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特許7090886ジャワフトモモの水抽出物の加水分解物および該加水分解物を製造する方法ならびに該加水分解物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】ジャワフトモモの水抽出物の加水分解物および該加水分解物を製造する方法ならびに該加水分解物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20220620BHJP
   A61K 8/66 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 36/61 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20220620BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220620BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/66
A61K36/61
A61P17/00
A61P17/02
A61P17/04
A61P17/16
A61P17/18
A61P37/08
A61P39/06
A61Q19/00
A61Q19/02
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018075008
(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公開番号】P2019182777
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】518123752
【氏名又は名称】頂宏生物科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】江 春暉
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102228207(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104522617(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106010867(CN,A)
【文献】特開2002-003362(JP,A)
【文献】特開2002-275026(JP,A)
【文献】特開2001-220312(JP,A)
【文献】SUPAPVANICH, S. et al.,Effects of 'Queen' and 'Smooth cayenne' pineapple fruit core extracts on browning inhibition of fresh-cut wax apple fruit during storage,International Food Research Journal,2017年04月,Vol.24, No.2,page.559-564
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 36/00-36/9068
A61P 17/00-17/18
A61P 39/06
A23L 33/00-33/29
A01N 65/00-65/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャワフトモモの果実材料を水で抽出処理して水抽出物を得ることと、
前記水抽出物をブロメラインで加水分解処理することと、
を含む、ジャワフトモモの水抽出物の加水分解物を製造する方法。
【請求項2】
前記ジャワフトモモの果実材料の水に対する重量比が1:0.5から1:5の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水抽出物のブロメラインに対する重量比が150:1から600:1の範囲にある、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記加水分解処理の後に固液分離処理を行って前記加水分解処理により発生した固形分を除去することを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ジャワフトモモの果実材料はジャワフトモモの果肉を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ジャワフトモモの果実材料はジャワフトモモの果皮とジャワフトモモの種子を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ジャワフトモモの果実材料を水で抽出処理して水抽出物を得ることと、
前記水抽出物をブロメラインで加水分解処理することと、を含む方法により製造される、ジャワフトモモの水抽出物の加水分解物。
【請求項8】
前記ジャワフトモモの果実材料の水に対する重量比が1:0.5から1:5の範囲にある、請求項7に記載の加水分解物。
【請求項9】
前記水抽出物のブロメラインに対する重量比が150:1から600:1の範囲にある、請求項7または8に記載の加水分解物。
【請求項10】
前記方法は、前記加水分解処理の後に固液分離処理を行って前記加水分解処理により発生した固形分を除去することを更に含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の加水分解物。
【請求項11】
前記ジャワフトモモの果実材料はジャワフトモモの果肉を含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の加水分解物。
【請求項12】
前記ジャワフトモモの果実材料はジャワフトモモの果皮とジャワフトモモの種子を更に含む、請求項11に記載の加水分解物。
【請求項13】
請求項7~12のいずれか一項に記載の加水分解物を含む組成物。
【請求項14】
肌の美白のために用いられる請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
肌の保湿性の向上のために用いられる請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
創傷治癒の改善のために用いられる請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
酸化ストレスの軽減のために用いられる請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
局所投与剤形に形成された、請求項13~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
経口投与剤形に形成された、請求項13~17のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャワフトモモ(Syzygium samarangense)の水抽出物の加水分解物および該加水分解物を製造する方法に関する。また、本発明は、前記加水分解物の、肌の美白、肌の保湿性向上、創傷治癒の改善、および酸化ストレスの軽減のための使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は人体における最大のバリアであり、水分の喪失、病原体の侵入、および様々な有害な環境による損傷を防ぐことができる。しかし、紫外線(UV)、電離放射線、薬物、生体異物に過度に曝されると、皮膚において活性酸素種(ROS)やフリーラジカルが産生される。蓄積された活性酸素種やフリーラジカルの量が細胞や組織の抗酸化能を超えると、酸化ストレスを引き起こす。具体的には、活性酸素種やフリーラジカルが細胞の構成要素(DNA、タンパク質、脂質等)と反応することにより、皮膚が悪影響を受ける。活性酸素種やフリーラジカルが、メラニン生成に重要な役割を果たすだけでなく、創傷治癒の遅延をも引き起こすという報告がなされている(Kim Y.J. and Yokozawa T. (2009), Biol. Pharm. Bull., 32:1155-1159; 及び Kurahashi T. and Fujii J. (2009), J. Dev. Biol., 3:57-70)。
