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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】化学センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20220617BHJP
   G01N 31/22 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
G01N21/78 A
G01N31/22 121C
G01N31/22 121F
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020189215
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2021081429
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】108141583
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】514024712
【氏名又は名称】台湾ナノカーボンテクノロジー股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TAIWAN CARBON NANO TECHNOLOGY CORPORATION
【住所又は居所原語表記】5F.,NO.50-1, Keyan Rd.,Zhunan Township, Miaoli County, Taiwan(R.O.C.)
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】許 景棟
(72)【発明者】
【氏名】林 照傑
(72)【発明者】
【氏名】黄 原新
(72)【発明者】
【氏名】施 純偉
(72)【発明者】
【氏名】李 家宏
(72)【発明者】
【氏名】蔡 群賢
(72)【発明者】
【氏名】蔡 群榮
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-372524(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0231513(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0160005(US,A1)
【文献】特表2016-524144(JP,A)
【文献】特表2007-506102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0370542(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/83
G01N 31/00-31/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1収容空間と、複数の第2収容空間とを有する基板と、
少なくとも1つの第1検知材料が前記基板の前記第1収容空間に露出するように設けられ第1比色センサアレイと、
少なくとも1つの第2検知材料が前記基板の前記第2収容空間に設けられ、且つ前記第2収容空間には、液体遮断し気体通過を許容する隔離層がコーティングされ第2比色センサアレイとを含み、
前記基板を液体である被験物に設置する時に、前記第1比色センサアレイは前記被験物の揮発部分及び非揮発部分によって第1初期色から第1指示色に変わり、前記第2比色センサアレイは前記被験物の前記揮発部分によって第2初期色から第2指示色に変わり、前記第1検知材料及び前記第2検知材料はそれぞれ独立的に、メチルレッド、コンゴレッド、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールパープル、ブロモクレゾールグリーン、クレゾールレッド、フェノールレッド、チモールフタレイン、レサズリン、p-ニトロフェノール、ブロモチモールブルー、チモールブルー、ニュートラルレッド、クリスタルバイオレット、4-(4-ニトロベンジル)ピリジン、ピロカテコールバイオレット、クロロフェノールレッド、ニトラジンイエロー、ブロモフェノールレッド、m-クレゾールパープル、エリオクロムブラックT(Eriochrome black T)、サフラニン、ルシフェリン、エオシンY(Eosin yellow)、ブリリアントグリーン(Brilliant green)、チタンエロー、ビクトリアブルーB、カルミン、リトマス、クルクミン、アントシアニン、アリザリンレッドS、アリザリンイエローR、インジゴカルミン、ナイルブルーA、オレンジG、エオシンB、3’,3’’,5’,5’’-テトラヨードフェノールスルホンフタレイン、ブロモキシレノールブルー、フェノールブルー、ディスパースオレンジ25、アクリジンオレンジ、ディスパースオレンジ3、ディスパースレッド1、ブロモピロガロールレッド、ジアミノジフェニルスルホン、アミノフルオレセイン、ムレキシド、2,6-ジクロロインドフェノール、ピロカテコールバイオレット、そのナトリウム塩、及びその混合物ら選ばれる呈色試薬を含む、化学センサ。
