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特許7090882波源情報提示システム、波源情報提示方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】波源情報提示システム、波源情報提示方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20220620BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20220620BHJP
   G01R 29/26 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
G01R29/08 D
G01S5/02 Z
G01R29/08 F
G01R29/26 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018043574
(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公開番号】P2019158479
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 亮
(72)【発明者】
【氏名】八木谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 浩史
(72)【発明者】
【氏名】外岡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】坪田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】坂野 敦哉
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-120085(JP,A)
【文献】特開2016-129316(JP,A)
【文献】特開2001-194399(JP,A)
【文献】特開2007-212241(JP,A)
【文献】特開2006-023261(JP,A)
【文献】国際公開第2010/013408(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/00-29/26
G01S 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の平面上に電波の波長よりも短い間隔で配置された複数の金属パッチを含み、波源から三次元空間を伝搬した電波前記金属パッチのそれぞれにより受信する受信部と、
前記金属パッチそれぞれに入射する電波の電界成分の振幅及び位相を計測し、前記受信部における振幅の分布、および前記平面上の基準点に入射した電波の位相との位相差の分布に基づいて、前記三次元空間における前記波源の位置および姿勢を推定する推定部と、
前記推定部により推定した波源の位置および姿勢に基づく画像を提示する提示部と、
を備える、波源情報提示システム。
【請求項2】
前記推定部は、前記金属パッチそれぞれに入射する電波の電界成分の振幅及び位相に基づいて、前記波源の周囲の位置における電界成分の振幅及び位相、電界ベクトルの向き、磁界成分の振幅及び位相、磁界ベクトルの向き、電波の伝搬方向のうち少なくとも一つを推定し、
前記提示部は、前記推定部により推定された電界成分の振幅及び位相、電界ベクトルの向き、磁界成分の振幅及び位相、磁界ベクトルの向き、電波の伝搬方向のうち少なくとも一つに基づく画像を提示する、
請求項1に記載の波源情報提示システム。
【請求項3】
前記提示部は、画像を表示するヘッドマウントディスプレイを備え、
前記ヘッドマウントディスプレイを装着したユーザの視点に基づいて、前記ユーザが見ている3次元空間の画像に、波源の位置および姿勢に基づく画像を重畳させる、
請求項1に記載の波源情報提示システム。
【請求項4】
波源の位置および姿勢に基づく画像は、電波に関するパラメータに基づく画像である、
請求項3に記載の波源情報提示システム。
【請求項5】
前記推定部は、前記波源の位置及び姿勢を推定できない場合、前記電波の到来方向または伝搬方向に基づく画像のみを提示する、
請求項4に記載の波源情報提示システム。
【請求項6】
基板の平面上に電波の波長よりも短い間隔で配置された複数の金属パッチのそれぞれにより波源から三次元空間を伝搬した電波を受信し、
前記金属パッチそれぞれに入射する電波の電界成分の振幅及び位相を計測し、前記複数の金属パッチにおける振幅の分布、および前記平面上の基準点に入射した電波の位相との位相差の分布に基づいて、前記三次元空間における前記波源の位置および姿勢を推定し、
推定した波源の位置および姿勢に基づく画像を提示する、
波源情報提示方法。
【請求項7】
コンピュータに、