【0003】
メラニン形成は、チロシナーゼの触媒作用および一連の酸化還元反応の下で、メラノサイトのチロシンがメラニンに変換されるプロセスである。メラニン形成は、通常、UV照射(特にUV-B)によって誘導される。皮膚が紫外線に曝されると、ケラチノサイトで生成されたROSおよびフリーラジカルは、腫瘍タンパク質53(p53)の発現を誘導し、それによってプロオピオメラノコルチン遺伝子(POMC遺伝子)の発現を引き起こし、α-メラノサイト (α‐MSH)および副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)などのPOMC由来ペプチドを放出する。更に、メラノサイト中のチロシン遺伝子が発現され、大量のメラニンが皮膚上に蓄積する。
【0004】
皮膚がダメージ(例えば、うっ血、外傷、外科的損傷、挫傷など)を受けて傷口ができると、創傷部位で炎症反応が誘発される。このとき、免疫細胞の抗病原体作用を増強するために、膨大な量のROSとフリーラジカルが放出される。しかしながら、過剰なROSおよびフリーラジカルは、傷口の周囲にある組織に損傷を引き起こす。一方、創傷治癒の過程では、線維芽細胞が創傷部位で凝集及び増殖して成長因子を放出し、それにより血管新生、上皮化、コラーゲン再形成などが促される。しかし、過剰のROSおよびフリーラジカルは、血管新生を阻害するだけでなく、シグナル伝達経路に関与する酵素を不活性化させ、よって創傷治癒が妨げられる。
【0005】
近年、肌の美白、保湿、創傷治癒の促進、抗酸化の需要が高まっている。特に、肌に望ましくない有害な副作用を引き起こさない天然成分の使用は、美容医学の分野におけるトレンドとなっている。従って、健康産業及び化粧品業界の研究者は、そのような大きな需要を満たすために、伝統的中国医薬(TCM)又は植物から、美白、保湿、創傷治癒及び抗酸化に作用の有る安全な有効成分を探すことに努めている。
【0006】
ジャワフトモモ(学名:Syzygium samarangense、一般名:レンブ(蓮霧)、中国語ピンイン:lian wu)は、フトモモ科(Myrtaceae)フトモモ属(Syzygium)に属し、対生で楕円形状の単葉をつけ、淡黄色の花冠を有する腋花が咲き、そして倒円錐形の果実が実る多年生常緑樹である。ジャワフトモモは、台湾、インドネシア、フィリピン、マレーシアなどに分布している。ジャワフトモモの果実の一般的な品種としては、ダークレッド品種、ペールレッド品種、「黒真珠(Black Pearl)」、「黒金剛(Black King Kong)」、「黒鑚石(Black Diamond)」などが挙げられ、広く食用されている。中国民間医療において、ジャワフトモモの果実は、肺の滋養、鎮咳、去痰、涼血、収斂促進に使用されている。更に、ジャワフトモモの果実は、解熱、利尿、ストレス緩和に有効であると考えられている。
【0007】
ジャワフトモモはその抽出物の医薬品分野への応用が研究されている。例えば、輔仁大学(台湾)の食品栄養学科の羅珮文(Pei-Wen Lo)による論文「台湾特有果実の抗酸化・フリーラジカル消去活性の評価」では、ジャワフトモモの果実及びその他の種類の果実の抗酸化作用の調査結果が報告されている。具体的には、14種類の果実(オレンジ(Citrus sinensis Osbeck)、タンカン(Citrus tankan Hayata)、文旦(Citrus grandis (L) Osbeck)、晩白柚(Citrus grandis Osbeck)、キンカン(Citrus micro carpa)、イチゴ(Fragaria ananassa Duch)、ドラゴンフルーツ(Hylocereus undatus)、ジャワフトモモ(Syzygium samarangense)、柿(Diospyros kaki L.)、マンゴー (Mangifera indica L.)、パパイヤ(Carica papaya L.)、ナツメ(Zizyphus jujuba)、スターフルーツ(Averrhoa carambola L.)、およびグァバ(Psidium guajava L.)の果実)を凍結乾燥した後に挽いて粉末にする。それぞれの果実の粉末10gをメタノール100mLで6時間抽出処理した後、ろ紙でろ過処理し、得られたろ液を濃縮乾固した。これにより得られた14種の果実のメタノール抽出物につき抗酸化作用が試験された。実験の結果、上記の14種の果実のメタノール抽出物が異なる試験において異なるレベルの活性を呈したことが示された。具体的には、α, α-ジフェニル-β-ピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル消去能の試験により、ジャワフトモモの果実材料(果皮および果肉を含む)のメタノール抽出物は、DPPHラジカル消去能が最も低いことが判明した。更に、スーパーオキシドアニオン生成を阻害する能力の試験の結果、ジャワフトモモの果実材料のメタノール抽出物は、スーパーオキシドアニオン生成を阻害することができず、むしろスーパーオキシドアニオン生成を誘導することが明らかになった。
【0008】
また、嘉南薬理大学(台湾)の化粧品研究所の陳宜貞(Yi-Zhen Chen)による論文「ジャワフトモモの花の抽出物の抗酸化における応用」(Application of Extracts from Wax Apple Flowers on Antioxidantion")に記載されているように、ジャワフトモモの花における抗酸化効力およびチロシナーゼ阻害能が調査されている。具体的には、ジャワフトモモの花の乾燥粉末50gを80%メタノール500mlで1時間抽出処理する。その後、ろ紙を用いてろ過処理を行う。得られた2つのろ液を濃縮し、凍結乾燥し、ジャワフトモモの花のメタノール抽出物およびジャワフトモモの花の水抽出物を得た。これら2つの抽出物に対して、抗酸化効力およびチロシナーゼ阻害活性に関する試験が行われた。大部分の抗酸化作用試験(即ち、スーパーオキシドアニオン消去能、脂質過酸化阻害活性、第一鉄イオンキレート化能の試験)において、上記水抽出物の抗酸化作用が上記メタノール抽出物の抗酸化作用よりも優れていることが発見された。しかしながらこれらの結果は、上記メタノール抽出物のチロシナーゼ阻害能が上記水抽出物のチロシナーゼ阻害能よりも顕著に優れていることを示している。
【0009】
台湾特許第I465258号は、ジャワフトモモの花のエタノール抽出物(肌の美白とアンチエイジング効果を有する)およびその調製方法を開示している。上記調製方法は、ジャワフトモモの花の乾燥粉末を95%エタノールで抽出処理した後、ろ過処理を行い、得られたろ液を濃縮処理する工程を含む。また、上記ジャワフトモモの花のエタノール抽出物が抗酸化剤、チロシナーゼ阻害剤として作用し、コラーゲン生成を促進することが実験から検証されている。
【0010】
