(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】送信装置、受信装置、およびワイヤレスマイクロホンシステム
(51)【国際特許分類】
H04B 1/034 20060101AFI20220617BHJP
H04B 1/16 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
H04B1/034 B
H04B1/16 Z
(21)【出願番号】P 2021508531
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2019013223
(87)【国際公開番号】W WO2020194581
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000223182
【氏名又は名称】TOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163979
【氏名又は名称】濱名 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田中 智久
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-128566(JP,A)
【文献】特開2012-227855(JP,A)
【文献】特開2004-173297(JP,A)
【文献】特開2012-65028(JP,A)
【文献】特開2017-79359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/034
H04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号を取得する音声取得部と、前記音声信号を含む送信信号を形成する無線信号形成部と、前記送信信号を送信する送信部とを備え、
前記送信信号は、第1トーン信号と、前記第1トーン信号に重ねられる識別信号と、前記第1トーン信号の後に続く第2トーン信号とをさらに含み、
前記音声信号は、前記第2トーン信号に重ねられる
送信装置。
【請求項2】
第1トーン信号と、前記第1トーン信号に重ねられる識別信号と、前記第1トーン信号の後に続く第2トーン信号と、前記第2トーン信号に重ねられる音声信号と、を含む送信信号を受信する受信装置であって、
前記送信信号を受信する受信部と、前記受信部が受けた受信信号に基づいて前記受信信号に音声信号が含まれるか否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて前記受信信号から音声信号を取り出す取出部とを備え、
前記判定部は、前記受信信号から前記第1トーン信号を検出する第1検出部と、前記受信信号から前記第2トーン信号を検出する第2検出部と、前記受信信号から前記識別信号を検出する第3検出部とを備え、前記判定部は、前記第1検出部が前記第1トーン信号を検出すること、前記第3検出部が前記識別信号を検出すること、および前記第2検出部が前記第2トーン信号を検出することに基づいて、前記第2トーン信号の検出時以降、前記受信信号から音声信号を取り出させるための信号を前記取出部に出力する
受信装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記受信信号の強度が第1閾値よりも大きいか否かを判定する強度判定部、および、ノイズ強度が第2閾値よりも小さいか否かを判定するノイズ判定部をさらに備え、
前記判定部は、前記受信信号の強度が前記第1閾値よりも大きいと前記強度判定部が、判定すること、ノイズ強度が前記第2閾値よりも小さいと前記ノイズ判定部が判定すること、前記第1検出部が前記第1トーン信号を検出すること、前記第3検出部が前記識別信号を検出すること、および、前記第2検出部が前記第2トーン信号を検出すること、に基づいて、前記第2トーン信号の検出時以降、前記受信信号から音声信号を取り出させるための信号を前記取出部に出力する
請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記取出部は、切替部と、フィルタ部とを備え、
