(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】眼鏡レンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/00 20060101AFI20220620BHJP
G02B 3/08 20060101ALI20220620BHJP
G02C 7/02 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
G02C7/00
G02B3/08
G02C7/02
(21)【出願番号】P 2017564017
(86)(22)【出願日】2016-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2016062428
(87)【国際公開番号】W WO2016202595
(87)【国際公開日】2016-12-22
【審査請求日】2018-02-06
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】102015109703.6
(32)【優先日】2015-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516087698
【氏名又は名称】トーツ・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TOOZ TECHNOLOGIES GMBH
【住所又は居所原語表記】Turnstrasse 27, 73430 Aalen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ピュッツ,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】リファイ,カタリーナ
(72)【発明者】
【氏名】リンディッグ,カルステン
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】小濱 健太
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-133554(JP,A)
【文献】特表2002-500381(JP,A)
【文献】特開2009-3196(JP,A)
【文献】特開平10-10301(JP,A)
【文献】特開平9-269402(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0103416(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0281021(US,A1)
【文献】特開平11-338335(JP,A)
【文献】特開2007-272106(JP,A)
【文献】特表2006-505807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/00
G02C 7/02
G03H 1/18
G02B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズの製造方法であって、
HOE可能ポリマー層は、ホログラフィック光学素子を形成するのに適しており、
前記製造方法は、
前記HOE可能ポリマー層の前駆体により、前記眼鏡レンズ
の透明基材に対して相補的な形状を有するキャリアを被覆し、
前記HOE可能ポリマー層を得るために、前記キャリア上に位置する前駆体を転化し
、
前記眼鏡レンズの
前記透明基材上に前記HOE可能ポリマー層を固
定し、
前記ホログラフィック光学素子を形成するために、前記HOE可能ポリマー層に空間分解露光を行うことを含み、
前記空間分解露光は、
前記眼鏡レンズの前記透明基材の幾何学的形状を記述する幾何学的データを取得し、
前記幾何学的データに依存して、空間分解された露光の強度及び位相を記述する制御データを決定することを含み、
前記空間分解露光が制御データで実行される、眼鏡レンズの製造方法。
【請求項2】
前記HOE可能ポリマー層の固定は、接着及び/又はラミネートによって行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記製造方法において、前記透明基材上に、前記HOE可能ポリマー層を固定した後、
前記HOE可能ポリマー層から前記キャリアを除去する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記HOE可能ポリマー層に、硬質層、反射防止層、及びクリーンコート層の少なくとも一つを塗布する方法をさらに含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記硬質層、前記反射防止層、および前記クリーンコート層の少なくとも一つを塗布し
た後に、前記HOE可能ポリマー層の空間分解露光が行われる、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記前駆体及び/又は前記HOE可能ポリマー層は、光反応性成分及び/又はHOEポリマー及び/又はポリマーマトリックスを含む、
請求項1乃至
5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記前駆体及び/又は前記HOE可能ポリマー層は、光反応性成分及び/又はHOEポリマー及び/又はポリマーマトリックスを含み、
前記ポリマーマトリックス及び/又はさらなるポリマーを含むプライマー層を前記透明基材に塗布することをさらに含む、
請求項1乃至
5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記空間分解露光は、前記HOE可能ポリマー層の表面に行われる、請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、眼鏡レンズ、及び眼鏡レンズの製造方法、及び眼鏡である。より詳細には、様々な実施形態は、眼鏡レンズの基材上に配置され、ホログラフィック光学素子を形成するのに適したHOE可能ポリマー層(HOE-capable polymer layer)を形成するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィック光学素子(HOE;Holographic Optical Element)を形成する光学構造素子の製造技術が知られている。HOEは、典型的には、ホログラフィック特性が、例えば、集束又は収集、分散及び/又はミラーリングなど、光の特定のビーム経路を得るために使用される光学構造素子を指す。このようにして、特定の光機能性を実現することができる。ホログラフィック特性は、光の波の性質、より具体的には、コヒーレンス及び干渉効果を利用する。この場合、光の強度および位相の両方が考慮される。
【0003】
例えば、光学レンズがモールド内の重合性物質から形成されている技術が知られている(米国特許出願公開第2001/0055094号公報)。しかしながら、そのような技術は、様々な制限又は欠点を有する。例えば、HOEを形成するのに適した重合性材料は、典型的には比較的柔らかく、低剛性、及び低強度を示す。より具体的には、眼鏡レンズに関して、例えば、落下時または研磨媒体に対する外部応力に対して敏感に増加する可能性がある。これは、眼鏡レンズの弾性を制限する可能性がある。さらに、屈折力、眼の非点収差補正、色彩補正、高次の補正、または視野角に応じて変化する補正などのホログラフィック特性に基づく眼鏡レンズによって実現可能な光学機能性等が制限される可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、改善された眼鏡レンズ及び眼鏡レンズを製造するための改善された方法が必要とされている。より詳細には、上述の欠点の少なくとも一つを克服する技術が必要とされている。より詳細には、不具合の傾向が高くなく、HOEを含む/収容することができる比較的丈夫な眼鏡レンズが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、本発明は、眼鏡レンズに関する。眼鏡レンズは、透明基材を含む。眼鏡レンズは、HOEを形成するのに適した少なくとも一つのHOE可能ポリマー層をさらに含む。少なくとも一つのHOE可能ポリマー層は、透明基材上に配置される。
