(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】食品生地片の巻き成形装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
A21C 3/06 20060101AFI20220617BHJP
【FI】
A21C3/06 A
(21)【出願番号】P 2020522248
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2019021271
(87)【国際公開番号】W WO2019230791
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2018104413
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019016806
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115924
【氏名又は名称】レオン自動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】樋口 勝道
(72)【発明者】
【氏名】福上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】大類 彰浩
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-271939(JP,A)
【文献】実開平2-44989(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102015106138(DE,A1)
【文献】国際公開第86/02808(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00-15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品生地片の巻き成形装置であって、
中速コンベヤ及び前記中速コンベヤの下流側に連設される低速コンベヤと、
前記中速コンベヤ及び前記低速コンベヤに上下方向に対向する高速コンベヤと、を備え、
前記中速コンベヤ及び前記低速コンベヤは、前記高速コンベヤに対向する側に、前記中速コンベヤの下流端部と前記低速コンベヤの上流端部とで形成される凹部を備え、
前記中速コンベヤ及び前記低速コンベヤと前記高速コンベヤとが対向する側において、前記中速コンベヤ及び前記低速コンベヤの走行面の走行方向と前記高速コンベヤの走行面の走行方向は両方とも、食品生地片を上流側から下流側に搬送する搬送方向と同一であり、
前記低速コンベヤの走行速度は、前記中速コンベヤの走行速度より低速に設けられ、
前記高速コンベヤの走行速度は、前記中速コンベヤの走行速度より高速に設けられ、
前記高速コンベヤは、食品生地片の下流端部が前記凹部内に屈曲するように前記中速コンベヤに対して配置され、且つ、食品生地片の巻き芯部を形成して前記低速コンベヤに対して搬送方向に転動する方向に回転して巻かれるように前記低速コンベヤに対して配置されることを特徴とする巻き成形装置。
【請求項2】
前記高速コンベヤは、前記中速コンベヤ及び前記低速コンベヤの上方に配置され、
前記高速コンベヤの上流端は、前記中速コンベヤの下流端より上流側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の巻き成形装置。
【請求項3】
前記高速コンベヤの走行面は、前記中速コンベヤ及び低速コンベヤの走行面に対し上流側から下流側に向かって対向するクリアランスが広くなるように配置されることを特徴とする請求項2に記載の巻き成形装置。
【請求項4】
前記高速コンベヤはベルトコンベヤであり、下方の前記低速コンベヤに対向する走行面は、下方に撓みを有することを特徴とする請求項2に記載の巻き成形装置。
【請求項5】
巻き食品生地の巻き終端の位置を調整する調整コンベヤが前記低速コンベヤの上方において前記高速コンベヤの下流側に連設されたことを特徴とする請求項2に記載の巻き成形装置。
【請求項6】
前記中速コンベヤ及び前記低速コンベヤは、前記高速コンベヤの上方に配置されることを特徴とする請求項1に記載の巻き成形装置。
【請求項7】
前記中速コンベヤの走行面は、前記高速コンベヤの走行面に対し、上流側から下流側に向かって対向するクリアランスが狭まるよう配置され、
前記低速コンベヤの走行面は、前記高速コンベヤの走行面に対し、上流側から下流側に向かって対向するクリアランスが広がるよう配置されることを特徴とする請求項6に記載の巻き成形装置。
【請求項8】
前記低速コンベヤはベルトコンベヤであり、下方の高速コンベヤに対向する走行面は、下方に撓みを有することを特徴とする請求項6に記載の巻き成形装置。
【請求項9】
巻き食品生地の巻き終端の位置を調整する調整コンベヤが前記低速コンベヤの下方において、前記高速コンベヤの下流側に連設されることを特徴とする請求項6に記載の巻き成形装置。
【請求項10】
前記高速コンベヤの上流側かつ前記中速コンベヤの上方に押圧ローラを備えることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の巻き成形装置。
【請求項11】
前記押圧ローラはその周方向に延在するように形成された突条部をその軸方向に複数列備えることを特徴とする請求項10に記載の巻き成形装置。
【請求項12】
更に、巻き食品生地の巻き終端位置に関する情報を検出するためのカメラを、前記調整コンベヤの下流側に備えることを特徴とする請求項5又は9に記載の巻き成形装置。
【請求項13】
食品生地片を巻かれた状態へと成形する成形方法であって、
中速コンベヤと前記中速コンベヤよりも高速であり且つ前記中速コンベヤと同じ向きに移動するように前記中速コンベヤと対向する高速コンベヤの間に食品生地片を搬送し、
