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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】X線発生装置、及びX線分析装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/08 20060101AFI20220620BHJP
   H01J 35/14 20060101ALI20220620BHJP
   H01J 35/18 20060101ALI20220620BHJP
   G21K 5/02 20060101ALI20220620BHJP
   G01N 23/201 20180101ALI20220620BHJP
   G01N 23/207 20180101ALI20220620BHJP
   H05G 1/00 20060101ALI20220620BHJP
   H05G 1/52 20060101ALI20220620BHJP
   H05G 1/70 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
H01J35/08 C
H01J35/14
H01J35/18
G21K5/02 X
G01N23/201
G01N23/207
H05G1/00 E
H05G1/52 B
H05G1/52 A
H05G1/70 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018180385
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020053217
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野々口 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】影山 将史
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-198778(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039091(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/08
H01J 35/14
H01J 35/18
G21K 5/02
G01N 23/201
G01N 23/207
H05G 1/00
H05G 1/52
H05G 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電子が放出される陰極と、印加される電位差により前記熱電子が加速され電子線となり照射される陽極と、を備える、X線封入管と、
前記電子線の進行方向と交差する第1の方向に延伸する磁場を前記電子線に印加するよう、前記X線封入管の近傍に配置される、磁場発生部と、
前記X線封入管を、前記陰極と前記陽極との中心軸に対して回転させる、回転駆動系と、
を備える、X線発生装置であって、
前記陽極の表面は、前記中心軸との交点を通る分割直線に対して、前記中心軸に垂直な面内における一方側に第1の領域が、他方側に第2の領域が、それぞれ配置され、
前記第1の領域には第1の金属が、前記第2の領域には前記第1の金属とは異なる第2の金属が、それぞれ配置され、
前記回転駆動系が前記X線封入管を回転させることにより、駆動時には、前記分割直線が前記第1の方向に沿うよう、前記X線封入管が前記磁場発生部に対して配置される、
ことを特徴とする、X線発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線発生装置であって、
前記電子線の断面は延伸する偏平形状を有し、
駆動時には、前記偏平形状の延伸方向が前記第1の方向に沿うよう、前記X線封入管が前記磁場発生部に対して配置される、
ことを特徴とする、X線発生装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のX線発生装置であって、
前記磁場発生部は、永久磁石である、
ことを特徴とする、X線発生装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のX線発生装置であって、
前記陽極の表面は円形状を有し、前記中心軸との交点は前記円形状の中心と実質的に一致する、
ことを特徴とする、X線発生装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のX線発生装置であって、
前記第1の方向は、前記電子線の進行方向と実質的に直交する、
ことを特徴とする、X線発生装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のX線発生装置であって、
前記X線封入管は、前記第1の領域に配置される前記第1の金属に前記電子線が照射される第1の照射領域から発生するX線を通過させる第1のX線窓と、前記第2の領域に配置される前記第2の金属に前記電子線が照射される第2の照射領域から発生するX線を通過させる第2のX線窓と、を備える、