【0006】
基材は、可視光に対して透過してもよく、基材を透過する可視光は、少なくとも部分的であってもよい。透明基材は、例えば、他の範囲よりも強く光の個々のスペクトル範囲を吸収することができ、このようにして、選択的に透過させることができる。基材は、眼鏡レンズに基本的な機械的構造を付与することができ、したがって、眼鏡レンズの特定の機械的復元力を与えることができる。基材はまた、眼鏡レンズの光学機能を実施することもできる。例えば、基材は光学レンズを構成することができる。これは、例えば、眼鏡レンズの特定の屈折力が達成されることを可能にする。このようにして、ユーザの目の視覚的欠陥を補償または矯正することができる。
【0007】
基材の材料として、特殊な光学ミネラルガラスおよびポリマーを用いることができる。例えば、透明ポリマー基材は、以下のグループから選択することができる;ポリアリルジグリコールカーボネート(ADC)、ポリウレタン(PUR)、アクリレートおよびアリル系、ポリチオウレタン(PTU)、エピスルフィド/チオール系、及び、例えば、ポリカーボネートまたはポリアミドのような熱可塑性プラスチック。基材の中心の厚さは、例えば、1~3mmの範囲、また約2mmであることが好ましい。このようにして、透明基材は、眼鏡レンズに比較的高い堅牢性を与えることができる。さらに、特定の光学機能を実現することも可能である。基材の厚さは、位置の関数として変化し得る。
【0008】
少なくとも一つのHOE可能ポリマー層は、様々な方法で基材上に配置することができる。例えば、少なくとも一つのHOE可能ポリマー層は、基材のすぐ近くに配置することができる。しかしながら、少なくとも一つのHOE可能ポリマー層と基材との間にさらなる層、例えば、基材へのポリマーの接着を改善するためのプライマー層(primer layer)を配置することもできる。代替的又は追加的に、基材上のHOE可能ポリマー層を固定するための固定層を、HOE可能ポリマー層と基材との間に配置することも可能である。
【0009】
基材上の少なくとも一つのHOE可能ポリマー層の配置は、少なくとも一つのHOE可能ポリマー層は、典型的に比較的柔らかい材料にもかかわらず、全体として眼鏡レンズが高い堅牢性を示すことを可能にする。より具体的には、眼鏡レンズは、破損に対して比較的堅牢生を有するように構成することができる。
【0010】
HOE可能ポリマー層は、例えば、特定のポリマー(ポリマーマトリックス)のマトリックスを含むことができる。このポリマーマトリックスは、特定の構造をポリマー層に付与することができる。
【0011】
少なくとも一つのHOE可能ポリマー層は、HOEを形成することが可能である。少なくとも一つのHOE可能ポリマー層は、HOEポリマーを含むことができる。HOEポリマーは、例えば、ポリマーマトリックス中に埋め込むことができ、より具体的には、HOEポリマーは、ポリマーマトリックスを形成する特定のポリマーとは異なっていてもよい。HOEポリマー鎖の密度における誘発された局所的変動は、典型的には、HOE可能ポリマー層の屈折率の局所的変化を引き起こし、上述のHOEを形成する。HOEポリマーに対応する構造は、例えば、光反応性成分の適切な露光によって達成することができる。
【0012】
HOE可能ポリマー層は、HOEを形成しないことも可能であるが、例えば、適切な露光及び/又はさらなる処理工程によってHOE可能ポリマー層にHOEを形成することも可能である。少なくとも一つのHOE可能ポリマー層がHOEを形成するのに適しているために、少なくとも1つのHOE可能ポリマー層は、光反応性成分または複数の光反応性成分を含むことができる。例えば、光反応性成分の個々の分子は、ポリマーマトリックス中に埋め込むことができる。光反応性成分はポリマー反応物を含むことができる。ポリマー反応物は、上述のHOEポリマーに変換され、最終的にHOEを形成する。この変換は、ポリマー反応物のより短い分子の連結及び/又は架橋を介して行うことができる。変換はまた、ポリマー反応物の既に連結された及び/又は架橋された分子の再配列を含み得る。例えば、ポリマー反応物は、フォトポリマーまたはフォトモノマーであり得る。
【0013】
例えば、光反応性成分は染料を含むことができ、例えば、染料の個々の分子をポリマー反応物の個々の分子に結合させることができる。光反応性成分は、例えば、開始剤などのさらなる成分を含むことも可能である。染料及び/又は開始剤によって、ポリマー反応物は、所定の波長の光に露光されてHOEポリマーに変換され得る。ポリマー反応物の個々の分子は、少なくとも1つのHOE可能ポリマー層がHOEを形成しない状態で、非結合または未架橋であり、分子またはネットワークの比較的短い鎖を形成し、及び/又は特別に配置された鎖を形成、または分子のネットワークを含む。HOEポリマーがポリマー反応物に対して未変化の構造及び/又は分布を示すように、ポリマー反応物の分子は、適切な波長範囲での露光によって架橋及び/又は再配置することができる。
【0014】
このような重合によって、少なくとも1つのHOE可能ポリマー層の屈折率を、未露光ポリマー層の値に対して局所的に変化させることができる。
【0015】
例えば、眼鏡レンズは、拡散バリア層をさらに含むことができる。拡散バリア層は、HOE可能ポリマー層にすぐ隣接することができる。拡散層は、HOEポリマーまたは光反応性成分が時間とともに拡散するのを防ぐことができる。
【0016】
一般に、光学機能を実現するためにHOEを使用するための様々な可能性がある。例えば、光学機能性は、以下のグループから選択することができ、レンズ、ミラー、波長固有のミラー、プリズム、半透過ビーム結合器、収束レンズ、散乱レンズ、凹面鏡、凸面鏡、カラーフィルタ、データ眼鏡、およびそれらの組み合わせを含む。
【0017】
例えば、眼の視覚的欠陥を補償するための比較的複雑な光学的補正は、HOEによって実施することができる。これに関して、例えば眼の視覚的欠陥を補償することを含む眼鏡レンズの光学機能性は、HOEおよび基材のレンズ特性の両方に影響する可能性がある。基材とHOEは、光学機能を実現するために相互作用することができる。複合効果を達成することができる。このようにして、特に複雑な光学機能を実現することができる。
【0018】
例えば、HOEは、撮像装置の実装に使用することができる。このようにして、例えば、HOEは、より具体的にはデータから画像を生成するデータ眼鏡の実施を可能にすることができる。データ眼鏡は、ヘッド装着型デバイス(HWD)として使用することができる。データ眼鏡は、従来の眼鏡のように頭部に装着される装置であり、一方で、これらのデータ眼鏡は環境の観察を可能にし、他方では画像データの観察を可能にする。データという用語は、ここでは一般的な意味で理解されるべきであり、シンボル、サイン、数字、写真、ビデオなどを指すことができる。他のデバイスでは、データを観察することは可能であるが、同時に環境を観察することはできない。データは、環境とオーバーラップする(拡張された)状況に関連した方法で提示することができ、例えば、ナビゲーションデータ、メッセージデータ、通知、ドキュメント、仮想入力インターフェースなどに関連して、周囲の環境を補完することができる。
【0019】
データ眼鏡の枠組みにおいて、HOEは、例えば、データ眼鏡の光源アセンブリによって放射される光のために、多種多様な光学機能を実現することができる。例えば、眼鏡レンズが撮像装置の光伝導素子として光学機能を有することが可能である。この目的のために、HOEは、所定の波長範囲の光を変更する、すなわち、より具体的には、光を観察部位の方向に「迂回させる」か、またはそれを仮想として反射する波長特有のミラーとして構成することができる。ユーザが観察することができ、他の波長の光をそのまま透過する中間画像を生成する。このようにして、HOEは、例えば、データ眼鏡の光源アセンブリから来る所定の波長範囲の光をユーザの目に向けて偏向させ、所定の波長範囲以外の周囲光の波長を送信する半透過ビーム結合器として機能することができる。波長範囲は変わらない。さらに、HOEは、データ眼鏡に関連して、さらなる光学効果機能を有する光学機能を有することができる。例えば、HOEは、特定の角度範囲に対してアクティブであり、他の角度範囲に影響を与えない、すなわち波長固有の反射器を実装することができる。
