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特許7090885不燃性シート、該不燃性シートを含む防煙垂壁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】不燃性シート、該不燃性シートを含む防煙垂壁
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/04 20060101AFI20220620BHJP
   A62C 2/06 20060101ALI20220620BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20220620BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
B32B17/04 Z
A62C2/06 505
E04B1/94 F
E04B1/94 V
B32B27/18 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018074835
(22)【出願日】2018-04-09
(62)【分割の表示】P 2017233105の分割
【原出願日】2017-12-05
(65)【公開番号】P2019099982
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀越 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】武内 信貴
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-042794(JP,A)
【文献】特開2014-076563(JP,A)
【文献】特開2015-030253(JP,A)
【文献】特開2003-311889(JP,A)
【文献】特許第6338264(JP,B1)
【文献】国際公開第2014/125827(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00-15/715
B32B 1/00-43/00
A62C 2/06
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維織物と、前記ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂組成物層とを含む、不燃性シートであって、
前記不燃性シートの使用時に表面層となるように金属又は金属酸化物を含む帯電防止層を備え、
前記不燃性シートの下記ヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下である、不燃性シート。
<ヒートサイクル試験条件>
前記不燃性シートを100mm×100mmの大きさに切り出してサンプルとし、該サンプルを、予め温度23℃、相対湿度50%RHに初期設定しておいた恒温恒湿器(エスペック株式会社製商品名PSL-2KPH)に入れて、以下(1)~(5)を1サイクルとし、計10サイクルおこなう。
(1)温度23℃、相対湿度50RHから、温度60℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を14分として、移行させる。
(2)上記温度60℃、相対湿度50%RHで、8時間保持する。
(3)上記温度60℃、相対湿度50%RHから、温度20℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を45分として、移行させる。
(4)上記温度20℃、相対湿度50%RHで、8時間保持する。
(5)上記温度20℃、相対湿度50%RHから、温度23℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を1分として、移行させる。
【請求項2】
ガラス繊維織物と、前記ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂組成物層とを含む、不燃性シートであって、
前記不燃性シートの使用時に表面層となる層として、前記硬化性樹脂組成物層、又はポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むフィルム層、を含み、
前記不燃性シートの下記ヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×10 11 Ω以下である、不燃性シート。
<ヒートサイクル試験条件>
前記不燃性シートを100mm×100mmの大きさに切り出してサンプルとし、該サンプルを、予め温度23℃、相対湿度50%RHに初期設定しておいた恒温恒湿器(エスペック株式会社製商品名PSL-2KPH)に入れて、以下(1)~(5)を1サイクルとし、計10サイクルおこなう。
(1)温度23℃、相対湿度50RHから、温度60℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を14分として、移行させる。
(2)上記温度60℃、相対湿度50%RHで、8時間保持する。
(3)上記温度60℃、相対湿度50%RHから、温度20℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を45分として、移行させる。
(4)上記温度20℃、相対湿度50%RHで、8時間保持する。
(5)上記温度20℃、相対湿度50%RHから、温度23℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を1分として、移行させる。
【請求項3】
前記不燃性シートの使用時に表面層となる層に界面活性剤を含み、
前記不燃性シート中の前記界面活性剤の質量(g/m)が0.5~2.0g/mである、請求項に記載の不燃性シート。
【請求項4】
全光線透過率が90%以上、ヘーズが20%以下、である、請求項1~のいずれか1項に記載の不燃性シート。
【請求項5】
防煙垂壁用である、請求項1~のいずれか1項に記載の不燃性シート。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の不燃性シートを備える、防煙垂壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性シートに関し、特に防煙垂壁等に好適な不燃性シート、これを用いた防煙垂壁に関する。
【背景技術】
【0002】
建築基準法及び建築基準法施行令は、建築物の火災時に発生する煙、有毒ガスなどの流動を妨げて、避難及び消火活動が円滑に行えるように、排煙設備を設けることを規定している。従って、オフィスビル、商業施設などの建築物には、排煙設備及び遮煙設備として、防煙垂壁などが設置されることが多い。
【0003】
防煙垂壁は、火災発生時の煙、有毒ガスなどが廊下や上層階へ流動することを一時的に遮断し、避難に必要な時間を確保することなどを目的として、通常、建築物の天井に取り付けられている。このため、防煙垂壁によって視野が妨げられたり、美観が損なわれたりしないよう、防煙垂壁としては、板ガラス、ガラス繊維と樹脂との樹脂複合体などが用いられている。ガラス繊維と樹脂との樹脂複合体は、板ガラスに比して割れにくいという利点を有する。例えば、特許文献1には、ガラス繊維織物と硬化樹脂層とを含む透明不燃性シートが開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、ガラス繊維布とこれに含浸させた透明な硬化樹脂層とを含む基材層を有しており、該基材層の少なくとも片面に補強層が一体に形成してある透明不燃性シートが開示されている。
【0005】
また、例えば、特許文献3には、接着剤含浸被覆ガラスクロスを基材として、その両面に、軟質塩化ビニル樹脂透明層が設けられた不燃性積層体であって、前記接着剤含浸被覆ガラスクロスが、シランカップリング剤で処理されたガラスクロスに、トリイソシアネート化合物とバインダー樹脂とを質量比1:5~1:35の範囲で含む接着剤成分が含浸被覆硬化してなる複合中間体であって、前記トリイソシアネート化合物が、イソシアヌレート変性トリイソシアネート、ビュレット変性トリイソシアネート、トリメチロールアルキル変性トリイソシアネートから選ばれた1種以上であることを特徴とする透明不燃シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-319746号公報
【文献】特開2011-213093号公報
【文献】特開2014-76563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等が検討した結果、特許文献1~3に記載された不燃性シートは、例えば、防煙垂壁として長期間使用した場合、防煙垂壁として設置する建築物内の空気中に存在する塵埃が該不燃性シート表面に付着し、外観が悪くなるという問題があることが判明した。このような状況下、本発明は、ガラス布と樹脂との不燃性シートにおいて、例えば防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着を低減させる不燃性シート及び該不燃性シートを備える防煙垂壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決すべく、本発明者等が検討したところ、例えば特許文献1~3に開示されたような不燃性シートは、表面抵抗率が、1×1015Ω程度であり、これに起因して、空気中に存在する塵埃の付着を十分防止できないものであることが判明した。そこで、本発明者等が鋭意検討したところ、特定のヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下とすることにより、上記塵埃の付着を低減できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0009】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.ガラス繊維布と、前記ガラス繊維布に含浸された状態で含まれる樹脂組成物層とを含む、不燃性シートであって、前記不燃性シートの下記ヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下である、不燃性シート。
<ヒートサイクル試験条件>
前記不燃性シートを100mm×100mmの大きさに切り出してサンプルとし、該サンプルを、予め温度23℃、相対湿度50%RHに初期設定しておいた恒温恒湿器(エスペック株式会社製商品名PSL-2KPH)に入れて、以下(1)~(5)を1サイクルとし、計10サイクルおこなう。
(1)温度23℃、相対湿度50RHから、温度60℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を14分として、移行させる。
(2)上記温度60℃、相対湿度50%RHで、8時間保持する。
(3)上記温度60℃、相対湿度50%RHから、温度20℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を45分として、移行させる。
(4)上記温度20℃、相対湿度50%RHで、8時間保持する。
(5)上記温度20℃、相対湿度50%RHから、温度23℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を1分として、移行させる。
項2.前記不燃性シートの使用時に表面層となるように金属又は金属酸化物を含む帯電防止層を備える、項1に記載の不燃性シート。
項3.前記不燃性シートの使用時に表面層となる層に界面活性剤を含み、前記不燃性シート中の前記界面活性剤の質量(g/m)が0.5~1.5g/mである、項1に記載の不燃性シート。
項4.全光線透過率が90%以上、ヘーズが20%以下、である、項1~3のいずれか1項に記載の不燃性シート。
項5.防煙垂壁用である、項1~4のいずれか1項に記載の不燃性シート。
項6.項1~5のいずれか1項に記載の不燃性シートを備える、防煙垂壁。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定のヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下とすることにより、例えば防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の不燃性シートの一例を示す略図的断面図である。
図2】本発明の不燃性シートの一例を示す略図的断面図である。
