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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】レーザ加工するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/073 20060101AFI20220617BHJP
   C03B 33/09 20060101ALI20220617BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20220617BHJP
【FI】
B23K26/073
C03B33/09
B23K26/53
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019504763
(86)(22)【出願日】2017-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017043437
(87)【国際公開番号】W WO2018022476
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】62/368,571
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】シリンガー,ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】シュニッツラー,ダニエル
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/095089(WO,A2)
【文献】国際公開第03/076150(WO,A1)
【文献】特表2008-539161(JP,A)
【文献】国際公開第2015/095264(WO,A2)
【文献】特開2013-75331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
C03B 33/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物をレーザ加工する方法であって、
前記被加工物内に輪郭線を形成する工程であって、該輪郭線が該被加工物内に欠陥を含む工程と、
前記輪郭線に沿って、または該輪郭線の近傍で前記被加工物に赤外レーザビームを向けて、該輪郭線に沿って該被加工物を分離する工程であって、該赤外レーザビームは、該赤外レーザビームからの累積エネルギの、該輪郭線上への直接的な分布よりも大きな分布が、該輪郭線に隣接する領域内に配置されるような環状ビームプロファイルを有する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記環状ビームプロファイルの外径が、約0.5mmから約20mmである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記環状ビームプロファイルの内径が、前記外側のビーム径の約5%から約95%である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記赤外レーザビームからの累積エネルギの、前記輪郭線上への直接的な分布よりも大きな分布が、前記輪郭線の両側の該輪郭線に隣接する領域内に配置される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記輪郭線を形成する工程は、
パルスレーザビームの焦点を、ビーム伝播方向に沿って向けられ、および前記被加工物内に方向付けられたパルスレーザビーム焦線に合わせる工程であって、該パルスレーザビーム焦線が、該被加工物内に誘起吸収を生成し、該誘起吸収が、該被加工物内の該パルスレーザビーム焦線に沿って欠陥線を生成する工程と、
前記被加工物と前記パルスレーザビーム焦線を、前記輪郭線に沿って互いに対して移動させて、それにより、該被加工物内の該輪郭線に沿って、複数の欠陥線をレーザ形成する工程であって、隣接する欠陥線の間の間隔が、1マイクロメートルから30マイクロメートルである工程とを含み、
前記パルスレーザは、パルスバースト当たり約1パルスから、パルスバースト当たり約30パルスを有するパルスバーストを生成し、そのパルスバーストエネルギは、パルスバースト当たり約100μJから約600μJである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記パルスレーザビームは、パルスバースト当たり約9パルスから、パルスバースト当たり約20パルスを有するパルスバーストを生成し、そのパルスバーストエネルギは、パルスバースト当たり約300μJから、パルスバースト当たり約500μJである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記隣接する欠陥線の間の間隔は、約7マイクロメートルから約12マイクロメートルであり、
前記パルスレーザビームは、パルスバースト当たり約5パルスから、パルスバースト当たり約15パルスを有するパルスバーストを生成し、そのパルスバーストエネルギは、パルスバースト当たり約400μJから、パルスバースト当たり約600マイクロジュールである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
被加工物をレーザ加工する方法であって、
パルスレーザビームの焦点を、前記被加工物に方向付けられたパルスレーザビーム焦線に合わせる工程であって、該パルスレーザビーム焦線は、該被加工物内に欠陥線を生じさせる工程と、
前記被加工物と前記パルスレーザビーム焦線を互いに対して移動させ、それによって、前記被加工物内の輪郭線に沿って複数の欠陥線をレーザ形成する工程であって、隣接する欠陥線間の間隔が、5マイクロメートルと15マイクロメートルの間である工程と、
前記輪郭線に沿って、または該輪郭線の近傍で、赤外レーザビームを前記被加工物上に向けて、該被加工物を該輪郭線に沿って分離する工程であって、該赤外レーザビームは、該赤外レーザビームからの累積エネルギの、該輪郭線上への直接的な分布よりも大きな分布が、該輪郭線の両側の該輪郭線に隣接する領域内に配置されるようなビームプロファイルを有する工程と、
を含む方法。
【請求項9】
前記赤外レーザビームは、環状ビームプロファイルを有し、およびその中心が前記輪郭線上にある、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記赤外レーザビームは、二酸化炭素レーザ、一酸化炭素レーザ、固体レーザ、レーザダイオード、または、これらの組合せによって生成される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容全体が参照により依拠され、および本願明細書に組み込まれる、2016年7月29日に出願された米国仮出願第62/368,571号の米国特許法第119条の下での優先権の恩典を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、被加工物をレーザ加工するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
材料のレーザ加工の分野は、異なる種類の材料の切断、穴開け、フライス加工、溶接、溶融等を含む幅広い用途を包含している。これらのプロセスの中で、特に対象となるものは、薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)用のガラス、サファイアまたは溶融シリカ、または、電子装置用のディスプレイ材料等の材料の製造に利用される可能性のあるプロセスにおける、異なる種類の透明基板の切断または分離である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プロセス開発やコストの視点から、ガラス基板の切断および分離には、改良のための多くの機会が存在する。現在、市場で実施されていることよりも速く、よりクリーンで、より安価で、より繰り返し可能であり、およびより信頼性が高い、ガラス基板を分離する方法を有することが重要である。したがって、ガラス基板を分離するための代替的な改良方法に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によれば、被加工物は、被加工物内に輪郭線を形成する工程と、その輪郭線に沿って、または輪郭線の近傍で被加工物に赤外レーザビームを向けて、その輪郭線に沿って被加工物を分離する工程とを含んでもよい方法によってレーザ加工することができる。輪郭線は、被加工物内の欠陥を含んでいてもよい。いくつかの実施形態における被加工物は、透明な被加工物であってもよい。赤外レーザビームは、赤外レーザビームからの累積エネルギの、輪郭線上への直接的な分布よりも大きな分布が、その輪郭線に隣接する領域内に配置されるようなビームプロファイルを有していてもよい。いくつかの実施形態では、赤外レーザビームは、環状ビームプロファイルを有していてもよい。
【0006】
別の実施形態では、透明な被加工物は、パルスレーザビームの焦点を、透明な被加工物へ方向付けられたパルスレーザビーム焦線に合わせる工程と、その透明な被加工物とパルスレーザビームの焦線を互いに対して移動させ、それによって、透明な被加工物内の輪郭線に沿って複数の欠陥線をレーザ形成する工程と、輪郭線に沿って、または輪郭線の近傍で、赤外レーザビームを透明な被加工物上に向けて、その透明な被加工物をその輪郭線に沿って分離する工程とを含むことができる方法によってレーザ加工してもよい。パルスレーザビーム焦線は、透明な被加工物内に欠陥線を生じさせる可能性がある。隣接する欠陥線間の間隔は、5マイクロメートルと15マイクロメートルの間である可能性がある。赤外レーザビームは、赤外レーザビームからの累積エネルギの、輪郭線上への直接的な分布よりも大きな分布が、輪郭線の両側のその輪郭線に隣接する領域内に配置されるようなビームプロファイルを有していてもよい。
【0007】
本願明細書に記載されているプロセスおよびシステムのさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載されており、また、当業者には、その説明からある程度容易に明らかになるであろうし、または、以下の詳細な説明、クレームならびに添付図面を含む、本願明細書に記載されている実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0008】
上述の概要および以下の詳細な説明は、さまざまな実施形態について説明していること、およびクレームされた内容の本質および特性を理解するための要旨または枠組みを提供することが意図されていることを理解すべきである。添付図面は、さまざまな実施形態のさらなる理解を実現できるように包含されており、およびこの明細書に組み込まれて、明細書の一部を構成している。それらの図面は、本願明細書に記載されているさまざまな実施形態を例示し、およびその説明とともに、クレームされた内容の原理および動作を説明するのに役に立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、透明な被加工物内に形成された輪郭線を横切る環状の赤外レーザビームスポットを概略的に示す図である。
図2】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、環状の赤外レーザビームの実施形態の断面出力分布を示すグラフである。
図3】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、環状の赤外レーザビームプロファイルを形成するのに用いられる光学アセンブリを概略的に示す図である。
図4A】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、従来のガウス赤外レーザビームプロファイルの場合の適当な出力に応じた赤外レーザビームのビーム径を示すグラフである。
図4B】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、環状の赤外レーザビームプロファイルの場合の適当な出力に応じた赤外レーザビームのビーム径を示すグラフである。
図5】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、分離の時点での、分離された透明な被加工物の側部の画像を示し、および輪郭線でガウス赤外レーザビームを用いた従来のレーザ処理による過剰な加熱によって引き起こされたクラックを示す図である。
