(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】癌の治療のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20220617BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20220617BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220617BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220617BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20220617BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220617BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220617BHJP
C07K 14/82 20060101ALI20220617BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220617BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220617BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220617BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220617BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220617BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220617BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
A61K35/12
A61K35/76
A61K38/16
A61K47/64
A61K48/00
A61P35/00
C07K14/82
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
(21)【出願番号】P 2019501644
(86)(22)【出願日】2017-07-17
(86)【国際出願番号】 EP2017067998
(87)【国際公開番号】W WO2018011433
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-04-17
(32)【優先日】2016-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515308936
【氏名又は名称】フンダシオ プリバダ インスティトゥト ディンベスティガシオ オンコロジカ デ バル エブロン
【氏名又は名称原語表記】FUNDACIO PRIVADA INSTITUT D’INVESTIGACIO ONCOLOGICA DE VALL HEBRON
【住所又は居所原語表記】Calle Natzaret 115,E-08035 Barcelona Spain
(73)【特許権者】
【識別番号】313013955
【氏名又は名称】インスティテュシオ・カタラナ・デ・レセルカ・イ・エスチュディス・アヴァンカス
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】ソウセック、ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ハウセト ゴンザレス、トニ
(72)【発明者】
【氏名】ボーリュー、マリー-エーヴ
【審査官】木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-520056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の89位の残基Xが
セリンまたはアラニンである配列番号1からなるポリペプチド、または配列番号1の89位に対応する位置の残基Xが
セリンまたはアラニンである前記ポリペチドの機能的に等価な変異体からなるポリペプチドであって、
前記変異体が、
配列番号1に対し90%超の配列同一性を有し、
配列番号1の89位の残基Xが
セリンまたはアラニンである配列番号1の腫瘍抑制活性を実質的に保存し、さらに
Mycおよび/またはその絶対パートナーp21/p22Maxと二量体化し、Myc活性が核内に見出されたらそれを阻害し、細胞膜を横切って移動することができ、核膜を横切って移動することができるものである、ポリペプチド。
【請求項2】
前記機能的に等価な変異体が、配列番号1からなるポリペプチドに対して1種またはそれ以上のアミノ酸の欠失、挿入または付加から生じる任意のポリペプチドであるか、または配列番号1からなるポリペプチドの化学的修飾から生じる任意のポリペプチドである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、配列番号3の90位の残基Xが
セリンまたはアラニンである配列番号3からなるポリペプチドである、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列番号4からなる、請求項
1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
配列番号64からなる、請求項
1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
a.請求項1~
5のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは該ポリペプチドの機能的に等価な変異体と、
b.前記ポリペプチドまたは該ポリペプチドの機能的に等価な変異体の細胞内取り込みを促進する化学的部分と
を含んでなるコンジュゲート。
【請求項7】
前記ポリペプチドまたは該ポリペプチドの機能的に等価な変異体の細胞内取り込みを促進する前記化学部分が細胞透過性ペプチド配列であり、該細胞透過性ペプチド配列と前記ポリペプチドまたは該ポリペプチドの機能的に等価な変異体とが融合タンパク質を形成するものである、請求項
6に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記細胞透過性ペプチド配列が、GRKKRRQRRR(配列番号38)およびRRRRRRLR(配列番号39)からなる群から選択されるものである、請求項
7に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
更なる核局在化シグナルをさらに含んでなる請求項
6~
8のいずれか一項に記載のコンジュゲートであって、特に該核局在化シグナルが、PKKKRKV(配列番号6)、PAAKRVKLD(配列番号54)およびKRPAATKKAGQAKKKK(配列番号7)からなる群から選択されるものである、コンジュゲート。
【請求項10】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは請求項
6~
9のいずれか一項に記載のコンジュゲートをコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項
10に記載のポリヌクレオチドを含んでなるベクター。
【請求項12】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項
6~
9のいずれか一項に記載のコンジュゲート、請求項
10に記載のポリヌクレオチド、または請求項
11に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項13】
薬学的有効量の請求項1~
5のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは該ポリペプチドの機能的に等価な変異体、請求項
6~
9のいずれか一項に記載のコンジュゲート、請求項
10に記載のポリヌクレオチド、請求項
11に記載のベクター、または請求項
12に記載の宿主細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含んでなる医薬組成物。
【請求項14】
治療において用いられる、請求項
13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
癌の予防および/または治療に用いられる、請求項
13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記癌が膠芽腫および非小細胞肺癌からなる群から選択されるものである、請求項
15に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は癌の分野に関し、より具体的には、ポリペプチド、組成物、ならびに医薬における、特に癌の予防および/または治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
理想的な抗癌剤は、腫瘍の維持に継続的に必要であるが、いかなる正常組織の維持および機能にも不要な非冗長性の機能を標的とすべきである。それゆえ、最も一般的な論理は、これらの突然変異分子が癌の「ドライバー」と考えられ、おそらく正常組織にとってそれほど重要ではないということに基づき、癌において特異的に突然変異している遺伝子産物を標的とすることである。これらの理由から、特定の種類の癌における再発性病変の分類に多くの注意が向けられている。残念ながら、このアプローチにはいくつかの問題がある。第一に、ほとんどの固形ヒト癌はゲノム不安定性のエピソードを通過し、「ドライバー」突然変異と、それらに付随するエフェクター経路とを不明瞭にし得る突然変異ノイズを示す。第二に、癌は、複数の進化的ボトルネックを介した移動を伴うプロセスの最終結果である。各ボトルネックには特定の種類の突然変異が必要とされ得るが、その後、その機能は腫瘍の維持には不要であり、結果的に腫瘍の進化におけるその時点以降の優れた治療標的ではない。
【0003】
Mycは、成長制御および癌に関与する基本的なヘリックスーループーヘリックスロイシンジッパー(b-HLH-LZ)タンパク質であり、これは構造的に関連するタンパク質Max、MadおよびMntとネットワークで機能する。Myc/Max二量体は遺伝子転写を活性化し、細胞増殖またはアポトーシスを誘発する。Mad/MaxおよびMnt/Max複合体はリプレッサーとして作用し、細胞増殖停止および分化を引き起こす。すべての二量体は、同じDNAコンセンサス部位、CACGTG E―ボックスを認識する。
【0004】
Mycは正常細胞では厳密に制御されており、そのレベルは増殖細胞中ではより高くて非増殖細胞中ではより低い。異常に高いおよび/または制御解除されたMyc活性は、ほとんどの癌に因果関係があるとされており、攻撃的、低分化および血管由来の腫瘍に関連していることが多い。Myc発現の制御解除は、遺伝子増幅による過剰発現、転写制御の喪失、分解の抑制または安定化の増大によるものである。これは異常な増殖、生存率の増大、代謝の変化、血管新生および炎症をもたらし、これらはすべて癌の主要な特徴を表す。多数の研究が腫瘍形成の細胞内および細胞外の側面を支配する上でのMycの重要な役割を立証しており、その機能を標的とすることが、治療的に価値があることを示唆している。
【0005】
BETブロモドメインインヒビターによるMycの下方制御は複数の腫瘍型の後退をもたらすことが知られている。このアプローチは優れた可能性を示しているが、毒性および多数のオフターゲット効果などの、いくつかの制限がある。Myc/Max相互作用を乱す多くの小分子がin celluloで低い特異性を示した。
【0006】
しかしながら、Myc阻害剤はまだ臨床的に利用可能となっておらず、その設計は種々の警告を提示している。第一に、Mycは核転写因子であり、その結果、これは膜または細胞質分子よりも到達することが困難である。第二に、Mycは標的となり得る酵素的「活性部位」を持たない。第三に、Mycファミリーは3つの異なるタンパク質、c-Myc、N-MycおよびL-Mycを含み、これらは特定の条件では機能的に冗長であるので、それらのすべてが同時阻害を必要とする。さらに、Myc阻害は正常組織の増殖を阻害することによって重篤な副作用を誘発することが懸念されている。これらすべての理由から、Myc阻害薬を作ることは困難である。
【0007】
Omomycは、Mycのb-HLH-LZドメインを含み、Mycのロイシンジッパーに4つのアミノ酸置換を含むドミナントネガティブMYC突然変異体である(Soucek,L.et al.,1998,Oncogene 17,2463-2472;Soucek,L.et al.(2002),Cancer Res 62:3507-3510)。アミノ酸置換E61T、E68I、R74Q、およびR75Nは、改変された二量体化特異性をタンパク質に付与し、このタンパク質は、その天然のパートナーMaxに結合し、それ自体とホモ二量体を形成するほかに、野生型c-Myc、N-MycおよびL-Mycともヘテロ二量体を形成する能力を保持する。
【0008】
これらの特性のために、Omomycは、MycがそのDNA認識結合部位であるEボックスに結合する能力を無効にすることによって、インビトロおよびインビボの両方でMyc依存性遺伝子トランス活性化機能を妨げることができる。同時に、Omomycは、Myc発現レベルに依存してMyc誘発アポトーシスを強く増強し、それによってMyc転写抑制活性を強化する。したがって、Omomycは、Miz-1依存性のプロモーターへの結合および転写抑制を保持しながら、MycのプロモーターEボックスへの結合および標的遺伝子のトランス活性化を妨げる。Omomycの存在下では、Mycインタラクトームは抑制に導かれ、その活性は前発癌性から腫瘍抑制性へと変わる。
【0009】
欧州特許出願公開第2801370号明細書においては、Omomycペプチド自体が細胞膜を横切って効率的に形質導入して核に移動することができ、それがその腫瘍抑制効果を発揮することが実証された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、癌の治療のための新規で改良された治療アプローチを開発することが最新技術において依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の簡単な概要