ことを特徴とする、X線発生装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のX線発生装置と、
前記X線発生装置より出射されるX線ビームが照射される試料を支持する、支持台と、
前記試料から発生する散乱X線を検出する、検出器と、
を備える、X線分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線封入管を備えるX線発生装置及びX線分析装置に関する。特に、簡便な構成で、異なる波長のX線を選択して発生させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線分析システムにおいて、異なる波長のX線を選択して分析を行うために、以下のX線源が用いられている。第1のX線源では、X線封入管を交換することである。第2のX線源では、互いに異なる波長のX線を発生する複数のX線封入管を配置し、複数のX線封入管を選択的に駆動させることである。
第3のX線源では、X線封入管が2系統(2組の陰極・陽極)を備え、加熱する(電圧を印加する)陰極(フィラメント)を選択して所望のX線を発生させることである(特許文献1参照)。第4のX線源では、陽極がローターターゲット(回転対陰極)であり、ローターターゲットの表面には異なる複数の金属が配置されており、回転軸に沿って移動させることにより、照射させる金属を選択して所望のX線を発生させることである(特許文献2乃至4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-323964号公報
【文献】特開2008-269933号公報
【文献】国際公開第2016/039091号
【文献】国際公開第2016/039092号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、X線分析システムにおいて、異なる波長のX線を選択して分析を行うことに加えて、システムの小型化が求められており、X線源となるX線封入管の小型化が望まれている。
【0005】
上記第1のX線源では、用いるX線封入管自体は簡便な構成で実現することができるが、複数のX線封入管を用意する必要がある上に、異なる波長のX線を選択する度にX線封入管を対応する波長のX線を出射するものに交換しなければならず、測定に要する時間の増大を招いてしまう。
【0006】
上記第2のX線源及び上記第3のX線源では、異なる波長のX線それぞれの焦点位置が異なってしまうし、焦点位置を同じくしようとすると、移動制御系をさらに備えることが必要となる。上記第2のX線では対象となるX線封入管の位置を移動させ、X線の光軸調整が必要となる。上記第3のX線源では、X線封入管の位置を移動させて、対象となる陽極の位置を調整させることとなる。加えて、第2のX線源及び第3のX線源では、装置の大型化を招く。第2のX線源では、発生源の焦点サイズを小さくするのは困難である。
【0007】
上記第4のX線源では、装置のサイズが大きくなってしまう上に、ローターターゲットの冷却が必要となるなど構造が複雑であるので、システムの小型化及びX線源の小型化には不適である。
【0008】
本発明はかかる課題を鑑みてなされたものであり、簡便な構成で異なる波長のX線を選択して発生させることが可能なX線発生装置、及びX線分析装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係るX線発生装置は、熱電子が放出される陰極と、印加される電位差により前記熱電子が加速され電子線となり照射される陽極と、を備える、X線封入管と、前記電子線の進行方向と交差する第1の方向に延伸する磁場を前記電子線に印加するよう、前記X線封入管の近傍に配置される、磁場発生部と、前記X線封入管を、前記陰極と前記陽極との中心軸に対して回転させる、回転駆動系と、を備える、X線発生装置であって、前記陽極の表面は、前記中心軸との交点を通る分割直線に対して、前記中心軸に垂直な面内における一方側に第1の領域が、他方側に第2の領域が、それぞれ配置され、前記第1の領域には第1の金属が、前記第2の領域には前記第1の金属とは異なる第2の金属が、それぞれ配置され、前記回転駆動系が前記X線封入管を回転させることにより、駆動時には、前記分割直線が前記第1の方向に沿うよう、前記X線封入管が前記磁場発生部に対して配置される、ことを特徴とする。
【0010】
(2)上記(1)に記載のX線発生装置であって、前記電子線の断面は延伸する偏平形状を有し、駆動時には、前記偏平形状の延伸方向が前記第1の方向に沿うよう、前記X線封入管が前記磁場発生部に対して配置されてもよい。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)に記載のX線発生装置であって、前記磁場発生部は、永久磁石であってもよい。
【0012】
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のX線発生装置であって、前記陽極の表面は円形状を有し、前記中心軸との交点は前記円形状の中心と実質的に一致していてもよい。
【0013】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のX線発生装置であって、前記第1の方向は、前記電子線の進行方向と実質的に直交していてもよい。
