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特許7090957SSEA4に結合するモノクローナル抗体及びその使用
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  • 特許-SSEA4に結合するモノクローナル抗体及びその使用 図1A
  • 特許-SSEA4に結合するモノクローナル抗体及びその使用 図1B
  • 特許-SSEA4に結合するモノクローナル抗体及びその使用 図2A
  • 特許-SSEA4に結合するモノクローナル抗体及びその使用 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】SSEA4に結合するモノクローナル抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220620BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20220620BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220620BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220620BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220620BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/30
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61K39/395 H
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021502708
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 US2019023817
(87)【国際公開番号】W WO2019190952
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】15/940,334
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520372537
【氏名又は名称】チョウ ファーマ ユーエスエー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン ラン ボ
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/039274(WO,A1)
【文献】特表2017-507118(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0030124(US,A1)
【文献】Sivasubramaniyan,Kavitha, et al.,Expression of stage-specific embryonic antigen-4 (SSEA-4) defines spontaneous loss of epithelial phenotype in human solid tumor cells,Glycobiology,2015年,Vol. 25, No. 8,pp. 902-917,https://doi.org/10.1093/glycob/cwv032
【文献】Eller, Chelcie H., et al.,Affinity of monoclonal antibodies for Globo-series glycans,Carbohydrate research,2014年,Vol. 397,pp. 1-13,https://doi.org/10.1016/j.carres.2014.07.003
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 16/00-16/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号33の配列を有する重鎖CDR1(H-CDR1)、配列番号34の配列を有する重鎖CDR2(H-CDR2)、配列番号35の配列を有する重鎖CDR3(H-CDR3)、配列番号42の配列を有する軽鎖CDR1(L-CDR1)、配列番号43の配列を有する軽鎖CDR2(L-CDR2)、及び配列番号44の配列を有する軽鎖CDR3(L-CDR3)を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントであ
該モノクローナル抗体又は抗原結合フラグメントがステージ特異的胚抗原4に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
