(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】負極スラリー組成物
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20220620BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220620BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
(21)【出願番号】P 2020544439
(86)(22)【出願日】2019-04-22
(86)【国際出願番号】 KR2019004799
(87)【国際公開番号】W WO2020022613
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】10-2018-0085772
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】キョン・オ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ス・ジ・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ス・ユン
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-171074(JP,A)
【文献】特表2015-518264(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0010136(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質;及び
アクリル系重合体を含み、
前記アクリル系重合体は、アクリル系重合体100重量部に対して、カルボン酸含有単量体単位60重量部~90重量部、ヒドロキシ基含有単量体単位5重量部~35重量部及び非共有電子対を有する単量体単位1重量部~10重量部の範囲内の割合で含
み、
前記非共有電子対を有する単量体単位は、下記化学式2で表示される化合物である、負極スラリー組成物:
【化4】
前記化学式2で、R
2
~R
4
は、それぞれ独立的にヒドロキシ基であるか、エチレン性官能基であり、R
2
~R
4
のうち少なくとも一つ以上はエチレン性官能基であり、前記エチレン性官能基は、
【化5】
で表示され、Xは、酸素原子であるか単一結合であり、Yは、単一結合であるか炭素数1~10のアルキル基又は4~12員環のアリール基に置換されるか非置換された炭素数1~4のアルキレンであり、Zは、(メタ)アクリレート基、アリル基又はビニル基である。
【請求項2】
カルボン酸含有単量体単位は、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、イタコンサン、マレイン酸
又はマレイン酸無水物であることを特徴とする、請求項1に記載の負極スラリー組成物。
【請求項3】
ヒドロキシ基含有単量体単位は、下記化学式1で表示される化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の負極スラリー組成物。
【化1】
前記化学式1で、R
1は、水素又は炭素数1~4のアルキル基であり、Lは、炭素数1~4のアルキル基又はヒドロキシ基に置換されるか非置換された炭素数1~10のアルキレン、
【化2】
又は
【化3】
を示し、ここで、nは、1~20の整数である。
【請求項4】
化学式1で表示される化合物は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート又は2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートであることを特徴とする、請求項3に記載の負極スラリー組成物。
【請求項5】
化学式2で表示される化合物は、(メタ)アクリルオキシエチルホスフェート、(メタ)アクリルオキシプロピルホスフェート、モノメチル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジオクチル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、アリルホスフェート、ビニルホスフェート、ビス(メタクリルオキシエチル)ホスフェート、アリルリン酸又はビニルリン酸であることを特徴とする、請求項
1に記載の負極スラリー組成物。
【請求項6】
アクリル系重合体は、常温で非水性溶媒に対する溶解度が5%以下であり、常温で水に対する溶解度が50%以上であることを特徴とする、請求項1から
5の何れか一項に記載の負極スラリー組成物。
【請求項7】
アクリル系重合体のガラス転移温度が-100℃~200℃の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から
6の何れか一項に記載の負極スラリー組成物。
【請求項8】
アクリル系重合体の重量平均分子量が5万~500万の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から
7の何れか一項に記載の負極スラリー組成物。
【請求項9】
負極活物質は、少なくともケイ素活物質を含むことを特徴とする、請求項1から
8の何れか一項に記載の負極スラリー組成物。
【請求項10】
粒子型バインダーをさらに含むことを特徴とする、請求項1から
9の何れか一項に記載の負極スラリー組成物。
【請求項11】
粒子型バインダーは、アクリル系重合体100重量部に対して100重量部~900重量部の範囲で含むことを特徴とする、請求項
10に記載の負極スラリー組成物。
【請求項12】
最大粒子のサイズが80μm未満であることを特徴とする、請求項1から
11の何れか一項に記載の負極スラリー組成物。
【請求項13】
集電体;及び
前記集電体の一面に形成されており、請求項1~請求項
12の何れか一項に記載のスラリー組成物の乾燥物である負極活性層を含む負極。
【請求項14】
負極活性層は、集電体との接着力が11gf/cm以上であることを特徴とする、請求項
13に記載の負極。
【請求項15】
請求項
13または
