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特許7090840蓄電池バリューチェーン最適化装置および方法
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  • 特許-蓄電池バリューチェーン最適化装置および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】蓄電池バリューチェーン最適化装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20220620BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018054433
(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2019168792
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】黒木 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】岡部 弘志
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-224208(JP,A)
【文献】特開2016-170455(JP,A)
【文献】特開2006-158189(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104466278(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最適化装置により、蓄電池のリサイクル工場を稼動させるか否かを判断する方法であって、
前記リサイクル工場にリサイクルすべき劣化蓄電池のストックがあるか否かを確認するステップと、
発電所群、蓄電池群および卸電力市場のうち、電力の最安単価を確認するステップと、
最安単価の電力供給元から電力供給を受けて、前記リサイクル工場を稼動させた場合の利益を計算するステップと、
利益の有無を判断するステップと、
利益ありと判断した場合、最安単価の電力供給元から電力供給を受けて、前記リサイクル工場を稼動するように指令を送るステップと、
を含み、
利益を計算するステップでは、前記リサイクル工場にリサイクルすべき劣化蓄電池のストックがない場合、前記蓄電池群に劣化蓄電池のストックがあるか否かを確認し、前記蓄電池群から前記リサイクル工場に劣化蓄電池を輸送する費用も考慮して、前記リサイクル工場を稼動させた場合の利益を計算する、
方法。
【請求項2】
前記発電所群における燃料削減効果が前記卸電力市場からの買電費用より大きいか否かを確認するステップと、
燃料削減効果が市場買電費用より大きい場合、前記発電所群の出力を増加し、前記発電所群から前記蓄電池群および前記リサイクル工場の少なくとも一方に電力を供給するステップと、
をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発電所群における発電効率向上後の発電単価が、前記卸電力市場における買電価格より低いか否かを確認するステップと、
前記発電単価が前記買電価格より低い場合、前記発電所群の余力を市場売電するステップと、
をさらに含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
蓄電池のリサイクル工場にリサイクルすべき劣化蓄電池のストックがあるか否かを確認するリサイクル工場確認部と、
蓄電池群確認部と、
発電所群、蓄電池群および卸電力市場のうち、電力の最安単価を確認する価格確認部と、
最安単価の電力供給元から電力供給を受けて、前記リサイクル工場を稼動させた場合の利益を計算するとともに、利益の有無を判断する計算部と、
利益ありと判断した場合、前記電力供給元に対して、前記リサイクル工場に電力供給するように指令を送るとともに、前記リサイクル工場に対して、前記電力供給元から電力供給を受けて、前記リサイクル工場を稼動するように指令を送る指令部と、
を含み、
前記リサイクル工場にリサイクルすべき劣化蓄電池のストックがない場合、前記蓄電池群確認部は、前記蓄電池群に劣化蓄電池のストックがあるか否かを確認し、前記計算部は、前記蓄電池群から前記リサイクル工場に劣化蓄電池を輸送する費用も考慮して、前記リサイクル工場を稼動させた場合の利益を計算する、
最適化装置。
【請求項5】
