(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】バンドの製造方法
(51)【国際特許分類】
A44C 5/10 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
A44C5/10 511H
(21)【出願番号】P 2018224977
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山川 人大
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達也
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-225308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/00-5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンドの幅方向に配列された外駒及び中駒との、前記外駒及び前記中駒の、配列された方向に沿って延びた連結用の孔である連結孔に連結軸を挿入することで、前記外駒と前記中駒とを連結して前記バンドを製造するバンドの製造方法において、
前記外駒及び前記中駒の少なくとも一方の駒は、厚さ方向のおもて面又は裏面に、前記連結孔に向かって延びた押圧用の凹部を有し、
前記押圧用の凹部は、少なくとも一部が底壁を有し
、
前記連結用の孔は、前記駒の1つにつき、前記バンドの長さ方向に2つ形成され、前記押圧用の凹部は、前記駒の1つに形成された2つの前記連結用の孔を跨ぐように、前記長さ方向に延びて形成された溝であり、
前記バンドの幅方向に配列された前記外駒及び前記中駒の前記連結孔に前記連結軸を挿入し、
その後、前
記溝に、前記底壁を押圧して塑性変形させ
る、2つの前記連結用の孔を跨ぐ長さに形成された前記押圧部材を挿入し、
前記押圧部材により
、2つの前記連結用の孔に対応した前記底壁を押圧して塑性変形させることで、前記底壁の塑性変形した部分を、前記連結孔に挿入された前記連結軸に接触させるバンドの製造方法。
【請求項2】
前記押圧用の凹部は、前記底壁に近い側が狭くなる段付き部を有し、
前記押圧部材は、前記段付き部を含めて前記底壁を塑性変形させる請求項1に記載のバンドの製造方法。
【請求項3】
前記連結軸には、その軸方向の前記凹部に対応する位置に、他の部分より外径の細い小径部が形成されている請求項1又は2に記載のバンドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計を腕に装着するためのバンドとして、手首の周方向に沿って複数の駒体を連結したものがある。このようなバンドの駒体は、バンドの幅方向の両端に配置される外駒と、2つの外駒の間に配置される1つ以上の中駒とを連結して構成されている。
【0003】
外駒と中駒との連結構造としては、いわゆるCリング方式や連結軸の圧入方式が知られている。圧入方式は、外駒と中駒とにそれぞれ、バンドの幅方向に延びた細い連結孔が形成され、外駒と中駒とを並んだ配置とした上で各連結孔に共通の連結軸を圧入して、外駒と中駒とを連結した構造である。
【0004】
そして、圧入された連結軸が連結孔から外れるのを防止するために、駒の上下面(厚さ方向のおもて面及び裏面)にそれぞれ突起を形成し、連結孔に連結軸を挿入した後に、突起を押圧して突起を塑性変形させ、これにより、連結孔に塑性変形した肉を突出させて、連結軸との間での摩擦力を増大させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、駒は、通常は金属製の塊であるため、一部に突起を作る加工を行うのは大変である。すなわち、突起以外の駒の表面は、既に完成品として仕上げられた状態に形成されているにも拘わらず、その突起は仕上げられた面よりも外方に突出した部分として形成する必要がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、駒の表面に突起を形成することなく、駒を塑性変形させて連結軸を固定することができるバンドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、バンドの幅方向に配列された外駒及び中駒との、前記外駒及び前記中駒の、配列された方向に沿って延びた連結用の孔である連結孔に連結軸を挿入することで、前記外駒と前記中駒とを連結して前記バンドを製造するバンドの製造方法において、前記外駒及び前記中駒の少なくとも一方の駒は、厚さ方向のおもて面又は裏面に、前記連結孔に向かって延びた押圧用の凹部を有し、前記押圧用