(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】デジタルセンサを用いて物理量を測定する方法
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20220617BHJP
F02D 41/14 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
F02D45/00 372
F02D45/00 360Z
F02D45/00 376
F02D41/14
(21)【出願番号】P 2021519000
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2019066149
(87)【国際公開番号】W WO2019243399
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-12-16
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519031896
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルシアン ヴァタマヌ
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム ディレオン
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-226544(JP,A)
【文献】特開2017-226384(JP,A)
【文献】国際公開第2013/103018(WO,A1)
【文献】特開2017-040601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
B60R 16/02
G01F 1/00 - 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車電子制御ユニット(1)に接続されているデジタルセンサ(2)を使用して物理量の測定値を取得することを目的として、前記自動車電子制御ユニット(1)を制御する方法であって、前記方法では、前記
デジタルセンサ(2)により、送信周期(Te)で測定デジタルデータ(Q)が送信され、前記
自動車電子制御ユニット(1)により、処理周期(Tt)で前記測定
デジタルデータ(Q)が処理され、前記送信周期(Te)は、前記処理周期(Tt)よりも短い、前記自動車電子制御ユニット(1)を制御する前記方法において、それぞれの前記処理周期(Tt)の終わりに、先行するN個の処理周期(Tt)から成る区間(5)にわたり、測定された前記物理量の平均値を求め、前記方法は、以下のステップ、すなわち、
N+2個の測定
デジタルデータ(Q)に等しい記憶容量のバッファメモリ(6)に、それぞれの処理周期(Tt)に割り当てられる測定
デジタルデータを記憶するステップを有し、処理周期に割り当てられる前記測定
デジタルデータは、前記処理周期において前記
自動車電子制御ユニット(1)によって受信された最後の測定
デジタルデータ(Q)として定義されており、
前記バッファメモリ(6)に記憶されているそれぞれの割り当て測定
デジタルデータと共に、前記割り当て測定
デジタルデータの年齢(A)も記憶するステップを有し、測定
デジタルデータ(Q)の前記年齢(A)は、前記
自動車電子制御ユニット(1)による前記測定
デジタルデータの前記受信と、対応する前記処理周期(Tt)の終わりとの間の持続時間として定義されており、さらに
それぞれの処理周期(Tt)の前記終わりに、前記バッファメモリ(6)に記憶されている前記割り当て測定
デジタルデータの補間曲線を特定するステップと、
前記補間曲線に基づき、N個から成る処理周期(Tt)の区間(5)にわたり、測定された前記物理量の平均値を求めるステップと、
を有する、
ことを特徴とする、自動車電子制御ユニット(1)を制御する方法。
【請求項2】
前記
自動車電子制御ユニット(1)により、測定
デジタルデータ(Q)の前記受信と、前記測定
デジタルデータが受信された前記処理周期(Tt)の前記終わりと
の間の時間を測定し、
当該測定された時間は、対応する前記測定
デジタルデータ(Q)
の年齢(A)として前記バッファメモリ(6)に記憶
された後、
前記処理周期(Tt)が終了する時点毎
にリセット
される、ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
連続する前記割り当て測定
デジタルデータ(Q)を記憶するために使用される前記バッファメモリ(6)は、ファースト・イン・ファースト・アウトバッファメモリである、ことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
