(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】炎症のための治療用組成物およびその治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/655 20060101AFI20220617BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220617BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220617BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220617BHJP
A61K 31/80 20060101ALI20220617BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220617BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220617BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20220617BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20220617BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220617BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220617BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220617BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220617BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220617BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220617BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220617BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220617BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220617BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220617BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
A61K31/655
A61P17/00
A61P27/02
A61P29/00
A61K31/80
A61P43/00 111
A61P17/06
A61P17/04
A61P17/10
A61P37/02
A61P31/00
A61K47/02
A61K47/32
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/38
A61K47/12
A61P31/04
A61K9/06
(21)【出願番号】P 2018545583
(86)(22)【出願日】2017-03-02
(86)【国際出願番号】 US2017020426
(87)【国際公開番号】W WO2017151905
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-19
(32)【優先日】2016-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513146114
【氏名又は名称】ノヴァン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】スタスコ,ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】ドクシー,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】マクヘイル,キンバリー
(72)【発明者】
【氏名】ホレンバック,スタンリー・ジェイ
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/21382(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/134502(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/138073(WO,A1)
【文献】特表2015-509982(JP,A)
【文献】国際公開第2011/022652(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0171395(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0113409(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において皮膚、粘膜、および/または眼の炎症状態を治療するための一酸化窒素放出性医薬組成物であって、前記一酸化窒素放出性医薬組成物は、前記対象の皮膚、粘膜、および/または眼に局所的に投与されるためのものであって、前記一酸化窒素放出性医薬組成物は、ジアゼニウムジオレート官能基を含む少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物を前記皮膚、粘膜、および/または眼の炎症状態を治療するのに有効な量で含み、
前記一酸化窒素放出性医薬組成物は、第1の組成物と第2の組成物とを混合して含み、
前記第1の組成物は、軟膏の形態である疎水性組成物であるとともに、前記第1の組成物は、疎水性基剤と前記少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物を含み、
前記疎水性基剤は、前記第1の組成物において約50重量%から約95重量%の量で存在し、
前記疎水性基剤は、天然および/または合成の脂肪、天然および/または合成のワックス、および/または天然および/または合成の油であり、
前記第2の組成物は、緩衝剤を含むヒドロゲルであり、
前記緩衝剤は酢酸および酢酸塩を含み、
前記一酸化窒素放出性医薬組成物は、投与されて約1時間後に、in vitroで測定して、4から6.5の範囲のpHを有する、一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項2】
前記一酸化窒素放出性化合物が、NO放出性の共縮合シリカ粒子を含む、請求項1に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項3】
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、前記対象の皮膚、粘膜、および/または目において炎症細胞を減少させるのに有効な量で局所的に投与されるものである、請求項1又は2に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項4】
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、TNFα、IL-1、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-17、IL-17a、IL-17f、IL-22、IL-23、IL-12/IL-23p40、KC/Gro、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインを調節および/または阻害するのに有効な量で局所的に投与されるものである、請求項1から3のいずれか1項に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項5】
前記炎症状態が、前記対象の前記皮膚、粘膜、および/または眼における感染症である、請求項1から4のいずれか1項に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項6】
前記一酸化窒素放出性医薬組成物の局所投与によって、一酸化窒素の投与による全身性の作用が生じない、請求項1から5のいずれか1項に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項7】
前記ジアゼニウムジオラート官能基を含む少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物が、前記一酸化窒素放出性医薬組成物の約0.1重量%~約30重量%の量で前記一酸化窒素放出性医薬組成物中に存在する、請求項1から6のいずれか1項に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項8】
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、in vitroで測定して、約7未満のpHを有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項9】
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、投与されて約24時間後に、in vitroで測定して、4から6.5の範囲のpHを有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項10】
投与されて約1時間後のpHと投与されて約24時間後のpHの差が、±0.2未満である、請求項1から9のいずれか1項に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項11】
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、投与されて約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日後に、細菌数の少なくとも2対数減少を提供するのに十分な量で投与されるものである、請求項1から10のいずれか1項に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項12】
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、1日1回で又は1日2回で投与されるものである、請求項1から11のいずれか1項に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項13】
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、第1の組成物と第2の組成物とを混合して含み、
前記第1の組成物が、
前記ジアゼニウムジオレート官能基を含む少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物と、
前記第1の組成物の約50重量%~約95重量%の量の疎水性基剤と、
前記第1の組成物の約1重量%~約20重量%の量の両親媒性化合物と、
前記第1の組成物の約1重量%~約20重量%の量のケイ素含有化合物と
を含み、
前記第2の組成物が、
前記第2の組成物の約50重量%~約95重量%の量の水と、
前記第2の組成物の約1重量%~約20重量%の量の緩衝剤と、
前記第2の組成物の約0.5重量%~約5重量%の量のポリマーと、
前記第2の組成物の約1重量%~約20重量%の量の多価アルコールと
を含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項14】
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、in vitro放出により測定して、投与されて1時間後に、前記一酸化窒素放出性医薬組成物1mg当たり少なくとも約100nmolのNOを放出するものである、請求項1から13のいずれか1項に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項15】
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、in vitro放出により測定して、投与されて約1分~約20分後に、前記一酸化窒素放出性医薬組成物1mg当たり少なくとも約1200pmolのNOのNO放出の最大濃度(Cmax)を有するものである、請求項1から14のいずれか1項に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項16】
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、2種以上の活性医薬成分を含む、請求項1から15のいずれか1項に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項17】
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、前記対象の皮膚、粘膜、および/または眼の内皮細胞に一酸化窒素を送達するように構成および/または製剤化されている、請求項1から16のいずれか1項に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【請求項18】
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、前記対象においてIL-17A、IL-17F、および/またはIL-1βの量を低減させるのに有効な量で局所的に投与されるものである、請求項1から17のいずれか1項に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の情報]
本出願は、それぞれの開示が引用によりその全体が本明細書の一部をなすものとする、2016年3月2日に出願された米国特許仮出願第62/302,495号、2016年3月4日に出願された米国特許仮出願第62/303,777号、2016年11月15日に出願された米国特許仮出願第62/422,294号、および2017年1月4日に出願された米国特許仮出願第62/442,184号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、炎症性皮膚状態などの炎症を治療するための組成物および方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
数多くの皮膚疾患または障害は、様々な炎症細胞および常在細胞から伝達物質が関連して放出されることによる炎症に起因する。炎症伝達物質の著しい放出および数多くのフリーラジカルの発生をもたらす炎症応答は、好中球、肥満細胞およびリンパ球によって、統制(orchestrate)されている。炎症が重要な構成要素である皮膚疾患には、これらに限定されないが、なかでも、ざ瘡、酒さ、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、薬疹、乾癬、脂漏性皮膚炎、結合組織疾患(例えば、狼瘡および強皮症)、水疱形成疾患(例えば、水疱性類天疱瘡および天疱瘡)といったその他の自己免疫障害、色素性疾患(例えば、炎症後色素沈着過度、肝斑および白斑)、蕁麻疹または蕁麻疹性丘疹、体部白癬または手指もしくは足指爪の真菌感染症といった皮膚感染症を伴う炎症が含まれる。炎症は、これらの疾患の大部分にとって重要なステップである。炎症性皮膚状態を治療するための新しい組成物、ならびにこのような組成物の製造方法および/または使用方法が望ましいであろう。
【0004】
例えば、乾癬を治療する際に、治療への漸増アプローチが実施される。局所コルチコステロイドは、通常、疾患状態が解決されるまで含量の漸増を伴う一次治療であるか、または、疾患の治療においてコルチコステロイドの含量が有効でない場合には、生物学的製剤を使用することができる。このような漸増治療戦略は、コルチコステロイドの長期にわたる副作用と、がんの一部の形態などの生物学的製剤に関する重度の副作用の可能性のために実施される。コルチコステロイドおよび現在の生物学的製剤の副作用を起こすことなく乾癬の炎症を治療した療法が、本疾患の治療において有益であり得る。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様には、対象において皮膚、粘膜、および/または眼の炎症状態を治療する方法が含まれ、方法には、皮膚、粘膜、および/または眼の前記炎症状態を治療するのに有効な量でジアゼニウムジオレート官能基を含む少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物を含む一酸化窒素放出性医薬組成物を、前記対象の皮膚、粘膜、および/または眼に局所的に投与することが含まれる。
【0006】
本発明の別の態様には、炎症を治療するための組成物が含まれ、組成物は一酸化窒素放出性の活性医薬成分を含む。
【0007】
本発明のさらなる一態様には、第1の組成物を第2の組成物と混合されて含む一酸化窒素放出性医薬組成物が含まれ、ここで、第1の組成物は、ジアゼニウムジオレート官能基を含む少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物と、第1の組成物の約50重量%~約95重量%の量の疎水性基剤と、第1の組成物の約1重量%~約20重量%の量の両親媒性化合物と、第1の組成物の約1重量%~約20重量%の量の乳化剤とを含み、第2の組成物は、第2の組成物の約50重量%~約約95重量%の量の水と、第2の組成物の約1重量%~約20重量%の量の緩衝剤と、第2の組成物の約0.5重量%~約5重量%の量のポリマーと、第2の組成物の約1重量%~約20重量%の量の多価アルコールとを含む。
【0008】
本発明の別の態様には、第1の組成物を第2の組成物と混合されて含む一酸化窒素放出性医薬組成物が含まれ、ここで、第1の組成物は、ジアゼニウムジオレート官能基を含む少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物と、第1の組成物の約50重量%~約95重量%の量の疎水性基剤と、第1の組成物の約1重量%~約20重量%の量の両親媒性化合物と、第1の組成物の約1重量%~約20重量%の量のケイ素含有化合物を含みと、第2の組成物は、第2の組成物の約50重量%~約約95重量%の量の水と、第2の組成物の約1重量%~約20重量%の量の緩衝剤と、第2の組成物の約0.5重量%~約5重量%の量のポリマーと、第2の組成物の約1重量%~約20重量%の量の多価アルコールとを含む。
【0009】
本発明のさらなる一態様には、組成物であってジアゼニウムジオレート官能基を含む少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物と、組成物の約50重量%~約95重量%の量の疎水性基剤と、組成物の約1重量%~約20重量%の量の両親媒性化合物と、組成物の約1重量%~約20重量%の量の乳化剤とを含む組成物が含まれる。
【0010】
本発明の別の態様には、ジアゼニウムジオレート官能基を含む少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物と、組成物の約50重量%~約95重量%の量の疎水性基剤と、組成物の約1重量%~約20重量%の量の両親媒性化合物と、組成物の約1重量%~約20重量%の量のケイ素含有化合物とを含む組成物が含まれる。
【0011】
本発明の別のさらなる一態様には、組成物の約50重量%~約95重量%の量の水と、組成物の約1重量%~約20重量%の量の緩衝剤と、組成物の約0.5重量%~約5重量%の量のポリマーと、組成物の約1重量%~約20重量%の量の多価アルコールを含む組成物が含まれる。
【0012】
次に、本発明の前記のおよびその他の態様を、本明細書に記載の他の実施形態に関連して、より詳細に説明する。本発明は様々な形態で具体化することが可能であり、ここに記述の実施形態に限定解釈されるものではないことを認識されたい。むしろ、これらの実施形態は、本開示を徹底的ならびに完全なものにして、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために提示されるものである。
【0013】
以下の図面は、本発明の概念の種々の態様を例示するために提示されており、本明細書において明示されていない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一部の実施形態に係る2種類のNitricil(商標)のNVN1軟膏およびNVN4軟膏について、生理的条件下の放出プロファイルのグラフを示す図である。
【
図2】本発明の一部の実施形態に係る軟膏の5.5kg規模の製造に関する工程系統図である。
【
図3】創傷上皮再形成に対する一酸化窒素放出性Nitricil(商標)のNVN1軟膏の効果に関するグラフを示す図である。
【
図4】0.1%および0.5%Nitricil(商標)のNVN1、媒体ならびにテガダームで処置した創傷における、qPCTによって測定した、創傷組織におけるIL-8の発現レベルのグラフを示す図である。
【
図5】上皮下混合性白血球浸潤の存在および量によって評価した白血球浸潤のグラフを示す図である。
【
図6】試験した種々の被験物質について、炎症の阻害率のグラフを示す図である。
【
図7】Nitricil軟膏、媒体、およびデキサメタゾンに対するIL-12/IL23p40、IL-1βおよびIL-6の各サイトカインの濃度のグラフを示す図である。
【
図8】局所処置後のAD特異的MRSA数のグラフを示す図である。
【
図9】PHO-048ヒドロゲルを含む0.8%、2%、および8%Nitricil(商標)のNVN4軟膏に対する累積NO放出のグラフを示す図である。
【
図10】PHO-048ヒドロゲルを含む0.8%、2%、および8%Nitricil(商標)のNVN4軟膏に対する瞬時NO放出のグラフを示す図である。
【
図11】それぞれが軟膏をヒドロゲルと混合して含んだNitricil(商標)のNVN4クリームの局所適用後の阻害率のグラフを示す図である。
【
図12】非処置、イミキモドクリーム適用(疾患の誘導)、媒体処置(すなわち、プラセボ混合組成物)、または2%Nitricil(商標)のNVN1混合組成物(すなわち、2%SB414クリーム)を受けた各群について、IL-17Aの量を示すグラフの図である。
*p<0.05、対IMQ単独。
【
図13】非処置、イミキモドクリーム適用(疾患の誘導)、媒体処置(すなわち、プラセボ混合組成物)、または2%Nitricil(商標)のNVN1混合組成物(すなわち、2%SB414クリーム)を受けた各群について、IL-17Fの量を示すグラフの図である。
*p<0.05、対IMQ単独。
【
図14】非処置、イミキモドクリーム適用、媒体処置(すなわち、プラセボ混合組成物)、または2%Nitricil(商標)のNVN1混合組成物(すなわち、2%SB414クリーム)を受けた各群について、IL-1βの量を示すグラフの図である。
*p<0.05、対IMQ単独。
【
図15】3つの異なる混合物について経時的な瞬時NO放出のグラフを示す図である。
【
図16】3つの異なる混合物について累積NO放出のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明をより詳しく説明する。しかし、本発明は様々な形態で具体化することが可能であり、ここに記述の実施形態に限定解釈されるものではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示を徹底的ならびに完全なものにして、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために提示されるものである。
【0016】
本明細書において本発明の説明に使用する専門用語は、特定の実施形態のみを説明することを目的としたものであり、本発明の限定を意図したものではない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」には、文脈によりそうでないことが明確に示されていない限り、複数形も同様に含まれるものとする。
【0017】
別途定義されない限り、本明細書において使用するすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、一般に使用される辞書で定義されているものなどの用語は、本出願の文脈および関連技術におけるそれらの意味と合致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書において明示的にそのように定義しない限り、理想化されたまたは過度に形式張った意味合いで解釈されるべきではないということは理解されよう。本明細書において本発明の説明に使用する専門用語は、特定の実施形態のみを説明することを目的としたものであり、本発明の限定を意図したものではない。本明細書において記述する刊行物、特許出願、特許およびその他の参考文献はすべて、引用によりその全体が組み込まれる。専門用語に矛盾がある場合には、本明細書が支配する。
【0018】
さらに、本明細書で使用する場合、「および/または」は、関連する列挙された項目のうち1つまたは複数のありとあらゆる可能な組合せを指しかつ包含し、加えて択一的に(「または」で)解釈される場合の組合せを含まない。
【0019】
文脈によりそうでないことが示されていない限り、本明細書に記載の本発明の種々の特徴は任意の組合せで使用できるということが明確に意図されている。さらに、本発明は、本発明の一部の実施形態においては、本明細書に記載する任意の特徴または複数の特徴の組合せを除外または省略できることも企図している。例示すると、本明細書に、ある複合体は成分A、BおよびCを含むと書かれている場合、A、BもしくはCのいずれか、またはこれらの組合せを省略および放棄することができるということが明確に意図されている。
【0020】
本明細書で使用する場合、移行句「から本質的になる」(および文法的な変化形)は、記載の材料またはステップ「および、請求項に係る発明の基本的な新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない材料またはステップ」を包含すると解釈されたい。In re Herz,537F.2d 549,551-52,190 U.S.P.Q.461,463(CCPA 1976)(強調は原文のまま)を参照のこと。またMPEP§2111.03も参照のこと。したがって、用語「から本質的になる」は、本明細書で使用する場合、「を含む」と同等であると解釈されるべきではない。
【0021】
用語「約」とは、量または濃度等といった測定可能な値に言及する際に本明細書で使用する場合、特定された値だけでなく、特定された値の±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらには±0.1%の変動値を包含することを意味する。例えば、Xは測定可能な値である場合、「約X」とは、Xに加えて、Xの±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらには±0.1%の変動値を含むことを意味する。測定可能な値について本明細書に提示の範囲には、その範囲内のその他の任意の範囲および/または個々の値が含まれ得る。
【0022】
本発明の一部の実施形態に従い、対象において炎症を治療するのに有用とし得る組成物が提供される。さらに、対象において炎症を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、本発明の組成物および/または方法によって、対象において皮膚、粘膜、および/または眼の炎症状態を治療することができる。一部の実施形態では、本発明の組成物および/または方法によって、対象の皮膚、粘膜、および/または眼における炎症を減少させることができる。本発明の組成物は、本明細書に記載の一酸化窒素(NO)放出性の活性医薬成分を含む、これから本質的になる、またはこれからなることができる。本発明の方法は、本明細書に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物を、対象の皮膚、粘膜、および/または眼に適用して、例えば、これらに限定されないが、対象の皮膚、粘膜、および/または眼における炎症を減少させることによって、対象において皮膚、粘膜、および/または眼の炎症状態を治療することを含む、これから本質的になる、またはこれからなることができる。一部の実施形態では、本発明の方法を、一酸化窒素放出性医薬組成物の投与(例えば局所投与)によって、一酸化窒素の投与による全身性の作用が生じない、というような方法で実施することができる。一部の実施形態では、本発明の組成物は、対象への投与に際して、一酸化窒素の投与による全身性の作用が生じない。一部の実施形態では、本発明の組成物を、その内容が引用によりその全体が本明細書の一部をなすものとする、国際特許出願第PCT/US2014/050345および/または国際特許出願第PCT/US2015/013043に記載の組成物とすることができる。本発明の組成物は、約7未満のpHを有することができる。一部の実施形態では、本発明の組成物は約4~約7の範囲のpHを有することができる。