基板の平面上に電波の波長よりも短い間隔で配置された複数の金属パッチのそれぞれにより波源から三次元空間を伝搬した電波を受信した場合に、前記金属パッチそれぞれに入射する電波の電界成分の振幅及び位相を計測し、前記複数の金属パッチにおける振幅の分布、および前記平面上の基準点に入射した電波の位相との位相差の分布に基づいて、前記三次元空間における前記波源の位置および姿勢を推定させ、
推定した波源の位置および姿勢に基づく画像を提示させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、波源情報提示システム、波源情報提示方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、環境電磁工学(EMC:Electromagnetic Compatibility)分野において、様々な電子機器から放射される電波(電磁波)ノイズを計測する技術が知られている。実際に機器のどの部分から電波ノイズが発生しているかを特定するためには、機器周辺での電波ノイズの空間分布を知ることが重要である。また、通信機器に組み込んだアンテナの指向性等を評価する場合にも、放射される電波強度の空間分布を計測する必要がある。
【0003】
特許文献1には、電波の強度を計測するための電波強度計測装置が記載されている。電波強度計測装置は、複数の測定領域を有する平面を有する電波吸収部により、複数の測定領域における電波の強度を測定する。電波強度計測装置は、複数の測定領域における電波の強度に基づいて、測定領域の位置に対応させて可視化した画像である電波強度分布画像を生成し、生成した電波強度分布画像を表示することができる。さらに、電波強度計測装置は、所定時間毎に生成された電波強度分布画像を更新しながら表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2010/013408号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した電波強度計測装置は、電波吸収部において測定された電波強度を可視化できるものの、当該電波の波源に関する情報を提示することができなかった。
【0006】
本発明は、上記の課題に基づいてなされたものであり、波源に関する情報を提示することができる、波源情報提示システム、波源情報提示方法、およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様の波源情報提示システムは、基板の平面上に電波の波長よりも短い間隔で配置された複数の金属パッチを含み、波源から三次元空間を伝搬した電波前記金属パッチのそれぞれにより受信する受信部と、前記金属パッチそれぞれに入射する電波の電界成分の振幅及び位相を計測し、前記受信部における振幅の分布、および前記平面上の基準点に入射した電波の位相との位相差の分布に基づいて、前記三次元空間における前記波源の位置および姿勢を推定する推定部と、前記推定部により推定した波源の位置および姿勢に基づく画像を提示する提示部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様の波源情報提示システムは、上記の波源情報提示システムであって前記推定部は、前記金属パッチそれぞれに入射する電波の電界成分の振幅及び位相に基づいて、前記波源の周囲の位置における電界成分の振幅及び位相、電界ベクトルの向き、磁界成分の振幅及び位相、磁界ベクトルの向き、電波の伝搬方向のうち少なくとも一つを推定し、
前記提示部は、前記推定部により推定された電界成分の振幅及び位相、電界ベクトルの向き、磁界成分の振幅及び位相、磁界ベクトルの向き、電波の伝搬方向のうち少なくとも一つに基づく画像を提示する。
【0009】
本発明の一態様の波源情報提示システムは、上記の波源情報提示システムであって、前記提示部は、画像を表示するヘッドマウントディスプレイを備え、前記ヘッドマウントディスプレイを装着したユーザの視点に基づいて、前記ユーザが見ている3次元空間の画像に、波源の位置および姿勢に基づく画像を重畳させる。
【0010】
本発明の一態様の波源情報提示システムは、上記の波源情報提示システムであって、波源の位置および姿勢に基づく画像は、電波に関するパラメータに基づく画像である。
【0011】
本発明の一態様の波源情報提示システムは、上記の波源情報提示システムであって、前記推定部は、前記波源の位置及び姿勢を推定できない場合、前記電波の到来方向または伝搬方向に基づく画像のみを提示する
【0012】
本発明の一態様の波源情報提示方法は、基板の平面上に電波の波長よりも短い間隔で配置された複数の金属パッチのそれぞれにより波源から三次元空間を伝搬した電波を受信し、前記金属パッチそれぞれに入射する電波の電界成分の振幅及び位相を計測し、前記複数の金属パッチにおける振幅の分布、および前記平面上の基準点に入射した電波の位相との位相差の分布に基づいて、前記三次元空間における前記波源の位置および姿勢を推定し、推定した波源の位置および姿勢に基づく画像を提示する。
【0013】