第一の態様において、本発明は、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1のポリペプチド、または配列番号1の89位の残基Xがシステインではない前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体を含んでなるポリペプチドを指す。
【0012】
第二の態様において、本発明は、
a.本発明によるポリペプチドまたは該ポリペプチドの機能的に等価な変異体と、
b.前記ポリペプチドまたは該ポリペプチドの機能的に等価な変異体の細胞内取り込みを促進する化学的部分と
を含んでなるコンジュゲートに関する。
【0013】
第三の態様において、本発明は、本発明によるポリペプチドまたは本発明によるコンジュゲートをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0014】
第四の態様において、本発明は、本発明によるポリヌクレオチドを含んでなるベクターに関する。
【0015】
第五の態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、本発明のコンジュゲート、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターを含んでなる宿主細胞に関する。
【0016】
第六の態様において、本発明は、薬学的有効量の本発明によるポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体、本発明によるコンジュゲート、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクターまたは本発明による宿主細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0017】
第七の態様において、本発明は、医薬における使用のための、本発明によるポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体、本発明によるコンジュゲート、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、本発明による宿主細胞または本発明による医薬組成物に関する。
【0018】
第八の態様において、本発明は、癌の予防および/または治療における使用のための、本発明によるポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体、本発明によるコンジュゲート、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、本発明による宿主細胞または本発明による医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】細胞生存率アッセイは、OmoCS(C89Sの変化を含む)が低濃度でOmomycよりも効率的にU87悪性神経膠腫細胞(Aパネル)およびA549肺腺癌細胞(Bパネル)の増殖を阻害することを示す図である。Lipofectamine(Lipo)は効果が一切ない。T検定を用いて統計的有意性を計算した。
**=P<0.01、
***=P<0.001。
【
図2】細胞密度アッセイは、OmoCA(C98A変化を含む)が低濃度でOmoCS(C98Sの変化を含む)と同程度に効率的にA549肺腺癌細胞の増殖を阻害することを示す図である。リポフェクタミン(Lipo)は効果が一切ない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは、89位のシステインがセリンで置き換えられている配列番号1のポリペプチド(OmoCSと命名される)が、Omomycよりも効率的にその腫瘍抑制効果を発揮することができることを見出した(実施例1)。この腫瘍抑制効果は、配列番号1の89位のシステインが他のアミノ酸で置き換えられた場合に維持される。実施例2は、89位のシステインがアラニンで置き換えられている配列番号1のポリペプチド(OmoCAと命名される)が、OmoCSと同じ腫瘍抑制効果を有することを示す。
【0021】
本発明のポリペプチド
したがって、第一の態様において、本発明は、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1のポリペプチド、または配列番号1の89位のXがシステインではない前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体を含んでなるポリペプチドに関する。
【0022】
【0023】
配列番号1のポリペプチドはOmomycタンパク質配列に対応するが、89位の残基Xはシステインではない。本明細書で用いられる「Omomyc」という用語は、E61T、E68I、R74QおよびR75N突然変異を有するMycタンパク質のbHLHZipドメインの突然変異型からなるポリペプチドを指す(ここで、突然変異位置のナンバリングは、2015年3月15日公開のNCBIデータベースにおける受託番号NP_002458の下で定義されるポリペプチドのアミノ酸365~454個に対応するMyc領域の配列に関連して与えられる)。NCBIデータベースに受託番号NP_002458で提供されるc-Mycの配列を以下に示し(配列番号5)、その中でOmomycが由来する領域には下線を引いて示している:
【化2】
【0024】
本明細書で用いられる「Myc」という用語は、c-Myc、N-MycおよびL-Mycを含む転写因子のファミリーを指す。Mycタンパク質は、コンセンサス配列CACGTG(エンハンサーボックス配列またはEボックス)への結合およびヒストンアセチル-トランスフェラーゼまたはHATの動員を介して多くの遺伝子の発現を活性化する。しかしながら、Mycは転写抑制因子としても作用する。Miz-1転写因子を結合してp300共活性化因子を置き換えることで、MycはMiz-1標的遺伝子の発現を阻害する。MycはDNA複製の制御においても直接的な役割を果たす。
【0025】
Myc b-HLH-LZまたはMyc塩基性領域ヘリックス-ループ-ヘリックスロイシンジッパードメインは、Maxタンパク質とのMyc二量体化およびMyc標的遺伝子への結合を決定する領域を指す。この領域は、ヒトMycのアミノ酸365~454個に対応し、ループでつながれた2つのアルファヘリックスによって特徴付けられる(Nair,S.K.,& Burley,S.K.,2003,Cell,112:193-205)。
【0026】
好ましい実施形態において、配列番号1のポリペプチドを含んでなるポリペプチドは、以下に示す配列番号3を含むか、該配列番号3からなるか、または配列番号3から本質的になる:
【化3】
【0027】
これに関連して、「~から本質的になる」は、特定の分子が、配列番号3の活性を変化させる任意の追加の配列を含まないことを意味する。
【0028】
本発明は、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1を含んでなるポリペプチド、該配列番号1からなるポリペプチド、または該配列番号から本質的になるポリペプチドに関する。腫瘍抑制効果をもたらす突然変異が保存されているという条件で、前記ポリペプチドは、当該技術分野において公知の任意のMycタンパク質のbHLHZipドメインに由来することができる。したがって、本発明において使用することができるポリペプチドは、家庭用動物および農用動物(ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたは齧歯動物)、霊長類およびヒトを含むが、これらに限定されない任意の哺乳動物種に由来することができる。好ましくは、本発明のポリペプチドは、ヒトMycタンパク質(2015年3月15日公開の受託番号NP_002458)に由来する。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明は、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1のポリペプチド、または前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体からなるポリペプチドに関する。
【0030】
本発明によれば、配列番号1の89位の残基は、システイン以外の任意のアミノ酸であってもよい。
【0031】
本明細書で用いられる「システイン」は、式HO2CH(NH2)CH2SHを有するアミノ酸に関する。それはコドンUGUおよびUGCによってコードされている。この用語は非天然システインも含む。
【0032】
システインは、ホモ二量体型のOmomycにおいてジスルフィド結合を形成することができ、それゆえ、他の任意のアミノ酸に対するその突然変異は、ジスルフィド結合形成の不能をもたらすことになり、OmoCSによって得られるのと同じ効能特性をもたらすはずである。したがって、配列番号1の89位の残基は、システイン以外の任意の天然アミノ酸、非天然アミノ酸または合成アミノ酸、特に本発明のポリペプチドの他の単量体と架橋してホモ二量体を形成することができなかった任意のアミノ酸であってもよい。
【0033】
「アミノ酸」または「残基」という用語は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。アミノ酸は、本明細書において、それらの一般的に知られている3文字記号またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されている1文字記号のいずれかによって言及することができる。
【0034】
アミノ酸という用語は、天然に存在するアミノ酸(Ala、Arg、Asn、Asp、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val)、珍しい天然アミノ酸および非天然(合成)アミノ酸を含む。アミノ酸は、好ましくはL配置であるが、D配置、またはDおよびL配置のアミノ酸の混合物も考えられる。
【0035】
「天然アミノ酸」という用語は、脂肪族アミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン)、ヒドロキシル化アミノ酸(セリンおよびスレオニン)、硫化アミノ酸(メチオニン)、ジカルボン酸およびそれらのアミド(アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸およびグルタミン)、2つの塩基性基を有するアミノ酸(リジン、アルギニンおよびヒスチジン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン)ならびに環状アミノ酸(プロリン)を含む。1つの実施形態において、配列番号1の89位の残基Xは脂肪族アミノ酸である。別の実施形態において、配列番号1の89位の残基Xは硫化アミノ酸である。別の実施形態において、配列番号1の89位の残基Xはジカルボキシルアミノ酸またはそれらのアミドである。別の実施形態において、配列番号1の89位の残基Xは、2つの塩基性基を有するアミノ酸である。別の実施形態において、配列番号1の89位の残基Xは芳香族アミノ酸である。別の実施形態において、配列番号1の89位の残基Xは環状アミノ酸である。好ましい実施形態において、配列番号1の89位の残基Xはヒドロキシル化アミノ酸、好ましくはセリンである。好ましい実施形態において、配列番号1の89位の残基Xは、セリン、トレオニンおよびアラニンから選択される、好ましくはセリンおよびアラニンから選択されるアミノ酸である。
【0036】
本明細書で用いられる場合、「非天然アミノ酸」という用語は、アミン基で置換され、構造的に天然アミノ酸に関連しているカルボン酸、またはその誘導体を指す。修飾アミノ酸または珍しいアミノ酸の例示的で非限定的な例には、2-アミノアジピン酸、3-アミノアジピン酸、β-アラニン、2-アミノ酪酸、4-アミノ酪酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、2,4-ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2’-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、N-エチルグリシン、N-エチルアスパラギン、ヒドロキシリシン、アロヒドロキシリジン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロイソロイシン、N-メチルグリシン、N-メチルイソロイシン、6-N-メチル-リジン、N-メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチンが含まれる。
【0037】
珍しいアミノ酸の例示的で非限定的な例は、ヒドロキシリジンおよびヒドロキシプロリン、チロキシン、N-メチルアルギニンおよびn-アセチルリジンである。
【0038】
好ましい実施形態において、89位の残基Xは、本発明のポリペプチドの他の単量体と架橋してホモ二量体対を形成することができなかった他の任意のアミノ酸である。
【0039】
本発明のポリペプチドのより好ましい実施形態において、配列番号1の89位の残基はアミノ酸セリンである。
【0040】
本明細書で用いられる「セリン」は、ヒトにおいてコドンUCU、UCC、UCA、UCG、AGUおよびAGCによってコードされた2-アミノ-3-ヒドロキシプロパン酸に関する。この用語は、非限定的な例として、リン酸化またはスルホン化セリンなどの修飾セリン、N-ベンゾイル-(2R,3S)-3-フェニルイソセリン、D-シクロセリン、L-イソセリン、フェニルセリンを含む。
【0041】
好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号2に示される配列を含んでなる:
【化4】
【0042】
別の好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号4からなるか、または配列番号4から本質的になる:
【化5】
【0043】
本発明のポリペプチドのより好ましい実施形態において、配列番号1の89位の残基はアミノ酸アラニンである。
【0044】
本明細書で用いられる「アラニン」は、ヒトにおいてコドンGCU、GCC、GCA、およびGCGによってコードされた2-アミノプロパン酸に関する。この用語は、N-アセチル-L-アラニンなどの修飾アラニンも含む。
【0045】
好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号63に示される配列を含んでなる:
【化6】
【0046】
別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号64からなるか、または配列番号64から本質的になる:
【化7】
【0047】
「機能的に等価な変異体」という用語は、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1を指す場合、配列番号1のポリペプチドに対して1種またはそれ以上のアミノ酸の欠失、挿入または付加から生じる任意のポリペプチド、または配列番号1のポリペプチドの化学的修飾から生じ、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1の腫瘍抑制活性を実質的に保存する、好ましくはOmoCSの腫瘍抑制活性を実質的に保存する任意のポリペプチドを指す。腫瘍抑制活性の保存には、変異体がMycおよび/またはその絶対パートナーp21/p22Maxと二量体化し、Myc活性が核内に見出されたらそれを阻害することと、変異体が細胞膜を横切って転位することができることと、変異体が核膜を横切って移行することができることとが必要であると当業者は理解するであろう。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドの機能的に等価な変異体は、Omomycyよりも少なくホモ二量体化するか、またはジスルフィド橋の形成によってホモ二量体に強いられない。特に、本発明のポリペプチドのホモ二量体形態におけるジスルフィド橋形成は、ポリペプチドOmoMycにおける形成よりも少ない。
【0048】
本明細書で用いられる「低ホモ二量体化」は、還元条件下であっても本発明のポリペプチドの絶対ホモ二量体を形成する能力が低いことに関する。好ましい実施形態において、その能力は、Omomycのホモ二量体を形成する能力よりも少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%低い。本明細書で用いられる還元条件は、レドックス化学反応において別の化学種に電子を供与する化合物である還元剤の存在に関する。還元剤の例示的で非限定的な例は、DTT(ジチオトレイトール)、b-メルカプトエタノールまたはTCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)である。ホモ二量体の量はインビトロで同じであることと、本発明のポリペプチドとOmomycとの間の相違は、ジスルフィドの不在がヘテロ二量体の潜在的により高い形成を可能にするヘテロ二量体化パートナーの存在下の細胞にのみ存在することとが可能である。
【0049】
円偏光二色性によって監視される熱変性による例示的で非限定的な例を手段として、ペプチドのホモ二量体化を決定するためにいくつかのアッセイを使用することができ、そのため二量体化はフォールディングおよび熱安定性定量化によって検出することができる。
【0050】
機能的に等価な適切な変異体には、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1のポリペプチドから本質的になるポリペプチドが含まれる。
【0051】
これに関連して、「~から本質的になる」は、特定の分子が、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1の活性を変化させる任意の追加の配列を含まないことを意味する。
【0052】
標的ペプチドの適切な機能的変異体は、約25%超のアミノ酸配列同一性、例えば30%、40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列番号1のペプチド(好ましくはOmoCS、配列番号4)に対してある程度の同一性を示すものである。2種のポリペプチド間の同一性の程度は、当業者に広く知られているコンピューターアルゴリズムおよび方法を用いて決定される。2つのアミノ酸配列間の同一性は、好ましくは、これまでに記載されているBLASTPアルゴリズムを用いることで決定される[BLAST Manual,Altschul,S.,et al.,NCBI NLM NIH Bethesda,Md.20894,Altschul,S.,et al.,J.Mol.Biol.1990;215:403-410]。好ましい実施形態において、配列同一性は、配列番号1のポリペプチドの全長にわたって、もしくは変異型の全長にわたって、またはその両方にわたって決定される。
【0053】
本発明のポリペプチドの機能的に等価な変異体には、グリコシル化、アセチル化、イソプレニル化、ミリストイル化、タンパク質分解プロセシングなどの翻訳後修飾も含まれることができる。
【0054】
あるいは標的ペプチドの適切な機能的変異体は、本発明のポリペプチド内の1つ以上の位置が上記のタンパク質中に存在するアミノ酸の保存的置換であるアミノ酸を含むものである。「保存的アミノ酸置換」は、あるアミノ酸を、類似の構造的および/または化学的特性を有する別のアミノ酸と置き換えることから生じる。例えば、以下の6つの群はそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。そのような保存的アミノ酸置換の選択は、当業者の技術の範囲内であり、例えば、Dordo et al.,(J.Mol.Biol,1999,217;721-739)およびTaylor et al.,(J.Theor.Biol.,1986,119:205-218)によって記載されている。
【0055】
好ましい実施形態において、配列番号1の機能的に等価な変異体の全配列は、システインアミノ酸を含まない。配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1の機能的に等価な変異体は、ヒトc-Mycに由来するOmomycに見出される突然変異E61T、E68I、R74QおよびR75Nに対応する位置に突然変異を含むことが理解されるであろう。機能的に等価な変異体において前記突然変異が生じなければならない位置は、異なるMyc配列の多重配列アラインメントにより決定することができ、ヒトc-Myc由来のOmomycの配列内の位置61、68、74および75に対応するそれらの位置のアラインメントにより同定することができる。
【0056】
多重配列アラインメントは、一度に3つ以上の配列を組み込むためのペアワイズアラインメントを拡張したものである。多重アラインメント方法は、所与のクエリセットにおけるすべての配列を整列させる。好ましい多重配列アラインメントプログラム(およびそのアルゴリズム)は、ClustalW、Clustal2WまたはClustalW XXLである(Thompson et al.(1994)Nucleic Acids Res 22:4673-4680参照)。本明細書に記載されるように、異なる生物由来のc-Mycの配列と変異体の配列とを比較する(整列させる)と、当業者は容易に、Omomycに見出される位置E61T、E68I、R74QおよびR75Nに対応する各配列内の位置を同定することができ、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1の変異体内に、ヒトc-Mycに由来するOmomycに見出されるE61T、E68I、R74QおよびR75N突然変異に対応する突然変異を導入することができる。
【0057】
ポリペプチドが、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1の機能的に等価な変異体と見なすことができるかどうかを決定するための適切なアッセイには、限定するものではないが、以下のものが含まれる:
- MaxおよびMycと二量体複合体を形成するポリペプチドの能力を測定するアッセイ、例えば、Soucek et al.(Oncogene,1998,17:2463-2472)に記載されるレポーター遺伝子の発現に基づくアッセイならびにPLA(タンパク質ライゲーションアッセイ)または共免疫沈降法。
- ポリペプチドがDNA内のMyc/Max認識部位(CACGTG部位)に結合する能力を測定するアッセイ、例えばSoucek et al.(上記)に記載される電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)。
- Myc誘発トランス活性化を抑制する能力を測定するアッセイ、例えばSoucek et al.(上記)に記載されるMyc/Maxに特異的なDNA結合部位の制御下でのレポーター遺伝子の発現に基づくアッセイ。
- Soucek et al.(上記)に記載される、遺伝子産物またはポリペプチドがmyc癌遺伝子を発現する細胞の増殖を阻害する能力に基づくアッセイ。
- ポリペプチドがmyc誘発アポトーシスを増強する能力を測定するアッセイ、例えばSoucek et al.(上記)に記載されるアッセイ(Oncogene,1998:17,2463-2472)。さらに、細胞中のアポトーシスを評価するための当該技術分野において一般的に知られている任意のアッセイ、例えばヘキスト染色、ヨウ化プロピジウム(PI)またはアネキシンV染色、トリパンブルー、DNAラダーリング/フラグメンテーションおよびTUNELなどを用いることができる。
【0058】
好ましい実施形態において、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1の機能的に等価な変異体には、1つ以上、好ましくは以下のすべての特徴を持つ配列が含まれる:Mycと二量体化し、その活性を阻害し、細胞膜を横切って移動し、核に移動することができること、Omomycと比較してホモ二量体を形成することができないか、またはホモ二量体をあまり形成することができないこと、本発明のポリペプチドをコードする12.5nM mRNAの量で、Omomycよりも低い、実施例1で行ったインビトロアッセイにおける細胞生存率。好ましい実施形態において、本発明の機能的に等価な変異体は、本発明のポリペプチドをコードする12.5nM mRNAの量で、Omomycよりも低い、実施例1で行ったインビトロアッセイにおける細胞生存率を媒介する配列に対応する。
【0059】
好ましい実施形態において、ポリペプチドが、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1の機能的に等価な変異体と見なされるのは、それが、上記アッセイの1つ以上において、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1の活性(好ましくはOmoCSの活性)の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%である活性を示す場合である。
【0060】
さらに、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1の機能的に等価な変異体は、その変異体が細胞と接触した後に前記細胞に形質導入することもできる。
【0061】
好ましい実施形態において、ポリペプチドが、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1の機能的に等価な変異体と見なされるのは、それが、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1(好ましくはOmoCS、配列番号4として)と同じくらい効率的に少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%で標的細胞を形質導入することができる場合である。
【0062】
さらに、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1の機能的に等価な変異体は、標的腫瘍細胞の核に移動することもできる。
【0063】
好ましい実施形態において、ポリペプチドが、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1の機能的に等価な変異体と見なされるのは、それが、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1(好ましくはOmoCS、配列番号4として)と同じくらい効率的に少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%で標的腫瘍細胞の核に移動することができる場合である。
【0064】
ポリペプチドが、細胞膜を横切って核に移動するその能力に関して、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1の機能的に等価な変異体であるかどうかを決定するための適切なアッセイには、ポリペプチドに特異的な試薬および細胞の核を特異的に標識する色素(例えばDAPIまたはHoechst色素)による細胞の二重標識が含まれる。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドの検出は、共焦点顕微鏡または蛍光顕微鏡によって行われる。
【0065】
配列番号1の本発明のポリペプチドは、配列RQRRNELKRSF(配列番号55)を有するc-MycのM2ドメインも含み(Dang and Lee,Mol.Cell.Biol.,1988,8:4048-4054参照)、これは核局在化シグナルに対応する。
【0066】
別の好ましい実施形態において、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1の機能的に等価な変異体は、配列番号55の配列を含んでなる。
【0067】
本明細書で用いられる「核局在化シグナル」という用語は、長さが約4~20個のアミノ酸残基のアミノ酸配列を指し、これはタンパク質を核に指向するのに役立つ。典型的には、核局在化配列は、塩基性アミノ酸が豊富であり、例示的な配列は当該技術分野において周知である(Gorlich D.(1998)EMBO 5.17:2721-7)。
【0068】
いくつかの実施形態において、NLSは、SV40ラージT抗原NLS(PKKKRKV、配列番号6)、ヌクレオプラスミンNLS(KRPAATKKAGQAKKKK、配列番号7)、CBP80 NLS(RRRHSDENDGGQPHKRRK、配列番号8)、HIV-1 Revタンパク質NLS(RQARRNRRRWE、配列番号9)、HTLV-1 Rex(MPKTRRRPRRSQRKRPPT、配列番号10)、hnRNP A NLS(NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFKPRNQGGY、配列番号11)、rpL23a NLS(VHSHKKKKIRTSPTFTTPKTLRLRRQPKYPRKSAPRRNKLDHY、配列番号12)からなる群から選択される。本発明の1つの実施形態において、核局在化シグナルは、モチーフK(K/R)X(K/R)(配列番号13)を含んでなる。
【0069】