前記中速コンベヤと前記高速コンベヤの速度差により、食品生地片の高速コンベヤ側を中速コンベヤ側よりも速く前記中速コンベヤから送り出して、食品生地片の下流端部を中速コンベヤ側に屈曲させ、
食品生地片の屈曲した下流端部を、前記中速コンベヤよりも低速であり且つ前記中速コンベヤと同じ向きに移動するように前記中速コンベヤの下流側に配置された低速コンベヤの上流端部に衝突させ、前記中速コンベヤと前記低速コンベヤの速度差により、食品生地の屈曲した下流端部を座屈させて折り曲げ、
食品生地片の折り曲げた下流端部を前記低速コンベヤとそれに対向する前記高速コンベヤの間で圧着して、巻き芯部を形成し、
前記低速コンベヤと前記高速コンベヤの速度差により、食品生地片を、巻き芯部を中心に前記低速コンベヤと前記高速コンベヤの間で転動させ、巻かれた状態に成形することを特徴とする成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏平なパン生地などの食品生地片を巻かれた状態へと成形するための装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品生地片を巻き成形する装置およびその方法は広く知られている。例えば、特許文献1はコンベヤ上でゴム板によって食品生地片を下流端部より巻き上げる装置を開示する。また、特許文献2はコンベヤ上で転圧板によって食品生地片を下流端部より巻き上げる装置を開示する。上記のゴム板および転圧板などの巻き上げ部材は、搬送される食品生地片に抵抗を与えるものであれば良く、可撓性のある部材や網状の鎖などで代替可能である。
【0003】
特許文献3は、前コンベヤ、入口部に傾斜した案内面を備えた後コンベヤ、および後コンベヤの上方に設けられた巻き上げコンベヤを備えた巻き上げ装置を開示する。前記巻き上げコンベヤは前記後コンベヤに対し、対向面で逆方向に走行する。搬送される食品生地片は、その下流端部が前記傾斜した案内面によって上方向を向き、前記巻き上げコンベヤによって搬送方向とは逆方向に付勢されて巻き上げられる。
【0004】
上述のように、従来の巻き上げ成形装置は食品生地片をめくり上げて成形している。食品生地片は搬送方向に搬送され、巻き上げ部材や巻き上げコンベヤ等に接触する。その抵抗によって食品生地片の下流端部が上方向を向き、巻き芯部が形成される。巻き芯部が食品生地片の搬送方向と逆方向に付勢されながら回転し、その周囲に残余の生地が巻き付けられることによって、食品生地片から巻き上げられた巻き食品生地が成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-61533号公報
【文献】特開平8-308466号公報
【文献】特開平2-79930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の巻き成形装置には、成形不良という問題がある。従来の巻き成形装置は食品生地片の下流端部をめくり上げて起立させ巻き成形を開始する。巻き芯部は食品生地片への抵抗によって形成されるが、食品生地片ごとに受ける抵抗は異なり、巻き芯の形成は安定しない。成形時に食品生地片が曲がって巻き芯が斜めに形成されたり、巻き食品生地の中心に空洞が形成されて巻き成形が充分に行なわれないことがある。また、従来の巻き成形装置には、巻き食品生地の巻き終端位置の乱れという問題がある。従来の巻き成形装置では、食品生地片が巻き上げ部材等に対し滑るため、巻き成形の開始位置が安定しない。開始位置が乱れることにより、搬送コンベヤ上の各巻き食品生地の巻き終端の位置はそれぞれ異なる。
【0007】
従来の巻き成形装置には、食品生地片の滞留という問題がある。巻き食品生地の成形ラインでは、巻き成形装置の上流側に食品生地片の成形装置が備えられ、食品生地片は搬送方向に沿って連続的に所定の間隔で巻き成形装置に供給される。従来の巻き成形装置では、先行する食品生地片が巻き上げ部材からの抵抗で搬送を阻害され、巻き上げ部材と搬送コンベヤとの間に進入しない場合がある。先行する食品生地片は巻き上げ部材の上流端部に留まったまま回転し続け、後続する食品生地片と接触結着する。
【0008】
従来の巻き成形装置には、生産能力を上げ難いという問題がある。単位時間あたりの食品生地片の処理数を増やすために巻き成形装置を含む成形ラインの走行速度を上げると、上述の成形不良の発生が増加する。また、単位搬送距離あたりの食品生地片の処理数を増やすために食品生地片の間隔を狭めると、上述の滞留による結着が増加する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、食品生地片の巻き成形装置を提供し、かかる巻き成形装置は、中速コンベヤ及び前記中速コンベヤの下流側に連設される低速コンベヤと、前記中速コンベヤ及び前記低速コンベヤに上下方向に対向する高速コンベヤを備え、前記中速コンベヤ及び前記低速コンベヤは、前記高速コンベヤに対向する側に、前記中速コンベヤの下流端部と前記低速コンベヤの上流端部とで形成される凹部を備え、前記中速コンベヤ及び前記低速コンベヤと前記高速コンベヤとが対向する側において、前記中速コンベヤ及び前記低速コンベヤの走行面の走行方向と前記高速コンベヤの走行面の走行方向は両方とも、前記食品生地片を上流側から下流側に搬送する搬送方向と同一であり、前記低速コンベヤの走行速度は、前記中速コンベヤの走行速度より低速に設けられ、前記高速コンベヤの走行速度は、前記中速コンベヤの走行速度より高速に設けられ、前記高速コンベヤは、食品生地片の下流端部が前記凹部内に屈曲するように前記中速コンベヤに対して配置され、且つ、食品生地片の巻き芯部を形成して前記低速コンベヤに対して搬送方向に転動する方向に回転して巻かれるように前記低速コンベヤに対して配置されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は上記の巻き成形装置であって、好ましくは、前記高速コンベヤは、前記中速コンベヤ及び前記低速コンベヤの上方に配置され、前記高速コンベヤの上流端は、前記中速コンベヤの下流端より上流側に配置されることを特徴とする。