図6】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、欠陥線の輪郭線の形成を概略的に示す図である。
図7】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、透明な被加工物の加工中の、パルスレーザビーム焦線の位置決めを概略的に示す図である。
図8A】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、パルスレーザ加工用の光学アセンブリを概略的に示す図である。
図8B-1】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、透明な被加工物と関連付けたパルスレーザビーム焦線の第一の実施形態を概略的に示す図である。
図8B-2】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、透明な被加工物と関連付けたパルスレーザビーム焦線の第二の実施形態を概略的に示す図である。
図8B-3】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、透明な被加工物と関連付けたパルスレーザビーム焦線の第三の実施形態を概略的に示す図である。
図8B-4】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、透明な被加工物と関連付けたパルスレーザビーム焦線の第四の実施形態を概略的に示す図である。
図9】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、パルスレーザ加工用の光学アセンブリの別の実施形態を概略的に示す図である。
図10A】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、パルスレーザ加工用の光学アセンブリの別の実施形態を概略的に示す図である。
図10B】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、透明な被加工物における図10Aのパルスレーザの詳細図を概略的に示す図である。
図11】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、パルスレーザ加工用の光学アセンブリの別の実施形態を概略的に示す図である。
図12A】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、焦点が合っていないパルスレーザビームの場合の強度領域を概略的に示す図である。
図12B】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、球面レンズを用いた集束パルスレーザビームの場合の強度領域を概略的に示す図である。
図12C】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、アキシコンレンズまたは回折フレネルレンズを用いた集束パルスレーザビームの場合の強度領域を概略的に示す図である。
図13A】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、各例示的なパルスバーストが7つのパルスを有している場合の、例示的なパルスバースト内のレーザパルスの相対強度対時間を示すグラフである。
図13B】本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態による、各例示的なパルスバーストが9つのパルスを含んでいる場合の、例示的なパルスバースト内のレーザパルスの相対強度対時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、実施例が添付図面に図示されている、ガラス被加工物等の透明な被加工物をレーザ加工するプロセスの実施形態について詳細に説明する。同じ部材または類似の部材を指すために、図面全体を通して、可能な限り同じ参照数字を用いるものとする。本願明細書に記載されている一つ以上の実施形態によれば、透明な被加工物は、分離して二つ以上の部分になるようにレーザ加工することができる。一般的に、そのプロセスは、少なくとも、透明な被加工物内の欠陥を含む輪郭線を形成する第一のステップと、その輪郭線において、または、輪郭線の近傍で、その透明な被加工物を赤外レーザビームにさらすことによって、その透明な被加工物を輪郭線に沿って分離する第二のステップとを包含する。一つの実施形態によれば、透明な被加工物内に一続きの欠陥線を形成し、それによって、輪郭線を画定するのに、パルスレーザビームを用いてもよい。それらの欠陥線は、本願明細書においては、透明な被加工物内の穿孔またはナノ穿孔と呼んでもよい。そして、赤外レーザは、輪郭線に隣接する透明な被加工物の領域を加熱して、その透明な被加工物を輪郭線で分離するのに用いることができる。輪郭線に沿って分離することは、赤外レーザビームからの加熱によって生じたその異なる部分において、透明な被加工物の温度の違いによって生じた、その透明な被加工物における機械的応力によって引き起こすことができる。本願明細書においては、透明な被加工物を分離する方法および装置のさまざまな実施形態は、添付図面に関連して具体的に記載されている。
【0011】
「透明な被加工物」という表現は、本願明細書で用いる場合、透明なガラスまたはガラスセラミックから形成された被加工物を意味し、「透明な」という用語は、本願明細書で用いる場合、その材料が、40%よりも大きい、400から700nmの波長範囲にわたる平均的な透過性を呈することを意味する。いくつかの実施形態において、被加工物は、40%よりも大きい、400から700nmの波長範囲にわたる平均的な透過性を呈する可能性がある。いくつかの実施形態によれば、被加工物の少なくとも一部、例えば、分離される部分は、約5×10-6/K未満、例えば、約4×10-6/K、または、約3.5×10-6/K未満の熱膨張率を有する。例えば、被加工物は、約3.2×10-6/Kの熱膨張率を有していてもよい。透明な被加工物は、約50マイクロメートルから約10mm(例えば、約100マイクロメートルから約5mm、または、約0.5mmから約3mm)の厚さを有していてもよい。
【0012】
「輪郭線」という表現は、本願明細書で用いられる場合、被加工物の表面での意図する分離のライン(例えば、線、曲線等)を意味し、透明な被加工物は、適切な処理条件にさらされたときに、そのラインに沿って複数の部分に分離される。輪郭線は、一般に、さまざまな方法を用いて透明な被加工物に導入された一つ以上の欠陥から成る。「欠陥」は、本願明細書で用いられる場合、(塊状材料に対して)修正した材料の領域、空隙、スクラッチ、きず、穴、または、追加的な熱処理により、例えば、赤外レーザ処理による分離を可能にする透明な被加工物内のその他の変形を含んでもよい。
【0013】
透明な被加工物、例えば、ガラス基板等は、まず、その被加工物の表面に輪郭線を形成し、その後、その輪郭線上で被加工物の表面を加熱して、被加工物内に熱応力を生じさせることによって、複数の部分に分離することができる。その応力は、最終的に、輪郭線に沿った被加工物の自発的な分離をもたらす。被加工物の表面の加熱は、例えば、赤外レーザを用いて実行することができる。具体的には、輪郭線に沿った分離を引き起こすための従来の赤外レーザ加工は、その輪郭線を画定する欠陥に直接向けられた最大熱強度を生じさせるプロファイルを有する輪郭線に入射するように方向付けられた赤外レーザビームを用いる。例えば、従来は、ガウスビームプロファイルを用いて、輪郭線に直接中心を合わせることができる。このような従来のプロセスでは、レーザエネルギおよび熱の最大強度は、輪郭線にある。しかし、(分離を引き起こすのに十分なエネルギを有する)輪郭線上にピーク強度を有する赤外レーザビームを用いると、分離された透明な被加工物のエッジへの損傷を引き起こす可能性があることが分かっており、この場合、輪郭線は、分離前に存在している。例えば、比較的高出力の分離用の赤外レーザを要するいくつかのガラス組成物の場合、ヒートクラックが、分離された透明な被加工物のエッジに対して概して直角な(すなわち、その輪郭線が示す分離の意図したラインに対して概して直角な)方向において、その分離されたエッジから伝播する可能性があり、そのことは、分離された透明な被加工物のエッジを弱める可能性がある。
【0014】
さらに、輪郭線の加熱の後の自発的な分離は、透明な被加工物の材料の熱膨張率(coefficient of thermal expansion:CTE)に関連しており、比較的高いCTEを有する材料は、比較的低いCTEの場合よりも、加熱時の自発的な分離に適している。透明な被加工物が、比較的低いCTEを有する材料から形成されている場合、輪郭線に沿った自発的な分離は、その透明な被加工物に与えられる熱エネルギを増加させることによって容易にすることができる。しかし、ある条件下では(例えば、材料のCTEが極端に低い場合)、従来の手段により、被加工物に損傷(例えば、溶融)を与えることなく、透明な被加工物に与えられる熱エネルギを増加させることは不可能であり、被加工物を実行不可能の状態にする可能性がある。
【0015】
例えば、従来の赤外レーザ加工のいくつかの実施形態において、スポットサイズが小さすぎる(例えば、1mm未満の)場合、または、COレーザ出力が高すぎる(例えば、400Wよりも大きい)場合、透明な被加工物は、輪郭線で過熱されて、透明な被加工物中に、アブレーション、溶融、および/または熱生成クラックを生じ、これらは、分離された部材のエッジ強度を低下させるため好ましくない。このようなパラメータは、ガウスビームプロファイルによる、特に、透明な基板上への、例えば、比較的低いCTE(例えば、約4×10-6/K)を有するガラスへの従来の処理時には不可避である可能性があり、これらの高強度レーザパラメータは、ガウスレーザプロファイルが用いられる場合、透明な被加工物の分離を引き起こすのに必要である可能性がある。したがって、従来の手段により、好ましくない影響、例えば、アブレーション、溶融および/または熱生成クラックを引き起こすことなく、低CTEのガラス被加工物を分離するのは困難であり、または、不可避でさえある可能性がある。
【0016】
従来の赤外レーザ加工に関する上述した不備は、赤外レーザビームからの累積エネルギの、輪郭線上への直接的な分布よりも大きい、輪郭線に隣接する領域内に配置される分布を有する赤外レーザビームプロファイルを用いることによって克服することができる。すなわち、赤外レーザビームは、輪郭線上に直接伝達されるエネルギよりも多くのエネルギを、その輪郭線に隣接する領域上に伝達することができる。「累積エネルギ」は、本願明細書で用いる場合、赤外レーザビームが被加工物に対して移動される際に、そのレーザビームによって被加工物の特定の領域上に伝達されたすべてのエネルギを指す。例えば、一つの実施形態において、赤外レーザ分離は、環状のレーザビームプロファイルを用いてもよい。環状のレーザビームは、中心を輪郭線に合わせることができるが、その輪郭線上に直接投射されるエネルギよりも多くの量のエネルギを、輪郭線に隣接する領域上に投射することができる。このようなビームプロファイルを用いて、輪郭線における過熱によるヒートクラックおよび/または溶融を引き起こすことなく、全体的により多くの量の熱エネルギを透明な被加工物に印加することができる。
【0017】
次に、例として図1を参照すると、本願明細書に記載されている方法による分離を受けているときの透明な被加工物130、例えば、ガラス被加工物またはガラスセラミック被加工物が概略的に図示されている。最初に、透明な被加工物が、その周辺で、二つ以上の部分に分離される意図した分離のラインを描くために、輪郭線110が、透明な被加工物130の表面に形成される。輪郭線110は、透明な被加工物130内の一連の欠陥によって描くことができる。輪郭線110は、図1に実質的に直線状に描かれているが、限定されることなく、曲線、パターン、規則的な幾何学形状、不規則な形状等を含む他の構成が意図されることおよび可能であることを理解すべきである。本願明細書に記述されているように、輪郭線110は、輪郭線110に沿った透明な被加工物130の自発的な分離を引き起こすようにさらに作用される可能性がある欠陥を含む。実施形態によれば、輪郭線110の欠陥は、レーザ加工、機械的加工またはこれらの組合せを含む多くの方法によって形成することができる。例えば、輪郭線110は、レーザスクライビングまたは機械的スコアリングによって形成してもよい。一つの実施形態においては、シリコンカーバイドホイールまたはスクライビングツールまたはダイアモンドチップ型スクライビングツールを、輪郭線110およびその中に含まれる欠陥を形成するのに用いてもよい。別の実施形態では、レーザ加工技術を、透明な被加工物130内の輪郭線110の欠陥を形成するのに用いてもよい。例えば、実施形態においては、2015年12月17日に公開され、および参照によって、その全体が本願明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2015/0360991号明細書に開示されているような「穿孔した」輪郭線を形成するための方法および装置を、透明な被加工物130内に輪郭線110を形成するのに用いてもよい。