中国特許出願公開第102228207号は、ジャワフトモモおよびそれによって得られた生成物を処理するための方法を開示している。この方法では、ジャワフトモモと水とを混合し、塩酸を用いてpHを3.5に調整し、ペプシンを用いて酵素加水分解反応を行う。続いて、得られたペプシン加水分解物のpHをNaOHを用いて7.5に調整し、トリプシンを用いて酵素加水分解反応を行う。このようにして得られたトリプシン加水分解物を遠心分離し、得られた上澄みを回収し、ろ過する。このようにして得られたろ液を濃縮処理することにより、生成物が得られる。このように処理された生成物は、肺の乾燥や咳、痔による出血、消化不良、腸炎や赤痢の治療に有効であることが実験により証明されている。
【0011】
上記の文献が既にあるが、この分野の研究者は、ジャワフトモモからより満足できる生物活性成分を探し出すことを試みている。これまでの研究において本願出願人は、ジャワフトモモの果実材料の水抽出物が、チロシナーゼの活性阻害、肌の保湿性向上、創傷治癒の改善に多少の効果があることを突き止めている(なお、このような発見は未発表である)。更なる研究において、本願出願人は、ジャワフトモモの果実材料から得られた水抽出物をブロメラインで加水分解することによって調製された加水分解物は、意外にも水抽出物そのものと比べて、チロシナーゼの活性をより効果的に阻害し、肌の保湿性を向上させ、創傷治癒を改善させられることを発見した。したがって、ジャワフトモモの水抽出物の加水分解物は、化粧品または医薬組成物のための有効成分として役立つことが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】台湾特許第I465258号
【文献】中国特許出願公開第102228207号
【非特許文献】
【0013】
【文献】Kim Y.J. and Yokozawa T. (2009), Biol. Pharm. Bull., 32:1155-1159
【文献】Kurahashi T. and Fujii J. (2009), J. Dev. Biol., 3:57-70
【文献】輔仁大学(台湾)食品栄養学科、羅珮文(Pei-Wen Lo)、「台湾特有果実の抗酸化・フリーラジカル消去活性の評価」
【文献】嘉南薬理大学(台湾)、化粧品研究所、陳宜貞(Yi-Zhen Chen)、「ジャワフトモモの花の抽出物の抗酸化における応用」(Application of Extracts from Wax Apple Flowers on Antioxidantion")
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、第1の態様において、本発明は、ジャワフトモモの果実材料を水で抽出処理して水抽出物を得ることと、前記水抽出物をブロメラインで加水分解処理することと、を含む、ジャワフトモモの水抽出物の加水分解物を製造する方法を提供する。
第2の態様において、本発明は、ジャワフトモモの果実材料を水で抽出処理して水抽出物を得ることと、前記水抽出物をブロメラインで加水分解処理することと、を含む方法により製造されるジャワフトモモの水抽出物の加水分解物を提供する。
第3の態様において、本発明は、上記ジャワフトモモの水抽出物の加水分解物を含む組成物を提供する。
第4の態様において、本発明は、肌の美白のための手段を提供する。該手段は、対象への上記組成物の投与を含む。
第5の態様において、本発明は、肌の保湿性向上のための手段を提供する。該手段は、対象への上記組成物の投与を含む。
第6の態様において、本発明は、創傷治癒の改善のための手段を提供する。該手段は、対象への上記組成物の投与を含む。
第7の態様において、本発明は、酸化ストレスの軽減のための手段を提供する。該手段は、対象への上記組成物の投与を含む。
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照する以下の実施形態の詳細な説明において明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1で製造したBHWESS(ジャワフトモモの水抽出物のブロメライン加水分解物)のHPLC溶出プロファイルである。
図2】実施例1で製造したBHWESSと実施例3で製造したAPHWESS(ジャワフトモモの水抽出物の動物由来プロテアーゼ加水分解物)の第一鉄イオンキレート化能を示す。
図3】実施例1で製造したBHWESSおよびWESS(ジャワフトモモの水抽出物)のチロシナーゼ活性阻害効果を示し、記号「###」は対照試料と比較してp<0.001であることを表し、記号「***」はWESS試料と比較してp<0.001であることを表す。
図4】実施例1で製造したBHWESSおよびWESSの創傷治癒における改善効果を示し、記号「##」は対照群と比較してp<0.01であることを表し、記号「**」はWESS群と比較してp<0.01であることを表す。
図5】実施例1で製造したBHWESSおよび実施例3で製造したAPHWESSの創傷治癒における改善効果を示し、記号「###」は対照群と比較してp<0.001であることを表し、記号「***」はAPHWESS群と比較してp<0.001であることを表す。
図6】実施例1で製造したBHWESSおよびWESSの角質層含水量向上効果を示しており、記号「###」は対照エリアと比較してp<0.001であることを表し、記号「**」、「***」はそれぞれWESSエリアと比較してp<0.01、p<0.001であることを表す。
図7】実施例1で製造したBHWESSおよび実施例3で製造したAPHWESSの角質層含水量向上効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明において先行技術文献を引用する場合があるが、これら引用は、当該文献が本発明が属する技術分野における一般常識の一部を形成していることを認めるものではないことを理解されたい。
また、以下の説明において、「~を含む」とは、「~を含むがそれには限らない」ことを意味する。
ここで用いられる全ての技術的及び学術的用語は、特に定義がない限り、本発明が属する分野において通常の知識を有する者が通常理解する意味で用いられる。
更に、当業者であれば、本明細書に記載されているものと類似または同等の多くの方法および材料が、本発明の実施において使用され得ることを理解するであろう。本発明は、明示された方法および材料に限定されない。
【0017】
本願出願人は、長期間使用するのに安全なスキンケア組成物を開発するために、様々な方法を用いてジャワフトモモ果実の抽出物を得ることを試みた。本願出願人は、ジャワフトモモ果実の水抽出物をブロメラインで加水分解することにより製造された加水分解物が、水抽出物そのものよりも、第一鉄イオンキレート化の促進(即ち、酸化防止剤として機能する)、チロシナーゼ阻害活性、肌の保湿性向上、創傷治癒の改善においてより効果的であることを発見した。
【0018】
したがって、本発明は、ジャワフトモモの水抽出物の加水分解物と、それを製造する方法を提供する。本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物は、ジャワフトモモの果実材料を水で抽出処理して水抽出物を得ることと、前記水抽出物をブロメラインで加水分解処理することと、を含む方法により製造される。
【0019】
本発明において、ジャワフトモモの果実材料は、ジャワフトモモの果肉を含む。実施形態によっては、ジャワフトモモの果実材料は更にジャワフトモモの果皮と種子とを含む。
【0020】
本発明において、ジャワフトモモの果実材料は、栽培品種が異なる各種のジャワフトモモ果実から得ることができる。実施形態によって、ジャワフトモモの果実材料は、「黒真珠(Black Pearl)」、ダークレッド品種、ペールレッド品種、ピンク品種(南洋種とも)、「黒鑚石(Black Diamond)」、「黒金剛(Black King Kong)」から選ばれる栽培品種に属する1種または2種以上のジャワフトモモ果実から得られる。例示的な実施形態において、ジャワフトモモの果実材料は、「黒真珠(Black Pearl)」品種に属するジャワフトモモの果実から得られる。
