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  • 特許-高活性CSF1R阻害薬化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】高活性CSF1R阻害薬化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20220620BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220620BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20220620BHJP
   C07D 471/10 20060101ALI20220620BHJP
   C07D 487/10 20060101ALI20220620BHJP
   C07D 491/107 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61K31/444
A61K31/4545
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K45/00
A61P25/00
A61P25/00 101
A61P25/28
A61P29/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P37/06
A61P43/00 111
C07D417/14
C07D471/10 101
C07D487/10
C07D491/107
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021510517
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 CN2019088221
(87)【国際公開番号】W WO2019228252
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】201810559228.2
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520426081
【氏名又は名称】アドレイ・ノーティ・バイオファーマ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】リウ・シーフェン
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ジーヨン
(72)【発明者】
【氏名】パン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ペン
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/214867(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/145015(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/176792(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/081254(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/022117(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0315917(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0037280(US,A1)
【文献】国際公開第2015/164161(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/116713(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103539780(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104974162(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110573500(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/14
A61K 31/444
A61K 31/4545
A61K 39/395
A61K 45/00
C07D 417/14
C07D 471/10
C07D 487/10
C07D 491/107
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
(式中、XはCR’、下式で表される基
【化2】
、NR、-C(O)-、O、S、S(O)、又はS(O)を表し、R、R及びそれに結合された炭素原子が環化して飽和又は不飽和の3~12員のシクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基が形成され、前記ヘテロシクロアルキル基はO、N及びS原子から選ばれたヘテロ原子を少なくとも1つ有し、前記シクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基は所望により、ハロゲン、ヒドロキシ基、C-Cアルキル基、C-Cシクロアルキル基、C-Cヘテロシクロアルキル基、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニル基、C-Cハロアルキル基、C-Cアルコキシ基、C-Cハロアルコキシ基、C-Cシクロアルコキシ基、C-Cヘテロシクロアルコキシ基、-S-(C-C)アルキル基、-S-C-Cシクロアルキル基、-S-C-Cヘテロシクロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-(C-C)アルキル-NR’、-C=NR、-O-Cy、-O-(C-C)アルキル-Cy、-(C-C)アルケニル-Cy、-(C-C)アルキニル-Cy、-C(O)OR、-C(O)R、-O-C(O)R、-C(O)-NR’、-NR-C(O)-R、-NR-C(O)-OR、-(C-C)アルキル-NR-C(O)R、-SO-NR’及び-SOからそれぞれ独立的に選ばれた0、1、2、3又は4つのR置換基により置換されてもよく、上記で定義したC-Cアルキル基、C-Cシクロアルキル基、C-Cヘテロシクロアルキル基は、C-Cアルキル基、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニル基、C-Cシクロアルキル基、5~12員のアリール基、5~12員のヘテロアリール基、C-Cハロアルキル基、C-Cアルコキシ基、C-Cアルキルチオ基、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホン酸基及びニトロ基から選ばれた置換基によりさらに置換されてもよく、
、Rはそれぞれ独立的に水素、ハロゲン、C-Cアルコキシ基、C-Cシクロアルキル基、C-Cヘテロシクロアルキル基、ハロC-Cアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、-C(O)OR、-O-C(O)R、-C(O)-NR’、-NR-C(O)-R、-NR-C(O)-OR、-(C-C)アルキル-NR-C(O)R、-SO-NR’又は-SOを表し、上記で定義したC-Cシクロアルキル基、C-Cヘテロシクロアルキル基は、C-Cアルキル基、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニル基、C-Cシクロアルキル基、5~12員のアリール基、5~12員のヘテロアリール基、C-Cハロアルキル基、C-Cアルコキシ基、C-Cアルキルチオ基、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホン酸基及びニトロ基から選ばれた置換基によりさらに置換されてもよく、
はCy、-NHC(O)R、-NHC(O)NR’、-C(O)R、-C(O)NR’、-S(O)、-S(O)NR’、NHS(O)又は-NHS(O)NR’を表し、
ここで、Cy、Cyはそれぞれ独立的に、0、1、2、3又は4つの置換基により独立的に置換された5~12員環を表し、ここで、前記置換基はハロゲン、C-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基、C-Cシクロアルキル基、C-Cヘテロシクロアルキル基、ハロC-Cアルキル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、-C(O)OR、-O-C(O)R、-C(O)-NR’、-NR-C(O)-R、-NR-C(O)-OR、-(C-C)アルキル-NR-C(O)R、-SO-NR’又は-SOであり、上記で定義したC-Cアルキル基、C-Cシクロアルキル基、C-Cヘテロシクロアルキル基は、C-Cアルキル基、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニル基、C-Cシクロアルキル基、5~12員のアリール基、5~12員のヘテロアリール基、C-Cハロアルキル基、C-Cアルコキシ基、C-Cアルキルチオ基、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホン酸基及びニトロ基から選ばれた置換基によりさらに置換されてもよく、
ここで、前記R、R’は独立的に水素、C-Cアルキル基、C-Cシクロアルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン、アミノ基、C-Cハロアルキル基、C-Cアルキルアミノ基、ジC-Cアルキルアミノ基を表し、又はR、R’及びそれに結合された原子が環化して3~9員のシクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基が形成され、上記で定義したC-Cアルキル基、C-Cシクロアルキル基、3~9員のシクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基は、C-Cアルキル基、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニル基、C-Cシクロアルキル基、5~12員のアリール基、5~12員のヘテロアリール基、C-Cハロアルキル基、C-Cアルコキシ基、C-Cアルキルチオ基、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホン酸基及びニトロ基から選ばれた置換基によりさらに置換されてもよく、
nは1、2又は3であり、m、oはそれぞれ独立的に0、1、2又は3である)
で表される化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項2】
Cy 及びCy 前記5~12員環が、5~12員のアリール基又は5~12員のヘテロアリール基であり、
上記で定義した5~12員のアリール基又は5~12員のヘテロアリール基は、C-Cアルキル基、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニル基、C-Cシクロアルキル基、5~12員のアリール基、5~12員のヘテロアリール基、C-Cハロアルキル基、C-Cアルコキシ基、C-Cアルキルチオ基、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホン酸基及びニトロ基から選ばれた置換基によりさらに置換されてもよい、請求項1に記載の式Iで表される化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項3】
Cy 及びCy 前記5~12員環が、5~6員のアリール基又は5~6員のヘテロアリール基であり、
上記で定義した5~6員のアリール基又は5~6員のヘテロアリール基は、C-Cアルキル基、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニル基、C-Cシクロアルキル基、5~12員のアリール基、5~12員のヘテロアリール基、C-Cハロアルキル基、C-Cアルコキシ基、C-Cアルキルチオ基、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホン酸基及びニトロ基から選ばれた置換基によりさらに置換されてもよい、請求項1または2に記載の式Iで表される化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項4】
、R’が、独立的に水素、C-Cアルキル基又はC-Cシクロアルキル基を表し、
上記で定義したC-Cアルキル基、C-Cシクロアルキル基は、C-Cアルキル基、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニル基、C-Cシクロアルキル基、5~12員のアリール基、5~12員のヘテロアリール基、C-Cハロアルキル基、C-Cアルコキシ基、C-Cアルキルチオ基、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホン酸基及びニトロ基から選ばれた置換基によりさらに置換されてもよい、請求項1~3のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項5】
nが1である、請求項1~4のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項6】
、R及びそれに結合された炭素原子が環化して飽和又は不飽和の3~6員のシクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基が形成され、前記ヘテロシクロアルキル基はO、N及びS原子から選ばれたヘテロ原子を少なくとも1つ有し、当該シクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基は所望により、それぞれ独立的に選ばれた0、1、2、3又は4つのR置換基により置換されてもよく、Rの定義は請求項1と同じである、請求項1~5のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項7】
、R及びそれに結合された炭素原子が、以下の構造
【化3】
【化4】
(式中、Rは水素、C-Cアルキル基、C-Cシクロアルキル基、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)-NR’、-SO-NR’及び-SOから選ばれ、
*はR、R及びそれに結合された炭素原子の結合部位を表し、
ここで、R、R’の定義は請求項1~5のいずれか1項と同じである)
のいずれか1つを形成している、請求項1~5のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項8】
XはCR’、NR、O及びSから選ばれ、ここで、R、R’は水素、C-Cアルキル基、C-Cシクロアルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン、C-Cハロアルキル基、C-Cアルキルアミノ基、ジC-Cアルキルアミノ基から選ばれ、又はR、R’及びそれに結合された原子が環化して3~9員のシクロアルキル基もしくはヘテロシクロアルキル基が形成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項9】
XがOである、請求項1~8のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項10】
、R’が、水素、ハロゲン又はC-Cアルキル基である、請求項1~9のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項11】
はCy、-NHC(O)R、-C(O)NR’又は-NHC(O)NR’であり、ここで、Cy、R、R’の定義は請求項1~10のいずれか1項と同じである、請求項1~10のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項12】
Cyはフェニル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フリル基、チアゾリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、チエニル基から選ばれ、且つ前記Cyは所望により、C-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基、C-Cシクロアルキル基、C-C複素環基、C-Cハロアルキル基、ハロゲン、シアノ基、スルホン酸基、ニトロ基又はヒドロキシ基により置換されてもよい、請求項1~11のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項13】
Cyが、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、フェニル基およびピリジル基から選ばれる、請求項1~12のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項14】
及びR’は水素、ハロゲン又はC-Cアルキル基である、請求項1~13のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項15】
以下の番号1~14、16~88、および90の構造式
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
のいずれか1つで表される化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物又は薬物製剤。
【請求項17】
クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、イホスファミド、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾトシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ダカルバジン、テモゾロミド、プロカルバジン、メトトレキサート、フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン、メルカプトプリン、フルダラビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、トラベクテジン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノマイシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、イクサベピロン、タモキシフェン、フルタミド、ゴナドレリン類似体、メゲストロール、プレドニゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、サリドマイド、インターフェロンα、ロイコボリン、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、アファチニブ、アリサーチブ(alisertib)、アムバチニブ(amuvatinib)、アパチニブ、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブリバニブ、カボザンチニブ、セディラニブ、クレノラニブ(crenolanib)、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダコミチニブ、ダヌセルチブ、ダサチニブ、ドビチニブ、エルロチニブ、フォレチニブ(foretinib)、ガネテスピブ(ganetespib)、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イコチニブ、イマチニブ、イニパリブ(iniparib)、ラパチニブ、レンバチニブ(lenvatinib)、リニファニブ(linifanib)、リンシチニブ(linsitinib)、マシチニブ、モメロチニブ(momelotinib)、モテサニブ、ネラチニブ、ニロチニブ、ニラパリブ(niraparib)、オプロゾミブ(oprozomib)、オラパリブ(olaparib)、パゾパニブ、ピクチリシブ(pictilisib)、ポナチニブ、キザルチニブ(quizartinib)、レゴラフェニブ、リゴサチブ(rigosertib)、ルカパリブ(rucaparib)、ルキソリチニブ、サラカチニブ、サリデギブ(saridegib)、ソラフェニブ、スニチニブ、テラチニブ、チバンチニブ(tivantinib)、チボザニブ、トファシチニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、ベリパリブ、ベムラフェニブ、ビスモデギブ、ボラセルチブ(volasertib)、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ブレンツキシマブ ベドチン、カツマキソマブ、セツキシマブ、デノスマブ、ゲムツズマブ、イピリムマブ、ニモツズマブ、オファツムマブ、パニツズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブIDO阻害薬、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、LAG3抗体、TIM-3抗体、抗CTLA-4抗体から選ばれる他の治療薬及び/又は免疫チェックポイント阻害薬をさらに含む、請求項16に記載の医薬組成物又は薬物製剤。
【請求項18】
CSF1R阻害による腫瘍、がん、ウイルス感染、臓器移植拒絶反応、神経変性疾患、注意障害又は自己免疫疾患の予防及び/又は治療における使用のための、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項19】
CSF1R阻害による腫瘍、がん、ウイルス感染、臓器移植拒絶反応、神経変性疾患、注意障害又は自己免疫疾患の予防及び/又は治療における使用のための、請求項16または17に記載の医薬組成物又は薬物製剤。
【請求項20】
前記腫瘍又はがんは皮膚がん、膀胱がん、卵巣がん、乳がん、胃がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸がん、肺がん、骨がん、脳がん、神経細胞腫、直腸がん、結腸がん、家族性腺腫性ポリポーシス、遺伝性非ポリポーシス大腸がん、食道がん、口唇がん、喉頭がん、下咽頭がん、舌がん、唾液腺がん、胃がん、腺がん、甲状腺髄様がん、甲状腺乳頭がん、腎臓がん、腎実質がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮体がん、子宮内膜がん、絨毛がん、膵臓がん、前立腺がん、精巣がん、泌尿器系がん、黒色腫、脳腫瘍(例えば、膠芽腫、星状細胞腫、髄膜腫、髄芽腫、原始神経外胚葉性腫瘍)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、成人T細胞白血病リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、肝細胞がん、胆嚢がん、気管支がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、多発性骨髄腫、基底細胞腫瘍、奇形腫、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、セミノーマ、横紋筋肉腫、頭蓋咽頭腫、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、ユーイング肉腫、形質細胞腫から選ばれる、請求項18に記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項21】
前記腫瘍又はがんは皮膚がん、膀胱がん、卵巣がん、乳がん、胃がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸がん、肺がん、骨がん、脳がん、神経細胞腫、直腸がん、結腸がん、家族性腺腫性ポリポーシス、遺伝性非ポリポーシス大腸がん、食道がん、口唇がん、喉頭がん、下咽頭がん、舌がん、唾液腺がん、胃がん、腺がん、甲状腺髄様がん、甲状腺乳頭がん、腎臓がん、腎実質がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮体がん、子宮内膜がん、絨毛がん、膵臓がん、前立腺がん、精巣がん、泌尿器系がん、黒色腫、脳腫瘍(例えば、膠芽腫、星状細胞腫、髄膜腫、髄芽腫、原始神経外胚葉性腫瘍)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、成人T細胞白血病リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、肝細胞がん、胆嚢がん、気管支がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、多発性骨髄腫、基底細胞腫瘍、奇形腫、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、セミノーマ、横紋筋肉腫、頭蓋咽頭腫、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、ユーイング肉腫、形質細胞腫から選ばれる、請求項19に記載の医薬組成物又は薬物製剤。
【請求項22】
CSF1R阻害における使用のための、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項23】
CSF1R阻害における使用のための、請求項16または17に記載の医薬組成物又は薬物製剤。
【請求項24】
腫瘍、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、注意障害又は免疫媒介性疾患の予防及び/又は治療における使用のための、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物。
【請求項25】
腫瘍、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、注意障害又は免疫媒介性疾患の予防及び/又は治療における使用のための、請求項16または17に記載の医薬組成物又は薬物製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複素環式化合物に関し、具体的には、高活性CSF1R阻害薬及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
CSF1R(colony stimulating factor 1 receptor、コロニー刺激因子1受容体)は、腫瘍細胞によって分泌され、マクロファージの分化及び動員において重要な役割を果たすサイトカインである。関連の研究では、CSF1R阻害薬(抗体又は低分子)が腫瘍組織のTAM(tumor-associated macrophages、腫瘍関連マクロファージ)浸潤を軽減して、腫瘍の進行及び転移を効果的に阻害できることが示されることから、腫瘍免疫療法で大きな注目を集めている。
【0003】
またCSF1Rは、破骨細胞におけるその生物学的役割により、骨粗しょう症及び炎症性関節炎で重要な治療標的とされる。例えば、M-CSFシグナルの増強により破骨細胞の活性が増加することで、関節炎及びその他炎症性骨破壊で骨量減少が発生する(Scott et al.,Rheumatology 2000,39:122-132及びRitchlin et al.,J.Clin.Invest.2003,111:821-831を参照)。したがって、関節炎及びその他炎症性骨破壊の治療でCSF1R阻害は有望な方法であり、関節炎動物モデルにおけるKi-20227、GW2580等のCSF1R阻害薬の薬力学データがこれを裏付けている(Conwat et al.,JPET 2008,326:41-50及びOhno et al.,Eur.J.Immunol.2008,38:283-291を参照)。また、骨粗しょう症の原因になる破骨細胞発達の調節障害及び骨侵食と骨形成のバランス崩れもCSF1Rの調節により治療することができる。
【0004】
ノバルティス社の研究員がネイチャー誌で、マウス神経膠腫モデルを用いる前臨床試験では、CSF1R(BLZ945)の阻害が腫瘍体積の迅速な縮小につながり、生存期間が明らかに延長されることを報告し、このようなCSF1R阻害は腫瘍関連マクロファージを死滅させるのではなく、腫瘍耐性状態に変換させるものであり、子宮頸がん及び乳がんモデルで同様の結果が見られた。低分子CSF1R阻害薬は化学療法に対する身体の感受性を効果的に増強させることができる。BMS社とCSF1R阻害薬を共同開発するFive Prime社は膵臓がんマウスモデルを用いる研究で、CSF1R阻害薬が免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて使用されると相乗効果があることを利用して、マウス膵臓腫瘍の増殖を明らかに阻害できることを発見した。
【0005】
現在、臨床での使用が認められるCSF1R抗体薬はBMS/FPRXによるFPA008、エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社のエマクツズマブ(emactuzumab)、イーライリリー・アンド・カンパニー社のLY3022855、アムジェン社のAMG820等があり、臨床での使用が認められる低分子CSF1R阻害薬はBLZ945、PlexxikonによるPLX3397,DecipheraによるDC-3014等がある。CSF1R阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の組み合わせ使用は初期臨床試験の段階にあり、中国国内では臨床使用承認手続きに入る化合物はまだなかった。低分子CSF1R阻害薬、特にCSF1R媒介性疾患を治療できる化合物の同定が、今後もニーズが高まる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Scott et al.,Rheumatology 2000,39:122-132.
