IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -モータ 図1
  • -モータ 図2
  • -モータ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/167 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
H02K5/167 B
H02K5/167 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017248701
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019115225
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000220125
【氏名又は名称】東京パーツ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西舘 正弘
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-063009(JP,A)
【文献】特開2007-185068(JP,A)
【文献】特開2017-034740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを有するロータと、前記シャフトの径方向を支持する多孔質含油軸受と、上端が開口し内部に前記多孔質含油軸受を支持する軸受ハウジングとを備えたモータにおいて、
前記軸受ハウジング内に、前記多孔質含油軸受の下端面に当接する下側含油フェルトと前記多孔質含油軸受の上端面に当接する上側含油フェルトが収容されており、
前記上側含油フェルトは、前記下側含油フェルトよりも密度が小さい、
ことを特徴とするモータ。
【請求項2】
シャフトを有するロータと、前記シャフトの径方向を支持する多孔質含油軸受と、上端が開口し内部に前記多孔質含油軸受を支持する軸受ハウジングとを備えたモータにおいて、
前記軸受ハウジング内に、前記多孔質含油軸受の下端面に当接する下側含油フェルトと前記多孔質含油軸受の上端面に当接する上側含油フェルトが収容されており、
前記上側含油フェルトは、前記下側含油フェルトよりも外径が大きい、
ことを特徴とするモータ。
【請求項3】
シャフトを有するロータと、前記シャフトの径方向を支持する多孔質含油軸受と、上端が開口し内部に前記多孔質含油軸受を支持する軸受ハウジングとを備えたモータにおいて、
前記軸受ハウジング内に、前記多孔質含油軸受の下端面に当接する下側含油フェルトと前記多孔質含油軸受の上端面に当接する上側含油フェルトが収容されており、
前記シャフトの外表面には、径方向から見て前記上側含油フェルトと重なる位置に環状溝が形成されている、
ことを特徴とするモータ。
【請求項4】
前記軸受ハウジングは、内面に段差部を有し、
前記下側含油フェルトは、前記段差部の上に載置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項5】
前記軸受ハウジングは、内面に段差部を有し、
前記段差部の上に抜止め部材が載置され、
前記下側含油フェルトは、前記抜止め部材の上に載置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記上側含油フェルトと前記下側含油フェルトは、環状部材である、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
前記上側含油フェルトの上に樹脂ワッシャが配され、
前記軸受ハウジングの上端面にキャップが装着されている、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質含油軸受を用いたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に多孔質含油軸受を用いたモータの寿命は、多孔質含油軸受の寿命によって大きく影響される。この多孔質含油軸受は油切れによって軸受寿命が決定してしまうため、油を補給する補油部材が別途用いられることがある。
【0003】
例えば、特許文献1乃至3には、多孔質含油軸受(スリーブ)が保持されるスリーブ保持部の内周面に環状の凹部を設け、この凹部に含油フェルト(補油部材)を配設した軸受ユニットを用いたモータが記載されている。