【0018】
米国特許出願公開第2015/0360991号明細書に記載されている方法によれば、輪郭線110は、被加工物130の表面に延び、および分離される被加工物の所望の形状を描き、およびクラック伝播の経路を確立し、したがって、形状被加工物の輪郭線110に沿った別個の部分への分離を確立する、本願明細書において「欠陥線」と呼ぶライン状欠陥から成っていてもよい。輪郭線110を形成するために、加工すべき透明な被加工物130には、透明な被加工物130の厚さの少なくとも一部を貫通する高アスペクト比の線焦点に集光される1064nm以下の波長で超短パルス(すなわち、100ピコ秒未満のパルス幅を有する)レーザビームを照射することができる。高エネルギ密度のこの容積内で、輪郭線110に沿った透明な被加工物130の材料は、非線形効果を介して(例えば、二つの光子吸収により)改質され、具体的には、透明な被加工物130内に欠陥を生成する。所望のラインまたは経路上にレーザを走査することにより、輪郭線110を画定する狭小な欠陥線(例えば、数マイクロメートル幅)を形成することができる。この輪郭線110は、後の加熱工程において、透明な被加工物130から分離される外周または形状を画定することができる。
【0019】
さらに図1を参照すると、透明な被加工物130内への輪郭線110の形成に続いて、赤外レーザビーム等の熱源を、輪郭線110に沿って透明な被加工物130を分離するのに用いることができる。実施形態によれば、熱源は、熱応力を生成し、それによって、輪郭線110において、透明な被加工物130を分離するのに用いることができる。実施形態において、赤外レーザは、自発的な分離を起こすのに用いることができ、その後、その分離を機械的に仕上げてもよい。
【0020】
赤外レーザビーム、例えば、二酸化炭素(「COレーザ」)、一酸化炭素レーザ(「COレーザ」)、固体レーザ、レーザダイオード、またはこれらの組合せによって生成されるレーザビームは、輪郭線110において、または、輪郭線の近傍で、透明な被加工物130の温度を急速に上昇させる制御された熱源である。この急速な加熱は、輪郭線110上で透明な被加工物130内に、または、輪郭線に隣接する被加工物内に圧縮応力をためる可能性がある。加熱されたガラス表面の面積は、透明な被加工物130の全体の表面積と比較して相対的に小さいため、その加熱された領域は、比較的急速に冷える。その結果として生じる温度勾配は、輪郭線110に沿って、および透明な被加工物130の厚さを介してクラックを伝播させるのに十分な引張応力を透明な被加工物130内に誘起して、輪郭線110に沿った透明な被加工物130の完全な分離をもたらす。理論に束縛されるものではないが、引張応力は、高い局所温度を有する被加工物の部分におけるガラスの膨張(すなわち、変化した密度)によって引き起こされる可能性があると思われる。
【0021】
さらに図1を参照すると、本願明細書に記載されている実施形態において、(透明な被加工物130上に投射されるビームスポット210を有する)赤外レーザビームは、透明な被加工物130上に向けられた後、処理方向212において、輪郭線110に沿って透明な被加工物130に対して移動させることができる。描かれている「ビームスポット210」は、赤外レーザビームが接触している被加工物130の領域であるため、ビームスポット210は、場合により、同義の「赤外レーザビーム21」と呼んでもよいことを理解すべきである。輪郭線110の分離した部分142は、赤外レーザビームで輪郭線110を加熱し(例えば、ビームスポット210を横断させ)、それによって、輪郭線110に沿って、およびその厚さを貫通してクラックを伝播させて、自発的な分離を起こさせることによって形成される。輪郭線110の分離した部分142は、ビームスポット210が処理方向212に移動する際に、そのビームスポットの後を追う。一つ以上の実施形態によれば、赤外レーザビームは、透明な被加工物130の動き、赤外レーザビームの動き(すなわち、ビームスポット210の動き)、または、透明な被加工物130および赤外レーザビームの両方の動きによって、透明な被加工物130を横切って移動させることができる。透明な被加工物130に対して赤外レーザビームスポット210を移動させることにより、透明な被加工物130を、欠陥を含む輪郭線110に沿って分離することができる。
【0022】
本願明細書に記載されている実施形態によれば、赤外レーザビームスポット210は、輪郭線110に、または、輪郭線の近傍に投射して、輪郭線110に直接伝達される量よりも多くの量のエネルギを、輪郭線110の両側に隣接する、透明な被加工物130の領域上に伝達させることができる。輪郭線110に「隣接する」領域は、輪郭線110の両側の、透明な被加工物130の任意の領域(すなわち、欠陥から成るラインを含まない任意の領域)を含む。輪郭線110の両側での透明な被加工物130の加熱は、熱応力を生成して、輪郭線110に沿った透明な被加工物130の自発的な分離を容易にする。しかし、輪郭線110に沿った自発的な分離を容易にするために透明な被加工物130に与えられるエネルギの総量は、赤外レーザビーム210が最大強度で輪郭線110に直接集束する場合(例えば、ガウスビームプロファイル)と同じである可能性があるが、最大強度で輪郭線110上で直接加熱するのではなく、輪郭線110の両側で透明な被加工物を加熱することは、より大きな領域にわたって熱エネルギの総量を拡張し、それによって、過熱による、輪郭線110に対して横方向のクラックの形成を軽減し、また、輪郭線110に隣接する、または、輪郭線における透明な被加工物130の材料の溶融を少なくし、または緩和する。実際には、最大強度で輪郭線110上を直接加熱するのではなく、最大強度で輪郭線110の両側で透明な被加工物130を加熱することは、好ましくない横方向のクラックの形成および/または溶融を伴うことなく、透明な被加工物130に導入される熱エネルギのより大きな総量を実質的に可能にし、それによって、比較的低いCTEを有する材料から形成された透明な被加工物130のレーザ分離が可能になる。
【0023】
いくつかの実施形態において、自発的な分離を容易にするのに用いられる赤外レーザビーム210は、輪郭線110上に直接伝達される量よりも多くの量のエネルギを、輪郭線110に隣接する領域上に伝達させるために、環状のビームプロファイル、例えば、図1に示す円形の対称的な環状ビームプロファイルを備えていてもよい。図2は、ビーム径に応じた環状ビームのエネルギ分布を示すグラフである。環状ビームプロファイルは、本願明細書で用いられる場合、一般的に、そのビームの中心から離れて最大強度を有し、およびその最大強度に対して、その中心において強度トラフを有する任意のレーザビームプロファイルを指す。トラフは、例えば、図2の実施例のビームプロファイルに示す、ビームの中心におけるエネルギの完全な不足を含んでもよい(すなわち、そのビームの強度は、その中心において0である)。例えば、実施形態において、環状ビームプロファイルを有するレーザビームのビームスポットは、図1および図2に示すように、内径216および外径214を有している。内径216は、内径216と外径214との間の領域よりも強度が概して低い、ビームスポットの中心領域を画定している。
【0024】
本願明細書において、輪郭線110の両側で、透明な被加工物130を加熱することを容易にするための、輪郭線110に対して円形対称である環状ビーム210の利用に関して説明してきたが、そのビームが、最大強度がビームの中心と同心でないプロファイルを有する限り、他のビームの構成が意図されおよび可能であることを理解すべきである。例えば、環状ビームプロファイルは、楕円形状にすることができるであろう。
【0025】
図1に示すように、赤外レーザビーム210は、等しい量の熱エネルギが、輪郭線110の各側方に投射されるように、その中心を輪郭線110に合わせることができる。このような実施形態では、赤外レーザビーム210は、輪郭線110上に直接伝達される量よりも多くの量の熱エネルギを、輪郭線110の両側の隣接する領域上に伝達するであろう。図1の赤外レーザビーム210は、本質的に概略的であり、および図2に示すビームプロファイル等の環状ビームプロファイルの一つの表現であることを理解すべきである。
【0026】
本願明細書に記載されているように、環状プロファイルを有する赤外レーザビーム210は、内径216および外径214を備えていてもよい。実施形態によれば、内径216は、ビームの中心からの距離の二倍(すなわち、半径の2倍)として定義され、その場合、ビームエネルギの86%は、その距離の外側にある。同様に、外径214は、ビームの中心からの距離の二倍(すなわち、半径の2倍)として定義され、その場合、ビームエネルギの86%は、その距離の内側にある。したがって、内径216と外径214との間の領域の外側には、ある程度のビームエネルギが存在する。実施形態によれば、外径214は、約0.5mmから約20mm、例えば、約1mmから約10mm、約2mmから約8mm、または、約3mmから約6mmとすることができる。内径216は、約0.01mmから約10mm、約0.1mmから約10mm、または、約0.7mmから約3mmとすることができる。例えば、内径216は、外径214の約5%から約95%、例えば、外径214の約10%から約50%、約20%から約45%、または、約30%から約40%とすることができる。いくつかの実施形態によれば、赤外レーザビーム210からの最大出力(および透明な被加工物130内の最大温度)は、内径216の約半分にほぼ等しい、輪郭線110からの距離にある可能性がある。
【0027】
一つの実施形態によれば、環状ビームプロファイルは、図3に示す光学アセンブリによって生成することができる。例えば、COレーザ330等から入射するガウスビーム302は、アキシコンレンズ310を介し、その後、第一の平凸レンズ312および第二の平凸レンズ314を介して方向付けることができる。一つ以上の実施形態によれば、ガウスビーム302は、(その1/eの直径に従って)約8mmから約10mmの直径を有し、アキシコンレンズ310は、約1.2°、例えば、約0.5°から約5°、または、約1°から約1.5°、さらには約0.5°から約5°の角度(ビームがアキシコンレンズに入射したときの平坦面に対して測定した角度)を有する円錐面を有していてもよい。アキシコンレンズ310は、入射するガウスビーム302を、同様に第一の平凸レンズ312および第二の平凸レンズ314を介して方向付けられるベッセルビームに整形する。第一の平凸レンズ312と第二の平凸レンズ314は、ベッセルビームをコリメートして、そのベッセルビームの環状スポットの直径を調節する。実施形態において、第一の平凸レンズ312は、約50mmから約200mm(例えば、約50mmから約150mm、または、約75mmから約100mm)の焦点距離を有することができ、また、第二の平凸レンズ314は、第一の平凸レンズの焦点距離よりも小さい、例えば、約25mmから約50mmの焦点距離を有することができる。その結果として生じる環状の赤外レーザビーム316は、輪郭線110に沿って、透明な被加工物130上に投射される。
【0028】
図3は、環状レーザビームを生成するための一つの光学アセンブリを概略的に示しているが、環状レーザビームを生成するための他の光学アセンブリが意図され、および可能であり、したがって、本願明細書に記載されている分離プロセスは、図3に示す光学アセンブリに限定されないことを理解すべきである。
【0029】