14に記載の負極を含むことを特徴とする、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年7月24日に出願された大韓民国特許出願第10-2018-0085772号に基づく優先権の利益を主張し、該当大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、負極スラリー組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン二次電池などの二次電池は、小型軽量で製作することができ、エネルギーの密度が高く、繰り返し充放電が可能なので多様に用いられている。
【0004】
二次電池をより高性能化するための多様な研究が進行されている。例えば、容量を高めるために負極活物質としてケイ素負極活物質を用いる試みがあった。しかし、ケイ素系の活物質は、高い理論容量を有するが、充放電時に大きく膨脹と収縮を繰り返し、これによって、経時的に活物質が劣化され、極板の構造が破壊され、電極内の導電パス(path)が損傷される問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願は、負極スラリー組成物に関する。本出願では、負極の製造に適用されて繰り返される充放電による収縮及び膨脹によく対応でき、活物質間の結着力及び集電体に対する接着力に優れた負極スラリー組成物を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願は、負極スラリー組成物に関する。前記負極スラリー組成物は、負極の製作に用いられる組成物を意味する。
【0007】
本出願の前記負極スラリー組成物は、負極活物質及びアクリル系重合体を含む。
【0008】
一つの例示で、前記アクリル系重合体は、共重合体であってもよい。前記共重合体は、ブロック共重合体、勾配共重合体(gradient copolymer)又はランダム共重合体であってもよく、一つの例示で、ランダム共重合体であってもよい。
【0009】
本出願では、後述する単量体の組成を有するアクリル系共重合体を含む負極スラリー組成物を用いることで、二次電池の充放電による繰り返された収縮及び膨脹に効果的に対応し、活物質間の結着力と集電体に対する優れた接着力を確保することができる。
【0010】
用語「アクリル系共重合体」は、アクリル単量体の単位を主成分で含む共重合体である。また、主成分で含まれるということは、該当成分の重量割合が全体重量を基準として約55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上又は約90重量%以上の場合である。上記で主成分の割合の上限は特に制限されず、約100重量%程度であってもよい。
【0011】
また、用語「アクリル単量体」は、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの誘導体、例えば、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを意味する。
【0012】
一つの例として、前記アクリル系重合体は、カルボン酸含有単量体単位、ヒドロキシ基含有単量体単位及び非共有電子対を有する単量体単位を含んでいてもよい。
【0013】
用語「単量体単位」は、該当単量体が重合反応を経て高分子の主鎖又は側鎖を形成している状態を意味する。
【0014】
前記カルボン酸含有単量体単位は、特な制限なしに公知の成分が用いられ得、例えば、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、イタコンサン、マレイン酸及びマレイン酸無水物などを用いることができるが、これに制限されるものではない。一つの例示では、アクリル酸を適用することができる。
【0015】
前記カルボン酸含有単量体単位は、目的とするアクリル系重合体の剛性などを考慮して選択できるもので、特に制限されるものではない。一つの例示で、前記カルボン酸含有単量体単位は、アクリル系重合体100重量部に対して、約60重量部~約90重量部の範囲内の割合で含まれ得る。他の例示で、前記カルボン酸含有単量体単位は、アクリル系重合体100重量部に対して、約60重量部以上、65重量部以上又は約70重量部以上であるか、約85重量部以下又は約80重量部以下程度であってもよい。
【0016】
前記ヒドロキシ基含有単量体単位は、特な制限なしに公知の成分が用いられ得、例えば、下記化学式1で表示される単量体を用いることができる。
【0017】
【0018】
前記化学式1で、R
1は、水素又は炭素数1~4のアルキル基であり、Lは、炭素数1~4のアルキル基又はヒドロキシ基に置換されるか非置換された炭素数1~10のアルキレン、
【化2】
又は
【化3】
を示し、ここで、nは、1~20の整数である。
【0019】
前記化学式1で表示される単量体は、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート又は2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0020】
前記ヒドロキシ基含有単量体単位は、目的とするアクリル系重合体の弾性などを考慮して調節できるもので、特に制限されるものではない。一つの例示で、前記ヒドロキシ基含有単量体単位は、アクリル系重合体100重量部に対して、約5重量部~約35重量部の範囲内の割合で含まれ得る。他の例で、アクリル系重合体100重量部に対して、約8重量部以上、10重量部以上又は約15重量部以上であってもよく、約30重量部以下又は約25重量部以下であってもよい。
【0021】
前記非共有電子対を有する単量体単位は、特別の制限なしに公知の成分が用いられ得、例えば、下記化学式2で表示される単量体を用いることができる。
【0022】
【0023】
前記化学式2で、R
2~R
4は、それぞれ独立的にヒドロキシ基であるかエチレン性官能基であり、R
2~R
4のうち少なくとも一つ以上はエチレン性官能基であり、前記エチレン性官能基は、
【化5】
で表示され、Xは、酸素原子であるか単一結合であり、Yは、単一結合であるか炭素数1~10のアルキル基又は4~12還元のアリール基に置換されるか非置換された炭素数1~4のアルキレンであり、Zは、(メタ)アクリレート基、アリル基又はビニル基である。
【0024】
化学式2のX又はYで、単一結合は、両側の原子端が別途の原子を媒介とせずに直接結合された場合を意味する。
【0025】