【請求項2】
前記基板の前記第1指示色及び前記第2指示色の一方の画像を取得する画像キャプチャを有するハードウェアデバイスをさらに含み、前記ハードウェアデバイスは前記画像と予め設定されたデータベースの比較結果に基づいて前記被験物に関する成分情報を提供する請求項1に記載の化学センサ。
【請求項3】
前記基板は前記第1収容空間を設置するための第1板体と、前記第1板体に対して所定の角度を有しており前記第2収容空間を設置するための第2板体とを有する請求項1に記載の化学センサ。
【請求項4】
前記基板は透明なポリエチレンテレフタラートからなる請求項1に記載の化学センサ。
【請求項5】
前記第1検知材料及び前記第2検知材料はそれぞれ独立的に、ステアリルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルホルマール、ポリ酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブテン樹脂、ポリエチレングリコール、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、セルロースナノファイバー、シロキサンから選ばれる分子バリア性材を含む請求項1に記載の化学センサ。
【請求項6】
前記隔離層の素材は多孔質ポリウレタンフィルム、多孔質ポリエチレンフィルム、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム、繊維状の高密度ポリエチレン通気性フィルムから選ばれる請求項1に記載の化学センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学センサに関し、特に比色センサアレイを有する化学センサに関する。
【背景技術】
【0002】
比色センサ(Colorimetric)は、化学反応が誘発する色の変化を利用して、被験物質の化学情報を取得する1種の化学センサである。現在、環境監視、食品監視、他の化学監視等分野に幅広く用いられる。
【0003】
従来の比色センサとしては、例えば、特許文献1に記載されたものがあり、被験物質の存在及びその濃度の一方又は両方を測定する比色センサである。実質的に連続する反射層と、前記反射層にコーティングされる検出層とを含み、前記検出層は少なくとも1種のポリマー成分を含み、前記被験物質に接触すると前記検出層の光学的厚さが変わる。前記検出層によってコーティングされる実質的に連続する反射層の屈折率と前記検出層の屈折率は異なる。
【0004】
上記の従来技術で優れた発色効果を得ているが、改善する余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国出願公開特許第US20040184948A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の比色センサを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するためになされるものであり、基板と、第1比色センサアレイと、第2比色センサアレイとを含む化学センサを開示する。当該基板は第1収容空間と、第2収容空間とを有し、当該第1比色センサアレイは当該基板の当該第1収容空間に露出するように設けられる。当該第2比色センサアレイは当該基板の当該第2収容空間に設けられ、且つ当該第2収容空間には、液体分子を遮断し気体分子の通過を許容する隔離層がコーティングされる。当該第1比色センサアレイは少なくとも1つの第1検知材料を含み、当該第2比色センサアレイは少なくとも1つの第2検知材料を含み、当該基板を被験物に設置する時に、当該第1比色センサアレイは被験物の揮発部分及び非揮発部分によって第1初期色から第1指示色に変わり、当該第2比色センサアレイは当該被験物の当該揮発部分によって第2初期色から第2指示色に変わる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、第1比色センサアレイが被験物の揮発部分及び非揮発部分を検知して第1指示色を取得し、第2比色センサアレイが被験物の揮発部分を検知して第2指示色を取得し、第1指示色と第2指示色を比較して分析することにより、被験物の揮発部分の情報及び非揮発部分の情報を同時に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施例の構造の上面模式図である。
図2】本発明の一実施例の構造の断面模式図である。
図3A】本発明の一実施例の使用模式図その1である。
図3B】本発明の一実施例の使用模式図その2である。
図4A】本発明の第1実施例の検知模式図である。
図4B】本発明の第1実施例の初期状態の写真である。
