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特許7090808固体電解質膜、その製造方法及び固体電解質膜を選定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】固体電解質膜、その製造方法及び固体電解質膜を選定する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20220617BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20220617BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220617BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20220617BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/0562
H01M10/052
H01M10/058
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021532091
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 KR2020095045
(87)【国際公開番号】W WO2020190120
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0031407
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0032753
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジュン-ピル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウン-ビ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウン-キョン・モク
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-303473(JP,A)
【文献】特開2017-103146(JP,A)
【文献】特開2018-101641(JP,A)
【文献】特開2015-153160(JP,A)
【文献】特開平05-105780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質材料、染料及び多孔性高分子シートを含み、
前記多孔性高分子シートは多数の気孔を含む多孔性素材であり、前記気孔は流動性材料によって貫通可能なものであり、
前記固体電解質材料と染料との混合物が前記多孔性高分子シートの気孔を充填する方式で前記固体電解質材料と前記多孔性高分子シートとが複合化しており、
前記染料の発色特性によって前記固体電解質材料が前記多孔性高分子シートに充填された程度を視覚的に確認可能な、全固体電池用固体電解質膜。
【請求項2】
前記固体電解質材料が、高分子系固体電解質、酸化物系固体電解質及び硫化物系固体電解質のうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載の全固体電池用固体電解質膜。
【請求項3】
前記高分子系固体電解質が、溶媒化したリチウム塩に高分子樹脂が添加されて形成された形態であり、1×10-7S/cm以上のイオン伝導度を有する、請求項2に記載の全固体電池用固体電解質膜。
【請求項4】
前記多孔性高分子シートが不織布である、請求項2または3に記載の全固体電池用固体電解質膜。
【請求項5】
前記染料が天然染料、合成染料、蛍光染料またはこれらのうち二つ以上を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の全固体電池用固体電解質膜。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の固体電解質膜を製造する方法であって、
(S10)多孔性高分子シート及び一つ以上の固体電解質フィルムを用意する段階と、
(S20)多孔性高分子シートの表面に前記固体電解質フィルムを配置する段階と、
(S30)前記固体電解質フィルムが前記多孔性高分子シート内に押し込まれるように加圧する段階と、を含み、
前記固体電解質フィルムは高分子系固体電解質と染料との混合物を含み、前記高分子系固体電解質は溶媒化したリチウム塩に高分子樹脂が添加されて形成された固体電解質材料を含んで1×10-5S/cm以上のイオン伝導度を有し、前記多孔性高分子シートは不織布である、全固体電池用固体電解質膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の固体電解質膜を製造する方法であって、
(S100)固体電解質材料と染料とを含む分散液を用意する段階と、
(S200)前記分散液で多孔性高分子シートの気孔を充填する段階と、
(S300)前記(S200)の結果物を乾燥する段階と、を含む、固体電解質膜の製造方法。
【請求項8】
(S400)視覚的な方法を通じて固体電解質材料の充填量及び充填様子を確認する段階をさらに含む、請求項6または7に記載の固体電解質膜の製造方法。
【請求項9】
(S500)固体電解質膜の製造のための材料及び工程条件を選定する段階をさらに含む、請求項8に記載の固体電解質膜の製造方法。
【請求項10】
前記(S400)段階が電池へ適用対象の固体電解質膜を選別する段階として活用される、請求項8または9に記載の固体電解質膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池用電解質膜、該電解質膜を含む全固体電池及び該電解質膜を製造する方法に関する。