前記化学式2で表示される単量体は、例えば、(メタ)アクリルオキシエチルホスフェート、(メタ)アクリルオキシプロピルホスフェート、モノメチル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジオクチル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、アリルホスフェート、ビニルホスフェート、ビス(メタクリルオキシエチル)ホスフェート、アリルリン酸又はビニルリン酸などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0026】
前記非共有電子対を有する単量体単位は、アクリル系重合体100重量部に対して約1重量部~約10重量部の範囲内の割合で含まれ得る。他の例で、アクリル系重合体100重量部に対して、約2重量部以上、3重量部以上又は約4重量部以上であってもよく、約9重量部以下、8重量部以下又は約7重量部以下であってもよい。前記非共有電子対を有する単量体単位を用いることで、活物質間の結着力及び集電体に対する接着力を向上させることができる。
【0027】
前記負極スラリー組成物に含まれるアクリル系重合体が前記範囲の重量部を満足するカルボン酸含有単量体単位、ヒドロキシ基含有単量体単位及び非共有電子対を有する単量体単位を含むことで、活物質間の結着力及び集電体に対する接着力がより向上され得る。
【0028】
一つの例示で、前記アクリル系重合体は、二次電池を構成する後述する非水性溶媒に対する溶解度が常温で、例えば、約10℃~約30℃の任意の温度、一具体例として、約25℃で、約5%以下であってもよい。一方、前記溶解度は、実施例に開示された方式によって測定できる。
【0029】
本出願で、前記非水性溶媒は、二次電池において電解液で用いられる溶媒を意味することができる。電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役目をする非水性溶媒であれば、特に制限されず、電解液で用いられ得る。具体的に、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系又は非プロトン性溶媒を電解液で用いることができる。
【0030】
前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)又はブチレンカーボネート(BC)などが用いられ得る。前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、1,1-ジメチルエチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノラクトン(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)又はカプロラクトン(carprolactone)などが用いられ得る。前記エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン又はポリエチレングリコールジメチルエーテルなどが用いられ得る。前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが用いられ得る。また、前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール又はイソプロピルアルコールなどが用いられ得る。前記非プロトン性溶媒としては、アセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソラン(DOL)などのジオキソラン類又はスルホラン(sulfolane)などが用いられ得る。
【0031】
前記非水性溶媒は、単独に又は一つ以上混合して用いられ得、一つ以上混合して用いる場合の混合割合は、目的とする電池性能によって適切に調節でき、特に、1,3-ジオキソランとジメトキシエタンの1:1体積比の混合液が好ましい。
【0032】
前記非水性溶媒に対して本出願のアクリル系重合体の25℃での溶解度は、5%以下、好ましくは、1%以下であるとき、負極の非水性溶媒に対する耐性に優れて高いサイクル安定度を示すことができる。
【0033】
一つの例として、前記アクリル系重合体は、後述する負極スラリー組成物に含まれ得る溶媒、一例で、水性溶媒、一具体例で、水に対する溶解度が約50%以上であってもよい。他の例で、水に対する溶解度が約55%以上、60%以上、65%以上、70%以上又は約75%以上であってもよく、上限は特に制限されないが、約100%以下、95%以下又は約90%以下程度であってもよい。
【0034】
アクリル系重合体が非水性溶媒に対する前記範囲の低い溶解度及び水に対する前記範囲の高い溶解度を満足する場合、活物質間の結着力及び集電体に対する接着力が向上され得る。
【0035】
一つの例として、前記アクリル系重合体は、単一高分子(Homopolymer)のガラス転移温度が、例えば、約-100℃~約200℃の範囲内であってもよく、好ましくは、約-10℃~約100℃の範囲内であってもよい。ガラス転移温度が前記範囲内であるアクリル系重合体は、適切な剛性と弾性を同時に具現することができる。
【0036】
一つの例として、前記アクリル系重合体は、重量平均分子量が約5万~約500万の範囲内にあってもよい。本出願で用語「重量平均分子量」は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定した標準ポリエチレングリコールに対する換算数値を意味することができ、特に別途規定しない限り、ある重合体の分子量はその重合体の重量平均分子量を意味することができる。前記重量平均分子量は、他の例示で、約10万以上又は約20万以上であるか、約450万以下、400万以下、350万以下又は約300万以下程度であってもよい。
【0037】
前記アクリル系重合体の重量平均分子量が5万未満である場合、接着力が落ちて負極活性層と集電体が剥離され得、500万を超過する場合、粘度が非常に高くて負極の製造時にスラリーミキシングが難しいことがある。
【0038】
アクリル系重合体は、分子量分布(PDI;Mw/Mn)、すなわち、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の割合(Mw/Mn)が約2~約10程度の範囲内にあってもよい。
【0039】
上記のようなアクリル系重合体は、業界に公知にされた一般的な共重合体の製造方法に基礎して製造できる。
【0040】
