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特許7090849肝機能改善用組成物及び肝機能改善用食品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】肝機能改善用組成物及び肝機能改善用食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20220620BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20220620BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20220620BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220620BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20220620BHJP
   A23L 2/68 20060101ALI20220620BHJP
   A23L 33/16 20160101ALI20220620BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K31/702
A61K33/06
A61K31/194
A61K36/752
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/02 B
A23L2/52
A23L2/68
A23L33/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021046045
(22)【出願日】2021-03-19
(62)【分割の表示】P 2017054978の分割
【原出願日】2017-03-21
(65)【公開番号】P2021100421
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2016083143
(32)【優先日】2016-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507234438
【氏名又は名称】広島県公立大学法人
(73)【特許権者】
【識別番号】591079487
【氏名又は名称】広島県
(73)【特許権者】
【識別番号】591014097
【氏名又は名称】サンエイ糖化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】井上 孝司
(72)【発明者】
【氏名】平光 正典
(72)【発明者】
【氏名】岡田 実紀
(72)【発明者】
【氏名】飯田 忠行
(72)【発明者】
【氏名】原田 俊英
(72)【発明者】
【氏名】後藤 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】重松 静香
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-199447(JP,A)
【文献】特開2004-292349(JP,A)
【文献】特開2013-28596(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1596883(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0260077(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸及びクエン酸塩から選ばれる少なくとも一種、オリゴ糖酸、並びにカルシウムを含有することを特徴とする肝機能改善用組成物。
【請求項2】
前記オリゴ糖酸は、還元末端にアルドン酸残基を有するオリゴ糖酸であることを特徴とする請求項1に記載の肝機能改善用組成物。
【請求項3】
前記クエン酸及びクエン酸塩から選ばれる少なくとも一種は、レモン搾出液として配合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の肝機能改善用組成物。
【請求項4】