【0014】
(6)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のX線発生装置であって、前記X線封入管は、前記第1の領域に配置される前記第1の金属に前記電子線が照射される第1の照射領域から発生するX線を通過させる第1のX線窓と、前記第2の領域に配置される前記第2の金属に前記電子線が照射される第2の照射領域から発生するX線を通過させる第2のX線窓と、を備えていてもよい。
【0015】
(7)本発明に係るX線分析装置は、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載のX線発生装置と、前記X発生装置より出射されるX線ビームが照射される試料を支持する、支持台と、前記試料から発生する散乱X線を検出する、検出器と、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、簡便な構成で異なる波長のX線を選択して発生させることが可能なX線発生装置、及びX線分析装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るX線分析装置の構成を示す概略図である。
図2A】本発明の実施形態に係るX線封入管の原理を示す図である。
図2B】本発明の実施形態に係るX線封入管の陰極と陽極の配置を示す図である。
図2C】本発明の実施形態に係る陽極の平面図である。
図3A】本発明の実施形態に係るX線源部の構成を示す概略図である。
図3B】本発明の実施形態に係るX線源部の構成を示す概略図である。
図3C】本発明の実施形態に係るX線源部の構成を示す概略図である。
図3D】本発明の実施形態に係るX線源部の構成を示す概略図である。
図4A】関連技術1に係るX線源部の構成を示す概略図である。
図4B】関連技術1に係るX線源部の構成を示す概略図である。
図5A】関連技術2に係るX線源部の構成を示す概略図である。
図5B】関連技術2に係るX線源部の構成を示す概略図である。
図6A】関連技術3に係るX線源部の構成を示す概略図である。
図6B】関連技術3に係るX線源部の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、寸法、形状等について模式的に表す場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るX線分析装置1の構成を示す概略図である。ここで、当該実施形態に係るX線分析装置1はX線回折測定装置(XRD)であるが、これに限定されることはなく、小角X線散乱測定装置(SAXS)であってもよく、さらに、他のX線分析装置であってもよい。当該実施形態に係るX線分析装置1は、X線源部11と、光学系12と、試料100を支持する支持台14と、2次元検出器15と、ゴニオメータ21と、を備える。
【0020】
ゴニオメータ21は、試料水平配置型のθ-θ型ゴニオメータである。ゴニオメータ21は、入射側アーム21Aと、固定部21Bと、受光側アーム21Cと、を備える。入射側アーム21AにX線源部11と光学系12とが配置され、固定部21Bに支持台14とが配置され、受光側アーム21Cに2次元検出器15が配置される。ゴニオメータ21は、支持台14に支持される試料100を水平に保持したまま、2θスキャンを行うことが出来る。試料100を水平に置くことで、試料100の自重による歪の影響を最小限にすることができ、試料100の落下に対する危険性を抑制することができる。ゴニオメータ21において、固定部21B(支持台14)が入射側アーム21A(X線源部11)に対してθ回転するときに受光側アーム21C(2次元検出器15)が入射側アーム21Aに対して2θ回転する。
【0021】
X線源部11は、当該実施形態に係るX線発生装置であり、X線封入管31を含む。X線源部11の詳細については後述する。光学系12は、例えば、1又は複数のスリットからなる。試料100を支持する支持台14は、固定部21Bに配置される(固定される)。X線源部11から発生するX線は、光学系12によって所望のX線ビームとなり、支持台14により支持される試料100にかかるX線ビームが照射される。
【0022】
2次元検出器15は、試料100より発生する散乱X線を検出する。ここで、散乱X線は、試料100より発生する回折X線を含んでいる 。また、当該実施形態において、検出器は2次元検出器に限定されることはなく、1次元検出器であってもよい。また、支持台14と2次元検出器15との間に、受光側スリットなど受光側光学系が配置されてもよい。
【0023】
図2Aは、当該実施形態に係るX線封入管31の原理を示す図である。X線封入管31は、真空管40と、陰極41(Cathode)と、陽極42(Anode)と、X線窓43と、を備える。陰極41及び陽極42は、内部が真空に維持される真空管40の内部に配置され、X線窓43は真空管40の側面(X線封入管31の側面)に配置される。
【0024】
図2Bは、当該実施形態に係るX線封入管31の陰極41と陽極42の配置を示す図である。図2Bは、陰極41と陽極42の位置関係を俯瞰的に示している。図2Cは、当該実施形態に係る陽極42の平面図である。
【0025】