例えば、前記アクリル系重合体は、上述した単量体単位の混合物を溶液重合(solution polymerization)、塊状重合(bulk polymerization)、懸濁重合(suspension polymerization)又は乳化重合(emulsion polymerization)方式などの方式に適用して製造できるが、適切には、溶液重合によって製造することが有利である。溶液重合を通じて重合体を製造する方式は特に制限されない。一方、溶液重合の溶媒は特に制限されないが、溶液重合後に追加精製工程なしに重合体溶液をそのまま用いるために沸点110℃以下の溶媒が好ましい。一例で、重合溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、イソプロパノール又は水などが挙げられ、環境的な影響と沸点を考慮したとき、水が好ましい。
【0041】
前記負極スラリー組成物は、追加的に他の成分を含んでいてもよい。
【0042】
例えば、前記負極スラリー組成物は、前記アクリル系重合体を架橋させ得る架橋成分を含むことができる。このような架橋成分は、例えば、前記アクリル系重合体が目的とする物性を適切に示す架橋構造を形成するように選択され得る。
【0043】
上記で適用される架橋成分の種類は特に制限されず、公知の方式によって選択され得る。
【0044】
例えば、前記重合体がヒドロキシ基などのような架橋性の官能基を含む場合に、イソシアネート架橋剤などのような架橋剤を適用したウレタン架橋方式などが適用され得る。このとき、架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート又はナフタレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;又は前記ジイソシアネート化合物をポリオール(例えば、トリメチロールプロパン)と反応させた化合物;などが例示され得る。他の方式としては、イソシアネートアルキル(メタ)アクリレートなどの物質を適用して前記ヒドロキシ基のうち一部又は全部を(メタ)アクリロイル基などのラジカル反応性基に転換させた後にラジカル反応を通じて架橋構造を具現する方式などを用いることができる。
【0045】
このような架橋構造は、適切な架橋度が確保されてアクリル系重合体に適正弾性を付与するように付与され得る。例えば、前記架橋度は、蒸溜水の抽出残留分によって計算されるゲル分率が約10%~約30%の範囲程度になるように付与され得る。このような架橋度(ゲル分率)は、適用される架橋剤の種類や割合、架橋官能基の種類や割合又は架橋条件の調整を通じて達成できる。
【0046】
前記ゲル分率は、具体的には、下記数式1によって求められ得る。
【0047】
[数1]
ゲル分率(%)= B/A × 100
【0048】
数式1で、Aは、前記アクリル系重合体の質量であり、Bは、前記質量Aのアクリル系重合体を200メッシュ(mesh)のサイズの網に入れた状態で常温で蒸溜水に72時間沈積させた後に採取した不溶解分の乾燥質量を示す。
【0049】
上記のような範囲でゲル分率を維持して本出願の目的に適合なスラリー組成物を具現することができる。
【0050】
前記数式1で「常温」は、加温するか減温しない自然そのままの温度であって、約10℃~約30℃の範囲内のいずれか一つの温度、約23℃又は約25℃程度の温度である。一方、前記数式1で「72時間」は、例えば、71時間~73時間であってもよく、均等な範囲を含む。
【0051】
また、前記数式1で「乾燥質量」は、採取した不溶解分に適正な乾燥工程を行い、該当不溶解分が実質的に溶媒(酢酸エチルなど)を含まないようにした状態を意味し、例えば、前記溶媒の量が約1重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%以下又は約0.05重量%以下になった状態を意味する。このために適用される乾燥条件は特に制限されず、上記のような溶媒量が達成されるように調節され得る。
【0052】
本出願の前記負極スラリー組成物に含まれる負極活物質は、例えば、リチウム二次電池の負極で電子を伝達することができる物質である。リチウムイオン二次電池の負極活物質としては、一般的には、リチウムを吸収及び放出することができる物質を用いる。本出願の負極スラリー組成物は、負極活物質として少なくともケイ素活物質を含む。
【0053】
ケイ素負極活物質としては、例えば、ケイ素(Si)、ケイ素を含んだ合金、SiO、SiO2、SiOx、Si含有材料を導電性カーボンで被覆又は複合化して成るSi含有材料と導電性カーボンとの複合化物などが挙げられる。このようなケイ素負極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種類を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
上記でケイ素を含んだ合金としては、例えば、チタン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅で構成される群から選択される少なくとも1種の元素とケイ素を含んだ合金組成物が例示され得る。また、ケイ素を含んだ合金としては、例えば、ケイ素、アルミニウム及び鉄などの遷移金属を含むか、ケイ素、スズ及びイットリウムなどの希土類元素を含む合金組成物も用いることができる。
【0055】
SiOxは、SiO及びSiO2のうち少なくとも一つとSiを含有する化合物であってもよく、上記でxは、一般的に、0.01以上~2未満の範囲内である。SiOxは、例えば、SiOの不均化反応を用いて形成することができる。具体的には、SiOxは、SiOを任意にポリビニルアルコールなどのポリマーの存在下で熱処理し、ケイ素と二酸化ケイ素を生成させることで製造することができる。熱処理は、SiOとポリマーを粉砕混合した後、有機物ガス及び/又は蒸気を含む雰囲気下で、例えば、約900℃以上又は約1000℃以上の温度で行うことができる。
【0056】
Si含有の材料と導電性カーボンの複合化物は、例えば、SiOとポリビニルアルコールなどのポリマーと任意に炭素材料との粉砕混合物を有機物ガス及び/又は蒸気を含む雰囲気下で熱処理して行われる化合物を含む。また、複合化物は、SiOの粒子の表面を有機物ガスなどを用いた化学的蒸着法によりコーティングする方法、SiOの粒子と黒鉛又は人造黒鉛をメカノケミカル法により複合粒子化(組み立て化)する方法などの公知の方法でも得られる。
【0057】
高容量化の観点では、ケイ素負極活物質としては、上述したケイ素含有合金及びSiOxが用いられ得る。
【0058】
