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特許7090711低い摩擦係数および高い耐摩耗性を有するハイブリッドグリース
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  • 特許-低い摩擦係数および高い耐摩耗性を有するハイブリッドグリース 図1
  • 特許-低い摩擦係数および高い耐摩耗性を有するハイブリッドグリース 図2
  • 特許-低い摩擦係数および高い耐摩耗性を有するハイブリッドグリース 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】低い摩擦係数および高い耐摩耗性を有するハイブリッドグリース
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/02 20060101AFI20220617BHJP
   C10M 107/08 20060101ALN20220617BHJP
   C10M 107/02 20060101ALN20220617BHJP
   C10M 107/34 20060101ALN20220617BHJP
   C10M 107/50 20060101ALN20220617BHJP
   C10M 117/00 20060101ALN20220617BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20220617BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20220617BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20220617BHJP
【FI】
C10M169/02
C10M107/08
C10M107/02
C10M107/34
C10M107/50
C10M117/00
C10N50:10
C10N30:06
C10N40:04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020535172
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2019000215
(87)【国際公開番号】W WO2020020476
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-06-24
(31)【優先権主張番号】102018005835.3
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509350664
【氏名又は名称】クリューバー リュブリケーション ミュンヘン ソシエタス ヨーロピア ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Klueber Lubrication Muenchen SE & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Geisenhausenerstrasse 7, D-81379 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ライナー シュミッツ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ヴィンマー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ゼーマイアー
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-176489(JP,A)
【文献】特開平06-240274(JP,A)
【文献】特開2018-090732(JP,A)
【文献】特開2014-122282(JP,A)
【文献】特表2015-525827(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101870905(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101535456(CN,A)
【文献】特開2010-001326(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105907446(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00 - 177/00
C10N 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両分野におけるプラスチック/鋼の組合せをベースとする継手を潤滑するための、ハイブリッドグリースの使用であって、前記ハイブリッドグリースが、
(A)合成炭化水素油、PAOまたはポリグリコールから選択される基油50~90質量%と、石けん基増ちょう剤10~25質量%と、添加剤0~10質量%とを含有する、合成炭化水素油またはポリグリコールをベースとするグリース10~50質量%および
(B)ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンおよびそれらの混合物からなる群から選択されるシリコーン油70~90質量%、石けん基増ちょう剤5~30質量%ならびに添加剤0~10質量%を含有する、シリコーングリース50~90質量%
を含み、(A)の基油と(B)のシリコーン油とが、互いに混和性ではない、前記使用。
【請求項2】
