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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】灌流デジタルサブトラクション血管造影
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20220617BHJP
【FI】
A61B6/00 331E
A61B6/00 350S
A61B6/00 350A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018532119
(86)(22)【出願日】2016-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 US2016067400
(87)【国際公開番号】W WO2017112554
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-12-11
(31)【優先権主張番号】62/270,042
(32)【優先日】2015-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(72)【発明者】
【氏名】リーベスキンド,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】スカルツォ,ファビアン
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-536062(JP,A)
【文献】特表2008-525074(JP,A)
【文献】H. Bogunovic et al.,Estimating Perfusion Using X-Ray Angiography,Image and Signal Processing and Analysis, 2005. ISPA 2005. Proceedings of the 4the International Symposium,2005年09月15日,147-150
【文献】A.A.konstas et al.,Theoretic Basis and Technical Implementations of CT Perfusion in Acute Ischemic Stroke, Part1: Theoretic Basis,American Journal of Neuroradiology,2009年04月,30(4),662-668
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14,5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルサブトラクション血管造影(DSA)画像からの血流パラメータの定量解析および可視化のための装置であって、前記装置は、
(a)X線イメージャと、
(b)コンピュータプロセッサと、
(c)非一時的コンピュータ可読媒体にあるプログラミングとを備え、前記プログラミングは前記コンピュータプロセッサによって実行可能であり、前記プログラミングは、
(i)前記X線イメージャから対象のDSA画像を取得し、
(ii)前記DSA画像から動脈入力関数の濃度時間曲線を計算し、
(iii)前記DSA画像および濃度時間曲線から灌流パラメータを抽出し、
(iv)各抽出灌流パラメータデータおよびDSA画像データのパラメトリックマップを計算し、
(v)灌流パラメータ値が値の範囲内にあることを示す色を用いて前記パラメトリックマップを色分けし、
(vi)多変数ガンマフィッティングを用いてオーバーラップする血管の個々の造影剤濃度曲線を画定し、
(vii)前記パラメトリックマップおよびDSA画像を画面表示装置に表示し、
(d)前記プログラミングによって前記DSA画像および濃度時間曲線から抽出される前記灌流パラメータは、脳血流量(CBF)、脳血液量(CBV)、平均通過時間(MTT)、ピーク到達時間(TTP)およびTmaxを備え、
(e)前記プログラミングによる脳血液量(CBV)灌流パラメータの抽出は、
(i)流入動脈血管で造影剤の総量(C を測定することと、
(ii)ターゲット箇所を通過した造影剤量( )を前記箇所でのDSA画像強度から計算することと、
(iii)関係
【数26】
を用いて脳血液量(CBV)を計算することと
を備える、装置。
【請求項2】
前記動脈入力関数の前記濃度時間曲線は、各時点での関心領域内のDSA濃度値を平均することによって計算される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記脳血流量(CBF)パラメータ抽出は、
(a)前記動脈入力関数から組織造影剤濃度をデコンボリュートして残差関数Rを生成することと、
(b)時間についての最大R値としてCBFを導出することと
を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記平均通過時間(MTT)は、前記脳血流量(CBF)によって前記脳血液量(CBV)を割ることによって計算される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
デジタルサブトラクション血管造影(DSA)画像からの血流パラメータの定量解析および可視化を行う少なくとも1つのコンピュータプロセッサによって実行されるように構成されているプログラミングを備えるコンピュータ可読非一時的媒体であって、
(a)X線イメージャから対象のDSA画像データを取得することと、
(b)前記DSA画像から動脈入力関数の濃度時間曲線を計算することと、
(c)前記DSA画像および濃度時間曲線から灌流パラメータを抽出することと、
(d)各抽出灌流パラメータデータおよびDSA画像データのパラメトリックマップを生成することと、
(e)灌流パラメータ値が値の範囲内にあることを示す色を用いて前記パラメトリックマップを色分けすることと、
(f)多変数ガンマフィッティングを用いてオーバーラップする血管の個々の造影剤濃度曲線を画定することと、
(g)前記パラメトリックマップおよびDSA画像を画面表示装置に表示することと、
を備え、
(h)前記プログラミングによって前記DSA画像および濃度時間曲線データから抽出される前記灌流パラメータは、脳血流量(CBF)、脳血液量(CBV)、平均通過時間(MTT)、ピーク到達時間(TTP)およびTmaxを備え、
(h)前記プログラミングによる脳血液量(CBV)灌流パラメータの抽出は、
(i)流入動脈血管で造影剤の総量( )を測定することと、
(ii)ターゲット箇所を通過した造影剤量( )を前記箇所でのDSA画像強度から計算することと、
(iii)関係
【数27】
を用いて脳血液量(CBV)を計算することと、を備えるコンピュータ可読非一時的媒体。
【請求項6】
前記動脈入力関数の前記濃度時間曲線は、各時点での関心領域内のDSA濃度値を平均することによって計算される、請求項5に記載のコンピュータ可読非一時的媒体。
【請求項7】
前記脳血流量(CBF)パラメータ抽出は、
(a)前記動脈入力関数から組織造影剤濃度をデコンボリュートして残差関数Rを生成することと、
(b)時間についての最大R値としてCBFを導出することと
を備える、請求項5に記載のコンピュータ可読非一時的媒体。
【請求項8】
前記平均通過時間(MTT)は、前記脳血流量(CBF)によって前記脳血液量(CBV)を割ることによって計算される、請求項5に記載のコンピュータ可読非一時的媒体。
【請求項9】
デジタルサブトラクション血管造影(DSA)画像からの血流パラメータの定量解析および可視化のためのコンピュータ実施方法であって、
(a)X線イメージャから対象のDSA画像データを取得することと、
(b)前記DSA画像から動脈入力関数の濃度時間曲線を計算することと、
(c)前記DSA画像および濃度時間曲線から灌流パラメータを抽出することと、
(d)各抽出灌流パラメータデータおよびDSA画像データのパラメトリックマップを生成することと、
(e)値の範囲内にある灌流値を示す色を用いて前記パラメトリックマップを色分けし、
(f)多変数ガンマフィッティングを用いてオーバーラップする血管の個々の造影剤濃度曲線を画定することと、
(g)前記パラメトリックマップおよびDSA画像を画面表示装置に表示することと、
を備え、
(h)前記DSA画像および濃度時間曲線データから抽出される前記灌流パラメータは、脳血流量(CBF)、脳血液量(CBV)、平均通過時間(MTT)、ピーク到達時間(TTP)およびTmaxを備え、
(h)脳血液量(CBV)パラメータの抽出は、
(i)流入動脈血管で造影剤の総量( )を測定することと、