図3】本発明の不燃性シートの一例を示す略図的断面図である。
図4】本発明の不燃性シートの一例を示す略図的断面図である。
図5】本発明の初期引裂強度の測定方法を説明する略図的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の不燃性シートは、ガラス繊維布と、前記ガラス繊維布に含浸された状態で含まれる樹脂組成物層とを含む、不燃性シートであって、前記不燃性シートの下記ヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下であることを特徴とする。
<ヒートサイクル試験条件>
前記不燃性シートを100mm×100mmの大きさに切り出してサンプルとし、該サンプルを、予め温度23℃、相対湿度50%RHに初期設定しておいた恒温恒湿器(エスペック株式会社製商品名PSL-2KPH)に入れて、以下(1)~(5)を1サイクルとし、計10サイクルおこなう。
(1)温度23℃、相対湿度50%RHから、温度60℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を14分として、移行させる。
(2)上記温度60℃、相対湿度50%RHで、8時間保持する。
(3)上記温度60℃、相対湿度50%RHから、温度20℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を45分として、移行させる。
(4)上記温度20℃、相対湿度50%RHで、8時間保持する。
(5)上記温度20℃、相対湿度50%RHから、温度23℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を1分として、移行させる。
【0013】
例えば図1~4に示すように、本発明の不燃性シート1は、ガラス繊維布2と、ガラス繊維布2に含浸された樹脂組成物層3と、を含む積層構造を有する。不燃性シート1において、ガラス繊維布2は、少なくとも1層含まれていればよく、複数層含まれていてもよい。
【0014】
また、図2~4に示すように、本発明の不燃性シート1は、ガラス繊維布2と、ガラス繊維布2に含浸された樹脂組成物層3と、該樹脂組成物層3の少なくとも片面上、好ましくは両面上に、フィルム層4を含む積層構造とすることもできる。また、図3及び図4に示すように、本発明の不燃性シート1は、樹脂組成物層3又はフィルム層4の少なくとも片面上、好ましくは両面上に、例えば防煙垂壁として、使用時に剥離される、剥離可能な保護フィルム5を含むことができる。
【0015】
図1~4において、樹脂組成物層3は、ガラス繊維布2を構成している複数のガラス繊維の隙間を埋めており、樹脂組成物層3の一方の表面側部分31と、他方の表面側部分と32とは、当該隙間部分を介して通じている。また、本発明の不燃性シート1においては、透明性を高める観点から、例えば図1~4に示されるように、ガラス繊維布2の層の少なくとも一方の面上に当該樹脂組成物層3が形成されていることが好ましく、ガラス繊維布2の層の両面上に当該樹脂組成物層3が形成されていることがより好ましい。
【0016】
図1に示す、フィルム層4を積層しない場合は樹脂組成物層3の表面側(図1でいう31、32側)、又は、図2、3に示す、フィルム層4を積層する場合は該フィルム層4の表面側(図2、3でいう41、42側)には、例えば図4に示すように、金属又は金属化合物を含む帯電防止層6を設けることができる。これにより、特定のヒートサイクル試験前後において表面抵抗率をさらに低いものとしつつ、特定のヒートサイクル試験前後において表面抵抗率の変化をより一層低減させ、かつ、より優れた透明性を得ることができる。金属又は金属化合物を含む帯電防止層6は、例えば防煙垂壁として使用する等、不燃性シート1の使用時に表面層となるように配置することがより好ましい。以下、本発明の不燃性シート1を構成する各層の組成について詳述する。
【0017】
(ガラス繊維布2)
本発明の不燃性シート1において、ガラス繊維布2は、複数のガラス繊維により構成されている。ガラス繊維布2において、複数のガラス繊維は、互いに絡み合って1枚の布を形成している。ガラス繊維布2としては、例えば、複数の経糸と複数の緯糸とで構成されるガラス繊維織物(ガラスクロス)が挙げられる。ガラス繊維織物の織組織としては、特に制限されず、例えば、平織、朱子織、綾織、斜子織、畦織などが挙げられる。
【0018】
ガラス繊維布2を構成するガラス繊維のガラス材料としては、特に制限されず、例えば公知のガラス材料を用いることができる。ガラス材料としては、例えば、無アルカリガラス(Eガラス)、耐酸性の含アルカリガラス(Cガラス)、高強度・高弾性率ガラス(Sガラス、Tガラス等)、耐アルカリ性ガラス(ARガラス)等が挙げられ、好ましくは汎用性の高い無アルカリガラス(Eガラス)が挙げられる。ガラス繊維布2を構成するガラス繊維は、1種類のガラス材料からなるものであってもよいし、異なるガラス材料からなるガラス繊維を2種類以上組み合わせたものであってもよい。また、透明性を向上させる観点から、後述する、樹脂組成物層3の屈折率と近似するガラス材料を選択することが好ましい。
【0019】
ガラス繊維布2を構成するガラス繊維の番手は、ガラス繊維布2を形成できれば、特定のものに制限されない。ガラス繊維の番手としては、透明性を向上するという観点から、好ましくは20tex以下が挙げられ、3~6texが好ましく、3~5texがより好ましい。ガラス繊維の番手は、1種類単独であってもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。なお、ガラス繊維のtex番手は、1000m当たりのグラム数に相当している。
【0020】
ガラス繊維布2を構成するガラス繊維としては、ガラス長繊維である単繊維が複数本撚りまとめられたガラスヤーンが好ましい。ガラスヤーンにおける単繊維の本数は、30~400本程度が好ましく、40~120本程度がより好ましい。また、ガラスヤーンにおける単繊維の直径は、不燃性シート1の色にじみの抑制の観点から3.0~6.0μm程度が好ましく、3.0~5.0μm程度がより好ましい。ガラスヤーンの番手は、色にじみの抑制の観点から3~30texが好ましく、3~12texがより好ましく、3~5texがさらに好ましい。ガラス繊維布2を構成するガラスヤーンにおける単繊維の直径及びガラスヤーンの番手が上記の範囲内にあることにより、不燃性シート1の色にじみが抑制される機序の詳細は明らかではないが、このような条件を充足することにより、ガラスヤーンと樹脂組成物層3との界面における収縮がより効果的に抑制され、結果として、不燃性シート1の色にじみが抑制されるものと考えられる。
【0021】
不燃性シート1において、ガラス繊維布2の割合(質量%)は、色にじみの抑制の観点から、ガラス繊維布2と後述の樹脂組成物層3との合計量中、20~50質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましく、20~30質量%がより好ましい。また、ガラス繊維布2の1枚の質量(g/m)は、10~120(g/m)が好ましく、10~60(g/m)がより好ましく、10~40(g/m)がさらに好ましい。
【0022】
ガラス繊維布2と後述の樹脂組成物層3の屈折率の差としては、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.02以下、さらに好ましくは0.01以下が挙げられる。ガラス繊維布2の屈折率としては、好ましくは1.45~1.65程度、より好ましくは1.50~1.60程度が挙げられる。
【0023】
なお、上記ガラス繊維布2の屈折率の測定は、JIS K 7142:2008のB法に準じて行う。具体的には、ガラス繊維布2を構成するガラス繊維について、浸液としてヨウ化メチレン(n 231.747)、フタル酸ブチル(n 231.491)及び炭酸ジメチル(n 231.366)を用い、アッベ屈折計として(株)アタゴ製のNAR-2Tを用い、光源として波長589nmのナトリウムD線を用いて温度23℃で測定を行い、試験数5回の平均値を屈折率の値とする。また、樹脂組成物3の屈折率の測定は、JIS K 7142:2008のB法に準じて行う。具体的には、硬化又は固化させた樹脂組成物を粉体化し、浸液としてヨウ化メチレン(n 231.747)、フタル酸ブチル(n 231.491)及び炭酸ジメチル(n 231.366)を用い、顕微鏡として小型測定顕微鏡STM5-311(オリンパス社製、観察倍率400倍)を用い、光源として波長589nmのナトリウムD線を用いて温度23℃で測定を行い、試験数5回の平均値を屈折率の値とする。
【0024】
ガラス繊維布2と硬化樹脂組成物層3とのアッベ数の差としては、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。ガラス繊維布2のアッベ数としては、30~80が好ましく、40~70がより好ましく、50~65がさらに好ましい。なお、硬化樹脂組成物層、ガラス繊維布のアッベ数は、次のように測定する。
【0025】
(硬化樹脂組成物層のアッベ数)
ガラス繊維布が含まれていない硬化樹脂組成物のシートを、ガラス繊維布を含む場合と同じ条件で同じ厚みとして作製し、試験片を幅8mm、長さ20mmとして表面をよく研磨し、JIS K 7142A法に準じ、アッベ屈折計として(株)アタゴ製のNAR-2T、接触液としてジヨードメタン、光源として波長589nmのナトリウムD線を用い、測定温度を23℃として、波長589nmの屈折率を測定する。続いて、光源を自然光として分散値を測定、算出し、下記式(I)に従い、アッベ数を算出する。
アッベ数=(波長589nmの屈折率-1)/分散値 (I)
【0026】
(ガラス繊維布のアッベ数)
ガラス繊維を構成するガラス材料を用いて、幅8mm、長さ20mm、厚み5mmのガラスシートを作製し、表面をよく研磨し、JIS K 7142A法に準じ、アッベ屈折計として(株)アタゴ製のNAR-2T、接触液としてジヨードメタン、光源として波長589nmのナトリウムD線を用い、測定温度を23℃として、波長589nmの屈折率を測定する。続いて、光源を自然光として分散値を測定、算出し、上記式(I)に従い、アッベ数を算出する。
【0027】
ガラス繊維布2の厚みとしては、例えば10~100μm程度が挙げられ、色にじみの抑制の観点から、10~55μmが好ましく、10~35μm程度がより好ましい。ガラス繊維布2の厚みを10~35μmとする場合、ガラス繊維布2は、下記式(II)にて算出されるガラス体積率が38%以上であることが特に好ましい。10~35μmの厚みであって、ガラス体積率が38%以上であるガラス繊維布2は、例えば、ガラス繊維に開繊処理を施すことにより得られる。
【0028】
ガラス体積(%)=(A/(B×C))×100 (II)
A:ガラス繊維布の質量(g/m
B:ガラス繊維布を構成するガラス材料の比重(g/m
C:ガラス繊維布の厚み(m)
【0029】
(樹脂組成物層3)
本発明の不燃性シート1において、樹脂組成物層3は、ガラス繊維布2に含浸されており、樹脂を含む樹脂組成物が硬化又は固化されて得られるものにより形成されている。具体的には、樹脂組成物層3は、硬化性樹脂組成物層又は熱可塑性樹脂組成物層とすることができる。硬化樹脂組成物層とする場合、硬化性樹脂を含む樹脂組成物に対して、光、熱などのエネルギーを与えることによって樹脂組成物が硬化した硬化物(光硬化された樹脂組成物又は熱硬化された樹脂組成物)とすることができる。熱可塑性樹脂組成物層とする場合、熱可塑性樹脂組成物が乾燥、固化されることにより得られる、硬化物とすることができる。
【0030】
硬化性樹脂としては、不燃性シート1の、前述した特定のヒートサイクル試験前後の透明性をより一層向上させる観点から、樹脂組成物層3と前述したガラス繊維布2の屈折率とを近似させることができるものが好ましい。好ましい硬化性樹脂としては、硬化樹脂組成物が光硬化性となるものが好ましく、例えば、ビニルエステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フルオレンアクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、硬化性アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、フィルム層4を設ける場合に、フィルム層4との接着性をより向上させるという観点から、硬化性アクリル樹脂がより好ましく、アクリルシラップを含む樹脂組成物を硬化したものが特に好ましい。本発明において、アクリルシラップとは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの(メタ)アクリル酸エステルポリマーをメタクリル酸メチルなどのアクリル単量体に溶解した重合性液状混合物をいう。上記アクリルシラップの中でも、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体、及びメタクリル酸メチル/アクリル酸ノルマルブチル共重合体からなる群より選ばれる1種以上のアクリル酸エステルポリマーをメタクリル酸メチル単量体に溶解したアクリルシラップが特に好ましい。このように、硬化樹脂組成物層3を、アクリルシラップを含む樹脂組成物を硬化したものとする場合、フィルム層4との密着性がより向上するため、不燃性シート1の前述した特定のヒートサイクル試験前後の透明性がより一層向上するので好ましい。
