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特許7090732加熱アセンブリおよびこれを備える香味吸引器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】加熱アセンブリおよびこれを備える香味吸引器
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/20 20200101AFI20220617BHJP
   A24F 40/40 20200101ALI20220617BHJP
【FI】
A24F40/20
A24F40/40
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020552473
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2018039855
(87)【国際公開番号】W WO2020084758
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】関矢 智之
(72)【発明者】
【氏名】三井 健雄
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-522551(JP,A)
【文献】特表平8-511176(JP,A)
【文献】国際公開第2016/162934(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/20
A24F 40/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
香味発生物品を挿入可能な内筒と、
当該内筒の外側に配置された外筒と、
前記内筒と前記外筒の間に断熱機能を有する密閉空間を形成するように、当該内筒と前記外筒の両端部の間に配置された1対の封止部材と、
加熱部材を備え、
前記封止部材の熱伝導性が前記内筒の熱伝導性よりも低い、
加熱アセンブリ。
【請求項2】
前記内筒と封止部材の熱伝導率の差が13W/m/K以上である、請求項1に記載の加熱アセンブリ。
【請求項3】
前記加熱部材が前記密閉空間内に配置され、かつ前記内筒と近接している、請求項1または2に記載の加熱アセンブリ。
【請求項4】
前記加熱部材が前記内筒の外筒側表面に配置されている、請求項3に記載の加熱アセンブリ。
【請求項5】
前記密閉空間内に断熱材をさらに備える、請求項1~4のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
【請求項6】
前記断熱材がエアロゲルである、請求項1~5のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
【請求項7】
前記内筒が金属で構成される、請求項1~6のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
【請求項8】
前記密閉空間内に、当該空間と前記封止部材の少なくとも一部を隔離する隔離部材をさらに備える、請求項1~7のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
【請求項9】
前記内筒の端面と連通する筒状のキャップをさらに備える、請求項1~8のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
【請求項10】
前記断熱材が粒状である、請求項5~9のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
【請求項11】
前記封止部材の少なくとも1つが、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を含む、請求項1~10のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
【請求項12】
前記封止部材の少なくとも1つが、加熱アセンブリの長手方向に積層された複数の層を備える多層構造を有する、請求項1~11のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
【請求項13】
