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  • 特許-ごみ焼却灰の資源化方法及び資源化装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】ごみ焼却灰の資源化方法及び資源化装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/38 20060101AFI20220617BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20220617BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20220617BHJP
【FI】
C04B7/38
B09B5/00 N ZAB
B09B3/70
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019001131
(22)【出願日】2019-01-08
(65)【公開番号】P2020111473
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 洸
(72)【発明者】
【氏名】竹本 智典
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰之
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-193456(JP,A)
【文献】特開2016-159210(JP,A)
【文献】特開2015-089864(JP,A)
【文献】特開2015-182896(JP,A)
【文献】特開2014-193798(JP,A)
【文献】特開2009-061365(JP,A)
【文献】特開平11-090408(JP,A)
【文献】特開2020-110739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/38
B09B 5/00
B09B 3/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみ焼却灰に水を添加してスラリー化し、
該ごみ焼却灰スラリーを粗粒子を含むスラリーと、微粒子を含むスラリーに分離し(第1の分級)、
前記粗粒子を含むスラリーを湿式比重選別(第1の湿式比重選別)して貴金属を回収し、
前記微粒子を含むスラリーを3以上の粒群に分離し(第2の分級)、
該第2の分級によって分離された最小径の粒群以外の各粒群のスラリーを別々に湿式比重選別(第2の湿式比重選別)して貴金属を回収し、
前記第2の分級によって分離された最小径の粒群のスラリーを脱塩した後、セメント原料として利用することを特徴とするごみ焼却灰の資源化方法。
【請求項2】
前記第1の分級によって分離された粗粒子を含むスラリーを湿式粉砕し、
該粉砕された粗粒子を含むスラリーから湿式磁力選別によって磁着物を除去し、
該磁着物が除去された粗粒子を含むスラリーをさらに分級し(第3の分級)、
該第3の分級によって分離された粗粒子を含むスラリーについて前記第1の湿式比重選別を行うことを特徴とする請求項1に記載のごみ焼却灰の資源化方法。
【請求項3】
前記第2の分級によって分離された最小径の粒群以外の各粒群スラリーから湿式磁力選別によって磁着物を除去し、
該磁着物が除去された各スラリーについて前記第2の湿式比重選別を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のごみ焼却灰の資源化方法。
【請求項4】
ごみ焼却灰に水を添加してスラリー化するスラリー化装置と、
該スラリー化装置でスラリー化されたごみ焼却灰スラリーを粗粒子を含むスラリーと、微粒子を含むスラリーに分級する第1の分級装置と、
該第1の分級装置で分離された前記粗粒子を含むスラリーを湿式比重選別する第1の湿式比重選別装置と、
前記第1の分級装置で分離された前記微粒子を含むスラリーを3以上の粒群に分離する第2の分級装置と、
該第2の分級装置で分離された最小径の粒群以外の各粒群のスラリーを別々に湿式比重選別する第2の湿式比重選別装置と、
前記第2の分級装置で分離された最小径の粒群のスラリーを脱塩する脱塩装置とを備えることを特徴とするごみ焼却灰の資源化装置。
【請求項5】
前記第1の分級装置で分離された前記粗粒子を含むスラリーを湿式粉砕する湿式粉砕装置と、
該湿式粉砕装置で粉砕された粗粒子を含むスラリーから磁着物を除去する湿式磁力選別装置と、
該湿式磁力選別装置で磁着物が除去された粗粒子を含むスラリーをさらに分級する第3の分級装置とを備え、
該第3の分級装置によって分離された粗粒子を含むスラリーを前記第1の湿式比重選別装置に供給することを特徴とする請求項4に記載のごみ焼却灰の資源化装置。