さらに、配列番号1の89位の残基Xがシステインではない機能的に等価な配列番号1の変異体は、変異体が細胞と接触した後に形質導入細胞の核に到達することができる。配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1の機能的に等価な変異体は、配列番号1の89位の残基Xがシステインまたは別の機能的NLSではない配列番号1に見出されるNLSを含むことが理解されるであろう。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号1に見出される天然のNLSを含まず、配列番号1に見出される前記NLSを置き換える別の機能的NLSまたは本発明のポリペプチドの他の任意の部分を含む。
【0070】
本発明のコンジュゲート
別の態様において、本発明は、
a)本発明によるポリペプチドまたは該ポリペプチドの機能的に等価な変異体と、
b)前記ポリペプチドまたは該ポリペプチドの機能的に等価な変異体の細胞内取り込みを促進する化学的部分と
を含んでなるコンジュゲートに関する。
【0071】
本明細書で用いられる「コンジュゲート」という用語は、各化合物の機能がコンジュゲートにおいて保持されるように互いに共有結合している2種以上の化合物を指す。
【0072】
好ましい実施形態において、本発明によるコンジュゲートは、ポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体の細胞内取り込みを促進する、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10個またはそれ以上の化学的部分を含んでなる。
【0073】
1つの実施形態において、ポリペプチドの細胞内取り込みを促進する化学的部分は、脂質または脂肪酸である。
【0074】
脂肪酸は、一般的に、鎖の末端に酸性部分(例えばカルボン酸)を有する炭素鎖を含む分子である。脂肪酸の炭素鎖は、任意の長さであってもよいが、炭素鎖の長さは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれ以上の炭素原子分であって、そこから導き出される任意の範囲であることが好ましい。特定の実施形態において、炭素鎖の長さは、脂肪酸の鎖部分の4~18個の炭素原子である。特定の実施形態において、脂肪酸炭素鎖は、奇数の炭素原子を含んでいてもよいが、鎖中の偶数の炭素原子が特定の実施形態において好ましい場合もある。その炭素鎖中に単結合のみを含む脂肪酸は飽和と呼ばれ、他方で、その鎖中に少なくとも1つの二重結合を含む脂肪酸は不飽和と呼ばれる。脂肪酸は分岐していてもよいが、本発明の好ましい実施形態においては分岐していない。具体的な脂肪酸には、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノレン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、アラキジン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
好ましい実施形態において、ポリペプチドの細胞取り込みを促進する化学的部分は、細胞透過性ペプチド配列であり、その場合、コンジュゲートは、本発明のポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体と、細胞透過性ペプチド配列とを含んでなる融合タンパク質である。
【0076】
「融合タンパク質」という用語は、異なるタンパク質に由来する2つ以上の機能的ドメインからなる遺伝子技術によって生成されたタンパク質に関する。融合タンパク質は、従来の手段によって、例えば、適切な細胞中の前記融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列の遺伝子発現によって得ることができる。細胞透過性ペプチドは、配列番号1のポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体の一部を形成する細胞透過性ペプチドとは異なる細胞透過性ペプチドを指すことが理解されるであろう。
【0077】
「細胞透過性ペプチド配列」という用語は、本明細書において、「CPP」、「タンパク質形質導入ドメイン」または「PTD」と互換的に用いられる。それは細胞内のタンパク質の輸送を指向する可変長のペプチド鎖を指す。細胞内への送達プロセスは一般的にエンドサイトーシスによって起こるが、ペプチドは直接膜移動によって細胞内に内在化することもできる。CPPは、典型的には、高い相対存在量の正荷電アミノ酸、例えばリジンもしくはアルギニンを含むアミノ組成物、または極性/荷電アミノ酸と非極性の疎水性アミノ酸との交互パターンを含む配列を有するアミノ酸組成物のいずれかを有する。本発明において使用することがCPPの例には、Drosophila antennapediaタンパク質CPP(RQIKIWFQNRRMKWKK;配列番号14)中に見出される、単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)VP22 DNA-結合タンパク質(DAATATRGRSAASRPTERPRAPARSASRPRRPVE;配列番号15)中に見出されるCPP、Bac-7(RRIRPRPPRLPRPRPRPLPFPRPG;配列番号16)のCPP、アミノ酸49~57個からなるHIV-1 TATタンパク質(RKKRRQRRR;配列番号17)のCPP、アミノ酸48~60個(GRKKRRQRRRTPQ;配列番号18)、アミノ酸47~57個(YGRKKRRQRRR;配列番号19)、S413-PVペプチド(ALWKTLLKKVLKAPKKKRKV;配列番号20)のCPP、ペネトラチン(RQIKWFQNRRMKWKK;配列番号21)のCPP、SynB1(RGGRLSYSRRRFSTSTGR;配列番号22)のCPP、SynB3(RRLSYSRRRF;配列番号23)のCPP、PTD-4(PIRRRKKLRRLK;配列番号24)のCPP、PTD-5(RRQRRTSKLMKR;配列番号25)のCPP、FHV Coat-(35-49)(RRRRNRTRRNRRRVR;配列番号26)のCPP、BMV Gag-(7-25)(KMTRAQRRAAARRNRWTAR;配列番号27)のCPP、HTLV-II Rex-(4-16)(TRRQRTRRARRNR;配列番号28)のCPP、D-Tat(GRKKRRQRRRPPQ;配列番号29)のCPP、R9-Tat(GRRRRRRRRRPPQ;配列番号30)のCPP、MAP(KLALKLALKLALALKLA;配列番号31)のCPP、SBP(MGLGLHLLVLAAALQGAWSQPKKKRKV;配列番号32)のCPP、FBP(GALFLGWLGAAGSTMGAWSQPKKKRKV;配列番号33)のCPP、MPG(ac-GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKKKRKV-cya;配列番号34)のCPP、MPG(ENLS)(ac-GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKSKRKV-cya;配列番号35)のCPP、Pep-1(ac-KETWWETWWTEWSQPKKKRKV-cya;配列番号36)のCPP、Pep-2(ac-KETWFETWFTEWSQPKKKRKV-cya;配列番号37)のCPP、構造RNを有するポリアルギニン配列(ここで、Nは4~17である)、GRKKRRQRRR配列(配列番号38)、RRRRRRLR配列(配列番号39)、RRQRRTSKLMKR配列(配列番号40);Transportan GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL配列番号41);KALAWEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKCEA(配列番号42);RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号43)、YGRKKRRQRRR配列(配列番号44);RKKRRQRR配列(配列番号45);YARAAARQARA配列(配列番号46);THRLPRRRRRR配列(配列番号47);GGRRARRRRRR配列(配列番号48)が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
好ましい実施形態において、前記細胞透過性ペプチドは、配列番号1に含まれる内因性のものではない。
【0079】
好ましい実施形態において、CPPは、アミノ酸49~57個からなるHIV-1 TATタンパク質(RKKRRQRRR、配列番号49)のCPPである。別の好ましい実施形態において、CPPは、GRKKRRQRRR配列(配列番号50)またはRRRRRRRR(配列番号51)である。
【0080】
1つの実施形態において、細胞透過性ペプチド配列は、本発明のポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体のN末端に融合している。別の実施形態において、細胞透過性ペプチドは、本発明のポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体のC末端に融合している。
【0081】
好ましい実施形態において、本発明によるコンジュゲートまたは融合タンパク質は、配列番号1のポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体に見出されるそれ自体の細胞透過性ペプチドに加えて、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10種以上の追加の細胞透過性ペプチドを含む。
【0082】
本発明の適切な融合タンパク質には、以下に定義されるポリペプチドOmoCS*TATおよびOmoCS*LZArgが含まれる。
【0083】
【0084】
別の好ましい実施形態において、本発明のコンジュゲートまたは融合タンパク質は、本発明のポリペプチドまたはその機能的に等価な変異体を含み、さらにN末端またはC末端の核局在化シグナルを含む。
【0085】
当業者は、融合タンパク質が、本発明のポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体、細胞透過性ペプチド配列および/またはNLSを連結する1種またはそれ以上の柔軟なペプチドをさらに含むことが望ましいこともあることを理解するであろう。したがって、特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、細胞透過性ペプチド配列に直接連結している。別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、柔軟なペプチドを介して細胞透過性ペプチド配列に連結している。1つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、NLSに直接結合している。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、柔軟なペプチドを介してNLSに連結している。
【0086】
特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、細胞透過性ペプチド配列およびNLSに直接連結している。
【0087】
1つの実施形態において、NLSは、M1ペプチド(PAAKRVKLD、配列番号54)またはM2ペプチド(RQRRNELKRSF、配列番号55)などのMyc配列に内因的に出現するNLSの1つである。
【0088】
別の実施形態において、追加のNLSは、配列番号1のポリペプチドまたはそのポリペプチドの機能的に等価な変異体に見られる内因性NLSとは異なるNLSを指す。
【0089】
好ましい実施形態において、本発明によるコンジュゲートまたは融合タンパク質は、本発明のポリペプチドまたはその機能的に等価な変異体に見られる内因性NLSに加えて、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10種のNLSを含む。
【0090】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、第一の柔軟なペプチドリンカーを介して細胞透過性ペプチド配列に連結しており、第二の可撓性ペプチドリンカーを介してNLSに連結している。
【0091】
本明細書で用いられる「柔軟なペプチド」、「スペーサーペプチド」または「リンカーペプチド」という用語は、2つのタンパク質または部分を共有結合するが、いずれかのポリペプチドの一部ではなく、タンパク質または部分のいずれかの機能に実質的な有害な影響を引き起こすことなく、一方を他方に対して移動させることを可能にする。したがって、柔軟なリンカーは、ポリペプチド配列の腫瘍抑制活性、細胞透過性ペプチドの細胞透過性活性、またはNLSの核局在化能力に影響を及ぼさない。
【0092】
柔軟なペプチドは、少なくとも1個のアミノ酸、少なくとも2個のアミノ酸、少なくとも3個のアミノ酸、少なくとも4個のアミノ酸、少なくとも5個のアミノ酸、少なくとも6個のアミノ酸、少なくとも7個のアミノ酸、少なくとも8個のアミノ酸、少なくとも9個のアミノ酸、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも12個のアミノ酸、少なくとも14個のアミノ酸、少なくとも16個のアミノ酸、少なくとも18個のアミノ酸、少なくとも20個のアミノ酸、少なくとも25個のアミノ酸、少なくとも30個のアミノ酸、少なくとも35個のアミノ酸、少なくとも40個のアミノ酸、少なくとも45個のアミノ酸、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも60個のアミノ酸、少なくとも70個のアミノ酸、少なくとも80個のアミノ酸、少なくとも90個のアミノ酸、または約100個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、柔軟なペプチドは、タンパク質の溶解度を増大させるためにおよび/またはその活性を改善するために、一方のタンパク質を他方に対して移動させることを可能にする。適切なリンカー領域には、ポリグリシン領域、グリシン、プロリンおよびアラニン残基の組み合わせのGPRRRR配列(配列番号56)が含まれる。