クエン酸及びクエン酸塩から選ばれる少なくとも一種、オリゴ糖酸、並びにカルシウムを含有することを特徴とする肝機能改善用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた肝機能改善作用を発揮する肝機能改善用組成物及び肝機能改善用食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種骨疾患、例えば骨粗鬆症、骨折等が、増加傾向にあり、特に高齢化社会において問題となっている。現在、各種骨疾患に対する予防及び治療のための研究開発が進められている。各種骨疾患の予防及び治療のための研究開発を進める中で、骨及びカルシウム代謝に関する研究が現在急速に進展してきている。骨疾患のうち、例えば骨粗鬆症は、例えばカルシウム分の摂取不足、カルシウムイオンの吸収能力の低下、及び閉経後のホルモンアンバランスが原因であると考えられている。したがって、カルシウムイオンの吸収を増強させることは、骨疾患を予防又は治療するための有効な手段の一つであると考えられる。
【0003】
しかしながら、カルシウム強化を目的として用いられる天然由来の卵殻、骨粉、貝殻等の炭酸カルシウムは、水への溶解性が極めて低く、生体での吸収率は決して高いとはいえない。また、カルシウムのみを単に継続的に摂取したとしても、骨密度は容易に上昇しないことが知られている。例えば、非特許文献1,2,4は、カルシウム量として600~800mg/日をタブレット等の形態で数か月~1年間継続して摂取した後、骨密度を測定した試験について開示する。かかる試験において、いずれも骨密度を有意に上昇させることができなかった点について開示する。
【0004】
従来より、骨密度を増加させるために、非特許文献2~5に開示される方法が知られている。非特許文献2~4は、乳製品由来のカルシウム及びビタミンDを摂取したり、植物由来のカルシウム及びビタミンDを摂取することにより、骨密度を上昇させている。非特許文献5は、カルシウム及びビタミンDを摂取する他、運動負荷を併用することにより、骨密度を上昇させている。
【0005】
ところで、肝臓は消化管から吸収された栄養を受け取り、様々な栄養物の代謝と貯蔵を行う臓器として知られている。また、肝臓は、胆汁を消化管内に分泌したり、アルコール、薬物、毒物等の分解又は無毒化する機能も有している。しかしながら、肝臓は、「沈黙の臓器」と呼ばれるように、神経が通っていないため、知らず知らずのうちに肝臓を駆使し、機能を低下させるおそれがある。肝臓の病気は俗に肝臓病と呼ばれ、ウイルス、アルコール、薬剤、自己免疫疾患等の原因により急性的又は慢性的な肝炎が発症する。
【0006】
従来より、肝臓病の治療には、その症状により、抗ウイルス薬、肝庇護薬等の薬剤の投与の他、食生活の改善等が主な治療方法として適用されている。薬剤を投与する場合、肝臓に対し、副作用が生じるおそれがあるため、厳格な使用が求められたり、重度の肝障害を発症している場合には、使用することができないという問題があった。例えば、特許文献1に開示されるような、安全性の高い天然由来の成分を主成分とし、飲食品としての提供も可能な肝機能保護剤が知られている。特許文献1の肝機能保護剤は、シソ科植物の抽出物を主成分として含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-199447号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Journal of Nutrition(2014年)第144巻、第297-304頁
【文献】British Journal of Nutrition(2006年)第96巻、第1140-1148頁
【文献】Journal of Bone and Mineral Metabolism(2011年)第29巻、第501-506頁
【文献】International Journal Medical Sciences(2011年)第8巻、第180-191頁
【文献】J ournal of Applied Physiology(2008年)、第105巻、第274-281頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的とするところは、優れた肝機能改善作用を発揮する肝機能改善用組成物及び肝機能改善用食品組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、クエン酸等、オリゴ糖酸、及びカルシウムにより、優れた肝機能改善作用を発揮することを見出したことに基づくものである。
