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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】位置決圧着機構及び位置決圧着工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 11/00 20060101AFI20220620BHJP
   B23P 19/00 20060101ALI20220620BHJP
   B23P 19/04 20060101ALI20220620BHJP
   B25B 11/02 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
B25B11/00 Z
B23P19/00 304E
B23P19/04 Z
B25B11/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018164056
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020037139
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】393011038
【氏名又は名称】リョーエイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121371
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 和人
(72)【発明者】
【氏名】相原 昌典
(72)【発明者】
【氏名】後藤 成智
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-061002(JP,A)
【文献】実開昭57-26936(JP,U)
【文献】特開2012-179663(JP,A)
【文献】特開2006-232308(JP,A)
【文献】中国実用新案第206277115(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 11/00
B23P 19/00
B23P 19/04
B25B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が貫通形成された第2のワークの圧着面を、開口部が貫通形成された第1のワークの圧着面に対して、前記第1のワークの開口部の位置に対する前記第2のワークの開口部の相対位置が所定位置となるように圧着する位置決圧着機構であって、
一の押圧方向の押圧力を入力するブロックである主動ブロックと、
前記主動ブロックの押圧方向側に、移動方向が前記押圧方向と平行な方向に規制された状態で、一定のストローク範囲内で移動自在に配設されたブロックである中央従動ブロックと、
前記主動ブロックに入力される押圧力を前記中央従動ブロックに伝達するとともに、前記中央従動ブロックを前記押圧方向に付勢する第1バネと、
前記中央従動ブロックの押圧方向側に設けられ、前記第2のワークが着脱自在に持着される部位であるワーク持着部と、
前記ワーク持着部の押圧方向側先端に位置する面であって、前記第2のワークの開口部周辺の圧着面とは逆側の押圧面に当設する中央押圧面と、
基端側部分が先端側部分と同じ太さにもしくは先端側部分よりも細く形成されており、基端側部分が前記第2のワークの開口部内に着脱自在に嵌持されるとともに、先端側部分が前記第1のワークの開口部内に嵌合挿入される照準用アタッチメントと、
前記主動ブロックの押圧方向側に、前記ワーク持着部を取り囲むように複数配設され、移動方向が前記主動ブロックの押圧方向と平行な方向に規制された状態で、一定のストローク範囲内で移動自在に配設された周辺従動ブロックと、
前記各周辺従動ブロックの其々に対して設けられ、前記主動ブロックへ入力される押圧力を該周辺従動ブロックへ伝達するとともに、該周辺従動ブロックを押圧方向に付勢する第2バネと、
前記各周辺従動ブロックの押圧方向側先端に位置する面であって、前記第2のワークの前記押圧面の、前記中央押圧面が当設する部位の周辺部位に当設する周辺押圧面と、を備えた位置決圧着機構。
【請求項2】
前記中央従動ブロックの前記主動ブロックに対向する側から、該中央従動ブロックの押圧方向側の前記ワーク持着部の中央まで、前記中央従動ブロックを貫通するように形成された中央挿通孔と、
前記中央挿通孔に摺動自在に挿通して設けられ、基端側が前記主動ブロックにより押動され、先端側が前記中央従動ブロックの押圧方向側の前記ワーク持着部の中央面より突出する押出ブロックと、
前記中央従動ブロックと前記押出ブロックとの間に介設され、前記押出ブロックを押圧方向と逆方向に付勢する第3バネと、を備えた請求項1記載の位置決圧着機構。
【請求項3】
開口部が貫通形成された第2のワークの圧着面を、開口部が貫通形成された第1のワークの圧着面に対して、前記第1のワークの開口部の位置に対する前記第2のワークの開口部の相対位置が所定位置となるように圧着する位置決圧着工具であって、請求項1又は2に記載の位置決圧着機構を備えたことを特徴とする位置決圧着工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部が貫通形成された第2のワークの圧着面を、開口部が貫通形成された第1のワークの圧着面に対して、第1のワークの開口部の位置に対する第2のワークの開口部の相対位置が所定位置となるように圧着する位置決圧着技術に関する。
【背景技術】
【0002】
斯かる位置決圧着技術については、特許文献1,2に記載の技術が公知である。特許文献1に記載の円筒状部材の中心位置合わせ装置は、径が異なる二つの円筒状部材の互いの中心を位置合わせするものである(特許文献1の図1参照)。押圧側である移動側ユニット(2)では、円筒部を有する第1ワーク(4)を、円筒状のセンタリングチャック(14)に外嵌着し、センタリングチャック(14)と同軸に下先端部(13a)がテーパ状に形成された基準ピン(13)を設ける。一方、被押圧側である固定側ユニット(3)では、円周方向に3分割されたホルダ部材(22a)(特許文献1の図2参照)に第2のワーク(5)の円筒部を嵌着し、ホルダ部材(22a)の3つの割片を圧縮コイルばね(24)により中心方向に付勢した状態とする。移動側ユニット(2)を下降させて基準ピン(13)の先端テーパ部をホルダ部材(22a)の3つの割片の中心に挿入させることで、圧縮コイルばね(24)によりホルダ部材(22a)の位置、延いては第2のワーク(5)の位置が調整され、これにより中心位置合わせが行われる。