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明の融合タンパク質は、とりわけ、蛍光基、ビオチン、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸類似体、非天然アミノ酸、リン酸基、グリコシル基、放射性同位元素標識、および医薬分子を含む追加の化学的部分を含み得る。他の実施形態において、異種ポリペプチドは、とりわけ、ケトン、アルデヒド、Cys残基およびLys残基を含む1個以上の化学反応性基を含み得る。
【0094】
特定の実施形態において、本発明のコンジュゲートまたは融合タンパク質は、コンジュゲート、または前記融合タンパク質もしくは前記ポリペプチドの変異体のC末端もしくはN末端ドメインに結合したタグを含む。前記タグは、一般的に、前記融合タンパク質の単離または精製に使用することができるペプチドまたはアミノ酸配列である。したがって、前記タグは、1つ以上のリガンド、例えば、クロマトグラフィー支持体またはビーズなどの親和性マトリックスの1つ以上のリガンドに高い親和性で結合することができる。前記タグの例は、ヒスチジンタグ(HisタグまたはHT)、例えばヒスチジンの6つの残基(His6またはH6)を含むタグであり、これはニッケル(Ni2+)またはコバルト(Co2+)のカラムに高い親和性で結合することができる。Hisタグは、ほとんどのタンパク質を変性させ、ほとんどのタンパク質間相互作用を破壊する条件下でそのリガンドに結合することができるという望ましい特徴を持つ。したがって、それは、餌が関与したタンパク質間相互作用の破壊に続けてH6でタグ付けされた餌タンパク質を除去するために使用することができる。
【0095】
融合タンパク質を単離または精製するのに有用なタグの追加の例示的で非限定的な例には、Argタグ、FLAGタグ(DYKDDDDK;配列番号57)、Strepタグ(WSHPQFEK;配列番号58)、抗体によって認識され得るエピトープ、例えば(抗c-myc抗体によって認識される)c-myc-タグ、HAタグ(YPYDVPDYA;配列番号59)、V5タグ(GKPIPNPLLGLDST;配列番号60)、SBP-タグ、S-タグ、カルモジュリン結合ペプチド、セルロース結合ドメイン、キチン結合ドメイン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ-タグ、マルトース結合タンパク質、NusA、TrxA、DsbA、Avi-タグなど(Terpe K.,Appl.Microbiol.Biotechnol.2003、60:523-525)、AHGHRP(配列番号61)またはPIHDHDHPHLVIHSGMTCXXC(配列番号62)、β-ガラクトシダーゼなどのアミノ酸配列が含まれる。
【0096】
所望される場合、タグを前記融合タンパク質の単離または精製に使用することができる。
【0097】
本発明のポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
別の態様において、本発明によるポリペプチドまたは本発明によるコンジュゲートをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0098】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」という用語は、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指すために互換的に用いられる。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはそれらの類似体を含み得る。ヌクレオチドは任意の三次元構造を有することができ、既知または未知の任意の機能を果たすことができる。「ポリヌクレオチド」という用語は、例えば、一本鎖、二本鎖および三重らせん分子、遺伝子または遺伝子断片、エクソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマーを含む。本発明の核酸分子は、天然核酸分子に加えて、修飾核酸分子を含んでいてもよい。本明細書で用いられるmRNAは、細胞中で翻訳され得るRNAを指す。
【0099】
好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチドはmRNAである。
【0100】
mRNAは化学的に合成することができ、インビトロ転写によって得ることができ、または標的細胞中でin vivoで合成することができる。本発明のコンジュゲートまたは融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを形成するヌクレオチド配列は、その発現のための同じ正しい読み枠内にある。
【0101】
別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含んでなるベクターに関する。
【0102】
本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、細胞内で前記配列を転写および翻訳した後に本発明のポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドが生成されるように必要な配列を含む核酸配列を指す。前記配列は、対象宿主細胞中でその自律複製を提供する追加のセグメントに作動可能に連結している。好ましくは、ベクターは発現ベクターであり、これは、宿主細胞中の自律複製の領域に加えて、本発明の核酸に作動可能に連結しており、本発明による核酸の産物の発現を増強することができる領域を含むベクターとして定義される。本発明のベクターは、当該技術分野において広く知られている技術によって得ることができる。
【0103】
ベクターの例には、ウイルスベクター、naked DNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性縮合剤と会合したDNAまたはRNA発現ベクター、リポソームにカプセル化されたDNAまたはRNA発現ベクター、およびプロデューサー細胞などの真核細胞が含まれるが、これらに限定されない。本発明のポリヌクレオチドを含む適切なベクターは、原核生物、例えばpUC18、pUC19、pBluescriptおよびそれらの誘導体における発現ベクター、p18、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージおよび「シャトル」ベクター、例えばpSA3およびpAT28、酵母における発現ベクター、例えば2ミクロンプラスミド型のベクター、組み込みプラスミド、YEPベクター、動原体プラスミドおよび類似のもの、昆虫細胞における発現ベクター、例えばpACシリーズおよびpVLシリーズのベクター、植物における発現ベクター、例えばシリーズpIBI、pEarleyGate、pAVA、pCAMBIA、pGSA、pGWB、pMDC、pMY、pOREおよび類似のもの、ならびにウイルスベクター(アデノウイルス、アデノウイルスおよびレトロウイルスに関連するウイルス、特にレンチウイルス)に基づく上位真核生物細胞における発現ベクターのほかに、非ウイルスベクター、例えばpSilencer 4.1-CMV(Ambion)、pcDNA3、pcDNA3.1/hyg、pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEF1/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER-HCMV、pUB6/V5-His、pVAX1、pZeoSV2、pCI、pSVL、pKSV-10、pBPV-1、pML2dおよびpTDT1である。好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、pEGFPまたはpBabeレトロウイルスベクターおよびpTRIPZまたはpSLIKレンチウイルスベクターからなる群より選択されるベクターに含まれる。
【0104】
本発明のベクターは、前記ベクターによって形質転換、トランスフェクトまたは感染させることができる細胞を形質転換、トランスフェクトまたは感染させるために使用することができる。前記細胞は、原核生物または真核生物であってもよい。
【0105】
ベクターは、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドの発現を調節する配列に作動的に結合した本発明のポリヌクレオチドを含んでなる。本発明において使用される調節配列は、核プロモーター、あるいは異種核酸配列の発現を増大させるエンハンサー配列および/または他の調節配列であってもよい。原則として、ポリヌクレオチドが発現されるべき細胞と適合性である限り、任意のプロモーターを本発明において使用することができる。したがって、本発明を実現するのに適したプロモーターには、構成的プロモーター、例えば、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、SV40、CMV、トリ肉腫ウイルス、B型肝炎ウイルスなどの真核生物ウイルスゲノムの誘導体、メタロチオネイン遺伝子プロモーター、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子プロモーター、レトロウイルスのLTR領域、免疫グロブリン遺伝子プロモーター、アクチン遺伝子プロモーター、EF-1α遺伝子プロモーター、ならびにタンパク質発現が分子または外因性シグナルの付加に依存する誘導プロモーター、例えばテトラサイクリン系、NFκB/UV光系、Cre/Lox系および熱ショック遺伝子プロモーター、国際公開第2006/135436号に記載されている調節可能なRNAポリメラーゼIIプロモーターおよび組織特異的プロモーターが含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0106】
別の態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、本発明のコンジュゲート、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターを含んでなる宿主細胞に関する。
【0107】
本発明において適切な細胞は、哺乳動物、植物、昆虫、真菌および細菌細胞を含むが、これらに限定されない。細菌細胞には、バチルス属、ストレプトミセス属およびスタフィロコッカス属由来の種などのグラム陽性細菌由来の細胞、ならびにエシェリヒア属およびシュードモナス属由来の細胞などのグラム陰性細菌由来の細胞が含まれるが、これらに限定されない。真菌細胞には、好ましくは、サッカロミセス、ピキアパストリスおよびハンセヌラポリモルファなどの酵母細胞が含まれる。昆虫細胞には、ショウジョウバエ細胞およびSf9細胞が含まれるが、これらに限定されない。植物細胞には、とりわけ、穀物、薬用植物もしくは観賞用植物などの作物細胞、または球根由来のものが含まれる。本発明に適した哺乳動物細胞には、上皮細胞株(ブタなど)、骨肉腫細胞株(ヒトなど)、神経芽細胞腫細胞株(ヒトなど)、上皮癌腫(ヒトなど)、グリア細胞(マウスなど)、肝細胞株(サルなど)、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、COS細胞、BHK細胞、HeLa、911、AT1080、A549、293またはPER.C6細胞、ヒトNTERA-2 ECC細胞、mESC株由来のD3細胞、非ヒト胚性幹細胞、NIH3T3、293T、REHおよびMCF-7細胞ならびにhMSC細胞が含まれる。
【0108】
前述の用語および実施形態はすべて、本発明のこの態様にも等しく適用可能である。
【0109】
本発明の医薬組成物
別の態様において、本発明は、薬学的有効量の本発明によるポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体、本発明によるコンジュゲート、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクターまたは本発明による宿主細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0110】
本発明で使用される場合、「医薬組成物」という表現は、細胞、細胞群、器官、組織または細胞分裂が制御されていない動物組織、例えば癌に所定用量の1種またはそれ以上の治療上有用な薬剤を投与するのに適した製剤に関する。
【0111】
本明細書で使用される「薬学的有効量」という表現は、治療効果をもたらすことができる量として理解され、それは当業者によって一般的に使用される手段によって決定することができる。本発明による医薬組成物中で組み合わせることができる本発明のポリペプチドもしくはその機能的に等価な変異体、本発明のコンジュゲート、ポリヌクレオチド、ベクターもしくは宿主細胞または抗腫瘍性化合物の量は、対象および特定の投与方法に依存して異なる。当業者は、Goodman and Goldman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ninth Edition (1996),Appendix II,pp.1707-1711およびGoodman and Goldman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,Tenth Edition(2001),Appendix II,pp.475-493からのガイダンスを用いて投与量を決定することができることも理解するであろう。
【0112】
医薬組成物中の有効成分の適切な投与量は、治療される癌の種類、疾患の重症度および経過、組成物が予防目的または治療目的のどちらで投与されるか、薬歴、患者の病歴およびペプチドまたはポリペプチドに対する応答、ならびに担当医の裁量に依存する。本発明のポリペプチドまたはその機能的に等価な変異体、本発明のコンジュゲート、ポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞の量は、一度にまたは一連の治療にわたって患者に適切に投与される。疾患の種類および重症度に応じて、適切な投与量レベルは、一般的に、1日に患者の体重1kgあたり約0.01~500mgであり、これは単回または複数回投与で投与することができる。好ましくは、投与量レベルは、1日当たり約0.1~約250mg/kg、より好ましくは1日当たり約0.5~約100mg/kgである。適切な投与量レベルは、1日あたり約0.01~250mg/kg、1日あたり約0.05~100mg/kg、または1日あたり約0.1~50mg/kgであり得る。この範囲内で、投与量は、1日当たり0.05~0.5、0.5~5または5~50mg/kgであり得る。経口投与のためには、組成物は、好ましくは、治療される患者への投与量の対症療法的調整のために有効成分1.0~1000ミリグラム、特に有効成分1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0および1000.0ミリグラムを含有する錠剤の形態で提供される。化合物は、1日当たり1~4回、好ましくは1日当たり1回または2回の投与計画で投与することができる。