陰極41にフィラメントが備えられ、駆動時にはフィラメントの両端に数V程度の電位差Vが印加され、フィラメントが2千℃程度まで加熱されると、陰極41(フィラメント)より熱電子が放出される。駆動時には、陰極41と陽極42との間には数~数百kVの電位差Vが印加される。当該実施形態では、陰極41と陽極42との距離は6mm程度であり、陰極41と陽極42との間に印加される電位差Vは30kV程度である。陰極41より放出される熱電子は印加される電位差Vにより加速され、加速される熱電子が電子線となり陽極42の表面に照射される(衝突する)。陰極41のフィラメントは線形状を有し、陽極42の表面は円形状を有する。陽極42に照射される電子線の照射領域EBは、陰極41のフィラメント形状に対応して、線形状(長手方向が短手方向より非常に大きい矩形状、以下、長い矩形状と表する)を有する。すなわち、陰極41のフィラメント形状が線形状であり、陰極41と陽極42との間に電位差Vが印加されるので、陰極41から陽極42を見ると、真下の領域の電界が最も大きくなるので、その電界に沿って大半の電子が真下方向に加速され、電子線となり陽極42の表面の照射領域EBへ照射される。すなわち、電子線の断面は、フィラメントの線形状の延伸方向に沿って延伸する扁平形状(実質的には、線形状又は長い矩形状)を有する。なお、図2A乃至図2Cそれぞれに、xyz軸が示されている。z軸は電子線の進行方向であり、陰極41と陽極42との間に発生する電界のうち最も強い電界の向きと平行である。x軸は陰極41のフィラメントの線形状の延伸方向である。y軸はx軸及びz軸に垂直方向である。
【0026】
電子線が陽極42の表面に照射される(衝突する)ことにより、X線が発生する。多方向に発生するX線のうちX線窓43を通過するX線が光学系12へ進行する。すなわち、X線封入管31はX線窓43よりX線を出射する。電子線の照射領域EBは、陰極41のフィラメントの線形状及び電子線の断面の偏平形状に対応して、x軸方向に延伸する扁平形状(実質的には、線形状又は長い矩形状)を有する。陰極41から放出される熱電子は、印加される電位差V(陰極41と陽極42との間に発生する電界)により加速される。z軸方向に平面視すると、陰極41は陽極42に含まれるよう重畳している。それゆえ、陰極41から陽極42を見ると、真下の領域は-z軸方向の電界となっているが、真下の領域の周辺における電界はxy平面の微小成分(主にy軸成分)を有する。それゆえ、電子線の断面は、陰極41のフィラメントの線形状と比べると、電子線が進行するに伴って、少しずつxy平面に(主にy軸方向に)広がる。それゆえ、照射領域EBは偏平形状を有するが、陰極41のフィラメントの線形状と比べると(主にy軸方向に)広がっている。なお、本明細書において、電子線の進行方向は、陰極41と陽極42との間に発生する電界のうち最大となる電界の方向(ここではz方向)と定義されるものとする。
【0027】
陽極42の表面(xy平面)と直交する面と直交し、照射領域EBの偏平形状の延伸方向(x軸)を含む面(xz平面)において、陽極42の表面(又は照射領域EBの偏平形状の延伸方向)に対してある角度で交差する方向の延長上に、X線窓43が配置される。偏平形状を有する照射領域EBから斜め方向にX線ビームを取り出すことにより、陽極42上の照射領域EBを擬似的に点形状のX線源とすることができる。なお、図2A乃至図2Cは、X線封入管31の原理を示すものであり、X線封入管31の近傍に永久磁石(後述)が配置されていない状態において、X線封入管31の駆動状態を説明したものである。
【0028】
図3A乃至図3Dは、当該実施形態に係るX線源部11の構成を示す概略図である。図3Aに第1のX線X1を発生させる場合が、図3Bに第2のX線X2を発生させる場合が、それぞれ示されている。図3Cに第1のX線X1を発生させる場合の陽極42の平面図が、図3Dに第2のX線X2を発生させる場合の陽極42の平面図が、それぞれ示されている。X線源部11は、X線封入管31と、永久磁石32と、回転駆動系33と、を備える。当該実施形態に係るX線封入管31は、図2Aに示すような簡便な構成のX線管球であり、陰極41と陽極42との間には、電子線を電気的又は磁気的に制御する部品を含んでいない。すなわち、アライメントコイル(Alignment Coil)、偏平・回転コイル(Deforming & Rotating Coil)、集束コイル(Focusing Coil)などは、X線封入管31の内部又は外部に配置されていない。
【0029】
当該実施形態に係るX線封入管31は、陰極41と陽極42との中心軸に対して回転対称な構造を有している。ここで、陰極41と陽極42との中心軸とは、陰極41の中心(フィラメントの線形状の中点)と、陽極42の中心(表面の円形状の中心)と、を結ぶ直線をいい、z軸方向と平行である。陽極42の表面の形状は円形状に限らないが、その場合であっても、陰極41と陽極42との中心軸は、陰極41の中心から陽極42へ下した垂線である。X線封入管31の外径は30mmであり、陽極42は、外径10mm、厚さ2mmの円盤である。
【0030】
