるSTC810のエピトープであることができる。いくつかの実施態様において、該BTN1A1エピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を有する。
【0255】
(5.4.1.疾患及び障害)
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、IFN-γなどのサイトカインの産生の増大を媒介するための抗体又は他の分子の使用である。したがって、本明細書に提供されるのは、サイトカインで治療することができる疾患及び状態、例えば、卵巣癌及び他の形態の癌の治療における、そのような抗体又は他の分子の使用である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、T細胞の活性又は増殖の増大を媒介する際の抗体及び他の分子の使用である。したがって、いくつかの実施態様において提供されるのは、T細胞の活性又は増殖を増大させることにより治療可能である疾患及び状態、例えば、癌の治療における、そのような抗体及び他の分子の使用である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、T細胞活性の増大とT細胞増殖の増大の両方を媒介するための本明細書に記載される抗体又は他の分子の使用である。
【0256】
免疫系の上方調節は、癌の治療において特に望ましい。さらに、BTN1A1は、癌細胞で特異的かつ高度に発現する。本明細書に記載される分子は、癌細胞に結合し、直接的な細胞毒性によるか、又はADCCもしくはCDC機構によるかのいずれかで、その破壊を引き起こすこともできる。したがって、本明細書に提供されるのは、癌治療の方法である。癌は、細胞の異常な制御不能の成長によって生じる新生物又は腫瘍を指す。癌は、原発性癌又は転移性癌であることができる。
【0257】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子を投与することにより、対象における癌を治療する方法である。該治療方法が有用であり得る癌には、任意の悪性細胞型、例えば、固形腫瘍又は血液癌に見られるものが含まれる。例示的な固形腫瘍としては、膵臓、結腸、盲腸、食道、胃、脳、頭部、頸部、甲状腺、胸腺、卵巣、腎臓、喉頭、肉腫、肺、膀胱、黒色腫、前立腺、及び乳房からなる群から選択される臓器の腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な血液癌としては、骨髄の腫瘍、T又はB細胞悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、芽細胞腫、骨髄腫などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0258】
本明細書に提供される方法を用いて治療することができる癌のさらなる例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、白血病、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌、中皮腫を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃(gastric)又は胃(stomach)癌(消化器癌及び消化管間質性癌を含む)、食道癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)又は腎臓(renal)癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、様々なタイプの頭頸部癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端性黒子性黒色腫、結節型黒色腫、ブドウ膜黒色腫、胚細胞腫瘍(卵黄嚢腫瘍、精巣癌、絨毛腫)、並びにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小型リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤(bulky disease)NHL;マントル細胞リンパ腫; AIDS関連リンパ腫;及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、並びに慢性骨髄芽球性白血病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0259】
癌は、以下の組織学的タイプのいずれかのものであることもできる:新生物、悪性;癌腫;癌腫、未分化;巨大紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮細胞癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母癌;移行細胞癌;乳頭状移行細胞癌;腺癌;ガストリノーマ、悪性;胆管癌;肝細胞癌;混合型肝細胞癌及び胆管癌;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫様ポリープにおける腺癌;腺癌、家族性大腸ポリポーシス;固形癌;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞腺癌;乳頭状腺癌;色素嫌性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞性腺癌;乳頭状濾胞性腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;類内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘液性類表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性腺管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;パジェット病、乳腺;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;胸腺腫、悪性;卵巣間質性腫瘍、悪性;莢膜腫、悪性;顆粒膜細胞腫瘍、悪性;アンドロブラストーマ、悪性;セルトリ細胞癌;ライディッヒ細胞腫、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;傍神経節腫、悪性;乳腺外傍神経節腫、悪性;褐色細胞腫;グロムス血管肉腫;悪性黒色腫;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑における悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;肺胞性横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍、悪性;ミューラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胎生期癌;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛腫;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管周囲細胞腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣腫;星細胞腫;原形質性星細胞腫;原線維性星細胞腫;星芽細胞腫;膠芽腫;希突起膠腫;乏突起神経膠芽細胞腫;原始神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽腫;網膜芽腫;嗅覚神経原性腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫瘍、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン;側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞型、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉腫;他の特定非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増加症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ様白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;並びに有毛細胞白血病。
【0260】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を投与することにより、対象における癌を治療する方法であり、ここで、該癌は、肺癌、前立腺癌、膵臓癌、卵巣癌、肝臓癌、頭頸部癌、乳癌、又は胃癌である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を投与することにより、対象における癌を治療する方法であり、ここで、該癌は肺癌であることができる。肺癌は非小細胞肺癌(NSCLC)であることができる。肺癌は小細胞肺癌(SCLC)であることができる。NSCLCは扁平上皮NSCLCであることができる。肺癌を治療するために使用される分子は、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される任意の分子であることができる。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりもグリコシル化BTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、N449、又はこれらの任意の組合せにおけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、肺癌を治療するために使用される分子はSTC810である。いくつかの態様において、NSCLCを治療するために使用される分子はSTC810である。いくつかの態様において、扁平上皮NSCLCを治療するために使用される分子はSTC810である。
【0261】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を投与することにより、対象における癌を治療する方法であり、ここで、該癌は前立腺癌であることができる。前立腺癌を治療するために使用される分子は、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される任意の分子であることができる。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりもグリコシル化BTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、N449、又はこれらの任意の組合せにおけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、前立腺癌を治療するために使用される分子はSTC810である。
【0262】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を投与することにより、対象における癌を治療する方法であり、ここで、該癌は膵臓癌であることができる。膵臓癌を治療するために使用される分子は、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される任意の分子であることができる。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりもグリコシル化BTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、N449、又はこれらの任意の組合せにおけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、膵臓癌を治療するために使用される分子はSTC810である。
【0263】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を投与することにより、対象における癌を治療する方法であり、ここで、該癌は卵巣癌であることができる。卵巣癌を治療するために使用される分子は、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される任意の分子であることができる。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりもグリコシル化BTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、N449、又はこれらの任意の組合せにおけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、卵巣癌を治療するために使用される分子はSTC810である。
【0264】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を投与することにより、対象における癌を治療する方法であり、ここで、該癌は肝臓癌であることができる。肝臓癌を治療するために使用される分子は、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される任意の分子であることができる。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりもグリコシル化BTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、N449、又はこれらの任意の組合せにおけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、肝臓癌を治療するために使用される分子はSTC810である。
【0265】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を投与することにより、対象における癌を治療する方法であり、ここで、該癌は頭頸部癌であることができる。頭頸部癌を治療するために使用される分子は、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される任意の分子であることができる。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりもグリコシル化BTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、N449、又はこれらの任意の組合せにおけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、頭頸部癌を治療するために使用される分子はSTC810である。
【0266】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を投与することにより、対象における癌を治療する方法であり、ここで、該癌は乳癌であることができる。乳癌を治療するために使用される分子は、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される任意の分子であることができる。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりもグリコシル化BTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、N449、又はこれらの任意の組合せにおけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、乳癌を治療するために使用される分子はSTC810である。
【0267】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を投与することにより、対象における癌を治療する方法であり、ここで、該癌は胃癌であることができる。胃癌を治療するために使用される分子は、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される任意の分子であることができる。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりもグリコシル化BTN1A1に優先的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、N449、又はこれらの任意の組合せにおけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。いくつかの態様において、胃癌を治療するために使用される分子はSTC810である。
【0268】
癌を治療するために使用される分子は、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される任意の分子であることができる。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1よりもグリコシル化BTN1A1に優先的に結合する。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの半分未満のKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの少なくとも10倍小さいKdでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIの少なくとも2倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるMFIの少なくとも5倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する。
【0269】
いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、N449、又はこれらの任意の組合せにおけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする。
【0270】
いくつかの態様において、癌治療に有用な分子はSTC810である。
【0271】
(5.4.2.投与方法)
本明細書に提供されるのは、本明細書に提供される抗体又は分子の治療的有効量をそれを必要としている患者に投与することにより、抗BTN1A1抗体又はBTN1A1もしくはグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する他の分子を抗腫瘍剤として使用する方法でもある。いくつかの実施態様において、該患者は癌患者である。
【0272】
様々な送達系も公知であり、これらを用いて、抗BTN1A1抗体又はBTN1A1もしくはグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する他の分子、或いは関連医薬組成物を投与することができ、該送達系には、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへの封入、該抗体又は融合タンパク質を発現することができる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシス(例えば、Wu及びWuの文献、1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432)、レトロウイルス又は他のベクターの一部としての核酸の構築などがある。
【0273】
本明細書に提供される投与方法としては、注射、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、及び皮下)、硬膜外投与、並びに粘膜(例えば、鼻腔内及び経口経路)投与によるものが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される抗体、他の分子、又は医薬組成物は、筋肉内、静脈内、皮下、静脈内、腹腔内、経口、筋肉内、皮下、腔内、経皮、又は皮膚投与される。該組成物は、任意の好都合な経路によって、例えば、注入又はボーラス注射によって、上皮又は粘膜皮膚層(例えば、口腔粘膜、直腸、及び腸粘膜など)からの吸収によって投与することができ、かつ他の生体活性剤と一緒に投与することができる。投与は、全身性又は局所性であることができる。さらに、例えば、吸入器又はネブライザー、及びエアロゾル化剤を含む製剤を用いて、肺投与を利用することもできる。例えば、米国特許第6,019,968号;第5,985,20号;第5,985,309号;第5,934,272号;第5,874,064号;第5,855,913号;第5,290,540号;及び第4,880,078号; PCT公開WO 92/19244号;WO 97/32572号;WO 97/44013号;WO 98/31346号;並びにWO 99/66903号を参照されたく;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される抗体、他の分子、又は医薬組成物は、治療を必要としている部分に局所投与され、これは、例えば、局所注入によるか、注射によるか、又はインプラントによって達成することができ、該インプラントは、多孔性、無孔性、又はゼラチン状材料のものであり、これには、シアラスティック(sialastic)膜などの膜、又は繊維が含まれる。いくつかの実施態様において、本明細書に記載される抗体又は他の分子を投与する場合、該抗体又は他の分子が吸収しない材料を使用することに留意する。
【0274】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるヒト化又はキメラ抗体は、標的送達のためにリポソーム中に製剤化される。リポソームは、水相を封入する同心円状に配列されたリン脂質二重層から構成された小胞である。リポソームは、通常、様々なタイプの脂質、リン脂質、及び/又は界面活性物質を有する。リポソームの成分は、生体膜の脂質配置と同様の二重層立体配置で配置される。リポソームは、一つには、その生体適合性、低免疫原性、及び低毒性のために、有用な送達ビヒクルであり得る。リポソームの調製方法は当技術分野で公知であり、かつ本明細書に提供されている。例えば、Epsteinらの文献、1985, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688; Hwangらの文献、1980 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030-4; 米国特許第4,485,045号及び第4,544,545号を参照されたく;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
【0275】