前記切替部は、前記判定部の判定結果に基づいて、前記受信信号を前記フィルタ部に出力する出力状態と、前記受信信号を前記フィルタ部に出力しない非出力状態との間を切り替え、
前記フィルタ部は、前記受信信号から第2トーン信号を除いて前記音声信号を出力する
請求項2または3に記載の受信装置。
【請求項5】
請求項1に記載の送信装置と、請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の受信装置とを備えるワイヤレスマイクロホンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置、受信装置、およびワイヤレスマイクロホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のワイヤレスマイクロホンシステムは、送信装置と、受信装置とを備える。送信装置は、所定のトーン信号と音声信号とを送信する。受信装置は、所定のトーン信号を受信したとき、音声信号を外部装置(例えば、スピーカー)に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特定の音声信号を受信する選択精度を向上させるため、送信信号に識別信号(特定の音声信号であることを示す識別信号、例えば、ID信号。)を重畳する場合がある。この場合、送信信号に識別信号と音声信号とが含まれていることから、送信信号から適切に音声信号を取り出せないといった問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、音声信号を適切に取り出すことができる、送信装置、受信装置、およびワイヤレスマイクロホンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一側面に従う送信装置は、音声信号を取得する音声取得部と、前記音声信号を含む送信信号を形成する無線信号形成部と、前記送信信号を送信する送信部とを備え、前記送信信号は、第1トーン信号と、前記第1トーン信号に重ねられる識別信号と、前記第1トーン信号の後に続く第2トーン信号とをさらに含み、前記音声信号は、前記第2トーン信号に重ねられる。
【0007】
この構成によれば、音声信号は、識別信号が重ねられる第1トーン信号とは異なる第2トーン信号に重ねられる。このため、受信装置に、音声信号の送信のタイミングを精確に知らせることができる。このように、この送信信号によれば、音声信号を適切に取り出すことができる。
【0008】
(2)本発明の一側面に従う受信装置は、第1トーン信号と、前記第1トーン信号に重ねられる識別信号と、前記第1トーン信号の後に続く第2トーン信号と、前記第2トーン信号に重ねられる音声信号と、を含む送信信号を受信する受信装置であって、前記送信信号を受信する受信部と、前記受信部が受けた受信信号に基づいて前記受信信号に音声信号が含まれるか否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて前記受信信号から音声信号を取り出す取出部とを備え、前記判定部は、前記受信信号から前記第1トーン信号を検出する第1検出部と、前記受信信号から前記第2トーン信号を検出する第2検出部と、前記受信信号から前記識別信号を検出する第3検出部とを備え、前記判定部は、前記第1検出部が前記第1トーン信号を検出すること、前記第3検出部が前記識別信号を検出すること、および前記第2検出部が前記第2トーン信号を検出することに基づいて、前記第2トーン信号の検出時以降、前記受信信号から音声信号を取り出させるための信号を前記取出部に出力する。
【0009】
この構成によれば、判定部は、第1トーン信号、識別信号、および第2トーン信号を検出したときに、これらを含む信号に、音声信号が含まれると判定する。そして、取出部は、第2トーン信号の検出時以降、受信信号から音声信号を取り出す。これによって、音声信号の最初の部分が取り出されないことを抑制し、音声信号を適切に取り出すことができる。
【0010】