図3C及び図3Dに示す通り、当該実施形態に係る陽極42の表面は円形状を有しているが、陽極42の表面は、中心Oを通る分割直線DL(ここでは、x軸方向に沿う直径)に対して分割されている。ここで、中心Oは、陰極41と陽極42との中心軸と陽極42の表面との交点であり、陽極42の表面の円形状の中心である。陽極42の表面は、分割直線DLに対して、一方側(図3Cの右側であり、図3Dの左側である)に第1の領域が、他方側(図3Cの左側であり、図3Dの右側である)に第2の領域が、それぞれ配置される。そして、第1の領域には第1の金属M1が、第2の領域には第2の金属M2が、それぞれ配置される。ここで、第1の金属M1と第2の金属M2は互いに異なる種類の金属である。例えば、第1の金属M1がW(タングステン)であり、第2の金属M2がCu(銅)であるが、この組み合わせに限定されることなく、陽極として適当な異なる2種類の金属であればよい。
【0031】
X線封入管31の近傍に永久磁石32が配置される。永久磁石32は当該実施形態に係る磁場発生部である。電子線の進行方向(ここではz軸方向)と交差する第1の方向(ここではx軸方向)に延伸する磁場を電子線に印加するよう、永久磁石32が配置され、X線封入管31に対して独立して固定されている。当該実施形態において、永久磁石32のX線封入管31側の表面は、陰極41と陽極42との中心軸から15~18mmの位置に配置されるのが望ましく、例えば、かかる表面は、真空管40の側面(X線封入管31の側面)から2.5mmの位置に配置される。永久磁石32が第1の方向(ここでは+x軸方向)に延伸する磁場を電子線に印加することにより、電子線の進行方向と磁場の方向(第1の方向)とが作る平面に垂直な方向(ここでは+y軸方向)に、電子線にローレンツ力が加わり、電子線はその向き(ここでは+y軸方向)に偏向する。それゆえ、電子線が陽極42の表面に照射される照射領域は、その向き(ここでは+y軸方向)に移動する。当該実施形態において、電子線の偏向量(中心Oから照射領域の移動距離)は0.5mmから1mmの範囲である。永久磁石32の役割は、電磁偏向形ブラウン管オシロスコープの偏向コイルと同じであるが、偏向コイルが4極コイルによって構成されていたりするのと異なり、永久磁石32を配置するという非常に簡便な構成で電子線を偏向させることができている。
【0032】
ここで、永久磁石32は、外径が15mmφ及び内径が10mmφのドーナツ型ネオジウム磁石である。ネオジウム磁石の中心から磁場は直線的に延びている。すなわち、永久磁石32(ネオジウム磁石)の中心から電子線を貫く磁場は+x軸方向となっている。永久磁石32の中心から電子線を貫く磁場の周辺における磁場は、yz平面において放射状に広がる微小成分を有する。それゆえ、電子線を貫く磁場は厳密には一様ではないが、電子線を偏向させる目的において、かかる微小成分は実質的に電子線の偏向に影響を及ぼしていない。その観点から、永久磁石32が第1の方向(+x軸方向)に延伸する磁場を電子線に印加する、としてよい。なお、当該実施形態に係る永久磁石32はドーナツ型ネオジウム磁石としたが、他の形状のネオジウム磁石であってもよく、また、他の材質の永久磁石であってもよい。
【0033】
図3C及び図3Dに示す通り、回転駆動系33がX線封入管31を回転させることにより、駆動時にX線封入管31を所望の回転位置に配置させることができる。図3A及び図3Cに示す第1のX線X1を発生させる場合も、図3B及び図3Dに示す第2のX線X2を発生させる場合も、駆動時には、陽極42の分割直線DLが電子線を貫く磁場の方向(第1の方向)に沿うように、X線封入管31は永久磁石32に対して配置される。かかる配置とすることにより、電子線が陽極42の表面に照射される照射領域は、第1のX線X1を発生させる場合には、第1の金属M1が配置される第1の照射領域EB1となっており、第2のX線X2を発生させる場合には、第2の金属M2が配置される第2の照射領域EB2となっている。第1の照射領域EB1と第2の照射領域EB2とは、外部の基準(例えば地上)に対する位置は実質的に一致している。
【0034】
さらに、第1の方向(電子線を貫く磁場の方向)は、電子線の進行方向と85°以上90°以下で交差している(ここでは向きではなく方向を想定している。向きと向きがなす角度となれば、85°以上95°以下となる。)のが望ましく、第1の方向が電子線の進行方向と実質的に直交しているのがさらに望ましい。また、電子線の断面の偏平形状の延伸方向が第1の方向(電子線を貫く磁場の方向)に沿うよう、X線封入管31は永久磁石32に対して配置されるのが望ましい。かかる配置となることにより、電子線の断面の偏平形状の短手方向に沿って電子線を偏向させることができる。その結果、第1の照射領域EB1を第1の金属M1が配置される領域に、第2の照射領域EB2を第2の金属M2が配置される領域に、容易に移動させることができる。当該実施形態では、電子線の進行方向は+z軸方向であり、電子線を貫く磁場の方向(第1の方向)は+x軸方向であり、電子線の断面の偏平形状の延伸方向はx軸方向であり、磁場により電子線が偏向する方向は+y軸方向である。
【0035】