【0113】
本発明の医薬組成物は、1種またはそれ以上の追加の薬学的に許容される賦形剤も含有する。「薬学的に許容される賦形剤」は、有効成分を組み込むために使用されると言われる治療上不活性な物質と理解され、それは薬理学的/毒物学的観点から患者にとってや、組成、製剤、安定性、患者の受け入れおよび生物学的利用能に関する物理的/化学的観点からそれを製造する製薬化学者にとって許容可能である。賦形剤または担体は、医薬組成物中の有効成分の送達および有効性を改善するのに役立つ任意の物質も含む。薬学的に許容される担体の例には、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1つ以上、ならびにそれらの組み合わせ物が含まれる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール類、または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。薬学的に許容される担体は、融合タンパク質または医薬組成物の一部を形成する組成物の貯蔵寿命または有効性を向上させる、湿潤剤または乳化剤、防腐剤または緩衝剤などの少量の補助物質をさらに含み得る。適切な担体の例は、文献でよく知られている(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA,1995参照)。担体の例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、およびマルチトールなどの一連の糖類;コーンスターチ、小麦スターチ、ライススターチ、およびポテトスターチなどの一連のスターチ;セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒドロキシルプロピルメチルセルロースなどの一連のセルロース;ならびにゼラチンおよびポリビニルピロリドンなどの一連の充填剤であるが、これらに限定されない。場合によっては、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤を添加してもよい。
【0114】
薬学的に許容される賦形剤の数および性質は所望の剤形に依存する。薬学的に許容される賦形剤は当業者に知られている(Fauli y Trillo C.(1993)「Tratado de Farmacia Galenica」,Luzan 5,S.A.Ediciones,Madrid)。前記組成物は、最新技術において知られている従来の方法(「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」,20th edition (2003)Genaro A.R.,ed.,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,US)によって調製することができる。
【0115】
核酸分子である作用物質を含む医薬組成物については、核酸分子は、核酸、ならびに例えば本明細書に提供される組換え発現構築物などの細菌、ウイルスおよび哺乳動物の発現系を含む、当業者に公知の様々な送達系のいずれかの中に存在していてもよい。そのような発現系にDNAを組み込むための技術は当業者に周知である。DNAは、例えば、Ulmer et al.,Science 259:1745-49,1993に記載され、Cohen,Science 259:1691-1692,1993で概説されているように「naked」であってもよい。naked DNAの取り込みは、細胞内に効率的に輸送される生分解性ビーズ上にDNAをコーティングすることによって増大する。
【0116】
核酸分子は、当該技術分野において記載されるいくつかの方法のうちのいずれか1つに従って細胞内に送達することができる(例えば、Akhtar et al.,Trends Cell Bio.2:139(1992);Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics,ed.Akhtar,1995,Maurer et al.,Mol.Membr.Biol.16:129-40(1999);Hofland and Huang,Handb.Exp.Pharmacol.137:165-92(1999);Lee et al.,ACS Symp.Ser.752:184-92(2000);米国特許第6,395,713号明細書;国際特許出願公開番号WO94/02595;Selbo et al.,Int.J.Cancer 87:853-59(2000);Selbo et al.,Tumour Biol.23:103-12(2002);米国特許出願公開第2001/0007666号明細書および同2003/077829号明細書参照)。当業者に知られているそのような送達方法には、リポソームへのカプセル化、イオントフォレシスによるもの、または生分解性ポリマー;ヒドロゲル;シクロデキストリン(例えば、Gonzalez et al.,Bioconjug.Chem.10:1068-74(1999);Wang et al.,国際出願公開番号WO03/47518および同WO03/46185);ポリ(乳酸-co-グリコール)酸(PLGA)およびPLCAミクロスフェア(ペプチドおよびポリペプチドおよび他の物質の送達にも有用)(例えば、米国特許第6,447,796号明細書;米国特許出願公開第2002/130430号明細書参照);生分解性ナノカプセル;ならびに生体接着性ミクロスフェアなどの他の賦形剤中への組み込みによるもの、またはタンパク質性ベクター(国際出願公開番号WO00/53722)によるものが含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態において、免疫細胞における免疫応答を変化させる(抑制または増強する)のに使用するための核酸分子および免疫学的疾患または障害を治療するための核酸分子は、ポリエチレンイミンおよびその誘導体、例えばポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-GAL)またはポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール-トリ-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-triGAL)誘導体(例えば、米国特許出願公開第2003/0077829号明細書も参照のこと)と配合または複合体化することもできる。
【0117】
好ましい実施形態において、本発明による医薬組成物または医薬組み合わせ物は、一緒にまたは別々に抗腫瘍剤をさらに含む。
【0118】
本明細書で使用される「抗腫瘍剤」は、腫瘍を治療するかまたはその形成を妨げる前記の生物学的または化学的化合物として理解される。好ましい実施形態において、前記抗腫瘍剤は、細胞傷害剤、抗血管新生剤、抗転移剤および抗増殖剤からなる群から選択される。
【0119】
本発明で使用される「細胞傷害剤」という用語は、細胞死を促進することができ、増殖を減少させる能力、増殖を停止させる能力、または細胞、特に急速に増殖する細胞、とりわけ腫瘍細胞を破壊する能力を有する薬剤に関する。細胞死は、例えばアポトーシスなどの任意のメカニズムによって引き起こされ得るが、代謝阻害、細胞骨格の組織化の妨害またはDNAの化学的修飾によるこの原因に限定されない。細胞傷害剤という用語は、有機小分子、ペプチド、オリゴヌクレオチドなどを含む任意の化学療法剤;毒素;酵素;サイトカイン;放射性同位元素または放射線療法剤を含む。
【0120】
「抗血管新生剤」は、新しい血管の形成、すなわち血管新生を阻害または減少させる化学的または生物学的物質として理解される。
【0121】
本発明の第一の態様によるポリペプチドまたは本発明の第二の態様による融合タンパク質と共に使用することができる抗血管新生剤には、パクリタキセル、2-メトキシエストラジオール、プリノマスタット、バチマスタット、BAY 12-9566、カルボキシアミドトリアゾール、CC-1088、デキストロメトルファン酢酸、ジメチルキサンテノン酢酸、エンドスタチン、IM-862、マリマスタット、ペニシラミン、PTK787/ZK 222584、RPI.4610、スクアラミンラクテート、SU5416、サリドマイド、コンブレタスタチン、タモキシフェン、COL-3、ネオバスタット、BMS-275291、SU6668、抗VEGF抗体、Medi-522(Vitaxin II)、CAI、インターロイキン12、IM862、アミロリド、アンジオスタチン、Kl-3アンジオスタチン、Kl-5アンジオスタチン、カプトプリル、DL-α-ジフルオロメチルオルニチン、DL-α-ジフルオロメチルオルニチンHCl、エンドスタチン、フマギリン、ハービマイシンA、4-ヒドロキシフェニルレチナミド、ジュグロン、ラミニン、ラミニンヘキサペプチド、ラミニンペンタペプチド、ラベンダスチンA、メドロキシプロゲステロン、ミノサイクリン、胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤、スラミン、トロンボスポンジン、血管新生促進因子に対する抗体(例えば、アバスチン、エルビタックス、ベクティビックス、ハーセプチン);血管新生促進性長因子の低分子量チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、タルセバ、ネクサバール、ステント、イレッサ);mTOR阻害剤(例えばトリセル);インターフェロンα、βおよびγ、IL-12、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(例えば、COL3、マリマスタット、バチマスタット);ZD6474、SU11248、ビタキシン;PDGFR阻害剤(例えばグリベック);NM3および2-ME2;シレンギチドなどのシクロペプチドからなる群から選択される抗血管新生剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0122】
「抗転移剤」は、癌を引き起こす細胞の転移、すなわち、基本的にリンパ流または血流による距離の伝播、および転移の目的部位における新しい腫瘍の増殖を阻害または低減する化学的または生物学的物質として理解される。
【0123】
「抗増殖剤」は、腫瘍の形成または成長を防止または阻害することができる化学的または生物学的物質として理解される。抗増殖薬には、(i)代謝拮抗物質、例えば葉酸代謝拮抗物質(アミノプテリン、デノプテリン、メトトレキセート、エダトレキセート、トリメトレキセート、ノラトレキセド、ロメトレキソール、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、ピリトレキシム、プテロプテリン、ロイコボリン、10-プロパルギル-5,8-ジデアザ葉酸(PDDF、CB3717)、プリン類似体(クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、ペントスタチン、チオグアニン)およびピリミジン類似体(カペシタビン、シタラビンもしくはara-C、デシタビン、フルオロウラシル、5-フルオロウラシル、ドキシフルリジン、フロクスリジンおよびゲムシタビン);(ii)天然物、例えば抗腫瘍抗生物質および有糸分裂阻害剤、例えばビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビンなどのビンカアルカロイド;タキサン、例えばパクリタキセル(Taxol(商標))、ドセタキセル(Taxotere(商標));コルヒチン(NSC 757)、チオコルヒチン(NSC 361792)、コルヒチン誘導体(例えばNSC 33410)、およびアロコルヒチン(NSC 406042);ハリコンドリンB(NSC 609395);ドラスタチン10(NSC 376128);マイタンシン(NSC 153858);リゾキシン(NSC 332598);エポチロンA、エポチロンB;ディスコデルモライド;エストラムスチン;ノコダゾール;(iii)ホルモンおよびその拮抗物質、例えばタモキシフェン、トレミフェン、アナストロゾール、アルゾキシフェン、ラソフォキシフェン、ラロキシフェン、ナホキシジン、フルベストラント、アミノグルテチミド、テストラクトン、アタメスタン、エキセメスタン、フェドロゾール、フォルメスタン、レトロゾール、ゴセレリン、ロイプロレリンまたはロイプロリド、ブセレリン、ヒストレリン、メゲストロールおよびフルオキシメステロン;(iv)生物学的物質、例えばウイルスベクター、インターフェロンアルファおよびインターロイキン;(v)白金系化合物、例えばカルボプラチン、シスプラチン[シス-ジアミンジクロロ白金(CDDP)]、オキサリプラチン、イプロプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン(JM216)、JM118[シスアンミンジクロロ(II)]、JM149[シスアンミンジクロロ(シクロヘキシルアミン)トランスジヒドロキソ白金(IV)]、JM335[トランスアンミンジクロロジヒドロキソ白金(IV)]、トランスプラチン、ZD0473、シス,トランス,シス-Pt(NH3)(C6H11NH2)(OOCC3H7)2Cl、マロン酸-1,2-ジアミノシクロヘキサノ白金(II)、5-スルホサリチル酸-トランス-(1,2-ジアミノシクロヘキサン)白金(II)(SSP)、ポリ-[(トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン)白金]-カルボキシアミロース(POLY-PLAT)および4-ヒドロキシ-スルホニルフェニルアセテート(トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン)白金(II)(SAP)など、ならびに(vi)DNAアルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネートおよびトリアゼンであって、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標))、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン、ピポブロマン、メルファラン(L-サルコリジン)、クロラムブシル、メクロレタミンまたはムスチン、ウラムスチンまたはウラシルマスタード、ノベンビシン、フェノステリン、トロスファミド、イホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、クロロゾトシン、フォテムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、セムスチン(メチル-CCNU)、ストレプトゾシン、チオテパ、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン、プロカルバジン、アルトレタミン、ダカルバジン、ミトゾロミドおよびテモゾロミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