【0002】
本出願は、2019年3月19日出願の韓国特許出願第10-2019-0031407号及び2020年3月17日出願の韓国特許出願第10-2020-0032753号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
液体電解質を使用するリチウムイオン電池は、分離膜によって負極と正極とが区画される構造であるため、変形や外部の衝撃によって分離膜が破損されれば短絡が生じ、過熱または爆発などにつながるおそれがある。したがって、リチウムイオン二次電池の分野では、安全性を確保可能な固体電解質の開発が非常に重要な課題であると言える。
【0004】
固体電解質を用いたリチウム二次電池は、電池の安全性が増大し、電解液の漏出を防止できるため電池の信頼性が向上し、薄型の電池を製作し易いという長所がある。また、負極としてリチウム金属を使用できるためエネルギー密度が向上し、それによって小型二次電池だけでなく電気自動車用の高容量二次電池などへの応用が期待され、次世代電池として脚光を浴びている。
【0005】
固体電解質材料としては、通常、高分子系固体電解質、酸化物系固体電解質及び硫化物系固体電解質材料が使用されている。このような固体電解質材料のみで自立型(free-standing type)電解質膜を製造する場合、数~数十マイクロメートルレベルに薄膜化すると、電解質膜や電池の製造工程で裂けや割れが生じるか又は電解質材料が脱落するなどの不良が発生し得る。また、リチウム金属電池の電解質膜材料として適用される場合、負極から形成されたリチウムデンドライトによって損傷され、負極と正極との絶縁破壊によって短絡を引き起こし得る。このような問題を防止するため、多孔性材質の不織布やフィルムなどの多孔性シートに固体電解質材料を充填する方法で固体電解質材料と多孔性シートとを複合化させて固体電解質膜を製造する方法が提案されている。しかし、複合化した固体電解質膜の場合、多孔性シートの気孔内に固体電解質材料が十分に充填されたか否かを確認し難い。特に、通常の高分子系固体電解質の場合、光透過性に優れて透明であるため、目視で判断することが容易ではない。そこで、全固体電池の優れた電気化学特性を発現するため新規な構成の高分子系固体電解質が適用された固体電解質膜及びそれを使用した全固体電池の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した技術的課題を解決するためのものであって、多孔性シートに固体電解質材料が充填された固体電解質膜を提供することを目的とする。また、前記固体電解質材料が充填された固体電解質膜を製造する方法を提供することを他の目的とする。さらに、本発明は、多孔性シートに固体電解質材料が充填された程度を視覚的な方法で確認できる確認方法を提供する。一方、本発明の他の目的及び長所は下記の説明によって理解できるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段または方法及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するための固体電解質膜、その製造方法、該固体電解質膜を用いた固体電解質膜製造工程の条件選定方法及び該固体電解質膜を用いた固体電解質膜の選別方法に関する。
【0008】
本発明の第1態様は、固体電解質膜に関し、該固体電解質膜は、固体電解質材料、染料及び多孔性高分子シートを含み、前記多孔性高分子シートは多数の気孔を含む多孔性素材であり、前記気孔は流動性材料によって貫通可能なものであり、前記固体電解質材料と染料との混合物が前記多孔性高分子シートの気孔を充填する方式で前記固体電解質材料と前記多孔性高分子シートとが複合化しており、前記染料の発色特性によって前記固体電解質材料が前記多孔性高分子シートに充填された程度を視覚的に確認可能なものである。
【0009】
本発明の第2態様によれば、第1態様において、前記固体電解質材料が高分子系固体電解質、酸化物系固体電解質及び硫化物系固体電解質のうち少なくとも一つを含む。
【0010】
本発明の第3態様によれば、第2態様において、前記高分子系固体電解質が溶媒化したリチウム塩に高分子樹脂が添加されて形成された形態であり、1×10-5S/cm以上のイオン伝導度を有する。
【0011】
本発明の第4態様によれば、第2態様において、前記多孔性高分子シートが不織布である。
【0012】
本発明の第5態様によれば、第1~第4態様のうちいずれか一つにおいて、前記染料が天然染料、合成染料、蛍光染料またはこれらのうち二つ以上を含む。
【0013】
本発明の第6態様は、第1~第5態様のうちいずれか一つによる固体電解質膜を製造する方法に関し、該方法は、(S10)多孔性高分子シート及び一つ以上の固体電解質フィルムを用意する段階と、(S20)多孔性高分子シートの表面に前記固体電解質フィルムを配置する段階と、(S30)前記固体電解質フィルムが前記多孔性高分子シート内に押し込まれるように加圧する段階と、を含み、前記固体電解質フィルムは高分子系固体電解質と染料との混合物を含み、前記高分子系固体電解質は溶媒化したリチウム塩に高分子樹脂が添加されて形成された固体電解質材料を含んで1×10-7S/cm以上のイオン伝導度を有し、前記多孔性高分子シートは不織布である。
【0014】
本発明の第7態様は、第1~第5態様のうちいずれか一つによる固体電解質膜を製造する方法に関し、該方法は、(S100)固体電解質材料と染料とを含む分散液を用意する段階と、(S200)前記分散液で多孔性高分子シートの気孔を充填する段階と、(S300)前記(S200)の結果物を乾燥する段階と、を含む。
【0015】