本明細書に提供されるのは、血清半減期が延長された、すなわち、循環時間が改善されたリポソーム、例えば、米国特許第5,013,556号に開示されているリポソームを調製する方法でもある。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法において使用されるリポソームは、循環から速やかには消失しない、すなわち、単核食細胞系(MPS)に取り込まれない。本明細書に提供されるのは、当業者に公知の一般的な方法を用いて調製される立体的に安定化されたリポソームでもある。立体的に安定化されたリポソームは、嵩高くかつ可撓性の高い親水性部分を有する脂質成分を含むことができ、これにより、リポソームと血清タンパク質との望ましくない反応が低下し、血清成分とのオプソニン作用が低下し、かつMPSによる認識が低下する。立体的に安定化されたリポソームは、ポリエチレングリコールを用いて調製することができる。リポソーム及び立体的に安定化されたリポソームの調製については、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Bendasらの文献、2001 BioDrugs, 15(4): 215-224; Allenらの文献、1987 FEBS Lett. 223: 42-6; Klibanovらの文献、1990 FEBS Lett., 268: 235-7; Blumらの文献、1990, Biochim. Biophys. Acta., 1029: 91-7; Torchilinらの文献、1996, J. Liposome Res. 6: 99-116; Litzingerらの文献、1994, Biochim. Biophys. Acta, 1190: 99-107; Maruyamaらの文献、1991, Chem. Pharm. Bull., 39: 1620-2; Klibanovらの文献、1991, Biochim Biophys Acta, 1062; 142-8; Allenらの文献、1994, Adv. Drug Deliv. Rev, 13: 285-309を参照されたい。
【0276】
本明細書に提供されるのは、特定臓器ターゲッティング(例えば、米国特許第4,544,545号を参照)、又は特定細胞ターゲッティング(例えば、米国特許出願第2005/0074403号を参照)に適応しているリポソームでもあり、これらの文献は、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。本明細書に提供される組成物及び方法において使用するための特に有用な免疫リポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって作製することができる。リポソームを規定の孔径のフィルターから押し出して、所望の直径を有するリポソームを生じさせる。いくつかの実施態様において、抗原結合断片、例えば、F(ab')を有する分子を、以前に記載されている方法を用いて、リポソームにコンジュゲートすることができる。例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Martinらの文献、1982, J. Biol. Chem. 257: 286-288を参照されたい。
【0277】
本明細書に記載されるヒト化又はキメラ抗体は、免疫リポソームとして製剤化することもできる。免疫リポソームは、抗体又はその断片が、共有結合的に又は非共有結合的に、リポソーム表面に連結されているリポソーム組成物を指す。抗体をリポソーム表面に連結する化学反応は当技術分野で公知であり、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、米国特許第6,787,153; Allenらの文献、1995, Stealth Liposomes, Boca Rotan: CRC Press, 233-44; Hansenらの文献、1995, Biochim. Biophys. Acta, 1239: 133-144を参照されたい。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法及び組成物において使用するための免疫リポソームはさらに立体的に安定化される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるヒト化抗体は、リポソームの脂質二重層中に安定に根を下ろしている疎水性アンカーに共有結合的に又は非共有結合的に連結される。疎水性アンカーの例としては、リン脂質、例えば、ホソアチジルエタノールアミン(phosoatidylethanolamine)(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)が挙げられるが、これらに限定されない。抗体と疎水性アンカーの間の共有結合的連結を達成するために、当技術分野における既知の生化学的戦略のいずれかを使用することができ、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、J. Thomas August編、1997、遺伝子治療:薬理学の進歩(Gene Therapy: Advances in Pharmacology)、第40巻、Academic Press, San Diego, Calif., p. 399-435を参照されたい。例えば、抗体分子上の官能基は、リポソーム関連疎水性アンカー上の活性基と反応することができ、例えば、抗体上のリジン側鎖のアミノ基を水溶性カルボジイミドで活性化されたリポソーム関連N-グルタリル-ホスファチジルエタノールアミンにカップリングさせることができるか;又は還元された抗体のチオール基を、ピリジルチオプロピオニルホスファチジルエタノールアミンなどのチオール反応性アンカーを介してリポソームにカップリングさせることができる。例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Dietrichらの文献、1996, Biochemistry, 35: 1100-1105; Loughreyらの文献、1987, Biochim. Biophys. Acta, 901: 157-160; Martinらの文献、1982, J. Biol. Chem. 257: 286-288; Martinらの文献、1981, Biochemistry, 20: 4429-38を参照されたい。抗BTN1A1抗体又はBTN1A1もしくはグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する他の分子を有する免疫リポソーム製剤は、活性成分を、標的細胞、すなわち、抗体が結合する受容体を含む細胞の細胞質に送達するので、治療剤として特に有効であることができる。いくつかの実施態様において、該免疫リポソームは、血液、特に、標的細胞における増大した半減期を有することができ、該標的細胞の細胞質へと内在化されることができ、それにより、治療剤の消失又はエンドリソソーム経路による分解を回避する。
【0278】
本明細書に提供される免疫リポソーム組成物は、1以上の小胞形成脂質、本発明の抗体もしくは他の分子、又はこれらの断片もしくは誘導体、及び任意に、親水性ポリマーを有することができる。小胞形成脂質は、アシル鎖と極性頭部基などの、2つの炭化水素鎖を有する脂質であることができる。小胞形成脂質の例としては、リン脂質、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、及び糖脂質、例えば、セレブロシド、ガングリオシドが挙げられる。本明細書に提供される製剤において有用な追加の脂質は当業者に公知であり、本記載に包含される。いくつかの実施態様において、免疫リポソーム組成物は、リポソームの血清半減期を増大させる親水性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール及びガングリオシドGM1をさらに含む。親水性ポリマーをリポソームにコンジュゲートする方法は当技術分野で周知であり、本記載に包含される。追加の例示的な免疫リポソーム及びその調製方法は、例えば、米国特許出願公開第2003/0044407号; PCT国際公開WO 97/38731号、Vingerhoeadsらの文献、1994, Immunomethods, 4: 259-72; Maruyamaの文献、2000, Biol. Pharm. Bull. 23(7): 791-799; Abraらの文献、2002, Journal of Liposome Research, 12(1&2): 1-3; Parkの文献、2002, Bioscience Reports, 22(2): 267-281; Bendasらの文献、2001 BioDrugs, 14(4): 215-224, J. Thomas August編、1997、遺伝子治療:薬理学の進歩(Gene Therapy: Advances in Pharmacology)、第40巻、Academic Press, San Diego, Calif., p. 399-435に見出すことができ;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
【0279】
本明細書に提供されるのは、抗BTN1A1抗体又はBTN1Aもしくは特異的にグリコシル化されたBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する他の分子を癌患者に単位用量で投与することにより、該患者を治療する方法でもある。単位用量は、対象のための単位投薬量として好適な物理的に分離された単位を指し、各々の単位は、必要とされる希釈剤、すなわち、担体、又はビヒクルと関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性材料を含む。
【0280】
該抗体、分子、又は組成物は、投薬製剤に適合するようにかつ治療的有効量で投与される。投与されるべき量は、治療を受けることになる対象、活性成分を利用する対象のシステムの能力、及び所望の治療効果の程度によって決まる。投与される必要がある活性成分の正確な量は医師の判断によって決まり、各々の個々の対象に特有である。しかしながら、全身適用のための好適な投薬量範囲が本明細書に開示されており、これは投与経路によって決まる。初期投与及びブースター投与のための好適なレジメンも企図されており、これには、通常、初期投与と、それに続く、後の注射又は他の投与による1時間以上の間隔をおいた反復投与が含まれる。例示的な複数回投与が本明細書に記載されており、これは、ポリペプチド又は抗体の絶え間なく高い血清及び組織レベルを維持するために有用である。或いは、血中濃度をインビボ療法に対して規定された範囲に維持するのに十分な連続的な静脈内注入が企図される。
【0281】
治療的有効量は、所望の効果を達成するように計算された所定の量である。通常、投薬量は、患者の年齢、状態、性別、及び疾患の度合いによって異なり、当業者によって決定されることができる。投薬量は、何らかの合併症の場合には、個々の医師によって調整されることができる。
【0282】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される抗体、分子、又は医薬組成物は、アンプル又はサシェなどの密閉容器中に包装される。一実施態様において、本明細書に提供される抗体、分子、又は医薬組成物は、密閉容器中に、乾燥滅菌された凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として供給され、例えば、対象への投与に適切な濃度まで、水又は生理食塩水で再構成されることができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される抗体、分子、又は医薬組成物は、密閉容器中に、乾燥滅菌された凍結乾燥粉末として、少なくとも5mg、より好ましくは、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、又は少なくとも75mgの単位投薬量で供給される。本明細書に提供される凍結乾燥抗体、分子、又は医薬組成物は、そのもとの容器中に2~8℃で保存されるべきであり、かつ再構成されてから12時間以内、好ましくは、6時間以内、5時間以内、3時間以内、又は1時間以内に投与されるべきである。代わりの実施態様において、本明細書に提供される抗体、分子、又は医薬組成物は、液体形態で、該抗体、分子、又は医薬組成物の量及び濃度を示す密閉容器中に供給される。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される抗体、分子、又は医薬組成物の液体形態は、密閉容器中に、少なくとも1mg/ml、より好ましくは、少なくとも2.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも150mg/ml、少なくとも200mg/mlで供給される。
【0283】
製剤中で利用されるべき正確な用量は、投与経路、及び疾病の重篤度によって決まり、医師の判断及び各々の患者の状況によって決定されるべきである。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から導き出される用量応答曲線から推定することができる。抗BTN1A1抗体又はBTN1A1もしくはグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する他の分子について、患者に投与される投薬量は、通常、患者の体重1kg当たり0.01mg~100mgである。いくつかの実施態様において、患者に投与される投薬量は、患者の体重1kg当たり0.01mg~20mg、0.01mg~10mg、0.01mg~5mg、0.01~2mg、0.01~1mg、0.01mg~0.75mg、0.01mg~0.5mg、0.01mg~0.25mg、0.01~0.15mg、0.01~0.10mg、0.01~0.05mg、又は0.01~0.025mgである。特に、患者に投与される投薬量は、0.2mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、又は10mg/kgであることができる。0.01mg/kg程度の低い用量でもかなりの薬力学的効果を示すと予測される。0.10~1mg/kgの用量レベルが最も適切であると予想される。より高い用量(例えば、1~30mg/kg)も活性があると予測することができる。通常、ヒト抗体は、外来ポリペプチドに対する免疫応答のために、ヒト体内で他の種由来の抗体よりも長い半減期を有する。したがって、より少ない投薬量のヒト抗体及びより低い頻度の投与を実施することができる。さらに、本明細書に提供される抗体又は他の分子の投薬量及び投薬頻度は、例えば、脂質化などの修飾によって、抗体の取込み及び組織浸透を増強することにより低下させることができる。
【0284】
さらに別の実施態様において、該組成物は、制御放出系又は持続放出系で送達することができる。当業者に公知の任意の技法を用いて、本明細書に提供される1以上の抗体、分子、又は医薬組成物を有する持続放出製剤を産生することができる。例えば、米国特許第4,526,938号; PCT公開WO 91/05548号; PCT公開WO 96/20698号; Ningらの文献、Radiotherapy & Oncology 39:179-189(1996)、Songらの文献、PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372-397(1995); Cleekらの文献、Pro. Int'l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853-854(1997);及びLamらの文献、Proc. Int'l. Symp. Control Rel. Bioact. Mater. 24:759-760(1997)を参照されたく;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。一実施態様において、ポンプを制御放出系において使用することができる(Langerの文献、上記; Seftonの文献、1987, CRC Crit. Ref Biomed. Eng. 14:20; Buchwaldらの文献、1980, Surgery 88:507;及びSaudekらの文献、1989, N. Engl. J. Med. 321:574を参照)。別の実施態様において、ポリマー材料を用いて、抗体の制御放出を達成することができる(例えば、制御放出の医学的応用(Medical Applications of Controlled Release)、Langer及びWise(編)、CRC Pres., Boca Raton, Fla.(1974);制御された薬物バイオアベイラビリティ、医薬品設計、及び性能(Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance)、Smolen及びBall(編)、Wiley, New York(1984); Ranger及びPeppasの文献、1983, J., Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61を参照されたく; Levyらの文献、1985, Science 228:190; Duringらの文献、1989, Ann. Neurol. 25:351; Howardらの文献、1989, J. Neurosurg. 7 1:105);米国特許第5,679,377号;米国特許第5,916,597号;米国特許第5,912,015号;米国特許第5,989,463号;米国特許第5,128,326号; PCT公開WO 99/15154号;及びPCT公開WO 99/20253号も参照);これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
【0285】
持続放出製剤において使用することができるポリマーの例としては、ポリ(-ヒドロキシメタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、及びポリオルトエステルが挙げられるが、これらに限定されない。さらに別の実施態様において、制御放出系を治療標的(例えば、肺)の近傍に配置することができ、そのため、ごくわずかの全身用量しか必要とされない(例えば、Goodsonの文献、制御放出の医学的応用(Medical Applications of Controlled Release)、上記、第2巻、pp. 115-138(1984)を参照)。別の実施態様において、制御放出インプラントとして有用なポリマー組成物は、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Dunnらの文献(米国特許第5,945,155号を参照)に従って使用される。ポリマー系からの生体活性材料のインサイチュ制御放出の治療効果に基づいて、埋込みは、通常、治療的処置を必要としている患者の体内のどこにでも行うことができる。
【0286】
別の実施態様において、対象の体内の非ポリマー性インプラントが薬物送達系として使用される、非ポリマー性の持続送達系が使用される。体内に埋め込むと、インプラントの有機溶媒が組成物から周囲の組織液中に放散、分散、又は浸出し、非ポリマー性材料が徐々に凝固又は沈殿して、固体の微孔性マトリックスを形成する(米国特許第5,888,533号を参照)。制御放出系は、Langerによる総説(1990, Science 249:1527-1533)でも考察されている。当業者に公知の任意の技法を用いて、本明細書に提供される1以上の治療剤を含む持続放出製剤を産生することができる。例えば、米国特許第4,526,938号;国際公開WO 91/05548号及び第WO 96/20698号; Ningらの文献、1996, Radiotherapy & Oncology 39:179-189; Songらの文献、1995, PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372-397; Cleekらの文献、1997, Pro. Int'l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853-854;及びLamらの文献、1997, Proc. Int'l. Symp. Control Rel. Bioact. Mater. 24:759-760を参照されたく;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
【0287】
本明細書に提供されるのは、組成物が本明細書に提供される抗体又は他の分子をコードする核酸を有する実施態様でもあり、ここで、該核酸を適切な核酸発現ベクターの一部として構築し、例えば、レトロウイルスベクターの使用によるか(米国特許第4,980,286号を参照)、又は直接注射によるか、又は微粒子衝撃(例えば、遺伝子銃; Biolistic, Dupont)の使用によるか、又は脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクション剤をコーティングすることによるか、又は核に進入することが知られているホメオボックス様ペプチドに連結させて投与することによって、該核酸が細胞内となるように投与することにより、該核酸をインビボで投与し、それがコードする抗体又は他の分子の発現を促進することができる(例えば、Joliotらの文献、1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864-1868を参照)。或いは、核酸を細胞内に導入し、発現のために相同組換えによって宿主細胞DNA内に組み込むことができる。
【0288】
本明細書に提供される抗体、他の分子、又は医薬組成物の治療的有効量による対象の治療は、単一の治療又は一連の治療を含むことができる。本明細書に提供される抗体、分子、又は医薬組成物を全身又は局所投与して、疾患を治療する、例えば、腫瘍細胞成長を阻害するか、又は局所的な進行性もしくは転移性癌を有する癌患者の癌細胞を死滅化させることができることが企図される。これらは、静脈内、髄腔内、及び/又は腹腔内に投与することができる。これらは、単独で又は抗増殖薬と組み合わせて投与することができる。一実施態様において、これらを投与して、手術又は他の処置の前に患者における癌負荷を低下させることができる。或いは、これらを手術後に投与して、残存する癌(例えば、手術で除去することができなかった癌)が生存しないようにすることができる。いくつかの実施態様において、これらを原発性癌の退縮後に投与して、転移を予防することができる。
【0289】
(5.5 組合せ療法)
また本明細書に提供されるのは、第二の療法と組み合わせた、組成物及び抗BTN1A1抗体(抗グリコシル化BTN1A1抗体を含む)又はBTN1A1もしくはグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する他の分子の、それを必要としている対象への投与を含む方法である。いくつかの実施態様において、該対象は癌患者であり、該第二の療法は抗癌療法又は抗過剰増殖療法である。
【0290】
いくつかの実施態様において、組成物及び本明細書に提供される抗体又は他の分子の投与を含む方法は、別の抗癌療法又は抗過剰増殖療法と組み合わせて使用されたとき、他の抗癌療法又は抗過剰増殖療法の治療効力を増強することができる。したがって、本明細書に記載される方法及び組成物を第二の療法と組み合わせて提供して、癌細胞の死滅化、細胞過剰増殖の阻害、及び/又は癌転移の阻害などの所望の効果を達成することができる。