【0003】
特許文献2に記載の部品取付装置は、一の部品(26)を他の部品(12)に、互いの凹部(13)と凸部(28)とを嵌合させて取り付ける装置である(特許文献2の図4図5参照)。この装置では、支持台上面に固定された部品(12)の上方で上下するロッド(14)の先端の駆動部(16)の下端に、コイルばね(17)を介して部品取付部(18)を弾着し、部品取付部(18)の下端に部品(26)を嵌着する。部品取付部(18)の上端部にはボールジョイント構造が設けられており、駆動部(16)の下端と接触/分離する部品取付部(18)の上端は、このボールジョイント構造によって自由に傾動可能とされている。ロッド(14)を下動することで部品取付部(18)が下降して、まず部品(26)の凸部(28)が部品(12)の凹部(13)に挿入され、さらに下動することでコイルばね(17)によって部品(26)が部品(12)へ次第に圧着され、さらに下動することで、駆動部(16)の下端と部品取付部(18)の上端とが接触してロッド(14)に加わる押圧力が部品(26)へ直接伝達されて、部品(26)が部品(12)へ強く圧着される。また、ボールジョイント構造によってロッド(14)の降下軸と部品(12)の中心軸が多少傾いていても、部品取付部(18)の上端が傾動して傾きが修正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-119575号公報
【文献】実開昭58-177271号公報
【文献】実開平2-144892号公報
【文献】実開平7-16392号公報
【文献】特開2016-8923号公報
【文献】特開2012-86583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車車体の組立工程等においては、バンパのような弾性のある曲面状の第1のワークに開けられた円形開口に、衝突センサを装着するためのリテーナ(例えば、特許文献5,6参照)などの円形開口を有する第2のワークを、両開口の中心軸が一致するようにして精度良く圧着し貼着させる必要がある場合がある。このような場合に於いて、特許文献1の技術を適用しようとした場合、第1のワークは第2のワークに比べ大きく、自由に移動させることが困難であるため、特許文献1の技術を適用して位置決めを行うことは出来ない。また、第1のワークが平面状の場合には精度の良い位置決めを行うために適用可能であるが、第1のワークがバンパのような弾性のある曲面形状を有する場合には、適用できない。
【0006】
一方、特許文献2の技術を適用する場合、第2のワーク(部品(26))は、第1のワーク(部品(12))の円形開口に嵌合する嵌合突起(軸部(28))を備えていることが必要条件となる。然し乍ら、上述のように開口を有するバンパの表面に開口を有するリテーナを貼着する場合では、バンパと対面するリテーナの貼着面は平面状であり、バンパ開口に嵌合する嵌合突起を有しない。従って、このように、第2のワークに第1のワークの開口と嵌合する嵌合突起を有しないようなケースでは、特許文献2の技術を適用することは出来ない。
【0007】
また、例えば、自動車のライト取付穴にランプの装着ベース金具(第2のワーク)を取り付ける場合や、ウォッシャーノズル取付穴にウォッシャーノズルの装着ベース金具(第2のワーク)を取り付ける場合などのように、第2のワークの開口(装着ベース金具の開口等)の大きさが第1のワークの開口(ライト取付穴,ウォッシャーノズル取付穴等)の大きさに比べて小さいような場合が多々ある。そのような場合、両開口の相対位置が設計された所定の位置となるように精度良く位置決圧着し貼着するのは難しいという問題もある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、第1のワークが弾性のある曲面状であっても、また第1のワークが固定されているか移動可能かに関わらず、また第1のワークの開口が第2のワークの開口よりも大きい場合であっても、開口を有する第1のワークに対し、開口を有する第2のワークを、互いの開口の相対位置が所定の位置となるように精度良く圧着することが可能な、上記先行技術とは異なる位置決圧着機構及び位置決圧着工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る位置決圧着機構の第1の構成は、開口部が貫通形成された第2のワークの圧着面を、開口部が貫通形成された第1のワークの圧着面に対して、前記第1のワークの開口部の位置に対する前記第2のワークの開口部の相対位置が所定位置となるように圧着する位置決圧着機構であって、
一の押圧方向の押圧力を入力するブロックである主動ブロックと、
前記主動ブロックの押圧方向側に、移動方向が前記押圧方向と平行な方向に規制された状態で、一定のストローク範囲内で移動自在に配設されたブロックである中央従動ブロックと、
前記主動ブロックに入力される押圧力を前記中央従動ブロックに伝達するとともに、前記中央従動ブロックを前記押圧方向に付勢する第1バネと、
前記中央従動ブロックの押圧方向側に形成され、前記第2のワークが着脱自在に持着される部位であるワーク持着部と、
前記ワーク持着部の押圧方向側先端に位置する面であって、前記第2のワークの開口部周辺の圧着面とは逆側の押圧面に当設する中央押圧面と、
基端側部分が先端側部分と同じ太さにもしくは先端側部分よりも細く形成されており、基端側部分が前記第2のワークの開口部内に着脱自在に嵌持されるとともに、先端側部分が前記第1のワークの開口部内に嵌合挿入される照準用アタッチメントと、
前記主動ブロックの押圧方向側に、前記ワーク持着部を取り囲むように複数配設され、移動方向が前記主動ブロックの押圧方向と平行な方向に規制された状態で、一定のストローク範囲内で移動自在に配設された周辺従動ブロックと、
