(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20220617BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
H05K1/02 D
H05K1/11 C
(21)【出願番号】P 2019536732
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2018029167
(87)【国際公開番号】W WO2019035370
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2017156500
(32)【優先日】2017-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】安達 芳朗
(72)【発明者】
【氏名】内田 淑文
(72)【発明者】
【氏名】岡 良雄
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-232513(JP,A)
【文献】特開2010-239109(JP,A)
【文献】特開平06-216487(JP,A)
【文献】特開2005-294746(JP,A)
【文献】特開平05-235498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの一方の面側に積層される導電パターンとを備え、上記導電パターンの一端縁側に端子接続領域を有するフレキシブルプリント配線板であって、
上記ベースフィルムの他方の面側のうち少なくとも上記端子接続領域に対向する部分に積層される補強部を備え、
上記補強部がその幅方向に帯状に配列される1又は複数列の抜き孔を有
し、
上記ベースフィルムが、上記一端縁側に向かって幅が広がっていく領域を有しており、
少なくとも上記抜き孔の一列の一部が、上記ベースフィルムの幅が広がっていく領域に配置されているフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
上記帯状に配列される抜き孔が、複数の丸孔で構成される請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
上記複数の丸孔の直径が、0.3mm以上10mm以下である請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
上記複数の丸孔の直径が全て等しい請求項2又は請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
上記複数の丸孔の幅方向の平均間隔が、0.4mm以上10mm以下である請求項2
から請求項4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
上記補強部が、第1抜き孔と、この第1抜き孔の上記一端縁側に設けられた第2抜き孔の2列の抜き孔を備える請求項1
から請求項5のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
上記第1抜き孔及び上記第2抜き孔のうち、面積の小さい方の抜き孔の面積を面積の大きい方の抜き孔の面積で除した値が、0.3倍以上1.0倍以下である請求項6に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項8】
上記第1抜き孔と上記第2抜き孔との平均離間距離が、0.5mm以上10mm以下である請求項6又は請求項7に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項9】
上記端子接続領域に1又は複数の接続端子を有し、
上記接続端子が金属製である請求項1
から請求項8のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレキシブルプリント配線板に関する。
本出願は、2017年8月14日出願の日本出願第2017-156500号に基づく優先権を主張し、上記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び軽量化の要請から、電子機器分野では様々なフレキシブルプリント配線板が使用されている。このようなフレキシブルプリント配線板として、一般に、ベースとなるベースフィルムと、このベースフィルムの表面に積層された銅箔等により形成された導電パターンとを備えるフレキシブルプリント配線板が使用されている。
【0003】