(3)好ましくは、上記受信装置において、前記判定部は、前記受信信号の強度が第1閾値よりも大きいか否かを判定する強度判定部、および、ノイズ強度が第2閾値よりも小さいか否かを判定するノイズ判定部をさらに備え、前記判定部は、前記受信信号の強度が前記第1閾値よりも大きいと前記強度判定部が判定すること、ノイズ強度が前記第2閾値よりも小さいと前記ノイズ判定部が判定すること、前記第1検出部が前記第1トーン信号を検出すること、前記第3検出部が前記識別信号を検出すること、および、前記第2検出部が前記第2トーン信号を検出すること、に基づいて、前記第2トーン信号の検出時以降、前記受信信号から音声信号を取り出させるための信号を前記取出部に出力する。
【0011】
この構成によれば、判定部は、5個の要件が揃うことによって受信信号から音声信号を取り出させるための信号を取出部に出力する。これによって、5個未満の要件によって音声信号の有無を判定する場合に比べて、出力する音声信号の品質を向上できる。
【0012】
(4)好ましくは、上記受信装置において、前記取出部は、切替部と、フィルタ部とを備え、前記切替部は、前記判定部の判定結果に基づいて、前記受信信号を前記フィルタ部に出力する出力状態と、前記受信信号を前記フィルタ部に出力しない非出力状態との間を切り替え、前記フィルタ部は、前記受信信号から第2トーン信号を除いて前記音声信号を出力する。この構成によれば、音声信号を出力できる。
【0013】
(5)本発明の一側面に従うワイヤレスマイクロホンシステムは、上記送信装置と、上記受信装置とを備える。
この構成によれば、音声信号を適切に取り出すことができる。
【発明の効果】
【0014】
送信装置、受信装置、およびワイヤレスマイクロホンシステムによれば、音声信号を適切に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】各フラッグのタイミングを示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~
図5を参照して、ワイヤレスマイクロホンシステム1について説明する。
ワイヤレスマイクロホンシステム1(以下、単に「WLシステム1」という。)は、送信装置3と、受信装置4と、スピーカー5とを備える。送信装置3は、音声信号SDを含む送信信号STを無線によって送信する。受信装置4は、送信装置3から送信された送信信号STを受信する。スピーカー5は、受信装置4に接続される。スピーカー5は、受信装置4から出力される音声信号SDを拡声する。
【0017】
図2を参照して、送信装置3について説明する。
送信装置3は、音声信号SDを取得する音声取得部10(マイクロホン)と、無線信号形成部11と、送信信号STを送信する送信部12を備える。音声取得部10は、音声を音声信号SDとして出力する。音声取得部10は、無線信号形成部11に接続される。送信部12は、送信アンテナを含む。送信部12は、送信信号STを無線によって送信する。例えば、送信部12は、送信信号STを、電波に変換して送信する。
【0018】
無線信号形成部11は、音声信号SDを含む送信信号STを形成する。無線信号形成部11は、アンプ部20と、識別信号出力部21と、第1トーン形成部22と、第2トーン形成部23と、重畳部24と、変調回路25と、高周波送信回路26とを備える。さらに、無線信号形成部11は、第1スイッチ27と、第2スイッチ28とを備える。
【0019】
アンプ部20は、音声信号SDを増幅する。アンプ部20は、1段でもよいし、多段であってもよい。
識別信号出力部21は、識別信号SCを出力する。識別信号SCは、特定の音声信号であることを示す信号であって、送信装置3それぞれに個別に設定されるID符号に対応するID信号である。ID符号は、複数の符号によって構成される。識別信号出力部21は、予め設定された識別信号SCを保持するものでもよいし、識別信号SCを形成するものであってもよい。識別信号SCは、送信信号STがWLシステム1内の送信装置3から送信されたものであることを、WLシステム1内の受信装置4に認証させるための信号である。WLシステム1内の送信装置3と受信装置4とは、共通の識別信号SCを保持する。
【0020】