本発明の第8態様によれば、第6または第7態様において、(S400)視覚的な方法を通じて固体電解質材料の充填量及び充填様子を確認する段階をさらに含む。
【0016】
本発明の第9態様によれば、第8態様において、(S500)固体電解質膜の製造のための材料及び工程条件を選定する段階をさらに含む。
【0017】
本発明の第10態様によれば、第8態様において、前記(S400)段階が電池へ適用対象の固体電解質膜を選別する段階として活用される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様による固体電解質膜の製造方法は、視覚的な方法によって多孔性シートに固体電解質材料が充填された程度を確認でき、固体電解質膜の原材料の選択及び製造工程を簡単な方法で最適化することができる。また、このような確認方法によって選択された原材料及び製造工程が適用されて製造された固体電解質膜は、製造コストを節減することができ、変形が容易であるため多様な形態の電池に適用するとき加工し易い。また、本発明による固体電解質膜は、不織布など多孔質の高分子材料と固体電解質材料とが複合化しているため、強度に優れながらも薄膜に製造することができて電池のエネルギー密度向上に有利である。
【0019】
本明細書に添付される図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。一方、本明細書に添付される図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などはより明確な説明を強調するため誇張されることもある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による固体電解質膜の製造及び選定工程の流れを概略的に示した図である。
図2a】実施例1で収得した固体電解質膜の表面イメージである。
図2b】実施例2で収得した固体電解質膜の表面イメージである。
図3a】比較例1で収得した固体電解質膜の表面イメージである。
図3b】比較例2で収得した固体電解質膜の表面イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具現例を詳しく説明する。これに先だち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施形態に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0022】
本明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0023】
また、本明細書の全体で使われる用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値でまたはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために正確又は絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使われる。
【0024】
本明細書の全体において、「A及び/またはB」との記載は「A、Bまたはこれら全て」を意味する。
【0025】
詳細な説明における特定の用語は便宜上使用されるものであって、制限的なものではない。「右」、「左」、「上面」及び「下面」の単語は参照する図面における方向を示す。「内側に」及び「外側に」の単語は、それぞれ指定された装置、システム及びその部材の幾何学的中心に向かう方向及びそれから遠くなる方向を示す。「前方」、「後方」、「上方」、「下方」及びその関連単語及び語句は、参照する図面における位置及び方位を示すものであって、制限的なものではない。このような用語は上記の単語、その派生語及び類似意味の単語を含む。
【0026】
本発明は、全固体電池用電解質膜及びそれを含む全固体電池に関する。また、本発明は、前記電解質膜を製造する方法に関する。本発明による全固体電池は、固体電解質膜の厚さを約100μm以下に薄膜化できるため、イオン伝導度が高くて電池のエネルギー密度を高めることができる。さらに、薄いものの固体電解質膜の強度が高いため、製造工程や電池使用中に損傷が少ない。
【0027】
図1は、本発明による固体電解質膜及びそれを製造する方法を概略的に示した図である。以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。
【0028】
本発明による固体電解質膜は、固体電解質材料、染料、及び多数の気孔を有する多孔性高分子シートを含み、前記高分子シートの気孔が前記固体電解質材料と染料とを含む混合物によって充填された構造を有する。
【0029】
前記高分子シートは、多数の気孔を有する多孔性素材であり、高分子材料を含む。本発明の一実施形態において、前記高分子シートは、乾式法によって高分子材料を溶融、押出及び延伸して成膜した高分子フィルム、湿式法によって可塑剤を抽出して気孔を形成する方式で製造された高分子フィルム、高分子材料を溶融、紡糸及び圧着して製造された不織布、及びこれらのうち二つ以上を積層した積層シートなどである。例えば、前記高分子シートは不織布であり得る。
【0030】
前記多孔性高分子シートは、内部に多数の気孔が形成され、これら気孔同士が互いに連結された構造になっているため、基材の一面側から他面側に貫通していて流動性を有する物質が通過可能である。このような多孔性高分子シートを構成する材料は、電気絶縁性を有する有機材料または無機材料を制限なく使用することができる。本発明の一実施形態において、前記高分子シートは、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレートのような高分子樹脂のうち少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0031】