【文献】Ritchlin et al.,J.Clin.Invest.2003,111:821-831.
【文献】Conwat et al.,JPET 2008,326:41-50.
【文献】Ohno et al.,Eur.J.Immunol.2008,38:283-291.
【文献】Allen L.V.Jr.et al.,Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2Volumes),22nd Edition(2012),Pharmaceutical Press.
【発明の概要】
【0007】
本発明は、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物もしくは立体異性体のラセミ混合物を提供する。いくつかの実施形態では、当該化合物はCSF1R阻害薬としての活性を有する。なお、本開示で特に限定することなく式I化合物と記載される場合は、必ずしも薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物又は立体異性体のラセミ混合物のうちの一部又は全部を併記する必要がない。この場合において、前記式I化合物は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、立体異性体の混合物及び立体異性体のラセミ混合物をも含む。
【化1】
【0008】
式中、XはCR’、
【化2】
、NR、-C(O)-、O、S、S(O)、又はS(O)を表し、R、R及びそれに接続された炭素原子が環化して飽和又は不飽和の3~12員のシクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基が形成され、例えば、前記3~12員のシクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基は3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12員環であり、前記ヘテロシクロアルキル基はO、N及びS原子から選ばれたヘテロ原子を少なくとも1つ有し、例えば、1、2、3又は4つのヘテロ原子を有し、前記シクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基は所望により、ハロゲン、ヒドロキシ基、C-Cアルキル基、C-Cシクロアルキル基、C-Cヘテロシクロアルキル基、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニル基、C-Cハロアルキル基、C-Cアルコキシ基、C-Cハロアルコキシ基、C-Cシクロアルコキシ基、C-Cヘテロシクロアルコキシ基、-S-(C-C)アルキル基、-S-C-Cシクロアルキル基、-S-C-Cヘテロシクロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-(C-C)アルキル-NR’、-C=NR、-O-Cy、-O-(C-C)アルキル-Cy、-(C-C)アルケニル-Cy、-(C-C)アルキニル-Cy、-C(O)OR、-C(O)R、-O-C(O)R、-C(O)-NR’、-NR-C(O)-R、-NR-C(O)-OR、-(C-C)アルキル-NR-C(O)R、-SO-NR’及び-SOからそれぞれ独立的に選ばれた0、1、2、3又は4つのR置換基により置換されてもよく、
、Rはそれぞれ独立的に水素、ハロゲン、C-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基、C-Cシクロアルキル基、C-Cヘテロシクロアルキル基、ハロC-Cアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、-C(O)OR、-O-C(O)R、-C(O)-NR’、-NR-C(O)-R、-NR-C(O)-OR、-(C-C)アルキル-NR-C(O)R、-SO-NR’又は-SOを表し、
はCy、-NHC(O)R、-NHC(O)NR’、-C(O)R、-C(O)NR’、-S(O)、-S(O)NR’、-NHS(O)又は-NHS(O)NR’を表し、
ここで、Cy、Cyはそれぞれ独立的に、0、1、2、3又は4つの置換基により独立的に置換された5~12員環を表し、5~12員のアリール基又は5~12員のヘテロアリール基であることが好ましく、5~6員のアリール基又は5~6員のヘテロアリール基であることがより好ましく、ここで、前記置換基はハロゲン、C-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基、C-Cシクロアルキル基、C-Cヘテロシクロアルキル基、ハロC-Cアルキル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、-C(O)OR、-O-C(O)R、-C(O)-NR’、-NR-C(O)-R、-NR-C(O)-OR、-(C-C)アルキル-NR-C(O)R、-SO-NR’又は-SOであり、
ここで、前記R、R’は独立的に水素、C-Cアルキル基、C-Cシクロアルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン、アミノ基、C-Cハロアルキル基、C-Cアルキルアミノ基、ジC-Cアルキルアミノ基を表し、又はR、R’及びそれに接続された原子が環化して3~9員のシクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基が形成され、ただし、水素、C-Cアルキル基又はC-Cシクロアルキル基であることが好ましく、
nは1、2又は3であり、1であることが好ましく、m、oはそれぞれ独立的に0、1、2又は3であり、
上記で定義したアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基は、C-Cアルキル基、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニル基、C-Cシクロアルキル基、5~12員のアリール基、5~12員のヘテロアリール基、C-Cハロアルキル基、C-Cアルコキシ基、C-Cアルキルチオ基、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホン酸基及びニトロ基から選ばれた置換基により置換されてもよく、
上記で定義した置換基では、異なる置換基でRがそれぞれ独立的に定義されるもので、異なる置換基でR’がそれぞれ独立的に定義されるものである。
【0009】
本開示で、一部の置換基の説明で使用される「Cx1-Cx2」という記述は、前記置換基中の炭素原子数がx1ないしx2個であることを表す。例えば、C-Cは対象基が0、1、2、3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を有することを表し、C-Cは対象基が1、2、3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を有することを表し、C-Cは対象基が2、3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を有することを表し、C-Cは対象基が3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を有することを表し、C-Cは対象基が4、5、6、7又は8個の炭素原子を有することを表し、C-Cは対象基が1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有することを表す。
【0010】
本開示で、環状基の説明で使用される「x1~x2員環」という記述は、対象基中の環上原子数がx1ないしx2個であることを表す。例えば、前記3~12員のシクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基の場合には、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12員環で、その環上原子数は3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個である。3~6員環の場合には、当該環状基が3、4、5又は6員環で、その環上原子数は3、4、5又は6個である。3~9員環の場合には、当該環状基が3、4、5、6、7、8又は9員環で、その環上原子数は3、4、5、6、7、8又は9個である。5~12員環の場合には、当該環状基が5、6、7、8、9、10、11又は12員環で、その環上原子数は5、6、7、8、9、10、11又は12個である。前記環上原子は炭素原子又はヘテロ原子であり、例えば、N、O及びSから選ばれたヘテロ原子である。前記環が複素環である場合には、前記複素環は1、2、3、4、5、6、7、8、9個又は10個以上のヘテロ環原子であって、例えば、N、O及びSから選ばれたヘテロ原子を有してもよい。
【0011】
本開示で、1つ又は複数のハロゲンはそれぞれ独立的にフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる。
【0012】
本発明の一好ましい実施形態では、R、R及びそれに接続された炭素原子が環化して飽和又は不飽和の3~6員のシクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基が形成され、前記ヘテロシクロアルキル基はO、N及びS原子から選ばれたヘテロ原子を少なくとも1つ有し、当該シクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基は所望により、それぞれ独立的に選ばれた0、1、2、3又は4つのR置換基により置換されてもよく、ここでRの定義は上記と同じである。
【0013】
本発明の一好ましい実施形態では、R、R及びそれに接続された炭素原子により形成された環は下記の構造から選ばれる。
【化3】
【化4】
式中、Rは水素、C-Cアルキル基、C-Cシクロアルキル基、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)-NR’、-SO-NR’及び-SOから選ばれ、*はR、R及びそれに接続された炭素原子の結合部位を表し、且つ前記基は所望により、それぞれ独立的に選ばれた0、1、2、3又は4つのR置換基により置換されてもよく、ここで、R、R’及びRの定義は上記と同じである。
【0014】
本発明の一好ましい実施形態では、XはCR’、NR、O及びSから選ばれ、Oであることが好ましく、ここで、R、R’は水素、C-Cアルキル基、C-Cシクロアルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン、C-Cハロアルキル基、C-Cアルキルアミノ基、ジC-Cアルキルアミノ基から選ばれ、又はR、R’及びそれに接続された原子が環化して3~9員のシクロアルキル基もしくはヘテロシクロアルキル基が形成され、ただし、水素、ハロゲン又はC-Cアルキル基であることが好ましい。
【0015】
本発明の一好ましい実施形態では、RはCy、-NHC(O)R、-C(O)NR’又は-NHC(O)NR’であることが好ましく、ここで、Cy、R、R’の定義は上記と同じである。
【0016】
本発明の一好ましい実施形態では、Cyはフェニル基、ピリジル基、ピラジニル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フリル基、チアゾリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、チエニル基から選ばれ、ここで、Cyはピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、フェニル基又はピリジル基であることが好ましく、且つ前記Cyは所望により、C-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基、C-Cシクロアルキル基、C-C複素環基、C-Cハロアルキル基、ハロゲン、シアノ基、スルホン酸基、ニトロ基又はヒドロキシ基により置換されてもよい。
【0017】
本発明の一好ましい実施形態では、R及びR’は水素、ハロゲン又はC-Cアルキル基であることが好ましい。
【0018】
本発明の一実施形態では、前記式I化合物は下記の構造を有する化合物から選ばれることが好ましい。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0019】
本発明の化合物は薬学的に許容される塩として製造されてもよく、前記薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、ケイ皮酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸又はトルエンスルホン酸から選ばれた無機酸又は有機酸を用いて生成することができる。
【0020】
本発明の薬学的に許容される塩は従来の方法により製造することができ、例えば、本発明の化合物を水混和性有機溶媒(例えば、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル)に溶解し、その後、過剰量の有機酸又は無機酸の水溶液を加えて混合物から塩を沈殿させ、中から溶媒及び余剰の遊離酸を除去して、沈殿した塩を分離する。
【0021】
本発明の化合物又は薬学的に許容されるその塩は、その水和物及び溶媒和物を含む。
【0022】
さらに、本発明は、がん、腫瘍、炎症性疾患、自己免疫疾患又は免疫媒介性疾患を予防及び/又は治療する薬物の製造における本発明の化合物の用途を提供する。
【0023】
さらに、本発明は、がん、腫瘍、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、注意障害又は免疫媒介性疾患を予防及び/又は治療するための、本発明の化合物を有効成分として含む医薬組成物を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、本発明の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、又は本発明の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物にCSF1Rをさらすことを含むCSF1R阻害方法を提供する。
【0025】
さらに、本発明は、本発明の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、又は本発明の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を適用対象に投与することを含む、CSF1R阻害により予防及び/又は治療することができる疾患の予防及び/又は治療方法を提供する。
【0026】
さらに、本発明は、適用対象である哺乳動物に本発明の化合物を投与することを含む、がん、腫瘍、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、注意障害又は免疫媒介性疾患の予防及び/又は治療方法を提供する。
【0027】
炎症性疾患、自己免疫疾患及び免疫媒介性疾患の代表的な例は、関節炎、リウマチ性関節炎、脊椎関節炎、痛風性関節炎、骨関節炎、若年性関節炎、その他関節炎性疾患、狼瘡、全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚関連疾患、乾癬、湿疹、皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、痛み、肺疾患、肺部炎症、成人急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、肺サルコイドーシス、慢性肺炎症性疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、うっ血性心不全、心筋虚血再灌流障害、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、喘息、シェーグレン症候群、自己免疫性甲状腺疾患、じんま疹(風疹)、多発性硬化症、強皮症、臓器移植拒絶反応、異種移植、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、パーキンソン病、アルツハイマー病、糖尿病関連疾患、炎症、骨盤内炎症性疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー性気管支炎、アレルギー性副鼻腔炎、白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、骨髄腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、有毛細胞白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄異形成腫瘍(MPN)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫を含むが、これらに限定されない。