また、前記組成物では活物質として、前記ケイ素物質とその他公知のカーボン負極活物質及び/又は金属負極活物質などが併用され得る。カーボン負極活物質は、一つの例示で、非晶質カーボン、黒鉛、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ又はピッチ系炭素纎維などが例示され得るが、これに制限されるものではない。金属負極活物質は、一つの例示で、リチウム金属又はリチウムを含んだ合金などが挙げられる。上記でリチウムを含んだ合金としては、例えば、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn及びTiで構成された群から選択される少なくとも1種の元素とリチウムを含んだ合金組成物が例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0059】
前記負極活物質は、例えば、通常的に前記負極スラリー組成物の全体固形分100重量部に対して、約70重量部~約99重量部の割合で含まれ得る。他の例で、負極スラリー組成物の全体固形分100重量部に対して、約75重量部以上、80重量部以上又は約85重量部以上であってもよく、約98重量部以下、97重量部以下又は約96重量部以下であってもよい。
【0060】
本出願で負極スラリー組成物の固形分は、実質的に有機溶媒又は水性溶媒などの後述する溶媒を含まない状態であり、例えば、前記溶媒の割合が5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下又は0.5重量%以下又は0重量%である場合である。
【0061】
一つの例として、負極活物質は、ケイ素活物質とカーボン活物質を混合した活物質混合物を用いることができ、ケイ素活物質は、負極活物質の全体100重量%に対して約99重量%以下の範囲内の割合で含まれ得る。他の例で、ケイ素活物質は、負極活物質の全体100重量%に対して、約90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下又は10重量%以下であってもよく、約0.1重量%以上、0.5重量%以上、1.0重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上又は約5重量%以上であってもよい。前記範囲内の活物質混合物を用いることで負極活物質の膨脹及び収縮がより効率的に抑制され得、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を一層向上させ得る。
【0062】
一つの例示で、前記負極スラリー組成物は、界面活性剤又は増粘剤をアクリル系重合体の総100重量部に対して、約0.01重量部以下の範囲内の割合で含むことができる。他の例で、約0.001重量部以下の範囲内の割合で含むことができ、好ましくは、界面活性剤又は増粘剤を含まない。本出願のアクリル系重合体を含むスラリー組成物を用いる場合、界面活性剤又は増粘剤を使わなくても優れた活物質間の結着力及び集電体に対する接着力を確保することができる。
【0063】
一つの例示で、前記負極スラリー組成物は、導電材を追加的に含んでいてもよい。前記導電材は、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素纎維や金属纎維などの導電性纎維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;又はポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられ得るが、これに制限されるものではない。
【0064】
導電材の割合は、目的とする電池の性能などを考慮して選択され得、特別に制限されず、例えば、前記負極スラリー組成物の全体固形分100重量部に対して、約0.01重量部~約20重量部の範囲内の割合で含まれ得る。他の例で、負極スラリー組成物の全体固形分100重量部に対して、約0.02重量部以上、0.05重量部以上、0.1重量部以上又は約0.5重量部以上であってもよく、約15重量部以下、10重量部以下、8重量部以下又は約5重量部以下であってもよい。
【0065】
一つの例示で、前記負極スラリー組成物は、粒子型バインダーを追加で含んでいてもよい。粒子型バインダーは、一例で、スチレン-ブタジエン-ゴム(Styrene butadiene rubber、SBR)、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidenefluoride、PVDF)、スチレン-アクリル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(Acrylonitrile-butadiene-styrene、ABS)などのように公知されている粒子型バインダーなどが用いられ得るが、これに制限されるものではない。
【0066】
前記粒子型バインダーの割合は、目的とする電池の性能などを考慮して選択され得、前記アクリル系重合体100重量部に対して、100重量部~900重量部の範囲で含まれ得る。他の例で、アクリル系重合体100重量部に対して、約150重量部以上、200重量部以上、250重量部以上又は約300重量部以上であるか、約850重量部以下、800重量部以下、750重量部以下又は約700重量部以下を含むことができる。
【0067】
上記範囲の粒子型バインダーが含まれることで負極活物質間の結着力を一層向上させ得る。
【0068】
一つの例示で、前記負極スラリー組成物は、溶媒を追加で含んでいてもよい。溶媒の種類は、目的とする性能などを考慮して適切に設定でき、水のような水性溶媒、有機溶媒又は2種以上の混合溶媒などの溶媒であってもよい。一具体例として、溶媒は、N-メチル-2-ピロリノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、プロピオン酸メチル又はプロピオン酸エチルなどの有機溶媒あるいは水を用いることができるが、乾燥温度や環境的影響を考慮して水が最も好ましい。前記溶媒の含量は、目的とする電池の性能などを考慮して選択され得、一例で、負極スラリー組成物内の全体固形分含量が負極スラリー組成物100重量部に対して、約30重量部~約60重量部になるように負極スラリー組成物に含まれ得る。他の例で、前記溶媒の含量は、負極スラリー組成物内の全体固形分含量が負極スラリー組成物に対して、約35重量部以上又は40重量部以上であるか、約55重量部以下又は約50重量部以下になるように負極スラリー組成物に含まれ得る。
【0069】