また、更に好ましくは、前記高速コンベヤの走行面は、前記中速コンベヤ及び低速コンベヤの走行面に対し上流側から下流側に向かって対向するクリアランスが広くなるように配置されることを特徴とする。また、更に好ましくは、前記高速コンベヤはベルトコンベヤであり、下方の前記低速コンベヤに対向する走行面は、下方に撓みを有することを特徴とする。また、更に好ましくは、巻き食品生地の巻き終端の位置を調整する調整コンベヤが前記低速コンベヤの上方において前記高速コンベヤの下流側に連設されたことを特徴とする。更に好ましくは、巻き食品生地の巻き終端位置に関する情報を検出するためのカメラを、前記調整コンベヤの下流側に備えることを特徴とする。また、更に好ましくは、前記高速コンベヤの上流側かつ前記中速コンベヤの上方に押圧ローラを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は上記の巻き成形装置であって、好ましくは、前記中速コンベヤ及び前記低速コンベヤは、前記高速コンベヤ上方に配置されることを特徴とする。また、更に好ましくは、前記中速コンベヤの走行面は、前記高速コンベヤの走行面に対し、上流側から下流側に向かって対向する間隔が狭まるよう配置され、前記低速コンベヤの走行面は、前記高速コンベヤの走行面に対し、上流側から下流側に向かって対向する間隔が広がるよう配置されることを特徴とする。また、更に好ましくは、前記低速コンベヤはベルトコンベヤであり、下方の高速コンベヤに対向する走行面は、下方に撓みを有することを特徴とする。また、更に好ましくは、巻き食品生地の巻き終端の位置を調整する調整コンベヤが前記低速コンベヤの上方において、前記高速コンベヤの下流側に連設されることを特徴とする。更に好ましくは、巻き食品生地の巻き終端位置に関する情報を検出するためのカメラを、前記調整コンベヤの下流側に備えることを特徴とする。
【0012】
本発明は、食品生地片を巻かれた状態へと成形する成形方法であって、かかる成形方法は、中速コンベヤと前記中速コンベヤよりも高速であり且つ前記中速コンベヤと同じ向きに移動するように前記中速コンベヤと対向する高速コンベヤの間に食品生地片を搬送し、前記中速コンベヤと前記高速コンベヤの速度差により、食品生地片の高速コンベヤ側を中速コンベヤ側よりも速く前記中速コンベヤから送り出して、食品生地片の下流端部を中速コンベヤ側に屈曲させ、食品生地片の屈曲した下流端部を、前記中速コンベヤよりも低速であり且つ前記中速コンベヤと同じ向きに移動するように前記中速コンベヤの下流側に配置された低速コンベヤの上流端部に衝突させ、前記中速コンベヤと前記低速コンベヤの速度差により、食品生地の屈曲した下流端部を座屈させて折り曲げ、食品生地片の折り曲げた下流端部を前記低速コンベヤとそれに対向する前記高速コンベヤの間で圧着して、巻き芯部を形成し、前記低速コンベヤと前記高速コンベヤの速度差により、食品生地片を、巻き芯部を中心に前記低速コンベヤと前記高速コンベヤの間で転動させ、巻かれた状態に成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は良好な形状の巻き食品生地を安定して生産できる。本発明は、食品生地片の下流端部を上下に対向する中速コンベヤと高速コンベヤで屈曲させ、後続する低速コンベヤと高速コンベヤの間で折り曲げ圧着して巻き芯部を形成する。生地の動きを規制しながら成形が行なわれるため、上述の成形不良が発生しない。また、連続して供給される食品生地片は、連設される中速コンベアと低速コンベヤで形成される凹部で巻き成形が開始する。巻き成形の開始位置が安定するため、コンベヤ上の各巻き食品生地の巻き終端位置もまた同一に揃う。
【0014】
本発明は食品生地片(あるいは巻き食品生地)が巻き成形装置内で滞留することを防止できる。特に、本発明は、連設される中速コンベヤ及び低速コンベヤと上下に対向する高速コンベヤの各対向面を両方とも、搬送方向と同方向に走行させることにより、食品生地片(あるいは巻き食品生地)を搬送方向に常に搬送し、排出する作用がある。これに対して、従来の巻き成形装置では、食品生地片の搬送が巻き上げ部材の抵抗で阻害されることがあるので、食品生地片が巻き上げ部材のところで滞留し、後続する食品生地片と接触結着することがある。また、従来の巻き成形装置のように食品生地片を巻き上げ部材の抵抗を利用して巻く場合、巻き成形装置から排出される巻き食品生地のピッチは、巻き成形装置に進入する巻き食品生地のピッチよりも小さくなる傾向がある。これにより、食品生地片と後続する食品生地片が接触決着することもある。
【0015】
本発明によれば、上述のとおり安定した巻き成形ができ、また、巻き成形装置内での滞留を防止できる。その結果、巻き食品生地のピッチが一定になる。したがって、巻き成形装置を含む成形ラインの走行速度を上げることができ、また、連続して供給される食品生地片の間隔を狭く設定することができ、生産能力を向上させることができる。これに対して、従来の巻き成形装置では、従来の巻き成形装置で生産能力を増大させようとすると、連続する巻き食品生地の間のピッチを確保するために、搬送コンベヤの速度を著しく速くする必要があり、安定した生産が困難になることがある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る巻き成形装置の斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る巻き成形装置の正面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る巻き成形装置の主要部の正面図である。
【
図4a】本発明の第1の実施形態に係る巻き成形装置における食品生地片の成形作用の説明図である。
【
図4b】本発明の第1の実施形態に係る巻き成形装置における食品生地片の成形作用の説明図である。
【
図4c】本発明の第1の実施形態に係る巻き成形装置における食品生地片の成形作用の説明図である。
【
図4d】本発明の第1の実施形態に係る巻き成形装置における食品生地片の成形作用の説明図である。
【