【0023】
炎症を伴うあらゆる状態、および、局所的に治療してかかる炎症を減少または低減させることができるあらゆる状態を本発明の方法で治療することができる。炎症状態の例には、これらに限定されないが、ざ瘡様発疹、円形脱毛症、自己炎症症候群、慢性的な水疱の皮膚状態、粘膜の状態、皮膚付属器の状態、皮下脂肪の状態、結合組織疾患、皮膚の線維および弾性組織の異常、皮膚の先天性異常、皮膚および皮下の成長、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、湿疹、膿疱性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、ヒト色素沈着の障害、薬疹、内分泌関連の皮膚状態、好酸球性皮膚状態、表皮母斑、新生物、嚢胞、紅斑、遺伝性皮膚疾患、感染症関連の皮膚状態、細菌関連の皮膚状態、ミコバクテリア関連の皮膚状態、真菌症関連皮膚状態、寄生虫感染症、皮膚の刺傷および咬創、ウイルス関連の皮膚状態、苔癬様皮疹、リンパ系関連の皮膚状態、メラノサイト性母斑および新生物、黒色腫、単球およびマクロファージ関連の皮膚状態、ムチン沈着症、神経皮膚性状態、非感染性免疫不全関連の皮膚状態、丘疹鱗屑過角化性(papulosquamous hyperkeratotic)皮膚状態、掌蹠角皮症、妊娠関連の皮膚状態、掻痒肌状態、乾癬、反応性好中球性皮膚状態、難治性掌蹠皮疹(recalcitrant palmoplantar eruption)、代謝の異常に起因する皮膚の状態、物理的要因に起因する皮膚の状態、電離放射線誘導による皮膚の状態、蕁麻疹および血管性浮腫、白斑、ならびに/または血管関連の皮膚状態が含まれる。一部の実施形態では、炎症状態とは炎症性皮膚状態である。一部の実施形態では、炎症状態とは自己免疫炎症性皮膚状態(すなわち、自己免疫疾患または障害に起因する、および/または、これに関連した炎症性皮膚状態)である。一部の実施形態では、炎症状態とは乾癬および/またはアトピー性皮膚炎である。一部の実施形態では、本発明の組成物を、少なくとも2種(例えば、2、3、4、または5種以上)の炎症状態(例えば、乾癬および/またはアトピー性皮膚炎)に適しているとすることができ、これら向けに製剤化することができ、および/またはこれらを治療するために使用することができる。
【0024】
一部の実施形態では、本発明の方法には、ざ瘡を治療することが含まれ得る。対象の皮膚において炎症を減少させることにより、本発明の方法に従い対象においてざ瘡を治療することができる。したがって、一部の実施形態では、本発明の方法には、対象においてざ瘡を治療することが含まれ得るが、本発明の方法には、本明細書に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物を対象の皮膚に局所的に適用して、その結果、対象においてざ瘡を治療することが含まれ得る。
【0025】
炎症状態は、対象の皮膚、粘膜、および/または眼における創傷および/または感染症に起因し得る。したがって、一部の実施形態では、本発明の方法には、対象の皮膚、粘膜、および/または目における創傷および/または感染症を治療することが含まれ得るが、本発明の方法には、本明細書に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物を対象の皮膚、粘膜、および/または目に局所的に適用して、その結果、対象において創傷および/または感染症を治療することが含まれる。
【0026】
一部の実施形態では、例えば、炎症状態を治療する方法および/または炎症を減少させる方法などの本発明の方法には、窒素酸化物放出性医薬組成物を直接的および/または間接的に対象の皮膚、粘膜、および/または眼の上に適用することが含まれ得る。組成物を「直接的に」適用するとは、一酸化窒素源を含む組成物と皮膚、粘膜、および/または眼との間に障害または介在要素が存在しないように、皮膚、粘膜、および/または眼の表面上に組成物を適用することを指す。組成物を「間接的に」適用するとは、布、包帯、膜などの基材を介して、または別の医薬、粉体、軟膏等の上部に、一酸化窒素源を適用することを指す。
【0027】
抗炎症剤としての一酸化窒素放出性化合物に関連する作用のメカニズムに関するいかなる特定の理論に制限されることを望むものではないが、一酸化窒素は、急性および/または慢性炎症において抗炎症効果を有する可能性がある。一部の実施形態によれば、本発明の方法によって、対象において急性および/または慢性炎症応答を生じる際に関与する経路および/またはシグナル伝達系における、1つまたは複数の成分の活性(例えば、酵素、転写因子、サイトカイン、ケモカイン、第2メッセンジャー、受容体、細胞、接着分子等)を調節して、その結果、対象において炎症を減少させることができる。例えば、本発明の方法によって、対象において炎症応答を生じる際に関与する1つまたは複数の成分の量を調節して、その結果、対象において炎症を減少させることができる。あるいはまたはそれに加えて、本発明の方法によって、例えば、これらに限定されないが、1つまたは複数の成分の活性化を阻害または開始することにより、対象において炎症応答を生じる際に関与する1つまたは複数の成分の活性を調節して、対象において炎症を減少させることができる。一部の実施形態では、本発明の方法によって、例えば、これらに限定されないが、別の成分との結合を阻害または開始することにより、対象において炎症応答を生じる際に関与する別の成分との、成分相互作用(例えば、結合、シグナル伝達等)を調節して、対象において炎症を減少させることができる。一部の実施形態では、本発明の方法によって、成分のリン酸化、例えば、これらに限定されないが、転写因子のリン酸化を調節して、対象において炎症を減少させることができる。
【0028】
「調節する」、「調節すること」およびこれらの文法的変化形は、本明細書で使用する場合、本発明の方法が無い場合の成分の活性と比較した(例えば、本発明の方法の前の成分の活性、例えば、本発明の組成物を対象に投与する前などの)、対象において急性および/または慢性炎症応答を生じる際に関与する成分の活性の、増減を指す。本明細書で使用する場合、用語「増加させる(increase)」、「増加させる(increases)」、「増加した」、「増加させること」および同様の用語(例えば、上方制御する)は、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、またはそれを超える活性の上昇を示す。本明細書で使用する場合、用語「低減させる(reduce)」、「低減させる(reduces)」、「低減した」、「低減させること」および同様の用語(例えば、下方制御する、阻害する等)は、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、またはそれを超える活性の減少を指す。
【0029】
一部の実施形態では、本発明の方法によって、転写因子が調節される。転写因子の例には、これらに限定されないが、核内因子-カッパB(NF-kB)、アクチベータータンパク質1(AP-1)、活性化T細胞核内因子(NF-AT)、シグナル伝達性転写因子(STAT)、およびそれらの任意の組合せが含まれる。一部の実施形態では、本発明の方法によって、NF-kBが調節される。炎症部位に送達された一酸化窒素は、NF-kb媒介性炎症を妨害して、皮膚、粘膜、および/または目における炎症応答を調節することができる。例えば、本発明の実施形態に係る方法には、NF-kBのリン酸化および/もしくは分解、NF-kBの核への転移、プロモーター領域へのNF-kB結合、ならびに/またはNF-kBによって産生されおよび/もしくは活性化されるサイトカインの転写、の内の1つまたは複数を低減させるおよび/または阻害するのに有効な量で一酸化窒素放出性医薬組成物を局所的に投与することが含まれ得る。一部の実施形態では、本発明の方法には、対象の皮膚、粘膜、および/または眼におけるNK-kBおよび/またはNK-kB活性を下方制御および/または阻害するのに有効な量で一酸化窒素放出性医薬組成物を局所的に投与して、その結果、対象において、炎症状態を、例えば、これらに限定されないが、乾癬、ざ瘡、アトピー性皮膚炎、感染症等を治療することが含まれる。一部の実施形態では、本発明の方法によって、対象の皮膚、粘膜、および/または眼におけるNK-kB媒介性炎症を妨害して、その結果、対象の皮膚、粘膜、および/または眼における炎症を減少させることができる。
【0030】
一部の実施形態では、本発明の方法によって、サイトカインを調節することができる。サイトカインの例には、これらに限定されないが、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン-1(IL-1)、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-17、IL-17a、IL-17f、IL-22、IL-23、IL-12/IL-23p40、KC/Gro、およびそれらの任意の組合せが含まれる。本発明の方法によって、本発明の方法が無い場合での対象に存在するサイトカインの量と比較して、対象に存在するサイトカイン(例えば、炎症誘発性サイトカイン)の量を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または100%調節する(増加させるまたは減少させる)ことができる。一部の実施形態では、本発明の方法によって、サイトカインの活性化が阻害され、および/または、サイトカイン(例えば、炎症誘発性サイトカイン)の産生が低減される(例えば、下方制御される)。一部の実施形態では、本発明の方法により、サイトカインが活性化され、および/またはサイトカインの産生が増加される(例えば、上方制御される)。一部の実施形態では、本発明の方法によって、皮膚において局所的にサイトカイン(例えば、炎症誘発性サイトカイン)の活性化、産生および/もしくは伝播を妨害することができ、および/または場合により、一酸化窒素の投与による全身性の作用が生じることなく、炎症および/または炎症性皮膚疾患(例えば、乾癬)を治療することができる
【0031】
一部の実施形態では、本発明の方法には、IL-12および/またはIL-23の産生を調節するのに十分な量で一酸化窒素放出性医薬組成物を局所的に適用することが含まれ、および/または本発明の方法を、対象において炎症および/または炎症性皮膚状態(例えば、乾癬)を治療するために使用することができる。あるいはまたはそれに加えて、本発明の実施形態に係る一酸化窒素放出性化合物の局所適用によって、TNF-α、IL-1α、IL-1β、IL-4、IL-8および/またはIL-10の活性化および/または産生を調節することができる。
【0032】
一部の実施形態では、本発明の方法には、IL-17A、IL-17F、および/またはIL-1βの産生を調節するのに十分な量で一酸化窒素放出性医薬組成物を局所適用することが含まれ、および/または、本発明の方法を、対象において炎症および/または炎症性皮膚状態(例えば、乾癬)を治療するために使用することができる。一部の実施形態では、本発明の方法によって、IL-17A、IL-17F、および/またはIL-1βの活性化が阻害され、および/またはIL-17A、IL-17F、および/またはIL-1βの産生が低減される(下方制御される)。本発明の方法によって、本発明が無い場合での対象において、活性化された、産生された、および/または存在するIL-17A、IL-17F、および/またはIL-1βの量と比較して、少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれより多く、対象のIL-17A、IL-17F、および/またはIL-1βの量を低減させる(例えば、これらの活性化を阻害する、および/または産生を低減させる)ことができる。一部の実施形態では、本発明の方法によって、対象の皮膚において局所的にIL-17A、IL-17F、および/またはIL-1βの活性化、産生および/または伝播を妨害することができ、および/または一酸化窒素の投与による全身性の作用が生じることなく、炎症および/または炎症性皮膚疾患(例えば、乾癬)を治療することができる。
【0033】
一部の実施形態では、本発明の方法には、IL-23/IL-17軸の攪乱に関連する炎症誘発性サイトカインを調節する(例えば、減少させる)のに十分な量で一酸化窒素放出性医薬組成物を局所適用することが含まれ得る。
【0034】
一部の実施形態では、本発明の方法によって、サイトカイン誘発性炎症のプロセスおよび/もしくはメカニズムに関連する炎症ならびに/またはそれに起因する炎症を減少させることができる。一部の実施形態では、本発明の方法には、対象において炎症応答を生じおよび/または活性化する際にTNFαの活性を阻害および/または下方制御するのに有効な量で一酸化窒素放出性医薬組成物を局所的に投与して、その結果、対象において、炎症状態、例えば、これらに限定されないが、乾癬、アトピー性皮膚炎、ざ瘡、感染症等を治療することが含まれ得る。一部の実施形態では、本発明の方法には、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7またはそれより多く)の炎症性サイトカインを阻害し、下方制御し、および/または減少させるのに有効な量で一酸化窒素放出性医薬組成物を局所的に投与することが含まれ得る。一部の実施形態では、本発明の方法には、TNFα、IL-1、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-17、IL-17a、IL-17f、IL-22、IL-23、IL-12/IL-23p40、KC/Gro、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7またはそれより多く)のサイトカインを阻害し、下方制御し、および/または減少させるのに有効な量で一酸化窒素放出性医薬組成物を局所的に投与して、その結果、対象において炎症状態を、例えば、これらに限定されないが、乾癬、アトピー性皮膚炎、ざ瘡、感染症等を治療することが含まれ得る。一部の実施形態によれば、本発明の方法によって、IL-12/IL-23p40、IL-1β、IL-2、KC/Gro、およびIL-6のうちの少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4または5)を阻害し、下方制御し、および/または減少させて、その結果、対象において炎症状態を、例えば、これらに限定されないが、乾癬、アトピー性皮膚炎、ざ瘡、感染症等を治療することができる。一部の実施形態では、本発明の方法によって、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-17、IL-17a、IL-17f、およびTNFαのうちの少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4または5)を阻害し、下方制御し、および/または減少させて、その結果、対象において炎症状態を、例えば、これらに限定されないが、乾癬、アトピー性皮膚炎、ざ瘡、感染症等を治療することができる。
【0035】
一部の実施形態では、本発明の方法によって、ケモカインを調節して、その結果、対象の皮膚、粘膜、および/または眼における炎症を減少させることができる。例えば、一部の実施形態では、本発明の方法によって、対象の皮膚、粘膜、および/または眼におけるケモカインRANTESのレベルを減少させおよび/または阻害し、その結果、対象の皮膚、粘膜、および/または眼における炎症を減少させることができる。一部の実施形態では、本発明の方法によって、例えば、対象の皮膚、粘膜、および/または眼における1つまたは複数の接着分子の発現を減少させる、阻害する、および/または下方制御することによって、接着分子を調節して、その結果、対象の皮膚、粘膜、および/または眼における炎症を減少させることができる。
【0036】
当業者であれば理解されるように、炎症とは、Th1および/またはTh2媒介性とすることができる。Th1媒介性炎症とは、乾癬などの炎症状態に関与し、炎症誘発性応答をもたらす可能性のあるTh1型サイトカイン(例えば、インターフェロン-ガンマ)を産生することができる。Th2媒介性炎症とは、抗炎症応答を有し得るTh2型サイトカイン(例えば、IL-4、IL-5、およびIL-13)を産生することができる。Th2型サイトカインは、Th1媒介性炎症応答を打ち消すように応答することができる。本発明の方法は、Th1および/またはTh2媒介性炎症を治療するために使用することができる。一部の実施形態では、本発明の方法によって、Th2型サイトカインを増加させ、その結果、抗炎症応答をもたらし、炎症状態を治療することができる。一部の実施形態によれば、本発明の方法によって、Th1型サイトカインを増加させて、炎症誘発性応答を生じることができ、次いで、Th2型サイトカインを増加させて、抗炎症性応答を生じ、その結果、炎症を減少させることによって炎症状態を治療することができる。
【0037】
一部の実施形態では、本発明の方法によって、受容体、例えば、これらに限定されないが、Toll様受容体および/または細胞移動(cell trafficking)に関与する受容体(例えば、E-セレクチン、E-カドヘリン等)の発現を調節することができる。受容体の発現を調節することによって、対象の皮膚、粘膜、および/または眼における炎症細胞(例えば、骨髄由来免疫抑制細胞、好塩基球、リンパ球等)の移動を低減させることができる。一部の実施形態では、対象の皮膚、粘膜、および/または眼への一酸化窒素放出性化合物の局所適用によって、内皮細胞上のE-セレクチンまたはE-カドヘリンの発現を調節(例えば、増加または減少)することができ、および/または、対象の皮膚、粘膜、および/または眼へのリンパ球のテザリング(tethering)および/または移動を調節することができる。一部の実施形態では、対象の皮膚、粘膜、および/または眼への一酸化窒素放出性化合物の局所適用によって、対象の皮膚、粘膜、および/または眼に存在するリンパ球の量を減少させることができる。
【0038】
一部の実施形態によれば、本発明の方法によって、対象の皮膚、粘膜、および/または眼における炎症細胞の存在を調節することができる。炎症細胞の例には、これらに限定されないが、好中球、好塩基球、肥満細胞、好酸球、単球、およびマクロファージなどの白血球;Bリンパ球およびTリンパ球などのリンパ球;ナチュラルキラー細胞;樹状細胞(例えば、ランゲルハンス細胞)および間質細胞などの抗原提示細胞;およびそれらの任意の組合せが含まれる。ある特定の実施形態では、本発明の方法によって、対象の皮膚、粘膜、および/または眼における炎症細胞の存在を低減させ、その結果、対象において炎症を減少させることができる。
【0039】
一部の実施形態では、本発明の方法によって、対象の皮膚、粘膜、および/または眼におけるケラチノサイトの増殖を減少させるおよび/または阻害することができる。対象の皮膚、粘膜、および/または眼におけるケラチノサイトの増殖を減少させるおよび/または阻害することによって、対象の皮膚、粘膜、および/または眼における炎症を減少させるとともに、通常の治癒プロセスを回復および/または開始することができる。
【0040】
一部の実施形態では、本発明の方法によって、例えば、これらに限定されないが、酸化プロセスを低減させるまたは阻害することによって、・NO2および/または・OHにより開始される酸化プロセスを調節することができる。一部の実施形態では、局所的に適用される一酸化窒素放出性化合物が、ペルオキシ亜硝酸を除去することによって超生理学的レベルで抗酸化剤として作用することができる。
【0041】
本発明の方法によって、対象において急性および/または慢性炎症応答を生じる際に関与する経路および/またはシグナル伝達カスケードにおいて作用し得る1つまたは複数の酵素を調節することができる。酵素の例には、これらに限定されないが、MMP-1、MMP-3、およびMMP-9などのマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP);NADPHオキシダーゼ、P450依存酵素、COX-1、COX-2、およびCOX-3などのシクロオキシゲナーゼ(COX);およびそれらの任意の組合せが含まれる。一部の実施形態では、本発明の方法により、NAD(P)Hオキシダーゼ活性が調節される。一部の実施形態では、本発明の方法により、シクロオキシゲナーゼが低減または阻害されて、その結果、炎症が減少する。p450依存性酵素および/またはシクロオキシゲナーゼの活性の低減または阻害が、プロスタグランジンを低減させおよび/または阻害して、対象において炎症を減少させることができる。
【0042】
本発明の方法を、ざ瘡を、例えば、これらに限定されないが、ざ瘡に起因する炎症を治療するために使用することができる。一部の実施形態では、ざ瘡を治療する方法には、NF-kB活性化および/または活性化タンパク質1(AP-1)を減少させるのに有効な量で一酸化窒素放出性医薬組成物を局所的に投与することが含まれ得る。一部の実施形態では、ざ瘡を治療する方法には、TNF-α、IL-1B、IL-8、IL-10、MMP-1、MMP-3およびMMP-9のうちの少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6またはそれより多くの産生を減少させるのに有効な量で一酸化窒素放出性医薬組成物を局所的に投与することが含まれ得る。本発明の方法には、アクネ菌(P.acnes)によって発生する活性酸素種を減少させるおよび/またはケラチノサイト刺激を減少させるのに有効な量で一酸化窒素放出性医薬組成物を局所的に投与して、その結果、対象においてざ瘡を治療することが含まれ得る。一部の実施形態では、本発明の方法には、Toll様受容体(TLR)、例えば、これに限定されないが、TLR-2からのサイトカイン放出を減少させるおよび/または阻害するのに有効な量で一酸化窒素放出性医薬組成物を局所的に投与することが含まれ得る。本発明の方法によって、Th-1媒介性炎症応答を減少させまたは阻害して、その結果、対象においてざ瘡を治療することができる。あるいはまたはそれに加えて、本発明の方法によって、IL-12および/またはIL-8の産生および/または活性化を減少させてまたは阻害して、対象においてざ瘡を治療することができる。
【0043】
経皮適用されたオキサゾロンに対する炎症応答の過程では、炎症性サイトカインの産生が上方制御される。具体的には、TNF-αレベルが、炎症の発症時に(おそらく局部刺激による可能性が高い)増加し、その後、インターフェロン-γの産生が増加し、インターロイキン-4の産生が微増(おそらくリンパ球の浸潤によるものである)する可能性がある。
【0044】
炎症性サイトカインのオキサゾロン誘導性上方制御の結果として、ペルオキシ亜硝酸の生成が開始することができる。ペルオキシ亜硝酸は自発的に分解して、高い反応性および破壊性の分解生成物、・NO2および・OHを形成する。NO産生が増加すると、・NO2および・OHにより開始される酸化プロセスを阻害することができる。したがって、一酸化窒素放出性化合物から外因性一酸化窒素を送達することが、ニトロソ化種および酸化種に対する抗酸化剤としての役割を果たすことによって、抗炎症剤として機能することができる。さらに、オキサゾロンへの炎症応答の過程でのNOの外因性放出が、上記サイトカインのうちの1つまたは複数の産生に関して下方制御を引き起こすことができる。
【0045】
一部の実施形態では、本発明の組成物および/または方法によって、対象において感染症を排除するまたは低減させることができる。例えば、一部の実施形態では、本発明の組成物および/または方法によって、対象の皮膚、粘膜、および/または眼における黄色ブドウ球菌(例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染症を排除するまたは低減させることができる。一部の実施形態では、本発明の組成物を抗菌剤とすることができる。一部の実施形態では、本発明の組成物および/または方法によって、対象の皮膚、粘膜、および/または眼における、感染症(例えば、黄色ブドウ球菌感染症)を排除することができまたは低減したレベルおよび/または低レベルに感染症(例えば、黄色ブドウ球菌感染症)を維持することができる。一部の実施形態では、本発明の組成物および/または方法によって、対象の皮膚、粘膜、および/または眼の上のバイオフィルムの存在を排除するまたは低減させることができる。例えば、本発明の組成物および/または方法によって、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、またはそれより多く、対象の皮膚、粘膜、および/または眼の上に存在する細菌および/またはバイオフィルムを減少させることができる。一部の実施形態では、本発明の組成物および/または方法によって、対象の皮膚、粘膜、および/または眼の上に存在する細菌および/またはバイオフィルムを約2分の1、3分の1、4分の1またはそれより低く減少させることができる。一部の実施形態では、本発明の組成物および/または方法によって、組成物が投与されて1、2、3、4、5、6、7、8、9または10日後に、細菌負荷量および/または細菌数(例えば、黄色ブドウ球菌細菌数)の少なくとも1、2、3、4または5対数減少(log reduction)を提供することができる。
【0046】
本発明の方法によって、本発明の方法が無い場合での炎症の量、炎症の再発率、炎症性フレア、および/または感染症(例えば、黄色ブドウ球菌感染症)と比較して、対象における炎症の量、炎症の再発率、炎症性フレア、および/または感染症(例えば、黄色ブドウ球菌感染症)を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、95%、95%、97%または100%減少させることができる。一部の実施形態では、対象における炎症の量、炎症の再発率、炎症性フレア、および/または感染症(例えば、黄色ブドウ球菌感染症)は、本発明に従わない治療の投与(例えば、局所的コルチコステロイドに伴う再発率と比較して)と比較可能であり、または、本発明の方法での治療前の値(例えば、炎症の量または再発率)と比較可能である。再発率は、当業者に既知の方法を使用して決定することができる。例えば、炎症の治療後、所定の時間後に再感染を判定して、再発率を決定することができる。
【0047】
本明細書に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物は、一酸化窒素放出性の活性医薬成分(API)として少なくとも1つのNO放出性化合物を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれらからなることができる。任意の適切なNO放出性化合物を使用することができる。一部の実施形態では、NO放出性化合物には、NO供与基を含む低分子化合物が含まれる。「低分子化合物」とは、本明細書で使用する場合、分子量が500ダルトン未満である化合物と定義され、これには有機のおよび/または無機の低分子化合物が含まれる。一部の実施形態では、NO放出性化合物には、NO供与基を含む高分子が含まれる。「高分子」とは、本明細書においては分子量が500ダルトン以上である任意の化合物と定義される。任意の適切な高分子を使用することができ、それには、架橋または非架橋ポリマー、デンドリマー、金属化合物、有機金属化合物、無機系化合物、およびその他の高分子足場などが挙げられる。一部の実施形態では、高分子は、約0.1nmから約100μmの範囲の公称直径を有し、2種以上の高分子化合物の集合体を含むことができ、それによって高分子構造がNO供与体基でさらに修飾されている。
【0048】
一部の実施形態では、NO放出性化合物は、NO供与体としてジアゼニウムジオレート官能基を含む。ジアゼニウムジオレート官能基は、水へ曝露されるなどの、ある特定の条件下で一酸化窒素を生じることができる。別の例として、一部の実施形態では、NO放出性化合物は、NO供与体としてニトロソチオール官能基を含む。このNO供与体は、光に曝露されるなどの、ある特定の条件下で、一酸化窒素を生じることができる。その他のNO供与基の例には、これらに限定されないが、ニトロソアミン、ヒドロキシルニトロソアミン、ヒドロキシルアミンおよびヒドロキシ尿素が含まれる。NO供与体および/またはNO放出性化合物の適切な任意の組合せを、本明細書に記載の組成物(例えば、混合物または疎水性組成物)中で使用してもよい。加えて、NO供与体を、共有結合性のおよび/または非共有結合性の相互作用を介して低分子または高分子の中へまたはこれの上に一体化させてもよい。