前記負極スラリー組成物は、上述した負極活物質、アクリル系重合体、導電材、粒子型バインダーなど以外にもその他成分、例えば、補強材又は電解液添加剤などが含まれ得る。
【0070】
前記負極スラリー組成物は、特な制限なしに公知の方式で前記各成分を混合して製造することができる。
【0071】
例えば、前記負極スラリー組成物は、前記各成分に必要に応じて適正な分散媒を追加して混合することで調剤でき、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー又はフィルミックスなどの混合機を用いて前記各成分を混合して製造することができる。
【0072】
本出願の前記負極スラリー組成物は、最大粒子のサイズが約80μm未満であってもよい。他の例で、前記負極スラリー組成物は、最大粒子のサイズが約79μm未満又は約78μm未満であってもよく、約55μm以上、57μm以上、59μm以上又は約61μm以上であってもよい。負極スラリー組成物の最大粒子のサイズが前記範囲を満足する場合、後述する集電体との結合力を向上させるのに有利である。
【0073】
また、本出願は、二次電池用負極、例えば、二次電池用ケイ素負極に関する。前記負極は、例えば、リチウム二次電池の負極で用いられ得る。
【0074】
一つの例として、前記負極は、集電体及び前記集電体上に形成された負極活性層を具備する。前記負極活性層は、負極スラリー組成物により形成される。
図1は、集電体100上に前記負極活性層200が形成された場合を示す。
【0075】
前記負極は、例えば、上述した負極スラリー組成物を集電体上に塗布及び乾燥し、必要な場合に圧延する公知の方式によって製造され得る。
【0076】
上記で負極スラリー組成物を集電体上に塗布する方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロ-ル法、ダイレクトロ-ル法、グラビア法、押し出し(extrusion)法又はブラッシュ塗り法などが用いられ得る。このような塗布は、集電体の一面にのみ行われるか、または両面に行われ得、塗布量は、特に制限されるものではなく、例えば、最終的に目的とする負極活性層の厚さを形成することができる範囲で調節され得る。
【0077】
上記で集電体としては、電気伝導性を有し、また、電気化学的に耐久性のある材料が用いられる。一般的に、集電体としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、銅箔又は白金などが用いられ、このような材料は、1種を単独で用いるか、2種以上を複合して用いてもよい。
【0078】
一つの例として、前記負極活性層は、集電体との接着力が約11gf/cm以上であってもよい。前記負極活性層の接着力は、他の例で、約12gf/cm以上であってもよく、約30gf/cm以下、28gf/cm以下、26gf/cm以下、24gf/cm以下、22gf/cm以下又は約20gf/cm以下であってもよい。負極スラリー組成物により形成された負極活性層の接着力が前記範囲に該当する場合、負極製造の工程性が向上され得る。
【0079】
一つの例として、前記負極活性層の厚さは、目的とする性能を考慮して適切に選択され得、特に制限されるものではない。例えば、活性層の厚さは、約1μm~200μmの範囲内の厚さを有することができる。他の例で、負極活性層の厚さは、約5μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上又は約80μm以上であってもよく、約190μm以下、180μm以下、170μm以下、160μm以下、150μm以下、140μm以下、130μm以下、120μm以下又は110μm以下であってもよい。負極活性層の厚さが前記範囲を満足する場合、負荷特性及びエネルギー密度が全て高い特性を具現することができる。
【0080】
また、本出願は、前記負極を含む二次電池、例えば、リチウムイオン二次電池に関する。このような二次電池の構成は特に制限されず、前記負極を含む限り、公知の構成を有することができる。例えば、前記リチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解質及びセパレーターを含むことができる。
【0081】
前記二次電池に含まれる各構成、例えば、正極、電解質、セパレーターなどの具体的な種類やそれを用いて二次電池を形成する方式は特に制限されず、公知の方式が適用され得る。
【発明の効果】
【0082】
本出願では、負極の製造に適用されて繰り返される充放電による収縮及び膨脹によく対応でき、活物質間の結着力及び集電体に対する接着力に優れた負極スラリー組成物、それを含む負極及び二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下、実施例を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲は下記実施例によって制限されるものではない。
【0085】
1.分子量の評価
重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(PDI)は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)を用いて以下の条件で測定し、検量線の製作には、Agilent systemの標準ポリエチレングリコールを用いて測定結果を換算した。
【0086】
<測定条件>
測定器:Agilent GPC(Agilent 1200 series、U.S.)
コラム:PLGel-M、PLGel-L直列連結
コラム温度:35℃
溶離液:THF(Tetrahydrofuran)
流速:1.0mL/min
濃度:~1mg/mL(100μL injection)
【0087】
2.高分子転換率の測定方法
<分析機器>
ガスクロマトグラフィー(Gas chromatography、PerkinElmer)
【0088】
<分析条件>
溶媒:水
初期温度:50℃で3分、ランプ(Ramp):200℃で30℃/分
注入体積((Injection volume):0.5μL
【0089】
<分析手続き>
反応物を20mg/mLの濃度で溶媒に希釈し、5mg/mLのアセトンをスタンダード物質で添加した後、ガスクロマトグラフィーを測定する。転換率は、下記数式2によって測定した。
【0090】
[数2]
転換率(%)=(Aini-Afin)/Aini × 100
【0091】
前記数式2で、Ainiは、反応開始時のモノマーピークのアセトンピークに対した面積の相対比であり、Afinは、反応終了時のモノマーピークのアセトンピークに対した面積の相対比である。