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、クエン酸及びクエン酸塩から選ばれる少なくとも一種、オリゴ糖酸、並びにカルシウムを含有する肝機能改善用組成物を提供する。前記オリゴ糖酸は、還元末端にアルドン酸残基を有するオリゴ糖酸であってもよい。前記クエン酸及びクエン酸塩から選ばれる少なくとも一種は、レモン搾出液として配合されてもよい。本発明の別の態様では、クエン酸及びクエン酸塩から選ばれる少なくとも一種、オリゴ糖酸、並びにカルシウムを含有することを特徴とする肝機能改善用食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた肝機能改善作用を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、骨密度改善に関する実施形態及び実施例は、参考例とする。
(第1の実施形態)
以下、本発明の骨密度改善用組成物を具体化した第1の実施形態を説明する。本実施形態の骨密度改善用組成物には、クエン酸及びクエン酸塩から選ばれる少なくとも一種(以下、「クエン酸等」という)が配合される。クエン酸としては、クエン酸無水物及びクエン酸水和物のいずれを用いてもよい。クエン酸塩としては、薬学的に許容される塩であればよく、例えばクエン酸のナトリウム塩、クエン酸のカリウム塩、クエン酸のマグネシウム塩、クエン酸のカルシウム塩等が挙げられる。これらのクエン酸等は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのクエン酸等としては、発酵法による生合成品、化学合成品、天然物から水・親水性有機溶媒等を用いて抽出した抽出品のいずれを使用してもよい。クエン酸等の配合形態としては、生合成品、化学合成品、天然物からの粗抽出物、抽出物又は精製品を骨密度改善用組成物へ適用してもよく、クエン酸等を含有する素材を骨密度改善用組成物中に配合してもよい。クエン酸等を含有する素材としては、例えば野菜、果実、もろみ酢等の食品素材が挙げられる。特に柑橘類及び梅類にクエン酸は多く含有されている。好ましくは、レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、スダチ等の柑橘類が用いられる。それらの素材は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。クエン酸等を含有する素材として、柑橘類由来の原料を使用する場合、好ましくは柑橘類の果汁等の搾出液又はその濃縮物が用いられる。その他、葉、果実(果皮(アルベド、フラベド)、じょうのう膜及びさのう等)、又はその果実の構成成分の一部を含有するものの搾出液を使用してもよい。例えば、柑橘類の果汁等のクエン酸等を含有する食品素材、その濃縮物又はその希釈物に、オリゴ糖酸及びカルシウム等の他の成分を配合することにより骨密度改善用食品組成物を調製してもよい。
【0013】
骨密度改善用組成物としてクエン酸等の摂取量の下限は、特に限定されないが、成人1日当たり、好ましくは100mg以上、より好ましくは500mg以上である。一方、クエン酸等の摂取量の上限は、特に限定されないが、好ましくは5g以下、より好ましくは3g以下である。クエン酸等の摂取量を上記範囲に規定することにより、骨密度改善用組成物による骨密度改善作用をより向上させることができる。また、効率的に摂取することができる。
【0014】
本実施形態の骨密度改善用組成物に含有されるオリゴ糖酸は、クエン酸等及びカルシウムとともに摂取することにより骨密度改善作用を発揮する。オリゴ糖酸としては、公知のものを適宜使用することができるが、還元末端にアルドン酸残基を有するオリゴ糖酸が好ましく適用される。アルドン酸としては、例えばグルコン酸、ガラクトン酸、マンノン酸等が挙げられる。還元末端にアルドン酸残基を有するオリゴ糖酸としては、例えばマルトビオン酸、マルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、イソマルトビオン酸、イソマルトトリオン酸、イソマルトテトラオン酸、ラクトビオン酸等が挙げられる。それらの素材は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
カルシウムは、生体摂取可能なカルシウム素材であれば特に限定されないが、飲料に好適に適用できるカルシウム塩が好ましい。カルシウム塩としては、公知の無機又は有機のカルシウム塩を適用することができる。無機のカルシウム塩の具体例としては、例えば塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム等の無機酸のカルシウム塩等が挙げられる。有機のカルシウム塩としては、例えばカルボン酸等の有機酸のカルシウム塩が挙げられ、より具体的には、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム等が挙げられる。