抗腫瘍剤を含有する本発明による医薬組成物または組み合わせ物の場合、組成物は、単一製剤として(例えば、一定量の各成分を含む錠剤またはカプセル剤として)提示することができるが、他方で、後で共同投与、逐次投与、または別々の投与のために組み合わせるために別々の製剤として提示することもできる。本発明の組成物または組み合わせ物には、成分は別々に配合されているが同じ容器に包装されているキットオブパーツとしての製剤も含まれる。当業者は、本発明による第二の医薬組成物の場合の異なる成分の製剤が類似していてもよく、言い換えれば(錠剤または丸剤で)同様に配合されていてもよく、それにより同じ経路でそれらの投与が可能になることを理解するであろう。本発明の異なる成分が別々に配合される場合、2つの成分はブリスター中に存在し得る。各ブリスターは、日中に消費されなければならない薬物を含有する。薬物を1日に数回投与しなければならない場合、各投与に対応する薬物をブリスターの異なる部分に入れることができ、薬物が投与されるべき時刻をブリスターの各部分に記録することが好ましい。あるいは本発明の組成物の成分は、異なる成分が異なる形で投与されるように異なる形で配合することができる。したがって、第一の成分はその経口投与用に錠剤またはカプセル剤として配合され、第二の成分はその静脈内投与用に配合されるか、またはその逆であることが可能である。本発明による第二の医薬組成物中で使用される組成物の一部である成分間の比は、特定の各場合において使用される抗腫瘍剤のほかに所望の適応症に応じて、当業者によって調整されることができる。したがって、本発明は、2つの成分の量の間の比が、50:1~1:50、特に20:1~1:20、1:10~10:1、または5:1~1:5の範囲であり得る組成物を想定している。
【0125】
本発明の医薬組成物または組み合わせ物は、所望の剤形の製剤に必要な薬学的に許容される賦形剤が含まれるように、経口経路、局所経路、吸入または非経口経路などの任意の種類の適切な経路によって投与することができる。前記医薬組成物の好ましい投与経路は静脈内経路である。
【0126】
「経口経路」は、嚥下後に生物中に組み込まれる医薬組成物として理解される。特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、それが固体であろうと液体であろうと、経口経路によるその投与に適した剤形にすることができる。経口経路によるそれらの投与に適した剤形は、錠剤、カプセル剤、シロップ剤または溶液剤であることができ、結合剤、例えばシロップ剤、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトールまたはポリビニルピロリドン;充填剤、例えば乳糖、糖、コーンスターチ、リン酸カルシウム、ソルビトールもしくはグリシン;圧縮用の潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム;崩壊剤、例えばデンプン、ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウムもしくは微結晶セルロース;または薬学的に許容される湿潤剤、ラウリル硫酸ナトリウムなどの当該技術分野において公知の任意の従来の賦形剤を含み得る。固体経口組成物は、混合、充填または圧縮の従来のプロセスによって調製することができる。反復混合操作を使用して、大量の充填剤を使用する組成物中に活性剤を完全に分配することができる。前記操作は、当該技術分野において慣例的である。錠剤は、例えば湿式または乾式造粒によって調製することができ、場合により通常の薬務において知られているプロセスに従って、特に腸溶コーティングでそれらをコーティングすることができる。
【0127】
他方で、「局所経路」は、非全身経路による投与として理解され、本発明の医薬組成物の表皮上、口腔内への外用ならびに前記組成物の耳、眼および鼻への点滴注入を含み、この場合、組成物が血流に著しく入ることはない。「全身経路」は、経口経路、静脈内経路、腹腔内経路および筋肉内経路による投与として理解される。「吸入」は、鼻腔内経路による投与および経口吸入による投与として理解される。前記投与に適した剤形、例えばエアロゾル製剤または定量吸入器を、従来の技術によって調製することができる。1つの実施形態において、投与経路は鼻腔内経路である。
【0128】
本明細書で使用される「非経口」という用語は、静脈内経路、腹腔内経路、筋肉内経路または皮下経路による投与を含む。非経口投与の皮下、筋肉内および静脈内投与形態が一般的に好ましい。
【0129】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、適切な単位剤形の滅菌溶液、懸濁液または凍結乾燥製品などのそれらの非経口投与に適合させることができる。その注射用途に適した医薬組成物には、滅菌水溶液(それらが水に可溶である場合)、または滅菌注射用溶液もしくは分散液の即時調製用の分散液および滅菌粉末が含まれる。静脈内経路によるその投与のために、いくつかの適切な担体には、リン酸で緩衝化された食塩水(PBS)が含まれる。すべての場合において、組成物は滅菌されていなければならず、注射が容易に可能になる点まで流動性でなければならない。組成物は製造および貯蔵条件において安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、薬学的に許容されるポリオール、例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合に必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チオメルサールなどによって達成することができる。ほとんどの場合、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール;または塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによって引き起こされ得る。
【0130】
注射用滅菌溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて前述の成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に組み入れ、続けて滅菌膜を介した濾過で滅菌することによって調製することができる。一般的に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒体および前で列挙したものの中から必要とされる残りの成分を含有する滅菌賦形剤に組み込むことによって調製される。注射用滅菌溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製プロセスは真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより活性成分に加えて予め濾過されたその滅菌溶液からの任意の所望の追加成分を有する粉末を生じる。
【0131】
本発明の医薬組成物は、例えば組成物の用量を減少させながら、パルス注入によって適切に投与することができる。好ましくは、用量は、注射、より好ましくは静脈内または皮下注射によって投与されるが、投与が急性または慢性であるかに部分的に依存する。
【0132】
1つの実施形態において、本発明の第一または第二の医薬組成物は、インプラントおよびマイクロカプセル化投与システムを含む制御放出製剤など、身体からの急速な排出から前記ポリペプチドを保護する担体と共に調製される。生分解性の生体適合性ポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を使用することができる。前記製剤を調製するためのプロセスは当業者にとって明らかであろう。これらの材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incでも商業的に入手することができる。
【0133】
徐放性組成物は、結晶を懸濁状態に維持することができる適切な製剤中に懸濁された抗体結晶の調製物も含む。これらの調製物は、それらが皮下または腹腔内経路によって注射された場合、徐放性効果を生み出す可能性がある。他の組成物は、リポソーム中に捕捉された抗体も含む。そのような抗体を含有するリポソームは、Epstein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,(1985)82:3688-3692;Hwang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,(1980)77:4030-4034;欧州特許出願公開第52,322号明細書;欧州特許出願公開第36,676号明細書;欧州特許出願公開第88,046号明細書;欧州特許出願公開第143,949号明細書などの公知の方法によって調製される。
【0134】
本発明のポリペプチドならびに本発明のポリペプチドを含有するコンジュゲートおよび融合タンパク質は生体膜を横切って移動することができるという事実にもかかわらず、当業者は、ポリペプチドを含むコンジュゲートまたは融合タンパク質をナノ粒子に配合することも好都合であり得ることを理解する。
【0135】
本明細書で用いられる「ナノ粒子」という用語は、1~1000nmの範囲の寸法を有する任意の材料を指す。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、2~200nmの範囲、好ましくは2~150nmの範囲、さらにより好ましくは2~100nmの範囲の寸法を有する。
【0136】
ナノ粒子は、標的器官に到達するまで、生物学的流体中のポリペプチドの完全性を維持するのに寄与し得る。さらに、抗腫瘍剤を含む組成物の場合、組成物のカプセル化は、抗腫瘍剤によって引き起こされる二次的効果を減少させ得る。最後に、ナノ粒子は、対象器官へのナノ粒子の標的化を可能にする部分を含むように修飾され得る。
【0137】
したがって、別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、ナノ粒子の一部を形成する本発明によるコンジュゲート、融合タンパク質および組成物を含んでなる。
【0138】
本発明の文脈で使用することができる適切なナノ粒子には、脂質系ナノ粒子、超常磁性ナノ粒子、ナノシェル、半導体ナノ結晶、量子ドット、ポリマー系ナノ粒子、シリコン系ナノ粒子、シリカ系ナノ粒子、金属系ナノ粒子、フラーレンおよびナノチューブなどのナノスケール材料が含まれる。
【0139】
ナノ粒子がそれらのポリペプチドペイロードを送達する能力を損なうことなく、リガンドの添加によって標的化送達を達成することができる。これにより特定の細胞、組織および器官への送達が可能になると考えられる。リガンド系送達系の標的特異性は、異なる細胞型へのリガンド受容体の分布に基づいている。標的リガンドは、ナノ粒子と非共有結合しているかまたは共有結合しているかのいずれかであってよく、本明細書で考察される様々な方法によってナノ粒子にコンジュゲートされ得る。
【0140】
ナノ粒子を標的とするために使用することができるタンパク質またはペプチドの例には、トランスフェリン、ラクトフェリン、TGF-β、神経成長因子、アルブミン、HIV Tatペプチド、RGDペプチド、およびインスリン、ならびに他のものが含まれる。
【0141】
ナノ粒子への本発明の生成物の配合は、生成物のセル内部への接近を容易にすることを意図していないか、または単に意図していないが、生成物を分解から保護することおよび/またはナノ粒子の対象器官への標的化を容易にすることを意図していることが理解されるであろう。
【0142】
本発明の医薬組成物は、任意の種類の哺乳動物、好ましくはヒトへの投与に適している。
【0143】
前述の用語および実施形態はすべて、本発明のこの態様にも等しく適用可能である。
【0144】
医療用途
別の態様において、本発明は、医薬における使用のための、本発明によるポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体、本発明によるコンジュゲート、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、本発明による宿主細胞または本発明による医薬組成物に関する。
【0145】
別の態様において、本発明は、癌の予防および/または治療における使用のための、本発明によるポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体、本発明によるコンジュゲート、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、本発明による宿主細胞または本発明による医薬組成物に関する。
【0146】
あるいは本発明は、癌の予防および/または治療方法であって、それを必要とする被験体に治療有効量の本発明によるポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体、本発明によるコンジュゲート、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、本発明による宿主細胞または本発明による医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0147】
あるいは本発明は、癌の予防および/または治療用の医薬を調製するための、本発明によるポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体、本発明によるコンジュゲート、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、本発明による宿主細胞または本発明による医薬組成物の使用に関する。
【0148】
「予防」は、疾患の初期または早期段階における化合物の投与として、またはその発症を予防するためのものとして理解される。
【0149】