本発明の一態様のプログラムは、コンピュータに、基板の平面上に電波の波長よりも短い間隔で配置された複数の金属パッチのそれぞれにより波源から三次元空間を伝搬した電波を受信した場合に、前記金属パッチそれぞれに入射する電波の電界成分の振幅及び位相を計測し、前記複数の金属パッチにおける振幅の分布、および前記平面上の基準点に入射した電波の位相との位相差の分布に基づいて、前記三次元空間における前記波源の位置および姿勢を推定させ、推定した波源の位置および姿勢に基づく画像を提示させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、波源に関する情報を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態の波源情報提示システム1の構成を示す図である。
図2】電波センサ100の一例を示す斜視図である。
図3】電波センサ100の断面図である。
図4】電波センサ100の断面および等価回路を示す図である。
図5】波源RWの位置を推定する処理を説明するための図である。
図6】ヘッドマウントディスプレイ500に表示させる表示画像510の一例である。
図7】車両に搭載された車両制御用電子機器から漏洩する電波を検査することを説明するための図である。
図8】表示画像510の一例を示す図である。
図9】波源情報を提示する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】第2の実施形態における制御用パソコン400Aの一構成例を示すブロック図である。
図11】電波を推定する処理を説明するための図である。
図12】ヘッドマウントディスプレイ500に表示させる範囲を説明するための図である。
図13】ヘッドマウントディスプレイ500に表示させる範囲を説明するための図である。
図14】電波のパラメータに基づく情報を提示する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した波源情報提示システム、波源情報提示方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の波源情報提示システム1の構成を示す図である。
波源情報提示システム1は、例えば、ユーザが3次元空間に存在する波源についての情報を取得したい場合に使用される。ユーザが波源についての情報を取得したい場合、ユーザは、ヘッドマウントディスプレイ500を掛け、電波センサ100に3次元空間において伝搬している電波を検出させる。これにより、波源情報提示システム1は、電波センサ100により検出された電波に基づいて、波源についての情報を推定し、当該波源についての情報をヘッドマウントディスプレイ500に描画させる。これにより、波源情報提示システム1は、3次元空間においてどのような波源が存在するかを表示することができる。
【0018】
本実施形態において、波源情報提示システム1は、電波を放出する波源RWについての情報を推定することを説明するが、本発明は、これに限定されず、音や超音波などの3次元空間を伝搬する波であれば適用可能である。また、本実施形態において、電波についての情報を表示することを説明するが、本発明は、これに限定されず、音や振動等によりユーザに電波についての情報を提示してよい。
【0019】
波源情報提示システム1は、図1に示すように、例えば、電波センサ100と、RFスイッチ200と、ソフトウェア無線機300と、制御用パソコン400と、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)500とを備える。波源情報提示システム1は、電波センサ100により波源RWから放射された波としての電波を受信する。なお、本実施形態において、波源RWは、ダイポールアンテナであるが、これに限定されず、波を放射するものであればよい。
【0020】
図2は、電波センサ100の一例を示す斜視図である。電波センサ100は、例えば、誘電体基板102と、銅パッチ104と、ビア106と、銅板108とを備える。誘電体基板102の形状は、例えば、シート(薄板)状である。なお、電波センサ100において、基板は誘電体であるが、これに限定されず、他の種類の基板であってもよい。なお、誘電体基板102の大きさは、測定者が容易に持ち運び可能なサイズであることが望ましい。
【0021】
誘電体基板102の表面100Aには、複数の銅パッチ104が形成される。複数の銅パッチ104は、マトリクス状に配置される。各銅パッチ104は、電波センサ100における各セルに対応する。
銅パッチ104の各々は、銅板により形成される方形電極である。なお、銅パッチ104の形状は、方形に限定されることなく、たとえば、三角形、六角形等の他の形状であってもよい。なお、銅パッチ104は、銅パッチに限定されることなく、他の金属パッチであってもよい。
【0022】
複数の銅パッチ104の各々は、波源RWから照射される電波の波長よりも十分に短い間隔で配置される。銅パッチ104の各々の縦、横の長さ(サイズ)は、波源RWから放射される電波の波長よりも十分に短い。