【0028】
がん又は腫瘍の代表的な例は、皮膚がん、膀胱がん、卵巣がん、乳がん、胃がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸がん、肺がん、骨がん、脳がん、神経細胞腫、直腸がん、結腸がん、家族性腺腫性ポリポーシス、遺伝性非ポリポーシス大腸がん、食道がん、口唇がん、喉頭がん、下咽頭がん、舌がん、唾液腺がん、胃がん、腺がん、甲状腺髄様がん、甲状腺乳頭がん、腎臓がん、腎実質がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮体がん、子宮内膜がん、絨毛がん、膵臓がん、前立腺がん、精巣がん、泌尿器系がん、黒色腫、脳腫瘍(例えば、膠芽腫、星状細胞腫、髄膜腫、髄芽腫、原始神経外胚葉性腫瘍)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、成人T細胞白血病リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、肝細胞がん、胆嚢がん、気管支がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、多発性骨髄腫、基底細胞腫瘍、奇形腫、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、セミノーマ、横紋筋肉腫、頭蓋咽頭腫、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、ユーイング肉腫、形質細胞腫を含むが、これらに限定されない。
【0029】
本発明の化合物又は薬学的に許容されるその塩は、がん又は腫瘍を治療する他の抗がん剤又は免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて使用される場合に、増強された抗がん効果を示す。
【0030】
がん又は腫瘍を治療する抗がん剤の代表的な例は、細胞シグナル伝達阻害薬、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、イホスファミド、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾトシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ダカルバジン、テモゾロミド、プロカルバジン、メトトレキサート、フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン、メルカプトプリン、フルダラビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、トラベクテジン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノマイシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、イクサベピロン、タモキシフェン、フルタミド、ゴナドレリン類似体、メゲストロール、プレドニゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、サリドマイド、インターフェロンα、ロイコボリン、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、アファチニブ、アリサーチブ(alisertib)、アムバチニブ(amuvatinib)、アパチニブ、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブリバニブ、カボザンチニブ、セディラニブ、クレノラニブ(crenolanib)、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダコミチニブ、ダヌセルチブ、ダサチニブ、ドビチニブ、エルロチニブ、フォレチニブ(foretinib)、ガネテスピブ(ganetespib)、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イコチニブ、イマチニブ、イニパリブ(iniparib)、ラパチニブ、レンバチニブ(lenvatinib)、リニファニブ(linifanib)、リンシチニブ(linsitinib)、マシチニブ、モメロチニブ(momelotinib)、モテサニブ、ネラチニブ、ニロチニブ、ニラパリブ(niraparib)、オプロゾミブ(oprozomib)、オラパリブ(olaparib)、パゾパニブ、ピクチリシブ(pictilisib)、ポナチニブ、キザルチニブ(quizartinib)、レゴラフェニブ、リゴサチブ(rigosertib)、ルカパリブ(rucaparib)、ルキソリチニブ、サラカチニブ、サリデギブ(saridegib)、ソラフェニブ、スニチニブ、テラチニブ、チバンチニブ(tivantinib)、チボザニブ、トファシチニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、ベリパリブ、ベムラフェニブ、ビスモデギブ、ボラセルチブ(volasertib)、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ブレンツキシマブ ベドチン、カツマキソマブ、セツキシマブ、デノスマブ、ゲムツズマブ、イピリムマブ、ニモツズマブ、オファツムマブ、パニツズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、及びIDO阻害薬、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、LAG3抗体、TIM-3抗体、抗CTLA-4抗体又はそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の化合物又は薬学的に許容されるその塩は、炎症性疾患、自己免疫疾患及び免疫媒介性疾患を治療する他の治療薬と組み合わせて使用される場合に、増強された治療効果を示す。
【0032】
炎症性疾患、自己免疫疾患及び免疫媒介性疾患の治療薬の代表的な例は、ステロイド薬(例えば、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、コルチゾン、ヒドロキシコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン等)、メトトレキサート、レフルノミド、抗TNFα薬(例えば、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリズマブ等)、カルシニューリン阻害薬(例えば、タクロリムス、ピメクロリムス等)及び抗ヒスタミン薬(例えば、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、ロラタジン、エバスチン、ケトチフェン、セチリジン、レボセチリジン、フェキソフェナジン等)を含むが、これらに限定されず、この中から選ばれた少なくとも1種の治療薬を本発明の医薬組成物に含んでもよい。
【0033】
本発明の化合物又は薬学的に許容されるその塩は有効成分として経口又は非経口投与することができ、その有効量の範囲はヒトを含む哺乳動物(体重は約70kg)の場合には0.1ないし2,000mg/kg体重/日であり、1ないし1,000mg/kg体重/日であることが好ましく、且つ1日に単回でもしくは4回に分けて投与され、又は所定の時刻もしくは任意の時刻で投与される。有効成分の用量は複数の関連要因(例えば、治療対象の状況、疾患のタイプ及び重症度、投与速度及び医師の意見)に基づいて調整することができる。場合によっては、上記より少ない用量が適切であることもある。有害な副作用が出現しない限り、上記より多い用量を、1日に数回に分けて投与することもできる。
【0034】
任意の従来の方法で本発明の医薬組成物を経口投与又は(筋肉内、静脈内、皮下を含む)非経口投与用の剤形、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル、シロップ、エマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液又は懸濁液として製剤化することができる。
【0035】
経口投与用の本発明の医薬組成物は有効成分を、セルロース、ケイ酸カルシウム、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、デキストロース、リン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ゼラチン、タルク、界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤、希釈剤などの担体と混合することで製造することができる。本発明の注射用組成物に用いる担体の例としては、水、塩溶液、グルコース溶液、グルコース様溶液(glucose-like solution)、アルコール、グリコール、エーテル(例えば、ポリエチレングリコール400)、油、脂肪酸、脂肪酸エステル、グリセリド、界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤が挙げられる。
【0036】
本発明では、例示的な実施形態の説明により、本発明のその他の特徴が明瞭なものになり、これらの実施形態は本発明を非限定的に説明するものに過ぎず、下記の実施例では本発明が開示する方法を利用して、製造、分離及び同定を行う。
【0037】
有機合成分野の技術者の知っている様々な手法で本発明の化合物を製造することができ、下記の方法及び有機合成化学分野で周知の合成方法、又は当業者の知っている代替的な手法で本発明の化合物を合成することができる。好ましい方法としては下記の方法を含むが、これらに限定されない。使用する包装材料及び所望の変化の実現に適する溶媒又は溶媒混合物において反応を行う。有機合成分野の技術者に理解されるように、分子中の官能性は所望の変化に適合する。場合によっては、所望の本発明の化合物を得るために合成ステップの順番又は原料を適宜判断して変更する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】実施例3における被験化合物の薬効結果を示す図である。
図2】実施例3における被験化合物の薬効結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
「用語の解釈」
特段の説明がない限り、本願の明細書及び特許請求の範囲で使用される用語は、次の定義に準じるものである。なお、明細書及び特許請求の範囲において、特段の説明がない限り、単数形の「1つ」は複数の意味を含む。特段の説明がない限り、質量分析、核磁気共鳴、HPLC、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、薬理学分野の従来の方法を用いる。本願では、特段の説明がない限り、「又は」又は「及び」が「及び/又は」を意味する。
【0040】
明細書及び特許請求の範囲では、記載された化学式又は名称には全ての立体異性体及び光学異性体並びに前記異性体が存在するラセミ体が含まれる。特段の説明がない限り、全てのキラル分子(鏡像異性体及びジアステレオマー)及びラセミ体は本発明の範囲に含まれる。前記化合物にはC=C二重結合、C=N二重結合、環系等による様々な幾何異性体が存在してもよく、前記安定的な異性体も本発明に含まれる。本発明では、本発明の化合物のシス-及びトランス-(又はE-及びZ-)幾何異性体であって、異性体の混合物又は個別の異性体として分離され得るものが開示される。本発明の化合物は光学活性又はラセミ化により分離することができる。本発明の化合物の製造方法及びその中間体の調製方法はいずれも本発明に含まれる。鏡像異性体又はジアステレオマー生成物を得ようとする場合に、従来の方法(例えば、クロマトグラフィー又は分別晶析)により分離することができる。方法の条件によって、遊離(中性)の形態又は塩として本発明の最終生成物を得ることができる。遊離形態及び塩であるこれらの最終生成物も本発明の範囲に含まれる。必要があれば、化合物を1種の形態から別の形態に変換することができる。遊離塩基又は酸を塩に変換し、又は塩を遊離化合物又は別の塩に変換することができ、あるいは本発明の化合物の異性体の混合物を個別な異性体として分離することができる。本発明の化合物、その遊離形態及び塩は、水素原子が分子のその他の部位に転位されることで当該分子の原子間の化学結合が再配置される様々な互変異性体として存在することができる。なお、存在し得る前記互変異性体が全て本発明に含まれる。
【0041】
特に定義されない限り、本発明の置換基は互いに関係するものではなく、それぞれ独立的に定義されたものであり、例えば、置換基中のR(又はR’)は、異なる置換基でそれぞれ独立的に定義されたものである。具体的には、R(又はR’)が特定の置換基ですでに定義されている場合には、他の置換基における同R(又はR’)は必ずしも当該定義を有することを意味しない。より具体的には、例えば(例示的なものに過ぎないが)、NR’で、R(又はR’)が水素として定義された場合には、-C(O)-NR’で、R(又はR’)は必ずしも水素であることを意味しない。
【0042】
特に定義されない限り、置換基について「所望により……に置換された」と記載された場合は、前記置換基は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、オキソ、アルカノイル基、アリールオキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、二置換アミノ基(2つのアミノ基置換基はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基から選ばれる)、アルカノイルアミノ基、アロイルアミノ基、アラルカノイルアミノ基、置換アルカノイルアミノ基、置換アリールアミノ基、置換アラルカノイルアミノ基、チオ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキルチオ基、アリールチオカルボニル基、アリールアルキルチオカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリールアルキルスルホニル基、スルホニルアミノ基(例えば、-SONH)、置換スルホニルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基(例えば、-CONH)、置換カルバモイル基(例えば、-CONHアルキル基、-CONHアリール基、-CONHアリールアルキル基又は窒素でアルキル基、アリール基、アリールアルキル基から選ばれた2つの置換基を有するもの)、アルコキシカルボニル基、アリール基、置換アリール基、グアニジノ基、複素環基(例えば、インドリル基、イミダゾリル基、フリル基、チエニル基、チアゾリル基、ピロリジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基等)及び置換複素環基から選ばれる。
【0043】
本明細書で使用される用語「アルキル基」又は「アルキレン基」は、所定の炭素原子数の分岐及び直鎖の飽和脂肪族炭化水素基を含むことを意図するものである。例えば、「C-Cアルキル基」は1個ないし6個の炭素原子を有するアルキル基を表す。アルキル基の例は、メチル基(Me)、エチル基(Et)、プロピル基(例えば、n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(例えば、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基)及びペンチル基(例えば、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基)を含むが、これらに限定されない。
【0044】
用語「アルケニル基」は1つ以上の二重結合を有し、且つ炭素原子数が一般に2個ないし20個の直鎖又は分岐の炭化水素基を表す。例えば、「C-Cアルケニル基」は2個ないし8個の炭素原子を有する。アルケニル基の例は、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、1-メチル-2-ブテン-1-イル基、ヘプテニル基、オクテニル基等を含むが、これらに限定されない。
【0045】
用語「アルキニル基」は1つ以上の三重結合を有し、且つ炭素原子数が一般に2個ないし20個の直鎖又は分岐の炭化水素基を表す。例えば、「C-Cアルキニル基」は2個ないし8個の炭素原子を有する。アルキニル基の例は、エチニル基、1-プロピニル基、1-ブチニル基、ヘプチニル基、オクチニル基等を含むが、これらに限定されない。
