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  • 特許-見守り装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】見守り装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20220620BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20220620BHJP
   G08B 21/04 20060101ALI20220620BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20220620BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20220620BHJP
   G06T 7/521 20170101ALI20220620BHJP
【FI】
A61B5/00 102C
G08B25/04 K
G08B21/04
G08B25/00 510M
G06T7/20 300Z
G06T7/521
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018105429
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019208671
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591165252
【氏名又は名称】キング通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村平 宏太
(72)【発明者】
【氏名】張 旭華
【審査官】鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-530762(JP,A)
【文献】特開2013-078433(JP,A)
【文献】特開2005-253608(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0055877(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0014648(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0334372(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
G08B 25/04
G08B 21/04
G08B 25/00
G06T 7/20
G06T 7/521
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介護者を見守る見守り装置において、
前記被介護者が居るベッドの上面を含む領域の距離画像を、時系列に取得する距離画像センサと、
前記距離画像の複数の画素のそれぞれの画素値を、前記距離画像センサの第1ポイントの座標を原点とする極座標系から直交座標系に変換し、前記上面の第2ポイントの座標を原点とし、ウェーブレット変換する変換部と、
記第2ポイントの座標を原点としてx値、y値、z値として表現される、直交座標系に変換されてウェーブレット変換された、前記複数の画素のそれぞれの画素値に基づき、前記被介護者の無呼吸を検知する検知部と、
を備えることを特徴とする見守り装置。
【請求項2】
前記第2ポイントは、前記上面の中心点である、
ことを特徴とする請求項1記載の見守り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被介護者を見守る見守り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被介護者を見守る技術について、様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、距離画像センサにより、被介護者が見守られている。具体的には、この技術において、ベッド認識部が、被介護者に使用されるベッドの位置を認識している。人認識部が、ベッドに対する被介護者の姿勢を認識している。
【0003】
ベッドと非介護者とは、分離されて認識され、動作判定部が、被介護者の動作を判定している。この被介護者の動作として、例えば、被介護者がベッドの端部に腰を掛ける「腰掛け」、被介護者がベッドから離れる「離床初期」、被介護者がベッドから離床する時に転倒する「転倒」などが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-030042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1によって開示される技術は、被介護者の呼吸が停止する「無呼吸」について、言及していない。本発明は、上記課題に鑑みてなされ、被介護者の無呼吸を検知できる見守り装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、被介護者を見守る見守り装置において、前記被介護者が居るベッドの上面を含む領域の距離画像を、時系列に取得する距離画像センサと、前記距離画像の複数の画素のそれぞれの画素値を、前記距離画像センサの第1ポイントの座標を原点とし、極座標系から直交座標系に変換する変換部と、前記上面の第2ポイントの座標と、直交座標系に変換された、前記複数の画素のそれぞれの画素値と、の距離変動に基づき、前記被介護者の無呼吸を検知する検知部と、を備えることを特徴とする見守り装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の見守り装置は、被介護者の無呼吸を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】見守りシステムの構成を示すブロック図である。