図4e】本発明の第1の実施形態に係る巻き成形装置における食品生地片の成形作用の説明図である。
【
図4f】本発明の第1の実施形態に係る巻き成形装置における食品生地片の成形作用の説明図である。
【
図4g】本発明の第1の実施形態に係る巻き成形装置における食品生地片の成形作用の説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る巻き成形装置の第1変形例の正面図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る巻き成形装置の第2変形例の正面図である。
【
図7a】巻き食品生地の第1の位置の平面及び正面を示す図である。
【
図7b】巻き食品生地の第2の位置の平面及び正面を示す図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る巻き成形装置の正面図である。
【
図9a】本発明の第2の実施形態に係る巻き成形装置おける食品生地片の成形作用の説明図である。
【
図9b】本発明の第2の実施形態に係る巻き成形装置おける食品生地片の成形作用の説明図である。
【
図9c】本発明の第2の実施形態に係る巻き成形装置おける食品生地片の成形作用の説明図である。
【
図9d】本発明の第2の実施形態に係る巻き成形装置おける食品生地片の成形作用の説明図である。
【
図9e】本発明の第2の実施形態に係る巻き成形装置おける食品生地片の成形作用の説明図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る巻き成形装置の第1変形例の正面図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態に係る巻き成形装置の第3変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して幾つかの例示的な実施形態を説明する。以下の記載では、パン生地層と油脂層が積層された食品生地片からクロワッサンを成形しているが、本発明はこれに限定されない。食品生地片は他の種類のパン生地でも良く、その形状および寸法は巻き上げが可能な範囲で適宜選ばれ得る。例えば本発明は、ブレッドロール、バゲット、型に入れて焼成するパン等の生産にも適用できる。
【0018】
図1乃至
図3を参照するに、本発明の第1の実施形態に係る巻き成形装置10は、中速コンベヤ1、低速コンベヤ2、高速コンベヤ3及び調整コンベヤ4を備える。前記巻き成形装置10は、食品生地片Pを搬送方向X(
図2において右側から左側)に搬送しながら食品生地片Pを巻き食品生地PPへと成形する。前記食品生地片Pは、略三角形のクロワッサン生地であり、搬送下流側に位置する生地部分を下流端部PL、底辺を下流端PE、搬送上流側に位置する頂点を上流端PTとする。また、上流端PTは、巻き食品生地PPにおいては巻き終端PTと称される。
【0019】
前記中速コンベヤ1は、ベルトコンベヤであり、無端ベルト11が、駆動プーリ12と、下流端部を構成する従動プーリ13等のプーリに掛け回されている。前記駆動プーリ12は第一モータM1によって制御自在に回転する。前記中速コンベヤ1の下流側に隣接し、前記低速コンベヤ2が備えられる。前記低速コンベヤ2は、ベルトコンベヤであり、無端ベルト21が、駆動プーリ22と、上流端部を構成する従動プーリ23等のプーリに掛け回されている。前記駆動プーリ22は第二モータM2によって制御自在に回転する。
【0020】
前記中速コンベヤ1と前記低速コンベヤ2の上方をまたいで、前記高速コンベヤ3が備えられる。前記高速コンベヤ3は、ベルトコンベヤであり、無端ベルト31が、下流端部を構成する駆動プーリ32と、上流端部を構成する従動プーリ33に掛け回されている。前記駆動プーリ32は第三モータM3によって制御自在に回転する。前記高速コンベヤ3の下流側に隣接し、前記低速コンベヤ2の上方に、前記調整コンベヤ4が備えられる。前記調整コンベヤ4は、ベルトコンベヤであり、無端ベルト41が、下流端部を構成する駆動プーリ42と、上流端部を構成する従動プーリ43に掛け回されている。前記駆動プーリ42は第四モータM4によって制御自在に回転する。前記高速コンベヤ3および前記調整コンベヤ4は、前記低速コンベヤ2の両側から立設したサイドフレームFAおよびFBの間にそれぞれ高さ位置調整可能に取り付けられる。
【0021】
以下の記載では、前記中速コンベヤ1の無端ベルト11及び前記低速コンベヤ2の無端ベルト21の上面をそれぞれの走行面と称す。また、前記高速コンベヤ3の無端ベルト31及び前記調整コンベヤ4の無端ベルト41の下面をそれぞれの走行面と称す。さらに、これらの走行面は、互いに上下に対向するものであるため対向面と称する場合もある。前記中速コンベヤ1及び前記低速コンベヤ2の走行面の走行方向と前記高速コンベヤ3の走行面の走行方向は両方とも、食品生地片Pを上流側から下流側に搬送する搬送方向Xと同一である。
【0022】
前記中速コンベヤ1と前記低速コンベヤ2の走行面は同一の高さに設けられる。前記中速コンベヤ1の走行面に連続する下流端部(従動プーリ13に沿った部分)の曲面部と前記低速コンベヤ2の走行面に連続する上流端部(従動プーリ23に沿った部分)の曲面部とで凹部Sが形成される。
【0023】
前記高速コンベヤ3の上流端部(従動プーリ33に沿った部分)は、搬送方向Xにおいて前記中速コンベヤ1の下流端部に重なるように配置される。前記高速コンベヤ3の走行面は、前記駆動プーリ32の下端が前記従動プーリ33の下端より高く配置されることで、前記中速コンベヤ1及び前記低速コンベヤ2の走行面に対し上流側から下流側に向かって対向するクリアランスが広がるように上方に傾斜する。前記駆動プーリ32と前記従動プーリ33の配置を調整することにより、前記高速コンベヤ3は巻き成形される食品生地片Pを前記中速コンベヤ1および前記低速コンベヤ2とで持続的に挟持可能に設けられる。前記調整コンベヤ4の走行面は前記低速コンベヤ2の走行面とほぼ平行に設けられる。
【0024】