【0016】
また、原料としてオリゴ糖酸とカルシウムを所定の比率で別々に添加して使用するのみならず、オリゴ糖酸のカルシウム塩を使用して骨密度改善用組成物を調製してもよい。オリゴ糖酸のカルシウム塩は、水溶液の状態でオリゴ糖酸イオンとカルシウムイオンとに解離するため、かかる構成においても、骨密度改善作用を発揮することができる。
【0017】
骨密度改善用組成物としてカルシウムの摂取量の下限は、特に限定されないが、成人1日当たりカルシウム摂取量として、好ましくは10mg以上、より好ましくは50mg以上である。一方、成人1日当たりカルシウム摂取量として、カルシウムの摂取量の上限は、特に限定されないが、好ましくは2g以下、より好ましくは1g以下である。なお、オリゴ糖酸の摂取量の下限は、特に限定されないが、好ましくは100mg以上、より好ましくは500mg以上である。一方、オリゴ糖酸の摂取量の上限は、特に限定されないが、好ましくは20g以下、より好ましくは10g以下である。カルシウムとオリゴ糖酸の摂取量を上記範囲に規定することにより、骨密度改善用組成物による骨密度改善作用をより向上させることができる。また、効率的に摂取することができる。
【0018】
骨密度改善用組成物中におけるクエン酸等とカルシウムの配合比率は、特に限定されないが、カルシウムの含有量(質量)を1とした場合、クエン酸等の含有量の下限は、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上である。カルシウムの含有量に対するクエン酸等の含有量の質量比を0.1以上とすることにより、骨密度改善作用をより向上させることができる。同様に、カルシウムの含有量(質量)を1とした場合、クエン酸等の含有量の上限は、好ましくは10以下、より好ましくは7以下、さらに好ましくは5以下である。カルシウムの含有量に対するクエン酸等の含有量の質量比を10以下とすることにより、骨密度改善作用をより向上させることができる。
【0019】
本実施形態の骨密度改善用組成物は、骨密度改善作用の向上の観点から、さらにビタミンK及びビタミンK誘導体から選ばれる少なくとも一種(以下、「ビタミンK等」という)を配合してもよい。ビタミンKの具体例としては、ビタミンK~Kが挙げられる。それらの素材は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、骨密度向上作用に優れる観点からビタミンK又はその誘導体が好ましい。
【0020】
骨密度改善用組成物としてビタミンK等の摂取量の下限は、特に限定されないが、成人1日当たり、好ましくは1μg以上、より好ましくは10μg以上である。一方、ビタミンK等の摂取量の上限は、特に限定されないが、好ましくは1000μg以下、より好ましくは500μg以下である。ビタミンK等の摂取量を上記範囲に規定することにより、骨密度改善用組成物による骨密度改善作用をより向上させることができる。また、効率的に摂取することができる。
【0021】
骨密度改善用組成物の剤形は特に限定されず、液状であってもよいし、固体状であってもよい。より具体的には、散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、液剤、ゲル状剤等が挙げられ、適用分野に応じて適宜設定される。
【0022】
次に、本実施形態の骨密度改善用組成物の作用について説明する。
本実施形態の骨密度改善用組成物は、クエン酸等、オリゴ糖酸、及びカルシウムを併用することにより、優れた骨密度改善作用を発揮する。特に、本実施形態の骨密度改善用組成物は、骨吸収(破骨細胞により古くなった骨が分解されて破壊されていく骨の減少)マーカーとして知られるTracp-5b(骨型酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ5b)の活性を抑制することにより、骨密度の改善を図る。よって、本実施形態の骨密度改善用組成物は、骨密度の改善作用の発揮を目的とした飲食品、医薬品、医薬部外品等の各分野に好ましく適用することができる。
【0023】