図4C】本発明の第1実施例の反応後の写真である。
図5A】本発明の第2実施例の検知模式図である。
図5B】本発明の第2実施例の初期状態の写真である。
図5C】本発明の第2実施例の反応後の写真である。
図6A】本発明の第3実施例の検知模式図である。
図6B】本発明の第3実施例の初期状態の写真である。
図6C】本発明の第3実施例の反応後の写真である。
図7A】本発明の一実施例の板体の展開模式図である。
図7B】本発明の一実施例の板体の二つ折りの模式図である。
図7C】本発明の一実施例の検知模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の技術内容を詳細に説明する。
図1図2が参照されるとおり、本発明は、基板10と、第1比色センサアレイ20と、第2比色センサアレイ30とを含む化学センサを開示する。基板10は第1収容空間11と、第2収容空間12とを有する。第1比色センサアレイ20は基板10の第1収容空間11に露出するように設けられる。第2比色センサアレイ30は基板10の第2収容空間12に設けられ、且つ第2収容空間12に隔離層40がコーティングされ、隔離層40は被験物中の液体分子を遮断し気体分子の通過を許容し、隔離層40の素材は多孔質ポリウレタンフィルム、多孔質ポリエチレンフィルム、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム、繊維状の高密度ポリエチレン通気性フィルム等遮水性と通気性のあるものから選ばれ、且つ基板10は透明なポリエチレンテレフタラート(PET)からなってもよい。
【0011】
第1比色センサアレイ20は少なくとも1つの第1検知材料を含む。第2比色センサアレイ30は少なくとも1つの第2検知材料を含む。当該第1検知材料及び当該第2検知材料はそれぞれ独立的に、メチルレッド、コンゴレッド、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールパープル、ブロモクレゾールグリーン、クレゾールレッド、フェノールレッド、チモールフタレイン、レサズリン、p-ニトロフェノール、ブロモチモールブルー、チモールブルー、ニュートラルレッド、クリスタルバイオレット、4-(4-ニトロベンジル)ピリジン、ピロカテコールバイオレット、クロロフェノールレッド、ニトラジンイエロー、ブロモフェノールレッド、m-クレゾールパープル、エリオクロムブラックT(Eriochrome black T)、サフラニン、ルシフェリン、エオシンY(Eosin yellow)、ブリリアントグリーン(Brilliant green)、チタンエロー、ビクトリアブルーB、カルミン、リトマス、クルクミン、アントシアニン、アリザリンレッドS、アリザリンイエローR、インジゴカルミン、ナイルブルーA、オレンジG、エオシンB、3’,3’’,5’,5’’-テトラヨードフェノールスルホンフタレイン、ブロモキシレノールブルー、フェノールブルー、ディスパースオレンジ25、アクリジンオレンジ、ディスパースオレンジ3、ディスパースレッド1、ブロモピロガロールレッド、ジアミノジフェニルスルホン、アミノフルオレセイン、ムレキシド、2,6-ジクロロインドフェノール、ピロカテコールバイオレット、前記化合物のナトリウム塩又は混合物等から選ばれる呈色試薬を含む。
【0012】
当該第1検知材料及び当該第2検知材料はそれぞれ独立的に、ステアリルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルホルマール、ポリ酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブテン樹脂、ポリエチレングリコール、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、セルロースナノファイバー(Cellulose Nanofiber、略称CNF)、シロキサン等から選ばれる分子バリア性材を含んでもよく、当該分子バリア性材は当該第1検知材料及び当該第2検知材料の目的被験分子との反応速度に影響を与え、当該分子バリア性材の選択によって、反応速度を調整し、使用上のニーズを満たすことができる。
【0013】
図3Aが参照されるとおり、第1比色センサアレイ20は被験物50の揮発部分51及び非揮発部分52によって第1初期色から第1指示色に変わり、第2比色センサアレイ30は被験物50の揮発部分51によって第2初期色から第2指示色に変わる。基板10を被験物50に設置する時に、第1比色センサアレイ20は当該第1指示色を表示し、第2比色センサアレイ30は当該第2指示色を表示する。
【0014】
図3Bが参照されるとおり、本発明はハードウェアデバイス60をさらに含み、ハードウェアデバイス60は画像キャプチャ61を有し、画像キャプチャ61は当該第1指示色及び当該第2指示色の一方の画像を取得し、ハードウェアデバイス60は当該画像と予め設定されたデータベース70の比較結果に基づいて被験物50に関する成分情報を提供する。つまり、被験物50から基板10を取り出した後、画像キャプチャ61を基板10に合わせると、当該第1指示色及び当該第2指示色を取得して、被験物50の成分情報を得ることができる。
