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特許7090749発泡熱可塑性ポリウレタンおよびそのマイクロ波成型体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】発泡熱可塑性ポリウレタンおよびそのマイクロ波成型体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20220617BHJP
【FI】
C08J9/16 CFF
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020568978
(86)(22)【出願日】2018-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 CN2018091068
(87)【国際公開番号】W WO2019237280
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】516272984
【氏名又は名称】サンコ・インク・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUNKO INK CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】ホアン・ティン-カイ
(72)【発明者】
【氏名】ホアン・イー-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リン・シン-フン
(72)【発明者】
【氏名】リン・ホンーイー
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ヤー-チー
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-061679(JP,A)
【文献】特開2018-075753(JP,A)
【文献】特表2016-533418(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105637021(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08J 9/00 - 9/42
B29C 44/00 - 44/60
B29C 67/20
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08G 18/00 - 18/87
C08G 71/00 - 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡熱可塑性ポリウレタンをマイクロ波によって形成し、前記発泡熱可塑性ポリウレタンは発泡性組成物をスクリュー造粒機によって発泡造粒して形成されたことを特徴とする、マイクロ波成型体であって、
前記発泡性組成物は、以下:100重量部の未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子、5重量部~25重量部の発泡剤、および0.5重量部~5重量部の増粘剤または架橋剤を含み、前記未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子は1,000ポアズ~9,000ポアズの粘度を有し、前記粘度はJISK 7311測定方法に準じて170℃で測定された、マイクロ波成形体。
【請求項2】
前記マイクロ波形成体の密度が、0.15 g/cm3~0.6 g/cm3であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波形成体。
【請求項3】
前記マイクロ波形成体のショアー硬度が、40C~80Cであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波形成体。
【請求項4】
前記増粘剤が、無機増粘剤、ポリアクリル酸類増粘剤、またはセルロース類増粘剤から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波成形体。
【請求項5】
前記架橋剤が、過酸化ジクミル(DCP)、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-tert-ブチル、または過酸化水素から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波成形体。
【請求項6】
前記無機増剤が、ベントナイトまたはケイ酸アルミニウムから選択され、前記ポリアクリル酸類増剤が、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸またはメタクリル酸のカルボン酸類モノマーから形成される増剤から選択され、前記ポリアクリル酸類増剤が、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースから形成される増剤から選択されることを特徴とする、請求項4に記載のマイクロ波成形体。
【請求項7】
前記未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子が、2.5~4.5 mmの粒径を有することを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波成形体。
【請求項8】
前記未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子が、40A~64Dのショアー硬度を有することを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波成形体。
