IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本発條株式会社の特許一覧

特許7090664自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラム
<>
  • 特許-自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラム 図1
  • 特許-自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラム 図2
  • 特許-自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラム 図3
  • 特許-自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラム 図4
  • 特許-自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラム 図5
  • 特許-自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラム 図6
  • 特許-自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラム 図7
  • 特許-自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/21 20060101AFI20220617BHJP
   B63C 9/00 20060101ALI20220617BHJP
   B63H 25/02 20060101ALI20220617BHJP
   B63C 9/20 20060101ALI20220617BHJP
   B63H 25/18 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
B63H21/21
B63C9/00 Z
B63H25/02 B
B63C9/20 A
B63H25/18
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020101113
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021194957
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2021-11-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】白尾 真人
(72)【発明者】
【氏名】秋田 まり乃
(72)【発明者】
【氏名】大島 隆史
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-127987(JP,A)
【文献】特開2020-019424(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0052535(KR,A)
【文献】世良 亘 他,ウイリアムソンターンにおける操縦性の影響,日本航海学会論文集,第133巻,日本,日本航海学会,2014年,第107-112頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/21
B63C 9/00
B63H 25/02
B63C 9/20
B63H 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶と通信装置とを備える自動操船システムであって、
前記船舶は、
前記船舶の推進力を発生する機能と前記船舶に回頭モーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、
少なくとも前記操作部が受け付けた入力操作に基づいて前記アクチュエータを作動させる船舶制御装置とを備え、
前記船舶制御装置は、
前記操作部が受け付けた入力操作に基づいて前記アクチュエータを作動させる手動操船モードと、
前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船舶と前記通信装置との距離と前記船舶の船首方位とに基づいて前記アクチュエータを作動させる自動操船モードとを有し、 前記船舶制御装置は、前記自動操船モードにおいて、
前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が第1閾値以下である第1制御と、
前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が前記第1閾値より大きい第2制御とを実行可能であ
前記船舶制御装置を前記手動操船モードから前記自動操船モードに切り替えるトリガーを発生するトリガー発生部を備え、
前記トリガー発生部は、前記船舶または前記通信装置が受け付けた自動操船開始要求に基づいて自動操船開始指示を出力する自動操船開始指示部を備え、
前記自動操船開始指示部が前記自動操船開始指示を出力した場合に、前記船舶制御装置が、前記自動操船モードの制御を開始する、
自動操船システム。
【請求項2】
前記トリガー発生部は、前記船舶の乗船者の落水を検知する落水検知部を備え、
前記落水検知部が前記船舶の乗船者の落水を検知した場合に、前記船舶制御装置が、前記自動操船モードになる、
請求項1に記載の自動操船システム。
【請求項3】
前記通信装置は、前記自動操船開始要求を受け付ける入力部を備え、
前記落水検知部が前記船舶の乗船者の落水を検知した後、前記入力部が前記自動操船開始要求を受け付けた場合に、
前記自動操船開始指示部が前記自動操船開始指示を出力し、前記船舶制御装置が、前記自動操船モードの制御を開始する、
請求項2に記載の自動操船システム。
【請求項4】
前記落水検知部が前記船舶の乗船者の落水を検知すると、前記入力部は、前記自動操船開始要求の受付を待機する、
請求項3に記載の自動操船システム。
【請求項5】
前記落水検知部が前記船舶の乗船者の落水を検知した時に前記船舶の船首方位角と前記船舶における前記通信装置の方位角との角度差が第2閾値より大きい場合に、
前記船舶制御装置は、前記第1制御、前記第2制御の順で前記自動操船モードの制御を開始し、