車両におけるパワーステアリングシステム(EPS)、ブレーキアクチュエータ、ブレーキブースター、パワーウィンドウに使用される、アクチュエータを潤滑するための、ハイブリッドグリースの使用であって、前記ハイブリッドグリースが、
(A)合成炭化水素油、PAOまたはポリグリコールから選択される基油50~90質量%と、石けん基増ちょう剤10~25質量%と、添加剤0~10質量%とを含有する、合成炭化水素油またはポリグリコールをベースとするグリース10~50質量%および
(B)ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンおよびそれらの混合物からなる群から選択されるシリコーン油70~90質量%、石けん基増ちょう剤5~30質量%ならびに添加剤0~10質量%を含有する、シリコーングリース50~90質量%
を含み、(A)の基油と(B)のシリコーン油とが、互いに混和性ではない、前記使用。
【請求項3】
前記ハイブリッドグリースが、
(A)合成炭化水素油またはポリグリコールから選択される基油70~90質量%と、石けん基増ちょう剤10~20質量%と、添加剤1~7質量%とを含有する、グリース10~20質量%および
(B)ポリジメチルシロキサン70~80質量%、石けん基増ちょう剤30質量%までならびに添加剤1~10質量%を含有する、シリコーングリース80~90質量%
を含む、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記ハイブリッドグリースが、
(A)合成炭化水素油、PAOまたはポリグリコールから選択される基油70~80質量%と、石けん基増ちょう剤10~20質量%と、添加剤1~7質量%とを含有する、合成炭化水素油またはポリグリコールをベースとするグリース10~20質量%および
(B)ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンおよびそれらの混合物からなる群から選択されるシリコーン油70~80質量%、石けん基増ちょう剤10~30質量%ならびに添加剤1~10質量%を含有する、シリコーングリース80~90質量%
を含む、請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
前記ハイブリッドグリースが、さらに成分(A)中に固体潤滑剤0~50質量%を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
合成炭化水素油として、PAO、PAOとオレフィンコポリマーとの混合物、PAOとポリイソブチレンとの混合物からなる群から選択される油を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記ハイブリッドグリースが、前記の2種の異なるグリースを混合し、続いて均質化することによって製造される、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記ハイブリッドグリースを、基油としてのシリコーン油および石けん基増ちょう剤を含有するバッチを製造し、かつ混合成分として前記合成炭化水素油を添加剤に類似して添加するか、または基油としての合成炭化水素油および石けん基増ちょう剤を含有するバッチを製造し、かつ混合成分として前記シリコーン油のみを添加剤に類似して添加することによって製造する、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い温度範囲において使用することができる、低い摩擦係数および高い耐摩耗性を有する新規ハイブリッドグリースの提供に関する。該新規ハイブリッドグリースは、合成炭化水素油、鉱油またはポリグリコールをベースとするグリースと共に、シリコーン油をベースとするグリースの組合せをベースとしている。殊に、該新規ハイブリッドグリースは、プラスチック-鋼の組合せをベースとする車両部品における継手の潤滑のために、さらに、車両においてますます使用されるアクチュエータ、例えばブレーキ、ブレーキブースター、パワーステアリングシステム(EPS)ならびにパワーウィンドウにおける使用のために、使用することができる。
【0002】
加えて、広い温度範囲にわたって極めて一定に維持することができる、特に低い摩擦係数は、シリコーン油をベースとする潤滑剤を用いて達成される。該摩擦係数およびスティックスリップ挙動のさらなる改善のために、高い基油粘度が必要である。シリコーングリース、殊にポリジメチルシロキサンをベースとするものは、極めて高い粘度指数ならびに低い流動点を有する。したがって、上記の特性を達成することができる。しかしながら、シリコーン油をベースとするグリース組成物は、殊に高負荷のかかる用途、例えば高応力のかかる駆動装置継手では、耐摩耗性の弱点を示す。
【0003】
高い耐摩耗性は、とりわけ、鉱油、合成炭化水素、例えばPAO、エステル、ポリグリコールまたはPFPEをベースとするグリースを用いて達成される。広い温度範囲をカバーするために、できる限り高い粘度指数および低い流動点を有する基油が必要である。基油としてのPFPEは、その高いコストに基づき多くの用途に考慮に値しない。合成炭化水素、例えばm-PAO(メタロセンPAO)に基づく最新の開発を伴ってさえも、この目標は、限られた程度でのみ達成することができる。合成炭化水素をベースとする系を用いて低い摩擦係数を達成するためには、添加剤、例えばPTFEが必要であるが、しかしながらこのことは極めて高い原料コストをまねく。
【0004】
国際公開第2014/028632号(WO 2014/028632 A1)からは、ベースストックとしてシリコーンオイル不含のオイルと、シリコーンオイルとを含む、潤滑剤組成物が公知であり、ここで、該シリコーンオイルが、油溶性のオイルであり、かつエチルシリコーン、オクチルシリコーンから選択される。さらに、増ちょう剤として、リチウム石けんが挙げられる。