図2】見守り装置とベッドとの位置関係を示す図である。
図3】コンピュータの画面を示す図である。
図4】コンピュータの画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は、見守りシステムの構成を示すブロック図である。図2は、見守り装置とベッドとの位置関係を示す図である。
【0010】
<要素>
見守りシステムは、見守り装置10、ネットワーク20、及び、コンピュータ30を備える。見守り装置10は、距離画像センサ11、変換部12、及び、検知部13を備える。
【0011】
<要素の機能>
距離画像センサ11の画角は、被介護者が居るベッド40の上面を含む領域を包含する。距離画像センサ11は、その領域において、赤外線レーザを放射し、赤外線レーザの反射波を解析することにより、被介護者が居るベッド40の上面などの対象物と距離画像センサ11との距離及び方向を距離画像として時系列に取得する。
【0012】
距離画像センサ11は、被介護者が居るベッド40の上面を含む領域の距離画像を、時系列に取得する。ここで、距離画像センサ11は、例えば、図2に示されるように、被介護者に使用される居室の床からの高さ2メートルの位置に設置され、ベッド40を俯瞰する。ベッド40の上面は、例えば、図2に示されるように、その居室の床からの高さ0.5メートルの位置に設置され、被介護者に使用される。ベッド40の上面は、具体的には、敷布団の上面である。
【0013】
変換部12は、時系列に取得される複数の距離画像のそれぞれに対し、後述の処理を実施する。具体的には、変換部12は、距離画像の複数の画素のそれぞれの画素値を、距離画像センサ11の第1ポイントの座標を原点とし、極座標系から直交座標系に変換する。その後、変換部12は、直交座標系に変換された各画素値を、ベッド40の上面の第2ポイントの座標を原点とし、ウェーブレット変換する。ここで、第1ポイントは、距離画像センサ11が備えるイメージセンサICの光電変換素子群の略中心点である。第2ポイントは、ベッド40の上面の略中心点である。
【0014】
検知部13は、ベッド40の上面の第2ポイントの座標と、直交座標系に変換され、さらに、ウェーブレット変換された、各画素値と、の距離変動に基づき、被介護者の呼吸が停止する「無呼吸」を検知する。
【0015】
見守り装置10は、各種演算を実施するマイクロプロセッサや各種情報を記憶するメモリなどを備える電子機器である。見守り装置10において、マイクロプロセッサが、メモリによって記憶されるアプリケーションプログラムに基づき、動作することにより、変換部12及び検知部13は、実現される。
【0016】
ネットワーク20は、有線または無線のLAN(ローカルエリアネットワーク)である。コンピュータ30は、各種演算を実施するマイクロプロセッサや各種情報を記憶するメモリなどを備える周知の電子機器である。
【0017】
<動作1>
被介護者を見守るための見守りエリアを作成する動作について、説明する。図3は、コンピュータの画面を示す図である。図4は、コンピュータの画面を示す図である。被介護者の見守り前に、距離画像センサ11は、被介護者が居ないベッド40の上面を含む領域の距離画像を、取得する。コンピュータ30の画面は、図3(A)に示されるように、その距離画像を表示する。被介護者を介護する介護者は、コンピュータ30に接続されるマウスを用い、図3(B)に示されるように、コンピュータ30の画面において、ベッド40の上面の指定点a及び指定点bを指定する。
【0018】
ここで、被介護者に使用される居室において、X軸は、Y軸と直交する。X軸は、ベッド40の長手方向と平行する。Y軸は、ベッド40の短手方向と平行する。X軸及びY軸のそれぞれは、居室の床と平行し、Z軸と直交する。見守り装置10の演算部は、図示されないが、コンピュータ30の画面に表示される距離画像において、全ての画素の画素値のZ軸座標を解析する。演算部は、類似するZ軸座標をそれぞれ備える複数の画素をグループ化することにより、距離画像において、複数のグループを作成する。演算部は、複数のグループの中から、画素数を最も多く備えるグループを選択し、そのグループを平面とする。平面は、通常、居室の床である。
【0019】
演算部は、指定点a及び指定点b、及び、平面に基づき、図4(A)に示されるように、見守りエリアcを作成する。具体的には、演算部は、大きさを予め設定される直方体の底面c1のZ軸座標を指定点aまたは指定点bのZ軸座標と一致させ、さらに、底面c1と平面とを平行させる。その後、演算部は、その直方体の長手方向の側面c2と、指定点aと指定点bとによる直線と、を平行させる。つまり、演算部は、その直方体の短手方向の側面c3と、指定点aと指定点bとによる直線と、を直交させる。すると、距離画像において、大きさを予め設定される直方体は、位置及び方向を設定されることにより、見守りエリアcが、作成される。
【0020】
<動作2>
ベッド40の上面の第2ポイントを作成する動作について、説明する。動作1の後、演算部は、図4(B)に示されるように、指定点aと指定点bとの中心点dを第2ポイントに設定する。
【0021】
<動作3>