輪郭線110から離れて、その最大出力を投射する赤外レーザビームを用いる分離プロセスは、過剰な局所加熱による、分離される面およびエッジへの損傷を引き起こすことなく、より多くの総出力が、透明な被加工物に与えられることを可能にする。追加的な出力は、より多くの熱応力を透明な被加工物内に生じさせる可能性があり、そのことは、被加工物を損傷させることなく、低CTE材料の分離、より厚い被加工物、および/または被加工物の積層を可能にする。
【0030】
また、本願明細書に記載されている実施形態は、透明な被加工物を分離する際のより速い処理速度も可能にする。例えば、赤外レーザビームと、透明な被加工物は、少なくとも約1mm/s、少なくとも約5mm/s、少なくとも約10mm/s、少なくとも約100mm/s、少なくとも約1m/s、少なくとも約2mm/s、少なくとも約5m/s、さらには、少なくとも約10m/s(例えば、約1mm/sから約10m/s、または、約10mm/sから約2m/s)の速度で、互いに対して移動させることができる。一般に、より速い処理速度は、熱応力を実現して、自発的な分離を容易にするために、より多くの量のレーザ出力を要する。上述したように、従来の分離方法において、より大きなレーザ出力は、透明な被加工物に損傷を与える可能性がある。しかし、本願明細書に記載されている実施形態における輪郭線から離れて分布するエネルギ濃度の場合、過熱を避けることができ、そのことは、透明な被加工物内での好ましくない損傷を低減し、またはなくすことができる。
【0031】
実施形態において、本願明細書に記載されている、赤外レーザビーム加工によって透明な被加工物を分離するプロセスは、所定の処理速度に対して用いられる出力に関するより大きなウィンドウを可能にする。例えば、図4Aのデータは、透明な被加工物上に投射されるガウス赤外レーザビームを、200mm/sの速度で用いる従来の分離方法を示し、その場合、ビーム径(すなわち、1/eの直径)は、分離のために十分なビーム出力の関数としてグラフで示されている。図4Bは、200mm/sの速度で透明な被加工物上に投射される、本願明細書に記載されている環状の赤外レーザビームを示し、その場合、外側のビーム径は、適切なビーム出力の関数としてグラフで示されている。図4Aおよび図4Bを見て分かるように、従来のプロセスのガウスビームではなく、環状ビームを用いる、透明な被加工物を分離する(すなわち、図5に示す横方向のクラック等の、透明な被加工物への損傷を引き起こすことなく、自発的な分離を引き起こす)のに適している赤外ビーム出力範囲は、より広い。したがって、所定の処理速度の場合、赤外レーザビームの出力は、環状ビームプロファイルを用いて、より幅広く変化させて、処理時のより大きな柔軟性を可能にすることができる。実施形態によれば、赤外レーザビームは、約20Wから約1000W、例えば、約50Wから約300W、または、約75Wから約200Wの出力と、図4Bに示すような外径に対する出力のサブレンジとを有していてもよい。
【0032】
次に、図1および図3を参照すると、透明な被加工物130を分離するための一つの実施形態は、ガラスの被加工物130の表面に輪郭線110を形成する最初の工程を含む。輪郭線110は、分離に関する意図したラインを画定し、および一般に、例えば、加熱等によってさらに影響された場合に、輪郭線110に沿った、透明な被加工物130の自発的な分離を引き起こす欠陥を含む。輪郭線110の形成の後に続く第二の工程では、赤外レーザからの環状レーザビーム210が、その輪郭線に沿って、ガラス被加工物130の表面に向けられる。実施形態において、環状レーザビーム210は、例えば、COレーザの初期ガウス整形ビームを、図3に示すようなアキシコンレンズ310、第一の平凸レンズ312および第二の平凸レンズ314を介して方向付けて、そのガウス整形ビームの、図1に示すような環状プロファイルと、図2に示すような環状エネルギ分布とを有するビームスポットを有するベッセルビームへの整形を容易にすることによって形成することができる。図1に示す分離プロセスの実施形態では、結果として生じる環状レーザビーム210は、概して円形対称である(すなわち、環帯またはリング)プロファイルを有している。
【0033】
環状レーザビーム210は、輪郭線110が、環状レーザビーム210を概して二等分するように、透明な被加工物130の表面に位置決めされる。すなわち、環状レーザビーム210は、輪郭線110が、環状レーザビーム210の直径に沿って位置するように、透明な被加工物130の表面に位置決めされる。そして、環状レーザビーム210は、環状レーザビーム210を被加工物130に対して移動させ、被加工物130を環状レーザビーム210に対して移動させ、または、環状レーザビーム210と被加工物130を互いに対して移動させることによって、輪郭線110の上を通過する。
【0034】
本願明細書において上述したように、環状レーザビーム210は、輪郭線110に沿って、熱エネルギを透明な被加工物130に与える。本願明細書に記載されている実施形態において、透明な被加工物130に与えられる熱エネルギの最大量は、輪郭線110上には向けられず、横方向にずれ、および輪郭線110から離間されている、透明な被加工物130の領域内に向けられ、そのことが、透明な被加工物130に対する意図しない損傷、例えば、溶融および/または横方向のクラックを軽減する。環状レーザビーム210が輪郭線110を通過する際に環状レーザビーム210は、透明な被加工物130の材料を温めて、その材料の膨張を引き起こす。このことは、加熱された領域内での圧縮応力の発生をもたらすとともに、引張応力が、環状レーザビーム210の前および後の輪郭線110に沿って発生する。これらの応力は、輪郭線110を、より具体的には、輪郭線110の欠陥を、透明な被加工物130の厚さを貫通して、および輪郭線110に沿って自発的に伝播させて、輪郭線110に沿った透明な被加工物130の自発的な分離をもたらす。
【0035】
一つ以上の実施形態によれば、本開示は、透明な被加工物、例えば、アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス組成物、サファイア、溶融シリカ、または、これらの組合せから形成されたガラス被加工物等の正確な切断および/または分離のためのプロセスを提供する。このような透明な被加工物は、ディスプレイ基板および/またはTFT(薄膜トランジスタ)基板として利用することができる。ディスプレイまたはTFT用途に適している、このようなガラスまたはガラス組成物のいくつかの実例は、米国ニューヨーク州コーニングのCorning Incorporatedから入手可能なEAGLE XG(登録商標)、CONTEGOおよびCORNING LOTUS(商標)である。アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス組成物は、限定するものではないが、TFT用基板を含む電子的用途のための基板としての使用に適するように処方することができる。TFTとともに使用されるガラス組成物は、典型的には、シリコンの熱膨張率(CTE)と同様の熱膨張率(例えば、5×10-6/K未満、または、4×10-6/K未満、例えば、約3×10-6/K、または、約2.5×10-6/Kから約3.5×10-6/K)を有し、および低レベルのアルカリをガラス中に有している。アルカリドーパントは、ある条件下では、ガラスから滲出してTFTを汚損し、または汚染して、そのTFTを動作不能にする可能性があるため、低レベルのアルカリ(例えば、0重量%から2重量%の微量、例えば、1重量%未満、例えば、0.5重量%未満)をTFT用途に用いることができる。実施形態によれば、本願明細書に記載されているレーザ切断プロセスは、無視できるデブリ、最小限の欠陥、およびエッジに対する低表面下損傷で制御された方式で透明な被加工物を分離するのに用いることができ、被加工物の完全性および強度を保つことができる。
【0036】
上述したように、いくつかの実施形態によれば、上記輪郭線は、例えば、米国特許公開第2015/0360991号明細書に記載されているように、透明な被加工物とパルスレーザビームとの相互作用によって生じた欠陥線(本願明細書においては、穿孔と呼ぶ場合もある)を備えていてもよい。パルスレーザを利用して、透明な被加工物内に欠陥を形成するこの方法は、選択されたパルスレーザ波長に対して透明である材料に良く適している可能性がある。このパルスレーザ波長は、例えば、1064nm、532nm、355nmまたは266nmとすることができる。欠陥から成る輪郭線を形成する方法の実証は、例えば、0.025mmから0.7mmの範囲の厚さのEAGLE XG組成物を用いて既に行われている。
【0037】
パルスレーザビームは、ガラス被加工物等の実質的に透明な材料中で多光子吸収(multi-photon absorption:MPA)を生じる可能性がある。MPAは、一つの状態(通常、基底状態)から、より高いエネルギ電子状態(すなわち、イオン化)に分子を励起させる同一または異なる周波数の二つ以上の光子の同時吸収である。関連するより低いおよびより高い状態の分子間のエネルギの差異は、関連する光子のエネルギの合計に等しい。誘起吸収とも呼ばれるMPAは、例えば、線吸収よりも数桁弱い、二次または三次(または、より高次)の過程である可能性がある。それは、二次誘起吸収の強度は、例えば、光強度の二乗に比例していてもよく、したがって、それは非線形の光学過程であるという点で線吸収とは異なる。
【0038】
輪郭線を形成する穿孔工程は、焦線を生成して、例えば、さまざまなガラス組成物から形成された透明な被加工物を十分に穿設する光学系とともに、超短パルスレーザを用いてもよい。いくつかの実施形態において、個々のパルスのパルス持続時間は、約1ピコ秒から約100ピコ秒、例えば、約5ピコ秒から約20ピコ秒の範囲であり、また、個々のパルスの繰り返し率は、約1kHzから4MHzの範囲内、例えば、約10kHzから約3MHz、または、約10kHzから約650kHzの範囲内とすることができる。
【0039】
上述した個々のパルスの繰り返し率での単一のパルス動作に加えて、それらのパルスは、二つ以上のパルス(例えば、パルスバースト当たり3つのパルス、4つのパルス、5つのパルス、10のパルス、15のパルス、20のパルス、またはそれ以上、例えば、パルスバースト当たり1~30のパルス、または、パルスバースト当たり5~20のパルス)から成るバーストで生成してもよい。バースト内のパルスは、約1ナノ秒から約50ナノ秒、例えば、約10ナノ秒から約30ナノ秒の範囲内にある、例えば、約20ナノ秒の持続時間によって分けてもよい。バーストの繰り返し率は、約1kHzから約2MHz、例えば、約1kHzから約200kHzの範囲とすることができる。バースト化またはパルスバーストの生成は、パルスの放射が、均一で安定したストリームではなく、パルスの密集クラスタである、ある種のレーザ動作である。パルスバーストレーザビームは、その透明な被加工物の材料が、その波長で実質的に透明であるように影響されるその透明な被加工物の材料に基づいて選択された波長を有していてもよい。材料で測定したバースト当たりの平均レーザ出力は、材料の厚さの1mm当たり少なくとも約40μJである可能性がある。例えば、実施形態において、バースト当たりの平均レーザ出力は、約40μJ/mmから約2500μJ/mm、または、約500μJ/mmから約2250μJ/mmである可能性がある。特定の実施例において、0.5mmから0.7mm厚のCorning社の「EAGLE XG」という透明な被加工物の場合、約300μJから約600μJのパルスバーストが、その被加工物を切断および/または分離することができ、そのことは、約428μJ/mmから約1200μJ/mm(すなわち、0.7mmの「EAGLE XG」ガラスの場合、300μJ/0.7mmおよび0.5mmの「EAGLE XG」ガラスの場合、600μJ/0.5mm)の実施例の範囲に相当する。
【0040】
透明な被加工物は、欠陥を伴う所望の部分の形状をなぞって描き出す輪郭線を形成するように、パルスレーザビームに対して移動させることができる(または、パルスレーザビームをガラスに対して移動させてもよい)。パルスレーザは、ガラスの深さ全体を貫通してもよい、本願明細書では欠陥線と呼ぶ穴状の欠陥ゾーンを形成することができる。本願明細書に開示されている欠陥は、「穴」または「穴状」と記載されている場合があるが、一般に空隙でなくてもよく、本願明細書に記載されているようなレーザ加工によって改質されている被加工物の部分であることを理解すべきである。ディスプレイまたはTFTタイプのガラスにおいて、これらの欠陥線は、一般に、約5マイクロメートルから約20マイクロメートルの距離だけ互いに離間されている可能性がある。例えば、TFT/ディスプレイガラス組成物の場合、欠陥線間の適切な間隔は、約1マイクロメートルから約30マイクロメートル、例えば、約5マイクロメートルから約15マイクロメートル、約5マイクロメートルから約12マイクロメートル、約7マイクロメートルから約15マイクロメートル、または、約7マイクロメートルから約12マイクロメートルとすることができる。