【0031】
熱可塑性樹脂としては、不燃性シート1の、前述した特定のヒートサイクル試験前後の透明性をより一層向上させる観点から、樹脂組成物層3とガラス繊維布2の屈折率とを近似させることができるものが好ましい。好ましい熱可塑性樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂等が挙げられる。例えば、ガラス繊維布2を構成するガラス繊維のガラス材料としてEガラスを用いた場合、屈折率の観点からは、これらの中でもポリ塩化ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂などが好ましい。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、用いるガラス繊維の屈折率に近似させることなどを目的として、屈折率の異なる2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明の不燃性シート1において、樹脂組成物層3を熱可塑性樹脂組成物層とする場合、ガラス繊維布2に含浸された部分は、ゾル状または溶媒に溶解した熱可塑性樹脂組成物を含浸、固化(加熱による固化や、乾燥による固化)させたものであることが好ましい。また、樹脂組成物層3のうちガラス繊維布2に含浸されていない部分は、ゾル状または溶媒に溶解した熱可塑性樹脂組成物を含浸、固化(加熱による固化や、乾燥による固化)させたものであってもよいし、フィルム状の熱可塑性樹脂組成物により形成されていてもよい。
【0032】
なお、不燃性シートを、例えば、後述するテンション式防煙垂壁とする場合等不燃性シートを接合する必要のある場合であって、不燃性シート同士の端部を高周波溶着加工により接合する場合、ガラス繊維布2が含浸される樹脂組成物層3が硬化樹脂組成物層であると、高周波溶着加工をおこなう不燃性シートの端部において、溶着加工前後の透明性が一層維持しやすくなる点で、好ましい。
【0033】
樹脂組成物層3を形成する樹脂組成物は、硬化促進剤、難燃剤、紫外線吸収剤、充填剤、光重合開始剤などの添加物をさらに含んでいてもよい。難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、トリクロロエチルホスフェート、トリアリルホスフェート、ポリリン酸アンモニウム、リン酸エステルなどが挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、タルクなどが挙げられる。光重合開始剤としては、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2,4,6,-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。中でも、樹脂組成物層3を構成する硬化性樹脂として硬化性アクリル樹脂を用いる場合は、透明性向上の観点から、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンが好ましい。これらの添加剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
本発明の不燃性シート1において、例えば図1に例示する態様のように、フィルム層4を積層しない場合は、例えば防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着を低減させる観点から、樹脂組成物層3は界面活性剤を含有することができる。すなわち、界面活性剤を使用することにより、例えば防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着を低減するという本発明の効果を奏することを図る場合、使用時に表面層となる層に界面活性剤を含有することができる。換言すれば、界面活性剤を使用することによって例えば防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着を低減するという本発明の効果を奏することを図る場合、使用時に表面層となる層に界面活性剤を含有させる必要がある。
【0035】
本発明において、界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、反応性界面活性剤が挙げられる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸およびその塩、アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩等が挙げられ、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体等やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のソルビタン誘導体等が挙げられ、両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。反応性界面活性剤としては、アルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルジアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩等の反応性二重結合を有する化合物が挙げられる。中でも、不燃性シートの、透明性と帯電防止性との両立を一層図る観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましい。
【0036】
一方で、本発明の不燃性シート1において、樹脂組成物層3又は後述するフィルム層4に界面活性剤を過剰に含有させると、不燃性シート1の透明性が損なわれる場合がある。これは、一般に界面活性剤が樹脂との相溶性に劣るためである。従って、例えば防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着を低減させる機能を担保しつつ、優れた透明性を得るという観点から、使用時に表面層となる樹脂組成物層3又はフィルム層4中の界面活性剤の含有量は、0.5~2.0質量%が挙げられ、0.5~1.5質量%が好ましく、0.5~1.0質量%がより好ましく、0.5~0.75質量%がさらに好ましい。また、上記と同様の観点から、使用時に表面層となる層に含まれる界面活性剤の質量(g/m)は、不燃性シート中0.5~2.0g/mが挙げられ、0.5~1.5g/mが好ましく、0.5~1.0g/mがより好ましく、0.5~0.75g/mがさらに好ましい。
【0037】
後述するように、本発明の不燃性シートにおいて、例えば防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着を低減するために、特定のヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下であることが必要である。当該表面抵抗率は、上記したような、フィルム層4を積層しない場合は樹脂組成物層3、又はフィルム層4を積層する場合はフィルム層4に界面活性剤のみを含有させる等により、達成可能となる。
【0038】
一方で、特定のヒートサイクル試験前後において表面抵抗率の上限値(1×1011Ω)をさらに低いものとしつつ、特定のヒートサイクル試験前後において表面抵抗率の変化をより一層低減させ、かつ、より優れた透明性を得る観点からは、前述した、例えば防煙垂壁としての使用時に表面層となる樹脂組成物層3又はフィルム層4中に界面活性剤を含有させるよりも、例えば、図4に示すように、フィルム層4を積層しない場合は樹脂組成物層3の表面側、又はフィルム層4を積層する場合はフィルム層4の表面側に、後述する金属又は金属化合物を含む帯電防止層6を備えることが好ましく、金属微粒子又は金属化合物微粒子を含む帯電防止層6を備えることがより好ましい。この理由として、本発明者等の検討によれば、第1に、前述のフィルム層4を積層しない場合は樹脂組成物層3、又はフィルム層4を積層する場合はフィルム層4に界面活性剤のみを含有させる場合、特定のヒートサイクル試験前後の表面抵抗率が1×1010Ω以下というより高い性能と、全光線透過率90%以上、ヘーズ20%以下というより高い透明性と、を両立することができないことが判明した。一方、フィルム層4を積層しない場合は樹脂組成物層3の表面側、又はフィルム層4を積層する場合はフィルム層4の表面側に金属又は金属化合物を含む帯電防止層6を備える態様の場合は、上記性能の両立を図ることができることが判明した。第2に、前述のフィルム層4を積層しない場合は樹脂組成物層3、又はフィルム層4を積層する場合はフィルム層4に界面活性剤のみを含有させる態様の場合、特定のヒートサイクル試験によって界面活性剤がブリードアウトし、特定のヒートサイクル試験前後において表面抵抗率の変化がしやすくなる場合があることが判明した。一方、フィルム層4を積層しない場合は樹脂組成物層3の表面側、又はフィルム層4を積層する場合はフィルム層4の表面側に金属又は金属化合物を含む帯電防止層6を備える態様の場合は、ブリードアウトの虞がないことから、特定のヒートサイクル試験前後において表面抵抗率の変化をより一層低減することができることが判明した。加えて、第3に、前述のフィルム層4を積層しない場合は樹脂組成物層3、又はフィルム層4を積層する場合はフィルム層4に界面活性剤のみを含有させる態様の場合、特に上記界面活性剤のブリードアウトにより、例えば防煙垂壁としての使用時における不燃性シート1の表面にベトツキが生じる場合があることが判明した。当該ベトツキが生じると、塵埃が一旦付着した場合、容易に取り除けない場合がある。一方、フィルム層4を積層しない場合は樹脂組成物層3の表面側、又はフィルム層4を積層する場合はフィルム層4の表面側に金属又は金属化合物を含む帯電防止層6を備える場合は、ベトツキの発生をより低減することができる。
【0039】
従って、例えば図1に示すように、本発明の不燃性シート1は、フィルム層4を積層しない場合、特定のヒートサイクル試験前後において表面抵抗率をさらに低いものとしつつ、特定のヒートサイクル試験前後において表面抵抗率の変化をより一層低減させ、かつ、より優れた透明性を得る観点から、樹脂組成物層3の表面側に金属又は金属化合物を含む帯電防止層6を備えることが好ましく、この場合、樹脂組成物層3は、ガラス繊維布2を除く樹脂組成物層3の全質量(g/m)に対する該樹脂組成物層3に含有される界面活性剤の質量(g/m)の割合が、1質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましく、0.01質量%以下が特に好ましく、0質量%が一層好ましい。また、本発明の不燃性シート1は、例えば図2、3に示すフィルム層4を設ける場合であって、フィルム層4に界面活性剤を含有させることにより防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着を低減させることを図る場合も、ガラス繊維布2を除く樹脂組成物層3の全質量(g/m)に対する該樹脂組成物層に含有される界面活性剤の質量(g/m)の割合が、1質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましく、0.01質量%以下が特に好ましく、0質量%が一層好ましい。また、本発明の不燃性シート1は、例えば図4に示すフィルム層4を設ける場合であって、樹脂組成物層3の表面側に金属又は金属化合物を含む帯電防止層6を備える場合も、ガラス繊維布2を除く樹脂組成物層3の全質量(g/m)に対する該樹脂組成物層3に含有される界面活性剤の質量(g/m)の割合が、1質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましく、0.01質量%以下が特に好ましく、0質量%が一層好ましい。
【0040】