前記各周辺従動ブロックの其々に対して設けられ、前記主動ブロックへ入力される押圧力を該周辺従動ブロックへ伝達するとともに、該周辺従動ブロックを押圧方向に付勢する第2バネと、
前記各周辺従動ブロックの押圧方向側先端に位置する面であって、前記第2のワークの前記押圧面の、前記中央押圧面が当設する部位の周辺部位に当設する周辺押圧面と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、位置決圧着工程を行う場合、まず、第1ステップとして、第2のワーク(W2)の圧着面(F2a)側から、第2のワーク(W2)の開口部(H2)内に照準用アタッチメントを嵌め込んで嵌持させ、第2のワーク(W2)の押圧面(F2b)側を中央従動ブロックのワーク持着部に持着する(保持させた状態に着ける)。次に、第2ステップとして、第2のワーク(W2)を介して中央従動ブロックに持着された照準用アタッチメントを第1のワーク(W1)の圧着面(F1a)側から第1のワーク(W1)の開口部(H1)に嵌合挿入する。このとき、ワーク持着部の押圧方向側先端の中央押圧面は、第2の押圧面(F2b)のワークの開口部(H2)周辺の部位(以下「中央押圧部位」という。)に当設する。またこの際に、照準用アタッチメントによって開口部(H1)に対する開口部(H2)の相対位置が所定位置となるように位置決めがなされる。次に、第3ステップとして、主動ブロックに対し押圧方向に押圧力を入力する。これに伴って、主動ブロックが押圧方向に進行すると、まず最初に第1バネの圧縮によって中央押圧面による押圧面(F2b)の中央押圧部位への押圧力が徐々に上昇する。次いで、さらに主動ブロックが進行すると、各周辺従動ブロックの押圧方向側先端の周辺押圧面が第2のワークの押圧面(F2b)に突き当たり、周辺押圧面による、第2のワーク(W2)の押圧面(F2b)の中央押圧部位の周辺部位(以下「周辺押圧部位」という。)への押圧力が、中央押圧部位に遅れて徐々に上昇する。これにより、最初に、開口部(H1,H2)の近旁の中央押圧部位が先行して圧着され、その後、中央押圧部位の周囲の周辺押圧部位が、次第に圧着力を強めつつ圧着されていく。このように、段階的を踏んで時間差で中央押圧部位周囲から周辺押圧部位へと広がるように圧着がされることで、圧着の際に第1のワーク(W1)及び第2のワーク(W2)の開口部(H1,H2)付近に押圧力による歪みが生じても、その歪みによる剪断力や曲げモーメントは中央押圧部位周囲から周辺押圧部位乃至さらにその周辺部位へと徐々に逃がされていくため、開口部(H1,H2)周辺での均等で且つ歪みによる位置ずれの極めて少ない圧着工程を実現することが出来る。特に、圧着面(F1a,F2a)に接着材を挟んで接着させる場合や熱溶着させる場合には、押圧力による歪みがない状態で開口部(H1,H2)から離れた位置が先に接着されると、押圧力による歪みが生じた際に、先に接着した部位からの横ずれの力が働くために、開口部(H1,H2)周辺に位置ずれを生じ易くなる。しかし、本発明の位置決圧着機構は、開口部(H1,H2)周辺が先行して強く接着されるので、このような押圧力による歪みが生じた際に周辺部位から加わる横ずれの力による位置ずれを起こしにくく、極めて高い精度での位置決圧着工程を実現することが出来る。
【0011】
また、各周辺従動ブロックは、互いに独立に動くことが出来るので、第1のワーク(W1)及び第2のワーク(W2)の開口部(H1,H2)周辺の圧着面(F1a,F2a)が平面でない場合であっても、圧着面(F1a,F2a)の形状に適應して各周辺従動ブロックは動いて押圧動作がなされる。これにより、圧着面(F1a,F2a)の形状によらず、第2のワーク(W2)の圧着面(F2a)は第1のワーク(W1)の圧着面(F1a)に一定の押圧力で圧着される。このとき、圧着時の押圧力は、第1及び第2のバネのばね定数及び押し込み幅を適宜調節することで設定することが出来る。
【0012】
さらに、第1のワーク(W1)及び第2のワーク(W2)の開口部(H1,H2)の相対位置の位置決めは、第2のワーク(W2)の開口部(H2)内に嵌合挿入される照準用アタッチメントにより為される。従って、第1のワーク(W1)の開口(H1)が第2のワーク(W2)の開口(H2)よりも大きい場合であっても、照準用アタッチメントを第1のワーク(W1)の開口(H1)に合わせた大きさにすれば、精度のよい位置決圧着することが可能となる。
【0013】
ここで、本発明において、前記主動ブロックに対する前記中央従動ブロックの変位を検出する変位検出手段を備えるように構成することが出来る。この変位検出手段によって、主動ブロックに対する中央従動ブロックの変位を検出することによって、第1のバネによる押圧力を検出することが出来る。これにより、変位検出手段の検出する変位が所定の目標値まで達した時点で、主動ブロックへの押圧入力を停止することで、第1のワーク(W1)に第2のワーク(W2)を圧着する際の押圧力を正確に調節することが可能である。特に、製品を量産する際の生産ラインに於いては、圧着作業時の押圧力が一定となるように品質保証をすることが可能となるため有効である。尚、変位検出手段としては、近接センサや距離センサなどの位置センサ(非接触式検出方式)や、変位目盛りを備えた位置ゲージや、一定の変位に達するとオンされるリミットスイッチ(接触式検出方式)等を用いることが出来る。
【0014】
また、中央押圧面と周辺押圧面との位置関係は、最初に中央押圧面が第2のワーク(W2)の上面に当接した後に、各周辺押圧面が第2のワーク(W2)の上面に当接するような位置関係とすることが好ましい。最初に中央押圧面によって第2のワーク(W2)の開口周辺を第1のワーク(W1)の上面に圧着させておくことで、上述したように段階を踏んで、時間差で位置決め圧着が行われ、圧着時の位置ずれが生じにくいからである。従って、第2のワーク(W2)の上面が平面である場合には、中央押圧面は周辺押圧面よりも下方に位置するように構成することが好ましい。然し乍ら、第2のワーク(W2)の上面に凹凸や段差がある場合には、第2のワーク(W2)の上面形状に応じて、最初に中央押圧面が第2のワーク(W2)の上面に当接するように、中央押圧面と周辺押圧面との位置関係を定める必要がある。
【0015】