配列番号2の配列を有する重鎖配列と、配列番号4の配列を有する軽鎖配列;配列番号6の配列を有する重鎖配列と、配列番号8の配列を有する軽鎖配列;又は配列番号14の配列を有する重鎖配列と、配列番号28、配列番号30、若しくは配列番号32の配列を有する軽鎖配列を含む、単離されたモノクローナル抗体であ、該モノクローナル抗体がステージ特異的胚抗原4に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体。
【請求項3】
前記重鎖配列が配列番号14であり、前記軽鎖配列が配列番号28である、請求項に記載の単離されたモノクローナル抗体。
【請求項4】
前記重鎖配列が配列番号14であり、前記軽鎖配列が配列番号30である、請求項に記載の単離されたモノクローナル抗体。
【請求項5】
前記重鎖配列が配列番号14であり、前記軽鎖配列が配列番号32である、請求項に記載の単離されたモノクローナル抗体。
【請求項6】
前記重鎖配列が配列番号2であり、前記軽鎖配列が配列番号4である、請求項に記載の単離されたモノクローナル抗体。
【請求項7】
前記重鎖配列が配列番号6であり、前記軽鎖配列が配列番号8である、請求項に記載の単離されたモノクローナル抗体。
【請求項8】
請求項1に記載のモノクローナル抗体、又はその抗原結合フラグメントをコードする、核酸コンストラクト。
【請求項9】
請求項に記載のモノクローナル抗体をコードする核酸コンストラクト。
【請求項10】
重鎖配列が配列番号14であり、軽鎖配列が配列番号28である、請求項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項11】
請求項に記載の核酸コンストラクトを含む組み換え細胞であ、該細胞がステージ特異的胚抗原4に特異的に結合するモノクローナル抗体を発現する、組み換え細胞。
【請求項12】
請求項に記載の核酸コンストラクトを含む組み換え細胞であ、該細胞がステージ特異的胚抗原4に特異的に結合するモノクローナル抗体を発現する、組み換え細胞。
【請求項13】
重鎖配列が配列番号14であり、軽鎖配列が配列番号28である、請求項1に記載の組み換え細胞
【請求項14】
腫瘍を治療するための組成物であって、請求項1に記載のモノクローナル抗体を含む組成物。
【請求項15】
腫瘍を治療するための組成物であって、請求項に記載のモノクローナル抗体を含む組成物。
【請求項16】
重鎖配列が配列番号14であり、軽鎖配列が配列番号28である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
癌免疫療法の目的は、腫瘍に対する患者自身の免疫応答の強度を高めることである。免疫療法は、癌細胞に対する免疫系の特定の構成要素の活性を賦活することができるか、又は癌細胞によって生じる、免疫応答を抑制するシグナルを打ち消すことができる。
【0002】
例えば、抗体は、癌細胞表面の腫瘍関連抗原(TAA:Tumor-Associated Antigen)、例えばタンパク質抗原及び糖鎖抗原に特異的に結合する癌ワクチンとして開発されており、抗体依存性細胞傷害活性、抗体依存性食作用、及び補体依存性細胞溶解と並んで、直接細胞増殖抑制効果及び/又は細胞傷害性効果をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
幾つかの糖鎖TAA、例えば、Globo H、ステージ特異的胚抗原3、及びステージ特異的胚抗原4に対するモノクローナル抗体系抗癌ワクチンが開発されている。しかしながら、癌細胞のより効果的な死滅を促進し、癌再発に対する長期的な耐性を提供するために、糖鎖TAAに対する親和性がより高い抗癌ワクチンとして改良されたモノクローナル抗体の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上に述べた必要性を満たすため、ステージ特異的胚抗原4(SSEA4:Stage-Specific Embryonic Antigen 4)に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントが提供される。モノクローナル抗体又は抗原結合フラグメントは、配列番号33又は配列番号40の配列を有する重鎖CDR1、配列番号34又は配列番号39の配列を有する重鎖CDR2、配列番号35又は配列番号41の配列を有する重鎖CDR3、配列番号36又は配列番号42の配列を有する軽鎖CDR1、配列番号37又は配列番号43の配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号38又は配列番号44の配列を有する軽鎖CDR3を含む。
【0005】
