(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】波長変換部材及び発光装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20220620BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20220620BHJP
【FI】
G02B5/20
H01L33/50
(21)【出願番号】P 2018101969
(22)【出願日】2018-05-29
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2017145157
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 寛之
(72)【発明者】
【氏名】浅野 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】高田 嶺一
(72)【発明者】
【氏名】村田 隆
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-122067(JP,A)
【文献】特開2007-161944(JP,A)
【文献】特開2014-157856(JP,A)
【文献】国際公開第2012/014360(WO,A1)
【文献】特開2014-112635(JP,A)
【文献】特開2009-218274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体を含む板状の波長変換部材であって、
光入射面と、前記光入射面と対向する光出射面とを有し、
前記光入射面の表面粗さをRa
in、前記光出射面の表面粗さをRa
outとした場合、Ra
inが0.01~0.05μm、かつ、Ra
out-Ra
inが0.01~0.2μmであることを特徴とする波長変換部材。
【請求項2】
前記光出射面の表面粗さRa
outが0.06μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項3】
ガラスマトリクス中に蛍光体粉末が分散してなることを特徴とする請求項1または2に記載の波長変換部材。
【請求項4】
厚みが0.01~1mmであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の波長変換部材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の波長変換部材と、
前記波長変換部材に励起光を照射する発光素子と、
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
前記波長変換部材における前記光入射面と、前記発光素子とが接着剤層により接着されていることを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記波長変換部材と前記発光素子の周囲に反射層が配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載の発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)やレーザーダイオード(LD:Laser Diode)等の発する光の波長を別の波長に変換する波長変換部材及びそれを用いた発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、蛍光ランプや白熱灯に変わる次世代の光源として、LEDやLDを用いた発光装置等に対する注目が高まってきている。そのような次世代光源の一例として、青色光を出射するLEDと、LEDからの光の一部を吸収して黄色光に変換する波長変換部材とを組み合わせた発光装置が開示されている。この発光装置は、LEDから出射された青色光と、波長変換部材から出射された黄色光との合成光である白色光を発する。特許文献1には、波長変換部材の一例として、ガラスマトリクス中に無機蛍光体粉末を分散させた波長変換部材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記波長変換部材は、光取出し効率に劣り、十分な発光強度が得られないという問題がある。
【0005】
従って、本発明は、光取出し効率が高く、発光強度に優れた波長変換部材と、それを用いた発光装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が鋭意検討した結果、波長変換部材の光入射面と光出射面における表面粗さを特定範囲に規制することで、光取出し効率を向上させることができ、発光強度に優れた波長変換部材を得ることができることを見出した。