また、ワーク持着部が第2のワーク(W2)を着脱自在に持着する構造としては、第2のワーク(W2)とワーク持着部とが互いに嵌め合って嵌着する構造の他、第2のワーク(W2)の開口部(H2)近旁に強磁性体を設けワーク持着部を磁石として、ワーク持着部と第2のワークとが互いに磁着する構造や、第2のワーク(W2)の開口部(H2)に嵌合挿入される照準用アタッチメントを強磁性体又は磁石としワーク持着部を磁石として、ワーク持着部と照準用アタッチメントを嵌合挿入した第2のワークとが互いに磁着する構造などを採ることが出来る。
【0016】
また、「前記主動ブロックに入力される押圧力を前記中央従動ブロックに伝達するとともに、前記中央従動ブロックを前記押圧方向に付勢する第1バネ」は、必ずしも直接主動ブロックと中央従動ブロックとに連結されていなくてもよく、他の機械要素を介して間接的に主動ブロックに入力される押圧力を中央従動ブロックに伝達し中央従動ブロックを押圧方向に付勢するものであってもよい(例えば、図5の第1バネ4を参照)。
【0017】
本発明に係る位置決圧着機構の第2の構成は、前記第1の構成において、前記中央従動ブロックの前記主動ブロックに対向する側から、該中央従動ブロックの押圧方向側の前記ワーク持着部の中央まで、前記中央従動ブロックを貫通するように形成された中央挿通孔と、
前記中央挿通孔に摺動自在に挿通して設けられ、基端側が前記主動ブロックにより押動され、先端側が前記中央従動ブロックの押圧方向側の前記ワーク持着部の中央面より突出する押出ブロックと、
前記中央従動ブロックと前記押出ブロックとの間に介設され、前記押出ブロックを押圧方向と逆方向に付勢する第3バネと、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、主動ブロックに対し押圧方向に押圧力を入力して主動ブロックが押圧方向に進行すると、押出ブロックは主動ブロックによって押圧方向に押動され、押出ブロックの先端側が、第2のワーク(W2)に嵌持された照準用アタッチメントに突き当たって押圧し、照準用アタッチメントは第2のワーク(W2)の開口部(H2)から抜出され、第1のワーク(W1)の開口部(H1)を透通して押圧方向へ押出除去される。これにより、圧着工程の後に照準用アタッチメントを別途除去する作業が省略される。
【0019】
本発明に係る位置決圧着工具は、開口部が貫通形成された第2のワークの圧着面を、開口部が貫通形成された第1のワークの圧着面に対して、前記第1のワークの開口部の位置に対する前記第2のワークの開口部の相対位置が所定位置となるように圧着する位置決圧着工具であって、前記第1又は2の構成の位置決圧着機構を備えたことを特徴とする。
【0020】
この構成により、高い位置決め精度が要求される圧着作業を容易かつ確実に実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、主動ブロックによって第2のワークの開口縁近傍を押圧し、各周辺従動ブロックによってその縁辺領域を押圧するとともに、各周辺従動ブロックが互いに独立に動いて押圧面の形状に適応して押圧調整を可能としたことで、第1のワークが弾性のある曲面状であっても、第2のワークの開口の中心位置を第1のワーク上面の所定の位置となるように精度良く圧着することが可能となる。また、第1のワークが固定されているか移動可能かに関わらず圧着作業を行うことが可能となる。
【0022】
また、中央押圧面と周辺押圧面との位置関係を、最初に中央押圧面が第2のワークW2の上面に当接した後に、各周辺押圧面が第2のワークW2の上面に当接するような位置関係とすれば、(1)中央ロッドによる軸芯合わせ、(2)第2のワークの開口近傍領域の圧着、(3)第2のワークの縁辺領域の圧着、というように、段階を経て位置決め圧着作業が実行され、より精度良く位置決め圧着作業を行うことが可能となる。
【0023】
また、第2のワークの開口部内に照準用アタッチメントを嵌合挿入して、第1のワーク(W1)及び第2のワーク(W2)の開口部(H1,H2)の相対位置の位置決めは照準用アタッチメントにより行うことにしたことで、第1のワーク(W1)の開口(H1)が第2のワーク(W2)の開口(H2)よりも大きい場合であっても、照準用アタッチメントを第1のワーク(W1)の開口(H1)に合わせた大きさにすれば、精度のよい位置決圧着することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例1に係る位置決圧着機構の構成を表す図である。
図2】本実施例に係る位置決圧着機構1の圧着動作を表す図である。
図3】本実施例に係る位置決圧着機構1の圧着動作を表す図である。
図4】第1のワークW1の圧着面F1aが凹面の場合における位置決圧着機構1の圧着動作を表す図である。
図5】本発明の実施例1に係る位置決圧着機構の変形例を表す図である。
図6】本発明の実施例2に係る位置決圧着工具の側面図である。
図7】本発明の実施例2に係る位置決圧着工具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1に係る位置決圧着機構の構成を表す図である。図1において、図1(a)は位置決圧着機構1に第2のワークW2を装着した状態を示し、図1(b)は位置決圧着機構1から第2のワークW2を外した状態を表している。位置決圧着機構1は、開口部H2が貫通形成された第2のワークW2の圧着面F2aを、開口部H1が貫通形成された第1のワークW1の圧着面F1aに対して、第1のワークW1の開口部H1の位置に対する第2のワークW2の開口部H2の相対位置が所定位置となるように圧着するための機構である。第1のワークW1の開口部H1及び第2のワークW2の開口部H2は、必ずしも円形である必要はなく、任意形状の開口である。また、第1のワークW1の圧着面F1a及び第2のワークW2の圧着面F2aは平面である必要はなく、曲面であってもよい。
【0027】
以下では、第2のワークW2に対面する第1のワークW1の側面を圧着面F1a、第1のワークW1に対面する第2のワークW2の側面を圧着面F2a、第2のワークW2の側面のうち圧着面F2aと反対側の面を押圧面F2bと呼ぶ。
【0028】