前記複数の層における最内層が光硬化性樹脂を含む、請求項1~12のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の加熱アセンブリを備える香味吸引器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱アセンブリおよびこれを備える香味吸引器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材料の燃焼をすることなく香味を吸引するための香味吸引器が知られている(例えば特許文献1、2)。このような香味吸引器では香味源を加熱する熱が装置を通じて使用者に過度に伝わると使用者が火傷を負うなど安全性に問題が生じる。そのため熱が使用者に伝わりにくくすることが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-148065号公報
【文献】特表2018-522551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は外部への断熱性に優れた香味吸引器を与える加熱アセンブリを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは特定の断熱特性を有する部材を用いることで前記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
(1)香味発生物品を挿入可能な内筒と、
当該内筒の外側に配置された外筒と、
前記内筒と前記外筒の間に断熱機能を有する密閉空間を形成するように、当該内筒と前記外筒の両端部の間に配置された1対の封止部材と、
加熱部材を備え、
前記封止部材の熱伝導性が前記内筒の熱伝導性よりも低い、
加熱アセンブリ。
(2)前記内筒と封止部材の熱伝導率の差が13W/m/K以上である、(1)に記載の加熱アセンブリ。
(3)前記加熱部材が前記密閉空間内に配置され、かつ前記内筒と近接している、(1)または(2)に記載の加熱アセンブリ。
(4)前記加熱部材が前記内筒の外筒側表面に配置されている、(3)に記載の加熱アセンブリ。
(5)前記密閉空間内に断熱材をさらに備える、(1)~(4)のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
(6)前記断熱材がエアロゲルである、(1)~(5)のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
(7)前記内筒が金属で構成される、(1)~(6)のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
(8)前記密閉空間内に、当該空間と前記封止部材の少なくとも一部を隔離する隔離部材をさらに備える、(1)~(7)のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
(9)前記内筒の端面と連通する筒状のキャップをさらに備える、(1)~(8)のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
(10)前記断熱材が粒状である、(5)~(9)のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
(11)前記封止部材の少なくとも1つが、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を含む、(1)~(10)のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
(12)前記封止部材の少なくとも1つが、加熱アセンブリの長手方向に積層された複数の層を備える多層構造を有する、(1)~(11)のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
(13)前記複数の層における最内層が光硬化性樹脂を含む、(1)~(12)のいずれかに記載の加熱アセンブリ。
(14)前記(1)~(13)のいずれかに記載の加熱アセンブリを備える香味吸引器。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、外部への断熱性に優れた香味吸引器を与える加熱アセンブリを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】香味吸引器の一態様を示す斜視図
図2図1の香味吸引器の断面図
図3】加熱アセンブリの一態様を示す側面図
図4】加熱アセンブリの拡大断面図
図5】加熱アセンブリと喫煙物品の位置関係を説明する図