本発明の範囲に含まれる単離されたモノクローナル抗体は、配列番号2、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号22、配列番号24、及び配列番号26から選択される重鎖配列と、配列番号4、配列番号8、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号28、配列番号30、及び配列番号32から選択される軽鎖配列とを含む。
【0006】
また、腫瘍内の細胞がSSEA4を発現する腫瘍を治療する方法も提供される。該方法は、有効量の上記モノクローナル抗体又は抗原結合フラグメントを投与することによって達成される。
【0007】
さらに、上記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸コンストラクトと並んで、該核酸コンストラクトを含む組み換え細胞が開示される。組み換え細胞は、SSEA4に特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを発現する。
【0008】
本発明の幾つかの実施形態の詳細を、以下の記載及び図面の両方において述べる。本発明のその他の特徴、目的及び利点は、本明細書、また添付の特許請求の範囲から明らかとなろう。最後に、本明細書に引用される全ての参照文献は、引用することでそれらの全体が本明細書の一部をなす。
【0009】
以下の説明は、添付の図面について言及する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】生殖細胞系列ヒトIGHV4-59x01重鎖可変領域(huIGHV4-59x01:配列番号60)と、抗SSEA4マウスモノクローナル抗体1(muMAb1 H;配列番号2の残基20~138)及びヒトモノクローナル抗体1配列(huMAb1 H、配列番号10の残基20~138;huMAb1 H1、配列番号12の残基20~138;huMAb1 H2、配列番号14の残基20~138)の対応するアミノ酸配列とのアミノ酸アライメントを示す図であり、CDR領域は、この図及び他の全ての図において四角枠で囲まれている。
図1B】生殖細胞系列ヒトIGKV3-11x01軽鎖可変領域(huIGKV3-11x01;配列番号61)と、抗SSEA4マウスモノクローナル抗体1(muMAb1 L;配列番号4の残基23~128)及びヒトモノクローナル抗体1配列(huMAb1 L、配列番号16の残基23~128;huMAb1 L1、配列番号18の残基23~128;huMAb1 L2、配列番号20の残基23~128)の対応するアミノ酸配列とのアミノ酸アライメントを示す図である。
図2A】生殖細胞系列ヒトIGHV4-59x01重鎖可変領域(huIGHV4-59x01:配列番号60)と、抗SSEA4マウスモノクローナル抗体2(muMAb2 H;配列番号6の残基20~139)及びヒトモノクローナル抗体2配列(huMAb2 H、配列番号22の残基20~139;huMAb2 H1、配列番号24の残基20~139;huMAb2 H2、配列番号26の残基20~139)の対応するアミノ酸配列とのアミノ酸アライメントを示す図である。
図2B】生殖細胞系列ヒトIGKV3-11x01軽鎖可変領域と、抗SSEA4マウスモノクローナル抗体2(muMAb2 L;配列番号8の残基23~128)及びヒトモノクローナル抗体2配列(huMAb2 L、配列番号28の残基23~128;huMAb2 L1、配列番号30の残基23~128;huMAb2 L2、配列番号32の残基23~128)の対応するアミノ酸配列とのアミノ酸アライメントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記のように、ステージ特異的胚抗原4(SSEA4)に特異的に結合する、指定のCDR領域を有するモノクローナル抗体又は抗原結合フラグメント、例えば、単鎖Fvが提供される。例示的なモノクローナル抗体又は抗原結合フラグメントにおいて、重鎖CDR1(H-CDR1)は配列番号33の配列を有し、重鎖CDR2(H-CDR2)は配列番号34の配列を有し、重鎖CDR3(H-CDR3)は配列番号35の配列を有し、軽鎖CDR1(L-CDR1)は配列番号42の配列を有し、軽鎖CDR2(L-CDR2)は配列番号43の配列を有し、軽鎖CDR3(L-CDR3)は配列番号44の配列を有する。
【0012】
前段落で特定されるCDR領域を有するモノクローナル抗体の例は、(i)配列番号14の重鎖配列と配列番号28の軽鎖配列、(ii)配列番号14の重鎖配列と配列番号30の軽鎖配列、(iii)配列番号14の重鎖配列と配列番号32の軽鎖配列、(iv)配列番号2の重鎖配列と配列番号4の軽鎖配列、及び(v)配列番号6の重鎖配列と配列番号8の軽鎖配列という重鎖配列と軽鎖配列との組み合わせを有する。
【0013】