第1スイッチ27は、アンプ部20の出力部と重畳部24とを接続させる第1接続モードと、識別信号出力部21と重畳部24とを接続させる第2接続モードとの間を切り替える。第1スイッチ27の動作によって、音声信号SDおよび識別信号SCのうちの一方が重畳部24に出力される。
【0021】
第1トーン形成部22は、所定周波数の第1トーン信号SAを形成する。第2トーン形成部23は、第1トーン信号SAとは異なる第2トーン信号SBを形成する。第2トーン信号SBは、第1トーン信号SAと判別可能であればよい。例えば、第2トーン信号SBの周波数は、第1トーン信号SAの周波数と異なる。トーン信号が耳障りにならないように、第1トーン信号SAの周波数は、可聴音帯域よりも高い周波数であることが好ましい。また、第2トーン信号SBの周波数は、可聴音帯域よりも高い周波数であることが好ましい。
【0022】
第2スイッチ28は、第1トーン形成部22の出力部と重畳部24とを接続させる第3接続モードと、第2トーン形成部23と重畳部24とを接続させる第4接続モードとの間を切り替える。第2スイッチ28の動作によって、第1トーン信号SAおよび第2トーン信号SBのうちの一方が重畳部24に出力される。
【0023】
第1スイッチ27および第2スイッチ28は、連動する。第1スイッチ27の動作および第2スイッチ28の動作によって構成されるスイッチ状態には、第1スイッチ状態と第2スイッチ状態の2つがある。第1スイッチ状態は、識別信号を送信するように切り替わった状態である。第1スイッチ状態では、第1スイッチ27が上記の第2接続モードに設定され、かつ第2スイッチ28が上記の第3接続モードに設定される。第2スイッチ状態は、音声信号SDを送信するように切り替わった状態である。第2スイッチ状態では、第1スイッチ27が上記の第1接続モードに設定され、かつ第2スイッチ28が上記の第4接続モードに設定される。
【0024】
重畳部24は、第1トーン信号SAおよび第2トーン信号SBのいずれか一方と、音声信号SDおよび識別信号SCのいずれか一方とを重畳する。具体的には、第1スイッチ状態のとき、重畳部24は、識別信号SCと第1トーン信号SAとを重畳する。第2スイッチ状態のとき、重畳部24は、音声信号SDと第2トーン信号SBとを重畳する。
【0025】
変調回路25は、重畳部24から出される信号を変調する。高周波送信回路26は、変調された信号を高周波数の周波数に変換し、高周波の周波数に変換された信号を送信信号STとして送信部12に出力する。
【0026】
以上のようにして、送信装置3は、送信信号STを形成する。上述のように、送信信号STは、第1トーン信号SAと、第1トーン信号SAに重ねられる識別信号SCと、第1トーン信号SAの後に続く第2トーン信号SBと、第2トーン信号SBに重ねられる音声信号SDとを含む。
【0027】
図3を参照して、送信信号STの一例を説明する。
第1トーン信号SAには、所定回数の識別信号SCが繰り返し重畳される。なお、第1トーン信号SAに、所定期間おきに、所定回数の識別信号SCを繰り返し重畳してもよい。第2トーン信号SBは、第1トーン信号SAの後に続く。第2トーン信号SBには、音声信号SDが重畳される。第1トーン信号SAは、受信装置4に、識別信号SCが出力されていることを知らせる信号である。第2トーン信号SBは、受信装置4に、音声信号SDが出力されていることを知らせる信号である。
【0028】
図4を参照して、受信装置4について説明する。
受信装置4は、受信部30と、判定部31と、取出部32とを備える。好ましくは、受信装置4は、高周波受信回路33と、復調回路34とをさらに備える。
【0029】
受信部30は、送信信号STを受信する。受信部30は、受信した送信信号STを受信信号として後続の高周波受信回路33に出力する。高周波受信回路33は、受信部30から受信信号を受ける。高周波受信回路33は、高周波数の受信信号を中間周波数の信号に変換する。
【0030】
復調回路34は、中間周波数に変換された受信信号を高周波受信回路33から受ける。復調回路34は、中間周波数の信号を復調する。取出部32は、復調された受信信号を受ける。
【0031】