【0092】
3.溶解度の測定方式
溶解度は、溶解度測定対象(アクリル系重合体)を1g採取し、これを5gの溶媒(電解液又は水)に入れ、常温(25℃)で30分間撹拌した後に溶解されない残留溶質を除去して評価した。除去された残留溶質の量を測定して溶媒にとけている溶質の量を測定し、その測定された量を100gの溶媒に対する数値に換算して溶解度を評価した。上記で残留溶質の除去は、サイズ(pore size)が0.45μm程度である篩で溶液をかけて行った。
【0093】
溶解度は、溶媒にとけている溶質の量を重量を基準として百分率で計算した(溶解度=100×B/(B+A))、上記でBは、溶質の重量(単位:g)であり、Aは、溶媒の重量(単位:g)である。これを通じてアクリル系重合体の電解液又は水に対する溶解度を求めた。
【0094】
4.接着力の測定
製造された負極を横の長さが約1.5cmであり、縦の長さが約12cmになるように打ち抜いて試片を製造した。その後、ガラスのスライドガラス上に両面テープを付け、3M社の接着テープの裏面を前記両面テープ上に付着し、前記接着テープ上に前記打ち抜かれた負極のスラリー面を付けて測定サンプルを得る。その後、ガラス上に付いている負極の一側末端を約0.5cmほど取り外し、Texture Analyzerの下側クランプに固定し、負極の垂れた他の一部分を上側のクランプで固定した後に約2gfの力で引っぱって負極スラリーが離れる時点の力を測定する。
【0095】
5.最大粒子サイズの測定
最大粒子サイズは、1μm~100μmまでサイズが異なる微細穴が形成されている板を用いて測定した。製造したスラリー1gを取り、穴が大きい部分の末端側に置く。100μm部分から小さい穴が形成された方へ板棒を用いてスラリーを掻き出してその以上はスラリーが掻かれない所での穴サイズを読んで最大粒子サイズにした。
【0096】
<製造例1.重合体(A1)の製造>
100mLの丸底フラスコに、1.8gのアクリル酸(AA)、0.48gの2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、0.12gのアクリルオキシエチルホスフェート(AEP)及び65gの蒸溜水を入れ、入口をシーリングした。30分間窒素でバブリング(bubbling)して酸素を除去し、反応フラスコを65℃に加熱されたオイルバス(oil bath)に入れた後に、2mgの過硫酸ナトリウム(sodium persulfate)及び0.23mgのCTA(2-mercaptoethanol)を投与して反応を開始した。前記反応を約24時間程度進行した後に終了してランダム重合体を製造した。前記反応で適用された単量体であるAA、HEA及びAEPの合計に対して算定した転換率は、約99%程度であった。
【0097】
前記重合体内でAA単位、HEA単位及びAEP単位の割合は、約75:20:5(AA:HEA:AEP)程度であり、重量平均分子量は、約125万程度であった。(下記表1参照)
【0098】
<製造例2.重合体(A2)の製造>
ヒドロキシ基単量体単位として、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の代わりに4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)を適用したこと以外は、製造例1と同一にランダム重合体を製造した。前記反応で適用された単量体の合計に対して算定した転換率は、約99%程度であった。
【0099】
前記重合体内でAA単位、HBA単位及びAEP単位の割合は、約75:20:5(AA:HBA:AEP)程度であり、重量平均分子量(Mw)は、約121万程度であった。(下記表1参照)
【0100】
<製造例3.重合体(A3)の製造>
非共有電子対を有する単量体単位として、アクリルオキシエチルホスフェート(AEP)の代わりにメタクリルオキシエチルホスフェート(MAEP)を適用したこと以外は、製造例1と同一にランダム重合体を製造した。前記反応で適用された単量体の合計に対して算定した転換率は、約99%程度であった。
【0101】
前記重合体内でAA単位、HEA単位及びMAEP単位の割合は、約75:20:5(AA:HEA:MAEP)程度であり、重量平均分子量(Mw)は、約67万程度であった。(下記表1参照)
【0102】
<製造例4.重合体(B1)の製造>
重合体内でAA単位、HEA単位及びAEP単位の割合が、約40:55:5(AA:HEA:AEP)程度になるように単量体の投入量を調節(AA:1.32g、HEA:0.96g、AEP:0.12g)したこと以外は、製造例1と同一にランダム共重合体を製造した。
【0103】
前記反応で適用された単量体の合計に対して算定した転換率は、約99%程度であり、重量平均分子量(Mw)は、約72.5万程度であった。(下記表1参照)
【0104】
<製造例5.重合体(B2)の製造>
100mLの丸底フラスコに、1.92gのアクリル酸(AA)、0.48gの2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)及び65gの蒸溜水を入れ、入口をシーリングした。30分間窒素でバブリング(bubbling)して酸素を除去し、反応フラスコを65℃に加熱されたオイルバス(oil bath)に入れた後に、2mgの過硫酸ナトリウム(sodium persulfate)及び0.23mgのCTA(2-mercaptoethanol)を投与して反応を開始した。前記反応を約24時間程度進行した後に終了してランダム重合体を製造した。前記反応で適用された単量体であるAA及びHEAの合計に対して算定した転換率は、約99%程度であった。
【0105】
前記重合体内でAA単位及びHEA単位の割合は、約80:20(AA:HEA)程度であり、重量平均分子量は、約125万程度であった。(下記表1参照)
【0106】
<製造例6.重合体(B3)の製造>
ヒドロキシ基単量体単位として、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の代わりに4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)を適用したこと以外は、製造例5と同一にランダム重合体を製造した。前記反応で適用された単量体の合計に対して算定した転換率は、約99%程度であった。
【0107】