本実施形態の骨密度改善用組成物を、食品組成物等の飲食品に適用する場合、例えば各種飲料類(果汁又は野菜汁入り飲料、清涼飲料、ミネラル飲料、スポーツドリンク、茶類飲料、コーヒー、炭酸飲料、牛乳やヨーグルト等の乳製品等)、ゼリー状食品(ゼリー、寒天、ゼリー状飲料等)、カプセル(ソフトカプセル、ハードカプセル)、各種菓子類等に適用することができる。飲食品には、ペクチンやカラギーナンなどのゲル化剤、グルコース、ショ糖、果糖、乳糖、ステビア、アスパルテーム、糖アルコール等の糖類・甘味料、香料等の食品添加剤、植物性油脂及び動物性油脂等の油脂等を適宜含有させることができる。また、飲食品の用途としては、特に限定されず、いわゆる一般食品、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品、機能性表示食品、病者用食品として適用することができる。
【0024】
本実施形態の骨密度改善用組成物を、医薬品として使用する場合は、服用(経口摂取)により投与する場合の他、血管内投与、経腸投与、経皮投与、腹腔内投与等のあらゆる投与方法を採用することが可能である。剤形としては、特に限定されないが、例えば、散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、液剤、注射剤等として構成してもよい。また、添加剤として賦形剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤等を配合してもよい。
【0025】
本実施形態の骨密度改善用組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の骨密度改善用組成物により、優れた骨密度改善作用を発揮することができる。特に、閉経後の女性において、骨密度及び骨代謝の機能を改善し、各種骨疾患、例えば骨粗鬆症、骨折等のリスクの低減が期待される。骨密度改善用組成物を食品組成物として適用することにより、より容易に摂取することができ、効率的な骨密度改善作用の発揮を期待することができる。
【0026】
(2)また、カルシウムの摂取源として適用されている大豆等の植物において、アレルギー等により摂取ができない人に対しても、容易に摂取することができる。
(3)また、骨密度上昇の観点から、カルシウムの摂取に併せて運動負荷を併用することが好ましいが、運動が制限されている人に対しても、摂取により骨密度の改善が期待される。
【0027】
(4)オリゴ糖酸として、還元末端にアルドン酸残基を有するオリゴ糖酸が適用される場合、より優れた骨密度の改善作用を発揮することができる。
(5)クエン酸等として、レモン搾出液が配合される場合、生体に対する適用性をより向上させることができる。
【0028】
(6)さらに、ビタミンK等を含有する場合、より優れた骨密度の改善作用を発揮することができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明の肝機能改善用組成物を具体化した第2の実施形態を説明する。なお、第2の実施形態について、下記の記載以外は、第1の実施形態の骨密度改善用組成物と同様の構成を適用することができる。
【0029】
本実施形態の肝機能改善用組成物に含有されるクエン酸等としては、第1の実施形態欄と同様の成分を適用することができる。また、例えば、柑橘類の果汁等のクエン酸等を含有する食品素材、その濃縮物又はその希釈物に、オリゴ糖酸及びカルシウム等の他の成分を配合することにより肝機能改善用食品組成物を調製してもよい。肝機能改善用組成物としてクエン酸等の摂取量の下限は、特に限定されないが、成人1日当たり、好ましくは100mg以上、より好ましくは500mg以上である。一方、クエン酸等の摂取量の上限は、特に限定されないが、好ましくは5g以下、より好ましくは3g以下である。クエン酸等の摂取量を上記範囲に規定することにより、肝機能改善用組成物による肝機能改善作用をより向上させることができる。また、効率的に摂取することができる。
【0030】
本実施形態の肝機能改善用組成物に含有されるオリゴ糖酸は、クエン酸等及びカルシウムとともに摂取することにより肝機能改善作用を発揮する。オリゴ糖酸及びカルシウムとしては、第1の実施形態欄と同様の成分を適用することができる。肝機能改善用組成物としてカルシウムの摂取量の下限は、特に限定されないが、成人1日当たりカルシウム摂取量として、好ましくは10mg以上、より好ましくは50mg以上である。一方、カルシウムの摂取量の上限は、特に限定されないが、成人1日当たりカルシウム摂取量として、好ましくは2g以下、より好ましくは1g以下である。なお、オリゴ糖酸の摂取量の下限は、特に限定されないが、好ましくは100mg以上、より好ましくは500mg以上である。一方、オリゴ糖酸の摂取量の上限は、特に限定されないが、好ましくは20g以下、より好ましくは10g以下である。カルシウムとオリゴ糖酸の摂取量を上記範囲に規定することにより、肝機能改善用組成物による肝機能改善作用をより向上させることができる。また、効率的に摂取することができる。