【請求項6】
前記第2の分級装置によって分離された最小径の粒群以外の各粒群のスラリーから磁着物を除去する湿式磁力選別装置を備え、
該湿式磁力選別装置によって磁着物が除去された各スラリーを前記第2の湿式比重選別装置に供給することを特徴とする請求項4又は5に記載のごみ焼却灰の資源化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ等を焼却した際に発生するごみ焼却灰(主灰)を資源化する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ等を焼却した際に発生する焼却灰(以下「ごみ焼却灰」という。)は、従来、そのほとんどが最終処分場で埋め立て処理されていたが、最終処分場の枯渇の虞に鑑み、近年、セメント原料等として有効利用されている。
【0003】
ごみ焼却灰には塩素が平均で1.2%程度存在し、この塩素がセメント品質の低下や、セメント製造装置の安定運転を妨げるため、セメント原料として利用するには、予め塩素を除去する必要がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、焼却灰に水を加えて焼却灰中の粒子を破砕しながら撹拌して焼却灰スラリーとする解砕工程と、その焼却灰スラリーを選別用篩に通して過大固形物を除去する異物除去工程と、選別用篩を通過した焼却灰スラリーを水切り用篩により脱水する脱水工程と、脱水工程を経た焼却灰をすすぎ洗浄するすすぎ洗浄工程とを有する焼却灰の洗浄方法等が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、ごみ焼却灰に水を添加して解泥しながら撹拌してスラリー化し、焼却灰スラリーを2回分級して得られた微粒子スラリーに酸性ガス又は酸を添加して脱塩を行う方法等が記載されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、ごみ焼却灰を脱塩する洗浄方法として、予め磁着物を取り除いた焼却灰をスラリー化し、焼却灰スラリーを粗粒子含有スラリーと細粒子含有スラリーとに分離する方法等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-166170号公報
【文献】特開2014-193456号公報
【文献】特開2009-061365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ごみ焼却灰には貴金属が含まれていることが知られているが、上記特許文献1~3に記載のように、ごみ焼却灰に脱塩等の処理を施した後セメント原料等として再利用すると共に、鉄等の磁性金属を回収しているが、貴金属の回収までは行われていない。
【0009】
また、破砕、風力選別、乾式比重選別等からなる物理選別工程でごみ焼却灰から貴金属を回収することができるが、ごみ焼却灰を脱塩処理した後、貴金属を上記物理選別により回収するには、脱塩処理後のごみ焼却灰を乾燥させる必要があり、多大なエネルギーコストがかかる。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、ごみ焼却灰を脱塩してセメント原料として利用すると共に、ごみ焼却灰から効率よく貴金属を回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、ごみ焼却灰の資源化方法であって、ごみ焼却灰に水を添加してスラリー化し、該ごみ焼却灰スラリーを粗粒子を含むスラリーと、微粒子を含むスラリーに分離し(第1の分級)、前記粗粒子を含むスラリーを湿式比重選別(第1の湿式比重選別)して貴金属を回収し、前記微粒子を含むスラリーを3以上の粒群に分離し(第2の分級)、該第2の分級によって分離された最小径の粒群以外の各粒群のスラリーを別々に湿式比重選別(第2の湿式比重選別)して貴金属を回収し、前記第2の分級によって分離された最小径の粒群のスラリーを脱塩した後、セメント原料として利用することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、ごみ焼却灰の微粒子を含むスラリーを脱塩してセメント原料として利用すると共に、粗粒子を含むスラリーから湿式比重選別によって乾燥処理を行わずに貴金属を回収するため、エネルギーコストを低く抑えながら効率よく貴金属を回収することができる。さらに、第2の分級によって3以上の粒群に分離し、最小径の粒群以外の各粒群毎に第2の湿式比重選別を行うため、選別効率が向上する。
【0013】
また、前記第1の分級によって分離された粗粒子を含むスラリーを湿式粉砕し、該粉砕された粗粒子を含むスラリーから湿式磁力選別によって磁着物を除去し、該磁着物が除去された粗粒子を含むスラリーをさらに分級し(第3の分級)、該第3の分級によって分離された粗粒子を含むスラリーについて前記第1の湿式比重選別を行うことができる。これにより、鉄等を除去すると共に、第1の湿式比重選別で回収される重産物に貴金属を濃縮させることができる。