【0049】
NO放出性高分子は、その開示が引用によりその全体が本明細書の一部をなすものとする、米国特許第8,282,967号、米国特許第8,962,029号または米国特許第8,956,658号、米国特許第9,403,851号、米国特許第9,403,852号に記載のものなどの、NO放出性粒子の形態とすることができる。NO放出性の化合物のその他の非限定的な例には、米国特許出願公開第2006/0269620号または第2010/0331968号に記載のNO放出性ゼオライト;米国特許出願公開第2010/0239512号または第2011/0052650号に記載のNO放出性金属有機フレームワーク(MOF);「Tunable Nitric Oxide-Releasing Macromolecules Having Multiple Nitric Oxide Donor Structures」と題する、国際特許出願第PCT/US2012/052350および米国特許第9,238,038号に記載のNO放出性多供与体化合物;米国特許出願公開第2009/0214618号に記載のNO放出性デンドリマーまたは金属構造物;米国特許出願公開第2011/0086234号に記載の一酸化窒素放出性コーティング;ならびに米国特許出願公開第2010/0098733号に記載の化合物が含まれる。本段落中の参考文献のそれぞれの開示は引用によりその全体が本明細書の一部をなすものとする。さらに、NO放出性高分子は、その開示が引用によりその全体が本明細書の一部をなすものとする、2012年1月20日出願の「Temperature Controlled Sol-Gel Co-Condensation」と題する国際特許出願第PCT/US2012/022048、米国特許第8,937,143号、および米国特許第9,267,006号に記載の通りに製造できる。
【0050】
一例として、本発明の一部の実施形態では、一酸化窒素放出性の活性医薬成分には、NOを装填した沈降シリカが含まれ得る。NOを装填した沈降シリカは、一酸化窒素供与体で修飾されたシランモノマーから共縮合シロキサンネットワーク中へと形成することができる。本発明の一実施形態では、一酸化窒素供与体をN-ジアゼニウムジオレートとすることができる。本発明の一部の実施形態では、一酸化窒素放出性の活性医薬成分は、ジアゼニウムジオレート(例えば、N-ジアゼニウムジオレート)を含む共縮合シロキサンネットワークを含む、これから本質的になる、またはこれからなることができる。
【0051】
一部の実施形態では、一酸化窒素供与体を事前装薬(pre-charging)法によりアミノアルコキシシランから形成することができる。共縮合シロキサンネットワークを、アルコキシシランおよびアミノアルコキシシランを含むシラン混合物の縮合から合成して、一酸化窒素供与体で修飾された共縮合シロキサンネットワークを形成することができる。本明細書で使用する場合、「事前装薬法」とは、アルコキシシランとの共縮合前に、アミノアルコキシシランが一酸化窒素で「前処理されて」または「事前装薬されて」いることを意味する。一部の実施形態では、一酸化窒素を事前装薬することを化学的方法により行うことができる。別の実施形態では、「事前装薬」法を、共縮合したシロキサンネットワークおよびNO供与体でより密に官能化された材料を創出するために使用できる。一部の実施形態では、一酸化窒素放出性の活性医薬成分は、アルコキシシランと、ジアゼニウムジオレート(例えば、N-ジアゼニウムジオレート)で置換されているアミン(例えば、第二級アミン)を有する少なくとも1つのアミノアルコキシシランとを含むシラン混合物の縮合から合成された共縮合シリカネットワークを含む、これから本質的になる、またはこれからなることができる。
【0052】
共縮合シロキサンネットワークは、均一な大きさのシリカ粒子、様々な大きさのシリカ粒子の集合体、非晶質シリカ、ヒュームドシリカ、ナノ結晶シリカ、セラミックシリカ、コロイド状シリカ、シリカコーティング、シリカフィルム、有機修飾シリカ、メソ多孔質シリカ、シリカゲル、生活性ガラス、またはシリカの任意の適切な形態もしくは状態とすることができる。
【0053】
一部の実施形態では、アルコキシシランは、式Si(OR)4を有するテトラアルコキシシランである(式中、Rはアルキル基である)。R基は同じであっても異なっていてもよい。一部の実施形態では、テトラアルコキシシランはテトラメチルオルトシリケート(TMOS)またはテトラエチルオルトシリケート(TEOS)として選択される。一部の実施形態では、アミノアルコキシシランは式R”-(NH-R’)n-Si(OR)3を有する(式中、Rはアルキルであり、R’はアルキレン、分枝アルキレン、またはアラルキレンであり、nは1または2であり、R”はアルキル、シクロアルキル、アリール、およびアルキルアミンからなる群から選択される)。
【0054】
一部の実施形態では、アミノアルコキシシランは、N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン(AHAP3);N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAP3);(3-トリメトキシシリルプロピル)ジ-エチレントリアミン(DET3);(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン(AEMP3);[3-(メチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン(MAP3);N-ブチルアミノ-プロピルトリメトキシシラン(n-BAP3);t-ブチルアミノ-プロピルトリメトキシシラン(t-BAP3);N-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン(EAiB3);N-フェニルアミノ-プロピルトリメトキシシラン(PAP3);およびN-シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン(cHAP3)から選択することができる。
【0055】
一部の実施形態では、アミノアルコキシシランは式NH[R’-Si(OR)3]2を有する(式中、Rはアルキルであり、R’はアルキレンである)。一部の実施形態では、アミノアルコキシシランは、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミンおよびビス-[(3-トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンから選択することができる。
【0056】
一部の実施形態では、本明細書で上に記載の通り、アミノアルコキシシランはNO放出用に事前装薬され、アミノ基はジアゼニウムジオレートにより置換されている。したがって、一部の実施形態では、アミノアルコキシシランは、式:R”-N(NONO-X+)-R’-Si(OR)3を有する(式中、Rはアルキルであり、R’はアルキレンまたはアラルキレンであり、R”はアルキルまたはアルキルアミンであり、X+は、Na+、K+およびLi+からなる群から選択される陽イオンである)。
【0057】
シロキサンネットワークの組成(例えば、アミノアルコキシシランの量または化学組成)および一酸化窒素の装薬条件(例えば、溶媒および塩基)を、一酸化窒素放出の量および/または持続時間を最適化するために変化させることができる。したがって、一部の実施形態では、シリカ粒子からのNO放出の半減期を調節するために、シリカ粒子の組成を変更できる。
【0058】
別の実施形態では、アミノアルコキシシランのアミノ基はジアゼニウムジオレートで置換されてあり、上記アミノアルコキシシランはR”-N(NONO-X+)-R’-Si(OR)3の式を有する(式中、Rはアルキルであり、R’はアルキレンまたはアラルキレンであり、R”はアルキルまたはアルキルアミンであり、X+はNa+およびK+からなる群から選択される陽イオンである)。
【0059】
ある特定の実施形態では、NO放出性APIには、ジアゼニウムジオレート化された(diazeniumdiolated)アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(AEAP3)とテトラメチルオルトシリケート(TMOS)とを含む共縮合されたシリカネットワーク、および/または、ジアゼニウムジオレート化されたアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(AEAP3)とテトラエチルオルトシリケート(TEOS)とを含む共縮合されたシリカネットワークが含まれ得る。一部の実施形態では、NO放出性APIには、ジアゼニウムジオレート化されたメチルアミノプロピルトリメトキシシラン(MAP3)とテトラメチルオルトシリケート(TMOS)とを含む共縮合されたシリカネットワーク、および/または、ジアゼニウムジオレート化されたメチルアミノプロピルトリメトキシシラン(MAP3)とテトラエチルオルトシリケート(TEOS)とを含む共縮合されたシリカネットワークが含まれ得る。一部の実施形態では、本発明の組成物は、ジアゼニウムジオレート化されたメチルアミノプロピルトリメトキシシラン(MAP3)とテトラエチルオルトシリケート(TEOS)とを含む共縮合シリカネットワークを含むNO放出性APIを含まない。一部の実施形態では、NO放出性APIは、粒子の約13重量%~約17重量%の範囲の放出可能なNO含有量を有するジアゼニウムジオレート官能化共縮合シリカ粒子である。放出された一酸化窒素の量は、in vitroでのリアルタイム放出試験を使用して決定することができる。一部の実施形態では、化学発光性酸化窒素分析器を使用して一酸化窒素放出を決定することができる。
【0060】
本発明の一部の実施形態では、NO放出性APIの粒径は、約20nmから約20μmまでの範囲またはこの中の任意の範囲、例えば、これらに限定されないが、約100nm~約20μm、もしくは約1μm~約20μmの範囲とすることができる。毒性、および/または表皮(または易感染性の真皮)を通した血管への浸透を、最小限にするまたは防止するように、粒径を調整することができる。一部の実施形態では、粒径は、20μm未満の平均粒径付近に、またはこの中の任意の範囲の平均粒径付近に分布しており、そのような粒径であれば、粒子が毛包(follicle)に入ることができる。一部の実施形態では、NO放出性APIは、約20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1μmの平均粒径付近に分布している粒径を有することができる。さらなる実施形態では、NO放出性APIは、10μm未満の平均粒径付近に、またはこの中の任意の範囲の、例えば、これらに限定されないが、約2μm~約10μmもしくは約4μm~約8μmの平均粒径付近に分布している粒径を有することができる。他の実施形態では、粒径は、20μm超平均粒径付近に、またはこの中の任意の範囲の平均粒径付近に分布する場合もあり、そのような粒径であれば、粒子が毛包に入らないよう防ぐことができる。なおさらなる実施形態では、平均粒径が2つ以上の平均粒径付近に分布している粒子の混合体が提供される場合もある。NO放出性APIを、微粉化する(例えば、ボールミルおよび/またはジェットミルにかける)ことができる。所望の粒径および/または微粒子化を提供する方法には、これらに限定されないが、引用によりその全体が本明細書の一部をなすものとする、米国特許出願公開第2013/0310533号に記載されているものが含まれる。
【0061】
本発明の組成物は、NO放出性APIを含むことができるとともに、組成物の約0.05重量%~約10重量%の量の、例えば、これらに限定されないが、組成物の、約0.15重量%~約2重量%、約0.15重量%~約1重量%、約0.3重量%~約1.2重量%、約0.15重量%~約6重量%、約1重量%~約10重量%、約3重量%~約6重量%、または約1重量%~約5重量%の量の一酸化窒素を貯蔵および/または放出することができる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、一酸化窒素放出性活性医薬を含むことができるとともに、組成物の、約0.15重量%、0.3重量%、0.6重量%、0.9重量%、1重量%、1.25重量%、1.5重量%、1.75重量%、2重量%、2.25重量%、2.5重量%、2.75重量%、3重量%、3.25重量%、3.5重量%、3.75重量%、4重量%、4.25重量%、4.5重量%、4.75重量%、5重量%、5.25重量%、5.5重量%、5.75重量%、6重量%、6.25重量%、6.5重量%、6.75重量%、7重量%、7.25重量%、7.5重量%、7.75重量%、8重量%、8.25重量%、8.5重量%、8.75重量%、9重量%、9.25重量%、9.5重量%、9.75重量%、または10重量%の量の一酸化窒素を貯蔵および/または放出することができる。放出された一酸化窒素の量は、in vitroでのリアルタイム放出試験を使用して決定することができる。一部の実施形態では、化学発光性酸化窒素分析器を使用して一酸化窒素放出を決定することができる。
【0062】
本明細書に記載の組成物はまた、1つまたは複数のさらなるAPIを含むことができる。任意の適切なさらなるAPIまたはAPIの組合せを、本発明の実施形態に係る組成物に含めることができる。APIの例には、抗菌剤、抗ざ瘡剤、抗炎症剤、鎮痛剤、麻酔剤、抗ヒスタミン剤、保存剤、免疫抑制剤、抗出血剤、血管拡張剤、創傷治癒剤、抗バイオフィルム剤およびそれらの混合物が含まれる。
【0063】
抗菌剤の例には、これらに限定されないが、ペニシリンおよび関連薬物、カルバペネム、セファロスポリンおよび関連薬物、エリスロマイシン、アミノグリコシド、バシトラシン、グラミシジン、ムピロシン、クロラムフェニコール、チアンフェニコール、フシジン酸ナトリウム、リンコマイシン、クリンダマイシン、マクロライド、ノボビオシン、ポリミキシン、リファマイシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、バノマイシン(vanomycin)、テイコプラニン、ストレプトグラミン;スルホンアミド、トリメトプリムおよびその組合せならびにピリメタミンといった抗葉酸剤;ニトロフラン、マンデル酸メテナミンおよび馬尿酸メテナミンといった合成抗菌薬、ニトロイミダゾール、キノロン、フルオロキノロン、イソニアジド、エタンブトール、ピラジナミド、パラ-アミノサリチル酸(PAS)、サイクロセリン、カプレオマイシン、エチオナミド、プロチオンアミド、チアセタゾン、ビオマイシン、エベイミノマイシン、グリコペプチド、グリシルサイクリン、ケトライド、オキサゾリジノン;イミペネム、アミカシン、ネチルマイシン、ホスホマイシン、ゲンタマイシン、セフトリアキソン、ジラシン、リネゾリド、シナシッド、アズトレオナム、およびメトロニダゾール、エピロプリム、サンフェトリネムナトリウム、ビアペネム、ダイネマイシン、セフルプレナム、セフォセリス、サンフェトリネムシレキセチル、セフピロム、メルサシジン、リファラジル、コサン(Kosan)、レナペネム、ベネプリム、スロペネム、リチペネムアコキシル、シクロチアリジン、ミカコシジンA、カルモナム、セフォゾプランならびにセフェタメトピボキシルが含まれる。
【0064】
局所用抗ざ瘡剤の例には、これらに限定されないが、アダパレン、アゼライン酸、過酸化ベンゾイル、クリンダマイシンおよびクリンダマイシンホスフェート、ドキシサイクリン、エリスロマイシン;サリチル酸およびレチノイン酸(Retin-A”)などの角質溶解薬、ノルゲスチメート、有機過酸化物;イソトレチノインおよびトレチノインなどのレチノイド、スルファセタミドナトリウム、ならびにタザロテンが含まれる。特定の抗ざ瘡剤には、アダパレン、アゼライン酸、過酸化ベンゾイル、クリンダマイシン(例えば、クリンダマイシンホスフェート)、ドキシサイクリン(例えば、ドキシサイクリン一水和物)、エリスロマイシン、イソトレチノイン、ノルゲスチメート、スルファセタミドナトリウム、タザロテン、エトレチナートおよびアセトレチン(acetretin)が含まれる。
【0065】
抗ヒスタミン剤の例には、これらに限定されないが、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、イソチペンジル塩酸塩、トリペレナミン塩酸塩、プロメタジン塩酸塩、メトジラジン塩酸塩等が含まれる。局部麻酔剤の例には、ジブカイン塩酸塩、ジブカイン、リドカイン塩酸塩、リドカイン、ベンゾカイン、p-ブチルアミノ安息香酸2-(ジエチルアミノ)エチルエステル塩酸塩、プロカイン塩酸塩、テトラカイン、テトラカイン塩酸塩、クロロプロカイン塩酸塩、オキシプロカイン塩酸塩、メピバカイン、コカイン塩酸塩、ピペロカイン塩酸塩、ジクロニンおよびジクロニン塩酸塩が含まれる。
【0066】
保存剤の例には、これらに限定されないが、アルコール、第四級アンモニウム化合物、ホウ酸、クロルヘキシジンおよびクロルヘキシジン誘導体、ヨウ素、フェノール、テルペン、殺細菌薬;チメロサール、フェノール、チモール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ポビドンヨード、塩化セチルピリジニウム、ユージノールおよびトリメチルアンモニウムブロミドといった消毒薬が含まれる。
【0067】
抗炎症剤の例には、これらに限定されないが、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID);イブプロフェンおよびナプロキセンなどのプロピオン酸誘導体;インドメタシンなどの酢酸誘導体;メロキシカム、アセトアミノフェンなどのエノール酸誘導体;メチルサリチル酸塩;モノグリコールサリチル酸塩;アスピリン;メフェナム酸;フルフェナム酸;インドメタシン;ジクロフェナク;アルクロフェナク;ジクロフェナクナトリウム;イブプロフェン;ケトプロフェン;ナプロキセン;プラノプロフェン;フェノプロフェン;スリンダク;フェンクロフェナク;クリダナク;フルルビプロフェン;フェンチアザク;ブフェキサマク;ピロキシカム;フェニルブタゾン;オキシフェンブタゾン;クロフェゾン;ペンタゾシン;メピリゾール;チアラミド塩酸塩;ステロイド、例えば、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ハロベタゾールプロピオン酸エステル、ジフロラゾン二酢酸エステル、フルオシノニド、ハルシノニド、アムシノニド、デスオキシメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、モメタゾンフロ酸エステル、フルチカゾンプロピオン酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、トリアムシノロンアセトニド、フルチカゾンプロピオン酸エステル、デソニド、フルオシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン吉草酸エステル、プレドニカルベート、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾンおよび当技術分野において既知の他のもの、プレドニゾロン、デキサメタゾン、フルオシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、プレドニゾロン酢酸エステル、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン酢酸エステル、ベタメタゾン、ベタメタゾン吉草酸エステル、フルメタゾン、フルオロメトロン、ベクロメタゾンジプロプリオネート、フルオシノニド、局所用コルチコステロイドが含まれ、抗炎症剤の例は、効力のより低いコルチコステロイドのうちの1つ、例えば、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン-21-モノエステル(例えば、ヒドロコルチゾン-21-アセテート、ヒドロコルチゾン-21-ブチレート、ヒドロコルチゾン-21-プロピオネート、ヒドロコルチゾン-21-バレレート等)、ヒドロコルチゾン-17,21-ジエステル(例えば、ヒドロコルチゾン-17,21-ジアセテート、ヒドロコルチゾン-17-アセテート-21-ブチレート、ヒドロコルチゾン-17,21-ジブチレート等)、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、フルメタゾン、プレドニゾロン、またはメチルプレドニゾロンのうちの1つであってもよく、効力のより高いコルチコステロイド、例えば、クロベタゾールプロピオン酸エステル、安息香酸ベタメタゾン、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ジフロラゾン二酢酸エステル、フルオシノニド、モメタゾンフランカルボン酸エステル、トリアムシノロンアセトニドであってもよい。
【0068】
鎮痛剤の例には、これらに限定されないが、アルフェンタニル、ベンゾカイン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ブタンベン、カプサイシン、クロニジン、コデイン、ジブカイン、エンケファリン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、インドメタシン、リドカイン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルフィン、ニコモルフィン、アヘン、オキシブプロカイン、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プラモキシン、プロパラカイン、プロポキシフェン、プロキシメタカイン、スフェンタニル、テトラカインおよびトラマドールが含まれる。
【0069】
麻酔剤の例には、これらに限定されないが、フェノールなどのアルコール;安息香酸ベンジル;カラミン;クロロキシレノール;ジクロニン;ケタミン;メントール;プラモキシン;レゾルシノール;トリクロサン;ベンゾカイン、ブピバカイン、クロロプロカインなどのプロカイン薬;シンコカイン;コカイン;デキシバカイン;ジアモカイン;ジブカイン;エチドカイン;ヘキシルカイン;レボブピバカイン;リドカイン;メピバカイン;オキセサゼイン;プリロカイン;プロカイン;プロパラカイン;プロポキシカイン;ピロカイン;リソカイン;ロドカイン;ロピバカイン;テトラカイン;ならびに例えば、ブピバカインHCl、クロロプロカインHCl、シクラミン酸ジアモカイン、ジブカインHCl、ジクロニンHCl、エチドカインHCl、レボブピバカインHCl、リドカインHCl、メピバカインHCl、プラモキシンHCl、プリロカインHCl、プロカインHCl、プロパラカインHCl、プロポキシカインHCl、ロピバカインHCl、およびテトラカインHClといった薬学的に許容される塩およびエステルなどの誘導体が含まれる。
【0070】
止血剤の例には、これらに限定されないが、トロンビン、フィトナジオン、プロタミン硫酸塩、アミノカプロン酸、トラネキサム酸、カルバゾクロム、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム、ルチンおよびヘスペリジンが含まれる。
【0071】
本明細書に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物には、少なくとも1つのNO放出性化合物を含む適切な任意の医薬組成物が含まれ得る。一酸化窒素放出性医薬組成物の例には、これらに限定されないが、それぞれの開示が引用によりその全体が本明細書の一部をなすものとする、国際公開第2011/022652号、国際公開第2013/063354号、国際公開第2013/006608号、国際公開第2013/138075号、国際公開第2015/021382号、および国際公開第2016/022170号に記載されているものが含まれる。加えて、本明細書に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物は、その開示が引用によりその全体が本明細書の一部をなすものとする、国際公開第2013/006613号に記載されているように調製することができる。一部の実施形態では、本発明の組成物は、例えば、エタノールおよび/またはイソプロピルアルコールなどの、アルコールを含まない。
【0072】
一部の実施形態では、ニトロソチオール修飾化合物を含有する組成物(例えば、軟膏)を、熱分解およびNO放出を最小限に抑えるために低温(例えば、約0℃未満)に保つことができる。次いで、冷たい組成物を皮膚、粘膜、および/または目に適用し、皮膚、粘膜、および/または目の温度が高いことにより、NOの放出が可能となる。一部の実施形態では、ニトロソチオールは、かご効果により室温で安定であるように医薬(例えば、NO拡散を制限することができる親水性製剤)中に存在する場合もあり、次いで皮膚、粘膜、および/または目に適用されるとNOを放出する。ニトロソチオール修飾化合物を含む医薬に光も適用することができる。光束の利用をNOのフラックスを創製するために適用できる。
【0073】
一部の実施形態によれば、本明細書に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物には、軟膏、膏薬、クリーム等が含まれ得る。一酸化窒素放出性の軟膏、膏薬、クリーム等は、疎水性基剤、両親媒性化合物、および少なくとも1つのNO放出性化合物を含むことができる。「疎水性基剤」とは、本明細書で使用する場合、天然および/または合成の脂肪、ワックス、油等を指す。一部の実施形態では、疎水性基剤には、疎水性ポリマーが含まれ得る。「両親媒性化合物」とは、本明細書で使用する場合、親水性および疎水性の特性を備える化合物を指す。
【0074】
一部の実施形態では、本明細書に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物には、それぞれの開示が引用によりその全体が本明細書の一部をなすものとする、国際公開第2013/138075号、国際公開第2015/021382号、および/または国際公開第2016/022170号に記載されている組成物が含まれる。例えば、一酸化窒素放出性医薬組成物は、組成物の約0.1重量%から約35重量%の濃度で組成物中に存在する少なくとも1つのNO放出性化合物と、組成物の約30重量%から約60重量%の濃度で組成物中に存在する疎水性ポリマーと、組成物の約1重量%から約30重量%の濃度で組成物中に存在する鉱物油と、組成物の約1重量%から約20重量%の濃度で組成物中に存在する両親媒性化合物と、組成物の約1重量%から約25重量%の濃度で組成物中に存在する共溶媒と、組成物の約1重量%から約25重量%の濃度で組成物中に存在する保湿剤を含むことができる。
【0075】
一部の実施形態では、本発明の一酸化窒素放出性医薬組成物は、混合し得るおよび/または一緒に混合状態にある2つの組成物を、すなわち、疎水性組成物を含む第1の組成物とヒドロゲルを含む第2の組成物とを含むことができる。したがって、一部の実施形態では、一酸化窒素放出性医薬組成物は混合物である。疎水性組成物は、疎水性基剤および両親媒性化合物を含むことができるとともに、軟膏とすることができる。一部の実施形態では、疎水性組成物は、疎水性組成物の約0.1重量%~約50重量%の量のNO放出性APIと、それぞれが疎水性組成物の約1重量%~約90重量%の量で存在することができる1つまたは複数の(例えば、1、2、3またはそれより多くの)炭化水素基剤および/または疎水性基剤と、組成物の約1重量%~約90重量%の量で両親媒性化合物と、場合により、それぞれが組成物の約0重量%~約30重量%の量で存在することができる1つまたは複数の(例えば、1、2、3または以上の)賦形剤(例えば、乳化剤等)とを、含むことができる。一部の実施形態では、1つまたは複数の賦形剤のうちの少なくとも1つは溶媒とすることができ、これは組成物の約1重量%~約15重量%の量で存在することができる。
【0076】
ヒドロゲルは、水、緩衝剤、保湿剤、および/または粘度変性剤を含むことができる。一部の実施形態では、ヒドロゲルは、例えばリン酸緩衝剤などのリン酸塩を含むことができ、および/または、例えばヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースを含むことができる。一部の実施形態では、ヒドロゲルは、例えば酢酸緩衝剤などの酢酸塩を含むことができ、および/または、例えばカルボキシメチルセルロースなどのセルロースを含むことができる。一部の実施形態では、本発明の一酸化窒素放出性医薬組成物は、酢酸および、例えば酢酸ナトリウムなどの酢酸塩を含むヒドロゲルを含むことができる。一部の実施形態では、ヒドロゲルは、約4~約5.5の範囲のpHを有することができる。
【0077】