被介護者の一部及び/または掛け布団の一部が見守りエリアcからはみ出す「はみ出し」の検知について、説明する。介護者は、被介護者をベッドに導き、見守りシステムを起動し、見守りシステムは、被介護者の見守りを開始する。演算部は、動作1で使用される距離画像を背景画像に設定する。距離画像センサ11は、被介護者が居るベッド40の上面を含む領域の距離画像を、時系列に取得する。演算部は、その背景画像と、見守り開始後に時系列に取得される複数の距離画像のそれぞれと、の差分画像を、作成する。
【0022】
差分画像が動作1で作成される見守りエリアcの外に存在すると、つまり、被介護者の一部及び/または掛け布団の一部が見守りエリアcからはみ出すと、検知部13は「はみ出し」を検知する。その後、検知部13は、「はみ出し」の検知を示す検知信号を、ネットワーク20を介し、コンピュータ30に出力する。コンピュータ30の画面は、「はみ出し」を示す画面を表示する。その後、介護者は、その画面を見ることにより、被介護者の居室に行き、被介護者の状況を確認する。
【0023】
<動作4>
被介護者の「無呼吸」の検知について、説明する。見守りシステムは、ここでの動作4と動作3とを同時に実施する。距離画像センサ11は、被介護者が居るベッド40の上面を含む領域の距離画像を、時系列に取得する。この時、距離画像の複数の画素のそれぞれの画素値は、距離画像センサ11の第1ポイントの座標を原点(0、0、0)とし、1つの動径及び2つの偏角(L、Θ、Φ)によって表現される。
【0024】
変換部12は、各画素値を、第1ポイントの座標を原点(0、0、0)とし、極座標系から直交座標系に変換する。この時、各画素値は、第1ポイントの座標を原点(0、0、0)とし、(x、y、z)によって表現される。その後、変換部12は、直交座標系に変換された各画素値を、ベッド40の上面の第2ポイントの座標を原点(0、0、0)とし、ウェーブレット変換する。この時、各画素値は、第2ポイントの座標を原点(0、0、0)とし、(Wx、Wy、Wz)によって表現される。ここで、各画素値は、被介護者の呼吸により、非定常に変動するので、ウェーブレット変換によって時間周波数解析される。
【0025】
ここで、ウェーブレット変換時において、原点が、第1ポイントから第2ポイントに移動する。この原点の移動は、第1ポイントの座標と各画素値との差分がウェーブレット変換されないで、第2ポイントの座標と各画素値との差分がウェーブレット変換される、ことを意味する。すると、被介護者は、ベッド40の上面に居るので、ベッド40の上面の第2ポイントと、ベッド40の上面に居る被介護者と、の距離は、図2に示されるように、距離画像センサ11の第1ポイントと、被介護者と、の距離よりも短い。よって、各画素値の変動時において、第2ポイントと被介護者との距離の変動率は、第1ポイントと被介護者との距離の変動率よりも高い。
【0026】
検知部13は、第2ポイントの座標と、直交座標系に変換され、さらに、ウェーブレット変換された、各画素値と、の距離変動に基づき、「無呼吸」を検知する。つまり、検知部13は、(Wx、Wy、Wz)に基づき、「無呼吸」を検知する。
【0027】
ここで、被介護者に使用される居室において、X軸は、Y軸と直交する。X軸は、ベッド40の長手方向と平行する。Y軸は、ベッド40の短手方向と平行する。X軸及びY軸のそれぞれは、居室の床と平行し、Z軸と直交する。ベッド40の上面に居る被介護者が呼吸を行っていて、例えば、介護者がZ軸方向を向いて寝ている場合(例えば、仰向けの睡眠状態)、(Wx、Wy、Wz)のうちのWzが、Wx及びWyと比較されると、顕著に変動する。介護者がX軸方向を向いて寝ている場合、(Wx、Wy、Wz)のうちのWxが、Wy及びWzと比較されると、顕著に変動する。介護者がY軸方向を向いて寝ている場合、(Wx、Wy、Wz)のうちのWyが、Wx及びWzと比較されると、顕著に変動する。
【0028】
また、被介護者が呼吸を行っていない場合、(Wx、Wy、Wz)の全てが、それぞれほとんど変動しない。(Wx、Wy、Wz)の全ての変動が、所定の範囲内にそれぞれ収まってしまうと、検知部13は、「無呼吸」を検知する。または、(Wx、Wy、Wz)の全ての変動が、それぞれほぼ0であると、検知部13は、「無呼吸」を検知する。その後、検知部13は、「無呼吸」の検知を示す検知信号を、ネットワーク20を介し、コンピュータ30に出力する。コンピュータ30の画面は、「無呼吸」を示す画面を表示する。その後、介護者は、その画面を見ることにより、被介護者の居室に行き、被介護者の状況を確認する。
【0029】
<補足>
なお、1つの居室の1台の見守り装置10が、図1では、コンピュータ30に接続されている。しかし、複数の居室の複数台の見守り装置が、図示されないが、コンピュータ30にそれぞれ接続されても良い。この時、複数台の見守り装置のそれぞれは、異なるアドレスを付与される。
【0030】
また、コンピュータ30の画面は、被介護者が居ないベッド40の上面を含む領域の距離画像を表示し、介護者は、コンピュータ30に接続されるマウスを用い、コンピュータ30の画面において、図3(B)に示されるように、ベッド40の上面の指定点a及び指定点bを指定している。その後、演算部は、図4(B)に示されるように、指定点aと指定点bとの中心点dを第2ポイントに設定している。しかし、介護者は、図示されないが、ベッド40の上面の指定点aと指定点bとの略中心点を指定し、演算部は、図示されないが、その略中心点を第2ポイントに設定しても良い。
【符号の説明】
【0031】
10…見守り装置
11…距離画像センサ
12…変換部
13…検知部
20…ネットワーク
30…コンピュータ
40…ベッド
a、b…指定点
c…見守りエリア
c1…底面
c2…長手方向の側面
c3…短手方向の側面
d…中心点
図1
図2
図3
図4