本発明の一実施形態において、前記多孔性シートは、約5μm~500μmの厚さを有し得る。前記厚さは、最終電解質膜の厚さ及び固体電解質膜の強度を考慮して上記の範囲内で適切に選択することができる。例えば、前記多孔性シートの厚さは、上記の範囲内で300μm以下、200μm以下または100μm以下であり得る。もし多孔性シートの厚さが上記の範囲に及ばない場合、固体電解質膜の強度が所望の水準を達成し難く、シートが厚過ぎる場合は加圧工程を適用しても所望の水準の厚さに制御し難い。
【0032】
また、本発明の具体的な一実施形態において、前記多孔性シートは、気孔度が多孔性シートの全体体積に対して約10vol%~90vol%の範囲を有し得、気孔の大きさが50nm~500μmの範囲内で適切に調節され得る。例えば、前記気孔の大きさは、上記の範囲内で400μm以下、300μm以下、200μm以下または100μm以下であり得る。前記気孔度の数値範囲や気孔の大きさの範囲は、多孔性シート内に電解質膜として機能可能な程度に十分な量の電解質フィルムを保有し、流動性の低い電解質フィルムのシート内への押し込みを妨害しないと同時に適切なイオン伝導性及び機械的強度を維持可能な水準で、上記の範囲内で適切に選択できる。すなわち、気孔度が高いほど、イオン伝導度は改善できるものの機械的強度は低下し得る。また、気孔の大きさが大きいか又は気孔度が高いほど、電解質フィルムの押し込みは容易になり得る。
【0033】
一方、本発明において、前記固体電解質材料は、高分子系固体電解質、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質またはこれらのうち二つ以上の混合物を含むことができる。
【0034】
前記高分子系固体電解質は、リチウム塩と高分子樹脂との複合物、すなわち、溶媒化したリチウム塩に高分子樹脂が添加されて形成された形態の高分子電解質材料であり、約1×10-7S/cm以上、望ましくは約1×10-5S/cm以上のイオン伝導度を有し得る。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記高分子樹脂は、分子量(Mw)が約5,000~5,000,000であり、分子量が小さいほど流動性が増加して押し込み工程で有利である。
【0036】
後述するように、本発明による固体電解質膜は、高分子電解質をフィルム形態に製膜した後、多孔性シートに押し込む方法で収得するか、または、高分子材料が含まれた分散液に多孔性シートを含浸する方法で収得し、上記の条件を満足する場合、押し込み工程を容易に行うことができる。本発明の具体的な一実施形態において、前記高分子樹脂は上記の条件を満足するものであって、例えば熱可塑性高分子素材を含むことができる。または、前記高分子樹脂の非制限的な例としては、ポリエーテル系高分子、ポリカーボネート系高分子、アクリレート系高分子、ポリシロキサン系高分子、ホスファゼン系高分子、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイドのようなアルキレンオキサイド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルファイド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが挙げられ、これらのうち一つ以上を含むことができる。また、前記高分子電解質は、高分子樹脂としてポリエチレンオキサイド(PEO)主鎖に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリシロキサン(pdms)及び/またはホスファゼンのような無定形高分子を共単量体として共重合させた枝状共重合体、櫛状高分子樹脂(comb-like polymer)及び架橋高分子樹脂などが挙げられ、これらのうち1種以上を含むことができる。
【0037】
本発明の電解質において、上述したリチウム塩は、イオン化可能なリチウム塩であって、Liで表すことができる。このようなリチウム塩の陰イオンとしては、特に制限されないが、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CFSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCN、(CFCFSOなどが挙げられる。
【0038】
前記硫化物系固体電解質は、硫黄(S)を含み、周期表の第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有するものであって、Li-P-S系ガラスやLi-P-S系ガラスセラミックを含むことができる。このような硫化物系固体電解質の非制限的な例としては、LiS-P、LiS-LiI-P、LiS-LiI-LiO-P、LiS-LiBr-P、LiS-LiO-P、LiS-LiPO-P、LiS-P-P、LiS-P-SiS、LiS-P-SnS、LiS-P-Al、LiS-GeS、LiS-GeS-ZnSなどが挙げられ、これらのうち一つ以上を含むことができる。
【0039】
前記酸化物系固体電解質は、酸素(O)を含み、周期表の第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有するものである。その非制限的な例としては、LLTO系化合物、LiLaCaTa12、LiLaANb12(AはCaまたはSr)、LiNdTeSbO12、LiBO2.50.5、LiSiAlO、LAGP系化合物、LATP系化合物、Li1+xTi2-xAlSi(PO3-y(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiAlZr2-x(PO(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiTiZr2-x(PO(0≦x≦1、0≦y≦1)、LISICON系化合物、LIPON系化合物、ペロブスカイト系化合物、NASICON系化合物、及びLLZO系化合物から選択された1種以上を含むことができる。