モノクローナル抗体又は結合フラグメントをコードする核酸コンストラクトは、上記に挙げたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3、L-CDR1、L-CDR2、及びL-CDR3の領域をコードする配列を含む。一例では、核酸コンストラクトは、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号42、配列番号43、及び配列番号44のアミノ酸をコードする。
【0014】
別の態様では、核酸コンストラクトは、上記で説明した重鎖及び軽鎖の配列の組み合わせを有するモノクローナル抗体をコードする。かかる核酸コンストラクトの具体例は、それぞれ、(i)配列番号13と配列番号27、(ii)配列番号13と配列番号29、(iii)配列番号13と配列番号31、(iv)配列番号1と配列番号3、及び(v)配列番号5と配列番号7の配列の組み合わせのうちの1つを含む。
【0015】
さらに、上記核酸コンストラクトのいずれかを含み、SSEA4に特異的に結合するモノクローナル抗体又は結合フラグメントを発現する組み換え細胞が提供される。特定の組み換え細胞は、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号42、配列番号43、及び配列番号44のCDR配列を有するモノクローナル抗体又は結合フラグメントを発現する。かかる組み換え細胞の例は、配列番号14の重鎖配列及び配列番号28の軽鎖配列を有するモノクローナル抗体を発現する。
【0016】
腫瘍を治療するための上に言及される方法は、本出願で開示されるモノクローナル抗体のいずれかを投与することによって行われ得る。一例では、モノクローナル抗体は、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号42、配列番号43、及び配列番号44を含む。モノクローナル抗体は、配列番号14の重鎖配列及び配列番号28の軽鎖配列を有することができる。
【0017】
腫瘍治療法は、乳房、結腸、胃腸、腎臓、肺、肝臓、卵巣、膵臓、直腸、胃、精巣、胸腺、子宮頸部、前立腺、膀胱、皮膚、鼻咽頭、食道、口腔、頭頸部、骨、軟骨、筋肉、リンパ節、骨髄、及び脳の癌の治療に有効であり得る。
【0018】
更に詳述することなしに、当業者であれば、本明細書の開示に基づき、本開示を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の具体的な実施例は、単に説明的なものであって、決して本開示の残りの部分を限定するものではないと解釈されるべきである。本明細書で引用される全ての出版物及び特許文献は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。
【実施例
【0019】
実施例1:ハイブリドーマ生産
SSEA4に対するマウスモノクローナル抗体を、標準的な手順を用いて産生した。簡潔には、アジュバントと一緒に、ウシ血清アルブミンに融合したSSEA4(BSA-SSEA4)を2週間に1回、10週間までマウスに注射した。血液サンプル中の抗SSEA4抗体力価を、標準的な条件下でBSA-SSEA4を結合したELISAプレートを用いて酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によりアッセイした。
【0020】
また、BSA-SSEA4 ELISAにより最も高い力価を有するマウスに由来する血液サンプルを、SSEA4を発現するヒト膵臓癌(HPAC)細胞を用いるELISAによって試験した。
【0021】
抗体力価が最も高い2匹のマウスから脾細胞を単離し、標準的な手法を用いて骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマを形成した。高力価の抗SSEA4抗体を産生するハイブリドーマを、標準的なサブクローニング手順、並びにBSA-SSEA4及びHPAC細胞によるELISAアッセイを用いて同定した。HPAC及びSSEA4を発現しないヒト黒色腫細胞株A375の両方に結合した抗体を産生するハイブリドーマについては、それ以上追求しなかった。
【0022】
HPAC細胞及びA375細胞をハイブリドーマ上清とインキュベートし、続いて蛍光標識二次抗体とインキュベートすることによる蛍光活性化細胞選別アッセイを用いて、細胞表面SSEA4に結合する抗体を検証した。マウスモノクローナル抗体1(muMAb1)及びマウスモノクローナル抗体2(muMAb2)と指定される2つのモノクローナル抗体を、更なる分析のため選択した。これらのモノクローナル抗体はいずれもBSA-SSEA4及びHPAC細胞に結合し、A375細胞には結合しない。
【0023】
アイソタイプ分析は、muMAb1がIgG1カッパ抗体であり、muMAb2がIgG3カッパ抗体であることを示した。
【0024】
ハイブリドーマ上清中のモノクローナル抗体濃度及びSSEA4に対する結合親和性を、以下の2つの項目に記載されるとおりに決定した。muMAb1に対するK値は0.22nMであり、muMAb2に対するK値は0.08nMであった。
【0025】
実施例2:ELISAによる抗体濃度の決定
培地サンプル中のmuMAb抗体の濃度を、ELISAプレート上にコーティングされた以下の一次抗体を用いてELISAによって決定した。マウスMAbの場合には、1μg/ml、100μl/ウェルのAffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch 番号115-005-062)で一晩、ELISAプレートをコーティングした。ハイブリドーマ上清又は一過性トランスフェクション(下記を参照されたい)による培地サンプルの連続希釈物とのインキュベーション後、ウェルを十分に洗浄し、1:8000希釈のペルオキシダーゼAffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch 番号115-035-062)を加えることにより結合した抗体を検出した。十分洗浄した後、ABTSペルオキシダーゼ基質(1成分)(KPL 番号50-66-06)を加え、405nmで各ウェルの吸光度を測定した。
【0026】
ヒト化mAb(下記を参照されたい)の場合には、1μg/ml、100μl/ウェルのAffiniPure F(ab’)フラグメントヤギ抗ヒトIgG、Fcγフラグメント特異的(Jackson ImmunoResearch 番号109-006-098)で一晩、ELISAプレートをコーティングした。結合したヒト化抗体の検出は、上記のマウス抗体の場合と同様に、1:10000希釈のペルオキシダーゼAffiniPureヤギ抗ヒトIgG、Fcγフラグメント特異的(Jackson ImmunoResearch 番号109-035-008)を用いて行った。
【0027】
実施例3:ELISAによる抗体親和性の決定
以下の試薬セットを用いて抗原結合親和性の決定のため、標準的なELISA手順を実施した。1:1000希釈のBSA-SSEA4でELISAプレートをコーティングした。連続希釈したハイブリドーマ上清のサンプル又は一過性トランスフェクションサンプルを各ウェルに添加し、続いて十分に洗浄した。muMAb1に対して1:2500希釈のAffiniPureヤギ抗マウスIgG、Fcγサブクラス1特異的(Jackson ImmunoResearch 番号115-005-205)、muMAb2に対して1:2500希釈のAffiniPureヤギ抗マウスIgG、Fcγサブクラス3特異的(Jackson ImmunoResearch 番号115-005-209)、全てのヒト化抗体に対して1:2500希釈のAffiniPureヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch 番号109-005-088)の二次抗体を用いて、プレート上の抗原に結合したmuMAb及びhuMAbを検出した。
【0028】
1:6000希釈のペルオキシダーゼAffiniPureウシ抗ヤギIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch 番号805-035-180)を使用してプレートに結合した二次抗体を検出し、上述のとおりに展開した。
【0029】
実施例4:抗体遺伝子のクローニング
VH及びVLの抗体配列を、ハイブリドーマから以下のとおりにクローニングした。製造業者の指示のとおりにTRIZOL試薬(Invitrogen、カタログ番号15596-026)を用いておよそ5×10個~7×10個のハイブリドーマ細胞から全RNAを単離した。全RNA 6μgと、マウスIgG1 VH:TATGCAAGGCTTACAACCACA(配列番号45)、マウスIgG3 VH:GGGGGTACTGGGCTTGGGTAT(配列番号46)、及びマウスカッパVL:CTCATTCCTGTTGAAGCTCTTGAC(配列番号47)の遺伝子特異的プライマーとを用いて、Maxima Universal First Strand cDNA合成キット(Thermo Fisher カタログ番号K1661)を使用して第1鎖cDNAの合成を行った。
【0030】
第1鎖cDNAの合成に続いて、ターミナルトランスフェラーゼを用いて各第1鎖cDNAの5’末端にポリA配列を付加した。結果として得られた5’末端テイルcDNA産物を2ラウンドのPCR増幅に供した。5’GTGACTCGAGTCGACATCGATTTTTTTTTTTTTTTTT(配列番号48)、マウスIgG1 VHに対する3’プライマー:CTTCCGGAATTCCTCAATTTTCTTGTCCACCTTGGTGC(配列番号49)、マウスIgG3 VHに対する3’プライマー:CTTCCGGAATTCCTCGATTCTCTTGATCAACTCAGTCT(配列番号50)、及びマウスカッパVLに対する3’プライマー:CTTCCGGAATTCCTCATTCCTGTTGAAGCTCTTGACAATGGG(配列番号51)のプライマーと共に、Herculase II DNAポリメラーゼ(Agilent Technologies カタログ番号600679)を用いて、第1ラウンドのPCR反応を行った