本発明の一酸化窒素放出性医薬組成物および/またはヒドロゲルは、ヒドロゲルおよび/または組成物の約5mmol~約2molの量の1つまたは複数の緩衝剤を含むことができる。一部の実施形態では、1つまたは複数の緩衝剤は、例えば、ヒドロゲルの約1重量%~約15重量%または約2重量%~約10重量%などの、ヒドロゲルの約1重量%~約20重量%の量でヒドロゲル中に存在することができる。一部の実施形態では、緩衝剤は、ヒドロゲルの約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20重量%の量で、本発明のヒドロゲル中に存在する。
【0078】
本発明の一部の実施形態によれば、本発明の一酸化窒素放出性医薬組成物(例えば、本明細書に記載の混合物)を、pH制御組成物とすることができる。一部の実施形態では、本発明のpH制御組成物は、投与しておよび/または併用して(例えば、一酸化窒素放出性医薬組成物が、一緒に混合状態にある少なくとも2つの組成物を、例えば疎水性組成物とヒドロゲルとを含む場合)、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48時間後に、4から6.5の範囲のpHを有することができる。本発明の組成物のpHは、pHプローブ(例えば、フラットエンドpHプローブ)および測定器を使用することで、組成物内の異なる3箇所の位置で測定することで、次いで、これらの測定値を平均することで、1つまたは複数の所与の時点でin vitroで測定して、当該時点のpH値を決定することができる。組成物をin vitroで測定する場合、組成物の生成(例えば、混合物を形成するための2つ以上の組成物の組合せ)を以て、対象への組成物の投与に時間的に見て同等であるまたは比較し得るとして、使用してもよい。
【0079】
一部の実施形態では、本発明のpH制御組成物は、投与しておよび/または併用して1から48時間後の時点で、4.0から6.0、4.5から6.0、4.5から5.5、5.25から5.75、4.5から5.0、4.5から4.75、4.75から5.0、5.5から5.75、または5.25から5.5の範囲のpHを有することができる。一部の実施形態では、本発明の一酸化窒素放出性医薬組成物を、pH制御組成物とすることができ、投与しておよび/または併用して1時間後と、投与しておよび/または併用して48時間後との間の2つ以上の様々な時点で、例えば、投与しておよび/または併用して、1、2、4、または6時間後と、投与しておよび/または併用して12、24、または36時間後との間などであるが、pHは、±0.2未満(例えば、±0.2、0.15、0.1、0.05、または0.01未満などであるが)変化してもよい。一部の実施形態では、本発明のpH制御組成物は、投与しておよび/または併用して1時間後にならびに投与しておよび/または併用して24時間後に4.0から6.5の範囲のpHを有することができ、こういった時間点でpH値は±0.2未満変化してもよい。一部の実施形態では、本発明のpH制御組成物は、投与しておよび/または併用して1時間後にならびに投与しておよび/または併用して24時間後に4.5から6.5の範囲のpHを有することができ、こういった時間点でpH値は±0.2未満変化してもよい。
【0080】
一部の実施形態では、本発明のpH制御組成物によって、投与および/または併用後、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48時間以上にわたる間、4.0から6.5の範囲のpHを維持することができる。一部の実施形態では、本発明のpH制御組成物によって、pHを4.0から6.0、4.5から6.0、4.5から5.5、5.25から5.75、4.5から5.0、4.5から4.75、4.75から5.0、5.5から5.75、または5.25から5.5の範囲のpHを維持することができる。一部の実施形態では、本発明の一酸化窒素放出性医薬組成物をpH制御組成物とすることができる。投与しておよび/または併用して1時間後と、投与しておよび/または併用して48時間後との間の一時点で、例えば、投与しておよび/または併用して1、2、4、または6時間後と、投与しておよび/または併用して12、24、または36時間後との間などであるが、当該pHは、±0.2未満(例えば、±0.2、0.15、0.1、0.05、または0.01未満などであるが)変化してもよい。一部の実施形態では、本発明のpH制御組成物は、少なくとも約23または24時間の間、4.0から6.5の範囲のpHを維持することができるとともに、その間、±0.2未満変化してもよい。一部の実施形態では、本発明のpH制御組成物は、少なくとも約23または24時間の間、4.5から6.5の範囲のpHを維持することができるとともに、その間、±0.2未満変化してもよい。
【0081】
一部の実施形態によれば、本発明の一酸化窒素放出性医薬組成物は、投与しておよび/または併用してから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48時間後に、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、または7.0を超えるpHを有することはできない。このことによって、わずかに酸性の性質を維持しながら、より高濃度のNO放出性の活性医薬成分(例えば、組成物の2重量%~30重量%のNO放出性の活性医薬成分)を投与することが可能となる。
【0082】
本発明の一部の実施形態によれば、以下にさらに詳細に記載される、一酸化窒素放出性医薬組成物が提供される。一部の実施形態では、本発明の一酸化窒素放出性医薬組成物(例えば、軟膏および/またはクリーム)は、組成物の展延性および/または感触を増強、増加および/または改善する、例えば、ケイ素含有化合物などの賦形剤を含むことができる。ケイ素含有化合物の例には、これらに限定されないが、シリコーン(例えば、シクロメチコン)、シロキサン(例えば、ジメチコン)、および/またはシリコーンエラストマー(例えば、Dow Corning Corporationから入手可能なDow Corning(登録商標)ST-Elastomer 10、これはシリコーンエラストマーと揮発性シリコーン流体との組合せである)が含まれる。一部の実施形態では、ケイ素含有化合物は、疎水性組成物の約1重量%~約30重量%の量で本発明の疎水性組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、ケイ素含有化合物は、疎水性組成物の、約1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%の量で、疎水性組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、2つ以上のケイ素含有化合物が、本発明の疎水性組成物中に存在することができ、それぞれが疎水性組成物の約1重量%~約30重量%の量で存在する。
【0083】
一部の実施形態では、本発明の疎水性組成物を、液体、溶液、軟膏等とすることができる。疎水性組成物は、これに限定されないが、疎水性基剤などの少なくとも1つの疎水性成分を含むことができる。疎水性組成物の例には、引用によりその全体が本明細書の一部をなすものとする、国際特許出願第PCT/US2010/046173および同第PCT/US2013/028223に記載のものが含まれる。一部の実施形態では、疎水性組成物は軟膏である。
【0084】
少なくとも1つの疎水性基剤が、本発明の疎水性組成物中に存在することができる。本発明の疎水性組成物において任意の適切な疎水性基剤を使用することができる。ある特定の実施形態では、疎水性組成物は、2つ以上の疎水性基剤を、例えば、これらに限定されないが、2、3、4、5、またはそれより多くの疎水性基剤を含む。ある特定の実施形態では、疎水性特性を有することに加えて疎水性基剤はまた、親水性特性を有することができ、したがって、両親媒性基剤とすることができる。疎水性基剤の例には、これらに限定されないが、分枝および非分枝の炭化水素、分枝および非分枝の炭化水素ワックス、ワセリン、炭化水素ゲル、流動パラフィン、白色ワセリン、ペトロラタム、微結晶性ワックス、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ラノリン(ウールワックス)、ウールワックスアルコール、アフリカハネガヤワックス(esparto grass wax)、コルクワックス、グアルマワックス(guaruma wax)、米ぬかワックス、サトウキビワックス、ベリーワックス、オウリキュリーワックス(ouricury wax)、大豆ワックス、ホホバ油、尾脂(uropygial grease)、セレシン、パラフィンワックス、マイクロワックス、植物油、動物油、カルナウバワックス、蜜蝋、カカオバター、ハードファット、鉱物油、植物油、アボカド油、ボラージ油、キャノーラ油、ヒマシ油、カモミール油、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、菜種油、マツヨイグサ油、ベニバナ油、ヒマワリ油、大豆油、スイートアーモンド、パーム油、パーム核油、ゴボウ種子油、ゴマ油、ルリジサ種子油、アブラナ種子油(brassica campestris oleifera oil)、メンハーデン油(brevoortia oil)、牛脚油、ラブダナム油、アブラヤシ油、アーモンド油、松根油、オリーブ油、ピーナッツ油、小麦胚芽油、ブトウ種子油、アザミ油、ラード、獣脂、パームオレイン、イリッペバター、シアバター、ココアバター、コクムバター、サルバター、レシチン、木蝋ラノリン、部分水素化植物油、疎水性ポリマー、ならびにそれらの任意の組合せが含まれる。
【0085】
一部の実施形態では、疎水性基剤には、疎水性ポリマーを含むことができる。適切な任意の疎水性ポリマーを本発明の疎水性組成物において使用することができる。疎水性ポリマーの例には、これらに限定されないが、炭化水素ポリマーおよび/またはコポリマー、芳香族ポリウレタン、シリコーンゴム、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリビニルクロリド、ポリエチレン、ポリエチレングリコール(6~4000)、ポリ-L-ラクチド、ポリ-DL-グリコリド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド、ポリイミドおよびポリビニルアセテートが含まれる。ある特定の実施形態では、疎水性基剤を、これに限定されないが、ポリエチレングリコール(6~4000)などの両親媒性基剤とすることができる。本発明の特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、1つまたは複数の炭化水素のポリマーおよび/またはコポリマーを含む。特定の実施形態では、本発明の疎水性組成物は、1つまたは複数の炭化水素のポリマーおよび/またはコポリマーを、これらに限定されないが、例えば、Versagel(登録商標)という商標でCalumet Specialty Products Partners(Indianapolis、IN)から市販されているもの、および/または、Crodabase SQ、これは鉱物油およびポリエチレンを含むが、という商標でCroda International Plc(East Yorkshire、英国)から市販されているものを含む。
【0086】
一部の実施形態では、疎水性組成物は、1つまたは複数の植物油および/または鉱物油を含む少なくとも1つの疎水性基剤を含むことができる。適切な任意の油を本発明の疎水性組成物において使用することができる。鉱物油の例には、これらに限定されないが、軽質鉱物油、白色鉱物油、パラフィン系油、ナフテン系油、芳香油、およびそれらの任意の組合せが含まれる。
【0087】
1つまたは複数の疎水性基剤が、本発明の混合物を形成するのに使用する疎水性組成物中に存在することができる。1つまたは複数の疎水性基剤(例えば、1、2、3、4、5またはそれより多くの疎水性基剤)は、単独でまたは一緒に、疎水性組成物の約1重量%から約99重量%の濃度で、またはその中の任意の範囲でおよび/または個々の値で、例えば、これらに限定されないが、疎水性組成物の、約2重量%から約20重量%、約1重量%から約10重量%、約1重量%から約15重量%、約15重量%から約65重量%、約25重量%から約98重量%、約30重量%から約98重量%、約35重量%から約99重量%、約35重量%から約90重量%、約25重量%から約50重量%、約25重量%から約55重量%、約30重量%から約50重量%、約35重量%から約55重量%、約40重量%から約80重量%、約50重量%から約90重量%、約65重量%から約95重量%、約70重量%から約80重量%、約75重量%から約95重量%、約80重量%から約99重量%、約90重量%から約99重量%、または約50重量%から約70重量%の濃度で、疎水性組成物中に存在することができる。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の疎水性基剤は、単独でまたは一緒に、疎水性組成物の約50重量%から約90重量%の濃度で、混合物を形成するのに使用する疎水性組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、1つまたは複数の疎水性基剤は、単独でまたは一緒に、疎水性組成物の約70重量%から約99重量%の濃度で、混合物を形成するのに使用する疎水性組成物中に存在することができる。
【0088】
少なくとも1つの両親媒性化合物が、本発明の疎水性組成物中に存在することができる。両親媒性化合物が、それぞれが親水性特性および/または疎水性特性を提供することができる2つ以上の化合物を含むことができる。一部の実施形態では、両親媒性化合物は親水性特性および疎水性特性を有する1つの化合物を含むことができる。本発明の一部の実施形態では、両親媒性化合物によって、蒸気状の水分を実質的に吸収することなく水分を吸収することが可能である。両親媒性化合物は、12~20の、またはその中の任意の範囲のおよび/または個々の値の、例えば、これらに限定されないが、15~20または18~20の、親水親油バランス(hydrophilic-lipophilic balance)(HLB)値を有することができる。本発明のある特定の実施形態では、両親媒性化合物は19のHLB値を有することができる。
【0089】
両親媒性化合物の例には、これらに限定されないが、脂肪酸エステルが含まれる。1つまたは複数の、例えば2、3、4またはそれより多くの脂肪酸エステルが、本発明の混合物中に存在することができる。脂肪酸エステルの例には、これらに限定されないが、メチルラウレート、エチルラウレート、エチルミリステート、エチルパルミテート、エチルリノレート、プロピルイソブチレート、イソプロピルラウレート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、オレイルミリステート、オレイルステアレートおよびオレイルオレエートなどのC6~C22アルキルおよび/またはアルケニル脂肪酸エステル;エトキシル化脂肪アルコールの脂肪酸エステルなどのエーテル-エステル;エチレングリコールモノ-およびジ-脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ-およびジ-脂肪酸エステルなどの多価アルコールエステル;PEG-6-ラウレート、PEG-6-ステアレート、PEG-8-ジラウレート、PEG-8-ジステアレート等などのポリエチレングリコール(6~2000)脂肪酸モノエステルおよび/またはジエステル;PEG-20-グリセリルラウレート、PEG-20-グリセリルステアレート、およびPEG-20-グリセリルオレエートなどのポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;プロピレングリコールモノ-およびジ-脂肪酸エステル;ポリプロピレングリコール2000モノオレエート;ポリプロピレングリコール2000モノステアレート;エトキシル化プロピレングリコールモノステアレート;グリセリルモノ-およびジ-脂肪酸エステル;ポリグリセリル-10ラウレート等などのポリグリセロール脂肪酸エステル;エトキシル化グリセリルモノステアレート;1,3-ブチレングリコールモノステアレート;1,3-ブチレングリコールジステアレート;ポリオキシエチレンポリオール脂肪酸エステル;ソルビタントリオレエートおよびソルビタンモノラウレートといったソルビタン脂肪酸エステル;PEG-6ソルビタンモノオレエートなどのポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートといったポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;サッカロースモノパルミテートおよびサッカロースモノステアレートなどのスクロース脂肪酸エステル;蜜蝋、鯨蝋、ミリスチルミリステート、ステアリルステアレートおよびアラキジルベヘネートなどのワックスエステル;PEG-10オレイルエーテルまたはPEG-9セチルエーテルなどのポリエチレングリコールアルキルエーテル;PEG-10-100ノニルフェノールなどのポリエチレングリコールアルキルフェノール;ポロキサマー188などのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;コレステロール脂肪酸エステルなどのステロールエステル、ならびにそれらの任意の組合せが、含まれる。
【0090】
ある特定の実施形態では、脂肪酸エステルには、ポリエチレングリコール(PEG)グリセリドが含まれ得る。PEGグリセリドのポリエチレングリコール部分によって、両親媒性化合物の親水性特性を提供することができ、これには、これらに限定されないが、PEG5~1000、またはその中の任意の範囲および/または個々の値、ならびにそれらの任意の組合せが含まれ得る。PEGグリセリドのグリセリド部分によって、両親媒性化合物の疎水性特性を提供することができ、これには、これらに限定されないが、ヒマシ油、水素化ヒマシ油、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、植物油(例えば、トウモロコシ油、オリーブ油、ピーナッツ油、パーム核油、杏仁油、アーモンド油等)、ならびにそれらの任意の組合せなどの、天然油および/または水素化油が含まれ得る。ポリエチレングリコール(PEG)グリセリドの例には、これらに限定されないが、PEG-20ヒマシ油、PEG-20水素化ヒマシ油、PEG-20トウモロコシグリセリド、PEG-20アーモンドグリセリド;PEG-23トリオレエート、PEG-40パーム核油、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド、PEG-6カプリル酸/カプリン酸グリセリド、ラウロイルマクロゴール-32グリセリド、ステアロイルマクロゴールグリセリド、トコフェリルPEG-1000スクシネート、およびそれらの任意の組合せが含まれる。一部の実施形態では、脂肪酸エステルには、PEG5~30(すなわち、PEG5、6、7、8、9、10等)およびカプリル酸/カプリン酸グリセリドが含まれ得る。特定の実施形態では、混合物は、PEG-5-カプリル酸/カプリン酸グリセリド、PEG-6-カプリル酸/カプリン酸グリセリド、PEG-7-カプリル酸/カプリン酸グリセリド、および/または、PEG-8-カプリル酸/カプリン酸グリセリドを含むことができる。ある特定の実施形態では、混合物は、1つまたは複数の脂肪酸エステル、例えば、これらに限定されないが、SOFTIGEN(登録商標)という商標でSasol(Hamburg、ドイツ)から市販されているものを含むことができる。
【0091】
両親媒性化合物は、疎水性組成物の約0.5重量%から約30重量%の濃度で、またはその中の任意の範囲でおよび/または個々の値で、例えば、これらに限定されないが、疎水性組成物の、約0.5重量%から約10重量%、約2重量%から約20重量%、約1重量%から約10重量%、約1重量%から約5重量%、または5重量%から約15重量%の濃度で、本発明の混合物を形成するのに使用する疎水性組成物中に存在することができる。ある特定の実施形態では、両親媒性化合物は、疎水性組成物の約10重量%の濃度で、本発明の混合物を形成するのに使用する疎水性組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、両親媒性化合物は、疎水性組成物の約0.5重量%から約10重量%の濃度で、本発明の混合物を形成するのに使用する疎水性組成物中に存在することができる。
【0092】
本発明の混合物は、1つまたは複数の賦形剤をさらに含むことができる。一部の実施形態では、1つまたは複数の賦形剤が、本発明の混合物を形成するのに使用することができる疎水性組成物中に存在することができる。医薬組成物中での使用向けの賦形剤は当技術分野でよく知られており、例を、the Handbook of Pharmaceutical Excipients(Rowe,R.C.et al.,APhA Publications;5th ed.,2005)に見いだすことができる。賦形剤の種類には、これらに限定されないが、エモリエント、保湿剤、共溶媒、pH調整剤、撥水剤、消泡剤、界面活性剤、可溶化剤、乳化剤、湿潤剤、浸透増強剤、抗酸化剤、および/または溶媒が含まれ得る。賦形剤は、適切な任意の濃度で本発明の混合物を中に存在することができる。一部の実施形態では、賦形剤は、疎水性組成物の約1重量%から約30重量%の濃度で、またはその中の任意の範囲でおよび/または個々の値で、例えば、これらに限定されないが、疎水性組成物の、約1重量%から約15重量%、約1重量%から約10重量%、約1重量%から約20重量%、約5重量%から約15重量%、または約5重量%から約10重量%の濃度で、本発明の混合物を形成するのに使用する疎水性組成物中に存在することができる。
【0093】
一部の実施形態では、疎水性組成物が共溶媒を含むことができる。共溶媒は、疎水性組成物の約1重量%から約30重量%の濃度で、またはその中の任意の範囲でおよび/または個々の値で、例えば、これらに限定されないが、疎水性組成物の、約1重量%から約15重量%、約1重量%から約20重量%、約2重量%から約20重量%、約5重量%から約25重量%、または約5重量%から15重量%の濃度で、本発明の混合物を形成するのに使用する疎水性組成物中に存在することができる。本発明のある特定の実施形態では、共溶媒は、疎水性組成物の約10重量%から約15重量%の濃度で、本発明の混合物を形成するのに使用する疎水性組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、共溶媒は、疎水性組成物の約1重量%から約15重量%の濃度で本発明の混合物を形成するのに使用する疎水性組成物中に存在することができる。
【0094】
共溶媒の例には、これらに限定されないが、脂肪酸エステル、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、シクロメチコンなどのシリコーン、およびそれらの任意の組合せが含まれる。一部の実施形態では、共溶媒には、中性油が含まれ得る。ある特定の実施形態では、共溶媒には、カプリル酸トリグリセリドおよび/またはカプリン酸トリグリセリドなどのカプリル酸脂肪酸エステルおよび/またはカプリン酸脂肪酸エステルが含まれる。共溶媒の例には、これらに限定されないが、商標名MIGLYOL(登録商標)の下でSasol(Hamburg、ドイツ)から市販されているものが含まれる。
【0095】
混合物は、保湿剤を含むことができる。適切な任意の保湿剤または保湿剤の組合せを使用することができる。保湿剤は、疎水性組成物の約1重量%から約25重量%の濃度で、またはその中の任意の範囲でおよび/または個々の値で、例えば、これらに限定されないが、疎水性組成物の、約1重量%から約15重量%、約2重量%から約20重量%、約5重量%から約10重量%、または約5重量%から約15重量%の濃度で、本発明の混合物を形成するのに使用する疎水性組成物中に存在することができる。ある特定の実施形態では、保湿剤は、疎水性組成物の約10重量%から約15重量%の濃度で、本発明の混合物を形成するのに使用する疎水性組成物中に存在することができる。
【0096】
保湿剤の例には、これらに限定されないが、多価アルコール、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびメトキシポリエチレングリコールなどのグリコール;プロピレングリコール、グリセロール、イソプロパノール、エタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコールまたはそれらの混合物などのグリセロール;ソルビトール、キシリトールおよびマルチトールなどの糖ポリオール;ポリデキストロースなどのポリオール;ジメチルイソソルビド;キラヤ;尿素;ならびにそれらの任意の組合せが含まれる。本発明の特定の実施形態では、保湿剤には、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、およびそれらの任意の組合せなどのアルキレングリコールが含まれる。
【0097】
混合物は、乳化剤を含むことができる。任意の適切な乳化剤または乳化剤の組合せを使用することができる。乳化剤は、疎水性組成物の約1重量%から約30重量%の濃度で、またはその中の任意の範囲でおよび/または個々の値で、例えば、これらに限定されないが、疎水性組成物の、約2重量%から約20重量%、約5重量%から約15重量%、約10重量%から約30重量%、約25重量%から約30重量%、または約5重量%から約30重量%の濃度で、本発明の混合物を形成するのに使用する疎水性組成物中に存在することができる。ある特定の実施形態では、乳化剤は、疎水性組成物の約5重量%から約15重量%の濃度で、本発明の混合物を形成するのに使用する疎水性組成物中に存在することができる。
【0098】
乳化剤の例には、これらに限定されないが、モノステアリン酸グリセロール;モノ/ジグリセリド;ホスファチジルコリン;レシチン;tween80ポリソルベート20、21、40、60、61、65、81、85、120およびソルビタンエステル、脂肪酸、脂肪アルコール、ラノリン、ラノリンアルコール、ヒマシ油(天然または水素化)、またはアルキルベンゼンのその他のポリオキシエチレン付加物といったポリエトキシル化化合物などの界面活性剤;DOW CORNING(登録商標)から市販されているemulsifier 10;セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、およびセトステアリルアルコールなどの脂肪族アルコール;商標名MIGLYOL(登録商標)の下で、Sasol(Hamburg、ドイツ)から市販されているものなどの脂肪酸エステル、ならびにそれらの任意の組合せが含まれる。
【0099】
一部の実施形態によれば、本発明の疎水性組成物が、これらに限定されないが、一酸化窒素放出性APIなどのAPI、疎水性基剤、両親媒性化合物、および乳化剤を含むことができる。一部の実施形態では、APIはNO放出性APIとすることができ、疎水性基剤は鉱物油とポリエチレンとの組合せを含む疎水性ポリマーとすることができ、両親媒性化合物はPEG-6-カプリル酸グリセリド/カプリン酸グリセリドとすることができ、乳化剤はセチルアルコールとすることができる。一部の実施形態では、APIはNO放出性APIとすることができ、疎水性基剤は鉱物油とポリエチレンとの組合せを含む疎水性ポリマーとすることができ、両親媒性化合物はPEG-6-カプリル酸グリセリド/カプリン酸グリセリドとすることができ、乳化剤はグリセロールモノステアレートとすることができる。APIは、疎水性組成物の約0.1重量%~約30重量%の量で存在することができ、疎水性基剤は、疎水性組成物の約50重量%~約95重量%の量で存在することができ、両親媒性化合物は、疎水性組成物の約1重量%~約20重量%の量で存在することができ、乳化剤は、疎水性組成物の約1重量%~約20重量%の量で存在することができる。一部の実施形態では、疎水性組成物は軟膏の形態とすることができる。
【0100】
一部の実施形態によれば、本発明の疎水性組成物が、これらに限定されないが、一酸化窒素放出性APIなどのAPI、疎水性基剤、両親媒性化合物、およびケイ素含有化合物を含むことができる。一部の実施形態では、APIはNO放出性APIとすることができ、疎水性基剤は鉱物油とポリエチレンとの組合せを含む疎水性ポリマーとすることができ、両親媒性化合物はPEG-6-カプリル酸グリセリド/カプリン酸グリセリドとすることができ、シリコン含有化合物は、シクロメチコンおよび/またはシリコーンエラストマー(例えば、St-Elastomer 10)とすることができる。一部の実施形態では、疎水性組成物はシクロメチコンおよびシリコーンエラストマー(例えば、St-Elastomer 10)を含む。APIは、疎水性組成物の約0.1重量%~約30重量%の量で存在することができ、疎水性基剤は、疎水性組成物の約50重量%~約95重量%の量で存在することができ、両親媒性化合物は、疎水性組成物の約1重量%~約20重量%の量で存在することができ、シリコン含有化合物は、疎水性組成物の約1重量%~約30重量%の量で存在することができる。一部の実施形態では、疎水性組成物は軟膏の形態とすることができる。