図1に示したように、本実施例の位置決圧着機構1は、主動ブロック2、中央従動ブロック3、第1バネ4、照準用アタッチメント5、周辺従動ブロック6、第2バネ7、押出ブロック8、第3バネ9を備えている。主動ブロック2は、一の押圧方向(図1(a)の矢印Aの方向)の押圧力を入力するブロックである。「押圧方向」とは、押圧力の方向である。「ブロック」とは、一体として変位する機械要素を意味する。中央従動ブロック3は、主動ブロック1の押圧方向側に、移動方向が押圧方向と平行な方向に規制された状態で、一定のストローク範囲内で移動自在に配設されたブロックである。中央従動ブロック3の押圧方向側には、第2のワークW2が着脱自在に持着される部位であるワーク持着部3aが形成されている。「押圧方向側」とは、主動ブロック2に入力される押圧力の方向の側端の側を意味する。また、主動ブロック2に押圧力を入力する側を「入圧側」という(図1(a)参照)。ワーク持着部3aの形状は、第2のワークW2が嵌め込み可能な形状に形成されている。図1では、第2のワークW2の押圧面F2bの側の開口部H2の周囲にボス部B2が突出形成されており、ワーク持着部3aは、中央にこのボス部B2が嵌め込み可能な凹窪部が形成されている。ワーク持着部3aの形状については、第2のワークW2の開口部H2の周囲の形状に応じて、第2のワークW2が持着できるような形状であればよい。また、図1の構成とは異なるが、ワーク持着部3aに磁石(永久磁石又は電磁石)を実装し照準用アタッチメント5を強磁性体とすることによって、照準用アタッチメント5が装着された第2のワークW2がワーク持着部3aに磁力により磁力によって持着されるような構成とすることも可能である。
【0029】
ワーク持着部3aの押圧方向側先端に位置する部位の面は、第2のワークW2がワーク持着部3aに持着された状態において、第2のワークW2の開口部H2周辺の押圧面F2bに当設する。この面を、中央押圧面3bと呼ぶ。中央押圧面3bの中央には、中央挿通孔3cが貫設されている。中央挿通孔3cは、中央従動ブロック3cの主動ブロック3に対面する側から、該中央従動ブロック3cの押圧方向側のワーク持着部3aの中央まで、押圧方向に直線状に貫通形成された貫通孔である。
【0030】
第1バネ4は、主動ブロック2に入力される押圧力を中央従動ブロック3に伝達するとともに、中央従動ブロック3を押圧方向に付勢するバネである。周辺従動ブロック6は、主動ブロック2の押圧方向側に、ワーク持着部3aを取り囲むように複数配設されたブロックである。各周辺従動ブロック6は、移動方向が主動ブロック2の押圧方向と平行な方向に規制された状態で、一定のストローク範囲内で移動自在に配設されている。
【0031】
尚、周辺従動ブロック6の数には特に限定はなく、ワークW1,W2の形状に応じて適宜決めることができる。また、ワークW1,W2に加わる押圧力をなるべく均一にするためには、各周辺従動ブロック6は、主動ブロック2及び中央従動ブロック3の中心軸に対して対称に配設することが好ましい。
【0032】
各周辺従動ブロック6の押圧方向側の先端の面を周辺押圧面6aといい、第2のワークW2の押圧面に対向しており、主動ブロック2から押圧力が入力された際に、第2のワークW2の押圧面の、中央押圧面が当設する部位の周辺部位に当設する。其々の周辺従動ブロック6に対しては、第2バネ7が設けられている。第2バネ7は、各周辺従動ブロック6の其々に対して、主動ブロック2との間に介設されている。これらの第2バネ7は、主動ブロック2へ入力される押圧力を周辺従動ブロック6へ伝達するとともに、該周辺従動ブロック6を押圧方向に付勢するバネである。
【0033】
中央従動ブロック3の中央挿通孔3cには、該中央挿通孔3cを貫通するように、押出ブロック8が摺動自在に設けられている。押出ブロック8の基端側(入圧側)は、中央従動ブロック3の入圧側の面から突出しており、この基端側の端面は、主動ブロック2から押圧力が入力された際に、主動ブロック2の押圧方向側の面に当設する。一方、押出ブロック8の先端側(押圧方向側)は、中央従動ブロック3の押圧方向側に形成されたワーク持着部3aの凹窪部の中央から突出しており、この先端側の端面は、主動ブロック2から押圧力が入力された際に、後述する照準用アタッチメント5の入圧側の面に当設する。中央従動ブロックと前記押出ブロックとの間には、第3バネ9が介設されており、この第3バネ9は、押出ブロック8を押圧方向と逆方向に押し戻すように付勢する。
【0034】
照準用アタッチメント5は、基端側(入圧側)の部分(以下、嵌持部5aという。)が第2のワークW2の開口部H2内に着脱自在に嵌持されるとともに、先端側(押圧方向側)の部分(以下、挿入部5bという。)が第1のワークW1の開口部H1内に嵌合挿入されるブロックである。照準用アタッチメント5の基端側の嵌持部5aは、第2のワークW2の押圧方向側から第2のワークW2の開口部H2内に嵌め込むことで、第2のワークW2に嵌持される。照準用アタッチメント5の先端側の挿入部5bは、第1のワークW1の開口部H1内に恰度合うように嵌合し、且つ開口部H1を入圧側から押圧方向側まで挿通可能な形状に形成されている。また、照準用アタッチメント5は、嵌持部5aが挿入部5bと同じ太さにもしくは挿入部5bよりも細く形成されており、照準用アタッチメント5全体が、第1のワークW1の開口部H1を入圧側から押圧方向側へ透通させることが可能である。
【0035】
以上のように構成された本実施例に係る位置決圧着機構について、以下その動作を説明する。図2及び図3は、本実施例に係る位置決圧着機構1の圧着動作を表す図である。図2(a),図2(b),図3(a),図3(b)の順に動作する。第1のワークW1の開口部H1に対し第2のワークW2の開口部H2の相対位置が所定の位置となるように、第2のワークW2を第1のワークW1へ位置決圧着する。
【0036】
(ステップ1)
まず、図2(a)に示すように、第2のワークW2の開口部H2に、圧着面F2aの側から、照準用アタッチメント5の嵌持部5aを嵌め込んで、第2のワークW2の圧着面F2a側に照準用アタッチメント5を持着させる。そして、照準用アタッチメント5が嵌持された第2のワークW2のボス部B2を、中央従動ブロック3のワーク持着部3aに嵌着させる。この状態においては、主動ブロック2には押圧力は入力されておらず、第1バネ4、第2バネ7、第3バネ9は最大限まで伸長した状態にある。各周辺従動ブロック6の先端の周辺押圧面6aは、第2のワークW2の押圧面F2bから離隔した状態にあり、押出ブロック8の先端の押出押圧面8aは照準用アタッチメント5の嵌持部5aの基端側の端面から離隔した状態にある。またこのとき、中央従動ブロック3の中央押圧面3bは、第2のワークW2の開口部H2周辺の押圧面F2bに当設した状態となる。