上述の各コンベヤの位置関係は、成形する食品生地片Pの厚みによって適宜設定する。第1の実施形態においては、前記食品生地片Pの厚みtは5ミリメートルである。前記高速コンベヤ3の上流端部の最下端と前記中速コンベヤ1の走行面との垂直方向のクリアランスaは4ミリメートルである。前記低速コンベヤ2の走行面と前記高速コンベヤ3の下流端部の走行面とのクリアランスbは35ミリメートルである。前記低速コンベヤ2の走行面と前記調整コンベヤ4の走行面とのクリアランスcは30ミリメートルである。前記クリアランスcは巻き食品生地PPが軽く狭持されるように適宜定める。前記高速コンベヤ3が前記中速コンベヤ1に重なり合う搬送方向Xに沿った距離d、即ち、前記中速コンベヤ1の下流端から前記高速コンベヤ3の従動プーリ33の中心までの搬送方向Xに沿った距離dは23ミリメートルである(
図3参照)。
【0025】
前記制御ユニットUは、各モータM1乃至M4の駆動速度を制御することによって各ベルトコンベヤの走行速度を調整可能に設けられる。前記中速コンベヤ1の走行速度をV1、低速コンベヤ2の走行速度をV2、高速コンベヤ3の走行速度をV3、調整コンベヤ4の走行速度をV4とする。各走行速度は、V3>V1>V2という関係に設けることが好ましい。本実施形態では、中速の走行速度V1は毎分50メートル、低速の走行速度V2は毎分20メートル、高速の走行速度V3は毎分70メートルに設定される。走行速度V4は、初期状態では走行速度V2と同速に設定されるが、巻き食品生地PPの巻き終端PTの位置を調整する際に微調整される。
【0026】
図4a乃至
図4gおよび
図5を参照するに、供給された食品生地片P(
図4a参照)は前記中速コンベヤ1の下流端部と前記高速コンベヤ3の上流端部とで挟持される(
図4b参照)。前記高速コンベヤ3の走行速度V3が前記中速コンベヤ1の走行速度V1より速く設定されていることにより、前記食品生地片Pの上側の生地は、その下側の生地より速く下流側に送り出される。
【0027】
前記食品生地片Pの下流端部PLは、その上側と下側の生地の速度差により、前記中速コンベヤ1の下流端部から斜め下方向へ屈曲して前記凹部S内に送り出され、前記食品生地片Pの下流端PEが前記低速コンベヤ2の上流端部の曲面部に衝突着接する(
図4c参照)。前記低速コンベヤ2の走行速度V2は前記中速コンベヤ1の走行速度V1より遅く設定されているため、この衝突着接により食品生地片Pの前記下流端PEの搬送速度が一瞬遅くなり、下流端PEに連続する食品生地片Pの下流端部PLに坐屈部PSが生じる(
図4d参照)。
【0028】
前記高速コンベヤ3に接する前記坐屈部PSは食品生地片Pの下流端PEに先行して送り出されて食品生地片Pの下流端部PLが折り曲げられる。前記坐屈部PSを境に折り曲げられた下流端部PLの生地は、前記高速コンベヤ3と前記低速コンベヤ2との間で重なり合い圧着される(
図4e参照)。前記生地が重なり合った部分を前記食品生地片Pの巻き芯部PAとする。
【0029】
前記凹部S内から下流側に送り出されている前記巻き芯部PAには、前記低速コンベヤ2と前記高速コンベヤ3の速度差によって、回転Rが連続的に付与される。前記回転Rは、前記低速コンベヤ2上において搬送方向Xへ転動する方向(正面から見て反時計回り)である。前記巻き芯部PAの転動により前記巻き芯部PAの周りに残余の生地が高速コンベヤ側から徐々に巻き取られていく。(
図4f,
図4g参照)。
【0030】
一方、前記中速速度コンベヤ1と前記高速コンベヤ3は、前記食品生地片Pの上流端部を未だ挟持している(
図4f参照)。前記食品生地片Pは搬送されながら回転Rによって巻き取られるため、前記食品生地Pに対し搬送方向Xに沿った張力が付与される。前記張力によって、前記食品生地片Pの下流端PEから上流端PTにかけての搬送方向Xに対する曲がりが矯正される。また、前記巻き芯部PAに残余の生地が密着した状態で巻き取られる。
【0031】
前記巻き食品生地PPが高速コンベヤ3の下方を通過すると、高速コンベヤ3による上方からの押えがなくなり、前記巻き食品生地PPに搬送方向Xに回転しようとする慣性力が生じる。一方、巻き食品生地PPの底部には、低速コンベア2の走行によりその慣性力と反対の方向に推進力が作用する。前記巻き食品PPの慣性力は前記低速コンベヤの推進力によって減少あるいは消滅し、前記巻き食品生地PPは低速コンベヤ上に静置される。そのため、各巻き食品生地PPは搬送方向に一定の間隔を保って配列され、終端部の巻き解けが発生しない。
【0032】
前記低速コンベヤ2と前記調整コンベヤ4は前記巻き食品生地PPを挟持し、僅かに偏平化して搬送する。前記低速コンベヤ2と前記調整コンベヤ4は同じ走行速度に設けられているため、前記巻き食品生地PPに回転を付与することなく下流側へと排出する。なお、第1の実施形態では前記低速コンベヤ2と前記調整コンベヤ4は同じ走行速度に設けたが、速度差を設けることによって前記巻き食品生地PPに僅かに回転を付与し、下流側コンベヤにおける前記巻き食品生地PPの巻き終端PTの位置を調整することが可能である(
図6を参照して説明する第2変形例参照)。
【0033】
図5は本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る巻き成形装置101を示す。巻き成形装置101においては、第1の実施形態に係る前記巻き装置10の構成要素と同一機能を奏する構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0034】
前記巻き成形装置101は、中速コンベヤ1、低速コンベヤ2、高速コンベヤ3、調整コンベヤ4及び排出コンベヤ5を備える。前記排出コンベヤ5は前記低速コンベヤ2の下流側に隣接して備えられる。前記排出コンベヤ5は、ベルトコンベヤであり、無端ベルト51が、駆動プーリ52と、上流端部を構成する従動プーリ53等のプーリに掛け回されている。前記駆動プーリ52は第5モータM5によって制御自在に回転し、前記排出コンベヤ5は前記巻き食品生地PPを搬送方向Xへと搬送する。前記排出コンベヤ5の走行速度をV5とする。前記排出コンベヤ5の上方に、前記高速コンベヤ3の下流側に隣接して調整コンベヤ4が備えられる。前記調整コンベヤ4は、前記排出コンベヤ5の両側から立設したサイドフレームFCの間に高さ位置調整可能に取り付けられ、前記調整コンベヤ4の走行面は前記排出コンベヤ5と所要の間隔を開けてほぼ平行に対向し、その走行面は搬送方向Xに走行する。