【0040】
前記染料は、発色特性を有する物質であって、視覚的な方法または分光学的機器を用いた分析方法などの光学的な方法で固体電解質の充填量及び固体電解質材料のシート内の分布様子を確認可能なものであれば、特に制限なく使用することができる。前記染料は、天然染料及び/または合成染料を含むことができる。前記天然燃料としては、オルセイン(orcein)、サフラン(saffron)などが挙げられ、合成染料としては、アントラキノン(anthraquinone)、アゾ系化合物、メタン系、o-ニトロアリールアミン系、キノフタロン(quinophthalone)系、インディゴ系染料、硫酸染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、ピラゾロン染料、チアゾール染料、キサンテン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、アクリジン染料、シアニン染料、筆記具用インク製品などが挙げられる。また、前記染料は、蛍光特性を有する蛍光物質を含むことができる。前記蛍光物質としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ペリレン、テリレン、クォテリレン、ペンタリレン、ヘキサリレン、ナフトラクタム、アズラクトン、メチン、アクリジンなどがある。本発明の具体的な一実施形態において、前記染料としては、上述した成分のうち一つまたは二つ以上の混合物を使用することができる。
【0041】
このように固体電解質が多孔性シートに充填されているため、固体電解質膜の強度の低下なく固体電解質膜を薄膜化することができ、染料の発色を確認することで、多孔性シートに充填された固体電解質の量及び固体電解質の分布様子を確認することができる。
【0042】
本発明において、前記固体電解質膜は、約100μm以下、望ましくは約10μm~90μmの厚さを有する。前記固体電解質膜は、上述した範囲内でイオン伝導度、物理的強度、適用される電池のエネルギー密度などを考慮して適切な厚さを有し得る。例えば、イオン伝導度やエネルギー密度の面で、80μm以下、70μm以下、60μm以下または50μm以下の厚さを有し得る。一方、物理的強度の面で、20μm以上、30μm以上または40μm以上の厚さを有し得る。また、前記固体電解質膜は、上記の厚さ範囲を有しながら、同時に約500kgf/cm~約2,000kgf/cmの引張強度を有し得る。また、前記固体電解質膜は、15%以下または約10%以下の気孔度を有し得る。
【0043】
本発明の一実施形態において、前記固体電解質膜は、高分子電解質材料を用いて製造した電解質フィルムを、前記高分子シートの表面に配置して加圧し、加圧によって電解質フィルムが高分子シートの内部に押し込まれながら高分子電解質によって高分子シートの気孔が充填される方法で製造することができる。
【0044】
以下、上述した特徴を有する固体電解質膜の製造方法を詳しく説明する。本発明による固体電解質膜は、多様な方法によって製造可能である。以下の分散液含浸法及びフィルム押込法を代表的に説明する。
【0045】
(1)分散液含浸法
本方法は、固体電解質材料と染料とを含む分散液を製造した後、多孔性シートを前記分散液に含浸させる方法である。前記分散液は、適切な溶媒に固体電解質材料及び染料を投入して用意することができる。その後、前記分散液に多孔性シートを含浸させるか又は分散液を多孔性シートに塗布することで、多孔性シートの気孔に分散液を流れ込ませる。前記多孔性シートの気孔内への分散液の流れ込みを促進するため、含浸や塗布の後、補助的に前記シートを加圧する段階をさらに行ってもよい。前記塗布の方法は、特に制限されず、例えばドクターブレード、バーコーター、アプリケータによる塗布、スプレー塗装、静電塗装、刷毛塗り、静電印刷法、エレクトロスプレー堆積法、エアロ蒸着法による塗布などの公知の手段を採用できる。その後、分散液で含浸された多孔性シートを乾燥することで、固体電解質膜を収得することができる。
【0046】
本発明において、前記溶媒は、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エタノール、アセトニトリル、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、ヘプタンなどを使用することができる。分散液を用意する方法や乾燥方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採択して使用することができる。
【0047】
(2)フィルム押込法
固体電解質材料として高分子系固体電解質を使用する場合は、電解質フィルムを用意した後、それを多孔性シートに押し込む方法で固体電解質膜を製造することができる。
【0048】
まず、電解質フィルムを用意する(S10)。前記電解質フィルムは、以下のような方式で用意することができる。高分子電解質及び染料を溶媒と混合して電解質フィルム製造用スラリーを製造する。前記溶媒は使用される高分子電解質に応じて適切なものを選択できる。例えば、高分子樹脂としてエチレンオキサイド(PEO)のようなアルキレンオキサイド系電解質を使用する場合は、溶媒としてアセトニトリルを使用することができる。本発明の具体的な一実施形態において、前記スラリー中の固形分の濃度は約1wt%~20wt%であり得、このとき、スラリーは常温または温度を高めて30℃~80℃にして溶媒と高分子電解質との均一な混合を促進することができる。
