(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】光酸発生剤、レジスト組成物、及び、該レジスト組成物を用いたデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20220620BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20220620BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20220620BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20220620BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220620BHJP
C07C 309/12 20060101ALN20220620BHJP
C07C 381/12 20060101ALN20220620BHJP
C07D 211/78 20060101ALN20220620BHJP
C07D 327/06 20060101ALN20220620BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
C09K3/00 K
G03F7/004 501
G03F7/038 601
G03F7/039 601
G03F7/20 521
C07C309/12
C07C381/12
C07D211/78
C07D327/06
(21)【出願番号】P 2017239829
(22)【出願日】2017-12-14
【審査請求日】2020-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000222691
【氏名又は名称】東洋合成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】小林 宣章
(72)【発明者】
【氏名】内海 義之
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/025859(WO,A1)
【文献】特開2013-114085(JP,A)
【文献】特開2018-138541(JP,A)
【文献】特開2003-327572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるオニウム塩化合物を含む光酸発生剤。
【化1】
(前記式(1)中、Rは、置換基を有しても良い炭素原子数1~30の
無置換又は置換直鎖状炭化水素基、置換基を有しても良い炭素原子数3~30の
無置換又は置換分岐状炭化水素基、置換基を有しても良い炭素原子数3~30の
無置換又は置換環状炭化水素基、置換基を有しても良い炭素原子数5~30の
無置換又は置換アリール基及び置換基を有しても良い炭素原子数3~30の
無置換又は置換ヘテロアリール基からなる群より選択されるいずれかであり、
且つ、
Rにおける前記置換基を有しても良い炭素原子数1~30の無置換又は置換直鎖状炭化水素基、
前記置換基を有しても良い炭素原子数3~30の無置換又は置換分岐状炭化水素基、
前記置換基を有しても良い炭素原子数3~30の無置換又は置換環状炭化水素基、
前記置換基を有しても良い炭素原子数5~30の無置換又は置換アリール基及び
前記置換基を有しても良い炭素原子数3~30の無置換又は置換ヘテロアリール基が有する水素原子の少なくとも1つが、少なくとも1つの酸素原子を有する1価の極性基で置換されている
ものであるか、及び/又は、
Rにおける前記置換基を有しても良い炭素原子数1~30の無置換又は置換直鎖状炭化水素基、
前記置換基を有しても良い炭素原子数3~30の無置換又は置換分岐状炭化水素基及び
前記置換基を有しても良い炭素原子数3~30の無置換又は置換環状炭化水素基中のメチレン基の少なくとも一つが少なくとも1つの酸素原子を有する2価の極性基で置換されて
いるものであり、
前記1価の極性基が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、カルバモイル基、ニトロ基及びニトロソ基からなる群から選択されるいずれかであり、
前記置換基は、前記1価の極性基及び前記2価の極性基以外の基であり、
前記置換基は、直鎖状又は環状アルキル基;直鎖状又は環状アルケニル基;直鎖状又は環状アルキニル基;アリール基;該アリール基の環構造中に炭素原子に代えてヘテロ原子を含んでいても良いヘテロアリール基;及びハロゲン原子からなる群から選択されるいずれかであり、
前記炭素原子数は、前記置換基
、前記1価の極性基及び前記2価の極性基を含めた炭素原子数であり、
前記2価の極性基が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-CO-O-、-NHCO-、-CONH-、-CO-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NHCO-NH-、-O-CO-NH-、-SO-、-SO
2-、-SO
2-O-、-O-CS-、-S-CO-及び-NH-SO
2-からなる群より選ばれるいずれかであり、
Xは2価の連結基であり、前記Xが、2価の炭化水素基、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-CO-O-、-NHCO-、-CONH-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NH-、-S-、-SO-、-SO
2-及び-SO
2-O-から選ばれる基であ
り、
M
+
は1価のカチオンである。)
(但し、前記オニウム塩化合物が下記式(A)~(P)で示される化合物である場合を除く。
【化2】
(前記式(A)~(H)中、R
a及びR
bは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~12の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる-CH
2-は、-O-又は-CO-で置き換わってもよい。
m及びnは、それぞれ独立に、1又は2を表し、mが2のとき、2つのR
aは同一又は相異なり、nが2のとき、2つのR
bは同一又は相異なる。
Arは、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を表す。
X
1は、-O-又は-S-を表す。))
【請求項2】
前記Rが
前記置換基を有しても良い無置換又は置換炭素原子数3~30の環状炭化水素基である請求項1に記載の光酸発生剤。
【請求項3】
前記光酸発生剤が、光崩壊性塩基である請求項1又は2に記載の光酸発生剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光酸発生剤を含有するレジスト組成物。
【請求項5】
酸反応性化合物をさらに含有する請求項4に記載のレジスト組成物。
【請求項6】
前記酸反応性化合物が、酸により脱保護する保護基を有する化合物、酸により重合する
重合性基を有する化合物、及び、酸により架橋作用を有する架橋剤からなる群より選択さ
れる少なくともいずれかである請求項5に記載のレジスト組成物。
【請求項7】
フッ素はっ水ポリマーをさらに有する請求項4~6のいずれか一項に記載のレジスト組成物。
【請求項8】
前記光酸発生剤とは異なる第2光酸発生剤をさらに含み、
前記第2光酸発生剤のpKaが前記光酸発生剤のpKaよりも小さい請求項4~7のいずれか一項に記載のレジスト組成物。
【請求項9】
前記第2光酸発生剤のpKaが-3以下である請求項8に記載のレジスト組成物。
【請求項10】
請求項4~9のいずれか一項に記載のレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、
活性エネルギー線を用いて、前記レジスト膜を露光する工程と、
露光されたレジスト膜を現像する工程と、を含むパターン形成方法。
【請求項11】
請求項4~9のいずれか一項に記載のレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、
活性エネルギー線を用いて、前記レジスト膜を露光する工程と、
露光されたレジスト膜を現像する工程と、を含むデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のいくつかの態様は光酸発生剤に関し、より詳しくはリソグラフィ用レジスト組成物に好適に用いられる光酸発生剤に関する。また、本発明のいくつかの態様は、上記光酸発生剤を含むレジスト組成物、該レジスト組成物を用いたパターン形成方法及びデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フォトレジストを用いるフォトリソグラフィ技術を駆使して、液晶ディスプレイ(LCD)及び有機ELディスプレイ(OLED)等の表示装置の製造並びに半導体素子の形成が盛んに行われている。上記の電子部品及び電子製品のパッケージ等には、活性エネルギー線として波長365nmのi線、それより長波長のh線(405nm)及びg線(436nm)等の光が広く用いられている。
【0003】
デバイスの高集積化が進み、リソグラフィ技術の微細化に対する要求が高まっており、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、極端紫外線(EUV、波長13.5nm)及び電子線(EB)等の非常に波長の短い光が露光に使用される傾向にある。これらの波長の短い光、特に電子線又は極端紫外線(EUV)を用いたリソグラフィ技術はシングルパターニングでの製造が可能であることから、電子線又は極端紫外線(EUV)等に対し高い感応性を示すレジスト組成物の必要性は、今後更に高まると考えられる。
