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特許7091042ブラシレス直流モータ及びこれを備える電動パワーステアリングシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】ブラシレス直流モータ及びこれを備える電動パワーステアリングシステム
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/50 20060101AFI20220620BHJP
   H02K 16/04 20060101ALI20220620BHJP
   H02K 1/14 20060101ALI20220620BHJP
   H02P 6/00 20160101ALI20220620BHJP
【FI】
H02K3/50 Z
H02K16/04
H02K1/14 Z
H02P6/00
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017177447
(22)【出願日】2017-09-15
(65)【公開番号】P2018078786
(43)【公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-09-14
(31)【優先権主張番号】201610831291.8
(32)【優先日】2016-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518263944
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ニン スン
(72)【発明者】
【氏名】ルイ フェン チン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ ホン ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ロン フイ ニウ
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-111921(JP,A)
【文献】特開2015-216714(JP,A)
【文献】特開2005-237068(JP,A)
【文献】国際公開第2014/016927(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/50
H02K 16/04
H02K 21/16
H02K 1/14
H02P 6/00
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部ケーシングと、
前記外部ケーシング内に取り付けられる第1のサブモータ及び第2のサブモータと、
端子ハブと、
前記端子ハブに配設される第1の導電端子組及び第2の導電端子組と、
を備えるブラシレス直流モータであって、
前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータは、独立して付勢されるそれぞれのステータと、共通のロータとを備え、前記第1の導電端子組は、前記第1のサブモータの前記ステータのための電源分岐回路として構成され、前記第2の導電端子組は、前記第2のサブモータの前記ステータのための電源分岐回路として構成され、前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータは、選択的に、共同して単一のモータとして作動して、定格パワーを出力するか、又は独立して作動するように構成され、前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータの各々はU相歯、V相歯、W相歯を有し、前記第1の導電端子組は前記第1のサブモータの前記U相歯、V相歯、W相歯を外部電源に接続し、前記第2の導電端子組は前記第2のサブモータの前記U相歯、V相歯、W相歯を外部電源に接続し、サブモータの各々は巻線コイルを備え、各導電端子組は第1の導電素子、第2の導電素子、第3の導電素子、第4の導電素子を含み、第1の導電素子は少なくとも1つの導電タブを備え、前記各導電タブは前記サブモータの1つの対応する巻線コイル又はサブモータの1つの接続端部に電気的に接続され、前記第2の導電素子は少なくとも1つの導電タブを含み、前記第3の導電素子は少なくとも1つの導電タブを含み、前記第4の導電素子は少なくとも1つの導電タブを含み、複数の収容部が前記端子ハブの周方向側に沿って配設され、各収容部は開口部及び開口部に隣接する絶縁部を含み、前記第1の導電素子の前記導電タブ、前記第2の導電素子の前記導電タブ、前記第3の導電素子の前記導電タブ、前記第4の導電素子の前記導電タブはそれぞれ前記端子ハブの前記周方向側の開口部に収容され、前記端子ハブの前記周方向側の前記絶縁部は1つの前記巻線コイルの1つの接続端部を巻くことに用いられ、前記巻線コイルの前記接続端部は前記絶縁部をバイパスして対応する前記導電タブに電気的に接続され、前記絶縁部をバイパスする前記接続端部は同じプレーン上にある、