先行する2つの処理周期(Tt)から成る区間(5)にわたり、測定された前記物理量の前記平均
値を求め、前記バッファメモリ(6)は、4つの割り当て測定
デジタルデータ(Q)および当該割り当て測定
デジタルデータ(Q)の対応する前記年齢(A)の記憶容量を有する、ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
それぞれの処理周期(Tt)の前記終わりに、当該処理周期を除いた区間(5)にわたり、測定された前記物理量の前記平均
値を求める、ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記補間曲線に対応する補間関数を特定することにより、前記割り当て測定
デジタルデータの前記補間曲線を特定する、ことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
データベクトル(q1、q2、q3、q4)および時間ベクトル(t1、t2、t3、t4)の識別に基づいて前記補間関数を特定し、前記データベクトルは、前記バッファメモリ(6)に記憶されている前記割り当て測定
デジタルデータのN+2個の値から構成されており、前記時間ベクトルは、前記バッファメモリ(6)に記憶されている、それぞれの前記割り当て測定
デジタルデータの前記年齢のN+2個の値から構成されている、ことを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記時間ベクトル(t1、t2、t3、t4)は、時間固有基底において構成されており、前記基底では、前記バッファメモリ(6)に記憶されている第1割り当て測定
デジタルデータを受信した時点に対応するベクトルの第1値(t1)を原点とし、前記ベクトルの後続の値(t2、t3、t4)は、前記原点(t1)と、前記バッファメモリ(6)にそれぞれ記憶されているそれぞれ別の割り当て測定
デジタルデータの前記受信との間で経過した時間に対応する、ことを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記補間関数の前記特定では、積分可能な解析関数の係数を特定する、ことを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記補間関数の不定積分を求めることにより、N個の処理周期(Tt)から成る前記区間(5)にわたり、測定された物理量の前記平均値を求める、ことを特徴とする、請求項6から9までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車分野に関し、より具体的には自動車内の物理量を測定可能にする方法に関する。
【0002】
自動車は一般に、例えば、車両のエンジンと、その変速機構と、そのドアおよび開放要素などと相互作用する複数のセンサを有する。これらのセンサにより、温度、圧力、流体の流量、流体にある特定の成分の存在、振動、特定の領域におけるオブジェクトの有無などの物理量が測定可能になる。最新の自動車では、これらのセンサは、一般にデジタルセンサ、すなわち、測定される物理量を表す離散的なデジタル信号のフレームを送信可能なセンサである。これらのデジタルセンサにより、有利には、測定される物理量を表す信号の処理が、計算ツールによって実行できるようになる。
【0003】
自動車のデジタルセンサは、一般に、マイクロプロセッサのような処理手段を有する電子デバイスである電子制御ユニットに接続されている。したがってデジタルセンサによって送信されるデジタルデータフレームは、電子制御ユニットによって受信され、電子制御ユニットによって処理されて、与えられた時点に、測定された物理量の値が取得される。電子制御ユニットはさらにアクチュエータに接続されており、これにより、電子制御ユニットは、自動車の複数の機能のうちの1つを管理することを目的として、デジタルセンサによって送信される物理量についての情報に応じてこれらのアクチュエータを制御する。
【0004】
自動車のエンジン制御ユニットは、このような電子制御ユニットの一例である。エンジン制御ユニットは、内燃機関の動作、および特に車両のエンジンの噴射および選択的には点火順序を制御するためのものである。この電子制御ユニットは、クランクシャフトまたはカムシャフトの角度位置、種々異なる要素の温度、エンジンの吸込口または吐出口における流体の流量などを示すセンサのようなデジタルセンサから情報を受信する。これらのデジタルセンサは、測定データを電子制御ユニットに送信し、電子制御ユニットは、この情報に基づいて、燃焼サイクル中の適切な時点に燃料噴射器および任意の点火プラグを制御する。