【0004】
露光光源の短波長化に伴い、レジスト組成物には、露光光源に対する感度がよく、微細な寸法パターンの形成が再現可能な解像性を有するリソグラフィ特性の向上が求められている。このような要求を満たすレジスト組成物として、光酸発生剤を用いた化学増幅型レジストが知られている(特許文献1)。
しかし、急速な微細化に伴い、光酸発生剤を用いた化学増幅型レジストでは露光によって発生した酸がレジスト内で拡散し、リソグラフィの性能に大きな影響を及ぼし、コントラストやラインパターンのラインエッジラフネス(LER)特性が低減するという問題点がある。そこで、光酸発生剤から生成した酸の拡散を適度に制御する目的で酸拡散制御剤をレジスト組成物に含有させ、解像度を高めることが提案されている(特許文献2)。一方で酸拡散性を制御しすぎると酸発生効率を低減させ、コントラストが低下する場合がある。
【0005】
そのため、露光により分解して酸拡散制御性を失う光崩壊性塩基を酸拡散制御剤として用いることにより、コントラストを改善することが提案されている(特許文献3)。光崩壊性塩基としては弱酸オニウム塩が挙げられる。上記光崩壊性塩基は、露光によって他の光酸発生剤から生じた強酸が上記弱酸オニウム塩と交換することで酸性度の高い強酸から弱酸に置き換わることによって酸不安定基の酸分解反応を抑制し、酸拡散距離を小さくするものであり、見かけ上クエンチャーとして機能することで酸拡散制御剤となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-90637号公報
【文献】特開2004-191764号公報
【文献】特開2010-66492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
感度、解像度、及び、LER等のパターン性能はトレードオフの関係であるため、従来の化学増幅型レジスト組成物では、感度、解像度、及び、LER等のパターン性能の特性を同時に満たすことは難しい。上記特許文献2で提案される酸拡散制御剤では、コントラストが十分でない点で課題が残る。また、上記特許文献3で提案される光崩壊性塩基は、酸拡散長の制御不足及びレジスト溶媒に対する溶解性の点で課題が残る。
【0008】
本発明のいくつかの態様は、感度、解像度及びパターン性能の特性に優れたレジスト組成物に用いられる光酸発生剤を提供することを課題とする。
また本発明のいくつかの態様は、上記光酸発生剤を含むレジスト組成物、上記レジスト組成物を用いたパターン形成方法及びデバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のオニウム塩化合物をレジスト組成物の光酸発生剤として含有させることで、感度、解像度及びパターン性能の特性を向上できることを見出し、本発明のいくつかの態様を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のひとつの態様は、下記式(1)で示されるオニウム塩化合物を含む光酸発生剤である。
【0011】
【0012】
上記式(1)中、Rは、置換基を有しても良い炭素原子数1~30の直鎖状炭化水素基、置換基を有しても良い炭素原子数3~30の分岐状炭化水素基、置換基を有しても良い炭素原子数3~30の環状炭化水素基、置換基を有しても良い炭素原子数5~30のアリール基及び置換基を有しても良い炭素原子数3~30のヘテロアリール基からなる群より選択されるいずれかである。そして、Rにおける上記直鎖状炭化水素基、上記分岐状炭化水素基、上記環状炭化水素基、上記アリール基及び上記ヘテロアリール基が有する水素原子の少なくも1つが、少なくとも1つの酸素原子を有する1価の極性基(以下、「1価の酸素原子含有極性基」ともいう)で置換されているか、及び/又は、Rにおける上記直鎖状炭化水素基、上記分岐状炭化水素基及び上記環状炭化水素基が有するメチレン基の少なくとも1つが、少なくとも1つの酸素原子を有する2価の極性基(以下、「2価の酸素原子含有極性基」ともいう)で置換されている。
Xは2価の連結基である。
M+は1価のカチオンである。
【0013】
また、本発明の別の態様は、上記オニウム塩化合物を含む光酸発生剤及びレジスト組成物である。
さらに、本発明の別の態様は、上記レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、活性エネルギー線を用いて、上記レジスト膜を露光する工程と、露光されたレジスト膜を現像する工程と、を含むパターン形成方法である。
本発明の別の態様は、上記レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、活性エネルギー線を用いて、上記レジスト膜を露光する工程と、露光されたレジスト膜を現像する工程と、を含むデバイスの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のひとつの態様の光酸発生剤は、特定のアニオン構造を有するオニウム塩化合物を含むことで、感度、解像度及びパターン性能に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のいくつかの態様について説明する。
<1>光酸発生剤
本発明のひとつの態様の光酸発生剤は、特定の構造を有するオニウム塩化合物を含むことを特徴とする。
上記光酸発生剤は、特定のアニオン構造を有するオニウム塩化合物を含むことで、感度、解像度及びパターン性能の特性を向上できる。より詳しくは、少なくとも1つの酸素原子を有する極性基をアニオンの末端に有することで、酸拡散性を適度に制御できる。また、他の特定の光酸発生剤と組み合わせて用いたときに、光崩壊性塩基として作用できるため、感度、解像度及びパターン性能の特性をさらに向上できる。
極性基としては、1価の極性基及び2価の極性基の少なくとも1つを有すれば、特に制限はない。極性基については後述する。
【0016】
上記光酸発生剤は活性エネルギー線による露光により分解する。そのため、本発明のいくつかの態様の光酸発生剤を光崩壊性塩基として含み、他の光酸発生剤をさらに含むレジスト組成物をフォトレジストに用いる場合、露光部分では上記光崩壊性塩基が分解し、酸拡散制御性を失い、且つ、分解により発生した2次電子が他の光酸発生剤に作用し、他の光酸発生剤からの酸発生を向上させ得る。一方、未露光部では光崩壊性塩基は他の光酸発生剤よりも弱い共役塩基を持つ塩であるため、他の光酸発生剤から生成した酸と反応することで他の光酸発生剤酸由来の酸を失活させることが出来、酸拡散制御剤として作用し得る。そのため、本発明のひとつの態様の光酸発生剤を光崩壊性塩基としてレジスト組成物に用いた場合、感度、解像度及びパターン形成能の特性に優れるレジスト組成物とすることができる。
【0017】
以下、本発明のいくつかの態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0018】
<1-1>オニウム塩化合物のアニオン
本発明のひとつの態様におけるオニウム塩化合物のアニオンは、上記式(1)で示される。
Rとしての炭素原子数1~30の直鎖状炭化水素基としては、1価の酸素原子含有極性基及び/又は2価の酸素原子含有極性基を有すれば制限はないが、これらの基を有するメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル及びn-ドデシル基等の直鎖状アルキル基が挙げられる。また、上記直鎖状アルキル基中の炭素-炭素一重結合の少なくとも1つが、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合に置換されたアルケニル基又はアルキニル基であってもよい。
【0019】
Rとしての炭素原子数1~30の分岐状炭化水素基としては、1価の酸素原子含有極性基及び/又は2価の酸素原子含有極性基を有すれば制限はないが、これらの基を有するイソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、2-エチルオクチル基及び2-エチルデシル基等の分岐状アルキル基が挙げられる。また、上記直鎖状アルキル基中の炭素-炭素一重結合の少なくとも1つが、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合に置換されたアルケニル基又はアルキニル基であってもよい。
Rとしての炭素原子数1~30の環状炭化水素基としては、1価の酸素原子含有極性基及び/又は2価の酸素原子含有極性基を有すれば制限はないが、これらの基を有するシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基及びデカヒドロナフチル基等の環状アルキル基が挙げられる。
【0020】
上記環状アルキル基として他に、1価の酸素原子含有極性基及び/又は2価の酸素原子含有極性基を有するスピロ[3,4]オクチル基及びスピロビシクロペンチル基等のスピロ型環状アルキル基;ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基及びアダマンチル基等の橋かけ型環状アルキル基;デカリン及び下記に示すステロイド骨格等を有する縮環型環状アルキル基;等の環状アルキル基も挙げられる。また、上記直鎖状アルキル基中の炭素-炭素一重結合の少なくとも1つが、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合に置換されたアルケニル基又はアルキニル基であってもよい。