ことを特徴とするブラシレス直流モータ。
【請求項2】
前記第1のサブモータの前記ステータ及び前記第2のサブモータの前記ステータは、同数のステータ歯を備え、前記第1のサブモータの前記ステータ歯及び前記第2のサブモータの前記ステータ歯は、前記ブラシレス直流モータの直径に関して対称に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のブラシレス直流モータ。
【請求項3】
前記第1の導電端子組及び前記第2の導電端子組は、周方向に沿って重ならないことを特徴とする、請求項1又は2に記載のブラシレス直流モータ。
【請求項4】
前記第1の導電端子組及び前記第2の導電端子組は、対称に配置されることを特徴とする、請求項3に記載のブラシレス直流モータ。
【請求項5】
前記端子ハブは、前記第1及び第2の導電端子組の周りにオーバーモールドすることにより形成されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のブラシレス直流モータ。
【請求項6】
前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータは、単一の制御装置によって制御されることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載のブラシレス直流モータ。
【請求項7】
前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータは、2つの制御装置によってそれぞれ制御され、前記2つのサブモータの電流は、位相差を有し、前記第2のサブモータのトルクのn次高調波が、前記第1のサブモータのトルクのn次高調波に対して、(2k+1)/2周期ずれているようになっており、ここで、
であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載のブラシレス直流モータ。
【請求項8】
ステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールと固定連結されるステアリングコラムと、
前記ステアリングコラムと固定連結されるステアリングギヤと、
前記ステアリングギヤと駆動連結される、請求項1乃至のいずれか一項に記載のモータと、
を備えることを特徴とする電動パワーステアリングシステム。
【請求項9】
さらに複数のボビンを含み、各ボビンは、上部ボビン体及び下部ボビン体を備え、前記上部ボビン体及び下部ボビン体は、それぞれ、前記ステータ歯の両端に取り付けられ、位置決め部及びロック部が、1つの対応する前記下部ボビン本体から離れた前記上部ボビン本体の端部に形成され、複数のラッチ部が端子ハブの1つの側に配設され、各上部ボビン本体の前記ロック部は、前記複数の拉致部の対応する対応する1つと係合されて端子ハブをステータの一端に保持する、請求項1に記載のブラシレス直流モータ。
【請求項10】
複数の固定部が端子ハブの1つの側に配設され、前記複数の導電素子はさらに1つの電源端子を含み、前記電源端子のそれぞれは前記複数の固定部の対応する1つを貫通し、これに固定される、請求項1に記載のブラシレス直流モータ。
【請求項11】
さらにアダプタを含み、前記アダプタは複数の端部及び複数の挿入タブを含み、各端部は前記複数の挿入タブの対応する1つに電気的に接続される、請求項1に記載のブラシレス直流モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0002] 本発明は、モータの分野に関し、特に、ブラシレス直流モータ及びブラシレス直流モータを用いる電動パワーステアリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[0003] ブラシレス直流(BLDC)モータを、自動車のステアリングシステムなどの電動パワーステアリングシステムに適用することによって、運転者は、より小さい力でより大きいトルクを発生させることができ、これにより、操作者の労力を大きく減じる。しかしながら、従来のブラシレス直流モータは、一般に、巻線を有するステータと、永久磁石を有するロータと、電力をステータに供給するための制御装置とを含む。ステータは、通常、周りに巻線が巻き付けられたステータコアを含む。巻線は、m相巻線を含み、各相巻線は、複数の並列の分岐回路を有する。巻線の分岐回路の1つが破損すると、破損巻線と他の相の巻線との間に不平衡が生じることにより、モータのトルク及びモータの振動が、大きく変動する。特に、ステアリングホイールの電動パワーステアリングシステムのBLDCモータが故障したとき、運転者がステアリングホイールを回転させると、巻線コイルの短絡を引き起こし、短絡電流を発生させる場合があり、その結果、制動トルクが発生し、これにより、ステアリングホイールの回転を妨げる。したがって、従来のBLDCモータは、重大な安全性の問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0004] したがって、安定したトルク出力が可能なモータが望まれる。
【0004】