【請求項9】
前記未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子が、1.0 g/cm3~1.25 g/cm3の密度を有することを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波成形体。
【請求項10】
100重量部の前記未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子および5重量部~20重量部の前記発泡剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波成形体。
【請求項11】
前記発泡剤が、膨張性微小球、炭酸ガス(CO2)、または炭素数が4~10の炭化水素化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波成形体。
【請求項12】
さらに0.1重量部~5重量部のタルクを含むことを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波成形体。
【請求項13】
1重量部~20重量部の可塑剤をさらに含み、前記可塑剤が安息香酸エステルまたはその誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波成形体。
【請求項14】
さらに着色料粉を含み、100重量部の前記未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子に基づき、前記着色料粉は0.1重量部~5重量部を含むことを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波成形体。
【請求項15】
さらに1重量部~5重量部の前記増粘剤または前記架橋剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波成形体。
【請求項16】
前記マイクロ波形成体が、500 W~30, 000 Wのマイクロ波パワーによって製造されることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波形成体。
【請求項17】
前記マイクロ波プロセスにおいて水が加えられないことを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波形成体。
【請求項18】
前記マイクロ波プロセスにおいて水またはアルコール類を添加し、前記発泡熱可塑性ポリウレタンの総重量が100重量部であり、前記水またはアルコール類の用量が1重量部~10重量部であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波成形体。
【請求項19】
前記架橋剤が、2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシヘキサンである、請求項5に記載のマイクロ波成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡熱可塑性ポリウレタンおよびマイクロ波によって製造される成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane、TPU)は、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer, TPE)の原材料である。TPUから製造されるTPEは粘度、高弾性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐屈曲性、高延伸性、耐候性、耐化学性、無毒性および高耐引裂き強度などの利点を有し、それゆえ、靴、自動車、包装材料、断熱材料などの製品に広く応用されている。
【0003】
射出成形は、従来技術においてTPU発泡成形体を調製する最も常用される方法である。射出成形法は、射出成形機内でプラスチックゴムペレットを加熱して溶融物を形成し、次いで、それを圧縮してノズルを通して移動させ、比較的低い温度の金型内に注入することを要する。それゆえ、射出成形の製造方法は、非常に時間がかかる。しかも、射出用の金型は重さが重く、金型の交換が不便である。従来技術においてTPU発泡成形体を調製するためのもう一つの方法は水蒸気成形法である。しかしながら、水蒸気成型法は高温または高圧プロセスを要し、それは、しばしば、より多いエネルギーを消耗し、コスト増大を引き起こす。射出成形法および水蒸気成形法とは異なり、マイクロ波法で製造された成形体は、簡便なプロセスを有し、時間とエネルギーを節約する。マイクロ波成形されたTPU発泡体は各種の製品に応用されてきた。例えば、マイクロ波成形されたTPU発泡体はすでに成功裏に靴に応用され、それは快適性、柔軟性および軽量の利点を兼ね備えている。
【0004】
しかしながら、発泡性組成物の中に含まれる未発泡の熱可塑性ポリウレタン粒子の粘度は、通常、10,000ポアズより高く制限され、それがマイクロ波成形TPU発泡体の形成に適している。粘度が10,000ポアズより低い未発泡粒子を用いると、形成された発泡粒子はマイクロ波を経た後に低品質の発泡を起こし、マイクロ波形成体の形成不良(外観が変形しやすく、崩れやすく、粒子間の粘着がよくなく、成型の安定性がよくないなど)を生じる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、予期せぬことに、増粘剤または架橋剤を使用して前記問題を改善できることを発見した。増粘剤または架橋剤の添加により、ポリウレタン粒子の粘弾性特性または分子結合構造が変化し、分子鎖間の構造強度が増大する。本発明はマイクロ波成形体に適した発泡性組成物を提供する。その発泡性組成物は、1,000ポアズから9,000ポアズの粘度を有する未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子、および増粘剤または架橋剤を含む。粘度はJISK 7311測定方法に準じて170℃で測定する。