このようなフレキシブルプリント配線板は可撓性を有している。そのため、電子機器の導体パターンに接続するフレキシブルプリント配線板の接続端子部には、折れ曲がりや撓みを防止するために、例えば外面に補強部として補強板が積層されて使用される(国際公開第2010/004439号参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示のフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの一方の面側に積層される導電パターンとを備え、上記導電パターンの一端縁側に端子接続領域を有するフレキシブルプリント配線板であって、上記ベースフィルムの他方の面側のうち少なくとも上記端子接続領域に対向する部分に積層される補強部を備え、上記補強部がその幅方向に帯状に配列される1又は複数列の抜き孔を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の模式的裏面図である。
【
図2】
図2は、
図1のフレキシブルプリント配線板の模式的側面図である。
【
図3】
図3は、
図1とは異なる実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の模式的裏面図である。
【
図4】
図4は、
図1及び
図3とは異なる実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の模式的裏面図である。
【
図5】
図5は、
図1、
図3及び
図4とは異なる実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の模式的裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
補強部により補強されたフレキシブルプリント配線板では、補強部が積層されている部分と補強部が積層されていない部分との境界に応力が集中し易く、この境界で破断が発生し易い。
【0008】
特に、近年電子機器の小型化が進み、これに伴ってフレキシブルプリント配線板の導電パターンが細線化し、フレキシブルプリント配線板の曲げ半径も小さくなってきている。このため、応力集中によるフレキシブルプリント配線板の導電パターンの破断がより大きな問題となってきている。
【0009】
本開示は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、補強部に起因した応力集中による破断を防止できるフレキシブルプリント配線板を提供することを課題とする。
【0010】
[本開示の効果]
本開示のフレキシブルプリント配線板は、補強部に起因した応力集中による破断を防止できる。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
本開示のフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの一方の面側に積層される導電パターンとを備え、上記導電パターンの一端縁側に端子接続領域を有するフレキシブルプリント配線板であって、上記ベースフィルムの他方の面側のうち少なくとも上記端子接続領域に対向する部分に積層される補強部を備え、上記補強部がその幅方向に帯状に配列される1又は複数列の抜き孔を有する。
【0012】
当該フレキシブルプリント配線板は、補強部がその幅方向に帯状に配列される抜き孔を有する。この抜き孔により応力が分散され易くなるため、当該フレキシブルプリント配線板は、補強部に起因した応力集中による破断を防止できる。
【0013】
上記帯状に配列される抜き孔が、複数の丸孔で構成されるとよい。このように上記帯状に配列される抜き孔を複数の丸孔で構成することで、補強部の強度の低下を抑止しつつ、効果的に応力を分散できる。
【0014】
上記複数の丸孔の直径が、0.3mm以上10mm以下であるとよい。このように上記複数の丸孔の直径が、0.3mm以上10mm以下であることで、補強部の強度の低下を抑止しつつ、破断防止効果を得ることができる。
【0015】
上記複数の丸孔の直径は全て等しいことが好ましい。このように上記複数の丸孔の直径を全て等しくすることで、効果的に応力を分散できる。
【0016】
上記複数の丸孔の幅方向の平均間隔が、0.4mm以上10mm以下であるとよい。このように上記複数の丸孔の幅方向の平均間隔が、0.4mm以上10mm以下であることで、補強部の強度の低下を抑止しつつ、破断防止効果を得ることができる。
【0017】
上記補強部が、第1抜き孔と、この第1抜き孔の上記一端縁側に設けられた第2抜き孔の2列の抜き孔を備えるとよい。このように上記補強部が、第1抜き孔と、この第1抜き孔の上記一端縁側に設けられた第2抜き孔の2列の抜き孔を備えることで、より効果的に応力を分散できるので、破断防止効果を高められる。
【0018】