前記最適化装置は、前記発電所群における燃料削減効果を確認する発電所群確認部をさらに含み、
前記価格確認部は、前記卸電力市場からの買電費用を確認し、
前記計算部は、前記発電所群における燃料削減効果が市場買電費用より大きいか否かを確認し、
燃料削減効果が市場買電費用より大きい場合、前記指令部は、前記発電所群に対して、前記発電所群の出力を増加し、前記発電所群から前記蓄電池群および前記リサイクル工場の少なくとも一方に電力を供給するように指令を送る、
請求項4に記載の最適化装置。
【請求項6】
前記価格確認部は、前記発電所群における発電効率向上後の発電単価が、前記卸電力市場における買電価格より低いか否かを確認し、
前記発電単価が前記買電価格より低い場合、前記指令部は、前記発電所群の余力を市場売電するように指令を送る、
請求項5に記載の最適化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池バリューチェーン(発電、送電、充放電、受電)における電力を最適化するための装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気事業者においては、燃料費が安価になるように発電所を稼動する必要がある。例えば、特許文献1では、天然ガス等受入量が定められている燃料の価格を実価格とは別の仮想価格を設定した上で、燃料費の安い発電機から順に用いるように電力需給計画を作成することで、予め定められた燃料受入量の範囲内で燃料費が全体として最小とする技術が提案されている。
【0003】
蓄電池を含むエネルギーシステムの最適制御を行う技術として、特許文献2には、自然エネルギー発電や電力需要の一時的な変動に対応し、蓄電池の充放電量を変更した方がエネルギーコストを低減できるかどうかをシミュレーション計算により繰り返し判断し、制御指令値を修正することによって、最適運用計画のみによる制御よりも低コストの制御を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4726724号公報
【文献】特許第4064334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献では、蓄電池のリサイクル工場における電力の最適化は考慮されていなかった。そこで、本発明者らは、蓄電池のリサイクル工場における電力の最適化に着目し、本発明を完成するに至った。それゆえ、本発明の目的は、蓄電池のリサイクル工場を含めた蓄電池バリューチェーンにおける電力を最適化するための装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の方法は、発電所群、蓄電池群および卸電力市場のうち、電力の最安単価を確認するステップと、
最安単価の電力供給元から電力供給を受けて、蓄電池のリサイクル工場を稼動させた場合の利益を計算するステップと、
利益の有無を判断するステップと、
利益ありと判断した場合、最安単価の電力供給元から電力供給を受けて、前記リサイクル工場を稼動するステップと、
を含む。
【0007】
本発明の方法は、前記発電所群における燃料削減効果が前記卸電力市場からの買電費用より大きいか否かを確認するステップと、
燃料削減効果が市場買電費用より大きい場合、前記発電所群の出力を増加し、前記発電所群から前記蓄電池群および前記リサイクル工場の少なくとも一方に電力を供給するステップと、
をさらに含むことが好ましい。
【0008】
本発明の方法は、前記発電所群における発電効率向上後の発電単価が、前記卸電力市場における買電価格より低いか否かを確認するステップと、
前記発電単価が前記買電価格より低い場合、前記発電所群の余力を市場売電するステップと、
をさらに含むことが好ましい。
【0009】
本発明の最適化装置は、発電所群、蓄電池群および卸電力市場のうち、電力の最安単価を確認する価格確認部と、
最安単価の電力供給元から電力供給を受けて、蓄電池のリサイクル工場を稼動させた場合の利益を計算するとともに、利益の有無を判断する計算部と、
利益ありと判断した場合、前記電力供給元に対して、前記リサイクル工場に電力供給するように指令を送るとともに、前記リサイクル工場に対して、前記電力供給元から電力供給を受けて、前記リサイクル工場を稼動するように指令を送る指令部と、
を含む。
【0010】
前記最適化装置は、前記発電所群における燃料削減効果を確認する発電所群確認部をさらに含み、
前記価格確認部は、前記卸電力市場からの買電費用を確認し、