【0046】
用語「アルコキシ基」又は「アルキルオキシ基」は-O-アルキル基を表す。「C-Cアルコキシ基」(又はアルキルオキシ基)はC、C、C、C、C、C、C及びCアルコキシ基を含むことを意図するものである。アルコキシ基の例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(例えば、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基)、tert-ブトキシ基を含むが、これらに限定されない。同様に、「アルキルチオ基」又は「チオアルコキシ基」は上記で定義したアルキル基のうち、所定の数の炭素原子が硫黄による架橋で接続されたものを表すもので、例えば、メチル-S-、エチル-S-である。
【0047】
用語「カルボニル基」は炭素及び酸素の2種の原子が二重結合により接続されてなる有機官能基(C=O)を意味する。
【0048】
用語「アリール基」は、それ自体で又は例えば、「アラルキル基」、「アラルコキシ基」又は「アリールオキシアルキル基」の一部として、合計で5個ないし12個の環上原子からなる単環、二環又は三環の環系を意味するもので、ここで、前記環系中の少なくとも1つの環は芳香族環であり、且つ前記環系中の各環は3個ないし7個の環上原子を有する。本発明のいくつかの実施形態では、「アリール基」は、フェニル基、ビフェニル基、インダニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、テトラヒドロナフチル基を含むがこれらに限定されない芳香族環系を意味する。用語「アラルキル基」又は「アリールアルキル基」は芳香族環に接続されたアルキル残基を意味する。非限定的な例として、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。縮合アリール基はシクロアルキル環又は芳香族環の適切な位置において他の基に接続されたものであってもよい。例えば、環系から出発した矢印が、結合が任意の適切な環上原子に接続され得ることを意味する。
【0049】
用語「シクロアルキル基」は単環又は二環の環状アルキル基を意味する。単環の環状アルキル基はシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルナニル基を含むがこれらに限定されないC-Cの環状アルキル基を意味する。1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基等の分岐シクロアルキル基も「シクロアルキル基」の定義に含まれる。二環の環状アルキル基は架橋環、スピロ環又は縮合環のシクロアルキル基を含む。
【0050】
用語「シクロアルケニル基」は単環又は二環の環状アルケニル基を意味する。単環の環状アルケニル基はシクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基を含むがこれらに限定されないC-Cの環状アルケニル基を意味する。1-メチルシクロプロペニル基、2-メチルシクロプロペニル基等の分岐シクロアルケニル基も「シクロアルケニル基」の定義に含まれる。二環の環状アルケニル基は架橋環、スピロ環又は縮合環の環状アルケニル基を含む。
【0051】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含む。「ハロアルキル基」は所定の炭素原子数を有し、且つ1つ以上のハロゲンにより置換された分岐及び直鎖の飽和脂肪族炭化水素基を含むことを意図するものである。ハロアルキル基の例は、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘプタクロロプロピル基を含むが、これらに限定されない。ハロアルキル基には、所定の炭素原子数を有し、且つ1つ以上のフッ素原子により置換された分岐及び直鎖の飽和脂肪族炭化水素基を含むことが意図された「フルオロアルキル基」が例としてさらに含まれる。
【0052】
用語「ハロアルコキシ基」又は「ハロアルキルオキシ基」は上記で定義したハロアルキル基のうち、所定の数量の炭素原子が酸素による架橋で接続されたものを表すものである。例えば、「C-Cハロアルコキシ基」はC、C、C、C、C、C、C及びCハロアルコキシ基を含むことを意図するものである。ハロアルコキシ基の例は、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基を含むが、これらに限定されない。同様に、用語「ハロアルキルチオ基」又は「チオハロアルコキシ基」は上記で定義したハロアルキル基のうち、所定の数量の炭素原子が硫黄による架橋で接続されたものを表すもので、例えば、トリフルオロメチル-S-、ペンタフルオロエチル-S-である。
【0053】
用語「アリール基」は炭素原子のみからなる単環又は二環以上の芳香族基を意味する。単環の芳香族基はフェニル基を意味し、二環以上の芳香族基はナフチル基、アントラセニル基等を意味し、なお、当該二環のアリール基はベンゼン環に1つのシクロアルキル基、シクロアルケニル基又はシクロアルキニル基が縮合されたものであってもよい。
【0054】
用語「芳香族複素環基」又は「芳香族複素環」は、安定的な3員、4員、5員、6員、7員の芳香族単環もしくは芳香族二環、又は7員、8員、9員、10員、11員、12員、13員、14員の芳香族多環式複素環であって、炭素原子及びN、O、Sからそれぞれ独立的に選ばれた1、2、3又は4個のヘテロ原子を有する完全に不飽和な又は部分的に不飽和なもので、上記で定義した任意の複素環とベンゼン環が縮合されてなる多環式基を含むものを意味する。窒素及び硫黄ヘテロ原子は所望により酸化されてもよい。窒素原子が置換されたものでもよいし置換されていないものでもよい(即ちN又はNRで、ここでRはH、又は定義がある場合は他の置換基である)。複素環は、安定的な構造にできる任意のヘテロ原子又は炭素原子においてペンダント基に接続されてもよい。得られた化合物が安定的なものである場合に、本明細書に記載の複素環基は炭素又は窒素原子において置換されてもよい。複素環中の窒素原子は所望により四級化されてもよい。なお、複素環でSとO原子の総数が1を超えた場合には、これらのヘテロ原子が互いに隣接しないことが好ましい。複素環でSとO原子の総数が1以下であることが好ましい。用語「複素環」が使用される場合は、芳香族複素環を含むことが意図される。芳香族複素環の例には、アクリジニル基、アゼチジニル基、アゾシニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサゾリニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾテトラゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリニル基、カルバゾリル基、4aH-カルバゾリル基、カルボリニル基、クロマニル基、クロメニル基、シンノリニル基、デカヒドロキノリニル基、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル基、ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロフリル基、フリル基、フラザニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、イミダゾリル基、1H-インダゾリル基、イミダゾピリジル基、インドレニル基(indolenyl)、ジヒドロインドリル基、インダジニル基、インドリル基、3H-インドリル基、イサチノイル基(isatinoyl)、イソベンゾフリル基、イソクロマニル基、イソインダゾリル基、イソジヒドロインドリル基、イソインドリル基、イソキノリニル基、イソチアゾリル基、イソチアゾロピリジル基、イソオキサゾリル基、イソキサゾロピリジル基、メチレンジオキシフェニル基、モルホリニル基、フタラジニル基、オクタヒドロイソキノリニル基、オキサジアゾリル基、1,2,3-オキサジアゾリル基、1,2,4-オキサジアゾリル基、1,2,5-オキサジアゾリル基、1,3,4-オキサジアゾリル基、オキサゾリジニル基、オキサゾリル基、オキサゾピリジル基、オキサゾリジニル基、ペリミジニル基、インドキシル基、ピリミジニル基、フェナントリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサチイニル基、フェノキサジニル基、フタラジニル基、ピペラジニル基、ピペリジニル基、ピペリドニル基、4-ピペリドニル基、ピペロニル基、プテリジニル基、プリニル基、ピラニル基、ピラジニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピラゾロピリジル基、ピラゾリル基、ピリダジニル基、ピリドオキサゾリル基、ピリドイミダゾリル基、ピリドチアゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、2-ピロリドニル基、2H-ピロリル基、ピロリル基、キナゾリニル基、キノリニル基、4H-キノリジジニル基、キノキサリル基、キヌクリジニル基、テトラゾリル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロイソキノリニル基、テトラヒドロキノリニル基、6H-1,2,5-チアジアジニル基、1,2,3-チアジアゾリル基、1,2,4-チアジアゾリル基、1,2,5-チアジアゾリル基、1,3,4-チアジアゾリル基、チアントレニル基、チアゾリル基、チエニル基、チアゾロピリジル基、チエノチアゾリル基、チエノオキサゾリル基、チエノイミダゾリル基、チエニル基、トリアジニル基、1,2,3-トリアゾリル基、1,2,4-トリアゾリル基、1,2,5-トリアゾリル基、1,3,4-トリアゾリル基、キサンテニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、インドリル基、イソインドリル基、ジヒドロインドリル基、1H-インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、1,2,3,4-テトラヒドロキノリニル基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリニル基、5,6,7,8-テトラヒドロ-キノリニル基、2,3-ジヒドロ-ベンゾフリル基、クロマニル基、1,2,3,4-テトラヒドロ-キノキサリル基、1,2,3,4-テトラヒドロ-キナゾリニル基を含むが、これらに限定されない。本発明は、上記の複素環を有する縮合環及びスピロ環化合物をさらに含む。
【0055】
本明細書で使用される用語「ヘテロシクロアルキル基」は単環のヘテロシクロアルキル系、又は二環のヘテロシクロアルキル系を意味し、スピロヘテロシクロアルキル基及び架橋ヘテロシクロアルキル基をさらに含む。単環のヘテロシクロアルキル基は3~8員で少なくとも1つがO、N、S、Pから選ばれた飽和又は不飽和である非芳香族の環状アルキル系を意味する。二環のヘテロシクロアルキル系は1つのヘテロシクロアルキル基が1つのフェニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、又はヘテロアリール基に縮合されたものである。
【0056】
本明細書で使用される用語「架橋シクロアルキル基」は2つ以上の炭素原子を共有する多環式化合物を意味する。二環架橋環状炭化水素及び多環架橋環状炭化水素に分けることができる。前者は2つの脂環が2つ以上の炭素原子を共有することで構成され、後者は3つ以上の環からなる架橋環状炭化水素である。
【0057】
本明細書で使用される用語「スピロシクロアルキル基」は単環同士が1つの炭素原子(スピロ原子)を共有してなる多環式炭化水素を意味する。
【0058】
本明細書で使用される用語「架橋複素環基」は2つ以上の炭素原子が共有されてなる多環式化合物を意味するもので、当該環はO、N、Sから選ばれた原子を少なくとも1つ含む。二環架橋複素環及び多環架橋複素環に分けることができる。
【0059】
本明細書で使用される用語「ヘテロスピロ環基」は単環同士が1つの炭素原子(スピロ原子)を共有してなる多環式炭化水素を意味するもので、当該環はO、N、Sから選ばれた原子を少なくとも1つ含む。
【0060】
本明細書で使用される用語「置換」は少なくとも1つの水素原子が非水素基に置き換えられたことを意味し、ただし正常な原子価が維持され且つ前記置換により安定的な化合物が得られることが条件である。本明細書で使用される「環二重結合」は2つの隣接する環上原子において形成された二重結合(例えば、C=C、C=N又はN=N)を意味する。
【0061】
本発明の化合物に窒素原子が存在する(例えば、アミンである)場合には、酸化剤(例えば、mCPBA及び/又は過酸化水素)で処理してこれらの窒素原子をN-オキシドに変換することで、本発明のその他の化合物を得ることができる。したがって、窒素原子が表示された又は保護を主張する場合は、本発明の誘導体を得るために、前記窒素及びそのN-オキシドの両方が含まれるものである。
【0062】
変数が化合物の任意の組成又は化学式に1回以上出現する場合には、その都度、互いに関係なく独立的に定義される。したがって、例えば、0~3個のRにより置換された基と記載された場合には、前記基は所望により最大3つのR基まで置換されてもよく、しかもRは出現するたびに、それぞれ独立的にRの定義から選ばれる。また、置換基及び/又は変数の組み合わせは、当該組み合わせにより安定的な化合物を得られる場合にのみ、存在が許容される。
【0063】
用語「溶媒和物」は本発明の化合物が(有機分子でも無機分子でもよい)1つ以上の溶媒分子と物理的に結合されたものを意味する。当該物理的結合には水素結合を含む。特定の状況において、例えば、1つ以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に取り込まれた場合に、溶媒和物を分離することができる。溶媒和物中の溶媒分子は規則的に配置されてもよいし、無秩序に配置されてもよい。溶媒和物には化学量論的に溶媒分子を含んでもよいし、又は非化学量論的に溶媒分子を含んでもよい。「溶媒和物」には溶液相及び分離可能な溶媒和物を含む。溶媒和物の例としては、水和物、エタノラート、メタノラート、イソプロパノラートを含むが、これらに限定されない。溶媒和化の方法は本分野で周知の内容である。
【0064】
本明細書で使用される用語「患者」は、本発明の方法で治療される生物を意味する。このような生物には哺乳動物(例えば、ネズミ、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等)を非限定的に含むことが好ましく、ヒトであることが最も好ましい。
【0065】
本明細書で使用される用語「有効量」は組織、系、動物又はヒトにおいて研究者や臨床医師が期待する生物学的又は医学的応答を引き起こせる薬物もしくは薬剤(本発明の化合物)の量を意味する。また、用語「治療有効量」は、当該量の投与を受けない被験者と比べて、治療効果、治癒、予防効果の改善が見られ、又は疾患、病的状態もしくは副作用の軽減が見られ、又は疾患もしくは病的状態の進行速度の低減が見られるような量を意味する。有効量は特定の製剤又は投与経路に限定されることなく、1回以上に分けて又は1種以上の用量で投与することができる。当該用語には、正常な生理学的機能を増強できる範囲という意味での有効量をさらに含む。
【0066】
本明細書で使用される用語「治療」には、病的状態、疾患、障害等の改善と認められる任意の効果、例えば、軽減、低減、調節、改善、解消、又は症状の改善が含まれる。
【0067】
本明細書で使用される用語「医薬組成物」は、前記組成物が特にインビボ又はエクスビボ診断もしくは治療に適するようにするための、活性剤と不活性もしくは活性担体との組み合わせを意味する。塩基の例には、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)の水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)の水酸化物、アンモニア等を含むが、これらに限定されない。治療用途に関しては、本発明の化合物の塩は薬用であるものが望ましい。なお、非薬用の酸及び塩基の塩も、薬用化合物の製造又は精製に用いることができる。
【0068】
本明細書で使用される用語「薬用」は、合理的な医学的判断において、ヒト及び動物の組織と接触して使用することに適し、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応及び/又はその他の問題や合併症がなく、合理的な利益/リスク比に見合う化合物、物質、組成物及び/又は剤形を意味する。
【0069】