【0005】
デジタルセンサは、自動車内でますます多くなっているため、また電子制御ユニットの計算手段は限られているため、可能な限りに正確な情報を取得することを目的として、デジタルセンサによって送信される測定データに基づき、電子制御ユニットの最小の処理資源を使用しながら、電子制御ユニットを制御する方法が特に注目されている。
【0006】
このために、測定デジタルデータを設定された送信周期で送信するように設定された特定のデジタルセンサが、デジタルセンサの送信周期よりも長い処理周期でこれらのデータを処理するように設計されている電子制御ユニットと関連付けられることがある。言い換えると、特定のデジタルセンサは、電子制御ユニットが可能な処理頻度よりも高い頻度で測定デジタルデータを送信する。特定の自動車アプリケーションでは一般的であるこの状況は、デジタルセンサによって測定データが送信される頻度と、これらが電子制御ユニットに処理される頻度との間のずれを扱えるようにする、電子制御ユニットの制御方法を提供することに結び付いている。
【0007】
現在までのところ、このずれを扱えるようにする電子制御ユニットの制御方法では、電子制御ユニットの処理周期毎に、センサによって送信される1つの測定データだけを考慮していた。したがって電子制御ユニットには、処理周期毎に1つの測定データが供給され、この電子制御ユニットは単純に、特定の個数の処理周期にわたってデジタルデータの平均を取ることにより、これらの周期にわたって、測定された物理量の平均値を求めている。
【0008】
これらの従来技術の方法では、結局のところ、処理周期にわたって、測定された物理量の値が一定とみなされ、かつ1つの処理周期から次の処理周期には、複数のステップで変化することになる。したがってこれに基づいて得られる平均は、不正確であり、物理量における連続的な変化を考慮しておらず、このことは、処理周期中に物理量が大幅に変化する場合には特に不都合である。
【0009】
本発明によって提案されるのは、送信周期が電子制御ユニットの処理周期よりも短いデジタルセンサを使用して取得される、物理量の測定値の精度を改善することと、電子制御ユニットの計算資源を最適化しながらこの改善を行うことである。
【0010】
これを達成するために、本発明は、自動車電子制御ユニットに接続されているデジタルセンサを使用して物理量の測定値を取得することを目的として、自動車電子制御ユニットを制御する方法に関しており、この方法では、センサにより、送信周期で測定デジタルデータが送信され、電子制御ユニットにより、処理周期でこれらの測定データが処理され、送信周期は、処理周期よりも短い。それぞれの処理周期の終わりに、先行するN個の処理周期から成る区間にわたり、測定された物理量の平均値を求める。この方法は、以下のステップ、すなわち、
・N+2個の測定データに等しい記憶容量のバッファメモリに、それぞれの処理周期に割り当てられる測定データを記憶するステップを有し、処理周期に割り当てられる測定データは、この処理周期において電子制御ユニットによって受信された最後の測定データとして定義されており、さらに
・バッファメモリに記憶されているそれぞれの割り当て測定データと共に、割り当て測定データの年齢
【数1】
も記憶するステップを有し、測定データの年齢は、電子制御ユニットによる測定データの受信と、対応する処理周期の終わりとの間の持続時間として定義されており、さらに
・それぞれの処理周期の終わりに、バッファメモリに記憶されている、割り当て測定データの補間曲線を特定するステップと、
・補間曲線に基づき、N個から成る処理周期の区間にわたり、測定された物理量の平均値を求めるステップと、を有する。
【0011】
本発明により、期間にわたって測定される物理量の動的な振る舞いを細かく推定することができ、与えられた区間にわたり、その平均値を求めるためにこの推定を使用することができる。バッファメモリに記憶されている測定データの補間曲線を特定することにより、電子制御ユニットが、この処理周期について、利用可能なただ1つの測定データだけを有するにもかかわらず、処理周期内に測定された物理量における変化を考慮することができる。補間曲線の特定は、与えられたこの処理周期内に測定された物理量を表す曲線の動的な形状を推定するために、この与えられた処理周期の両側に位置する処理周期の測定データを使用することを目的としている。したがって、与えられた区間にわたって測定された物理量の平均を求めるために、平均の計算には直接に関与しないにもかかわらず、この区間の外側に位置する測定データが使用され、これにより、この区間内で測定される物理量における変化が求められる(外側の測定データは補間にのみ関与する)。
【0012】