本発明の不燃性シート1において、樹脂組成物層3の質量としては、例えば、20~400g/mが挙げられ、前述した特定のヒートサイクル試験前後の透明性と不燃性とをより両立するという観点から、20~250g/mが好ましく挙げられ、20~100g/mがより好ましく挙げられる。また、樹脂組成物層3の厚さとしては、例えば、20~500μmが挙げられ、前述した特定のヒートサイクル試験前後の透明性と不燃性とをより両立するという観点から、20~300μmが好ましく挙げられ、30~150μmがより好ましく挙げられる。
【0041】
本発明の不燃性シート1において、ガラス繊維布2と樹脂組成物層3との重量比は、前述した特定のヒートサイクル試験前後の透明性と不燃性とをより一層両立するという観点から、ガラス繊維布2及び樹脂組成物層3の合計質量に対する、ガラス繊維布2の質量の割合が5~50質量%が好ましく、10~35質量%がより好ましく、10~30質量%が特に好ましい。また、フォルム層4を設けた場合、ガラス繊維布2の、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を剥離後の不燃性シート1の全質量(すなわち、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を除く質量)中の割合(=ガラス繊維布2の質量(g)/使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を除く質量(g)×100(%))としては、例えば、3~20質量%が挙げられ、3~15質量%が好ましく挙げられ、3~10質量%がより好ましく挙げられる。
【0042】
(フィルム層4)
本発明の不燃性シート1において、フィルム層4は、必要に応じて、ガラス繊維布2に含浸された樹脂組成物層3上に積層され、不燃性シート1の前述した特定のヒートサイクル試験前後の透明性をより向上させつつ、初期引裂強度をより向上させる役割を果たす。
【0043】
フィルム層4は、特に制限されないが、ポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。ポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、可塑剤の量が少なくてもフィルム化が可能なものが挙げられ、ポリ塩化ビニル樹脂以外の非晶性の熱可塑性樹脂を含む2軸延伸フィルムが好ましく挙げられる。ポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリアミド樹脂が挙げられ、これらを少なくとも1種以上含むものとすることもできる。また、フィルム層4は、ポリ塩化ビニル樹脂を含まないものとすることもできる。不燃性シート1の初期引裂強度をより一層優れたものとする観点から、フィルム層4は、エレメンドルフ引裂伝播抵抗が、たて方向及びよこ方向ともに1N/mm以上のものが挙げられ、3~20N/mmのものが好ましく挙げられ、5~15N/mmのものがより好ましく挙げられる。中でも、耐薬品性(防煙垂壁として使用するときはアルカリ洗剤耐性を含む。)、初期引裂強の向上及び透明性をより一層両立させるという観点からは、フィルム層4は、ポリエステル樹脂を含むものとすることが好ましい。該ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリエチレンナフタレート(PEN)とすることが挙げられる。なお、エレメンドルフ引裂伝播抵抗は、株式会社東洋精機製作所製エレメンドルフ引裂機を用い、JIS K7128-2・1998に基づいて引裂強さ(N)を測定し、この測定値をフィルム厚みで除した引裂伝播抵抗(N/mm)を意味する。また、引裂強さは、たて方向及びよこ方向それぞれ20サンプルの試験結果の平均値とする。
【0044】
フィルム層4における可塑剤の含有量としては、例えば、10質量%以下が挙げられ、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく挙げられる。上記可塑剤としては、塩化ビニル樹脂の可塑剤として公知のものが挙げられ、例えば、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-n-オクチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジオチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、イソフタル酸ジ-2-エチルヘキシルなどのフタル酸系可塑剤、アジピン酸-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジ-2-デシル、セバチン酸ジブチル、セバチン酸-2-エチルヘキシルなどの脂肪酸エステル可塑剤、リン酸トリブチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸-2-エチルヘキシルジフェニル、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチルなどのトリメリット酸エステル系可塑剤、アジピン酸系ポリエステル可塑剤、フタル酸系ポリエステル可塑剤などのポリエステル系可塑剤、テレフタル酸系可塑剤が挙げられる。
【0045】
フィルム層4は、樹脂組成物層3側となる面(図2~4でいう、樹脂組成物層3の表面側部分31及び32に接する面)に、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、ケイ酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデン、アクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂等の無機粒子または有機粒子からなる粒子を含むことができる。これにより、樹脂組成物層3とフィルム層4との密着性が向上し、例えば、後述する保護フィルム5を不燃性シート1の使用時に剥離する際、樹脂組成物層3とフィルム層4とが剥離しにくくなる。当該効果は、後述する金属又は金属化合物微粒子を含む帯電防止層6をフィルム層4の表面側に積層した場合により一層顕著となる。すなわち、後述する金属又は金属化合物微粒子を含む帯電防止層6をフィルム層4の表面側に保護フィルム5と接するように積層した場合、保護フィルム5が帯電防止層6に対して幾分か剥離しづらくなる場合があるところ、上記のようにフィルム層4の樹脂組成物層3側となる面に上記無機粒子または有機粒子を含有させることにより、該無機粒子または有機粒子によるアンカー効果が働き、樹脂組成物層3とフィルム層4との密着性良く、保護フィルム5が剥離しやすくなる。フィルム層4には、必要に応じて、コロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施すことができ、また、易滑性、易接着性などの各種機能を付与するコーティング層、耐摩耗性を向上させるハードコート層等を設けたものであってもよい。
【0046】
例えば図4に示すようにフィルム層4の表面側に金属又は金属化合物を含む帯電防止層6を備える場合、特定のヒートサイクル試験前後において表面抵抗率をさらに低いものとしつつ、特定のヒートサイクル試験前後において表面抵抗率の変化をより一層低減させ、かつ、より優れた透明性を得る観点から、フィルム層4の全質量(g/m)に対するフィルム層4に含まれる界面活性剤の質量(g/m)の割合は、1質量%以下とすることが好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましく、0.01質量%以下が特に好ましく、0質量%が一層好ましい。
【0047】
本発明の不燃性シートにおいて、フィルム層4とするフィルムは、透明性及び平滑性に優れたものであることが好ましい。フィルム層4とするフィルムの透明性として、例えば、全光線透過率(JIS K 7105:1981)は90%以上が好ましく、91~98%がより好ましい。また、例えば、ヘーズ(JIS K 7105:1981)は1.5%以下が好ましく、0.3~1.0%がより好ましい。
【0048】
(金属又は金属化合物を含む帯電防止層6)
本発明の不燃性シート1は、前述した特定のヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下とすることが必要である。そして、前述のように、表面抵抗率がより低い1×1010Ω以下として防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着をより一層低減させ、さらに特定のヒートサイクル試験前後において表面抵抗率の変化をより一層低減させ、かつ、より優れた透明性を得る観点からは、フィルム層4を積層しない場合は樹脂組成物層3の表面側部分(図1でいう31、32)、又は、図2、3に示す、フィルム層4を積層する場合は該フィルム層4の表面側部分(図2、3でいう41、42)には、金属又は金属酸化物を含む帯電防止層6を含むことが好ましい。
【0049】
金属又は金属化合物を含む帯電防止層6において、含まれる金属元素としては、例えば、Ag、Ni、Cu、Sn、Sb、Al、In、Ti等が挙げられ、金属単体としたときの標準電極電位が0eV未満の金属元素が挙げられる。金属化合物としては、例えば、金属酸化物(五酸化アンチモン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、アンチモンドープ酸化インジウム、スズドープ酸化インジウム、酸化銀等)が挙げられる。また、帯電防止層6において、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ガラスなどからなる微粒子を含まないものとすることもできる。金属又は金属化合物の含有形態としては、例えば、蒸着、スパッタリング、めっき等による金属若しくは金属化合物薄膜、又は、金属若しくは金属化合物微粒子が固着樹脂中に分散された層とすることが挙げられる。上記金属又は金属化合物微粒子の形状としては、粒状、フレーク状、針状(繊維状)が挙げられる。金属又は金属化合物微粒子の平均粒子径としては、例えば、BET法を用いて求めた平均粒子径(窒素ガス吸着法により測定される比表面積(m/g)から常法により平均粒子径として算出される比表面積径)が可視光線の波長以下の100nm以下、好ましくは1~100nmとすることで、不燃性シート1の透明性をより維持しやすくなる。
【0050】
金属又は金属化合物を含む帯電防止層6を、金属又は金属化合物微粒子を含むものとする場合、金属又は金属化合物微粒子を基材に固着させる固着樹脂を含むことが好ましい。すなわち、帯電防止層6が、固着樹脂と、該固着樹脂中に分散される金属又は金属化合物微粒子と、を含む層とすることが好ましい。固着樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトールなどが挙げられ、特にポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂としては、例えば、変性アクリル樹脂(ウレタン変性、ポリエステル変性、ポリカーボネート変性、フッ素変性等)とすることができる。帯電防止層6の質量としては、前述した特定のヒートサイクル試験前後の表面抵抗率と透明性をより両立するという観点から、例えば、1層あたり、0.1~10g/mが挙げられ、0.1~5g/mが好ましく挙げられ、0.1~3g/mがより好ましく挙げられ、0.1~1g/mが特に好ましく挙げられる。また、金属又は金属化合物は、樹脂組成物層3又はフィルム層4の表面に存在することができる。そして、金属又は金属化合物を含む帯電防止層6を備えさせる、樹脂組成物層3又はフィルム層4の厚さ方向の中心から該層の厚さ10%範囲内(例えば、樹脂組成物層3又はフィルム層4の厚さが100μmのときは、厚さ方向における一方の表面からの距離50μmを中心とし、該一方の表面から40~60μmの範囲)において、金属又は金属化合物の含有量は、当該範囲に含まれる該層の質量に対して、例えば1質量%以下が挙げられ、0.1質量%以下が挙げられ、0.01質量%以下が挙げられる。また、帯電防止層6の厚さとしては、例えば、1層あたり、0.01~3μmが挙げられ、0.05~1μmが好ましく挙げられる。帯電防止層6における、固着樹脂と、金属又は金属化合物微粒子と、の質量比(固着樹脂の質量(g/m):金属又は金属化合物微粒子の質量(g/m))としては、前述した特定のヒートサイクル試験前後の表面抵抗率と透明性をより両立する観点から、10:1~1:1が好ましく、8:1~2:1がより好ましく、4:1~2:1が特に好ましい。また、金属又は金属化合物を含む帯電防止層6を設けた場合の表面平滑性としては、例えば、表面粗さRaが1~200nmが挙げられる。また、帯電防止層6の全質量(g/m)に対する、金属及び金属化合物微粒子の質量(g/m)の割合としては、50~10質量%が挙げられ、30~20質量%が好ましく挙げられる。