当該実施形態に係るX線源部11は、回転駆動系33がX線封入管31を回転させることのみにより、電子線が照射される照射領域を、第1のX線X1を発生させる場合には、第1の金属M1が配置される第1の照射領域EB1に、第2のX線X2を発生させる場合には、第2の金属M2が配置される第2の照射領域EB2に、それぞれすることが出来ている。第1の照射領域EB1と第2の照射領域EB2とは、外部の基準(例えば地上)に対する位置は実質的に一致させることが出来ており、光学系12から見て、同じX線源の位置(焦点位置)とすることが出来ている。すなわち、回転駆動系33の駆動のみにより、X線源部11は、第1のX線X1又は第2のX線X2のいずれかを選択し、選択されるX線を光学系12へ共通する条件(同じX線源の位置)で出射することが出来ている。
【0036】
なお、当該実施形態に係るX線封入管31は、第1の領域に配置される第1の金属M1に電子線が照射される第1の照射領域EB1から発生するX線X1を通過させる第1のX線窓43Aと、第2の領域に配置される第2の金属M2に電子線が照射される第2の照射領域EB2から発生するX線X2を通過させる第2のX線窓43Bと、を備えているのが望ましい。照射領域EBから発生するX線を通過させるために配置される、図2Bに示すX線窓43と異なり、第1の照射領域EB1は駆動時において中心Oから+y軸方向に移動しており(図3C参照)、第1のX線窓43Aは、陽極42の表面(xy平面)と直交する面と直交し、第1の照射領域EB1の偏平形状の延伸方向(x軸)を含む面(xz平面)において、陽極42の表面(又は第1の照射領域EB1の偏平形状の延伸方向)に対して所定の角度で交差する方向の延長上であって、X線封入管31の側面(真空管40の側面)に配置される。同様に、第2の照射領域EB2は駆動時において中心Oから+y軸方向に移動しており(図3D参照)、第2のX線窓43Bは、陽極42の表面(xy平面)と直交する面と直交し、第2の照射領域EB2の偏平形状の延伸方向(x軸)を含む面(xz平面)において、陽極42の表面(又は第2の照射領域EB2の偏平形状の延伸方向)に対して当該所定の角度で交差する方向の延長上であって、X線封入管31の側面に、配置される。よって、第1のX線窓43Aと第2のX線窓43Bとは、陰極41と陽極42との中心軸に対して(180°)回転対称(xy平面において点対称)な配置となっている。当該実施形態に係るX線封入管31が第1のX線窓43Aと第2のX線窓43Bを備えることにより、選択されるX線を光学系12へ共通する条件(同じX線源の位置)で出射することが出来ている。
【0037】
よって、当該実施形態に係るX線発生装置は、X線管球(X線封入管)を交換することなく、異なる波長のX線を発生することが出来ている。異なる波長のX線を選択するために、回転駆動系によりX線封入管を180°回転させればよく、磁場発生部はX線封入管に対して固定されているので、電子線を貫く磁場の大きさは一定であり、電子線の偏向量も共通しており、陽極の表面に電子線が照射される照射領域も、X線封入管の回転に対して独立しており、同じ位置となる。X線封入管が第1のX線窓と第2のX線窓とを備えることにより、異なる波長のX線のいずれを選択しても、同じ条件でX線ビームを外部へ取り出すことが出来ている。
【0038】
[関連技術1]
本発明の関連技術1に係るX線発生装置について説明する。本発明の実施形態に係るX線発生装置では、回転駆動系33はX線封入管31を回転させるが、永久磁石32はX線封入管31に対して独立して固定されている。これに対して、関連技術1に係るX線発生装置では、回転駆動系33は永久磁石32を回転させるが、X線封入管31は永久磁石32に対して独立して固定されている点が異なっている。それに伴って、第1の照射領域EB1から発生するX線X1も第2の照射領域EB2から発生するX線X2も通過されるX線窓43がX線封入管31の側面に配置される点が本発明の実施形態と異なっているが、それ以外については、本発明の実施形態に係る発生装置と同じである。
【0039】
図4A及び図4Bは、関連技術1に係るX線源部11の構成を示す概略図である。図4A及び図4Bは、図3C及び図3Dに対応しており、図4Aに第1のX線X1を発生させる場合の陽極42の平面図が、図4Bに第2のX線X2を発生させる場合の陽極42の平面図が、それぞれ示されている。第1のX線X1を発生させる場合には、回転駆動系33は永久磁石32を回転させることにより、図4Aに示す通り、永久磁石32が陽極42の-x軸方向側に配置されており、電子線を+x軸方向に貫く磁場を印加する。それゆえ、ローレンツ力が+y軸方向にかかり、電子線は+y軸方向に偏向し、第1の照射領域EB1は中心Oより+y軸方向に移動する。第2のX線X2を発生させる場合には、回転駆動系33は永久磁石32を回転させることにより、図4Bに示す通り、永久磁石32が陽極42の+x軸方向側に配置されており、電子線を-x軸方向に貫く磁場を印加する。それゆえ、ローレンツ力が-y軸方向にかかり、電子線は-y軸方向に偏向し、第2の照射領域EB2は中心Oより-y軸方向に移動する。
【0040】