【0007】
即ち、本発明の波長変換部材は、蛍光体を含む板状の波長変換部材であって、光入射面と、光入射面と対向する光出射面とを有し、光入射面の表面粗さをRain、光出射面の表面粗さをRaoutとした場合、Rainが0.01~0.05μm、かつ、Raout-Rainが0.01~0.2μmであることを特徴とする。
【0008】
本発明の波長変換部材は、光出射面の表面粗さRaoutが0.06μm以上であることが好ましい。このようにすれば、光取出し効率をより一層向上させることができる。
【0009】
本発明の波長変換部材は、ガラスマトリクス中に蛍光体粉末が分散してなることが好ましい。
【0010】
本発明の波長変換部材は、厚みが0.01~1mmであることが好ましい。
【0011】
本発明の発光装置は、上記の波長変換部材と、波長変換部材に励起光を照射する発光素子と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の発光装置は、波長変換部材における光入射面と、発光素子とが接着剤層により接着されていることが好ましい。
【0013】
本発明の発光装置は、波長変換部材と発光素子の周囲に反射層が配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光取出し効率が高く、発光強度に優れた波長変換部材と、それを用いた発光装置を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る波長変換部材を示す模式的断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る発光装置を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る波長変換部材を示す模式的断面図である。波長変換部材1は例えば矩形の板状である。波長変換部材1は蛍光体を含有しており、光入射面1aと、光入射面1aと対向する光出射面1bとを有する。波長変換部材1に含まれる蛍光体を励起させるための励起光を、入射光L
inとして波長変換部材1の光入射面1aから入射させる。入射光L
inは蛍光体により波長変換されて蛍光となる。当該蛍光と、波長変換されなかった入射光L
inとの合成光が出射光L
outとして光出射面1bから出射する。例えば、入射光L
inが青色光であり、蛍光が黄色光である場合、青色光と黄色光の合成光である白色光がL
outとして出射される。
【0018】
波長変換部材1における光入射面1aの表面粗さをRain、光出射面1bの表面粗さをRaoutとした場合、Rainが0.01~0.05μm、かつ、Raout-Rainが0.01~0.2μmを満たす。このようにすることで、光取出し効率を向上させることが可能となる。この理由は以下のように推察される。光入射面1aの表面粗さRainを比較的小さくすることにより、入射光Linが光入射面1a表面で散乱されにくく、波長変換部材1内部への入射効率が高くなる。これは、通常、入射光LinはLEDやLDから発せられる光であるため直進性(配向性)が高く、光入射面1aに対して垂直方向の光の割合が大きいためであると考えられる。一方、光出射面1bの表面粗さRaoutをRainに対して相対的に大きくすることにより、出射光Loutの光取出し効率を向上させることができる。波長変換部材1は基本的に光散乱体であるため、入射光Linや蛍光は波長変換部材1の内部で散乱され、あらゆる方向に配向している。したがって、光出射面1bの表面粗さRaoutが小さいと、臨界角を超える光成分が多くなり、光取出し効率が低くなる傾向がある。そこで、光出射面1bの表面粗さRaoutを大きくすることにより、散乱光に対する光反射抑制効果を高めることができる。
【0019】
Rainが大きすぎると、入射光Linが光入射面1a表面で散乱され、波長変換部材1内部への入射効率が低くなる傾向がある。結果として、波長変換部材の光取出し効率が低下し、発光強度が低下しやすくなる。一方、Rainが小さすぎると、発光素子(後述)と接着する際にアンカー効果が得られにくく、接着強度が低下しやすくなる。なお、接着強度低下に起因して、波長変換部材1が発光素子から一部でも剥離すると、波長変換部材1と発光素子との間に屈折率が低い空気層が形成されるため、入射光Linの入射効率が著しく低下する傾向がある。Rainの好ましい範囲は0.015~0.045μmである。
【0020】