【0031】
肝機能改善用組成物中におけるクエン酸等とカルシウムの配合比率は、特に限定されないが、カルシウムの含有量(質量)を1とした場合、クエン酸等の含有量の下限は、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上である。カルシウムの含有量に対するクエン酸等の含有量の質量比を0.1以上とすることにより、肝機能改善作用をより向上させることができる。同様に、カルシウムの含有量(質量)を1とした場合、クエン酸等の含有量の上限は、好ましくは10以下、より好ましくは7以下、さらに好ましくは5以下である。カルシウムの含有量に対するクエン酸等の含有量の質量比を10以下とすることにより、肝機能改善作用をより向上させることができる。
【0032】
肝機能改善用組成物の剤形は特に限定されず、液状であってもよいし、固体状であってもよい。より具体的には、散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、液剤、ゲル化剤等が挙げられ、適用分野に応じて適宜設定される。
【0033】
次に、本実施形態の肝機能改善用組成物の作用について説明する。
本実施形態の肝機能改善用組成物は、クエン酸等、オリゴ糖酸、及びカルシウムを併用することにより、優れた肝機能改善作用を発揮する。肝機能が改善されることにより、肝機能が低下することにより上昇する血中の肝機能マーカーGOT(AST)、GPT(ALT)、ALP、γGTP等の各数値の改善が期待される。なお、GOTは、肝臓細胞に含まれる酵素で、細胞が炎症を起こしたり、壊れたりすると血液中に増加する。GPTは、慢性肝炎、脂肪肝等で高い値を示す。ALPは、胆汁の通り道である胆道系の障害で異常値を示す。γGTPは、肝疾患、アルコール摂取による肝障害、薬剤性肝障害等で高い値を示す。本実施形態の肝機能改善用組成物は、肝機能の改善作用の発揮を目的とした食品組成物等の飲食品、医薬品、医薬部外品等の各分野に好ましく適用することができる。
【0034】
本実施形態の肝機能改善用組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(7)本実施形態の肝機能改善用組成物により、優れた肝機能改善作用を発揮することができる。肝機能改善用組成物を食品組成物として適用することにより、より容易に摂取することができ、効率的な肝機能改善作用の発揮を期待することができる。
【0035】
(8)また、本実施形態の肝機能改善用組成物は、飲食品の形態においても適用することができるため、厳格な使用が求められることなく、肝臓病の症状により投薬ができない人に対しても、容易に摂取することができる。
【0036】
(9)また、特に脂肪肝等の肝臓病の場合、肝機能改善の観点から、食事療法に併せて運動負荷を併用することが好ましいが、運動が制限されている人に対しても、摂取により肝機能の改善が期待される。
【0037】
(10)オリゴ糖酸として、還元末端にアルドン酸残基を有するオリゴ糖酸が適用される場合、より優れた肝機能の改善作用を発揮することができる。
(11)クエン酸等として、レモン搾出液が配合される場合、生体に対する適用性をより向上させることができる。
【0038】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の骨密度改善用組成物又は肝機能改善用組成物の摂取量及び摂取期間は、特に限定されず、摂取者の骨密度又は肝機能状態、年齢、性別、及びその他の条件を考慮し、適宜決定される。たとえば、骨密度の改善のため又は肝機能の改善のために、効能が発揮される一定量を、数ヶ月以上継続的に摂取することが好ましい。
【0039】
・上記実施形態の骨密度改善用組成物又は肝機能改善用組成物は、ヒトが摂取する飲食品又は医薬品等に対して適用することができるのみならず、家畜等の飼養動物に対する飼料、薬剤等に適用してもよい。
【実施例
【0040】
以下に試験例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<試験例1:骨密度改善効果に関する試験1>
レモン搾出液(クエン酸)及びオリゴ糖酸カルシウムを含有する飲料を継続的に摂取した場合の骨密度改善効果について評価した。