関連技術1に係るX線封入管31は、第1の照射領域EB1から発生するX線X1及び第2の照射領域EB2から発生するX線X2をともに通過させ、X線封入管31の側面に配置される、X線窓43を備えている。X線窓43は、以下に示す2つのX線ビームの光路を通過させる。第1には、陽極42の表面(xy平面)と直交する面と直交し、第1の照射領域EB1の偏平形状の延伸方向(x軸)を含む面(xz平面)において、陽極42の表面(又は第1の照射領域EB1の偏平形状の延伸方向)に対して所定の角度で交差する方向の延長線となる光路である。第2には、陽極42の表面(xy平面)と直交する面と直交し、第2の照射領域EB2の偏平形状の延伸方向(x軸)を含む面(xz平面)において、陽極42の表面(又は第2の照射領域EB2の偏平形状の延伸方向)に対して所定の角度で交差する方向の延長線となる光路である。関連技術1に係るX線封入管31がかかるX線窓43を備えることにより、簡便な構成で、選択される波長のX線をいずれも光学系12へ出射することが出来ている。なお、本発明の実施形態と異なり、第1のX線X1を発生させる場合と第2のX線X2を発生させる場合とでは、X線源の位置がy軸方向に沿ってずれているが、第1の照射領域EB1と第2の照射領域EB2とのy軸方向の沿うずれは1mmから2mmの範囲の程度であり、かかるずれが問題とならない測定に対して、関連技術1に係るX線発生装置は最適である。
【0041】
[関連技術2]
本発明の関連技術2に係るX線発生装置について説明する。関連技術1に係るX線発生装置では、回転駆動系33が永久磁石32を回転させることにより、電子線を貫く磁場の向きを反転させる。これに対して、関連技術2に係るX線発生装置では、回転駆動系33を備えておらず、代わりに、第1の永久磁石32Aと第2の永久磁石32Bとが、陰極41と陽極42との中心軸に対して(180°)回転対称(xy平面において中心Oに対して点対称)となるよう配置される点が異なっている。それに伴って、第1の永久磁石32AとX線封入管31との間に第1の防磁シャッター35Aが、第2の永久磁石32BとX線封入管31との間に第2の防磁シャッター35Bが、それぞれ配置される点で、関連技術1と異なっているが、それ以外については関連技術1に係るX線発生装置と同じである。第1の防磁シャッター35A/第2の防磁シャッター35Bは、シャッターが開いているときは、第1の永久磁石32A/第2の永久磁石32Bより発生する磁場を通すことにより、第1の永久磁石32A/第2の永久磁石32Bは、電子線を貫く磁場を印加することが出来る。反対に、第1の防磁シャッター35A/第2の防磁シャッター35Bは、シャッターが閉じているときは、第1の永久磁石32A/第2の永久磁石32Bより発生する磁場をシャッターが遮断するので、第1の永久磁石32A/第2の永久磁石32Bは、電子線を貫く磁場を印加することが出来ない。
【0042】
図5A及び図5Bは、関連技術2に係るX線源部11の構成を示す概略図である。図5A及び図5Bは、図4A図4Bに対応しており、図5Aに第1のX線X1を発生させる場合の陽極42の平面図が、図5Bに第2のX線X2を発生させる場合の陽極42の平面図が、それぞれ示されている。関連技術2に係るX線源部11は、陽極42の-x軸方向側に、第1の防磁シャッター35A及び第1の永久磁石32Aが順に、陽極42の+x軸方向側に、第2の防磁シャッター35B及び第2の永久磁石32Bが順に、それぞれ配置されている。なお、関連技術2に係るX線源部11は回転駆動系33は備えていない。
【0043】
図5Aに示す通り、第1のX線X1を発生させるために、第1の防磁シャッター35Aを開き、第2の防磁シャッター35Bを閉じることにより、第1の永久磁石32Aは、電子線を+x軸方向に貫く磁場を印加する。それゆえ、関連技術1と同様に、第1の照射領域EB1は中心Oより+y軸方向に移動する。図5Bに示す通り、第2のX線X2を発生させるために、第2の防磁シャッター35Bを開き、第1の防磁シャッター35Aを閉じることにより、第2の永久磁石32Bは、電子線を-x軸方向に貫く磁場を印加する。それゆえ、関連技術1と同様に、第2の照射領域EB2は中心Oより-y軸方向に移動する。関連技術2に係るX線封入管31は、関連技術1に係るX線窓43と同じものを備えている。これにより、簡便な構成で、選択される波長のX線をいずれも光学系12へ出射することが出来ている。
【0044】
[関連技術3]
本発明の関連技術3に係るX線発生装置について説明する。関連技術2に係るX線発生装置では、陽極42の両側にそれぞれ第1の防磁シャッター35A/第2の防磁シャッター35B、及び第1の永久磁石32A/第2の永久磁石32Bを配置させている。これに対して、関連技術3に係るX線発生装置では、陽極42の片側にのみ防磁シャッター35及び永久磁石32を配置させている点が異なっている。それに伴って、第2の照射領域EB2の位置が、本発明の実施形態と関連技術1及び2と異なる。それゆえ、陽極42の表面の第1の領域及び第2の領域が異なる。また、X線窓43の配置が、関連技術1及び2と異なる。それ以外については、関連技術2と同じ構造をしている。
【0045】
図6A及び図6Bは、関連技術3に係るX線源部11の構成を示す概略図である。図6A及び図6Bは、関連技術1に係る陽極42を示す図4A及び図4Bに、関連技術2に係る陽極42を示す図5A及び図5Bに、それぞれ対応しており、図6Aに第1のX線X1を発生させる場合の陽極42の平面図が、図6Bに第2のX線X2を発生させる場合の陽極42の平面図が、それぞれ示されている。関連技術3に係るX線源部11は、陽極42の-x軸方向側に、防磁シャッター35及び永久磁石32が順に配置されている。なお、関連技術3に係るX線源部11は回転駆動系33は備えていない。
【0046】