【0021】
本発明において、ジャワフトモモの果実材料を得るためのジャワフトモモ果実は成熟度に幅があってよい。実施形態によっては、ジャワフトモモの果実材料は、開花1ヵ月後に収穫された未熟なジャワフトモモ果実から得られる。
【0022】
本発明において、水で抽出されるジャワフトモモの果実材料は、新鮮なジャワフトモモの果実材料であってもよく、あるいは、乾燥させる、粉砕する、切り刻む、微粉砕するといった処理あるいはこれら処理を組み合わせた処理を、水による抽出処理前に行なってもよい。
【0023】
本発明において、水による抽出処理は、当業者にとってよく知られた技術を用いて実行することができる。例えば、水による抽出処理は、前述の嘉南薬理大学(台湾)の化粧品研究所の陳宜貞(Yi-Zhen Chen)による論文に示されている方法に従って行なうことができる。
【0024】
本発明の開示において、ジャワフトモモの果実材料の水に対する重量比は1:0.5から1:5の範囲にある。本発明の一実施形態において、ジャワフトモモの果実材料の水に対する重量比は1:1.5である。
【0025】
本発明において、水による抽出処理は35℃~65℃の温度下で行なうことができる。本発明の一実施形態において、水による抽出処理は50℃の温度下で行なわれる。
【0026】
なお、水による抽出処理の条件は、所望の抽出結果を得るために、いくつかの要因(例えばジャワフトモモの果実材料の前処理、ジャワフトモモの果実材料の水に対する重量比など)によって変化する。
【0027】
本発明の開示において、水抽出物のブロメラインに対する重量比は150:1から600:1の範囲にある。本発明の一実施形態において、水抽出物のブロメラインに対する重量比は200:1である。
【0028】
本発明において、ブロメラインによる加水分解処理は、30℃~60℃の温度範囲で3時間~6時間行うことができる。本発明の一実施形態において、ブロメラインによる加水分解処理は、45℃で4時間行われる。
【0029】
なお、ブロメラインによる加水分解処理の条件は、所望の加水分解処理結果を得るために、諸要因(例えばブロメラインの水に対する重量比など)によって変化する。
【0030】
本発明において、ジャワフトモモの水抽出物の加水分解物の製造工程は、加水分解処理の後に固液分離処理を行い、加水分解処理により発生した固形分を除去する工程を更に含めてもよい。固液分離処理は、当業者に周知の技術を用いて行うことができる。固液分離処理の具体例としては、ろ過、遠心分離、デカンテーション等が挙げられるが、これらに限らない。 本発明の一実施形態では、固液分離処理は、遠心分離工程およびその後のろ過工程を含む。
【0031】
本願出願人は、本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物が、以下に記載される生物学的効果を有することを見出した。
【0032】
第1に、本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物がチロシナーゼ活性を効果的に阻害できることをインビトロ実験によって確認した。従って、本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物は、肌の美白に有効であることが期待される。
【0033】
なお、本明細書において、「肌を美白する」、「肌の色を明るくする」、「肌を白くする」、「肌を明るくする」、「メラニンを淡色化する」、「メラニン生成を抑制する」、および「メラニン合成を阻害する」という用語は、ほぼ同義で用いられる。
【0034】
第2に、本願出願人による予備的なヒト試験の結果、本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物は、望ましくない副作用を招くことなく角質層の含水量を効果的に増加させることができることが示された。従って、本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物は、肌の保湿性を高める上で有用であると期待される。
【0035】
第3に、本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物は、線維芽細胞を介する創口閉鎖の改善に有効であることがインビトロ実験により証明された。このように、本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物は、創傷治癒の改善に使用することができると考えられる。
【0036】
第4に、本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物は、優れた第一鉄イオンキレート化能を有することがインビトロ実験によって証明された。したがって、本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物は、酸化ストレスを軽減するための抗酸化剤として使用することができる。
【0037】
第5に、本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物は、抗酸化活性を有することから、皮膚の老化予防や老化遅延に効果的であることが期待される。
【0038】
なお、本明細書中で使用される場合、「遅延」という用語は、疾患または障害の1つ以上の臨床的徴候を治療、軽減、緩和、改善、鎮静または抑制し、症状または症状に関する重症度の進行を緩和、停止、逆行させることを意味する。
【0039】
また、本明細書で使用される場合、「皮膚の老化」という用語は、自然に起こる内因性の皮膚の老化、および、環境因子(例えば紫外線)によって引き起こされる外因性の皮膚の老化を包含することを意図する。皮膚の老化現象には、毛細血管の拡張、表皮の薄化、皮膚の萎縮、肌のきめが粗くなること、乾燥、しわ形成および色素変化(例えばほくろ、そばかす、低色素沈着または色素沈着過多など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
したがって、本発明は、肌の美白、肌の保湿性向上、創傷治癒の改善、酸化ストレスの軽減、皮膚の老化の防止や遅延に適した、上記ジャワフトモモの水抽出物の加水分解物を含む組成物(以下単に組成物とも)を提供する。
【0041】
また、本発明は、上記組成物を用いる以下の手段を提供する。
第一に、本発明は、上記組成物を対象に投与することを含む、肌の美白のための方法を提供する。有効量の組成物が、被験者の皮膚が有意に白くなるまで十分な時間投与され得る。上記組成物は有効量であっても被験者の皮膚に有害な副作用を引き起こさない。
【0042】
本発明において、肌の美白のための組成物の投与量および頻度は、以下の因子によって変化する。すなわち、皮膚におけるメラニン淡色化の対象エリアの初期状態、投与経路、達成したい美白効果の程度によって組成物の投与量および頻度は変化する。例えば、本発明による局所投与のための組成物の投与量は、皮膚エリア1平方cmあたり1~10mgとすることができ、そして1日当たり1~3回投与され得る。特定の実施形態において、経口投与のための組成物の投与量は、体重1kgあたり0.05~5mgとすることができ、そして1日に1~3回投与され得る。
【0043】
第二に、本発明は、上記組成物を被験体に投与することを含む、肌の保湿性を向上する手段を提供する。有効量の組成物が、被験者の肌の保湿性が有意に向上されるまで十分な時間投与され得る。上記組成物は有効量であっても皮膚に有害な副作用を引き起こさない。
【0044】