【0037】
このように、圧着を行う前に照準用アタッチメント5が嵌持された第2のワークW2を、中央従動ブロック3のワーク持着部3aに持着させることで、位置決圧着機構1を位置決圧着工具に適用した場合には、照準用アタッチメント5及び第2のワークW2が持着された位置決圧着工具ごと持ち運ぶことが出来、作業を行う上での利便性が高くなり、使い勝手がよくなる。
【0038】
また、ここでは、作業手順を、先に、照準用アタッチメント5が嵌持された第2のワークW2をワーク持着部3aに持着させることとして説明するが、先に、照準用アタッチメント5が嵌持された第2のワークW2を第1のワークW1の開口部H1に嵌合させて位置決めをしてから、その後ワーク持着部3aに持着させる作業手順とすることも可能である。
【0039】
(ステップ2)
次に、図2(b)に示すように、第1のワークW1の圧着面F1aの側から開口部H1に、第2のワークW2及び照準用アタッチメント5を装着した位置決圧着機構1を近づけ、照準用アタッチメント5の挿入部5bを開口部H1に挿入し、第1のワークW1の圧着面F1aに第2のワークW2の圧着面F2aを当設させる。このとき、照準用アタッチメント5の挿入部5bは、第1のワークW1の開口部H1内に恰度合うような形状に形成されているので、挿入部5bを開口部H1に挿入することによって、自動的に、第1のワークW1に対する第2のワークW2の相対位置が所定位置に位置決めされる。さらに、開口部H1及び挿入部5bの形状が円形ではければ、第1のワークW1に対する第2のワークW2の相対的な向きも所定の向きに位置決めされる。
【0040】
(ステップ3)
次に、図3(a)に示すように、主動ブロック2に矢印Aの方向(押圧方向)に押圧力を入力する。このとき、中央従動ブロック3の中央押圧面3bは、第2のワークW2の押圧面F2bに当設しており、第2のワークW2の圧着面F2aは第1のワークW1の圧着面F1aに当設しているので、第1のワークW1の押止により、中央従動ブロック3は押圧方向に変位することはできない。従って、主動ブロック2が押圧力によって押圧方向Aに変位すると、第1バネ4が圧縮され、主動ブロック2から中央従動ブロック3へ押圧力が加わる。これにより、中央従動ブロック3の中央押圧面3bから第2のワークW2の開口部H2周囲の押圧面F2bに押圧力が加わり、連関して第2のワークW2の開口部H2周囲の圧着面F2aが、第1のワークW1の開口部H1周囲の圧着面F1aに圧着される。
【0041】
一方、各周辺従動ブロック6は、第2バネ7により主動ブロック2と聯結されているので、主動ブロック2が押圧方向Aへ変位することに連動して押圧方向Aへ変位する。そして、一定の距離だけ変位した段階で、各周辺従動ブロック6の先端側の周辺押圧面6aは、第2のワークW2の押圧面F2bの、中央押圧面3bが当設する部位(以下「中央押圧部位」という。)の周辺部位(以下「周辺押圧部位」という。)に到達し当接する(図3(a)参照)。
【0042】
さらに、押出ブロック8の基端側の端面8bは、主動ブロック2が押圧方向Aへ変位することによって押出ブロック8に押圧され、連関して第3バネ9を圧縮しつつ押出ブロック8は押圧方向Aへ変位する。そして、一定の距離だけ変位した段階で、押出ブロック8の先端側の押出押圧面8aは、照準用アタッチメント5の嵌持部5aの基端側端面に到達し当接する(図3(a)参照)。
【0043】
(ステップ4)
次に、図3(b)に示すように、さらに主動ブロック2が押圧方向Aに範囲すると、第1バネ4はさらに圧縮されて、主動ブロック2から中央従動ブロック3へさらに大きい押圧力が加わる。これにより、第2のワークW2の開口部H2周囲の圧着面F2aが、第1のワークW1の開口部H1周囲の圧着面F1aにさらに強く圧着される。
【0044】
また、各周辺従動ブロック6の周辺押圧面6aは、第2のワークW2の押圧面F2bに当設しており、第2のワークW2の圧着面F2aは第1のワークW1の圧着面F1aに当設しているので、第1のワークW1の押止により、周辺従動ブロック6は押圧方向に変位することはできない。従って、主動ブロック2が押圧力によって押圧方向Aに変位すると、第2バネ7が圧縮され、主動ブロック2から各周辺従動ブロック6へ押圧力が加わる。これにより、各周辺従動ブロック6の周辺押圧面6aから第2のワークW2の押圧面F2bの周辺押圧部位に押圧力が加わり、連関して第2のワークW2の周辺押圧部位の圧着面F2aが、第1のワークW1の開口部H1周囲の圧着面F1aに圧着される。このようにして、最初に、開口部H1,H2の近旁の第2のワークW2の中央押圧部位が先行して第1のワークW1の圧着面F1aに圧着され、その後、第2のワークW2の中央押圧部位周囲の周辺押圧部位が、次第に圧着力を強めつつ第1のワークW1の圧着面F1aに圧着されていく。このように、段階的を踏んで時間差で中央押圧部位周囲から周辺押圧部位へと圧着がされることにより、圧着の際に第1のワークW1及び第2のワークW2の開口部H1,H2付近に押圧力による歪みが生じても、その歪みによる剪断力や曲げモーメントは中央押圧部位周囲から周辺押圧部位乃至さらにその周辺部位へと逃がされるため、開口部H1,H2周辺での均等で且つ歪みによる位置ずれの極めて少ない圧着工程を実現することが出来る。
【0045】
一方、押出ブロック8の押出押圧面8aは、照準用アタッチメント5の嵌持部5aの基端側端面に当設しており、押出ブロック8は第3バネ9を介して主動ブロック2によって押圧されるため、照準用アタッチメント5には押出ブロック8により、徐々に大きくなる押圧方向Aの押圧力が加わる。そして、この押圧力が一定の限界を超えると、照準用アタッチメント5は第2のワークW2の開口部H2から抜出され、第1のワークW1の開口部H1を透通して押圧方向Aへ押出除去される。これにより、圧着後に照準用アタッチメント5を別途除去する作業が省略される。
【0046】