図6】喫煙物品の一態様を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.香味吸引器
香味吸引器とは香味発生物品を加熱して香味を発生させるための装置である。香味発生物品とは香味発生基材を含み、香味を発生可能な物品あるいは香味を吸引可能な物品である。香味発生基材とは香味を発生するための基材でありエアロゾル源を含む。
【0009】
図1に香味吸引器の一態様を示す。図1Bに示すように香味吸引器10は、香味発生物品の一態様である喫煙物品110を挿入するための開口12aを有する。図2図1Aに示した矢視2-2における断面図である。当該図に示すように開口12aは加熱アセンブリ41に連通しており、喫煙物品110は加熱アセンブリ41で加熱される。以下、まず加熱アセンブリについて説明し、次いで香味吸引器の詳細を説明する。
【0010】
(1)加熱アセンブリ
図2に示すように加熱アセンブリ41は、香味吸引器10の加熱部40に配置され、全体として筒体をなしている。加熱アセンブリ41は、その内部に喫煙物品110の一部を収納できるように構成され、喫煙物品110へ供給する空気の流路を画定する機能、および喫煙物品110を外周から加熱する機能を有する。
【0011】
図3は加熱アセンブリ41の一態様を示す側面図である。加熱アセンブリ41は外筒45、トップキャップ48、ボトムキャップ50を備える。図示されていないが、外側管45の内部には内筒が配置されている。内筒は熱収縮チューブ52で被覆されていてもよく、この場合、当該チューブはトップキャップ48またはボトムキャップ50の一部を被覆するように延在していてもよい。
【0012】
図4を参照して加熱アセンブリ41の構造を説明する。図4は加熱アセンブリ41の拡大断面図である。図中、42は内筒、45は外筒、47は封止部材、47tは熱硬化性樹脂で構成された封止部材、47pは光硬化性樹脂で構成された封止部材、43は加熱部材、54は密閉空間、44は断熱材、46はワッシャー、42aは第1開口、42bは第2開口である。
【0013】
加熱部材43の配置される場所は限定されないが、本態様のように内筒42と加熱部材43が近接または接触している場合は、内筒42は加熱部材43からの熱を喫煙物品110に伝えるので優れた熱伝導性を有することが好ましい。内筒42の熱伝導率は好ましくは10~20W/m/K、より好ましくは14~16W/m/Kである。この観点から、内筒42の材質は好ましくは金属、より好ましくはステンレスである。外筒45の材質は限定されないが、取扱容易性や耐久性等の観点から好ましくは金属、より好ましくはステンレスである。内筒42の内径は喫煙物品110の寸法に依存する。一態様において、内筒42の内径は後述するボトムキャップ50の一部の内径と同じである。内筒42と外筒45間の距離は好ましくは2~5mmであり、より好ましくは2.5~3.5mmである。内筒42の長さについては後述する。
【0014】
前述のとおり加熱部材43の配置される場所は限定されず、本態様に示すように内筒42の外筒45側の表面に配置されて挿入された喫煙物品110を加熱してもよい。また、加熱部材43は、内筒42、外筒45、および密閉空間54とは独立して設けられていてもよく、例えば内筒よりもさらに内側に喫煙物品110を挿入可能な筒部材を配置して、当該筒部材表面に加熱部材43を設けることもできる。加熱部材43は好ましくは400℃まで、より好ましくは300℃まで、特に好ましくは250℃まで発熱できる。加熱部材43としては、発熱抵抗体とポリイミド等の高分子層を備えるフィルムヒータが好ましい。図示されていないが、熱収縮チューブを用いて加熱部材43を内筒42上に固定することができる。断熱効果を高める観点から、加熱部材43は封止部材47と接していないことが好ましい。
【0015】
密閉空間54は内部が真空または内部に空気等の気体を内包しうるので断熱機能を有し、加熱部材43の熱を外筒45に伝わりにくくする。しかし発明者らは、封止部材47がヒートブリッジとなり加熱部材43の熱が外筒45に回り込みやすくなることを見出した。そこで本発明ではヒートブリッジの熱伝導率を内筒42より低くすることによって、この熱の回り込みの問題を解決する。その結果、ハウジング11の温度上昇が抑制され、使用者は香味吸引器10を快適かつ安全に使用できる。封止部材47の熱伝導率は内筒42の熱伝導率より13W/m/K以上小さいことが好ましい。具体的に、封止部材47の熱伝導率は好ましくは0.1~1.0W/m/K、より好ましくは0.2~0.6W/m/Kである。