前記落水検知部が前記船舶の乗船者の落水を検知した時に前記角度差が前記第2閾値以下の場合に、
前記船舶制御装置は、前記第1制御を実行することなく、前記第2制御によって前記自動操船モードの制御を開始する、
請求項に記載の自動操船システム。
【請求項6】
前記第1制御は、前記船舶をその場回頭させる制御であり、
前記第2制御は、前記船舶を略直進させる制御である、
請求項に記載の自動操船システム。
【請求項7】
前記船舶制御装置は、前記自動操船モードにおいて、
前記船舶と前記通信装置との距離が第3閾値より大きい場合に、前記第2制御を実行し、
前記船舶と前記通信装置との距離が前記第3閾値以下の場合に、前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が前記第2制御の実行時よりも小さい第3制御を実行する、
請求項1に記載の自動操船システム。
【請求項8】
前記船舶制御装置は、前記第1制御の実行時に、
前記船舶の船首方位角と前記船舶における前記通信装置の方位角との角度差に基づく制御を実行する、
請求項1に記載の自動操船システム。
【請求項9】
前記船舶制御装置は、前記第2制御の実行時に、
前記船舶の船首方位角と前記船舶における前記通信装置の方位角との角度差に基づく制御を実行する、
請求項1に記載の自動操船システム。
【請求項10】
前記自動操船開始指示部が前記自動操船開始指示を出力した時に前記船舶の船首方位角と前記船舶における前記通信装置の方位角との角度差が第2閾値より大きい場合に、
前記船舶制御装置は、前記第1制御、前記第2制御の順で前記自動操船モードの制御を開始し、
前記自動操船開始指示部が前記自動操船開始指示を出力した時に前記角度差が前記第2閾値以下の場合に、
前記船舶制御装置は、前記第1制御を実行することなく、前記第2制御によって前記自動操船モードの制御を開始する、
請求項1に記載の自動操船システム。
【請求項11】
船舶の推進力を発生する機能と前記船舶に回頭モーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部とを備える前記船舶に備えられる船舶制御装置であって、
前記船舶制御装置は、少なくとも前記操作部が受け付けた入力操作に基づいて前記アクチュエータを作動させ、
前記船舶制御装置は、
前記操作部が受け付けた入力操作に基づいて前記アクチュエータを作動させる手動操船モードと、
前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船舶と通信装置との距離と前記船舶の船首方位とに基づいて前記アクチュエータを作動させる自動操船モードとを有し、
前記船舶制御装置は、前記自動操船モードにおいて、
前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が第1閾値以下である第1制御と、
前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が前記第1閾値より大きい第2制御とを実行可能であり、
前記船舶は、前記船舶制御装置を前記手動操船モードから前記自動操船モードに切り替えるトリガーを発生するトリガー発生部を備え、
前記トリガー発生部は、前記船舶または前記通信装置が受け付けた自動操船開始要求に基づいて自動操船開始指示を出力する自動操船開始指示部を備え、
前記自動操船開始指示部が前記自動操船開始指示を出力した場合に、前記船舶制御装置が、前記自動操船モードの制御を開始する、
船舶制御装置。
【請求項12】
船舶の推進力を発生する機能と前記船舶に回頭モーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部とを備える前記船舶を制御する船舶制御方法であって、
少なくとも前記操作部が受け付けた入力操作に基づいて前記アクチュエータを作動させる船舶制御ステップを備え、
前記船舶制御ステップには、
前記操作部が受け付けた入力操作に基づいて前記アクチュエータを作動させる手動操船ステップと、
前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船舶と通信装置との距離と前記船舶の船首方位とに基づいて前記アクチュエータを作動させる自動操船ステップとが含まれ、
前記自動操船ステップでは、
前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が第1閾値以下である第1制御と、
前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が前記第1閾値より大きい第2制御とが実行され得、
前記船舶は、前記手動操船ステップの実行から前記自動操船ステップの実行に切り替えるトリガーを発生するトリガー発生部を備え、
前記トリガー発生部は、前記船舶または前記通信装置が受け付けた自動操船開始要求に基づいて自動操船開始指示を出力する自動操船開始指示部を備え、
前記自動操船開始指示部が前記自動操船開始指示を出力した場合に、前記自動操船ステップにおける制御が開始される、
船舶制御方法。
【請求項13】
船舶の推進力を発生する機能と前記船舶に回頭モーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、
トリガーを発生するトリガー発生部とを備える前記船舶に搭載されたコンピュータに、
少なくとも前記操作部が受け付けた入力操作に基づいて前記アクチュエータを作動させる船舶制御ステップを実行させるためのプログラムであって、
前記船舶制御ステップには、
前記操作部が受け付けた入力操作に基づいて前記アクチュエータを作動させる手動操船ステップと、
前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船舶と通信装置との距離と前記船舶の船首方位とに基づいて前記アクチュエータを作動させる自動操船ステップとが含まれ、
前記自動操船ステップでは、
前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が第1閾値以下である第1制御と、
前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が前記第1閾値より大きい第2制御とが実行され得、