本発明において、肌の保湿性を高めるための組成物の投与量および頻度は、以下の因子によって変化する。すなわち、皮膚における保湿性向上の対象エリアの初期状態、投与経路、および達成したい保湿性向上効果の程度によって組成物の投与量および頻度は変化する。例えば、本発明による局所投与のための組成物の投与量は、皮膚エリア1平方cmあたり1~10mgとすることができ、そして1日当たり1~3回投与され得る。特定の実施形態において、経口投与のための組成物の投与量は、体重1kgあたり0.05~5mgとすることができ、そして1日に1~3回投与され得る。
【0045】
第三に、本発明は、上記組成物を被験体に投与することを含む、創傷治癒を改善する手段を提供する。有効量の組成物が、創傷領域が有意に減少するまで十分な時間投与され得る。上記組成物は有効量であっても創傷に対して有害な副作用を引き起こさない。
【0046】
本発明において、創傷治癒を改善するための組成物の投与量および頻度は、以下の因子によって変化する。すなわち、創傷の程度、投与経路、および達成したい治癒効果の程度によって組成物の投与量および頻度は変化する。例えば、本発明による局所投与のための組成物の投与量は、皮膚エリア1平方cmあたり1~10mgとすることができ、そして1日当たり1~3回投与され得る。特定の実施形態において、経口投与のための組成物の投与量は、体重1kgあたり0.05~5mgとすることができ、そして1日に1~3回投与され得る。
【0047】
第四に、本発明は、上記組成物を被験体に投与することを含む、酸化ストレスを軽減する手段を提供する。有効量の組成物が、酸化ストレスが有意に軽減されるまで十分な時間投与され得る。上記組成物は有効量であっても被験者に対して副作用を引き起こさない。
【0048】
本発明において、酸化ストレスを軽減するための組成物の投与量および頻度は、以下の因子によって変化する。すなわち、酸化ストレスの程度、投与経路、および達成したい抗酸化効果の程度によって組成物の投与量および頻度は変化する。例えば、本発明による局所投与のための組成物の投与量は、皮膚エリア1平方cmあたり1~10mgとすることができ、そして1日当たり1~3回投与され得る。特定の実施形態において、経口投与のための組成物の投与量は、体重1kgあたり0.05~5mgとすることができ、そして1日に1~3回投与され得る。
【0049】
第五に、本発明は、上記組成物を被験体に投与することを含む、皮膚の老化を防止または遅延する手段を提供する。有効量の組成物が、少なくとも一種の皮膚の老化現象が有意に改善されるまで十分な時間投与され得る。上記組成物は有効量であっても被験者に対して副作用を引き起こさない。
【0050】
本発明において、皮膚の老化を防止または遅延するための組成物の投与量および頻度は、以下の因子によって変化する。すなわち、皮膚の老化現象の程度、投与経路、および達成したい効果の程度によって組成物の投与量および頻度は変化する。例えば、本発明による局所投与のための組成物の投与量は、皮膚エリア1平方cmあたり1~10mgとすることができ、そして1日当たり1~3回投与され得る。特定の実施形態において、経口投与のための組成物の投与量は、体重1kgあたり0.05~5mgとすることができ、そして1日に1~3回投与され得る。
【0051】
ジャワフトモモの水抽出物の加水分解物に関する上記のような生物活性と安全性から、当該加水分解物(肌の美白、肌の保湿性向上、創傷治癒の改善、酸化ストレスの軽減、皮膚老化の予防や遅延に適する)を含む組成物は、医薬組成物または化粧料組成物であり得る。
【0052】
本発明に係る医薬組成物は、当業者に周知の技術を用いて、経口または局所投与のための適切な剤形に製剤することができる。
【0053】
本発明に係る医薬組成物は、製薬に広く使用されている薬学的に許容される担体を更に含むことができる。薬学的に許容される担体としては、例えば、溶媒、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、分解剤、崩壊剤、分散剤、結合剤、賦形剤、安定剤、キレート剤、防腐剤、湿潤剤、滑沢剤、希釈剤、吸収遅延剤、リポソーム、甘味料、香料、着色剤などが含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される担体の選択および量は、当業者の専門知識の範囲内である。
【0054】
経口投与剤形の例としては、無菌粉末、錠剤、トローチ、ドロップ形、丸薬、カプセル、散剤または顆粒剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、スラリーなどが挙げられるが、これらに限らない。
【0055】
局所投与剤形の例としては、エマルジョン、ゲル、軟膏、クリーム、パッチ、リニメント、粉末、エアロゾル、スプレー、ローション、セラム、ペースト、泡沫、点滴、懸濁剤、膏薬、包帯などが挙げられるが、これらに限らない。
【0056】
本発明に係る例示的な実施形態において、医薬組成物は、ジャワフトモモの水抽出物の加水分解物を、当該技術分野において周知で一般的に使用されている基剤と混合することによって、外用剤として形成される。
【0057】
本発明において、適切な基剤としては、水、アルコール、グリコール、炭化水素(ワセリンや白色ワセリン)、ワックス(パラフィンや黄ろう)、保存剤、酸化防止剤、界面活性剤、吸収促進剤、安定剤、ゲル化剤(例えばカーボポール(Carbopol)(登録商標)974P、微結晶性セルロースおよびカルボキシメチルセルロースなど)、活性剤、湿潤剤、消臭剤、香料、pH調整剤、キレート剤、乳化剤、閉塞剤、皮膚軟化剤、増粘剤、可溶化剤、浸透増強剤、抗刺激剤、着色剤、噴射剤などから選ばれる一種以上を含むものが挙げられる。これらの添加剤の選択および量は、当業者の専門知識の範囲内である。
【0058】
本発明に係る化粧料組成物は、化粧品製造技術において広く使用されている化粧品に許容されるアジュバントを更に含んでもよい。化粧品に許容されるアジュバントとしては、例えば、溶媒、ゲル化剤、活性化剤、防腐剤、酸化防止剤、遮蔽剤、キレート剤、界面活性剤、着色剤、増粘剤、充填剤、香料、消臭剤から選ばれる一種以上を含むものが挙げられる。これらの添加剤の選択および量は、当業者の専門知識の範囲内である。
【0059】
本発明に係る化粧料組成物は、当業者に周知の技術を用いてスキンケアまたはメイクアップ製品の形態にすることができる。このような形態には、水溶液、水性アルコール溶液または油性溶液、エマルジョン、ゲル、軟膏、クリーム、マスク、パッチ、パック、リニメント、パウダー、エアロゾル、スプレー、ローション、セラム、ペースト、泡沫、懸濁液、ドロップ、ムース、日焼け止め、トニックウォーター、ファンデーション、アイシャドー、化粧落とし、石鹸およびその他のボディクレンジング製品が含まれるが、これらに限らない。
【0060】
本発明に係る化粧料組成物は、少なくとも一種の以下に挙げる外用剤と共に用いることができる。外用剤は即ち、美白剤(トレチノイン、カテキン、コウジ酸、アルブチン、ビタミンCなど)、保湿剤、抗炎症剤、殺菌剤、紫外線吸収剤、藻類抽出物(アロエ抽出物なども含む)、皮膚栄養剤、麻酔剤、抗ニキビ剤、かゆみ止め、鎮痛剤、制汗剤、抗皮膚炎剤、抗高角質溶解剤、乾燥肌改善剤、老化防止剤、抗しわ剤、抗脂漏剤、創傷治癒剤、コルチコステロイド剤、ホルモン剤である。これらの薬剤の選択および量は、当業者の専門知識の範囲内である。
【実施例
【0061】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に説明する。但し、以下の実施例は説明のためのものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0062】
〔実施例1:ジャワフトモモの水抽出物のブロメライン加水分解物の製造〕