前記計算部は、前記発電所群における燃料削減効果が市場買電費用より大きいか否かを確認し、
燃料削減効果が市場買電費用より大きい場合、前記指令部は、前記発電所群に対して、前記発電所群の出力を増加し、前記発電所群から前記蓄電池群および前記リサイクル工場の少なくとも一方に電力を供給するように指令を送る、
ことが好ましい。
【0011】
前記価格確認部は、前記発電所群における発電効率向上後の発電単価が、前記卸電力市場における買電価格より低いか否かを確認し、
前記発電単価が前記買電価格より低い場合、前記指令部は、前記発電所群の余力を市場売電するように指令を送る、
ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の蓄電池バリューチェーン最適化装置によって制御されるシステムの全体図を示す。
図2】本発明の蓄電池バリューチェーン最適化装置の機能を説明するためのブロック図である。
図3】最適化装置による制御フローの一例である。
図4】最適化装置による制御フローの他の例である。
図5】燃料削減効果および市場買電費用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の蓄電池バリューチェーン最適化装置(以下、最適化装置とも称する)によって制御されるシステムの全体図を示す。
発電所群H、蓄電池群C、リサイクル工場Rおよび卸電力市場Mは、それぞれ送電線ネットワークNWに接続されている。
発電所群Hは、例えば出願人が所有する複数の火力発電所の一群であり、発電した電力を送電線ネットワークNWに供給する。
蓄電池群Cは、例えば出願人が所有する複数の蓄電池の一群であり、蓄電した電力を送電線ネットワークNWに放電するとともに、送電線ネットワークNWから電力を充電する。また、蓄電池群Cは、蓄電池の劣化を判定する劣化監視機能を有し、劣化監視機能によりセル、スタックまたはモジュール単位で蓄電池の健全性を監視する。蓄電池群Cは、劣化と判定した蓄電池のセル、スタックまたはモジュールをリサイクル工場Rに輸送する。
リサイクル工場Rは、劣化した蓄電池をリサイクルするための工場であり、送電線ネットワークNWから受電する。リサイクルとは、蓄電池を分解して貴金属を取り出すこと(すなわち蓄電池としてはもはや使用しないこと)および蓄電池の劣化した部分を修理、交換して蓄電池として再生することの両方を含むものである。
卸電力市場Mにおける取引は、一般に取引所取引と、小売事業者との相対契約に基づく取引である相対取引と、の2つに大別されるが、本発明では、任意の電力取引も含むものである。取引所取引の価格(市場価格)は、市場原理によって決定し、相対取引の価格は、個別の契約によって決定する。ただし、本明細書では説明の都合上、卸電力市場Mにおける取引価格(買電価格/売電価格)を市場価格と称する。
発電所群Hおよび蓄電池群Cを主体として、卸電力市場Mから送電線ネットワークNWへの電力の流れを買電と称し、送電線ネットワークNWから卸電力市場Mへの電力の流れを売電と称する。
最適化装置100は、ネットワーク(例えば無線通信ネットワークまたは光通信ネットワーク)を介して、発電所群H、蓄電池群C、リサイクル工場Rおよび卸電力市場Mに接続され、発電所群H、蓄電池群C、リサイクル工場Rおよび卸電力市場Mと情報通信する。
【0014】
図2は、本発明の蓄電池バリューチェーン最適化装置の機能を説明するためのブロック図である。
最適化装置100は、PC、サーバ、ワークステーション等のコンピュータであり、CPU、メモリ、通信I/F、入出力装置等を有する。
最適化装置100は、リサイクル工場確認部10、発電所群確認部20、蓄電池群確認部30、価格確認部40、計算部50および指令部60を有する。
リサイクル工場確認部10は、リサイクル工場Rの状態を確認する。例えば、リサイクル工場Rにリサイクルすべき劣化蓄電池のストックがあるか否か、リサイクル工場Rが現在稼動しているか否か等を確認する。
発電所群確認部20は、発電所群Hの状態を確認する。例えば、発電所群Hが低効率の負荷で稼動しているか否か、発電所群Hにおける燃料削減効果を確認する。
蓄電池群確認部30は、蓄電池群Cの状態を確認する。例えば、蓄電池群Cの充放電の状態、劣化蓄電池のストックがあるか否かを確認する。
価格確認部40は、電力価格を確認する。例えば、発電所群H、蓄電池群Cおよび卸電力市場Mのうち、電力の最安単価を確認する。価格確認部40は、現在の電力価格だけでなく、将来の電力価格(価格予測値)を確認することもできる。