の凹部は、少なくとも一部が底壁を有し、前記バンドの幅方向に配列された前記外駒及び前記中駒の前記連結孔に前記連結軸を挿入し、その後、前記底壁を押圧して塑性変形させる押圧部材を前記押圧用の凹部に挿入し、前記押圧部材により、前記底壁を押圧して塑性変形させることで、前記底壁の塑性変形した部分を、前記連結孔に挿入された前記連結軸に接触させるバンドの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るバンドの製造方法によれば、駒の表面に突起を形成することなく、駒を塑性変形させて連結軸を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るバンドの製造方法の一実施形態により製造された腕時計用のバンドをおもて面側から見た斜視図である。
【
図2】
図1に示したバンドを裏面側から見た斜視図である。
【
図3】
図1に示したバンドの外駒を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示した外駒の、長さ方向Lに沿った鉛直面による断面を示す断面図である。
【
図5】押圧部材が孔に挿入される前の状態を示す断面図である。
【
図6】押圧部材が孔に挿入されて外駒を塑性変形させた状態を示す断面図である。
【
図7】押圧部材が外駒の外表面(裏面)を直接、押圧した場合の塑性変形の状態を示す模式図である。
【
図8】押圧部材が外駒の孔の底部を押圧した場合の塑性変形の状態を示す模式図である。
【
図9】押圧部材が外駒の孔の段付き部及び底部を押圧した場合の塑性変形の状態を示す模式図である。
【
図10】外駒に、2つの連結孔を跨ぐように長さ方向Lに延びて形成された1つの押圧用の溝が形成され、この溝を、2つの連結孔を跨ぐ長さに形成された押圧部材で押圧して塑性変形させる実施形態2を模式的に示す斜視図である。
【
図11】
図10に示した実施形態2の、幅方向Wに沿った鉛直面による断面図である。
【
図12】連結軸として、一部に、他の部分よりも外径の細い小径部が形成されたものを用いた、本発明に係るバンドの製造方法の一例の、塑性変形前を示す。
【
図13】連結軸として、一部に、他の部分よりも外径の細い小径部が形成されたものを用いた、本発明に係るバンドの製造方法の一例の、塑性変形後を示す。
【
図14】
図12,13に示した連結軸の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るバンドの製造方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0012】
<本発明の前提となるバンドの製造方法>
図1,2,3,4は、本発明の実施形態の前提となるバンドの製造方法を説明する図であり、図1は腕時計用のバンド1をおもて面側から見た斜視図、
図2は
図1に示したバンド1を裏面側から見た斜視図、
図3は
図1に示したバンド1の外駒11,14を示す斜視図、
図4は
図3に示した外駒11,14の、長さ方向Lに沿った鉛直面による断面を示す断面図である。
【0013】
バンド1は、
図1,2に示すように、バンド1の幅方向Wの両端に配置された2つの外駒11,14と、これら2つの外駒11,14の間に配置された例えば5つの中駒21,12,22,13,23と、これらの駒11,21,12,22,13,23,14を連結する連結軸50と、を備えている。外駒11,14、中駒21-23及び連結軸50は、同一材料の例えばチタンで形成されている。
【0014】
バンド1は、
図1,2に示すように、外駒11、中駒21、中駒12、中駒22、中駒13、中駒23、外駒14の順序で、これらの各駒11,21,12,22,13,23,14がバンド1の幅方向Wに並んで配置されている。
【0015】
また、
図1,2に示すように、外駒11、中駒12、中駒13及び外駒14は互いに長さ方向Lの位置が揃えて配置され、中駒21,中駒22及び中駒23は互いに長さ方向Lの位置が揃えて配置されている。
【0016】
そして、外駒11、中駒12、中駒13及び外駒14の長さ方向Lの位置と、中駒21,中駒22及び中駒23の長さ方向Lの位置とが、中駒21,22,23の長さの半分程度ずれて配置された状態で、これら外駒11、中駒21、中駒12、中駒22、中駒13、中駒23及び外駒14は、連結軸50によって連結されている。このように外駒11,14と中駒21,12,22,13,23とを連結して得られたバンド1同士を、連結軸50を用いて複数連結することによって、腕時計等のリストバンドとして構成される。
【0017】
外駒11には、
図3,4に示すように、バンド1の長さ方向Lに2つ並んで、それぞれ幅方向Wに延びた連結用の孔である連結孔11c,11cが形成されている。