【0035】
前記中速コンベヤ1、前記低速コンベヤ2及び前記排出コンベヤ5の走行面は同一高さに設けられる。前記中速コンベヤ1と前記低速コンベヤ2の上方をまたいで設けられた前記高速コンベヤ3の上流端部(従動プーリ33に沿った部分)は、前記中速コンベヤ1の下流端部(従動プーリ13に沿った部分)と重なるように設けられる。無端ベルト21および無端ベルト31には、表面に微細な凹凸が設けられる。前記無端ベルト31の下面は、駆動プーリ32と従動プーリ33の間で下方に撓みを有するように掛け回される。つまり、前記高速コンベヤ3の走行面は、下方に向かって湾曲して張架され、食品生地片P(あるいは巻き食品生地PP)の通過により変形するものである。また、前記凹部Sの上方を走行する前記無端ベルト31は、中速コンベヤ1の上流端及び低速コンベヤ2の上流端と僅かな、例えば、1ミリメートルの隙間が設けられる。そして、前記高速コンベヤ3の走行面と前記低速コンベヤ2の走行面の対向するクリアランスは、概ね上流側より下流側の方が広い。
【0036】
制御ユニットUは、前記第五モータM5を含む各モータの駆動速度を制御することにより、各コンベヤの走行速度が調整可能に設けられる。第1変形例では、前記中速コンベヤ1の走行速度V1は毎分60メートル、前記低速コンベヤ2の走行速度V2は毎分25メートル、前記排出コンベヤ5の走行速度V5は毎分30メートル、前記高速コンベヤ3の走行速度V3は毎分75メートル、前記調整コンベヤ4の走行速度V4は毎分40メートルに設定される。第1変形例は、前記高速コンベヤ3の下方を通過した巻き食品生地PPの巻き終端PTが所望の位置と異なった位置で排出される場合として説明する。ここでは、前記調整コンベヤ4の走行速度V4を前記排出コンベヤの走行速度V5より大きく設定する。
【0037】
前記中速コンベヤ1は前記食品生地片Pを搬送方向Xへ搬送する。前記食品生地片Pの下流端部PLは、斜め下方に屈曲して前記凹部S内に送り出される。そして、下流端PEが低速コンベヤ2の上流端部(従動プーリ23に沿った部分)の曲面部に衝突着接し、前記食品生地片Pの下流端部PLに座屈部PSが生じ、さらに、巻き芯部PAが形成される。前記低速コンベヤ2と前記高速コンベヤ3の速度差によって、前記巻き芯部PAに回転Rが付与され、残余の食品生地片Pが前記巻き芯部PAの周囲に巻き取られ巻き食品生地PPが成形される。前記排出コンベヤ5と前記調整コンベヤ4は、巻き食品生地PPを挟持し、それらの速度差により、前記排出コンベヤ5上で搬送方向Xに転動する方向(正面から見て反時計回り)に回転させながら搬送方向Xへ搬送する。この転動により、例えば、巻き食品生地PPの巻き終端PTを上側から下流へと、所望とする位置へ移動する。
【0038】
第1変形例では、高速コンベヤ3の無端ベルト31は、高速コンベヤ3と低速コンベヤ2との間で転動し徐々に大きくなる食品生地片Pの径の変化に対応して変形する。したがって、食品生地片Pの厚さtや巻き数の変更に伴う巻き食品生地PPの径の変更に対応できる。一定の範囲内では、規格の違う巻き食品生地PPごとに高速コンベヤ3の配置高さを調整する必要がない。また、第1変形例では、無端ベルト21と無端ベルト31の表面の凹凸により食品生地片Pに対する保持力が向上するため、巻かれた生地同士が密着した良品が得られる。また、第1変形例では、前記排出コンベヤ5と前記調整コンベヤ4の速度差によって、巻き食品生地PPの巻き終端PTの位置を調整して下流側へ排出することが可能である。
【0039】
図6は本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る巻き成形装置102を示す。巻き成形装置102においては、第1の実施形態の第1変形例に係る前記巻き装置101の構成要素と同一機能を奏する構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0040】
また、第2変形例では、排出コンベヤ5と調整コンベヤ4の速度差によって、巻き食品生地PPの巻き終端PTの位置を調整して下流側へ排出することが可能である。例えば
図6に示すように、調整コンベヤ4の下流側かつ排出コンベヤ5の上方に画像カメラ7を設け、画像カメラ7の画像処理結果により、巻き食品生地PPの巻き終端PTの回転方向位置を調整するように調整コンベヤ4の走行速度を増減させることができる。
【0041】
具体的には、巻き食品生地PPは、その中央部分の上面に台形を呈する(
図7a及び
図7bの斜線部参照)。制御ユニットUは、画像カメラ7からの画像を解析し、台形の上底および/あるいは下底の長さを測定する。制御ユニットUは、任意の個数の巻き食品生地PPに対して上記の測定を行い、測定された長さの平均値を算出する。
【0042】
制御ユニットUは、前記平均値を、予め入力された基準値と比較する。この基準値とは、所定の寸法や重量の巻き食品生地PPについて、巻き終端PTが望ましい位置(例えば、
図7bの回転方向位置)にある場合の前述の上底および下底の長さを表した数値である。前記平均値が前記基準値より大きい場合、制御ユニットUは調整コンベヤ4と排出コンベヤ5の速度差を大きくし、また、前記平均値が前記基準値より小さい場合、制御ユニットUは調整コンベヤ4と排出コンベヤ5の速度差を小さくすることによって、前記平均値を前記基準値に近づける。
【0043】
図8および
図9a乃至