前記トリガー発生部は、前記手動操船ステップの実行から前記自動操船ステップの実行に切り替えるトリガーを発生し、
前記トリガー発生部は、前記船舶または前記通信装置が受け付けた自動操船開始要求に基づいて自動操船開始指示を出力する自動操船開始指示部を備え、
前記自動操船開始指示部が前記自動操船開始指示を出力した場合に、前記自動操船ステップにおける制御が開始される、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パーソナルウォータークラフト(PWC)オートリターンシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載されたPWCオートリターンシステムは、ユーザデバイスと、PWC内に配置されたオートパイロットユニットとを備えている。ユーザデバイスは、乗船者位置決定ユニットと、ユーザインタフェースと、通信ユニットとを備えている。特許文献1に記載された技術では、ユーザデバイスを携帯する乗船者がPWCから離れる(落水する)と、PWCが、ユーザインタフェースからの要求を受信し、自動操船によってユーザデバイスの位置まで進む。
ところで、特許文献1には、PWCの自動操船が行われる場合の具体的な制御について記載されていない。そのため、特許文献1に記載された技術によっては、PWCから離れた位置の乗船者に向かってPWCを自動操船で戻す制御を適切に行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2018/0335780号明細書
【文献】特開2020-019424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した問題点に鑑み、本発明は、船舶から離れた位置の乗船者に向かって船舶を自動操船で戻す制御を適切に行うことができる自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、船舶と通信装置とを備える自動操船システムであって、前記船舶は、前記船舶の推進力を発生する機能と前記船舶に回頭モーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、少なくとも前記操作部が受け付けた入力操作に基づいて前記アクチュエータを作動させる船舶制御装置とを備え、前記船舶制御装置は、前記操作部が受け付けた入力操作に基づいて前記アクチュエータを作動させる手動操船モードと、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船舶と前記通信装置との距離と前記船舶の船首方位とに基づいて前記アクチュエータを作動させる自動操船モードとを有し、前記船舶制御装置は、前記自動操船モードにおいて、前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が第1閾値以下である第1制御と、前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が前記第1閾値より大きい第2制御とを実行可能である、自動操船システムである。
【0006】
本発明の一態様は、船舶の推進力を発生する機能と前記船舶に回頭モーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部とを備える前記船舶に備えられる船舶制御装置であって、前記船舶制御装置は、少なくとも前記操作部が受け付けた入力操作に基づいて前記アクチュエータを作動させ、前記船舶制御装置は、前記操作部が受け付けた入力操作に基づいて前記アクチュエータを作動させる手動操船モードと、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船舶と通信装置との距離と前記船舶の船首方位とに基づいて前記アクチュエータを作動させる自動操船モードとを有し、前記船舶制御装置は、前記自動操船モードにおいて、前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が第1閾値以下である第1制御と、前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が前記第1閾値より大きい第2制御とを実行可能である、船舶制御装置である。
【0007】
本発明の一態様は、船舶の推進力を発生する機能と前記船舶に回頭モーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部とを備える前記船舶を制御する船舶制御方法であって、少なくとも前記操作部が受け付けた入力操作に基づいて前記アクチュエータを作動させる船舶制御ステップを備え、前記船舶制御ステップには、前記操作部が受け付けた入力操作に基づいて前記アクチュエータを作動させる手動操船ステップと、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船舶と通信装置との距離と前記船舶の船首方位とに基づいて前記アクチュエータを作動させる自動操船ステップとが含まれ、前記自動操船ステップでは、前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が第1閾値以下である第1制御と、前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が前記第1閾値より大きい第2制御とが実行され得る、船舶制御方法である。
【0008】