(ii)ターゲット箇所を通過した造影剤量( )を前記箇所でのDSA画像強度から計算することと、
(iii)関係
【数28】
を用いて脳血液量(CBV)を計算することと、を備えるコンピュータ実施方法。
【請求項10】
前記動脈入力関数の前記濃度時間曲線は、各時点での関心領域内のDSA濃度値を平均することによって計算される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記脳血流量(CBF)パラメータ抽出は、
(a)前記動脈入力関数から組織造影剤濃度をデコンボリュートして残差関数Rを生成することと、
(b)時間についての最大R値としてCBFを導出することと
を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記平均通過時間(MTT)は、前記脳血流量(CBF)によって前記脳血液量(CBV)を割ることによって計算される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
多変数ガンマフィッティングを用いてオーバーラップする血管の個々の造影剤濃度曲線を画定することをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年12月21日出願の米国仮特許出願第62/270,042号の優先権および利益を主張する。本仮特許出願の全体がこの参照によって本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
適用不可
【0003】
付属コンピュータプログラムの参照による援用
適用不可
【0004】
1.技術分野
【0005】
本開示の技術は、概して診断用イメージングデバイスおよび方法に関し、特に、血管血流の可視化および定量解析向けの灌流デジタルサブトラクション血管造影のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0006】
2.議論の背景
【0007】
脳血管の内側の血流の可視化は脳血管障害の診断および処置評価に不可欠である。その発見以来、イメージング目的でのX線の応用は、動く解剖学的構造と血管内デバイスの可視化が可能になるので、医療診断および医療処置に大いに影響している。身体に照射する際、また、身体を通過することによって、X線は部分的に吸収され偏向されて、入射ビームの減衰が生じる。様々な解剖学的構造をその固有レベルの吸収により識別することができる。
【0008】
X線イメージングについての重要な出来事の1つは、血管内血流の可視化を可能にした血管造影の導入であった。血管造影図の取得は、血流に予め注入されるヨード放射線不透過造影剤のX線イメージングに依存している。血流は造影剤の高レベルの吸収により観察される。
【0009】
長年にわたって技術は改良されており、デジタルカメラの出現は技術に有用であった。この技術は、骨および軟部組織のような不要な要素を画像サブトラクションによって1セットの連続画像から除去するのを可能にするデジタルサブトラクション血管造影(digital subtraction angiography)(DSA)に至った。今日、DSAは、たとえば、脳卒中の神経血管処置中に血流を評価する主要な広く用いられているイメージング技術であり続けている。実際には、いくつかの制限がDSAの使用を妨げており、画像は定性的であり、グレイスケールで表示されて、時間的な差異を観察するために1フレームずつ閲覧する必要がある。
【0010】
DSAが高評価を得ているのは、その優れた空間時間分解能に起因する場合があるが、その分解能は他の取得技術、たとえば磁気共鳴映像法(MRI)およびコンピュータ断層撮影(CT)に容易には適合しない。狭窄、閉塞または奇形のような血管異常をDSAで高精度に可視化することができる。これに加えて、DSAは低侵襲であり、現代的な集中治療施設(ICU)の処置室で容易に利用可能である。DSAに有用な他の特徴として、コストが最小であり、低リスクであり、取得時間が短いことが挙げられる。将来、神経血管処置に際してCT血管造影(CTA)がDSAに徐々にとって代わるとの議論があるが、DSAは世界中でゴールドスタンダードであり続けている。
【0011】
過去30年にわたって、数多くの活動によって、心血管疾患および脳血管疾患の診断と処置評価との両方におけるDSAの役割が研究されている。しかし、既存の研究の大多数は、神経科医による画像列の目視での検討を基礎としているので、処置の後の再灌流(脳梗塞における血栓溶解(Thrombolysis in Cerebral Infarction)(TICI))および再疎通(動脈閉塞性病変(Arterial Occlusive Lesion)(AOL))の程度を説明する単純なスケールにまで観察は下落する。
【0012】
この二極化は依然として脳卒中界で現在行われている議論の問題である。これは、一般的な結果との相関が限定的であり、さらに、読影者間でばらつきを示す場合があるからである。人によるこれらのスコアシステムを乗り越えて、将来の臨床試験および血管内デバイスのためにより優れた評価を得ることが明らかに必要である。自動TICIおよびAOLスコアは依然として現在の方法の能力を超えているが、定量的血流評価のための自動化アルゴリズムがこの20年にわたって開発されている。これらを、臨床診療および処置評価を改善することができる有用なツールに変えることがこれまではできなかった。
【0013】
入射X線を可視画像に変換するイメージインテンシファイアテレビ(image intensifier television)(IITV)の導入は血管造影の成功に向けての要因であった。1980年代のコンピュータの現代化により、画像をデジタル的に記録することが可能になった。これは、デジタル的に拡張された画像のより柔軟な可視化を可能にするデジタルX線撮影につながった。デジタルサブトラクション血管造影(DSA)では、背景画像(造影剤の注入の前に取得される画像)を後画像から差し引くことによってデジタルX線撮影を拡張する。その目的は骨および軟部組織画像を除くことであり、骨および軟部組織画像は別のときに血管上に重ねられることになる。優れた分解能特性にもかかわらず、DSAにはいくつかの固有の欠点がある。
【0014】
第1に、DSA画像は、主要な2種類のノイズの影響を受ける。すなわち、X線分布のランダム性による量子ノイズと電子的部品に起因するノイズとである。これに加えて、画像サブトラクション操作によってすでに画像に存在するノイズが増幅される。この問題を解決するために、ノイズ低減技術を適用する必要がある。
【0015】
これによりDSAの2番目の弱点が生じる。ノイズ低減アルゴリズムは一般的にハードウェア中でコード化されており、アルゴリズムには容易にアクセスすることができないし、容易にカスタマイズすることができない。別の制限は、画像取得中に患者が動く可能性があることであり、患者の動きにより、背景画像が後フレームと揃わないと、空間ボケおよびアーチファクトが生じる。最後に、一般的に画像を生のグレイスケールフレームを用いて動画モードで表示するという事実により、DSA列からの時間的情報の可視化が困難になっている。最近になって、DSAに保持されている時間的情報を良好に可視化するために、商用システムではカラーマップを導入し始めている。
【0016】
DSAはデジタルX線撮影の技術的進化形であるが、DSAは、患者の僅かな動きであっても、その動きが存在する場合に相当な不正確さをもたらす場合もある計算層に関連している。一般的には、DSAによって用いられる内部パラメータおよびソース画像がスキャナ製造者によって利用可能になるようにはならないので、さらなる後処理は特に困難である。これらの制限要因にもかかわらず、DSAは血管内処置中に用いられるゴールドスタンダードであり続けている。
【0017】
したがって、これらの制限を克服し、DSAからの灌流および遅延パラメータの定量解析および可視化のために、灌流血管造影の計算用の計算フレームワークを導入することによってDSAを拡張するX線撮影イメージングシステムおよび方法が必要である。
【発明の概要】
【0018】
本技術は、DSA画像からの血流パラメータの定量解析および可視化のための方法論的枠組みを提供する。ピクセル1つずつに対して行う形式の時間密度曲線のデコンボリューションに基づいてボーラス追跡方法を用いて脳血流量(cerebral blood flow)(CBF)および脳血液量(cerebral blood volume)(CBV)、平均通過時間(mean transit time)(MTT)、ピーク到達時間(time-to-peak)(TTP)ならびにTmaxを含むパラメータを確実に評価することができる。本イメージングツールは、DSA列で直接観察することができない血流メカニズムに対する独特の洞察を提供し、血管内処置の灌流に対する影響を定量化するのに用いることができる。