【0041】
本願明細書において定義されているように、欠陥線の内径は、透明な被加工物内に欠陥線を画定する改質された領域の内径である。例えば、本願明細書に記載されているいくつかの実施形態において、欠陥線の内径は、約1マイクロメートル以下、例えば、約500nm以下、約400nm以下、または、約300nm以下とすることができる。実施形態において、欠陥線の内径は、レーザビーム焦線のスポット径と同程度の大きさである可能性がある。実施形態において、パルスレーザビーム焦線は、約0.1マイクロメートルから約30マイクロメートル、例えば、約0.1マイクロメートルから約10マイクロメートル、または、約0.1マイクロメートルから約5マイクロメートル、例えば、約1.5マイクロメートルから約3.5マイクロメートルの範囲の平均スポット径を有することができる。一旦、被加工物が輪郭線に沿って分離されると、欠陥線は、依然として、その分離された表面で目に見える可能性があり、および欠陥線の内径に相当する幅を有している可能性がある。したがって、本願明細書に記載されている実施形態によって作製された被加工物の切断面上の欠陥線の幅は、約0.1マイクロメートルから約5マイクロメートルの幅を有する可能性がある。
【0042】
単一の透明な被加工物の穿孔以外に、上記プロセスは、透明な被加工物の積層物、例えば、ガラスのシートの積層物を穿孔するのにも用いることができ、および単一のレーザ通過で、数mmの全高までガラス積層物を完全に穿孔してもよい。ガラス積層物はさらに、さまざまな位置にエアギャップを有していてもよい。別の実施形態によれば、接着剤等の延性層を、ガラス積層物の間に設けてもよい。しかし、パルスレーザプロセスは、依然として、単一の通過において、そのような積層物の上方および下方のガラス層の両方を完全に穿孔するであろう。
【0043】
理論に束縛されるものではないが、記載されている穿孔プロセスのイネーブラーのうちの一つは、超短パルスレーザによって形成される欠陥線の高アスペクト比であると思われる。この高アスペクト比は、いくつかの実施形態において、切断される被加工物の上面から底面まで延びている輪郭線の形成を可能にする。この欠陥線は、原理的に、単一のパルスによって形成することができ、また、必要であれば、影響を受ける領域のエクステンション(深さおよび幅)を増加させるのに用いてもよい。
【0044】
実施形態において、パルスレーザビーム焦線は、約0.1mmから約10mm、または、約0.5mmから約5mm、例えば、約1mm、約2mm、約3mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mmまたは約9mmの範囲の長さを、または、約0.1mmから約2mm、または、約0.1mmから約1mmの範囲の長さを有していてもよい。実施形態において、パルスレーザビーム焦線は、約0.1マイクロメートルから約5マイクロメートルの範囲の平均スポット径を有していてもよい。欠陥線は、それぞれ、約0.1マイクロメートルから約30マイクロメートル、例えば、約0.25マイクロメートルから約5マイクロメートル(例えば、約0.25マイクロメートルから約0.75マイクロメートル)の直径を有していてもよい。
【0045】
焦線の生成は、ガウスレーザビームをアキシコンレンズに送り込むことによって実行することができ、その場合、ガウス・ベッセルビームとして知られているビームプロファイルが形成される。このようなビームは、ガウスビームよりもかなり遅く回折する(例えば、そのビームは、数十マイクロメートル以下の場合と対照的に、数百マイクロメートルまたはミリメートルの範囲に対して、単一のマイクロメートル径のスポットサイズを維持してもよい)。そのため、焦点深度または材料との強度相互作用の長さは、ガウスビームのみを用いた場合よりもかなり大きくなる可能性がある。また、遅く回折するビームまたは非回折ビームという他の形態、例えば、エアリビームを用いてもよい。
【0046】
図6に示すように、複数の欠陥線120を備える輪郭線110は、処理方向160に移動する超短パルスレーザビーム140によって、透明な被加工物130を加工することによって形成することができる。欠陥線120は、例えば、透明な被加工物130の厚みを貫通して延びていてもよく、また、透明な被加工物130の(平坦な)主面に対して直角になっていてもよい。輪郭線は、図6に示す輪郭線110のように直線状であってもよいが、それらの輪郭線は、非直線状(すなわち、曲線を有する)であってもよい。湾曲した輪郭線は、例えば、透明な被加工物130またはパルスレーザビーム140のいずれかを、一次元の代わりに二次元で他方に対して移動させることによって生成することができる。いくつかの透明な被加工物においては、透明な被加工物を加工するために選択される材料特性(例えば、吸収率、CTE、応力、組成等)およびパルスレーザのパラメータのみで、自己分離を引き起こす可能性があるが、本願明細書に記載されている実施形態では、(例えば、赤外レーザを用いた)熱処理が、輪郭線110の形成の後に続いて、輪郭線110において、透明な被加工物130を分離するのに用いられる。図6に示すように、複数の欠陥線120は、輪郭線110を画定することができる。
【0047】
いくつかの透明な被加工物の場合、輪郭線110の方向に沿った隣接する欠陥線120の間の距離、または周期性は、少なくとも約0.1マイクロメートルまたは1マイクロメートル、および約20マイクロメートルまたは30マイクロメートル以下とすることができる。例えば、いくつかの透明な被加工物において、隣接する欠陥線120の間の周期性は、約0.5マイクロメートルから約15マイクロメートル、または、約3マイクロメートルから約10マイクロメートル、または、約0.5マイクロメートルから約3.0マイクロメートルとすることができる。例えば、いくつかの透明な被加工物において、隣接する欠陥線120の間の周期性は、約0.5マイクロメートルから約1.0マイクロメートルとすることができる。しかし、アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス複合物、特に、それらが0.5mm以上の厚さの場合、隣接する欠陥線120の間の周期性は、少なくとも約1マイクロメートル、例えば、少なくとも約5マイクロメートル、または、約1マイクロメートルから約15マイクロメートルとすることができる。
【0048】
さまざまな実施形態によれば、パルスレーザビームを用いて加工することによって、穿孔された輪郭線を形成するためのいくつかの方法がある。焦線を形成するという光学的方法は、ドーナツ状のレーザビームおよび球状レンズ、アキシコンレンズ、屈折素子、または、高強度の線形領域を形成するためのその他の方法を用いる多くの形態をとることができる。レーザの種類(ピコ秒、フェムト秒等)および波長(赤外、グリーン、UV等)も、非線形の光学効果を介した透明な被加工物への焦点の領域内で被加工物材料の破壊を生じるように、十分な光学強度に達する限り、変動させてもよい。一つ以上の実施形態によれば、レーザは、所定のバースト内のパルスの数を調節することにより、エネルギ分の経時的な制御を可能にするパルスバーストレーザであってもよい。
【0049】
本実施形態においては、超短パルスレーザを、安定した、制御可能で繰り返し可能な方法で高アスペクト比の垂直欠陥線を形成するのに用いることができる。一つ以上の実施形態によれば、透明な被加工物内に、高強度のレーザビームの線焦点を形成するのに、光学的方法が用いられる。一つの実施形態においては、超短(ピコ秒またはフェムト秒の持続時間)ベッセルビームを用いて、高アスペクト比で無テーパの欠陥線から成る領域を形成するために、光学レンズアセンブリ内で、アキシコンレンズ素子が用いられる。換言すると、アキシコンは、レーザビームを、円筒形状および高アスペクト比(長さが長くかつ小径)から成る高強度領域内に集光する。集光されたレーザビームによって生成された高強度により、レーザの電磁界と被加工物材料との非線形相互作用が生じる可能性があり、および、レーザエネルギを被加工物に伝達して、輪郭線の構成要素になる欠陥の形成を行うことができる。しかし、レーザエネルギ強度が高くない材料の領域(例えば、中心収束線を取り囲む被加工物のガラス容積)内で、透明な被加工物の材料は、レーザによって大きな影響を及ぼされず、レーザから材料へエネルギを伝達するメカニズムが存在しないことを実現することが重要である。その結果として、レーザ強度が非線形閾値以下である場合には、焦点ゾーンでは、被加工物に対しては、直接的に何も起こらない。
【0050】
次に、図7を参照すると、穿孔された輪郭線を形成する方法は、パルスレーザビーム2の焦点を、レーザ装置3から、ビーム伝播方向に沿って方向付けられたレーザビーム焦線2bに合わせることを含んでもよい。図7に示すように、レーザ(図示せず)は、光学アセンブリ6に入射する部分2aを有するレーザビーム2を放射する。光学アセンブリ6は、入射レーザビームを、ビーム方向に沿った所定の拡張範囲(長さlの焦線)にわたる出力側で、広範囲のレーザビーム焦線2bに変える。平坦な被加工物1は、パルスレーザビーム2のレーザビーム焦線2bに少なくとも一部が重なるように、ビーム経路内に位置決めされる。その結果、レーザビーム焦線は被加工物1に方向付けられる。参照数字1aは、光学アセンブリ6またはレーザそれぞれに対向している、平坦な被加工物1の表面を示し、参照数字1bは、被加工物1の裏面を示す。被加工物1は、平坦面1aおよび1bに対して、すなわち、被加工物面に対して垂直に測定した深さdを有している。
【0051】
図7に示すように、被加工物1は、長手方向のビーム軸に対して直角に位置合わせされ、すなわち、光学アセンブリ6によって生成された同じ焦線2bの後にある(被加工物1は、図の面に対して直角になっている)。焦線2bは、ビーム方向に沿って向けられ、または、位置合わせされ、被加工物1は、焦線2bが、被加工物1の表面1aの前で始まり、被加工物1の表面1bの前で停止するように、焦線2bに対して位置決めされる(すなわち、焦線2bは、被加工物1内で終端し、表面1bを越えて延びてはいない)。レーザビーム焦線2bと被加工物1の重なり合った領域内(すなわち、焦線2bによってカバーされた被加工物材料内)では、広範なレーザビーム焦線2bは、(長さlのセクション、すなわち、長さlの線焦点上にパルスレーザビーム2を集束させることによって確保される、レーザビーム焦線2bに沿った適切なレーザ強度を仮定すると)(長手方向のビーム方向に沿って位置合わせされた)広範なセクション2cを生成し、このセクションに沿って、被加工物材料内で誘起吸収が生じる。誘起吸収は、セクション2cに沿って、被加工物材料内に欠陥線の形成をもたらす。欠陥線は、多数のレーザパルスから成る単一の高エネルギバーストを用いることによって生成することができる、被加工部内の(例えば、約100nmから約0.5マイクロメートルの内径を有する)微細な細長い欠陥である。これらの一連の欠陥線は、輪郭線に沿って、透明な被加工物内に穿孔パターンを形成する。例えば、個々の欠陥線は、数百キロヘルツの速さで(すなわち、毎秒、数十万の欠陥線)形成することができる。これらの欠陥線は、焦線2bと透明な被加工物1との間の相対運動によって、互いに隣接して配置することができる(要望通りにサブマイクロメートルから数十、数百マイクロメートルまで変動する空間的分離)。この空間的分離(ピッチ)は、赤外レーザ等の熱源を用いて、被加工物の分離を容易にするように選択することができる。いくつかの実施形態において、欠陥線は、上面1aから底面1bまで延びている欠陥である「貫通欠陥」である。欠陥線の形成は、局所的だけではなく、誘起吸収の広範なセクション2cの全長に及んでいる。(レーザビーム焦線2bと被加工物1との重なり合いの長さに相当する)セクション2cの長さは、参照数字Lで表記されている。誘起吸収のセクション2cにおける欠陥領域の内径(すなわち、欠陥)は、参照記号Dで表記されている。この内径Dは、基本的には、レーザビーム焦線2bの平均直径δ、すなわち、約0.1マイクロメートルから約5マイクロメートルの範囲の平均スポット径に相当する。
【0052】