【0101】
本発明のヒドロゲルを、これに限定されないが、NO放出性APIなどの疎水性組成物中に存在するAPIの放出を調節するように構成することができる。一部の実施形態では、混合物が疎水性組成物およびヒドロゲルを含んで形成される場合、ヒドロゲル中に存在する水は疎水性組成物と接触して、これに限定されないが、NO放出性APIなどの、疎水性組成物中に存在するAPIの放出を調節することができる。あるいはまたはそれに加えて、一部の実施形態では、混合物中のヒドロゲルによって、混合物中の疎水性組成物のpHを調節して、その結果、これに限定されないが、NO放出性APIなどの、疎水性組成物中に存在するAPIの放出を調節することができる。一部の実施形態では、本発明のヒドロゲルおよび/または本発明の疎水性組成物が混合状態である場合、ヒドロゲルによって疎水性組成物に水を供給することができ、および/または疎水性組成物のpHを調節することができる。一部の実施形態では、本発明の混合物によって、API(例えば、NO放出性API)の溶解性を高めることができ、および/または、APIまたはAPIの活性成分(例えば、NO)のバイオアベイラビリティを高めることができる。
【0102】
「ヒドロゲル」とは、本明細書で使用する場合、ゲルマトリックスおよび水を含む親水性ゲルを指す。水は、ヒドロゲルの約50重量%~約99重量%の量で、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値、例えば、これらに限定されないが、ヒドロゲルの、約55重量%~約95重量%、ヒドロゲルの約65重量%~約95重量%、約70重量%~約99重量%、約75重量%~約95重量%、約80重量%~約90重量%、または約80重量%~約85重量%の量でヒドロゲル中に存在することができる。
【0103】
ヒドロゲルは、本発明の混合物のpHを維持および/または安定化するための手段を備えることができる。混合物のpHを維持および/または安定化するための手段を、混合物のpHを所望のpH範囲内に制御するように構成することができる。混合物のpHを維持および/または安定化するための手段の例には、これに限定されないが、緩衝剤が含まれる。ヒドロゲル中で使用することができる緩衝剤の例には、これらに限定されないが、酢酸/酢酸塩緩衝剤;塩酸/クエン酸塩緩衝剤;クエン酸リン酸塩緩衝剤(citro-phosphate buffer);リン酸塩緩衝剤;クエン酸/クエン酸塩緩衝剤;乳酸緩衝剤;酒石酸緩衝剤;リンゴ酸緩衝剤;グリシン/HCl緩衝剤;食塩緩衝剤、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリス緩衝生理食塩水(TBS)、トリス-HCl、NaCl、Tween緩衝生理食塩水(TNT)、リン酸緩衝生理食塩水、Triton X-100(PBT)およびそれらの混合物;カコジル酸塩緩衝剤;バルビタール緩衝剤;トリス緩衝剤;ならびにそれらの任意の組合せが含まれ得る。
【0104】
緩衝剤は、約5mmol~約3モルの濃度で、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値で、例えば、これらに限定されないが、約10mmol~約1モル、約1.5モル~約2.5モル、約100mmol~約750mmol、または約200mmol~約500mmolの濃度で、ヒドロゲル中に存在することができる。一部の実施形態では、緩衝剤は、ヒドロゲル中に存在する水の量に基づいて計算したモル濃度で、約0.5M~約5M(例えば、約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5M)の範囲の濃度で、ヒドロゲル中に存在することができる。一部の実施形態では、緩衝剤は、ヒドロゲルの約0.1重量%~約20重量%の量で、例えば、これらに限定されないが、ヒドロゲルの約0.1重量%~約10重量%、約1重量%~約15重量%、約10重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、または約1重量%~約5重量%の量で、ヒドロゲル中に存在することができる。一部の実施形態では、少なくとも2つの緩衝剤(例えば、2、3、4またはそれより多く)が本発明のヒドロゲル中に存在することができる。
【0105】
一部の実施形態では、ヒドロゲルはリン酸塩緩衝剤を含むことができる。リン酸塩緩衝剤の例には、少なくとも1種のリン酸塩、例えば、これらに限定されないが、リン酸ナトリウム(例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウムおよびリン酸アルミニウムナトリウム)、リン酸カリウム(例えば、第一リン酸カリウムおよび第二リン酸カリウム)、ルビジウムリン酸塩、セシウムリン酸塩、およびアンモニウムリン酸塩、ならびに/または少なくとも1種のリン酸、例えば、これらに限定されないが、ピロリン酸、三リン酸、およびオルトリン酸が含まれ得る。ヒドロゲルは、リン酸塩の約5mmol~約1モルの、例えば、これらに限定されないが、約10mmol~約750mmol、約150mmol~約500mmol、または約200mmol~約400mmolの、総リン酸塩濃度を有することができる。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、ヒドロゲルの約1重量%~約20重量%の量で、例えば、これらに限定されないが、ヒドロゲルの、約1重量%~約15重量%、約5重量%~約15重量%、約10重量%~約20重量%、約5重量%~約10重量%、約1重量%~約5重量%、または約4重量%~約8重量%の量で存在するリン酸塩緩衝剤を含むことができる。
【0106】
緩衝剤のさらなる例には、これらに限定されないが、クエン酸、酢酸、乳酸、ホウ酸、コハク酸、リンゴ酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびそれらの任意の組合せが含まれる。一部の実施形態では、ヒドロゲルは酢酸緩衝剤を含むことができる。酢酸緩衝剤の例には、酢酸、ならびに/または、これらに限定されないが、酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムなどの少なくとも1つの酢酸塩が含まれる。一部の実施形態では、本発明のヒドロゲルは、例えば4~5または5.5~6.5の範囲などの4~6.5の範囲のpKaを有する緩衝剤を含むことができる。一部の実施形態では、ヒドロゲルは、約4、4.5、5、5.5、6または6.5のpKaを有する緩衝剤を含むことができる。
【0107】
一部の実施形態では、ヒドロゲルは、緩衝体および/または緩衝剤を含まないか、または実質的に欠いている。一部の実施形態では、ヒドロゲルは非緩衝である(すなわち、ヒドロゲルのpHは、緩衝体および/または緩衝剤で安定化されていない)。
【0108】
ヒドロゲルをpH依存性とすることができる。一部の実施形態では、ヒドロゲルを、少なくとも約4~約8の緩衝能を、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値の、例えば、これらに限定されないが、約4~約7、約5~約6、約5~約8、約6~約8の緩衝能を有するように構成することができる。ヒドロゲルは、ヒドロゲルのpHの約0.5以上のpH単位以内に、例えば、約1、2、または3のpH単位などの以内に混合物のpHを維持および/または安定化するように構成することができる。混合物を形成する場合および/または混合物が混合物の適用部位(例えば、対象の皮膚および/または創床)にある場合、混合物のpHを維持および/または安定化することができる。例えば、本発明の疎水性組成物とともに約4のpHを有するヒドロゲルを含む混合物を形成し、対象の皮膚に適用する場合、混合物のpHを、ヒドロゲルのpHの約0.5pH単位以内に維持および/または安定化するように、ヒドロゲルを構成することができる(すなわち、ヒドロゲルによって、混合物のpHを約4.5~5.5のpH範囲内に維持し得る)。一部の実施形態では、約pH3から約pH6、約pH3から約pH5、約pH3から約pH4、約pH4から約pH8、約pH4から約pH7、約pH4から約pH6、約pH5から約pH7、約pH5から約pH6、約pH6から約pH7のpH範囲に、またはその中の他の任意の範囲に、混合物のpHを維持および/または安定化するようにヒドロゲルを構成することができる。このように、混合物は、適用部位(例えば、皮膚)に特定のpHをもたらすことができるが、このことが、混合物が存在しない場合において適用部位のpHの上昇または低下を起こす可能性がある。
【0109】
本発明のヒドロゲルは、任意の適切なpH、例えば、約3~約8のpH、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値、例えば約3~約4、約4~約5、約4.5~約6.5、または約4~約6、を有することができる。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、約4または約4.5のpHを有することができる。一部の実施形態では、ヒドロゲルは緩衝化されていてもよく、および/または保存剤を含有しなくてもよい。
【0110】
ヒドロゲルは、天然および/または合成ポリマーを含むことができる。ポリマーの例には、これらに限定されないが、キトサンおよびキチンなどの多糖;荷電セルロースおよび薬学的に許容されるそれらの塩;ポリアクリルポリマーなどのアクリル酸、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリレートポリマー、架橋ポリアクリレートポリマー、架橋ポリアクリル酸、商標CARBOPOL(登録商標)で、Lubrizol(Wickliffe、Ohio)から市販されているポリアクリル酸ポリマー、およびそれらの混合物;ならびにそれらの任意の組合せが含まれる。一部の実施形態では、ヒドロゲルは、荷電セルロースまたは薬学的に許容されるその塩を含む。荷電セルロースまたは薬学的に許容されるその塩の例には、これらに限定されないが、イオン性セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、ヒドロキシエチルカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルカルボキシメチルセルロース、スルホエチルセルロース、ヒドロキシエチルスルホエチルセルロース、ヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースエトキシレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カラギーナン、キトサン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸およびその塩、ならびにそれらの任意の組合せが含まれる。一部の実施形態では、ヒドロゲルはカルボキシメチルセルロースおよび/またはその塩を含むことができる。一部の実施形態では、ヒドロゲルは四級化ヒドロキシエチルセルロースエトキシレートを含むことができる。一部の実施形態では、ヒドロゲルはキトサンを含むことができる。
【0111】
これらに限定されないが、荷電したセルロースまたは薬学的に許容されるその塩などのポリマーが、ヒドロゲルの約0.1重量%~約15重量%の量で、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値で、例えば、これらに限定されないが、ヒドロゲルの、約0.3重量%~約10重量%、約0.5重量%~約10重量%、約1重量%~約10重量%または約1重量%~約5重量%の量で、ヒドロゲル中に存在することができる。ある特定の実施形態では、これらに限定されないが、荷電したセルロースおよび/またはその薬学的に許容される塩(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびその塩)などのポリマーは、ヒドロゲルの、約0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、または15重量%の量で、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値で、ヒドロゲル中に存在することができる。
【0112】
ヒドロゲルは、多価アルコールを含むことができる。多価アルコールの例には、これらに限定されないが、グリセロール、グリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、n-メチルジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ソルビトール、アラビトール、エリトリトール、HSH、イソマルト、ラクチトールマルチトール、マンニトール、キシリトール、トレイトール、リビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、およびそれらの任意の組合せが含まれる。一部の実施形態では、ヒドロゲルは、ヘキシレングリコールなどのグリコールを含むことができる。
【0113】
多価アルコールは、ヒドロゲルの約1重量%~約30重量%の量で、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値、例えば、これらに限定されないが、ヒドロゲルの、約1重量%~約25重量%、約5重量%~約15重量%、約5重量%~約20重量%、約10重量%~約30重量%、または約15重量%~約25重量%の量で、ヒドロゲル中に存在することができる。ある特定の実施形態では、多価アルコールは、ヒドロゲルの、約1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、または30重量%の量で、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値で、ヒドロゲル中に存在することができる。
【0114】
ヒドロゲルは、保存剤を含むことができる。保存剤が、組成物の約0.01重量%~約2重量%の量で、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値、例えば、これらに限定されないが、ヒドロゲルの、約0.05重量%~約1重量%、約0.05重量%~約0.5重量%、または約0.1重量%~約1重量%の量で、ヒドロゲル中に存在することができる。ある特定の実施形態では、保存剤は、ヒドロゲルの、約0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%、または2重量%の量で、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値で、ヒドロゲル中に存在する。一部の実施形態では、本発明のヒドロゲルは保存剤を含まない。
【0115】
本発明のヒドロゲル中に存在し得る保存剤の例には、これらに限定されないが、ソルビン酸、安息香酸、メチル-パラベン、プロピル-パラベン、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、ジアゾリジニル尿素、クロロブタノール、トリクロサン、塩化ベンゼトニウム、p-ヒドロキシベンゾエート、クロルヘキシジン、ジグルコン酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、アルコール、塩化ベンザルコニウム、ホウ酸、ブロノポール、ブチルパラベン、ブチレン酢酸カルシウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、二酸化炭素、カチオン性、およびベントナイト、セトリミド、セチルピリジニウムクロリド、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クエン酸一水和物、クレゾール、ジメチルエーテル、エチルパラベン、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、イソプロピルアルコール、乳酸、モノチオグリセロール、ペンテト酸、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安息香酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、プロピレングリコール、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、キシリトール、二酸化硫黄、二酸化炭素、ならびにそれらの任意の組合せが含まれ得る。
【0116】
ヒドロゲルは、中和剤を含むことができる。中和剤は、約3~約8のpH、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値、例えば、これらに限定されないが、約4~約7または約6~約7のpHを、ヒドロゲルにもたらすのに十分な量でヒドロゲル中に存在することができる。一部の実施形態では、中和剤によってヒドロゲルのpHを調整する。本発明のある特定の実施形態では、中和剤は、ヒドロゲルが約3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、もしくは8のpH、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値を有するのに十分な量で、本発明のヒドロゲル中に存在することができる。ヒドロゲル中に存在し得る中和剤の例には、これらに限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびそれらの混合物などの塩基;塩酸、クエン酸、酢酸、およびそれらの混合物などの酸;炭酸ナトリウム;トロラミン;トロメタミン;アミノメチルプロパノール;トリイソプロパノールアミン;アミノメチルプロパノール;テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン;EDTA四ナトリウム;suttocide A;ならびにそれらの任意の組合せが含まれる。
【0117】
一部の実施形態では、本発明のヒドロゲルは、水、ポリマー、緩衝剤、および保湿剤を含む。水はヒドロゲルの約50重量%~約90重量%の量で存在することができ、ポリマーはヒドロゲルの約0.5重量%~約5重量%の量で存在することができ、緩衝剤はヒドロゲルの約1重量%~約20重量%の量で存在することができ、保湿剤はヒドロゲルの約1重量%~約20重量%の量で存在することができる。緩衝剤は少なくとも2つの緩衝剤を含むことができる。一部の実施形態では、ポリマーはカルボキシメチルセルロースまたはその塩であり、緩衝剤は酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)および/または酢酸であり、保湿剤はグリセリンである。一部の実施形態では、ヒドロゲルは保存剤を含まない。一部の実施形態では、ヒドロゲルはヒドロゲルの約0.01重量%~約1重量%の量で保存剤(例えば、安息香酸)を含む。
【0118】
一部の実施形態によれば、本発明の組成物(例えば、ヒドロゲルおよび/または混合物)を抗菌剤とすることができる。本発明のヒドロゲルおよび/または混合物を美容上優雅とすることができる。「美容上優雅」とは、本明細書で使用する場合、皮膚に適用するのに魅力的である組成物を指すが、皮膚には粘膜を含めることができる。一部の実施形態では、本発明の組成物を、皮膚および/または粘膜にとって美容上優雅とすることができる。本発明の美容上優雅な組成物は、局所適用に適した粘稠度または粘度(例えば、皮膚に塗り広げやすく、垂れない)、局所適用に適した質感(例えば、ざらざらしない、滑らかなまたは柔らかい組成物)、皮膚に吸収および/または浸透する能力、ネバネバしないまたはベトベトしない、残留物を残さない、皮膚に良好な感覚を残す、および適用後に皮膚を脂性または乾性にしない、という特性の1つまたは複数を有することができる。
【0119】
一部の実施形態では、ヒドロゲルは、約5,000cP(センチポアズ)~約100,000cPの粘度、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値、例えば、これらに限定されないが、約10,000cP~約50,000cP、約20,000cP~約40,000cP、約30,000cP~約50,000cP、約50,000cP~約100,000cP、または約30,000cP~約75,000cPの粘度を有することができる。
【0120】
本発明のヒドロゲルを、1種または複数の、例えば、これらに限定されないが、2、3、4、またはそれより多くの様々な組成物との、本発明の混合物中で適切であるとすることができる。本発明のヒドロゲルを、本発明の混合物中に存在する場合、薬物送達システムおよび/または薬物放出システムとして使用することができる。例えば、ヒドロゲルを、ヒドロゲルおよび疎水性組成物を含む混合物を形成および/また投与するときに、疎水性組成物中の活性医薬成分(API)の放出を調節するように構成することができる。あるいはまたはそれに加えて、ヒドロゲルを、ヒドロゲルおよび疎水性組成物を含む混合物を形成および/または投与するときに、疎水性組成物のpHを調節するように構成することができる。一部の実施形態では、ヒドロゲルを、ヒドロゲルおよび疎水性組成物を含む混合物を形成および/または投与するときに、一酸化窒素(NO)放出性APIを含む疎水性組成物のpHおよび/またはNO放出性APIからのNOの放出速度を調節するように構成することができる。
【0121】
一部の実施形態では、本発明の混合物を自己乳化性とすることができる。自己乳化混合物によって、混合物の少なくとも2つの組成物を組み合わせる際に、自発的エマルションを形成することができる(例えば、最低限の機械的エネルギーを適用してまたは適用せずに)。一部の実施形態では、自己乳化性の混合物には、自発的エマルションを形成するために、熱を要求しなくてもよくおよび/または必要としなくてもよい。一部の実施形態では、自己乳化性の混合物は、最低限の機械的力もしくは外力の下で、および/または機械的力もしくは外力無しの下で、化学反応を介して自発的に乳化して、自発的エマルションを形成することができる。例えば、自己乳化性の混合物を、対象および/または第三者が、その手で混合物の少なくとも2種の組成物を調合することによって、形成することができる。一部の実施形態では、最低限の機械的力があると、十分な剪断力が提供されて、混合物の少なくとも2種の組成物を乳化させることができる。一部の実施形態では、混合物の少なくとも2種の組成物を乳化させる最低限の機械的力は、約1s-1~約5,000s-1の範囲の、例えば、約10s-1~約200s-1、約100s-1~約1000s-1、約500s-1~約3000s-1、または約10s-1~約2500s-1などの範囲の剪断速度を有することができる。
【0122】
エマルションを形成すると自己乳化性の混合物は、単相を含有することができる、および/または単相とすることができる。一部の実施形態では、自己乳化性の混合物は粗エマルション、マイクロエマルションまたはナノエマルションとすることができる。一部の実施形態では、自己乳化性の混合物は、非分離性もしくは連続的なエマルションおよび/または均一組成物とすることができる。一部の実施形態では、自己乳化性の混合物によって、親水性組成物中に疎水性成分を封入することができる。一部の実施形態では、自己乳化性の混合物に、水または親水性相に包囲されている油または疎水性相の小滴を含有せしめることができ、そして小滴によってAPIを封入することができる。本発明の自己乳化性の混合物を、油中水型エマルションまたは水中油型エマルションとすることができる。一部の実施形態では、本発明の疎水性組成物と親水性組成物(例えば、ヒドロゲル)とを組み合わせた際に自己乳化性の混合物を形成することができる。一部の実施形態では、疎水性組成物は、組成物が自己乳化性の組成物であるか否かについての決定要因となる場合がある。
【0123】
一部の実施形態では、混合物は、連続的なエマルション(すなわち、非分離性エマルション)である。一部の実施形態では、混合物は、少なくとも1、2、3、4、5、6日、またはそれより多くの日数、または1、2、3、4、5、6週、またはそれより多くの週数、または1、2、3、4、5、6ヶ月、またはそれより多くの月数の間、依然として連続的なエマルションであることができ、および/または単相として一緒に留まることができる。一部の実施形態では、混合物は、組成物を対象に適用するのに十分な期間、連続的なエマルションであり得る。組成物の2種以上の部分を組み合わせて1日以内に2つ以上の相に分離する組成物は、自己乳化性の混合物および/または連続的なエマルションであるとはみなされない。
【0124】
一部の実施形態では、自己乳化性の混合物は、100μm超の小滴サイズ(例えば、直径)を有し得る。一部の実施形態では、自己乳化性の混合物によって、約100μm以下の、例えば、これらに限定されないが、約90μm、70μm、50μm、30μm以下の、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値の、小滴サイズを有し得るエマルションを形成または生成することができる。一部の実施形態では、自己乳化性の混合物によって、1μm超の小滴サイズを有し得るエマルションを形成または生成することができる。一部の実施形態では、自己乳化性の混合物によって、約400nm以下の、例えば、これらに限定されないが、約300nm、200nm、100nm、もしくは50nm以下の、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値の、小滴サイズを有し得るナノエマルションを形成または生成することができる。一部の実施形態では、自己乳化性の混合物はサイズが実質的に均一な小滴を含み得る。
【0125】
本発明の混合物によって、混合物中に存在するAPIについて特定の放出パターンが可能となる。API放出パターンは、ある期間にわたって放出されたAPIの量もしくは濃度および/またはある期間にわたる混合物からのAPIの放出の速度を比較することによって決定できる。一部の実施形態では、混合物中に存在する少なくとも2種の異なる組成物は、特定のAPI放出パターンをもたらすように選択される。特定の炎症状態にとってAPI放出パターンを望ましいとすることができる。一部の実施形態では、混合物中に存在するAPIの特定の放出パターンをもたらすように混合物を構成することができる。
【0126】
本発明の混合物によって、混合物からのAPIの即時的放出および/または混合物からのAPIの持続的放出が可能となる。本明細書で使用する場合、即時的放出とは、調合して4時間以内でAPIの50%以上の放出を指し、持続的放出とは、調合して4時間以内でAPIの50%未満の放出を指す。一部の実施形態では、本発明の混合物によって、混合物が存在しない場合の組成物中のAPIの放出および/または効力と比較して、混合物のpHを特定のpH範囲内に維持することにより、放出されるAPIの量および/または混合物中の少なくとも1種の組成物中に存在するAPIの効力を増加させることができる。
【0127】
混合物中に存在するAPIを、ある期間にわたって混合物から実質的に連続的に放出することができる。「実質的に連続的に」とは、およびこの文法上の変化形は、本明細書で使用する場合、平均してAPIの放出によって対象に全体的な有益効果が与えられるように、その間中ずっとまたはその時間の一部の間、混合物からAPIが放出されることを指す。したがって、APIが放出されていない1回のまたは複数の短い、断続的なおよび/または定期的な期間が存在する場合もあるが、対象へのAPIの全体的な有益効果は存続する。一部の実施形態では、混合物によって、ある期間にわたって実質的に連続的なAPI放出パターンをもたらすことができるとともに、当該期間にわたって治療有効量のAPIを供給することができる。一部の実施形態では、放出されるAPIの量および/またはAPI放出速度を、ある期間にわたって変化させることができる。ある特定の実施形態では、混合物は、APIについて2種以上(例えば、2、3、4、5種、またはそれより多く)の放出速度を備えることができる。
【0128】
混合物によって、ある期間にわたって実質的に一定のAPI放出パターンをもたらすことができる。「実質的に一定の」とは、本明細書で使用する場合、測定可能な値、平均して、ある期間にわたって、約20%、15%、10%、5%、または1%以下よりも小さく変化する、測定可能な値、例えば、APIの量またはAPI放出速度をさす。一部の実施形態では、API放出速度を、ある期間実質的に一定とすることができるとともに、別の連続的なまたは非連続的な期間にわたって変化させることができ、またその逆もあり得る。