計算部50は、利益を計算する。例えば、発電所群H、蓄電池群Cおよび卸電力市場Mのうちのいずれかの電力供給元から電力供給を受けて、リサイクル工場Rを稼動させた場合の利益を計算する。
指令部60は、例えば、発電所群H、蓄電池群Cおよびリサイクル工場Rの運転を制御するために、発電所群H、蓄電池群Cおよびリサイクル工場Rに指令を送る。
以下、最適化装置100が、どのように発電所群H、蓄電池群Cおよびリサイクル工場Rの運転を制御するのかを説明する。
【0015】
図3は、最適化装置による制御フローの一例であり、リサイクル工場Rが停止している状態から稼動させるか否かを判断するフローチャートである。
ステップS1において、リサイクル工場確認部10は、リサイクル工場Rに、リサイクルすべき劣化蓄電池のストックがあるか否かを確認する。
ステップS1においてYESの場合、ステップS2において、価格確認部40は、発電所群H、蓄電池群Cおよび卸電力市場Mのうち、電力の最安単価を確認する。本例では、発電所群Hの電力が最安単価であったとする。価格確認部40は、発電所群Hを電力供給元に指定する。
ステップS3において、計算部50は、電力供給元である発電所群Hから電力供給を受けて、リサイクル工場Rを稼動させた場合の利益を計算する。
ステップS4において、計算部50は、利益の有無を判断する。
ステップS4において利益ありと判断した場合(YES)、ステップS5において、指令部60は、電力供給元の発電所群Hに対して、リサイクル工場Rに電力供給するように指令を送るとともに、リサイクル工場Rに対して、電力供給元の発電所群Hから電力供給を受けて、リサイクル工場Rを稼動するように指令を送る。
本例では、電力費用が最小になるように、リサイクル工場Rを稼動することにより、リサイクル工場Rにおける利益を増大することができる。
図3では、リサイクル工場Rが停止している状態から稼動させるか否かを判断したが、反対に、リサイクル工場Rが稼動している状態から停止させるか否かを判断することもできる。また、リサイクル工場Rが部分的に稼動している状態から稼働率を増減するか否かを判断することもできる。
【0016】
なお、図3のステップS1において、リサイクル工場Rに、リサイクルすべき劣化蓄電池のストックがない場合(NO)、蓄電池群Cに劣化蓄電池のストックがあるか否かを確認し、蓄電池群Cからリサイクル工場Rに劣化蓄電池を輸送する費用も考慮して、リサイクル工場Rを稼動させた場合の利益を計算することもできる。価格確認部40が、現在の電力価格を確認する場合、電力の最安単価は時々刻々と変化するため、蓄電池群Cとリサイクル工場Rとが隣接し、リサイクル工場Rの稼働と劣化蓄電池の輸送、供給との間に大きなタイムラグが発生しないことが好ましい。一方、価格確認部40が、将来の電力価格(価格予測値)を確認する場合、蓄電池群Cからリサイクル工場Rまでの劣化蓄電池の輸送時間を考慮することにより、蓄電池群Cとリサイクル工場Rとの距離によらず、リサイクル工場Rを稼動させた場合の利益を計算することができる。
【0017】
図4は、最適化装置による制御フローの他の例であり、発電所群Hが低効率の負荷で稼動している場合、発電所群Hの出力を増加させるか否かを判断するフローチャートである。
ステップS1において、発電所群確認部20は、発電所群Hが低効率の負荷で稼動しているか否かを確認する。
ステップS1においてYESの場合、ステップS2において、価格確認部40は、発電所群Hにおける発電単価と市場価格とを比較し、発電単価が市場価格以下か否かを確認する。
ステップS2においてYESの場合、すなわち、発電単価が市場価格以下の場合、ステップS4に進む。
ステップS2においてNOの場合、ステップS3において、発電所群Hにおける燃料削減効果と、蓄電池群Cおよび/またはリサイクル工場Rにおける卸電力市場Mからの買電費用(市場買電費用)と、を比較し、燃料削減効果が市場買電費用より大きいか否かを確認する。
具体的には、発電所群確認部20が燃料削減効果を確認し、価格確認部40が市場買電費用を確認し、計算部50が、燃料削減効果と市場買電費用とを比較する。
【0018】
図5を参照して、燃料削減効果(例えば燃料費削減効果)および市場買電費用を説明する。
発電所群Hでは、出力が高いほど発電効率が向上し、その結果、燃料削減効果が大きくなる。
図5(a)に示すように、当初発電所群Hは、電力50(発電効率10%)の出力で運転し、燃料500を必要としていたとする。