【0018】
外駒11の各連結孔11c,11cには、これらの連結孔11c,11cの直径よりも僅かに大きい直径の連結軸50,50がそれぞれ圧入される。
【0019】
また、外駒11には、
図2,3,4に示すように、裏面11bの、2つの連結孔11c,11cのそれぞれに対応する長さ方向Lの位置に、各連結孔11cに向かって厚さ方向Tに延びた2つの押圧用の凹部である孔11e,11eが形成されている。
【0020】
この押圧用の孔11eは、
図4に示すように、底に近い側が細い径で形成された(狭く形成された)小径部11fを有し、小径部11fに切り替わる部分が段付き部11gとなっている。押圧用の孔11eは、連結孔11cまで貫通していないが、小径部11fは連結孔11cまで貫通していてもよい。
【0021】
なお、外駒14は、外駒11と同じ構成であるため、外駒14の説明は省略する。
【0022】
中駒21,12,22,13,23は、押圧用の孔11eが形成されていない以外は、基本的に外駒11,14と同じである。すなわち、各中駒21,12,22,13,23には、外駒11に形成された2つの連結孔11c,11cと同じ連結孔がそれぞれ2つずつ形成されていて、これらの連結孔に、連結軸50が挿入され、駒11,21,12,22,13,23,14が連結される。
【0023】
このとき、連結軸50は、外駒11、14に対して圧入されているが、中駒21,12,22,13,23に対しては、連結孔21c,12c,22c,13c,23cの径が連結軸50の径よりも大きいため緩く挿入された状態となっている。したがって、中駒21,12,22,13,23の連結孔21c,12c,22c,13c,23cには摩擦力が生じないため、各中駒21,12,22,13,23は連結軸50に対して滑らかに回転することができる。
【0024】
なお、中駒21,12,22,13,23のうち、中駒12,13は外駒11,14と同じ幅であり、中駒21,22,23は、外駒11,14よりも幅が狭く形成されている。
【0025】
次に、このように構成された外駒11,14、中駒21,12,22,13,23及び連結軸50を組み合わせての、バンド1の製造方法について説明する。
【0026】
図1,2に示すように、外駒11、中駒21、中駒12、中駒22、中駒13、中駒23及び外駒14が、バンド1の幅方向Wに沿ってこれらの順序で配置された状態で、これらの駒11,21,12,22,13,23,14の連結孔11c等に、連結軸50が挿入される。
【0027】
連結軸50は外駒11,14の連結孔11c,14cに対して圧入されているため、この状態でも、バンド1は連結された状態をある程度維持する。
【0028】
図5は押圧部材70が孔11eに挿入される前の状態を示す断面図、
図6は押圧部材70が孔11eに挿入されて外駒を塑性変形させた状態を示す断面図である。
【0029】
バンド1が連結軸50で連結された後、外駒11(14)の裏面11b(14b)に形成された押圧用の孔11e(14e)に、
図5に示すように、裏面11b(14b)の側から、孔11e(14e)の底壁(孔11e(14e)の底面と連結孔11c(14c)との間の壁部分)を押圧して塑性変形させる押圧部材70を挿入する。
【0030】
これにより、
図6に示すように、孔11e(14e)の底壁が押圧されて塑性変形し、底壁の一部は連結孔11c(14c)に突出する。連結孔11c(14c)には、連結軸50が圧入されているため、連結孔11c(14c)に突出した底壁の一部は連結軸50と強く接触し、これにより、連結軸50と外駒11(14)との間の摩擦力を、連結軸50が連結孔11c(14c)に単に圧入されている状態よりも高める。
【0031】
このように、前提となるバンドの製造方法によれば、外駒11,14の表面に突起を形成することなく、駒を塑性変形させて連結軸を固定することができる。
【0032】
また、上記のバンド1の製造方法は、外駒11,14の、押圧部材70で押圧する部分を、外駒11,14の外表面(本例では裏面11b,14b)より内側の部分(孔11e,14eの内部に形成された段付き部11g,14g)であるため、押圧部材70が押圧した部分の近傍部分が、外表面(裏面11b,14b)よりも外側に盛り上がることが無く、その盛り上がった部分を除去する後作業を行う必要が無い。
【0033】
図7は押圧部材70が外駒11(14)の外表面(裏面11b(14b))を直接、押圧した場合の塑性変形の状態を示す模式図、
図8は押圧部材70が外駒11(14)の孔11e(14e)の底部を押圧した場合の塑性変形の状態を示す模式図、