【0031】
Phusion High Fidelity DNAポリメラーゼ(Fisher Scientific カタログ番号F530L)を用いる第2ラウンドのPCRにおいて、5’GTGACTCGAGTCGACATCGATTTTTTTTTTTTTTTTT(配列番号48)、マウスIgG1 VHに対する3’プライマー:ATTAAGTCGACATAGACAGATGGGGGTGTCGTTTTGGC(配列番号52)、マウスIgG3 VHに対する3’プライマー:ATTAAGTCGACAGGGACCAAGGGATAGACAGATGG(配列番号53)、及びマウスカッパVLに対する3’プライマー:CTACCTCGAGGGATACAGTTGGTGCAGCATC(配列番号54)のプライマーを用いて、第1ラウンドPCR産物の一部(1/20)を更に増幅した。
【0032】
得られたPCR産物を、VH PCRフラグメントの場合はClaI/SalI、及びVL PCRフラグメントの場合はClaI/XhoIの制限酵素対で消化し、標準的な組み換えDNA手順を用いてクローニングベクターに挿入した。全長VH/VLクローンを同定するため、適切なサイズ範囲のインサートを含むクローンを配列決定した。
【0033】
実施例5:全長マウス抗体発現ベクターの構築
全長マウスIgG重鎖及び軽鎖発現プラスミドを以下のとおりに構築した。
【0034】
全長のVH配列及びVL配列を含むと上記で同定されたハイブリドーマに由来する全RNA 6μgを用いて、Maxima Universal First Strand cDNA合成キット(Thermo Fisher カタログ番号K1661)を使用し、逆転写酵素(RT)により第1鎖cDNAの合成を行った。オリゴdTプライマー及びランダムヘキサマープライマーを別々のRT反応で採用した。オリゴdT産物とランダムプライム化RT産物とを合わせて、上記で得られた配列情報を用いて設計された下記プライマーセットと共に、Phusion High Fidelity DNAポリメラーゼ(Fisher Scientific カタログ番号F530L)を使用するPCR増幅のラウンドを経て、muMAb1及びmuMAb2に対する全長cDNAの供給源として使用した。muMAb1及びmuMAb2カッパ軽鎖に対して、5’プライマーCAGTCCGCGGCCACCATGGATTTTCAAGTGCAGATTTTC(配列番号55)、3’プライマーAGGAAGATCTAACACTCATTCCTGTTGAAGC(配列番号56)。muMAb1マウスIgG1重鎖に対して、5’CAGTCCGCGGCCACCATGGCTGTCCTGGTGCTGTT(配列番号57)、3’プライマーCTGGACAGGGATCCAGAGTTCCA(配列番号58)。muMAb2マウスIgG3重鎖に対して、5’プライマーCAGTCCGCGGCCACCATGGCTGTCCTGGTGCTGTT(配列番号57)、3’プライマーCATGAGATCTCATTTACCAGGGGAGCGAGA(配列番号59)。
【0035】
増幅されたmuMAb1及びmuMAb2のマウスカッパ軽鎖配列、並びにmuMAb2マウスIgG3重鎖配列を、SacII/BglII制限フラグメントとして哺乳動物発現プラスミドに直接クローニングした。muMAb1マウスIgG1重鎖増幅産物は、CH1領域のほぼ中間点に対応する内部BamHI部位を過ぎたところにある遺伝子コード配列の5’末端を表す。それをSacII/BamHI制限フラグメントとして先で構築された全長マウスIgG1重鎖発現プラスミドにクローニングした。全てのクローンをシーケンシングによって検証した。
【0036】
muMAb1及びmuMAb2のアミノ酸配列に対応する配列番号を下記表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
実施例6:ヒト化
muMAb1及びmuMAb2をヒト化するため、マウス配列をヒト免疫グロブリン遺伝子データベースと比較することにより、マウス抗体配列に対して最も相同性の程度が高いヒト免疫グロブリン生殖細胞系列の配列を同定した。結果は、muMAb1とmuMAb2との両方の重鎖に最も近いヒト生殖細胞系列の配列はhuIGHV4-59x01であり、muMAb1とmuMAb2との両方の軽鎖に最も近いヒト生殖細胞系列の配列はhuIGKV3-11x01であることを示した。
【0039】