上記第1抜き孔及び上記第2抜き孔のうち、面積の小さい方の抜き孔の面積を面積の大きい方の抜き孔の面積で除した値が、0.3倍以上1.0倍以下であるとよい。このように上記第1抜き孔及び上記第2抜き孔のうち、面積の小さい方の抜き孔の面積を面積の大きい方の抜き孔の面積で除した値が、0.3倍以上1.0倍以下であることで、より効果的に応力を分散できるので、破断防止効果を高められる。
【0019】
上記第1抜き孔と上記第2抜き孔との平均離間距離が、0.5mm以上10mm以下であるとよい。このように上記第1抜き孔と上記第2抜き孔との平均離間距離が、0.5mm以上10mm以下であることで、より効果的に応力を分散できるので、破断防止効果を高められる。
【0020】
上記端子接続領域に1又は複数の接続端子を有し、上記接続端子が金属製であるとよい。当該フレキシブルプリント配線板は、剛性の高い金属製の接続端子との接続において特に応力集中の防止効果が高い。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示に係るフレキシブルプリント配線板の各実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
【0022】
[第一実施形態]
図1及び
図2に示す実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1は、絶縁性を有するベースフィルム11と、このベースフィルム11の一方の面側に積層される導電パターン12と、上記ベースフィルム11又は導電パターン12の一方の面に積層されるカバーレイ13と、上記ベースフィルム11の他方の面に積層される補強部14を備える。また、当該フレキシブルプリント配線板1は、上記導電パターン12の一端縁側に端子接続領域12aを有し、上記端子接続領域12aに複数の接続端子15を有する。
【0023】
<ベースフィルム>
ベースフィルム11は、導電パターン12を支持する部材であって、当該フレキシブルプリント配線板1の強度を担保する構造材である。
【0024】
このベースフィルム11の主成分としては、例えばポリイミド、液晶ポリエステルに代表される液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンエーテル、フッ素樹脂等の軟質材、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、ガラス基材等の硬質材、軟質材と硬質材とを複合したリジッドフレキシブル材などを用いることができる。これらの中でも耐熱性に優れるポリイミドが好ましい。なお、ベースフィルム11は、多孔化されたものでもよく、また、充填材、添加剤等を含んでもよい。
【0025】
上記ベースフィルム11の厚さは、特に限定されないが、ベースフィルム11の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、12μmがより好ましい。また、ベースフィルム11の平均厚さの上限としては、500μmが好ましく、200μmがより好ましい。ベースフィルム11の平均厚さが上記下限未満であると、ベースフィルム11の強度が不十分となるおそれがある。一方、ベースフィルム11の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板1の可撓性が不十分となるおそれがある。
【0026】
<導電パターン>
導電パターン12は、電気配線構造、グラウンド、シールドなどの構造を構成するものである。
【0027】
導電パターン12を形成する材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されないが、例えば銅、アルミニウム、ニッケル等の金属が挙げられ、一般的には比較的安価で導電率が大きい銅が用いられる。また、導電パターン12は、表面にめっき処理が施されてもよい。
【0028】
導電パターン12の平均厚さの下限としては、2μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、導電パターン12の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、70μmがより好ましい。導電パターン12の平均厚さが上記下限未満であると、導電パターン12の導電性が不十分となるおそれがある。逆に、導電パターン12の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板1が不必要に厚くなるおそれがある。
【0029】
当該フレキシブルプリント配線板1が上記導電パターン12の一端縁側に有する端子接続領域12aは、後述する接続端子15を介して他の電子機器等と接続するための領域である。端子接続領域12aでは、後述するカバーレイ13は取り除かれている。