【0021】
炭素原子数5~30のアリール基としては、1価の酸素原子含有極性基及び/又は2価の酸素原子含有極性基を有すれば制限はないが、これらの基を有するフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基及びアズレニル基等の1価のアリール基が挙げられる。また、上記アリール基の環内の炭素原子に代えてヘテロ原子を含む1価のヘテロアリール基であってもよい。上記ヘテロアリール基としては、1価の酸素原子含有極性基及び/又は2価の酸素原子含有極性基を有すれば制限はないが、これらの基を有するフラン、チオフェン、ピラン、クロメン、チアントレン、ジベンゾチオフェン、キサンテン等の骨格を有する1価のヘテロアリール基が挙げられる。
上記直鎖状、分岐状及び環状炭化水素基の炭素原子数は1~20がより好ましい。上記アリール基の炭素原子数は5~20がより好ましい。
【0022】
R中の上記直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、環状炭化水素基、アリール基及びヘテロアリール基は、その置換基を含め、1価の酸素原子含有極性基及び2価の酸素原子含有極性基の少なくとも1つを有する。それにより、本発明のいくつかの態様における光酸発生剤は、酸拡散性を適度に制御できる。また、他の光酸発生剤と組み合わせて用いたときに、光崩壊性塩基として作用するため、感度、解像度及びパターン性能の特性をさらに向上できる。
なお、上述しているが、「1価の酸素原子含有極性基を有する」とは、上記直鎖状炭化水素基等が有する水素原子の少なくとも1つが、上記1価の酸素原子含有極性基で置換されていることをいう。「2価の酸素原子含有極性基を有する」とは、上記直鎖状炭化水素基等中のメチレン基の少なくとも一つが、上記2価の酸素原子含有極性基で置換されていることをいう。
【0023】
上記1価の酸素原子含有極性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミド基、カルバメート基、ホルミル基、カルバモイル基、チオヒドロキシカルボニル基、ニトロ基及びニトロソ基等が挙げられる。
【0024】
上記2価の酸素原子含有極性基は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-CO-O-、-NHCO-、-CONH-、-CO-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NH-CO-NH-、-O-CO-NH-、-SO-、-SO2-、-SO2-O-、-O-CS-、-CO-S-、-S-CO-及び-NH-SO2-等が挙げられる。
上記2価の酸素原子含有極性基として例示される-NHCO-、-CONH-、-CO-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NH-CO-NH-、-O-CO-NH-及び-NH-SO2-等において、窒素原子に結合する水素原子はRSp又はArSpで置換されていても良い。RSp及びArSpについては後述する。
【0025】
上記1価の酸素原子含有極性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、カルバモイル基等がより好ましい。
なお、酸素原子を含有しない極性基については、アミノ基、シアノ基、ハロゲン原子等があるが、それぞれ下記の理由から酸素原子を含有する置換基が好ましいと考えられる。
アミノ基は光酸発生剤から発生する酸を失活させてしまうおそれがある。シアノ基は酸素官能基と比較して極性相互作用が弱い傾向がある。シアノ基は発生した酸と反応し、カルボキシル基となる可能性があり、該カルボキシル基はpKaが小さいため水素結合等の相互作用がヒドロキシル基に比べて弱い傾向がある。ハロゲン原子は露光中に分解し、活性なハロゲン種を生成する可能性があり、該ハロゲン種の発生は露光機等のダメージを与える恐れがあるため好ましくない。
【0026】
また、上記炭化水素基は、上記炭化水素基中の少なくとも1つのメチレン基に代えて、上記2価の酸素原子含有極性基以外の2価のヘテロ原子含有基でさらに置換されていても良い。上記2価のヘテロ原子含有基としては、窒素原子、硫黄原子等の酸素原子を除くヘテロ原子を含む基であり、-S-、-NH-、-NH(RSp)-及び-N(RSp)2-等からなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらは適宜組み合わせて含まれていてもよい。また上記2価のヘテロ原子含有基は、環構造中に含まれていてもよい。
【0027】
上記直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、環状炭化水素基、アリール基及びヘテロアリール基は、上記1価の酸素原子含有極性基以外の置換基をさらに有していてもよく、該置換基としては、直鎖状又は環状アルキル基(RSp);直鎖状又は環状アルケニル基;直鎖状又は環状アルキニル基;アリール基(ArSp);該アリール基の環構造中に炭素原子に代えてヘテロ原子を含んでいても良いヘテロアリール基;ヒドロキシ基;及びハロゲン原子等が挙げられる。
上記2価のヘテロ原子含有基及び上記置換基としてのアルキル基(RSp)、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基(ArSp)としては、上記Rの上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基及び上記アリール基と同様のものが挙げられる。
上記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等が挙げられる。
なお、Rとしての炭化水素基、アリール基等が置換基を有する場合のRの総炭素原子数は、置換基を含めて上記の炭素原子数であることが好ましい。
【0028】
上記直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基及び環状炭化水素基が有するメチレン基の少なくとも1つが、上記2価の酸素原子含有極性基で置換されたRとしては、エーテル部位、ケトン部位、カーボネート部位、ラクトン部位、アミド部位、ラクタム部位、スルホニル部位、スルトン部位、チオエステル部位、ウレア部位、ウレタン部位等を有する基が挙げられる。
【0029】
Rとしては、上記1価の酸素原子含有極性基及び/又は2価の酸素原子含有極性基を含む環状炭化水素基が好ましい。
上記1価の酸素原子含有極性基及び/又は2価の酸素原子含有極性基を含むRとしては、下記が挙げられる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。下記構造中、*は上記式(1)のXに結合する部分である。
【0030】
【0031】
上記Xは2価の連結基であり、例えば、2価の炭化水素基、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-CO-O-、-NHCO-、-CONH-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NH-、-S-、-SO-、-SO2-及び-SO2-O-等から選ばれる少なくとも1つを含む基が挙げられる。
【0032】
上記2価の連結基として例示される-NHCO-、-CONH-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-及び-NH-等において、窒素原子に結合する水素原子は上記RSp又はArSpで置換されていても良い。
Xとしての2価の炭化水素基としては、上記式(1)のRとしての1価の直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、環状炭化水素基、アリール基及びヘテロアリール基を2価としたものが挙げられる。
【0033】
Xとしては、エステル結合、エーテル結合等を有する基が溶解性の点から好ましい。
【0034】
<1-2>オニウム塩化合物のカチオン
【0035】
M+としては、具体的には、水素イオン、金属イオン及びオニウムイオン等を挙げることができる。
【0036】
カチオンM+の金属イオンとして具体的には、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等の第1属元素による一価の陽イオン、マグネシウムイオン(II)、カルシウムイオン(II)等の第2属元素による二価の陽イオン、鉄イオン(II)、鉄イオン(III)、銅イオン(I)、銅イオン(II)、ニッケルイオン(II)、ニッケルイオン(III)等の遷移金属イオン、鉛イオン(II)等の重金属イオンが挙げられ、これら金属イオンが配位子と錯体を形成していてもよい。
【0037】
また、カチオンM+のオニウムイオンとしては、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、リン原子等により構成されるオニウム塩の陽イオンが挙げられる。
オニウム塩の陽イオンとしては、窒素原子により構成されるオニウム塩の陽イオン;
硫黄原子により構成されるオニウム塩の陽イオン;りん原子により構成されるオニウム塩の陽イオン;ハロニウム塩の陽イオン等がある。
【0038】