次に、第1のワークW1の圧着面F1aが平面ではない場合について説明する。図4は、第1のワークW1の圧着面F1aが凹面の場合における位置決圧着機構1の圧着動作を表す図である。まず、図2(b)で説明した場合と同様に、中央従動ブロック3のワーク持着部3aに、第2のワークW2を介して持着された照準用アタッチメント5の挿入部5bを、第1のワークW1の開口部H1に挿入することにより、自動的に、第1のワークW1に対する第2のワークW2の相対位置が所定位置に位置決めされる(図4(a))。このとき、第1のワークW1の圧着面F1aは凹面であり、第2のワークW2の圧着面F2aは平面であるので、圧着面F1aと圧着面F2aは完全には密着していない状態にある。続いて、主動ブロック2に矢印Aの押圧方向に押圧力を入力すると、中央従動ブロック3のワーク持着部3aの先端の中央押圧面3bが、第2のワークW2の開口部H2周囲の押圧面F2bを押圧方向に押し込み、第2のワークW2が第1のワークW1の圧着面F1aに沿って撓み、圧着面F1aと圧着面F2aが完全に密着する(図4(b))。このとき、周辺従動ブロック6の周辺押圧面6aは、まだ第2のワークW2の押圧面F2bまでは達していないため、中央押圧面3bが当設する中央押圧部位のみに押圧力が加わっている。そのため、第2のワークW2の縁辺領域には押圧力はかかっていないため、第2のワークW2の撓みに伴う位置ずれは防止される。そして、さらに主動ブロック2が押圧方向Aに押し込まれると、各周辺従動ブロック6の周辺押圧面6aが、第2のワークW2の中央押圧部位の周囲の周辺押圧部位を押圧するようになり、第2のワークW2の全体が第1のワークW1に圧着される(図4(c))。このとき、各周辺従動ブロック6は互いに独立に動くため、第1のワークW1の表面がどのような曲面であっても、また、第1のワークW1の圧着面F1aに押圧の際の押圧力により歪みが生じたとしても、第1のワークW1の圧着面F1aの形状に適應して各周辺従動ブロック6が第2のワークW2の周辺押圧部位を押圧し、圧着面F1aの形状に応じて正確に圧着工程が実行される。尚、各周辺従動ブロック6は、第1のワークW1の表面形状に順応して、第2のワークW2をより均等に押圧できるようにするため、具体的にこの位置決圧着機構1を適用する場合には、各周辺従動ブロック6の先端の部分(押圧ヘッド6b(図6図7参照))を自由に回動できるように構成することが好ましい。
【0047】
さらに、本実施例の位置決圧着機構1の変形例として、図5に示した様な構成とすることも出来る。図5の位置決圧着機構1は、照準用アタッチメント5の挿入部5bの先端部分に傾斜状のガイド部5cを設けた点、主動ブロック2に対する中央従動ブロック3の変位を検出するための距離センサ20(変位検出手段)を設けた点、主動ブロック2と各周辺従動ブロック6との間にスプリングシャフト2cを設けた点、第1バネ4の位置を中央従動ブロック3と各周辺従動ブロック6との間に移動した点、第2バネ7の位置を主動ブロック2と各スプリングシャフト2cとの間に移動した点が、図1の場合と相違している。ここで、各第1バネ4と各第2バネ7は、何れも圧縮バネである。第1バネ4のバネ定数は、第2バネ7のバネ定数よりも小さくなるように設定されている。スプリングシャフト2cの押圧方向側先端の押圧ヘッド2dと、それに対向する周辺従動ブロック6の入圧側先端の入圧ヘッド6cとは常に接しており、第1バネ4と第2バネ7の弾性力によって押し合った状態にある。
【0048】
照準用アタッチメント5の挿入部5bの先端のガイド部5cは、照準用アタッチメント5の先端に向かうに従って、挿入部5bの断面が縮小するように傾斜状に形成される。このガイド部5cは、照準用アタッチメント5を第1のワークW1の開口部H1に挿入していく際に、照準用アタッチメント5を適切な所定の位置へと誘導するために設けられている。このガイド部5cを設けることで、照準用アタッチメント5の先端を開口部H1へ挿入しやすくなると共に、位置決め精度を向上させることが出来る。
【0049】
また、距離センサ20によって、主動ブロック2に対する中央従動ブロック3の変位量(図5における距離ds1の変化量)を検出することによって、第1のバネ4による押圧力を検出することが出来る。これにより、距離センサ20の検出する変位が所定の目標値まで達した時点で、主動ブロック2への押圧入力を停止することで、第1のワークW1に第2のワークW2を圧着する際の押圧力を正確に調節することが可能となる。また、多数回の位置決圧着作業を行う際には、規定の押圧力に達したかを毎回正確に確認できるので、押圧力の不足(中途半端な押し)や押圧力の過剰(強すぎる押し)が生じることを防止して、押圧力のムラ(バラツキ)をなくすことが可能となり、位置決圧着作業により製造される製品の品質を向上させることが出来る。
【0050】
照準用アタッチメント5を第1のワークW1に挿入して第1のワークW1の圧着面F1aと第2のワークW2の圧着面F2aが当接した状態で主動ブロック2に押圧方向Aの押圧力が入力されると、各第1バネ4を介して各スプリングシャフト2cが押圧方向Aへ押圧される。スプリングシャフト2cの押圧ヘッド2dと周辺従動ブロック6の入圧ヘッド6cとは接しているため、このスプリングシャフト2cに入圧される押圧力はそのまま周辺従動ブロック6へ伝達される。この押圧力により、第1バネ4と第2バネ7の双方が圧縮されるが、第1バネ4のバネ定数は第2バネ7のバネ定数よりも小さくなるように設定されているので、第1バネ4の方が大きく圧縮される。また、第1バネ4の圧縮によって中央従動ブロック3が押圧方向Aへ押圧される。第1バネ4の圧縮によって中央従動ブロック3に加わる押圧力は、周辺従動ブロック6の周辺押圧面6aが第2のワークW2の押圧面F2bに到達するまでは、主動ブロック2が押圧方向Aへ変位すると共に上昇し、周辺押圧面6aが第2のワークW2の押圧面F2bに突き当たった後は一定となる。周辺押圧面6aが第2のワークW2の押圧面F2bに突き当たると、周辺従動ブロック6はそれ以上変位できないので、第1バネ4の圧縮はそこで止まり、今度は第2バネ7のみが圧縮される。第2バネ7が圧縮されると、その弾性力がスプリングシャフト2cの押圧ヘッド2dを介して周辺従動ブロック6に伝達されるので、周辺従動ブロック6の周辺押圧面6aから第2のワークW2の押圧面F2bに加わる押圧力は、主動ブロック2が押圧方向Aへ変位すると共に上昇することになる。