【0015】
次に、図4Aから図5Cで本発明の化学センサの実際の用途を例示的に説明する。21st Century HealthCare,Inc.が提供するマルチビタミン錠(Mega Multi for Men)を200gの脱イオン水に溶解し、不溶物を濾過し、濾過後の溶液を被験物50とする。図4Aは被験物50に設置される第1比色センサアレイ20の検知模式図であり、図4Bは第1比色センサアレイ20が被験物50に設置されない初期状態の写真であり、図4Cは第1比色センサアレイ20が被験物50に設置されて8分間後の写真である。第1比色センサアレイ20が被験物50に設置されると、被験物50の揮発部分51及び非揮発部分52は第1比色センサアレイ20によって吸収され、当該第1検知材料が使用する呈色試薬と分子バリア性材によって、第1比色センサアレイ20はそれぞれの当該第1初期色からそれぞれの当該第1指示色に変わる。図5Aは被験物50に設置される第2比色センサアレイ30の検知模式図であり、図5Bは第2比色センサアレイ30が被験物50に設置されない初期状態の写真であり、図5Cは第2比色センサアレイ30が被験物50に設置されて19時間後の写真である。第2比色センサアレイ30が被験物50に設置されると、隔離層40は被験物50を遮断し気体分子の通過のみを許容するため、被験物50の揮発部分51のみが隔離層40を通過して、第2比色センサアレイ30によって吸収され、当該第2検知材料が使用する呈色試薬と分子バリア性材によって、第2比色センサアレイ30はそれぞれの当該第2初期色からそれぞれの当該第2指示色に変わる。
【0016】
図6A図6B図6Cが参照される。図6Aに示すように、第1比色センサアレイ20(第2比色センサアレイ30を使用してもよい)は被験物50に近い検知位置に設置される。図6Bは第1比色センサアレイ20が当該検知位置に設置されない初期状態の写真であり、図6Cは当該検知位置に設置されて48時間後の第1比色センサアレイ20の写真である。当該検知位置に設置される第1比色センサアレイ20は被験物50に接触していないため、被験物50の揮発部分51のみが気流を通じて第1比色センサアレイ20に吸収され、当該第1検知材料が使用する呈色試薬と分子バリア性材によって、第1比色センサアレイ20はそれぞれの当該第1初期色からそれぞれの当該第1指示色に変わる。
【0017】
図7A図7B図7Cが参照されるとおり、別の実施例では、基板10は第1板体101と、第2板体102とを有する。第1板体101は第1収容空間11を設けるために用いられ、第2板体102は第2収容空間12を設けるために用いられ、且つ第1板体101と第2板体102との間に角度θが形成され、角度θは180°に近いようにしてもよく(図7Aを参照)、このようにして画像が取得しやすくなる。又は、角度θが約40°~80°であってもよく(図7Bを参照)、角度θが40°~80°である場合に、第1板体101を直接被験物50に設置すればよく、第2板体102は被験物50に設置されずに済む。第1比色センサアレイ20が第1収容空間11に設けられ且つ第1板体101に位置し、第1比色センサアレイ20Aが第2収容空間12に設けられ且つ第2板体102に位置するため、第1比色センサアレイ20で被験物50の揮発部分及び非揮発部分を検知して当該第1指示色を取得し、第1比色センサアレイ20Aで被験物50の揮発部分を検知して当該第2指示色を取得する。当該実施例では、隔離層40は必ずしも設置するとは限らないが、場合によって第2収容空間12に設けられてもよい。
【0018】
上述した内容から分かるように、本発明は少なくとも次の利点を有する。
1.第1比色センサアレイが露出しており被験物に接触し、第2比色センサアレイが被験物の気体分子に接触するが被験物の液体分子に接触しないため、第1比色センサアレイは人間の味覚器官(舌)のように機能し、第2比色センサアレイは人間の臭覚器官(鼻)のように機能する。したがって、本発明の化学センサは第1比色センサアレイ及び第2比色センサアレイを設けることで、人間の臭覚器官及び味覚器官をシミュレーションすることができる。
2.第1板体と第2板体との間の角度は、使用時に検知と画像取得の両方に対応するように変更することができる。
【符号の説明】
【0019】
10 基板
101 第1板体
102 第2板体
11 第1収容空間
12 第2収容空間
20 第1比色センサアレイ
20A 第1比色センサアレイ
30 第2比色センサアレイ
40 隔離層
50 被験物
51 揮発部分
52 非揮発部分
60 ハードウェアデバイス
61 画像キャプチャ
70 予め設定されたデータベース
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C