本発明の一態様は、船舶の推進力を発生する機能と前記船舶に回頭モーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、トリガーを発生するトリガー発生部とを備える前記船舶に搭載されたコンピュータに、少なくとも前記操作部が受け付けた入力操作に基づいて前記アクチュエータを作動させる船舶制御ステップを実行させるためのプログラムであって、前記船舶制御ステップには、前記操作部が受け付けた入力操作に基づいて前記アクチュエータを作動させる手動操船ステップと、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船舶と通信装置との距離と前記船舶の船首方位とに基づいて前記アクチュエータを作動させる自動操船ステップとが含まれ、前記自動操船ステップでは、前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が第1閾値以下である第1制御と、前記船舶と前記通信装置との距離の減少速度が前記第1閾値より大きい第2制御とが実行され得る、プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、船舶から離れた位置の乗船者に向かって船舶を自動操船で戻す制御を適切に行うことができる自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の船舶制御装置が適用された自動操船システムの一例を概略的に示す図である。
図2】落水検知部によって船舶の乗船者の落水が検知された時に生じ得る状況の一例を説明するための図である。
図3】第1実施形態の船舶制御装置によって実行される自動操船モードの制御の一例を説明するための図である。
図4】第1実施形態の船舶制御装置によって実行される自動操船モードの制御の他の例を説明するための図である。
図5】第1実施形態の自動操船システムにおいて実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図6図5のステップS103において実行される処理を詳細に説明するためのフローチャートである。
図7】第4実施形態の船舶制御装置が適用された自動操船システムの一例を概略的に示す図である。
図8】第4実施形態の自動操船システムにおいて実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、本発明の自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラムの第1実施形態について説明する。
【0012】
図1は第1実施形態の船舶制御装置11Cが適用された自動操船システム1の一例を概略的に示す図である。
図1に示す例では、自動操船システム1が、船舶11と、通信装置12とを備えている。
第1実施形態の船舶11は、例えば特許第5196649号公報の図1に記載されたパーソナルウォータークラフト(PWC、水上オートバイ)が有する機能と同様の機能を有するPWCである。船舶11は、アクチュエータ11Aと、操作部11Bと、船舶制御装置11Cと、トリガー発生部11Dと、船舶位置検出部11Eと、船首方位検出部11Fと、通信部11Gとを備えている。
アクチュエータ11Aは、船舶11の推進力を発生する機能と船舶11に回頭モーメントを発生させる機能とを有する。アクチュエータ11Aには、例えば特開2019-171925号公報の図1に記載されたエンジン、ノズル、デフレクタ、トリムアクチュエータ、バケット、バケットアクチュエータなどが含まれる。
操作部11Bは、アクチュエータ11Aを作動させる操船者の入力操作を受け付ける。操作部11Bは、例えば特許第5196649号公報の図1に記載されたステアリングハンドル装置、特開2019-171925号公報の図1に記載されたステアリングユニットなどと同様に構成されている。
船舶制御装置11Cは、操作部11Bが受け付けた操船者の入力操作に基づいてアクチュエータ11Aを作動させる制御などを行う。船舶制御装置11Cは、操作部11Bが受け付けた操船者の入力操作に基づいてアクチュエータ11Aを作動させる手動操船モードと、操作部11Bが入力操作を受け付ける必要なく、船舶11と通信装置12との距離と船舶11の船首方位とに基づいてアクチュエータ11Aを作動させる自動操船モードとを有する。
【0013】
トリガー発生部11Dは、船舶制御装置11Cを手動操船モードから自動操船モードに切り替えるためのトリガーを発生する。トリガー発生部11Dは、落水検知部11D1、自動操船開始指示部11D2と、入力部11D3とを備えている。
落水検知部11D1は、船舶11の乗船者(例えば操船者、操船者以外の乗船者など)の落水を検知する。第1実施形態の落水検知部11D1は、例えば特許第4205261号公報の段落0002に記載されたランヤードコードおよびスイッチと同様に構成されている。具体的には、ランヤードコードの一端が、落水の検知対象者(例えば操船者、操船者以外の乗船者など)に接続される。ランヤードコードの他端は、船舶11内に配置されたスイッチ(図示せず)に接続される。
検知対象者が船舶11から落水すると、ランヤードコードの他端がスイッチから外れ、スイッチが検知対象者の落水を検知する。その結果、トリガー発生部11Dがトリガーを発生し、船舶制御装置11Cが、手動操船モードから自動操船モードに切り替わる。
自動操船開始指示部11D2は、通信装置12から送信された自動操船開始要求(「自動操船開始要求」については後述する。)に基づいて自動操船開始指示を出力する。
自動操船開始指示部11D2が自動操船開始指示を出力すると、船舶制御装置11Cは、操作部11Bが入力操作を受け付ける必要なくアクチュエータ11Aを作動させる制御(自動操船モードの制御)を開始する。船舶制御装置11Cは、自動操船モードにおいて、船舶11と通信装置12との距離と、船舶11の船首方位とに基づいて、アクチュエータ11Aを制御する。
他の例では、トリガー発生部11Dが、自動操船開始指示部11D2を備えていなくてもよい。この例では、落水検知部11D1が船舶11の乗船者の落水を検知すると、トリガー発生部11Dがトリガーを発生し、船舶制御装置11Cが、手動操船モードから自動操船モードに切り替わると共に、自動操船モードの制御も開始する。
図1に示す例では、入力部11D3が、例えば船舶11の操船者による自動操船開始要求(例えば、通信装置12を携帯して船舶11から下船しようとしている操船者による自動操船開始要求)を受け付ける。
自動操船開始指示部11D2は、入力部11D3が自動操船開始要求を受け付けた場合にも、自動操船開始指示を出力する。自動操船開始指示部11D2が自動操船開始指示を出力すると、船舶制御装置11Cは、操作部11Bが入力操作を受け付ける必要なくアクチュエータ11Aを作動させる制御(自動操船モードの制御)を開始する。船舶制御装置11Cは、自動操船モードにおいて、船舶11と通信装置12(詳細には、船舶11から下船した操船者によって携帯されている通信装置12)との距離と、船舶11の船首方位とに基づいて、アクチュエータ11Aを制御する。