【0020】
データ眼鏡の眼鏡レンズは、複数のHOEを有することができる。第1HOEは、光源アセンブリから来る光をさらなるHOEに向けるように構成することができる。さらなるHOEは、眼鏡レンズに結合された光を、ユーザの眼の方向に分離するように構成することができ、その結果、ユーザは、特定の視野角で画像生成器の画像を観察する。
【0021】
さらなる用途として、識別及び/又は商標の要素(ブランド)は、HOEの手段によって実施することができる。例えば、眼鏡レンズのシリアル番号は、HOEによって比較的偽造防止の方法で表示することができる。代替的又は追加的に、HOEによって眼鏡レンズの製造者を表示することができる。この目的のために、代替的又は追加的に、眼鏡着用者または眼鏡の個人識別特性は、HOEによって、所有者または眼科医が認識可能な方法で表示することができる。
【0022】
上述の技術を用いることにより、少なくとも1つのHOE可能ポリマー層の比較的柔らかい材料を眼鏡レンズに組み込むことが可能となり、眼鏡レンズの本質的な物理的性質、例えば、HOE可能ポリマー層を有さない実施形態と比較して、少なくとも1つのHOE可能ポリマー層によって、例えば、光学機能および機械的強度が損なわれないか、または無視できる範囲でしか損なわれない。典型的には、従来の眼鏡レンズは、本実施形態による眼鏡レンズの基材に相当する層を有する。より具体的には、従来の眼鏡レンズは、HOE可能ポリマー層の特性と同様の特性を有する層を含む可能性がある。従って、そのようなHOE可能ポリマー層は、その光学的機能を損なうことなく既存の層の構成に一体化することが可能である。
【0023】
例えば、眼鏡レンズは、透明基材上に配置された透明硬質層をさらに含むことができる。少なくとも1つのHOE可能ポリマー層は、透明基材と硬質層との間に配置することができる。
【0024】
硬質層は、例えば、少なくとも1つのHOE可能ポリマー層および基材と比較して、硬質層に比較的高い剛性および強度を付与する材料を含むことができる。このようにして、特に眼鏡レンズの高い堅牢性を達成することができる。硬質層は、眼鏡レンズの熱的および機械的特性を改善することができる。例えば、硬質層は、有機材料を含むことができる。例えば、硬質層は、ポリシロキサン系材料などの有機/無機ハイブリッド材料を含むことができる。
【0025】
硬質層は、反射防止層またはクリーンコート層の基材への接着性を改善するために設けることができる。任意選択的に、眼鏡レンズは、反射防止層を含むこともできる。代替的又は追加的に、眼鏡レンズはクリーンコート層を含むこともできる。例えば、両方の層は無機材料を含むことができる。例えば、反射防止層およびクリーンコート層は、無機材料の主要部分を含むことができる。
【0026】
例えば、反射防止層及び/又はクリーンコート層は、眼鏡レンズの1つの前面に面する面、基材の一方の側に配置することができる。例えば、以下の層順序で実施することができる:(裏側)基材-HOE可能ポリマー層-硬質層-反射防止層-クリーンコート層(前面)。
【0027】
代替的又は追加的に、反射防止層及び/又はクリーンコート層を、眼鏡レンズの1つの裏面側に面する基材の側に配置することも可能である。例えば、以下の層順序を実施することができる:(裏側)クリーンコート層-反射防止層-硬質層-基材-HOE可能ポリマー層-硬質層-反射防止層-クリーンコート層(前面)。
【0028】
例えば、反射防止層は、SiO2、TiO2、ZrO2、Al2O3のうち、少なくとも2つの材料を積層配置で含むことができる。このようにして、例えば、酸化物材料の干渉層積層を形成することができる。反射防止層の層厚は、例えば、200~700nm、好ましくは300~500nmの範囲であるとよい。反射防止層によって、眼鏡レンズの低減された反射は、光学機能性として実装することができ、眼鏡レンズの前面に入射する光の反射率を低減することができ、代替的又は追加的に、眼鏡レンズの裏側に入射する光の反射率を低減することができる。光の反射を低減することができる。
【0029】
クリーンコート層は、汚れの付着を防止するために、眼鏡レンズの表側または裏側に設けることができる。例えば、前側は凸状とすることができ、及び/又は後側は凹状とすることができる。クリーンコート層の層厚は、5~50nmの範囲、好ましくは10nm未満の範囲であるとよい。例えば、クリーンコート層は、疎水性及び/又は疎油性の特性を有する材料を含むことができる。
【0030】
一般に、眼鏡レンズは、透明基材上に配置された反射防止層をさらに含むことも可能である。少なくとも1つのHOE可能ポリマー層は、透明基材と反射防止層との間に配置することができる。より具体的には、このような状況では、硬質層を設ける必要はない。より具体的には、反射防止層は、HOE可能ポリマー層に直接適用することができる。
【0031】
例えば、少なくとも1つのHOE可能ポリマー層のそれぞれの層の厚さは、1μm~100μmの範囲、好ましくは10μm~100μmの範囲であり得る。このような層の厚さは、特に柔軟な方法でHOEの光学機能を構成することを可能にすることができる。複雑な光機能を実現することができます。これにより、比較的強い光学的補正を行うことが可能になる。数μmの範囲内の層の厚さは、光学機能の実施に十分である。
【0032】
少なくとも1つのHOE可能ポリマー層の平均屈折率は、透明基材及び/又は硬質層の屈折率と本質的に同じであることが可能であり、例えば、HOE可能ポリマー層中のポリマーの局所的な連結による屈折率の局所的な変化とは無関係である。この場合、「本質的に同じ」とは、屈折率の偏りが、例えば、少なくとも1つのHOE可能ポリマー層の厚さの変動を考慮しても-例えば、干渉リングなどのような顕著な干渉効果を生じさせないか、または全く引き起こさないことを意味することができる。これに関して、HOE可能ポリマー層は、例えばTiO2ナノ粒子及び/又は芳香族系及び/又はチオール成分のような少なくとも1種の酸化物材料を添加剤として含むことができる。典型的には、対応する濃度に応じて、HOE可能ポリマー層の屈折率を選択的に制御することができる。
【0033】
例えば、少なくとも1つのHOE可能ポリマー層を透明基材の前側に配置することができる。また、少なくとも1つのHOE可能ポリマー層を透明基材の裏側に配置することも可能である。
【0034】
例えば、前面が凸面であってもよい。代替的又は追加的に、裏面が凹状であってもよい。例えば、これは、片面凹基材または眼鏡レンズであってもよい。
【0035】
一般に、眼鏡レンズは、1つまたは複数のHOE可能ポリマー層を含むことができる。例えば、第1HOE可能ポリマー層を透明基材の凸部を前側に配置し、第2HOE可能ポリマー層を透明基材の凹部を後側に配置することが可能である。眼鏡レンズは、各HOE可能ポリマー層に対して1つまたは2つの隣接する拡散バリア層を含むことが可能である。
【0036】
眼鏡レンズは、プライマー層をさらに含むことができる。プライマー層は、例えば、ポリマーマトリックス及び/又はさらなるポリマーを含むことができる。プライマー層は、例えばHOEがまだ形成されていなければ、光反応性成分を含むことができるHOE可能ポリマー層とは別に、光反応性成分を含むことが可能である。プライマー層がHOEポリマーを含まないことも可能である。プライマー層は、HOEを形成するのに不適切である可能性がある。例えば、プライマー層はポリマー分散液から塗布することができる。
【0037】
プライマー層の層厚は、0.7~1.0μmの範囲であり得る。典型的には、プライマー層に使用される材料は比較的柔らかい。このため、プライマー層は、硬質層および反射防止層またはクリーンコート層の基材への改善された接着を与えることができる。さらに、プライマー層は、応力吸収性基材として機能することができる。これは、例えば、FDA規格によるボール落下衝撃試験において生じるような応力を、よりよく吸収することを可能にする。