【0016】
封止部材47は熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂とは、室温または加熱によって反応して架橋構造を形成する熱硬化性モノマーから形成される硬化物をいい、その例としてはアクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。中でも、硬化性および取扱性からアクリレート樹脂が好ましい。また、強度等の観点から熱硬化性モノマーの分子量は100~1000が好ましく、280~400程度がより好ましい。
【0017】
光硬化性樹脂とは、光を照射することによって架橋構造を形成する光硬化性モノマーから形成される硬化物をいい、紫外線照射によって硬化するUV硬化性樹脂が好ましい。その例としては限定されないが、ラジカル重合型のアクリレート樹脂、カチオン重合型のエポキシ樹脂が挙げられる。硬化性および取扱性から、光硬化性樹脂は好ましくはラジカル重合型のアクリレート樹脂であり、より好ましくはエポキシアクリレート樹脂である。また強度等の観点から光硬化性モノマーの分子量は160~270程度が好ましい。この他、熱硬化性と光硬化性の双方の機能を有する硬化性樹脂を用いてもよい。
【0018】
熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂は200℃以下のTg(ガラス転移点)を有することが好ましく、当該Tgは100℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることが特に好ましい。熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂が上記好ましいTgを有することで、加熱部材43が発熱した際に、封止部材47の加熱部材43に近い部分の温度が上昇する。Tgが低い場合には、加熱部材43の加熱に伴って各樹脂は柔軟性を帯びるが流動しないため内筒42、あるいは内筒と外筒の熱膨張に起因する応力を緩和しうる。また前記硬化性樹脂はシリカ、ガラス粒子等の公知のフィラーを含んでいてもよい。
【0019】
強度等の観点から、封止部材47の厚さは0.3~2.0mmが好ましく、0.5mm~1.0がより好ましい。封止部材47は加熱アセンブリの長手方向に積層された複数の層を備える多層構造を有することが好ましく、最内層が光硬化性樹脂を含むことがより好ましい。前述のとおり密封空間54は断熱性を有するが、より効果を高めるために密閉空間54に断熱材44を備えることが好ましい。この場合、封止部材として光硬化性樹脂を用いると、光硬化性樹脂は速い硬化反応によって形成されるので断熱材44を密閉空間54に充填しやすい。そしてその上に熱硬化性樹脂の封止部材を設けることで封止部材の強度を高め、かつ断熱性をより高めることができる。また、光硬化性樹脂は熱硬化性樹脂よりも熱伝導率が低い場合があり、後者は前者よりボイドを含みやすい場合がある。よって、前者の封止部材の上に後者の封止部材を設けることで、より高い伝熱性と信頼性を達成できる。
【0020】
図4は、内筒42と外筒45の両方の端の間が前記硬化性樹脂で封止される態様を示すが、少なくとも一方の端が前記硬化性樹脂で封止されることが好ましい。また、外筒45には開孔450を設けてもよい。封止部材47を加熱して硬化するときに密閉空間54中の空気が膨張し、封止部材47にボイドが発生することを抑制するためである。開孔450は、硬化後に公知のシール等で封止されてもよい。
【0021】
断熱材44は粒状であることが好ましい。その平均粒子径であるD50径は好ましくは0.05~2mm、より好ましくは0.1~1mmである。平均粒子径は画像解析によって特定できる。分かりやすくするために図中においては断熱材44の一部を図示してあるが、好ましくは密閉空間54に十分な量の断熱材44が充填される。このように粒状の断熱材を密閉空間54に密に充填する際には、当該断熱材が当該空間から溢れやすいが、本発明においては速やかに封止部材47を硬化できるので、スムーズな充填が可能である。従って、粒状の断熱材を用いる際に、本発明はより効果を発揮する。粒状の断熱材としてはエアロゲルが挙げられる。エアロゲルとは多孔性の材料であり、シリコンエアロゲルやカーボンエアロゲルが挙げられる。エアロゲルの充填量は、その密度および密閉空間54の容積によって変動するが、一態様において100~300mg程度である。
【0022】