図9eを参照し、本発明の第2の実施形態に係る巻き成形装置20を説明する。巻き成形装置20においては、第1の実施形態に係る前記巻き装置10の構成要素と類似する機能を奏する構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。成形装置20は第1の実施形態に係る巻き成形装置10の中速コンベヤ1及び低速コンベヤ2と、高速コンベヤ3及び調整コンベヤ4の各組となる対向面の位置関係を上下反転させ、また、搬送方向における対向面の位置関係を変更した構成である。また、第1の実施形態に係る前記巻き装置10では、食品生地片Pが低速コンベヤ2上で搬送方向Xに転動して(正面から見て反時計回りに回転して)巻き食品生地PPを成形するが、巻き装置20では、食品生地片Pが、低速コンベヤ2に対して搬送方向Xであるが、高速コンベヤ3に対して搬送方向Xと反対方向(正面から見て時計回り)に転動して巻き食品生地PPを成形する。
【0044】
巻き成形装置20では、上下に対向する各ベルトコンベヤにおいて、前記高速コンベヤ3が下方に配置され、食品生地片Pを搬送する。調整コンベヤ4は、前記高速ベルトコンベヤの下流側に隣接して備えられ、搬出ベルトコンベヤとしての役割もある。前記高速コンベヤ3の上方に、中速コンベヤ1及び低速コンベヤ2が搬送方向Xに沿って連設される。前記中速コンベヤ1及び前記低速コンベヤ2は、前記高速コンベヤ3の両側から立設したサイドフレームFDの間に高さ位置調整可能に取り付けられる。前記低速コンベヤ2の下流端部(駆動プーリ22に沿った部分)は、搬送方向Xにおいて前記調整コンベア4の上流端部(従動プーリ43に沿った部分)と重なるように配置される。前記中速コンベヤ1の走行面に連続する下流端部(従動プーリ13に沿った部分)の曲面部と前記低速コンベヤ2の走行面に連続する上流端部(従動プーリ23に沿った部分)の曲面部とで凹部Sが形成される。
【0045】
前記高速コンベヤ3と前記排出コンベヤ4の走行面は同一高さに設けられる。前記中速コンベヤ1の走行面は、前記高速コンベヤ3の走行面に対し上流側から下流側に向かって対向するクリアランスが徐々に狭くなるように下方に傾斜して備えられる。中速コンベヤ1の下流端部は、前記高速コンベヤ3との間で食品生地片Pを挟持する。前記低速コンベヤ2の走行面は、前記高速コンベヤ3の走行面に対し上流側から下流側に向かって対向するクリアランスが徐々に広くなるように上方に傾斜して備えられる。前記低速コンベヤ2は、巻き成形される食品生地片Pを高速コンベヤ3及び前記排出コンベヤ5とで持続的に挟持する。無端ベルト21と無端ベルト31の表面に微細な凹凸を設けても良い。
【0046】
第2の実施形態において、前記食品生地片Pの厚みtは5ミリメートルである。前記高速コンベヤ3の走行面と前記中速コンベヤ1の下流端部の最下点とのクリアランスaは4ミリメートルである。前記低速コンベヤ2の上流端部の最下点と前記高速コンベヤ3の走行面とのクリアランスbは5ミリメートルである。前記低速コンベヤ2の下流端部の走行面と前記排出コンベヤ5の走行面のクリアランスcは35ミリメートルである。前記クリアランスcは巻き食品生地PPが軽く狭持されるように適宜定める。
【0047】
第2の実施形態では、前記中速コンベヤ1の走行速度V1は毎分55メートル、前記低速コンベヤ2の走行速度V2は毎分13メートル、前記高速コンベヤ3の走行速度V3は毎分60メートル、前記調整コンベヤ4の走行速度V5は毎分13メートルに設定される。
【0048】
図8を参照するに、食品生地片Pは、前記高速コンベヤ3によって搬送方向Xへ搬送される。前記中速コンベヤ1の下流端部(従動プーリ13に沿った部分)と前記高速コンベヤ3は前記食品生地片Pを挟持する。上側の走行速度V1が下側の走行速度V3より遅いため、前記食品生地片Pの上面側の生地は、その下面側の生地より遅く下流側に送り出される。
【0049】
前記食品生地片Pの下流端部PLは、その上側と下側の生地の速度差により、前記中速コンベヤ1の下流端部から斜め上方向へ屈曲して送り出され、前記食品生地Pの下流端PEが前記低速コンベヤ2の上流端部(従動プーリ23に沿った部分)の曲面部に衝突着接する(
図9a参照)。この衝突着接により食品生地片Pの前記下流端PEの搬送速度が一瞬遅くなり、下流端PEに連続する食品生地片Pの下流端部PLに坐屈部PSが生じる。
【0050】
前記高速コンベヤ3は前記低速コンベヤ2より速く走行するため、前記坐屈部PSは食品生地片Pの下流端PEに先行して搬送方向Xへ送り出されて食品生地片Pの下流端部PLが折り曲げられる(
図9b参照)。前記坐屈部PSを境に折り曲げられた下流端部PLの生地は、前記高速コンベヤ3と前記低速コンベヤ2との間で重なり合い圧着され、巻き芯部PAが形成される(
図9c参照)。
【0051】
前記凹部S内から下流側に送り出されている前記巻き芯部PAには、前記低速コンベヤ2と前記高速コンベヤ3の速度差によって、回転Lが連続的に付与される。前記回転Lは、前記高速コンベヤ3上において搬送方向Xと反対に転動する方向である。前記巻き芯部PAの転動により前記巻き芯部PAの周りに残余の生地が徐々に巻き取られていく。このとき、未だ巻き取られていない前記食品き生地片Pの残余の生地には、搬送方向Xに沿った張力が付与される(
図9c参照)。前記張力により、前記食品生地片Pの下流端PEから上流端PTにかけての曲がりが矯正される。また、前記巻き芯部PAに残余の生地が密着した状態で巻き取られ、その中心に空洞が生じることなく巻き食品生地PPが成形される(
図9d参照)。
【0052】
巻き食品生地PPは、高速コンベヤ3を通過し、前記低速コンベヤ2と前記調整コンベヤ4に挟持される(
図9e参照)。前記低速コンベヤ2と前記調整コンベヤ4は同じ走行速度に設けられているため、前記巻き食品生地PPに回転を付与することなく保持して下流側へと排出する。前記低速コンベヤ2と前記調整コンベヤ4に速度差を設けることによって前記食品生地片Pに僅かに回転を付与し、下流側コンベヤにおける前記食品生地片Pの巻き終端PTの位置を調整することが可能である(
図10を参照して説明する第1変形例参照)。
【0053】
また、前記低速コンベヤ2と前記調整コンベヤ4に速度差を設けることによって前記食品生地片Pに僅かに回転を付与し、下流側コンベヤにおける前記食品生地片Pの巻き終端PTの位置を調整することが可能である。