前記重合体内でAA単位及びHBA単位の割合は、約80:20(AA:HBA)程度であり、重量平均分子量(Mw)は、約29万程度であった。(下記表1参照)
【0108】
<製造例7.重合体(B4)の製造>
100mLの丸底フラスコに、2.28gのアクリル酸(AA)、0.12gのアクリルオキシエチルホスフェート(AEP)及び65gの蒸溜水を入れ、入口をシーリングした。30分間窒素でバブリング(bubbling)して酸素を除去し、反応フラスコを65℃に加熱されたオイルバス(oil bath)に入れた後に、2mgの過硫酸ナトリウム(sodium persulfate)及び0.23mgのCTA(2-mercaptoethanol)を投与して反応を開始した。前記反応を約24時間程度進行した後に終了してランダム重合体を製造した。前記反応で適用された単量体であるAA及びAEPの合計に対して算定した転換率は、約99%程度であった。
【0109】
前記重合体内でAA単位及びAEP単位の割合は、約95:5(AA:AEP)程度であり、重量平均分子量は、約125万程度であった。(下記表1参照)
【0110】
【0111】
<実施例1>
重合体混合物、活物質混合物及び導電材(Super C)を4:95:1の重量割合(重合体混合物:活物質混合物:導電材)で混合した後、負極スラリー組成物内の全体固形分含量が負極スラリー組成物100重量部に対して約46重量部になるように、溶媒として水を追加して負極スラリー組成物を製造した。
【0112】
上記で重合体混合物は、製造例1で製造した重合体(A1)(線型バインダー)と粒子型バインダー(SBR)が約3:7の重量割合(A1:SBR)で混合された重合体混合物を用い、上記で活物質混合物としては、公知のケイ素系列の混合物であって、カーボン活物質とケイ素活物質が約90:10の重量割合(カーボン活物質:ケイ素活物質)で混合された活物質混合物を用いた。
【0113】
その後、約20μm厚さの銅ホイル(foil)集電体上に、前記スラリーを乾燥した後の厚さが約100μm程度になるようにコーティングし、約100℃で約10時間の間真空乾燥して、ローディング量が約5.0mAh/cm2程度ある負極を製造した。
【0114】
<実施例2>
製造例1で製造した重合体(A1)(線型バインダー)の代わりに製造例2で製造した重合体(A2)(線型バインダー)を用いたこと以外は、実施例1と同一に負極を製造した。
【0115】
<実施例3>
製造例1で製造した重合体(A1)(線型バインダー)の代わりに製造例3で製造した重合体(A3)(線型バインダー)を用いたこと以外は、実施例1と同一に負極を製造した。
【0116】
<比較例1>
製造例1で製造した重合体(A1)(線型バインダー)の代わりに製造例4で製造した重合体(B1)(線型バインダー)を用いたこと以外は、実施例1と同一に負極を製造した。
【0117】
<比較例2>
製造例1で製造した重合体(A1)(線型バインダー)の代わりに製造例5で製造した重合体(B2)(線型バインダー)を用いたこと以外は、実施例1と同一に負極を製造した。
【0118】
<比較例3>
製造例1で製造した重合体(A1)(線型バインダー)の代わりに製造例6で製造した重合体(B3)(線型バインダー)を用いたこと以外は、実施例1と同一に負極を製造した。
【0119】
<比較例4>
重合体混合物、活物質混合物及び導電材(Super C)を4:95:1の重量割合(重合体混合物:活物質混合物:導電材)で混合した後、負極スラリー組成物内の全体固形分含量が負極スラリー組成物100重量部に対して約46重量部になるように、溶媒として水を追加して負極スラリー組成物を製造した。
【0120】
上記で重合体混合物は、シクロメチルセルロース(CMC、cyclomethylcellulose)(線型バインダー)と粒子型バインダー(SBR)が約3:7の重量割合(CMC:SBR)で混合された重合体混合物を用い、上記で活物質混合物としては、公知のケイ素系列の混合物であって、カーボン活物質とケイ素活物質が約90:10の重量割合(カーボン活物質:ケイ素活物質)で混合された活物質混合物を用いた。
【0121】
その後、約20μm厚さの銅ホイル(foil)集電体上に、前記スラリーを乾燥した後の厚さが約100μm程度になるようにコーティングし、約100℃で約10時間の間真空乾燥して、ローディング量が約5.0mAh/cm2程度ある負極を製造した。
【0122】
<比較例5>
製造例1で製造した重合体(A1)(線型バインダー)の代わりに製造例7で製造した重合体(B4)(線型バインダー)を用いたこと以外は、実施例1と同一に負極を製造した。
【0123】
<比較例6>
重合体混合物、活物質混合物及び導電材(Super C)を4:95:1の重量割合(重合体混合物:活物質混合物:導電材)で混合した後、負極スラリー組成物内の全体固形分含量が負極スラリー組成物100重量部に対して約46重量部になるように、溶媒として水を追加して負極スラリー組成物を製造した。
【0124】
上記で重合体混合物は、製造例1で製造した重合体(A1)(線型バインダー)と粒子型バインダー(SBR)が約5.5:4.5の重量割合(A1:SBR)で混合された重合体混合物を用い、上記で活物質混合物としては、公知のケイ素系列の混合物であって、カーボン活物質とケイ素活物質が約90:10の重量割合(カーボン活物質:ケイ素活物質)で混合された活物質混合物を用いた。
【0125】
その後、約20μm厚さの銅ホイル(foil)集電体上に、前記スラリーを乾燥した後の厚さが約100μm程度になるようにコーティングし、約100℃で約10時間の間真空乾燥して、ローディング量が約5.0mAh/cm2程度ある負極を製造した。
【0126】
【0127】
前記表1に示したように、実施例の重合体(線型バインダー)を粒子型バインダーとともに負極スラリー組成物で用いた場合、スラリー内の活物質の分散性が改善され、集電体に対する接着力が高いことで現われた。
【0128】
これは、重合体の特徴に起因したと予想される。例えば、重合体に含まれた非共有電子対が負極活性層内の成分及び集電体と物理化学的に結合してこれらの間の結着力を高めたからであると判断される。また、実施例の重合体と粒子型バインダーとの高い相溶性により粒子型バインダーが負極の乾燥時に表面で浮び上がって接着力が減少する現象を防止したと判断される。
【0129】
これを通じて、本出願の負極スラリー組成物を適用すると、ケイ素系負極材で接着力を維持すると共に活物質の分散性を高める効果があり、これによって、優れたサイクル特性などを確保することができる点が確認できる。