[0005] また、このモータを用いる電動パワーステアリングシステムが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0006] ブラシレス直流モータは、外部ケーシングと、前記外部ケーシング内に取り付けられる第1のサブモータ及び第2のサブモータとを備える。前記ブラシレス直流モータは、更に、端子ハブと、前記端子ハブに配設される第1の導電端子組及び第2の導電端子組とを備える。前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータは、独立して付勢されるそれぞれのステータと、共通のロータとを備える。前記第1の導電端子組は、前記第1のサブモータの前記ステータのための電源分岐回路として構成され、前記第2の導電端子組は、前記第2のサブモータの前記ステータのための電源分岐回路として構成される。前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータは、選択的に、共同して単一のモータとして作動して、定格電力を出力するか、又は独立して作動するように構成することができる。
【0006】
[0007] 前記第1のサブモータの前記ステータ及び前記第2のサブモータの前記ステータは、同数のステータ歯を備え、前記第1のサブモータの前記ステータ歯及び前記第2のサブモータの前記ステータ歯は、前記ブラシレス直流モータの直径に関して対称に配置されることが好ましい。
【0007】
[0008] 前記第1の導電端子組及び前記第2の導電端子組は、周方向に沿って重ならないことが好ましい。
【0008】
[0009] 前記第1の導電端子組及び前記第2の導電端子組は、対称に配置されることが好ましい。
【0009】
[0010] 前記ブラシレス直流モータは、二相モータであり、その前記ロータの極性の数Np及び前記ステータのスロットの数Nsは、両方とも、偶数であり、下式を満たすことが好ましい。
【数1】
【0010】
[0011] 前記ブラシレス直流モータは、三相モータであり、その前記ロータの極性の数Np及び前記ステータのスロットの数Nsは、下式を満たすことが好ましい。
【数2】
ここで、Npは偶数であり、
である。
【0011】
[0012] 前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータの各々は、6つのステータ歯を含み、前記第1のサブモータの前記ステータ歯は、順次連結して、実質的に半円形状になり、前記第2のサブモータの前記ステータ歯は、順次連結して、実質的に半円形状になり、前記第1のサブモータの前記ステータ歯及び前記第2のサブモータの前記ステータ歯は、対称に配置されることが好ましい。
【0012】
[0013] 前記端子ハブ及び前記2つの導電端子組は、射出成形により、一体に形成されることが好ましい。
【0013】
[0014] 前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータの各々は、U相歯、V相歯及びW相歯を含み、前記第1の導電端子組は、前記第1のサブモータの前記U相歯、V相歯及びW相歯を外部電源に接続し、前記第2の導電端子組は、前記第2のサブモータの前記U相歯、V相歯及びW相歯を外部電源に接続することが好ましい。
【0014】
[0015] 各導電端子組は、前記モータの軸方向に沿って順次配置され、互いに絶縁される複数の導電素子を含むことが好ましい。
【0015】
[0016] 各導電素子は、少なくとも1つの導電タブを備え、複数の収容部が、前記端子ハブの周方向側に配設され、各導電タブは、前記収容部の対応する1つに収容され、各サブモータは、巻線コイルを備え、前記巻線コイルの各接続端部は、1つの対応する導電タブに電気的に接続されることが好ましい。
【0016】
[0017] 前記端子ハブは、複数の絶縁部を備え、隣接する接続端部が、互いに絶縁されるようになっていることが好ましい。
【0017】
[0018] 前記ブラシレス直流モータは、更に、複数のボビンを備え、各ボビンは、上部ボビン及び下部ボビンを備え、前記上部ボビン及び前記下部ボビンは、それぞれ、前記ステータ歯の両端に取り付けられることが好ましい。
【0018】
[0019] 前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータは、単一の制御装置によって制御されることが好ましい。
【0019】
[0020] 前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータは、2つの制御装置によってそれぞれ制御され、前記2つのサブモータの電流は、位相差を有し、前記第2のサブモータのトルクのn次高調波が、前記第1のサブモータのトルクのn次高調波に対して、(2k+1)/2周期ずれているようになっており、ここで、
であることが好ましい。
【0020】