【0054】
図10は本発明の第2の実施形態の第1変形例に係る巻き成形装置201を示す。巻き成形装置201においては、第2の実施形態に係る前記巻き装置20の構成要素と同一機能を奏する構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0055】
例えば、第一の実施形態の第2変形例での説明において述べたように、画像カメラ7の画像処理結果により巻き食品生地PPの巻き終端PTの位置を調整するように排出コンベヤ5と調整コンベヤ4の走行速度を増減させても良い。第二の実施形態においては、巻き食品生地PPの巻き方向が第一の実施形態の巻き食品生地PPと反対であるため、前記平均値が前記基準値より大きい場合、制御ユニットUは調整コンベヤ4と低速コンベヤ2の速度差を小さくし、前記平均値が前記基準値より小さい場合、制御ユニットUは調整コンベヤ4と低速コンベヤ2の速度差を大きくすることによって、前記平均値を前記基準値に近づける。
【0056】
本発明の第二の実施形態によれば、チョコバーやソーセージ等の固形物を巻き込んだ巻き食品製品を生産することが可能である。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含される。食品生地片Pの比重、硬柔、厚みや寸法などの性状に応じ、各コンベヤの位置関係は適宜調整可能である。例えば、下方に配置される中速コンベヤ1と低速コンベヤ2の走行面に段差を設けることができる。低速コンベヤ2の上流端部に、例えば前記従動プーリ23に係合されたピストン機構のごとき昇降機構を設け、制御ユニットUの制御により間欠的に前記段差を形成してもよい。この場合であっても凹部Sが形成でき、食品生地片Pの下流端部PLを屈曲させることができる。
【0058】
また、
図11に示す第1の実施形態の第3変形例に係る巻き成形装置103のように、第一の実施形態およびその第1変形例及び第2変形例においては、前記高速コンベヤ3の上流側かつ前記中速コンベヤ1の上方に押圧ローラ6を備えてもよい。前記押圧ローラ6は円筒状でもよいが、その周方向に延在するように形成された突条部61および底部62をその軸方向に複数列備えることが好ましい。前記押圧ローラ6は適宜のモータによって、前記中速コンベヤ1と対向する側においてその外周面が搬送方向Xへと移動するように回転駆動される。前記押圧ローラ6の回転速度は適宜設定すれば良いが、好ましくは前記押圧ローラ6の周速が前記中速コンベヤ1の走行速度V1と同じになるように設けられる。また、前記押圧ローラ6と前記中速コンベヤ1とのクリアランスは、前記突条部61が前記中速コンベヤ1とで食品生地片Pを挟持するように定められる。
【0059】
上述のごとく押圧ローラ6を備えた場合、成形される食品生地片Pの下流端部PL側は前記中速コンベヤ1と前記高速コンベヤ3とで挟持され、上流端PT側は前記中速コンベヤ1と前記押圧ローラ6とで挟持される。このとき、前記高速コンベヤ3と前記押圧ローラ6との速度差により、前記食品生地片Pは搬送方向Xに延展され、生地内部に搬送方向Xに沿った張力が生じた状態で巻かれる。また、前記下流端部PLは前記押圧ローラ6の無い場合と比較して少しずつ巻かれるため、巻き芯部PAは比較的小さな径となる。したがって、生地が弛んだり緩んだりした状態で巻かれる可能性を低減でき、巻きの比較的強い巻き食品生地PPを形成することができる。
【0060】
また、押圧ローラ6に突条部61を設けた場合、食品生地片Pは前記突条部61によって幅方向への移動が抑制されるため、曲がったり歪んだりした状態で巻き成形されることを防ぐことができる。加えて、円筒状のローラを用いた場合に比較し、押圧ローラ6の接生地面積が小さくなるため、押圧ローラ6に食品生地片Pが粘着することを防止できる。
【0061】
上述の食品生地片Pの延展作用については、前記押圧ローラ6に限ることなく、前記高速コンベヤ3の上流側かつ前記中速コンベヤ1の上方にコンベヤベルトを設けたり、間歇的に上下運動を行って食品生地片Pの上流端PT側を所定時間接する装置を用いたりしても同等の効果が得られる。また、押圧ローラ6と中速コンベヤ1とのクリアランスの調整によって、巻き芯部PAの大きさや、巻きの強さを変更することが可能である。
【0062】
また、中速コンベヤ1を1本或いは複数本のローラコンベヤとすることも可能である。ローラコンベヤであっても、高速コンベヤ3に対向し、かつ、制御ユニットUに制御されるモータに連結することでローラの周速を中速に設けることが可能である。また、この中速ローラコンベヤの下流側(下流端部)の曲面部と低速コンベヤ2の上流端部の曲面部で凹部Sを形成することができる。したがって、食品生地片Pの下流端部PLを屈曲して巻き芯部PAを形成することができ、さらに、巻き食品生地PPを成形することができる。また、中速コンベヤの下流端部と低速コンベヤの上流端部は凹部を形成できればよく、必ずしも曲面である必要はない。
【0063】
また、前記制御ユニットUは手動入力モードと自動調整モードに切り替え可能に設けることができる。手動入力モードでは各コンベヤの走行速度がそれぞれ任意に設定でき、各走行速度の比率を変動することにより巻き食品生地PPの巻き数の調整をすることができる。また、自動調整モードでは、あらかじめ登録された比率に基づき各走行速度V1、V2、V3を増減することができ、生産量を変更することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 中速コンベヤ
2 低速コンベヤ
3 高速コンベヤ
4 調整コンベヤ
6 押圧ローラ
61 突条部
62 底部
11,21,31,41 コンベヤベルト
12,22,32,42 駆動プーリ
13,23,33,43 従動プーリ
M1 第一モータ
M2 第二モータ
M3 第三モータ
M4 第四モータ
U 制御ユニット
10,101,20 巻き成形装置
P 食品生地片
PT 上流端、巻き終端
PE 下流端
PL 下流端部
PS 坐屈部
PA 巻き芯部
PP 巻き食品生地