【0006】
一つの局面において、本発明は、発泡熱可塑性ポリウレタン、前記発泡性組成物を発泡造粒によって作成された発泡熱可塑性ポリウレタンを作成する発泡組成物(配合物とも称する。)および、それを発泡造粒する方法を提供する。本発明の発泡熱可塑性ポリウレタンはマイクロ波で再度発泡できる特性を有するため、本発明は、前記発泡熱可塑性ポリウレタンをマイクロ波で二次発泡して形成されたマイクロ波成形体およびその製造方法も提供する。本発明の発泡熱可塑性ポリウレタンは、より軽量であるという利点を有し、マイクロ波によって発泡熱可塑性ポリウレタンを加熱して、各粒子の表面に粘着作用を発生させ、同時に再発泡してマイクロ波成形体(熱可塑性ポリウレタン発泡材としても知られる。)を形成する。従来の射出成型法および水蒸気成型法と異なり、マイクロ波法で製造する成型プロセスが簡単で、時間とエネルギーを節約する。
【0007】
一つの具体例において、本発明は発泡熱可塑性ポリウレタンを作成するための発泡性組成物を提供し、前記発泡性組成物は、100重量部の未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子、5重量部~25重量部の発泡剤、および0.5重量部~5重量部の増粘剤または架橋剤を含み、前記未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子は1,000~9,000ポアズの粘度を有し、前記粘度はJISK 7311測定方法に準じて170℃で測定する。
【0008】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記増粘剤は無機増粘剤、ポリアクリル酸類増粘剤、またはセルロース類増粘剤から選択される。
【0009】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記架橋剤は過酸化ジクミル(DCP)、過酸化ベンゾイル、ジ-tert-ブチルペルオキシド、または過酸化水素ジクミル2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシヘキサンから選択される。
【0010】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記無機増粘剤はベントナイトまたはケイ酸アルミニウムから選択され、前記ポリアクリル酸類増粘剤は、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸またはメタクリル酸のカルボン酸類モノマーから形成される増粘剤から選択され、および、前記ポリアクリル酸類増粘剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースから形成される増粘剤から選択される。
【0011】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子は2.5 mmから4.5 mmまでの粒径を有する。
【0012】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子は40Aから64Dまでのショアー硬度を有する。
【0013】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子は1.0 g/cm3~1.25 g/cm3の密度を有する。
【0014】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、100重量部の前記未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子および5重量部~20重量部の前記発泡剤を含む。
【0015】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記発泡剤は膨張性微小球、炭酸ガス (CO2)、または炭素数が4から10までの炭化水素化合物である。
【0016】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、さらに0.1重量部~5重量部のタルクパウダーを含む。
【0017】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、さらに1重量部~20重量部の可塑剤を含み、前記可塑剤は安息香酸エステルまたはその誘導体である。
【0018】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、また着色料粉を含み、100重量部の前記未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子に基づき、前記着色料粉は0.1重量部~5重量部を含む。
【0019】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、さらに1重量部~5重量部の前記増粘剤または前記架橋剤を含む。