台湾の屏東県枋寮郷にて収穫されたジャワフトモモの果実材料(果皮、果肉、種子を含む)3~6gを粉砕し、得られた粉砕物と水とを重量比1:1.5で混合し、50℃で1時間加熱した。これにより、ジャワフトモモの水抽出物(water extract of Syzygium samarangense、以下略してWESSと称する)を得た。
【0063】
続いて、WESSと1600IU/gのブロメライン(台湾 青旺生技社(NEO-ONE BIOTECH CO., LTD.)製、製品番号:1600GD)を重量比200:1で混合し、酵素加水分解反応を45℃で4時間進行させた。得られた反応液を遠心分離し、上澄みを回収した。この上澄みを、それぞれポアサイズが5μm、1μm、0.5μmのフィルター(台湾 徳璽実業社(Tech Seed Enterprise Co., Ltd.)製、製品番号:PureMax、SCB2000-001、SP2000-00A)を順次用いてろ過した。得られたろ液を凍結乾燥することで、ジャワフトモモの水抽出物のブロメライン加水分解物(bromelain hydrolysate of water extract of Syzygium samarangense、以下略してBHWESSと称する)を凍結乾燥粉末として得た。
【0064】
なお、BHWESSとの比較のために、WESSに対しても上記の遠心分離、ろ過および凍結乾燥処理を施して粉末形態にした。
【0065】
〔実施例2:ジャワフトモモの水抽出物のブロメライン加水分解物におけるHPLC分析〕
本発明に係るBHWESSの主要成分を測定するために、実施例1で得られたBHWESSを蒸留脱イオン水に溶解して、BHWESS濃度が1mg/mLの試料を作製し、当該試料に対しHPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析を行なった。
【0066】
使用したHPLC機器は、UV-Vis検出器とC18カラム(Purospher(登録商標)STAR RP-18、製品番号:150359、サイズ:250mm×4.6mm)を備えたHP Agilent 1100シリーズHPLCシステムである。
【0067】
適用されるHPLC操作条件は以下の通りである。移動相はアセトニトリル/脱イオン水(100:0、v/v)であり、移動相の流速は0.7mL/分である。移動相を用いた勾配溶出を以下のように35分間行った:アセトニトリルを0~10分の間に100%から90%に減少させ、10~30分の間に90%から80%に減少させ、30分に80%から100%に増加させ、30~35分まで100%に維持した。
【0068】
〔結果〕
図1は実施例1で製造したBHWESSのHPLC溶出プロファイルである。図1に示されているように、0分から35分の滞留時間の間に4つの主なピーク(それぞれa、b、c、dの記号が付されている)が観測された。
【0069】
〔実施例3:ジャワフトモモの水抽出物のブロメライン加水分解物における抗酸化作用の評価〕
本発明に係るBHWESSが抗酸化作用を有するかどうかを調べるために、実施例1で製造したBHWESSの第一鉄イオンキレート化能を分析した。さらに、BHWESSとの比較のために、中国特許出願公開102228207Aに記載されている方法に概ね従って(多少の変更を含む)、ジャワフトモモの水抽出物の動物由来プロテアーゼ加水分解物(animal protease hydrolysate of water extract of Syzygium samarangense、以下略してAPHWESSと称する)を製造し、これに本発明に係るBHWESSと同じ実験を行った。実験手順を説明する前に、APHWESSの製造方法を以下に示す。
【0070】
台湾の屏東県枋寮郷にて収穫されたジャワフトモモの果実材料(果皮、果肉、種子を含む)20gを粉砕し、得られた粉砕物と水とを重量比1:1.5で混合し、95℃で15分間加熱した。これにより、ジャワフトモモの水抽出物を得た。
【0071】
50℃まで冷ましてから、4.5%クエン酸を用いてジャワフトモモの水抽出物のpHを3.68に調整した。続いて、ジャワフトモモの水抽出物と2500IU/gのペプシン(Sigma社製、製品番号:P7012)を重量比50000:1で混合し、酵素加水分解反応を50℃で2時間進行させた。
【0072】
得られたペプシン加水分解物のpHを水酸化カリウム4g/mLを用いて7.65に調整してから、95℃に15分間加熱した。ペプシン加水分解物と2000IU/mgのトリプシン(Himedia社製、製品番号:RM618)を27000:1の重量比で混合し、酵素加水分解反応を50℃で3時間進行させた。
【0073】
こうして得られたトリプシン加水分解物のpHを4.5%クエン酸を用いて6.28に調整し、続いて遠心分離し、得られた上澄みを回収した。この上澄みを、それぞれポアサイズが5μm、1μm、0.5μmのフィルターを順次用いてろ過した。得られたろ液を凍結乾燥することで、凍結乾燥粉末形態のAPHWESSを得た。
【0074】
〔実験手順〕
実施例1で製造したBHWESSの適量を蒸留脱イオン水に溶解し、BHWESS濃度0.35%(w/w)のBHWESS試料を作製した。そして、BHWESS試料1mL、エタノール3.7mL、2 mM FeCl2・4H2O溶液0.1mLを30秒間混合した。得られた混合物を5 mMフェロジン0.2mLと均一に混合した後、無光環境且つ室温で10分間定温放置した。この混合物に対し、Colibri分光光度計(Titertek-Berthold社製)を用いて、562nmの吸光度(OD562)を測定した。また、対照試料として95%エタノール溶液1mLに対しても上記の実験手順を行った。さらに、中国特許出願公開102228207Aに記載されている方法に概ね従って製造された上述のAPHWESSの適量を蒸留脱イオン水に溶解して、APHWESS濃度0.35%(w/w)のAPHWESS試料を作製し、このAPHWESS試料に対してもBHWESS試料と同じ実験手順を行なって、APHWESSの第一鉄イオンキレート化能を分析した。
試料の試験結果において、OD562の値が低いほど、抗酸化作用が強いことが示される。
【0075】
第一鉄イオンキレート化率(%)は、以下の式(I)を用いて算出した。
A=[1-(B/C)]×100 (I)
式中、
「A」は第一鉄イオンキレート化率(%)であり、
「B」はBHWESS、APHWESSそれぞれのOD562の値であり、
「C」は対照試料のOD562の値である。
すべての実験を3回繰り返した。実験データは平均値±標準偏差として表される。
【0076】
〔結果〕
図2は、BHWESS試料と、対照試料と、APHWESS試料との第一鉄イオンキレート化率を示す。図2に示されているように、BHWESS試料の第1鉄イオンキレート化率は、対照試料およびAPHWESS試料のそれよりも有意に高い。この結果によって、本願出願人は、本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物は、ジャワフトモモの水抽出物の動物由来プロテアーゼ加水分解物と比較しても、十分な抗酸化作用を発揮できると考える。
【0077】
〔実施例4:ジャワフトモモの水抽出物のブロメライン加水分解物におけるメラニン生成抑制効果の評価〕
本実施例では、本発明に係るBHWESSのメラニン生成抑制効果をチロシナーゼ活性に基づいて評価した。さらに、比較のために、実施例1で製造したWESSに対しても、BHWESSと同じ実験を行なった。
【0078】
〔実験手順〕
0.1 M Na2HPO4溶液500mLとKH2PO4溶液500mLを混合し、得られたリン酸緩衝液のpHを水酸化ナトリウムを用いて6.8に調整した。適量のチロシン(Alfa Aesar社製、ロット番号:10174330)を適量のリン酸緩衝液に加えて2mMのチロシン溶液を調製した。
【0079】