【0023】
波源RWから照射される電波の周波数は、例えば、800MHz~2.4GHzの間の周波数であるとする。なお、周波数が800MHzの電波の波長は、37.5cmである。また、周波数が2.4GHzの電波の波長は、12.5cmである。この場合、たとえば、銅パッチ104同士の間隔は、1ミリメートルであるとする。また、銅パッチ104の縦および横の長さは、例えば、20ミリメートルであるとする。
【0024】
電波センサ100の裏面100Bには、銅板108が形成される。銅板108は、接地端子として機能する。なお、電波センサ100の裏面100Bは、銅板に限定されることなく、他の金属の板であってもよい。
【0025】
図3は、電波センサ100の断面図である。なお、電波センサ100の表面100Aの銅パッチ104間には、波源RWから放射された電波を吸収する抵抗(不図示)が設けられる。誘電体基板102には、各銅パッチ104に対応して、ビア106が形成される。ビア106は、電波センサ100の表面100Aから裏面100Bに貫通する銅である。これにより、ビア106は、各銅パッチ104と銅板108とを電気的に接続させる。
【0026】
図4は、電波センサ100の断面および等価回路を示す図である。電波センサ100に電波が入射した場合、図4(a)に示すように、銅パッチ104間は電荷が生ずることで、銅パッチ104同士がコンデンサとして機能し、ビア106に挟まれた誘電体基板102がインダクタとして機能する。これにより、電波センサ100は、図4(b)に示すように、等価的にLC並列回路として機能する。すなわち、電波センサ100は、表面100Aに入射した電波に対して、LC並列回路としての表面インピーダンスを持つシートとして機能する。すなわち、電波センサ100は、周波数により入射電波の反射位相を変えたり、特定の周波数帯の表面波伝搬を遮断(バンドギャップ)したりする性質を持つ。
【0027】
RFスイッチ200は、図1に示したように、電波センサ100の裏面100Bに設置される。RFスイッチ200は、例えば、複数の測定回路(不図示)を含む。各測定回路は、複数の銅パッチ104の各々に接続される抵抗の両端に、電気的に接続される。各測定回路は、対応する抵抗に生じる電圧を測定する。電波センサ100の表面100Aに配置される銅パッチ104間を接続する抵抗は、接続されている銅パッチ104において吸収される電波の電力(エネルギー)を消費する。このとき、銅パッチ104間を接続する抵抗に生じる電圧は、入射した電波の電界成分に比例する。そのため、測定回路により、対応する抵抗に生じる電圧の振幅及び位相を計測すれば、対応する銅パッチ104に入射する電波の電界成分の振幅及び位相を計測することができる。すなわち、各測定回路により、対応する抵抗に対応する銅パッチ104に入射する電波の電界成分の強度及び位相を測定することができる。なお、銅パッチ104と測定回路との組み合わせにより、波源から三次元空間を伝搬した波を受信する複数の受信素子(2次元センサアレイ)を実現する。
【0028】
RFスイッチ200は、測定回路が測定した電波(電界成分)の振幅及び位相情報が含まれる電圧信号を順次選択して、ソフトウェア無線機300に送信する。
【0029】
ソフトウェア無線機300は、RFスイッチ200から送信された電圧信号を受信する。ソフトウェア無線機300は、電圧信号の情報を制御用パソコン400に送信する。パソコン400は、電波センサ100における抵抗に生じた電圧信号の振幅を計算する。併せて、電波センサ100に設けた基準点の抵抗に生じた電圧信号の位相と、基準点から離れた点の抵抗に生じた電圧信号の位相との差を計算する。さらに、電圧信号の振幅を校正し、電波センサ100の表面上に入射した電波(電界強度)の振幅に変換する。
【0030】
制御用パソコン400は、例えば、信号解析装置410と、送信装置420とを備える。信号解析装置410は、電波情報解析部412と、波源推定部414とを備える。電波情報解析部412および波源推定部414は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサが1つ以上のプログラムメモリに格納された電波解析・電波推定用プログラムを実行することにより実現される。
【0031】
電波情報解析部412は、電波センサ100に入射した電波(電界成分)の振幅及び電波センサ100に設けた基準点に入射した電波(電界成分)の位相との位相差をセルごとに算出する。これにより、電波情報解析部412は、電波センサ100の表面に入射した電波(電界成分)の振幅及び位相差の2次元分布を計測する。
【0032】