【0038】
典型的には、プライマー層の材料は、HOE可能ポリマー層の材料に類似しており、より具体的には、同様の機械的及び/又は化学的特性を有することが可能である。例えば、プライマー層は、HOE可能ポリマー層のポリマーマトリックスを含むこともできる。しかしながら、プライマー層は、ポリマーマトリックスまたはHOE可能ポリマー層のHOEポリマーと同様の物理的および化学的性質を有することができるさらなるポリマーを含むことが可能である。したがって、HOE可能ポリマー層の平均によって達成されるプライマー層に代えて、またはプライマー層に加えて、上で説明したように、様々な有利な効果を達成することが可能であり得る。
【0039】
以上、眼鏡レンズについて、基材、HOE可能ポリマー層、硬質層、反射防止層、クリーンコート層、プライマー層について説明した。眼鏡レンズは、さらなる層または異なる層を含むことが可能である。例えば、眼鏡レンズのさらなる特性は、さらなる層によって実現または改善することができる。例えば、結露を低減するための層を設けることができる。このような層は親水性になるように構成することができる。入射光の偏光フィルタリングのための層を設けることも可能である。光互変性を有する層を設けることも可能である。これらの上述の技術では、典型的には100μmまでの層厚を有する層が使用される。そのような層に使用される材料は、比較的軟らかく、例えば、HOE可能ポリマー層の軟らかさに匹敵する柔らかさを有することが多い。典型的には、このような層はポリマー基材上に配置され、例えばそれに直接隣接することができる。より詳細には、このような層を基材と硬質層との間に配置することが可能である。
【0040】
上記では、様々な実施形態に従って眼鏡レンズの態様を例示した。対応する技術を用いて、従来の眼鏡レンズに基づいてHOE可能ポリマー層を積層することが可能である。この場合、従来の硬質層および反射防止層の機能が著しく損なわれないように統合することができる。より詳細には、HOE可能ポリマー層は、従来のプライマー層の機械的性質に匹敵する機械的性質を有することが可能であり得る。このため、様々な実施形態に係る眼鏡レンズにプライマー層を設ける必要がない場合がある。これは、HOE可能ポリマー層の材料が、従来のプライマー層の材料と同様の化学的および機械的特性を有することができるため、この場合であり得る。したがって、光学的要求プロファイル(例えば、層の厚さおよび効率に関して)に応じて、HOE可能ポリマー層は、完全にまたは部分的に従来のプライマー層の役割を果たすことができる。
【0041】
さらなる実施形態によれば、本発明は、眼鏡レンズを製造する方法に関する。眼鏡レンズは、HOEを形成するのに適したHOE可能ポリマー層を含む。この方法は、透明基材上に配置された前駆体を、HOE可能ポリマー層を形成するために変換することをさらに含む。
【0042】
したがって、HOE可能ポリマー層を基材上のその場で製造することが可能である。前駆体をHOE可能ポリマー層に変換することは、例えば加熱、乾燥及び/又は例えば熱硬化によって行うことができる。したがって、物理的変換ステップを使用することもできる。前駆体は、例えば、光反応性成分を含むことができる。例えば、前駆体はポリマー反応物を含むことができる。前駆体は、光反応性成分を分散液または溶液の形態で含むことができる。前駆体もHOE可能ポリマー層もHOEを形成することはできない。この目的のためにさらなる随意的な露光工程が必要とされ得る。
【0043】
変換は、化学反応を含むこと、すなわち反応的に起こることも可能である。例えば、変換は、対応する反応体、例えば、イソシアネートおよびポリオールのポリマーマトリックスの形成を含むことができる。さらなる反応物は、例えば、光感受性添加剤または他の添加剤のような転化の間に適用することができる。より具体的には、これは均質な層の厚さで行うことができる。
【0044】
例えば、前駆体は、HOE可能層を含むポリマーキャリアフィルムを含むことができる。このような技術は、例えば、ドイツ、レーヴァークーゼンのバイエルマテリアルサイエンスAG(Bayer Material Science AG)の米国特許出願公開第2010/0203241号明細書またはBayfol(登録商標)HXというブランド名で知られている。この場合、光反応性成分としては、例えば感光性分子を取り込むためのPUR系ポリマーマトリックスを用いることができる。この場合、光反応性成分はHOE形成ポリマーを含み、これは露光により再配列され、したがって反応性指数の差がホログラムの形成に必要な0.005~0.05の範囲内にある。前駆体は、高分子キャリアフィルムに限定されない。一般に、前駆体は他のまたはさらなる基材を含むことが可能である。
【0045】
前駆体による基材のコーティングは、例えば、浸漬コーティングおよびスピンコーティング、噴霧、及び/又はフローコーティングなどの湿式コーティング技術を含むことができる。代替的又は追加的に、コーティングは、例えば、インクジェット及び/又はパッド印刷などの印刷方法を含むことができる。
【0046】
さらに、本方法は、コーティングする前に基材を洗浄することを含むことができる。例えば、適切な溶媒を用いて洗浄を行うことができる。さらに、本方法は、コーティングする前に基材を活性化することを含むことができる。例えば、活性化は、適切な薬剤による化学的活性化及び/又は物理的活性化、例えば適切なプラズマまたはコロナ処理を含むことができる。
【0047】
本実施形態による眼鏡レンズを製造するためのこのような技術は、例えば、複数のHOE可能ポリマー層に対して繰り返し使用することができる。
【0048】
先に、HOE可能ポリマー層を眼鏡レンズの基材上のその場で製造することができる技術を例示した。しかしながら、HOE可能ポリマー層を別個の工程で製造し、次いで基材に移すことも可能である。これについては、以下にさらに詳細に説明する。
【0049】
さらなる実施形態によれば、本発明は、眼鏡レンズを製造する方法に関する。眼鏡レンズは、HOEを形成するのに適したHOE可能ポリマー層を含む。この方法は、HOE可能ポリマー層の前駆体でキャリアをコーティングすることを含む。この方法は、HOE可能ポリマー層を得るために、キャリア上に配置された前駆体を変換することをさらに含む。この方法は、HOE可能ポリマー層を眼鏡レンズの透明基材上に固定するステップをさらに含む。
【0050】
前駆体、基材、およびHOE可能ポリマー層に変換する前駆体に関して、さらなる実施形態に関連して上記で説明した特徴を使用することができる。したがって、キャリアの被覆および前駆体の変換は、基材から個別におよび別々に行うことが可能である。HOE可能ポリマー層を固定する際に、キャリアを基材に近づけることができる。これは、HOE可能ポリマー層が位置する担体の側面を基材に向けて回転させることによって行うことができる。HOE可能ポリマー層は、例えば、機械的圧力を加えることによって基材上に固定することができる。このような技術によって、基材を損傷することなくHOE可能ポリマー層を製造することが可能である。さらに、キャリアは、変換に必要な工程に参加するのに特に適している。例えば、キャリアは、フィルムまたはハーフシェルであってもよい。
【0051】
例えば、HOE可能ポリマーの固定は、接着及び/又はラミネートによって行うことができる。HOE可能ポリマー層を固定した後、例えば、この方法は、HOE可能ポリマー層からキャリアを除去することをさらに含むことができる。この目的のために、キャリアをそれに応じて前処理することができる。例えば、この前処理は、キャリアへの接着が基材に対する接着よりも弱くなるように、接着の選択的に前処理することができる。
【0052】
あるいは、キャリアを基材上に配置したままであってもよい。この目的のために、キャリアは、少なくとも可視光に対して透明であるように構成することができる。そのような場合には、基材に適用する前に、キャリアの裏面に反射防止層及び/又はクリーンコート層及び/又は硬質層及び/又はさらなる機能層を被覆することが可能である。キャリアは、例えば、透明基材と同じ材料から、または異なる材料から製造することができる。