【0030】
上記端子接続領域12aの形状は、
図1に示すように上記一端縁側が枝分かれした櫛の歯状である。この櫛の歯の各歯部には、それぞれ1の接続端子15が設けられる。このように上記端子接続領域12aでの当該フレキシブルプリント配線板1の形状を櫛の歯状に構成することで、個々の接続端子15によりかかる応力が隣接する接続端子15が設けられた端子接続領域12aに及び難くすることができるので、当該フレキシブルプリント配線板1に接続端子15を介して加わる応力を低減できる。
【0031】
上記端子接続領域12aの各歯部の大きさは、接続端子15の大きさにより適宜決定されるが、例えば平均幅0.5mm以上3mm以下、平均長さ3mm以上50mm以下とできる。また、歯部の数は接続端子15の数に対応して決定される。通常、端子接続領域12aを含めてベースフィルム11の幅は一定とされるが、接続端子15の数によっては、上記端子接続領域12aを除くベースフィルム11の幅に収まらない場合が生じる。このような場合には例えば
図1に示すように一端側のベースフィルム11の幅を広げることで歯部の数を確保できる。
【0032】
<カバーレイ>
カバーレイ13は、導電パターン12を外力や水分等から保護するものである。カバーレイ13は、カバーフィルム及び接着層を有する。カバーレイ13は、この接着層を介して上記導電パターン12のベースフィルム11と反対側の面にカバーフィルムが積層されたものである。
【0033】
(カバーフィルム)
カバーフィルムの材質としては、特に制限されるものではないが、例えばベースフィルム11を構成する樹脂と同様のものを用いることができる。
【0034】
カバーフィルムの平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、カバーフィルムの平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、30μmがより好ましい。カバーフィルムの平均厚さが上記下限未満であると、絶縁性が不十分となるおそれがある。逆に、カバーフィルムの平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板1の可撓性が損なわれるおそれがある。
【0035】
(接着層)
接着層は、カバーフィルムを導電パターン12及びベースフィルム11に固定するものである。接着層の材質としては、カバーフィルムを導電パターン12及びベースフィルム11に固定できる限り特に限定されるものではないが、柔軟性や耐熱性に優れたものが好ましく、例えばポリイミド、ポリアミド、エポキシ、ブチラール、アクリル等が挙げられる。また、耐熱性の点において、熱硬化性樹脂が好ましい。
【0036】
カバーレイ13の接着層の平均厚さは、特に限定されるものではないが、接着層の平均厚さの下限としては、例えば5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、接着層の平均厚さの上限としては、例えば100μmが好ましく、80μmがより好ましい。接着層の平均厚さが上記下限未満であると、接着性が不十分となるおそれがある。逆に、接着層の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板1の可撓性が損なわれるおそれがある。
【0037】
<補強部>
補強部14は、上記ベースフィルム11の他方の面側のうち少なくとも端子接続領域12aに対向する部分に積層される。補強部14は補強板14aにより構成される。また、補強部14は、第1抜き孔21と、この第1抜き孔21の上記一端縁側に第2抜き孔22とを有する。この第1抜き孔21及び第2抜き孔22は、補強部14の幅方向に帯状に2列に配列されている。
【0038】
補強部14の材質には、機械的強度に優れたものが使用される。中でも補強部14の材質としては、樹脂を主成分とするものがよい。このように、樹脂を主成分とする補強部14を用いることで、当該フレキシブルプリント配線板1の可撓性を確保しつつ補強することができる。上記樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド等を挙げることができる。また、補強部14の材質には、ガラス繊維や紙で補強された樹脂、例えばガラスエポキシ樹脂を用いることもできる。ここで、「主成分」とは、最も多く含まれる成分であり、含有量が50質量%以上の成分を意味する。
【0039】
補強部14を構成する補強板14aの上記他端縁側の端縁は、上記カバーレイ13の上記一端縁側の端縁と平面視で重ならないとよい。また、補強板14aの上記他端縁側の端縁は、上記カバーレイ13の上記一端縁側の端縁より上記他端縁側に位置することが好ましい。このように補強板14aの上記他端縁側の端縁を位置させることで、応力のかかり易い部分をより確実に保護することができる。