図5は、波源RWの位置を推定する処理を説明するための図である。波源推定部414は、電波情報解析部412により計測された電波(電界成分)振幅の分布、および電波(電界成分)位相差の分布に基づいて、波源RWの位置を推定する。波源推定部414は、波源RWの位置を推定するため、例えば、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法を用いる。MUSIC法は、電波の到来方向や波源位置等の推定に用いられるアルゴリズムである。MUSIC法では、複数の計測点(電波検出領域)において受信される電波の電界成分をモードベクトルとして利用する。波源推定部414は、電波センサ100に入射する電波の吸収係数に基づき、理論的に求まる受信電界を用いてモードベクトルを計算する。これにより、波源推定部414は、波源RWの3次元位置(x,y,z)、および波源RWの姿勢(θ、φ)を推定することができる。θおよびφは、3次元空間における基準軸に対する波源RWの傾き度合いを示す角度である。
【0033】
波源推定部414は、MUSIC法を用いて、電波センサ100の表面上に、計測された電波(電界成分)振幅及び位相の分布を生じさせることのできる波源RWの位置及び姿勢を探索し、もっとも確からしい波源RWの位置及び姿勢を推定値として求める。なお、波源RWは複数存在していてもよい。ここでは、波源RWはダイポールアンテナであると仮定してMUSIC法を用いるが、ダイポールアンテナ以外の波源に対しては、適切な波源モデルを仮定すればよい。
【0034】
送信装置420は、波源RWの位置および姿勢を表す情報をヘッドマウントディスプレイ500に送信する。波源RWの位置および姿勢を表す情報は、例えば、波源RWの位置および姿勢を表す画像である。
【0035】
ヘッドマウントディスプレイ500は、表示装置および通信装置を備える。ヘッドマウントディスプレイ500は、ユーザが存在する3次元空間の画像を表示する。ヘッドマウントディスプレイ500は、視点位置に基づいて、3次元空間の画像を更新する。視点位置の取得方法は、既存の技術であれば何であるかは限定しない。
【0036】
ヘッドマウントディスプレイ500は、送信装置420から波源RWの位置および姿勢を表す情報を受信した場合、波源RWの位置および姿勢を表す情報に基づいて表示装置に表示させる画像を描画する。これにより、ヘッドマウントディスプレイ500は、3次元空間の画像に、波源RWの位置および姿勢を表す画像を重畳して表示する。
【0037】
ヘッドマウントディスプレイ500は、例えば、3次元空間の位置と、表示する画像内位置との対応関係を記憶する。ヘッドマウントディスプレイ500は、制御用パソコン400から取得した波源RWの位置および姿勢が、表示している3次元空間の画像のどの位置に相当するかを計算する。これにより、ヘッドマウントディスプレイ500は、3次元空間の画像に、波源RWの位置および姿勢に基づく画像を重畳して表示させる。
【0038】
図6は、ヘッドマウントディスプレイ500に表示させる表示画像510の一例である。表示画像510には、視点から波源RWを見た位置に相当する画像内位置に、波源画像512と、3次元空間の画像514とが含まれる。なお、3次元空間の画像514は、必ずしもヘッドマウントディスプレイ500により表示する必要は無い。また、ヘッドマウントディスプレイ500は、波源RWから電波が放射されていることを強調するため、実際の波源RWとは異なる色(例えば赤などの強調色)で波源画像512を表示してもよい。
【0039】
図7は、車両に搭載された車両制御用電子機器から漏洩する電波を検査することを説明するための図である。車両Mから漏洩する電波を検査する場合、例えば、ユーザが電波センサ100を保持し、車両Mに近づき、ヘッドマウントディスプレイ500により、車両Mの画像を含む波源画像512を表示させる。ユーザの視界が車両M内部の車両制御用電子機器600が内蔵されている位置に移動した場合、波源情報提示システム1は、車両制御用電子機器600から漏洩している電波が例えば異常な電波である場合、図8に示すような表示画像510を表示させる。
【0040】
表示画像510には、3次元空間の画像(不図示)に加え、車両Mに内蔵された車両制御用電子機器600の位置および姿勢を表す画像520と、警告を認識させるアラート画像522と、メッセージ画像524とが含まれる。
【0041】
なお、波源RWの位置および姿勢に基づく画像は、制御用パソコン400により生成してよいが、これに限定されず、ヘッドマウントディスプレイ500により生成してよい。
【0042】
図9は、波源情報を提示する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、電波センサ100の位置、および視点位置を決定する(ステップS100)。視点位置の検出は、視点が移動したことが分かるものであればよい。次に、電波センサ100、RFスイッチ200、およびソフトウェア無線機300は、電波の振幅及び位相情報を含む電圧信号を計測する(ステップS102)。次に、制御用パソコン400により、計測された電圧信号に基づいて、電波センサ100の表面100Aに入射した電波情報を算出する(ステップS104)。電波情報には、電波(電界成分)の振幅及び位相差分布に加え、周波数、波長などの電波のパラメータが含まれる。次に、制御用パソコン400は、電波情報に基づいて、波源の位置および姿勢を推定する(ステップS106)。次に、ヘッドマウントディスプレイ500は、波源の位置および姿勢に基づいて、視界に含まれる波源RWの位置および姿勢に基づく画像を表示させる(ステップS108)。