Raout-Rainが小さすぎると、出射光Loutが光出射面1bで反射されやすくなり、光取出し効率が低下しやすくなる。一方、Raout-Rainが大きすぎると、出射光Loutの光出射面1bでの散乱が大きくなり、かえって光取出し効率が低下しやすくなる。Raout-Rainの好ましい範囲は0.02~0.18μmであり、より好ましい範囲は0.05~0.17μmである。
【0021】
なお、Raoutは0.06μm以上、0.07μm以上、特に0.08μm以上であることが好ましく、0.25μm以下、0.23μm以下、特に0.22μm以下であることが好ましい。Raoutが小さすぎると、出射光Loutが光出射面1bで反射されやすくなり、光取出し効率が低下しやすくなる。一方、Raoutが大きすぎると、出射光Loutの光出射面1bでの散乱が大きくなり、光取出し効率が低下しやすくなる。
【0022】
波長変換部材1は、例えばガラスマトリクスと、当該ガラスマトリクスに分散された蛍光体粉末とを含む蛍光体ガラスからなる。
【0023】
ガラスマトリクスは、無機蛍光体等の蛍光体粉末の分散媒として用いることができるものであれば特に限定されない。例えば、ホウ珪酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、スズリン酸塩系ガラス、ビスマス酸塩系ガラス、テルライト系ガラスなどを用いることができる。ホウ珪酸塩系ガラスとしては、質量%で、SiO2 30~85%、Al2O3 0~30%、B2O3 0~50%、Li2O+Na2O+K2O 0~10%、及び、MgO+CaO+SrO+BaO 0~50%を含有するものが挙げられる。スズリン酸塩系ガラスとしては、モル%で、SnO 30~90%、P2O5 1~70%を含有するものが挙げられる。テルライト系ガラスとしては、モル%で、TeO2 50%以上、ZnO 0~45%、RO(RはCa、Sr及びBaから選択される少なくとも1種)0~50%、及び、La2O3+Gd2O3+Y2O3 0~50%を含有するものが挙げられる。
【0024】
ガラスマトリクスの軟化点は、250℃~1000℃であることが好ましく、300℃~950℃であることがより好ましく、500℃~900℃の範囲内であることがさらに好ましい。ガラスマトリクスの軟化点が低すぎると、波長変換部材1の機械的強度や化学的耐久性が低下する場合がある。また、ガラスマトリクス自体の耐熱性が低いため、蛍光体から発生する熱により軟化変形するおそれがある。一方、ガラスマトリクスの軟化点が高すぎると、製造時に焼成工程が含まれる場合、蛍光体が劣化して、波長変換部材1の発光強度が低下する場合がある。また、ガラスマトリクスの軟化点が高くなると、焼成温度も高くなり、結果として製造コストが高くなる傾向がある。なお、波長変換部材1の化学的安定性及び機械的強度を高める観点からはガラスマトリクスの軟化点は500℃以上、600℃以上、700℃以上、800℃以上、特に850℃以上であることが好ましい。そのようなガラスとしては、ホウ珪酸塩系ガラスが挙げられる。一方、波長変換部材1を安価に製造する観点からは、ガラスマトリクスの軟化点は550℃以下、530℃以下、500℃以下、480℃以下、特に460℃以下であることが好ましい。そのようなガラスとしては、スズリン酸塩系ガラス、ビスマス酸塩系ガラス、テルライト系ガラスが挙げられる。
【0025】
蛍光体は、励起光の入射により蛍光を出射するものであれば、特に限定されるものではない。蛍光体の具体例としては、例えば、酸化物蛍光体、窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、塩化物蛍光体、酸塩化物蛍光体、硫化物蛍光体、酸硫化物蛍光体、ハロゲン化物蛍光体、カルコゲン化物蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、ハロリン酸塩化物蛍光体及びガーネット系化合物蛍光体から選ばれた1種以上等が挙げられる。励起光として青色光を用いる場合、例えば、緑色光、黄色光または赤色光を蛍光として出射する蛍光体を用いることができる。
【0026】
蛍光体粉末の平均粒子径は1μm~50μmであることが好ましく、5μm~25μmであることがより好ましい。蛍光体粉末の平均粒子径が小さすぎると、発光強度が低下する場合がある。一方、蛍光体粉末の平均粒子径が大きすぎると、発光色が不均一になる場合がある。
【0027】
波長変換部材1中での蛍光体粉末の含有量は、1体積%以上、1.5体積%以上、特に2体積%であることが好ましく、70体積%以下、50体積%以下、30体積%以下であることが好ましい。蛍光体粉末の含有量が少なすぎると、所望の発光色を得るために波長変換部材1の厚みを厚くする必要があり、その結果、波長変換部材1の内部散乱が増加することで、光取り出し効率が低下する場合がある。一方、蛍光体粉末の含有量が多すぎると、所望の発光色を得るために波長変換部材1の厚みを薄くする必要があるため、波長変換部材1の機械的強度が低下する場合がある。