【0291】
いくつかの実施態様において、化学療法、標的療法、凍結療法、温熱療法、光線力学療法、高密度焦点式超音波(HIFU)療法、放射線療法、又は外科的療法などの第二の療法は、直接的な細胞傷害性効果を有する。標的療法は、生物学的標的療法又は低分子標的療法であることができる。他の実施態様において、第二の療法は、直接的な細胞傷害性効果を有さない。例えば、第二の療法は、直接的な細胞傷害性効果を有さずに、免疫系を上方調節する薬剤であることができる。
【0292】
本明細書に提供されるのは、第二の又は追加の療法と組み合わせた、抗BTN1A1抗体又はBTN1A1もしくはグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する他の分子の、それを必要としている対象への投与を含む方法である。本明細書に提供される抗体、他の分子、又は医薬組成物は、第二の抗癌療法の前に、その間に、その後に、又はそれに対する様々な組合せで投与することができる。投与は、同時から数分まで、数日まで、数週間までに及ぶ間隔であることができる。本明細書に記載される抗体又は他の分子が第二の抗癌剤とは別に患者に提供されるいくつかの実施態様においては、2つの化合物が依然として有利に組み合わされた効果を患者に対して発揮することができるように、一般に、各々の送達の時間の間で相当な時間が過ぎないことが保証されることになる。そのような状況においては、互いに約12~24又は72時間以内に、より詳細には、互いに約6~12時間以内に、本明細書に提供される抗体又は他の分子及び第二の抗癌療法を患者に提供することができることが企図される。いくつかの状況においては、それぞれの投与の間に、数日(2、3、4、5、6、又は7日)から数週間(1、2、3、4、5、6、7、又は8週間)が経過する場合、治療の期間をかなり延長することができる。
【0293】
ある実施態様において、一連の治療は、1~90日又はそれより長く続く(そのようなこの範囲には介入日が含まれる)。ある薬剤が1日目~90日目(そのようなこの範囲には介入日が含まれる)のいずれかの日又はその任意の組合せに投与されることができ、別の薬剤が1日目~90日目(そのようなこの範囲には介入日が含まれる)のいずれかの日又はその任意の組合せに投与されることが企図される。1日(24時間の期間)のうちに、患者は、1回又は複数回の薬剤の投与を受けることができる。さらに、一連の治療の後、抗癌治療が投与されない期間があることが企図される。この期間は、患者の状態、例えば、その予後、強度、健康などに応じて、1~7日及び/又は1~5週間及び/又は1~12カ月又はそれより長い間(そのようなこの範囲には介入日が含まれる)続くことができる。治療サイクルは、必要に応じて、反復することができる。
【0294】
様々な組合せを利用することができる。下記は、本明細書に記載される抗BTN1A1抗体又は他の分子を「A」とし、第二の抗癌療法を「B」とする治療に関するいくつかの例である:
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
。
【0295】
第二の療法と組み合わせた、本明細書に提供される任意の抗体、分子、又は医薬組成物の患者への投与は、もしあれば、第二の療法の毒性を考慮して、そのような第二の療法の投与についての一般的なプロトコルに従う。したがって、いくつかの実施態様において、組合せ療法に起因する毒性をモニタリングする工程がある。
【0296】
(化学療法)
多種多様な化学療法剤を、本実施態様に従い、第二の療法として使用することができる。化学療法剤は、癌の治療において投与される化合物又は組成物であることができる。これらの薬剤又は薬物を、細胞内でのその活性の様式、例えば、それらが細胞周期に影響を及ぼすかどうかということ及びそれらがどの段階で細胞周期の影響を及ぼすかということによって分類することができる。或いは、薬剤は、DNAを直接架橋するその能力、DNAにインターカレートするその能力、又は核酸合成に影響を及ぼすことにより染色体及び有糸分裂異常を誘発するその能力に基づいて特徴付けることができる。
【0297】
化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びシクロホスファミド;スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ;エチレンイミン、並びにアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)、及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むメチラメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(とりわけ、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン; CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体のKW-2189及びCB1-TM1を含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;窒素マスタード、例えば、クロラムブシル、クロロナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、及びウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、とりわけ、カリケアマイシンγII及びカリケアマイシンωII);ダインマイシンAを含むダインマイシン;ビスホスホネート、例えば、クロドロネート;エスペラマイシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラルナイシン(authrarnycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラルナイシン(nogalarnycin)、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、及びゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、及びトリメトレキセート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、及びフロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、及びテストラクトン;抗副腎薬(anti-adrenal)、例えば、ミトタン及びトリロスタン;葉酸補給剤、例えば、フロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デホファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルホルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えば、メイタンシン及びアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸; 2-エチルヒドラジド;プロカルバジン; PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン; 2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(とりわけ、T-2トキシン、ベラクリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセル及びドセタキセル ゲムシタビン; 6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメトルヒルオルニチン(difluorometlhylornithine)(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン(plicomycin)、ゲムシタビエン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス白金、並びに上記のもののいずれかの医薬として許容し得る塩、酸、又は誘導体が挙げられる。
【0298】
(放射線療法)
本明細書に記載される方法及び組成物と組み合わせて使用することができる別の従来の抗癌療法は、放射線療法(radiotherapy)、又は放射線療法(radiation therapy)である。放射線療法には、腫瘍細胞へのγ線、X線、及び/又は放射性同位体の有向送達の使用が含まれる。マイクロ波、プロトンビーム照射(米国特許第5,760,395号及び第4,870,287号;これらは全て引用により完全に本明細書中に組み込まれる)、並びにUV照射などの、他の形態のDNA損傷因子も企図される。これらの因子は全て、DNAに対する、DNAの前駆体に対する、DNAの複製及び修復に対する、並びに染色体の集合及び維持に対する広範囲の損傷に影響を及ぼす可能性が最も高い。
【0299】
腫瘍微小環境は、腫瘍に浸潤し、かつ免疫応答を抑制するように機能する骨髄由来サプレッサー細胞及び調節性T細胞が存在するため、本質的に抑制性である。さらに、T細胞及び抗原提示細胞(APC)上での特定の抑制性分子の発現は、効果的な免疫応答を制限することができる。放射線は、腫瘍細胞のアポトーシス、老化、オートファジーの誘導によって抗腫瘍効果を媒介し、いくつかの状況では、より効果的な免疫応答を刺激することができる。
【0300】
放射線は、腫瘍細胞がストレスを生き延びる機構を活性化することができるように、腫瘍細胞をストレス条件下に置く手段であり得る。そのようなストレス条件下で活性化される分子は、放射線と組み合わせて使用される療法の標的としての役割を果たすことができる。BTN1A1は、そのような条件下で過剰発現する潜在的標的として同定された。
【0301】
BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子は、局所及び全身免疫応答を刺激することができる。いくつかの実施態様において、本明細書に記載される抗体、他の分子、又は医薬組成物の治療的有効量を、放射線療法の前に、それと同時に、又はその後に投与して、相乗効果を達成する。
【0302】
いくつかの実施態様において、照射に対して宿主の腫瘍を効果的に増感させる本明細書に記載される抗体、他の分子、又は医薬組成物の治療的有効量が投与される。照射は、電離放射線、特に、γ線であることができる。いくつかの実施態様において、γ線は、線形加速器によるか又は放射性核種によって放出される。放射性核種による腫瘍への照射は、外部から又は内部からであることができる。
【0303】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される抗体、他の分子、又は医薬組成物の投与は、腫瘍への照射より最大1カ月、特に、最大10日又は1週間前に開始する。さらに、腫瘍への照射を分割し、本明細書に記載される抗体、他の分子、又は医薬組成物の投与を最初の照射期間と最後の照射期間の合間で維持する。
【0304】
照射は、X線照射、γ線照射、又は荷電粒子照射(陽子ビーム、炭素ビーム、ヘリウムビーム)(すなわち、「放射線」一般)であることもできる。放射線の線量範囲は、ある間隔の期間(2日以上~数週間)にわたる50~600レントゲンの1日線量から800~6000レントゲンの単一線量にまで及ぶ。放射線は、1日に1回、1日に2回、1日に3回、又は1日に4回投与することができる。放射性同位体の線量範囲はばらつきが大きく、同位体の半減期、放出される放射線の強さ及び種類、並びに腫瘍性細胞による取込みによって決まる。
【0305】
(標的療法)
標的癌療法は、癌の成長、進行、及び拡大に関与する特定の分子(「分子標的」)を妨害することにより、癌の成長及び拡大を阻止する薬物又は他の物質である。標的癌療法は、「分子標的薬」、「分子標的療法」、「精密医療」として、又は類似の名前でも呼ばれる。標準的な化学療法とは異なり、標的療法は、癌と関連する特定の分子標的に作用するが、標準的な化学療法は、通常、急速に分裂する全ての正常及び癌性細胞に作用する。
【0306】
標的療法には、低分子標的療法と、モノクローナル抗体などの生物学的標的療法の両方が含まれる。低分子化合物は、通常、細胞の内部にある標的向けに開発されるが、それは、そのような薬剤が比較的容易に細胞に侵入することができるからである。モノクローナル抗体などの生物学的標的療法は、細胞の外部又は細胞の表面にある標的に一般に使用される。
【0307】
いくつかの異なる標的療法が癌治療での使用に承認されている。これらの療法には、ホルモン療法、シグナル伝達阻害剤、遺伝子発現調節物質、アポトーシス誘導物質、血管新生阻害剤、免疫療法、及び毒素送達分子が含まれる。
【0308】
ホルモン療法は、成長するのに特定のホルモンを必要とするホルモン感受性腫瘍の成長を減速又は停止させる。ホルモン療法は、体がホルモンを産生するのを妨げることによるか、又はホルモンの作用を妨害することにより作用する。ホルモン療法は、乳癌と前立腺癌の両方に承認されている。
【0309】
シグナル伝達阻害剤は、細胞がその環境からのシグナルに応答するプロセスであるシグナル伝達に関与する分子の活性を遮断する。このプロセスにおいて、ひとたび細胞が特定のシグナルを受容すれば、該シグナルは、一連の生化学的反応を通じて、細胞内に伝えられ、この反応によって、最終的に適切な応答が生じる。一部の癌において、悪性細胞は、外部の成長因子によって分裂するように促されることなく、連続して分裂するように刺激される。シグナル伝達阻害剤は、この不適切なシグナル伝達を妨害する。
【0310】
遺伝子発現調節物質は、遺伝子発現の制御において役割を果たすタンパク質の機能を修飾する。アポトーシス誘導物質は、癌細胞に、アポトーシスと呼ばれる制御された細胞死のプロセスを経させる。アポトーシスは、体が不要な又は異常な細胞を取り除くために用いる1つの方法であるが、癌細胞は、アポトーシスを回避する戦略を有する。アポトーシス誘導物質は、こうした戦略の裏をかいて、癌細胞の死を引き起こすことができる。
【0311】
血管新生阻害剤は、腫瘍に至る新しい血管の成長(腫瘍血管新生と呼ばれるプロセス)を遮断する。血液は、腫瘍が持続的成長のために必要とする酸素及び栄養を供給するので、血液供給は、腫瘍がある大きさを超えて成長するために必要である。血管新生を妨害する治療は、腫瘍成長を遮断することができる。血管新生を阻害するいくつかの標的療法は、新しい血管の形成を刺激する物質である血管内皮成長因子(VEGF)の作用を妨害する。他の血管新生阻害剤は、新しい血管の成長を刺激する他の分子を標的とする。
【0312】
免疫療法は、免疫系が癌細胞を破壊するのを誘発する。ある免疫療法は、癌細胞の表面の特異的分子を認識するモノクローナル抗体である。標的分子へのモノクローナル抗体の結合は、その標的分子を発現する細胞の免疫破壊をもたらす。他のモノクローナル抗体は、特定の免疫細胞に結合して、これらの細胞が癌細胞をより良好に死滅させるのを助ける。
【0313】
毒性分子を送達するモノクローナル抗体は、癌細胞の死を特異的に引き起こすことができる。ひとたび抗体がその標的細胞に結合すると、抗体に連結されている毒性分子-例えば、放射性物質又は有害性化学物質-が細胞によって取り込まれ、最終的には、その細胞を死滅させる。毒素は、抗体の標的を欠く細胞-すなわち、体内の圧倒的多数の細胞には影響を及ぼさない。
【0314】
癌ワクチン及び遺伝子療法は特定の癌細胞の成長を妨害するので、これらも標的療法とみなされる。
【0315】
説明のために、以下に提供されるのは、本実施態様に従って第二の療法として使用することができるFDA承認標的療法のリストである。
・胃又は胃食道接合部の腺癌:トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、ラムシルマブ(Cyramza(登録商標))
・基底細胞癌:ビスモデギブ(Erivedge(商標))、ソニデギブ(Odomzo(登録商標))
・脳腫瘍:ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、エベロリムス(Afinitor(登録商標))
・乳癌:エベロリムス(Afinitor(登録商標))、タモキシフェン、トレミフェン(Fareston(登録商標))、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、フルベストラント(Faslodex(登録商標))、アナストロゾール(Arimidex(登録商標))、エキセメスタン(Aromasin(登録商標))、ラパチニブ(Tykerb(登録商標))、レトロゾール(Femara(登録商標))、ペルツズマブ(Perjeta(登録商標))、アド-トラスツズマブエムタンシン(Kadcyla(商標))、パルボシクリブ(Ibrance(登録商標))
・子宮頸癌:ベバシズマブ(Avastin(登録商標))
・結腸直腸癌:セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、パニツムマブ(Vectibix(登録商標))、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、ジブ-アフリベルセプト(Zaltrap(登録商標))、レゴラフェニブ(Stivarga(登録商標))、ラムシルマブ(Cyramza(登録商標))
・隆起性皮膚線維肉腫:メシル酸イマチニブ(Gleevec(登録商標))
・内分泌/神経内分泌腫瘍:酢酸ランレオチド(Somatuline(登録商標)デポー)
・頭頸部癌:セツキシマブ(Erbitux(登録商標))
・消化管間質腫瘍:メシル酸イマチニブ(Gleevec(登録商標))、スニチニブ(Sutent(登録商標))、レゴラフェニブ(Stivarga(登録商標))
・骨の巨細胞腫瘍:デノスマブ(Xgeva(登録商標))
・カポジ肉腫:アリトレチノイン(Panretin(登録商標))
・腎臓癌:ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))、スニチニブ(Sutent(登録商標))、パゾパニブ(Votrient(登録商標))、テムシロリムス(Torisel(登録商標))、エベロリムス(Afinitor(登録商標))、アキシチニブ(Inlyta(登録商標))
・白血病:トレチノイン(Vesanoid(登録商標))、メシル酸イマチニブ(Gleevec(登録商標))、ダサチニブ(Sprycel(登録商標))、ニロチニブ(Tasigna(登録商標))、ボスチニブ(Bosulif(登録商標))、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、アレムツズマブ(Campath(登録商標))、オファツムマブ(Arzerra(登録商標))、オビヌツズマブ(Gazyva(商標))、イブルチニブ(Imbruvica(商標))、イデラリシブ(Zydelig(登録商標))、ブリナツモマブ(Blincyto(商標))
・肝臓癌:ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))
・肺癌:ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、クリゾチニブ(Xalkori(登録商標))、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、アファチニブ二マレイン酸塩(Gilotrif(登録商標))、セリチニブ(LDK378/Zykadia)、ラムシルマブ(Cyramza(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))
・リンパ腫:イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(登録商標))、デニロイキンディフチトクス(Ontak(登録商標))、ブレンツキシマブベドチン(Adcetris(登録商標))、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、ボリノスタット(Zolinza(登録商標))、ロミデプシン(Istodax(登録商標))、ベキサロテン(Targretin(登録商標))、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標))、プララトレキセート(Folotyn(登録商標))、レナリオミド(lenaliomide)(Revlimid(登録商標))、イブルチニブ(Imbruvica(商標))、シルツキシマブ(Sylvant(商標))、イデラリシブ(Zydelig(登録商標))、ベリノスタット(Beleodaq(商標))
・黒色腫:イピリムマブ(Yervoy(登録商標))、ベムラフェニブ(Zelboraf(登録商標))、トラメチニブ(Mekinist(登録商標))、ダブラフェニブ(Tafinlar(登録商標))、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))
・多発性骨髄腫:ボルテゾミブ(Velcade(登録商標))、カルフィルゾミブ(Kyprolis(登録商標))、レナリオミド(lenaliomide)(Revlimid(登録商標))、ポマリドミド(Pomalyst(登録商標))、パノビノスタット(Farydak(登録商標))
・骨髄異形成/骨髄増殖性障害:メシル酸イマチニブ(Gleevec(登録商標))、リン酸ルクソリチニブ(Jakafi(商標))
・神経芽腫:ジヌツキシマブ(Unituxin(商標))
・卵巣上皮/ファローピウス管/原発性腹膜癌:ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、オラパリブ(Lynparza(商標))
・膵臓癌:エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、エベロリムス(Afinitor(登録商標))、スニチニブ(Sutent(登録商標))
・前立腺癌:カバジタキセル(Jevtana(登録商標))、エンザルタミド(Xtandi(登録商標))、酢酸アビラテロン(Zytiga(登録商標))、塩化ラジウム223(Xofigo(登録商標))
・軟部組織肉腫:パゾパニブ(Votrient(登録商標))
・全身肥満細胞症:メシル酸イマチニブ(Gleevec(登録商標))
・甲状腺癌:カボザンチニブ(Cometriq(商標))、バンデタニブ(Caprelsa(登録商標))、ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))、メシル酸レンバチニブ(Lenvima(商標))
【0316】
(免疫療法)