【0051】
(使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5)
本発明の不燃性シート1は、必要に応じて、樹脂組成物層3又はフィルム層4における表面側(帯電防止層6を樹脂組成物層3又はフィルム層4の表面側に備えさせる場合はさらに帯電防止層6の表面側)にさらに使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を積層することができる。これにより、例えば、本発明の不燃性シート1を防煙垂壁とする場合、施工時に不燃性シート1に傷等が発生し透明性や美感が低下するのを防ぎやすくなる。
【0052】
上記使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等を用いることができる。中でも、上記使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5として、光透過性の保護フィルムとすれば、例えば、前述した樹脂組成物層3を形成する樹脂組成物を光硬化性の硬化樹脂組成物とする場合に、当該硬化樹脂組成物を硬化させる工程においても樹脂組成物層3やフィルム層4に傷等が発生し透明性や美感が低下することを防ぎやすくなる点で好ましい。上記光透過性としては、光硬化性樹脂を硬化させる光を透過させれば特に制限されないが、例えば、100~400nmの波長の光を透過させるもの、250~400nmの波長の光を透過させるものが挙げられる。保護フィルム5の光線透過率としては、例えば、UV透過率測定器(株式会社島津製作所製商品名UV3150)にて測定する、測定波長250~400nm間の平均透過率が40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上が特に好ましい。
【0053】
なお、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5は、例えば防煙垂壁等、使用時に剥離されることから、透明性及び平滑性は特に制限されない。例えば、コストの観点から、全光線透過率は80~95%程度(JIS K 7105:1981)、ヘーズは2~10%程度(JIS K 7105:1981)が挙げられる。
【0054】
(不燃性シート1の物性、性能)
不燃性シートの下記ヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下であることが必要である。
<ヒートサイクル試験条件>
前記不燃性シートを100mm×100mmの大きさに切り出してサンプルとし、該サンプルを、予め温度23℃、相対湿度50%RHに初期設定しておいた恒温恒湿器(エスペック株式会社製商品名PSL-2KPH)に入れて、以下(1)~(5)を1サイクルとし、計10サイクルおこなう。
(1)温度23℃、相対湿度50%RHから、温度60℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を14分として、移行させる。
(2)上記温度60℃、相対湿度50%RHで、8時間保持する。
(3)上記温度60℃、相対湿度50%RHから、温度20℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を45分として、移行させる。
(4)上記温度20℃、相対湿度50%RHで、8時間保持する。
(5)上記温度20℃、相対湿度50%RHから、温度23℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を1分として、移行させる。
【0055】
本発明者等が検討したところ、例えば特許文献1~3に開示されたような不燃性シートは、上記特定のヒートサイクル試験前後の表面抵抗率が、1×1015程度であり、これに起因して、空気中に存在する塵埃の付着を十分防止できないものであることが判明した。そこで、本発明者等が鋭意検討したところ、上記特定のヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下とすることにより、上記塵埃の付着を低減できることが見出された。上記表面抵抗率として、より好ましくは、特定のヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1.0×1010Ω以下、5.0×10Ω以下が挙げられる。下限については特に制限されないが、例えば、1×10Ω以上が挙げられ、透明性をより一層向上する観点から、1.0×10Ω以上、より好ましくは1.0×10Ω以上、さらに好ましくは1.0×10Ω以上が挙げられる。
【0056】
なお、上記表面抵抗率は、JIS K 6911 1995 5.13.2抵抗率に準じ、測定装置としてアジレント・テクノロジー株式会社製ハイレジスタンスメータ4339Bを用い、引加電圧100V×1分として測定する。
【0057】
また、特定のヒートサイクル試験前後において表面抵抗率の変化をより一層低減させることを担保する観点から、特定のヒートサイクル試験前後における表面抵抗率の差(=特定のヒートサイクル試験後の表面抵抗率(Ω)-特定のヒートサイクル試験前の表面抵抗率(Ω))は1.0×1010Ω以下が好ましく、5.0×10Ω以下がより好ましい。
【0058】
本発明の不燃性シート1の厚さとしては、例えば、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を剥離後の不燃性シート1の厚さ(すなわち、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を除く厚さ)としては、100~500μm、好ましくは150~300μmが挙げられる。また、本発明の不燃性シート1の質量として、例えば、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を剥離後の不燃性シート1の質量(すなわち、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を除く質量)として、100~500g/mが挙げられ、150~300g/mが好ましく挙げられる。また、本発明の不燃性シート1において、前記樹脂組成物層及びフィルム層の合計質量が150~300g/m、より好ましくは150~250g/mであると、不燃性と引裂強度とを一層両立しやすくなるので好ましい。
【0059】
本発明の不燃性シート1においては、前述した特定のヒートサイクル試験前後の透明性を担保する観点から、前述した特定のヒートサイクル試験前後の全光線透過率は、85%以上が好ましく挙げられ、90%以上がより好ましく挙げられる。また、本発明の不燃性シート1の前述した特定のヒートサイクル試験前後のヘーズは、20%以下が好ましく挙げられ、10%以下がより好ましく挙げられ、5%以下がさらに好ましく挙げられ、3%以下が特に好ましく挙げられ、1%以下が一層好ましく挙げられる。不燃性シート1の全光線透過率及びヘーズは、それぞれ、JIS K7375 2008「プラスチック-全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に従って測定して得られた値である。
【0060】
上記のように前述した特定のヒートサイクル試験前後の高い透明性を担保するには、例えば防煙垂壁としての使用時に表面層となる層に界面活性剤を含有させる場合に界面活性剤の当該層中の含有量を適切なものとしたり、または、金属又は金属化合物を含む帯電防止層6を備えるようにすることの他、帯電防止層6における金属又は金属化合物の含有量を調整したり、ガラス繊維布の厚さ、ガラス繊維布2と樹脂組成物層3との屈折率差、ガラス繊維の平均フィラメント径、フィラメント本数、ガラスクロスの織密度を調整したりすること等が挙げられる。
【0061】
本発明の不燃性シート1においては、フィルム層4を設けると、初期引裂強度をより高いものとし得る。より高い初期引裂強度を担保する観点から、初期引裂強度は、30~100(N)が好ましく、40~100(N)がより好ましく、50~100(N)が特に好ましい。本発明において、初期引裂強度は、次のように測定、算出される。
(試験方法)
JIS R 3420:2013の7.16のC法(トラペゾイド法)に準じ、不燃性シートから75mm×150mmの試験片をたて方向、よこ方向にそれぞれ採取し、直角を含む2つの台形部(図5に例示する台形A部に相当)それぞれに裏表両面に滑り止めのためのテープ(積水化学株式会社製商品名600S)を貼付し、切れ目は入れずに、定速荷重型引張試験機(株式会社オリエンテック製商品名RTC-1310A)を用いておこない、最大荷重を測定し、たて方向最大荷重及びよこ方向最大荷重の平均値(=(たて方向最大荷重(N)+よこ方向最大荷重(N))/2)を初期引裂強度(N)とする。
【0062】
本発明の不燃性シート1は、ガラス繊維布2を含むため、燃えにくい性質(不燃性)を備えることができる。なお、本発明の不燃性シート1の不燃性としては、一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/mの輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えず、総発熱量が8MJ/m以下であることが好ましい。不燃性をより一層向上させるためには、例えば、樹脂組成物層3及びフィルム層4において、難燃剤の添加や有機物量の減量等を行なえばよい。
【0063】
本発明の不燃性シート1の製造方法としては、特に制限されず、例えば次のような製造方法が挙げられる。まず、上記のガラス繊維布2と、樹脂組成物層3を構成する未硬化の硬化樹脂組成物を準備する。該硬化樹脂組成物をフィルム層4とするフィルム(例えばポリエステルフィルム等)に塗布し、該硬化樹脂組成物の上にガラス繊維布2を載せてガラス繊維2に硬化樹脂組成物を含浸させ、さらに、フィルム層4とするフィルムをもう1枚ガラス繊維布2に載せ、2枚のフィルム層4それぞれの表面から圧力を加え、ガラス繊維布2に硬化樹脂組成物をさらに含浸させ、硬化樹脂組成物を加熱や光照射により硬化させて、ガラス繊維布2に硬化樹脂組成物層3が含浸され、該硬化樹脂組成物層3にフィルム層4が積層された、不燃性シート1(フィルム層4/ガラス繊維布2に含浸された状態で含まれる樹脂組成物層3/フィルム層4の順で積層された不燃性シート1)が得られる。なお、不燃性シート1がフィルム層4を含まないものとする場合は、上記フィルム層4に代えて使用時に剥離される保護フィルム5とし、該保護フィルム5を剥離すればよい。
【0064】
また、本発明の不燃性シート1の製造方法としては、次のような製造方法も挙げられる。まず、上記のガラス繊維布2と、樹脂組成物層3を構成する熱可塑性樹脂組成物を準備する。次に、フィルム層4とするフィルムを2枚準備し、熱可塑性樹脂組成物を当該フィルムに塗布し、該熱可塑性樹脂組成物の上にガラス繊維布2を載せてガラス繊維2に熱可塑性樹脂組成物を含浸させ、さらに、フィルム層4とするフィルムをもう1枚ガラス繊維布2に載せ、2枚のフィルム層4それぞれの表面から圧力を加え、ガラス繊維布2に硬化樹脂組成物をさらに含浸させ、熱可塑性樹脂組成物を乾燥、固化させることにより、ガラス繊維布2に熱可塑性樹脂組成物層3が含浸され、該熱可塑性樹脂組成物層3にフィルム層4が積層された、不燃性シート1(フィルム層4/ガラス繊維布2に含浸された状態で含まれる樹脂組成物層3/フィルム層4の順で積層された不燃性シート1)が得られる。
【0065】
帯電防止層6は、上記得られた不燃性シート1の表面側部分に設けることができる。また、フィルム層4を含むものとする場合は、予め帯電防止層6が設けられたフィルムを使用することもできる。帯電防止層6を設ける手段としては、公知の手段でよい。
【0066】
また、本発明の不燃性シートの製造方法としては、ガラス繊維布と、前記ガラス繊維布に含浸された状態で含まれる光硬化樹脂組成物層と、前記光硬化樹脂組成物層に積層された、フィルム層と、を含む不燃性シートの製造方法であって、光透過性の保護フィルムが積層された光透過性の熱可塑性樹脂フィルムを少なくとも2枚準備する工程Aと、ガラス繊維布が浸漬された未硬化の光硬化樹脂組成物を、前記工程Aで得られた前記熱可塑性樹脂フィルム2枚で、光透過性の保護フィルムが外側となるようにして挟んだ状態で、前記未硬化の光硬化樹脂組成物に光を照射し、前記未硬化の光硬化性樹脂組成物を硬化させる工程Bと、を含むものとすることができる。