【0028】
波長変換部材1の厚みは、0.01mm以上、0.03mm以上、0.05mm以上、0.075mm以上、特に0.08mm以上であることが好ましく、1mm以下、0.5mm以下、0.35mm以下、0.3mm以下、0.25mm以下、0.15mm以下、特に0.12mm以下であることが好ましい。波長変換部材1の厚みが厚すぎると、波長変換部材1における光の散乱や吸収が大きくなりすぎ、光取り出し効率が低くなる場合がある。波長変換部材1の厚みが薄すぎると、十分な発光強度が得られにくくなる場合がある。また、波長変換部材1の機械的強度が不十分になる場合がある。
【0029】
波長変換部材1の屈折率(nd)は、1.40以上、1.45以上、1.50以上であることが好ましく、1.90以下、1.80以下、1.70以下であることが好ましい。波長変換部材1の屈折率が高すぎると、波長変換部材1と光出射側の媒質(例えば空気層(nd=1.0))との屈折率差が大きくなることで、光出射面1bでの全反射が発生しやすく、光取り出し効率が低くなる場合がある。波長変換部材1の屈折率が低すぎると、発光素子(たとえばフリップチップ実装型のLED。出射面はサファイアnd=1.76)との屈折率差が大きくなる。そのため、波長変換部材1と発光素子の間に接着剤層を設け、当該接着剤層により屈折率差を調整した場合でも、発光素子と接着剤層の屈折率差及び/または接着剤層と波長変換部材1の屈折率差が大きくなってしまい、各々の界面で光取り出し効率が低くなる場合がある。
【0030】
波長変換部材1の光出射面1bに反射防止膜を設けても構わない。このようにすれば、蛍光や励起光が光出射面1bから出射する際、波長変換部材1と空気との屈折率差に起因する光取り出し効率の低下を抑制することができる。反射防止膜としては、SiO2、Al2O3、TiO2、Nb2O5、Ta2O5等から構成される単層または多層の誘電体膜が挙げられる。
【0031】
波長変換部材1の光入射面1aに反射防止膜を設けても構わない。このようにすれば、励起光が波長変換部材1に入射する際、接着剤層と波長変換部材1との屈折率差に起因する励起光入射効率の低下を抑制することができる。
【0032】
なお、波長変換部材1が蛍光体ガラスからなる場合、通常、波長変換部材1におけるガラスマトリクスの屈折率を考慮して反射防止膜の設計を行う。ここで、波長変換部材1の光出射面1bに蛍光体粉末が露呈していると、蛍光体粉末は屈折率が比較的高いため、蛍光体粉末部分に形成された反射防止膜は適切な膜設計とはならず、十分な反射防止機能が得られないおそれがある。そこで、波長変換部材1の光出射面1bに、露出した蛍光体粉末が被覆されるようにガラス層(蛍光体粉末を含まないガラス層)を設けることが好ましい。このようにすれば、波長変換部材1の光出射面1bの屈折率が一様となり、反射防止膜による効果を高めることができる。なお、波長変換部材1の光入射面1aにも、上述のように反射防止効果を高める目的のためガラス層を設けることが好ましい。
【0033】
ガラス層を構成するガラスは、波長変換部材1におけるガラスマトリクスを構成するガラスと同じであることが好ましい。このようにすれば、波長変換部材1におけるガラスマトリクスとガラス層との屈折率差がなくなり、両界面での光反射ロスを抑制することができる。なお、ガラス層を設ける場合は、ガラス層表面の表面粗さが、上述の表面粗さRaoutの範囲を満たすことが好ましい。ガラス層の厚みは0.003~0.1mm、0.005~0.03mm、特に0.01~0.02mmであることが好ましい。ガラス層の厚みが小さすぎると、露出した蛍光体粉末を十分に被覆できないおそれがある。一方、ガラス層の厚みが大きすぎると、励起光や蛍光が吸収されて発光効率が低下するおそれがある。
【0034】
なお、波長変換部材1は蛍光体ガラスからなるもの以外にも、YAGセラミックス等のセラミックスからなるものや、樹脂中に蛍光体粉末が分散したものであってもよい。
【0035】
波長変換部材1は以下のようにして作製することができる。まず、板状の波長変換部材前駆体を作製する。波長変換部材前駆体は、例えば蛍光体粉末とガラス粉末の混合物の焼結体を切削することにより作製することができる。次に、波長変換部材前駆体の両主面、即ち光入射面及び光出射面を所望の表面粗さとなるように研磨することにより、波長変換部材1を得る。ここで、研磨パッドや研磨砥粒を適宜選択することにより、波長変換部材1の両主面の表面粗さを調整する。波長変換部材前駆体の両主面を同時に研磨してもよいし、片面ずつ順番に研磨(光入射面を研磨した後光出射面を研磨、あるいは、光出射面を研磨した後光入射面を研磨)してもよい。例えば、両面研磨機にて波長変換部材1の両面に粗研磨を実施した後、片面研磨機にて光入射面を研磨する方法や、片面研磨機にて波長変換部材1の光入射面と光出射面を、異なる研磨砥粒を使用して片面ずつ順番に研磨する方法が挙げられる。