【0053】
本実施形態による眼鏡レンズを製造するためのそのような技術は、例えば、複数のHOE可能ポリマー層に対して繰り返し使用することができる。
【0054】
眼鏡レンズの製造方法は、硬質層をHOE可能ポリマー層に適用することをさらに含むことができる。代替的又は追加的に、製造方法は、反射防止層を塗布することをさらに含むことができる。代替的又は追加的に、製造方法は、クリーンコート層を塗布することをさらに含むことができる。
【0055】
硬質層は、反射防止層、クリーンコート層及び/又は基材に対するさらなる層の接着性を改善するのに役立ち得る。さらに、硬質層は、眼鏡レンズの熱的および機械的特性を改善することができる。硬質層の層厚は、例えば、1~3μmとすることができる。典型的には、硬質層は、ポリシロキサン系有機/無機ハイブリッド材料を含む。例えば、硬質層を塗布するために、湿式化学技術を適用することが可能である。湿式化学技術は、例えば、浸漬コーティングまたはスピンコーティングを含むことができる。加えて、塗布は、硬化を含むことができる。硬化は、例えば、加熱及び/又はUV露光による熱硬化を含むことができる。
【0056】
反射防止層を塗布するために、SiO2、TiO2、ZrO2またはAl2O3のような交互の酸化物材料からなる干渉層の積層を、適切な順序および層厚で、気相からの物理的堆積プロセス(物理蒸着、PVD)によって適用することができる。反射防止層の層厚は、例えば、300nm~500nmの範囲であり得る。
【0057】
任意選択的に、同様のプロセス、より具体的にはPVDを用いて、対応するフッ素含有前駆体からなるクリーンコート層を眼鏡レンズの光学的に不活性な最上層として適用することができる。クリーンコート層は、10nm未満の層厚を有することができる。
【0058】
HOE可能ポリマー層は、透明基材の凸面の前面に配置することができる。HOE可能ポリマー層は、透明基材の凹状の裏側に配置することが可能である。いわゆる裏側処理では、HOE可能ポリマー層を球状の前面に配置することにより利点が得られる。
【0059】
例えば、前駆体及び/又はHOE可能ポリマー層は、光反応性成分及び/又はHOEポリマー及び/又はポリマーマトリックスを含むことができる。この方法は、ポリマーマトリックス及び/又はさらなるポリマーを含むプライマー層を基材に塗布する工程をさらに含むことができる。例えば、プライマー層を塗布することは、ポリマー分散液に基づく湿式化学プロセスによって行うことができる。典型的には、プライマー層の層の厚さは0.7~1.0μmの範囲にある。プライマー層を適用することにより、眼鏡レンズの安定性または堅牢生をさらに高めることができる。
【0060】
眼鏡レンズを製造する方法は、HOEを形成するためにHOE可能ポリマー層の空間分解露光をさらに含むことができる。露光は、例えば、1つまたは複数のレーザビームがHOE可能なポリマーの表面上を誘導または走査される書込み技術によって実行することができる。この場合、レーザビームは比較的小さなビーム直径を有することができる。代替的又は追加的に、複数の比較的大面積のレーザビームが使用される干渉技術を使用することができる。HOEポリマーは、光反応性成分、すなわち、例えば、フォトモノマーまたはフォトポリマーからの露光によって形成することができる。次に、露光される画像を固定することができる。この場合、HOE可能ポリマー層の感光性成分は反応して非感光性フィルムを形成することができる。これは、例えば露光されていない部位など、露光後に残る光反応性成分に適用される。
【0061】
例えば、硬質層、および任意に反射防止層及び/又はクリーンコート層などを塗布する前に、コーティングされていないHOE可能ポリマー層で露光を行うことが可能である。しかしながら、硬質層を塗布した後にHOE可能ポリマー層の空間分解露光を行うことも可能である。より具体的には、これは、硬質層、および任意に反射防止層及び/又はクリーンコート層が、露光に使用される光に対して透明であり、顕著な光学干渉効果を引き起こさないか、または全く生じない場合に望ましい。この場合、裏面の黒化(黒い背景)を使用して裏面反射を低減または防止することができる。
【0062】
上記の場合、硬質層、および任意選択的に反射防止層およびクリーンコート層を塗布した後の露出に続いて、対応する積層の層のすべての層を有する組立眼鏡レンズを保持または保存することが可能である。その後、HOEを形成するために露光を行うことができる。より具体的には、これは、一体化されたHOEを有する眼鏡レンズのより簡単で迅速な製造を可能にする。
【0063】
HOE可能ポリマー層を得るために前駆体を変換することが、キャリア上で行われ、HOE可能ポリマー層が眼鏡レンズの透明基材上に固定されるという状況について上述した。より具体的には、このような状況では、HOE可能ポリマー層の空間的に分解された露光が、透明基材上にHOE可能ポリマー層を固定する前に行われることが可能である。言い換えれば、HOEは既にキャリア上、例えばフィルム上に形成されており、既にHOEを構成している露出したHOE可能ポリマー層を基材上に固定することができる。固定は、ラミネート及び/又は接着によって行うことができる。この場合、露光時に、基材の表面の幾何学的形状によるHOEの圧縮/歪みの許容量を作ることが望ましい場合がある。例えば、空間的に分解された露光は、眼鏡レンズの基材の幾何学的形状を記述する幾何学的データの取得を含むことができる。空間的に分解された露光は、幾何学的データに応じて制御データを決定することをさらに含むことができる。制御データは、空間分解された露光の強度および位相を記述することができる。空間的に解決された露光は、制御データを用いて行うことができる。このような技術によって、キャリア上で別のプロセスで露光を行うことが可能である。黒い背景でも簡単に実行できる。
【0064】
以上、HOE可能ポリマー層を含む眼鏡レンズを製造するための様々な技術について説明した。一般に、上記の技術は、処方された処方レンズまたは完成レンズ上の処方レンズ製造において実施することができる。しかしながら、後の工程で処方レンズを製造する半完成レンズに関しても上記の技術を実施することが可能である。後者の場合、硬質層を使用して、HOE可能ポリマー層をその後の処方レンズ製造における損傷から保護することが有利であり得る。このような場合には、HOE可能ポリマー層で被覆されていない眼鏡レンズの側で処方レンズの製造の処理を行うべきである。
【0065】
以下に説明される上述の特徴および特徴は、本発明の保護の範囲から逸脱することなく、具体的に示された対応する組み合わせだけでなく、さらなる組合せまたは単独で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図面を参照することで、さらに詳細に説明される実施例の以下の説明に関して、本発明の上述の特性、特徴、および利点、およびそれらが達成される方法は、より明瞭で理解しやすくなる。
【0067】
【
図1】
図1は、様々な実施形態に係る様々な層を有する眼鏡レンズの概略分解図である。
【
図2】
図2は、様々な実施形態に係る眼鏡レンズを製造する方法のフロー図であり、前記方法において、別個のキャリア上にHOEを形成するのに適したHOE可能ポリマー層が生成される。
【
図3】
図3は、様々な実施形態による眼鏡レンズの製造方法のフロー図であり、前記方法において、HOEを形成するのに適したHOE可能ポリマー層は、眼鏡レンズの基材上のその場で生成される。
【
図4】
図4~
図6は、眼鏡レンズの様々な製造段階の概略図による
図2の方法の方法ステップを示す。
【
図5】
図4~
図6は、眼鏡レンズの様々な製造段階の概略図による
図2の方法の方法ステップを示す。
【
図6】
図4~
図6は、眼鏡レンズの様々な製造段階の概略図による
図2の方法の方法ステップを示す。
【
図7】
図7~
図10は、眼鏡レンズの様々な製造段階の概略図による
図2及び
図3に関する方法の方法ステップを示す。
【
図8】
図7~
図10は、眼鏡レンズの様々な製造段階の概略図による
図2及び
図3に関する方法の方法ステップを示す。
【
図9】
図7~
図10は、眼鏡レンズの様々な製造段階の概略図による