特許文献1乃至3に記載のモータでは、含油フェルトから染み出した潤滑油は多孔質含油軸受へと供給され、スリーブ保持部内に十分な量の潤滑油が確保されるため、高温環境下においても潤滑油の枯渇を防止して、長寿命化を図ることができるとされている。
また、特許文献1に記載のモータでは、スリーブ保持部の開口から離れた位置の内周面に環状の凹部を設け、この凹部に含油フェルトを配置した場合には、シャフト(回転軸)が水平方向を向くようにして固定される(すなわち、横向きに固定される)場合でも、潤滑油の外部への飛散を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-151695号公報
【文献】特開2005-278309号公報
【文献】特開2007-198420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1乃至3に記載のいずれのモータにおいても、シャフトの方向によっては含油フェルトと多孔質含油軸受との間の潤滑油の循環が不十分になり、モータの十分な長寿命化を図ることができない問題がある。また、シャフトが水平方向よりも下向きに固定される場合には、潤滑油の外部への飛散を抑制することが難しい。
【0006】
また、特許文献1乃至3に記載のいずれのモータにおいても、スリーブ保持部の内周面に環状の凹部を設ける必要があるため、スリーブ保持部の加工が難しく、また、スリーブ保持部として安価な樹脂の一体成形品を用いることが難しいといった問題がある。
さらに、特許文献1乃至3に記載のいずれのモータにおいても、スリーブ保持部の内周面に設けた環状の凹部内に含油フェルトを挿入した後、含油フェルトの内周面と多孔質含油軸受の外周面が十分に当接するようにスリーブ保持部の内側に多孔質含油軸受を挿入する必要がある。このため、含油フェルトの内径を多孔質含油軸受の外径よりも小さく設定する必要があり、スリーブ保持部への含油フェルトや多孔質含油軸受の装着に手間が掛かるとともに、含油フェルトの装着状態の管理が難しく、モータの品質が不安定になる恐れがある。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決し得るモータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記の課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用することができる。また、本発明の態様あるいは技術的特徴は以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものである。
【0009】
本発明の一実施態様は、
シャフトを有するロータと、前記シャフトの径方向を支持する多孔質含油軸受と、上端が開口し内部に前記多孔質含油軸受を支持する軸受ハウジングとを備えたモータにおいて、
前記軸受ハウジング内に、前記多孔質含油軸受の下端面に当接する下側含油フェルトと前記多孔質含油軸受の上端面に当接する上側含油フェルトが収容されており、
前記上側含油フェルトは、前記下側含油フェルトよりも密度が小さい、
ことを特徴とする。
また、本発明の他の実施態様は、
シャフトを有するロータと、前記シャフトの径方向を支持する多孔質含油軸受と、上端が開口し内部に前記多孔質含油軸受を支持する軸受ハウジングとを備えたモータにおいて、
前記軸受ハウジング内に、前記多孔質含油軸受の下端面に当接する下側含油フェルトと前記多孔質含油軸受の上端面に当接する上側含油フェルトが収容されており、
前記上側含油フェルトは、前記下側含油フェルトよりも外径が大きい、
ことを特徴とする。
また、本発明の他の実施態様は、
シャフトを有するロータと、前記シャフトの径方向を支持する多孔質含油軸受と、上端が開口し内部に前記多孔質含油軸受を支持する軸受ハウジングとを備えたモータにおいて、
前記軸受ハウジング内に、前記多孔質含油軸受の下端面に当接する下側含油フェルトと前記多孔質含油軸受の上端面に当接する上側含油フェルトが収容されており、
前記シャフトの外表面には、径方向から見て前記上側含油フェルトと重なる位置に環状溝が形成されている、
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の実施態様では、更なる特徴として、
「前記軸受ハウジングは内面に段差部を有し、前記下側含油フェルトは前記段差部の上に載置されていること」、
「前記軸受ハウジングは内面に段差部を有し、前記段差部の上に抜止め部材が載置され、前記下側含油フェルトは前記抜止め部材の上に載置されていること」、
前記上側含油フェルトと前記下側含油フェルトは環状部材であること」、