封止部材は遊離成分を含まないことが好ましい。遊離成分を含まないことによって、遊離成分の密閉空間54あるいは断熱材44への浸透を抑制できるため、好適な断熱性能を維持することができる。密閉空間54内に当該空間と封止部材47の少なくとも一部を隔離する隔離部材を配置すると、仮に遊離成分が発生したとしても前記浸透を抑制できるので好ましい。また、封止部材47がエアロゲル等の断熱材44に直接接すると、封止部材47またはこれから遊離する成分が断熱材44に浸透して断熱性が不十分になる場合がある。しかし、密閉空間54内に前記隔離部材を配置すると、当該浸透も抑制することができる。当該部材の材質は限定されないが、金属、樹脂、セラミックであることが好ましく、ステンレスであることがより好ましい。隔離部材は円周方向に延在することが好ましく、具体的にはワッシャー46等のリング状部材であることが好ましい。隔離部材がヒートブリッジとなることを避けるために、隔離部材は密閉空間54と封止部材47の少なくとも一部を隔離するように配置されることが好ましい。すなわち隔離部材は内筒42または外筒45の少なくとも一方と離間して配置されることが好ましい。
【0023】
前述のとおり、封止部材47が複数の層からなる場合は、最内層は速硬化性である光硬化性樹脂層であり、その上に熱硬化性樹脂層を設けて確実に封止することが好ましい。したがって、硬化速度をより高める観点から光硬化性樹脂層は比較的薄く、熱硬化性樹脂層は比較的厚いことが好ましい。このため熱硬化性樹脂層体積/光硬化性樹脂層体積は1.0~2.0が好ましく、1.2~1.5がより好ましい。熱硬化性樹脂層平均厚さ/光硬化性樹脂層平均厚さは1.0~2.0が好ましく、1.2~1.5がより好ましい。隔離部材を設ける態様においては、隔離部材の上に光硬化性樹脂層と熱硬化性樹脂層がこの順に設けられ、各層は前記関係を満たすことが好ましい。また、当該態様においては隔離部材が内筒42または外筒45と接しないように、光硬化性樹脂層が隔離部材の側面と一方の主面を被覆することが好ましい(図4の円内図参照)。すなわち、加熱アセンブリ41の内筒42から外筒45に向かう方向において、隔離部材、第1の光硬化性樹脂がこの順に設けられていることが好ましく、第1の光硬化性樹脂、隔離部材、第2の光硬化性樹脂がこの順に設けられていることがより好ましい。尚、当該態様において、第1の光硬化性樹脂と第2の光硬化性樹脂とは同一であっても異なる種類であってもよいが、製造の観点からは同一であることが好ましい。当該態様においても各層は上記の関係を満たすことが好ましい。具体的には、熱硬化性樹脂層の体積/第1および第2の光硬化性樹脂からなる層の体積は1.0~2.0が好ましく、1.2~1.5がより好ましい。熱硬化性樹脂層の平均厚さ/第1および第2の光硬化性樹脂からなる層の平均厚さは1.0~2.0が好ましく、1.2~1.5がより好ましい。第2の光硬化性樹脂を用いない場合には、上記層の体積の比および層の厚さの比は第1の光硬化性樹脂から形成される層の体積、厚さを参酌してよい。光硬化性樹脂層平均厚さは、隔離部材を除いた第1および第2の光硬化性樹脂からなる層の加熱アセンブリ41の長手方向における厚さの平均値である。
【0024】
加熱アセンブリ41は、トップキャップ48と、ボトムキャップ50とを有する。トップキャップ48およびボトムキャップ50は、例えば公知の樹脂により形成されうる。トップキャップ48は、内筒42の第1開口42aと連通する内部空間を有する筒部材であり、喫煙物品110を挿入できるように構成される。
【0025】
図3および4に示すように、トップキャップ48は内筒42の第1開口42aと接続される。ボトムキャップ50は内筒42の第2開口42bと接続される細長い筒部材である。図3および4においては、紙面下から上へ向けて空気が流れるので、紙面下を上流、紙面上を下流という。ボトムキャップ50の下流端50aから内筒42の第2開口42bに向けて空気を導入する内部流路が形成される。本態様において、加熱アセンブリ41は封止部材47と内筒42に間にトップキャップ48とボトムキャップ50を備える。このため、内部流路の密閉性が高まり、内部流路から空気が漏出することを抑制できる。
【0026】
ボトムキャップ50の内径は、下流端50aから上流端50bまで一定であり得る。また、ボトムキャップ50の内面がテーパ状に形成され、それによりボトムキャップ50の内径が下流端50aから上流端50bに向かって大きくなってもよい。ボトムキャップ50の最大内径をSmaxとし、喫煙物品110の最大外径をScとしたとき、Smaxに対するScの比(Sc/Smax)は、例えば、1.4~2.34であり、1.56~2.01であることが好ましい。ボトムキャップ50の最大内径と喫煙物品110の最大外径が上記範囲であると、喫煙物品110の先端部をボトムキャップ50の係止部50dにより確実に保持しながら、十分な空気流路70を確保することができる。