窒素原子により構成されるオニウム塩の陽イオンとして、第1級~第4級のアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、キノリニウムイオン等が挙げられ、これらは上記RSp及びArSp等の置換基を有していてもよい。具体的には、例えば、アンモニウムイオン、メチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン、ジフェニルアンモニウムイオン、トリフェニルアンモニウムイオン、ジメチルフェニルアンモニウムイオン、トリメチルフェニルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、フルオロピリジニウムイオン、クロロピリジニウムイオン、ブロモピリジニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、キノリニウムイオン等が挙げられる。
【0039】
硫黄原子により構成されるオニウム塩の陽イオンとしては、下記に示すスルホニウムイオンが挙げられる。
【0040】
【0041】
上記式中、Ra1~Ra3はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、環状炭化水素基、アリール基及びヘテロアリール基等が挙げられる。Ra1~Ra3の置換基を有してもよい直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、環状炭化水素基、アリール基及びヘテロアリール基は、上記式(1)のRの直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、環状炭化水素基、アリール基及びヘテロアリール基と同様のものが挙げられる。
【0042】
スルホニウムイオンとして具体的には、例えば、トリメチルスルホニウムイオン、トリブチルスルホニウムイオン、ジメチル(2-オキソシクロヘキシル)スルホニウムイオン、ビス(2-オキソシクロヘキシル)メチルスルホニウムイオン、(10-カンフェノイル)メチル(2-オキソシクロヘキシル)スルホニウムイオン、(2-ノルボルニル)メチル(2-オキソシクロヘキシル)スルホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン、ジフェニルトリルスルホニウムイオン、ジフェニルキシリルスルホニウムイオン、メシチルジフェニルスルホニウムイオン、(t-ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(オクチルフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(シクロヘキシルフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、ビフェニルジフェニルスルホニウムイオン、(ヒドロキシメチルフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(メトキシメチルフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(アセチルフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(ベンゾイルフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(ヒドロキシカルボニルフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(メトキシカルボニルフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(トリフルオロメチルフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(クロロフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(ブロモフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(ヨードフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、ペンタフルオロフェニルジフェニルスルホニウムイオン、(ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(アセチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(ベンゾイルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(ジメチルカルバモイルフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(アセチルアミドフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、フェニルジトリルスルホニウムイオン、フェニルジキシリルスルホニウムイオン、ジメシチルフェニルスルホニウムイオン、ビス(t-ブチルフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(オクチルフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(シクロヘキシルフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ジビフェニルフェニルスルホニウムイオン、ビス(ヒドロキシメチルフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(メトキシメチルフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(アセチルフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(ベンゾイルフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(ヒドロキシカルボニルフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(メトキシカルボニルフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(トリフルオロメチルフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(フルオロフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(クロロフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(ブロモフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(ヨードフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ジペンタフルオロフェニルフェニルスルホニウムイオン、ビス(ヒドロキシフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(メトキシフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(ブトキシフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(アセチルオキシフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(ベンゾイルオキシフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(ジメチルカルバモイルフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(アセチルアミドフェニル)フェニルスルホニウムイオン、トリストリルスルホニウムイオン、トリスキシリルスルホニウムイオン、トリスメシチルフェニルスルホニウムイオン、トリス(t-ブチルフェニル)スルホニウムイオン、トリス(オクチルフェニル)スルホニウムイオン、トリス(シクロヘキシルフェニル)スルホニウムイオン、トリビフェニルスルホニウムイオン、トリス(ヒドロキシメチルフェニル)スルホニウムイオン、トリス(メトキシメチルフェニル)スルホニウムイオン、トリス(アセチルフェニル)スルホニウムイオン、トリス(ベンゾイルフェニル)スルホニウムイオン、トリス(ヒドロキシカルボニルフェニル)スルホニウムイオン、トリス(メトキシカルボニルフェニル)スルホニウムイオン、トリス(トリフルオロメチルフェニル)スルホニウムイオン、トリス(フルオロフェニル)スルホニウムイオン、トリス(クロロフェニル)スルホニウムイオン、トリス(ブロモフェニル)スルホニウムイオン、トリス(ヨードフェニル)スルホニウムイオン、ジペンタフルオロフェニルスルホニウムイオン、トリス(ヒドロキシフェニル)スルホニウムイオン、トリス(メトキシフェニル)スルホニウムイオン、トリス(ブトキシフェニル)スルホニウムイオン、トリス(アセチルオキシフェニル)スルホニウムイオン、トリス(ベンゾイルオキシフェニル)スルホニウムイオン、トリス(ジメチルカルバモイルフェニル)スルホニウムイオン、トリス(アセチルアミドフェニル)スルホニウムイオン、メチルジフェニルスルホニウムイオン、エチルジフェニルスルホニウムイオン、ブチルジフェニルスルホニウムイオン、ヘキシルジフェニルスルホニウムイオン、オクチルジフェニルスルホニウムイオン、シクロヘキシルジフェニルスルホニウムイオン、2-オキソシクロヘキシルジフェニルスルホニウムイオン、ノルボルニルジフェニルスルホニウムイオン、カンフェノイルジフェニルスルホニウムイオン、ピナノイルジフェニルスルホニウムイオン、ナフチルジフェニルスルホニウムイオン、アントラニルジフェニルスルホニウムイオン、ベンジルジフェニルスルホニウムイオン、トリフルオロメチルジフェニルスルホニウムイオン、メトキシカルボニルメチルジフェニルスルホニウムイオン、ブトキシカルボニルメチルジフェニルスルホニウムイオン、ベンゾイルメチルジフェニルスルホニウムイオン、(メチルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、(アセチルフェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムイオン、ジメチルフェニルスルホニウムイオン、ジエチルフェニルスルホニウムイオン、ジブチルフェニルスルホニウムイオン、ジヘキシルフェニルスルホニウムイオン、ジオクチルフェニルスルホニウムイオン、ジシクロヘキシルフェニルスルホニウムイオン、ビス(2-オキソシクロヘキシル)フェニルスルホニウムイオン、ジノルボルニルフェニルスルホニウムイオン、ジカンフェノイルフェニルスルホニウムイオン、ジピナノイルフェニルスルホニウムイオン、ジナフチルフェニルスルホニウムイオン、ジベンジルフェニルスルホニウムイオン、トリフルオロメチルジフェニルスルホニウムイオン、ビス(メトキシカルボニルメチル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(ブトキシカルボニルメチル)フェニルスルホニウムイオン、ジベンゾイルメチルフェニルスルホニウムイオン、ビス(メチルチオフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(フェニルチオフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ビス(アセチルフェニルチオフェニル)フェニルスルホニウムイオン、ジメチル(2-オキソシクロヘキシル)スルホニウムイオン、ビス(2-オキソシクロヘキシル)メチルスルホニウムイオン、(10-カンフェノイル)メチル(2-オキソシクロヘキシル)スルホニウムイオン、(2-ノルボルニル)メチル(2-オキソシクロヘキシル)スルホニウムイオン、トリメチルスルホニウムイオン、トリエチルスルホニウムイオン、トリブチルスルホニウムイオン、ジヘキシルメチルスルホニウムイオン、トリオクチルスルホニウムイオン、ジシクロヘキシルエチルスルホニウムイオン、メチルテトラヒドロチオフェニウムイオン、メチルテトラヒドロチオフェニウムイオン、トリフェニルオキソスルホニウムイオン、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド-ビスイオン等が挙げられる。
【0043】
りん原子により構成されるオニウム塩の陽イオンとして具体的には、例えば、テトラフェニルホスホニウムイオン等が挙げられる。フェニル基に代えて上記RSp及びArSpを有するホスホニウムイオンであっても良い。
【0044】
ハロニウム塩としては、ジフェニルヨードニウムイオン、ビス-(t-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン、(メトキシフェニル)フェニルヨードニウムイオン、(ブトキシフェニル)フェニルヨードニウムイオン、トリフルオロエチルフェニルヨードニウムイオン、ペンタフルオロフェニルフェニルヨードニウムイオン等が挙げられる。上記ヨードニウムイオンにおいても、フェニル基に代えて上記RSp及びArSpを有するヨードニウムであっても良い。
好ましくは、スルホニウムイオン、ヨードニウムイオン等である。
【0045】
<1-3>オニウム塩化合物
上記式(1)で表されるオニウム塩化合物は、特定の構造を有する化合物なので、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、F2エキシマレーザ光、電子線、X線及びEUV等の活性エネルギー線の照射により効率よく分解し適度な酸強度を有する酸を発生する光酸発生剤として有用である。また、少なくとも1つの酸素原子を有する極性基をアニオンの末端に有することから酸拡散長が低減する効果を有する。そのため、レジスト組成物の光酸発生剤として用いた場合、リソグラフィにおける解像性に優れ、且つ、微細パターンにおけるLER(ラインエッジラフネス)を低減できる効果を有する。
【0046】
本発明のいくつかの態様においては、アルカリ現像液を用いる水系現像に限定されず、中性現像液を用いる水系現像、又は、有機溶剤現像液を用いる有機溶剤現像等でも適応可能である。
【0047】
上記オニウム塩化合物は、低分子量成分としてレジスト組成物中に加えた態様でもよいが、ユニットとして含有したポリマーであってもよい。すなわち、上記式(1)で表されるオニウム塩化合物が、該化合物のいずれかの位置でポリマー主鎖に結合するようユニットとしてポリマーに含まれた態様であってもよい。例えば、上記式(1)で表される化合物の場合、R中の1つのHに代えて、ポリマー主鎖に直接又は連結基を介して結合する結合手を有することが好ましい。ポリマーを構成するユニットとしては、ビニル基、イソプロペニル基、アクリルオキシ基及びメタクリルオキシ基等のラジカル重合性基を有するモノマー由来のユニットが好ましい。上記ポリマーは、上記オニウム塩化合物に対応するユニット以外の他のユニットを含むポリマーであってもよい。詳しくは後述する。
なお、上記オニウム塩化合物がポリマーであるとき、式(1)における上記Rの好ましい炭素原子数は、ポリマー主鎖の炭素原子数を除いたものとする。
【0048】
上記式(1)で示されるオニウム塩化合物の具体的な構造としては、下記に示すものが挙げられる。しかしながら、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
<1-4>オニウム塩化合物の製造方法
本発明のひとつの態様におけるオニウム塩化合物は、以下の方法により製造できる。
下記においては、上記式(1)におけるXが-COO-であるオニウム塩化合物の合成例を示す。まず、4,4,4-トリフルオロクロトン酸エチルのメタノール/水の混合溶液に亜硫酸水素ナトリウム等を用いてスルホン化し、スルホン酸化合物を得る。
その後、上記スルホン酸化合物にDIBAL(ジイソブチルアルミニウムヒドリド)等の還元剤を用いて還元し、アルコール誘導体を得る。そして、上記アルコール誘導体に対して、上記式(1)のRに対応する基を有するカルボン酸誘導体を用いて縮合反応を行い、目的物を得ることができる。
なお、下記合成例中のRは上記式(1)におけるRに対応するものとする。
【0050】
【0051】
<1-5>光酸発生剤
本発明のいくつかの態様は、上記オニウム塩化合物を含有する光酸発生剤である。
また、レジスト組成物中に他の光酸発生剤と共に上記オニウム塩化合物を含有させるときは、上記オニウム塩化合物のアニオンは、他の光酸発生剤が有するアニオンと酸強度が同等以上のものを用いると、光崩壊性塩基として作用することから好ましい。
より具体的には、本発明のいくつかの態様における光酸発生剤はpKaが-2~6であることが好ましい。pKaは、ACD labs(富士通(株)製)を用いて解析して得られた値である。
【0052】
上述したように、本発明のいくつかの態様におけるオニウム塩化合物はポリマーであってもよい。オニウム塩化合物がポリマーである場合、該ポリマーは光酸発生剤として機能するユニットを含めばホモポリマーでもよく、また他のユニットを含むコポリマーであってもよい。コポリマーであるとき他のユニットとしては、酸反応性化合物として作用するもの、及び、ヒドロキシアリール基含有ユニット等が挙げられる。上記酸反応性化合物として作用するもの、及び、ヒドロキシアリール基含有ユニット等については、後述する。
【0053】
<2>レジスト組成物
本発明のひとつの態様は、本発明のいくつかの態様における光酸発生剤を含むレジスト組成物に関する。上記レジスト組成物は、上記光酸発生剤と酸反応性化合物とをさらに含むことが好ましい。
また、上記レジスト組成物は、本発明のいくつかの態様における光酸発生剤(以下、「第1光酸発生剤」ともいう)の他に、第2光酸発生剤を含有していてもよい。上記第2光発生剤が第1光酸発生剤のpKaよりも小さい場合は、第1光酸発生剤は光崩壊性塩基として作用することから好ましい。
【0054】
本発明のひとつの態様のレジスト組成物中の上記第1光酸発生剤の含有量は、後述する酸反応性化合物100質量部に対し、0.5~30質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましく、2~10質量部であることがさらに好ましい。
また、上記第1光酸発生剤を光崩壊性塩基として用いる場合、すなわち、レジスト組成物が第2光酸発生剤を含有するとき、上記第1光酸発生剤のレジスト組成物中の含有量は第2光酸発生剤100質量に対し1~100質量部であることが好ましく、3~75質量部であることがより好ましい。上記範囲内で上記第1光酸発生剤をレジスト組成物中に含有させることで、感度、解像度及びパターン形成能に優れた特性を有することができる。
含有量の算出において、有機溶剤はレジスト組成物成分に含まないこととする。
また、上記第1光酸発生剤及び第2光酸発生剤がポリマーに結合する場合は、ポリマー主鎖を除いた質量基準とする。