【0049】
次いで、前記スラリーをテレフタレートフィルムなどの離型シートに塗布し、所定の厚さを有するフィルムの形態に成形する。前記塗布及び成形は、ドクターブレードのような公知のコーティング方法を使用することができる。その後、乾燥して溶媒を除去し、電解質フィルムを収得する。
【0050】
このようにして得られた電解質フィルムを不織布などの多孔性高分子シートの表面に配置して加圧し、電解質フィルムを前記シート内に押し込む(S20)。このとき、電解質フィルムの表面を保護し、電解質材料によって加圧部材の表面が汚染することを防止するため、前記電解質フィルムの表面にテレフタレートフィルムのような離型フィルムを配置することができる。前記加圧は、ロールプレス、一軸プレスや治具など1種以上の方法で適切に行われ得る。このとき、プレス、ローラー、治具の間隔、印加圧力、温度のような工程条件を制御することで、電解質膜に適切な厚さ及び/または気孔度を持たせることができる。
【0051】
本発明の一実施形態において、前記加圧は、一軸プレス、ホットプレス、ロールプレス及び治具などの公知の加圧部材から適切なものを選択して行い得、このとき、前記加圧部材は、電解質フィルムと対面する部材の表面を加熱可能な別途の加熱部材をさらに備えてもよい。このように加圧部材によって電解質フィルムが加熱されて延性が高くなることで、相対的に低い圧力条件でも電解質フィルムをシート内に容易に押し込むことができる。
【0052】
一方、本発明の一実施形態において、前記電解質フィルムは、製造された後、押し込み工程に投入される前に、材料の延性を高めて材料が高分子シートの気孔内に押し込まれることを促進するため、常温(25℃)~180℃に加温され得る。このような加温方法は、特定の方法に限定されず、前記フィルムを所定の温度に加温されたオーブンで数時間静置する方法で行われ得る。
【0053】
本発明の一実施形態において、前記多孔性高分子シートは、押し込み工程に投入される前に、親水性または疎水性特性を高めるため、表面改質工程に提供されてもよい。例えば、高分子フィルムとしてPEOが使用される場合、前記多孔性高分子シートに対して親水性表面改質処理を行うことで、PEOとの親和度を高めることができる。このように押し込まれる電解質材料との親和度を高めることで、多孔性シート内への電解質フィルムの押し込みを促進し、電解質フィルムと多孔性シートとの密着力を高めることができる。前記親水性表面改質処理は、特定の方法に限定されず、例えばUV照射、プラズマ処理、酸処理、オゾン処理のような公知の方法から適切な方法を選択して行い得る。
【0054】
上記の方法の他にも、固体電解質材料粉末と染料粉末とを混合した後、前記混合粉末を多孔性シートの表面に塗布し、加圧によって前記材料粉末を気孔内に押し込む方法で固体電解質膜を製造してもよい。
【0055】
上述した方法によって収得された固体電解質膜は、染料の発色を通じて多孔性シートが固体電解質で充填された状態を視覚的な方法で確認することができる。染料の投入なく固体電解質膜を製造する場合は、固体電解質が充填された程度と分布を視覚的に確認し難い。したがって、製造された固体電解質膜の性能を確認するためには、イオン伝導度の測定などの電気化学的な方法を通じて間接的に確認するしかなかった。しかし、本発明による固体電解質膜及び前記固体電解質膜の製造方法によれば、電気化学的な測定方法を用いる必要なく、視覚的な方法で固体電解質の含浸効率を確認することができる。例えば、固体電解質膜を製造する工程中に、目視で直ちに電解質の含浸程度及び多孔性シート内における固体電解質の分布様子を確認することができる。
【0056】
このような固体電解質膜の製造方法は、例えば以下の二つの工程の少なくともいずれか一つに適用することができる。
【0057】
(1)固体電解質膜の製造工程の確立
まず、前記固体電解質膜の製造方法は、固体電解質膜を構成する材料を選択するとき活用することができる。例えば、使用しようとする固体電解質材料を選択するため、多様な固体電解質材料を前記製造方法に適用した後、対象材料を選択することができる。また、多孔性シートの成分、多孔性シートの気孔の大きさ、気孔度及び物理的強度などの選定に前記方法を活用することができる。また、所望の特性を有する固体電解質膜を製造するのに必要な材料の適切な組み合わせを確認するため、前記固体電解質膜を活用することができる。
【0058】
また、固体電解質膜の製造時の工程条件を設定するために活用することができる。分散液の濃度、粘度、温度、含浸方法、時間条件、温度条件などの、固体電解質材料が気孔内に十分に入り込んで優れた充填率の固体電解質膜を収得可能な多様な工程条件を設定するため、前記固体電解質膜の製造方法を活用することができる。
【0059】
すなわち、換言して、本発明の固体電解質膜の製造方法は、染料を投入して固体電解質膜を製造する工程を繰り返して行って適切な材料条件及び工程条件を設定した後、選択された条件を固体電解質膜の製造方法に適用することを特徴とする。
【0060】
(2)電解質膜の製造工程における不良の確認
一方、本発明による固体電解質膜の製造方法及び該方法で製造された固体電解質膜は、固体電解質膜を製造した後、不良率を確認するのに適用することができる。製造された固体電解質膜を視覚的な方法で観察して、電解質の充填が不十分であるか又は電解質が充填されず空いている空間として残っている部分が確認される場合は、電池の製造に適用せず廃棄対象として分類することができる。すなわち、本発明による固体電解質膜及びその製造方法は、電気化学的な方法によらず、簡単な方法で廃棄処理対象である固体電解質膜を確認することができる。
【0061】
また、本発明は、上述した固体電解質膜を含む全固体電池を提供する。前記全固体電池は、正極、負極及び固体電解質膜を含む。
【0062】