続いて、実施例1で製造したBHWESSおよびWESSそれぞれの適量を適量のリン酸緩衝液に加え、BHWESS濃度が10mg/mLとなるBHWESS試料と、WESS濃度が10mg/mLとなるWESS試料を得た。それぞれ21.6μLのBHWESS試料およびWESS試料を、250μLのチロシナーゼ(Sigma社製、ロット番号:SLBJ5647V)(適量のリン酸緩衝溶液中115.42 U/mL)および540μLのチロシン溶液に混合した。得られた混合物を、無光環境且つ37℃で30分間定温放置した。その後、分光光度計を用いて475nmの吸光度(OD475)を測定した。また、対照試料として290μLのリン酸緩衝液に対しても上記の実験手順を行った。試料の試験結果において、OD475の値が低いほど、チロシナーゼ阻害活性が強いことが示される。
【0080】
チロシナーゼ阻害活性率(%)は、以下の式(II)を用いて算出した。
D=[1-(E/F)]×100 (II)
式中、
「D」はチロシナーゼ阻害活性率(%)であり、
「E」はBHWESS、WESS、対照試料それぞれのOD475の値であり、
「F」は対照試料のOD475の値である。
【0081】
すべての実験を2回繰り返した。実験データは平均値±標準偏差として表され、BHWESS試料、WESS試料および対照試料の間の差を評価するためにスチューデントのt検定(Student's t-test)によって分析された。統計的有意性はp<0.05である。
【0082】
〔結果〕
図3は、BHWESS試料、WESS試料および対照試料のチロシナーゼ活性阻害パーセントを示す。 図3に示すように、BHWESS試料のパーセントチロシナーゼ活性阻害は、WESS試料および対照試料のそれよりも有意に高い。この実験結果は、本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物が、ジャワフトモモの水抽出物と比較してより良好なチロシナーゼ阻害能力を有することを示す。したがって、本願出願人は、本発明に係るジャワフトモモの水分物の加水分解物は、チロシナーゼ活性を抑制することによりメラニン生成を抑制できるので、肌の美白効果を有すると考える。
【0083】
〔実施例5:ジャワフトモモの水抽出物のブロメライン加水分解物における創傷治癒改善効果の評価〕
本実施例では、本発明に係るBHWESSの創傷治癒改善効果を創傷治癒細胞遊走アッセイによって評価した。さらに、比較のために、実施例1で製造したWESSおよび実施例3で製造したAPHWESSに対しても、BHWESSと同じ評価を行なった。
【0084】
〔実験材料〕
(1)ヒト皮膚線維芽細胞株Detroit551
本実施例で使用したヒト皮膚線維芽細胞株Detroit551は、台湾の財団法人食品工業発展研究所(Food Industry Research and Development Institute)の生物資源保存研究センター(Bioresource Collection and Research Center)(台湾新竹市東区食品路331号)から購入した。
【0085】
Detroit551細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)および10%ペニシリン - ストレプトマイシン(GIBCO(登録商標)、型番:15140122)を補充した最小必須培地(MEM、Sigma社製、製品番号:M2279)を含有するペトリ皿中で培養し、その後インキュベーター(37℃、5%CO2)中で培養した。2日ごとに培地の交換を行い、培養細胞が80%~90%コンフルエントになったときに細胞継代を行った。
【0086】
〔実験手順〕
(A)BHWESSとWESSとの創傷治癒改善効果の比較
実験材料の(1)で得られたDetroit551細胞を、BHWESS群、WESS群、および対照群の3つの群に分けた。Detroit551細胞の各群を、2×105細胞/ウェルでMEM(10%FBSを充填)500μLを含む24ウェルプレート中で培養し、次いでインキュベーター(37℃、5%CO2)内で24時間培養した。
【0087】
培地を新鮮なものに交換した後、200μLのプラスチック製ピペットチップを使用して、プレートの各ウェル内のDetroit551細胞を直径線に沿ってスクラッチした。これにより、各ウェルの直径線に沿って、500μm幅の、細胞が付着していない創傷領域が形成された。洗浄はリン酸緩衝液(PBS)で2回行なわれた。新鮮なMEM(5%FBSを充填)で培地交換を行った後、BHWESS群およびWESS群の細胞培養物を、実施例1で製造したBHWESSおよびWESSの適量でそれぞれ処置し、BHWESSおよびWESS群の最終濃度をそれぞれ0.03%(w/w)BHWESSおよび0.03%(w/w)WESSとした。対照群の細胞培養物には上記処置を行わなかった。
【0088】
その後、インキュベーター(37℃、5%CO2)内で12時間培養した。0時間(処置前)および処置後12時間後に、倍率40倍の倒立顕微鏡(ニコン社製 TE300)を用いて各群の創傷領域を観察し、デジタルカメラ(ニコン社製 D90)を用いて撮影し、得られた写真を基にImageJソフトウェアを用いて面積計算を行った。
【0089】
創傷治癒率(%)は、以下の式(III)を用いて算出した。
G=[1-(H/I)]×100 (III)
式中、
「G」は創傷治癒率(%)であり、
「H」は処置後12時間後の創傷領域の面積であり、
「I」は処置前の創傷領域の面積である。
【0090】
すべての実験を2回繰り返した。実験データは平均値±標準偏差として表され、BHWESS群、WESS群および対照群の間の差を評価するためにスチューデントのt検定(Student's t-test)によって分析された。統計的有意性はp<0.05である。
(B)BHWESSとAPHWESSとの創傷治癒改善効果の比較
【0091】
まず、24ウェルプレートの各ウェルの直径線に沿って、幅500μmのSPLScar(登録商標)ブロック(台湾Bio-genesis Technologies社製、型番:201902)を配置した。続いて、実験材料の(1)で得られたDetroit551細胞を、BHWESS群、APHWESS群、および対照群の3つの群に分けた。Detroit551細胞の各群を、5×104細胞/ウェルでMEM(10%FBSを充填)500μLを含む24ウェルプレート中で培養し、次いでインキュベーター(37℃、5%CO2)内で24時間培養した。
【0092】
その後、SPLScarブロックを除去することで、500μm幅の、細胞が付着していない創傷領域が形成された。洗浄はリン酸緩衝液(PBS)で2回行なわれた。新鮮なMEM(5%FBSを充填)で培地交換を行った後、BHWESS群およびAPHWESS群の細胞培養物を、実施例1で製造したBHWESSおよび実施例3で製造したAPHWESSの適量でそれぞれ処置し、BHWESS群およびAPHWESS群の最終濃度をそれぞれ0.025%(w/w)BHWESSおよび0.03%(w/w)APHWESSとした。対照群の細胞培養物には上記処置を行わなかった。
【0093】
その後、インキュベーター(37℃、5%CO2)内で12時間培養した。0時間(処置前)および処置後12時間後に、倍率40倍の倒立顕微鏡(オリンパス社製 IX73)を用いて各群の創傷領域を観察し、デジタルカメラ(オリンパス社製 DP80)を用いて撮影し、得られた写真を基にImageJソフトウェアを用いて面積計算を行った。そして式(III)を用いて創傷治癒率(%)を算出した。
【0094】
すべての実験を3回繰り返した。実験データは平均値±標準偏差として表され、BHWESS群、APHWESS群および対照群の間の差を評価するためにスチューデントのt検定(Student's t-test)によって分析された。統計的有意性はp<0.05である。
【0095】
〔結果〕