【0019】
取得後の方法により、イメージングに基づく判断支援を実現して、たとえば、急性脳卒中の場合の血管内処置をより良好にガイドおよび迅速化することができる。神経イメージング方法により、臨床判断を行う際にガイダンスのための巨大な情報源を神経科医および神経系処置者に提供することができる。本技術は脳血管イメージングの場合について示されているが、哺乳類の身体の任意の部位をイメージングするようにイメージングシステムおよび方法を構成することができる。
【0020】
利用可能なイメージング技術のうちで、DSAは、血流を可視化し、血管内処置をガイドする選りすぐられた方法である。たとえば、バイプレーンDSAにより、生のグレイスケール動画の人による検討を通じて大部分が定性的に用いられていた高分解能空間時間的画像が提供される。色分けされた灌流パラメータはDSA画像の解釈に有用である場合があり、色分けされた灌流パラメータにより、ソース血管造影図上では直接視認できない血行力学的特徴の可視化が可能になり、なんらかのケアの遅れが生じたり、X線被曝が増加したり、造影剤の量が増加したりすることなく、洗練された判断が可能になる。
【0021】
所定の手順によるDSA(routine DSA)から定量的灌流パラメータを抽出する計算フレームワークでは、CBF、CBV、MTT、TTPおよびTmaxを導出するのにデコンボリューション技術を用いる。血管のオーバーラップを扱うのに多モードフィッティングに基づく計算的解決手段(computational solution)を用いる。これは、所定の手順で取得したDSAを用いて、CT/MR灌流技術から得られるものと同様であると考えられる灌流パラメータを導出することができることを示す。しかし、灌流DSAの解釈は、見方(nature of the view)(正面か横か)と所与の箇所内のいくつかの脳構造のオーバーラップとにより異なる。
【0022】
医療関係者は、磁気共鳴映像法/血管造影(MRI/MRA)、拡散/灌流強調MRI、コンピュータ断層撮影/断層撮影血管造影(CT/CTA)、灌流CTおよびデジタルサブトラクション血管造影(DSA)を含む患者の臨床評価に利用可能ないくつかのイメージングモダリティを有する場合がある。
【0023】
概して、これらの画像により異なる洞察が提供され、治療の異なるステップが映し出される。障害サイズ、危険状態の組織および関与する血管領域を用いて脳卒中を分類するために、処置の前に神経イメージングを用いてもよい。これにより、特別な処置戦略から最も利益を得ることができ、その潜在的リスクを上回るものを得ることができる脳卒中患者を特定することができる。好ましくは判断を行うために治療中にDSA画像を取得する。これらの繰り返し用いられるランドマークは、視覚によるスコアリングによって再灌流および再疎通の程度を評価するのに用いることができる。急性相経過後、回復を評価し、他の管理戦略、たとえば脳灌流の増大と出血による圧排効果(mass effect)の低減とをガイドするのに神経イメージングは有用である。低灌流量(hypoperfusion volume)または血管内処置中の再疎通および再灌流の程度の評価のための灌流血管造影の検証は特に健康管理提供者に有用である。
【0024】
神経イメージング洞察が求められているのは、個人毎の処置が複雑であり、脳卒中の結果が変化し易いことが発端となっている。急性虚血性脳卒中状況下の患者集団はきわめて変化に富んでおり、処置に対する多種多様な結果および反応を示す。たとえば、再疎通の程度は結果と良好に相関するが、死亡のリスクは一定のままである。これに加えて、症状の発症からの時間も平均して結果と相関するが、遅い再疎通者が早期の者よりも良好であることを観察することは珍しくない。これらの逆説的な観察は、血圧、NIH脳卒中スケール(NIHSS)や年齢などのいくつかの要因に関連し得るが、これらの個々の予測値は有望な臨床判断を支持するにはあまりにも弱い。
【0025】
また、閉塞部位を越える側副血行の存在は、再疎通が起こるまでそれによって組織生存性を維持することができるので、重要である場合がある。ただし、その存在は患者間で大幅に異なる。したがって、側副血行および組織状態に基づいて血管内処置のために慎重に患者を選択することは、処置の個別化および患者の結果の改善の鍵である。現在では、側副血行路をDSA上で評価することができるが、定量的測定を欠いていることで労力を強いられる状態が続いている。
【0026】
本技術の一態様に係れば、血管オーバーラップが存在するバイプレーンデジタルサブトラクション血管造影図(Digital Subtraction Angiogram)(DSA)から造影剤濃度時間曲線を決定することができる画像処理技術が提供される。この場合、デジタルサブトラクション血管造影(digital subtraction angiography)(DSA)から脳血流量(CBF)、脳ブロー量(Cerebral Blow Volume)(CBV)および平均通過時間(MTT)を含む様々な灌流パラメータを取得するのに、評価された時間曲線を用いることができる。
【0027】
本技術の別の態様に係れば、パラメトリックモデルを用いてデジタルサブトラクション血管造影(DSA)からの個々のオーバーラップした血管の造影剤濃度時間曲線を評価するシステムが提供される。
【0028】
本技術の別の態様は、期待値最大化を用いて評価されるガンマミクスチャモデルを提供するものである。
【0029】
本技術のさらに別の態様は、画像にわたる血液灌流の定量的記述を可能にし、数秒で血流パラメータを臨床医に提供する血管造影図取得システムに組み込まれる血管イメージングシステムおよび方法を提供するものである。
【0030】
本明細書に記載されている技術のさらに別の態様は本明細書の以下の部分で明らかにされる。詳細な説明は、本技術の好ましい実施の形態を、それに限界を持ち込むことなく、完全に開示することを目的とする。
【0031】
本明細書に記載されている技術は、例示目的に限る以下の図面を参照することでより完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本技術の一実施の形態に係る、デジタルサブトラクション血管造影(DSA)画像からの血流パラメータの定量解析および可視化のための方法の概略フロー図である。
図2A】動脈入力関数(AIF)Caに対する組織濃度時間曲線Cuである。Caとの組織曲線CuのデコンボリューションによりAIFに対する依存を取り除いて、残差関数Rを生成する。CBFがTmaxで達する最大値で抽出される(図2B)一方で、MTTはCBV/CBFとして計算される。ここで、CBVは組織曲線(Cu)の下の面積として決定される。
図2B】時間に対する組織濃度のグラフであり、CBFおよびTmaxが示されている。脳卒中患者の動脈の遅延が存在するので、残差関数はt=0で必ずしも最大にならずに、遅延(Tmax)の後に最大になる場合がある。
図3A】血管のオーバーラップを示す時間的DSA画像列である。
図3B図3Aで白丸によって示されているDSA画像列の特定箇所について示されている図3Bの造影剤濃度時間曲線の棒グラフである。濃度時間曲線で観察される2つの造影剤通過は血管のオーバーラップに起因する。EMアルゴリズムに基づく方法を適用することによって、ガンマミクスチャ表現を用いて図3Bの個々の成分(実線曲線および破線曲線によって表されている)を取得することができる。
図4A】血管内処置後のTICIスコアに対するモディファイドランキンスケール(mRS)結果の散布図である。
図4B】入院時のNIHSSに対するモディファイドランキンスケール(mRS)結果の散布図である。図4Aおよび図4Bの各患者は円によって示され、同じ値の組み合わせが観察される患者の数に比例して直径が大きくなる。
図5】急性脳卒中患者のMCA領域にわたる平均CBFに対する平均CBVを示す散布図である。赤線は線形回帰によって得られ、非常に強い相関(r=0:7361,p<10-12)を示す。
図6A】TICIスコアに対する灌流血管造影パラメータCBFを表す散布図である。特定のTICI値についての平均および標準偏差が水平線によって示されている。
図6B】mRS結果に対する灌流血管造影パラメータCBFを表す散布図である。
図6C】TICIスコアに対する灌流血管造影パラメータCBVを表す散布図である。特定のTICI値についての平均および標準偏差が水平線によって示されている。
図6D】mRS結果に対する灌流血管造影パラメータCBVを表す散布図である。