当業者は、免疫療法を本実施態様の方法と組み合わせて又は一緒に使用することができることを理解しているであろう。癌治療との関連において、免疫療法薬は、通常、癌細胞の標的化及び破壊を免疫エフェクター細胞及び免疫エフェクター分子の使用に頼っている。リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))は、そのような例である。例えば、イピルミマブ(ipilumimab)などのチェックポイント阻害剤は、別のそのような例である。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面のあるマーカーに特異的な抗体であることができる。該抗体のみで、療法のエフェクターとしての役割を果たすことができるか、又は該抗体が、他の細胞を動員して、細胞の死滅化に実際に影響を及ぼすことができる。該抗体を、薬物又は毒素(例えば、化学療法薬、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素)にコンジュゲートして、単に標的化剤としての役割を果たすこともできる。或いは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的に又は間接的に相互作用する表面分子を保有するリンパ球であることができる。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞及びNK細胞が含まれる。
【0317】
免疫療法の一態様において、腫瘍細胞は、標的化に適している、すなわち、大多数の他の細胞には存在しない何らかのマーカーを有する。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらはいずれも、本実施態様との関連における標的化に好適であることができる。一般的な腫瘍マーカーとしては、CD20、癌胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erb B、及びp155が挙げられる。免疫療法の代わりの態様は、抗癌作用を免疫刺激作用と組み合わせることである。免疫刺激分子も存在し、これには: IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、γ-IFNなどのサイトカイン、MIP-1、MCP-1、IL-8などのケモカイン、及びFLT3リガンドなどの成長因子が含まれる。
【0318】
現在研究中又は使用中の免疫療法の例としては、免疫アジュバント、例えば、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、ジニトロクロロベンゼン、及び芳香族化合物(米国特許第5,801,005号及び第5,739,169号; Hui及びHashimotoの文献、Infect Immun., 66(11):5329-36(1998); Christodoulidesらの文献、Microbiology, 66(11):5329-36(1998));サイトカイン療法、例えば、インターフェロンα、β、及びγ、IL-1、GM-CSF、並びにTNF(Bukowskiらの文献、Clin Cancer Res., 4(10):2337-47(1998); Davidsonらの文献、J Immunother.,21(5):389-98(1998); Hellstrandらの文献、Acta Oncol. 37(4):347-53(1998));遺伝子療法、例えば、TNF、IL-1、IL-2、及びp53(Qinらの文献、Proc Natl Acad Sci U S A, 95(24):14411-6(1998); Austin-Ward及びVillasecaの文献、Rev Med Chil, 126(7):838-45(1998);米国特許第5,830,880号及び第5,846,945号);並びにモノクローナル抗体、例えば、抗PD1、抗PDL1、抗CD20、抗ガングリオシドGM2、及び抗p185(Topalianらの文献、The New England journal of medicine, 366:2443-2454(2012); Brahmerらの文献、The New England journal of medicine 366:2455-2465(2012); Hollanderの文献、Front Immunol(2012): 3:3. doi: 10.3389/fimmu.2012.00003; Hanibuchiらの文献、Int J Cancer, 78(4):480-5(1998);米国特許第5,824,311号)があり;これらの文献は全て、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。1以上の抗癌療法を、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子の使用を含む本明細書に記載される療法とともに利用することができることが企図される。
【0319】
(手術)
癌を有する人の約60%が何らかのタイプの手術を受けることになり、これには、予防手術、診断又はステージング手術、根治手術、及び緩和手術が含まれる。根治手術には、癌性組織の全て又は一部が物理的に除去、摘出、及び/又は破壊され、本実施態様の治療、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、及び/又は代替療法などの他の療法と一緒に使用し得る切除が含まれる。腫瘍切除とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を指す。腫瘍切除に加えて、手術による治療には、レーザー手術、凍結手術、電気手術、及び顕微鏡下手術(モース術)が含まれる。
【0320】
癌性細胞、組織、又は腫瘍の一部又は全てを摘出するときに、体内に空洞が形成される場合がある。治療は、この部分への追加の抗癌療法の灌流、直接注射、又は局所適用によって達成することができる。そのような治療は、例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7日毎に、又は1、2、3、4、及び5週間毎に、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしく12カ月毎に反復することができる。これらの治療は、様々な投薬量のものであることもできる。
【0321】
(さらなるタイプの療法)
当技術分野で公知のさらなるタイプの癌療法を、限定されないが、凍結療法、温熱療法、光線力学療法、及び高密度焦点式超音波(HIFU)療法を含む、本明細書に提供される方法及び組成物と組み合わせて又は一緒に使用することができる。
【0322】
凍結療法(別名、凍結手術)は、液体窒素(又はアルゴンガス)によってもたらされる極度の低温を用いて、異常な組織を破壊することである。凍結手術は、外部腫瘍、例えば、皮膚の腫瘍を治療するために使用される。外部腫瘍については、液体窒素を綿棒又はスプレー装置で癌細胞に直接適用する。凍結手術は、体内の腫瘍(内部腫瘍及び骨内の腫瘍)を治療するために使用することもできる。内部腫瘍については、液体窒素又はアルゴンガスを、腫瘍と接触した状態で置かれる、クライオプローブと呼ばれる中空の器具に通して循環させる。このプローブを、手術時に又は皮膚を通して(経皮的に)、腫瘍の中に入れ込むことができる。凍結手術後、凍結した組織が解けて、自然に体に吸収されるか(内部腫瘍の場合)、又は該組織が溶解して、かさぶたを形成する(外部腫瘍の場合)。
【0323】
温熱療法(hyperthermia therapy)(別名、温熱療法(thermal therapy)又は温熱療法(thermotherapy))は、体組織が高温(最大113°F)に曝露される癌治療の一種である。温熱療法のいくつかの方法があり、これには、局所、局部、及び全身温熱療法が含まれる。
【0324】
局所温熱療法では、エネルギーを供給する様々な技法を用いて、熱を腫瘍などの小さい領域に適用して、腫瘍を熱する。マイクロ波、高周波、及び超音波を含む、様々なタイプのエネルギーを用いて、熱を加えることができる。腫瘍の位置によって、外部アプローチ、管腔内法又は空洞内法、及び間隙内技法を含む、いくつかの局所温熱療法のアプローチがある。
【0325】
局部温熱療法では、深部組織アプローチ、局部灌流技法、及び持続温熱腹膜灌流(CHPP)を含む、様々なアプローチを用いて、体腔、臓器、又は肢などの、大きい組織部分を熱することができる。
【0326】
全身温熱療法を用いて、全身に広がった転移性癌を治療することができ、これは、(巨大インキュベーターに類似した)サーマルチャンバー又は温水ブランケットの使用を含む、体温を107~108°Fにまで上昇させるいくつかの技法によって達成することができる。
【0327】
光線力学療法(PDT)は、光増感剤又は光感作性薬剤と呼ばれる薬物及び特定の種類の光を使用する治療である。 光増感剤を特定の波長の光に曝露させると、それは、すぐ近くの細胞を死滅させる一種の酸素を生成する。癌治療のためのPDTの第一段階において、光感作性薬剤が血流中に注射される。該薬剤は、体中の細胞によって吸収されるが、正常細胞に留まるよりも長く癌細胞に留まる。薬剤のほとんどが正常細胞からなくなるが、癌細胞に残っている、注射から約24~72時間後に、腫瘍を光に曝露させる。腫瘍内の光増感剤は光を吸収し、すぐ近くの癌細胞を破壊する活性型の酸素を生成する。
【0328】
PDTに使用される光は、レーザー又は他の源に由来することができる。レーザー光を、光ファイバーケーブル(光を伝達する薄いファイバー)を通過するように導いて、光を体内の領域に送達することができる。他の光源としては、皮膚癌などの表面腫瘍に使用することができる発光ダイオード(LED)が挙げられる。体外循環光療法(ECP)は、PDTの一種であり、この場合、機械を用いて患者の血液細胞を回収し、それを体外で光感作性薬剤で処理し、それを光に曝露させ、その後、それを患者に戻す。
【0329】
高密度焦点式超音波療法(又はHIFU)は、癌治療の一種である。医師は、癌の特定の部分に強いビームを送達して癌細胞を死滅させる高周波音波を放出する機械を用いて、HIFU治療を施す。
【0330】
(他の薬剤)
他の薬剤を本実施態様のある態様と組み合わせて用いて、治療の治療有効性を改善することができることが企図される。これらの追加の薬剤としては、細胞表面受容体及びGAP結合の上方調節に影響を及ぼす薬剤、細胞増殖抑制剤及び分化剤、細胞接着の阻害剤、アポトーシス誘導物質に対する過剰増殖細胞の感受性を増大させる薬剤、又は他の生物学的薬剤が挙げられる。GAP結合の数を増加させることによる細胞間シグナル伝達の増大は、隣接する過剰増殖細胞集団への抗過剰増殖効果を増大させることができる。他の実施態様において、細胞増殖抑制剤又は分化剤を本実施態様のある態様と組み合わせて用いて、治療の抗過剰増殖効力を改善することができる。細胞接着の阻害剤は本実施態様の有効性を改善することが企図される。細胞接着阻害剤の例は、焦点接着キナーゼ(FAK)阻害剤及びロバスタチンである。アポトーシスに対する過剰増殖細胞の感受性を増大させる他の薬剤、例えば、抗体c225を本実施態様のある態様と組み合わせて用いて、治療有効性を改善することができることがさらに企図される。
【0331】
(5.6 コンパニオン診断)
BTN1A1は、癌細胞で高度かつ特異的に発現する。本明細書に提供されるのは、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を用いて、対象由来の試料中のBTN1A1の発現を検出する方法でもある。したがって、本明細書に提供されるのは、癌診断薬としての本明細書に記載される分子の使用でもある。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象由来の試料を本明細書に記載される分子と接触させて、該分子とBTN1A1の複合体を形成させること、及び該試料中の該複合体を検出することにより、該試料中のBTN1A1を検出する方法である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象の癌診断を提供又は補助する方法であって、該対象由来の試料を本明細書に記載される分子と接触させて、該分子とBTN1A1の複合体を形成させること、該複合体を検出すること、及び該複合体が該試料中で検出される場合、該対象が癌を有する可能性が高いと診断することを含む、方法である。いくつかの実施態様において、該方法は、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を用いて、試料中のグリコシル化BTN1A1の存在を検出することを含む。
【0332】
いくつかの実施態様において、該分子は、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する。いくつかの態様において、該分子は、位置N55、N215、及び/又はN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、1以上のグリコシル化モチーフに免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。
【0333】
いくつかの実施態様において、該分子は、抗BTN1A1抗体である。いくつかの実施態様において、該分子は、抗グリコシル化BTN1A1抗体である。
【0334】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVH又はVLドメインを含む抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を用いて、対象由来の試料中のBTN1A1の発現を検出する方法でもある。一実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVHドメインとVLドメインの両方を含む抗原結合断片を有することができる。別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVH CDRを含む抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を用いて、対象由来の試料中のBTN1A1の発現を検出する方法である。別の実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVL CDRを含む抗原結合断片を有することができる。さらに別の実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810の少なくとも1つのVH CDR及び少なくとも1つのVL CDRを含む抗原結合断片を有することができる。
【0335】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるBTN1A1エピトープを(例えば、用量依存的な様式で)競合的に遮断する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を用いて、対象由来の試料中のBTN1A1の発現を検出する方法である。該BTN1A1エピトープは、本明細書に記載されるSTC810のエピトープであることができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるBTN1A1のエピトープに免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を用いて、対象由来の試料中のBTN1A1の発現を検出する方法である。該BTN1A1エピトープは、本明細書に記載されるSTC810のエピトープであることができる。いくつかの実施態様において、該BTN1A1エピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を有する。
【0336】
いくつかの実施態様において、試料中のBTN1A1を検出することは、本明細書に記載される分子を用いて、該試料中のBTN1A1の発現レベルを測定することを含む。他の実施態様において、BTN1A1を検出することは、該対象由来の試料中のBTN1A1の発現レベルを参照レベルと比較することをさらに含む。いくつかの実施態様において、該方法は、本明細書に記載される分子を用いて、試料中のBTN1A1の発現レベルを測定すること、該試料中のBTN1A1の発現レベルを参照レベルと比較すること、及び該試料中のBTN1A1の発現レベルが該参照レベルよりも高い場合、該対象が癌を有する可能性が高いと診断することを含む。
【0337】
いくつかの実施態様において、BTN1A1レベルを測定することは、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子、例えば、抗グリコシル化BTN1A1抗体を用いて、グリコシル化BTN1A1のレベルを測定することを含む。いくつかの実施態様において、試料中のグリコシル化BTN1A1のレベルを測定することは、該試料中のグリコシル化BTN1A1のレベルを参照レベルと比較すること、及び該試料中のグリコシル化BTN1A1のレベルが該参照レベルよりも高い場合、患者が癌を有する可能性が高いと診断することをさらに含む。
【0338】
いくつかの実施態様において、参照レベルは、健常個体由来の試料中のBTN1A1の発現レベルであることができる。いくつかの実施態様において、参照レベルは、健常個体の集団由来の試料中のBTN1A1の平均又は中位の発現レベルであることができる。参照レベルは、集団の試料由来のBTN1A1の発現レベル統計分析によって決定されるカットオフ値であることもできる。そのようなカットオフ値を決定するために使用することができる統計法は当技術分野で周知である。例えば、受動者動作特性(ROC)分析を用いて、参照発現比を決定することができる。ROC分析の概説は、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Soreideの文献、J Clin Pathol, 10:1136(2008)に見出すことができる。
【0339】
いくつかの実施態様において、対象は、ルーチンの健康診断を受けている健常対象であることができる。いくつかの実施態様において、該健常対象は、当技術分野で周知である特定のリスク因子の存在によって決定したとき、癌を有するリスクがある。そのようなリスク因子には、限定するものではないが、遺伝的素質、個人の病歴、家族の病歴、生活様式因子、環境因子、診断指標などが含まれる。いくつかの実施態様において、対象は無症状である。無症状の対象には、癌の軽度の初期診断指標を示すが、それ以外は症状も病状もない癌患者がさらに含まれる。いくつかの実施態様において、対象は癌を有する。
【0340】
いくつかの実施態様において、対象は、癌を有する疑いがある。いくつかの実施態様において、対象は、癌を発症する遺伝的素質又は癌の家族歴を有する。いくつかの実施態様において、対象は、癌の発症を促進する特定の生活様式因子に曝されているか、又は対象は、癌の臨床疾患症状を示す。いくつかの実施態様において、対象は、癌を診断するために又は癌を発症するリスクを評価するために、臨床的精密検査を受けている患者である。
【0341】
癌は転移性癌であることができる。癌は、血液癌又は固形腫瘍であることができる。いくつかの実施態様において、癌は、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫からなる群から選択される血液癌である。いくつかの実施態様において、癌は、乳癌、肺癌、胸腺癌、甲状腺癌、頭頸部癌、前立腺癌、食道癌、気管癌、脳腫瘍、肝臓癌、膀胱癌、腎臓癌、胃癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、精巣癌、結腸癌、直腸癌、又は黒色腫皮膚癌と非黒色腫皮膚癌の両方の皮膚癌からなる群から選択される固形腫瘍である。癌は、本明細書に記載される任意の他のタイプの癌であることもできる。
【0342】
いくつかの実施態様において、対象は治療を受けたことがない。いくつかの実施態様において、対象は癌の治療(例えば、化学療法)を受けている。いくつかの実施態様において、対象は寛解期にある。いくつかの実施態様において、寛解は薬物によって誘発される。いくつかの実施態様において、寛解は薬物に頼らないものである。
【0343】
いくつかの実施態様において、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1を検出する方法は、対象由来の試料を得ることを含む。対象はヒトであることができる。対象は癌患者であることができる。試料は、全血試料、骨髄試料、部分精製血試料、PBMC、組織生検、循環腫瘍細胞、循環要素、例えば、タンパク質複合体又はエキソソームであることができる。いくつかの実施態様において、試料は血液試料である。いくつかの実施態様において、試料は組織生検である。
【0344】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、抗BTN1A1抗体及び抗グリコシル化(glycosyalted)BTN1A1抗体を含む、本明細書に記載される分子を用いる種々の免疫組織化学(IHC)手法又は他の免疫アッセイ法を用いて、試料中のBTN1A1を検出することを含む。
【0345】
組織切片のIHC染色は、試料中のタンパク質の存在を評価又は検出する信頼性のある方法であることが示されている。免疫組織化学技法は、抗体を用いて、通常は発色法又は蛍光法によって、細胞抗原をインサイチュで探索及び可視化する。したがって、BTN1A1に特異的な抗体又は抗血清、好ましくは、ポリクローナル抗血清、最も好ましくは、モノクローナル抗体を使用することができる。以下でさらに詳細に論じられるように、抗体は、例えば、放射性標識、蛍光標識、ハプテン標識、例えば、ビオチン、又は酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼ)による抗体自体の直接的な標識によって検出することができる。或いは、非標識一次抗体を、一次抗体に特異的な抗血清、ポリクローナル抗血清、又はモノクローナル抗体を含む、標識二次抗体と一緒に使用する。免疫組織化学プロトコル及びキットは当技術分野で周知であり、かつ市販されている。スライド調製及びIHC処理の自動システムは市販されている。Ventana(登録商標) BenchMark XTシステムは、そのような自動システムの一例である。
【0346】
標準的な免疫学的手順及び免疫アッセイ手順は、基礎及び臨床免疫学(Basic and Clinical Immunology)(Stites及びTerr編、第7版、1991)に見出すことができる。さらに、免疫アッセイは、酵素免疫アッセイ(Enzyme Immunoassay)(Maggio編、1980);並びにHarlow及びLaneの文献(上記)で広範に概説されているいくつかの構成のうちのいずれかで実施することができる。一般的な免疫アッセイの概説については、細胞生物学における方法:細胞生物学における抗体(Methods in Cell Biology: Antibodies in Cell Biology)、第37巻(Asai編、1993);基礎及び臨床免疫学(Basic and Clinical Immunology)(Stites及びTen編、第7版、1991)も参照されたい。
【0347】
BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1を検出するための一般的に使用されるアッセイとしては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、蛍光免疫吸着アッセイ(FIA)、化学発光免疫吸着アッセイ(CLIA)、放射免疫アッセイ(RIA)、酵素多重化免疫アッセイ(EMI)、固相放射免疫アッセイ(SPROA)、蛍光偏光(FP)アッセイ、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アッセイ、時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(TR-FRET)アッセイ、及び表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイが挙げられる。
【0348】
いくつかの実施態様において、ELISAはサンドイッチELISAである。いくつかの実施態様において、ELISAは直接ELISAである。いくつかの実施態様において、ELISAは、本明細書に記載される分子を固体支持体に(例えば、マイクロタイタープレートウェルの壁又はキュベットの壁に)固定する最初の工程を含む。
【0349】
BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1を検出するためのアッセイには、非競合的アッセイ、例えば、サンドイッチアッセイ、及び競合的アッセイが含まれる。通常、ELISAアッセイなどのアッセイを使用することができる。例えば、血液、血漿、血清、又は骨髄を含む、多種多様な組織及び試料をアッセイするためのELISAアッセイが当技術分野で公知である。
【0350】
そのようなアッセイ形式を用いる広範な免疫アッセイ技法が利用可能であり、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、米国特許第4,016,043号、第4,424,279号、及び第4,018,653号を参照されたい。これらは、非競合型の単一部位アッセイと二部位アッセイの両方又は「サンドイッチ」アッセイ及び従来的な競合的結合アッセイを含む。これらのアッセイは、標的抗原に対する標識抗体の直接的な結合も含む。サンドイッチアッセイは一般的に使用されるアッセイである。サンドイッチアッセイ技法のいくつかのバリエーションが存在する。例えば、典型的な前向きアッセイでは、非標識抗BTN1A1抗体を固体基板上に固定し、試験すべき試料をその結合抗体と接触させる。抗体-抗原複合体の形成を可能にするのに十分な期間にわたる好適なインキュベーション期間の後、検出可能なシグナルを産生することができるレポーター分子で標識された、第二の抗BTN1A1抗体を添加し、別の抗体-抗原-標識抗体複合体の形成に十分な時間を考慮して、インキュベートする。全ての未反応材料を洗い流し、抗原の存在を、レポーター分子によって産生されるシグナルの観察により測定する。結果は、可視シグナルの単純な観察による定性的なものであり得るか、又は標準的な量の抗原を含む対照試料と比較することにより定量され得るかのいずれかである。
【0351】
前向きアッセイのバリエーションには、試料と標識抗体の両方が同時に結合抗体に添加される同時アッセイが含まれる。これらの技法は当業者に周知であり、これには、すぐに明白である任意のマイナーなバリエーションが含まれる。典型的な前向きサンドイッチアッセイでは、例えば、第一の抗BTN1A1抗体を共有結合的にか又は受動的にかのいずれかで固体表面に結合させる。固体表面はガラス又はポリマーであることができ、最も一般的に使用されるポリマーは、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリプロピレンである。固体支持体は、チューブ、ビーズ、マイクロプレートのディスク、又は免疫アッセイを実施するのに好適な任意の他の表面の形態のものであることができる。結合プロセスは当技術分野で周知であり、かつ通常、架橋、共有結合、又は物理的吸着からなり、ポリマー-抗体複合体を試験試料に備えて洗浄する。その後、試験すべき試料のアリコートを固相複合体に添加し、抗体中に存在する任意のサブユニットの結合を可能にするのに十分な期間(例えば、2~40分、又はより好都合な場合、一晩)及び好適な条件下(例えば、室温~40℃、例えば、25℃~32℃(25℃と32℃を含む))でインキュベートする。インキュベーション期間の後、抗体サブユニット固相を洗浄し、乾燥させ、抗原の部分に特異的な第二の抗体とともにインキュベートする。第二の抗BTN1A1抗体は、該第二の抗体と分子マーカーとの結合を示すために使用されるレポーター分子に連結される。
【0352】
いくつかの実施態様において、フローサイトメトリー(FACS)を用いて、試料中のBTN1A1又はグリコシル化BTN1A1のレベルを検出することができる。フローサイトメーターは、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1のレベルを示す蛍光色素タグ化抗体の強度を検出及び報告する。非蛍光性の細胞質タンパク質も、透過処理した細胞を染色することにより観察することができる。染色剤は、特定の分子に結合することができる蛍光化合物、又は選択された分子に結合する蛍光色素タグ化抗体のいずれかであることができる。
【0353】
酵素免疫アッセイの場合、酵素は、通常、グルタルアルデヒド又は過ヨウ素酸塩によって、第二の抗体にコンジュゲートされる。しかしながら、すぐに認識されるように、当業者にすぐに利用可能である、多種多様な異なるコンジュゲーション技法が存在する。一般的に使用される酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、及びアルカリホスファターゼが挙げられ、その他のものは、本明細書で論じられている。特定の酵素とともに使用されることになる基質は、通常、対応する酵素によって加水分解されたときの、検出可能な色の変化の生成が理由で選ばれる。好適な酵素の例としては、アルカリホスファターゼ及びペルオキシダーゼが挙げられる。上で述べられた発色基質ではなく、蛍光産物を産出する蛍光基質を利用することも可能である。いかなる場合でも、酵素標識抗体を第一の抗体-分子マーカー複合体に添加し、結合させておき、その後、余分な試薬を洗い流す。その後、適当な基質を含む溶液を抗体-抗原-抗体の複合体に添加する。基質は、第二の抗体に連結された酵素と反応して、定性的な視覚的シグナルを生じ、これを、通常は分光学的に、さらに定量して、試料中に存在するBTN1A1又はグリコシル化BTN1A1の量を示すことができる。或いは、蛍光化合物、例えば、フルオレセイン及びローダミンを、その結合能力を変化させることなく、抗体に化学的にカップリングすることができる。特定の波長の光による照射によって活性化されると、蛍光色素標識抗体は光エネルギーを吸着し、状態を分子の興奮状態に誘導し、その後、光学顕微鏡で視覚的に検出可能な特徴的な色で光が放出される。EIAと同様に、蛍光標識抗体を第一の抗体-分子マーカー複合体に結合させておく。結合しなかった試薬を洗い落とした後、残りの三成分複合体を適当な波長の光に曝露させ、観察される蛍光は、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1の存在を示す。免疫蛍光技法とEIA技法はどちらも当技術分野で十分に確立されており、本明細書で論じられている。
【0354】
したがって、本明細書に提供されるのは、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を用いて、対象由来の試料中のBTN1A1の存在又は発現レベルを検出することを含む癌診断の方法である。いくつかの実施態様において、該方法は、癌を有すると診断された対象に癌治療を施すことをさらに含む。癌治療は、本明細書に記載されているか又はさもなければ当技術分野で公知の任意の癌療法であることができる。いくつかの実施態様において、癌治療は、抗BTN1A1抗体の治療有効量を該対象に投与することを含む。
【0355】
(5.7 治療の有効性の評価)
対象におけるBTN1A1の発現レベルは癌の発症と相関し得る。BTN1A1レベルの増加は癌の進行を示すことができ、BTN1A1レベルの減少は癌の退縮を示すことができる。したがって、本明細書に提供されるのは、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を用いて、一連の治療にわたる対象の試料中のBTN1A1レベルをモニタリングすることにより、対象における特定の癌治療の有効性を評価する方法でもある。いくつかの実施態様において、該方法は、BTN1A1の発現レベルを検出することを含む。いくつかの実施態様において、該方法は、グリコシル化BTN1A1のレベルを検出することを含む。
【0356】
いくつかの実施態様において、該分子は、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する。いくつかの態様において、該分子は、位置N55、N215、及び/又はN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、1以上のグリコシル化モチーフに免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの実施態様において、該分子は、抗BTN1A1抗体である。いくつかの実施態様において、該分子は、抗グリコシル化BTN1A1抗体である。
【0357】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を用いて、一連の治療にわたる対象の試料中のBTN1A1レベルをモニタリングすることにより、対象における特定の癌治療の有効性を評価する方法でもある。一実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVH又はVLドメインを含む抗原結合断片を有することができる。一実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVHドメインとVLドメインの両方を含む抗原結合断片を有することができる。別の実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVH CDRを含む抗原結合断片を有することができる。別の実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVL CDRを含む抗原結合断片を有することができる。さらに別の実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810の少なくとも1つのVH CDR及び少なくとも1つのVL CDRを含む抗原結合断片を有することができる。
【0358】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子を用いて、一連の治療にわたる対象の試料中のBTN1A1レベルをモニタリングすることにより、対象における特定の癌治療の有効性を評価する方法でもある。いくつかの実施態様において、該分子は、本明細書に記載されるBTN1A1エピトープを(例えば、用量依存的な様式で)競合的に遮断する抗原結合断片を有することができる。該BTN1A1エピトープは、本明細書に記載されるSTC810のエピトープであることができる。いくつかの実施態様において、該分子は、本明細書に記載されるBTN1A1のエピトープに免疫特異的に結合する抗原結合断片を有することができる。該BTN1A1エピトープは、本明細書に記載されるSTC810のエピトープであることができる。いくつかの実施態様において、該BTN1A1エピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を有する。
【0359】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、患者における特定の癌治療の有効性を評価する方法であって: a)治療の全期間を通じた第一の時点及び少なくとも1つの後の時点で患者から得られた2以上の試料を本明細書に記載される分子と接触させること; b)該2以上の試料中のBTN1A1のレベルを測定すること、並びにc)該2以上の試料中のBTN1A1のレベルを比較することを含み、ここで、第一の時点で得られた試料中のBTN1A1レベルと比べた、後の時点で得られた試料中のBTN1A1レベルの減少によって、癌治療が有効であることが示される、方法である。該分子は、抗BTN1A1抗体であることができる。いくつかの実施態様において、BTN1A1レベルは、グリコシル化BTN1A1のレベルであることができる。該分子は、抗グリコシル化BTN1A1抗体であることもできる。
【0360】
いくつかの実施態様において、該方法は、治療の全期間を通じた第一の時点及び少なくとも1つの後の時点で患者から得られた2以上の試料を本明細書に記載される分子と接触させて、該試料中で該分子とBTN1A1の複合体を形成させること、並びに該試料中の該複合体を測定することにより、該2以上の試料中のBTN1A1のレベルを測定することを含む。
【0361】
いくつかの実施態様において、2以上の試料由来のBTN1A1又はグリコシル化BTN1A1のレベルは、1回のアッセイで測定される。他の実施態様において、2以上の試料由来のBTN1A1又はグリコシル化BTN1A1のレベルは、複数回のアッセイで測定される。いくつかの実施態様において、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1のレベルは、試料が対象から得られるのと同じ日に測定される。いくつかの実施態様において、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1のレベルは、対象から得られた試料を保存することなく測定される。
【0362】
癌患者由来の試料は、全血試料、骨髄試料、部分精製血試料、PBMC、組織生検、循環腫瘍細胞、循環要素、例えば、タンパク質複合体又はエキソソームであることができる。いくつかの実施態様において、該試料は血液試料である。いくつかの実施態様において、該試料は組織生検である。当業者であれば理解しているように、本明細書に記載されているか又はさもなければ当技術分野で公知の試料中のタンパク質の発現のレベルを決定する任意の方法を用いて、癌患者由来の試料中のBTN1A1のレベルを決定することができる。いくつかの実施態様において、該方法は免疫アッセイを含む。免疫アッセイは、免疫組織化学アプローチであることができ、これは、本明細書に記載される分子を用いて、BTN1A1を探索及び可視化することを含む。免疫アッセイとしては、FIA、CLIA、RIA、EMI、SPROA、FPアッセイ、FRETアッセイ、TR-FRETアッセイ、又はSPRアッセイを挙げることができる。
【0363】
癌治療又は癌療法は、本明細書に記載されているか又はさもなければ当技術分野で公知の任意の療法であることができ、これには:外科的療法、化学療法、生物学的標的療法、低分子標的療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、免疫療法、及びサイトカイン療法が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、癌治療には、臨床開発中の実験的癌治療を含む、FDA承認癌治療が含まれる。いくつかの実施態様において、癌治療には、2以上の薬物、又は2以上の療法の組合せによる治療が含まれる。
【0364】
いくつかの実施態様において、癌治療は、癌患者に抗BTN1A1抗体を投与することを含む。
【0365】
いくつかの実施態様において、1以上の試料が癌治療の期間の開始時に得られ、1以上の試料が治療の全期間を通じた後の時点で得られた。いくつかの実施態様において、後の時点は、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、15以上、20以上、25以上、又は30以上の時点である。
【0366】
いくつかの実施態様において、該方法は、治療が有効でないと決定された場合に治療を調整することをさらに含む。治療を調整することは、例えば、薬物治療の用量を調整すること、薬物治療の頻度を増加させること、異なる薬物もしくは薬物の組合せで治療すること、又は治療を終了することを含むことができる。
【0367】
いくつかの実施態様において、該方法は、治療が有効であると決定された場合に治療を反復することをさらに含む。
【0368】
いくつかの実施態様において、第一の時点で得られた試料中のBTN1A1又はグリコシル化BTN1A1のレベルは、後の時点で10%よりも大きく、20%よりも大きく、30%よりも大きく、40%よりも大きく、50%よりも大きく、60%よりも大きく、70%よりも大きく、80%よりも大きく、90%よりも大きく、95%よりも大きく、又は99%よりも大きく減少している。
【0369】
(5.8 患者選択)
本明細書に提供されるのは、患者由来の試料中のBTN1A1の存在又は発現レベルを決定することにより、癌治療に対する癌患者の応答性を予測するためのBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子の使用である。いくつかの実施態様において、該方法は、癌患者由来の試料を本明細書に記載される分子と接触させて、該分子とBTN1A1の複合体を形成させることにより、該試料中でBTN1A1を検出すること、及び該複合体が検出された場合に、該対象が癌治療に応答する可能性が高いと予測することを含む。いくつかの実施態様において、該方法は、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子を用いて、試料中のグリコシル化BTN1A1の存在を検出することを含む。
【0370】
いくつかの実施態様において、該分子は、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する。いくつかの態様において、該分子は、位置N55、N215、及び/又はN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、1以上のグリコシル化モチーフに免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及びN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。
【0371】
いくつかの実施態様において、該分子は、抗BTN1A1抗体である。いくつかの実施態様において、該分子は、抗グリコシル化BTN1A1抗体である。
【0372】
一実施態様において、患者選択に使用することができる本明細書に提供される分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVH又はVLドメインを含む抗原結合断片を有することができる。一実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVHドメインとVLドメインの両方を含む抗原結合断片を有することができる。別の実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVH CDRを含む抗原結合断片を有することができる。別の実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVL CDRを含む抗原結合断片を有することができる。さらに別の実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810の少なくとも1つのVH CDR及び少なくとも1つのVL CDRを含む抗原結合断片を有することができる。
【0373】
いくつかの実施態様において、患者選択に使用することができる本明細書に提供される分子は、本明細書に記載されるBTN1A1エピトープを(例えば、用量依存的な様式で)競合的に遮断する抗原結合断片を有することができる。該BTN1A1エピトープは、本明細書に記載されるSTC810のエピトープであることができる。いくつかの実施態様において、該分子は、本明細書に記載されるBTN1A1のエピトープに免疫特異的に結合する抗原結合断片を有することができる。該BTN1A1エピトープは、本明細書に記載されるSTC810のエピトープであることができる。いくつかの実施態様において、該BTN1A1エピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を有する。
【0374】
他の実施態様において、試料中のBTN1A1を検出することは、本明細書に記載される分子を用いて、該試料中のBTN1A1の発現レベルを測定することを含む。いくつかの実施態様において、BTN1A1を検出することは、該対象由来の試料中のBTN1A1の発現レベルを参照レベルと比較することをさらに含む。いくつかの実施態様において、該方法は、抗BTN1A1抗体を用いて、試料中のBTN1A1の発現レベルを測定すること、該試料中のBTN1A1の発現レベルを参照レベルと比較すること、及び該試料中のBTN1A1の発現レベルが該参照レベルよりも高い場合、該対象が癌治療に応答する可能性が高いと予測することを含む。
【0375】
いくつかの実施態様において、BTN1A1レベルを測定することは、抗グリコシル化BTN1A1抗体を用いて、グリコシル化BTN1A1のレベルを測定することを含む。いくつかの実施態様において、試料中のグリコシル化BTN1A1のレベルを測定することは、該試料中のグリコシル化BTN1A1のレベルを参照レベルと比較すること、及び該試料中のBTN1A1の発現レベルが該参照レベルよりも高い場合、該対象が癌治療に応答する可能性が高いと予測することをさらに含む。
【0376】
癌患者由来の試料は、全血試料、骨髄試料、部分精製血試料、PBMC、組織生検、循環腫瘍細胞、循環要素、例えば、タンパク質複合体又はエキソソームであることができる。いくつかの実施態様において、該試料は血液試料である。BTN1A1の存在を検出する方法又はBTN1A1の発現レベルを測定する方法は、本明細書に記載されているか又はさもなければ当技術分野で公知である。
【0377】
癌治療又は癌療法は、本明細書に記載されているか又はさもなければ当技術分野で公知の任意の療法であることができ、これには:外科的療法、化学療法、生物学的標的療法、低分子標的療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、免疫療法、及びサイトカイン療法が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、癌治療には、臨床開発中の実験的癌治療を含む、FDA承認癌治療が含まれる。いくつかの実施態様において、いくつかの実施態様において、癌治療には、2以上の薬物、又は2以上の療法の組合せによる治療が含まれる。
【0378】
いくつかの実施態様において、癌治療は、癌患者に抗BTN1A1抗体を投与することを含む。
【0379】
(5.9 キット)
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される分子及び1以上の補助剤を含むキットである。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に提供される療法を準備し及び/又は施すためのキットである。該キットは、本明細書に記載される医薬組成物のいずれかを含む1以上の密閉バイアルを有することができる。該キットは、例えば、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子、並びに該分子を調製、製剤化、及び/もしくは投与し、又は本明細書に開示される方法の1以上の工程を実施するための試薬を含むことができる。