焦線2bを生成するのに適用できる代表的な光学アセンブリ6ならびにそれらの光学アセンブリを適用できる代表的な光学的配置について以下で説明する。すべてのアセンブリまたは配置は、同一の構成要素または形状構成、または、それらの機能が等しいものに対して、同一の参照記号が用いられるように、上記の説明に基づいている。そのため、以下では、違いのみを説明する。
【0053】
図8Aによれば、光学アセンブリ6に入射する、レーザ装置3によって放射されたレーザビームの部分2aは、まず、使用するレーザ光線の波長を通さない円形開口8に向けられる。開口8は、長手方向のビーム軸に対して直角に向けられ、およびその中心は、図示されているビーム部分2aの中心部分に合わせられている。開口8の直径は、ビーム部分2aの中心(すなわち、中心ビーム部分、ここでは、符号2aZで表記されている)近傍のレーザ光線が開口に当たって、それによって完全に吸収されるように選択される。ビーム部分2aの外周範囲のビーム(すなわち、周辺光線、ここでは、符号2aRで表記されている)のみが、ビーム径と比較して低減された開口サイズにより、円形開口8によって吸収されず、開口8を横方向に通過して、光学アセンブリ6の集束レンズ7の周縁領域に当たり、その集束レンズは、この実施形態では、球状にカットされた両凸レンズとして示されている。
【0054】
図8Aに示すように、レーザビーム焦線2bは、レーザビームの単一の焦点のみならず、そのレーザビーム中の異なる光線の一連の焦点であってもよい。一連の焦点は、レーザビーム焦線2bの長さlとして図8Aに示す所定の長さの細長い焦線を構成している。レンズ7は、その中心を中心ビームと合わせることができ、および通常の球状カットレンズの形態の非補正の両凸集束レンズとして示すことができる。代替例として、理想的な焦点を形成しないが、所定の長さから成る別個の細長い焦線を形成する、理想的に補正されたシステムから逸脱する非球面またはマルチレンズシステム(すなわち、単一の焦点を有していないレンズまたはシステム)を用いてもよい。したがって、レンズのゾーンは、レンズ中心からの距離を条件として、焦線2bに沿って集束する。ビーム方向を横切る開口8の直径は、(ビームの強度が、ピーク強度の1/eまで低下するのに必要な距離によって決まる)ビーム部分2aの直径の約90%および光学アセンブリ6のレンズ7の直径の約75%とすることができる。したがって、中心のビーム束を遮断することによって生成される、非収差補正球面レンズの焦線2bが用いられる。図8Aは、中心ビームを通る一つの平面内の断面を示し、図示されているビームが、焦線2bの周りで回転された場合、完全な三次元の光束が図を見て分かる。
【0055】
図8B‐1から図8B‐4は、(図8Aにおける光学アセンブリの場合だけではなく、他の何らかの適用可能な光学アセンブリ6の場合も)レーザビーム焦線2bの位置は、被加工物1に対して、光学アセンブリ6を適切に位置決めしおよび/または光学アセンブリを位置合わせすることにより、および光学アセンブリ6のパラメータを適切に選択することによって制御できることを示している。図8B‐1が示すように、焦線2bの長さlは、被加工物の深さdを(ここでは、2倍)越えるように調節することができる。被加工物1を(長手方向のビーム方向で見て)焦線2bに対して中心に配置した場合、誘起吸収2cの広範なセクションを、被加工物の厚み全体にわたって生成することができる。レーザビーム焦線2bは、約0.01mmから約100mmの範囲、または、約0.1mmから約10mmの範囲の長さlを有していてもよい。約0.1mm、約0.2mm、約0.3mm、約0.4mm、約0.5mm、約0.7mm、約1mm、約2mm、約3mm、約4mm、または、約5mm、例えば、約0.5mmから約5mmの長さlを有する焦線2bを有するように、さまざまな実施形態を構成することができる。
【0056】
図8B‐2に示すケースでは、概して被加工物の深さdに相当する、長さlの焦線2bが生成されている。被加工物1は、焦線2bが、被加工物1の外側の箇所で始まるように、焦線2bに対して位置決めされるため、誘起吸収2cの広範なセクションの長さl(被加工物の表面から所定の被加工物の深さまで延びているが、裏面1bまでは延びていない)は、焦線2bの長さlよりも小さい。図8B‐3は、被加工物1が(ビーム方向に直角な方向に沿って見て)、図8B‐2の場合と同様に、焦線2bの長さlが被加工物1内の誘起吸収2cのセクションの長さlよりも大きくなるように、焦線2bの開始点の上に位置決めされるケースを示している。したがって、その焦線は、その被加工物内で始まり、裏面1bを越えて延びている。図8B‐4は、焦線の長さlが、入射の方向で見た焦線に対する被加工物の中心位置決めのケースにおいて、焦線2bが、被加工物1内の表面1aの近傍で始まり、被加工物内の面1bの近傍で終わるように、被加工物の深さdよりも小さくなっているケースを示している(例えば、l=0.75・d)。
【0057】
誘起吸収のセクション2cが、少なくとも被加工物の一方の面上で始まるように、面1a、1bの少なくとも一方が焦線によって覆われる(例えば、図8B‐2または図8B‐3の設定)ように、焦線2bを位置決めすることが特に有利である可能性がある。このようにして、表面におけるアブレーション、フェザリングおよび微粒子化を避けながら、事実上、理想的な切断を実現することが可能である。
【0058】
図9は、光学アセンブリ6の別の実施形態を示す。基本的な構造は、図8Aに記載されているものに追随するため、違いのみを以下で説明する。図9に図示されている光学アセンブリは、所定の長さlの焦線が形成されるように造形されている、焦線2bを生成するための非球面状自由面を有する光学系を用いる。この目的のために、非球面を、光学アセンブリ6の光学素子として用いてもよい。図9では、例えば、アキシコンとも呼ばれるいわゆる円錐状プリズムが用いられる。アキシコンは、光軸に沿ったライン上にスポット源を形成する(または、レーザビームをリングに変換する)円錐状にカットされたレンズである。この実施例におけるアキシコンの円錐角は、約10°である。しかし、他の範囲のアキシコンの円錐角も用いてもよいことを理解すべきである。アキシコン9の頂点は、入射方向に向かって方向付けられ、およびその中心がビームの中心と合わされている。アキシコン9によって生じる焦線2bは、そのアキシコンの内部で始まるため、被加工物1(ここでは、主ビーム軸に直角に位置合わせされている)は、アキシコン9の直後のビーム経路内に位置決めすることができる。図9が示すように、焦線2bの範囲内に留まりながら、アキシコンの光学特性により、被加工物1をビーム方向に沿ってシフトさせることも可能である。そのため、被加工物1の材料内の誘起吸収のセクション2cは、被加工物の深さdの全体にわたって延びている。しかし、図示されている配置は、次の制限を受ける可能性があり、すなわち、アキシコン9と被加工物との間に間隔が存在する状況では、アキシコン9によって形成された焦線2bの領域はアキシコン9内で始まるため、レーザエネルギのかなりの部分は、材料内に位置している、焦線2bの誘起吸収のセクション2c内に集束されない。さらに、焦線2bの長さlは、屈折率およびアキシコン9の円錐角によってビーム径に関連している。このことが、比較的薄い(例えば、数ミリメートル)材料の場合、焦線全体は、被加工物の厚さよりもかなり長く、レーザエネルギの大半が、材料の厚さ内に収束しないという効果を有する理由である。
【0059】
このため、アキシコンおよび集束レンズの両方を含む光学アセンブリ6を用いることが望ましい可能性がある。図10Aは、広範なレーザビーム焦線2bを形成するように設計された、非球面自由面を有する第一の光学素子が、レーザ装置3からのビーム経路内に配置されるこのような光学アセンブリ6を示す。図10Aに示すケースでは、この第一の光学素子は、ビーム方向に対して直角に位置決めされ、およびその中心が、レーザ装置3からのビームに合わされた、5°の円錐角を有するアキシコン10である。アキシコン10の頂点は、そのビーム方向に向けられている。第二の集束光学素子、ここでは平凸レンズ11(その湾曲は、そのアキシコンに向けられている)は、アキシコン10からの距離z1において、ビーム方向に配置されている。距離z1は、約300mmとすることができ、およびアキシコン10によって形成されるレーザ光線が、レンズ11の外側径方向部分に円形に入射するように選択される。レンズ11は、その円形放射を、所定の長さ、この場合、1.5mmの焦線2b上で、距離Z2、この場合、レンズ11から約20mmにおいて出力側に集束させる。レンズ11の有効焦点距離は、この実施形態では、25mmである。アキシコン10によるレーザビームの円形変換は、参照記号SRで表記されている。
【0060】
図10Bは、図10Aの光学アセンブリ6による、被加工物1の材料内での焦線2bまたは誘起吸収2cの形成を示す。両素子10、11の光学特性ならびにそれらの位置決めは、ビーム方向における焦線2bの長さlが、被加工物1の深さdと同じになるように選択される。いくつかの実施形態においては、図10Bに示すように、被加工物1の二つの面1aおよび1b間に焦線2bを正確に位置決めするために、ビーム方向に沿った被加工物1の正確な位置決めが必要である。
【0061】
別の実施形態では、図10Aに示す平凸レンズの代わりに、集束メニスカスレンズまたは別の高次補正集束レンズ(例えば、非球面、マルチレンズ系)を用いることも可能である。
【0062】
図10Aに示すアキシコンとレンズの組合せを用いて、比較的短い焦線2bを生成するためには、そのアキシコンに入射する、非常に小さなビーム径のレーザビームを選択することが必要である。このことには、ビームの中心をアキシコンの頂点に合わせることは、非常に精密でなければならず、およびその結果として、ビームドリフト安定性等のレーザの方向変動に対して非常に敏感であるという実用上の欠点がある。さらに、緊密にコリメートされたレーザビームは、高度に発散性である可能性があり、すなわち、そのビーム束は、光の偏向により、短い距離にわたって不鮮明になる可能性がある。
【0063】
図11に示すように、どちらの影響も、光学アセンブリ6内に、別のレンズ、コリメーティングレンズ12を含むことによって避けることができる。追加的なコリメーティングレンズ12は、集束レンズ11の円形照射を緊密に調節するように作用する。コリメーティングレンズ12の焦点距離f´は、所望の円形の直径drが、f´に等しい、アキシコンからコリメーティングレンズ12までの距離z1aから生じるように選択される。リングの所望の幅drは、コリメーティングレンズ12と集束レンズ11との間の距離z1bによって調節することができる。純粋な幾何学の問題として、円形照射の小さな幅は、短い焦線をもたらす。距離f´において、極小値を実現できる。
【0064】
したがって、図11に示す光学アセンブリ6は、図10Aに示すものに基づいているため、以下においては、違いのみを説明する。ここでもまた、ビーム方向を向いている湾曲を有する平凸レンズとして設計されたコリメーティングレンズ12は、一方の側のアキシコン10(その頂点は、ビーム方向に向いている)と、他方の側の平凸レンズ11との間のビーム経路の中央に配置される。アキシコン10からコリメーティングレンズ12の間の距離は、z1aと呼び、コリメーティングレンズ12から集束レンズ11の間の距離は、z1bと呼ぶものとし、集束レンズ11から焦線2bの距離は、z2である。図11に示すように、コリメーティングレンズ12に発散的に入射し、およびコリメーティングレンズの円形の直径drの下にある、アキシコン10によって形成される円形照射SRは、集束レンズ11において、ほぼ一定の円形の直径drに対して、距離z1bに沿って所望の円形の幅brに調節される。図示されているケースでは、非常に短い焦線2bは、レンズ12における約4mmの円形の幅brが、レンズ12の集束特性により、レンズ11において約0.5mmまで縮小されるように生成されることが意図されている(実施例では、円形の直径drは、22mmである)。
【0065】
図示されている実施例においては、2mmという典型的なレーザビーム径、焦点距離f=25mmの集束レンズ11、焦点距離f´=150mmのコリメーティングレンズを用いて、および距離Z1a=Z1b=140mmおよびZ2=15mmを選定して、0.5mm未満の焦線の長さlを実現することが可能である。
【0066】