取出部32は、判定部31の判定結果に基づいて受信信号から音声信号SDを取り出す。取出部32は、判定部31から、後述の信号取出指令を受けるとき、受信信号から音声信号SDを取り出して、音声信号SDを外部装置(本実施形態では、スピーカー5)に出力する。取出部32は、判定部31から、後述の信号取出指令を受けないとき、受信信号から音声信号SDを外部装置に出力しない。
【0032】
例えば、取出部32は、切替部35と、フィルタ部36とを備える。
切替部35は、判定部31の判定結果に基づいて、受信信号をフィルタ部36に出力する出力状態と、受信信号をフィルタ部36に出力しない非出力状態との間を切り替える。一例では、切替部35は、ミュート回路35Cによって構成される。ミュート回路35Cは、回路入力部35aと回路出力部35bとを接続する信号線35cと、グランドに接続されるグランド線35dと、信号線35cとグランド線35dとを接続するスイッチ35eとを備える。信号線35cは、受信信号をフィルタ部36に伝達する。スイッチ35eによって信号線35cとグランド線35dとが接続されるとき、受信信号は、グランドに落ちるため、受信信号はミュート回路35Cから出力されない(「非出力状態」)。スイッチ35eの動作によって信号線35cとグランド線35dとが接続されないとき、受信信号は、信号線35cを伝達して、ミュート回路35Cの回路出力部35bに出力される(「出力状態」)。フィルタ部36は、受信信号から第2トーン信号SBを除いて、音声信号SDを出力する。
【0033】
判定部31は、受信部30が受けた受信信号に基づいて受信信号に音声信号SDが含まれるか否かを判定する。具体的には、判定部31は、演算部40と、第1検出部41と、第2検出部42と、第3検出部43とを備える。
【0034】
演算部40は、演算部40に入力される信号に基づいて、判定結果を取出部32に出力する。本実施形態では、演算部40は、後述の5つのフラッグの全てがオンのとき、受信信号から音声信号SDを取り出させる指令(以下、「信号取出指令」)(例えば、オン信号)を、取出部32に出力する。また、演算部40は、後述の5つのフラッグの少なくとも1つがオフのとき、信号取出指令を、取出部32に出力しない。
【0035】
第1検出部41は、受信信号から第1トーン信号SAを検出する。第1検出部41は、第1トーン信号SAを検出すると、オン信号を演算部40に出力する。第2検出部42は、受信信号から第2トーン信号SBを検出する。第2検出部42は、第2トーン信号SBを検出すると、オン信号を演算部40に出力する。第3検出部43は、受信信号から識別信号SCを検出する。第3検出部43は、識別信号SCを検出すると、オン信号を演算部40に出力する。
【0036】
好ましくは、判定部31は、第1検出部41~第3検出部43に加えて、強度判定部44およびノイズ判定部45を備える。強度判定部44は、受信信号の強度が第1閾値よりも大きいか否かを判定する。強度判定部44は、受信信号の強度が第1閾値よりも大きいと判定すると、受信強度が十分であることを示す信号(以下、「受信可能強度信号」)を演算部40に出力する。ノイズ判定部45は、ノイズ強度が第2閾値よりも小さいか否かを判定する。ノイズ判定部45は、ノイズ強度が第2閾値よりも小さいと判定すると、ノイズが小さいことを示す信号(「許容ノイズ信号」)を演算部40に出力する。
【0037】
上述したように、演算部40は、後述の5つのフラッグの全てがオンのとき、信号取出指令を取出部32に出力する。具体的には、演算部40は、(a)強度判定部44が、受信信号の強度が第1閾値よりも大きいと判定すること、(b)ノイズ判定部45が、ノイズ強度が第2閾値よりも小さいと判定すること、(c)第1検出部41が第1トーン信号SAを検出すること、(d)第3検出部43が識別信号SCを検出すること、および、(e)第2検出部42が第2トーン信号SBを検出すること、に基づいて、信号取出指令を取出部32に出力する。
【0038】
図5を参照して、受信装置4の動作を説明する。
送信装置3が送信信号STを出力したときの、演算部40における各フラッグの推移を説明する。演算部40は、ノイズフラッグ、強度フラッグ、第1トーンフラッグ、第2トーンフラッグ、および識別フラッグを有する。
【0039】