他の例では、トリガー発生部11Dが、入力部11D3を備えていなくてもよい。
【0014】
図1に示す例では、船舶位置検出部11Eは船舶11の位置を検出する。船舶位置検出部11Eは、例えばGPS(Global Positioning System)装置を備えている。GPS装置は、複数のGPS衛星からの信号を受信することによって、船舶11の位置座標を算出する。船舶位置検出部11Eによって検出された船舶11の位置は、上述した船舶制御装置11Cの自動操船モードの制御に用いられる。
船首方位検出部11Fは船舶11の船首方位を検出する。船首方位検出部11Fは、例えば方位センサを備えている。方位センサは、例えば地磁気を利用することによって、船舶11の船首方位を算出する。船首方位検出部11Fによって検出された船舶11の船首方位は、船舶制御装置11Cの自動操船モードの制御に用いられる。
他の例では、方位センサが、高速回転するジャイロスコープに指北装置と制振装置とを付加し、常に北を示すようにした装置(ジャイロコンパス)であってもよい。
更に他の例では、方位センサが、複数のGPSアンテナを備え、複数のGPSアンテナの相対的な位置関係から船首方位を算出するGPSコンパスであってもよい。
【0015】
図1に示す例では、通信部11Gが通信装置12との通信を行う。
通信装置12は、上述した落水の検知対象者(乗船者)によって携帯される。通信装置12は、通信装置位置検出部12Aと、通信部12Bと、入力部12Cとを備えている。
通信装置位置検出部12Aは通信装置12の位置を検出する。通信装置位置検出部12Aは、例えばGPS装置を備えている。GPS装置は、複数のGPS衛星からの信号を受信することによって、通信装置12の位置座標を算出する。
入力部12Cは、例えば船舶11の操船者による自動操船開始要求(例えば、通信装置12を携帯して船舶11から落水した操船者による自動操船開始要求)を受け付ける。
通信部12Bは、通信装置位置検出部12Aによって検出された通信装置12の位置を示す情報を船舶11に送信する。船舶11の通信部11Gは、通信部12Bによって送信された通信装置12の位置を示す情報を受信する。通信装置位置検出部12Aによって検出された通信装置12の位置は、船舶制御装置11Cの自動操船モードの制御に用いられる。
また、通信部12Bは、入力部12Cが受け付けた自動操船開始要求を船舶11に送信する。船舶11の通信部11Gは、通信部12Bによって送信された自動操船開始要求を受信する。上述したように、船舶11の自動操船開始指示部11D2は、通信装置12から送信された自動操船開始要求に基づいて自動操船開始指示を出力する。
他の例では、通信装置12が、入力部12Cを備えていなくてもよい。この例では、通信部12Bが自動操船開始要求を船舶11に送信せず、船舶制御装置11Cは、トリガー発生部11Dが発生したトリガーに基づいて、自動操船モードの制御を開始する。
図1に示す例では、船舶11のトリガー発生部11Dが、船舶制御装置11Cを手動操船モードから自動操船モードに切り替えるためのトリガーを発生するが、他の例では、船舶制御装置11Cを手動操船モードから自動操船モードに切り替えるためのトリガーを発生する機能が通信装置12に備えられていてもよい。
図1に示す例では、上述したように、船舶位置検出部11Eによって検出された船舶11の位置と、通信装置位置検出部12Aによって検出された通信装置12の位置とに基づいて、船舶11と通信装置12との距離が算出され、船舶制御装置11Cの自動操船モードの制御に用いられる。他の例では、船舶11が、例えばカメラ、レーダーなどの距離検出部を備え、その距離検出部によって船舶11と通信装置12との距離が検出され、船舶制御装置11Cの自動操船モードの制御に用いられてもよい。
【0016】
図2は落水検知部11D1によって船舶11の乗船者の落水が検知された時に生じ得る状況の一例を説明するための図である。
落水検知部11D1によって船舶11の乗船者(落水者)の落水が検知された時には、図2に示すように、船舶11の船首が落水者に向いていない場合、つまり、船舶11の船首方位角(図2の上向きに対して時計回りの約50°)と船舶11における通信装置12の方位角(図2の上向きに対して時計回りの約170°)との角度差(約120°(=170°-50°))が大きい場合もある。
このような場合に、船舶11から離れた位置の乗船者(落水者)に向かって船舶11を自動操船で戻す制御が適切に行われないと、船舶11のオートリターンに長い時間を要してしまう、リターンルートの安全を確保できない(つまり、安全が確保されていない位置(例えば障害物が存在する位置)を船舶11が通ってしまう)、自分から離れる向きに船舶11が進むことを見た落水者が不安を感じてしまう等の問題が生じるおそれがある。
そこで、第1実施形態の自動操船システム1では、船舶制御装置11Cが、後述するような自動操船モードの制御を実行する。
【0017】
図3は第1実施形態の船舶制御装置11Cによって実行される自動操船モードの制御の一例を説明するための図である。
図3に示す例では、図2に示す例と同様に、落水検知部11D1によって船舶11の乗船者(落水者)の落水が検知された時に、船舶11の船首が落水者に向いていない。
詳細には、落水検知部11D1によって船舶11の乗船者(落水者)の落水が検知された時に、図3(A)に示すように、船舶11の船首方位角(図3(A)の上向きに対して時計回りの約50°)と船舶11における通信装置12の方位角(図3(A)の上向きに対して時計回りの約170°)との角度差(約120°(=170°-50°))が、所定の閾値(第2閾値)より大きい。
そのため、船舶制御装置11Cは、最初に、その角度差を減少させる第1制御を実行する。詳細には、船舶制御装置11Cは、船舶11と通信装置12との距離の減少速度が第1閾値以下である第1制御を実行する。例えば船舶制御装置11Cは、第1制御として、船舶11をその場回頭させる制御を実行する。その結果、図3(B)に示すように、船舶11の船首が落水者に向いた状態になる。