[0021] 電動パワーステアリングシステムは、ステアリングホイールと、前記ステアリングホイールと固定連結されるステアリングコラムと、前記ステアリングコラムと固定連結されるステアリングギヤと、前記ステアリングギヤと駆動連結されるモータとを備える。前記モータは、上記のブラシレス直流モータである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態によるBLDCモータの斜視図である。
図2図1のBLDCモータの分解図である。
図3図1のBLDCモータの部分分解図である。
図4図1のBLDCモータのロータ、ステータ及び端子ハブの部分分解図である。
図5図4のBLDCモータのロータ、ステータ及び端子ハブを別の側面から見た部分分解図である。
図6図5の端子ハブの組立図である。
図7図6の端子ハブの分解図である。
図8図7の端子ハブの更に別の分解図である。
図9図4のロータ、ステータ及び端子ハブの更に別の分解図である。
図10図1のステータの上面図である。
図11A図1のBLDCモータの第1のサブモータの巻線接続回路を示す図である。
図11B図1のBLDCモータの第2のサブモータの巻線接続回路を示す図である。
図12A図1のBLDCモータの制御装置の制御を示す図である。
図12B図1のBLDCモータの制御装置の制御を示す図である。
図13図1のBLDCモータの短絡トルク曲線の図である。
図14】BLDCモータを用いる電動パワーステアリングシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0036] 以下、添付図面及び以下の実施形態を参照して、本発明を更に説明する。
【0023】
[0037] 以下、図面を参照して、本発明の実施形態について、更に詳細に説明する。各図全体を通して、例示の目的で、同様の構造又は機能の要素は、概して、同じ符号で表記される。各図は、限定的なものではなく、例示的なものであることに留意されたい。各図は、縮尺通りではなく、説明された実施形態の全ての態様を示すわけではなく、本開示の範囲を限定するものではない。特に明記していない限り、本開示で使用する全ての技術用語及び科学用語は、当業者により一般に理解される普通の意味を有する。
【0024】
[0038] ある部品が他の部品に「固定される(fixed)」と記載されている場合、ある部品を他の部品に直接固定することができるか、又は、中間部品が存在し得ることに留意されたい。ある部品が他の部品に「接続(連結)される(connected)」と記載されている場合、ある部品を他の部品に直接接続(連結)することができるか、又は、中間部品が存在し得る。ある部品が他の部品に「配設される(disposed)」と記載されている場合、ある部品を他の部品に直接配設することができるか、又は、中間部品が存在し得る。
【0025】
[0039] 図1及び図2を参照すると、本発明の一実施形態によるブラシレス直流(BLDC)モータ100は、外部ケーシング10と、外部ケーシング10内に取り付けられる第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30と、第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30によって共用される単一のロータ50とを含む。BLDCモータ100は、更に、外部ケーシング10内に取り付けられ、電力を第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30にそれぞれ供給するステータ60と、2つの導電端子組70と、導電端子組70を覆う端子ハブ80とを含む。この実施形態では、2つの導電端子組70は、電力を第1のサブモータ20のステータ60に供給するための第1の導電端子組と、電力を第2のサブモータ30のステータ60に供給するための第2の導電端子組とを含む。
【0026】
[0040] 外部ケーシング10は、ステータ60を取り付けるためのハウジング12と、ロータ50を支持するためのカバー本体13とを含む。カバー本体13は、ロータ50を支持するための少なくとも1つの軸受(図示せず)が収容された軸受座131を含む。カバー本体13は、ハウジング12の一端を覆う。
【0027】
[0041] 図2図4及び図5を参照すると、第1の実施形態の第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30の各々は、三相モータである。2つのサブモータのステータ60は、同数のステータ歯62を有する。この実施形態では、各サブモータのステータ60のステータ歯の数は、6である。第1のサブモータ20のステータ歯62及び第2のサブモータ30のステータ歯62は、BLDCモータ100の直径に関して対称に配置される。第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30は、各々、ステータ歯62の周りに取り付けられる複数のボビン63と、ボビン63の周りに巻き付けられる巻線コイル65とを含む。
【0028】