図12Aから図12Cは、異なるレーザ強度領域におけるレーザ物質相互作用を示す。図12Aに示す第一のケースでは、未集束のパルスレーザビーム710は、被加工物720に何らかの改質を生じさせることなく、透明な被加工物720を通過する。この特定のケースでは、レーザエネルギ密度(または、ビームによって照射される単位面積当たりのレーザエネルギ)が、非線形効果を誘起するのに必要な閾値以下であるため、非線形効果は存在しない。エネルギ密度が高ければ高いほど、電磁界の強度が高くなる。そのため、図12Bに示すように、レーザビームが、球面レンズ730によって、より小さなスポットサイズに集束された場合、照射される面積が低減され、およびエネルギ密度が増加して、透明な材料を改質して当該条件が満たされる容積内でのみの欠陥ラインの形成を可能にする非線形効果を開始する。このようにして、集束したレーザのビームウェストが、被加工物の表面に位置決めされた場合、その表面の改質が起きることになる。対照的に、集束したレーザのビームウェストが、被加工物の表面の下に位置決めされた場合、エネルギ密度が、非線形光学効果の閾値以下である場合には、その表面では何も起こらない。しかし、焦点740が、被加工物720の容積内に位置決めされた場合、レーザ強度は、多光子非線形効果を開始させるのに十分に高くなり、その材料への損傷を誘起する。別の実施形態では、図12Cに示すように、アキシコンのケースでは、アキシコンレンズ750、または別法として、フレネルアキシコンの屈折パターンは、ベッセル状強度分布を生じ(すなわち、高強度シリンダ760)、およびその容積内にのみ、非線形吸収および材料720の改質をもたらすのに十分な強度がある干渉を発生させる。ベッセル状強度分布が、材料に対して非線形吸収および改質をもたらすのに十分であるシリンダ760の直径は、レーザビーム焦線のスポット径でもある。ベッセルビームのスポット径Dは、D=(2.4048λ)/(2πB)で表すことができ、ただし、λは、レーザビーム波長であり、また、Bは、アキシコン角度の関数である。
【0067】
いくつかの例示的な実施形態においては、アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス複合物を切断するという目的のために、多数のパルスから成るバーストを生成するピコ秒パルスレーザ(例えば、1064nmまたは532nmのピコ秒パルスレーザ)は、線焦点ビーム形成光学系とともに、そのガラス複合物内の欠陥線に用いることができる。しかし、他のパルスレーザを、本願明細書に記載されている穿孔プロセスで用いてもよいことに留意する。
【0068】
例えば、厚さが最大で0.7mmのディスプレイ/TFTガラス複合物は、それが光学系によって生成された焦線の領域内にあるように位置決めすることができる。長さが約1mmの焦線の場合、透明な被加工物において測定した、200kHz(約120μJ/バースト以上)のバースト繰り返し率で、約24W以上の出力を生成する1064nmのピコ秒レーザの場合、焦線領域内の光強度は、ガラス複合物内に非線形吸収をもたらすのに十分である可能性がある。パルスレーザビームは、被加工物の厚さに関して40μJ/mm超の、その材料で測定した平均レーザバーストエネルギを有していてもよい。いくつかのガラスの場合、エネルギ密度は、穿孔ラインまたは切断エッジに直交する微小亀裂生成の広がりを最小限にしながら、被加工物中の欠陥線の完全なダメージトラックを形成するのに十分であるため、用いる平均レーザバーストエネルギは、その材料の厚さに関して2500μJ/mm程度の大きさ、例えば、約40μJ/mmから約2500μJ/mm、約400μJ/mmから約1300μJ/mm、または、約550μJ/mmから約1000μJ/mmとすることができる。この1mm当たりの「平均パルスバーストレーザエネルギ」は、バースト当たりの平均線形エネルギ密度、または、材料の厚さの1mm当たりの、レーザパルスバースト当たりの平均エネルギと呼ぶこともできる。レーザビーム焦線によってもたらされた高い光強度の線形領域にほぼ追従する、ガラス複合物内の損傷した、除去された、蒸発した、または別様に改質された材料の領域を形成することができる。
【0069】
次に、図13Aおよび図13Bを参照すると、本願明細書に記載されているこのようなピコ秒レーザの典型的な作用が、パルス500Aから成るバースト500を生成することを理解すべきである。各バースト500は、非常に短い持続時間の多数の個々のパルス500A(例えば、少なくとも二つのパルス、少なくとも5つのパルス、少なくとも七つのパルス、少なくとも八つのパルス、少なくとも九つのパルス、少なくとも十個のパルス、少なくとも15個のパルス、少なくとも20個のパルス、またはそれ以上のパルス)を含んでいる。すなわち、一つのバーストは、複数のパルスから成る群であり、バーストは、各バースト内の個々の隣接するパルスの分離よりも長い持続時間によって、互いに分離されている。一つ以上の実施形態によれば、ディスプレイガラス/TFTガラス複合物を切断または穿孔するために、バースト当たりのパルスの数は、約1から30(例えば、5から20)とすることができる。パルス500Aは、最高で100ピコ秒(例えば、0.1ピコ秒、5ピコ秒、10ピコ秒、15ピコ秒、18ピコ秒、20ピコ秒、22ピコ秒、25ピコ秒、30ピコ秒、50ピコ秒、75ピコ秒、または、これらの間の任意の範囲)のパルス持続時間Tを有している。バースト内の各個々のパルス500Aのエネルギまたは強度は、バースト内の他のパルスのエネルギまたは強度と等しくなくてもよく、また、バースト500内の多数のパルスの強度分布は、多くの場合、レーザ構造によって制御される経時的な指数関数的減衰に追従する。いくつかの実施形態において、本願明細書に記載されている例示的な実施形態のバースト500内の各パルス500Aは、約1ナノ秒から約50ナノ秒(例えば、約10ナノ秒から約50ナノ秒、または、約10ナノ秒から約30ナノ秒、その時間は、多くの場合、レーザキャビティ構造によって制御される)の期間Tによって、バースト内の後続のパルスから経時的に分離されている。所定のレーザに対して、バースト500内の隣接するパルス間の時間間隔Tは、比較的均一(例えば、互いの約10%以内)にすることができる。例えば、いくつかの実施形態において、一つのバースト内の各パルスは、約20ナノ秒(50MHz)だけ、後続のパルスから経時的に分離されている。例えば、約20ナノ秒のパルス間隔Tを生じるレーザの場合、一つのバースト内のパルス間の間隔Tは、約±10%、または、約±2ナノ秒以内に維持される。パルスの各バースト間の時間(バースト間の時間間隔T)は、かなり長くなる。例えば、複数のパルスから成る各バースト間の時間は、約0.25マイクロ秒から約1000マイクロ秒、例えば、約1マイクロ秒から約10マイクロ秒、または、約3マイクロ秒から約8マイクロ秒とすることができる。本願明細書に記載されているレーザの例示的な実施形態のうちのいくつかでは、時間間隔Tは、約200kHzのバースト繰り返し率を有するレーザの場合、約5マイクロ秒である。レーザバースト繰り返し率は、バースト内の最初のパルスと、後続のバースト内の最初のパルスとの間の時間Tに関連している(レーザバースト繰り返し率=1/T)。いくつかの実施形態では、レーザバースト繰り返し率は、約1kHzから約4MHzの範囲内とすることができる。いくつかの実施形態では、レーザバースト繰り返し率は、例えば、約10kHzから650kHzの範囲内とすることができる。各バースト内の最初のパルスと、後続のバースト内の最初のパルスとの間の時間Tは、約0.25マイクロ秒(4MHzのバースト繰り返し率)から約1000マイクロ秒(1kHzのバースト繰り返し率)、例えば、約0.5マイクロ秒(2MHzのバースト繰り返し率)から約40マイクロ秒(25kHzのバースト繰り返し率)、または、約2マイクロ秒(500kHzのバースト繰り返し率)から約20マイクロ秒(50kHzのバースト繰り返し率)とすることができる。正確なタイミング、パルス持続時間およびバースト繰り返し率は、レーザ構造に依存して変化する可能性があるが、特に良好に作用するように、高強度の短いパルス(T<20ピコ秒、好ましくは、T≦15ピコ秒)が図示されている。
【0070】
材料を改質するのに必要なエネルギは、バーストエネルギ(各バースト500が、一連のパルス500Aを含んでいる一つのバースト内に含まれるエネルギ)に関して、または、単一のレーザパルス(その多くは、一つのバーストから成っていてもよい)内に含まれるエネルギに関して説明することができる。バースト当たりのエネルギは、約25μJから約750μJ、例えば、約50μJから約500μJ、または、約50μJから約250μJとすることができる。いくつかのガラス複合物の場合、バースト当たりのエネルギは、約100μJから約250μJとすることができる。しかし、ディスプレイまたはTFTガラス複合物に対しては、バースト当たりのエネルギは、より高く(例えば、被加工物の具体的なディスプレイ/TFTガラス複合物により、約300μJから約500μJ、または、約400μJから約600μJ)してもよい。バースト内の個々のパルスのエネルギは、より少なくなり、および正確な個々のレーザパルスエネルギは、図13Aおよび図13Bに示すように、バースト500内のパルス500Aの数と、レーザパルスの減衰率(例えば、指数関数的減衰率)とに経時的に依存する。例えば、一定のエネルギ/バーストの場合、一つのパルスバーストが、10の個々のレーザパルス500Aを含む場合には、各個々のレーザパルス500Aは、同じバースト500が、2つの個々のレーザパルスだけを有している場合よりも少ないエネルギを含むことになる。
【0071】
このようなバーストを生成することが可能なパルスレーザビームの利用は、透明な材料、例えばガラスの切断または改質に対して有利である。単一パルスレーザの繰り返し率によって時間が離間した単一のパルスの利用とは対照的に、バースト500内のパルスの高速シーケンスに関してレーザエネルギを拡散するバーストシーケンスの利用は、単一のパルスレーザによって可能な、材料との高強度の相互作用の時間尺度よりも大きい時間尺度にアクセスすることを可能にする。単一のパルスは、経時的に拡張することができるが、そのパルス内の強度は、パルス幅にわたって大まかに低下される。そのため、10ピコ秒の単一のパルスが、10ナノ秒のパルスに拡張された場合、強度は、大体、三桁低減される。このような低減は、非線形吸収がもはや重要ではなく、かつ切断にとって、光-材料の相互作用がもはや十分ではないポイントまで光強度を低減する可能性がある。対照的に、パルスバーストレーザの場合は、バースト500内の各パルス500Aの間の強度は、比較的高いままである可能性があり(例えば、約10ナノ秒だけ、経時的に離間した一つの10ピコ秒パルス500Aは、依然として、各パルスバースト内のエネルギを、単一の10ピコ秒パルスのエネルギよりも約三倍高くできるようにする)、およびレーザは、三桁大きい時間尺度にわたって材料と相互に作用する。例えば、約10ナノ秒だけ経時的に離間した10ピコ秒のパルス500Aは、多くの場合、各パルスバースト内のエネルギを、単一の10ピコ秒のパルスのエネルギよりも約十倍高くし、およびレーザは、数桁大きい時間尺度にわたって材料と相互に作用する。一つの実施形態において、材料を改質するためのバーストエネルギの所要量は、被加工物材料組成と、その被加工物と相互に作用するのに用いられる線焦点の長さとに依存する。相互作用領域が長ければ長いほど、エネルギは、より多く拡散し、より高いバーストエネルギが必要となる。正確なタイミング、パルス持続時間およびバースト繰り返し率は、レーザ構造に依存して変化することができるが、いくつかの実施形態では、高強度のパルスの短いパルス時間(例えば、約15ピコ秒未満、または、約10ピコ秒以下)が例示的であってもよい。複数のパルスから成る単一のバーストが、透明な被加工物上の本質的に同じ位置に当たった場合、欠陥が材料中に形成される。すなわち、単一のバースト内の多数のレーザパルスは、透明な被加工物内の単一の欠陥線に相当する。被加工物は、(例えば、常に動いているステージ、または、被加工物に対して移動されるビームによって)移動されるため、バースト内の個々のパルスは、ガラス上の正確に同じ空間的位置にすることができない。しかし、個々のパルスは、互いに1μm以内にすることができる(すなわち、それらのパルスは、本質的に同じ位置において、ガラスに有効に当たる)。例えば、それらのパルスは、互いに間隔spでガラスに当たることができ、ただし、0<sp≦500nmである。例えば、20のパルスから成るバーストがガラス位置に当たった場合、そのバースト内の個々のパルスは、互いに250nm以内でガラスに当たる。したがって、いくつかの実施形態においては、1nm<sp<250nmである。いくつかの実施形態では、1nm<sp<100nmである。
【0072】