【0067】
(本発明の不燃性シートの用途)
本発明の不燃性シートの用途としては、建築物の天井に垂下して取り付けられる、防煙垂壁とすることが挙げられる。防煙垂壁としては、ガラス布と樹脂との不燃性シートを用いた公知のものが挙げられ、例えば、建築物の天井面に配設された取付レールと、前記取付レールに上端部が保持されて吊り下げられた可撓性を有する不燃性シートと、前記不燃性シートの両側方に配置された一対の端部方立と、を備え、前記不燃性シートと前記端部方立とが分離自在に接合している防煙垂壁等が挙げられる。中でも、本発明の不燃性シートは、防煙垂壁使用時において最外層となる層が熱可塑性樹脂からなる層となる場合は、高周波溶着加工が可能となることから、テンション式防煙垂壁用として、好適に用いることができる。本発明において、テンション式防煙垂壁とは、2対の方立の間に不燃性シートが張設されてなる垂壁であり、例えば、天井に垂下されて設置される場合の不燃性シートの下部側に無目を有さない防煙垂壁が挙げられる。また、透明性を高めた場合、ガラスの代替と成り得ることから、ガラスが用いられている他の用途、例えば、パーティション、間仕切り、防煙シート、防煙カーテン(例えば工場などで使用されるもの)等に適用することもできる。また、本発明の不燃性シート1は、硬化性樹脂組成物層4の質量を、例えば、20~100g/m、より好ましくは20~50g/mとした場合は、より一層柔軟性に優れるものとなることから、ロール製品としやすくなる。当該ロール製品の長手方向長さとしては、例えば、5~300m等が挙げられる。
【実施例
【0068】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0069】
上記のガラス繊維布2に含浸させる、樹脂組成物層3を構成する樹脂組成物としては、表1の組成となるようにして、アクリルシラップ(株式会社菱晃製商品名「アクリシラップXD-8005」(屈折率1.550)及び「アクリシラップXD-8006」(屈折率1.570)を質量比で1:1となるよう混合したもの)、ビニルエステル樹脂(日本ユピカ株式会社製)、スチレンモノマー(日本ユピカ株式会社製)、2官能(メタ)アクリレート、光重合開始剤(IGM社製Omnirad 184)又は帯電防止剤としての界面活性剤(花王株式会社製「エレクトロストリッパーME-2」、固形分50質量%)の混合物を使用した。なお、硬化剤である2官能(メタ)アクリレートとしては、表1に記載のNPGDA(ネオペンチルグリコールジアクリレート、分子量212、(日本ユピカ株式会社製))を用いた。また、光重合開始剤の量は、アクリルシラップ100質量部、又は、ビニルエステル樹脂とスチレンモノマーと2官能(メタ)アクリレートの合計100質量部、に対して3質量部とした。フィルム層4としては、市販の東洋紡株式会社製2軸延伸ポリエステルフィルム(商品名「コスモシャイン(登録商標)A4300」、厚さ50μm、質量70g/m、全光線透過率(JIS K 7105:1981)93%、ヘーズ(JIS K 7105:1981)0.9%)、塩化ビニル樹脂としては市販の塩化ビニル樹脂フィルム(オカモト株式会社製、一般用PVC#320、厚さ100
μm、質量120g/m)を使用した。使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5
としては、ポリプロピレンフィルム(厚さ40μm、質量36g/m)の一方の面上にフィルム層4に対し剥離可能に接着させるアクリル酸エステル系粘着剤を塗布したもの、及び、PETフィルム(厚さ50μm、全光線透過率93%、ヘーズ4%)を用いた。
【0070】
<実施例1>
(ガラス繊維布2の製造)
経糸及び緯糸としてユニチカグラスファイバー株式会社製商品名「ECC1200 1/0 1.0Z」(平均フィラメント径4.5μm、平均フィラメント本数100本、撚り数1.0Z)を用い、エアージェット織機で製織し、経糸密度が90本/25mm、緯糸密度が90本/25mmの平織のガラス繊維織物を得た。ついで、得られたガラス繊維織物に付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.5MPaの水流加工でガラス繊維織物の張力を経方向が100N/mとしながら拡幅処理を1回施し、ガラス繊維布2とするガラス繊維織物を得た。得られたガラス繊維織物2は、経糸密度90本/25mm、緯糸密度90本/25mm、厚さ27μm、質量30g/m、屈折率1.561であった。
【0071】
(帯電防止層6のフィルム層4への積層)
上記フィルム層4とするコスモシャイン(登録商標)A4300の、一方の面上に、帯電防止層6を積層した。該帯電防止層6は、固着樹脂としてポリエステル樹脂中に、酸化スズ微粒子(平均粒子径20nm)を、固着樹脂と酸化スズ微粒子との質量比(固着樹脂:酸化スズ微粒子)が75:25となるようにして、混合、分散した帯電防止剤を、フィルム層4とするコスモシャイン(登録商標)A4300の一方の面上に塗布、乾燥することにより設けた。設けた帯電防止層6の質量は、0.5g/m、厚さは0.4μmであった。
【0072】
(使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5のフィルム層4(帯電防止層6側)への積層)
前述した、帯電防止層6を一方の面上に設けた、フィルム層4とするコスモシャイン(登録商標)A4300の該帯電防止層6上に、前述した使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とするポリプロピレンフィルムの一方の面上にアクリル酸エステル系粘着剤を付与したものを、当該粘着剤が上記帯電防止層6側となるように積層し、乾燥させて、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5/アクリル酸エステル系粘着剤/帯電防止層6/フィルム層4とするコスモシャイン(登録商標)A4300、の積層構造である積層体Aを得た。該積層体Aは2枚用意した。
【0073】
(不燃性シートの製造)
上記得られた積層体A1枚のコスモシャイン(登録商標)A4300面側(すなわち、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とは反対面側)に、樹脂組成物層3とする表1に記載の硬化樹脂組成物を塗布した。次に、樹脂組成物3とする該硬化樹脂組成物の上に、上記得られたガラス繊維布2を載せ、1分間静置してガラス繊維布2の隙間に上記の硬化樹脂組成物を含浸させた。次いで、上記得られた積層体Aのうち、もう一方を、該積層体Aのコスモシャイン(登録商標)A4300面側(すなわち、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とは反対面側)が硬化樹脂組成物3側となるように載せ、当該積層体Aの上からローラで硬化樹脂組成物層3の質量が90g/mとなるように加圧した。その後、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を積層したまま、樹脂組成物層3とする硬化樹脂組成物にブラックライト蛍光ランプ(株式会社東芝製商品名FL15BLB)を用いて光照射(光照射条件:積算光量200mJ/cm)して該硬化樹脂組成物を硬化させ、硬化樹脂組成物層3を形成し、図4に例示する積層構造(使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5/保護フィルム5とともに剥離可能なアクリル酸エステル系粘着剤/帯電防止層6/フィルム層4(コスモシャイン(登録商標)A4300)/ガラス繊維布2に含浸された状態で含まれる樹脂組成物層3/フィルム層4(コスモシャイン(登録商標)A4300)/帯電防止層6/保護フィルム5とともに剥離可能なアクリル酸エステル系粘着剤/使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5)である不燃性シートを得た。得られた不燃性シートにおいて、ガラス繊維布のガラス繊維間の隙間には、硬化樹脂組成物層3(樹脂組成物の硬化物)が含浸されており、ガラス繊維布の層の両面上には硬化樹脂組成物層3が形成されていた。
【0074】
<実施例2>
(ガラス繊維布2の製造)
経糸及び緯糸としてユニチカグラスファイバー株式会社製商品名「ECBC3000 1/0 0.5Z」(平均フィラメント径4μm、平均フィラメント本数50本、撚り数0.5Z)を用い、エアージェット織機で製織し、経糸密度が95本/25mm、緯糸密度が95本/25mmの平織のガラス繊維織物を得た。ついで、得られたガラス繊維織物に付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.5MPaの水流加工でガラス繊維織物の張力を経方向が100N/mとしながら拡幅処理を2回施し、ガラス繊維布2とするガラス繊維織物を得た。得られたガラス繊維織物2は、経糸密度95本/25mm、緯糸密度95本/25mm、厚さ13μm、質量12g/m、屈折率1.561であった。
【0075】
(帯電防止層6のフィルム層4への積層)
上記フィルム層4とするコスモシャイン(登録商標)A4300の、一方の面上に、帯電防止層6を積層した。該帯電防止層6は、固着樹脂としてポリエステル樹脂中に、酸化スズ微粒子(平均粒子径20nm)を、固着樹脂と酸化スズ微粒子との質量比(固着樹脂:酸化スズ微粒子)が75:25となるようにして、混合、分散した帯電防止剤を、フィルム層4とするコスモシャイン(登録商標)A4300の一方の面上に塗布、乾燥することにより設けた。設けた帯電防止層6の質量は、0.5g/m、厚さは0.4μmであった。
【0076】
(使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5のフィルム層4(帯電防止層6側)への積層)
前述した、帯電防止層6を一方の面上に設けた、フィルム層4とするコスモシャイン(登録商標)A4300の該帯電防止層6上に、前述した使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とするポリプロピレンフィルムの一方の面上にアクリル酸エステル系粘着剤を付与したものを、当該粘着剤が上記帯電防止層6側となるように積層し、乾燥させて、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5/アクリル酸エステル系粘着剤/帯電防止層6/フィルム層4とするコスモシャイン(登録商標)A4300、の積層構造である積層体Aを得た。該積層体Aは2枚用意した。
【0077】
(不燃性シートの製造)
上記得られた積層体A1枚のコスモシャイン(登録商標)A4300面側(すなわち、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とは反対面側)に、樹脂組成物層3とする表1に記載の硬化樹脂組成物を塗布した。次に、樹脂組成物3とする該硬化樹脂組成物の上に、上記得られたガラス繊維布2を載せ、1分間静置してガラス繊維布2の隙間に上記の硬化樹脂組成物を含浸させた。次いで、上記得られた積層体Aのうち、もう一方を、該積層体Aのコスモシャイン(登録商標)A4300面側(すなわち、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とは反対面側)が硬化樹脂組成物3側となるように載せ、当該積層体Aの上からローラで硬化樹脂組成物層3の質量が90g/mとなるように加圧した。その後、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を積層したまま、樹脂組成物層3とする硬化樹脂組成物にブラックライト蛍光ランプ(株式会社東芝製商品名FL15BLB)を用いて光照射(光照射条件:積算光量200mJ/cm)して該硬化樹脂組成物を硬化させ、硬化樹脂組成物層3を形成し、図4に例示する積層構造(使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5/保護フィルム5とともに剥離可能なアクリル酸エステル系粘着剤/帯電防止層6/フィルム層4(コスモシャイン(登録商標)A4300)/ガラス繊維布2に含浸された状態で含まれる樹脂組成物層3/フィルム層4(コスモシャイン(登録商標)A4300)/帯電防止層6/保護フィルム5とともに剥離可能なアクリル酸エステル系粘着剤/使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5)である不燃性シートを得た。得られた不燃性シートにおいて、ガラス繊維布のガラス繊維間の隙間には、硬化樹脂組成物層3(樹脂組成物の硬化物)が含浸されており、ガラス繊維布の層の両面上には硬化樹脂組成物層3が形成されていた。