測定された物理量の動的な振る舞いを細かく推定することにより、極めて正確でありかつ先行技術の方法によって得られるものよりもはるかに現実に近い、与えられた区間にわたる平均値を求めることができる。精度が改善されたこの平均は、より高い計算能力を必要とすることなく、したがって電子制御ユニットの、マイクロプロセッサのような信号処理手段にいかなる付加的な負荷を負わせることなく取得される。
【0013】
測定された物理量の値の取得において精度が向上することにより、相応に向上した精度でかつより安全に、電子制御ユニットによって制御されるアクチュエータを制御することができる。
【0014】
電子制御ユニットを制御するこの方法は、単独でまたは組み合わせにおいて、以下の複数の付加的な特徴を有し得る。すなわち、
・電子制御ユニットにより、測定データの受信と、この測定データが受信された処理周期の終わりとの間の時間を測定し、この測定された時間は、対応する測定データの年齢としてバッファメモリに記憶された後、処理周期が終了する時点毎にリセットされる;
・連続する割り当て測定データを記憶するために使用されるバッファメモリは、ファースト・イン・ファースト・アウトバッファメモリである;
・先行するN個の処理周期から成る区間にわたり、測定された物理量の平均を求め、バッファメモリは、N+2個の割り当て測定データおよびそれらの対応する年齢の記憶容量を有し、Nの好ましい値は2である;
・それぞれの処理周期の終わりに、当該の処理周期を除いた区間にわたり、測定された物理量の平均を求める;
・補間曲線に対応する補間関数を特定することにより、割り当て測定データの補間曲線を特定する;
・データベクトルおよび時間ベクトルの識別に基づいて補間関数を特定し、データベクトルは、バッファメモリに記憶されている割り当て測定データのN+2個の値から構成されており、時間ベクトルは、バッファメモリに記憶されている、それぞれの割り当て測定データの年齢のN+2個の値から構成されている;
・時間ベクトルは、時間固有基底(base temporelle propre)において構成されており、この基底では、バッファメモリに記憶されている第1割り当て測定データを受信した時点に対応するベクトルの第1値を原点とし、ベクトルの後続の値は、この原点と、バッファメモリにそれぞれ記憶されているそれぞれ別の割り当て測定データの受信との間で経過した時間に対応する;
・補間関数の特定では、積分可能な解析関数、例えば2次多項式関数の係数を特定する;
・補間関数の不定積分を求めることにより、N個の処理周期から成る区間にわたり、測定された物理量の平均値を求める。
【0015】
以下では、添付の図面を参照して、本発明の好ましい一実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】デジタルセンサに関連付けられた自動車電子制御ユニットを略示する図である。
【
図2】
図1のデジタルセンサによって測定された物理量における変化の一例を示す曲線を示す図である。
【
図3】
図2の曲線に基づいて、本発明による方法を示す図である。
【0017】
図1~
図3には、内燃機関を有する自動車のエンジン制御ユニットに上記の制御方法が適用される、本発明の例示的な一実施形態が示されている。この実施例では、車両のエンジンの吸気口にデジタルエアフローセンサが配置されており、このデジタルエアフローセンサにより、物理量、したがってここではエンジンの吸気口における空気流量が測定可能になる。
【0018】
図1には、空気流量を測定するデジタルセンサ2に接続されている上記の電子制御ユニット1が略示されている。電子制御ユニット1は、アクチュエータ、例えば噴射器または点火プラグを制御する制御出力3を有する。
【0019】
センサ2はデジタルセンサであるため、センサ2により、設定された送信周期でデジタル測定データが送信される。電子制御ユニット1は、デジタル信号を処理する手段、ここではメモリデバイス、特にバッファメモリ6に関連付けられたマイクロプロセッサ7を有する。電子制御ユニット1は、マイクロプロセッサ7の、センサ2の信号の利用に割り当てられているタスクに対応する処理周期で、センサ2から受信したデータを処理する。
【0020】
したがって処理されるデジタルデータフレーム(以下では「測定データ」と称される)が、ユニット1に到達すると、ユニット1は、処理周期に応じ、ユニット1がこの測定データを処理できる次の時点まで、この測定データをメモリに保存する。物理量の測定値(この実施例では空気流量)は、モジュール1内で、センサ2によって送信された測定データを処理することによって取得され、この処理により、与えられた区間にわたって測定される物理量を表す(平均値のような)値が、周期的に求められることになる。したがってユニット1は、物理量の値における変化を追跡し、この変化に応じて適切なアクチュエータを制御することが可能である。この実施例において、車両のエンジンの吸気口における空気流量は、センサ2によって送信されるデータに応じてユニット1によって測定可能であり、燃料の噴射は、空気流量のこの値に応じて、制御出力3を介して制御可能である。