本発明において、前記正極及び負極は、集電体及び前記集電体の少なくとも一面に形成された電極活物質層を含み、前記電極活物質層は多数の電極活物質粒子及び固体電解質を含む。また、前記電極は、必要に応じて導電材及びバインダー樹脂のうち一つ以上をさらに含むことができる。また、前記電極は、電極の物理化学的特性の補完や改善を目的として、多様な添加剤をさらに含むことができる。
【0063】
本発明において、負極活物質としては、リチウムイオン二次電池の負極活物質として使用可能なものであれば何れも使用できる。例えば、前記負極活物質は、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi及びBiなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などから選択された1種または2種以上を使用することができる。具体的な一実施形態において、前記負極活物質は炭素系物質及び/またはSiを含むことができる。
【0064】
正極の場合、電極活物質は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものであれば制限なく使用できる。例えば、前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物、または、一つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-x(xは0~0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-x(M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGa、x=0.01~0.3)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn1-x(M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTa、x=0.01~0.1)またはLiMnMO(M=Fe、Co、Ni、CuまたはZn)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;LiNiMn2-xで表されるスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOなどを含むことができるが、これらに限定されることはない。
【0065】
本発明において、前記集電体は、金属板などの電気伝導性を有して二次電池分野で公知の集電体を、電極の極性に合わせて適切を使用することができる。
【0066】
本発明において、前記導電材は、通常、電極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして1~30重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材から選択された1種または2種以上の混合物を含むことができる。
【0067】
本発明において、前記バインダー樹脂は、活物質と導電材などとの結合、及び集電体に対する結合を補助する成分であれば特に制限されず、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。前記バインダー樹脂は、通常、電極層100重量%に対して1~30重量%、または1~10重量%の範囲で含むことができる。
【0068】
一方、本発明において、前記電極活物質層は、必要に応じて酸化安定添加剤、還元安定添加剤、難燃剤、熱安定剤、防曇剤(antifogging agent)などのような添加剤を1種以上含むことができる。
【0069】
本発明において、前記固体電解質は、高分子系固体電解質、酸化物系固体電解質及び硫化物系固体電解質のうち一つ以上をさらに含むことができる。
【0070】
本発明において、前記固体電解質は、正極、負極及び固体電解質膜に対して相異なるものが使用されるか、または、二つ以上の電池素子に対して同じものが使用され得る。例えば、正極の場合、固体電解質として酸化安定性に優れた高分子電解質が使用され得る。また、負極の場合は、固体電解質として還元安定性に優れた高分子電解質が使用され得る。しかし、これらに限定されることはなく、電極で主にリチウムイオンを伝達する役割をするため、イオン伝導度の高い素材、例えば、10-7S/m以上または10-5S/m以上のものであれば何れも使用可能であり、特定の成分に限定されない。
【0071】
本発明において、前記高分子電解質は、それぞれ独立的に、溶媒化したリチウム塩に高分子樹脂が添加されて形成された固体高分子電解質であるか、または、有機溶媒とリチウム塩を含む有機電解液を高分子樹脂に含有させた高分子ゲル電解質であり得る。
【0072】
本発明において、前記高分子電解質は、固体電解質膜についての説明を参照できる。
【0073】
前記硫化物系固体電解質は、硫黄(S)を含み、周期表の第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有するものであって、Li-P-S系ガラスやLi-P-S系ガラスセラミックを含むことができる。このような硫化物系固体電解質の非制限的な例としては、LiS-P、LiS-LiI-P、LiS-LiI-LiO-P、LiS-LiBr-P、LiS-LiO-P、LiS-LiPO-P、LiS-P-P、LiS-P-SiS、LiS-P-SnS、LiS-P-Al、LiS-GeS、LiS-GeS-ZnSなどが挙げられ、これらのうち一つ以上を含むことができる。
【0074】