【実施例2】
【0051】
図6は、本発明の実施例2に係る位置決圧着工具の側面図である。図7は、本発明の実施例2に係る位置決圧着工具の断面図である。図6図7において、位置決圧着工具10の各構成部分のうち、実施例1の位置決圧着機構1(図1)の構成部分に対応する部分には同符号が付されている。図6図7において、主動ブロック2の基端側には、円柱状の把手2aが形成されており、位置決圧着工具10を使用する作業者はこの把手2aを握って位置決圧着作業を行う。
【0052】
中央従動ブロック3の押圧方向側には、凹窪状のワーク持着部3aが形成されている(図7参照)。このワーク持着部3aは、照準用アタッチメント5を装着した第2のワークW2のボス部B2を磁着可能な構造に形成されており、磁力によりボス部B2をワーク持着部3aに付着させることで、第2のワークW2はワーク持着部3aに持着される。このため、ワーク持着部3aの内部には磁石が設けられており、照準用アタッチメント5は強磁性体によって構成されている。中央従動ブロック3の入圧側の端面には、押圧方向Aに平行に円柱棒状のリニアシャフト3d,3dが突出して設けられており、このリニアシャフト3d,3dの入圧側の端部は、主動ブロック2の押圧方向側の端面に設けられたリニアブッシュ2b,2b(転がり案内の円筒状の直動機構。リニアボール軸受。)に摺動自在に挿嵌されている(図7参照)。そして、各リニアブッシュ2bの筒内には、リニアシャフト3dの先端面を押圧方向側に押圧付勢する第1バネ4が設けられている。
【0053】
照準用アタッチメント5の押圧方向側の端面の長手方向の両端には、先端が円錐状に尖った尖頭円柱状のガイド部5c,5cが突出して設けられている。このガイド部5c,5cは、照準用アタッチメント5を第1のワークW1の開口部H1に挿入する際のガイドとして機能する。ガイド部5c,5cを設けることで、第1のワークW1の開口部H1へ照準用アタッチメント5を挿入する作業工程が容易となる。
【0054】
周辺従動ブロック6は、押圧方向Aに平行な断面円形の金属棒状体で構成されている。周辺従動ブロック6は、その中程の部分が中央従動ブロック3の側部に設けられたリニアブッシュ3eに摺動自在に挿通されている。周辺従動ブロック6の押圧方向側の端部には、拡径した円柱状の押圧ヘッド6bが設けられており、この押圧ヘッド6bの先端面が周辺押圧面6aとなっている。周辺従動ブロック6の入圧側の端部には、六角ナットからなる入圧ヘッド6cが設けられており、入圧ヘッド6cとリニアブッシュ3eの間には、周辺従動ブロック6の中心軸と同軸に戻しバネ7aが設けられている。戻しバネ7aは入圧ヘッド6cを入圧側に向かって付勢する。また、主動ブロック2の押圧方向側の各周辺従動ブロック6に対向する位置には、押圧方向側に突出してスプリングシャフト2cが設けられている。このスプリングシャフト2cの押圧方向側の先端には、六角ナットからなる押圧ヘッド2dが設けられており、押圧ヘッド2dは対向する周辺従動ブロック6の入圧ヘッド6cに突合している。スプリングシャフト2cの入圧ヘッド2dは、その中心軸に同軸に環装された第2バネ7により、押圧方向Aに付勢されている。
【0055】
押出ブロック8は、中央従動ブロック3の中心軸に沿って押圧方向Aに平行に形成された中央挿通孔3cに、摺動自在に貫装された、金属棒状体で構成されている。押出ブロック8の押圧方向側の端部には、拡径した円柱状の押圧ヘッド8bが設けられており、この押圧ヘッド8bの先端面が押出押圧面8aとなっている。押出ブロック8の入圧側の端部には、六角ナットからなる入圧ヘッド8cが設けられており、入圧ヘッド8cと中央挿通孔3cの間には、押出ブロック8の中心軸と同軸に第3バネ9が設けられている。第3バネ9は入圧ヘッド8cを入圧側に向かって付勢する。また、主動ブロック2の押圧方向側の押出ブロック8に対向する位置には、押圧方向側に突出してスプリングシャフト2eが設けられている。このスプリングシャフト2cの押圧方向側の先端には、六角ナットからなる押圧ヘッド2fが設けられており、押圧ヘッド2fは対向する押出ブロック8の入圧ヘッド8cに突合している。スプリングシャフト2eの入圧ヘッド2fは、その中心軸に同軸に環装された戻しバネ9aにより、押圧方向Aに付勢されている。
【0056】
このように、実施例1の位置決圧着機構1を利用した位置決圧着工具10によって位置決圧着作業を行う場合、作業者は、最初に中央従動ブロック3のワーク持着部3aに、照準用アタッチメント5を持着した第2のワークW2を嵌着する。そして、作業者は、主動ブロック2の把手2aを手に持って、照準用アタッチメント5を、第1のワークW1の開口部H1(図1参照)に挿入する。この際、照準用アタッチメント5に設けられた尖頭円柱状のガイド部5c,5cの先端から開口部H1に挿入されていくため、挿入の際にガイド部5c,5cによって照準用アタッチメント5は適切な位置へと誘導され、容易に精確な位置決めがなされる。そして、作業者は、主動ブロック2の把手2aを持って押圧方向Aへ押圧力を入圧することによって、位置決圧着作業を行うことが出来る。尚、この際の位置決圧着工具10の動作については、実施例1で説明した通りである。
【符号の説明】
【0057】
1 位置決圧着機構
2 主動ブロック
2a 把手
2b リニアブッシュ
2c,2e スプリングシャフト
2d,2f 押圧ヘッド
3 中央従動ブロック
3a ワーク持着部
3b 中央押圧面
3c 中央挿通孔
3d リニアシャフト
3e リニアブッシュ
4 第1バネ
5 照準用アタッチメント
5a 嵌持部
5b 挿入部
5c ガイド部
6 周辺従動ブロック
6a 周辺押圧面
6b 押圧ヘッド
6c 入圧ヘッド
7 第2バネ
7a 戻しバネ
8 押出ブロック
8a 押出押圧面
8b 押圧ヘッド
8c 入圧ヘッド
9 第3バネ
9a 戻しバネ
10 位置決圧着工具
20 距離センサ
W1 第1のワーク
F1a 圧着面
H1 開口部
W2 第2のワーク
F2a 圧着面
F2b 押圧面
H2 開口部
B2 ボス部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7