図2及び
図3に関する方法の方法ステップを示す。
【
図15】
図15は、様々な実施形態に係る様々な層を有する眼鏡レンズの概略分解図である。
【
図16】
図16は、様々な実施形態に係る様々な層を有する眼鏡レンズの概略分解図である。
【
図17】
図17は、様々な実施形態に係るHOEを有するデータ眼鏡の概略側面図である。
【
図18】
図18は、様々な実施形態に係るHOEを有するデータ眼鏡の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下において、本発明を、図面を参照して好ましい実施形態によりさらに詳細に説明する。図面において、同じ参照番号は、同じまたは類似の要素を指す。図面は、本発明の様々な実施形態の概略図である。図面に示される要素は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。むしろ、図面に示された様々な要素は、それらの機能および目的が当業者に明らかになるように示されている。
【0069】
以下において、眼鏡レンズにおけるHOE可能材料の生成に関連する技術を説明する。
【0070】
図1は、様々な実施形態に係る眼鏡レンズ100を分解した概略図である。眼鏡レンズは、例えば、データ眼鏡(
図1には示されていない)のような眼鏡に使用することができる。眼鏡レンズ100は、基材101を含む。基材101の中心厚さ101aは、約1~3mmである。基材は、可視波長範囲の光に対して透明である。
【0071】
HOE可能ポリマー層102は、基材101に隣接して配置される。HOE可能ポリマー層102は、HOEを形成するのに適している。HOE可能ポリマー層102は、例えば、HOEポリマーまたはHOEポリマーのポリマー反応物を含む光反応性成分を含む。HOEポリマーは、ポリマー反応物の局所重合及び/又は拡散プロセスによって形成することができ、これは屈折率の局所的変化をもたらす可能性がある。これにより、眼鏡レンズ100の光学機能を実現することができる。HOEポリマーまたは光反応性成分は、例えば、PURベースのポリマーマトリックスに埋め込むことができる。例えば、ポリマー層102(
図1には示されていない)に隣接して、1つまたは2つの拡散バリア層をさらに設けることができる。
【0072】
図1は、HOE可能ポリマー層102の膜厚102aをさらに示す。HOE可能ポリマー層の膜厚102aは、1μm~100μmの範囲、好ましくは50μm~100μmの範囲である。典型的には、HOEによって発揮される眼鏡レンズ100の光学特性への影響は、HOE可能ポリマー層102の膜厚102aが増加するほど大きくなり得る。より大きな膜厚102aによって、より複雑な光学的機能を実現することができ、すなわち、例えば、HOEを通る光の光路をより強く変更することができる。
【0073】
図1の眼鏡レンズ100は、硬質層103-1及び反射防止層103-2をさらに含む多層コーティングを含む。硬質層103-1の膜厚103-1aは、1μm~3μmの範囲である。反射防止層103-2の膜厚103-2aは、約300~500nmの範囲である。例えば、反射防止層103-2は、SiO
2、TiO
2、ZrO
2、及びAl
2O
3などの酸化物材料からなる干渉層の積層を適切な順序及び膜厚で有する。
【0074】
代替的又は追加的に、反射防止層は、眼鏡レンズ100の裏面100bに設けることができる。
【0075】
任意選択的に、例えば、眼鏡レンズ100は、クリーンコート層(
図1には図示せず)を含むことができる。クリーンコート層は、例えば、反射防止層103-2に隣接し、その前面100aに眼鏡レンズ100の閉鎖部を形成することができる。クリーンコート層は、例えば、5nm~50nmの範囲の膜厚を有することができる。
【0076】
図1は、HOE可能ポリマー層102が、眼鏡レンズ100の前面100aに面する基材101の凸部の前面181上に配置される状況を示す。しかしながら、HOE可能ポリマー層は、眼鏡レンズ100の裏面100bである基材101の裏面182上に存在することも可能である。
【0077】
図1は、個々のHOE可能ポリマー層102を含む眼鏡レンズ100を示す。しかしながら、眼鏡レンズ100が2以上のHOE可能ポリマー層102を含むことも可能である。例えば、眼鏡レンズ100は、透明基材101の前面181の凸部の上に第1HOE可能ポリマー層102を、透明基材101の裏面182の凹部の上に第2HOE可能ポリマー層(
図1に図示せず)を含むことができる。
【0078】
様々なHOEを形成する複数のHOE可能ポリマー層102の組み合わせによって、例えば、様々なHOEのコヒーレントまたはインコヒーレント相互作用によって特殊な光学機能性を達成することもできる。これは、例えば、データ眼鏡の実施に関連して望ましいことがある。この例は、独国特許出願第102014209792号明細書に示されるアクチュエータ補償器の原理による構成である。配置のさらなる例として、様々なHOEを形成する複数のHOE可能ポリマー層を含む多層システムが考えられ、このシステムはいわゆる角度多重化に使用される。この場合、個々のHOEの光学機能、例えば焦点合わせは、眼鏡装用者の狭い視野角範囲に限定され、他の視野角範囲はこのHOEの影響を受けない。そのような状況では、多層システムの各層は、異なる視野角範囲に対して光学的に機能する更なるHOEを含むことができる。HOEは、互いに独立して動作するので、それぞれが、定義された視野角範囲に対して独立した光学機能を構成する。これらの光学的作用は一緒になって、視角範囲全体にわたって広がる。
【0079】
図2は、様々な実施形態に係る眼鏡レンズ100の製造方法のフロー図を示す。この場合、HOE可能ポリマー層102の形成は、基材101上でその場で行われるのではなく、別個のキャリア上で別々に行われる。
【0080】
ステップS1において、キャリアは、まずHOE可能ポリマー層102の前駆体で被覆される。この場合、HOE可能ポリマー層102の前駆体は、例えば、液体又は固体であって、前駆体は、例えば、フィルムの形態で準備することができる。HOE可能ポリマー層102の前駆体は、HOEを形成するにはまだ適していないか、又は限定された範囲でしか適していない。例えば、前駆体は、ポリマーマトリックスを形成するのに適したポリマーの特別な配合物を含むことができ、反応性転化がステップS2で起こるか否かに依存して、前駆体がポリマーマトリックスを形成するのに適したポリマーの反応物を含むことも可能である。例えば、前駆体は、ポリマーマトリックスを形成するために必要とされる、例えば、触媒または流動促進剤などのさらなる添加剤を含むことができる。前駆体は、例えば、光反応性成分を含有することができ、例えば、モノマー、開始剤、及び/又は染料などを含むことができる。
【0081】
ステップS2において、HOE可能ポリマー層102を形成するために、前駆体を変換する。ステップS2では、例えば、前駆体に熱硬化を行ってHOE可能ポリマー層102として安定した膜を形成することができる。例えば、ポリマーマトリックスを形成することによって、溶媒を蒸発させて固体フィルムにすることにより、形態を変換することができる。代替的又は追加的に、化学反応を含む反応性プロセスステップをステップS2で行うこともできる。例えば、ステップS2において、ポリマーマトリックスは、個々の分子の適切な反応によって形成することができる。ステップS2では、例えば、さらなる添加剤及び/又は感光性添加剤を前駆体に添加することができる。
【0082】
ステップS3において、HOE可能ポリマー層102は、基材101上に固定される。これは、典型的には、HOE可能ポリマー層102を基材上に接着またはラミネートすることによって行われる。その後、眼鏡レンズ100からキャリアを除去することが可能である。しかしながら、キャリアがHOE可能ポリマー層102上に残ることも可能である。
【0083】