図6E】TICIスコアに対する灌流血管造影パラメータTTPを表す散布図である。特定のTICI値についての平均および標準偏差が水平線によって示されている。
図6F】mRS結果に対する灌流血管造影パラメータTTPを表す散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
特に図面を参照して、例示目的で、灌流血管造影画像の生成および定量解析のためのシステムおよび方法の実施の形態が一般化されて示されている。イメージングシステムおよび方法を例示するために、本技術のいくつかの実施の形態を一般化して図1図6Fで説明する。本明細書に開示されている基本概念を逸脱しない限りにおいて、方法を特定のステップおよびシーケンスに関して変更してもよく、システムおよび装置を構造の詳細に関して変更してもよいと解する。方法ステップは、これらのステップを行うことができる順序の単なる典型例にすぎない。所望の任意の順序でステップを行ってもよいが、その際にも請求されている技術の目的を達成するように行う。
【0034】
以下、図1に注目して、脳血管系に関して示されている灌流血管造影を行う方法10の一実施の形態のフロー図が一般化されて示されている。図1のブロック20のステップでは、対象のデジタルサブトラクション血管造影をイメージャを用いて行う。従来のDSAイメージングシステムは一般的には、コンピュータ制御部、プロセッサ、ディスプレイおよび記憶装置と統合される放射線源、たとえばX線蛍光透視装置およびディテクタを基礎とする。好ましいDSAシステムはX線イメージインテンシファイアおよび動画ディテクタをともなうパルスまたは連続放射線源を有し、通常、動画ディテクタからの初期画像信号は、処理、操作、表示および記憶のためにコンピュータのデジタル画像プロセッサに供給される。コンピュータはターゲットの照射を制御する光学絞りも制御してもよい。これにより、光学絞りは患者およびカテーテル位置決め中に広げられ、DSA蛍光透視露光および動画検出中に絞られる。
【0035】
標準的なデジタルサブトラクション血管造影(DSA)取得手順は、動脈内の選択位置にカテーテルを挿入することを含む。その後、カテーテルを通じて放射線不透過造影剤を注入し、所定時間にわたって血管のX線画像を撮る。一般的には、造影剤の注入の前後のX線検出に際して、1秒間に1~30回の露光を行い、X線検出物は送られてコンピュータソフトウェアによって処理され、記憶される。
【0036】
スキャナから取得されるデジタル化画像データにより、前造影画像を、造影剤の注入の後に得られる後画像から「差し引く」ことが可能になる。コンピュータプロセッサまたは専用ワークステーション上の後処理ソフトウェアを用いて2次元灌流画像を自動的に再構築する。これとは別に、ブロック20でスキャナから取得したDSA画像データ列を処理して、患者の動きに関係するアーチファクトを除去したり、フィルタリング、平均化や窓関数の使用を行ってノイズを低減したりするなどを行うことができる。
【0037】
その後、ブロック20で取得されたスキャナデータを処理して、さらに、ブロック30で動脈入力関数(arterial input function)の濃度時間曲線を抽出し、図1のブロック40でDSA列およびAIFから灌流パラメータを計算する。灌流パラメータの抽出および計算は後処理ソフトウェアプログラミングによって実現される。この解析のためにデジタルサブトラクション血管造影(DSA)手順を余分に行う必要はない。
【0038】
DSA画像からの動脈入力関数(C)に関する組織造影剤濃度時間曲線(C)を図2Aおよび図2Bに示されているようにブロック30でプロットする。灌流マップの計算に必要な動脈入力関数(C)の濃度時間曲線は、好ましくは、各時点での関心領域(region of interest)(ROI)内に含まれるDSA値の平均を抽出することによって取得される。Caとの組織曲線CuのデコンボリューションによりAIFに対する依存を取り除いて、残差関数R(residue function R)を生成する。関数Rはブロック40でCBFおよび他のパラメータを導出するのに用いられる。
【0039】
ブロック50でブロック40で生成される抽出灌流パラメータをマッピングしてパラメトリックマップを生成する。通常はブロック60でパラメータマップを、対応するDSA画像と並べて表示する。好ましくは、マップを色分けして、閾値を超えるか、閾値未満であるパラメータ値、または所定の値範囲内のパラメータ値を表す。その後、マップおよび画像を評価する。
【0040】
動画濃度測定理論(video densitometric theory)によってDSA画像の強度と血流との関係が確立されている。この理論基盤により、血管系に注入された造影剤を追跡することによって血液量、流動および遅延をまとめたパラメトリックマップの計算が可能になる。ブロック30およびブロック40でピクセル1つずつに対して行う形式の時間密度曲線のデコンボリューションに基づいてボーラス追跡方法を用いて脳血流量(cerebral blood flow)(CBF)および脳血液量(cerebral blood volume)(CBV)、平均通過時間(mean transit time)(MTT)、ピーク到達時間(time-to-peak)(TTP)ならびにTmaxを含むパラメータを計算する。
【0041】
ブロック40でボーラス追跡解析によってDSA列から灌流パラメータを導出するために、任意の箇所での造影剤の濃度Cが知られていなければならない。これは、画像中で観察される強度が造影剤濃度に比例する、すなわちI(t)(x,y)=kμC(t)(x,y)ρ(x,y)であるので、DSAによって評価することができる。ここで、I(t)(x,y)は時刻tでの所定のピクセル(x,y)のDSA画像強度値であり、μはX線エネルギに比例する造影剤の質量減衰係数であり、ρ(x,y)は血管内腔の厚さであり、C(x,y)は造影剤濃度であり、kはX線イメージングシステム取得および増幅を説明する定数である。
【0042】
血管らしさフィルタリングおよび閾値処理を基礎とする血管ディテクタを最初に適用するフレームワークを用いて血管の厚さ(x,)を計算することができる。その後、骸骨化(skeletization)を通じて中央線を取得する。
【0043】
最後に、垂直線分(perpendicular segment)(中央線の各点に沿って計算される)を用いて血管の縁までの距離を測定し、円筒形の空間を仮定して厚さを導出する。その後、バイキュービック補間を用いて血管内のすべての点に厚さを断面毎に適用する。
【0044】
この情報を用いることで、図1のブロック40でDSAに由来する組織状態の定量的記述を提供して灌流および遅延の程度を定量化する血行力学的指標を抽出することができる。ボーラス追跡アルゴリズムは、線源からターゲット箇所に移動するボーラスの流動およびタイミングパラメータを決定する定着した方法である。上記で計算された造影剤濃度から、画像の任意の箇所uでのCBVを、流入動脈血管(feeding arterial vessel)において測定される造影剤の総量C(すなわち、動脈入力関数(AIF))に対するその箇所を通過した造影剤量Cを計算することによって評価することができる。
【数1】
【0045】
血行再開がないと仮定すると、したがって、単一モダリティ(unimodality)の造影剤曲線を仮定すると、時間的ランドマークとして造影剤曲線のピークを用いることが一般的である。その最大値に達するのに要する時間はピーク到達時間(TTP)と呼ばれる。
【0046】
流入動脈(feeding artery)での濃度Cと目標組織での濃度Cとの時間的関係を以下のように記述することができることを示すことができる。
【数2】
ここで
【数3】
はコンボリューションの記号であり、hは造影剤が血管系を通る異なる経路をたどる場合の通過時間の分布である。通過時間は、所定の時刻tに血管系に引き続き存在する注入造影剤分の1(fraction of injected contrast agent)に関するものである。この計数量(measure)は、残差関数(t)によって記述される。
【数4】
【0047】
Rから、濃度CおよびCの関係を
【数5】
のように確立することができる。これは、所定の時刻tでのターゲット組織の造影剤濃度C(t)が、単位時間に通過する血液量(すなわち、CBF)に比例することを示す。
【0048】
濃度CおよびCをDSAによって評価することができる一方で、残差関数R(residual function R)およびCBFはより複雑な計算を必要とする。実際には、濃度曲線CおよびCは離散的な時点t∈[0,N-1]でサンプリングされる。
【数6】
これは、行列ベクトル表記で書き直すことができる。
=ΔtCBFC
ここで、
【数7】
およびCはテプリッツ行列に拡張される。