【0040】
補強部14の平均厚さ(補強板14aの平均厚さ)の下限としては、5μmが好ましく、15μmがより好ましい。一方、補強部14の平均厚さの上限としては、500μmが好ましく、400μmがより好ましい。補強部14の平均厚さが上記下限未満であると、十分な補強効果が得られず、当該フレキシブルプリント配線板1の折れ曲がりや撓みが生じ易くなるおそれがある。逆に、補強部14の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板1が不必要に厚くなるおそれがある。
【0041】
第1抜き孔21及び第2抜き孔22は、いずれも補強部14の幅方向に長く、両端が丸みを帯びた長方形状であり、補強板14aを貫通している。また、第1抜き孔21及び第2抜き孔22は、これらの抜き孔の補強部14の長さ方向(幅方向に垂直な方向)の中心軸が、補強部14の長さ方向の中心軸と重なるように設けるとよい。
【0042】
第1抜き孔21及び第2抜き孔22の平均長さ(補強部14の幅方向に沿った長さ)は、当該フレキシブルプリント配線板1の大きさや、加わる応力に応じて適宜決定されるが、第1抜き孔21及び第2抜き孔22の平均長さの下限としては、3mmが好ましく、5mmがより好ましい。一方、第1抜き孔21及び第2抜き孔22の平均長さの上限としては、80mmが好ましく、60mmがより好ましい。第1抜き孔21及び第2抜き孔22の平均長さが上記下限未満であると、破断防止効果が不十分となるおそれがある。逆に、第1抜き孔21及び第2抜き孔22の平均長さが上記上限を超えると、補強板14aの強度が不足するおそれがある。
【0043】
第1抜き孔21及び第2抜き孔22の平均幅(補強部14の幅方向に垂直な方向の長さ)の下限としては、0.05mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、第1抜き孔21及び第2抜き孔22の平均幅の上限としては、10mmが好ましく、5mmがより好ましい。第1抜き孔21及び第2抜き孔22の平均幅が上記下限未満であると、破断防止効果が不十分となるおそれがある。逆に、第1抜き孔21及び第2抜き孔22の平均幅が上記上限を超えると、補強板14aの強度が不足するおそれがある。
【0044】
第1抜き孔21の面積と、第2抜き孔22の面積とは、上記ベースフィルム11の一端縁側へ向かって剛性が徐々に上がるように決定するとよい。例えばベースフィルム11の幅が一定である場合、ベースフィルム11のうち、補強部14が積層されている部分と積層されていない部分とでは、積層されている部分の方が剛性は高く、積層されていない部分の方が剛性は低い。抜き孔を大きくするとベースフィルム11の剛性は下がるので、ベースフィルム11の一端縁側の抜き孔の面積が小さい方が、ベースフィルム11を一端縁側へ向かって徐々に剛性が上がるように制御できる。一方、例えばベースフィルム11の幅が
図1に示すように一端縁側へ向かって広がっている場合、ベースフィルム11の一端縁側の方が剛性は高くなる傾向にある。このため、上記ベースフィルム11の一端縁側へ向かって剛性を徐々に上げるには、抜き孔の面積を同等、あるいはベースフィルム11の一端縁側に向かって抜き孔の面積を大きくする必要がある場合もある。いずれの場合においても、ベースフィルム11の一端縁側へ向かって上記ベースフィルム11の剛性が徐々に上がるように抜き孔の面積を決定することで、より効果的に応力を分散できるので、破断防止効果を高められる。
【0045】
隣接する抜き孔(
図1では、第1抜き孔21及び第2抜き孔22)の面積比の下限としては、0.3倍が好ましく、0.4倍がより好ましい。上記面積比が上記下限未満であると、剛性の変化が大きくなり過ぎて、破断防止の向上効果が不十分となるおそれがある。一方、隣接する抜き孔の面積比の上限は、特に限定されず、1.0倍とできる。なお、上記面積比は、隣接する抜き孔のうち面積の小さい方の抜き孔の面積を面積の大きい方の抜き孔の面積で除した値を指すものとする。
【0046】
第1抜き孔21と第2抜き孔22との平均離間距離の下限としては、0.5mmが好ましく、1mmがより好ましい。一方、上記平均離間距離の上限としては、10mmが好ましく、5mmがより好ましい。上記平均離間距離が上記下限未満であると、補強板14aの強度が不足するおそれがある。逆に、上記平均離間距離が上記上限を超えると、破断防止効果が不十分となるおそれがある。なお、「第1抜き孔と第2抜き孔との平均離間距離」とは、補強板14aのうち、第1抜き孔と第2抜き孔とに挟まれた部分の平均幅を意味する。
【0047】