[0042] ステータ歯62及び巻線コイル65は、それぞれ、第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30のU相歯、V相歯及びW相歯と、それぞれのコイルとを形成する。第1のサブモータ20は、6つのステータ歯62を含み、U相歯の数、V相歯の数及びW相歯の数は、各々、2である。第2のサブモータ30は、6つのステータ歯62を含み、U相歯の数、V相歯の数及びW相歯の数は、各々、2である。BLDCモータのステータ60のスロットの数は、12である。第1の導電端子組は、第1のサブモータ20のU相歯、V相歯及びW相歯を外部電源に接続し、第2の導電端子組は、第2のサブモータ30のU相歯、V相歯及びW相歯を外部電源に接続する。
【0029】
[0043] 図3図4及び図9を参照すると、各ボビン63は、ステータ歯62の対応する1つの周りに取り付けられる。各ボビン63は、対応するステータ歯62の両端の周りにそれぞれ取り付けられる上部ボビン本体631及び下部ボビン本体635を含む。この実施形態では、ステータ歯62は、複数のケイ素鋼板などの磁気伝導性材料を順次積層することによって形成される。位置決め部632及びロック部633が、1つの対応する下部ボビン本体635から離れた上部ボビン本体631の端部に形成される。この実施形態では、位置決め部632は、1つの対応する巻線コイル65を貫通させるための2つの貫通穴(符号表記せず)を形成する。複数のラッチ部87(図5参照)が、端子ハブ80の1つの側に配設される。各上部ボビン本体631のロック部633は、1つの対応するラッチ部87と係合されて、端子ハブ80をステータ60の一端に保持する。
【0030】
[0044] ラッチ部87とロック部633との間の係合は、フックとロックスロットとの間の係合として実現することができることを理解されたい。
【0031】
[0045] 各巻線コイル65は、ボビン63の外側の周りに巻き付けられる。巻線コイル65の2つの接続端部は、それぞれ、貫通穴を貫通して、2つの接続端部の短絡を回避する。
【0032】
[0046] 図9を参照すると、各ステータ歯62は、互いに連結されて、ステータ歯62が、中空円筒体に配置されるようになっている。ロータ50は、ステータ60内に回転可能に配設される。絶縁層66が、2つの隣接するステータ歯62の対向する部分に配設されて、2つの隣接するステータ歯62の巻線コイル65の短絡を回避する。
【0033】
[0047] また、図9及び図10を参照すると、この実施形態では、第1のサブモータ20のステータ歯62は、各々が周方向に沿って互いに隣接して配置されて、半円形状になり、第2のサブモータ30のステータ歯62は、各々が周方向に沿って互いに隣接して配置されて、半円形状になる。第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30は、BLDCモータ100の2つの対称形の半体を形成する。
【0034】
[0048] 図6図8を参照すると、各導電端子組70は、BLDCモータ100の軸方向に沿って順次配置され、互いに絶縁される複数の導電素子を含む。特に、各導電端子組70は、第1の導電素子71、第2の導電素子73、第3の導電素子75及び第4の導電素子76を含む。第1の導電素子71は、対応するサブモータ20又は30のY結線のスター点を形成する。この実施形態では、各第1の導電素子71は、6つの導電タブ712を含む。各導電タブ712は、サブモータ20又はサブモータ30の一方の1つの対応する巻線コイル65の1つの接続端部に電気的に接続される。第2の導電素子73、第3の導電素子75及び第4の導電素子76は、それぞれ、サブモータ20及びサブモータ30の一方のU相歯、V相歯及びW相歯の巻線コイル65の接続端部に接続される。特に、第2の導電素子73は、2つの導電タブ732及び1つの電源端子734を含む。2つの導電タブ732は、2つのU相歯の巻線コイル65の他方の接続端部に電気的に接続され、電源端子734は、端子ハブ80を貫通して、外部電源に接続するようになっている。同様に、第3の導電素子75は、2つの導電タブ752及び1つの電源端子754を含み、第4の導電素子76は、2つの導電タブ762及び1つの電源端子764を含む。2つの導電タブ752,762は、それぞれ、2つのV相歯及び2つのW相歯の巻線コイル65の対応する接続端部に接続され、電源端子754,764は、端子ハブ80を貫通して、外部電源に接続するようになっている。この実施形態では、Y結線のスター点として働く第1の導電素子71は、ステータ60に隣接する導電端子組70の1つの側に位置する。
【0035】
[0049] この実施形態では、第1の導電端子組及び第2の導電端子組は、周方向に沿って重ならない。すなわち、BLDCモータ100の軸方向に見て、第1の導電端子組及び第2の導電端子組は、互いに離間され、周方向に重なり部分を共有しない。第1の導電端子組及び第2の導電端子組が、周方向に重ならないので、2つの導電端子組は、互いに絶縁される。短絡の場合でも、短絡は、導電端子組70の内部だけで発生し、短絡が、2つの導電端子組70の間に発生して、両方のサブモータの故障を同時に引き起こすようなことはない。したがって、本発明のモータでは、一方の短絡したサブモータが、他方のサブモータの正常動作に影響を及ぼすのを防ぐことにより、モータの信頼性を向上させることができる。