【数8】
【0049】
Rを復元する1つの手法は、特異値分解(singular value decomposition)(SVD)を用いてCAを2つの直交行列UおよびVに分解し、対角行列Wを用いることである。ここで、特異値は対角上で降順に並ぶ(C=UWV)。その際、解は以下によって与えられる。
【数9】
ここで、閾値未満の
【数10】
の成分をゼロに設定する。
【0050】
最大値(R)=1とすると、CBFは評価されたRの最大値として導出される。Tmaxはこの最大値に達する時間である。CBFが評価された後、MTTは中心血液量定理(central volume theorem)から導出することができる(MTT=CBV/CBF)。
【0051】
抽出されたパラメータのリスト(CBF、CBV、MTT、TTPおよびTmax)が図2Aおよび図2Bのグラフに示されている。動脈入力関数(AIF)に対する組織濃度時間曲線C図2Aにおいて(C)として示されている。Cとの組織曲線CのデコンボリューションによりAIFに対する依存が取り除かれ、残差関数Rが生成される。CBFがTmaxで達する最大値で抽出される一方で、MTTはCBV/CBFとして計算される。ここで、CBVは組織曲線(C)の下の面積として決定される。脳卒中患者の動脈の遅延が存在するので、残差関数はt=0で必ずしも最大にならずに、図2Bに示されているように遅延(Tmax)の後に最大になる場合がある。
【0052】
図3Aに示されているフレーム列に示されているように、血管のオーバーラップがバイプレーンDSAイメージング(biplane DSA imaging)で起こる場合があり、これは灌流パラメータの評価で最も困難な側面の1つである。血管オーバーラップを解決する1つの手段はガンマミクスチャの使用である。この問題は図3Aおよび図3Bに示されている。図中、図3Aで白丸で示されている、画像列中の選択画像箇所は2つの造影剤通過部を示し、これにより、図3Bに示されている濃度時間曲線の2つのピークが生じる。濃度時間曲線で観察される2つの造影剤通過は血管のオーバーラップに起因する。これらの2つの分布は動脈相および静脈相にそれぞれ対応する。
【0053】
上記に示されているデコンボリューション方法は単一モダリティの濃度時間曲線を仮定している。脳血管系の予め取得した3次元モデルを用いて2D射影により血管を画定することができるが、他のイメージングモダリティが必ずしも利用可能ではないので、なんら事前イメージングを用いずにバイプレーンDSAを直接処理することができることは大変興味深い。この問題を解決するために、期待値最大化(expectation-maximization)(EM)アルゴリズムを用いて画像の各点で自動的に復元される複数のガンマ分布をミックスすることによって時間に対する濃度を表す。
【0054】
ガンマ変数関数(Gamma-variate function)は、造影剤濃度をより近く近似することが示されているので、濃度時間曲線を表す最も一般的に用いられる前分布である。注入部位と脳との間の通過時間Δminが最小であると仮定することによって濃度時間曲線の評価を制限することで、フィッティングした分布の最大値(分布の変曲点でもある)を確実に制限した領域内におさめる。
【0055】
密度関数γα,βは以下のように記述される。
x-μ≧Δminの場合
【数11】
【0056】
その他の場合、α,βおよびμは、形状、スケールおよび箇所のパラメータであり、ガンマ関数Γ(α)は以下のように記述される。
【数12】
【0057】
ガンマ分布の平均はα/βである。ガンマ分布の形状は、造影剤濃度変化に直観的に関係するαパラメータによって決定される。α>1の場合、分布は釣り鐘形であり、不均一度が低い性質を示す。α<1の場合、分布は激しく歪み、激しいばらつきを示す。この柔軟性により、分布は、画像の異なる箇所で観察されるような異なる濃度時間曲線を用いて適合させるのに好適なものになる。
【0058】
所定の画像箇所で複数の造影剤通過部を撮像するために、時間に対する濃度曲線をガンマ変数分布(Gamma-variate distribution)をミックスしたものとして表す。これは、各々がそれ特有のαおよびβパラメータを有する少数のガンマ成分から分布全体が生成されると仮定している。図3Aに示されているケースでは、各成分を、現在の画像箇所にあるオーバーラップした血管の1つを通る1つの造影剤通過部とみなすことができる。
【0059】
Kがミックスしたもの中のガンマ成分の数を表し、j番目の成分のパラメータがαおよびβによって示され、現在の成分から測定濃度が得られたという事象の前確率τにj番目の成分のパラメータが関連する場合、分布全体のパラメータをΘ={α,β,τ},j=1,....,としてまとめることができる。ここで
【数13】
である。
【0060】
ミックスしたものは
【数14】
と記述され、ここで、
【数15】
はj番目の成分のガンマ変数分布である。
【0061】
ミックスしたもののパラメータΘの最適化は好ましくは最尤推定(maximum likelihood estimation)(MLE)として再現される。ここでは、パラメータセットΘのlog尤度は、離散的な時間にわたる加重和を用いた近似によって得られる。
【数16】
ここで、iは離散的な時点を表す。
【0062】
このモデルのパラメータΘは知られておらず、繰り返し最大化問題(iterative maximization problem)に関して有用な近似を提供する期待値最大化(EM)アルゴリズムを用いて評価される。Lを最大にするパラメータセットΘを評価可能にするために、EMアルゴリズムでは、観察できない行列z∈{0,1}NxKを導入して、i番目の観察xがどのガンマ成分に由来するかについて指定する。
【0063】
zが連続的であり、zがz∈{0,1}NxKであるように0~1の任意の値をとることができ、かつ各々の観察データポイントiの重みの和が1に等しい(
【数17】
)場合にソフトEM定義を用いる。
【0064】
最終的な離散的log尤度は以下になる。
【数18】
【0065】
ソフトEMではlog尤度が用いられ、EステップとMステップとの間でソフトEMが繰り返される。Eステップは現在のパラメータΘを考慮した場合のlog尤度の期待値Q(Θ,Θ)の計算を備え、
【数19】
である。ここで、
【数20】
【0066】
Mステップでは、以下の数的最適化を用いてΘに関してQ(Θ,Θ)を最大にする。
【数21】
【0067】
収束基準
【数22】
が満たされるか、繰り返しの最大数(100)に達するまで、繰り返し手順を実行する。極大を避けるために、5回繰り返す。異なる数の成分、たとえば、K∈[1,4]についてEM手順を実行することができる。数Kは、それがベイズ情報量基準(Bayesian Information Criterion)(BIC)を最小にするように選択することができる。高速収束を可能にし、極大に入り込むリスクを減らすために、手順をk平均アルゴリズムを用いて初期化する。
【0068】
図1に戻り、パラメータをブロック30およびブロック40で取得した後、ブロック50で、取得したDSA画像を、計算され抽出されたパラメータを用いて生成されるパラメトリックマップを含む灌流血管造影画像に変換する。各選択パラメータについてブロック50で生成され、DSA画像が重ねられるか、DSA画像に関連づけられるパラメトリックマップを図1のブロック60で表示することができる。
【0069】
ブロック60での表示のために、ブロック50で生成される各パラメトリックマップを正規化し色分けして可視化を容易にしてもよい。パラメトリックマップでは、予め定められたパラメータレベル向けに選択される任意の所望の色分けスキームを用いることができる。
【0070】
たとえば、赤色は大きい値を示すのに選択することができ、緑色は中間値に、青は小さい値を表すのに用いることができる。これの代わりに、マップの色分けでは、設定レベルを超えるか、設定レベル未満である特定のパラメータを表す色、または値の範囲を表す色を用いることができる。異なるパラメータの複数のパラメータマップをともに組み合わせ、DSA画像に関連づけて、同時に1つの実施の形態でいくつかのパラメータを示してもよい。
【0071】
別の実施の形態では、DSA画像パラメトリックマップの組み合わせをブロック60で並べて示す。合成したものとしてまたは並んでいるものとして検討するとき、CBF、CBVおよびTTPマップを用いて、熟練者の眼で順行性血流と側副血行路とを識別し、出血、灌流欠損、遅延および血流うっ滞などのリスクを特定するのを支援することができる。
【0072】