なお、上記第1光酸発生剤は一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
以下、レジスト組成物に含まれる各成分について説明する。
<2-1>第2光酸発生剤
本発明のいくつかの態様のレジスト組成物は、第2光酸発生剤を含有することが好ましい。
第2光酸発生剤としては、通常のレジスト組成物に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のオニウム塩化合物、N-スルホニルオキシイミド化合物、オキシムスルホネート化合物、有機ハロゲン化合物、スルホニルジアゾメタン化合物等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
スルホニウム塩としては、例えばWO2011/093139号公報に記載の下記式(2)で示されるものが挙げられる。
R5aCOOCH2CH2CFHCF2SO3
- (2)
上記式(2)において、R5aは、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の1価の有機基を示す。上記有機基として、好ましくは、炭素原子数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の1価の脂肪族炭化水素基;1価の芳香族炭化水素基;並びに、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-CO-O-、-NHCO-、-CONH-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NH-、-N=、-S-、-SO-及び-SO2-からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を骨格に含む1価の脂肪族複素環基又は1価の芳香族複素環基;等から選ばれるいずれかの1価の基である。
【0056】
上述したように、第2光酸発生剤が有するアニオンは、上記第1光酸発生剤のオニウム塩化合物のアニオンよりも酸強度が大きいものを用いることが好ましい。
より具体的には、第2光酸発生剤はpKaが-3以下であることが好ましい。そのようなアニオンとしては、フッ素原子置換スルホン酸等が挙げられる。
【0057】
上記第2光酸発生剤は、低分子量成分としてレジスト組成物中に加えた態様でもよいが、ポリマーのユニットとして含有してもよい。すなわち、第2光酸発生剤のいずれかの位置でポリマー主鎖に結合するようユニットとしてポリマーに含まれた態様であってもよい。例えば、第2光酸発生剤がスルホニウム塩の場合、スルホニウム塩中の置換基の1つのHに代えて、ポリマー主鎖に直接又は連結基を介して結合する結合手を有することが好ましい。
【0058】
本発明のひとつの態様のレジスト組成物中の第2光酸発生剤の含有量は、後述する酸反応性化合物100質量部に対し、1~50質量部であることが好ましく、3~30質量部であることがより好ましく、5~25質量部であることがさらに好ましい。
上記第2光酸発生剤がポリマーに結合する場合は、ポリマー主鎖を除いた質量基準とする。
【0059】
<2-2>酸反応性化合物
本発明のいくつかの態様のレジスト組成物は、上記第2光酸発生剤に加えて、酸反応性化合物を含有することが好ましい。
上記酸反応性化合物は、酸により脱保護する保護基を有する、酸により重合する、又は、酸により架橋することが好ましい。つまり、上記酸反応性化合物は、酸により脱保護する保護基を有する化合物、酸により重合する重合性基を有する化合物、及び、酸により架橋作用を有する架橋剤からなる群より選択される少なくともいずれかであることが好ましい。
【0060】
酸により脱保護する保護基を有する化合物とは、酸によって保護基が脱保護することにより極性基を生じ、現像液に対する溶解性が変化する化合物である。例えばアルカリ現像液等を用いる水系現像の場合、酸により脱保護する保護基を有する化合物は、アルカリ現像液に対して不溶性であるが、露光により上記光酸発生剤から発生する酸によって露光部において上記保護基が上記化合物から脱保護することによりアルカリ現像液に対して可溶となる化合物である。
【0061】
本発明のいくつかの態様においては、アルカリ現像液に限定されず、中性現像液又は有機溶剤現像であってもよい。そのため、有機溶剤現像液を用いる場合は、酸により脱保護する保護基を有する化合物は、露光により上記光酸発生剤から発生する酸によって露光部において上記保護基が上記化合物から脱保護して極性基を生じ、有機溶剤現像液に対して溶解性が低下する化合物である。
【0062】
上記酸反応性化合物の極性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基及びスルホ基等が挙げられる。
酸で脱保護する保護基の具体例としては、エステル基、アセタール基、テトラヒドロピラニル基、カーボネート基、シロキシ基及びベンジロキシ基等が挙げられる。該保護基を有する化合物として、これら保護基がペンダントしたスチレン骨格、メタクリレート又はアクリレート骨格を有する化合物等が好適に用いられる。
【0063】
酸により脱保護する保護基を有する化合物は、保護基含有低分子化合物であっても、保護基含有ポリマーであってもよい。本発明のいくつかの態様において、低分子化合物とは重量平均分子量が2000未満のものであり、ポリマーとは重量平均分子量が2000以上のものとする。
【0064】
酸により重合する重合性基を有する化合物とは、酸によって重合することにより現像液に対する溶解性を変化させる化合物である。例えば水系現像の場合、水系現像液に対して可溶である化合物に対して作用し、重合後に該化合物を水系現像液に対して溶解性を低下させるものである。具体的には、エポキシ基、ビニルオキシ基及びオキセタニル基等を有する化合物が挙げられる。
酸により重合する重合性基を有する化合物は、重合性低分子化合物であっても、重合性ポリマーであってもよい。
【0065】
酸により架橋作用を有する架橋剤とは、酸によって架橋することにより現像液に対する溶解性を変化させる化合物である。例えば水系現像の場合、水系現像液に対して可溶である化合物に対して作用し、重合後又は架橋後に該化合物を水系現像液に対して溶解性を低下させるものである。具体的には、エポキシ基、ビニルオキシ基、1-アルコキシアミノ基及びオキセタニル基等を有する架橋剤が挙げられる。該化合物が架橋作用を有する架橋剤であるとき、架橋する相手の化合物、つまり架橋剤と反応して現像液に対する溶解性が変化する化合物としては、フェノール性水酸基を有する化合物等が挙げられる。
酸により架橋作用を有する化合物は、重合性低分子化合物であっても、重合性ポリマーであってもよい。
【0066】
上記酸反応性化合物がポリマーであるとき、上記反応性化合物が結合したユニットに加えて、レジスト組成物において通常用いられているその他のユニットをポリマーに含有させてもよい。その他のユニットとしては、例えば、ラクトン部位、スルトン部位及びラクタム部位等からなる群より選択される少なくともいずれかの部位を有するユニット(I);エーテル結合、エステル結合及びアセタール結合等を有する基、並びに、ヒドロキシ基からなる群より選択される少なくともいずれかの基を有するユニット(II);ヒドロキシアリール基含有ユニット(III);等が挙げられる。さらに、上記第1光酸発生剤が結合したユニット(IV)及び上記第2光酸発生剤が結合したユニット(V)を含有しても良い。
【0067】
本発明のいくつかの態様において、上記ポリマーの各ユニットの比率は特に制限はないが、上記酸反応性化合物が結合したユニットが、その他のユニットと共に同一ポリマーのユニットとして含まれる場合、上記酸反応性化合物が結合したユニットは、ポリマー全ユニット中、10~70モル%であることが好ましく、15~65モル%であることがより好ましく、20~60モル%であることがさらに好ましい。
【0068】
上記ユニット(I)は全体の0~60モル%であることが好ましく、10~60モル%であることがより好ましく、20~60モル%であることがさらに好ましい。上記ユニット(II)は0~70モル%であることが好ましく、5~70モル%であることがより好ましく、10~60モル%であることがさらに好ましい。上記ユニット(III)は全体の0~90モル%であることが好ましく、10~80モル%であることがより好ましい。上記ユニット(IV)は0~30モル%であることが好ましく、1~30モル%であることがより好ましく、3~20モル%であることがさらに好ましい。上記ユニット(V)は0~30モル%であることが好ましく、1~30モル%であることがより好ましく、3~20モル%であることがさらに好ましい。
【0069】
<2-3>その他の成分
本発明のひとつの態様のレジスト組成物には、上記成分以外に必要により任意成分として、通常のレジスト組成物で用いられる有機溶剤、酸拡散制御剤、界面活性剤、有機カルボン酸、溶解阻止剤、安定剤、色素及び増感剤等を組み合わせて含んでいてもよい。
【0070】
有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、β-メトキシイソ酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、トルエン、キシレン、酢酸シクロヘキシル、ジアセトンアルコール、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等が好ましい。これらの有機溶剤は単独又は組み合わせて用いられる。