本明細書で使用される用語「薬用担体」は薬用物質、組成物又はビヒクルを意味するもので、例えば、液体もしくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、各種助剤(例えば、潤滑剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛もしくはステアリン酸)又は溶媒封入物質であって、対象化合物を担持しながら特定の器官又は身体の部分から他の器官又は身体の部分に輸送するように機能するものを意味する。各担体は製剤のその他成分に適合し、患者に無害であるという意味で「許容される」ものでなければならない。
【0070】
用語「医薬組成物」は本発明の化合物と、少なくとも1種のその他の薬用担体とを含む組成物を意味する。「薬用担体」は本分野で一般に使用が許容される生物活性剤を動物(具体的には哺乳動物)に送達するための媒体を意味し、投与方法及び剤形の特性によって、アジュバント、賦形剤又はビヒクル、例えば、希釈剤、防腐剤、充填剤、流動調整剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味料、矯味剤、香料、抗菌剤、抗真菌剤、潤滑剤、分散剤を含む。
【0071】
「薬学用語及び医学用語の解釈」
本明細書で使用される用語「許容される」は、配合成分又は有効成分は治療対象の健康に一般的に過度の不利な影響がないことを意味する。
【0072】
本明細書で使用される用語「がん」は、制御できない状態で、しかも特定の条件において転移(拡散)し得る細胞の異常増殖を意味するものである。がんには、固形腫瘍(例えば、膀胱、腸、脳、胸部、子宮、心臓、腎臓、肺、リンパ組織(リンパ腫)、卵巣、膵臓、その他内分泌器官(例えば、甲状腺)、前立腺、皮膚(黒色腫))又は血液系腫瘍(例えば、非白血性白血病)を含むが、これらに限定されない。
【0073】
本明細書で使用される用語「組み合わせて使用」又は類似する用語は、所定の複数種の治療薬物を、同じ又は異なる投与方式で同じ又は異なる時刻に同一の患者に投与することを意味する。
【0074】
本明細書で使用される用語「増強」又は「増強できる」は、期待される結果は効能が増し又は持続期間が延長されることを意味する。したがって、薬物の治療効果の増強に関する文脈中に使用される場合、用語「増強できる」は薬物がその投与対象において効能を増し又は持続期間を延長させる能力を有することを意味する。本明細書で使用される用語「相乗効果」は、理想的な環境において他の治療薬物の効果を最大限に高められる能力をいう。
【0075】
用語「免疫疾患」は内因性又は外因性の抗原に対して生じる好ましくない又は有害な反応としての疾患又は症状を意味する。結果的には、一般に細胞の機能障害、破壊もしくは機能不全、又は免疫応答を起こす器官もしくは組織の破壊が生じる。
【0076】
用語「薬品箱」と「製品包装」は同じ意味である。
【0077】
用語「被験者」又は「患者」には哺乳動物及び非哺乳動物が含まれる。哺乳動物には、哺乳類(ヒト、ヒト以外の霊長類、例えば、オランウータン、サル)、産業動物(例えば、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、家畜(ウサギ、イヌ)、実験動物(げっ歯類、例えば、ラット、マウス、モルモット等)を含むが、これらに限定されない。非哺乳類動物には、鳥類、魚類等を含むが、これらに限定されない。一好ましい例では、哺乳動物はヒトである。
【0078】
本明細書で使用される用語「治療」、「治療手順」又は「療法」には、疾患の症状もしくは状態の緩和、阻害もしくは改善、合併症の発生の阻害、潜在的なメタボリックシンドロームの改善もしくは予防、疾患もしくは症状の発生の阻害(例えば、疾患もしくは症状の進行の制御)、疾患もしくは症状の軽減、疾患もしくは症状の解消、疾患もしくは症状が引き起こす合併症の軽減、疾患もしくは症状に関連する兆候の予防及び/又は治療が含まれる。
【0079】
本明細書に記載の特定の化合物又は医薬組成物は、投与された後、特定の疾患、症状もしくは状態を改善することができ、特に重症度を軽減し、発症を遅延させ、疾患の進行を遅らせ、又は疾患の持続期間を短縮させることができる。固定用量投与か一時投与に関わらず、連続投与か間欠投与に関わらず、投与による結果と認められる。
【0080】
「投与経路」
適切な投与経路は、経口、静脈注射、経直腸、エアゾール剤、非経口投与、眼内投与、肺内投与、経皮投与、経膣投与、耳道内投与、鼻腔投与、局所投与を含むが、これらに限定されない。また、例示的に、非経口投与は、筋肉内注射、皮下注射、静脈注射、髄内注射、心室注射、腹腔内注射、リンパ内注射、鼻腔内注射を含む。
【0081】
ここで、化合物の投与方式というのは全身投与ではなく局所投与である。特定の実施例では、長時間作用型製剤は注入(例えば、皮下又は筋肉内)又は筋肉内注射により投与される。また、別の特定の一実施例では、薬物は標的薬物送達システム、例えば、器官特異的抗体によって内包されたリポソームにより投与される。このような実施例では、前記リポソームは選択的に特定の器官にガイドされて吸収される。
【0082】
「医薬組成物及び用量」
本発明は、1種以上の薬用担体(添加剤)及び/又は希釈剤と配合された治療有効量の1種以上の本発明の化合物と、所望により1種以上の上記のその他治療薬とを含む薬用組成物をさらに提供する。上記の任意の用途に用いるために、任意の適切な方式で、例えば、経口(例えば、錠剤、丸剤、粉末剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁液(ナノ懸濁液、マイクロ懸濁液、噴霧乾燥された分散液を含む)、シロップ、乳濁液)、舌下、頬側、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内注射又は注入技術(例えば、注射用の無菌水性もしくは非水性溶液もしくは懸濁液))、経鼻(例えば、鼻膜への投与(例えば、吸入スプレー))、局所(例えば、クリーム剤もしくは軟膏剤)、経直腸(例えば、坐剤)により本発明の化合物を投与することができる。また、単独で投与することができるが、一般には所定の投与経路及び標準的な薬学実験に基づいて選ばれた医薬担体を用いて投与する。
【0083】
薬用担体は当業者の知識範囲において様々な要因を考慮して調製することができる。このような要因には、配合される活性剤のタイプ及び特性、活性剤を有する組成物の投与対象、組成物の所定の投与経路、適応症を含むが、これらに限定されない。薬用担体は水性と非水性の液体媒体、及び各種の固体と半固体剤形を含む。
【0084】
上記の担体には活性剤の他に様々な成分及び添加剤が含まれてもよく、前記その他の成分、例えば、安定活性剤、接着剤等は当業者の知っている各種の要因から製剤に使用される。適切な薬用担体及び担体の選択に関わる要因の説明に関しては複数の文献を参照することができる(例えば、Allen L.V.Jr.et al.Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2Volumes),22nd Edition(2012),Pharmaceutical Press)。
【0085】
なお、本発明の化合物の投与計画は既知の要因、例えば、薬剤の薬力学的特性、投与頻度及び経路、投与対象の生物種、年齢、性別、健康状態、病状及び重量、症状の特徴及び程度、同時に実施する治療の種類、治療頻度、投与経路、患者の腎機能と肝機能及び期待効果によって変わる。一般には、所定の効果が得られるように、各有効成分の1日経口用量は約0.001mg/日ないし約10~5000mg/日であり、約0.01mg/日ないし約1000mg/日であることが好ましく、約0.1mg/日ないし約250mg/日であることが最も好ましい。定速注入投与の場合には、静脈内用量は約0.01mg/kg/分ないし約10mg/kg/分であることが最も好ましい。本発明の化合物は1日用量を一度に投与し、又は1日用量を2回、3回又は4回に分けて一日中に投与することができる。
【0086】
前記化合物は一般に所望の投与経路(例えば、経口の錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ剤)に応じて、且つ一般的な薬学的実験に基づいて適切に選ばれた薬物希釈剤、賦形剤、担体(本明細書では一括して医薬担体と称される)と混合物として投与される。
【0087】
投与用剤形(医薬組成物)は約1mgないし約2000mgの有効成分/用量ユニットを有している。このような医薬組成物には、組成物の総重量に対し、有効成分が一般に約0.1~95重量%の割合で存在する。
【0088】
経口投与用の典型的なカプセル剤は少なくとも1種の本発明の化合物(250mg)と、ラクトース(75mg)と、ステアリン酸マグネシウム(15mg)とを有する。当該混合物を60メッシュのスクリーンで選別した後、#1ゼラチンカプセルに詰める。
【0089】
典型的な注射用製剤の製造方法は以下のとおりである。無菌の状態で少なくとも1種の本発明の化合物(250mg)をボトルに入れ、無菌の状態で凍結乾燥させて密封する。使用時は、ボトルの内容物を生理食塩水2mLと混合して、注射用製剤を得る。
【0090】
本発明には、(単独で又は医薬担体との組み合わせとして)治療有効量の少なくとも1種の本発明の化合物を有効成分とする医薬組成物が含まれる。所望により、本発明の化合物は単独で使用し、又は本発明のその他化合物と組み合わせて使用し、又は1種以上のその他の治療薬(例えば、抗がん剤もしくはその他の薬学活性物質)と組み合わせて使用することができる。
【0091】
選択された投与経路に関係なく、当業者の知っている従来の方法で本発明の化合物(適切な水和物でもよい)及び/又は本発明の医薬組成物を薬用用量で配合する。
【0092】
本発明の医薬組成物における有効成分の実際の用量レベルを調整することで、特定の患者に期待される治療応答、組成及び投与方式を効果的に実現でき、且つ患者に毒性がない有効成分の量を得る。
【0093】
用量レベルは、使用される本発明の化合物、そのエステル、塩又はアミドの活性、投与経路、投与期間、使用される化合物の代謝速度、吸収の速度及び程度、治療の持続期間、使用される化合物と組み合わせて投与されるその他の薬物、化合物及び/又は物質、治療患者の年齢、性別、体重、状態、基本健康状態及び病歴等医学分野での多くの既知の要因により決定される。
【0094】
当業者である医師又は獣医は、有効量の医薬組成物を容易に決定及び処方することができる。例えば、所望の治療効果を達成するために、医師又は獣医は目標レベルより低い量の本発明の化合物を含む医薬組成物から、期待効果が出現するまで段階的に用量を増やすことができる。一般に、本発明の化合物の適切な1日用量は治療効果を達成するために最低限の化合物の用量である。当該有効用量は一般に上記の要因により決定される。一般に、患者に対する本発明の化合物の経口、静脈内、脳室内又は皮下用量の範囲は約0.01ないし約50mg/kg体重/日である。必要があれば、1日有効用量の活性化合物は2つ、3つ、4つ、5つ、6つ以上の分割用量で1日中に適切な間隔で投与することができ、所望により、単位剤形で投与することができる。本発明のいくつかの実施形態では、薬物は1日1回で投与される。
【0095】
本発明の化合物は単独で投与することができるが、薬物製剤(組成物)として化合物を投与することが好ましい。
【0096】
「薬品箱/製品包装」
ここで、上記の適応症を治療するために使用される薬品箱/製品包装を説明する。これらの薬品箱は輸送装置、薬品パック又はコンテナーボックスから構成されてもよく、コンテナーボックスはいくつかの部分に分割して、1種以上の容器(例えば、バイアル、試験管等)を収容することでき、各容器には前記方法に係る1種の成分が含まれる。適切な容器にはボトル、バイアル、注射器、試験管等を含む。容器は使用が許容されるガラス又はプラスチック等の材料から製造される。
【0097】
例えば、容器には1種以上の前記化合物が含まれてもよく、化合物は薬物の成分として存在してもよいし、本明細書に記載の他の成分との混合物として存在してもよい。容器に1つの無菌送出口が設けられてもよい(例えば、容器は、栓の部分を皮下注射器の針先で穿破できる点滴静脈注射用薬剤バッグ又はボトルである)。このような製品包装は化合物、及び本明細書に記載の使用方法の説明、ラベル又はマニュアルを備えてもよい。
【0098】
典型的な製品包装は1種以上の容器を含み、販売上及び化合物の使用上の要求事項を満たすように、各容器に1種以上の材料(例えば、試薬、濃縮された母液、及び/又は機器)が含まれる。これらの材料、例えば、バッファ、希釈剤、フィルタ、針先、注射器、輸送装置、バッグ、容器、ボトル及び/又は試験管は内容リスト及び/又は取扱い説明書とともに提供され、内部の包装にも取扱い説明書が提供される。説明として提供される内容は、漏れなく提供されなければならない。
【0099】
ラベルは容器に貼り付けられ、又は容器に関連付けられるように設置される。ラベルが容器に設置される場合は、文字、数字又はその他の特徴が容器に貼り付けられ、成形され、刻印されることである。また、ラベルは例えば、製品の説明として、複数種の容器を含むコンテナーボックス又は配送箱内に設置されてもよい。ラベルは内容物の特定の治療用途を示すものである。また、上記の方法で説明されるように、ラベルは内容物の使用方法を示すものであってもよい。
【0100】
本明細書で説明される全ての特徴(請求項、要約及び図面の全てを含む)、及び/又は任意の方法もしくは手順に関連する全てのステップは、一つの組み合わせで一部の特徴もしくはステップが互いに矛盾するものでなければ、いずれも任意の組み合わせとして存在することができる。
【0101】
本発明に係る上記の特徴、又は実施例に係る特徴は任意に組み合わせることができる。本明細書に記載の全ての特徴は適切な組成物の形態で提供されることが可能で、明細書に記載の各特徴は、同一の、均等な又は類似する目的を達成できる代替的な特徴に置き換えられてもよい。したがって、特段の説明がない限り、記載された特徴は均等な又は類似する特徴の一例に過ぎない。
【0102】
次に、特定の実施例と結び付けて、本発明をさらに説明する。なお、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではなく本発明の説明に過ぎない。次の実施例で具体的な条件を示さない実験方法は、通常の条件又はメーカーの推奨する条件で行われる。特段の説明がない限り、パーセンテージ、割合、比率、部数はいずれも重量に基づくものである。
【0103】
本発明では、重量体積百分率を示す時に使用される単位は当業者の知っている事項であり、例えば、100mLの溶液中の溶質の重量を意味する。特段の定義がない限り、本明細書で使用される専門用語及び科学用語はいずれも当業者が一般に理解している意味のものである。また、記載された内容に類似する又は均等な方法及び材料はいずれも本発明の方法に用いることができる。本明細書に記載の好ましい実施形態及び材料は例示的なものに過ぎない。
【0104】
本発明の好ましい例として、下記の化合物が提供され、ただしこれらに限定されない。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0105】
次に、特定の実施例と結び付けて、本発明をさらに説明する。なお、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではなくその説明に過ぎない。次の実施例で具体的な条件を示さない実験方法は、通常の条件又はメーカーの推奨する条件で行われる。特段の説明がない限り、パーセンテージ、部数はいずれも重量に基づくものである。
【0106】
「実施例」
合成手順が示されない中間体は、市販品である(例えば、シグマーアルドリッチ社やAlfa社の製品)。
【0107】
「一般的な手順」
本発明の式Iの化合物は下記の方法で製造することができ、ただし、当該方法の条件、例えば、反応物、溶媒、塩基、化合物の使用量、反応温度、反応時間等は下記の説明に限定されない。また、所望により、本明細書に記載の合成方法又は本分野の従来の様々な合成方法を組み合わせて本発明の化合物を製造することができ、このような組み合わせは本発明の属する分野の技術者が容易に想到し得るものである。
【0108】
下記の反応式Aは化合物A4の一般的な合成方法を示す。
【化5】
式中、X、R、R、R、R、m、oの定義は上記と同じである。pは1、2又は3であり、qは0、1、2、3又は4である。
ここで、ステップI及びステップIIで溶媒は水、メタノール、エタノール、THF、DMF、DMSO、ジクロロメタン、クロロホルムから選ばれた1種又はこれらの任意の組み合わせである。
【0109】
下記の反応式A1は化合物A4の別の一般的な合成方法を示す。
【化6】
式中、X、R、R、R、R、m、oの定義は上記と同じである。pは1、2又は3であり、qは0、1、2、3又は4である。