【0078】
<実施例3>
(ガラス繊維布2の製造)
経糸及び緯糸としてユニチカグラスファイバー株式会社製商品名「ECBC3000 1/0 0.5Z」(平均フィラメント径4μm、平均フィラメント本数50本、撚り数0.5Z)を用い、エアージェット織機で製織し、経糸密度が95本/25mm、緯糸密度が95本/25mmの平織のガラス繊維織物を得た。ついで、得られたガラス繊維織物に付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.5MPaの水流加工でガラス繊維織物の張力を経方向が100N/mとしながら拡幅処理を2回施し、ガラス繊維布2とするガラス繊維織物を得た。得られたガラス繊維織物2は、経糸密度95本/25mm、緯糸密度95本/25mm、厚さ13μm、質量12g/m、屈折率1.561であった。
【0079】
(帯電防止層6のフィルム層4への積層)
上記フィルム層4とするコスモシャイン(登録商標)A4300の、一方の面上に、帯電防止層6を積層した。該帯電防止層6は、固着樹脂としてポリエステル樹脂中に、酸化スズ微粒子(平均粒子径20nm)を、固着樹脂と酸化スズ微粒子との質量比(固着樹脂:酸化スズ微粒子)が75:25となるようにして、混合、分散した帯電防止剤を、フィルム層4とするコスモシャイン(登録商標)A4300の一方の面上に塗布、乾燥することにより設けた。設けた帯電防止層6の質量は、0.5g/m、厚さは0.4μmであった。
【0080】
(使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5のフィルム層4(帯電防止層6側)への積層)
前述した、帯電防止層6を一方の面上に設けた、フィルム層4とするコスモシャイン(登録商標)A4300の該帯電防止層6上に、前述した使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とするポリプロピレンフィルムの一方の面上にアクリル酸エステル系粘着剤を付与したものを、当該粘着剤が上記帯電防止層6側となるように積層し、乾燥させて、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5/アクリル酸エステル系粘着剤/帯電防止層6/フィルム層4とするコスモシャイン(登録商標)A4300、の積層構造である積層体Aを得た。該積層体Aは2枚用意した。
【0081】
(不燃性シートの製造)
上記得られた積層体A1枚のコスモシャイン(登録商標)A4300面側(すなわち、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とは反対面側)に、樹脂組成物層3とする表1に記載の硬化樹脂組成物を塗布した。次に、樹脂組成物3とする該硬化樹脂組成物の上に、上記得られたガラス繊維布2を載せ、1分間静置してガラス繊維布2の隙間に上記の硬化樹脂組成物を含浸させた。次いで、上記得られた積層体Aのうち、もう一方を、該積層体Aのコスモシャイン(登録商標)A4300面側(すなわち、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とは反対面側)が硬化樹脂組成物3側となるように載せ、当該積層体Aの上からローラで硬化樹脂組成物層3の質量が40g/mとなるように加圧した。その後、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を積層したまま、樹脂組成物層3とする硬化樹脂組成物にブラックライト蛍光ランプ(株式会社東芝製商品名FL15BLB)を用いて光照射(光照射条件:積算光量200mJ/cm)して該硬化樹脂組成物を硬化させ、硬化樹脂組成物層3を形成し、図4に例示する積層構造(使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5/保護フィルム5とともに剥離可能なアクリル酸エステル系粘着剤/帯電防止層6/フィルム層4(コスモシャイン(登録商標)A4300)/ガラス繊維布2に含浸された状態で含まれる樹脂組成物層3/フィルム層4(コスモシャイン(登録商標)A4300)/帯電防止層6/保護フィルム5とともに剥離可能なアクリル酸エステル系粘着剤/使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5)である不燃性シートを得た。得られた不燃性シートにおいて、ガラス繊維布のガラス繊維間の隙間には、硬化樹脂組成物層3(樹脂組成物の硬化物)が含浸されており、ガラス繊維布の層の両面上には硬化樹脂組成物層3が形成されていた。
【0082】
<実施例4>
(ガラス繊維布2の製造)
経糸及び緯糸としてユニチカグラスファイバー株式会社製商品名「ECC1200 1/0 1.0Z」(平均フィラメント径4.5μm、平均フィラメント本数100本、撚り数1.0Z)を用い、エアージェット織機で製織し、経糸密度が90本/25mm、緯糸密度が90本/25mmの平織のガラス繊維織物を得た。ついで、得られたガラス繊維織物に付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.5MPaの水流加工でガラス繊維織物の張力を経方向が100N/mとしながら拡幅処理を1回施し、ガラス繊維布2とするガラス繊維織物を得た。得られたガラス繊維織物2は、経糸密度90本/25mm、緯糸密度90本/25mm、厚さ27μm、質量30g/m、屈折率1.561であった。
【0083】
(不燃性シートの製造)
使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とする厚さ50μmのPETフィルム上に、表1に記載の樹脂組成物層3とする硬化樹脂組成物を塗布した。次に、樹脂組成物の上に、上記得られたガラス繊維布2を載せ、1分間静置してガラス繊維布2の隙間に上記の硬化樹脂組成物を含浸させた。次いで、上から上記使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とするPETフィルムと同一製品のPETフィルムをもう1枚載せ、該PETフィルムの上からローラで硬化樹脂組成物層3の質量が90g/mとなるように加圧した。その後、上記の使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とするPETフィルムを積層したまま、樹脂組成物層3とする樹脂組成物にブラックライト蛍光ランプ(株式会社東芝製商品名FL15BLB)を用いて光照射(光照射条件:積算光量200mJ/cm)して樹脂組成物を硬化させ、硬化樹脂組成物層3を形成し、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5/ガラス繊維布2に含浸された状態で含まれる樹脂組成物層3/使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5、の積層構造である、不燃性シートを得た。得られた不燃性シートにおいて、ガラス繊維布2のガラス繊維間の隙間には、硬化樹脂組成物層3(樹脂組成物の硬化物)が含浸されており、ガラス繊維布の層の両面上には硬化樹脂組成物層3が形成されていた。
【0084】
<実施例5>
(ガラス繊維布2の製造)
経糸及び緯糸としてユニチカグラスファイバー株式会社製商品名「ECC1200 1/0 1.0Z」(平均フィラメント径4.5μm、平均フィラメント本数100本、撚り数1.0Z)を用い、エアージェット織機で製織し、経糸密度が90本/25mm、緯糸密度が90本/25mmの平織のガラス繊維織物を得た。ついで、得られたガラス繊維織物に付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.5MPaの水流加工でガラス繊維織物の張力を経方向が100N/mとしながら拡幅処理を1回施し、ガラス繊維布2とするガラス繊維織物を得た。得られたガラス繊維織物2は、経糸密度90本/25mm、緯糸密度90本/25mm、厚さ27μm、質量30g/m、屈折率1.561であった。
【0085】
(不燃性シートの製造)
使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とする厚さ50μmのPETフィルム上に、表1に記載の樹脂組成物層3とする硬化樹脂組成物を塗布した。次に、樹脂組成物の上に、上記得られたガラス繊維布2を載せ、1分間静置してガラス繊維布2の隙間に上記の硬化樹脂組成物を含浸させた。次いで、上から上記使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とするPETフィルムと同一製品のPETフィルムをもう1枚載せ、該PETフィルムの上からローラで硬化樹脂組成物層3の質量が90g/mとなるように加圧した。その後、上記の使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とするPETフィルムを積層したまま、樹脂組成物層3とする樹脂組成物にブラックライト蛍光ランプ(株式会社東芝製商品名FL15BLB)を用いて光照射(光照射条件:積算光量200mJ/cm)して樹脂組成物を硬化させ、硬化樹脂組成物層3を形成し、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5/ガラス繊維布2に含浸された状態で含まれる樹脂組成物層3/使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5、の積層構造である、不燃性シートを得た。得られた不燃性シートにおいて、ガラス繊維布2のガラス繊維間の隙間には、硬化樹脂組成物層3(樹脂組成物の硬化物)が含浸されており、ガラス繊維布の層の両面上には硬化樹脂組成物層3が形成されていた。
【0086】
<比較例1>
実施例1において、帯電防止層6の積層をおこなわなかった他は、実施例1と同様におこない、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5/保護フィルム5とともに剥離可能なアクリル酸エステル系粘着剤/フィルム層4(コスモシャイン(登録商標)A4300)/ガラス繊維布2に含浸された状態で含まれる樹脂組成物層3/フィルム層4(コスモシャイン(登録商標)A4300)/保護フィルム5とともに剥離可能なアクリル酸エステル系粘着剤/使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5、の積層構造である、比較例1の不燃性シートを得た。
【0087】
<比較例2>
(ガラス繊維布2の製造)
経糸及び緯糸としてユニチカグラスファイバー株式会社製商品名「ECC1200 1/0 1.0Z」(平均フィラメント径4.5μm、平均フィラメント本数100本、撚り数1.0Z)を用い、エアージェット織機で製織し、経糸密度が90本/25mm、緯糸密度が90本/25mmの平織のガラス繊維織物を得た。ついで、得られたガラス繊維織物に付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.5MPaの水流加工でガラス繊維織物の張力を経方向が100N/mとしながら拡幅処理を1回施し、ガラス繊維布2とするガラス繊維織物を得た。得られたガラス繊維織物2は、経糸密度90本/25mm、緯糸密度90本/25mm、厚さ27μm、質量30g/m、屈折率1.561であった。
【0088】
(フィルム層4への使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5の積層)
前述した、フィルム層4とするコスモシャイン(登録商標)A4300に、前述した使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とするポリプロピレンフィルムの一方の面上にアクリル酸エステル系粘着剤を付与したものを、当該粘着剤がコスモシャイン(登録商標)A4300側となるように積層し、乾燥させて、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5/アクリル酸エステル系粘着剤/フィルム層4とするコスモシャイン(登録商標)A4300、の積層構造である積層体Bを得た。該積層体Bは2枚用意した。
【0089】
(不燃性シートの製造)