ステップS4において、HOE可能ポリマー層102は、HOEを形成するために、露出される。ステップS4は任意のステップであるが、実際にHOEを形成する場合にはステップS4を行う必要がある。ステップS4において、ポリマー反応物は、HOEポリマーに変換される。この場合、光反応成分、例えば、フォトモノマー又はフォトポリマーの反応性置換が、重合及び/又は拡散中に起こる。このプロセスは、ポリマー層における空間的に明確な屈折率の変化をもたらし、HOEの形態の光学的特徴が実現されることを可能にする。
【0084】
図3は、様々な実施形態に係る眼鏡レンズ100を製造するためのさらなる方法のフロー図を示す。この場合は、HOE可能ポリマー層102の形成は、基材101のその場で行われる。基材101は、まず、ステップT1において、前駆体で被覆される。
【0085】
ステップT2は、HOE可能ポリマー層102を形成するための前駆体の変換を含む。ステップT2は、
図2のステップS1に従って実施することができる。
【0086】
ステップT3では、HOE可能ポリマー層102が露出されてHOEを形成する。ステップT3は任意のステップである。HOEが実際に形成される場合には、ステップT3が実行されなければならない。ステップT3は、
図2のステップS4に従って実行することができる。
【0087】
図2のステップS3および
図3のステップT1の両方に関して、HOE可能ポリマー層102またはHOE可能ポリマー層102の前駆体を塗布する前に、基材101の対応する面181、182に前処理することが望ましい。例えば、基材101の対応する面181、182を洗浄することができる。代替的又は追加的に、基材101の対応する面181、182を活性化することができる。
【0088】
また、
図4~
図6は、
図2による方法による眼鏡レンズ100の様々な製造段階または製造部品の概略図を示す。状況Aを示す
図4において、HOE可能ポリマー層102はキャリア105上にある。例えば、キャリア105は、フィルムまたはハーフシェルを含むことができる。例えば、ハーフシェルは、凹状または凸状で構成することができる。キャリア105は、基材101の前面181と相補的に形成することができる。さらに、HOE可能ポリマー層102に隣接して、接着剤/ラミネートコーティング106がキャリア105上に配置される。接着剤/ラミネートコーティング106の代わりにまたはそれに加えて、溶剤接着技術もまた使用することができる。
【0089】
図5は、キャリア105、HOE可能ポリマー層102、及び接着剤/ラミネートコーティング106が基材101に接触している状態Bを示している。より詳細には、接着剤/ラミネートコーティング106は、基材101の前面181と接触する。代替的又は追加的に、HOE可能ポリマー層102を基材101の裏面182に塗布することも可能である。
【0090】
図6は、キャリア105がHOE可能ポリマー層102から取り外され、そこから除去された状態Cを示す(
図6では垂直矢印によって示されている)。代替的には、キャリア105がHOE可能ポリマー層102上に残ることもありうる。後者の場合、例えば、硬質層及び/又は反射防止層(
図6には図示せず)がキャリア105の外面に形成される。
【0091】
これにより、HOE可能ポリマー層102が基材101上に配置された眼鏡レンズ100の製造工程における状態Cが達成される。その後、硬質層103-1及び/又は反射防止層103-2及び/又はクリーンコート層によりコーティングすることができる(
図4-
図6には図示せず)。一般に、硬質層(
図4-
図6には図示せず)は、HOE可能ポリマー層102で既に塗布/積層されていることも可能である。
【0092】
また、
図7~
図10及び
図11~
図14は、HOEを形成するためのHOE可能ポリマー層102の露光の様々な状況を示す。この場合、まず、
図7に、HOE可能ポリマー層102が基材101に配置されている状況Aが示されている。例えば、接着剤/ラミネート層(
図7には図示せず)は、基材101の前面181に隣接するHOE可能ポリマー層102を固定することができる。HOE可能ポリマー層102は、HOEを形成するのに適している。この目的のために、HOE可能ポリマー層102は、例えばフォトモノマーを含む適切な光反応性成分を含む。
図7では、ポリマー層のこの光反応性成分の反応はまだ起こっていない。HOE可能ポリマー層102は、ポリマーマトリックスを含む。
【0093】
図8は、HOE可能ポリマー層102の露光中の状態Bを示す。露光は、空間的に解像され、位相コヒーレントな方法で、明確な位相および強度(
図8では2つの実線の矢印で示されている)で実行される。このようにして、HOE900が形成される(
図9参照)。
図9は、HOE900が識別またはブランド機能を有する状態Cを示す。このため、HOE900は、HOE可能ポリマー層102の表面全体の一部の領域のみに広がっていれば十分である。
【0094】
しかしながら、HOE900が眼鏡装用者の目の視覚的欠陥に関連する眼鏡レンズ100の光学的機能を変更するように、露光が行われることも可能である。より具体的には、このような場合、HOE900が本質的にHOE可能ポリマー層102(
図9には図示せず)の全表面にわたって延在することが望ましい。このようにして、眼鏡レンズ101の領域に対応する光学機能を均一に実現することができる。
【0095】
図10の状態Dでは、HOE900を形成するHOE可能ポリマー層102が硬質層103-1で被覆されている。必要に応じて、反射防止層103-2及び/又はクリーンコート層によるコーティングを行うことができる(
図10には図示せず)。
【0096】
また、
図11~
図14は、HOE900を形成するためのHOE可能ポリマー層102の露光に関するさらなる技術を示す。これらの技術では、硬質層103-1を塗布した後に、HOE可能ポリマー層を露光させる。
【0097】
図11の状態Aでは、基材101上にHOE可能ポリマー層102が形成されている。
図12は、硬質層103-1が基材101上に配置され、硬質層103-1と基材101との間にHOE可能ポリマー層102が位置する状況を示す。HOE可能ポリマー層102は、HOE900を形成するのに適している。しかしながら、
図12の状況では、HOE900はまだ図示されていない。
【0098】
図13は、HOE可能ポリマー層102の露光中の状態Cを示している。露光は、硬質層103-1を介して行われ、硬質層103-1は、露光の光の使用波長に対して透明である。場合によっては、
図13の状態Cにおいて、反射防止層を硬質層103-1(
図13には図示せず)上に配置することも可能である。露光はまた、反射防止層を介して行うこともできる。この場合、反射損失を低減することができるので、特に高い露光効率を達成することができる。
【0099】
図14の状態Dでは、HOE900が形成されている。これは、露光中に露光されない領域を不活性化するために、固化または漂白が続いて行われる。このようにして、HOE900のその後の改質、弱化、または破壊を防止することができる。これは、しばしばHOE900の固定とも呼ばれる。
【0100】
図11~
図14による技術は、例えば、
図12による状態Bの完成した眼鏡レンズ100を、後でHOE900を形成するために保管して露光することができる点で有利である。これは、形成されたHOE900を有する完成した眼鏡レンズ100の特に迅速な製造を可能にする。
【0101】
図15は、本発明の様々な実施形態による眼鏡レンズ100を概略分解図で示している。
図15の眼鏡レンズ100は、2つの硬質層103-1と2つの反射防止層103-2を有する。プライマー層105は、基材101の裏面182に配置される。プライマー層105は任意である。プライマー層105により、眼鏡レンズ100を強化することができる。また、裏面に配置された硬質層103-1と反射防止層103-2との基材101への密着性を向上させることができ、これは、前面に配置された硬質層103-1および反射防止層103-2に対するポリマー層102によって達成され得る効果に匹敵する。
【0102】
図15の状況では、例えば、プライマー層102に加えて、(
図15には示されていない)基材101の前面181にさらなるプライマー層を配置することも可能である。例えば、プライマー層は、浸漬コーティングの技術を用いて適用することができる。
【0103】