ここで、ステップI’及びステップII’で溶媒は水、メタノール、エタノール、THF、DMF、DMSO、ジクロロメタン、クロロホルムから選ばれた1種又はこれらの任意の組み合わせである。ステップII’で塩基はNaOH、NaHCO、KOH、KHCO、KCO、トリエチルアミンから選ばれた1種又はこれらの任意の組み合わせである。
【0110】
下記の反応式Bは化合物A3の一般的な合成方法を示す。
【化7】
式中、pは1、2又は3であり、qは0、1、2、3又は4である。
ここで、ステップI’’及びステップII’’で溶媒は水、メタノール、エタノール、THF、DMF、DMSO、ジクロロメタン、クロロホルムから選ばれた1種又はこれらの任意の組み合わせである。ステップI’’で反応温度は-100℃ないし室温であり、-78℃ないし室温であることが好ましい。
ステップII’で還元反応に使用される還元剤はH、NaBH、LiAlHであり、還元反応に使用される触媒はラネーニッケル、塩化第一鉄、塩化コバルトであり、ステップII’の反応温度は0℃ないし室温である。
【0111】
下記の反応式B1は化合物A3の一般的な合成方法を示す。
【化8】
式中、pは1、2又は3であり、qは0、1、2、3又は4である。
ここで、ステップI’’’及びステップII’’’で有機溶媒はメタノール、エタノール、THF、DMF、DMSO、ジクロロメタン、クロロホルムから選ばれた1種又はこれらの任意の組み合わせである。
ステップII’’’で相間移動触媒はフッ化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、環状クラウンエーテル(例えば、18クラウン6、15クラウン5、シクロデキストリン)である。
ここで、ステップIII’’’の還元反応に使用される触媒はラネーニッケル、塩化第一鉄、塩化コバルトであり、還元剤はH、NaBH、LiAlHである。
【0112】
市販試薬を使用する場合は精製が不要である。室温とは20~27℃である。H NMRスペクトルはブルカー社製の核磁気共鳴装置を用いて400MHz又は500MHzにて記録される。化学シフト値、即ちδ値は、百万分率で示す。次の略号はNMR信号の多重度を示し、sは一重線、br sは幅広線、dは二重線、tは三重線、mは多重線である。スピン結合定数はJ値で示し、単位はHzである。バックグラウンドに基づいてNMR及び質量分析の結果を補正する。クロマトグラフィーとは窒素加圧(フラッシュクロマトグラフィー)において100メッシュのシリカゲルを用いて行われるカラムクロマトグラフィーである。反応を監視するために用いるTLCとは、特定の移動相及びメルク社製のシリカゲルF254を固定相として行われるTLCである。
【0113】
LC/MS実験は下記の条件で行われる。
装置は、Thermo U3000、ALLtech ELSD、MSQ、UV検出器(ELSD及びMSDと併用)(溶出比4:1)である。カラムは、Waters X-Bridge C-18であり、3.5μm、4.6×50mmであり、カラム温度は30℃である。勾配(時間(分)/溶媒Aに対する溶媒Bのパーセンテージ)は0.00/5.0,0.70/95,1.40/95,1.41/5,1.50/5である。(溶媒Aは0.01%トリフルオロ酢酸の水溶液、溶媒Bは0.01%トリフルオロ酢酸のアセトニトリル溶液)。UV検出は214/254/280/300nmであり、DAD検出は200~400nmである。流量は4mL/分である。MSはESI,100~1500m/zである。
分取HPLCでは一般に酸を使用する(アセトニトリル及び水を使用し、各0.1%ギ酸を含む)。Thermo U3000 AFC-3000を使用し、カラムはGlobalsil C-18 12nmであり、250×20mm、10μmであり、又は均等な装置を使用する。20mL/分の流量で分離する。
【0114】
「中間体の合成」
化合物INT-1の調製:
【化9】
【0115】
0℃で、炭酸セシウム(241.0g,0.74mol)、5-ブロモ-2-ニトロピリジン(100.0g,0.49mol)を、2-クロロ-4-ヒドロキシピリジン(70.2g,0.54mol)を溶解したN,N-ジメチルホルムアミド(1.5L)溶液にこの順に加える。80℃で反応液を24時間攪拌する。反応液を濾過した後、濾液を減圧濃縮して溶媒の大半を除去し、酢酸エチル(2L)で希釈し、有機層は水(2L×2)、飽和食塩水(1L×2)を用いて洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。濾液を減圧濃縮して粗生成物を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=100:1~1:1)で精製して黄色の油状物INT-1aを得る(43.5g,収率:31.9%)。
H NMR(DMSO-d,400MHz)δ8.64(s,1H),8.47-8.40(m,2H),8.14-8.02(m,1H),7.39(s,1H),7.25(s,1H)。MS:252.0[M+H]+。
【0116】
塩化アンモニウム(91.0g,1.7mol)、亜鉛粉末(110.5g,1.7mol)を、INT-1a(43.5g,0.17mol)を溶解したテトラヒドロフラン(500mL)とメタノール(500mL)の混合溶液にこの順に加える。室温で反応液を一晩攪拌する。濾液を減圧濃縮して赤褐色の固体INT-1bを得る(37.3g,収率:97.5%)。MS:222.0[M+H]+。
【0117】
窒素雰囲気下で、化合物INT-1b(37.3g,0.17mol)、化合物INT-1c(42.0g,0.20mol)、炭酸セシウム(220.0g,0.67mol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(9.7g,8.4mmol)をN’N-ジメチルホルムアミド(500mL)と水(200mL)の混合溶液に加える。窒素で反応系を3回置換した後、90℃で24時間攪拌する。反応液を濾過した後、濾液を減圧濃縮して溶媒の大半を除去し、酢酸エチル(1L)で希釈し、有機層は水(1L×2)、飽和食塩水(1L×2)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。濾液を減圧濃縮して粗生成物を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=100:1~1:1)で精製してほぼ白色の固体INT-1を得る(23.5g,収率:52.2%)。
H NMR(DMSO-d,400MHz)δ8.33(d,J=5.7Hz,1H),8.25(s,1H),7.95(s,1H),7.82(d,J=2.7Hz,1H),7.30(dd,J=8.9,2.7Hz,1H),7.16(d,J=2.4Hz,1H),6.59(dd,J=5.7,2.4Hz,1H),6.55-6.46(m,1H),6.03(s,2H),3.86(s,3H)。MS:268.0[M+H]+。
【0118】
化合物INT-2の調製:
【化10】
【0119】
0℃で、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(2.0Mのテトラヒドロフラン溶液,4.68mL)を、5-ブロモ-6-メチル-ピリジン-2-アミン(500mg,2.67mmol)を溶解したジクロロメタン(10mL)溶液にゆっくりと滴加する。反応液を攪拌しながら徐々に室温に上げ、室温で1時間攪拌する。次に、ジ-tert-ブチルジカーボネート(700mg,3.21mmol)を溶解したテトラヒドロフラン(5mL)溶液を上記の反応液にゆっくりと滴加し、反応液を得、室温で引き続き1時間攪拌する。LC/MSで原料が完全に消費されたことを確認した後、反応液に水(30mL)、ジクロロメタン(20mL)を加えて層化させる。有機相は飽和食塩水(30mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。濾液を減圧濃縮して粗生成物を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=100:0~5:1)で精製して白色の固体INT-2aを得る(582mg,収率:75.8%)。
【0120】
窒素雰囲気下で、化合物INT-2a(582mg,2.03mmol)、化合物INT-2b(148mg,0.20mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(669mg,2.63mmol)、酢酸カリウム(398mg,4.05mmol)をジオキサン(12mL)溶液に加える。窒素で反応系を3回置換した後、90℃で16時間攪拌する。LC/MSで原料が完全に消費されたことを確認した後、反応液を減圧濃縮して粗生成物を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=100:0~3:1)で精製して白色の固体INT-2cを得る(330mg,収率:41.9%)。
H NMR(DMSO-d,500MHz)δ9.78(s,1H),7.85(d,J=8.2Hz,1H),7.60(d,J=8.2Hz,1H),2.50(s,3H),1.43(s,9H),1.27(s,12H)。
【0121】
0℃で、化合物INT-2c(330mg,0.85mmol)を溶解したテトラヒドロフラン(3mL)溶液に過酸化水素(30%w/w,482mg)を加える。反応液を攪拌しながら徐々に室温に上げ、室温で攪拌3時間する。次に、反応液に5%亜硫酸ナトリウム溶液(5mL)を加えて過剰の過酸化水素をクエンチし、酢酸エチル(30mL)、水(25mL)を加える。有機相は飽和食塩水(30mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。濾液を減圧濃縮して粗生成物を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=100:0~3:1)で精製して白色の固体INT-2dを得る(100mg,収率:52.5%)。
H NMR(DMSO-d,500MHz)δ9.30(s,1H),9.22(s,1H),7.36(d,J=8.5Hz,1H),7.06(d,J=8.5Hz,1H),2.21(s,3H),1.43(s,9H)。
【0122】
化合物INT-2d(100mg,0.45mmol)及び2,4-ジクロロピリジン(86mg,0.58mmol)を溶解したN,N-ジメチルホルムアミド(3mL)溶液に炭酸セシウム(290mg,0.89mmol)を加え、65℃で反応液を時間攪拌する。LC/MSで原料が完全に消費されたことを確認した後、酢酸エチル(20mL)及び水(20mL)を加え、水相を得て酢酸エチル(20mL)で抽出する。有機相は合わせて飽和食塩水(40mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。濾液を減圧濃縮して粗生成物を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=4:1)で精製して黄色の固体INT-2eを得る(60mg,収率:40%)。
【0123】
化合物INT-2e(60mg,0.18mmol)を溶解したジクロロメタン(2mL)溶液にトリフルオロ酢酸(0.5mL)を加え、室温で反応液を3時間攪拌する。LC/MSで原料が完全に消費されたことを確認する。反応液を減圧濃縮した後、酢酸エチル(10mL)及び飽和炭酸水素ナトリウム溶液(10mL)を加え、有機相は飽和食塩水(10mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。濾液を減圧濃縮して白色の固体INT-2fを得る(35mg,収率:83.1%)。
H NMR(DMSO-d,500MHz)δ8.24(d,J=5.8Hz,1H),7.31(d,J=8.4Hz,1H),6.93(s,1H),6.88(dd,J=5.8,1.9Hz,1H),6.43(d,J=8.4Hz,1H),2.06(s,3H)。
【0124】
化合物INT-2fから出発し、化合物INT-1の合成を参照して、白色の固体化合物INT-2を得る。
H NMR(DMSO-d,500MHz)δ8.38(d,J=6.0Hz,1H),7.87(s,1H),7.25(s,1H),7.21(d,J=8.7Hz,1H),6.93(d,J=2.3Hz,1H),6.64-6.57(m,1H),6.47(d,J=8.7Hz,1H),3.94(s,3H),2.28(s,3H)。MS:282.7[M+H]+。
【0125】
化合物INT-3の調製:
【化11】
-78℃で、リチウムジイソプロピルアミド(2Mのテトラヒドロフラン溶液,7.8mL)を、シクロヘキサンカルボン酸メチル(2.0g,14.1mmol)を溶解したテトラヒドロフラン(30mL)溶液に滴加する。引き続き-78℃で反応液を90分間攪拌した後、ブロモアセトニトリル(2.0g,16.9mmol)及びN’N’-ジメチルプロピオニル尿素(0.90g,7.0mmol)を溶解したテトラヒドロフラン(10mL)溶液をゆっくりと滴加する。反応液を得てゆっくりと室温に上げ、室温で一晩攪拌する。TLCで原料が完全に消費されたことを確認し、塩酸溶液(1M,20mL)で反応液を注意深くクエンチし、テトラヒドロフランの大半を減圧濃縮し、溶液を得て酢酸エチルで抽出する(20mL×3)。有機相は合わせて飽和食塩水で洗浄し(50mL×2)、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。濾液を減圧濃縮して粗生成物を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=15:1)で精製して黄色の油状物INT-3aを得る(1.10g,収率:43%)。
H NMR(CDCl,400MHz)δ3.67(s,3H),2.70(s,2H),1.96-1.92(m,2H),1.56-1.50(m,2H),1.47-1.27(m,6H)。
【0126】
窒素雰囲気下において、0℃で、水素化ホウ素ナトリウム(1.04g,27.6mmol)を複数回に分けて、化合物INT-3a(1.0g,5.52mmol)及び無水塩化コバルト(0.36g,2.76mmol)を溶解したテトラヒドロフラン(20mL)と水(10mL)の混合溶液に加える。室温で反応液を一晩攪拌した後、反応液に無水塩化コバルト(0.18g,1.38mmol)及び水素化ホウ素ナトリウム(0.50g,13.8mmol)を追加し、引き続き室温で反応液を一晩攪拌する。反応液を濾過した後、濾液を減圧濃縮し、粗生成物を得て酢酸エチル(100mL)で溶解し、飽和食塩水で洗浄し(100mL×2)、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。濾液を減圧濃縮して粗生成物を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=3:1)で精製して白色の固体INT-3を得る(230mg,収率:27%)。
H NMR(CDCl,400MHz)δ5.95(br s,1H),3.30(t,J=6.8Hz,2H),2.03(t,J=7.2Hz,2H),1.74-1.62(m,5H),1.46-1.44(m,2H),1.38-1.26(m,3H)。
【0127】
化合物INT-3の合成を参照して、化合物INT-4、INT-5、INT-6、INT-7、INT-8を得る。スペクトル情報は下表に示すとおりである。
【表3】
【0128】
化合物INT-9の調製:
【化12】
【0129】
化合物INT-9aから出発し、化合物INT-3aの合成を参照して、黄色の油状物INT-9bを得る。MS:210.3[M+H]+。
【0130】
室温で化合物INT-9b(1.60g,7.65mmol)を溶解した(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(3mL)溶液を一晩攪拌する。LC/MSで原料が完全に消費されたことを確認した後、氷水(20mL)を反応液にゆっくりと滴加して反応をクエンチし、次に飽和炭酸水素ナトリウム溶液でpH値を8~9に調節し、酢酸エチルで抽出する(50mL×3)。有機相は合わせて飽和食塩水で洗浄し(100mL×2)、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。濾液を減圧濃縮して粗生成物を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=5:1)で精製して無色の油状物INT-9cを得る(1.00g,収率:57%)。MS:232.3[M+H]+。
【0131】
化合物INT-9cから出発し、化合物INT-3の合成を参照して、淡黄色の固体INT-9を得る。
H NMR(CDCl,400MHz)δ5.64(br s,1H),3.34-3.16(m,2H),2.65-2.55(m,1H),2.50-2.29(m,1H),1.98-1.68(m,5H),1.43-1.33(m,1H)。