「治療」という用語は、臨床的徴候の出現前または出現後に疾患の進行を制御するための化合物の投与を示すのに用いられる。疾患の進行の制御は、症状の減少、疾患の期間の減少、病的状態の安定化(特に追加の障害の回避)、疾患の進行の遅延、病的状態および寛解(部分的および完全なものの両方)の改善を含むが、これらに限定されない有益なまたは所望の臨床結果として理解される。疾患の進行の制御には、治療が適用されなかった場合の予想生存期間と比較した生存期間の延長も含まれる。
【0150】
本明細書で使用される「被験体」には、癌を有するかまたは癌の兆候を示すか、または癌を有するもしくは癌の兆候を示すリスクがある任意の動物が含まれる。適切な被験体(患者)には、実験用動物(マウス、ラット、ウサギ、またはモルモットなど)、農用動物、および家庭用動物またはペット(ネコまたはイヌなど)が含まれる。非ヒト霊長類、好ましくはヒト患者が含まれる。
【0151】
「癌」という用語は、制御されない細胞分裂(または生存率もしくはアポトーシス耐性の増加)、前記細胞の他の隣接組織への侵入能力(浸潤)、または細胞が通常位置していない身体の領域へのリンパ管および血管を通しての拡大(転移)によって特徴付けられる疾患を指す。腫瘍が浸潤および転移によって広がることができるかどうかに応じて、それらは良性または悪性のいずれかに分類される。良性腫瘍は、浸潤または転移によって拡大することができない腫瘍、すなわち、それらは局所的にのみ増殖する。一方で、悪性腫瘍は、浸潤と転移によって広がることができる腫瘍である。本発明による方法は、局所および悪性腫瘍の治療に有用である。本明細書中で用いられる癌という用語には、以下の種類の癌が含まれるが、これらに限定されない:乳癌;胆道癌;膀胱癌;神経膠芽腫および髄芽腫を含む脳腫瘍;子宮頸癌;絨毛癌;大腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;;急性リンパ性白血病および骨髄性白血病を含む血液腫瘍;T細胞性急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫;有毛細胞白血病;慢性骨髄性白血病;多発性骨髄腫;エイズ関連白血病および成人T細胞白血病/リンパ腫;ボーエン病およびパジェット病を含む上皮内腫瘍;肝臓癌;肺癌;ホジキン病およびリンパ球性リンパ腫を含むリンパ腫;神経芽細胞腫;扁平上皮癌を含む口腔癌;上皮細胞、間質細胞、生殖細胞および間葉細胞から生じるものを含む卵巣癌;膵癌;前立腺癌;直腸癌:平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および骨肉腫を含む肉腫;黒色腫、メルケル細胞癌、カポジ肉腫、基底細胞癌、および扁平上皮癌を含む皮膚癌;セミノーマ、非セミノーマ(奇形腫、絨毛癌)、間質性腫瘍、および胚細胞性腫瘍などの胚性腫瘍を含む精巣癌:甲状腺腺癌および髄様癌を含む甲状腺癌;腺癌およびウィルムス腫瘍を含む腎臓癌。他の癌は当業者に知られているであろう。好ましい実施形態において、治療される癌は、肺癌、好ましくは肺腺癌、さらに好ましくはKRas駆動型肺腺癌である。
【0152】
好ましい実施形態において、癌は固形腫瘍である。
【0153】
本発明の化合物および癌の種類のすべての組み合わせ物が本発明に含まれる。
【0154】
好ましい実施形態において、癌は、膠芽腫および非小細胞肺癌からなる群から選択される。
【0155】
膠芽腫およびグレードIV星状細胞腫としても知られる「膠芽腫」は、脳内で発生する最も一般的で最も攻撃的な癌である。
【0156】
本明細書で用いられる「NSCLC」または「非小細胞肺癌」という用語は、それらの予後および管理が世界保健機関/国際肺癌学会(Travis WD et al.Histological typing of lung and pleural tumours.3rd ed.Berlin:Springer-Verlag,1999)に従ってほぼ同一であることから、一緒にグループ化された異質性疾患の群を指す。
1.NSCLCの30%~40%を占める扁平上皮癌(SCC)は、より大きい呼吸管において発生するが、成長がより遅く、すなわち、これらの腫瘍の大きさは診断によって異なる。
2.腺癌は、NSCLCの50~60%を占めるNSCLCの最も一般的な亜型であり、肺のガス交換表面近くから発生し、亜型である気管支肺胞癌を含み、これは治療に対して異なる応答を示すことがある。
3.大細胞癌は、肺の表面近くで増殖する急成長型である。それは主に除外診断であり、さらに調査を行うと、通常は扁平上皮癌または腺癌に再分類される。
4.腺扁平上皮癌は、扁平上皮細胞(特定の器官の内側を覆う細く平らな細胞)と腺様細胞の2種類の細胞を踏む癌の一種である。
5.多形性、肉腫様または肉腫様要素を有する癌腫。これは、組織学的異質性ならびに上皮および間葉分化における連続体を反映する一群のまれな腫瘍である。
6.カルチノイド腫瘍は、成長が遅い神経内分泌肺腫瘍であり、神経系によって提供される刺激に応答してホルモンを放出することができる細胞から発生する。
7.唾液腺型の癌腫は、肺の大きな気道の内側に位置する唾液腺細胞において発生する。
8.分類されていない癌腫には、前述の肺癌カテゴリーのいずれにも当てはまらない癌が含まれる。
【0157】
本発明は以下のものにも関する。
[1].配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1のポリペプチド、または前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体を含んでなるポリペプチド。
[2].配列番号1の89位の残基Xがシステインではない配列番号1のポリペプチドからなるものであるか、または前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体からなるものである、[1]に記載のポリペプチド。
[3].配列番号1の89位の残基Xがセリンである、[1]または[2]記載のポリペプチド。
[4].配列番号4からなる、[3]に記載のポリペプチド。
[5].a.[1]~[4]のいずれかに記載のポリペプチドまたは該ポリペプチドの機能的に等価な変異体と
b.前記ポリペプチドまたは該ポリペプチドの機能的に等価な変異体の細胞内取り込みを促進する化学的部分と
を含んでなるコンジュゲート。
[6].ポリペプチドまたは該ポリペプチドの機能的に等価な変異体の細胞内取り込みを促進する化学部分が細胞透過性ペプチド配列であり、該細胞透過性ペプチド配列と前記ポリペプチドまたは該ポリペプチドの機能的に等価な変異体とが融合タンパク質を形成する、[5]に記載のコンジュゲート。
[7].細胞透過性ペプチド配列が、GRKKRRQRRR(配列番号38)およびRRRRRRLR(配列番号39)からなる群から選択されるものである、[6]に記載のコンジュゲート。
[8].更なる核局在化シグナル、特に核局在化シグナルをさらに含んでなる、[5]~[7]のいずれかに記載のコンジュゲートであって、PKKKRKV(配列番号6)、PAAKRVKLD(配列番号54)およびKRPAATKKAGQAKKKK(配列番号7)からなる群から選択されるものである、コンジュゲート。
[9].[1]~[4]のいずれかに記載のポリペプチドまたは[5]~[8]のいずれかに記載のコンジュゲートをコードするポリヌクレオチド。
[10].[9]に記載のポリヌクレオチドを含んでなるベクター。
[11].[1]~[4]のいずれかに記載のポリペプチド、[5]~[8]のいずれかに記載のコンジュゲート、[9]に記載のポリヌクレオチド、または[10]に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
[12].[1]~[4]のいずれかに記載の薬学的有効量のポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体、[5]~[8]のいずれかに記載のコンジュゲート、[9]に記載のポリヌクレオチド、[10]に記載のベクター、または[11]に記載の宿主細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含んでなる医薬組成物。
[13].医薬における使用のための、[1]~[4]のいずれかに記載のポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体、[5]~[8]のいずれかに記載のコンジュゲート、[9]に記載のポリヌクレオチド、[10]に記載のベクター、〔11〕に記載の宿主細胞、または〔12〕に記載の医薬組成物。
[14].癌の予防および/または治療における使用のための、[1]~[4]のいずれかに記載のポリペプチドまたはその機能的に等価な変異体、[5]~[8]のいずれかに記載のコンジュゲート、[9]に記載のポリヌクレオチド、[10]に記載のベクター、[11]に記載の宿主細胞、または[12]に記載の医薬組成物。
[15].癌が膠芽腫および非小細胞肺癌からなる群から選択されるものである、[14]に記載の使用のためのポリペプチドまたはその機能的に等価な変異体、コンジュゲート、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞または医薬組成物。
【0158】
前述の用語および実施形態はすべて、本発明のこの態様にも等しく適用可能である。
【0159】
以下の実施例によって本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は単に例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものでは決してない。
【実施例】
【0160】
材料および方法
OmomycおよびOmoCS mRNAによる細胞のトランスフェクション
OmomycおよびOmoCS突然変異体のmRNAは、それぞれTrilink Biotechnologies社から0.782mg/mLおよび0.876mg/mLの濃度で購入した(ARCAキャップ、5-メチル-C完全置換し、pseudo-U修飾)。
【0161】
OmomycまたはOmoCS DNA配列のいずれかを、T7 RNAポリメラーゼプロモーターおよび3p末端に位置するポリ(T)テールの下流のベクターに導入した。5-メチルシチジン-5’-三リン酸およびシュードリジン-5’-三リン酸修飾-RNAを、T7 RNAポリメラーゼを用いたインビトロ転写によって製造した。[3’-O-Me-m7G(5’)ppp(5’)G]RNAキャップ構造類似体を用いてRNAをキャップした。鋳型DNAベクターを、DNAseを用いて分解し、残留三リン酸をホスファターゼ処理により除去した。次いで、RNA産物を精製し、完全性および量をそれぞれアガロースゲル電気泳動およびNanodropにより評価した。RNAは-80℃で保存した。
【0162】
リポフェクタミンMessengerMAXトランスフェクション試薬は、Thermo Fisher Scientific社から購入した。A549およびU87細胞系を、96ウェルプレートに、ウェルあたりそれぞれ500および1000細胞で播種した。細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)と1%L-グルタミン(完全培地)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で培養した。24時間後、細胞をリポフェクタミン-mRNA複合体でトランスフェクトした。各2μLのリポフェクタミンについて3μgのmRNAを別々に無血清培地で希釈し、10分間インキュベートした。次いで、mRNAおよびリポフェクタミン希釈物を混合し、5分間インキュベートして複合体を形成させた。ウェルを無血清培地で2回洗浄した。全無血清培地100μLで、1ウェルあたり1μgから出発して0.0625μgのmRNAで細胞を段階希釈した。各濃度について、対照細胞をリポフェクタミンのみで処理し、そして各条件について3連で使用した。4時間のトランスフェクション後、無血清培地およびmRNA-リポフェクタミン複合体をウェルから除去し、完全培地で置換した。細胞を3日間インキュベートした。次いで、Promega社からのCellTiter-Blueを用いて生存度を評価した。未処理ウェルに対する吸光度を各条件について計算した。統計的有意性はt検定によって計算した。
【0163】
OmoCSおよびOmoCA mRNAによる細胞のトランスフェクション
OmoCSおよびOmoCA突然変異体のmRNAは、Trilink Biotechnologies社から購入した(ARCAキャップ、5-メチル-C完全置換し、pseudo-U修飾)。Nanodropを使用して、OmoCSおよびOmoCAのmRNA濃度を、それぞれ0.845mg/mLおよび0.832mg/mLと決定した。リポフェクタミンMessengerMAXトランスフェクション試薬は、Thermo Fisher Scientific社から購入した。A549細胞を、96ウェルプレートに、ウェルあたり500細胞で播種した。細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)と1%L-グルタミン(完全培地)を補充したロズウェルパーク記念研究所培地(RPMI)で培養した。24時間後、細胞をリポフェクタミン-mRNA複合体でトランスフェクトした。各1.5μLのリポフェクタミンについて2μgのmRNAを別々に無血清培地で希釈し、10分間インキュベートした。次いで、mRNAおよびリポフェクタミン希釈物を混合し、5分間インキュベートして複合体を形成させた。ウェルを無血清培地で2回洗浄した。全無血清培地(200nM)50μLで、1ウェルあたり1μgのmRNAで開始して連続1:2希釈で処理した。各濃度について、細胞を処理しないか(非処理)または対照ウェルとしてリポフェクタミンのみで処理した(Lipoのみ)。各条件について3連で行った。4時間のトランスフェクション後、無血清培地およびmRNA-リポフェクタミン複合体をウェルから除去し、完全RPMI培地で置換した。細胞を3日間インキュベートした。その時点で、クリスタルバイオレット染色を用いて細胞密度を評価した。非処理ウェルに対する吸光度を各濃度について計算した。
【0164】
実施例1
驚くべきことに、OmoCS突然変異体は低濃度で元のOmomyc配列と比較して細胞増殖のより高い阻害を示す(
図1)。元のOmomyc配列と比較したこの改善された効能は、Omomycホモ二量体の酸化型界面システインがMycまたはMaxとのOmomycのヘテロ二量体化を妨げ、Omomycの活性を単なるEボックス結合の競合に限定するという仮説によって少なくとも部分的に説明することができる。代わりに、OmoCS突然変異体は、ヘテロ二量体集団の形成を促進することによって、Omomycの他の生物学的活性に有利に働くだろう。
【0165】
実施例2
驚くべきことに、OmoCA突然変異体は同じ増殖アッセイにおいて、OmoCSとまさに同じように挙動する(
図2)。
【配列表】