前記酸化物系固体電解質は、酸素(O)を含み、周期表の第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有するものである。その非制限的な例としては、LLTO系化合物、LiLaCaTa12、LiLaANb12(AはCaまたはSr)、LiNdTeSbO12、LiBO2.50.5、LiSiAlO、LAGP系化合物、LATP系化合物、Li1+xTi2-xAlSi(PO3-y(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiAlZr2-x(PO(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiTiZr2-x(PO(0≦x≦1、0≦y≦1)、LISICON系化合物、LIPON系化合物、ペロブスカイト系化合物、NASICON系化合物、及びLLZO系化合物から選択された1種以上を含むことができる。
【0075】
また、本発明は、上述した構造を有する二次電池を提供する。また、本発明は、前記二次電池を単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、及び前記電池パックを電源として含むデバイスを提供する。このとき、前記デバイスの具体的な例としては、電気モーターによって動力を受けて駆動するパワーツール;電気自動車(Electric Vehicle:EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle:HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle:PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート;電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。下記の実施例は本発明を容易に理解するためのものであって、本発明の範疇がこれらに限定されることはない。
【0077】
実施例1
溶媒であるアセトニトリル(AN)にポリエチレンオキサイド(Mw=4,000,000g/mol)を溶かして4wt%の高分子溶液を用意した。このとき、リチウム塩としてLiTFSIを[EO]/[Li]=18/1(モル比)になるように一緒に入れた。前記高分子溶液でPEOとリチウム塩が十分に溶けるように70℃で一晩撹拌した。次いで、開始剤と硬化剤を含む添加剤溶液を用意した。硬化剤としてはポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA、Mw=575)、開始剤としては過酸化ベンゾイル(BPO)を使用し、PEGDAはPEO対比20wt%、BPOはPEGDA対比1wt%の量になるようにし、溶媒としてはアセトニトリルを使用した。前記添加剤溶液は、投入した成分が十分混合されるように約1時間撹拌した。その後、前記添加剤溶液を前記高分子溶液に添加し、二つの溶液を十分に混合した。次いで、市販の万年筆用インク(水性、モナミ社製)10μlとエタノール1mLとを混合して染料溶液を用意した。前記染料溶液100μlを前記高分子溶液に添加して1時間撹拌した。このようにして収得した高分子溶液を離型フィルム上にドクターブレードを用いて塗布及びコーティングした。コーティングギャップは800μm、コーティング速度は20mm/minにした。前記溶液がコーティングされた離型フィルムをガラス板に移動させて水平をよく維持し、常温条件で一晩乾燥して、100℃で12時間真空乾燥した。このように形成された固体電解質フィルムを多孔性不織布(気孔度87%、厚さ40μm)上に置き、60℃でロールプレス装置を用いて前記固体電解質フィルムを前記多孔性不織布内に押し込んで固体電解質フィルムと多孔性不織布とが一体化した固体電解質膜を収得した。前記固体電解質膜の厚さは約50μmであり、固体電解質膜の全面にわたって厚さが均一であった。
【0078】
実施例2
実施例1と同じ方法で固体電解質フィルム及び多孔性不織布を用意した。前記固体電解質フィルムを多孔性不織布(気孔度87%、厚さ40μm)上に置き、25℃でロールプレス装置を用いて前記固体電解質フィルムを前記多孔性不織布内に押し込んで固体電解質フィルムと多孔性不織布とが一体化した固体電解質膜を収得した。前記固体電解質膜の厚さは約50μmであった。
【0079】
比較例1
染色試薬を含まないことを除き、実施例1と同じ方法で固体電解質膜(厚さ50μm)を製作した。
【0080】
比較例2
染色試薬を含まないことを除き、実施例2と同じ方法で固体電解質膜(厚さ50μm)を製作した。
【0081】
固体電解質膜の強度を改善するため、固体電解質材料を多孔性基材内に押し込んで多孔性基材を充填する場合、多孔性基材内の気孔だけでなく多孔性基材の反対側まで固体電解質材料が十分に充填されなければ、分離膜の追加によるイオン伝導度の損失を最小化することができない。固体電解質膜を製作するとき、固体電解質材料が不織布のような多孔性基材内に隙間なく十分な量で導入されたか否かを分析装置などを用いず目視のみで確認することは容易ではない。図2aは実施例1で収得した固体電解質膜の表面イメージであり、図2bは実施例2で収得した固体電解質膜の表面イメージである。これらを見れば、実施例1の固体電解質膜が実施例2の固体電解質膜に比べて非常に均一且つ均質に固体電解質材料が充填されていることを目視で容易に確認することができる。このように固体電解質膜の製造時に染料を導入することで、分離膜中の固体電解質材料の充填程度及び充填状態を目視で簡単に判断することができる。一方、比較例1(図3a)及び比較例2(図3b)は染料を含まないため、充填程度及び充填状態を識別し難い。このように固体電解質膜の製造時に染料を導入することで、工程性及び収率を高めることができる。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b