【0132】
化合物INT-9の合成を参照して、化合物INT-10、INT-11を得る。スペクトル情報は下表に示すとおりである。
【表4】
【0133】
化合物INT-12の調製:
【化13】
【0134】
化合物INT-12a(700mg,4.86mmol)、4-ジメチルピリジン(59mg,0.49mmol)及びトリエチルアミン(1.36mL,9.71mmol)を溶解したジクロロメタン溶液(10mL)にp-トルエンスルホニルクロリド(1.11g,5.83mmol)を加える。室温で反応液を一晩攪拌した後、TLCで原料が完全に消費されたことを確認する。反応液にジクロロメタン(20mL)及び水(40mL)を加え、有機層は飽和食塩水で洗浄し(40mL×2)、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。濾液を減圧濃縮して粗生成物を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=100:0~3:1)で精製して無色の油状物INT-12bを得る(1.0g,収率:69%)。
H NMR(500MHz,DMSO-d)δ7.78(d,J=8.2Hz,2H),7.49(d,J=8.2Hz,2H),4.15(s,2H),3.97(q,J=7.0Hz,2H),2.43(s,3H),1.17(br s,2H),1.07(t,J=7.0Hz,3H),0.99(br s,2H)。MS:299.4[M+H]+。
【0135】
化合物INT-2b(1.22g,4.1mmol)及びトリメチルシリルシアニド(1.22g,12.3mmol)を溶解したテトラヒドロフラン溶液にフッ化テトラブチルアンモニウム(THF中1M,12.3mL)を加える。室温で反応液を一晩攪拌し、TLCで原料が完全に消費されたことを確認する。反応液に酢酸エチル(50mL)及び水(50mL)を加え、有機層は飽和食塩水で洗浄し(50mL×2)、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。濾液を減圧濃縮して粗生成物を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=100:0~3:1)で精製して淡黄色の油状物INT-12cを得る(500mg,収率:79.8%)。
H NMR(500MHz,DMSO-d)δ4.10(q,J=7.1Hz,2H),2.79(s,2H),1.19(br s,2H),1.18(t,J=7.1Hz,3H),1.00(br s,2H)。
【0136】
化合物INT-12c(100mg,0.65mmol)を溶解したアンモニア・メタノール溶液(7M,3mL)にラネーニッケル(100mg,0.65mmol)を加える。水素雰囲気下(15psi)において、室温で反応液を48時間攪拌する。珪藻土で濾過してラネーニッケルを除去し、濾液を減圧濃縮して粗生成物を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:0~10:1)で精製して白色の固体INT-12を得る(34mg,収率:46.9%)。
H NMR(500MHz,DMSO-d)δ7.54(s,1H),3.29(t,J=7.1Hz,2H),2.08(t,J=7.1Hz,2H),0.78(br s,2H),0.67(br s,2H)。
【0137】
化合物INT-13の調製:
【化14】
【0138】
INT-13a(1.03g,6.06mmol)及びエチレングリコール(0.45g,7.27mmol)を溶解したトルエン(100mL)溶液にp-トルエンスルホン酸(57mg,0.30mmol)を加える。還流しながら反応液を一晩攪拌する。反応液に5%炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)及び酢酸エチル(100mL)を加える。水相は酢酸エチル(100mL)で抽出する。有機相は合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=10:1)により淡黄色の油状物INT-13bを得る(1.09g,収率:84%)。MS:215.4[M+H]+。
【0139】
化合物INT-3aの合成を参照して、化合物INT-13bから淡黄色の油状物INT-13cを得る。MS:254.3[M+H]+。
【0140】
化合物INT-12の合成を参照して、化合物INT-13cからほぼ白色の固体INT-13dを得る。
H NMR(400MHz,CDCl)δ6.23(br s,1H),3.94(s,4H),3.31-3.27(m,2H),2.40-2.25(m,1H),2.15-2.00(m,1H),1.99-1.93(m,1H),1.85-1.70(m,2H),1.69-1.64(m,1H),1.60-1.45(m,4H)。MS:212.4[M+H]+。
【0141】
0℃で、水素化ナトリウム(灯油中60%w/w,122mg,3.06mmol)を化合物INT-13d(430mg,2.04mmol)を溶解した乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液に加える。室温で混合物を30分間攪拌する。次にp-メトキシベンジルクロリド(383mg,2.45mmol)及び臭化テトラ-n-ブチルホスホニウム(69mg,0.20mmol)を前記反応系に加え、室温で反応液を一晩攪拌する。反応液に水(50mL)及び酢酸エチル(50mL)を加え、水相は酢酸エチル(50mL)で抽出する。有機相は合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=1:1)により淡黄色の油状物INT-13eを得る(555mg,収率:82%)。MS:332.2[M+H]+。
【0142】
室温で、INT-13e(555mg,1.68mmol)を溶解したアセトン(10mL)溶液にp-トルエンスルホン酸(32mg)を加え、室温で反応液を一晩攪拌する。反応液に5%炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)及び酢酸エチル(50mL)を加え、水相は酢酸エチル(50mL)で抽出する。有機相は合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=1:1)により無色の油状物INT-13fを得る(444mg,収率:92%)。MS:288.3[M+H]+。
【0143】
室温で、INT-13f(444mg,1.55mmol)を溶解したジクロロメタン(10mL)溶液中に(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(2.49g,15.5mmol)を加え、室温で反応液を一晩攪拌する。反応液に5%炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)及び酢酸エチル(50mL)を加え、水相は酢酸エチル(50mL)で抽出する。有機相は合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=2:1)により淡黄色の油状物INT-13gを得る(410mg,収率:86%)。MS:310.3[M+H]+。
【0144】
室温で、事前に硝酸二アンモニウムセリウム(3.64g,6.63mmol)を溶解していた水(3mL)溶液を、INT-13g(410mg,1.33mmol)を溶解したアセトニトリル(15mL)溶液に加え、室温で反応液を一晩攪拌する。反応液に5%炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)及び酢酸エチル(50mL)を加え、水相は酢酸エチル(50mL)で抽出する。有機相は合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=2:1~0:1)により淡黄色の固体INT-13を得る(132mg,収率:53%)。
H NMR(400MHz,CDCl)δ6.03(br s,1H),3.40-3.26(m,2H),2.25-2.04(m,4H),1.95-1.80(m,2H),1.80-1.60(m,4H)。MS:190.1[M+H]+。
【0145】
化合物INT-13の合成を参照して、化合物INT-14及びINT-15を得る。スペクトル情報は下表に示すとおりである。
【表5】
【0146】
実施例1:化合物1の製造
【化15】
【0147】
0℃で、事前にテトラヒドロフラン(2mL)を溶解していたトリホスゲン(95mg,0.32mmol)溶液を化合物INT-1(107mg,0.40mmol)とトリエチルアミン(222μL,1.60mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液にゆっくりと滴加する。反応液を攪拌しながら徐々に室温に上げ、引き続き室温で1時間攪拌する。LC/MSで原料が完全に消費されたことを確認した後、反応液を減圧濃縮して水(15mL)とジクロロメタンとメタノールの混合溶液(15mL,v/v=10/1)を加える。有機相は飽和食塩水で洗浄し(15mL×2)、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。濾液を減圧濃縮して化合物1aを得る。当該化合物は分離せず、直接次のステップの反応に使用する。
【0148】
0℃で、水素化ナトリウム(灯油中60%w/w,80mg,2.0mmol)を化合物INT-5(50mg,0.4mmol)のテトラヒドロフラン溶液に加える。反応液を攪拌しながら徐々に室温に上げ、室温で30分間攪拌し、次に、事前にテトラヒドロフラン(3mL)に溶解していた前記化合物1aの溶液を加え、反応液を引き続き室温で1時間攪拌する。LC/MSで化合物1aが完全に消費されたことを確認した後、水(0.5mL)を加えて過剰の水素化ナトリウムをクエンチする。反応液を減圧濃縮して溶媒の大半を除去し、次にジクロロメタン(15mL)及び水(15mL)を加える。有機相は飽和食塩水で洗浄し(15mL×2)、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。濾液を減圧濃縮して粗生成物を得、分取薄層クロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=20:1)で精製して白色の固体1を得る。
H NMR(DMSO-d,500MHz)δ11.09(s,1H),8.37(d,J=5.0Hz,1H),8.28(s,1H),8.26(s,1H),8.07(d,J=9.0Hz,1H),7.96(s,1H),7.78-7.72(m,1H),7.23(s,1H),6.70(d,J=5.0Hz,1H),3.84(s,3H),3.69(t,J=6.5Hz,2H),2.40-2.25(m,2H),2.18(t,J=6.5Hz,2H),2.05-1.85(m,4H)。MS:419.5[M+H]+。
【0149】
化合物1の合成を参照して、化合物2、3、4、5、6、7、8、9、10、24、25、26を得る。スペクトル情報は下表に示すとおりである。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
【表6-6】
【0150】
実施例2:化合物11の製造
【化16】
【0151】
化合物INT-1から出発し、化合物1の合成を参照して、白色の固体11aを得る。
H NMR(DMSO-d,500MHz)δ11.04(s,1H),8.37(d,J=5.7Hz,1H),8.27(d,J=3.0Hz,1H),8.25(s,1H),8.08(d,J=9.0Hz,1H),7.96(s,1H),7.76(dd,J=9.0,3.0Hz,1H),7.23(d,J=3.0Hz,1H),6.69(dd,J=5.7,3.0Hz,1H),3.84(s,3H),3.79(t,J=7.1Hz,4H),3.07-2.92(m,2H),2.03(t,J=7.1Hz,2H),1.65-1.53(m,4H),1.40(s,9H)。MS:548.3[M+H]+。
【0152】
化合物11a(350mg,0.64mmol)を溶解したジクロロメタン溶液(6mL)に塩酸(ジオキサン中4M,0.8mL)を加える。室温で反応液を4時間攪拌した後、LC/MSで原料が完全に消費されたことを確認する。反応液を減圧濃縮して白色の固体11を得る。
H NMR(500MHz,DMSO-d)δ11.05(s,1H),8.78(s,1H),8.56(d,J=6.0Hz,1H),8.46(s,1H),8.41(s,1H),8.14(d,J=9.0Hz,1H),7.91(d,J=9.0Hz,1H),7.75(s,1H),7.21-7.16(m,1H),3.92(s,3H),3.80(t,J=7.0Hz,2H),3.29-3.24(m,2H),3.04-3.00(m,2H),2.07(t,J=7.0Hz,2H),1.99-1.95(m,2H),1.83-1.77(m,2H)。MS:448.5[M+H]+。
【0153】
実施例3:化合物12の製造
【化17】
【0154】
化合物11(120mg,0.25mmol)及び無水酢酸(30.4mg,0.30mmol)を溶解したジクロロメタン溶液(5mL)にトリエチルアミン(50mg,0.50mmol)を加える。室温で反応液を4時間攪拌し、LC/MSで原料が完全に消費されたことを確認する。反応液にジクロロメタン(15mL)及び水(20mL)を加え、有機層は飽和食塩水で洗浄し(20mL×2)、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。濾液を減圧濃縮して粗生成物を得、分取薄層クロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)で精製して白色の固体12を得る(65mg,収率:53%)。
H NMR(500MHz,DMSO-d)δ11.04(s,1H),8.37(d,J=6.0Hz,1H),8.27(br s,1H),8.26(s,1H),8.07(d,J=9.0Hz,1H),7.95(s,1H),7.76(d,J=9.0Hz,1H),7.23(s,1H),6.69(d,J=6.0Hz,1H),4.16-4.11(m,1H),3.83(s,3H),3.82-3.71(m,3H),3.24-3.16(m,1H),2.90-2.82(m,1H),2.05(t,J=7.0Hz,2H),2.00(s,3H),1.72-1.68(m,1H),1.65-1.54(m,3H)。MS:490.4[M+H]+。
【0155】
実施例4:化合物13の製造
【化18】
【0156】
化合物11及びメタンスルホン酸無水物を使用し、化合物12の合成を参照して、白色の固体13を得る。
H NMR(500MHz,DMSO-d)δ11.04(s,1H),8.37(d,J=5.5Hz,1H),8.27(d,J=3.0Hz,1H),8.26(s,1H),8.08(d,J=9.0Hz,1H),7.96(s,1H),7.76(dd,J=9.0,3.0Hz,1H),7.23(d,J=2.0Hz,1H),6.69(dd,J=5.5,2.0Hz,1H),3.84(s,3H),3.80(t,J=7.1Hz,2H),3.49-3.47(m,2H),2.95-2.91(m,2H),2.89(s,3H),2.02(t,J=7.1Hz,2H),1.83-1.71(m,4H)。MS:526.3[M+H]+。
【0157】
実施例5:化合物14の製造
【化19】
【0158】
0℃で、事前にテトラヒドロフラン(1mL)に溶解していたトリホスゲン(23.5mg,0.79mmol)溶液を、化合物INT-8(20mg,0.15mmol)及びトリエチルアミン(21.4mg,0.21mmol)を溶解した無水テトラヒドロフラン(2mL)溶液にゆっくりと滴加する。攪拌しながら反応液を徐々に室温に上げ、室温で1時間攪拌し、次に2時間還流させる。反応液に酢酸エチル(15mL)及び水(15mL)を加え、有機層は飽和食塩水で洗浄し(20mL×2)、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。濾液を減圧濃縮して粗生成物の化合物14aを得る。
【0159】
事前にジクロロメタン(1mL)に溶解していた上記粗生成物の溶液を、化合物INT-2(30mg,0.106mmol)及びトリエチルアミン(21.4mg,0.211mmol)を溶解したジクロロメタン(3mL)溶液に加える。室温で反応液を16時間攪拌した後、LC/MSで生成物はメインピークでることを確認する。反応液にジクロロメタン(15mL)及び水(20mL)を加え、有機層は飽和食塩水で洗浄し(20mL×2)、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。濾液を減圧濃縮して粗生成物を得、分取薄層クロマトグラフィー(DCM:MeOH=20:1)で精製して白色の固体14を得る(19mg,収率:36.2%)。