【0020】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記いずれか1つの前記発泡性組成物を用いて、1つのスクリュー造粒機で発泡造粒して調製する。
【0021】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記発泡熱可塑性ポリウレタンは残留する前記発泡剤を有する。
【0022】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記発泡熱可塑性ポリウレタンは3 mm~7.5 mmの粒径を有する。
【0023】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記発泡熱可塑性ポリウレタンは40C~80Cのショアー硬度を有する。
【0024】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記発泡熱可塑性ポリウレタンは0.2 g/cm3~0.8 g/cm3の密度を有する。
【0025】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記発泡熱可塑性ポリウレタンをマイクロ波に暴露して形成する。
【0026】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記マイクロ波成型体の密度は0.15 g/cm3~0.6 g/cm3である。
【0027】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記マイクロ波成型体のショアー硬度は40C~80Cである。
【0028】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記マイクロ波成型体は500 W~30,000 Wのマイクロ波パワーによって作成される。
【0029】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記マイクロ波プロセスでは水が添加されない。
【0030】
ひとつの具体例において、本発明は上記の発泡性組成物を提供し、前記発泡熱可塑性ポリウレタンの総重量を100重量部として、前記マイクロ波プロセスに水またはアルコール類を添加し、前記水またはアルコール類の量は1重量部~10重量部である。
【0031】
本発明は、他の局面および、他の課題を解決し、他の局面と組合せるための種々のマイクロ波成型体を含み、以下の具体例で詳細に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明および特許請求の範囲を十分に理解するために、本発明の好ましい具体例を以下で実証する。本発明の内容が不明瞭になることを回避するために、以下の説明では、当業者に公知の構成要素、関連する材料および関連する処理技術を省略することがある。
【0033】
発泡熱可塑性ポリウレタン用の発泡組成物の作成
【0034】
本発明の発泡熱可塑性ポリウレタンを作成するための発泡組成物は、主に未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子、増粘剤または架橋剤、および発泡剤を含む。組成物中の未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子は1,000~9,000ポアズの粘度を有し、初めて発泡する粒子に良好な再発泡機能を持たせることができる。粘度はJISK 7311測定方法に準じて170℃で測定した。3,000ポアズ~8,000ポアズの粘度を有する未発泡の熱可塑性ポリウレタン粒子が優れており、初めて発泡した粒子でも良好な再発泡が可能であるほか、再発泡後材料の機械的強度も優れている。
【0035】
100重量部の未発泡の熱可塑性ポリウレタン粒子中、増粘剤や架橋剤の含量は0.5重量部から5重量部が好ましい。100重量部の未発泡の熱可塑性ポリウレタン粒子中、発泡剤の含有量は5重量部~25重量部が好ましく、より良い機械強度を要すれば、5重量部~20重量部が好ましい。本発明の具体例によれば、組成物中、未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子が2.5 mm~4.5 mm (ミリメーター)の粒径を有するものが優先的に選ばれる。本発明における粒径とは、測定する粒子の最長軸をいう。本発明の他の具体例によれば、組成物中、未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子が40A~64Dのショアー硬度を有するものが優先的に選ばれる。本発明の他の具体例によれば、組成物中、未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子が1.0 g/cm3~1.25 g/cm3の密度を有するものが優先的に選ばれる。本明細書に記載された密度はすべてアルキメデスの原理(浮力法)で測定された。
【0036】
本発明の発泡熱可塑性ポリウレタンは良好な再発泡特性を有する。所謂「再発泡」特性とは、初発泡を経て形成された発泡熱可塑性ポリウレタンが、特にマイクロ波処理で再び(二次)発泡することを意味する。このような発泡熱可塑性ポリウレタンが再び発泡した後、その粒子は明らかに膨張し、粒子間の粘着が緊密になり、形状が豊かな発泡成型体を呈し、これは良好な再発泡である。
【0037】