【0014】
さらに、前記第2の分級によって分離された最小径の粒群以外の各粒群のスラリーから湿式磁力選別によって磁着物を除去し、該磁着物が除去された各スラリーについて前記第2の湿式比重選別を行うことができる。これにより、鉄等を除去すると共に、第2の湿式比重選別で回収される重産物に貴金属を濃縮させることができる。
【0015】
また、本発明は、ごみ焼却灰の資源化装置であって、ごみ焼却灰に水を添加してスラリー化するスラリー化装置と、該スラリー化装置でスラリー化されたごみ焼却灰スラリーを粗粒子を含むスラリーと、微粒子を含むスラリーに分離する第1の分級装置と、該第1の分級装置で分離された前記粗粒子を含むスラリーを湿式比重選別する第1の湿式比重選別装置と、前記第1の分級装置で分離された前記微粒子を含むスラリーを3以上の粒群に分級する第2の分級装置と、該第2の分級装置で分離された最小径の粒群以外の各粒群のスラリーを別々に湿式比重選別する第2の湿式比重選別装置と、前記第2の分級装置で分離された粒径が最小径の粒群のスラリーを脱塩する脱塩装置とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、ごみ焼却灰の微粒子を含むスラリーを脱塩してセメント原料として利用すると共に、粗粒子を含むスラリーから湿式比重選別装置によって乾燥処理を行わずに貴金属を回収するため、エネルギーコストを低く抑えながら効率よく貴金属を回収することができる。さらに、第2の分級装置によって3以上の粒群に分離し、第2の湿式比重選別装置によって最小径の粒群以外の各粒群毎に湿式比重選別を行うため、選別効率が向上する。
【0017】
さらに、上記ごみ焼却灰の資源化装置は、前記第1の分級装置で分離された前記粗粒子を含むスラリーを湿式粉砕する湿式粉砕装置と、該湿式粉砕装置で粉砕された粗粒子を含むスラリーから磁着物を除去する湿式磁力選別装置と、該湿式磁力選別装置で磁着物が除去された粗粒子を含むスラリーをさらに分級する第3の分級装置とを備え、該第3の分級装置によって分離された粗粒子を含むスラリーを前記第1の湿式比重選別装置に供給することができる。これにより、湿式磁力選別装置で鉄等を除去すると共に、第1の湿式比重選別装置で回収される重産物に貴金属を濃縮させることができる。
【0018】
さらに、上記ごみ焼却灰の資源化装置は、前記第2の分級装置によって分離された最小径の粒群以外の各粒群のスラリーから磁着物を除去する湿式磁力選別装置を備え、該湿式磁力選別装置によって磁着物が除去された各スラリーを前記第2の湿式比重選別装置に供給することができる。これにより、湿式磁力選別装置で鉄等を除去すると共に、第2の湿式磁力選別装置で回収される重産物に貴金属を濃縮させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、ごみ焼却灰を脱塩してセメント原料として利用すると共に、ごみ焼却灰から効率よく貴金属を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明にかかるごみ焼却灰の資源化装置の一実施の形態を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係るごみ焼却灰の資源化装置(以下「資源化装置」という。)の一実施の形態について、図1を参照しながら説明する。尚、図1において破線の矢線は液体の流れを、一点鎖線の矢線は気体の流れを、実線の矢線は固体(スラリーを含む)の流れを各々示している。
【0022】
この資源化装置1は、受け入れたごみ焼却灰(以下「主灰」という。)BAを貯蔵する主灰タンク2と、主灰BAに水W等を添加して解泥しながら撹拌してスラリー化するスラリー化装置3と、スラリー化装置3からの主灰スラリーS1を粗粒子を含むスラリーS2と、微粒子を含むスラリーとに分級する第1分級装置4と、第1分級装置4で分離した微粒子を含むスラリーを5粒群(スラリーS3A~S3D、S4)に分離する第2分級装置5と、粗粒子を含むスラリーS2、第2分級装置5で分離されたスラリーS3A~S3D、S4を各々処理する処理装置とで構成される。
【0023】
スラリー化装置3は、主灰BAに水を添加して解泥しながら撹拌して主灰スラリーS1を生成するために設けられる。
【0024】
第1分級装置4は、スラリー化装置3からの主灰スラリーS1を粗粒子を含むスラリーS2と、微粒子を含むスラリーとに分離するために設けられ、15~30mm程度を分級点とし、本実施形態では15mmとする。
【0025】