図16を参照すると、プライマー層105の代わりに、さらなるHOE可能ポリマー層112を設けることもできる。
図16の状況では、HOE900は、光機能を実装するためにともに機能する。
【0104】
先に述べたように、眼鏡レンズ100内にHOE900を形成するのに適したHOE可能ポリマー層102を提供するための技術を例示した。このような技術は、様々な効果および利点を示す。例えば、従来の眼鏡レンズ100の積層構造を維持しながら、HOE900を形成するのに適したHOE可能ポリマー層102を眼鏡レンズ100に組み込むことができる。より詳細には、HOE可能ポリマー層102によってプライマー層105の破壊に対する安定化作用を達成することができる。このため、プライマー層105を設ける必要がない。例えば、FDA基準によるボール落下衝撃試験中に生じる可能性がある特定の応力は、このように耐えられる方がよい。典型的には、HOE可能ポリマー層102に使用されるHOEポリマーまたはポリマー反応物またはポリマーマトリックスは、プライマー層105に使用されるポリマーに類似している。この理由のために、例えばプライマー層105に関して知られているような同様のポリマー化学をHOE可能ポリマー層102の処理に使用することも可能である。より詳細には、HOE可能ポリマー層102のポリマーの基材101への良好な接着を達成することができる。この目的のために、例えば、基材101を洗浄及び/又は活性化してもよい。さらに、硬質層103-1のHOE可能ポリマー層102への良好な接着を達成することができる。これにより、眼鏡レンズ101全体の良好な強度と耐久性を確保することができる。さらに、上述の技術によれば、硬質層103-1、および場合により反射防止層103-2及び/又はHOE可能ポリマー層102を有するクリーンコート層を既に含む半仕上げまたは仕上げレンズを提供することが可能である。HOE900を形成するためのHOE可能ポリマー層102の露光は、例えば顧客データ及び/又は適合された光学補正を提供するために、ニーズに基づいた個別の方法で実行することができる。以上の技術により、HOE900を眼鏡レンズ100の全面に形成することも可能である。この場合、HOE900によって実現される光学的機能性は、比較的小さい程度に制限することができる。より詳細には、例えば、純粋な識別/ブランディング機能を超えた複雑な光学機能を実現することもできる。上述の技術によって、2つ以上のHOE可能ポリマー層102を眼鏡レンズ100に一体化することも可能である。より詳細には、基材101の異なる面181、182上に複数のポリマー層102、112を配置することが可能である。このようにして、様々なポリマー層102、112の様々なHOE900により、より複雑な光学機能を達成することができる。
【0105】
また、
図17及び
図18を参照すると、データ眼鏡1700と組み合わせて使用されるHOE900の実施形態が示されている。HOE900は、データ眼鏡1700の光源アセンブリ1750から放射された光を反射する。この場合、例えば、HOE900は、波長特有のミラーの光学機能を実現する。代替的又は追加的に、HOE900は、角度特定リフレクタ及び/又は半透過ビーム結合器の光学機能を実現することも可能である。この点で、HOE900は画像形成機能を示す。
【0106】
図17及び
図18のそれぞれには、1つの個々のHOE900のみが示されているが、ホログラフィ技術を使用してデータ眼鏡1700に関連して実施される様々な光学機能は、光学的に相互作用する2つ以上のHOE900を使用して実施することもできる。
【0107】
明瞭にするために、
図17及び
図18に、基材101およびHOE900のみに示す。しかしながら、眼鏡レンズ100は、上述したように複数の構成要素を有することもできる。
【0108】
詳細には、データ眼鏡1700は、フレーム1710を含む。フレーム1710は、光源アセンブリ1750が配置される筐体を有する。一般に、光源アセンブリ1750は、多種多様な形態で構成され、様々な要素を含むことができる。例えば、光源アセンブリ1750は、
図17及び
図18に示すよりも少ないまたは多くの要素を含むことができる。
図17及び
図18を参照すると、光源アセンブリ1750は、例えば、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機LED(OLED)技術を有するディスプレイ、または液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置1751を備える。例えば、表示装置は、シリコン上のLCD(シリコン上の液晶、LCOS)ディスプレイを含む。より具体的には、これは、表示装置の後ろのビーム経路内に、かつ眼鏡レンズ100の方向に配置されたポールスプリッタ及びLED照明ユニットに関連して使用することができる。表示装置1751として、ユーザの眼の網膜上で光ビームを走査するために、例えば可動ミラーのような走査装置と組み合わせて、レーザ光源を使用することもできる。表示装置1751として、ユーザの眼の網膜上で光ビームを走査するために、例えば可動ミラーのような走査装置と組み合わせて、レーザ光源を使用することもできる。
【0109】
図18の例の光源アセンブリ1750は、
図17および
図18の実施形態はさらに、波長特有の方法で光をフィルタリングするフィルタ素子1752を有する。例えば、フィルタ素子1752は、特定の波長帯域の光を選択的に通過させるバンドパス素子であってもよい。より詳細には、フィルタ素子1752は任意である。
【0110】
光源アセンブリ1750は、光学装置1753をさらに備える。光学装置1753は、眼鏡レンズ100に配置されたHOE900の方向に光を導くように構成される。この目的のために、光学装置1753は、例えば、または複数のレンズを含むことができる。光学装置1753は、代替的又は追加的に、1つまたは複数のミラー、たとえば1つまたは複数の可動ミラーを備えることもできる。
【0111】
このように、光源アセンブリ1750は、眼鏡レンズ100、より具体的にはHOE900の方向に光を放射するように構成することができる。
【0112】
次に、HOE可能ポリマー層102またはHOE900は、放射された光をデータ眼鏡1700の着用者の眼に反射するように構成される。
図17の状況では、HOE900は、この目的のために、眼鏡レンズ100の前面100aに隣接して配置され、
図18の状況では、HOE900は、この目的のために、眼鏡レンズ100の裏面100bに隣接して配置される。ここで、
図17の状況では、光源アセンブリ1750と眼鏡レンズ100とは、光源アセンブリ1750から眼鏡レンズ100の基材101内のHOE900に光の光路が延びるように配置され、ここでは、眼鏡レンズ100の面100a、100bの内部反射をビームガイド(破線で
図17に示す)に用いることができる。
図18の状況では、光のビーム経路が光源アセンブリ1750から基材101の外側のHOE900までも延びるように、光源アセンブリ1750および眼鏡レンズ100が互いに対して配置される眼鏡レンズ100の屈折率分布を示す。
【0113】
もちろん、上述した実施形態の特徴および本発明の態様は、互いに組み合わせることができる。より詳細には、本発明の範囲から逸脱することなく、記載された組み合わせだけでなく、他の組み合わせまたは個別に、特徴を使用することができる。
【0114】
上記において、「眼鏡レンズ」という用語は、簡略化のために選択されたものであり、材料に関して限定的に解釈されるべきではない。より詳細には、眼鏡レンズは、1つまたは複数のプラスチックから製造することもできる。
【符号の説明】
【0115】
100:眼鏡レンズ
100a:前面
100b:裏面
101:基材
101a:膜厚
102:HOE可能ポリマー層
102a:膜厚
103-1:硬質層
103-1a:膜厚
103-2:反射防止層
103-2a:膜厚
106:ラミネートコーティング
112:ポリマー層
181:前面
182:裏面
900:ホログラフィック光学素子
1700:データ眼鏡
1710:フレーム
1750:光源アセンブリ
1751:表示装置
1752:フィルタ素子
1753:光学装置