ここで説明されている技術は、ともに記載されている例を参照してよりよく理解することができる。これらの例は図示目的にすぎないことを意図しており、本明細書に添付される請求項で定められる、本明細書に記載されている技術の範囲を限定するようには、いかなる意味においても解釈するべきではない。
【0073】
実施例1
【0074】
灌流血管造影フレームワークおよびパラメトリックイメージング方法の動作原理の実例を説明するために、単一の大学総合脳卒中センターで評価され、かつ急性虚血性脳卒中の徴候が認められる患者からデータを収集した。合計66人の患者(中央年齢:68歳。35人の女性を含む。研究基準を満たしている。
【0075】
図1に示されている灌流血管造影フレームワークを用いて各患者のソースDSA画像を処理した。任意に選択された各時点で関心領域(ROI)内に含まれるDSA値の平均を抽出することによって、灌流マップの計算に必要な動脈入力関数(AIF)(Ca)の濃度時間曲線を取得した。この実施例では、完全に血管に含まれる楕円領域として脳内動脈(intracerebral artery)(ICA)にROIを設定した。
【0076】
生のソースDSA画像から様々なパラメータを抽出して計算する方法の能力と、ガンマフィッティングを用いた重なった造影剤濃度曲線の評価とを検証した。灌流MRIと同様に、早期到達時間および最大造影剤値に対する制限を用いて自動的にAIFを検出したり、評価したりすることができた。ただし、灌流パラメータの計算に生じ得る誤差要因を最小にするために、AIFを手動で画定した。パラメータ。
【0077】
処理後、パラメータマップCBF,CBVfull,CBV,MTT,TTP,Tmaxが利用可能であった。ここで、CBVfullは脳のサイクル全体(動脈相および静脈相を含む)にわたって計算される脳血流量であり、CBVは動脈相中のみで計算される。
【0078】
オーバーラップおよびノイズが存在する個々の造影剤濃度曲線を画定するガンマフィッティング方法の能力の評価も行い、最新のフィッティングアルゴリズム(RANSAC)との比較も行った。
【0079】
オーバーラップした造影剤濃度曲線の評価と多変数ガンマフィッティング技術を用いた個々の成分の特定とを検証するために、脳内動脈(ICA)の同じ箇所にある所定の関心領域を選択したデータセットからランダムに選択された5人の患者から平均AIF濃度曲線を計算した。
【0080】
ガウスフィルタを用いて平均濃度曲線を平滑化し、バイキュービック補間を用いて補間して1セットのN=100個の値を生成した。造影剤曲線を複製してベクトルを生成し、複製されたベクトルをシフトして1つのベクトルに統合することで、2つの類似した造影剤曲線のシミュレーションオーバーラップを生成することによってオーバーラップをシミュレートした。ほぼ完全なオーバーラップ状態からオーバーラップがない状態までの範囲に及ぶ5から100までシフト量を変更することによって1セットの統合した濃度曲線を生成した。その後、処理スキームによって、フィッティングして2つのオリジナルの造影剤曲線を取得し、しかも、統合した造影剤曲線からガンマ変数ミクスチャを用いてフィッティングおよび取得を行うことがどの程度正確にできるかを測定することを目的とした。オーバーラップ量に対する堅牢性の評価に加えて、SNRの範囲が500~5である様々なレベルのホワイトガウスノイズを信号に加えた。
【0081】
オーバーラップが55%未満である場合に、ガンマ変数フィッティングフレームワークを用いてノイズが存在するミックスしたものから2つの成分を正確に取得することができることが観察された。オーバーラップが55%を超える場合、ノイズが増加すると、正確度は激しく減少する。予測通り、このモデルでは、非常に高いレベルのノイズ(SNR<8)と高い割合のオーバーラップ(>70%)とが存在する2つの成分を正確に復元することは困難であった。
【0082】
ガンマ分布のフィッティングに対する代替方法が存在する。たとえば、離散的に定式化したものを基礎とした最小二乗フィッティングスキームが可能であるが、計算的コストが高い。より効率的な技術はランダムサンプルコンセンサス(random sample consensus)(RANSAC)方法であり、これは一般的にはコンピュータビジョンで用いられ、画像間の対応を取得して、これらを関連させる幾何学的変換行列(geometric transformation matrix)を評価する。RANSACの背景の思想は、最小セットフィッティング仮説の数を評価することである。各仮説について、セット中のすべての点との仮説の整合(alignment)に基づくロバストスコアを計算する。最高スコアの最小セット仮説を最終評価とみなす。
【0083】
機能を比較するために、合計300個のフィッティング仮説を用い、各仮説を15ポイントから形成した。ガンマ変数とRANSACモデルとの両方の正確度を決定係数、すなわちRの2乗として測定した。誤差をよりよく評価するために、誤差とオーバーラップとの各組み合わせについてプロセスを10回繰り返してRの2乗の平均(average R-squared)をレポートした。
【0084】
オーバーラップ量とノイズレベルとの4つの異なる組み合わせのフィッティング結果を得た。SNRが約10までは、オーバーラップに関係なく、RANSACにより適切な正確度で成分が復元されるが、より高いレベルのノイズが存在する際には誤差は大幅に増加する。比較として、濃度時間曲線の最大で得られるTTPの標準的な評価(多モードフィッティングを用いない)は、どの成分が最高かによってケースの半分で見当外れなものになる。
【0085】
実施例2
【0086】
方法の機能をさらに検証するために、MCA閉塞のある急性虚血性脳卒中患者について記録される、血管内血栓除去後のDSA列から構成されるデータセットに灌流血管造影方法を適用した。MCA領域にわたる所定の灌流パラメータの分布を平均し、TICIスコアに関して検討した。これが行われるように検証を定式化している。
【0087】
その際、相関および分散についての統計的測定を行った。各患者のソースDSA画像を灌流血管造影を用いて処理した。各時点での関心領域(ROI)の領域内に含まれるDSA値の平均を抽出することによって、灌流マップの計算に必要な動脈入力関数(AIF)Caの濃度時間曲線を得た。
【0088】
灌流血管造影をBIC基準を用いて実行し、最大で2つのガンマ成分から選択して動脈相と静脈相とを識別した。処理後、パラメータマップCBF、CBVfull、CBV、MTT、TTPおよびTmaxが利用可能であった。ここで、CBVfullは脳のサイクル全体(動脈相および静脈相を含む)にわたって計算される脳血流量であり、CBVは動脈相中のみで計算される。
【0089】
5つの灌流パラメータ、すなわち(CBF,CBVfull,CBV,MTT,TTP,Tmax)を評価するために、パラメータマップを、統計解析に対する入力として用いることができる定量的値xmapに変換する必要があった。その後、ROI内の値の分布のトリム平均を用いて各灌流パラメータの特徴を明らかにした。トリム平均により、5~95パーセンタイルに含まれる値の平均を計算している。
【0090】
変数のペア(TICI,mRS),(NIHSS,mRS),(CBF,TICI),(CBV,TICI),(TTP,TICI),(MTT,TICI),(Tmax,TICI),(CBF,mRS),(CBV,mRS),(TTP,mRS),(MTT,mRS),(Tmax,mRS)の間のピアソン相関も評価した。統計解析を容易にするために、定性的TICIスコア(「0」,「1」,「2a」,「2b」,「3」)を連続空間に(「0」,0),(「1」,0.25),(「2a」,0.5),(「2b」,0.75),(「3」,1)のようにマッピングしている。
【0091】
灌流血管造影フレームワークによって、データセットに含まれるDSA画像の89%(66個中59個)を完全に処理した。患者の動き、短取得時間(すなわち、DSA取得が全注入サイクルをカバーしなかった)、低画質や低時間分解能(すなわち、フレーム数が不十分)のいずれかに起因して処理に際して7つのケースで失敗した。
【0092】
モディファイドランキンスケール(modified Rankin Scale)(mRS)で見た結果の分布全体が図4Aおよび図4Bに示されている。図4Aのグラフには血管内処置終了時に評価したTICIスコアに対してmRSがプロットされている。図4Bでは、プロットはmRSと入院時のNIHSSとの関係を示す。各患者は円によって示されている。同じ値の組み合わせが観察される患者の数に比例して直径が大きくなる。
【0093】