【0041】
まず、レモン搾出液(レモン果汁)156g/L(クエン酸約7g/L)、オリゴ糖酸カルシウム45g/L、果糖ブドウ糖液10g/L、ビタミンCを0.95g/L、香料2.5g/L、ビタミンK375μg/L、及び残部水からなる飲料用の骨密度改善用食品組成物を調製した。なお、オリゴ糖酸カルシウムとして、マルトビオン酸70.5質量%及びマルトトリオン酸11.4質量%を含有する混合物を使用した。また、飲料中のカルシウム量は、0.175質量%である。
【0042】
得られた骨密度改善用食品組成物を閉経後の中高年女性40名(平均年齢63.9歳)を対象として、1日200mL、6ヶ月間継続摂取した。摂取前、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヵ月後のそれぞれについて、骨密度、骨吸収マーカーとしてTracp-5b、骨形成マーカーとしてOC(オステオカルシン)、骨形成マーカーとしてBAP(骨型アルカリフォスファターゼ)を測定した。なお、骨密度は、X線骨密度測定装置により測定した。また、血清中のTracp-5bは、市販の検査薬を使用し、酵素免疫測定法(EIA法)により測定した。血清中の骨形成マーカーとしてOCは、市販の検査薬を使用し、RIA固相法により測定した。血清中の骨形成マーカーとしてBAPは、市販の検査薬を使用し、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)により測定した。結果を表1,2に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
表1に示されるように、上記骨密度改善用食品組成物の継続的な摂取により、骨密度の上昇が確認された。また、表2に示されるように、摂取期間において、骨形成マーカー(OC及びBAP)がやや減少する傾向が見られるが、表1に示されるように、骨吸収マーカー(Tracp-5b)がそれ以上の減少割合を示すことが確認される。本発明の骨密度改善用食品組成物は、特に骨吸収を抑制することにより、骨密度の改善作用を発揮することが確認された。
【0045】
例えば、非特許文献3,4は、骨代謝マーカーについては測定していない。非特許文献5は、骨吸収マーカーの変化はなく、骨形成マーカー(OC)のみ有意に上昇していることを確認し、骨形成のみが亢進し、骨密度が増加したと判断している。本発明の骨密度改善用食品組成物により、骨吸収マーカーと骨形成マーカーのバランスを調整することにより骨密度を上昇することを初めて確認することができた。
【0046】
<試験例2:骨密度改善効果に関する試験2>
レモン搾出液(クエン酸)及びオリゴ糖酸カルシウムを含有する飲料を継続的に摂取した場合の骨密度改善効果について評価した。
【0047】
まず、レモン搾出液(レモン果汁)105.2g/L(クエン酸約4.7g/L)、オリゴ糖酸カルシウム31.0g/L、果糖ブドウ糖液10g/L、甘味料0.1g/L、香料2.8g/L、及び残部水からなる飲料用の骨密度改善用食品組成物を調製した。コントロールの飲料として、レモン搾出液(レモン果汁)105.2g/L(クエン酸約4.7g/L)、果糖ブドウ糖液10g/L、甘味料0.1g/L、香料2.8g/L、及び残部水からなるレモン果汁飲料を調製した。なお、オリゴ糖酸カルシウムとして、マルトビオン酸70.5質量%及びマルトトリオン酸11.4質量%を含有する混合物を使用した。また、飲料中のカルシウム量は、0.121質量%である。
【0048】
得られた骨密度改善用食品組成物を閉経後の中高年女性56名を対象として、1日290mL、5ヶ月間継続摂取した。骨密度改善用食品組成物の摂取群を29名、レモン果汁飲料摂取群を27名に分け、5ヶ月間継続摂取した。摂取前、2ヶ月後、5ヵ月後のそれぞれについて、腰椎骨密度、骨吸収マーカーとしてTracp-5b、骨形成マーカーとしてBAP(骨型アルカリフォスファターゼ)を測定した。各パラメータの測定方法は試験例1と同様である。結果を表3~5に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
表3に示されるように、上記骨密度改善用食品組成物の継続的な摂取により、レモン果汁飲料摂取群に対して、骨密度の上昇が確認された。また、表5に示されるように、摂取期間において、骨形成マーカー(BAP)がやや減少する傾向が見られるが、表4に示されるように、骨吸収マーカー(Tracp-5b)がそれ以上の減少割合を示すことが確認される。本発明の骨密度改善用食品組成物は、特に骨吸収を抑制することにより、骨密度の改善作用を発揮することが本試験においても確認された。