【0021】
図2は、時点tに応じて空気流量qにおける変化を示す曲線である。この実施例において、空気流量における変化は、正弦波状の一般的な形状を有する。曲線4は、測定された物理量の実際値を示している。すなわち曲線4は、空気流量における実際の変化を示している。
図2にはセンサ2によって送信された測定データQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6も示されている。
【0022】
測定データQ1~Q6は、センサ2に固有の、かつ送信周期Teに対応する、あらかじめ設定された頻度でセンサ2によって送信される。したがってそれぞれの周期Teの終わりに、センサ2により、対応する時間における空気流量の値に対応する測定データがユニット1に送信される。
【0023】
図2の実施例において、第1点Q1は、第1測定データに対応し、次に送信周期Teに対応する持続時間の終わりに、第2測定データQ2がセンサ2によって送信される等々であり、これが、最後の測定データQ6が送信されるまで続けられる。さらに、ユニット1は、受信したデータを処理周期Ttで処理する。処理周期Ttは、受信データの処理頻度に対応し、この処理頻度は、ユニット1に固有であり、センサ2によって測定データが送信される頻度には依存しない。
【0024】
送信周期Teが、処理周期Ttよりも長い場合、ユニット1は、データの送信頻度よりも高い頻度で受信データを処理可能である。したがってセンサによって送信されるそれぞれの測定データは、ユニット1によって処理される時間を有する。これに対し、送信周期Teが、処理周期Ttよりも短い場合(これがこの実施例の場合である)、センサ2によって送信される測定データは、ユニット1が可能である処理頻度よりも高い頻度で送信される。この状況では、センサ2によって送信されるいくらかの測定データは、必然的に失われてしまう。
図2に示した空気流量の変化の範囲において、測定データQ1~Q6は、空気流量における変化にしたがって、それぞれの送信周期Teに送信される。測定データQ1およびQ2はそれぞれ、処理周期Ttの内側に位置しており、したがって対応する周期Ttの終わりにそれぞれ正しく処理される。これに対し、測定データQ3およびQ4は共に、同じ処理周期Ttにおいてセンサ2によって送信される。これは、送信周期Teが処理周期Ttよりも短いことによって生じたずれによるものである。この場合、対応する処理周期Ttの終わりに、2つの測定データQ3またはQ4のうち1つだけが処理可能である。
【0025】
この実施例において、対応する処理周期Ttの終わりに処理されるのは、最後に受信される測定データQ4であり、このとき、同じ処理周期Ttにおいて前に受信された測定データQ3は失われてしまう。
【0026】
図2に示した実施例に基づき、
図3を参照して、電子制御ユニット1を制御する上記の方法を説明する。
図3では、センサ2によって測定されなければならない空気流量における実際の変化を示すために、
図2の曲線4が再度示されている。センサ2によって送信される測定データQ1~Q6も同様に
図3に示されている。この実施例において、センサ2は、0.9msの送信周期Teを有するのに対し、ユニット1は、1msの処理周期Ttを有する。したがって
図3では、それぞれのミリ秒は、1つの処理周期Ttの終わりに対応する。
【0027】
ユニット1を制御する方法の目的は、それぞれの処理周期Ttの終わりに、あらかじめ設定された複数の処理周期Ttから成る区間にわたり、空気流量の平均値を取得することである。以下で説明する実施例では、この方法により、それぞれの処理周期Ttの終わりに、すなわちミリ秒毎に、2つの処理周期Ttから成る区間にわたり、空気流量の平均値を特定可能である。さらに、ここでも、以下で説明する実施例によれば、2つの処理周期Ttから成るこの区間は、終わりが考慮される処理周期Ttに先行し、終わりが考慮されるこの処理周期を含むことはない。言い換えると、ミリ秒毎に平均空気流量が、1ミリ秒の遅延を伴い、2msの区間にわたって求められる。この実施例では、処理周期Ttが終わる時点毎に、終わりが考慮される処理周期に先行する2つの処理周期Ttにわたって空気流量の平均値が求められる。
【0028】
図3を参照し、処理周期Tt5の終わりに(すなわち時点t=5msに)、周期Tt3およびTt4から成る区間5にわたって測定される空気流量の平均値が求められる方法の一実施例を説明する。区間5は、