【0071】
上記酸拡散制御剤は、光酸発生剤から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を制御する効果を奏する。そのため、得られるレジスト組成物の貯蔵安定性がさらに向上し、またレジストとしての解像度がさらに向上するとともに、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に優れたレジスト組成物が得られる。
酸拡散制御剤としては、例えば、同一分子内に窒素原子を1個有する化合物、2個有する化合物、窒素原子を3個有する化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。また、酸拡散制御剤として、露光により感光し弱酸を発生する本発明のひとつの態様の上記オニウム塩化合物以外の上記光崩壊性塩基を用いることもできる。具体的には、特許3577743号、特開2001-215689号、特開2001-166476号、特開2008-102383号、特開2010-243773号、特開2011-37835号及び特開2012-173505号に記載の化合物が挙げられる。
酸拡散制御剤を含む場合その含有量は、上記酸反応性化合物100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~15質量部であることがより好ましく、0.05~10質量部であることがさらに好ましい。上記含有量には、本発明のひとつの態様の第1光酸発生剤は含まないものとする。
【0072】
上記界面活性剤は、塗布性を向上させるために用いることが好ましい。界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマー等が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、上記酸反応性化合物100質量部に対して0.0001~2質量部であることが好ましく、0.0005~1質量部であることがより好ましい。
【0073】
上記有機カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸、オキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ケトカルボン酸、安息香酸誘導体、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸等を挙げることができる。電子線露光を真空化で行う際にはレジスト膜表面より揮発して描画チャンバー内を汚染してしまう恐れがあるので、好ましい有機カルボン酸としては、芳香族有機カルボン酸、その中でも例えば安息香酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸が好適である。
【0074】
有機カルボン酸の含有量は、酸反応性化合物100質量部に対して0.01~10質量部が好ましく、より好ましくは0.01~5質量部、更により好ましくは0.01~3質量部ある。
レジスト組成物成分は、上記有機溶剤に溶解し、固形分濃度として、1~40質量%で溶解することが好ましい。より好ましくは1~30質量%、更に好ましくは3~20質量%である。
【0075】
本発明のひとつの態様のレジスト組成物がポリマーを含む場合、ポリマーは重量平均分子量が2000~200000であることが好ましく、2000~50000であることがより好ましく、2000~15000であることがさらに好ましい。上記ポリマーの好ましい分散度(分子量分布)(Mw/Mn)は、感度の観点から、1.0~1.7であり、より好ましくは1.0~1.2である。
本発明のいくつかの態様において、ポリマーの重量平均分子量及び分散度は、GPC測定によるポリスチレン換算値として定義される。
【0076】
本発明のひとつの態様のレジスト組成物は、含フッ素はっ水ポリマーを含んでいても良い。
上記含フッ素はっ水ポリマーとしては、特に制限はないが液浸露光プロセスに通常用いられるものが挙げられ、上記ポリマーよりもフッ素原子含有率が大きい方が好ましい。それにより、レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する場合に、含フッ素はっ水ポリマーのはっ水性に起因して、レジスト膜表面に上記含フッ素はっ水ポリマーを偏在化させることができる。
【0077】
フッ素はっ水ポリマーのフッ素含有率としては、フッ素はっ水ポリマー中の炭化水素基における水素原子の25%以上がフッ素化されていることが好ましく、50%以上フッ素化されていることがより好ましい。
【0078】
レジスト組成物中のフッ素はっ水ポリマーの含有量としては、本発明のひとつの態様の上記ポリマー(該フッ素はっ水ポリマーでないもの)100質量部に対し、0.5~10質量部であることが、レジスト膜の疎水性が向上する点から好ましい。フッ素はっ水ポリマーは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
本発明のひとつの態様の組成物は、上記組成物の各成分を混合することにより得られ、混合方法は特に限定されない。
【0080】
<3>パターン形成方法及びデバイスの製造方法
本発明のひとつの態様は、上記レジスト組成物を基板上に塗布する等してレジスト膜を形成する工程と、上記レジスト膜を露光する工程と、露光されたレジスト膜を現像する工程と、を含むパターン形成方法である。
また、本発明のひとつの態様は、該パターン形成方法を利用したデバイスの製造方法である。
本発明のひとつの形態は、上記レジスト組成物を用いて、レジスト膜を形成する工程とレジスト膜を露光する工程と露光されたレジスト膜を現像する工程とを含む、個片化チップを得る前のパターンを有する基板の製造方法であってもよい。
【0081】
レジスト膜を露光する工程において露光に用いる活性エネルギー線としては、本発明の一つの態様のオニウム塩化合物が活性化して酸を発生させ得る光であればよく、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、F2エキシマレーザ光、電子線、UV、可視光線、X線、電子線、イオン線、i線、EUV等を意味する。
本発明のひとつの態様において、フォトリソグラフィ工程の露光に用いる活性エネルギー線としては、電子線(EB)又は極端紫外線(EUV)等が好ましく挙げられる。
【0082】
光の照射量は、光硬化性組成物中の各成分の種類及び配合割合、並びに塗膜の膜厚等によって異なるが、1J/cm2以下又は1000μC/cm2以下であることが好ましい。
上記レジスト組成物は、上記増感化合物を含むか、対応する上記増感化合物を増感ユニットとしてポリマーに含む場合、活性エネルギー線の照射後に、紫外線等で第2の露光を行うことも好ましい。
【実施例】
【0083】
以下に、本発明のいくつかの態様を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0084】
<スルホニウム塩1の合成>
[合成例1]エトキシカルボニルスルホン酸塩の合成
4,4,4-トリフルオロクロトン酸エチル4.97gをメタノール10mL/水27mLに溶解した溶液に、亜硫酸水素ナトリウム8.52gを加え19時間加熱還流させる。反応溶液を減圧減縮し、MTBE(メチル-tert-ブチルエーテル)を用いて洗浄する。得られた水層を減圧濃縮することでエトキシカルボニルスルホン酸塩を白色固体として得る(6.75g、収率92%)。
1H-NMRよりこの化合物が目的化合物であることを確認する。1H-NMR測定結果を以下に示す。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ1.13(t,3H),2.61(dd,1H),2.90(dd,1H),3.68(tq,1H),4.01(q,2H)
【0085】
【0086】
[合成例2]ヒドロキシスルホン酸塩の合成
合成例1で得られたエトキシカルボニルスルホン酸塩1.57gの塩化メチレン12mL溶液に、氷冷下でDIBAL(ジイソブチルアルミニウムヒドリド)のヘキサン溶液11.5mL(1.03M)を滴下した。1時間攪拌した後、メタノールを用いて反応を停止させる。得られた反応溶液を減圧減縮しヒドロキシスルホン酸塩を得る。
1H-NMRよりこの化合物が目的化合物であることを確認する。1H-NMR測定結果を以下に示す。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ2.31(m,2H),3.68(tq,1H),4.05(m,2H)
【0087】
【0088】
[合成例3]3-ヒドロキシアダマンチルカルボニルスルホン酸塩の合成
ヒドロキシアダマンタンカルボン酸880mgのアセトニトリル30mL溶液に対し、EDCL(塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)859mgを添加し、1時間攪拌する。その後、合成例2で得られたヒドロキシスルホン酸塩1.40gのアセトニトリル溶液を氷冷滴下する。2時間攪拌した後、水を加えて反応を停止させる。
得られた反応溶液を減圧濃縮することで3-ヒドロキシアダマンチルカルボニルスルホン酸塩を白色固体として得る(878mg、収率56%)。
1H-NMRよりこの化合物が目的化合物であることを確認する。1H-NMR測定結果を以下に示す。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ1.42-1.61(m,14H),1.82-1.91(m,1H),2.08-2.12(m,1H),3.18(m,1H),4.15-4.20(m,2H),4.51(s,1H)