【0027】
(2)加熱アセンブリの製造
加熱アセンブリは以下の工程を経て製造されることが好ましい。
工程1:前記外筒の中に、前記内筒を有する二重筒体を準備する。
工程2:当該内筒の一方の端部と、当該端と同じ方に存在する前記外筒の端部の間を、前記内筒よりも低い熱伝導性を有する第1封止部材で封止する。
工程3:当該内筒と前記外筒の開放されている端部の間を、前記内筒よりも低い熱伝導性を有する第2封止部材で封止する。
【0028】
工程1は、例えば、内筒42の外周面に加熱部材43としてのフィルムヒータを固定し、当該内筒42の外側に前記外筒45を配置することで実施できる。
【0029】
工程2で用いる第1封止部材は、第2封止部材と異種であってもよいし、同種であってもよい。前者の場合、第1封止部材は任意の材料、例えば、熱可塑性樹脂やセラミックなどであってよい。内筒42にトップキャップ48またはボトムキャップ50を接続しておくと、第1封止部材で封止する場所の位置決めが容易となる。この効果は工程3においても同様である。また第1封止部材で封止を行った後に、当該封止部材の上にワッシャー等の隔離部材を配置してもよい。
【0030】
工程3で用いる第2封止部材は光硬化性樹脂であることが好ましい。光硬化性モノマーは速硬化が可能であるため作業性が良好であるからである。また工程2と3の間に、内筒と外筒と第1封止部材で形成された空間内に断熱材44としてのエアロゲル等を充填してもよい。この態様において第2封止部材として光硬化性樹脂を用いると前述のとおり断熱材44を密に充填できる。さらに、当該態様においては、工程3の前に断熱材44の充填層の上にワッシャー等の隔離部材を配置してもよい。さらにまた、光硬化性樹脂層の上に熱硬化性樹脂層を設ければ、より確実な封止が可能となり製品の信頼性を向上できる。
【0031】
(3)香味吸引器
次に、香味吸引器全体を説明する。図1に示すように、香味吸引器10は、トップハウジング11Aと、ボトムハウジング11Bと、カバー12と、スイッチ13と、蓋部14と、を有する。トップハウジング11Aとボトムハウジング11Bは、互いに接続されることで、香味吸引器10の最外のハウジング11を構成する。ハウジング11は、使用者の手に収まるようなサイズである。使用者が香味吸引器10を使用する際は、香味吸引器10を手で保持して、香味を吸引することができる。
【0032】
図1Bに示すように、カバー12は、喫煙物品110を挿入可能な開口12aを有する。蓋部14は、開口12aを閉じる第1位置と開口12aを開放する第2位置との間を、カバー12の表面に沿って移動可能に構成される。スイッチ13は、香味吸引器10の作動のオンとオフを切り替えるために使用される。例えば、使用者は、図1Bに示すように喫煙物品110を開口12aに挿入した状態でスイッチ13を操作することで、加熱部材にバッテリ(いずれも図示しない)から電力が供給され、喫煙物品110を燃焼させずに加熱することができる。喫煙物品110が加熱されると、喫煙物品110に含まれるエアロゾル源からエアロゾルが蒸発し、エアロゾルに香味源の香味が取り込まれる。使用者は、喫煙物品110の香味吸引器10から突出した部分(図1B)を吸引することで、香味を含んだエアロゾルを吸引することができる。本発明において、香味吸引器10の長手方向とは、喫煙物品110が開口12aに挿入される方向をいう。
【0033】
次いで、香味吸引器10の内部構造について説明する。図2は、図1Aに示した矢視2-2における断面図である。図2に示すように、香味吸引器10は、ハウジング11の内部空間に、電源部20と、回路部30と、加熱部40と、を有する。回路部30は、第1回路基板31と、第1回路基板31と電気的に接続された第2回路基板32と、を有する。第1回路基板31は、例えば、図示のように長手方向に延びて配置される。これにより、電源部20と加熱部40は、第1回路基板31によって区画される。その結果、加熱部40において発生する熱が電源部20に伝達することが抑制される。
【0034】
電源部20は、第1回路基板31および第2回路基板32に電気的に接続される電源21を有する。電源21は、例えば、充電式バッテリまたは非充電式のバッテリであり得る。