図3においてハッチングされて示されている。
【0029】
この方法はまず、センサ2によって送信される測定データをバッファメモリ6に記憶するステップを有する。
【0030】
バッファメモリ6は、容量がここでは4つの測定データのメモリである。連続して受信される測定データを記憶するために使用されるバッファメモリ6は、ファースト・イン・ファースト・アウト(FIFO:first-in, first-out)バッファメモリである。バッファメモリ6が満杯の場合(4つの測定データを受信し終えたとき)、最も旧い測定データは、新たな測定データを記憶できるようにするために消去される等々である。したがってバッファメモリ6にはつねに、センサ2によって前に送信された4つの測定データが充填されている。
【0031】
この記憶ステップ中、バッファメモリ6は、処理周期毎に1つの測定データを記憶し、処理周期毎のこの1つの測定データは、この処理周期の「割り当て測定データ」と称される。処理周期の割り当て測定データは、当該の処理周期Ttにおいてユニット1によってセンサ2から受信した最後の測定データとして定義される。特に、それぞれの処理周期Ttにおいて、ユニット1は、1つ以上の測定データQ1~Q6を受信する。しかしながら処理周期Tt毎に1つの測定データがバッファメモリ6に記憶される。したがって1つの処理周期Tt中にユニット1によって1つの測定データが受信される場合、この処理周期の割り当て測定データは、この1つの測定データである。1つの処理周期Tt中にユニット1によって複数の測定データが受信される場合、この処理周期Ttの割り当て測定データは、最後に受信された測定データである。例えば、
図3を参照すると、処理周期Tt1の割り当て測定データは、測定データQ1であるのに対し、処理周期Tt3の割り当て測定データは、測定データQ4であり、測定データQ3は失われる。したがってバッファメモリ6には、処理周期Ttが終わる時点毎に、先行する4つの処理周期の4つの割り当て測定データが含まれる。
【0032】
バッファメモリ6の容量により、測定データに加えて、この測定データの年齢を記憶することができる。測定データの年齢は、ユニット1による測定データの受信と、この測定データが受信された処理周期Ttの終わりとの間の持続時間として定義される。
図3を参照すると、
・測定データQ1の年齢は、A1と表され、
・測定データQ2の年齢は、A2と表され、
・測定データQ4の年齢は、A4と表され(測定データQ3は失われる)、
・測定データQ5の年齢は、A5と表され、
・測定データQ6の年齢は、A6と表される。
【0033】
図3の実施例は、Q1のような測定データが、処理周期Tt1(ここでは1ms)の持続時間にほぼ等しい高い年齢A1を有するのに対し、Q4のような別の測定データは、あまり高くない年齢A4を有し、測定データQ4は、対応する処理周期Tt3の終わりの直前にユニット1によって受信されることを示している。
【0034】
まとめると、処理周期Ttが終了する毎に、バッファメモリ6は、先行する4つの処理周期の4つの割り当て測定データを含み、それぞれの測定データの年齢は、対応する測定データと結合されて記憶されている。
【0035】
この方法の次のステップでは、
・それぞれの処理周期Ttの終わりに、バッファメモリ6に記憶されている測定データの補間曲線を特定し、
・この補間曲線に基づき、区間5にわたり、空気流量の平均値を求める。
【0036】
上で示した2つのステップをより正確に記述するために、例えば、処理周期Tt5の終わりを考察する。ゆえに処理周期Tt5の終了時、すなわち
図3の時点t=5msでは、バッファメモリ6に含まれるのは、
・測定データQ2およびその年齢A2、
・測定データQ4およびその年齢A4、
・測定データQ5およびその年齢A5、
・測定データQ6およびその年齢A6
である。
【0037】
次の演算では、バッファメモリ6に記憶されている4つの測定データQ2、Q4、Q5、Q6の補間曲線を特定する。この補間曲線により、空気流量における実際の変化の曲線4が可能な限りに近似される。この補間曲線に基づき、ハッチング領域5を推定可能である。ハッチング領域5により、処理周期Tt3およびTt4から成る区間にわたる空気流量の値を表す平均値を特定可能である。
【0038】
補間曲線を特定することを目的として、ユニット1により、データベクトル[q1、q2、q3、q4]および時間ベクトル[t1、t2、t3、t4]を特定する。これらの2つのベクトルは、最も接近して測定値Q2、Q4、Q5、Q6を補間する補間関数の係数を推定するために使用される入力データを形成する。
【0039】
この実施例では、すなわち、
・q1は、(1秒あたりのキログラムのような流量の単位の)測定データQ2の値であり、