【0036】
[0050] 図7を参照すると、複数の固定部85が、端子ハブ80の1つの側に配設される。各電源端子は、固定部85の対応する1つを貫通し、これに固定される。BLDCモータ100は、更に、アダプタ90(図3)を含む。アダプタ90は、端子ハブ80の固定部85が配設される側に取り付けられ、電源端子を外部電源に電気的に接続するように構成される。アダプタ90は、複数の端部91及び複数の挿入タブ93を含む。各端部91は、挿入タブ93の対応する1つに電気的に接続される。端部91は、カバー状であり、各端部91は、電源端子734,754及び764の対応する1つの一端を覆う。端部91は、電源端子734,754及び764に対応して配置される。この実施形態では、挿入タブ93は、アダプタ90に配設され且つ互いに対向する2つの群に分けられ、挿入タブ93の各群は、サブモータ20及びサブモータ30の対応する1つのU相、V相及びW相に対応する。
【0037】
[0051] この実施形態では、端子ハブ80は、中空環状構造である。導電端子組70の第1の導電素子71、第2の導電素子73、第3の導電素子75及び第4の導電素子76は、BLDCモータ100の軸方向に沿って順次積層されることによって、実質的に半円形構造を形成する。2つの導電端子組70は、端子ハブ80内に対称に配設される。この実施形態では、端子ハブ80は、2つの導電端子組70の周りに射出成形することにより形成される。1つの同じ導電端子組70の第1の導電素子71、第2の導電素子73、第3の導電素子75及び第4の導電素子76は、互いに絶縁され、2つの導電端子組70も、互いに絶縁される。
【0038】
[0052] 複数の収容部82が、端子ハブ80の周方向側に沿って配設される。各収容部82は、導電タブ712,732,752及び762の対応する1つを収容するための開口部821を形成する。各収容部82は、ラッチ部87から遠ざかる方向に屈曲して、少なくとも1つの絶縁部823を形成する。絶縁部823は、1つの巻線コイル65の1つの接続端部を巻き付けることができる。巻線コイル65の接続端部は、位置決め部632の貫通穴を貫通し、絶縁部823を越え、1つの対応する導電タブに接続する。この実施形態では、接続端部は、はんだ付けによって、導電タブに接続される。絶縁部823は、2つの隣接する回路の間の短絡を回避する。
【0039】
[0053] 図10及び図11を参照すると、図示を容易にするために、第1のサブモータ20のステータ歯62は、それぞれ、符号611~616で示し、U1,V1,W1を用いて、第1のサブモータ20の3つの入力端子をそれぞれ示し、第2のサブモータ30のステータ歯62は、それぞれ、符号617~6112で示し、U2,V2,W2を用いて、第2のサブモータ30の3つの入力端子をそれぞれ示す。図11A及び図11Bは、それぞれ、第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30の巻線接続回路を示す。
【0040】
[0054] 図13は、巻線の短絡の場合の従来のモータ及び本発明のBLDCモータ100のトルクを示す図である。図中の曲線Aは、従来のモータの短絡トルクを示し、一方、曲線B及び曲線Cは、それぞれ、第1のサブモータ20の短絡の場合の第1のサブモータ20のトルク及び第2のサブモータ30のトルクを示す。分かるように、短絡の場合、従来のモータ及び第1のサブモータ20の出力トルクは、明らかに変動する。本発明のBLDCモータ100は、更に、正常に動作する第2のサブモータ30を含む。したがって、サブモータ20及びサブモータ30の一方に、短絡が発生しても、サブモータ20及びサブモータ30の他方は、依然として、定格トルクを出力することができる。
【0041】
[0055] 図12A及び図12Bを参照すると、本発明のBLDCモータの第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30は、単一の制御装置280によって制御することができる(図12A)。この場合、制御装置280の各出力端子は、2つのスイッチ(符号表記せず)を介して、第1のサブモータ20の入力端子U1,V1,W1の対応する1つ及び第2のサブモータ30の入力端子U2,V2,W2の対応する1つと接続される。代替的に、BLDCモータ100の第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30は、2つの制御装置281,282によってそれぞれ制御することもできる(図12B)。この場合、各制御装置281,282の出力端子は、サブモータ20又はサブモータ30の入力端子U1,V1,W1又はU2,V2,W2の対応する1つに接続される。第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30が、2つの制御装置281,282によってそれぞれ制御されると、2つのサブモータ20及び30の電流が、(2k+1)/2周期の位相差を有する