【0089】
【0090】
[合成例4]トリフェニルスルホニウムスルホン酸塩(スルホニウム塩1)の合成
3-ヒドロキシアダマンチルカルボニルスルホン酸塩1.0gの塩化メチレン50mL溶液に、トリフェニルスルホニウムメチルスルホン酸1.0g及び水50mLを加え、室温で1時間攪拌し塩交換を行う。有機層を分液後、水洗浄及び1質量%塩酸溶液洗浄を行い、減圧減縮し、トリフェニルスルホニウムスルホン酸塩(スルホニウム塩1)を淡黄色油状物質として得る(1.43g、収率90%)。
1H-NMRよりこの化合物が目的化合物であることを確認する。1H-NMR測定結果を以下に示す。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ1.42-1.61(m,14H),1.82-1.91(m,1H),2.08-2.12(m,1H),3.18 (m, 1H), 4.15-4.20 (m, 2H), 4.51(s,1H),7.79-7.92(m,15H)
【0091】
【0092】
<スルホニウム塩2の合成>
[合成例5]
上記合成例3において3-ヒドロキシ-1-アダマンタンカルボン酸に代えて4-オキソ-1-アダマンタンカルボン酸を用いた以外は同様の処方にて合成を行い、さらに合成例4と同様に塩交換を行い、下記式に示すスルホニウム塩2を合成する。
1H-NMRよりこの化合物が目的化合物であることを確認した。1H-NMR測定結果を以下に示す。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ1.42-2.03(m,14H),2.08-2.12(m,1H),3.18(m,1H),4.15-4.20(m,2H),7.79-7.92(m,15H)
【0093】
【0094】
<スルホニウム塩3の合成>
[合成例6]
上記合成例3において3-ヒドロキシ-1-アダマンタンカルボン酸に代えてβ-ヒドロキシイソ吉草酸を用いた以外は同様の処方にて合成を行い、さらに合成例4と同様に塩交換を行い、下記式に示すスルホニウム塩3を合成する。
1H-NMRよりこの化合物が目的化合物であることを確認した。1H-NMR測定結果を以下に示す。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ1.47(s,6H),1.82-1.91(m,1H),2.08-2.40(m,3H),3.18(m,1H),4.15-4.20(m,2H),4.50(s,1H),7.79-7.92(m,15H)
【0095】
【0096】
<スルホニウム塩4の合成>
[合成例7]
上記合成例3において3-ヒドロキシ-1-アダマンタンカルボン酸に代えて4-ヒドロキシ-1,2-オキサチアン-2,2-ジオキシドを用いた。反応はアセトニトリル中触媒量のp-トルエンスルホン酸1水和物を用いてエーテル化反応を実施し、水を添加し反応を終了させた。得られた混合溶液を塩化メチレンで抽出し、トリフェニルスルホニウムメチルスルホン酸及び水を加えて1時間撹拌した。得られた有機層を減圧濃縮し、ジイソプロピルエーテルを加え結晶化させ、ろ別することにより下記式に示すスルホニウム塩4を合成する。
1H-NMRよりこの化合物が目的化合物であることを確認した。1H-NMR測定結果を以下に示す。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ,1.89-2.01(m,3H),2.08-2.40(m,1H),3.18(m,1H),3.39-3.42(m,1H),3.50-3.68 (m,1H),4.15-4.20 (m,2H),4.22-.4.35(m,2H),7.79-7.92(m,15H)
【0097】
【0098】
<スルホニウム塩5の合成>
[合成例8]
上記合成例3において3-ヒドロキシ-1-アダマンタンカルボン酸に代えて6-オキソ-3-ピペリジン-1-カルボン酸を用いた以外は同様の処方にて合成を行い、さらに合成例4と同様に塩交換を行い、下記式に示すスルホニウム塩5を合成する。
1H-NMRよりこの化合物が目的化合物であることを確認した。1H-NMR測定結果を以下に示す。1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ1.65-1.78(m,2H),1.82-1.91(m,1H),2.08-2.40(m,4H),3.18 (m,1H),3.65-3.78(m,2H),3.90 (bs, 1H),4.15-4.20(m,2H),7.79-7.92(m,15H)
【0099】
【0100】
<レジスト組成物の調製>
表1に示す各成分を混合して溶解し、ポジ型のレジスト組成物を調製した。これらのレジスト組成物を用い、感度、解像性及びラインエッジラフネス(LER)について評価を行った。評価方法は下記の通りである。結果を表2に示す。
【0101】
【0102】
表1中の各略号は以下の意味を有する。また、[]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)-1:下記高分子化合物(下記式(a01)で示されるポリマー)
(B)-1:上記スルホニウム塩1
(B)-2:上記スルホニウム塩2
(B)-3:上記スルホニウム塩3
(B)-4:上記スルホニウム塩4
(B)-5:上記スルホニウム塩5
(B)-6:下記に示スルホニウム塩6
(B)-7:下記に示すスルホニウム塩7
(B)-8:下記に示すスルホニウム塩8
(C)-1:下記化学式b01で表される化合物
(C)-2:下記化学式b02で表される化合物
(D)-1:トリ-n-オクチルアミン
(E)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
なお、本発明のいくつかの態様における高分子化合物のユニットのモノマー比は上記に限定されない。
【0107】
<評価>
各レジスト組成物をシリコンウェハ上にスピンコータにより回転塗布した後、ホットプレート上で110℃で60秒間プレベークし、膜厚150nmの塗布膜を得た。90nmのラインパターンが得られるようにマスクを用い、ArFエキシマレーザーステッパー(波長193nm)により露光し、次いで実施例1~10、比較例1~6及び比較例8ではPEB温度を110℃で実施した。また実施例11~15及び比較例7ではPEB温度を120℃で実施した。それぞれの温度で90秒間ポストベークを行った。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて60秒間現像を行い、その後30秒間純水でリンスしてパターン形成された基板を得た。
【0108】
このときの感度、解像性、焦点深度及びラインエッジラフネスを比較例8の値を基準として比べたときの実施例1~15及び比較例1~7の感度、解像性及びラインエッジラフネス(LER)の各性能を下記を指標として評価した。なお、レジストパターンの測長には走査型電子顕微鏡を用いた。結果を表2に示す。
【0109】
◎:比較例8に対して10%以上の向上が見られた場合
○:比較例8に対して5%以上10%以下の向上が見られた場合。
△:比較例8に対して0%以上、5%以下の向上の場合。
×:比較例8に対して劣る場合。
【0110】
【0111】
(感度)
90nmのラインパターンを再現する最小露光量で示した。感度は最小露光量が小さいほど良好である。
【0112】
(解像性)
90nmのラインパターンを再現する最小露光量により解像できるラインパターンの幅(nm)、即ち、限界解像力を示す。解像性は、数値が小さいほど良好である。
【0113】
(ラインエッジラフネス:LER)
90nmのラインパターンを再現する最小露光量により得られた90nmのラインパターンの長手方向のエッジ2.5μmの範囲について、エッジがあるべき基準線からの距離を50ポイント測定し標準偏差(σ)を求め、その3倍値(3σ)をLERとして算出した。値が小さいほどラフネスが小さく均一なパターンエッジが得られ良好な性能である。
【0114】
特定の構造を有する本発明のいくつかの態様のオニウム塩化合物を含有した光酸発生剤を光崩壊性塩基として用いた実施例1~10については、感度、解像性及びLERの特性に優れていた。一方、本発明のいくつかの態様のオニウム塩化合物を含有せず、光崩壊性塩基としてその他のオニウム塩を用いた比較例1~6については、感度、解像性及びLERの特性に課題が残る。
また、特定の構造を有する本発明のいくつかの態様のオニウム塩化合物を光酸発生剤として用いた実施例11~15については、感度、解像性及びLERの特性に優れていた。一方、本発明のいくつかの態様のオニウム塩化合物を光酸発生剤に用いていない比較例7~8については、感度、解像性、焦点深度及びLERの特性に課題が残る。
以上の結果から、本発明のひとつの態様におけるオニウム塩化合物を光酸発生剤又は光崩壊性塩基として含むレジスト組成物は、リソグラフィにおける感度、解像性、焦点深度に優れ、且つ、微細パターンにおけるLERを低減できる効果を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明のひとつの態様である酸発生剤は、適度な酸強度を有する。そのため、未露光部及び露光部では未分解のオニウム塩化合物が酸拡散制御剤として作用し、露光部ではイオン化されることで2次電子を発生させ、光酸発生剤からの酸の発生を向上させ得るためリソグラフィにおける感度、解像性、焦点深度に優れ、且つ、微細パターンにおけるLER(ラインエッジラフネス)を低減できる。