・q2は、測定データQ4の流量の値であり、
・q3は、測定データQ5によって与えられる流量の値に等しく、
・q4は、測定データQ6によって与えられる流量の値に等しい。
【0040】
時間ベクトル[t1、t2、t3、t4]は、バッファメモリ6にある第1測定データQ2の受信の時点が、これらの時点の原点t1であり、かつ値t2、t3およびt4が、この原点t1を基準にした測定データQ4、Q5、Q6の時点における位置に対応するようにして、測定データQ2、Q4、Q5、Q6の年齢A2、A4、A5、A6から構成される。したがってt1、t2、t3、t4はそれぞれ、測定データQ2、Q4、Q5、Q6の点の横座標である。この場合に、t1、t2、t3、t4の値は、以下の通り、すなわち、
t1=0;
t2=A2+(1ms-A4);
t3=t2+A4+(1ms-A5);
t4=t3+A5+(1ms-A6)
である。
【0041】
4つの点Q2、Q4、Q5、Q6について求められる補間曲線は、例えば、積分可能な解析関数である補間関数に基づいて特定可能である。不定積分が存在する任意の解析関数、例えば、N次の多項式関数、正弦関数、指数関数、対数関数などが使用可能である。この関数は、実際の信号についての事前の知識に応じて(センサによって測定される物理量に応じて)選択可能である。この実施例では、以下のタイプ、すなわち、
f(t)=a+b×t+c×t2
の2次の多項式関数である補間関数によって補間曲線が特定され、a、bおよびcは、求められる補間曲線を生成する補間関数を特徴付ける係数である。この補間関数の係数(a、b、c)を得るために任意の既知の最適化方法を使用可能である。
【0042】
この実施例では、データベクトル[q1、q2、q3、q4]および時間ベクトル[t1、t2、t3、t4]に基づいて係数a、b、cを特定するために、公知のように最小二乗法を使用する。
【0043】
次に、結果的に空気流量における変化の実際の曲線4を可能な限りに近似するこの補間曲線は、この補間曲線の下に描かれかつ2つの処理周期Tt3およびTt4から成る区間にわたる面積を求めるために使用され、この面積は、補間曲線が、実際の曲線4に極めて近い近似の場合には、
図3の領域5の面積に極めて近い近似である。
【0044】
補間関数の下に描かれたこの面積は、既知の任意の手段によって計算可能である。この面積は、処理周期Tt3およびTt4にわたるこの補間曲線の積分に対応する。
【0045】
例えば、この面積は、補間関数の不定積分によって特定可能である。
f(t)=a+b×t+c×t2なるタイプの関数の不定積分は、
g(t)=a×t+1/2×b×t2+1/3×c×t3
と表される。
【0046】
処理周期Tt3およびTt4から成る区間における積分の値は、
積分=g(tend)-g(tstart)
と表され、ただし、tstart=t1+A2かつtend=t3+A5である。
【0047】
この積分から、考慮される区間(処理周期Tt3およびTt4)にわたって測定される空気流量の平均値が導き出される。すなわち平均値=積分/2msである。
【0048】
すぐ上で記載した処理は、それぞれの処理周期Ttの終わりに繰り返される。したがって、例えば、処理周期Tt5の終わりの1ms後、後続の処理周期Tt6(
図3には示されていない)は、時点t=6msに終了する。この時点に、空気流量の平均値が、再度、求められるが、処理周期Tt4およびTt5から成る区間にわたり、測定データQ4、Q5、Q6と、新たな処理周期Tt6の新たな割り当て測定データとの4つの値によって求められる。
【0049】
それぞれの処理周期Ttの終わりに、ユニット1によって高い精度で、空気流量についての新たな値が求められる。
【0050】
この方法の他の変形実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなく実現可能である。例えば、測定された物理量の平均を求めるために考慮される区間は、2つの処理周期とは異なっていてよい。この区間は、例えば、ただ1つの処理周期Ttを含み、この場合には(当該の処理周期およびこの周期の前に位置する処理周期およびこの周期の後に位置する処理周期の)3つの処理周期の3つの割り当て測定データだけが必要になる。別の一実施例において、この区間に3つの処理周期Ttが含まれる場合、(当該の3つの処理周期と、これらの処理周期の直前の処理周期と、これらの処理周期の直後の処理周期との)5つの処理周期の5つの割り当て測定データが必要になる。
【0051】
センサ2は、自動車に使用される任意のデジタルセンサであってよく、また電子制御ユニット1は、センサ2によって測定される物理量の値に応じて動作を形成するための任意の電子ユニットであってよい。