ノイズフラッグは、ノイズ判定部45から受ける信号に基づく信号である。ノイズフラッグは、ノイズ判定部45の許容ノイズ信号に基づいてオンになる。ノイズフラッグは、演算部40が許容ノイズ信号を受けている状態にわたってオンを維持し、演算部40が許容ノイズ信号を受けないときオフを維持する。
【0040】
強度フラッグは、強度判定部44から受ける信号に基づく信号である。強度フラッグは、強度判定部44の受信可能強度信号に基づいてオンになる。強度フラッグは、演算部40が受信可能強度信号を受けている状態にわたってオンを維持し、演算部40が受信可能強度信号を受けないときオフを維持する。
【0041】
第1トーンフラッグは、第1検出部41から受ける信号に基づく信号である。第1トーンフラッグは、演算部40が第1検出部41からオン信号を受けることに基づいてオンになり、演算部40が第1検出部41からオン信号を受けなくなった後でも、オンを維持し続ける。
【0042】
第2トーンフラッグは、演算部40が第2検出部42から受ける信号に基づく信号である。第2トーンフラッグは、演算部40が第2検出部42からオン信号を受けることに基づいてオンになる。第2トーンフラッグは、演算部40がオン信号を受けている状態にわたってオンを維持し、演算部40がオン信号を受けないときオフを維持する。
【0043】
識別フラッグは、第3検出部43から受ける信号に基づく信号である。識別フラッグは、演算部40が第3検出部43からオン信号を受けることに基づいてオンになり、演算部40が第3検出部43からオン信号を受けなくなった後でも、オンを維持し続ける。
【0044】
以下に演算部40の動作を説明する。
送信装置3から送信信号STが送信されると、時刻t1において、ノイズ判定部45は、受信信号の強度が十分に大きいことに基づいてノイズ強度の判定を実行し、ノイズ強度が第2閾値よりも小さいことに基づいて許容ノイズ信号を出力する。ノイズ判定部45が許容ノイズ信号を出力すると、ノイズフラッグは「オン」になる。
【0045】
時刻t1の後(時刻t1と時刻t2との間の期間)、第1検出部41は、第1トーン信号SAを検出する。なお、第1検出部41の検出手段の構成によっては、ノイズ判定部45の判定時(時刻t1)と略同時刻に第1トーン信号SAを検出できる場合もある。第1検出部41は、第1トーン信号SAを検出している期間、オン信号を出力する。このとき、第1トーンフラッグは、「オン」になり、その後、「オン」状態を維持し続ける。
【0046】
強度判定部44は、常時、受信信号の強度が第1閾値よりも大きいか否かを判定する。この例では、送信信号STが送信される時刻t1において、強度判定部44は、受信信号の強度が第1閾値よりも大きいと判定し、オン信号を出力する。このとき、強度フラッグは、「オン」になる。
【0047】
復調回路34によって復調された信号には、第1トーン信号SAと識別信号SCとが含まれていることから、時刻t1のしばらくした後、時刻t2において、第3検出部43が識別信号SCを検出する。第3検出部43が識別信号SCを検出すると、第3検出部43は、オン信号を出力する。このとき、識別フラッグは、「オン」になり、その後、「オン」状態を維持し続ける。
【0048】
その後、時刻t3において、第2検出部42は、第2トーン信号SBを受信する。第2検出部42は、第2トーン信号SBを検出している期間、オン信号を出力する。このとき、第2トーンフラッグは、「オン」になる。
【0049】
この時点で、ノイズフラッグがオン、強度フラッグがオン、第1トーンフラッグがオン、第2トーンフラッグがオン、および、識別フラッグがオンとなっている。このとき、切替部35が「出力状態」に切り替わり、受信装置4から受信信号がフィルタ部36を通って外部装置(例えば、スピーカー5)に出力される。ノイズフラッグがオン、強度フラッグ、第1トーンフラッグ、第2トーンフラッグ、および、識別フラッグの少なくとも1つが、オフであるとき、切替部35が「非出力状態」に切り替わる。この場合、受信装置4から受信信号は、外部装置に出力されない。例えば、時刻t4において、第2検出部42が、第2トーン信号SBを検出しないことによって第2トーンフラッグがオフになるとき、切替部35が「非出力状態」に切り替わる。
【0050】
本実施形態の作用を説明する。