【0129】
一部の実施形態では、混合物によって急速な放出部分および実質的に一定の放出部分を有するAPI放出パターンが可能となる。急速な放出部分は、投与(すなわち、t=0)から投与後2時間まで、またはその中の任意の範囲、例えば、これらに限定されないが、0から投与後1時間までもしく0から投与後30分までに放出されたAPIの量を構成することができる。実質的に一定の放出の部分は、急速放出部分の直後から、APIの最後の量が放出されるまでに放出されたAPIの量を構成することができる。APIを、任意の期間本発明の混合物から放出することができる。一部の実施形態では、APIを、少なくとも約4時間、6時間、12時間、24時間、2日、3日、4日、5日、6日、7日、またはそれより長い間、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値の間、混合物から放出することができる。混合物から放出されるAPIを、対象に有益な効果を全体としてもたらす量で、および/またはその期間にわたって治療有効量のAPIを供給する量で放出することができる。
【0130】
一部の実施形態では、実質的に一定の放出の部分と比較して、急速放出部分中にAPIの量または濃度をより高めて放出することができ、またその逆もあり得る。一部の実施形態では、急速放出部分中に混合物から放出されるAPIの量を、実質的に一定の放出部分中に放出されるAPIの量よりも、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、またはそれより多く、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値とすることができる。他の実施形態では、実質的に一定の放出部分中に混合物から放出されるAPIの量を、急速放出部分中に放出されるAPIの量よりも、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、またはそれより多く、またはその中の任意の範囲および/もしくは個々の値とすることができる。
【0131】
本発明の混合物を、局所投与に適するとすることができる。混合物は、2種以上の異なる組成物から調製または形成することができる場合でも、単相を含むことができる。混合物を緩衝することができる。一部の実施形態では、混合物は、本明細書に記載の疎水性組成物およびヒドロゲルを含むことができる。一部の実施形態では、混合物はヒドロゲルおよび軟膏を含むことができる。ヒドロゲルおよび軟膏によって緩衝されている、単相を有する混合物を形成することができる。一部の実施形態では、混合物は、ヒドロゲルおよび軟膏を含み、混合物をクリームの形態とすることができる。一部の実施形態では、混合物は自己乳化性の混合物とすることができるとともに、ヒドロゲルおよび軟膏を含むことができる。
【0132】
本発明の混合物は、約4~約9の範囲のpHを有することができる。一部の実施形態では、混合物は、約4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、または9のpHを有することができる。一部の実施形態では、混合物を、約pH4~約pH8、約pH4~約pH7、約pH4~約pH6、約pH4~約pH5、約pH5~約pH7、約pH5~約pH6、約pH6~約pH7、もしくは約pH5~約pH8の範囲内のpH、またはその中の任意のその他の範囲内のpHを有するように構成することができる。
【0133】
一部の実施形態では、ヒドロゲル、疎水性組成物、および/または混合物を滅菌することができる。一部の実施形態は、ヒドロゲルは滅菌され、保存剤を含まないことを含む。
【0134】
一部の実施形態では、本発明の混合物によって、in vitro放出により測定して、投与されておよび/または併用されて(例えば、一酸化窒素放出性医薬組成物が、一緒に混合状態にある少なくとも2つの組成物を、例えば本明細書に記載の疎水性組成物とヒドロゲルとを、含む場合)、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1時間後に、または45、30、15、5、4、3、2、もしくは1分後に、混合物1mg当たり少なくとも約100nmolのNOを放出することができる。一部の実施形態では、混合物によって、in vitro放出により測定して、投与されておよび/または併用されて、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1時間後に、または45、30、15、5、4、3、2、もしくは1分後に、平均して、混合物1mg当たり、約100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、420、440、460、480、500nmol、またはそれより多くのNOを放出することができる。混合物から放出された一酸化窒素(NO)の量を、リアルタイムin vitro放出試験を使用して決定することができる。一部の実施形態では、化学発光性酸化窒素分析器を使用して一酸化窒素放出を決定することができる。放出された一酸化窒素の量は、例えば、組み合わせて/接触させて即座にまたは混合物を形成して1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、もしくは20分後になどの、混合物の形成後に(例えば、本明細書に記載の疎水性組成物およびヒドロゲルの組合せ後に)、決定することができる。上に記載の通り、組成物(例えば、混合物)をin vitroで測定する場合、組成物の生成(例えば、混合物を形成するための2つ以上の組成物の組合せ)を以て、対象への組成物の投与に時間的に見て同等であるまたは比較し得ると、使用してもよい。
【0135】
一部の実施形態では、本発明の混合物によって、in vitro放出によって測定して、混合物を投与および/または形成して、約1~約20分後(例えば、混合物を投与および/または形成して、約1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、または約20分後)に、混合物1mg当たり少なくとも約1200pmolのNOのNO放出の最大濃度(Cmax)を供給することができる。一部の実施形態では、CmaxおよびTmaxを、瞬時NO放出または24、12、6、2、もしくは1時間または45、30、15、もしくは10分にわたって決定された総NO放出に基づいて決定することができる。一部の実施形態では、混合物によって、混合物が投与されておよび/または形成されて、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20分後に、1mg当たり、約1200、1400、1600、1800、2000、2200、2400、2600、2800、3000、3200、3400、3600、3800、4000、4200、4400、4600、4800、5000pmolのNOまたはそれより多くのNO放出のCmaxを供給することができる。一部の実施形態では、本発明の混合物によって、1mg当たり約1300pmolのNO~1mg当たり約2000pmolのNO、または1mg当たり約2000pmolのNO~1mg当たり約4000pmolのNOの範囲で放出される、NOの最大濃度を供給することができる。一部の実施形態では、本発明の混合物によって、混合物を投与および/または形成させて、約1~約5分後に、放出されるNOの最大濃度を供給することができる。
【0136】
一部の実施形態では、本発明のパッケージ型組成物が、5℃で、場合により最高で25℃の間欠温度を伴って、少なくとも1年(例えば、1、2、3、4年、またはそれより長い)の安定性を有し得る。一部の実施形態では、本発明のパッケージ型組成物は、5℃で、場合により最高で25℃の間欠温度を伴って、少なくとも2年の安定性を有し得る。一部の実施形態では、安定性とは、組成物がNO放出性化合物の少なくとも90%を含んでいることによって、または当該組成物がパッケージされたときに放出することができる一酸化窒素の初期量の少なくとも90%を含んでいることによって、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより多くを含んでいることによって、決定および/または定義することができる。一部の実施形態では、本発明のパッケージ型組成物は、当該組成物がNO放出性化合物の少なくとも90%または95%を含む状態で、5℃で、場合により最高で25℃の間欠温度を伴って、少なくとも1または2年の安定性を、有し得る。一部の実施形態では、本発明のパッケージ型組成物は、当該組成物が、パッケージされたときに放出することができる一酸化窒素の初期量の少なくとも90%または95%を放出することができるおよび/またはこの能力を維持している状態で、5℃で、場合により最高で25℃の間欠温度を伴って、少なくとも1または2年の安定性を有し得る。
【0137】
一部の実施形態では、本発明のパッケージ型組成物を、開封して、少なくとも30日間、例えば、少なくとも35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100日間またはそれより長く、安全および/または有効とすることができる。したがって、パッケージ型組成物を開封した後30日以上(例えば、60または90日)、組成物は治療有効量の一酸化窒素を放出することができ、および/または安全とすることができる(例えば有害な副作用はない)。当業者であれば理解されるように、パッケージ型の状態および/または貯蔵状態の下での組成物中の一酸化窒素の放出速度は、包装が開封しているときの、または組成物が使用状態であるときの一酸化窒素の放出速度と比べて異なる(すなわち、より速いまたはより遅い)とすることができる。一部の実施形態では、組成物がパッケージおよび/または貯蔵されていたときの一酸化窒素の放出速度と比較して、組成物が使用状態であるおよび/または開封されているとき、一酸化窒素の放出速度はより速いとすることができる。
【0138】
上で論議のように、本発明の一部の実施形態により、例えば、これらに限定されないが、本明細書に記載の一酸化窒素放出性医薬組成物を適用することで対象の皮膚、粘膜、および/または眼における炎症を減少させることによって、対象において皮膚、粘膜、および/または眼の炎症状態を治療する方法が提供される。炎症の治療および/または減少は、対象によって確認された、炎症の量または重症度の視覚的減少によっておよび/または炎症を伴う不快感の減少によって検出することができる。
【0139】
対象の皮膚の任意の部分を治療することができる。「皮膚」とは、本明細書で使用する場合、炎症状態および/または炎症が起こり得る伸展し得る、および/または存在し得る、四肢、体幹、頭部等を含めて、皮膚の任意の層を指す。したがって、語「皮膚」とは、これらに限定されないが、表皮層および/または真皮層を含むものとするが、下層の皮下組織も含むことができる。粘膜(例えば、口、鼻、膣等)および/または対象の眼の表面も治療することができる。しかし、本発明の一部の実施形態では、対象の付属器のうちの1つまたは複数を、本明細書に記載の方法によって治療する。一部の実施形態では、対象の顔および/または頭皮を治療する。さらに、一部の実施形態では、対象の体幹を、本明細書に記載の方法によって治療する。一部の実施形態では、本発明の方法によって、対象向けに、炎症部位に一酸化窒素を局所送達および/または投与する(例えば、局所的に局所送達および/または投与する)。さらに、一部の実施形態では、本発明の実施形態に係る一酸化窒素放出性医薬組成物を、これに限定されないが、全身適用などの別の方法で適用することができる。
【0140】
本発明は、獣医学的応用と医学的応用の両方において用途がある。本発明の方法の実施形態を用いて治療するのに適した対象には、これらに限定されないが、鳥類および哺乳動物対象が含まれる。本発明の哺乳動物には、これらに限定されないが、イヌ科の動物、ネコ科の動物、ウシ属の動物、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ブタ、齧歯動物(例えば、ラットおよびマウス)、ウサギ、霊長目の動物(例えば、類人猿およびヒト)、非ヒト霊長目(例えば、サル、ヒヒ、チンパンジー、ゴリラ)等、ならびに、子宮内にいる哺乳動物が含まれる。本発明により治療される必要のあるいずれかの哺乳動物対象も適している。両性のおよびいずれかの発育段階(すなわち、新生児、乳幼児、少年、青年、成人)にあるヒト対象を、本発明により治療することができる。本発明の一部の実施形態では、対象は哺乳動物であり、ある特定の実施形態では、対象はヒトである。ヒト対象には、胎児期、新生児期、乳幼児期、少年期、青年期、成人期および老人期の対象ならびに妊娠している対象といったすべての年齢の男女両方が含まれる。本発明の特定の実施形態では、対象は、青年期および/または成人期のヒトである。
【0141】
本発明に従う例示的な鳥類には、ニワトリ、アヒル、シチメンチョウ、ガチョウ、ウズラ、キジ科の鳥、平胸類(例えば、ダチョウ)および家禽(例えば、オウムおよびカナリアス)、ならびに鳥類の卵が含まれる。
【0142】
本発明の方法を、動物対象で、特に、マウス、ラット、イヌ、ネコ、家畜およびウマなどの哺乳動物対象で、獣医学的目的のために、ならびに/または、薬物スクリーニングおよび薬物開発の目的のために、実施することもできる。
【0143】
一部の実施形態では、対象は、本発明の方法を「必要としている」、例えば、対象は、炎症を伴う疾患もしくは障害と診断されている、対象は、炎症を伴う疾患もしくは障害のリスクがある、または、炎症を伴う疾患もしくは障害を有していると考えられる。本発明の一部の実施形態では、対象は、炎症を伴う疾患もしくは障害と診断されている。本発明のある特定の実施形態では、対象は、炎症を伴う皮膚疾患もしくは障害と診断されている。
【0144】
「治療する」「治療すること」「の治療」(およびこれらの文法的変化形)とは、本明細書で使用する場合、対象に利益を賦与するあらゆるタイプの治療を指し、対象の病態の重症度が低減されること、少なくとも部分的に改善されるもしくは寛解すること、ならびに/または、少なくとも1つの臨床症状(例えば、黄色ブドウ球菌感染症などの、細菌感染症)のいくらかの緩和、軽減もしくは減少が達成されること、および/または、疾患または障害の進行に遅延が生じること、を意味し得る。本発明の特定の実施形態では、炎症の重症度は、本発明の方法を用いない場合の炎症の重症度に比べて、対象において低減される。
【0145】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、治療有効量で投与される。「治療有効」量とは、本明細書で使用する場合、対象を治療する(本明細書で定義の通り)のに十分な量である。当業者であれば、治療効果は、何らかの利益が対象にもたらされる限り、完全または治癒的である必要はないことを理解するであろう。一部の実施形態では、本発明の組成物の治療有効量を投与することができ、本発明の組成物の治療有効量は一酸化窒素放出性の活性医薬成分の治療有効量を投与することを含み得る。一部の実施形態では、一酸化窒素の治療有効量を本発明の方法で投与および/または適用することができる。一部の実施形態では、本発明の方法を、一酸化窒素放出性の活性医薬成分を含む組成物の投与によって、一酸化窒素の投与による全身性の作用が生じない、というような方法で、例えば治療有効量などで、実施する。
【0146】
用語「予防する」、「予防すること」および「予防」(およびこれらの文法的変化形)とは、対象における炎症および/またはそれを伴う臨床症状の発症の回避、低減および/または遅延を指し、および/または、本発明の方法のない場合で起こるであろうものと比較して、炎症および/または臨床症状の発症の重症度の低減を指す。予防は完全であると、例えば、対象において炎症および/または臨床症状が皆無であるとすることができる。予防はまた部分的とすることができ、したがって、対象における炎症および/もしくは臨床症状の発生ならびに/または発症の重症度は、本発明なしの場合で生じるであろうものよりも小さい。ある特定の実施形態では、本発明の方法によって、対象の皮膚を侵す炎症などの、対象における炎症が予防される。
【0147】
一部の実施形態では、本発明の組成物を、予防有効量で投与する。「予防有効」量とは、本明細書で使用する場合、対象における炎症および/または臨床症状を予防する(本明細書で定義の通り)のに十分な量である。当業者であれば、予防のレベルは、何らかの利益が対象にもたらされる限り、完全である必要はないことを理解するであろう。一部の実施形態では、本発明の組成物の予防有効量を投与することができ、本発明の組成物の予防有効量は一酸化窒素放出性の活性医薬成分の予防有効量を投与することを含み得る。一部の実施形態では、予防有効量の一酸化窒素を本発明の方法で投与および/または適用することができる。一部の実施形態では、本発明の方法を、一酸化窒素放出性の活性医薬成分を含む組成物の投与によって、一酸化窒素の投与による全身性の作用が生じない、というような方法で、例えば予防有効量などで実施する。
【0148】
本発明の組成物を、当業者に知られている任意の方法を使用して対象に局所適用することができる。一部の実施形態では、組成物を、1日当たり少なくとも1、2、3回またはそれより多く、対象に局所的に適用することができる。一部の実施形態では、1週および/または1月当たり少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8回またはそれより多く、対象に組成物を局所的に適用することができる。ある特定の実施形態では、1日1回、1日2回、2日に1回、3日に1回、1週に1回、または1週に2回、対象に組成物を局所適用することができる。一部の実施形態では、長期間(例えば、1週、1月、2月等)、ならびに/または炎症および/もしくはそれを伴う臨床症状が、対象において治療および/または予防されるまで、少なくとも1日1回、対象に組成物を局所適用することができる。一部の実施形態では、組成物は必要に応じて適用することができる。
【0149】
一部の実施形態では、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13日、またはそれより多くの日数以内で、および/または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13週、またはそれより多くの週数以内で、対象が、炎症および/またはそれを伴う少なくとも1つの臨床症状の減少および/または低減を得ることができる。一部の実施形態では、本発明の組成物および/または方法によって、所定の期間(例えば、1、2、3、4、5もしく6日、または1、2、3、4週またはそれより多くの週数、または1、2、3、4、5、6月、またはそれより多くの月数等)炎症および/またはそれを伴う臨床症状を治療することができる。
【0150】
一部の実施形態では、炎症を減少させる方法には、別の治療方法と併用でおよび/または、その他の医薬、例えば、抗菌、抗炎症、疼痛緩和、免疫抑制、血管拡張の特性、および/または抗ざ瘡特性を有するものと併用で本明細書に記載の方法を使用することが含まれ得る。例えば、レチノイドなどの他の抗ざ瘡剤を、気体状の一酸化窒素および/または少なくとも1つの一酸化窒素源の適用と併せて(前、同時にまたは後に)使用することができる。このように、本発明の一部の実施形態では、さらなる治療剤が同一組成物中にない場合、さらなる治療剤と併用で、本明細書に記載の医薬組成物により患者を治療することができる。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物と同時および/または順次のいずれかで、さらなる治療剤を投与することができる(例えば、局所的、全身的、非経口的、経口的、口腔内的、皮下、吸入を介して、気管内、外科的、経皮的等)。
【0151】
一部の実施形態では、薬学的に許容される組成物を、噴霧送達を介して皮膚に投与することができる。非水性送達推進剤を、ジアゼニウムジオレート修飾化合物などの感水性NO放出性化合物向けに使用することができる。さらに、一部の実施形態では、医薬の特定の成分は、医薬の適用前のある点で分離していてもよい。例えば、水反応性NO放出性化合物を、適用するまで(例えば、噴霧またはゲルを適用することによる)、水性成分または噴射剤から切り離して(例えば、二重チャンバーポンプ中に)貯蔵してもよい。本発明の一部の実施形態では、NO放出性化合物を、適用前に水性成分と組み合わせてもよく、またはNO放出性化合物と水性成分とを、皮膚に順次適用してもよい。
【0152】
本発明に関連し、前述の説明および関連図面に提示された教示の利益を有する当業者であれば、本明細書に記載の本発明の多くの改変形態および他の実施形態が、思い当たるであろう。したがって、本発明は、開示されている特定の実施形態に限定されるものではないこと、および改変形態および他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に組み込まれるものであることが理解されるべきである。本明細書では、特定の用語が用いられているが、これら用語は一般的な記述的な意味のみで使用されているものであり、限定することを目的としたものではない。
【0153】
本発明を以下の非限定的な例でさらに例示する。
【実施例】
【0154】
[実施例1]
MAP3を含む一酸化窒素放出性高分子化合物(Nitricil(商標)のNVN1)を、それらの開示が、引用することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする、米国特許出願公開第2009/0214618号および「Temperature Controlled Sol-Gel Co-Condensation」と題する2012年1月20日出願の国際特許出願第PCT/US12/22048に記載されている通りに製造した。生成する巨大分子粒子をボールミリングにかけて、8から10μmの平均粒径を用意して活性医薬成分(API)を供給した。
【0155】
図1は、放出の最初の200分について、pH7.4および37℃でのNitricil(商標)のNVN1およびNVN4に関する放出プロファイルのグラフである。Nitricil(商標)のNVN4は、AEP3/TEOSを1:1の比率で含む一酸化窒素放出性高分子化合物であり、米国特許出願公開第2009/0214618号および「Temperature Controlled Sol-Gel Co-Condensation」と題する2012年1月20日出願の国際特許出願第PCT/US12/22048に記載されている通りに製造して、APIを供給した。Nitricil(商標)のNVN1の全体的な放出動態を下の表1に提供する。
【表1】
【0156】
Nitricil(商標)のNVN1を表2に記載の軟膏の2種類の最終剤形に製剤化した。
【表2】
APIの重量を鉱物油の量を増加させることによって置き換えて、プラセボ軟膏を製剤化した。
【0157】
[実施例2]
22±2gの重量のBALB/c由来の雄マウスが、BioLasco Taiwanにより提供された(Charles River Laboratories Technology Licenseeに基づく)。動物を、実験を通じて清潔な領域の下で個別換気型ケージラック(Individually Ventilated Cages Rack)(IVC Racks、36 Mini Isolatorシステム)の中に収容した。5匹ずつのマウスを、オートクレーブによって滅菌した動物用ケージ(cmで、長さ26.7×幅20.7×高さ14.0)の中で飼育し、12時間の明/暗サイクルを伴って制御された温度(20~24℃)および湿度中(50%~80%)で維持した。動物を、滅菌した標準的な実験室用固形飼料[MF-18(Oriental Yeast Co.、Ltd.日本)]および無菌水道水を随意に自由に利用できるようにした。本作業のすべての態様、すなわち動物の収容、実験および処分は、the Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(National Academy Press、Washington、D.C.、2010)に全般的に従って行った。
【0158】
22±2gの重さのBALB/cの5匹の雄マウスの群を使用した。動物を、あらかじめ除毛したそれらの腹部表面へのオキサゾロン(100μL、アセトン中1.5%)の適用により感作させた。7日後、試験物質(20mg/耳)および媒体(20μL/耳)を、オキサゾロン(1%、20μL/耳)感作誘発の30分前および15分後に、右耳の前面および後面に局所的に適用した。耳介腫脹を、炎症の指標として、オキサゾロン感作誘発から24時間後に、Dyer型マイクロメートルゲージを用いて測定した。耳の浮腫を、右耳(処置された耳)の厚さから左耳(正常対照)の厚さを差し引くことにより計算した。阻害率は、式:(Ic-It)/Ic×100に従って計算した(式中、IcおよびItは、それぞれ対照マウスおよび処置マウスにおける耳の厚さ(mm)の増加を指す)。一元配置分散分析法およびダネット検定を使用して、溶媒対照群と処置群との間で統計学的有意性を決定した。有意性を、P<0.05に設定する。
【0159】
実施例1に記載の被験物質(0.2%および2%のNitricil(商標)のNVN1軟膏)を、アレルギー性接触皮膚炎のモデルであるBALB/cマウスでのオキサゾロン誘導性耳介腫脹アッセイにおいて抗炎症活性の可能性について評価した。試験物質および媒体を、2回目のオキサゾロン適用による感作誘発の30分前および15分後に、それぞれ局所的に投与した(TOP)。耳介腫脹への試験物質の影響を24時間後に測定し、結果を下の表3にまとめる。
【表3】
【0160】
0.2%および2%のNitricil(商標)のNVN1軟膏の局所投与には、媒体対照A(アセトン/エタノール:1/1)およびプラセボ軟膏と対比して有意な阻害が伴っていなかった。プラセボ軟膏処置は、オキサゾロン誘導性耳介腫脹へ有意な影響を示さなかった。陽性対照であるデキサメタゾン(0.1mg/耳×2)には、オキサゾロン誘導性耳介腫脹の有意な阻害が伴っていた。
【0161】
[実施例3]
コールドプロセスを使用して、表4に記載の通りに軟膏製剤を調製した。これらの製剤を、スケールアップ用に選択した。
【表4】
【0162】
表4に提供した製剤の開発中に使用したラボスケールのプロセスを、8L混合容器付きの、Ross Dual Shaft Mixer、型番:CDA-2を使用する5.5kgのスケールにスケールアップした。撹拌および均質化用のシステムには、下記のように、独立に駆動する2つの頂部導入式撹拌器が内蔵されていた。
1.ほぼ23~225rpmの速度範囲で駆動する三枚羽根型アンカー撹拌器(Three-Wing Anchor Agitator)。アンカーは三角形断面を有するように設計されているとともに、混合缶の側壁および底部をふき取るための固定式テフロン(登録商標)製スクレーパーを備えている。
2.高速ディスペンサー(High-Speed Disperser)、2インチ径ブレード、ほぼ1,000~10,000rpmの速度範囲で駆動する。
4つの軟膏バッチを製造して、材料添加の順序、ならびに、適切な調合速度(アンカー撹拌器および高速ディスペンサー)、および小規模プロセス向けの調合時間を決定した。開発用バッチ製剤の概要を表5に提供し、製造のプロセスフロー図を
図2に提供する。
【表5】
【0163】
バッチの分析結果を、表6および表7に提供する。
【表6】
【表7】
【0164】
[実施例4]
Nitricil(商標)軟膏をBALB/cマウスにおいて評価して、in vivoでのNitricil(商標)軟膏の潜在的な抗炎症特性を決定した。22±2gの重量のBALB/c由来の雄マウスが、BioLasco Taiwanにより提供された(Charles River Laboratories Technology Licenseeに基づく)。動物を、実験を通じて清潔な領域の下で個別換気型ケージラック(IVC Racks、36 Mini Isolatorシステム)の中に収容した。5匹ずつのマウスを、オートクレーブによって滅菌した動物用ケージ(cmで、長さ26.7×幅20.7×高さ14.0)の中で飼育し、12時間の明/暗サイクルを伴って制御された温度(20~24℃)および湿度中(50%~80%)で維持した。動物を、滅菌した標準的な実験室用固形飼料[MF-18(Oriental Yeast Co.、Ltd.日本)]および無菌水道水を随意に自由に利用できるようにした。本作業のすべての態様、すなわち動物の収容、実験および処分は、the Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(National Academy Press、Washington、D.C.、2011)に全般的に従って行った。