第2分級装置5は、第1分級装置4で分離した微粒子を含むスラリーをさらに5粒群に分離するため、4つの分級点を有する。これらの分級点は、大きい方から順に、4~8mm、2~4mm、0.7~2mm、0.2~0.7mm程度に設定することができ、本実施の形態では8mm、4mm、2mm、0.7mmとする。尚、効果的に塩素除去を行うため、最小の分級点は1mm以下であることが好ましい。
【0026】
第1分級装置4で分離された粗粒子を含むスラリーS2の処理装置は、スラリーS2を湿式粉砕する湿式粉砕装置6と、湿式粉砕されたスラリーS5から磁着物を除去する湿式磁力選別装置7と、磁着物が除去されたスラリーS6を粗粒子を含むスラリーS7と、微粒子を含むスラリーS8とに分離する第3分級装置8と、第3分級装置8で分離された粗粒子を含むスラリーS7を湿式比重選別する湿式比重選別装置9とで構成される。第3分級装置8は、第1分級装置4と同様に15~30mm程度を分級点とし、本実施形態では15mmとする。
【0027】
第2分級装置5で分離されたスラリーS3A~S3Dの処理装置は、各スラリーS3A~S3Dから磁着物を除去する湿式磁力選別装置10と、磁着物が除去された各スラリーS10(S10A~S10D)を湿式比重選別する湿式比重選別装置11と、重産物が除去されたスラリーS11(S11A~S11D)を固液分離する固液分離装置15とで構成される。
【0028】
第2分級装置5で分離された微粒子を含むスラリーS4の処理装置は、スラリーS4を湿式粉砕する湿式粉砕装置12と、湿式粉砕されたスラリーS12を酸性ガスGと反応させる反応槽13と、反応槽13に酸性ガスGを導入する酸性ガス導入装置14と、反応槽13からのスラリーS13を固液分離する固液分離装置15とで構成される。
【0029】
第1~第3分級装置4、5、8には、湿式篩等を用いることができる。
【0030】
湿式粉砕装置6、12には、湿式のローラーミル、ハンマーミル、ピンミル、ロッドミル、振動ミル等を用いることができる。
【0031】
湿式磁力選別装置7、10には、湿式ドラム型磁選機、湿式マグネットフィルタ型磁選機等を用いることができる。
【0032】
湿式比重選別装置9、11には、ジグ選別機、薄流選別機等を用いることができる。
【0033】
酸性ガス導入装置14は、反応槽13に酸性ガスGを導入するために設けられ、導入する酸性ガスには、CO2を多く含むセメントキルンの排ガスやSO2を多く含む塩素バイパス設備の排ガスを利用することができる。
【0034】
反応槽13は、湿式粉砕されたスラリーS12を酸性ガスGと反応させるために設けられ、バッチ式や連続式の曝気槽等を用いることができる。
【0035】
次に、上記構成を有する資源化装置1を用いた、本発明に係るごみ焼却灰の資源化方法について、図1を参照しながら説明する。
【0036】
まず、スラリー化装置3において、主灰BAに水Wを添加して解泥しながら撹拌して主灰スラリーS1を生成する。スラリー化装置3に投入する主灰BAは、任意の状態のものを使用することができるが、受け入れ後に予め大塊を除去し、磁力選別、25mm以上の篩い目の篩選別により異物が除去されていることが好ましい。
【0037】
スラリー化にあたり、主灰BAに対して0.1倍~2.0倍の量の水を使用する。解泥するのは、受け入れた主灰BAが水分によって凝集しているため、そのままでは分級が困難だからである。
【0038】
次に、スラリー化装置3からの主灰スラリーS1を第1分級装置4に供給し、粒径15mmを超える粗粒子を含むスラリーS2と、粒径15mm以下の微粒子を含むスラリーに分離する。
【0039】
粒径15mmを超える粗粒子を含むスラリーS2を湿式粉砕装置6に供給し、湿式粉砕する。湿式粉砕されたスラリーS5を湿式磁力選別装置7に供給し、磁着物を除去する。磁着物を除去したスラリーS6を第3分級装置8に供給し、粒径15mmを超える粗粒子を含むスラリーS7と、粒径15mm以下の微粒子を含むスラリーS8に分離し、スラリーS7を湿式比重選別装置9に供給し、スラリーS8を第1分級装置4に戻す。
【0040】
湿式比重選別装置9において、スラリーS7から貴金属を含む重産物を回収し、残りの軽産物スラリーS9をセメント焼成装置20の仮焼炉に投入する。
【0041】
上記粒径15mm以下の微粒子を含むスラリーを第2分級装置5に供給し、さらに粒径8mmを超える粒子を含むスラリーS3Aと、粒径4mmを超える粒子を含むスラリーS3Bと、粒径2mmを超える粒子を含むスラリーS3Cと、粒径0.7mmを超える粒子を含むスラリーS3Dと、粒径0.7mm以下の粒子を含むスラリーS4に分離する。
【0042】
スラリーS3A~S3Dを湿式磁力選別装置10に別々に供給し、磁着物を除去する。磁着物を除去したスラリーS10A~Dを湿式比重選別装置11に別々に供給し、スラリーから貴金属を含む重産物を回収し、残りの軽産物スラリーS11A~Dを固液分離装置15に別々に供給して固液分離した後、ケークCをセメント焼成装置20の仮焼炉に投入する。