発泡性組成物において、未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子はエステル系、エーテル系、ポリカプロラクトン系またはポリカーボネート系であり得る。未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子の製造方法の例として、ジイソシアネート、ポリエステルポリオール、鎖延長剤、触媒その他の添加剤を混合し、約200~300℃で反応させて、周知の射出成形または押出処理によって未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子を得る。ジイソシアネートは、4,4-メチレンビス(フェニルイソシアネート) (MDI)、m-ジメチルフェニルジイソシアネート(MDI)、フェニル-1,4-ジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(MDI)とジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネートから選択される。MDIまたはTDIが最適である。ポリエステルポリオールは二塩基酸とジオールから形成されるポリエステルであり、ジオールは2~10個の炭素原子を有するジオールであり、二塩基酸は4~12個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の二塩基酸である。アジピン酸1,4-ブタンジオールエステルが好ましい。鎖延長剤は、2-12個の炭素原子を有するジオール;例えば:エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンタンジオール、フェニルジオールおよびジエチレングリコールの少なくとも1種である。触媒は、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジオクタン酸スズ、ジオクタン酸ジブチル錫、ジラウリル酸ジブチル錫、ジ酢酸ジブチル錫の少なくとも1種から選択することができる。射出または押出処理の過程で、各種の添加剤、例えば着色料、充填材、耐酸化剤、補強剤、潤滑剤または可塑剤などを使用できる。
【0038】
発泡性組成物は増粘剤または架橋剤を含む。増粘剤は、無機増粘剤(例えば;ベントナイト、ケイ酸アルミニウムなど)、ポリアクリル酸系増粘剤(例:カルボン酸モノマー、例えばアクリル酸、マレイン酸または無水マレイン酸、メタクリル酸など)、セルロース系増粘剤(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)などがある。架橋剤は過酸化ジクミル (DCP)、過酸化ベンゾイル、ジ-tert-ブチル過酸化物、過酸化水素ジクミル2,5-ジメチル-2,5-ジtert-ブチル過酸化ヘキサン等である。
【0039】
発泡性組成物において、発泡剤は有機発泡剤または無機発泡剤とすることができる。有機発泡剤の例は、例えばアゾ化合物(例:アゾジカルボキサミド、アゾジイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸ジイソプロピル)、スルホンアミド類化合物(例:4,4-オキソジフェニルスルホニルヒドラジド、p-フェニルスルホニルヒドラジド、1,4-ベンゾスルホニルヒドラジド)、ニトロソ化合物(例えば、ジニトロソフタルアミド、N,N’-ジニトロソメチレンジアミン)、二酸化炭素 (CO2)、炭素数が4~10の炭化水素化合物(例:ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン)または膨張性微小球(例:膨張性マイクロカプセル、微小球発泡粉)である。なかでも、膨張性微小球が好ましい。
【0040】
本発明の発泡熱可塑性ポリウレタンを作成するための発泡組成物は未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子、増粘剤または架橋剤、および発泡剤のほか、必要に応じて無機充填物および可塑剤を含むことができる。無機充填物は、例えば、離型剤として用いられるタルク粉、雲母粉、チオ硫酸ナトリウムなどである。タルクを用いることが好ましい。各具体例によれば、100重量部の未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子に基づき、0.1重量部~5重量部のタルクを含有することが好ましい。可塑剤はベンゾイン酸類化合物(例えば、安息香酸エステル、例えば、安息香酸メチル、安息香酸エチル、ジ安息香酸ジプロピレングリコールエステル等、およびそれらの誘導体)、エステル類化合物(例:クエン酸トリエチルエステル、クエン酸トリメチルエステル、クエン酸アセチルトリエチルエステル、およびそれらの誘導体)、エーテル類化合物(例:アジピン酸エーテル、エチレングリコールブチルエーテル、およびそれらの誘導体)、ポリカプロラクトン類化合物(例:ポリカプロラクトンジオール、およびそれらの誘導体)またはポリカーボネート類化合物(例:ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびそれらの誘導体)である。安息香酸エステルまたはその誘導体の使用が好ましい。各種の実施例によって、100重量部の未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子に基づき、1重量部~20重量部の可塑剤を含有することが好ましい。
【0041】