データセットに含まれる患者の大部分(93%、59人中55人)の結果が不良(mRSが3以上)であったことが指摘された。2bのTICIスコアのmRS結果が2aよりも僅かに良好になることも観察された。しかし、3のTICIスコア(すなわち、MCA領域の完全な再灌流)に達した患者は2b患者よりも良好な結果に結びつかなかった(無駄な再疎通の現象に起因し得る)。考え得る1つの説明には、出血性変化のリスクが高いことが含まれ得る。
【0094】
予測通り、図4Bに示されているように、入院時のNIHSSはmRS結果と線形相関している(r=0:304,p<0:028)。これに加えて、低NIHSS者(すなわち、重症ではない)は結果に関して大きいばらつきをともなう。
【0095】
図5に示されているCBF値とCBV値との間の線形回帰解析により、全体的な強い相関(r=0.736,p<10-12)が明らかになった。双方の値を灌流血管造影を用いて評価し、MCA領域全体にわたって平均した。CBVはサイクルの動脈相中に計算した。これは、灌流の事前のMRおよびCT検討で示されていた予測された結果であり、原理上、ペナンブラから梗塞領域を特定するのに用いることができる。
【0096】
TICIスコアおよびMRS結果に対するCBVおよびCBF灌流血管造影マップを表す散布図が図6A図6Fに示されている。図中、各患者は円として示されている。散布図は、TICIに対するCBF(図6A)、mRSに対するCBF(図6B)、TICIに対するCBV(図6C)、mRSに対するCBV(図6D)、TICIに対するTTP(図6E)、mRSに対するTTP(図6F)を含む。
【0097】
図6AでTICIに対してプロットすると、CBFは正の相関の様相を示す(r=0:292,p<0:064)。ただし、低速流動は良好な血行再建につながる場合があり、したがって高TICIスコアにつながる場合があるので、低CBFは不良TICIスコアと必ずしも同義ではない。これにより、低CBFに関連するケースで大TICIばらつきが観察される理由を説明することができる。しかし、CBFの分解能はTICIよりも高いにもかかわらず、mRSと相関することは示されなかった(図6B)。CBVをTICIに対して検討する場合では(図6C)、弱い相関が示されている(r=0:218,p<0:170)。
【0098】
CBVとmRSとの相関の欠如の解釈は、大きい値または小さい値が異常なCBVを示す点で異なる(図6D)。高mRS値がCBV範囲に関する大きいばらつきをともなうと仮定することができるが、これはデータセットの分布が偏っているので確かめることができない。
【0099】
TTPに関するきわめて大きい遅延(図6E)が血行再建のない(TICI=0)患者についてMCA領域で測定された。他のTICIグレードについては、TTPとの相関はなかった。他のマップと同様に、TTPはmRSと相関しなかった(図6F)。灌流血管造影を用いて評価されるTICIおよびCBF/CBV間に同値性がないことは、一方の手段が他方よりも優れていることを意味せず、むしろ、これらによって情報の異なるセット、場合によっては相補的なセットが提供されることを意味する。
【0100】
その後、8人の患者に対してパラメトリックマップを計算した。各患者について、CBF、CBVfull(動静脈サイクル全体にわたって計算した)、CBV(動脈相にわたって計算した)、MTTおよびTTPを含む灌流パラメータを示した。各パラメトリックマップを正規化し、色分けして可視化を容易にしている。赤は大きい値(↑血流量はCBFについて、↑血液量はCBVについて、↑遅延はMTTおよびTTPについて)を示すのに用い、青は小さい値を表すのに用いた。
【0101】
これに加えて、灌流血管造影を行ったソースDSAが各ケースの最下列に示されている。空間に関しては、7つのフレームのサブセットを各DSA列についてサンプリングして表示した。
【0102】
灌流マップの一側面として、灌流マップが2次元であるということがある。したがって、単一の画像領域が、その領域にわたってオーバーラップする異なる解剖学的構造を表す場合がある。この制限にもかかわらず、これらのマップはDSAのオリジナルの空間分解能(データセットにおいて1024×1024)に匹敵するので、細部が提供される。1人の患者についての灌流パラメータの計算に21秒を要した。原則として、灌流パラメータの評価を並列化することができると、高速の実行時間を得ることができる。
【0103】
本技術の実施の形態は、技術および/またはアルゴリズム、式または他の計算的記述の実施の形態に係る方法およびシステムのフローチャート図を参照して説明されている場合がある。さらに、技術および/またはアルゴリズム、式または他の計算的記述の実施の形態をコンピュータプログラムプロダクトとして実施してもよい。この際、コンピュータ可読プログラムコードロジックで具体化される1つ以上のコンピュータプログラム命令を含むハードウェア、ファームウェアおよび/またはソフトウェアなどの様々な手段によって、フローチャートの各ブロックもしくはステップ、ならびにフローチャートのブロック(および/もしくはステップ)の組み合わせ、アルゴリズム、式または計算的記述を実施することができる。理解されるであろうが、汎用コンピュータもしくは専用コンピュータまたは他のプログラム可能な処理装置を限定なしに含むコンピュータにこのようなコンピュータプログラム命令をロードして、コンピュータまたは他のプログラム可能な処理装置で実行されるコンピュータプログラム命令が1つ以上のフローチャートの1つ以上のブロックで指定されている機能を実施する手段を生成するようなマシンを生成してもよい。
【0104】
したがって、指定された機能を発揮する手段の組み合わせ、指定された機能を発揮するステップの組み合わせ、および指定された機能を発揮するコンピュータプログラム命令、たとえば、コンピュータ可読プログラムコードロジック手段で具体化されるものが、フローチャートのブロック、アルゴリズム、式または計算的記述によってサポートされる。指定された機能またはステップを行う専用ハードウェアベースのコンピュータシステム、または専用ハードウェアとコンピュータ可読プログラムコードロジック手段との組み合わせによって、本明細書に記載されているフローチャート図の各ブロック、アルゴリズム、式または計算的記述およびこれらの組み合わせを実施することができることも分かる。
【0105】
さらにまた、1つ以上のフローチャートの1つ以上のブロックで指定される機能を実施する命令手段を含む製品をコンピュータ可読メモリに記憶される命令で形成するような特定の仕方で機能するようにコンピュータまたは他のプログラム可能な処理装置に指示することができるコンピュータ可読メモリに、コンピュータ可読プログラムコードロジックで具体化されるようなこれらのコンピュータプログラム命令を記憶することもしてもよい。コンピュータプログラム命令をコンピュータまたは他のプログラム可能な処理装置にロードして、動作関連ステップ列がコンピュータまたは他のプログラム可能な処理装置の上で行われるようにして、コンピュータまたは他のプログラム可能な処理装置で実行される命令が1つ以上のフローチャートの1つ以上のブロック、1つ以上のアルゴリズム、1つ以上の式または1つ以上の計算的記述で指定される機能を実施するステップを提供するようなコンピュータ実施プロセスを生成することもしてもよい。
【0106】
本明細書で用いられる用語「プログラミング(programming)」または「プログラム実行可能(program executable)」は、プロセッサによって実行して本明細書に記載されているような機能を実行することができる1つ以上の命令を指すことがさらに分かる。ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにおいて命令を具体化することができる。命令を非一時的媒体中のデバイスにローカルに記憶したり、サーバ上などにリモートに記憶したり、命令の全体または一部をローカルおよびリモートに記憶したりすることができる。リモートに記憶される命令をユーザが開始することによってデバイスにダウンロード(プッシュ)したり、1つ以上の要因に基づいて自動的にダウンロードしたりすることができる。本明細書で用いられているように、用語プロセッサ、コンピュータプロセッサ、中央処理装置(CPU)およびコンピュータが、命令を実行し、入出力インタフェースおよび/または周辺デバイスと通信することができるデバイスを示すのに同義的に用いられていることがさらに分かる。
【0107】
本明細書の記載から、本開示が請求項を含む(ただしこれに限定されない)複数の実施の形態を包含することが分かる。
【0108】
1.デジタルサブトラクション血管造影(DSA)画像からの血流パラメータの定量解析および可視化のための装置であって、前記装置は、
(a)X線イメージャと、
(b)コンピュータプロセッサと、
(c)非一時的コンピュータ可読媒体にあるプログラミングとを備え、前記プログラミングは前記コンピュータプロセッサによって実行可能であり、前記プログラミングは、