波源情報提示システム1は、ステップS100からステップS108の処理を繰り返すことにより、電波センサ100およびヘッドマウントディスプレイ500の位置が移動した場合でも、波源の位置および姿勢に基づく画像を表示させることができる。
【0043】
以上説明した第1の実施形態の波源情報提示システム1によれば、波源RWから三次元空間を伝搬した波を受信する複数の受信素子(100)と、複数の受信素子(100)の受信結果に基づいて、三次元空間における波源RWの位置および向きを推定する推定部(400)と、推定部(400)により推定した波源RWの位置および向きに基づく画像を提示する提示部(500)と、を実現することができる。これにより、波源情報提示システム1によれば、波源RWに関する情報を提示することができる。波源RWに関する情報は、例えば、上述した図6に示した波源画像512、図8に示した位置および姿勢を表す画像520と、警告を認識させるアラート画像522と、およびメッセージ画像524である。
【0044】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。図10は、第2の実施形態における制御用パソコン400Aの一構成例を示すブロック図である。制御用パソコン400Aは、波源推定部414に代えて、電波推定部416を備える点で、第1の実施形態の制御用パソコン400とは異なる。
【0045】
図11は、電波を推定する処理を説明するための図である。電波推定部416は、例えば、電波センサ100から所定の範囲における3次元空間の鉛直方向および水平方向の所定間隔ごとに、複数の電波推定位置を設定する。電波推定部416は、例えばMUSIC法を用いて、波源の位置及び姿勢を推定する。次に電波推定部416は、3次元空間における電波推定位置毎に、波源RWから周辺に放射され伝搬するはずの電波を、理論計算または電磁界シミュレーション計算などに基づいて推定する。電波推定部416は、電波推定位置毎の電波のパラメータとして、電界成分の振幅及び位相、電界ベクトルの向き、磁界成分の振幅及び位相、磁界ベクトルの向き、電波の伝搬方向、等を計算する。
【0046】
図12は、ヘッドマウントディスプレイ500に表示させる範囲を説明するための図である。ユーザの視界が波源RWを含む範囲である場合、制御用パソコン400Aは、波源RW付近の電波推定位置の電波のパラメータに基づく画像を表示させる。
【0047】
図13は、ヘッドマウントディスプレイ500に表示させる画像の一例である。ヘッドマウントディスプレイ500は、波源画像710と、電波画像720-1、720-2、および720-3と、3次元空間の画像730とを重畳して表示させる。なお、波源画像710は、3次元空間の画像730の一部であってよい。電波画像720は、例えば、電波(電界成分)の振幅が大きいほど、強調した色で表示している。例えば、波源に最も近い電波推定位置の電波画像720-1の色は赤であり、次に波源に近い電波推定位置の電波画像720-2の色は薄い青色であり、波源から最も遠い電波推定位置の電波画像720-3の色は濃い青色である。また、電波画像720は、三角錐を立体的に表示した画像であって、先鋭部分が3次元的に電波(電界成分の方向を示すベクトル)の向きを表すように描画される。なお、電波画像720は、電界成分の振幅に限らず、電界成分の位相、磁界成分の振幅及び位相、周波数(波長)などに基づいて色が変更されてもよいし、磁界ベクトルの方向を示す三角錐を表示してもよいし、電波の伝搬方向を示す三角錐を表示してもよい。なお電波の画像は、静止画であってもよいし、電波のパラメータの変化を示す動画であってもよい。
【0048】
図14は、電波のパラメータに基づく情報を提示する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、電波センサ100の位置、および視点位置を決定する(ステップS200)。次に、電波センサ100、RFスイッチ200、およびソフトウェア無線機300は、電波(電界成分)の振幅及び位相情報を含む電圧信号を計測する(ステップS202)。次に、制御用パソコン400により、計測された電圧信号に基づいて、電波センサ100の表面100Aに入射した電波情報を算出する(ステップS204)。電波情報には、電波(電界成分)の振幅及び位相差分布に加え、周波数、波長などの電波のパラメータが含まれる。次に、制御用パソコン400Aは、電波情報に基づいて、電波推定位置毎に電波のパラメータを推定する(ステップS206)。次に、ヘッドマウントディスプレイ500は、推定した電波のパラメータに基づいて、推定した電波のパラメータに基づく画像を表示させる(ステップS208)。