【0035】
加熱部40は前述の加熱アセンブリ41を備える。ボトムハウジング11Bには、加熱アセンブリ41の内部に空気を流入するための通気口15が形成される。具体的には、通気口15は、加熱アセンブリ41の上流端と流体連通する。加熱アセンブリ41の下流端は、図1Bに示した開口12aと流体連通する。
【0036】
図1Bに示すように喫煙物品110が開口12aから香味吸引器10内に挿入された状態で、使用者が、喫煙物品110の香味吸引器10から突出した部分から吸引すると、通気口15から加熱アセンブリ41の内部に空気が流入する。流入した空気は、加熱アセンブリ41の内部を通過して、喫煙物品110から生じるエアロゾルと共に、使用者の口内に到達する。
【0037】
本発明では、加熱アセンブリ41に特定の封止部材を用いるため、ハウジング11に熱が伝わりにくく、使用者が香味吸引器を快適かつ安全に使用できる。
【0038】
2.香味発生物品
香味発生物品の好ましい一態様である喫煙物品110について説明する。図6は、喫煙物品110の断面図である。図6に示す実施形態においては、喫煙物品110は、充填物111(香味発生基材の一例に相当する)と、充填物111を巻装する第1の巻紙112と、を含む基材部110Aと、基材部110Aとは反対側の端部を形成する吸口部110Bと、を有する。基材部110Aと吸口部110Bは、第1の巻紙112とは異なる第2の巻紙113によって連結されている。ただし、第2の巻紙113を省略し、第1の巻紙112を用いて基材部110Aと吸口部110Bを連結することもできる。
【0039】
図6中の吸口部110Bは、紙管部114と、フィルタ部115と、紙管部114とフィルタ部115との間に配置された中空セグメント部116と、を有する。中空セグメント部116は、例えば、1つまたは複数の中空チャネルを有する充填層と、充填層を覆うプラグラッパーとで構成される。
【0040】
図6中の吸口部110Bは3つのセグメントから構成されているが、本実施形態において、吸口部110Bは1つまたは2つのセグメントから構成されていてもよいし、4つまたはそれ以上のセグメントから構成されていてもよい。
【0041】
図6に示す実施形態において、喫煙物品110の長手方向の長さは、40mm~90mmであることが好ましく、50mm~75mmであることがより好ましく、50mm~60mmであることがさらに好ましい。喫煙物品110の円周は15mm~25mmであることが好ましく、17mm~24mm以下であることがより好ましく、20mm~22mmであることがさらに好ましい。また、喫煙物品110における基材部110Aの長さは20mm、第1の巻紙112の長さは20mm、中空セグメント部116の長さは8mm、フィルタ部115の長さは7mmであってよいが、これら個々のセグメントの長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。
【0042】
本実施形態において、喫煙物品110の充填物111は、所定温度で加熱されてエアロゾルを発生するエアロゾル源を含有し得る。エアロゾル源の種類は、特に限定されず、用途に応じて種々の天然物からの抽出物質またはそれらの構成成分を選択することができる。エアロゾル源として、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、およびこれらの混合物を挙げることができる。充填物111中のエアロゾル源の含有量は、特に限定されず、十分にエアロゾルを発生するとともに、良好な香喫味の付与の観点から、通常5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上であり、また、通常50重量%以下であり、好ましくは20重量%以下である。
【0043】
本実施形態における喫煙物品110の充填物111は、香味源としてたばこ刻みを含有し得る。たばこ刻みの材料は特に限定されず、ラミナや中骨等の公知のものを用いることができる。喫煙物品110における充填物111の含有量の範囲は、円周22mm、長さ20mmの場合、例えば、200mg~400mgであり、250mg~320mgであることが好ましい。充填物111の水分含有量は、例えば、10重量%~15重量%であり、11重量%~13重量%であることが好ましい。このような水分含有量であると、巻染みの発生を抑制し、基材部110Aの製造時の巻上適性を良好にする。また、充填物111は、1種または2種以上の香料を含んでいてもよい。当該香料の種類は特に限定されないが、良好な喫味の付与の観点から、好ましくはメンソールである。