好ましい具体例において、本発明の発泡熱可塑性ポリウレタンを作成するための発泡性組成物は以下の配合比を有する:100重量部の未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子;0.5重量部~5重量部の増粘剤または架橋剤;0.1重量部~5重量部のタルク;1重量部~20重量部の可塑剤;および5重量部~25重量部の発泡剤。組成物における未発泡の熱可塑性ポリウレタン粒子は1,000~9,000ポアズの粘度を有し、前記粘度はJISK 7311測定方法に準じて170℃で測定する。タルク粉および可塑剤の双方を組成物に添加する必要がある場合、上記の配合比は、均一な細孔サイズおよび均一な粒径を有する発泡熱可塑性ポリウレタンの形成に有用である。
【0042】
その他、発泡可能の組成物の中に各種の着色料粉を添加することができる。各種の具体例によれば、100重量部の未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子に基づき、0.1重量部~5重量部の着色料粉を含有することが好ましい。
【0043】
発泡熱可塑性ポリウレタンの作成方法
【0044】
発泡造粒を行って発泡熱可塑性ポリウレタンを作成する方法を例示して説明する。まず、前記発泡性組成物(未発泡の熱可塑性ポリウレタン粒子、増粘剤または架橋剤、発泡剤、または必要に応じて無機フィラー、可塑剤、着色料などを添加する)を一軸式造粒機に投入して発泡造粒を行う。前記単一スクリュー造粒機のダイヘッド温度は100℃~180℃であり、押出速度は50 kg/h~70 kg/hであり、ダイヘッド圧力は35 kgf/cm2~65 kgf/cm2であり、水中造粒温度は10℃~20℃であり;好ましくは、前記単一スクリュー造粒機のダイヘッド温度は110℃~165℃であり、より好ましくは110℃~150℃である。前記発泡造粒法または他の適合する方法を使用して発泡熱可塑性ポリウレタンを作成することができる。押出速度が低すぎると、発泡性粒子が発泡(スクリュー・オーバフロー)しすぎてマイクロ波で発泡できなくなることを注記する。
【0045】
前記方法によって、多種の着色単一粒子を含有する発泡熱可塑性ポリウレタンを調製できる。例えば、まず、それぞれ異なる色の単色材料を含む発泡性組成物、例えば、第1の発泡組成物(黒色料を含有)および第2の発泡組成物(赤色料を含有)を準備する。その後、第1の組成物を複数回に分けて単一スクリュー造粒機に投入する。前記第1組成物の複数回の投入のうち、任意の2回の間に、前記第2の発泡性組成物の一部を投入する。この方法で、同様にして、多種の着色単一粒子を含有する発泡熱可塑性ポリウレタンを調製できる。
【0046】
発泡熱可塑性ポリウレタン
【0047】
前記発泡性組成物と方法によって本発明の発泡熱可塑性ポリウレタンを製造できるが、それに限定されない。好ましくは、本発明の発泡熱可塑性ポリウレタンは再発泡可能な性質を有し、換言すれば、本発明の発泡熱可塑性ポリウレタンは、例えば、マイクロ波などの適当な方法で再発泡させて、より低い密度を生成する。具体的には、各種の好ましい具体例において、本発明は、0.2 g/cm3~0.8 g/cm3の密度範囲を有する発泡熱可塑性ポリウレタンを提供し、前記発泡熱可塑性ポリウレタンをマイクロ波への暴露で再発泡させて、初発泡の密度より低い、0.15 g/cm3~0.6 g/cm3の範囲の再発泡の密度とする。本明細書において、前記組成物を造粒発泡して発泡熱可塑性ポリウレタンとするプロセスを第1段発泡という。第1段発泡で製造した発泡熱可塑性ポリウレタンを再び発泡するプロセスを第2段発泡という。好ましい具体例において、第1段発泡の発泡熱可塑性ポリウレタンは残留発泡剤であるが、本発明はそれに限定されない。発泡性組成物の配合を調製し、または、造粒発泡の製造プロセスを制御して、発泡熱可塑性ポリウレタン中にまだ完全に失効していない発泡剤を残留させ、再び発泡する能力を強化できる。本発明の具体例によれば、第1段発泡の発泡熱可塑性ポリウレタンは好ましくは3 mm~7.5 mmの粒径を有する。本発明の他の実施例によれば、第1段発泡の発泡熱可塑性ポリウレタンは、好ましくは40C~80Cのショアー硬度を有する。本発明の他の実施例によれば、第1段発泡の発泡熱可塑性ポリウレタンは、好ましくは、0.2 g/cm3~0.8 g/cm3の密度を有する。第1段発泡する発泡熱可塑性ポリウレタンは、球状、薄片状、非球状の不規則形状など様々な形状を有する。
【0048】
マイクロ波成形体およびその方法
【0049】
本発明のマイクロ波成型システムは、形成をマイクロ波方式で第2段発泡を行い、マイクロ波によって調製された発泡材料中に形成される細孔は、マイクロ波によらずに調製されたものよりも、より均一かつ微細であり、軽量であるという利点を有する。また、マイクロ波によって発泡熱可塑性ポリウレタンの各粒子表面にも相互粘着作用が生じ、マイクロ波成形体となる。各種の具体例によれば、本発明で製造するマイクロ波成型体は、優先的に、以下の物性を有する:好ましいショアー硬度は40C~80Cであり;好ましい最適密度は0.15 g/cm3~0.6 g/cm3である。
【0050】
各種の具体例によれば、本発明のマイクロ波成形体法は、以下のとおりである:適当量の第1段発泡の発泡熱可塑性ポリウレタンを1つの容器に入れ、その後マイクロ波を照射し、この容器を各種の金型とすることができる。セラミック金型、プラスチック金型、ガラス金型または金属とプラスチックとの複合金型であってもよく、好ましい具体例において、容器は金属とプラスチックとの複合材である。本発明のマイクロ波発泡プロセスにおいて、周波数が2450 MHzマイクロ波であり、好ましいマイクロ波パワーは500ワット (W)~30,000 Wであり、より好ましくは5,000 W~25,000 Wであり、マイクロ波時間は3秒~300秒であり、より好ましくは5秒~120秒である。いくつかの実施例によれば、マイクロ波プロセスで、水を加える必要がない。いくつかの具体例のマイクロ波プロセスにおいて、水またはアルコール類などをマイクロ波溶媒として添加することができる。これらの具体例において、100重量部の発泡熱可塑性ポリウレタンに基づき、前記溶媒の使用量が1重量部~10重量部である。前記溶媒は極性溶媒である、選択できるアルコール類は一級アルコール(例:メタノールまたはエタノール)および二級アルコール(例:エチレングリコールまたはプロピレングリコール)を含むが、それだけに限定されない。