波源情報提示システム1は、ステップS200からステップS208の処理を繰り返すことにより、電波センサ100およびヘッドマウントディスプレイ500の位置が移動した場合でも、電波のパラメータに基づく画像を表示させることができる。
【0049】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、推定部(416)は、複数の受信素子(100)の受信結果に基づいて、波源RWの周囲の位置における電波に関するパラメータを推定し、提示部(500)は、推定部により推定された電波に関するパラメータに基づく画像を提示する。これにより、第2の実施形態によれば、波源に関する情報として、当該波源から放射された電波推定位置毎の電波のパラメータを提示することができる。
【0050】
(その他の実施形態)
(1)第1の実施形態において波源の位置および姿勢に基づく画像を表示し、第2の実施形態おいて電波推定位置毎の電波のパラメータに基づく画像を表示したが、波源の位置および姿勢に基づく画像と、電波推定位置毎の電波のパラメータに基づく画像との双方を表示してよい。
(2)本発明の用途は、例えば、車両制御用電子機器600の検査をすることであるが、これに限定されず、例えば、電磁気学や電波工学等の教育において、アンテナから放射されている電波の状態を表示して理解させることもできる。
(3)電波センサ100は、表面が平面のものを説明したが、これに限定されず、入射電波の分布が検出できるものであれば、平面以外の形状であってよい。
(4)電波推定部416は、波源の位置及び姿勢を推定できない場合、電波の伝搬方向(到来方向)のみを推定してよい。波源の位置及び姿勢を推定できない場合とは、例えば電波センサ100の表面上における電波の分布が一様であり、遠方から到来した平面波を受信した場合である。
(5)制御用パソコン400は、電波を放射する波源としての電流経路(電流分布)を推定し、電流値及び電流方向に基づいて、電波を放射または漏洩する機器のどこからどのように電波が放射されているかを推定してよい。制御用パソコン400は、推定した電流経路(電流分布)または機器からの電波放射の様子を示す情報、あるいはその両方を、ヘッドマウントディスプレイ500により表示させてよい。
(6)制御用パソコン400は、電波推定位置の電波のパラメータとして、電波の周波数を推定し、電波の周波数に基づいて、どのような電波が3次元空間に伝搬しているかを推定して、推定結果をヘッドマウントディスプレイ500に表示させてよい。例えば、制御用パソコン400は、携帯キャリアに割り当てられた周波数のうちどの携帯キャリアに割り当てられた周波数の電波の振幅が高いか、という情報をヘッドマウントディスプレイ500に表示させることができる。
(7)制御用パソコン400は、3次元空間の画像に、波源の位置および姿勢や、電波推定位置毎の電波のパラメータに基づく画像を重畳したが、これに限定されず、写真画像を表示させ、写真を撮影した場所における波源の位置および姿勢や電波推定位置毎の電波のパラメータに基づく画像を重畳してよい。
【0051】
以上、この発明の一態様として各実施形態や変形例に関して図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は各実施形態や変形例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、本発明の一態様は、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記各実施形態や変形例に記載された要素であり、同様の効果を奏する要素同士を置換した構成も含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1…波源情報提示システム、100…電波センサ、104…銅パッチ、106…ビア、200…RFスイッチ、300…ソフトウェア無線機、400、400A…制御用パソコン、410…信号解析装置、412…電波情報解析部、414…波源推定部、416…電波推定部、420…送信装置、500…ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、510…表示画像、512…波源画像、522…アラート画像、524…メッセージ画像、600…車両制御用電子機器、710…波源画像、720…電波画像、720-1…電波画像、720-2…電波画像、720-3…電波画像、730…画像
図1
図2
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図7
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図10
図11
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図14