【0165】
Nitricil(商標)局所用軟膏(1%および4%)およびプラセボ軟膏を本研究において試験した。Nitricil(商標)の局所用軟膏製剤およびプラセボ軟膏の組成を、表8に提供する。デキサメタゾン(0.1mg/耳)を陽性対照として使用した。デキサメタゾンは、様々な炎症性障害および自己免疫障害を処置するのに使用される、強力なグルココルチコイドステロイドである。
【表8】
【0166】
7日のオキサゾロン誘導性耳介腫脹アッセイを使用試験系とした。オキサゾロン誘導性耳介腫脹は、炎症のモデルとして有用である。オキサゾロンは、遅延型過敏症を誘導するアレルゲンであり、したがって、適応免疫応答(例えば、アレルギー性接触皮膚炎、乾癬等)が動因となる炎症のモデルとして最も有用である。このアッセイにおいて、マウス(1群当たり5匹)を、あらかじめ除毛したその腹部表面にオキサゾロンを1回局所適用することにより、オキサゾロン(100μL、アセトン中1.5%)に対して感作させた。7日後、動物を、上記耳へのオキサゾロンの第2の適用によって感作誘発した。被験物質(20mg/マウス)および媒体(20μL/耳)を、第2のオキサゾロン(1%、20μL/耳)感作誘発(惹起段階)の、30分前および15分後に右耳の前面および後面に局所的に投与した(TOP)。耳介腫脹を、炎症の指標として、オキサゾロン感作誘発から24時間後に、Dyer型マイクロメートルゲージを用いて測定した。耳の浮腫は、右耳(処置された耳)の厚さから左耳(正常対照群)の厚さを差し引くことにより計算した(表9)。別途の群を、既知の抗炎症剤であるデキサメタゾン(陽性対照)によって処置して、アッセイの妥当性を確認した。阻害率は、式:(Ic-It)/Ic×100に従って計算した(式中、IcおよびItは、それぞれ対照マウスおよび処置マウスにおける耳の厚さ(mm)の増加を指す)。一元配置分散分析法およびダネット検定を使用して、媒体対照と処置群との間の統計学的有意性を決定した。有意性を、P<0.05に設定する。
【表9】
【0167】
1%Nitricil(商標)のNVN1局所用軟膏と4%Nitricil(商標)のNVN1局所用軟膏の局所投与は両方とも、媒体対照(アセトン/エタノール:1/1)とプラセボ軟膏の両方と対比して、オキサゾロン誘導性耳介腫脹の有意な(P<0.05)阻害を伴っていた。1%Nitricil(商標)のNVN1局所用軟膏によって、耳介腫脹が、アセトン/エタノール溶媒と対比して57%、およびプラセボ軟膏と対比して58%阻害された。4%Nitricil(商標)のNVN1局所用軟膏によって、耳介腫脹が、アセトン/エタノール媒体と対比して59%、およびプラセボ軟膏と対比して60%阻害された。プラセボ軟膏は、アセトン/エタノール媒体に比べて耳介腫脹に影響がなかった。デキサメタゾン(陽性対照)によって、耳介腫脹が、アセトン/エタノール媒体に比べて86%阻害された。
【0168】
1%および4%でのNitricil(商標)局所用軟膏の局所投与によって、プラセボ軟膏対照または媒体(アセトン/エタノール:1/1)と比較して、マウスにおいてオキサゾロン誘導性耳介腫脹の有意な(P<0.05)阻害が引き起こされた。したがって、1%と4%の両方のNitricil(商標)NVN1局所用軟膏によって、アレルギー性接触皮膚炎のin vivoモデルにおいて炎症が有意に阻害された。4%Nitricil(商標)のNVN1局所用軟膏は、本試験の条件下では、1%Nitricil(商標)のNVN1局所用軟膏より有意に効果的ではなかった。プラセボ軟膏群は、媒体対照(アセトン/エタノール:1/1)に比べて影響を全く与えなかった。陽性対照であるデキサメタゾン(0.1mg/マウス×2)には、マウスにおいてオキサゾロン誘導性耳介腫脹の有意な阻害が伴っていた。表10に、エタノール/アセトン媒体製剤またはプラセボ製剤に対する、本研究、実施例2に記載の研究、および、実施例3に記載のNitricil(商標)軟膏製剤を用いた後続研究に由来する、オキサゾロン誘導性耳介腫脹結果に関する阻害率の比較を示す。Nitricil(商標)のNVN4軟膏製剤について、本製剤は、Nitricil(商標)のNVN1軟膏製剤に関して実施例3において提供されたものと同様であるが、製剤中のNitricil(商標)の量の差異を説明するために軽質鉱物油にわずかな調整がなされた。
【表10】
【0169】
[実施例5]
ブタの部分層(Partial-Thickness)創傷モデルにおける創傷治癒研究
実施例8に記載のTO-007軟膏製剤などの、Nitricil(商標)のNVN1軟膏を使用して、部分層創傷をブタモデルにおいて処置した。部分層創傷を、以下の製剤によって処置した。すなわち、0.1%、0.5%、1%、もしくは4%のNitricil(商標)のNVN1を含有する軟膏製剤、媒体軟膏、陽性対照としての標準的な密封用(occlusion)のテガダーム、または、陰性対照として大気暴露で放置したもの。
【0170】
8匹の動物での創傷治癒研究の結果を
図3に示す。0.1%および0.5%というより低い用量のNitricil(商標)のNVN1軟膏によって、はるかに速い上皮再形成速度が実証された。最低の用量(0.1%)にある20のすべての創傷が、6日目までに完全に治癒し、相応する軟膏媒体またはテガダーム密封標準品の治療より丸2日速かった。このデータによって、熱損傷モデルにおいて収集されたものではないとはいえ、より速い治癒を刺激する一酸化窒素の能力が明確に実証されている。
【0171】
2つの生検標本を、創傷後2日目、4日目、および7日目に、各処置群のすべての動物から採取した。組織診用のくさび状生検標本を、両側の正常な隣接皮膚を含んで創傷の中心から得た。パンチ生検標本を、RNA分離および後続するRT-PCR分析用に、創傷の残り半分から採取した。
【0172】
上皮の厚さの差異は、処置群のいずれについても観察されず、治癒プロセスが調節されたこと、および上皮における細胞の過剰増殖がなかったことが示された。0.5%Nitricil(商標)のNVN1軟膏によって処置された創傷は、その他の処置群と比較して、2日目に高レベルのIL-8mRNAを発現した(
図4)。好中球化学誘因物質であるIL-8の発現が、0.5%Nitricil(商標)のNVN1軟膏による処置の2日後、創傷において有意に誘導された(p≦0.05)。一酸化窒素は、IL-8プロモーターを活性化することができ、一方でIL-8は、好中球においてiNOSの発現を抑制することができる。このシグナル伝達効果は、治癒を促進するのには十分であるが、好中球の過度の動員(over recruitment)を促進せず、持続的炎症応答を引き起こさなかった(
図5)。組織診により測定された白血球浸潤は、処置のいずれについても統計学的に異なっていなかった。
【0173】
[実施例6]
BALB/cマウスでのオキサゾロン誘導性耳介腫脹:
BALB/cマウスを、腹部へのオキサゾロン曝露で感作させ、続いて、右耳へのオキサゾロン適用で感作誘発する(感作後7日目)。抗炎症性被験物質を、オキサゾロン感作誘発の30分前およびその15分後に両耳に適用する。次いで、抗炎症性被験物質の効果を、耳介腫脹の量を測定することにより評価するが、これは、研究媒体と比較した百分率として報告されている。一酸化窒素の徐放の効果に対比する速放の効果を評価するために、ならびに、製剤組成物をスクリーニングするために、研究を行った。まとめると、このような研究の結果によって、混合組成物としての、Nitricil(商標)のNVN4を介する一酸化窒素の徐放により、最大の抗炎症有効性が得られることが、実証された(
図6)。
【0174】
[実施例7]
IL-23誘導性乾癬様マウスモデル:
乾癬様炎症状態を再現するとされるIL-23誘発性乾癬様マウスモデルを使用した。マウスは、12日の時間経過にわたって、炎症サイトカインIL-23の耳への皮内注射を隔日で受けた。被験物質を、同じ12日の時間経過にわたって、1日1回局所的に適用した。次いで、抗炎症性被験物質の効果を耳介腫脹の量を測定することにより評価したが、この量は、試験媒体と比較した百分率として報告されている。処置の終了時に、組織診およびサイトカイン分析の両方向けに耳試料を得た。
【0175】
図7に示すように、IL-23誘発性乾癬マウスモデルにおけるTO-008 2%Nitricil(商標)のNVN1軟膏(表4)の局所適用によって媒体対照と比較した場合、炎症誘発性サイトカインが統計学的に有意に低減することが実証された。IL-23はTh17細胞を刺激してサイトカインIL-17を産生し、これは次にケラチノサイトにシグナル伝達してサイトカインの中でもIL-1βおよびIL-6を放出する。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、炎症誘発性サイトカインIL-1βおよびIL-6のレベルの減少から、Nitricil(商標)軟膏およびNitricil(商標)軟膏に類似の組成物による局所処置が、IL-17阻害剤として機能する可能性があることが示唆される。さらに、IL-17はケラチノサイトを正常に刺激してより多くのIL-23を産生し、乾癬の病変を延長するのに重要な炎症性ループを継続させる。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、デキサメタゾン陽性対照による処置後よりも低い発現レベルで観察されるIL23p40の統計学的に有意な低減から、慢性乾癬の炎症を伴う炎症性ループを弱めるNitricil軟膏の可能性が示唆される。
【0176】
[実施例8]
ヒトの正常な皮膚生検標本におけるLPS誘導性サイトカイン放出のアッセイ:
本研究によって、外科的乳房縮小、再建術または腹壁形成術を受けている健常な患者から得られた健常者の正常な皮膚からのLPS刺激性サイトカイン放出に対する被験物質製剤の効果を評価する。生検パンチを使用して全厚8mmの生検標本を得る。生検試料を調製し、LPS感作誘発の前に24時間休止させる。次いで、生検試料を、大腸菌(Escherichia coli)由来のLPS1μg/mLの最終濃度で感作誘発する。次いで、被験物質製剤を生検標本の表皮表面に局所適用し、生検標本と接触させて24時間維持する。24時間の被験物質曝露後、培地を各ウェルから採取する。培養培地試料を、マルチプレックスELISAによりIL-6、IL-8、IL-10、IL-12p40、IL-1βおよびTNF-αについて分析する。試料を2回繰り返しで分析し、平均値をさらなる解析に利用する。未処置対照、プラセボクリーム、および陽性対照(0.1%トリアムシノロン)と対比させたNitricil(商標)被験物質処置の効果を解析する。
【0177】
[実施例9]
ブタの部分層創傷モデルにおけるアトピー性皮膚炎(AD)特異的メチシリン耐性黄色ブドウ球菌分離株の細菌数の低減:
本研究によって、易感染性の感染皮膚への局所処置による、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の微生物負荷を低減させる、Nitricil(商標)のNVN4クリーム製剤の能力にアクセスするが、このクリーム製剤は、表11に提供のNitricil(商標)のNVN4軟膏(例えば、表12の20%Nitricil(商標)のNVN4軟膏)を、表13に提供のヒドロゲルと混合して含む。本研究に利用されているMRSAの分離株は、アトピー性皮膚炎患者の炎症性フレアから分離したものである。AD患者の皮膚は易感染性であるので、ブタの部分層創傷モデルが、AD患者における炎症性フレアの場合に観察されるものなど、高黄色ブドウ球菌負荷で損傷した表皮バリアを模倣するのに利用される。動物は、測定して10mm×7mm×0.5mmの創傷を作り出すために、特殊な電気ケラトームを使用して部分層創傷を受ける。創傷直後に、すべての創傷にAD特異的MRSA単離株を接種し、ポリウレタンフィルムドレッシング材で覆う。バイオフィルムを、局所的処置の適用前、48時間の間に確立させる。48時間後、3つの創傷を回収してベースラインの細菌数を確立する。1日1回の局所処置適用を2日目に開始し、各創傷を十分な被験物質(約300mg)で処置して、創傷領域および周囲の非創傷皮膚を覆い、次いで密封ドレッシング材で覆う。定量的細菌学的検査を、Nitricil(商標)のNVN4クリームで処置して2日後(4日目)および5日後(7日目)に評価する。統計量を得るために、さらに、処置群間の1のまたは2対数差分について統計的評価を行うことを可能にするために、3匹のブタを利用する。3匹のブタのうち2匹(ブタ#1およびブタ#2)の平均結果を
図8にまとめる。
【0178】
図8でわかるように、5回の局所処置適用(7日目)後、10%NitricilのNVN4クリームによる処置をベースラインMRSA数と比較すると、AD特異的MRSA細菌数においてほぼ2対数の減少が観察される。重要なことに、ニトリシルNVN4クリームの含量が増すにつれて有効性が増すので、優れた用量反応の処置効果が観察される。
【0179】
[実施例10]
ヒトの正常な皮膚生検標本におけるIL-17誘導性サイトカインのアッセイ:
実施例13で上記のLPS誘導性サイトカイン放出のアッセイと同様の方法で、全層皮膚生検標本を健常なヒトの皮膚から得る。Th17/IL-17経路を刺激するために、皮膚生検標本を独自のサイトカインカクテルで48時間処置する。サイトカインカクテルのインキュベーション時間の終了時に、IL-17サイトカイン放出の強力な誘導が観察される。加えて、重要なIL-17経路遺伝子の発現は上方制御され、これには、IL-17a、IL-17f、およびIL-22が含まれる。さらに、その他の重要なサイトカインの分泌が観察される(TNF-α、GM-CSFおよびIFN-γ)。このモデルにおいて、普通の乾癬治療カルシポトリオールは、ビタミンDアナログであるが、IL-17分泌の部分的阻害によって立証されるように、IL-17a経路を部分的に阻害する。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、このin vitroモデルで有効性を示す製剤は、乾癬の病因にとって重要なTh17/IL-17経路に影響を及ぼすことができる。
【0180】
[実施例11]
乾癬の皮膚生検標本におけるサイトカインのアッセイ:
このモデルでは、有資格臨床医による重症度の尋常性乾癬と診断された患者を研究のために募集する。各患者から、4つのプラーク生検標本および1つの非プラーク対照生検標本を得る。患者から取り出した後、生検標本(直径2mm)を72時間(+一晩の休息期間)培養する。この72時間の培養の間に、生検標本を被験物質製剤で局所的に処置することができる。曝露後、重要なサイトカインのレベルを、ELISAによって得ることができる(IL-10、IL-17、IL-22、およびIFN-γ)。非プラーク生検標本では、これらのサイトカインのレベルは定量限界を下回る。しかし、プラーク生検標本は定量可能なサイトカインレベルを有し、いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、被験物質の曝露後にそれらは低減し、このことによって、局所処置の有効性を示すことができる。
【0181】
[実施例12]
イミキモド誘導性乾癬様マウスモデル:
イミキモド(IMQ)は、トール様受容体TLR7/TLR8と、生殖器疣贅、表在性扁平型基底細胞上皮腫、および日光角化症の局所処置に使用される市販の強力な免疫活性化因子との両方のリガンドである。イミキモドの局所適用は、局所処置領域および遠位部位の両方で乾癬を悪化させる。IMQ誘導性乾癬様式は、ヒトの尋常性乾癬の臨床的に適切なモデルとして認識されている。ヒトの乾癬と同様に、IL-23/IL-17軸が、マウスにおけるIMQ誘導性乾癬において中心的な役割を果たしている。マウスの耳および毛のない背中にIMQを適用すると、局所投与の5日以内に乾癬様病変が発生する。これにより、様々な細胞(T細胞、樹状細胞、マクロファージ)の流入ならびに表皮肥厚が生じる。このモデルでは、IMQクリームを、剃毛した背中と右の耳に10日間連続して毎日適用する。被験物質も、この時間経過にわたって毎日局所的に適用する。右耳の厚さを0、ベースラインで、5日目、8日目および10日目にノギスにて測定する。また、紅斑のスコアとプラークのスコア(両方とも0~4のスケールで;0=正常および4=重症)の合計によって決定される乾癬疾患の重症度スコアについて、すべての動物をその背中で評価する。また、動物の背中からの皮膚を最終的に採取することができ(10日目)、表皮の変化に関する皮膚の組織学的分析(H&E染色)を0~4のスケールで評点する。病変の程度、角化過多症の重症度、膿疱の数および大きさ、表皮肥厚の高さ、および真皮および軟部組織における炎症の程度を含むパラメーターに基づく、全体的な病変の重症度に関する主観的評価が、スコアである。最終的には、IL-22、IL-17a、IL-17f、TNF-α、IL-33、およびIL-1βのmRNA分析用に、3日目に終了とする動物から組織を採取することができる。こういったモデルを利用して、肉眼的検査、定性的な組織病理診、およびサイトカインmRNA発現によって、in vivoで疾患重症度を評価することができる。
【0182】
[実施例13]
Nitricil(商標)製剤を、上の例の1つまたは複数において使用するために開発する。例えば、軟膏が、下に、表11および表12に提供の組成を有してもよく、ヒドロゲルは、下に、表13に提供の組成を有してもよい。ヒドロゲルは、4.5~5.3の範囲のpHを有してもよい。
【表11】
【表12】
【表13】
【0183】
表13のpH4.8のPHO-048ヒドロゲルを含む、表12に提供される0.8%、2%、および8%Nitricil(商標)のNVN4軟膏に関する、NO放出プロファイル/速度を、
図9および
図10に示す。
【0184】
[実施例14]
オキサゾロン誘導性遅延型過敏症BALB/cマウスモデルを使用して、抗炎症活性を評価した。感作されたマウスは、アトピー性皮膚炎患者が経験する強度の掻痒を模倣すると考えられる、掻痒行動の増加を示す。オキサゾロンによって誘導されるアレルギー性接触皮膚炎によって、アトピー性皮膚炎の慢性期をモデル化することを狙いとする免疫応答が生じる。
【0185】
用量依存性の応答がゲル製剤で観察されたが、軟膏に処方された場合、より良好な膨潤の低減が観察された。ヒドロゲルを軟膏に添加してクリーム混合物を形成すると、Nitricil(商標)のNVN4 APIを含有する徐放性製剤の選択にいたった。前臨床試験が例示するところによれば、接触皮膚炎の急性モデルにおいて、増強された抗炎症活性を送達することにより、より低用量の一酸化窒素にて、軟膏とヒドロゲルとの混合物であるクリーム製剤が軟膏単独よりも良好に作用する。
図11に示すように、Nitricil(商標)のNVN4クリームを局所適用すると、クリームのそれぞれが表13に提供のヒドロゲルと混合して表11に提供の軟膏を含むが、腫脹が減少すること、および、Nitricil(商標)の1つのNVN4クリームによって、高力価のステロイドデキサメタゾンと比較した局所投与後の腫脹において、66%減少を示すことがわかった。
【0186】
[実施例15]
実施例17に記載のイミキモド誘導性乾癬様ネズミモデルを使用して、ヒドロゲルとNO放出性化合物を含む軟膏とを含有するNO放出性混合物の効果を評価した。
【0187】
動物は、イミキモドクリームの適用(すなわち、疾患刺激薬)をその耳および背中に、0~9日目の間毎日受けた。イミキモド適用の2時間後に、動物に、被験物質製剤をその背中および耳に局所投薬した
【0188】
背部への適用については、混合試験製剤を適用の直前に調合して均一な混合体を作製した。4g/kg(調合した軟膏およびヒドロゲルの総重量)の混合物の用量を適用した。耳への適用については、背中への投与と同じ投薬手順を用いたが、耳には2g/kgの用量を適用した。
【0189】
第1の被験物質投薬の4時間後に、それぞれの被験物質の第2の適用をすべての動物の背中および耳に適用した。混合被験物質は表14に提供のヒドロゲルからなっていたが、このヒドロゲルは、表15に提供の軟膏組成物の内の1つと1:1の比率で調合されていた。したがって、例えば、1%Nitricil(商標)のNVN1軟膏組成物と混合した場合のヒドロゲルは、0.5%のNitricil(商標)のNVN1混合組成物を提供する。ヒドロゲルのpHは約4~約4.5であった。1時間後、混合組成物のpHは、約4.5~約6の範囲とすることができる。例えば、t=0において、6%Nitricil(商標)のNVN1混合組成物のpHは6.1であり、t=1時間で6%Nitricil(商標)のNVN1混合組成物のpHは5.27であった。
【表14】
【表15】
【0190】
Nitricil(商標)のNVN1混合組成物に関してすべての用量(すなわち、0.5%、2%、および6%Nitricil(商標)のNVN1混合組成物)での局所処置によって、局所投薬の10日後に動物の背部で観察された複合乾癬スコアにおいて、中程度の低減がもたらされた。6%Nitricil(商標)のNVN1混合組成物によって、プラセボ混合組成物での処置と比較した場合、スケーリングスコアおよび複合乾癬スコアの両方における統計学的に有意な低減で評価して、乾癬疾患の重症度に最大の低減がもたらされた。加えて、Nitricil(商標)のNVN1混合剤組成物、特に0.5%および2%のNitricil(商標)のNVN1での処置によって、4日目に採取した耳パンチ生検標本から評価した炎症誘発性サイトカインの阻害がもたらされた。混合物のより低い用量での処置によって、疾患単独の対照動物と比較した場合、乾癬表現型を最も頻繁に伴う2つのサイトカインであるIL-17AおよびIL-17Fの75%以上の低減をもたらされた。これらのより低い用量では、IL-1βサイトカインレベルの50%超の低減もまた、疾患単独の対照に対比して観察された。
【0191】
非処置、イミキモドクリーム適用、媒体処置(すなわち、プラセボ混合組成物)、または2%Nitricil(商標)のNVN1混合組成物(すなわち、2%SB414クリーム)を受けた群について、それぞれ、IL-17A、IL-17FおよびIL-1βに関する耳サイトカイン評価を、IMQ単独に対比して
*p<0.05をもって、
図12~
図14に示す。
【0192】
プラセボ混合組成物および6%Nitricil(商標)のNVN1混合組成物を用いた投与に対する背部評価からのデータを表16提供する。
【表16】
【0193】
6%Nitricil(商標)のNVN1混合組成物での処置によって、紅斑スコアおよびプラークスコアを含む複合乾癬スコアに統計的に有意な低減がもたらされ、肉眼的疾患病変に及ぼす影響が示された。Nitricil(商標)のNVN1混合剤組成物のすべての用量によって、乾癬を伴う根底にある炎症に不可欠な主要な炎症誘発性サイトカインが減少した。
【0194】
全体として、Nitricil(商標)のNVN1混合組成物によって、乾癬の適切なマウスモデルにおいて抗炎症効果が実証された。本研究の結果により、主要なサイトカイン(IL-17A、IL-17F、およびIL-1β)の阻害、肉眼的臨床乾癬スコアの阻害、および認可された乾癬薬と同等の有効性が示された。
【0195】
[実施例16]
イミキモドを局所適用すると、局所処置された領域および遠位部位の両方で乾癬が悪化する。IMQ誘導性乾癬モデルは、ヒトプラーク型乾癬の臨床的に適切なモデルとして認識されている。ヒト乾癬と同様に、IL-23/IL-17軸は、マウスのIMQ誘導性乾癬において重要な役割を果たしている。マウスの耳および毛のない背中にIMQを適用すると、局所投与の5日以内に乾癬様病変が発生する。これにより、様々な細胞(T細胞、樹状細胞、マクロファージ)の流入ならびに表皮過形成が生じる。
【0196】
このモデルでは、IMQクリームをマウスの剃毛した背中および両耳に10日間連続して毎日適用した。被験物質はまた、IMQ投薬の2時間後に第1回の被験物質の適用を行って、この時間経過にわたって毎日局所的に適用した。本研究では、第2回の被験物質の局所的適用を、被験物質の毎日の初回適用の4時間後に適用して、すべての被験物質について1日2回の局所投薬を行った。耳介の厚さを、ベースライン、3日目、5日目、8日目および10日目に、ノギスを使用して測定した。すべての動物を、紅斑スコアとプラークスコア(0~4スケールでの紅斑;0=正常および4=重症ならびに0~7スケールでのプラーク;0=正常および7=50~100%の背部障害)との合計によって決定された乾癬疾患の重症度スコアについてその背中で評価した。動物の背中からの皮膚も最終的に採取し(10日目)、表皮の変化に関する皮膚の組織学的分析(H&E染色)を0~4のスケールで評点する。スコアとは、角化過多症、亜急性真皮炎症、および表皮滲出物(スケール=0~4;0=正常および4=著明)を含むパラメーターに基づく、全体的な病変の重症度に関する主観的評価であるとともに、これらパラメーターのそれぞれを評価する。加えて、表肥厚もまた評点する(スコア0~4;0=<30μm、1=30~50μm、2=50~80μm、3=80~110μm、および4=>110μm)。最終的には、IL-22、IL-17a、IL-17f、TNF-α、IL-33、およびIL-1βのタンパク質分析用に、4日目に試験動物の左耳から組織を採取することができる。こういったモデルを利用して、肉眼的検査、定性的な組織病理診、およびサイトカインタンパク質発現によって、in vivoで疾患重症度を評価することができる。
【0197】
6%SB414クリーム(12%NVN1軟膏(表15)+AC-004ヒドロゲル(表14))を1日2回局所適用すると、媒体単独(プラセボクリーム(プラセボ(表15)+AC-004ヒドロゲル(表14))と比較して、臨床的複合乾癬スコアにおいて低減がもたらされたが、この低減は、研究3日目までには有意であり、研究を通して継続した。未処置対照と比較して、6%SB414クリームは、3日目に始まって乾癬の背部病変において、統計学的に有意な低減を提示し、複合乾癬スコアにおいて31%の減少を示して、実験終了時まで維持された。研究終了時、6%SB414クリームについては、未処置対照動物と対比して、紅斑の平均39.6%の低減が観察された。同様に6%SB414クリームについては、研究10日目で未処置の疾患単独の動物と比較した場合、乾癬スケーリングの統計的に有意な平均28.1%の低減が観察された。このモデルでは、IL-23/IL-17軸と関連する炎症誘発性サイトカインは、4日目に観察されるピークレベルを伴って、IMQ適用後に耳組織において有意に上方制御される。未処置の疾患対象と比較して、6%SB414処置によって、IL-1β、IL-6、IL-22、IL-17A、IL-17FおよびIL-33といった炎症誘発性サイトカインの耳組織でのレベルが、それぞれ、84%、55%、64%、87%、71%および71%低減した。
【0198】
いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、6%SB414クリームを1日2回局所適用すると、一部には、緩衝系(酢酸および酢酸ナトリウム)が原因とされる、製剤のpH制御の強化のため、このモデルにおいては有効性が得られると考えられる。この緩衝系によって、含量がより高いNVN1混合物(例えば、≧2.0%の量でNitricil(商標)のNVN1を含有するもの)のpHを、酸性から中性範囲(例えば、4.5と6の間のpH)に緩衝化することを可能にし得る。
【0199】
[実施例17]
SB414クリームを、アトピー性皮膚炎(AD)病変の成分をプローブする2つのin vivoモデルで試験した。ADの複雑な病因には、皮膚バリア機能の欠陥、環境誘発に対する皮膚過敏症、ならびに全身および局所免疫応答の両方が関与している。肉眼的抗炎症活性を評価するために、耳介腫脹を、実施例2および4に記載の通り、接触過敏症のオキサゾロン誘導性マウスモデルにおいて定量化した。単回の局所処置後、用量依存効果が観察され、最高用量の6%SB414クリームを使用すると、未処置動物と比較して、耳介腫脹において統計学的に有意な(SS)76%の低減がもたらされ、これは、0.05%ベタメタゾンクリームで得られた80%の低減と比べて遜色がなかった。
【0200】
混合被験物質は表14に提供のヒドロゲルからなっていたが、このヒドロゲルは、表15に提供の軟膏組成物の内の1つと1:1の比率で調合されていた。試験した被験物質のそれぞれおよび0.05%のベタメタゾンクリームについての耳介腫脹の阻害率を表17に提供する。
【表17】
【0201】
いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、AD患者の抗菌ペプチドの発現の減少および皮膚バリア欠損は、二次的な皮膚感染に対する感受性の増強の原因となるおそれがある。AD患者において、黄色ブドウ球菌のコロニー形成は、病変の重症度および皮膚炎症と相関することが示されている。黄色ブドウ球菌細菌数を低減させる局所SB414クリームの能力を、ブタ感染皮膚創傷モデルにおいて評価した。皮膚採取器による(dermatomed)部分層の皮膚欠損を黄色ブドウ球菌で感染させ、バイオフィルムを2日間発育させ、その後、2日または5日のいずれかで、1日1回の局所投薬を行った。結果によって、未処置のベースライン創傷と比較して、SB414での黄色ブドウ球菌細菌数の、SSでありおよび用量依存的である低減が実証された。ベースラインと比較した場合、最大の有効性は、3より大きい対数減少(3.46±0.03LogCFU/mL)を示して、処置の5日後に最高用量で得られた。