【0044】
次に、喫煙物品110を香味吸引器10に挿入したときの喫煙物品110と加熱アセンブリ41との位置関係について説明する。図5は、本実施形態の香味吸引器10における、喫煙物品110の基材部110Aと、香味吸引器10の加熱部材43および内筒42との間の、軸線方向の位置関係を簡略的に示す図である。ここでいう軸線とは、香味吸引器10における第1開口42aの中心軸を意味し、第1開口42aに喫煙物品110が挿入されたときには、その軸線と喫煙物品110の中心軸とが部分的に重なり合う。
【0045】
加熱部材43の軸線方向長さをD0とし、喫煙物品110の基材部110Aの軸線方向の長さをL0としたとき、D0<L0とできる。さらに、D0/L0は、0.70~0.90以下であり、好ましくは0.75~0.85であり、典型的には0.80であってよい。よって、基材部110Aの長さL0が20mmである場合、加熱部材43の長さD0は14~18mmであり、好ましくは15~17mm以下であり、典型的には16mmであってよい。
【0046】
図5を参照すると、基材部110Aの上流端は、加熱部材43の上流端よりも上流側に長さD1で突き出していてよい。基材部110Aの加熱部材43からの突き出し部分は、その半径方向外側に加熱部材43を有さないので、基材部110Aの他の部分と比較して、その内部温度が幾分低くなり得る。これにより、基材部110Aの上流端およびその近傍でのエアロゾル生成を抑制できるので、そこで発生したエアロゾルが空気流路で凝縮したり、空気流路を逆流して装置外部に漏出したりするのを防止できる。基材部110A全体の長さL0に対する突き出し長さD1の比(D1/L0)は、0.25~0.40であり、好ましくは0.30~0.35であり、典型的には0.325であってよい。よって、基材部110A全体の長さL0が20mmである場合、突き出し長さD1は5~8mmであり、好ましくは6~7mmであり、典型的には6.5mmであってよい。ここでの突き出し長さD1は、加熱部材43の上流端と内側管42の上流端との間の軸方向における距離ということもできる。
【0047】
図5を参照すると、加熱部材43の下流端は、基材部110Aの下流端よりも下流側に長さD2で突き出していてよい。これにより、基材部110Aの下流端およびその近傍を十分に加熱できるので、そこでのエアロゾル生成量が不足したりエアロゾル凝縮が発生したりするのを防止できる。基材部110Aの長さL0に対する加熱部材43の突き出し長さD2の比(D2/L0)は、0.075~0.175であり、好ましくは0.1~0.15であり、典型的には0.125であってよい。よって、基材部110Aの長さL0が20mmである場合、加熱部材43の突き出し長さD2は1.5~3.5mmであり、好ましくは2~3mmであり、典型的には2.5mmであってよい。
【0048】
内筒42の上流端と基材部110Aの上流端の軸線方向位置は概ね一致していてよい。その一方で、内筒42の下流端は、加熱部材43の下流端と同じく、基材部110Aの下流端よりも下流側に長さD3で突き出していてよい。これにより、基材部110Aの下流端およびその近傍に加えて、紙管部114の上流端およびその近傍を加熱できるので、基材部110Aから発生したエアロゾルが紙管部114の上流端およびその近傍で過度に冷却されて凝縮するのを防止できる。加熱部材43の突き出し長さD2に対する内筒42の突き出し長さD3の比(D3/D2)は、1.86~5.67であり、好ましくは2.33~4.00であり、好ましくは3.00であってよい。
【符号の説明】
【0049】
10…香味吸引器
11…ハウジング
12…カバー
12a…開口
13…スイッチ
14…蓋部
15…通気口
16…キャップ
20…電源部
21…電源
30…回路部
31…第1回路基板
32…第2回路基板
40…加熱部
41…加熱アセンブリ
42…内筒
42a…第1開口
42b…第2開口
43…加熱部材
44…断熱材
45…外筒
450…開孔
46…ワッシャー
47…封止部材
47t…熱硬化性樹脂で構成された封止部材
47p…光硬化性樹脂で構成された封止部材
48…トップキャップ
50…ボトムキャップ
52…熱収縮チューブ
54…密閉空間
70…空気流路

110…喫煙物品
110A…基材部
110B…吸口部
111…充填物
112…第1の巻紙
113…第2の巻紙
114…紙管部
115…フィルタ部
116…中空セグメント部
図1
図2
図3
図4
図5
図6