前記上側含油フェルトの上に樹脂ワッシャが配され、前記軸受ハウジングの上端面にキャップが装着されていること」、
を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明のモータによれば、多孔質含油軸受の上下の両端面に含油フェルトを直接当接させたことにより、シャフトの方向によらず含油フェルトと多孔質含油軸受との間の潤滑油の循環が効率良く十分に行なわれ、モータの長寿命化を図ることができる。
また、含油フェルトを多孔質含油軸受の上下の両端面に当接させるようにしているため、軸受ハウジングの内周面に含油フェルトを収容する凹部を設ける必要がなく、軸受ハウジングの加工が容易であり、また、軸受ハウジングとして安価な樹脂の一体成形品を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態例に係るモータの断面図である。
図2図1のモータにおける軸受部の断面図である。
図3】本発明の第2の実施形態例に係る軸受部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態例を、図面を参照して説明する。
なお、本明細書では、図面の上方向を「上側」と呼び、下方向を「下側」と呼ぶ。また、上下方向は、モータが実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。また、シャフトの中心軸に平行な方向を「軸方向」と呼び、中心軸を中心とする径方向を「径方向」と呼ぶ。
【0014】
(第1の実施形態例)
本発明の第1の実施形態例を図1及び図2を用いて説明する。
本例のモータは、主に、取付板10と、ステータ20と、ロータ30と、軸受部40で構成されている。
【0015】
取付板10は、表面に印刷回路を形成したいわゆる鉄基板、あるいは鉄基板に印刷配線板を重ねた基板などを用いることができる。取付板10には、後述の駆動用マグネット33と軸方向(図1の上下方向)で対向するようにホール素子(不図示)が設けられており、このホール素子によってロータ30の回転を検出できるようになっている。
【0016】
ステータ20は、ステータコア21、コアカバー22及びコイル23を備えている。
ステータコア21は、中心に開口を有し複数の突極が形成された板状コアの積層体からなり、その表面を絶縁性樹脂からなるコアカバー22で被覆し、このコアカバー22を介して各突極にコイル23が巻かれている。
【0017】
ロータ30は、シャフト31と、シャフト31と一体に回転するロータケース32と、ロータケース32の内側に固定された駆動用マグネット33を備えている。
【0018】
シャフト31は、細長い略円柱状を成し、後述の軸受部40によって回転自在に支持されている。
シャフト31の下端近傍に位置する部分には被係止部31aが形成され、シャフト31の中間よりやや上方に位置する部分には環状溝31bが形成されている。
被係止部31aはシャフト31の外周に形成された断面矩形の環状の凹部で構成されており、環状溝31bはシャフト31の外周に形成された断面三角形の環状の凹部で構成されている。なお、被係止部31aと環状溝31bの断面形状は適宜設計することができる。
【0019】
ロータケース32は、磁性を有する金属板から成り、シャフト31と同軸で円筒状に形成された円筒部32aと、この円筒部32aの上面を覆う平板状の上面部32bを有している。上面部32bの中心には円筒状のバーリング部32cが下方を向くように形成されており、このバーリング部32cにシャフト31の上部が圧入され固定されている。
【0020】
ロータケース32の円筒部32aの内側には、ステータコア21の突極と径方向(図1の左右方向)で対向するように円筒状の駆動用マグネット33が取り付けられている。この駆動用マグネット33は、周方向にN極とS極が交互に複数着磁されている。
【0021】
軸受部40は、ロータ30を回転自在に支持するものであり、軸受ハウジング41と、多孔質含油軸受42と、下側含油フェルト43と、上側含油フェルト44と、スラスト板45と、抜止め部材46と、ワッシャ47と、キャップ48を備えている。
【0022】
軸受ハウジング41は、多孔質含油軸受42を内部に保持して固定するものであり、上端が開口した有底筒状を成している。この軸受ハウジング41は、金属材料の切削品や樹脂の一体成形品などを用いることができ、本例では真鍮製の切削品を用いている。
【0023】