一つ以上の実施形態においては、被加工物を切断または分離する目的のために、パルスバーストエネルギは、バースト当たり約100μJから約600μJ、例えば、バースト当たり約300μJから約600μJとすることができる。この範囲外で作用すると、他のガラスの好結果の分離をもたらすが、ディスプレイ(またはTFT)ガラス複合物の好結果の分離はもたらさない可能性がある。いくつかのディスプレイガラスタイプの場合、パルスバーストエネルギは、約300μJから約500μJとすることができ、または、他のディスプレイタイプのガラスの場合は、約400μJから約600μJとすることができる。400μJから500μJのパルスバーストエネルギは、多くのディスプレイタイプのガラス複合物に対してうまく作用する可能性がある。線焦点内のエネルギ密度は、特定のディスプレイまたはTFTガラスのために最適化することができる。例えば、EAGLE XGガラスおよびCONTEGOガラスの場合はともに、パルスバーストエネルギのための適切な範囲は、約300から約500μJとすることができ、また、線焦点は、約1.0mmから約1.4mmとすることができる(この場合、線焦点の長さは、光学的構成によって決まる)。
【0073】
一つの実施形態において、比較的低いパルスレーザエネルギ密度(例えば、300μJ以下)は、要望通りに形成しない穿孔を形成して、赤外レーザ加工中に、欠陥間の破砕を容易に実現させず、ディスプレイガラス内での(本願明細書では、破断強さとも呼ぶ)破断抵抗の増加につながる可能性がある。パルスレーザビームのエネルギ密度が高すぎる場合(例えば、600μJ以上、または、500μJ超)、熱損傷がより大きくなって、穿孔を接続しているクラックをとどまらせて、所望の経路に沿って形成させず、およびディスプレイ(またはTFT)ガラスの破断抵抗(破断強さ)を劇的に増加させる可能性がある。
【0074】
上記の説明を考慮して、赤外レーザビームによるレーザ分離の能力は、輪郭線上に直接投射されるのではなく、欠陥を含む輪郭線に隣接する領域にわたって最大強度を投射する赤外レーザビームを用いることによってさらに高めることができることを理解すべきである。一つの実施形態においては、輪郭線に隣接して、この赤外レーザの最大出力投射を実現するのに、環状のビームプロファイルを用いることができる。
【0075】
本願明細書においては、範囲は、「約」一つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと表されている可能性がある。このような範囲が表されている場合、別の実施形態は、一方の特定の値からを含み、および/または他方の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を用いることによって、値が近似で表されている場合、その特定の値が別の実施形態を構成することは理解されるであろう。さらに、範囲のそれぞれの端点値は、他方の端点値と関連して、かつ他方の端点値と無関係に有意であることは理解されるであろう。
【0076】
本願明細書で使われている方向を示す用語、例えば、上方、下方、右、左、前方、後方、上部、底部は、描かれている図面に関連してのみ成立し、絶対的な方向性を意味するような意図はない。
【0077】
明示的に別様に記載されていない限り、本願明細書に記載されているどの方法も、その工程が特定の順番で実行されることも、どの装置の場合も特定の方向性が必要であることも要求されるように解釈される意図は全くない。したがって、方法クレームは、その工程が従うべき順番を実質的に列挙することはなく、または、いずれの装置クレームも、個々の構成要素に関する順番または方向性を実質的には列挙せず、または、クレームまたは説明においては、工程が、特定の順番に限定されること、または、装置の構成要素に関する特定の順番または方向性が列挙されないことは、具体的には記載されていない場合、どのような点においても、順番または方向性が推測される意図は全くない。このことは、工程の構成、動作の流れ、構成要素の順番、または、構成要素の方向性に関する論理事項と、文法構成または句読点から生じる単純な解釈と、明細書に記載されている実施形態の数または種類とを含む、どのような可能性のある解釈のための不明確な基準に対しても当て嵌まる。
【0078】
「一つの(a、an)」および「その(the)」という単数形は、本願明細書において用いられる場合、その文脈が明確に別様に指示していない限り、複数の指示対象を含むものとする。したがって、例えば、「一つの」構成要素に関する言及は、その文脈が明確に別様に指示していない限り、二つ以上のそのような構成要素を有する態様を含むものとする。
【0079】
クレームされた内容の趣旨および範囲から逸脱することなく、本願明細書に記載されている実施形態に対して、さまざまな変更や変形を実行できることは当業者には明らかであろう。したがって、そのような変更や変形が、添付クレームおよびそれらの等価物の範囲内にあれば、本明細書が、本願明細書に記載されているさまざまな実施形態の変更や変形をカバーしていることが意図されている。
【0080】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0081】
実施形態1
被加工物をレーザ加工する方法であって、
前記被加工物内に輪郭線を形成する工程であって、該輪郭線が該被加工物内に欠陥を含む工程と、
前記輪郭線に沿って、または該輪郭線の近傍で前記被加工物に赤外レーザビームを向けて、該輪郭線に沿って該被加工物を分離する工程であって、該赤外レーザビームは、該赤外レーザビームからの累積エネルギの、該輪郭線上への直接的な分布よりも大きな分布が、該輪郭線に隣接する領域内に配置されるような環状ビームプロファイルを有する工程と、
を含む方法。
【0082】
実施形態2
前記環状ビームプロファイルの外径が、約0.5mmから約20mmである、実施形態1記載の方法。
【0083】
実施形態3
前記環状ビームプロファイルの内径が、前記外側のビーム径の約5%から約95%である、実施形態2に記載の方法。
【0084】
実施形態4
前記赤外レーザビームからの累積エネルギの、前記輪郭線上への直接的な分布よりも大きな分布が、前記輪郭線の両側の該輪郭線に隣接する領域内に配置される、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
【0085】
実施形態5
前記赤外レーザビームの中心は、前記輪郭線に合わせられる、実施形態1から4のいずれかに記載の方法。
【0086】
実施形態6
前記赤外レーザビームは、二酸化炭素レーザ、一酸化炭素レーザ、固体レーザ、レーザダイオードまたはこれらの組合せによって生成される、実施形態1から5のいずれかに記載の方法。
【0087】
実施形態7
前記被加工物は、アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス、サファイア、溶融シリカ、または、これらの組合せから成る、実施形態1から6のいずれかに記載の方法。
【0088】
実施形態8
前記赤外レーザビームと前記被加工物は、約1mm/秒から約10m/秒の速度で、互いに対して移動される、実施形態1から7のいずれかに記載の方法。
【0089】
実施形態9
前記赤外レーザビームは、約20Wから約1000Wの出力を有する、実施形態1から8のいずれかに記載の方法。
【0090】
実施形態10
前記被加工物は、約5×10-6/K以下のCTEを有する、実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
【0091】
実施形態11
被加工物は、約50マイクロメートルから約10mmの厚さを有する、実施形態1から10のいずれかに記載の方法。
【0092】
実施形態12
前記輪郭線を形成する工程は、
パルスレーザビームの焦点を、ビーム伝播方向に沿って向けられ、および前記被加工物内に方向付けられたパルスレーザビーム焦線に合わせる工程であって、該パルスレーザビーム焦線が、該被加工物内に誘起吸収を生成し、該誘起吸収が、該被加工物内の該パルスレーザビーム焦線に沿って欠陥線を生成する工程と、
前記被加工物と前記パルスレーザビーム焦線を、前記輪郭線に沿って互いに対して移動させて、それにより、該被加工物内の該輪郭線に沿って、複数の欠陥線をレーザ形成することであって、隣接する欠陥線の間の間隔が、1マイクロメートルから30マイクロメートルである工程とを含み、
前記パルスレーザは、パルスバースト当たり約1パルスから、パルスバースト当たり約30パルスを有するパルスバーストを生成し、そのパルスバーストエネルギは、パルスバースト当たり約100μJから約600μJである、実施形態1から11のいずれかに記載の方法。
【0093】
実施形態13
前記パルスレーザビームは、パルスバースト当たり約9パルスから、パルスバースト当たり約20パルスを有するパルスバーストを生成し、そのパルスバーストエネルギは、パルスバースト当たり約300μJから、パルスバースト当たり約500μJである、実施形態12に記載の方法。
【0094】
実施形態14
前記隣接する欠陥線の間の間隔は、約7マイクロメートルから約12マイクロメートルであり、
前記パルスレーザビームは、パルスバースト当たり約5パルスから、パルスバースト当たり約15パルスを有するパルスバーストを生成し、そのパルスバーストエネルギは、パルスバースト当たり約400μJから、パルスバースト当たり約600マイクロジュールである、実施形態12に記載の方法。
【0095】
実施形態15
前記パルスバーストの前記パルスは、約1ピコ秒から約100ピコ秒の持続時間を有する、実施形態12から14のいずれかに記載の方法。
【0096】
実施形態16
前記パルスバーストは、約10kHzから約3MHzの範囲の繰り返し率を有する、実施形態12から15のいずれかに記載の方法。
【0097】
実施形態17
前記パルスレーザビーム焦線は、約0.1マイクロメートルから約10マイクロメートルの範囲の平均スポット径を有する、実施形態12から16のいずれかに記載の方法。
【0098】
実施形態18
被加工物をレーザ加工する方法であって、
パルスレーザビームの焦点を、前記被加工物に方向付けられたパルスレーザビーム焦線に合わせる工程であって、該パルスレーザビーム焦線は、該被加工物内に欠陥線を生じさせる工程と、
前記被加工物と前記パルスレーザビーム焦線を互いに対して移動させ、それによって、前記被加工物内の輪郭線に沿って複数の欠陥線をレーザ形成する工程であって、隣接する欠陥線間の間隔が、5マイクロメートルと15マイクロメートルの間である工程と、
前記輪郭線に沿って、または該輪郭線の近傍で、赤外レーザビームを前記被加工物上に向けて、該被加工物を該輪郭線に沿って分離する工程であって、該赤外レーザビームは、該赤外レーザビームからの累積エネルギの、該輪郭線上への直接的な分布よりも大きな分布が、該輪郭線の両側の該輪郭線に隣接する領域内に配置されるようなビームプロファイルを有する工程と、
を含む方法。
【0099】
実施形態19
前記赤外レーザビームは、環状ビームプロファイルを有し、およびその中心が前記輪郭線上にある、実施形態18に記載の方法。
【0100】
実施形態20
前記赤外レーザビームは、二酸化炭素レーザ、一酸化炭素レーザ、固体レーザ、レーザダイオード、または、これらの組合せによって生成される、実施形態18に記載の方法。
【符号の説明】
【0101】
1、720 被加工物
1a 上面
1b 底面
2 パルスレーザビーム
2c ビーム部分
2b レーザビーム焦線
2c 誘起吸収の広範なセクション
3 レーザ装置
6 光学アセンブリ
7 集束レンズ
8 円形開口
9、10 アキシコン
11 平凸レンズ
12 コリメーティングレンズ
110 輪郭線
120 欠陥線
130 透明な被加工物
140 超短パルスレーザビーム
160 処理方向
210 ビームスポット、環状ビーム、赤外レーザビーム
302 ガウスビーム
310、750 アキシコンレンズ
312 第一の平凸レンズ
314 第二の平凸レンズ
316 環状の赤外レーザビーム
330 COレーザビーム
500 パルスバースト
500A パルスまたはサブパルス
710 未集束のパルスレーザビーム
730 球面レンズ
740 焦点
760 高強度シリンダ
d 深さ
SR 円形変換
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B-1】
図8B-2】
図8B-3】
図8B-4】
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B