本実施形態と比較される参考例を説明する。参考例の送信信号は、識別信号SCと、音声信号SDとが1種類のトーン信号に重畳される。識別信号SCの検出の確度を上げるため、トーン信号には、識別信号SCが繰り返し重畳される。受信装置は、送信信号の受信後、識別信号SCを検出した時点で、切替部35の切り替えを「出力状態」に切り替える。しかし、受信装置が、時間軸上の複数の識別信号SCのうち中間あたりの識別信号SCを検出し、この時点で、切替部35が「出力状態」に切り替わる場合、識別信号SCおよび音声信号SDを含むトーン信号が外部装置に出力される。そうすると、外部装置は、識別信号SCおよび音声信号SDを含むトーン信号を受ける。トーン信号はフィルタによって除去されるが、外部装置が受けた信号には識別信号SCと音声信号SDとが残るため、外部装置がスピーカー5の場合、識別信号SCに対応する不快な音が再生されるようになる。この対策として、切替部35の切り替えタイミングを、識別信号SCの検出時から所定期間経過後とすることも考えられる。しかし、識別信号SCが検出されるタイミングが遅い場合、切替部35の切り替えタイミングが遅れるため、時間軸上で識別信号SCの後に続く音声信号SDのうち、音声信号SDの最初の部分が取り出されない虞が生じる。すなわち、参考例の場合、受信装置は、時間軸における識別信号SCと音声信号SDとの境目を検出できないことによって、受信装置から出力される信号が適切なものにならない。
【0051】
これに対して、本実施形態では、第1トーン信号SAに識別信号SCを重畳し、第1トーン信号SAの後に続く第2トーン信号SBに音声信号SDを重畳する。これによって、時間軸上における識別信号SCと音声信号SDとの境目が、第1トーン信号SAと第2トーン信号SBとの切り替わり時点として検出可能になり、音声信号SDが適切に出力されるようになる。
【0052】
本実施形態の効果を説明する。
(1)送信信号STは、第1トーン信号SAと、第1トーン信号SAに重ねられる識別信号SCと、第1トーン信号SAの後に続く第2トーン信号SBと、第2トーン信号SBに重ねられる音声信号SDとを含む。
【0053】
この構成によれば、音声信号SDは、識別信号SCが重ねられる第1トーン信号SAとは異なる第2トーン信号SBに重ねられる。このため、受信装置4に、音声信号SDの送信のタイミングを精確に知らせることができる。このように、この音声信号SDによれば、音声信号SDを適切に取り出すことができる。
【0054】
(2)受信装置4は、第1トーン信号SAと、第1トーン信号SAに重ねられる識別信号SCと、第1トーン信号SAの後に続く第2トーン信号SBと、第2トーン信号SBに重ねられる音声信号SDとを含む送信信号STを受信する。受信装置4は、受信信号に基づいて受信信号に音声信号SDが含まれるか否かを判定する判定部31と、判定部31の判定結果に基づいて受信信号から音声信号SDを取り出す取出部32とを備える。判定部31は、受信信号から第1トーン信号SAを検出する第1検出部41と、受信信号から第2トーン信号SBを検出する第2検出部42と、受信信号から識別信号SCを検出する第3検出部43とを備える。判定部31は、第1検出部41が第1トーン信号SAを検出すること、第3検出部43が識別信号SCを検出すること、および第2検出部42が第2トーン信号SBを検出することに基づいて、第2トーン信号SBの検出時以降、受信信号から音声信号SDを取り出させるための信号を取出部32に出力する。
【0055】
この構成によれば、判定部31は、第1トーン信号SA、識別信号SC、および第2トーン信号SBを検出したときに、これらを含む信号に、音声信号SDが含まれると判定する。そして、取出部32は、第2トーン信号SBの検出時以降、受信信号から音声信号SDを取り出す。これによって、音声信号SDの最初の部分が取り出されないことを抑制し、音声信号SDを適切に取り出すことができる。
【0056】