次いで、船舶制御装置11Cは、船舶11と通信装置12との距離を減少させる第2制御を実行する。詳細には、船舶制御装置11Cは、船舶11と通信装置12との距離の減少速度が第1閾値より大きい第2制御を実行する。例えば船舶制御装置11Cは、第2制御として、船舶11を略直進させる制御を実行する。
その結果、図3に示す例では、船舶11のオートリターンを短時間で完了させることができる。また、落水者は、船舶11の位置と通信装置12の位置をと結ぶ直線上の障害物の有無を確認すれば済むため、リターンルートの安全確認を容易に行うことができる。更に、船舶11が落水者に向かって略直進するため、落水者に安心感を与えることができる。
つまり、図3に示す例では、船舶制御装置11Cが、第1制御、第2制御の順で自動操船モードの制御を開始する。
【0018】
詳細には、図3(B)に示す例では、船舶制御装置11Cが、第1制御の実行時に、船舶11の船首方位角と船舶11における通信装置12の方位角との角度差に基づく制御(例えば、その角度差をゼロにするフィードバック制御)を実行する。また、船舶制御装置11Cが、第2制御の実行時に、船舶11の船首方位角と船舶11における通信装置12の方位角との角度差に基づく制御(例えば、その角度差をゼロにするフィードバック制御)を実行する。
そのため、図3(B)に示す例では、潮流や風が強い場合などであっても、船舶11の船首を落水者に向け続けることができる。
【0019】
上述したように、図3(A)に示す例では、船舶制御装置11Cが、第1制御として、船舶11をその場回頭させる制御を実行する。
他の例では、船舶制御装置11Cが、第1制御として、船舶11をその場回頭させない制御を実行してもよい。この例では、上述した第1制御の実行中(つまり、船舶11の船首を落水者に向ける制御の実行中)に、船舶11と通信装置12との距離も減少する。つまり、船舶制御装置11Cが、第1制御として、船舶11を小さく旋回させる制御を実行する。
この例においても、船舶11のオートリターンを短時間で完了させることができる。また、落水者は、船舶11の位置と通信装置12の位置をと結ぶルート上の障害物の有無を確認すれば済むため、リターンルートの安全確認を容易に行うことができる。更に、船舶11が落水者に近づきながら前進するため、落水者に安心感を与えることができる。
【0020】
図3に示す例とは異なり、落水検知部11D1によって船舶11の乗船者(落水者)の落水が検知された時に、船舶11の船首が落水者に向いている場合もある。
【0021】
図4は第1実施形態の船舶制御装置11Cによって実行される自動操船モードの制御の他の例を説明するための図である。
図4に示す例では、落水検知部11D1によって船舶11の乗船者(落水者)の落水が検知された時に、船舶11の船首が落水者に向いている。
詳細には、落水検知部11D1によって船舶11の乗船者(落水者)の落水が検知された時に、船舶11の船首方位角(図4の上向きに対して時計回りの約170°)と船舶11における通信装置12の方位角(図4の上向きに対して時計回りの約170°)との角度差(約0°(=170°-170°))が、第2閾値以下になる。
図4に示す例では、船舶制御装置11Cが、第1制御を実行することなく、第2制御によって自動操船モードの制御を開始する。つまり、船舶制御装置11Cは、船舶11と通信装置12との距離を減少させる第2制御を実行することによって、自動操船モードの制御を開始する。
詳細には、船舶制御装置11Cは、船舶11と通信装置12との距離の減少速度が第1閾値より大きい第2制御を実行する。例えば船舶制御装置11Cは、第2制御として、船舶11を略直進させる制御を実行する。
その結果、図4に示す例では、船舶11のオートリターンを短時間で完了させることができる。また、落水者は、船舶11の位置と通信装置12の位置をと結ぶ直線上の障害物の有無を確認すれば済むため、リターンルートの安全確認を容易に行うことができる。更に、船舶11が落水者に向かって略直進するため、落水者に安心感を与えることができる。
【0022】
詳細には、図4に示す例では、船舶制御装置11Cが、第2制御の実行時に、船舶11の船首方位角と船舶11における通信装置12の方位角との角度差に基づく制御(例えば、その角度差をゼロにするフィードバック制御)を実行する。
そのため、図4に示す例では、落水検知部11D1によって船舶11の乗船者(落水者)の落水が検知された時に、上述した角度差がゼロではない場合であっても、船舶11の船首を落水者に向けて、船舶11を落水者に近づけることができる。
【0023】
すなわち、第1実施形態の自動操船システム1では、船舶制御装置11Cは、自動操船モードにおいて、船舶11と通信装置12との距離の減少速度が第1閾値以下である(つまり、船舶11が通信装置12に近づく前進速度が小さいか、あるいは、ゼロである)第1制御と、船舶11と通信装置12との距離の減少速度が第1閾値より大きい(つまり、船舶11が通信装置12に近づく前進速度が大きい)第2制御とを実行可能である。
【0024】
詳細には、図3(B)に示す例では、船舶制御装置11Cは、船舶11と通信装置12との距離が所定の閾値(第3閾値)以下になったときに、船舶11の前進速度を例えばゼロまで減少させる第3制御を実行する。
つまり、図3(B)に示す例では、船舶制御装置11Cは、自動操船モードにおいて、船舶11と通信装置12との距離が第3閾値より大きい場合に、第2制御を実行し、船舶11と通信装置12との距離が第3閾値以下の場合に、上述した船舶11と通信装置12との距離の減少速度が第2制御の実行時よりも小さい第3制御(例えば船舶11と通信装置12との距離の減少速度をゼロにする制御)を実行する。
【0025】
同様に、図4に示す例においても、船舶制御装置11Cは、船舶11と通信装置12との距離が第3閾値以下になったときに、船舶11の前進速度を例えばゼロまで減少させる第3制御を実行する。
【0026】
図5は第1実施形態の自動操船システム1において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図5に示す例では、ステップS101において、船舶11の例えば船舶制御装置11Cは、落水検知部11D1が船舶11の乗船者の落水を検知したか否かを判定する。落水検知部11D1が船舶11の乗船者の落水を検知していない場合には、ステップS102に進む。一方、落水検知部11D1が船舶11の乗船者の落水を検知した場合には、ステップS103に進む。