図9は押圧部材70が外駒11(14)の孔11e(14e)の段付き部11g(14g)及び底部を押圧した場合の塑性変形の状態を示す模式図である。
【0034】
例えば、
図7に示すように、外駒11(14)の裏面11b(14b)を直接、押圧部材70で押圧する製造方法では、押圧部材70によって押圧された部分が、凹むように塑性変形するとともに、押圧部材70で押圧された部分の近傍の部分が盛り上がる塑性変形が生じる。この盛り上がった部分は、外駒11(14)の裏面11b(14b)よりも外側に突出した凸部11h(14h)となる。
【0035】
ここで、バンド1の状態では、外駒11(14)の裏面11b(14b)は使用者の手首に直接的に接するため、凸部11h(14h)は手首の表面を押し、肌触りが悪くなる。
【0036】
一方
、上記のバンド1の製造方法で製造されたバンド1は、押圧部材70によって押圧される部分は、
図8に示すように、外表面(裏面11b(14b))から凹んだ孔11e(14e)の内部である。このため、押圧部材70で押圧された部分の近傍の部分が盛り上がって凸部11h(14h)となっても、その凸部11h(14h)は、孔11e(14e)の内部に盛り上がっているに過ぎず、凸部11h(14h)が外表面(裏面11b(14b)よりも突出することは無い。
【0037】
したがって、バンド1の状態で、外駒11(14)の裏面11b(14b)は使用者の手首に直接的に接しても、凸部11h(14h)が手首の表面を押すことは無く、肌触りが悪くなるのを防止することができる。
【0038】
また、上記のバンド1の製造方法は、押圧部材70により押圧する部分が孔11e(14e)の内部であるため、外表面(裏面11b(14b))を押圧する製造方法に比べて、塑性変形を生じさせる対象部位である連結孔11c(14c)までの距離を短縮することができる。この結果、押圧部材70による押圧力を、外表面(裏面11b(14b))を押圧する場合に比べて低減させることもできる。
【0039】
また
、上記のバンド1の製造方法は、外駒11(14)に形成された孔11e(14e)が、
図9に示すように、底に近い側が狭くなった段付き部11g(14g)を有することが好ましい。押圧部材70は、この段付き部11g(14g)を含めて孔11e(14e)の底壁を塑性変形させる。
【0040】
この結果、
図8に示した、底壁だけを押圧して塑性変形させる場合に比べて、孔11e(14e)の内部での塑性変形量を増大させ、これにより、連結孔11c(14c)に突出する外駒11(14)の肉の量又は幅を大きくして、連結孔11c(14c)に圧入されている連結軸50との摩擦力をさらに増大させることができる。
【0041】
なお、本実施形態1 の製造方法によって製造されたバンド1は、外駒11,14の裏面11b,14bに、孔11e,14eが形成されているとともに、その孔11e,14eに挿入された押圧部材70による孔11e,14eの底壁の押圧で、連結孔11c,14cにおける孔11e,14eの底壁側の部分が、連結軸50と接触した状態となっている。
【0042】
<実施形態2>
図10は、外駒11(14)に、2つの連結孔11c,11c(14c,14c)を跨ぐように長さ方向Lに延びて形成された1つの押圧用の溝11m(14m)が形成され、この溝11m(14m)を、2つの連結孔11c,11c(14c,14c)を跨ぐ長さに形成された押圧部材80で押圧して塑性変形させる実施形態2を模式的に示す斜視図、
図11は
図10に示した実施形態2の、幅方向Wに沿った鉛直面による断面図である。
【0043】
実施形
態の前提となるバンド1の製造方法は、外駒11(14)に形成された、押圧部材70が挿入される凹部が、2つの連結孔11c,11c(14c,14c)毎に各別に形成された孔11e,11eであるが、2つの孔11e,11e(14e,14e)に代えて、
図10に示すように、2つの連結孔11c,11c(14c,14c)を跨ぐように、長さ方向Lに延びて形成された1つの押圧用の凹部である溝11m(14m)を適用することもできる。
【0044】
このように、押圧用の溝11m(14m)が形成されている外駒11(14)に対して、2つの連結孔11c,11c(14c,14c)を跨ぐ長さに形成された押圧部材80を、
図10,11に示すように溝11m(14m)に挿入して、2つの連結孔11c,11c(14c,14c)に対応した底壁を、1つの押圧部材80による1回の押圧動作で同時並行的に塑性変形させる。
【0045】
したがって、2つの連結孔11c,11c(14c,14c)に対応した底壁を、1つの押圧部材70で2回の押圧動作で塑性変形させる又は2つの押圧部材70,70で1回の押圧動作で塑性変形させる上記前提となるバンド1の製造方法に比べて、押圧動作の回数を減らすことができるか又は押圧部材の数量を減らすことができる。また、連結孔11c,11c(14c,14c)に対応した底壁を全体的に変形させるため、孔11eを設けた場合に比べて押圧時の位置精度を緩和することができる。