【0036】
図2は、本発明の一実施形態に係る発光装置を示す模式的断面図である。発光装置10は、波長変換部材1と発光素子2とが接着剤層3により接着されてなるものである。本実施形態において、発光素子2は基板4の上に設置されている。また、波長変換部材1、発光素子2、及び接着剤層3の周囲には反射層5が配置されている。反射層5を配置することにより、励起光及び蛍光を反射して外部に漏れるのを抑制することができ、光の取り出し効率を高めることができる。発光素子2は、平面視において波長変換部材1と略同一形状、同一面積である。ただし、波長変換部材1と発光素子2の形状及び面積は異なっていても構わない。例えば、並べて設置された複数の発光素子2に対し、当該複数の発光素子2を覆うように1枚の波長変換部材1を接着してもよい。
【0037】
発光素子2としては、例えば、青色光を発するLED光源やLD光源などの光源が用いられる。接着剤層3を構成する接着剤としては、例えば、シリコーン樹脂系、エポキシ樹脂系、ビニル系樹脂系、アクリル樹脂系などが挙げられる。接着剤層3を構成する接着剤は、波長変換部材1の屈折率と近似した屈折率であることが好ましい。そのようにすれば、発光素子2より発せられた励起光を効率よく波長変換部材1へ入射させることができる。基板4としては、例えば、発光素子2から発せられた光線を効率良く反射させることができる白色のLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)などが用いられる。具体的には、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ニオブ等の無機粉末と、ガラス粉末との焼結体が挙げられる。あるいは、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等のセラミック基板を使用することができる。反射層6としては、樹脂組成物またはガラスセラミックスを用いることができる。樹脂組成物としては、樹脂と、セラミック粉末またはガラス粉末の混合物を用いることができる。ガラスセラミックスとしては、LTCC等が挙げられる。ガラスセラミックスの材料としては、ガラス粉末及びセラミックス粉末の混合粉末、又は結晶性ガラス粉末を用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下に本発明の波長変換部材を実施例により詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
表1は実施例1、2及び比較例1~3を示す。
【0040】
【0041】
ホウ珪酸塩系ガラス粉末(平均粒子径D50:2μm、軟化点850℃)にYAG蛍光体粉末(平均粒子径D50:15μm)を混合して混合粉末を得た。YAG蛍光体粉末の含有量は混合粉末中に8.3体積%とした。混合粉末を金型で加圧成型し、軟化点付近で焼成することにより焼結体を得た。得られた焼結体を切削することにより30mm×30mm×0.3mmの板状の波長変換部材前駆体を得た。波長変換部材前駆体に対し、光入射面及び光出射面を各々所定の表面粗さとなるように、片面研磨機を用いて、研磨砥粒を片面毎に変えて研磨することにより波長変換部材を作製した。得られた波長変換部材を外形寸法1mm×1mmに切断し小片の波長変換部材を得た。
【0042】
得られた小片の波長変換部材について、以下のようにして光束値を測定した。励起波長450nmのLEDチップ表面にシリコーン樹脂を塗布し、小片の波長変換部材を接着させ、LEDチップ及び小片の波長変換部材の外周部に高反射性のシリコーン樹脂を塗布して測定用サンプルを得た。小片の波長変換部材の光出射面から発せられる光を積分球内部に取り込んだ後、標準光源によって校正された分光器へ導光し、光のエネルギー分布スペクトルを測定した。得られたエネルギー分布スペクトルから光束値を算出した。なお表1の光束値は、実施例1の光束値を1とした相対値で示している。
【0043】
表1に示すように、実施例1、2の波長変換部材は相対光束値が0.99以上であったのに対し、比較例1~3の波長変換部材は相対光束値が0.95以下と劣っていた。
【符号の説明】
【0044】
1 波長変換部材
1a 光入射面
1b 光出射面
2 発光素子
3 接着剤層
10 発光装置