ステップS102では、船舶制御装置11Cが、手動操船モードの制御を実行する。
ステップS103では、船舶制御装置11Cが、自動操船モードの制御を実行する。
【0027】
図6図5のステップS103において実行される処理を詳細に説明するためのフローチャートである。
図6に示す例では、ステップS11において、例えば船舶制御装置11Cは、船舶11と通信装置12との距離が第3閾値以下であるか否かを判定する。船舶11と通信装置12との距離が第3閾値より大きい場合には、ステップS12に進む。一方、船舶11と通信装置12との距離が第3閾値以下の場合には、ステップS15に進む。
ステップS12において、例えば船舶制御装置11Cは、船舶11の船首方位角と船舶11における通信装置12の方位角との角度差が第2閾値より大きいか否かを判定する。船舶11の船首方位角と船舶11における通信装置12の方位角との角度差が第2閾値より大きい場合には、ステップS13に進む。一方、船舶11の船首方位角と船舶11における通信装置12の方位角との角度差が第2閾値以下の場合には、ステップS14に進む。
【0028】
ステップS13において、船舶制御装置11Cは、船舶11と通信装置12との距離の減少速度が第1閾値以下である第1制御を実行し、次いで、ステップS16に進む。
ステップS14において、船舶制御装置11Cは、船舶11と通信装置12との距離の減少速度が第1閾値より大きい第2制御を実行し、次いで、ステップS16に進む。
ステップS15において、船舶制御装置11Cは、船舶11と通信装置12との距離の減少速度が第2制御の実行時よりも小さい第3制御(例えば船舶11と通信装置12との距離の減少速度をゼロにする制御)を実行し、次いで、ステップS16に進む。
【0029】
ステップS16では、例えば船舶制御装置11Cが自動操船モードの制御を継続するか否かを判定する。自動操船モードの制御を継続する場合には、ステップS11に戻る。一方、自動操船モードの制御を継続しない場合には、図6に示すルーチンを終了する。
【0030】
<第2実施形態>
以下、本発明の自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラムの第2実施形態について説明する。
第2実施形態の自動操船システム1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の自動操船システム1と同様に構成されている。従って、第2実施形態の自動操船システム1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の自動操船システム1と同様の効果を奏することができる。
【0031】
上述したように、第1実施形態の自動操船システム1では、船舶11の落水検知部11D1が、例えば特許第4205261号公報の段落0002に記載されたランヤードコードおよびスイッチと同様に構成され、ランヤードコードの他端がスイッチから外れた場合に、船舶11の乗船者(例えば操船者、操船者以外の乗船者など)の落水を検知する。
一方、第2実施形態の自動操船システム1では、落水検知部11D1が、船舶位置検出部11Eによって検出された船舶11の位置と、通信装置12の通信装置位置検出部12Aによって検出された通信装置12の位置との距離に基づいて、船舶11の乗船者の落水を検知する。詳細には、落水検知部11D1は、船舶11の位置と通信装置12の位置との距離が所定の閾値より大きくなった場合に、船舶11の乗船者が落水したと推定する。その結果、トリガー発生部11Dがトリガーを発生し、船舶制御装置11Cが、手動操船モードから自動操船モードに切り替わり、更に、通信装置12の入力部12Cが自動操船開始要求を受け付けた場合に、船舶制御装置11Cが、船舶11と通信装置12との距離と船舶11の船首方位とに基づいてアクチュエータ11Aを作動させる。つまり、船舶制御装置11Cが、自動操船モードの制御を開始する。
【0032】
<第3実施形態>
以下、本発明の自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラムの第3実施形態について説明する。
第3実施形態の自動操船システム1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の自動操船システム1と同様に構成されている。従って、第3実施形態の自動操船システム1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の自動操船システム1と同様の効果を奏することができる。
【0033】
上述したように、第1実施形態の船舶11は、例えば特許第5196649号公報の図1に記載されたパーソナルウォータークラフト(PWC、水上オートバイ)が有する機能と同様の機能を有するPWCである。
一方、第3実施形態の船舶11は、例えば特許第6198192号公報の図1に記載された船舶が有する機能と同様の機能を有する船舶である。
第3実施形態の船舶11のアクチュエータ11Aは、船舶11の推進力を発生する機能と船舶11に回頭モーメントを発生させる機能とを有する。アクチュエータ11Aには、例えば特許第6198192号公報の図1に記載された船外機、エンジン、アクチュエータ、シフト機構などが含まれる。
第3実施形態の船舶11の操作部11Bは、アクチュエータ11Aを作動させる操船者の入力操作を受け付ける。操作部11Bは、例えば特許第6198192号公報の図1に記載された操舵輪、リモートコントロール装置、操作レバーなどと同様に構成されている。第3実施形態の船舶11の操作部11Bに、例えばジョイスティックなどが含まれていてもよい。
【0034】
<第4実施形態>
以下、本発明の自動操船システム、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラムの第4実施形態について説明する。
第4実施形態の自動操船システム1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の自動操船システム1と同様に構成されている。従って、第4実施形態の自動操船システム1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の自動操船システム1と同様の効果を奏することができる。