【0380】
いくつかの実施態様において、該抗原結合断片は、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55、N215、及び/又はN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、1以上のグリコシル化モチーフに免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。
【0381】
いくつかの実施態様において、該分子は、抗BTN1A1抗体である。いくつかの実施態様において、該抗BTN1A1抗体は、抗グリコシル化BTN1A1抗体である。いくつかの実施態様において、該抗BTN1A1抗体は、ヒト化抗体又はヒト抗体である。
【0382】
一実施態様において、本明細書に提供されるキットは、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVH又はVLドメインを含む抗原結合断片を有する分子を含むことができる。一実施態様において、本明細書に提供されるキットは、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVHドメインとVLドメインの両方を含む抗原結合断片を有する分子を含むことができる。別の実施態様において、本明細書に提供されるキットは、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVH CDRを含む抗原結合断片を有する分子を含むことができる。別の実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810のVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVL CDRを含む抗原結合断片を有することができる。さらに別の実施態様において、該分子は、表2に示されているようなマウスモノクローナル抗体STC810の少なくとも1つのVH CDR及び少なくとも1つのVL CDRを含む抗原結合断片を有することができる。
【0383】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるキットは、本明細書に記載されるBTN1A1エピトープを(例えば、用量依存的な様式で)競合的に遮断する抗原結合断片を有する分子を含むことができる。該BTN1A1エピトープは、本明細書に記載されるSTC810のエピトープであることができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるキットは、本明細書に記載されるBTN1A1のエピトープに免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子を含むことができる。該BTN1A1エピトープは、本明細書に記載されるSTC810のエピトープであることができる。いくつかの実施態様において、該BTN1A1エピトープは、配列番号31~41のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を有する。
【0384】
いくつかの実施態様において、該キットは、第二の抗癌剤をさらに含む。第二の抗癌剤は、化学療法剤、免疫療法剤、ホルモン療法剤、又はサイトカインであることができる。
【0385】
本明細書に提供されるのは、癌のコンパニオン診断薬として使用することができるキットでもある。いくつかの実施態様において、該キットを用いて、癌診断を提供又は補助することができる。いくつかの実施態様において、該キットを用いて、癌治療の有効性を評価することができる。いくつかの実施態様において、該キットを用いて、癌治療に対する患者の応答性を予測することができる。いくつかの実施態様において、該キットを用いて、特定の癌治療のための患者を選択することができる。該キットは、例えば、試料中のBTN1A1を検出するための試薬を含むことができる。
【0386】
試薬は、BTN1A1又はグリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子であることができる。いくつかの実施態様において、該分子は、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する。いくつかの態様において、該分子は、位置N55、N215、及び/又はN449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N449でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、1以上のグリコシル化モチーフに免疫特異的に結合する。いくつかの態様において、該抗原結合断片は、位置N55及びN215でグリコシル化されているBTN1A1に免疫特異的に結合する。いくつかの実施態様において、該分子は、抗BTN1A1抗体である。いくつかの実施態様において、該分子は、抗グリコシル化BTN1A1抗体である。
【0387】
癌療法は、本明細書に記載されているか又はさもなければ当技術分野で公知の任意の療法であることができ、これには:外科的療法、化学療法、生物学的標的療法、低分子標的療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、免疫療法、及びサイトカイン療法が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、癌療法は、癌患者に、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子、例えば、抗グリコシル化BTN1A1抗体を含む、抗BTN1A1抗体を投与することを含む。
【0388】
いくつかの実施態様において、診断キット用の補助試薬は、二次抗体、検出試薬、固定バッファー、ブロッキングバッファー、洗浄バッファー、検出バッファー、又はこれらの任意の組合せであることができる。
【0389】
二次抗体としては、例えば、抗ヒトIgA抗体、抗ヒトIgD抗体、抗ヒトIgE抗体、抗ヒトIgG抗体、又は抗ヒトIgM抗体を挙げることができる。いくつかの実施態様において、二次抗体は、抗ウシ抗体である。二次検出抗体は、モノクローナル又はポリクローナル抗体であることができる。二次抗体は、マウス、ラット、ハムスター、ヤギ、ラクダ、ニワトリ、ウサギ、及びその他を含む、任意の哺乳動物生物から得ることができる。二次抗体は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、ルシフェラーゼなど)又は色素(例えば、発色色素、蛍光色素、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)色素、時間分解(TR)-FRET色素など)にコンジュゲートすることができる。いくつかの実施態様において、二次抗体は、HRPコンジュゲートされているポリクローナルウサギ抗ヒトIgG抗体である。
【0390】
いくつかの態様において、検出試薬は、蛍光検出試薬又は発光検出試薬を含む。いくつかの他の態様において、発光検出試薬は、ルミノール又はルシフェリンを含む。
【0391】
幅広く選択される洗浄バッファーは当技術分野で公知であり、これには、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)系バッファー(例えば、Tris緩衝生理食塩水、TBS)又はリン酸バッファー(例えば、リン酸緩衝生理食塩水、PBS)がある。洗浄バッファーは、洗剤、例えば、イオン性又は非イオン性洗剤を含むことができる。いくつかの実施態様において、洗浄バッファーは、Tween(登録商標)20(例えば、約0.05%Tween(登録商標)20)を含むPBSバッファー(例えば、約pH 7.4)である。
【0392】
当技術分野で公知の任意の希釈バッファーを本開示のキットに含めることができる。希釈バッファーは、キャリアタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン、BSA)及び洗剤(例えば、Tween(登録商標)20)を含むことができる。いくつかの実施態様において、希釈バッファーは、BSA(例えば、約1%BSA)及びTween(登録商標)20(例えば、約0.05%Tween(登録商標)20)を含むPBS(例えば、約pH 7.4)である。
【0393】
いくつかの実施態様において、検出試薬は、発色検出試薬、蛍光検出試薬、又は化学発光検出試薬である。いくつかの実施態様において、発色検出試薬としては、PNPP(p-ニトロフェニルホスフェート)、ABTS(2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸))、又はOPD(o-フェニレンジアミン)が挙げられる。いくつかの実施態様において、蛍光検出試薬としては、QuantaBlu(商標)又はQuantaRed(商標)(Thermo Scientific, Waltham, MA)が挙げられる。いくつかの実施態様において、発光検出試薬としては、ルミノール又はルシフェリンが挙げられる。いくつかの実施態様において、検出試薬には、トリガー(例えば、H2O2)及びトレーサー(例えば、イソルミノールコンジュゲート)が含まれる。
【0394】
当技術分野で公知の任意の検出バッファーを本開示のキットに含めることができる。いくつかの実施態様において、該検出バッファーは、クエン酸塩-リン酸塩バッファー(例えば、約pH 4.2)である。
【0395】
当技術分野で公知の任意の停止溶液を本開示のキットに含めることができる。本開示の停止溶液は、検出試薬及び対応するアッセイシグナルのさらなる顕色を終結又は遅延させる。停止溶液としては、例えば、低pHバッファー(例えば、グリシンバッファー、pH 2.0)、カオトロピック剤(例えば、塩化グアニジウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))、又は還元剤(例えば、ジチオスレイトール、メルカプトエタノール)などを挙げることができる。
【0396】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるキットは、自動アッセイシステムのためのクリーニング試薬を含む。自動アッセイシステムは、任意の製造業者によるシステムを含むことができる。いくつかの実施態様において、自動アッセイシステムとしては、例えば、BIO-FLASHTM、BEST 2000TM、DS2TM、ELx50 WASHER、ELx800 WASHER、ELx800 READER、及びAutoblot S20TMが挙げられる。クリーニング試薬としては、当技術分野で公知の任意のクリーニング試薬を挙げることができる。いくつかの実施態様において、クリーニング試薬は、自動アッセイシステムの製造業者によって推奨されるクリーニング試薬である。
【0397】
いくつかの実施態様において、該キットは、好適な容器手段を含むこともでき、これは、該キットの構成要素と反応しない容器、例えば、エッペンドルフチューブ、アッセイプレート、シリンジ、ボトル、又はチューブである。該容器は、滅菌可能な材料、例えば、プラスチック又はガラスから作られたものであることができる。
【0398】
いくつかの実施態様において、該キットは、固体支持体をさらに含む。固体支持体としては、本開示のタンパク質を固定することができる当技術分野で公知の任意の支持体を挙げることができる。いくつかの実施態様において、固体基材は、マイクロタイターウェルプレート、スライド(例えば、スライドガラス)、チップ(例えば、タンパク質チップ、バイオセンサーチップ、例えば、Biacoreチップ)、マイクロ流体カートリッジ、キュベット、ビーズ(例えば、磁気ビーズ)、又は樹脂である。
【0399】
いくつかの他の実施態様において、本明細書に提供されるキットは、対象由来の試料中のBTN1A1又はグリコシル化BTN1A1を検出するためのキットのサブユニットの使用説明書を含む。
【0400】
本明細書に提供されるキットは、特定のアッセイ技術に合わせることができる。いくつかの実施態様において、該キットは、ELISAキット、ドットブロットキット、化学発光免疫アッセイ(CIA)キット、又はマルチプレックスキットである。いくつかの実施態様において、ELSAキットは、洗浄バッファー、試料希釈剤、二次抗体-酵素コンジュゲート、検出試薬、及び停止溶液を含むことができる。いくつかの実施態様において、ドットブロットキットは、洗浄バッファー、試料希釈剤、二次抗体-酵素コンジュゲート、検出試薬、及び停止溶液を含む。いくつかの実施態様において、CIAキットは、洗浄バッファー、試料希釈剤、トレーサー(例えば、イソルミノール-コンジュゲート)、及びトリガー(例えば、H2O2)を含む。いくつかの実施態様において、マルチプレックスキットは、洗浄バッファー、試料希釈剤、及び二次抗体-酵素コンジュゲートを含む。
【0401】
いくつかの実施態様において、本発明のキットは、該キットが、癌の診断、予後判定、又はモニタリングに使用されることを示すラベルを含む包装を有する。いくつかの実施態様において、該キットは、癌治療のコンパニオン診断薬として使用される。いくつかの他の実施態様において、該包装は、該キットが制癌剤とともに使用されることを示すラベルを有する。いくつかの実施態様において、該キットは、特定の癌治療のための患者を選択するために使用される。
【0402】
いくつかの実施態様において、キットの包装はFDA承認ラベルを含む。FDA承認ラベルは、FDA承認済みの使用の通知及び説明を含むことができる。いくつかの実施態様において、該キットは、研究専用(RUO)又は調査専用(IUO)のラベルがされている。いくつかの実施態様において、該キットは、インビトロ診断用(IVD)のラベルがされている。いくつかの実施態様において、該キットは、米国連邦規則第21編、第809節、サブパートB(21 CFR 89、サブパートB)に従ってラベルがされている。
【実施例】
【0403】
(6.実施例)
本明細書に記載される様々な実施態様の性質及び精神を実質的には変化させない修飾も企図されることが理解される。したがって、以下の例は、例示するものであるが、決して限定するものではないことが意図される。
【0404】
(6.1 実施例1:癌療法の標的としてのBTN1A1の同定)
放射線は、腫瘍細胞がストレスを生き延びる機構を活性化することができるように、腫瘍細胞をストレス条件下に置くことができ、そのような条件下で活性化される分子は、独立した療法又は放射線との組合せ療法のいずれかの標的としての役割を果たすことができる。BTN1A1は、そのような条件下で過剰発現する標的として同定された。未感作T細胞を非腫瘍担持マウスから単離し、96ウェルプレートに入れた。目的のshRNAを含むレンチウイルスベクターを用いて、T細胞に感染させることにより、未感作のT細胞を、ノックダウンされる目的の特定遺伝子を含むように改変した。特定の候補遺伝子のノックダウンを1度に1ウェルずつ行った。
【0405】
安定な表現型を獲得した後、shRNA処理したT細胞を、2組のサプレッサー細胞:(1)放射線照射された動物から単離されたサプレッサー細胞;及び(2)放射線照射されていない動物から単離されたサプレッサー細胞を用いて、抗原又は抗CD3+抗CD28の存在下で、サプレッサー細胞とともにインキュベートした。その後、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Dolcettiらの文献、Current Protocols in Immunlogy, 14.17.1-14.17.25(2010)に記載されている手順と実質的に同様の手順を用いて、3[H]-チミジン取込みをモニタリングすることにより、T細胞増殖を個々のウェルで評価した。
【0406】
放射線照射された動物から単離されたT細胞の応答と放射線照射されていない動物から単離されたT細胞の応答を同じインビトロ抑制アッセイで比較した。増殖は、非標的対照shRNAで処理したT細胞で抑制されたのに対し、免疫応答を負に調節する(阻害する)標的遺伝子の不活性化は、応答の増強(抑制の低下)をもたらした。顕著により良好なT細胞増殖(すなわち、T細胞抑制の低下)がBTN1A1のノックダウンを含む試料で観察され、放射線照射された動物から単離されたサプレッサー細胞と組み合わせたとき、BTN1A1がT細胞応答の阻害に関与することを裏付けた。したがって、BTN1A1を、癌療法の標的として、特に、その阻害が、ストレスを受けた癌細胞による免疫抑制効果を解除することにより、患者自身の免疫系を活性化することができる標的として同定した。さらに、BTN1A1の阻害は、腫瘍を放射線療法などの追加の療法に対して感受性にすると予想される。
【0407】
(6.2 実施例2:ヒトBTN1A1のグリコシル化の解析)
N-グリコシル化は、オリゴ糖から構成される予め形成されたグリカンをNXTモチーフ(-Asn-X-Ser/Thr-)内に位置するアスパラギン(Asn)側鎖アクセプターに転移する膜関連型オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)複合体によってまず触媒される翻訳後修飾である(Cheung及びReithmeierの文献、2007; Helenius及びAebiの文献、2001)。
図4に示されているように、ヒトBTN1A1のN-グリコシル化は、PNGアーゼFによる処理の後のクマシー染色PAGEゲル上でのタンパク質の下方シフトによって確認された。
【0408】
ヒトBTN1A1の全長配列をN-結合型グリコシル化部位(Nx[ST]パターン予測ソフトウェア(http://www.hiv.lanl.gov/content/sequence/GLYCOSITE/glycosite.html)に入力した。3つの潜在的なグリコシル化部位がこのソフトウェアによって同定された。これらは、N55、N215、及び/又はN449である。
図5に示されているように、N55及びN215はBTN1A1の細胞外ドメインにあり、N449は細胞内ドメインにある。
【0409】
グリコシル化部位を正確に示すために、異なる種由来のBTN1A1アミノ酸配列の配列アラインメントを行って、進化的に保存されているNXTモチーフである、コンセンサスN-グリコシル化認識配列を探索した。
図6に示されているように、BTN1A1の細胞外ドメインのグリコシル化部位における高度の相同性が認められた。したがって、該グリコシル化部位は種を越えて進化的に保存されている。
【0410】
本明細書に記載される抗BTN1A1抗体を用いて、BTN1A1のグリコシル化パターンを調べることができる。配列アラインメントによって同定された潜在的なグリコシル化部位が実際にグリコシル化されるかどうかをさらに確認するために、精製ヒトBTN1A1のトリプシン消化ペプチドをナノLC-MS/MSによって分析する。複合型N-グリカンを保有する糖ペプチドをN-グリコシル化部位について確認することができる。
【0411】
(6.3 実施例3:ヒト化抗BTN1A1抗体の産生)
標準的な技法を用いて(例えば、BTN1A1エピトープを免疫原として含むポリペプチドをラットに注射することにより(Aurrand-Lionsらの文献、Immunity, 5(5):391-405(1996))、一連のモノクローナル抗体を組換えBTN1A1ポリペプチドに対して産生する。BTN1A1ポリペプチドは、全長ヒトBTN1A1、又はBTN1A1エピトープを有するその断片であることができる。簡潔に述べると、100μgのKLHキャリアタンパク質(キーホールリンペットヘモシアニン、Pierce)にカップリングされ、アジュバントS6322(Sigma)と混合されたヒトBTN1A1ポリペプチドを用いて、雌Wisterラットを免疫する。合計、3回の注射を9日毎に行う。ヒトBTN1A1ポリペプチドの最後のs.c.注射から2日後、流入領域リンパ節由来の芽球をSp2/0細胞と融合させ、ハイブリドーマを選択する。成長しているクローンを、ヒトBTN1A1を特異的に認識するモノクローナル抗体の産生について、ELISAによりスクリーニングする。陽性クローンをサブクローニングし、再スクリーニングし、さらに試験する。抗体を、製造業者の指示に従って、プロテインG-セファロースカラム(GE HealthCare)で精製する。抗体のVH鎖及びVL鎖をシークエンシングし、CDRをIMGT付番体系によって決定することができる(Lefrancらの文献、Nucleic Acids Res., 27(1):209-12(1999))。
【0412】
上に示されているように、例えば、ヒト疾患のインビボ治療における使用を含む、特定の目的のために、マウスモノクローナル抗体のヒト化誘導体を利用することが好ましい。
【0413】
そのようなヒト化抗体を形成させるためには、フレームワーク配列中の差異を同定するために、マウスモノクローナル抗体のフレームワーク配列(「親」配列)を最初に1組の「アクセプター」ヒト抗体のフレームワーク配列と整列させる。ヒト化を、親とアクセプターの間で一致しないフレームワーク残基を置換することにより達成する。潜在的に重要な位置における置換、例えば、バーニアゾーン、VH/VL鎖間接触面、又はCDRの標準的なクラスを決定する位置における置換を予想される復帰突然変異について解析した(Foote, J.らの文献、J. Molec. Biol. 224:487-499(1992)を参照)。
【0414】
保存ドメインデータベース(COD)(Marchler-Bauerらの文献(2011) Nucleic Acids Res. 39:D225-D229)を用いて、各々のアミノ酸鎖のドメインの中身及び各々のドメインのおおよその境界を決定することができる。いくつかの一般的に使用される定義に従って、可変ドメイン境界をCDRの境界とともに正確に決定することができる(Kabat, E. A.らの文献(1991)「免疫学的に興味深いタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、 第5版、NIH Publication No. 91-3242; Chothia, C.らの文献、J. Mol. Biol. 196:901-917(1987); Honegger, A.らの文献、J. Molec. Biol. 309(3):657-670(2001))。
【0415】
マウス及びヒト生殖系列配列に対する親配列の多重アラインメントをMAFFT(Katoh, K.らの文献、Nucleic Acids Res. 30: 3059-3066(2002))を用いて作成し、各々のアラインメントのエントリーを親配列との配列同一性に従って順序付ける。100%の配列同一性でクラスタリングし、冗長なエントリーを除外することにより、参照セットを唯一の配列セットにまで減らす。
【0416】