【0202】
[実施例18]
混合被験物質のpHを1時間および24時間で試験し、これらの2つの時点でのpHを表18に提供する。混合被験物質は、表14に提供のヒドロゲルからなっていたが、このヒドロゲルは、表15に提供の軟膏組成物の内の1つと、または20%Nitricil(商標)のNVN1軟膏(表19)と1:1の比率で調合されていた。各混合物のpHを、約1グラムの軟膏を容器に秤量し、約1グラムのヒドロゲルを加えることによって決定した。次いで、混合体をスパチュラで約30秒間調合する。容器をスクリュー上蓋で覆い、スクリュー上蓋を約1/4ターン緩めて、インキュベーション時のガス発生を可能とする。所定の時点(一般にt=調合後1時間およびt=調合後24時間)に、フラットエンドpHプローブおよび相応する測定器を使用して混合物のpHを測定する。混合物内の3つの異なる位置をpH値について読み取り、この3回繰り返しの値を平均して当該時点のpH値を決定する。
【表18】
【表19】
【0203】
[実施例19]
1:1の比率でヒドロゲル(表14)と混合した場合の3つの製剤(表20)について、一酸化窒素放出を評価した。3つの異なる混合物について経時的な瞬時NO放出を
図15に示し、3つの異なる混合物について累積NO放出を
図16に示す。3つの異なる混合物について、Cmax、Tmaxおよび様々な時点での総NOの量を表21に提供する。
【表20】
【表21】
【0204】
先の記載は、本発明を例証するものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。本発明は、次に記載する特許請求の範囲により定義され、特許請求の範囲の等価物は、この範囲に含まれるものとする。本明細書において引用する刊行物、特許出願、特許、特許公報、および他の参考文献はすべて、参照箇所が存在する文および/または段落に関連する教示について、引用によりその全体が組み込まれるものとする。なお、本発明の実施態様項は、以下の通りである。
[実施態様項1]
対象において皮膚、粘膜、および/または眼の炎症状態を治療する方法であって、ジアゼニウムジオレート官能基を含む少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物を含む一酸化窒素放出性医薬組成物を、前記皮膚、粘膜、および/または眼の炎症状態を治療するのに有効量で、前記対象の皮膚、粘膜、および/または眼に局所的に投与することを含む、方法。
[実施態様項2]
前記一酸化窒素放出性化合物が、NO放出性の共縮合シリカ粒子を含む、実施態様項1に記載の方法。
[実施態様項3]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、2種以上の活性医薬成分を含む、実施態様項1または2に記載の方法。
[実施態様項4]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、前記対象の皮膚、粘膜、および/または目において炎症細胞を減少させるのに有効な量で局所的に投与される、実施態様項1から3のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項5]
前記炎症細胞が、白血球、リンパ球、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、抗原提示細胞、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、実施態様項4に記載の方法。
[実施態様項6]
前記白血球が、好中球、好塩基球、肥満細胞、好酸球、単球、マクロファージ、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、実施態様項5に記載の方法。
[実施態様項7]
前記リンパ球が、Bリンパ球、Tリンパ球、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、実施態様項5に記載の方法。
[実施態様項8]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、前記対象の皮膚、粘膜、および/または眼の内皮細胞に一酸化窒素を送達するように構成および/または製剤化される、実施態様項1から7のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項9]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、TNFα、IL-1、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-17、IL-17a、IL-17f、IL-22、IL-23、IL-12/IL-23p40、KC/Gro、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインを調節および/または阻害するのに有効な量で、局所的に投与される、実施態様項1から8のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項10]
前記炎症状態が、炎症性皮膚状態であり、酒さ、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、薬疹、乾癬、脂漏性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、貨幣状皮膚炎、手または足の慢性皮膚炎、全身性剥脱性皮膚炎、鬱滞性皮膚炎、新生児皮膚炎、小児皮膚炎、限局性掻爬皮膚炎、毒性/刺激性接触湿疹、アレルギー性接触湿疹、タイプIまたはタイプIV光アレルギー性接触湿疹、接触蕁麻疹、特発性蕁麻疹、汗疱様湿疹、年齢によるしわ、日光損傷の掻痒、尋常性乾癬、剥離性湿疹、膿疱性乾癬、関節症性乾癬、乾癬性紅皮症、光線性皮膚疾患、急性および慢性放射線皮膚炎(UVおよび電離放射線療法)、慢性光線性皮膚炎、日光蕁麻疹、多形性光皮膚炎、痒疹(ストロフルス、丘疹性蕁麻疹)、亜急性、慢性、尋常性ざ瘡、面皰、丘疹、膿疱、結節を有する若年性および成人性ざ瘡(すなわち、結節性、嚢腫結節型ざ瘡)、集簇性ざ瘡(特別な形態:化膿性汗腺炎)、電撃性ざ瘡、アクネテトラド(acne tetrad)、新生児ざ瘡、老人性ざ瘡、機械的ざ瘡形態(引掻きニキビ)、化粧剤性ざ瘡、重複感染性ざ瘡(ブドウ球菌(Staphylococci))を伴う毛包炎、職業関連型のざ瘡(例えば、塩素性ざ瘡)、褥瘡性、潰瘍性下腿、不完全な機能が低下した皮膚、局所掻爬皮膚炎鼻瘤、魚鱗癬、乾皮症、口囲皮膚炎、自己免疫障害、ならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択される、実施態様項1から9のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項11]
前記炎症状態が、前記対象の前記皮膚、粘膜、および/または眼における感染症である、実施態様項1から10のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項12]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、前記対象においてIL-17A、IL-17F、および/またはIL-1βの量を低減させる(例えば、これらの活性化を阻害および/またはこれらの産生を低減させる)のに有効な量で局所的に投与される、実施態様項1から11のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項13]
IL-17A、IL-17F、および/またはIL-1βの量が、本発明の方法が無い場合の前記対象のIL-17A、IL-17F、および/またはIL-1βの量と比較して、前記対象において少なくとも約40%低減する、実施態様項1から12のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項14]
IL-17A、IL-17F、および/またはIL-1βの量が、前記対象の皮膚において局所的に低減する、実施態様項1から13のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項15]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物の局所投与によって、一酸化窒素の投与による全身性の作用が生じない、実施態様項1から14のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項16]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、第1の組成物と第2の組成物とを混合して含み、
前記第1の組成物が、
前記ジアゼニウムジオレート官能基を含む前記少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物と、
前記第1の組成物の約60重量%から約90重量%の濃度で前記第1の組成物中に存在する第1の疎水性基剤と、
前記第1の組成物の約2重量%から約15重量%の濃度で前記第1の組成物中に存在する第2の疎水性基剤と、
前記第1の組成物の約1重量%から約10重量%の濃度で前記第1の組成物中に存在する両親媒性化合物と、
前記第1の組成物の約1重量%から約15重量%の濃度で前記第1の組成物中に存在する乳化剤と
を含み、
前記第2の組成物が、
前記第2の組成物の約1重量%から約約90重量%の濃度で、場合により前記第2の組成物の約10重量%から約約90重量%の濃度で、前記第2の組成物中に存在する緩衝剤と、
前記第2の組成物の約0.5重量%から約5重量%の濃度で前記第2の組成物中に存在するポリマーと、
前記第2の組成物の約2重量%から約20重量%の濃度で前記第2の組成物中に存在する多価アルコールと
を含む、実施態様項1から15のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項17]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、第1の組成物と第2の組成物とを混合して含み、
前記第1の組成物が、
前記ジアゼニウムジオレート官能基を含む前記少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物と、
前記第1の組成物の約50重量%~約95重量%の量の疎水性基剤と、
前記第1の組成物の約1重量%~約20重量%の量の両親媒性化合物と、
前記第1の組成物の約1重量%~約20重量%の量の乳化剤と
を含み、
前記第2の組成物が、
前記第2の組成物の約50重量%~約約95重量%の量の水と、
前記第2の組成物の約1重量%~約20重量%の量の緩衝剤と、
前記第2の組成物の約0.5重量%~約5重量%の量のポリマーと、
前記第2の組成物の約1重量%~約20重量%の量の多価アルコールと
を含む、実施態様項1から15のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項18]
前記疎水性基剤が、鉱物油とポリエチレンとの組合せであり、前記両親媒性化合物が、PEG-6-カプリル酸/カプリン酸グリセリドであり、前記乳化剤が、セチルアルコールである、実施態様項17に記載の方法。
[実施態様項19]
前記疎水性基剤が、鉱物油とポリエチレンとの組合せであり、前記両親媒性化合物が、PEG-6-カプリル酸/カプリン酸グリセリドであり、前記乳化剤が、グリセロールモノステアレートである、実施態様項17に記載の方法。
[実施態様項20]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、第1の組成物と第2の組成物とを混合して含み、
前記第1の組成物が、
前記ジアゼニウムジオレート官能基を含む前記少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物と、
前記第1の組成物の約50重量%~約95重量%の量の疎水性基剤と、
前記第1の組成物の約1重量%~約20重量%の量の両親媒性化合物と、
前記第1の組成物の約1重量%~約20重量%の量のケイ素含有化合物と
を含み、
前記第2の組成物が、
前記第2の組成物の約50重量%~約約95重量%の量の水と、
前記第2の組成物の約1重量%~約20重量%の量の緩衝剤と、
前記第2の組成物の約0.5重量%~約5重量%の量のポリマーと、
前記第2の組成物の約1重量%~約20重量%の量の多価アルコールと
を含む、実施態様項1から15のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項21]
前記疎水性基剤が、鉱物油およびポリエチレンの組合せであり、前記両親媒性化合物が、PEG-6-カプリル酸/カプリン酸グリセリドであり、前記ケイ素含有化合物が、シクロメチコンである、実施態様項20に記載の方法。
[実施態様項22]
前記第1の組成物が、前記第1の組成物の約1重量%~約30重量%の量で存在するシリコーンエラストマー(例えば、ST-Elastomer 10)をさらに含む、実施態様項20または21に記載の方法。
[実施態様項23]
前記ジアゼニウムジオラート官能基を含む少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物が、前記第1の組成物の約0.1重量%~約30重量%の量で前記第1の組成物中に存在する、実施態様項1から22のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項24]
前記ポリマーが、カルボキシメチルセルロースまたはその塩であり、前記多価アルコールが、グリセリンである、実施態様項15から23のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項25]
前記緩衝剤が、酢酸および酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)である、実施態様項15から24のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項26]
前記第2の組成物が、保存剤をさらに含み、場合により前記保存剤が、前記第2の組成物の約0.01重量%~約1重量%の量で前記第2の組成物中に存在する、実施態様項15から25のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項27]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、in vitroで測定して、約7未満のpHを有し、場合により前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、約4~約7または約4~約6の範囲のpHを有する、実施態様項1から27のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項28]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、投与されて(例えば、組成物が形成されて)約1時間後および/または約24時間後で、in vitroで測定して、4.5から6.5または4.5から5.5の範囲のpHを有する、実施態様項1から27のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項29]
投与されて約1時間後のpHと投与されて約24時間後のpHの差が、±0.2未満である、実施態様項1から28のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項30]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、組成物が投与されて約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日後に、細菌数(例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)細菌数)の少なくとも2対数減少を提供するのに十分な量で投与される、実施態様項1から29のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項31]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物および/またはおよび/または前記第2の組成物が、in vitroで測定して、約4.0~約4.5または約4.0~約5.0の範囲のpHを有する、実施態様項1から30のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項32]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、1日1回で投与される、実施態様項1から31のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項33]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、1日2回で投与される、実施態様項1から32のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項34]
第1の組成物と第2の組成物とを混合して含む一酸化窒素放出性医薬組成物であって、
前記第1の組成物が、
ジアゼニウムジオレート官能基を含む少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物と、
前記第1の組成物の約50重量%~約95重量%の量の疎水性基剤と、
前記第1の組成物の約1重量%~約20重量%の量の両親媒性化合物と、
前記第1の組成物の約1重量%~約20重量%の量の乳化剤と
を含み、
前記第2の組成物が、
前記第2の組成物の約50重量%~約約95重量%の量の水と、
前記第2の組成物の約1重量%~約20重量%の量の緩衝剤と、
前記第2の組成物の約0.5重量%~約5重量%の量のポリマーと、
前記第2の組成物の約1重量%~約20重量%の量の多価アルコールと
を含む、一酸化窒素放出性医薬組成物。
[実施態様項35]
前記疎水性基剤が、鉱物油とポリエチレンとの組合せであり、前記両親媒性化合物が、PEG-6-カプリル酸/カプリン酸グリセリドであり、前記乳化剤が、セチルアルコールである、実施態様項34に記載の組成物。
[実施態様項36]
前記疎水性基剤が、鉱物油とポリエチレンとの組合せであり、前記両親媒性化合物が、PEG-6-カプリル酸/カプリン酸グリセリドであり、前記乳化剤が、グリセロールモノステアレートである、実施態様項34に記載の組成物。
[実施態様項37]
第1の組成物と第2の組成物とを混合して含む一酸化窒素放出性医薬組成物であって、
前記第1の組成物が、
ジアゼニウムジオレート官能基を含む少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物と、
前記第1の組成物の約50重量%~約95重量%の量の疎水性基剤と、
前記第1の組成物の約1重量%~約20重量%の量の両親媒性化合物と、
前記第1の組成物の約1重量%~約20重量%の量のケイ素含有化合物と
を含み、
前記第2の組成物が、
前記第2の組成物の約50重量%~約約95重量%の量の水と、
前記第2の組成物の約1重量%~約20重量%の量の緩衝剤と、
前記第2の組成物の約0.5重量%~約5重量%の量のポリマーと、
前記第2の組成物の約1重量%~約20重量%の量の多価アルコールと
を含む、一酸化窒素放出性医薬組成物。
[実施態様項38]
前記疎水性基剤が、鉱物油およびポリエチレンの組合せであり、前記両親媒性化合物が、PEG-6-カプリル酸/カプリン酸グリセリドであり、前記ケイ素含有化合物が、シクロメチコンである、実施態様項37に記載の組成物。
[実施態様項39]
前記第1の組成物が、前記第1の組成物の約1重量%~約30重量%の量で存在するシリコーンエラストマー(例えば、ST-Elastomer 10)をさらに含む、実施態様項37または38に記載の組成物。
[実施態様項40]
前記ジアゼニウムジオラート官能基を含む少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物が、前記第1の組成物の約0.1重量%~約30重量%の量で前記第1の組成物中に存在する、実施態様項34から39のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項41]
前記ポリマーが、カルボキシメチルセルロースまたはその塩であり、前記多価アルコールが、グリセリンである、実施態様項34から40のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項42]
前記緩衝剤が、酢酸および酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)である、実施態様項34から41のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項43]
前記第2の組成物が、保存剤をさらに含み、場合により前記保存剤は、前記第2の組成物の約0.01重量%~約1重量%の量で前記第2の組成物中に存在する、実施態様項34から42のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項44]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、in vitroで測定して、約7未満のpHを有し、場合により前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、約4~約7または約4~約6の範囲のpHを有する、実施態様項34から43のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項45]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物および/または前記第2の組成物が、in vitroで測定して、約4.0~約4.5または約4.0~約5.0の範囲のpHを有する、実施態様項34から44のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項46]
組成物であって、
ジアゼニウムジオレート官能基を含む少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物と、
前記組成物の約50重量%~約95重量%の量の疎水性基剤と、
前記組成物の約1重量%~約20重量%の量の両親媒性化合物と、
前記組成物の約1重量%~約20重量%の量の乳化剤と
を含む、組成物。
[実施態様項47]
前記疎水性基剤が、鉱物油とポリエチレンとの組合せであり、前記両親媒性化合物が、PEG-6-カプリル酸/カプリン酸グリセリドであり、前記乳化剤が、セチルアルコールである、実施態様項46に記載の組成物。
[実施態様項48]
前記疎水性基剤が、鉱物油とポリエチレンとの組合せであり、前記両親媒性化合物が、PEG-6-カプリル酸/カプリン酸グリセリドであり、前記乳化剤が、グリセロールモノステアレートである、実施態様項46に記載の組成物。
[実施態様項49]
組成物であって、
ジアゼニウムジオレート官能基を含む少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物と、
前記組成物の約50重量%~約95重量%の量の疎水性基剤と、
前記組成物の約1重量%~約20重量%の量の両親媒性化合物と、
前記組成物の約1重量%~約20重量%の量のケイ素含有化合物と
を含む、組成物。
[実施態様項50]
前記疎水性基剤が、鉱物油とポリエチレンとの組合せであり、前記両親媒性化合物が、PEG-6-カプリル酸/カプリン酸グリセリドであり、前記ケイ素含有化合物が、シクロメチコンである、実施態様項49に記載の組成物。
[実施態様項51]
前記組成物の約1重量%~約30重量%の量で存在するシリコーンエラストマー(例えば、ST-Elastomer 10)をさらに含む、実施態様項49または50に記載の組成物。
[実施態様項52]
前記ジアゼニウムジオラート官能基を含む少なくとも1つの一酸化窒素放出性化合物が、前記第1の組成物の約0.1重量%~約30重量%の量で前記第1の組成物中に存在する、実施態様項46から51のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項53]
組成物であって、
前記組成物の約50重量%~約約95重量%の量の水と、
前記組成物の約1重量%~約20重量%の量の緩衝剤と、
前記組成物の約0.5重量%~約5重量%の量のポリマーと、
前記組成物の約1重量%~約20重量%の量の多価アルコールと
を含む、組成物。
[実施態様項54]
前記ポリマーが、カルボキシメチルセルロースまたはその塩であり、前記多価アルコールが、グリセリンである、実施態様項53に記載の組成物。
[実施態様項55]
前記緩衝剤が、酢酸および酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)である、実施態様項53または54に記載の組成物。
[実施態様項56]
保存剤をさらに含み、場合により前記保存剤は、前記組成物の約0.01重量%~約1重量%の量で前記組成物中に存在する、実施態様項53から55のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項57]
in vitroで測定して、約4.0~約5.0の範囲のpHを有する、実施態様項53から56のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項58]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、in vitro放出により測定して、投与されて(例えば、組成物が形成されて)1時間後に、前記組成物1mg当たり少なくとも約100nmolのNOを放出する、実施態様項1から33のいずれか1項に記載の方法または実施態様項34から45のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項59]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、in vitro放出により測定して、投与されて(例えば、組成物が形成されて)1時間後に、前記組成物1mg当たり約100nmol~約500nmolのNOを放出する、実施態様項1から33のいずれか1項に記載の方法または実施態様項34から45のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項60]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、in vitro放出により測定して、投与されて(例えば、組成物が形成されて)約1分~約20分後に、前記組成物1mg当たり少なくとも約1200pmolのNOのNO放出の最大濃度(Cmax)を有する、実施態様項1から33のいずれか1項または実施態様項58もしくは59に記載の方法あるいは実施態様項34から45のいずれか1項または実施態様項58もしくは59に記載の組成物。
[実施態様項61]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、in vitro放出により測定して、投与されて(例えば、組成物が形成されて)約1分~約5分後に、前記組成物1mg当たり約1300pmol~約2000pmolのNOのNO放出の最大濃度(Cmax)を有する、実施態様項1から33のいずれか1項または実施態様項58もしくは59に記載の方法あるいは実施態様項34から45のいずれか1項または実施態様項58もしくは59に記載の組成物。
[実施態様項62]
前記一酸化窒素放出性医薬組成物が、in vitro放出により測定して、投与されて(例えば、組成物が形成されて)約1分~約5分後に、前記組成物1mg当たり約2000pmol~約4000pmolのNOのNO放出の最大濃度(Cmax)を有する、実施態様項1から33のいずれか1項または実施態様項58もしくは59に記載の方法あるいは実施態様項34から45のいずれか1項または実施態様項58もしくは59に記載の組成物。