上記得られた積層体B1枚のコスモシャイン(登録商標)A4300面側(すなわち、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とは反対面側)に、樹脂組成物層3とする表1に記載の硬化樹脂組成物を塗布した。次に、樹脂組成物層3とする該硬化樹脂組成物の上に、上記得られたガラス繊維布2を載せ、1分間静置してガラス繊維布2の隙間に上記の硬化樹脂組成物を含浸させた。次いで、上記得られた積層体Bのうち、もう一方を、該積層体Bのコスモシャイン(登録商標)A4300面側(すなわち、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とは反対面側)が硬化樹脂組成物3側となるように載せ、当該積層体Bの上からローラで硬化樹脂組成物層3の質量が90g/mとなるように加圧した。その後、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を積層したまま、樹脂組成物層3とする硬化樹脂組成物にブラックライト蛍光ランプ(株式会社東芝製商品名FL15BLB)を用いて光照射(光照射条件:積算光量200mJ/cm)して該硬化樹脂組成物を硬化させ、硬化樹脂組成物層3を形成し、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5/保護フィルム5とともに剥離可能なアクリル酸エステル系粘着剤/フィルム層4(コスモシャイン(登録商標)A4300)/ガラス繊維布2に含浸された状態で含まれる樹脂組成物層3/フィルム層4(コスモシャイン(登録商標)A4300)/保護フィルム5とともに剥離可能なアクリル酸エステル系粘着剤/使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5、の積層構造である比較例2の不燃性シートを得た。得られた不燃性シートにおいて、ガラス繊維布2のガラス繊維間の隙間には、硬化樹脂組成物層3(樹脂組成物の硬化物)が含浸されており、ガラス繊維布の層の両面上には硬化樹脂組成物層3が形成されていた。
【0090】
<比較例3>
(ガラス繊維布2の製造)
経糸及び緯糸としてユニチカグラスファイバー株式会社製商品名「ECBC3000 1/0 0.5Z」(平均フィラメント径4μm、平均フィラメント本数50本、撚り数0.5Z)を用い、エアージェット織機で製織し、経糸密度が95本/25mm、緯糸密度が95本/25mmの平織のガラス繊維織物を得た。ついで、得られたガラス繊維織物に付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.5MPaの水流加工でガラス繊維織物の張力を経方向が100N/mとしながら拡幅処理を2回施し、ガラス繊維布2とするガラス繊維織物を得た。得られたガラス繊維織物2は、経糸密度95本/25mm、緯糸密度95本/25mm、厚さ13μm、質量12g/m、屈折率1.561であった。
【0091】
(フィルム層4への使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5の積層)
前述した、フィルム層4とする塩化ビニル樹脂フィルム(オカモト株式会社製、一般用
PVC#320、厚さ100μm、質量120g/m)に、前述した使用時に剥離され
る剥離可能な保護フィルム5とするポリプロピレンフィルムの一方の面上にアクリル酸エステル系粘着剤を付与したものを、当該粘着剤が上記塩化ビニル樹脂フィルム側となるように積層し、乾燥させて、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5/アクリル酸エステル系粘着剤/フィルム層4とする塩化ビニル樹脂フィルム、の積層構造である積層体Cを得た。該積層体Cは2枚用意した。
【0092】
(不燃性シートの製造)
上記得られた積層体C1枚の塩化ビニル樹脂フィルム面側(すなわち、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とは反対面側)に、樹脂組成物層3とする表1に記載の硬化樹脂組成物を塗布した。次に、樹脂組成物層3とする該硬化樹脂組成物の上に、上記得られたガラス繊維布2を載せ、1分間静置してガラス繊維布2の隙間に上記の硬化樹脂組成物を含浸させた。次いで、上記得られた積層体Cのうち、もう一方を、該積層体Cの塩化ビニル樹脂フィルム面側(すなわち、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とは反対面側)が硬化樹脂組成物3側となるように載せ、当該積層体Cの上からローラで硬化樹脂組成物層3の質量が40g/mとなるように加圧した。その後、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を積層したまま、硬化樹脂組成物にブラックライト蛍光ランプ(株式会社東芝製商品名FL15BLB)を用いて光照射(光照射条件:積算光量200mJ/cm)して該硬化樹脂組成物を硬化させ、硬化樹脂組成物層3を形成し、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5/保護フィルム5とともに剥離可能なアクリル酸エステル系粘着剤/フィルム層4(塩化ビニル樹脂フィルム)/ガラス繊維布2に含浸された状態で含まれる樹脂組成物層3/フィルム層4(塩化ビニル樹脂フィルム)/保護フィルム5とともに剥離可能なアクリル酸エステル系粘着剤/使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5、の積層構造である比較例3の不燃性シートを得た。得られた不燃性シートにおいて、ガラス繊維布2のガラス繊維間の隙間には、硬化樹脂組成物層3(樹脂組成物の硬化物)が含浸されており、ガラス繊維布2の層の両面上には硬化樹脂組成物層3が形成されていた。
【0093】
<比較例4>
(ガラス繊維布の製造)
経糸及び緯糸としてユニチカグラスファイバー株式会社製商品名「ECBC3000 1/0 0.5Z」(平均フィラメント径4μm、平均フィラメント本数50本、撚り数0.5Z)を用い、エアージェット織機で製織し、経糸密度が95本/25mm、緯糸密度が95本/25mmの平織のガラス繊維織物を得た。ついで、得られたガラス繊維織物に付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.5MPaの水流加工でガラス繊維織物の張力を経方向が100N/mとしながら拡幅処理を2回施し、ガラス繊維布2とするガラス繊維織物を得た。得られたガラス繊維織物2は、経糸密度95本/25mm、緯糸密度95本/25mm、厚さ13μm、質量12g/m、屈折率1.561であった。
【0094】
(不燃性シートの製造)
使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とする厚さ50μmのPETフィルム上に、表1に記載の樹脂組成物層3とする硬化樹脂組成物を塗布した。次に、樹脂組成物の上に、上記得られたガラス繊維布2を載せ、1分間静置してガラス繊維布2の隙間に上記の硬化樹脂組成物を含浸させた。次いで、上から上記使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とするPETフィルムと同一製品のPETフィルムをもう1枚載せ、該PETフィルムの上からローラで硬化樹脂組成物層3の質量が90g/mとなるように加圧した。その後、上記の使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5とするPETフィルムを積層したまま、樹脂組成物層3とする樹脂組成物にブラックライト蛍光ランプ(株式会社東芝製商品名FL15BLB)を用いて光照射(光照射条件:積算光量200mJ/cm)して樹脂組成物を硬化させ、硬化樹脂組成物層3を形成し、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5/ガラス繊維布2に含浸された状態で含まれる樹脂組成物層3/使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5、の積層構造である、比較例4の不燃性シートを得た。得られた不燃性シートにおいて、ガラス繊維布2のガラス繊維間の隙間には、硬化樹脂組成物層3(樹脂組成物の硬化物)が含浸されており、ガラス繊維布2の層の両面上には硬化樹脂組成物層3が形成されていた。
【0095】
なお、実施例及び比較例において、ガラス繊維織物の織密度は、JIS R 3420
2013 7.9に従い、測定及び算出した。また、ガラス繊維織物の厚みは、JIS
R 3420 2013 7.10.1A法に従い、測定及び算出した。ガラス繊維織物の質量は、JIS R 3420 2013 7.2に従い、測定及び算出した。硬化樹脂組成物層3及びガラス繊維織物2の屈折率は、前述の方法で測定及び算出した。硬化樹脂組成物層3及びガラス繊維織物2のアッベ数は、上記の方法で測定及び算出した。以下の評価は、不燃性シートの製造後、1週間室内で放置してから行った。
【0096】
(ヒートサイクル試験及び該ヒートサイクル試験前後の表面抵抗率、全光線透過率、ヘーズ)
前述した方法によりおこなった。
【0097】
(防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着程度の確認)
得られた不燃性シートについて、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を剥離して(保護フィルム5とともに剥離可能なアクリル酸エステル系粘着剤を含む場合は該粘着剤ごと剥離して)上記特定のヒートサイクル試験をおこない、そして、該不燃性シートを20cm角にカットしたシートを、試験台上の15cm角の中に1mm角に切り出した紙片を50枚散布したその上に静置させ、その後静かにシートを上方に引き上げたときのシートに吸い付いた紙片の数により評価を行った。なお、使用した紙は厚さ0.1mm、質量70g/mの紙を使用した。
以下の基準により判定し、3点以上を合格とした。
3点・・・紙片が全く吸い付かなかった
2点・・・吸い付いた紙片が1~9枚
1点・・・吸い付いた紙片が10枚以上
【0098】
(初期引裂強度)
前述した方法によりおこなった。
【0099】
各評価結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例1~5は、特定のヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下とすることにより、例えば防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着を低減することができるものであった。一方、比較例1~4は、上記表面抵抗率が1×1011Ωを超えるものであったことから、防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着を低減することができないものであった。
【0102】
実施例4と5とを比較すると、実施例4は、不燃性シートに含有される界面活性剤の質量(g/m)が、1~1.5g/mであったことから、防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着を低減させる機能を担保しつつ、優れた透明性を得るものであった。さらに、実施例1~3は、防煙垂壁としての使用時に表面層となるように金属又は金属酸化物を含む帯電防止層6を備えることから、表面抵抗率がより低い1×1010Ω以下として防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着をより一層低減させ、さらに特定のヒートサイクル試験前後において表面抵抗率の変化をより一層低減させ、かつ、より優れた透明性を得るものであった。また、特定のヒートサイクル試験後において、実施例5及び比較例5はかなりベトツキが認められた一方、実施例1~3はほとんどベトツキが認められなかった。さらに、実施例1~3は、特定のヒートサイクル試験前後における表面抵抗率の差(=特定のヒートサイクル試験後の表面抵抗率(Ω)-特定のヒートサイクル試験前の表面抵抗率(Ω))が5.0×10Ω以下であり、安定した帯電防止性能を有することが確認された。また、実施例1~3は、フィルム層4を含むことから、初期引裂強度も優れたものであった。
【符号の説明】
【0103】
1・・・不燃性シート
2・・・ガラス繊維布
3・・・樹脂組成物層
31、32・・・樹脂組成物層の表面側部分
4・・・フィルム層
41、42・・・フィルム層の表面側部分
5・・・使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム
6・・・帯電防止層
図1
図2
図3
図4
図5