【0005】
米国特許第4251431号明細書(US 4 251 431 B)には、ハイブリッドグリースとして、PFPEをベースとし、メチルポリシロキサンを有する油の製造が記載されており、ここで、双方の油相は不溶性である。
【0006】
欧州特許第0657524号明細書(EP 0 657 524 B1)にも、PFPE油と、PFPE不溶性のさらなる油成分との混合物が記載されている。
【0007】
国際公開第2013/010851号(WO 2013/010851 A1)には、低粘度成分および、低粘度成分と低温で分離可能であり、高温で均一となる高粘度成分の二成分を有する、潤滑剤組成物が開示されている。
【0008】
公知のハイブリッドグリースは、PFPEグリースまたは油と、PFPEフリーの他の潤滑グリースとのブレンドに関するものであり、ならびに混和性ではない組成物に関するものである。
【0009】
したがって、本発明は、上記の要件を満たし、殊に-50℃~+160℃の広い温度範囲内で適用でき、その際に、低い摩擦係数、ならびに長い寿命を生じ、かつ該部品での摩耗現象を実質的に生じない、潤滑剤組成物を提供することを目標としている。
【0010】
このためには、本発明によれば、シリコーン油をベースとするグリースと、合成炭化水素油、鉱油またはポリグリコール油をベースとするグリースまたは油と、増ちょう剤と、通常の添加剤との混合物からなる、ハイブリッドグリースが提供される。決定的であるのは、双方の基油もしくは油相が、互いに混和性ではないことである。
【0011】
“Synthetic Lubricants and High Performance Functional fluids”(R. L. Shubkin編), Marcel Dekker Inc, ニューヨーク, バーゼル, 香港, 1993, ISBN 0-8247-8715-3には、典型的なPAO(p.1~40)、シリコーン油(p.183~203)およびポリグリコール(p.101~123)についての情報が見出される。メタロセン触媒PAOは、例えばExxonMobilによって、講演(“The influence of Molecular Structure on the Properties of Polyalphaolefins”, Bruce Harrington, Sandy Reid-Peters著)の枠内で、エスリンゲンでの第19回国際トライボロジー会議(2014年1月21~23日)で発表された。
【0012】
Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie, 改訂増補第4版, Verlag Chemie, 1981, Vol.20には、D. Klammanの寄稿“Schmierstoff und verwandte Produkte”(p.457~671)において、同様に、シリコーン油についての情報(p.523~525)が見出される。該油の粘度はその際に、40℃で18mm/s~20000mm/sであってよい。
【0013】
通常、シリコーン油を合成炭化水素油と混合することは不可能である。しかし、驚くべきことに、例えばシリコーン油としてポリジメチルシロキサンおよび合成炭化水素として例えばPAOのような、不混和性の基油から構成されているグリースを混合することができる。これらを混合して、均質な潤滑剤を生じさせることができる。そのうえ、基油としてのシリコーン油および増ちょう剤を含有するバッチを製造し、かつ混合成分として該合成炭化水素油を添加剤に類似して添加することが可能である。同様に、基油としての合成炭化水素油および増ちょう剤を含有するバッチを製造し、かつ混合成分として該シリコーン油のみを添加剤に類似して添加することが可能である。該混合物は、潤滑グリースの製造において従来技術に相当するような撹拌機を用いて、製造することができる。混合した後に、後続の均質化プロセス工程を、例えばミリング装置(コロイドミル)、ロールミルまたは高圧ホモジナイザーを用いて、行うことができる。
【0014】
こうして製造された潤滑剤は、必要とされ、かつ望ましい上記の全ての特性を示す。
【0015】
該シリコーン油は、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンまたは双方の油の混合物からなる群から選択される。該合成炭化水素油は、PAO、PAOとオレフィンコポリマーとの混合物、PAOとポリイソブチレンとの混合物からなる群から選択される。該増ちょう剤は、非石けん基増ちょう剤、例えばウレア、および石けん基増ちょう剤、例えば複合および単一石けん基増ちょう剤の群から選択され、殊に好ましくは、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム、ステアリン酸リチウムである。
【0016】
さらに、通常の添加剤、例えば酸化防止剤、防食剤ならびに固体潤滑剤が、本発明によるハイブリッドグリース中に含まれていてよい。
【0017】
本発明によるハイブリッドグリースについては、
(A)合成炭化水素油、PAO、鉱油またはポリグリコールから選択される基油50~90質量%と、増ちょう剤10~25質量%と、添加剤0~10質量%とを含有する、合成炭化水素油、鉱油またはポリグリコールをベースとするグリース10~50質量%が、
(B)シリコーン油70~90質量%、増ちょう剤5~30質量%ならびに添加剤0質量%から10質量%までを含有する、シリコーングリース50~90質量%と、混合される。
【0018】
選択的に、成分(A)は、固体潤滑剤0~50質量%を含有していてよい。固体潤滑剤は、例えば、PTFE、グラファイト、二硫化モリブデン、メラミンシアヌレートおよびそれらの混合物であってよい。
【0019】
殊に好ましくは、本発明によるハイブリッドグリースについては、
(A)合成炭化水素油、鉱油またはポリグリコールから選択される基油70~90質量%と、増ちょう剤10~20質量%と、添加剤1~7質量%とを含有する、グリース10~20質量%が、
(B)ポリジメチルシロキサン70~80質量%、増ちょう剤30質量%までならびに添加剤1~10質量%を含有する、シリコーングリース80~90質量%と、混合される。
【0020】
特に好ましいのは、合成炭化水素としてPAO、mPAO、エチレン、LAOコポリマーが使用される、ハイブリッドグリースである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ボールジョイントにおけるトルク試験に基づいた摩擦係数を測定するための装置の構成を示す。
図2図1における装置の測定の時間的経過を例示的に示す。
図3】ボールジョイントにおける耐摩耗性試験に基づいた耐摩耗性を測定するための装置を示す。
【0022】
本発明は、次の実施例によって、より詳しく説明される。
【実施例
【0023】
製造:
潤滑グリースのための従来技術による標準製造方法が使用される。
【0024】
該基油あるいは該基油または油混合物の一部を、潤滑グリースを製造するために従来技術において利用されるような、撹拌機を備えた適した加熱可能な容器中に装入する。その中で、該増ちょう剤の製造、例えば水酸化リチウムでのステアリン酸または12-OH-ステアリン酸の中和、続いて、水の除去のためならびに該増ちょう剤構造の形成のための加熱段階が行われる。ピーク温度として、210℃まで達してよいので、該石けん基増ちょう剤を完全に溶融させ、続いて、意図的な冷却により、該増ちょう剤のモルホロジーを調節する。続く冷却段階において、該添加剤を添加し、かつ均質に分布させる。そのうえ、基油としてのシリコーン油および増ちょう剤を含有するバッチを製造し、かつ混合成分として該合成炭化水素油を添加剤に類似して添加することが可能である。同様に、基油としての合成炭化水素油および増ちょう剤を含有するバッチを製造し、かつ混合成分として該シリコーン油のみを添加剤に類似して添加することが可能である。引き続き、均質化プロセスは、例えば、潤滑グリースの製造のために従来技術によれば常用であるような、ロールミルまたはコロイドミルまたは高圧ホモジナイザーを用いて、行われる。
【0025】
上記の方法に従って、第1表に示されるグリース成分(A)および(B)を製造した。全ての記載の単位は質量%である。
【0026】
第1表
【表1】
【0027】
ハイブリッドグリース:
双方のグリースの混合物は、潤滑グリースの製造において従来技術に相当するような、撹拌機を用いて製造することができる。そのうえ、基油としてのシリコーン油および増ちょう剤を含有するバッチを製造し、かつ混合成分として該合成炭化水素油を添加剤に類似して添加することが可能である。同様に、基油としての合成炭化水素油および増ちょう剤を含有するバッチを製造し、かつ混合成分として該シリコーン油のみを添加剤に類似して添加することが可能である。混合した後に、後続の均質化プロセス工程は、例えば、ミリング装置(コロイドミル)、ロールミルまたは高圧ホモジナイザーを用いて、行うことができる。
【0028】
この方法によって、本発明によるハイブリッドグリースを、第2表に示されている成分(A)および(B)から製造した。全ての記載の単位は質量%である。
【0029】
第2表
【表2】
【0030】
摩擦係数の測定
ボールジョイントにおけるトルク試験に基づいた摩擦係数を測定するために、以下に記載された試験方法を使用した。その試験装置の構成は、図1に示されている。
【0031】
車両の駆動装置に大量生産工程で組み込まれるような、ボールジョイントを使用した。その球は、23mmの直径を有する鋼製である。該鋼球は、POM(ポリオキシメチレン)製のプラスチックシェルで包囲される。該プラスチックシェルと該鋼球との間に、該潤滑剤が導入される。続いて、該球を有する該POMシェルは、ハウジング内に形状結合により導入される。該ハウジングは、一定の力が、シェルおよび球からなる該系に作用されるように押し込まれる。本例において、その接触面圧は約1N/mmである。
【0032】
第3表は、トルク試験に基づいた摩擦係数の測定の結果を示す。
【0033】
第3表
【表3】
【0034】
合成炭化水素をベースとするグリースに比べて、ハイブリッド化により、ゆるめトルクおよび回転トルクに有利な影響を及ぼすことができた。全温度範囲にわたる該シリコーングリースの低いゆるめトルクならびに回転トルクは、殊にハイブリッドグリースBおよびCを用いて、特に有利に達成することができ、かつ一部はそれどころかさらに優れており、すなわち低下させることができた。
【0035】
耐摩耗性の測定
その摩耗試験を、ボールジョイントにおいて実施した。
【0036】
記載されるボールジョイントに、装置により3240Nの負荷をかける。該装置は、可動式に取り付けられているので、該球は該POMシェル内において傾けることができる。該傾斜運動は、3°の振れおよび15Hzの周波数で実施される。定期的な間隔で該運動は停止され、かつ該負荷の解放ならびに反転により、該摩耗により生じた遊びが求められる。
【0037】
該耐摩耗性試験のための装置の構成は、図3に示されている。
【0038】
該摩耗試験の結果は、第4表に示されている。
評価したのは、百十万の負荷サイクル後の該ジョイントの摩耗距離であった。
【0039】
第4表
【表4】
【0040】
該シリコーングリースに比べて、ハイブリッド化により、その摩耗値に有利な影響を及ぼすことができた。殊にハイブリッドグリースBを用いて、極めて良好な摩耗レベルを達成することができた。
図1
図2
図3