【0051】
総括すると、適当な配合の発泡組成物を提供し、第1段発泡造粒プロセスおよび第2段マイクロ波発泡製造プロセスを順に行うことによって、軽質(発泡倍率が高い)で、品質が安定し、孔分布が均一等の長所を兼ねる熱可塑性ポリウレタン発泡材料を生成することができる。
【実施例
【0052】
以下、様々な例を挙げて本発明の実施形態を詳細に説明する。当業者は、本明細書の内容を通じて、本発明の利点と効果を容易に理解し、そして、本発明の精神から逸脱することなく、各種の修飾と変更を行い、本発明の内容を実施または応用することができる。
【0053】
第1段の造粒発泡:実施例1a、実施例2aおよび比較例1a’
【0054】
実施例1a:100重量部の未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子(商品名:T 955 PLVM 2, ショアー硬度50A, 粘度9000ポアズ(170℃), 三晃株式会社製)、2.5重量部の安息香酸メチル(可塑剤として)、2.5重量部のケイ酸アルミニウム(増粘剤として)、0.1重量部のタルクおよび15重量部の膨張性微小球(商品名:エクスペンセル930 DU-120, 松本より購入、発泡剤に)を均一に混合した後、シングルスクリュー造粒機を操作し、材料の押出速度50 kg/h、ダイヘッド圧力50 kgf/cm2、ダイヘッド温度155℃、スクリュー温度120~170℃および水中造粒温度20℃の条件で、第1段発泡造粒プロセスを行い、一次発泡熱可塑性ポリウレタンを取得する。この一次発泡熱可塑性ポリウレタンの密度は0.33 g/cm3で粒状である。
【0055】
実施例2a:100重量部の未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子(商品名:T 955 PLVM 2, ショアー硬度50A, 粘度9000ポアズ(170℃), 三晃株式会社製)、2.5重量部の安息香酸メチル(可塑剤として)および1.0重量部の過酸化ジイソプロピルベンゼン(架橋剤)、0.1重量部のタルクおよび15重量部の膨張性微小球(商品名:エクスペンセル930 DU-120, 松本より購入, 発泡剤として)を均一に混合した後、シングルスクリュー造粒機を操作し、材料の押出速度50 kg/hで、ダイヘッド圧力50 kgf/cm2、ダイヘッド温度155℃、スクリュー温度120~170℃および水中造粒温度20℃の条件で、第1段発泡造粒プロセスを行い、一次発泡熱可塑性ポリウレタンを取得する。この一次発泡熱可塑性ポリウレタンの密度は0.32 g/cm3で粒状である。
【0056】
比較例1a’:100重量部の未発泡熱可塑性ポリウレタン粒子(T 955 PLVM 2, ショアー硬度50A, 粘度9000ポアズ(170度)、三晃株式会社製)、2.5重量部の安息香酸メチル(可塑剤として)、0.1重量部のタルクおよび15重量部の膨張性微小球(商品名:エクスペンセル930 DU-120, 松本より購入, 発泡剤として)を均一に混合した後、シングルスクリュー造粒機を操作し、材料の押出速度50 kg/h、ダイヘッド圧力35 kgf/cm2、ダイヘッド温度155℃、スクリュー温度120~170℃および水中造粒温度20℃の条件で、第1段発泡造粒プロセスを行い、第1段発泡造粒プロセスを行い、増粘剤、架橋フレームを加えず、この一次発泡熱可塑性ポリウレタンの密度は0.48 g/cm3であり、粒状である。
【0057】
第2段マイクロ波発泡:実例1b、実例2bおよび比較実例1b’
【0058】
実施例1b:前記実施例1aにより取得した発泡熱可塑性ポリウレタン(名称1a)を72重量部取って3重量部の水を入れ金型の中に入れ、前記金型の長さは20センチであり、幅は12センチであり、高さは1.2センチであり、そしてマイクロ波周波数は2450 MHzであり、マイクロ波パワーは8000 Wであり、マイクロ波時間は35秒で、第2段マイクロ波発泡プロセスを行い、金型を降温冷却した後、熱可塑性ポリウレタンマイクロ波成形体を完成し、平均密度は0.27 g/cm3である。
【0059】
実施例2b:実施例2bおよび比較例1b’は、実施例1bのやり方を参考にすることができる。各実施例の条件は、表1および表2の説明を参照されたい。
【0060】
実施例と比較例の分析検討
【0061】
実施例1a/1b、2a/2bおよび比較例1a/1b(増粘剤//架橋剤の添加)
【0062】
比較例1a’と実施例1aとのの違いは、実施例1aに増粘剤が添加されている点である。比較例1a’と実施例2aの違いは、実施例2aに架橋剤を使用している点である。比較例1aでは増粘剤や架橋剤を使用していないため、発泡熱可塑性ポリウレタンは一次発泡の段階で粘度が低く、強度不足のために発泡粒子が安定して成型できず、冷却時に粒子が著しく収縮し、密度が高くなる。比較例1aでは、順調に発泡した熱可塑性ポリウレタン(密度0.48 g/cm3)が得られたが、この粒子はマイクロ波により膨張性が不良となり、陥没してマイクロ波発泡成形体にならなかった。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】