H NMR(500MHz,DMSO-d)δ10.98(s,1H),8.40(d,J=6.0Hz,1H),8.31(s,1H),8.01(s,1H),7.93(d,J=8.8Hz,1H),7.68(d,J=8.8Hz,1H),7.25(br s,1H),6.68(br s,1H),3.87(s,3H),3.80(t,J=7.0Hz,2H),2.28(s,3H),2.17-2.07(m,2H),2.05(t,J=7.0Hz,2H),2.00-1.90(m,2H),1.85-1.75(m,4H)。MS:497.5[M+H]+。
【0160】
化合物14及びINT-2の合成を参照して、化合物15、16を得る。スペクトル情報は下表に示すとおりである。
【表7】
【0161】
実施例6:化合物17の製造
【化20】
【0162】
80℃で、化合物17a(500mg,3.2mmol)を溶解した塩化チオニル(1mL)溶液を3時間攪拌し、濃縮して酸塩化物を得、事前にメチルアミン(118mg,3.8mmol)及びトリエチルアミン(0.88mL,6.4mmol)を溶解していたジクロロメタン(8mL)溶液に加える。室温で反応液を2時間攪拌した後、減圧濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=0:100~50:100)により黄色の油状物17bを得る(250mg,収率:46%)。
【0163】
事前に化合物17b(218mg,1.28mmol)及び化合物17c(450mg,1.28mmol)を溶解していたN’N-ジメチルホルムアミド溶液(15mL)に炭酸セシウム(832mg,2.55mmol)を加え、90℃で反応液を16時間攪拌する。反応液に酢酸エチル(100mL)及び水(100mL)を加え、有機相を得て飽和食塩水(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=0:100~50:100)により白色の固体17dを得る(420mg,収率:68%)。
【0164】
75℃で、化合物17d(400mg,0.82mmol)を溶解した酢酸(2mL)と水(0.6mL)の混合溶液を2時間攪拌する。反応液を冷却して濾過し、濾液に酢酸エチル(40mL)を加え、20%水酸化ナトリウム水溶液でpHを8に調整し、有機相を得て飽和食塩水(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した後、白色の固体17eを得る(150mg,収率:75%)。MS:245.4[M+H]+。
【0165】
化合物14の合成を参照して、化合物17e及び化合物14aから化合物17を得る。
H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ11.06(s,1H),8.79(d,J=4.8Hz,1H),8.54(d,J=5.6Hz,1H),8.33(d,J=2.9Hz,1H),8.12(d,J=9.0Hz,1H),7.83(dd,J=9.0,2.9Hz,1H),7.42(d,J=2.6Hz,1H),7.20(dd,J=5.6,2.6Hz,1H),3.80(t,J=7.1Hz,2H),2.79(d,J=4.8Hz,3H),2.15-2.07(m,2H),2.05(t,J=7.1Hz,2H),2.00-1.88(m,2H),1.85-1.75(m,4H)。MS:460.2[M+H]+。
【0166】
実施例7:化合物18の製造
【化21】
【0167】
化合物INT-1a(150mg,0.60mmol)及びN,N-ジメチル尿素(105mg,1.20mmol)を溶解したジオキサン溶液(5mL)にdppf(33mg,0.06mmol)、Pd(dba)(27mg,0.03mmol)及び炭酸セシウム(388mg,1.20mmol)を加え、窒素雰囲気下において、95℃で反応液を16時間攪拌する。反応液を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=0:100~80:100)により黄色の固体18aを得る(110mg,収率:61%)。MS:304.4[M+H]+。
【0168】
水素雰囲気下(1atm)において、室温で化合物18a(88mg,0.29mmol)及び10%パラジウム炭素(10mg)を溶解したメタノール溶液(10mL)を16時間攪拌する。反応液を濾過した後、濾液減を圧濃縮して黄色の固体18bを得る(78mg,収率:98%)。MS:274.0[M+H]+。
【0169】
化合物14の合成を参照して、化合物18b及び化合物14aから化合物18を得る。
H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ11.05(s,1H),8.93(s,1H),8.27(d,J=2.5Hz,1H),8.14(d,J=5.7Hz,1H),8.10(d,J=9.0Hz,1H),7.76(dd,J=9.0,2.8Hz,1H),7.41(d,J=2.0Hz,1H),6.63(dd,J=5.7,2.3Hz,1H),3.81(t,J=7.1Hz,2H),2.90(s,6H),2.16-2.09(m,2H),2.05(t,J=7.1Hz,2H),1.98-1.90(m,2H),1.86-1.76(m,4H)。MS:489.5[M+H]+。
【0170】
化合物18の合成を参照して、化合物19を得る。スペクトル情報は下表に示すとおりである。
【表8】
【0171】
実施例8:化合物20の製造
【化22】
【0172】
化合物14の合成を参照して、化合物20a及び化合物14aから黄色の固体化合物20bを得る。MS:416.4[M+H]+。
【0173】
水素雰囲気下(1atm)において、室温で化合物20b(2.86g,6.9mmol)及び10%パラジウム炭素(300mg)を溶解したメタノール溶液(150mL)を16時間攪拌する。反応液を濾過した後、濾液を減圧濃縮して黄色の固体20cを得る(2.20g,収率:98%)。MS:326.4[M+H]+。
【0174】
化合物20c(2.2g,6.1mmol)及び2-クロロ-4-フルオロピリジン(841mg,6.4mmol)を溶解したN’N-ジメチルホルムアミド(15mL)に炭酸セシウム(2.58g,7.9mmol)を加え、室温で反応液を2時間攪拌する。反応液に酢酸エチル(150mL)及び水(150mL)を加え、有機相を得て飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=1:1)により黄色の固体20dを得る(2.1g,収率:80%)。MS:436.1[M+H]+。
【0175】
化合物INT-1の合成の最終のステップを参照して、化合物20d及び化合物20eから黄色の固体20を得る。
H NMR(500MHz,CDCl3)δ11.10(s,1H),8.60(d,J=5.5Hz,2H),8.21(d,J=2.0Hz,1H),8.18(d,J=8.5Hz,1H),7.73(s,1H),7.60(s,1H),7.50(dd,J=8.9,2.6Hz,1H),7.31(d,J=1.9Hz,1H),6.86(dd,J=5.4,2.1Hz,1H),3.90(t,J=7.1Hz,2H),2.65(s,3H),2.38-2.27(s,2H),2.05-2.00(m,4H),1.94-1.84(m,2H),1.76-1.71(m,2H)。MS:494.3[M+H]+。
【0176】
化合物20の合成を参照して、適切な試薬製品を使用して化合物21、22及び23を得る。スペクトル情報は下表に示すとおりである。
【表9-1】
【表9-2】
【0177】
「生物学的試験による実施例」
実施例1:CSF1Rキナーゼ活性試験
操作手順は以下のとおりである。被験化合物の濃度勾配を設定し、DMSOで被験化合物を使用濃度に希釈する。Echo 550サンプリング装置を用いて、384ウェルプレートの各ウェルに、対応する濃度の被験化合物を10nL加える。CSF1R希釈バッファは5mMのMgCl、1mMのMnCl、1mMのDTT、12.5nMのSEBからなる1×酵素バッファである。当該バッファでCSF1R濃度を0.02ng/μlに調整する。384ウェルプレートにCSF1Rを含むバッファ5μLを加え、30秒間1000g遠心分離した後、室温で10分間インキュベートし、TK-基質-ビオチン(2μM)及びATP(8μM)を含むバッファ(配合は上記と同じ)5μLを加え、30秒間1000g遠心分離した後、室温で40分間インキュベートして(濃度250nMのSa-XL665 5μL及びTK-抗体-クリプテート5μLを含む)停止溶液10μLを加え、60分間インキュベートした後、Envision 2104プレートリーダを用いて620nm(クリプテート)及び665nm(XL665)にて蛍光シグナルを検出して、比率を得る(665/620nm)。下式で各濃度における阻害率を算出する。
【0178】
【数1】
式中、
【数2】
は陽性対照群を意味し、
【数3】
は0.1%DMSOにおける計測値である。化合物濃度を横軸、阻害率を縦軸にして曲線をプロットし、Graphpad 5.0ソフトウェアを用いて曲線当てはめを行いIC50を算出する。
【0179】
c-Kit、PDGFRα、PDGFRβ、FLT-3キナーゼ活性試験:
移動度シフトアッセイ(Caliper mobility shift assay)を用いてc-Kit、PDGFRα、PDGFRβ及びFLT-3キナーゼ活性を測定する。c-Kitはユーロフィン社の製品(カタログ番号:14-559M)を、PDGFRαはBPSによる製品(カタログ番号:40260)を、PDGFRβはインビトロジェン社の製品(カタログ番号:PR4465B)を、FLT-3はCarnaによる製品(カタログ番号:08-154)をそれぞれ使用し、ペプチド基質P2はFLT-3キナーゼの基質としてGL Biochem社の製品(カタログ番号:112394)を使用し、ペプチド基質P22はc-Kit、PDGFRα、PDGFRβキナーゼの基質として、GL Biochem社の製品(カタログ番号:112393)を使用する。
【0180】
実験中のキナーゼ及び対応する基質(ATP及びペプチド基質P2又はP22)の最終濃度は下表に示すとおりである。
【表10】
【0181】
384ウェルプレートに5倍の反応最終濃度の化合物(10%DMSO)を5μL加える。10μLの2.5倍酵素溶液を加え、室温で10分間インキュベートし、さらに10μLの2.5倍基質(ATP及びペプチド基質P2又はP22)を加える。28℃で1時間インキュベートした後、停止溶液25μLを加えて反応を停止させる。Caliper EZリーダII(Caliper Life Sciences提供)で変換率データを読み取る。変換率を阻害率データに変える(%阻害率=(max-サンプル変換率)/max-min)×100)。式中、maxはDMSO対照における変換率を意味し、minは酵素活性対照のない時の変換率を意味する。化合物濃度を横軸に、阻害率を縦軸にして曲線をプロットし、XLFit excel add-in version 4.3.1ソフトウェアを用いて、曲線当てはめを行いIC50を算出する。
【0182】
CSF1R、c-Kit、PDGFRα、PDGFRβ及びFLT-3に対する実施例の化合物の活性の結果データは下表に示すとおりである。
【表11】
【0183】
実施例2:化合物によるFMSリン酸化阻害試験(ELISA試験)
DMSO溶液を用いて被験化合物の濃度勾配を設定し、不活性化血清(カタログ番号:1707125,BI)を10%含むRPMI1640(カタログ番号:01-100-1ACS,BI)を用いて被験化合物を1:500に希釈する。THP-1細胞を取得して、細胞密度を2×10個/mlに調整する。細胞懸濁液500μLと上記のように希釈した化合物を1:1で均一に混合した後、24ウェルプレート(カタログ番号:3524,costar)にプレーティングする。プレートをインキュベータに入れて4時間インキュベートし、インキュベート条件は、温度37℃、5%CO、湿度95%である。インキュベート完了後、不活性化血清を10%含むRPMI1640で組換えヒトMCSF(カタログ番号:216-MC,R&D Systems)を、最終濃度が100ng/mlになるよう希釈する。希釈された組換えヒトMCSFを24ウェルプレートの各ウェルに100μL加え、直ちに均一に混合した後、インキュベータに入れて4分間インキュベートし、インキュベート条件は、温度37℃、5%CO、湿度95%である。インキュベート完了後、リン酸化CSF1R検出キット(カタログ番号:DYC3268,R&D Systems)の推奨手順でタンパク質の抽出及びELISA実験を行う。マイクロプレートリーダでデータを読み取って被験化合物の阻害率を算出し、GraphPad Prismを用いて曲線をプロットして、被験化合物のEC50を算出する。
【0184】
【表12】
【0185】
実施例3:マウス結腸がんMC38細胞株によるC57BL/6マウス同種移植動物モデルにおける化合物の抗腫瘍効果
実験動物:C57BL/6マウスを用い、雌の6~8週齢(腫瘍細胞接種時のマウス週齢)であり、体重は18~22gである。上海霊暢生物科技有限公司から購入し、動物承認番号は2013001832351である。飼育環境基準はSPFである。
【0186】
一定量の薬物を秤量し、0.5%メチルセルロース水溶液を加えて0.24、0.8及び2.4mg/mLの無色な透明液体又は均一に分散する懸濁液を調製する。対応する投与量はいずれも2.4、8.0及び24mg/kgであり、投与体積は10mL/kgである。
【0187】
ウシ胎児血清を10%含むDMEM培養液にMC38細胞を培養する。指数増殖期のMC38細胞を収集し、PBSで再懸濁させて、C57BL/6マウスの皮下腫瘍接種に適切な濃度にする。
【0188】
実験マウスの右背部に1×10個のMC38細胞を皮下接種し、細胞をPBSに再懸濁させ(0.1ml/匹)、腫瘍の増殖状況を定期的に観察し、平均体積101mmになったら、腫瘍サイズ及びマウス体重に基づいてランダムに群分けして投与する。投与頻度は1日2回であり、2日1回に腫瘍サイズを測定する。
【0189】
T/C%は相対的腫瘍増殖率であり、特定の時刻における、対照群に対する治療群の相対的腫瘍体積のパーセンテージである。Tは特定の時刻における治療群の相対的腫瘍体積(RTV)であり、Cは同時刻における対照群の相対的腫瘍体積である。
【0190】
実験結果は全て平均腫瘍体積±SEM(平均標準誤差)で示す。群間統計分析により薬物の最適な治療濃度を決定する(一般には最終回の投与後)。独立したサンプルのT検定方法を用いて、相対的腫瘍体積及び腫瘍重量に関する治療群と対照群の有意差を判定する。データの解析にSPSS 18.0を用いる。p<0.05である場合に、有意差がある。
【0191】
被験化合物の薬効結果は下図に示すとおりである。
【表13】
【0192】
「薬物動態評価」
マウスを用い、LC/MS/MS法を用いて、実施例1の化合物、実施例2の化合物、実施例3の化合物、実施例4の化合物、実施例10の化合物、実施例14の化合物、実施例26の化合物の強制経口投与後の異なるにおける血漿中の薬物濃度を測定する。本発明の化合物のマウス体内における薬物動態を研究し、その薬物動態学的特性を評価する。
【0193】
実験動物としてCD-1マウスを用い、上海斯ライ克実験動物有限公司から購入する。
【0194】
一定量の薬物を秤量し、総体積の5%のDMSO又はDMAc、5%のPEG400、90%の生理食塩水を加えて、1.0mg/mLの無色な透明液体又は均一に分散する懸濁液を調製する。
【0195】
マウスを一晩絶食させた後、強制経口投与し、投与量は10mg/kgであり、投与体積は10mL/kgである。
【0196】
マウスへの強制経口投与前及び投与後からそれぞれ0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、6.0、8.0、24.0時間の間隔で0.1mLを採血し、K2-EDTA抗凝固採血管に入れて3500回転/分で10分間遠心分離し、血漿を分離して-20℃で保存する。
【0197】
薬物の異なる濃度での強制経口投与後におけるマウス血漿中の被験化合物の含有量を、次の手順で測定する。投与後の各時刻におけるマウス血漿20μLに、内部標準物質としてプロプラノロール、及びトルブタミド(各100ng/mL)のアセトニトリル溶液200μLを加え、5分間ボルテックス混合し、12分間遠心分離し(4000回転/分)、血漿サンプルから上清液5μLを取り分けてLC/MS/MS分析を行う。
【0198】
本発明の化合物の薬物動態パラメータは下表に示すとおりである。
【表14】
【0199】
上述したのが本発明のいくつかの好ましくは実施形態に過ぎず、当業者が本発明の趣旨を逸脱することなく、様々な改善及び修飾を行うことができ、このような改善や修飾も本発明の保護範囲に含まれる。
図1
図2