【0035】
図7は第4実施形態の船舶制御装置11Cが適用された自動操船システム1の一例を概略的に示す図である。
図7に示す例では、自動操船システム1が、船舶11と、通信装置12とを備えている。
第4実施形態の船舶11は、例えば特許第5196649号公報の図1に記載されたPWCが有する機能と同様の機能を有するPWCである。船舶11は、第1実施形態のアクチュエータ11Aと同様に構成されたアクチュエータ11Aと、第1実施形態の操作部11Bと同様に構成された操作部11Bと、船舶制御装置11Cと、トリガー発生部11Dと、第1実施形態の船舶位置検出部11Eと同様に構成された船舶位置検出部11Eと、第1実施形態の船首方位検出部11Fと同様に構成された船首方位検出部11Fと、第1実施形態の通信部11Gと同様に構成された通信部11Gとを備えている。
【0036】
トリガー発生部11Dは、船舶制御装置11Cを手動操船モードから自動操船モードに切り替えるためのトリガーを発生する。トリガー発生部11Dは自動操船開始指示部11D2と入力部11D3とを備えている。
入力部11D3は、例えば船舶11の操船者による自動操船開始要求(例えば、通信装置12を携帯して船舶11から下船しようとしている操船者による自動操船開始要求)を受け付ける。
自動操船開始指示部11D2は、入力部11D3が自動操船開始要求を受け付けた場合、あるいは、通信装置12の入力部12Cが自動操船開始要求を受け付けた場合に、自動操船開始指示を出力する。自動操船開始指示部11D2が自動操船開始指示を出力すると、船舶制御装置11Cは、操作部11Bが入力操作を受け付ける必要なくアクチュエータ11Aを作動させる制御(自動操船モードの制御)を開始する。船舶制御装置11Cは、自動操船モードにおいて、船舶11と通信装置12(詳細には、船舶11から下船した操船者によって携帯されている通信装置12)との距離と、船舶11の船首方位とに基づいて、アクチュエータ11Aを制御する。
第4実施形態の船舶制御装置11Cは、第1実施形態の船舶制御装置11Cと同様に、操作部11Bが受け付けた操船者の入力操作に基づいてアクチュエータ11Aを作動させる手動操船モードと、操作部11Bが入力操作を受け付ける必要なく、船舶11と通信装置12との距離と船舶11の船首方位とに基づいてアクチュエータ11Aを作動させる自動操船モードとを有する。
【0037】
図7に示す例では、通信装置12が、例えば船舶11の操船者によって携帯される。通信装置12は、第1実施形態の通信装置位置検出部12Aと同様に構成された通信装置位置検出部12Aと、第1実施形態の通信部12Bと同様に構成された通信部12Bと、入力部12Cとを備えている。
入力部12Cは、例えば船舶11の操船者による自動操船開始要求(例えば、通信装置12を携帯して船舶11から下船した操船者による自動操船開始要求、つまり、陸上の操船者からの自動操船開始要求)を受け付ける。
通信部12Bは、通信装置位置検出部12Aによって検出された通信装置12の位置を示す情報を船舶11に送信する。通信装置位置検出部12Aによって検出された通信装置12の位置は、船舶制御装置11Cの自動操船モードの制御に用いられる。
また、通信部12Bは、入力部12Cが受け付けた自動操船開始要求を船舶11に送信する。上述したように、船舶11の自動操船開始指示部11D2は、通信装置12から送信された自動操船開始要求に基づいて自動操船開始指示を出力する。
【0038】
図8は第4実施形態の自動操船システム1において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図8に示す例では、ステップS201において、船舶11の例えば船舶制御装置11Cは、自動操船開始指示部11D2が自動操船開始指示を出力したか否か(つまり、例えば下船しようとしている操船者、または、下船した操船者による自動操船開始要求があったか否か)を判定する。自動操船開始指示部11D2が自動操船開始指示を出力していない(つまり、例えば操船者による自動操船開始要求がない)場合には、ステップS202に進む。一方、自動操船開始指示部11D2が自動操船開始指示を出力した(つまり、例えば操船者による自動操船開始要求があった)場合には、ステップS203に進む。
ステップS202では、船舶制御装置11Cが、手動操船モードの制御を実行する。
ステップS203では、船舶制御装置11Cが、自動操船モードの制御を実行する。詳細には、ステップS203では、船舶11から離れた位置の操船者に向かって船舶が自動操船で移動させられる。
【0039】
第4実施形態の自動操船システム1では、自動操船開始指示部11D2が自動操船開始指示を出力した時の船舶11の船首方位角と船舶11における通信装置12の方位角との角度差が第2閾値より大きい場合に、船舶制御装置11Cは、図3に示す例と同様に、第1制御、第2制御の順で自動操船モードの制御を開始する。
また、第4実施形態の自動操船システム1では、自動操船開始指示部11D2が自動操船開始指示を出力した時の船舶11の船首方位角と船舶11における通信装置12の方位角との角度差が第2閾値以下の場合に、船舶制御装置11Cは、図4に示す例と同様に、第1制御を実行することなく、第2制御によって自動操船モードの制御を開始する。
【0040】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。上述した各実施形態および各例に記載の構成を組み合わせてもよい。
【0041】
なお、上述した実施形態における自動操船システム1が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0042】
1…自動操船システム、11…船舶、11A…アクチュエータ、11B…操作部、11C…船舶制御装置、11D…トリガー発生部、11D1…落水検知部、11D2…自動操船開始指示部、11D3…入力部、11E…船舶位置検出部、11F…船首方位検出部、11G…通信部、12…通信装置、12A…通信装置位置検出部、12B…通信部、12C…入力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8