【0043】
第2分級装置5で分離された粒径0.7mm以下の粒子を含むスラリーS4を湿式粉砕装置12に供給し、湿式粉砕する。その後、反応槽13に供給し、反応槽13において酸性ガス導入装置14からの酸性ガスGと反応させ、主灰BAに含まれるフリーデル氏塩を分解する。粒径0.7mm以下の粒子を含むスラリーS4を対象とするのは、粒径の小さい粒子に塩素分が多く含まれているからであり、湿式粉砕するのは、表面積を大きくして反応性を高めるためである。
【0044】
尚、フリーデル氏塩とは、化学式で表すと、3CaO・Al23・CaCl2・10H2Oであり、下記のように、アルミン酸三石灰(3CaO・Al23)が水和反応の際に塩化物イオンを取り込んで生成される塩である。
3CaO・Al23+CaCl2+10H2O→3CaO・Al23・CaCl2・10H2
【0045】
スラリーに酸性ガスGとしてセメントキルンの排ガスを吹き込むと、下式に示すように、フリーデル氏塩を分解することができる。
3CaO・Al23・CaCl2・10H2O+3CO2→3CaCO3+2Al(OH)3+CaCl2+7H2
【0046】
また、スラリーに酸性ガスGとして塩素バイパス設備の排ガスを吹き込むと、下式に示すように、フリーデル氏塩を分解することができる。
3CaO・Al23・CaCl2・10H2O+XSO4 2-→3CaO・Al23・3CaSO4・32H2O+YCl-
【0047】
この際、反応槽13内のpHは4~10.5に調整する。
【0048】
酸性ガスGとの反応を終えたスラリーS13は、固液分離装置15へ導入され、ケーク洗浄水(新規水)W1によって洗浄された後、又は洗浄されながら脱水される。脱水後のケークCは、セメント原料としてセメント焼成装置20の仮焼炉に投入する。また、固液分離装置15の排水W3は、排水処理後放流し、一部の排水W2をスラリー化装置3や第1分級装置4へ戻して循環使用する。また、固液分離装置15で分離されたろ液F1もスラリー化装置3や第1分級装置4へ戻して再使用することができる。この際、ろ液F1の電気伝導度を測定してろ液F1の塩素濃度を管理しながら、上記排水W2の循環量を決定することが好ましい。
【0049】
以上のように、本実施の形態によれば、主灰BAを脱塩してセメント原料として再利用すると共に、貴金属を含む重産物を湿式比重選別装置9、11で回収することができ、乾燥処理をする必要もないので、主灰BAから効率よく貴金属を回収することができる。さらに、第2の分級装置5によって5粒群(S3A~S3D、S4)に分離し、湿式比重選別装置11によって最小径の粒群を除く各粒群(S3A~S3D)毎に湿式比重選別を行うため、選別効率が向上する。
【0050】
尚、湿式磁力選別装置7、10で回収される磁着物は、鉄を60%以上含むために鉄スクラップとして再資源化することができる。また、湿式比重選別装置9で回収される重産物は、銅を10%以上含むために精錬用原料として資源化することができる。さらに、湿式比重選別装置11で回収される各重産物の混合物は、銅20%以上、銀500g/t以上、金20g/t以上の品位を有しており、精錬用原料として資源化することができる。
【0051】
また、第1~第3の分級装置4、5、8において散水しながら分離することで、粗粒子に付着した微粒子を粗粒子から分離させたり、粗粒子の水洗をある程度行うこともできるため、より効果的に塩素分を低減することができ、粗粒子の水洗設備を別途設ける必要もない。散水量は、処理する主灰BAの量の1~4倍に調整する。
【0052】
さらに、反応槽13に酸性ガスGを導入せずに、硫酸、硝酸、酢酸、ギ酸等の酸を添加してもよい。
【0053】
また、反応槽13に酸性ガスGや酸だけでなく、O3等の酸化性ガスを導入し、CODを低下させて後段の排水処理の負荷を軽減することもできる。反応槽13に酸化性ガスを導入せずに、槽を多段化し、酸性ガスGや酸化性ガスを別々に導入することもできる。
【0054】
さらにまた、スラリーS9及びケークCをセメント原料としてセメント焼成装置20の仮焼炉に投入したが、スラリーS9等を調合原料として利用することもできる。
【0055】
また、第2分級装置5で5粒群に分離したが、3以上であればこれに限定されない。但し、分級する粒群の数を増加させ過ぎると、スラリーS3の処理装置を増設する必要がある。また、増設しない場合には装置を使い回すことで処理速度が遅くなるため、適宜調整する。
【符号の説明】
【0056】
1 セメント資源化装置
2 主灰タンク
3 スラリー化装置
4 第1分級装置
5 第2分級装置
6 湿式粉砕装置
7 湿式磁力選別装置
8 第3分級装置
9 湿式比重選別装置
10 湿式磁力選別装置
11 湿式比重選別装置
12 湿式粉砕装置
13 反応槽
14 酸性ガス導入装置
15 固液分離装置
20 セメント焼成装置
図1