ように制御することができ、2つのサブモータ20及び30の逆起電力は、同じ位相を有することによって、2つのサブモータ20及び30の合成トルクのn次高調波を向上させることにより、モータの作動をより円滑にする。
【0042】
[0056] 上記実施形態では、BLDCモータは、三相モータとして例示されているが、BLDCモータは、以下の条件が満たされる限り、いずれのモータとしても実現することができる。
【0043】
[0057] 二相モータの場合、下式が満たされる必要がある。
【数3】
ここで、Npは、ロータの極性の数であり、Nsは、ステータのスロットの数であり、Np及びNsは、両方とも、偶数である。
【0044】
[0058] 三相モータの場合、下式が満たされる必要がある。
【数4】
ここで、Npは、ロータの極性の数であり、これは偶数であり、Nsは、ステータのスロットの数であり、ここで、
である。
【0045】
[0059] 図14は、本発明のBLDCモータ100を用いる電動パワーステアリングシステム200を示す。電動パワーステアリングシステム200は、ステアリングホイール210と、ステアリングホイール210に固定連結されるステアリングコラム220と、ステアリングコラム220に同軸に固定されるステアリングギヤ230とを含む。BLDCモータ100は、駆動歯車240と駆動連結されて、BLDCモータ100のトルクを出力する回転軸を含む。駆動歯車240は、ステアリングラック250を介して、ステアリングギヤ230と駆動連結される。したがって、BLDCモータ100が作動すると、駆動歯車240は、ステアリングラック250を介して、ステアリングギヤ230を回転駆動することによって、ステアリングコラム220を回転駆動することにより、ステアリングホイール210を回転駆動して、運転者がステアリングホイールを操作するのを補助するようになっている。電動パワーステアリングシステム200は、更に、ステアリングホイール210のトルク及びステアリング方向信号を検出し、その信号を制御装置280に送信するためのステアリングトルクセンサ260及びステアリングホイール角度センサ270を含む。信号に応じて、制御装置280は、対応する命令を発生して、BLDCモータ100が、対応する大きさ及び方向の補助ステアリングトルクを出力することによって、補助力を発生するようになっている。実際には、BLDCモータ100と駆動歯車240との間に、減速装置を配設して、出力トルクを増加させることができる。
【0046】
[0060] 本発明のBLDCモータ100は、2つのサブモータ20及び30を含む。2つのサブモータ20及び30は、共通のロータ50と、互いに独立しているそれぞれのステータ60とを含む。2つのサブモータ20及び30は、互いに独立している入力端子を含む。モータが正常に動作するとき、2つのサブモータ20及び30は、単一のモータとして作動する。サブモータ20及び30の一方が故障すると、サブモータ20及び30の他方は、独立して作動して、モータの信頼性及び安全性を確保することができる。本発明のモータは、他の分野に用いることができるが、特に、ステアリングホイールの電動パワーステアリングシステムに用いるのに適している。
【0047】
[0061] したがって、以上、本発明の実施形態の技術的解決手段について、明瞭且つ完全に説明した。説明した実施形態は、本発明の実施形態の全てではなく、その一部にすぎないことは明らかである。当業者であれば、種々の実施形態の技術的特徴の様々な組み合わせをして、実際的な必要{ひつよう}に応えることができる。説明された本発明の実施形態に基づいて、創作努力を払うことなく当業者によって得られる他のいずれの実施形態も、本発明の範囲に属する。
【符号の説明】
【0048】
10 外部ケーシング
12 ハウジング
13 カバー本体
20 第1のサブモータ
30 第2のサブモータ
50 ロータ
60 ステータ
62 ステータ歯
63 ボビン
65 巻線コイル
66 絶縁層
70 導電端子組
71 第1の導電素子
73 第2の導電素子
75 第3の導電素子
76 第4の導電素子
80 端子ハブ
82 収容部
85 固定部
87 ラッチ部
90 アダプタ
91 端部
93 挿入タブ
100 ブラシレス直流(BLDC)モータ
131 軸受座
200 電動パワーステアリングシステム
210 ステアリングホイール
220 ステアリングコラム
230 ステアリングギヤ
240 駆動歯車
250 ステアリングラック
260 ステアリングトルクセンサ
270 ステアリングホイール角度センサ
280 制御装置
281,282 制御装置
611~616 第1のサブモータのステータ歯
617~619,6110~6112 第2のサブモータのステータ歯
631 上部ボビン本体
632 位置決め部
633 ロック部
635 下部ボビン本体
712 導電タブ
732 導電タブ
734 電源端子
752 導電タブ
754 電源端子
762 導電タブ
764 電源端子
821 開口部
823 絶縁部
U1,V1,W1 入力端子
U2,V2,W2 入力端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14