図6Aに示す通り、第1のX線X1を発生させるために、防磁シャッター35を開くことにより、永久磁石32は、電子線を+x軸方向に貫く磁場を印加する。それゆえ、関連技術1及び2と同様に、第1の照射領域EB1は中心Oより+y軸方向に移動する。図6Bに示す通り、第2のX線X2を発生させるために、防磁シャッター35を閉じることにより、永久磁石32は電子線に磁場を印加していない。それゆえ、関連技術1及び2と異なり、第2の照射領域EB2は中心Oに対して偏向しておらず、第2の照射領域EB2の偏平形状は中心Oを貫いている。第2の照射領域EB2は、図2Cに示す照射領域EBと一致している。すなわち、分割直線DLが中心Oより+y軸方向へ移動しており、第1の金属M1が配置される第1の領域及び第2の金属M2が配置される第2の領域が関連技術1及び2と異なっている。
【0047】
関連技術3に係るX線封入管31は、第1の照射領域EB1から発生するX線X1及び第2の照射領域EB2から発生するX線X2をともに通過させ、X線封入管31の側面に配置される、X線窓43を備えている。X線窓43は、以下に示す2つのX線ビームの光路を通過させる。第1には、関連技術1及び2と同様に、陽極42の表面(xy平面)と直交する面と直交し、第1の照射領域EB1の偏平形状の延伸方向(x軸)を含む面(xz平面)において、陽極42の表面(又は第1の照射領域EB1の偏平形状の延伸方向)に対して所定の角度で交差する方向の延長線となる光路である。第2には、陽極42の表面(xy平面)と直交する面と直交し、第2の照射領域EB2の偏平形状の延伸方向(x軸)を含む面(xz平面)において、陽極42の表面(又は第2の照射領域EB2の偏平形状の延伸方向)に対して所定の角度で交差する方向の延長線となる光路である。ここで、第2の照射領域EB2は、中心Oを貫いている。
【0048】
関連技術3に係るX線封入管31がかかるX線窓43を備えることにより、簡便な構成で、選択される波長のX線をいずれも光学系12へ出射することが出来ている。なお、関連技術1及び2と同様に、第1のX線X1を発生させる場合と第2のX線X2を発生させる場合とでは、X線源の位置がy軸方向に沿ってずれているが、第1の照射領域EB1と第2の照射領域EB2とのy軸方向の沿うずれは0.5mmから1mmの範囲の程度であり、かかるずれが問題とならない測定に対して、関連技術3に係るX線発生装置は最適である。なお、関連技術3に係る陽極42の分割直線DLは、中心Oを貫いておらず、+y軸方向に移動している。第1の金属M1が配置される第1の領域は、関連技術1及び2と比べて狭くなっており、第2の金属M2が配置される第2の領域は、関連技術1及び2と比べて広くなっている。
【0049】
関連技術3に係るX線発生装置では、陰極41の中心を陽極42の中心Oの上方に配置させているが、これに限定されることはない。例えば、陰極41を平面視して陽極42の中心Oよりも-y軸方向に移動させて配置して、第1の照射領域EB1と第2の照射領域EB2との中心線が中心Oを貫くようにしてもよい。この場合、分割直線DLは関連技術1及び2と同様に、中心Oを貫いているのが望ましい。
【0050】
以上、本発明の実施形態に係るX線発生装置及びX線分析装置について、関連技術1乃至3ともに説明した。本発明及び関連技術1乃至3は、上記実施形態に限定されることなく、広く適用することが出来る。例えば、上記実施形態などに係る磁場発生部は永久磁石32としているがこれに限定されることはなく、電磁コイルであってもよい。また、陽極42の分割直線DLは、第1の照射領域EB1と第2の照射領域EB2との中心線としているがこれに限定されることはない。第1の領域が第1の照射領域EB1を含み、少なくとも第1の照射領域EB1に第1の金属M1が配置されていればよく、第2の領域が第2の照射領域EB2を含み、少なくとも第2の照射領域EB2に第2の金属M2が配置されていればよい。
【0051】
また、上記実施形態などでは、扁平形状を有する照射領域の延伸方向を含み陽極の表面に垂直な平面において斜め方向にX線ビームを取り出すよう、X線窓を配置させることにより、X線発生装置を疑似的に点形状のX線源としているが、これに限定されることはない。例えば、照射領域の扁平形状の延伸方向に垂直な方向であり陽極の表面と所定の角度となる方向に照射領域の延伸方向の長さに対応する長さのX線窓を配置することにより、X線発生装置を線形状のX線源とすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 X線分析装置、11 X線源部、12 光学系、14 支持台、15 2次元検出器、21 ゴニオメータ、21A 入射側アーム、21B 固定部、21C 受光側アーム、31 X線封入管、32 永久磁石、32A 第1の永久磁石、32B 第2の永久磁石、33 回転駆動系、35 防磁シャッター、35A 第1の防磁シャッター、35B 第2の防磁シャッター、40 真空管、41 陰極、42 陽極、43 X線窓、43A 第1のX線窓、43B 第2のX線窓、100 試料、EB 照射領域、EB1 第1の照射領域、EB2 第2の照射領域、M1 第1の金属、M2 第2の金属、X1 第1のX線、X2 第2のX線。

図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B