(i)前記イメージャから対象のDSA画像データを取得し、
(ii)前記DSA画像から前記動脈入力関数の濃度時間曲線を計算し、
(iii)前記DSA画像および濃度時間曲線から灌流パラメータを抽出し、
(iv)各抽出灌流パラメータデータおよびDSA画像データのパラメトリックマップを計算し、
(v)前記パラメトリックマップおよびDSA画像を画面表示装置に表示する
ように構成されている、装置。
【0109】
2.灌流パラメータ値が閾値を超えるか、閾値未満であることを示す色を用いて前記パラメトリックマップを色分けすることをさらに備える、あらゆる前述した実施の形態に記載の装置。
【0110】
3.前記動脈入力関数の前記濃度時間曲線は、各時点での関心領域内のDSA濃度値を平均することによって計算される、あらゆる前述した実施の形態に記載の装置。
【0111】
4.前記DSA画像および濃度時間曲線データから抽出される前記灌流パラメータは、脳血流量(CBF)、脳血液量(CBV)、平均通過時間(MTT)、ピーク到達時間(TTP)およびTmaxを備える、あらゆる前述した実施の形態に記載の装置。
【0112】
5.前記脳血液量(CBV)パラメータ抽出は、
(a)流入動脈血管で造影剤の総量(Ca)を測定することと、
(b)ターゲット箇所を通過した造影剤量(Cu)を前記箇所でのDSA画像強度から計算することと、
(c)関係
【数23】
を用いて脳血液量(CBV)を計算することと
を備える、あらゆる前述した実施の形態に記載の装置。
【0113】
6.前記脳血流量(CBF)パラメータ抽出は、
(a)動脈入力(C)から前記組織濃度(C)をデコンボリュートして残差関数Rを生成することと、
(b)時間についての最大R値としてCBFを導出することと
を備える、あらゆる前述した実施の形態に記載の装置。
【0114】
7.前記平均通過時間(MTT)は、前記脳血流量(CBF)によって前記脳血液量(CBF)を割ることによって計算される、あらゆる前述した実施の形態に記載の装置。
【0115】
8.多変数ガンマフィッティングを用いてオーバーラップする血管の個々の造影剤濃度曲線を画定することをさらに備える、あらゆる前述した実施の形態に記載の装置。
【0116】
9.デジタルサブトラクション血管造影(DSA)画像からの血流パラメータの定量解析および可視化を行う少なくとも1つのコンピュータプロセッサによって実行されるように構成されているプログラミングを備えるコンピュータ可読非一時的媒体であって、
(a)X線イメージャから対象のDSA画像データを取得することと、
(b)前記DSA画像から前記動脈入力関数の濃度時間曲線を計算することと、
(c)前記DSA画像および濃度時間曲線から灌流パラメータを抽出することと、
(d)各抽出灌流パラメータデータおよびDSA画像データのパラメトリックマップを計算することと、
(e)灌流パラメータ値が値の範囲内にあることを示す色を用いて前記パラメトリックマップを色分けすることと、
(f)前記パラメトリックマップおよびDSA画像を画面表示装置に表示することと
を備えるコンピュータ可読非一時的媒体。
【0117】
10.前記動脈入力関数の前記濃度時間曲線は、各時点での関心領域内のDSA濃度値を平均することによって計算される、あらゆる前述した実施の形態に記載のプログラミング。
【0118】
11.多変数ガンマフィッティングを用いてオーバーラップする血管の個々の造影剤濃度曲線を画定することをさらに備える、あらゆる前述した実施の形態に記載のプログラミング。
【0119】
12.前記DSA画像および濃度時間曲線データから抽出される前記灌流パラメータは、脳血流量(CBF)、脳血液量(CBV)、平均通過時間(MTT)、ピーク到達時間(TTP)およびTmaxを備える、あらゆる前述した実施の形態に記載のプログラミング。
【0120】
13.前記脳血液量(CBV)パラメータ抽出は、
(a)流入動脈血管で造影剤の総量(Ca)を測定することと、
(b)ターゲット箇所を通過した造影剤量(Cu)を前記箇所でのDSA画像強度から計算することと、
(c)関係
【数24】
を用いて脳血液量(CBV)を計算することと
を備える、あらゆる前述した実施の形態に記載のプログラミング。
【0121】
14.前記脳血流量(CBF)パラメータ抽出は、
(a)動脈入力(C)から前記組織濃度(C)をデコンボリュートして残差関数Rを生成することと、
(b)時間についての最大R値としてCBFを導出することと
を備える、あらゆる前述した実施の形態に記載のプログラミング。
【0122】
15.前記平均通過時間(MTT)は、前記脳血流量(CBF)によって前記脳血液量(CBF)を割ることによって計算される、あらゆる前述した実施の形態に記載のプログラミング。
【0123】
16.デジタルサブトラクション血管造影(DSA)画像からの血流パラメータの前記定量解析および可視化のためのコンピュータ実施方法であって、
(a)X線イメージャから対象のDSA画像データを取得することと、
(b)前記DSA画像から前記動脈入力関数の濃度時間曲線を計算することと、
(c)前記DSA画像および濃度時間曲線から灌流パラメータを抽出することと、
(d)各抽出灌流パラメータデータおよびDSA画像データのパラメトリックマップを計算することと、
(e)前記パラメトリックマップおよびDSA画像を画面表示装置に表示することと
を備える、コンピュータ実施方法。
【0124】
17.灌流パラメータ値が値の範囲内にあることを示す色を用いて前記パラメトリックマップを色分けすることさらに備える、あらゆる前述した実施の形態に記載の方法。
【0125】
18.前記動脈入力関数の前記濃度時間曲線は、各時点での関心領域内のDSA濃度値を平均することによって計算される、あらゆる前述した実施の形態に記載の方法。
【0126】
19.前記DSA画像および濃度時間曲線データから抽出される前記灌流パラメータは、脳血流量(CBF)、脳血液量(CBV)、平均通過時間(MTT)、ピーク到達時間(TTP)およびTmaxを備える、あらゆる前述した実施の形態に記載の方法。
【0127】
20.前記脳血液量(CBV)パラメータ抽出は、
(a)流入動脈血管で造影剤の総量(Ca)を測定することと、
(b)ターゲット箇所を通過した造影剤量(Cu)を前記箇所でのDSA画像強度から計算することと、
(c)関係
【数25】
を用いて脳血液量(CBV)を計算することと
を備える、あらゆる前述した実施の形態に記載の方法。
【0128】
21.前記脳血流量(CBF)パラメータ抽出は、
(a)動脈入力(C)から前記組織濃度(C)をデコンボリュートして残差関数Rを生成することと、
(b)時間についての最大R値としてCBFを導出することと
を備える、あらゆる前述した実施の形態に記載の方法。
【0129】
22.前記平均通過時間(MTT)は、前記脳血流量(CBF)によって前記脳血液量(CBF)を割ることによって計算される、あらゆる前述した実施の形態に記載の方法。
【0130】
23.多変数ガンマフィッティングを用いてオーバーラップする血管の個々の造影剤濃度曲線を画定することをさらに備える、あらゆる前述した実施の形態に記載の方法。
【0131】
本明細書の記載には多くの詳細が含まれるが、これらは、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきものではなく、現時点で好ましい実施形態のいくつかの例を提供したものにすぎない。したがって、本開示の範囲は、当業者に明らかになりうる他の実施形態をすべて包含することを認識されたい。
【0132】
特許請求の範囲において、要素を単数の要素として参照しているものは、特段の記載がない限り「1つおよび1つのみ」を意味しているものではなく、「1つ以上」を意味することを意図している。当業者に知られている開示された実施形態の要素と構造的、化学的および機能的に等価のものはすべて、本明細書に参照により明確に援用されたものとされ、本特許請求の範囲に包含されるものとする。さらに、本開示にない要素、構成部品または方法ステップは、その要素、構成部品または方法ステップが特許請求の範囲に明確に記載されているか否かにかかわらず、公にされるためのものであることが意図される。本願の請求項の要素は、「~するための手段」という表現を用いて明確に要素を記載していない限り、「ミーンズ・プラス・ファンクション」として解釈されるべきではない。本願の請求項の要素は、「~するためのステップ」という表現を用いて明確に要素を記載していない限り、「ステップ・プラス・ファンクション」として解釈されるべきではない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F