muMAb1及びmuMAb2のヒト化のため、CDR領域をヒト配列にグラフトして、huMAb1及びhuMAb2をそれぞれ作製した。huMAb1及びhuMAb2の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列に対応する配列番号を上記表1に示す。
【0040】
ヒト化の程度を最大化し、CDRループの構造的支持を提供するため、huMAb1及びhuMAb2の配列中の突然変異をin silicoで設計した。重鎖及び軽鎖の配列中のアミノ酸変化及びそれらの位置を、下記表2~表5、並びに図1A図1B図2A及び図2Bに示す。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
突然変異した全長重鎖及び軽鎖の遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に対応する配列番号を上記表1に示す。
【0046】
上記抗体の全てのCDR配列の配列番号を下記表6に示す。
【0047】
【表6】
【0048】
実施例7:ヒト化抗体発現ベクターの構築
標準的な組み換えDNA技術を用いて、全長ヒト化重鎖及び軽鎖発現プラスミドの構築を行った。(i)CH1領域の始めにNheI制限部位を生成するために導入されたサイレント突然変異を有する全長ヒトIgG1重鎖、及び(ii)CL定常領域の始めにBsiWI制限部位を生成するために導入されたサイレント突然変異を有する全長ヒトカッパ軽鎖を含むコンストラクトに、フラグメントを適切にクローニングした。
【0049】
上記で検討した突然変異バリアントに基づく配列を有するDNAフラグメントを、標準的な手法を用いて合成し、適切な発現ベクターにクローニングした。
【0050】
実施例8:293T細胞における一過性トランスフェクションによる組み換え抗体の産生
ヒト293T胚性腎臓上皮細胞株を、10%熱不活性化胎児ウシ血清、2mM L-グルタミン、及びペニシリン/ストレプトマイシン(GIBCO カタログ番号15140)で補足したDMEM(HyClone カタログ番号SH30243.02)で維持した。ポリ(エチレンイミン)(PEI)媒介トランスフェクションを介して、発現コンストラクトを細胞に導入した。簡潔には、1:1の比率で重鎖と軽鎖との発現プラスミドを組み合わせることによりDNAミックスを調製した。その後、1.5:1のPEI対DNA比でPEI/DNA複合体を形成し、20分間インキュベートした後、培養細胞に添加した。トランスフェクションの2日後、培養培地を取り除き、新鮮な培地に置き換えた。トランスフェクション後5日目に、分析のため上清を採取した。
【0051】
組み換え抗体の大規模な生産を、上記のとおりにヒト293T細胞に重鎖及び軽鎖の発現プラスミドをトランスフェクトすることによって行った。3日後、トランスフェクトされた細胞を採取し、シェーカーフラスコ中の6mMのL-グルタミンを補足した血清不含培地(HyClone CDM4HEK293 カタログ番号SH3085802)に播種した。細胞増殖及び抗体産生をモニターし、細胞生存率が50%を下回った場合に抗体精製のため培養上清を採取した。
【0052】
重鎖と軽鎖との種々の組み合わせの発現を、上記の重鎖及び軽鎖発現プラスミドの同時トランスフェクションにより行った。これらの組み換え抗体の親和性を下記表7に示す。
【0053】
【表7】
【0054】
また、2つの組み換えヒト化抗体、すなわち、huMAb3及びhuMAb4の結合親和性を、標準的な手順を用いる表面プラズモン共鳴アッセイによって決定した。huMAb3のK値は50nM~90nMであった。huMAb4のK値はおよそ0.4μMであった。
【0055】
結果は、ELISA又は表面プラズモン共鳴のいずれかによって測定されるように、huMAb3がSSEA4に対して高い親和性を有することを示した。
【0056】
その他の実施形態
本明細書に開示されるあらゆる特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に開示されるそれぞれの特徴は、同じ目的、同等の目的又は同様の目的を担う代替的な特徴により置き換えることができる。特段の定めがない限り、開示されるそれぞれの特徴は、包括的な一連の同等の特徴又は同様の特徴の1つの例であるにすぎない。
【0057】
上記説明から、当業者は本発明の必須の特性を容易に把握することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変化及び変更を加えることで、本発明を様々な用途及び条件に適合させることができる。したがって、その他の実施形態も添付の特許請求の範囲の範囲内である。
図1A
図1B
図2A
図2B
【配列表】
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