図4は、BHWESSまたはWESSで処置したDetroit551細胞および処置を受けなかった同細胞の創傷治癒率を示す。図4に示すように、WESS群と対照群の創傷治癒率に有意差は認められなかった。一方、BHWESS群の創傷治癒率は、対照群およびWESS群のそれよりも有意に高かった。
【0096】
図5は、BHWESSまたはAPHWESSで処置したDetroit551細胞および処置を受けなかった同細胞の創傷治癒率を示す。図5に示すように、APHWESS群と対照群の創傷治癒率に有意差は認められなかった。しかし、BHWESS群の創傷治癒率は、対照群およびAPHWESS群のそれよりも有意に高かった。
【0097】
以上の実験結果から、本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物は、線維芽細胞による創傷閉鎖の改善に有効であり、創傷治癒を促進することができることが明らかとなった。
【0098】
〔実施例6:ジャワフトモモの水抽出物のブロメライン加水分解物における皮膚の保湿性向上効果の評価〕
本発明に係るBHWESSのヒトの皮膚の保湿性に対する向上効果を調べるために、以下の実験を行った。
【0099】
(A)エッセンスの調製
本実施例では、実施例1で製造したBHWESSおよびWESSと、実施例3で製造したAPHWESSとを使用した。表1に示すレシピを用いて、4種類のエッセンス(BHWESSエッセンス、WESSエッセンス、APHWESSエッセンス、対照エッセンス)をそれぞれ調製した。
【0100】
【表1】
【0101】
BHWESSエッセンス、WESSエッセンス、APHWESSエッセンスを調製するプロセスは、以下の通りである。即ち、ブチレングリコールおよびヒドロキシエチルセルロースを撹拌しながら75℃の脱イオン水に溶解した後に、40℃~45℃に冷却した。BHWESS、WESS、APHWESSをそれぞれ添加し、続いて撹拌しながらDermosoft OMPと混合した。次に、水酸化ナトリウムを用いて、各々得られた混合物のpHを約6~7に調整し、BHWESSエッセンス、WESSエッセンス、APHWESSエッセンスを得た。
【0102】
対照エッセンスを調製するプロセスは、BHWESSの代わりに追加の脱イオン水を使用したことを除いて、BHWESSエッセンスを調製するプロセスと同様である。
【0103】
(B)BHWESSとWESSとの皮膚の保湿性向上効果の比較
台湾屏東県にある允頂企業社(Yeun Diing Enterprise CO., LTD.)および台湾雲林県にある頂宏生物科技社(M.H. Biotechnology Co., Ltd.)の社員から募られた対象者を、表2に記載の除外基準に従ってスクリーニングした。その結果、10人の適格被験者(25歳~40歳の男性4人および女性6人)が、下記の試験に参加した。
【0104】
【表2】
【0105】
被験者の右腕を、それぞれ幅が指4本分の3つの試験エリア(すなわち、BHWESSエリア、WESSエリアおよび対照エリア)にランダムに分割し、各エリアに上記「(A)エッセンスの調製」で調製したBHWESSエッセンス、WESSエッセンスまたは対照エッセンスを、1回0.5mLの用量で1日2回塗布した。各試験エリアの試験期間は合計28日間とした。
【0106】
0日目(すなわち、試験エッセンスの塗布前)および試験エッセンスの塗布開始後の指定された時点(7、14、21、28日目)に、各被験体の試験エリアに対して、それぞれ静電容量計(Corneometer(登録商標)CM285、Courage&Khazaka社製)を用いて角質層の含水率を測定した。
【0107】
角質層の含水率の向上率(%)は、以下の式(IV)を用いて算出した。
J=[(L-K)/K]×100 (IV)
式中、
「J」は指定された各時点(7日目、14日目、21日目、28日目)における角質層の含水量の向上率(%)であり、
「K」は0日目の角質層の含水量であり、
「L」は指定された各時点における角質層の含水量である。
【0108】
各被験者の試験エリアに対して含水量の測定を3回繰り返した。実験データは平均値±標準偏差として表され、各試験エリア間の差を評価するためにスチューデントのt検定(Student's t-test)によって分析された。統計的有意性はp<0.05である。
【0109】
加えて、安全性評価が、0日目およびその後の指定された各時点(7日目、14日目、21日目、28日目)に研究者によって行われた。0日目に、少量のエッセンスが安全性評価のため被験者の上腕部内側に塗布され、有害な皮膚反応(かゆみ、刺激および紅斑など)が起きるかどうかが調査された。
【0110】
(C)BHWESSとAPHWESSとの皮膚の保湿性向上効果の比較
頂宏生物科技社(M.H. Biotechnology Co., Ltd.)の社員から募られた対象者を、表2に記載の除外基準に従ってスクリーニングした。その結果、9人の適格被験者(25歳~40歳の男性6人および女性3人)が、下記の試験に参加した。
【0111】
試験エッセンスの塗布、角質層の含水量の測定、および安全性評価は、以下の相違点を除いて、本実施例の上記(B)に記載された手順に概ね従って実施した。相違点は、APHWESSエッセンスをWESSエッセンスに置き換えて試験したこと、APHWESSエッセンスを塗布するエリアをAPHWESSエリアとする(すなわち、APHWESSエリアでWESSエリアを置き換える)こと、角質層の含水量の測定を試験エッセンスの塗布開始後の1つの指定された時点(14日目)にのみ実施したことである。
【0112】
〔結果〕
(1)角質層の含水量の測定結果
図6は、異なる時点におけるBHWESS、WESSおよび対照エリアのそれぞれにおける角質層の含水量の向上率を示す。図6に示すように、試験エッセンスの塗布開始後14日目、21日目、28日目において、BHWESSエリアの角質層の含水量の向上率は、WESSエリアおよび対照エリアのそれよりも有意に高い。さらに、BHWESSエリアの角質層の含水率は時間の経過と共に著しく増加したが、WESSエリアの含水率の向上は非常に遅かった。
【0113】
図7は、BHWESS、APHWESSおよび対照エリアそれぞれの14日目における角質層の含水量の改善率を示す。図7に示すように、BHWESSエリアにおける角質層の含水量の改善率は、APHWESSエリアおよび対照エリアのそれよりも高い。
【0114】
上記のデータは、本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物が、肌の保湿性を効果的に高めるために使用できることを示唆している。
【0115】
(2)安全性評価結果
試験期間中、すべての被験者において有害な皮膚反応は観察されなかった(データは示されない)。
【0116】
以上のことから、本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物は優れた抗酸化活性を示し、メラニン生成を抑制し、肌の保湿性を高め、創傷治癒を促進することができる。これにより、本願出願人は、本発明に係るジャワフトモモの水抽出物の加水分解物は有害な副作用を誘発しない長期間の使用のためのスキンケア製品に発展させることができると考える。
【0117】
本明細書に引用されるすべての特許および参考文献は、その全体の内容が本明細書に参照として包含される。但し、参照した内容と本願発明に係る記載との間に矛盾が生まれた場合には、定義を含めて本願発明に係る記載が優先される。
【0118】
以上、本発明の例示的と思われる実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な形態として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7