【0052】
例えば、非特許文献3,4は、骨代謝マーカーについては測定していない。非特許文献5は、骨吸収マーカーの変化はなく、骨形成マーカー(OC)のみ有意に上昇していることを確認し、骨形成のみが亢進し、骨密度が増加したと判断している。本試験においても、本発明の骨密度改善用食品組成物により、骨吸収マーカーと骨形成マーカーのバランスを調整することにより骨密度を上昇することを確認することができた。
【0053】
<試験例3:肝機能改善効果に関する試験1>
レモン搾出液(クエン酸)及びオリゴ糖酸カルシウムを含有する飲料を継続的に摂取した場合の肝機能改善効果について評価した。
【0054】
まず、レモン搾出液(レモン果汁)156g/L(クエン酸約7g/L)、オリゴ糖酸カルシウム45g/L、果糖ブドウ糖液10g/L、ビタミンCを0.95g/L、香料2.5g/L、ビタミンK375μg/L、及び残部水からなる飲料用の肝機能改善用食品組成物を調製した。なお、オリゴ糖酸カルシウムとして、マルトビオン酸70.5質量%及びマルトトリオン酸11.4質量%を含有する混合物を使用した。また、飲料中のカルシウム量は、0.175質量%である。
【0055】
得られた肝機能改善用食品組成物を閉経後の中高年女性40名(平均年齢63.9歳)を対象として、1日200mL、6ヶ月間継続摂取した。摂取前、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヵ月後のそれぞれについて、肝機能マーカーとして血清中のGOT、GPT、ALP、γGTPをそれぞれ測定した。なお、各肝機能マーカーは、市販の臨床検査薬により測定した。結果を表6,7に示す。
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
表6,7に示されるように、上記肝機能改善用食品組成物の継続的な摂取により、各肝機能マーカーの数値の改善が確認された。
【0058】
<試験例4:肝機能改善効果に関する試験2>
レモン搾出液(クエン酸)及びオリゴ糖酸カルシウムを含有する飲料を継続的に摂取した場合の肝機能改善効果について評価した。
【0059】
まず、レモン搾出液(レモン果汁)105.2g/L(クエン酸約4.7g/L)、オリゴ糖酸カルシウム31.0g/L、果糖ブドウ糖液10g/L、甘味料0.1g/L、香料2.8g/L、及び残部水からなる飲料用の肝機能改善用食品組成物を調製した。コントロールの飲料として、レモン搾出液(レモン果汁)105.2g/L(クエン酸約4.7g/L)、果糖ブドウ糖液10g/L、甘味料0.1g/L、香料2.8g/L、及び残部水からなるレモン果汁飲料を調製した。なお、オリゴ糖酸カルシウムとして、マルトビオン酸70.5質量%及びマルトトリオン酸11.4質量%を含有する混合物を使用した。また、飲料中のカルシウム量は、0.121質量%である。
【0060】
得られた肝機能改善用食品組成物を閉経後の中高年女性56名を対象として、1日290mL、5ヶ月間継続摂取した。肝機能改善用食品組成物の摂取群を29名、レモン果汁飲料摂取群を27名に分け、5ヶ月間継続摂取した。摂取前、2ヶ月後、5ヵ月後のそれぞれについて、肝機能マーカーとして血清中のALPを測定した。ALPの測定方法は試験例3と同様である。結果を表8に示す。
【0061】
【表8】
表8に示されるように、上記肝機能改善用食品組成物の継続的な摂取により、肝機能マーカーの数値の改善が確認された。
【0062】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)カルシウムの含有量に対するクエン酸等の含有量の質量比は、0.1~10である前記骨密度改善用組成物又は肝機能改善用組成物。従って、この(イ)に記載の発明によれば、骨密度改善作用又は肝機能改善作用をより向上させることができる。(ロ)クエン酸及びクエン酸塩から選ばれる少なくとも一種、オリゴ糖酸、並びにカルシウムを含有する骨密度改善用組成物。(ハ)前記オリゴ糖酸は、還元末端にアルドン酸残基を有するオリゴ糖酸である前記骨密度改善用組成物。(ニ)前記クエン酸及びクエン酸塩から選ばれる少なくとも一種は、レモン搾出液として配合されている前記骨密度改善用組成物。(ホ)クエン酸及びクエン酸塩から選ばれる少なくとも一種、オリゴ糖酸、並びにカルシウムを含有する前記骨密度改善用食品組成物。