最適なアクセプターフレームワーク選択は、両鎖のフレームワークにわたるアクセプターに対する親抗体全体の配列同一性に基づくが; VH/VL鎖間接触面を含む位置は、特に関心のある対象である。さらに、どの生殖系列フレームワークが同じ接触面残基を有し、なおかつ同様のCDR-ループ立体構造を支持することが知られるかを決定するために、CDRのうちの5つについて定義されている一連の個別の標準構造の原因となるCDR-ループの長さ及びCDRの位置(Chothia, C.らの文献、J. Mol. Biol. 196:901-917(1987); Martin, A. C.らの文献、J. Molec. Biol 263:800-815(1996); Al-Laziniki, B.らの文献、J. Molec. Biol. 273:927-948(1997))を生殖系列と比較する。
【0417】
ヒト生殖系列に対する親抗体の配列アラインメントに基づいて、最も厳密に一致するエントリーを同定する。好ましいヒト生殖系列の選択は、順序付けされた基準:(1)フレームワークにわたる配列同一性;(2)同一又は同等の鎖間接触面残基;(3)親CDRの標準的な立体構造によるループの支持;(4)発現抗体に見られる重生殖系列と軽生殖系列の組合せ;及び(5)除去する必要のあるN-グリコシル化部位の存在に基づく。
【0418】
ヒト化抗体のFv-領域の構造モデルを作成する。FR及びCDR並びに完全なFvの構造鋳型断片候補を、標的に対するその配列同一性、及び鋳型構造の定性的な結晶学的尺度、例えば、分解能(単位はオングストローム(Å))に基づいて、スコア化し、ランク付けし、抗体データベースから選択する。
【0419】
CDRをFR鋳型に対して構造的に整列させるために、CDRのどちらかの側の5残基をCDR鋳型に含める。断片のアラインメントを重複するセグメントに基づいて作成し、構造的配列アラインメントを作成する。鋳型断片を該アラインメントと一緒にMODELLER(SalI, A.らの文献; J. Molec. Biol. 234:779-815(1993))によって処理した。このプロトコルは、整列させられた構造鋳型のセットから導き出される立体構造の制限を生み出す。この制約を満たした構造の集合を共役勾配手順及び模擬焼き鈍し最適化手順によって作り出す。タンパク質構造のスコア及び立体構造上の制限の充足から導き出されるエネルギースコアに基づいて、モデル構造をこの集合から選択した。モデルを精査し、標的と鋳型の間で異なっていた位置の側鎖を、側鎖最適化アルゴリズム及び最小化エネルギーを用いて最適化した。視覚化及び計算ツール一式を用いて、CDR立体構造の可変性、局所充填、及び表面分析の評価を行い、1以上の好ましいモデルを選択する。
【0420】
親抗体の構造モデルを構築し、原子充填の不足、結合長、結合角、又は二面角の歪みなどの欠陥について精査する。これらの欠陥は、抗体の構造的安定性に関する潜在的な問題を示し得る。モデル化プロトコルは、そのような欠陥を最小限に抑えることを追求する。ヒト化Fvの初期の構造モデルは、全ての安全な置換(すなわち、結合親和性にも安定性にも影響を及ぼさないはずである置換)及び慎重な置換(すなわち、位置置換は行われるが、位置は結合親和性に重要であり得る)を含む。結合親和性の減少又は安定性の低下のリスクと関連すると考えられる位置での置換は改変されない。親の厳密一致変異体モデルではなく、優れた独自モデルを作り出すために、親鋳型の検索とは別に、鋳型の検索及び選択を行う。潜在的置換の評価を行うときに、好ましい置換及び復帰突然変異の効果を反映するように、モデルをアップデートする。
【0421】
(6.4 実施例4: BTN1A1のグリコシル化の機能解析)
グリコシル化部位を確認するために、突然変異誘発解析を行った。一連のアスパラギン(N)からグルタミン(Q)への置換を作成して、BTN1A1の特異的なグリコシル化部位を決定し、NからQへの突然変異体が野生型と比較してグリコシル化の低下を示すかどうか、該グリコシル化部位を確認した。部位特異的突然変異誘発を用いて、細胞外ドメイン中のグリコシル化部位(N55Q、N215Q、及び複合のN55QとN215Q)での突然変異を含む、ヒトBTN1A1突然変異を行った。これらのグリコシル化特異的突然変異体を、野生型BTN1A1とともに、標準的な分子生物学の技法を用いて、293T細胞で発現させた。細胞を溶解させ、グリコシル化特異的突然変異体の発現を、野生型BTN1A1とともに、ウェスタンブロットによって検出した。
図3に示されているように、N55Q及びN215Qは各々、ブロット上でのタンパク質の下方シフトを生じさせ、これらの突然変異体形態におけるグリコシル化の喪失を示した。さらに、複合のN55Q突然変異とN215Q突然変異を有するBTN1A1突然変異は、293T細胞で発現することができず、これら2つの部位のうちの少なくとも1つにおけるBTN1A1のグリコシル化がその発現に極めて重要であることを示した。
【0422】
(6.5 実施例5:抗CD3/CD28刺激によるマウスT細胞における細胞表面BTN1A1の誘導)
未感作マウスT細胞を、2日間、模擬刺激するか(左)又は抗CD3(5ug/ml)及び抗CD28(5ug/ml)で刺激し、フローサイトメトリー解析に供した。
図7Aと
図7Bの両方に示されているように、模擬処理細胞と比較して、CD3/CD28刺激細胞における細胞表面BTN1A1の高い誘導が観察され、CD3/CD28によって刺激されたT細胞の活性化がBTN1A1の発現の増大をもたらすことができることを示している。
【0423】
(6.6 実施例6: B16-Ova黒色腫細胞におけるBTN1A1発現の誘導)
B16-Ova細胞における細胞外BTN1A1を抗体のみの対照又はFITC-BTN1A1抗体で染色することにより検出し、BTN1A1発現レベルをフローサイトメトリーを用いて調べた。
図8に示されているように、骨髄細胞は、B16-ova黒色腫細胞における細胞外BTN1A1の発現を誘導した。
【0424】
(6.7 実施例7:マウス抗ヒトBTN1A1抗体の産生及び特徴付け)
BTN1A1に対する抗体産生ハイブリドーマを、SP2/0マウス骨髄腫細胞と、標準プロトコルに従ってBTN1A1免疫BALB/cマウスから単離された脾細胞との融合によって取得した。融合前に、FACSを用いて、マウス由来の血清を免疫原との結合について検証した。計68種のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ(mAb)を作製した。
【0425】
モノクローナル抗体のアイソタイプをELISAによって決定し、下の表5に提供した。ハイブリドーマ培養上清中のMAbのアイソタイプをELISA 技法(Sigma-Aldrich ISO2 SIGMAマウスモノクローナル抗体アイソタイピング試薬)によって決定した。
表5.マウス抗ヒトBTN1A1モノクローナル抗体のアイソタイプ
【表6】
【0426】
モノクローナル抗BTN1A1抗体の糖特異性をドットプロット解析によって特徴付けた。各々の抗BTN1A1 mAb(0.5μg/ウェルで充填)をグリコシル化BTN1A1(PNGaseF「-」)又は脱グリコシル化BTN1A1(PNGaseF「+」)との結合について試験した。非特異的抗体対照(「IgG」、 0.25μg/ウェルで充填)もアッセイに含めた。
図9A~9Bに示されているように、グリコシル化BTN1A1タンパク質と非グリコシル化BTN1A1(PNGアーゼFで処理したBTN1A1タンパク質)の両方を固相にコーティングし、mAbと抗原の結合親和性について試験した。試験された13種全てのmAb(STC703、STC709、STC710、STC713、STC715、STC717、STC725、STC738、STC810、STC819、STC820、STC822、及びSTC838)は、より高いバンド強度によって示されているように、非グリコシル化BTN1A1タンパク質(PNGアーゼF処理タンパク質)と比較して、より高いグリコシル化BTN1A1タンパク質との親和性を示した。モノクローナル抗BTN1A1抗体の糖特異性をFACS解析によっても特徴付けた。BTN1A1 WT(完全にグリコシル化されているもの)及び2NQ(完全に非グリコシル化されているもの)を過剰発現する293T細胞をBTN1A1に対する一次抗体とともにインキュベートし、FITCとコンジュゲートされた二次抗体でさらに洗浄した。洗浄後、蛍光強度(MFI)を測定して、抗体の膜結合型グリコシル化又は非グリコシル化BTN1A1に対する相対的結合を評価した。非グリコシル化BTN1A1よりもグリコシル化BTN1A1に対して有意により高いMFIを示す抗体を糖特異的抗体として同定した。例えば、STC810(STC838と同じ抗体)は、非グリコシル化BTN1A1よりもグリコシル化BTN1A1に対して少なくとも5倍高いMFIを示した。8種のモノクローナル抗BTN1A1抗体(STC702、STC810、STC819、STC820、STC821、STC822、STC838、及びSTC839)をFACSでさらに試験し(
図10)、BTN1A1に結合するその能力及びグリコシル化特異性を検証した。
【0427】
(6.8 実施例8: Biacore及びOctetによるSTC810のK
D解析)
Biacoreアッセイにおいて、BTN1A1とモノクローナル抗BTN1A1抗体STC810との結合親和性を表面プラズモン共鳴によって測定した。6×His又はヒトIgG1 Fcでタグ付けられたBTN1A1-ECDによる抗体の力価測定のセンサーグラム及び飽和曲線。プロテインAチップ(BIAcore)に抗体を600応答単位(RU)でコーティングし、BTN1A1 ECDをマイクロ流体チャネルに注入した。K
D値をBIAevaluationソフトウェア(BIAcore)のフィッティングツールを用いて取得した。
図11は、プロテインA-CM5チップ上に固定されたSTC810に対する可溶性BTN1A1-Fcタンパク質(2倍希釈で、2~64nM;
図11A)又は可溶性BTN1A1-Hisタンパク質(4倍希釈で、2~64nM;
図11B)のリアルタイム結合を示したセンサーグラムを提供している。固定されたタンパク質を含まないフローセルを非特異的結合の対照として使用し、提示されたデータから差し引いた。
【0428】
STC810のKD値をoctetアッセイでも決定した。ハイスループットKDスクリーニングのために、抗体リガンドを20nM溶液を通してセンサーに充填した。ベースラインを1mg/mlウシ血清アルブミンを含むPBS(アッセイバッファー)で定め、会合工程を、単一濃度の分析物を含むアッセイバッファーにセンサーを浸漬させることにより実施した。解離を新しいアッセイバッファー中で実施し、モニタリングした。センサーを1,000rpmで振盪させて、全ての実験を実施した。ForteBioのデータ解析ソフトウェアを用いて、データを1:1結合モデルに当てはめ、会合速度及び解離速度を引き出した。KD値をkd/ka比を用いて計算した。典型的なエピトープビニングアッセイにおいて、抗原BTN1A1-Fc(10nM)を第二の抗体(10nM)とともに室温で1時間プレインキュベートした。対照抗体(20nM)をAMCセンサー(ForteBio)に充填し、センサー上の残りのFc-結合部位を全マウスIgG抗体(Jackson ImmunoResearch)でブロッキングした。センサーをプレインキュベートされた抗原-第二の抗体混合物に曝露させた。ForteBioのデータ解析ソフトウェア7.0を用いて、生データを処理し、抗体ペアを競合的結合について評価した。第二の抗体によるさらなる結合は、占められていないエピトープ(非競合因子)を示し、一方、結合なしは、エピトープブロッキング(競合因子)を示している。
【0429】
BiacoreアッセイとOctetアッセイの両方によって測定されたSTC810のK
D値は、下の表6に提供されている。
表6: Biacore及びOctetによって測定されたSTC810のK
D値
【表7】
【0430】
(6.9 実施例9: STC810のエピトープマッピング)
マウス抗ヒトBTN1A1モノクローナル抗体STC810のエピトープマッピングを、Ag-Ab架橋を用いる高質量MALDI分析によって実施した。表3は、nLC-オービトラップMS/MSによって分析されたBTN1A1-FcとSTC810の架橋ペプチドをまとめたものである。重水素化d0 d12を含む抗体/抗原架橋複合体のプロテアーゼ消化の後、nLC-オービトラップMS/MS分析により、BTN1A1(ECD)-Fc抗原とSTC810抗体の3つの架橋ペプチドを検出することが可能になった。これらの架橋ペプチドは、XquestとStavroxソフトウェアの両方で検出された。
図12は、STC810のBTN1A1(ECD)-Fc抗原のエピトープを示している:
【化8】
【0431】
図12に示されているように、STC810と架橋されたBTN1A1(ECD)-Fcのアミノ酸残基には、R41、K42、K43、T185、及びK188が含まれる。
【0432】
表4は、nLC-オービトラップMS/MSによって分析されたBTN1A1-HisとSTC810の架橋ペプチドをまとめたものである。重水素化d0 d12を含む抗体/抗原架橋複合体のプロテアーゼ消化の後、nLC-オービトラップMS/MS分析により、BTN1A1(ECD)-His抗原とSTC810抗体の3つの架橋ペプチドを検出することが可能になった。これらの架橋ペプチドは、XquestとStavroxソフトウェアの両方で検出された。
図13は、STC810のBTN1A1(ECD)-His抗原のエピトープを示している
【化9】
【0433】
図13に示されているように、STC810と架橋されたBTN1A1(ECD)-Hisのアミノ酸残基には、R68、K78、T175、S179、及びT185が含まれる。
【0434】
図12~13及び上の表6及び7に示されているSTC810と架橋されたBTN1A1のペプチドを、このようにして、モノクローナル抗体STC810についてのBTN1A1上の結合部位として同定した。
【0435】
(6.10 実施例10: STC810の特徴付け)
STC810とBTN1A1 WT及びその非グリコシル化BTN1A1変異体の免疫特異的結合をウェスタンブロットによって試験し、共焦点顕微鏡法によっても試験した。HEK293T細胞に、野生型BTN1A1並びにN55Q、N215Q、及び2NQ(すなわち、N55QとN215Q)を含む突然変異体BTN1A1の発現ベクターを一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後のウェスタンブロット解析において、全細胞溶解物を調製し、タンパク質を未変性SDS-PAGEで分離した。ゲルをSTC810に対する抗体を用いる免疫ブロット解析に供した。STC810によって検出された野生型BTN1A1及び突然変異体BTN1A1の発現は、
図14に提供されている。
図14(上のパネル)に示されているように、STC810によって検出可能なBTN1A1 N55Q突然変異体及び突然変異体N215Qの発現はBTN1A1と比較して低下し、BTN1A1 2NQ突然変異体の発現はさらに有意に低下した。
【0436】
HEK293T細胞における野生型BTN1A1(BTN1A1 WT)及び突然変異体BTN1A1(BTN1A1-2NQ(すなわち、N55QとN215Q))の発現を、STC810で染色することにより、共焦点顕微鏡でも観察した。
図15に示されているように、BTN1A1 WTは、HEK293T細胞で、大部分は細胞表面で、STC810によって陽性に染色され;かつBTN1A1 2NQも染色されたが、STC810によって検出可能な発現は、BTN1A1 WTと比較してはるかに弱かった。
【0437】
(6.11 実施例11: STC810を用いたBTN1A1のタンパク質発現解析)
ヒト前立腺癌試料中のBTN1A1の発現を免疫組織化学(IHC)染色とOPAL染色の両方によって調べ、確認した。IHC染色を行うために、癌患者由来の前立腺組織のホルマリン固定パラフィン包埋切片をSTC810を用いたBTN1A1の免疫染色に供し、ヘマトキシリン対比染色を伴って、3,3'-ジアミノベンジジン(DAB)により可視化した。
図16(パネルA、3μg/mlマウスIgG;パネルC、5μg/mlマウスIgG;パネルB、3μg/ml STC810;パネルD、5μg/ml STC810)に示されているように、マウスIgGではなく、STC810による陽性の染色が観察された。
【0438】
前立腺腫瘍試料中のBTN1A1発現をSTC810を用いたOPAL染色によっても検出した。
図17に示されているように、抗原CD8及びサイトケラチンもBTN1A1と一緒に染色された。
【0439】
(6.12 実施例12:抗BTN1A1抗体による癌細胞のアポトーシス活性化及び増殖阻害)
抗BTN1A1抗体STC810の機能をアポトーシスアッセイ及び細胞増殖アッセイで解析した。
図18A~Bに示されているように、STC810は、活性化T細胞で処理したhBTN1A1過剰発現前立腺癌細胞(PC3細胞)でアポトーシスをもたらした。
図18Aは、グリーンカスパーゼ3/7蛍光PC3細胞とともに染色されたアポトーシス細胞を示している。
図18Bは、抗体による処理から120時間後のPC3細胞の相対的アポトーシスの計算を示している。示されているように、STC810は、PC3細胞のT細胞依存的アポトーシスを用量依存的な様式で有意に増大させた。PC3細胞の相対的アポトーシスは5μg/mlのSTC810で処理したときに増大し;細胞を50μg/mlのSTC810で処理したときに少なくとも2倍になった。
【0440】
図18C~Dに示されているように、STC810は、活性化T細胞で処理したhBTN1A1過剰発現前立腺癌細胞(PC3細胞)の細胞増殖も阻害した。
図18Cは、プレート上のPC3細胞の密集度によってモニタリングしたときの前立腺癌細胞の増殖を示している。
図18Dは、抗体による処理から120時間後のPC3細胞の相対的増殖の計算を示している。示されているように、STC810は、PC3細胞の増殖を用量依存的な様式で有意に阻害した。PC3細胞の増殖の割合は、該細胞を50μg/mlのSTC810で処理したとき、約50%低下した。これらのデータは、抗BTN1A1抗体がアポトーシス増強し、かつ前立腺癌細胞などの癌細胞の増殖を低下させることができることを示した。
【0441】
(6.13 実施例13:抗BTN1A1抗体によるBTN1A1のリソソーム内在化)
図19に提供されているように、単一のタンパク質-タンパク質相互作用をduolinkによって検出することができ、このduolinkは、通常、以下の工程: 1.標的一次抗体とともにインキュベートすること; 2. PLAプローブの「PLUS」及び「MINUS」を添加すること; 3.コネクターオリゴをハイブリダイズさせること; 4.完全なDNA環を形成させるためのライゲーション; 5.ローリングサイクル増幅;並びに6.蛍光プローブを添加して、相互作用を明らかにすることを含む。
【0442】
対象となる2つの標的を異なる種で作製された一次抗体を用いてマーキングし; 2つに分かれたDNA環でタグ付けした特殊な二次抗体を使用する。2つのタンパク質標的が極めて近接している場合、DNAリガーゼとの反応はDNA環を完成させることになる。その後、DNAポリメラーゼ反応が、蛍光標識プローブがハイブリダイズすることができる長い鎖を生成させ、これにより、シグナルの特異性と実質的な増幅の両方が達成され、検出することができる単一のタンパク質-タンパク質相互作用の検出が可能になる。
【0443】
Duolink技術を用いて、BTN1A1のリソソームへの内在化を示す、BTN1A1とリソソームマーカーのLAMP1との結合を検出した。WT又は2NQ BTN1A1を安定に過剰発現するHEK293T細胞をポリ-L-リジンコートしたカバーガラス上にプレーティングし、37℃、5%CO2で一晩接着させておいた。細胞を10μg/mL mIgG1又はSTC810で1時間処理し、10%NBFで20分間固定し、その後、製造業者の仕様書に従って、5μg/mLのマウスSTC810及び1μg/mLのウサギ抗LAMP1(ab24170、Abcam, Cambridge, UK)及びDuolink二次PLA抗体(DUO92001、Sigma, St. Louis, MO, US)及び緑色検出で染色した。DAPI入りのVectashield(Vector, Burlingame, CA, US)を用いてカバーガラスを取り付け、Nikon A1共焦点顕微鏡でイメージングした。
【0444】
図20A及び20Bに示されているように、抗体STC810はBTN1A1(野生型、グリコシル化バージョン)を内在化させたがBTN1A1 2NQ(N55QとN215Q)を内在化させなかった。STC810で処理したとき、BTN1A1 2NQではなく、BTN1A1 WTを安定に過剰発現する細胞は、核当たりの緑色蛍光スポットの数の増加を表し、BTN1A1とLAMP1の共局在の増大を示した。LAMP1はリソソームマーカーであり、緑色スポットは細胞の細胞質ゾル区画内に局在し、BTN1A1が、STC810との相互作用の後、リソソーム区画に活発に内在化したことを示している。2NQ BTN1A1のリソソーム局在はSTC810処理後に増大せず、WT BTN1A1上で保存されたグリコシル化部分に対するSTC810の特異性を示している。検出された結合を定量化した。その統計解析は、下の表7に提供されている。定性化された結果は、
図20Aに提供されている。
表7: Duolink結果の統計分析
表7(a): Anova:一元配置。まとめ。
【表8】
表7(b):平均のt-検定:対応のある2標本
【表9】
【0445】
HEK293T細胞におけるBTN1A1 WT及びBTN1A1 2NQの発現をFACS解析によって検出及び確認し(
図21)、BTN1A1 WTとBTN1A1 2NQの両方の発現により、STC810による、BTN1A1 2NQではなく、BTN1A1 WTのリソソームへの特異的内在化がBTN1A1 2NQの発現の欠如によるものではないことが示された。
【0446】
(6.14 実施例14)
BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に提供される分子は、イメージング剤、治療剤、毒素、又は放射性核種にコンジュゲートすることができる。治療剤は化学療法剤である。治療剤は細胞毒素である。本明細書に提供される分子は、イメージング剤にコンジュゲートすることができる。
【0447】
本明細書に提供されるのは、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に提供される分子、及び医薬として許容し得る担体を有する組成物である。本明細書に提供されるのは、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に提供される分子、及び補助剤を有する組成物である。
【0448】
本明細書に提供されるのは、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に提供される分子のVH領域又はVL領域をコードする単離された核酸である。該分子はSTC810であることができる。単離された核酸は、配列番号4の配列を有することができる。単離された核酸は、配列番号6の配列を有することができる。
【0449】
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される核酸分子を有するベクターでもある。本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるベクターを有する宿主細胞でもある。
【0450】