軸受ハウジング41の外周には径方向に突出した鍔41aが形成されており、鍔41aの下面が取付板10の上面に当接し、鍔41aよりも下側の部分が取付板10に設けられた取付孔に挿入されている。この軸受ハウジング41は、圧入やカシメ等によって取付板10に固定される。ステータコア21は、軸受ハウジング41の外周上部に嵌め込まれ、鍔41aの上面に載置された状態で固定されている。
【0024】
軸受ハウジング41の内側には、下端近傍に内径を狭める段差部41bが形成されている。
軸受ハウジング41の上端部には、上方に突き出た環状突起41cと、環状突起41cの外周部分に位置する嵌め込み溝41dが形成されている。
【0025】
多孔質含油軸受42は、潤滑油を媒介としてシャフト31の径方向を回転自在に支持するラジアル軸受であり、筒状の焼結メタルに潤滑油が含浸されている。
多孔質含油軸受42の内表面には、周方向に連なる中逃げ部42aと、中逃げ部42aの上に位置し中逃げ部42aよりも内径が小さい上部摺接部42bと、中逃げ部42aの下に位置し中逃げ部42aよりも内径が小さい下部摺接部42cが形成されている。多孔質含油軸受42の内孔に挿入されたシャフト31は、中逃げ部42aには接触せず、上部摺接部42bと下部摺接部42cに摺接して径方向を回転自在に支持される。このような中逃げ部42aを設けることにより、シャフト31との摺動抵抗を減少させてモータが過熱するのを抑制することができる。
【0026】
下側含油フェルト43と上側含油フェルト44は、多孔質含油軸受42に潤滑油を補給する補油部材であり、多孔質含油軸受42よりも密度が小さく気孔径が大きく含油率が高いものである。
下側含油フェルト43は多孔質含油軸受42の下端面に当接し、上側含油フェルト44は多孔質含油軸受42の上端面に当接し、どちらも円環状に形成されている。
下側含油フェルト43と上側含油フェルト44の外径は、軸受ハウジング41の内径と同一もしくは僅かに大きく設定され、下側含油フェルト43と上側含油フェルト44は軸受ハウジング41内に軽圧入された状態で固定される。
下側含油フェルト43と上側含油フェルト44の内径は、多孔質含油軸受42の上部摺接部42bと下部摺接部42cの内径よりも若干大きく設定され、シャフト31に接触しないようになっている。
【0027】
スラスト板45は、耐摩耗性の樹脂板からなり、軸受ハウジング41内の底部に配されてシャフト31の下端を支持する。
【0028】
抜止め部材46は、リング状のワッシャからなり、軸受ハウジング41の段差部41bの上に載置されている。抜止め部材46の内径部は、シャフト31の被係止部31aに挿入されている。これにより、シャフト31は上方への移動を制限され、ロータ30が軸受部40から抜けるのを防止することができる。
なお、下側含油フェルト43は、この抜止め部材46の上に載置されている。
【0029】
樹脂製のワッシャ47と金属製のキャップ48は、中央に貫通口を有し、この貫通口の直径はいずれもシャフト31の外径よりも若干大きく、シャフト31とワッシャ47との間に僅かな隙間が設けられている。
ワッシャ47は、環状突起41cの内側に圧入や接着等によって固定され、キャップ48は嵌め込み溝41dに圧入等によって装着されている。
【0030】
このように本例のモータでは、多孔質含油軸受42に、多孔質含油軸受42よりも密度が小さく気孔径が大きく含油率が高い含油フェルト43,44を当接させている。このため、含油フェルト43,44より密度が大きい多孔質含油軸受42の毛管力により含油フェルト43,44側から多孔質含油軸受42側に潤滑油が移動し易くなる。特に、多孔質含油軸受42の上下の両端面に含油フェルト43,44を当接させているため、シャフトの方向によらず含油フェルト43,44と多孔質含油軸受42との間の潤滑油の循環が十分に行なわれる。
したがって、本例のモータは、直立状態に限らず水平状態や下向きで使用する場合にも、多孔質含油軸受42から滲み出た潤滑油を含油フェルト43,44を介して多孔質含油軸受42に効率良く循環させることができ、周囲への潤滑油の飛散や、モータの寿命低下を抑制することができる。
【0031】
また、本例のモータでは、上側含油フェルト44と下側含油フェルト43は環状の部材であり、多孔質含油軸受42の上端面と下端面の全周に渡って当接されている。これにより、潤滑油を極めて効率良く循環させることができる。
【0032】
また、シャフト31と多孔質含油軸受42との摺動摩擦力は、通常、下部摺接部42cよりも上部摺接部42bのほうが大きくなり易いため、上部摺接部42b側における潤滑油の移動が激しくなり易い。また、軸受ハウジング41の底部は閉塞されているが、上部はワッシャ47やキャップ48を装着しているもののシャフト31の回転を阻害しない程度の間隙が存在するため、潤滑油の漏洩が危惧される。