【0046】
なお、溝11m(14m)は、孔11e(14e)における段付き部11g(14g)と同様に、底壁に近い側が、幅方向Wにおいて狭い幅となった幅狭部11n(14n)(小径部11fに相当)との段差である段付き部11p(14p)を有しているものが好ましい。
【0047】
このように、段付き部11p(14p)が形成された外駒11(14)は、段付き部11g(14g)が形成された外駒11(14)と同様に、押圧部材80が段付き部11p(14p)を含めて溝11m(14m)の底壁を塑性変形させる。
【0048】
この結果、段付き部11p(14p)が無い溝11m(14m)だけで形成されて、底壁だけを押圧して塑性変形させる場合に比べて、溝11m(14m)の内部での塑性変形量を増大させ、これにより、連結孔11c(14c)に突出する外駒11(14)の肉の量又は幅を大きくして、連結孔11c(14c)に圧入されている連結軸50との摩擦力をさらに増大させることができる。
【0049】
なお、溝11m(14m)は、段付き部11p(14p)を有しているものに限定されず、段付き部11p(14p)を有していなくてもよい。
【0050】
また、実施形態2における押圧用の凹部である溝11m(14m)は、外駒11(14)に形成する例を示したが、この形態に限らず、中駒21,12,22,13,23に凹部を形成してもよい。また、凹部を形成する場所も、駒の目立たない裏面(例えば、外駒11の場合は裏面11b)に設けるのが好ましいが、おもて面(例えば、外駒11の場合はおもて面11a)に設けてもよい。
【0051】
図12,13は、連結軸50として、一部に、他の部分51よりも外径の細い小径部52が形成されたものを用いた、本発明に係るバンドの製造方法の一例を示し、
図12は塑性変形前、
図13は塑性変形後をそれぞれ示す。また、
図14は
図12,13に示した連結軸50の変形例を示す側面図である。
【0052】
上述した各実施形態のバンドの製造方法では、連結軸50を、連結軸50の軸方向(幅方向Wと一致)の全長に亘って、均一な太さのものとして説明したが、連結軸50は、太さが均一でないものであってもよい。
【0053】
例えば
図12に示すように、連結軸50として、その軸方向の一部に、他の部分51より外径の細い小径部52が形成されているものを用いることができる。この連結軸50は、小径部52が、凹部である孔11eに対応する軸方向の位置に形成されている。
【0054】
そして、このように小径部52が形成された連結軸50で駒を連結すると、
図13に示すように、孔11eの底壁が塑性変形して小径部52aに向けて突出した部分11sが、小径部52の外周面52aに接し、突出した部分11sと外周面52aとの摩擦力により、連結軸50を外駒11に固定することができる。
【0055】
また、突出した部分11sは、小径部52の外周面52aに接するまで、連結軸50の半径方向の中心方向に突出して、他の部分51との境界となる段差52bに接している。これにより、連結軸50が軸方向に変位しようとしても、突出した部分11sが軸方向に段差52bに当たる。
【0056】
したがって、突出した部分11sと小径部52の外周面52aとの摩擦力に加えて、突出した部分11sと段差52bとの突き当たりにより、連結軸50を外駒11に、強固に固定することができる。
【0057】
図12,13に示した連結軸50は、小径部52が、軸方向の位置に拘わらず外径が一定である形態のものであるが、例えば
図14に示すように、小径部52は、軸方向の位置に応じて外径が変化するものであってもよい。すなわち、
図14に示した連結軸50は、小径部52が、その外周面52aが、連結軸50の外部に存在する中心から距離Rの円弧によって形成されたものであってもよい。
【0058】
このような小径部52を有する連結軸50であっても、
図12,13に示した連結軸50と同様に、連結軸50を外駒11に強固に固定することができる。
【0059】
各実施形態のバンドの製造方法では、腕時計のバンドを例示したが、本発明に係るバンドの製造方法は、腕時計のバンドの製造方法に限定されるものではなく、ブレスレット等その他装飾品のバンドの製造方法にも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 バンド
11,14 外駒
11b 裏面
11c 連結孔
11e 押圧用の孔
11f 小径部
11g 段付き部
50 連結軸
70 押圧部材
L 長さ方向
T 厚さ方向
W 幅方向