(3)好ましくは、判定部31は、さらに、受信信号の強度が第1閾値よりも大きいか否かを判定する強度判定部44、および、ノイズ強度が第2閾値よりも小さいか否かを判定するノイズ判定部45をさらに備える。判定部31は、受信信号の強度が第1閾値よりも大きいと強度判定部44が判定すること、ノイズ強度が第2閾値よりも小さいとノイズ判定部45が判定すること、第1検出部41が第1トーン信号SAを検出すること、第3検出部43が識別信号SCを検出すること、および、第2検出部42が第2トーン信号SBを検出すること、に基づいて、第2トーン信号SBの検出時以降、受信信号から音声信号SDを取り出させるための信号を取出部32に出力する。
【0057】
この構成によれば、判定部31は、5個の要件が揃うことによって、受信信号から音声信号SDを取り出させるための信号(信号取出指令)を取出部32に出力する。これによって、5個未満の要件によって音声信号SDの有無を判定する場合に比べて、出力する音声信号SDの品質を向上できる。ここで、音声信号SDの高品質とは、強度が十分に大きいこと、ノイズが小さいこと、および、混信した信号ではないことである。
【0058】
(4)取出部32は、切替部35と、フィルタ部36とを備える。切替部35は、判定部31の判定結果に基づいて、受信信号をフィルタ部36に出力する出力状態と、受信信号をフィルタ部36に出力しない非出力状態との間を切り替え、フィルタ部36は、受信信号から第2トーン信号SBを除いて音声信号SDを出力する。この構成によれば、音声信号SDを出力できる。
【0059】
(5)WLシステム1は、上記送信装置3と、上記受信装置4とを備える。
この構成によれば、音声信号SDを適切に取り出すことができる。したがって、音声信号SDの最初の音が再生されないようなことが抑制される。
【0060】
<その他の実施形態>
実施形態に関する説明は、送信装置3、受信装置4、およびWLシステム1の例示である。送信装置3、受信装置4、およびWLシステム1は、以下に示される変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0061】
・第2トーン信号SBは、第1トーン信号SAと判別可能であればよい。実施形態では、両トーンの周波数が異なっている。これに対して、次のように構成されてもよい。第2トーン信号SBの振幅は、第1トーン信号SAの振幅よりも大きくてもよいし、第2トーン信号SBの振幅は、第1トーン信号SAの振幅よりも小さくてもよい。この場合、この場合、第2トーン信号SBは、第1トーン信号SAのトーン周波数と同じであってもよいし、異なるトーン周波数であってもよい。振幅レベルを検出することによって、第1トーン信号SAから第2トーン信号SBへの切り替わり時点を判定できる。
【0062】
・第1トーン信号SAと第2トーン信号SBとの境目の時点よりも、所定時間だけ遅れた時点から、音声信号SDが重畳されてもよい。これによって、音声信号SDの最初の部分が取り出されないといったエラーを抑制できる。
【0063】
・受信装置4の構成は、ダイバシティ機能を有する受信装置にも適用できる。例えば、複数のアンテナと、共通回路とを有し、受信状態によってアンテナを切り替える受信装置において、当該受信装置の共通回路にも本実施形態の受信装置4の構成を適用できる。また、複数の受信回路(アンテナを含む)を有し、受信状態によって受信回路を切り替える受信装置において、当該受信装置の受信回路にも、本実施形態の受信装置4の構成を適用できる。
【符号の説明】
【0064】
SA…第1トーン信号、SB…第2トーン信号、SC…識別信号、SD…音声信号、ST…送信信号、t1…時刻、t2…時刻、t3…時刻、t4…時刻、1…ワイヤレスマイクロホンシステム(WLシステム)、3…送信装置、4…受信装置、5…スピーカー、10…音声取得部、11…無線信号形成部、12…送信部、20…アンプ部、21…識別信号出力部、22…第1トーン形成部、23…第2トーン形成部、24…重畳部、25…変調回路、26…高周波送信回路、27…第1スイッチ、28…第2スイッチ、30…受信部、31…判定部、32…取出部、33…高周波受信回路、34…復調回路、35…切替部、35a…回路入力部、35b…回路出力部、35C…ミュート回路、35c…信号線、35d…グランド線、35e…スイッチ、36…フィルタ部、40…演算部、41…第1検出部、42…第2検出部、43…第3検出部、44…強度判定部、45…ノイズ判定部。