そのため、上側含油フェルト44には、下側含油フェルト43よりも密度が小さく気孔径が大きく含油率が高いものを用いることが好ましい。これにより、多孔質含油軸受42のより強い毛管力によって上側含油フェルト44から多孔質含油軸受42側に潤滑油を移動させることでき、上側含油フェルト44から軸受ハウジング外への潤滑油の漏れを効果的に防止することができる。それに加え、下側含油フェルト43の密度を少し高めにすることにより、軸受ハウジング内への多孔質含油軸受42の圧入時に下側含油フェルト43が圧縮変形してしまうのを抑制でき、安定した性能を有するモータを効率良く量産できる。
【0033】
また、本例のモータでは、下側含油フェルト43と上側含油フェルト44を多孔質含油軸受42の上下の両端面に当接させているため、軸受ハウジング41の内周面に含油フェルトを収容する凹部を別途設ける必要がなく、軸受ハウジングの加工が容易であり、また、軸受ハウジングとして安価な樹脂の一体成形品を用いることが可能である。
【0034】
また、本例のモータでは、シャフト31の外表面には、径方向から見て上側含油フェルト44と重なる位置に環状溝31bが形成されている。このため、シャフト31の回転によって多孔質含油軸受42の内周面に滲み出した潤滑油は、多孔質含油軸受42の上端面を超えるとシャフト31の回転に伴う遠心力によって環状溝31bから径方向に飛ばされる。環状溝31bから飛ばされた潤滑油は上側含油フェルト44に効率良く吸収された後、多孔質含油軸受42側に潤滑油が移動して循環する。これにより、潤滑油の漏洩防止とともにモータの長寿命化を図ることができる。
【0035】
また、本例のモータでは、軸受ハウジング41の底部近傍に内径を狭める段差部41bを設け、この段差部41bの上に載置された抜止め部材46の上面に下側含油フェルト43を載置している。このため、段差部41bよりも低い空間部分にシャフト31の最下部を収容して、軸受ハウジング41内においてシャフト31の抜け止めを行うことができる。
【0036】
(第2の実施形態例)
本発明の第2の実施形態例を、図3を用いて説明する。図3において、図2中の部材と同等の部材には同一の符号を付しており、重複する部分については説明を省略する。
【0037】
本例は、主に軸受ハウジング41と上側含油フェルト44の形状が第1の実施形態例と異なる。
【0038】
本例の軸受ハウジング41の開口端近傍には、多孔質含油軸受42が圧入される部分の内径よりも大きな内径を有する内径拡大部41eが形成されている。
また、本例の上側含油フェルト44は、下側含油フェルト43よりも外径が大きく、体積も大きい。なお、下側含油フェルト43と上側含油フェルト44の密度、気孔径、含油率は同等である。
【0039】
本例においても、直立状態に限らず水平状態や下向きで使用する場合にも、多孔質含油軸受42から滲み出た潤滑油を含油フェルト43,44を介して多孔質含油軸受42に効率良く循環させることができ、周囲への潤滑油の飛散や、モータの寿命低下を抑制することができる。
【0040】
また、本例では、上側含油フェルト44の体積を下側含油フェルト43の体積よりも大きくすることにより、シャフトとの摺動摩擦力が大きく移動が激しくなり易い上部摺接部42bからの潤滑油を効率良く吸収して循環させることができる。
また、下側含油フェルト43の外径を多孔質含油軸受42の外径と同等とし、上側含油フェルト44の外径だけを多孔質含油軸受42の外径よりも大きくしているため、軸受ハウジング41の内周面に従来のような凹部を設ける必要がなく、軸受ハウジングの加工が容易であり、また、軸受ハウジングとして安価な樹脂の一体成形品を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 取付板
20 ステータ
21 ステータコア
22 コアカバー
23 コイル
30 ロータ
31 シャフト
31a 被係止部
31b 環状溝
32 ロータケース
32a 円筒部
32b 上面部
32c バーリング部
33 駆動用マグネット
40 軸受部
41 軸受ハウジング
41a 鍔
41b 段差部
41c 環状突起
41d 嵌め込み溝
41e 内径拡大部
42 多孔質含油軸受
42a 中逃げ部
42b 上部摺接部
42c 下部摺接部
43 下側含油フェルト
44 上側含油フェルト
45 スラスト板
46 抜止め部材
47 ワッシャ
48 キャップ
図1
図2
図3