本明細書に提供されるのは、BTN1A1を発現する細胞に化合物を送達する方法であって、該細胞をBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子と接触させることを含み、ここで、該分子が該化合物とコンジュゲートされる、方法でもある。該細胞は癌細胞であることができる。該化合物は、イメージング剤、治療剤、毒素、又は放射性核種であることができる。
【0451】
本明細書に提供されるのは、対象における免疫応答を調節する方法であって、本明細書に記載される分子の有効量を対象に投与することを含み、ここで、該分子がBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する、方法である。調節することは:(a)T細胞活性化を増大させること;(b)T細胞増殖を増大させること;又は(c)サイトカイン産生を増大させることを含み得る。
【0452】
本明細書に提供されるのは、BTN1A1を発現する細胞のT細胞依存的アポトーシスを増強する方法であって、該細胞を、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子の有効量と接触させることを含む、方法でもある。
【0453】
本明細書に提供されるのは、癌を有する対象を治療する方法であって、本明細書に記載される分子の治療有効量を該対象に投与することを含み、ここで、該分子がBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する、方法でもある。癌は血液癌又は固形腫瘍である。癌は、固形腫瘍、例えば、乳癌、肺癌、甲状腺癌、胸腺癌、頭頸部癌、前立腺癌、食道癌、気管癌、脳腫瘍、肝臓癌、膀胱癌、腎臓癌、胃癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、精巣癌、結腸癌、直腸癌、又は皮膚癌であることができる。癌は、血液癌、例えば、白血病、リンパ腫、又は骨髄腫であることができる。該分子は全身投与される。該分子は、静脈内、皮内、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、又は局所投与することができる。
【0454】
該方法は、少なくとも第二の抗癌療法を対象に施すことをさらに含むことができる。第二の抗癌療法は、外科的療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、温熱療法、高密度焦点式超音波療法、ホルモン療法、免疫療法、又はサイトカイン療法であることができる。第二の抗癌療法は放射線療法である。
【0455】
本明細書に提供されるのは、対象由来の試料中のBTN1A1を検出する方法であって、該試料を本明細書に記載される分子と接触させて、該分子とBTN1A1の複合体を形成させること、及び該試料中の該複合体を検出することを含み、ここで、該分子がBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する、方法でもある。
【0456】
該方法は、該複合体が検出された場合、対象が癌を有する可能性が高いと診断することをさらに含むことができる。該方法は、該複合体が検出された場合、該対象が癌治療に応答する可能性が高いと予測することをさらに含むことができる。該方法は、対象由来の試料中のBTN1A1の発現レベルを参照レベルと比較すること、及び該試料中のBTN1A1の発現レベルが該参照レベルよりも高い場合、該対象が癌を有する可能性が高いと診断することをさらに含むことができる。参照レベルは、健康個体由来の試料中のBTN1A1の発現レベルであることができる。該試料は、例えば、全血試料、骨髄試料、部分精製血試料、PBMC、組織生検、循環腫瘍細胞、循環タンパク質複合体、又は循環エキソソームであることができる。該複合体は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、蛍光免疫吸着アッセイ(FIA)、化学発光免疫吸着アッセイ(CLIA)、放射免疫アッセイ(RIA)、酵素多重化免疫アッセイ、固相放射免疫アッセイ(SPROA)、蛍光偏光(FP)アッセイ、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アッセイ、時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(TR-FRET)アッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ、又は免疫組織化学(IHC)手法などのアッセイによって検出することができる。
【0457】
本明細書に提供されるのは、患者における特定の癌治療の有効性を評価する方法であって: a)治療の全期間を通じた第一の時点及び少なくとも1つの後の時点で患者から得られた2以上の試料をBTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子と接触させること; b)該2以上の試料中のBTN1A1のレベルを測定すること、並びにc)該2以上の試料中のBTN1A1のレベルを比較することを含み、ここで、第一の時点で得られた試料中のBTN1A1レベルと比べた、後の時点で得られた試料中のBTN1A1レベルの減少によって、癌治療が有効であることが示される、方法でもある。
【0458】
本明細書に提供されるのは、以下の式(Ia)もしくは(Ib)の抗体-薬物コンジュゲート:
【化10】
又はその医薬として許容し得る塩でもあり;
式中:
Aは、BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する本明細書に記載される分子であり;
2つの図示されたシステイン残基は、A中の開裂したシステイン-システインジスルフィド結合に由来するものであり;
各々のX及びX'は、独立に、O、S、NH、又はNR
1であり、ここで、R
1はC
1-6アルキルであり;
W
aは、=N-、=CH-、=CHCH
2-、=C(R
2)-、又は=CHCH(R
2)-であり; W
bは、-NH-、-N(R
1)-、-CH
2-、-CH
2-NH-、-CH
2-N(R
1)-、-CH
2CH
2-、-CH(R
2)-、又は-CH
2CH(R
2)-であり;ここで、R
1及びR
2は、独立に、C
1-6アルキルであり;
CTXは細胞毒素であり;
Rは任意の化学基であるか;又はRは存在せず;
各々のL
1、L
2、及びL
3は、独立に、-O-、-C(O)-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2-、-NH-、-NCH
3-、-(CH
2)
q-、-NH(CH
2)
2NH-、-OC(O)-、-CO
2-、-NHCH
2CH
2C(O)-、-C(O)NHCH
2CH
2NH-、-NHCH
2C(O)-、-NHC(O)-、-C(O)NH-、-NCH
3C(O)-、-C(O)NCH
3-、-(CH
2CH
2O)
p、-(CH
2CH
2O)
pCH
2CH
2-、-CH
2CH
2-(CH
2CH
2O)
p-、-OCH(CH
2O-)
2、-(AA)
r-、シクロペンタニル、シクロヘキサニル、非置換フェニレニル、並びにハロ、CF
3-、CF
3O-、CH
3O-、-C(O)OH、-C(O)OC
1-3アルキル、-C(O)CH
3、-CN、-NH-、-NH
2、-O-、-OH、-NHCH
3、-N(CH
3)
2、及びC
1-3アルキルからなる群から選択される1又は2個の置換基によって置換されたフェニレニルからなる群から選択されるリンカーであり;
a、b、及びcは、各々独立に、0、1、2、又は3の整数であり、但し、a、b、又はcのうちの少なくとも1つは1であり;
各々のk及びk'は、独立に、0又は1の整数であり;
各々のpは、独立に、1~14の整数であり;
各々のqは、独立に、1~12の整数であり;
各々のAAは、独立に、アミノ酸であり;
各々のrは、1~12であり;
mは、1~4の整数であり;
nは、1~4の整数であり;かつ
【化11】
結合は、単結合又は二重結合を表す。
【0459】
Aは、抗BTN1A1抗体であることができる。CTXは、例えば、チューブリン安定化剤、チューブリン脱安定化剤、DNAアルキル化剤、DNAマイナーグルーブ結合剤、DNAインターカレーター、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、ジャイレース阻害剤、タンパク質合成阻害剤、プロテオソーム阻害剤、又は代謝拮抗物質である。CTXは、例えば、アクチノマイシン-D、アモナファイド、オーリスタチン、ベンゾフェノン、ベンゾチアゾール、カリケアマイシン、カンプトテシン、CC-1065(NSC 298223)、セマドチン、コルヒチン、コンブレタスタチンA4、ドラスタチン、ドキソルビシン、エリナファイド、エムタンシン(DM1)、エトポシド、KF-12347(レイナマイシン)、メイタンシノイド、メトトレキセート、ミトキサントロン、ノコダゾール、プロテオソーム阻害剤1(PSI 1)、ロリジンA、T-2毒素(トリコテセン類似体)、タキソール、チューブリシン、Velcade(登録商標)、又はビンクリスチンであることができる。CTXは、オーリスタチン、カリケアマイシン、メイタンシノイド、又はチューブリシンであることができる。CTXは、モノメチルオーリスタチンE、モノメチルオーリスタチンF、カリケアマイシンγ、メルタンシ、ピロロベンゾジアゼピン、チューブリシンT2、チューブリシンT3、又はチューブリシンT4であることができる。
* * *
【0460】
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、かつ引用により完全に本明細書中に組み込まれる配列表を含む。2016年11月28日に作成された、該ASCIIコピーは、604556-228007_SL.TXTと命名され、23,359バイトのサイズである。
【0461】
本明細書の全体を通じて、様々な刊行物が参照されている。これらの刊行物の完全な開示は、本開示が関連する最先端の技術をより完全に記載するために本出願における引用により本明細書中に組み込まれる。ある特定の実施態様の例が本明細書に提供されているが、様々な変更及び修飾を行い得ることが当業者には明白であろう。そのような修飾もまた、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を含む分子。
(構成2)
前記抗原結合断片がグリコシル化BTN1A1に優先的に結合する、構成1記載の分子。
(構成3)
前記抗原結合断片が、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの半分未満のKdでグリコシル化BTN1A1に結合し、ここで、任意に、該抗原結合断片が、非グリコシル化BTN1A1に対して示されるKdの少なくとも10倍小さいKdでグリコシル化BTN1A1に結合する、構成2記載の分子。
(構成4)
前記抗原結合断片が、非グリコシル化BTN1A1に対して示される蛍光強度(MFI)の少なくとも2倍高いMFIでグリコシル化BTN1A1に結合する、構成2記載の分子。
(構成5)
前記抗原結合断片が、位置N55、N215、N449、又はこれらの任意の組合せにおけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクし、ここで、任意に、該抗原結合断片が、位置N55及びN215におけるBTN1A1グリコシル化を免疫特異的にマスクする、構成2記載の分子。
(構成6)
前記抗原結合断片が、
(a)
(1)配列番号7、10、13、及び16からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
H
CDR1;
(2)配列番号8、11、14、及び17からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
H
CDR2;並びに
(3)配列番号9、12、15、及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
H
CDR3;
:を含む重鎖可変(V
H
)領域、又は
(b)
(1)配列番号19、22、25、及び28からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
L
CDR1;
(2)配列番号20、23、26、及び29からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
L
CDR2;並びに
(3)配列番号21、24、27、及び30からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
L
CDR3
:を含む軽鎖可変(V
L
)領域
:を含む、構成1記載の分子。
(構成7)
前記抗原結合断片が、
(1)配列番号7、10、13、及び16からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
H
CDR1;
(2)配列番号8、11、14、及び17からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
H
CDR2;並びに
(3)配列番号9、12、15、及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
H
CDR3
:を含む重鎖可変(V
H
)領域を含む、構成6記載の分子。
(構成8)
前記重鎖可変(V
H
)領域が、
(a)(1)配列番号7のアミノ酸配列を有するV
H
CDR1;
(2)配列番号8のアミノ酸配列を有するV
H
CDR2;及び
(3)配列番号9のアミノ酸配列を有するV
H
CDR3;
(b)(1)配列番号10のアミノ酸配列を有するV
H
CDR1;
(2)配列番号11のアミノ酸配列を有するV
H
CDR2;及び
(3)配列番号12のアミノ酸配列を有するV
H
CDR3;
(c)(1)配列番号13のアミノ酸配列を有するV
H
CDR1;
(2)配列番号14のアミノ酸配列を有するV
H
CDR2;及び
(3)配列番号15のアミノ酸配列を有するV
H
CDR3;又は
(d)(1)配列番号16のアミノ酸配列を有するV
H
CDR1;
(2)配列番号17のアミノ酸配列を有するV
H
CDR2;及び
(3)配列番号18のアミノ酸配列を有するV
H
CDR3
:を含む、構成7記載の分子。
(構成9)
前記重鎖可変(V
H
)領域が配列番号3のアミノ酸配列を含む、構成7記載の分子。
(構成10)
前記抗原結合断片が:
(1)配列番号19、22、25、及び28からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
L
CDR1;
(2)配列番号20、23、26、及び29からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
L
CDR2;並びに
(3)配列番号21、24、27、及び30からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
L
CDR3
:を含む軽鎖可変(V
L
)領域を含む、構成6記載の分子。
(構成11)
前記軽鎖可変(V
L
)領域が、
(a)(1)配列番号19のアミノ酸配列を有するV
L
CDR1;
(2)配列番号20のアミノ酸配列を有するV
L
CDR2;及び
(3)配列番号21のアミノ酸配列を有するV
L
CDR3;
(b)(1)配列番号22のアミノ酸配列を有するV
L
CDR1;
(2)配列番号23のアミノ酸配列を有するV
L
CDR2;及び
(3)配列番号24のアミノ酸配列を有するV
L
CDR3;
(c)(1)配列番号25のアミノ酸配列を有するV
L
CDR1;
(2)配列番号26のアミノ酸配列を有するV
L
CDR2;及び
(3)配列番号27のアミノ酸配列を有するV
L
CDR3;又は
(d)(1)配列番号28のアミノ酸配列を有するV
L
CDR1;
(2)配列番号29のアミノ酸配列を有するV
L
CDR2;及び
(3)配列番号30のアミノ酸配列を有するV
L
CDR3
:を含む、構成10記載の分子。
(構成12)
前記軽鎖可変(V
L
)領域が配列番号5のアミノ酸配列を含む、構成10記載の分子。
(構成13)
前記抗原結合断片が、
(a)
(1)配列番号7、10、13、及び16からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
H
CDR1;
(2)配列番号8、11、14、及び17からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
H
CDR2;並びに
(3)配列番号9、12、15、及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
H
CDR3;
:を含む重鎖可変(V
H
)領域、並びに
(b)
(1)配列番号19、22、25、及び28からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
L
CDR1;
(2)配列番号20、23、26、及び29からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
L
CDR2;並びに
(3)配列番号21、24、27、及び30からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
L
CDR3
:を含む軽鎖可変(V
L
)領域
:を含む、構成6記載の分子。
(構成14)
前記抗原結合断片が、
(i)
(a)
(1)配列番号7のアミノ酸配列を有するV
H
CDR1;
(2)配列番号8のアミノ酸配列を有するV
H
CDR2;及び
(3)配列番号9のアミノ酸配列を有するV
H
CDR3;
:を含む重鎖可変(V
H
)領域、並びに
(b)
(1)配列番号19のアミノ酸配列を有するV
L
CDR1;
(2)配列番号20のアミノ酸配列を有するV
L
CDR2;及び
(3)配列番号21のアミノ酸配列を有するV
L
CDR3;
:を含む軽鎖可変(V
L
)領域
(ii)
(a)
(1)配列番号10のアミノ酸配列を有するV
H
CDR1;
(2)配列番号11のアミノ酸配列を有するV
H
CDR2;及び
(3)配列番号12のアミノ酸配列を有するV
H
CDR3;
:を含む重鎖可変(V
H
)領域、並びに
(b)
(1)配列番号22のアミノ酸配列を有するV
L
CDR1;
(2)配列番号23のアミノ酸配列を有するV
L
CDR2;及び
(3)配列番号24のアミノ酸配列を有するV
L
CDR3;
:を含む軽鎖可変(V
L
)領域
(iii)
(a)
(1)配列番号13のアミノ酸配列を有するV
H
CDR1;
(2)配列番号14のアミノ酸配列を有するV
H
CDR2;及び
(3)配列番号15のアミノ酸配列を有するV
H
CDR3;
:を含む重鎖可変(V
H
)領域、並びに
(b)
(1)配列番号25のアミノ酸配列を有するV
L
CDR1;
(2)配列番号26のアミノ酸配列を有するV
L
CDR2;及び
(3)配列番号27のアミノ酸配列を有するV
L
CDR3;
:を含む軽鎖可変(V
L
)領域、又は
(iv)
(a):
(1)配列番号16のアミノ酸配列を有するV
H
CDR1;
(2)配列番号17のアミノ酸配列を有するV
H
CDR2;及び
(3)配列番号18のアミノ酸配列を有するV
H
CDR3;
:を含む重鎖可変(V
H
)領域、並びに
(b):
(1)配列番号28のアミノ酸配列を有するV
L
CDR1;
(2)配列番号29のアミノ酸配列を有するV
L
CDR2;及び
(3)配列番号30のアミノ酸配列を有するV
L
CDR3
:を含む軽鎖可変(V
L
)領域
:を含む、構成13記載の分子。
(構成15)
前記V
H
領域が配列番号3のアミノ酸配列を含み、前記V
L
領域が配列番号5のアミノ酸配列を含む、構成13記載の分子。
(構成16)
BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子であって、BTN1A1に対する結合が、構成6~15のいずれか一項記載の分子のBTN1A1に対する結合を用量依存的な様式で競合的に遮断する、前記分子。
(構成17)
前記抗原結合断片が、配列番号31~41からなる群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも7個の連続するアミノ酸を有するBTN1A1のエピトープに免疫特異的に結合する、構成1記載の分子。
(構成18)
前記エピトープが配列番号34の少なくとも7個の連続するアミノ酸を含む、構成17記載の分子。
(構成19)
前記エピトープが配列番号35の少なくとも7個の連続するアミノ酸を含む、構成17記載の分子。
(構成20)
前記エピトープが配列番号40の少なくとも7個の連続するアミノ酸を含む、構成17記載の分子。
(構成21)
前記エピトープが、配列番号31~41からなる群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、又は少なくとも12個の連続するアミノ酸を含む、構成17記載の分子。
(構成22)
前記エピトープが配列番号31~41からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、構成21記載の分子。
(構成23)
BTN1A1に免疫特異的に結合する抗原結合断片を有する分子であって、BTN1A1に対する結合が、構成17~21のいずれか一項記載の分子のBTN1A1に対する結合を用量依存的な様式で競合的に遮断する、前記分子。
(構成24)
前記抗原結合断片が、1μM以下の解離定数(Kd)で、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する、構成1~23のいずれか一項記載の分子。
(構成25)
前記抗原結合断片が、100nM以下、10nM以下、又は5nM以下の解離定数(Kd)で、グリコシル化BTN1A1に免疫特異的に結合する、構成24記載の分子。
(構成26)
前記分子が抗体である、構成1~25のいずれか一項記載の分子。
(構成27)
前記抗体がモノクローナル抗体である、構成26記載の分子。
(構成28)
前記抗体がヒト抗体又はヒト化抗体である、構成26記載の分子。
(構成29)
前記抗体が、IgG、IgM、又はIgAである、構成26記載の分子。
(構成30)
前記分子が、Fab'、F(ab')2、F(ab')3、一価scFv、二価scFv、又は単一ドメイン抗体である、構成1~25のいずれか一項記載の分子。
(構成31)
前記分子が組換え産生される、構成1~30のいずれか一項記載の分子。
(構成32)
BTN1A1を発現する細胞の増殖を阻害する方法であって、該細胞を、構成1~31のいずれか一項記載の分子の有効量と接触させることを含む、前記方法。
(構成33)
前記細胞が癌細胞である、構成32記載の方法。
(構成34)
前記癌細胞が、肺癌細胞、前立腺癌細胞、膵臓癌細胞、卵巣癌細胞、肝臓癌細胞、頭頸部癌細胞、乳癌細胞、及び胃癌細胞からなる群から選択される、構成33記載の方法。
(構成35)
前記癌細胞が肺癌細胞である、構成33記載の方法。
(構成36)
前記肺癌細胞が非小細胞肺癌(NSCLC)細胞である、構成35記載の方法。
(構成37)
前記NSCLC細胞が扁平上皮NSCLC細胞である、構成36記載の方法。
【配列表】