上記補強板14aとベースフィルム11との間は例えば接着層を介して固定できる。上記補強板14aを接着層を介して固定する場合、上記接着層の材質としては、補強板14aを固定できる限り特に限定されないが、カバーフィルムを固定する接着層と同様のものを用いることができる。また、上記接着層の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、上記接着層の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、70μmがより好ましい。上記接着層の平均厚さが上記下限未満であると、補強部14の接着性が不十分となるおそれがある。逆に、上記接着層の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板1が不必要に厚くなるおそれがある。
【0048】
<接続端子>
接続端子15は、当該フレキシブルプリント配線板1を他の電子機器等と接続するための部品である。
【0049】
接続端子15の材質は、導電性を有する限り特に限定されないが、接続端子15が金属製であるとよい。当該フレキシブルプリント配線板1は、剛性の高い金属製の接続端子15との接続において特に応力集中の防止効果が高い。上記金属としては、例えば軟銅、黄銅、リン青銅等を挙げることができる。また、接続端子15の表面は、酸化を防ぐために、めっきを施すことが好ましい。上記めっきとしては、Snめっき、Niめっき、Auめっき等を挙げることができる。中でも安価でかつ防蝕性に優れるNiめっきが好ましい。
【0050】
上記接続端子15の形状は、接続する電子機器等の端子形状等に応じて適宜決定されるが、例えば平均幅0.5mm以上3mm以下、平均長さ3mm以上50mm以下、平均高さ0.1mm以上3mm以下の板状又は成形加工された立体形状とできる。この立体形状としては、例えば直方体状や、大きさの異なる直方体を接続端子15の長さ方向に多段に連結した形状等を挙げることができる。
【0051】
上記接続端子15は、端子接続領域12aに実装され、導電パターン12と電気的に接続されている。
【0052】
<フレキシブルプリント配線板の製造方法>
当該フレキシブルプリント配線板1は、例えばフレキシブルプリント配線板本体形成工程と、補強部形成工程と、接続端子実装工程とを備える製造方法により製造することができる。
【0053】
(フレキシブルプリント配線板本体形成工程)
フレキシブルプリント配線板本体形成工程では、絶縁性を有するベースフィルム11と、このベースフィルム11の一方の面側に積層される導電パターン12と、上記ベースフィルム11又は導電パターン12の一方の面に積層されるカバーレイ13とを備えるフレキシブルプリント配線板本体を形成する。具体的には以下の手順による。
【0054】
まず、ベースフィルム11の一方の面に導体層を形成する。
【0055】
導体層は、例えば接着剤を用いて箔状の導体を接着することにより、あるいは公知の成膜手法により形成できる。導体としては、例えば、銅、銀、金、ニッケル等が挙げられる。接着剤としては、ベースフィルム11に導体を接着できるものであれば特に制限はなく、公知の種々のものを使用することができる。成膜手法としては、例えば蒸着、メッキ等が挙げられる。導体層は、ポリイミド接着剤を用いて銅箔をベースフィルム11に接着して形成することが好ましい。
【0056】
次に、この導体層をパターニングして導電パターン12を形成する。
【0057】
導体層のパターニングは、公知の方法、例えばフォトエッチングにより行うことができる。フォトエッチングは、導体層の一方の面に所定のパターンを有するレジスト膜を形成した後に、レジスト膜から露出する導体層をエッチング液で処理し、レジスト膜を除去することにより行われる。
【0058】
最後に、導電パターン12の一端縁側の端子接続領域12aを除いて、導電パターン12を覆うようにカバーレイ13を積層する。具体的には、導電パターン12を形成したベースフィルム11の表面に接着剤層を積層し、接着剤層の上にカバーフィルムを積層する。または、予めカバーフィルムに接着剤層を積層しておき、そのカバーフィルムの接着剤層が積層されている側の面を導電パターン12に対面させて接着してもよい。
【0059】
接着剤を使用したカバーフィルムの接着は、通常、熱圧着により行うことができる。熱圧着する際の温度及び圧力は、使用する接着剤の種類や組成等に応じて適宜決定すればよい。なお、この熱圧着は、後述する補強部形成工程で補強部14の熱圧着とまとめて行ってもよい。
【0060】
(補強部形成工程)
補強部形成工程では、補強部14を上記フレキシブルプリント配線板本体のベースフィルム11の他方の面に積層する。当該フレキシブルプリント配線板1の補強部14は、補強板14aから構成される。