次に、図5(b)に示すように、発電所群Hが蓄電池群Cおよび/またはリサイクル工場Rに電力40を供給すると仮定する。すると、合計電力は50から90に増加し、発電効率は10%から40%に向上する。発電効率が向上した結果、電力50に必要な燃料は、500から125に減少するため、燃料削減効果は375(=500-125)である。
仮に、電力40の市場価格が120であった場合(電力1に対して3で売れる)、燃料削減効果(375)>市場買電費用(120)となる。
【0019】
図4に戻り、ステップS3において燃料削減効果が市場買電費用より大きい場合(YES)、ステップS4において、指令部60は、発電所群Hに対して、発電所群Hの出力を増加し、発電所群Hから蓄電池群Cおよび/またはリサイクル工場Rに電力を供給するように指令を送る。すなわち、発電単価>市場価格であるものの(ステップS2でNO)、発電所群Hの燃料削減効果が大きいため、蓄電池群Cおよび/またはリサイクル工場Rは、卸電力市場Mから買電する代わりに、発電所群Hから電力供給を受ける。
ステップS4において発電所群Hの出力を増加したことにより、ステップS5において、発電所群Hの発電効率が向上し、燃料費が削減される(図5(b)の状態)。
さらに、図5(c)に示すように、発電所群Hが、出力を90から100に増加し、増加した10の電力を市場売電する場合を検討する。合計電力が増加したことにより、発電効率は40%から50%に向上する。すると、ステップS2で比較した際には、発電単価>市場価格であった場合でも、この段階になって、発電単価<市場価格となる場合がある。
ステップS6において、価格確認部40は、発電所群Hにおける発電効率向上後の発電単価が、市場価格より低いか否かを確認する。
ステップS6において発電単価が市場価格より低い場合(YES)、ステップS7において、指令部60は、発電所群Hに対して、発電所群Hの余力を市場売電するように指令を送る。結果として、発電所群Hにおける売電利益が発生する。図5(c)に示すように、電力10が市場売電された場合、売電利益10(=売電30-燃料20)が発生する。
また、合計電力が90から100に増加したことにより、発電効率が40%から50%に向上し、燃料はさらに削減する。すなわち、電力50のための燃料は、125から100に削減し、電力40のための燃料は、100から80に削減するため、燃料削減効果は、合計45である。なお、図5(a)と図5(c)とで比較すると、電力50のための燃料は、500から100に削減したため、燃料削減効果は、合計400である。
本例では、低効率の負荷で稼動している発電所群Hの出力を増加し、発電効率を向上することにより、燃料費を削減することができる。さらに、発電効率向上後の発電単価が、市場価格より低い場合、売電量が増加し、発電所群Hにおける利益を増大することができる。
このように、リサイクル工場Rの電力費用の最小化と、発電所群Hの総燃料費用の最小化および蓄電池群Cの電力売買利益の最大化と、を組み合わせることにより、バリューチェーン全体の電力費用の最小化および利益の最大化を達成することができる。
【0020】
最適化装置100は、上述した図示例に限定されることなく、発電所群H、蓄電池群Cおよびリサイクル工場Rの運転をさまざまに制御することができる。
一例として、発電所群Hにおける発電単価より、市場価格が安価な場合、差し替え可能な電気を市場調達し、発電所群Hの出力を減少する。結果として、発電所群Hの電源の差し替え(自社供給→市場調達)が行われ、発電所群Hにおける発電費用を削減することができる(すなわち、発電所群Hにおける総燃料費用が最小化される)。
他の例として、発電所群Hにおける発電単価が市場価格より安価な場合、発電所群Hから蓄電池群Cに充電し、蓄電池群Cにおける買電費用を削減する。一方、蓄電池群Cにおける放電単価が市場価格より安価な場合、蓄電池群C電力を売電し、蓄電池群Cにおける利益を増大する。このような電力のピークシフト(時間シフト)の際、価格確認部40が将来の電力価格(価格予測値)を確認し、蓄電池群確認部30が蓄電池群Cの充放電の判断を行ってもよい。
図1に示すように、最適化装置100の制御によって、発電所群Hは、発電で生じた蒸気をリサイクル工場Rに供給し、リサイクル工場Rは、供給された蒸気をリサイクル工場Rでの熱源として使用することができる。蒸気を例えば暖房として用いることにより、リサイクル工場Rでの電力による暖房費用を削減することができるので好ましい。また、蒸気輸送の観点から、発電所群Hとリサイクル工場Rとが隣接していることが好ましい。
図1
図2
図3
図4
図5