【0061】
補強板14aは、予め第1抜き孔21と第2抜き孔22とを空ける加工をしておく。上記加工方法としては、特に限定されず、例えばプレス金型を用いた打ち抜き等を用いることができる。
【0062】
加工された上記補強板14aを上記ベースフィルム11の他方の面に積層する。この積層方法としては、例えば補強板14aの表面に接着層を形成し、ベースフィルム11の他方の面に接着層を介して積層する方法を用いることができる。そして、加圧加熱により補強板14aを熱接着する。この熱圧着により、カバーレイ13の熱圧着を同時に行ってもよい。
【0063】
(接続端子実装工程)
接続端子実装工程では、接続端子15を端子接続領域12aに実装する。接続端子15の実装方法としては、接続端子15が端子接続領域12aに導通可能に固定される限り特に限定されない。例えば、導電パターン12の端子接続領域12aに半田を設け、この半田の上に接続端子15の一端側を載置し、リフローにより半田を溶融させて、導電パターン12に接続端子15を半田付けする方法、接続端子15毎にベースフィルム11をかしめて接続をとる方法、接続端子15を上から押圧することで端子接続領域12aに導通を取りつつ圧着する方法、接続端子15を導電性の接着剤を介して導電パターン12に接続する方法などを用いることができる。これにより、接続端子15が実装されて、当該フレキシブルプリント配線板1が形成される。
【0064】
<利点>
当該フレキシブルプリント配線板1は、補強部14が幅方向に帯状に配列される抜き孔を有する。この抜き孔により応力が分散され易くなるため、当該フレキシブルプリント配線板1は、補強部14に起因した応力集中による破断を防止できる。
【0065】
[第二実施形態]
図3は、
図1とは異なる実施形態に係るフレキシブルプリント配線板2である。当該フレキシブルプリント配線板2は、絶縁性を有するベースフィルム11と、このベースフィルム11の一方の面側に積層される導電パターン12と、上記ベースフィルム11又は導電パターン12の一方の面に積層されるカバーレイ13と、上記ベースフィルム11の他方の面に積層される補強部14を備える。また、当該フレキシブルプリント配線板2は、上記導電パターン12の一端縁側に端子接続領域12aを有し、上記端子接続領域12aに複数の接続端子15を有する。
【0066】
図3のフレキシブルプリント配線板2におけるベースフィルム11、導電パターン12、カバーレイ13及び接続端子15の構成は、
図1のフレキシブルプリント配線板1におけるベースフィルム11、導電パターン12、カバーレイ13及び接続端子15の構成とそれぞれ同様とすることができる。また、
図3のフレキシブルプリント配線板2における補強部14の構成は、以下に説明する抜き孔の形状に基づく特徴を除いて、
図1のフレキシブルプリント配線板1における補強部14の構成と同様である。また、
図3のフレキシブルプリント配線板2は、
図1のフレキシブルプリント配線板1と同様の製造方法で製造できる。このため、
図3のフレキシブルプリント配線板2について
図1のフレキシブルプリント配線板1と重複する説明は省略し、以下、構成の相違する補強部14の抜き孔の形状について主に説明する。
【0067】
<補強板>
当該フレキシブルプリント配線板2では、第1抜き孔23及び第2抜き孔24が、それぞれ複数の丸孔で構成される。
【0068】
上記丸孔の直径の下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、上記丸孔の直径の上限としては、10mmが好ましく、5mmがより好ましい。上記丸孔の直径が上記下限未満であると、破断防止効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記丸孔の直径が上記上限を超えると、補強板14aの強度が不足するおそれがある。
【0069】
補強部14の幅方向の丸孔の平均間隔(丸孔の中心間の平均距離)の下限としては、0.4mmが好ましく、0.6mmがより好ましい。一方、上記丸孔の平均間隔の上限としては、10mmが好ましく、5mmがより好ましい。上記丸孔の平均間隔が上記下限未満であると、補強板14aの強度が不足するおそれがある。逆に、上記丸孔の平均間隔が上記上限を超えると、破断防止効果が不十分となるおそれがある。
【0070】
第1抜き孔23及び第2抜き孔24それぞれの丸孔の個数は、当該フレキシブルプリント配線板2の大きさや、加わる応力に応じて適宜決定されるが、上記丸孔の個数の下限としては、2が好ましく、3がより好ましい。一方、上記丸孔の個数の上限としては、50が好ましい。上記丸孔の個数が上記下限未満であると、破断防止効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記丸孔の個数が上記上限を超えると、補強板14aの強度が不足するおそれがある。
【0071】
第1抜き孔23及び第2抜き孔24の丸孔は、全て直径が等しいことが好ましい。丸孔の直径を全て等しくすることで、効果的に応力を分散できる。
【0072】
また、第1抜き孔23と第2抜き孔24との丸孔の個数は、上記ベースフィルム11の一端縁側へ向かって剛性が徐々に上がるように決定するとよい。第1実施形態で述べたように、ベースフィルム11の幅や剛性等に応じて、第1抜き孔23の方が丸孔の個数が多い場合、第2抜き孔24の方が丸孔の個数が多い場合、あるいは両者の個数が等しい場合が生じ得る。
【0073】
<利点>
当該フレキシブルプリント配線板2は、帯状に配列される抜き孔を複数の丸孔で構成することで、補強部14の強度の低下を抑止しつつ、効果的に応力を分散できる。
【0074】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0075】
上記実施形態では、抜き孔が2列である場合を説明したが、抜き孔は1列であってもよく、また3列以上であってもよい。なお、抜き孔の配列数を増やすと応力が均等に分散される効果が高められる。一方、補強部の面積に限りがあるため抜き孔の配列数を増加させると、1列当たりの抜き孔の面積を小さくする必要があり、応力の分散効果を低減させる方向に働く。これらのトレードオフの関係から、抜き孔の配列数の上限としては、5列が好ましい。
【0076】
上記第一実施形態では、抜き孔が両端が丸みを帯びた長方形状である場合を説明したが、抜き孔の形状はこれに限定されず、例えば円形状や楕円状であってもよい。また、抜き孔の両端の丸みは必須ではなく、単純な長方形状であってもよい。上記第二実施形態では、抜き孔が複数の丸孔から構成される場合を説明したが、孔の形状は丸孔には限定されず、例えば三角形や四角形等の多角形状であってもよく、また多角形状の端部は丸みを帯びていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では2列の抜き孔が同様の形状を有していたが、列ごとに形状が異なっていてもよい。
【0078】
上記実施形態では、抜き孔が補強部をくりぬいて構成されているが、補強部の端部に連続して設けられた抜き孔を有するフレキシブルプリント配線板も本発明の意図するところである。このような構成としては、例えば
図4に示すフレキシブルプリント配線板3のように、補強板14aの端部から他端が丸みを帯びた長方形状に補強板14aを切り欠いた一対の孔により第1抜き孔25及び第2抜き孔26を設けた構成を挙げることができる。このように補強部の端部に連続して設けられた抜き孔を設けることで、打ち抜く場合に比べ、抜き孔を容易に形成できる。
【0079】
上記実施形態では、抜き孔が補強部を貫通している場合について説明したが、抜き孔は貫通していなくともよい。貫通していない抜き孔であっても応力の分散効果を得ることができる。抜き孔が補強部を貫通していない構成としては、例えば補強部を内層及び外層の2層の補強層の積層により構成し、内層のみに抜き孔を設ける構成を挙げることができる。このように構成することで、補強部の表面に抜き孔による凹凸が生じることを外層により防ぎつつ、内層の抜き孔により応力の分散効果を得ることができる。
【0080】
上記実施形態では、端子接続領域が櫛の歯状である場合を説明したが、端子接続領域の形状は櫛の歯状に限定されない。例えば
図5に示すフレキシブルプリント配線板4のように端子接続領域12aは平面視方形状であってもよい。なお、
図5では端子接続領域12aの幅が、端子接続領域12aを除くベースフィルム11の幅と等しい場合を図示しているが、例えば接続端子15が収まらない場合等、
図1のフレキシブルプリント配線板1のように一端側のベースフィルム11の幅を広げた構成としてもよい。
【0081】
上記実施形態では、カバーレイを備えるフレキシブルプリント配線板について説明したが、カバーレイは必須の構成要素ではなく、省略可能である。あるいは、例えば他の構成の絶縁層でベースフィルム又は導電パターンの一方の面を被覆してもよい。
【0082】
上記実施形態では、接続端子を備えるフレキシブルプリント配線板について説明したが、接続端子は必須の構成要素ではなく、省略可能である。接続端子を備えないフレキシブルプリント配線板では、例えば他のフレキシブルプリント配線板と直接貼り合わせることで、他の電子機器等と接続できる。
【符号の説明】
【0083】
1、2、3、4 フレキシブルプリント配線板
11 ベースフィルム 12 導電パターン
12a 端子接続領域 13 カバーレイ
14 補強部 14a 補強板 15 接続端子
21、23、25 第1抜き孔
22、24、26 第2抜き孔