(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】統合電気ポンプ及びその油圧制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 16/20 20060101AFI20220620BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
G05D16/20 Z
F04B49/06 311
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018007017
(22)【出願日】2018-01-19
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】201710039729.3
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518263944
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ヨウチン シャン
(72)【発明者】
【氏名】シャオユアン ホン
(72)【発明者】
【氏名】フアボ リ
(72)【発明者】
【氏名】チンリャン ラン
(72)【発明者】
【氏名】シャオジュン ヤン
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-31724(JP,A)
【文献】特開2008-74240(JP,A)
【文献】特開2011-178381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/20
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
統合電気ポンプであって、
モータと、
前記モータによって駆動される油ポンプと、
前記モータのモータ速度、油温度及び圧力命令に応じて前記油ポンプの油圧を制御する圧力制御システムとを備え、
推定圧力は、前記圧力制御システムによって、下記の式
p’=f(Tm、n、T
0
)=b×Tm-a×b×n+c
によって得られ、ここで、p’は推定圧力であり、Tmは実際の機械トルクであり、T
0
は前記油ポンプ中の油温度であり、nは前記モータ速度であり、パラメータa、b及びcは前記油温度に関連するものであり、
前記圧力制御システムは、前記推定圧力、前記モータ速度、前記圧力命令に応じて、前記油ポンプの油圧を制御することを特徴とする統合電気ポンプ。
【請求項2】
前記圧力制御システムは、油温度受取りモジュール及び圧力制御モジュールを備え、前記油温度受取りモジュールは、前記油ポンプの
前記油温度T
0を表わす温度検出信号を受け取り、前記圧力制御モジュールは、前記統合電気ポンプの運転条件に応じて前記圧力命令を出力する、請求項1に記載の統合電気ポンプ。
【請求項3】
前記圧力制御システムは、位置信号を受け取って
前記モータ速度を計算する位置及び速度計算モジュールと、前記圧力命令、前記油温度及び前記モータ速度に応じて前記モータの推定機械トルクを得る圧力補償モジュールとを備える、請求項2に記載の統合電気ポンプ。
【請求項4】
前記圧力制御システムは、前記推定機械トルク及び前記モータ速度に応じて推定電磁気トルクを得るためにトルク補償モジュールを備える、請求項
3に記載の統合電気ポンプ。
【請求項5】
前記モータを駆動するためにさらに駆動回路を備え、前記圧力制御システムは、前記推定電磁気トルクに応じて前記駆動回路の複数のスイッチの切換え状態を制御するために制御モジュールを備える、請求項
4に記載の統合電気ポンプ。
【請求項6】
前記圧力制御システムに電流検出信号を出力するためにさらに電流検出器を備え、前記圧力制御システムは、前記電流検出信号上でクラーク及びパーク変換を実行するためにクラーク/パーク変換モジュールを備え、それによりD軸電流及びQ軸電流を得る、請求項4に記載の統合電気ポンプ。
【請求項7】
前記圧力制御システムは、前記推定電磁気トルクに応じて推定D軸電流及び推定Q軸電流を得るためにトルク変換モジュールを備える、請求項
6に記載の統合電気ポンプ。
【請求項8】
前記圧力制御システムはPI/DQ切離しモジュールを備え、前記PI/DQ切離しモジュールにより前記推定D軸電流と前記D軸電流との間の差、前記推定Q軸電流と前記Q軸電流との間の差に基づき前記モータ速度に応じてPI制御が実行され、D軸電圧及びQ軸電圧が得られる、請求項7に記載の統合電気ポンプ。
【請求項9】
前記圧力補償モジュールは、閉ループ制御を形成するためにPIコントローラ及び圧力推定サブモジュールを備え、それにより前記推定機械トルクが出力され、前記圧力推定サブモジュールによって
前記推定圧力が得られる、
請求項3に記載の統合電気ポンプ。
【請求項10】
モータを有する統合電気ポンプの油圧制御方法であって、
車両の運転条件に応じて圧力命令p
*を出力する工程と、
前記モータのロータの位置角を得て、前記位置角と時間との関係に応じてモータ速度を計算する工程と、
前記モータ速度、油温度、フィルタ済み機械トルクに応じて推定圧力を出力する工程と、
前記圧力命令
及び前記推定圧力に応じて推定機械トルクを得る工程と、
前記推定機械トルク及び前記モータ速度に応じて推定電磁気トルクを得る工程と、
前記モータ速度を制御するためにPWM信号を出力する工程とを備えることを特徴とする油圧制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示は、ハイブリッド電気自動車内の自動変速装置に、特に、統合電気ポンプ(IEP)及びその油圧制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] ハイブリッド電気自動車では、内燃機関又はギヤーボックス内にある主ポンプが停止した後、統合電気ポンプ(IEP)が使用されてエンジンオイルをギヤーボックスに供給する。統合電動ポンプは、ギヤーボックスにエンジンオイルをより長い時間にわたって所定油圧で供給することができるので、それには従来のアキュムレータよりも多くの長所がある。
【0003】
[0003] 統合電気ポンプの油圧を維持するために、統合電動ポンプ内には圧力センサが必要である。しかしながら、圧力センサは、空間を占めかつコストを上昇させる。
【発明の概要】
【0004】
[0004] 統合電気ポンプは、モータと、モータによって駆動される油ポンプと、圧力制御システムとを備える。圧力制御システムは、モータのモータ速度、油温度及び圧力命令に応じて油ポンプの油圧を制御する。
【0005】
[0005] モータのロータの位置を表わす位置信号は、圧力制御システムに出力されることが好ましい。
【0006】
[0006] 圧力制御システムは、油ポンプの温度T0を表わす温度検出信号を受け取るために油温度受取りモジュールを備えることが好ましい。
【0007】
[0007] 圧力制御システムは、統合電気ポンプの運転条件に応じて圧力命令を出力するために圧力制御モジュールを備えることが好ましい。
【0008】
[0008] 圧力制御システムは、位置信号を受け取ってモータ速度を計算する位置及び速度計算モジュールと、圧力命令、油温度及びモータ速度に応じてモータの推定機械トルクを得る圧力補償モジュールとを備えることが好ましい。
【0009】
[0009] 圧力制御システムは、推定機械トルク及びモータ速度に応じて推定電磁気トルクを得るためにトルク補償モジュールを備えることが好ましい。
【0010】
[0010] 統合電気ポンプは、モータを駆動するためにさらに駆動回路を備え、圧力制御システムは、推定電磁気トルクに応じて駆動回路の複数のスイッチの切換え状態を制御するために制御モジュールを備えることが好ましい。
【0011】
[0011] 統合電気ポンプは、圧力制御システムに電流検出信号を出力するためにさらに電流検出器を備え、圧力制御システムは、電流検出信号上でクラーク及びパーク変換を実行するためにクラーク/パーク変換モジュールを備え、それによりD軸電流及びQ軸電流を得ることが好ましい。
【0012】
[0012] 圧力制御システムは、推定電磁気トルクに応じて推定D軸電流及び推定Q軸電流を得るためにトルク変換モジュールを備えることが好ましい。
【0015】
[0015] 圧力補償モジュールは、閉ループ制御を形成するためにPIコントローラ及び圧力推定サブモジュールを備え、それにより推定機械トルクを出力することが好ましい。
【0016】
[0016] 圧力推定サブモジュールによって下記公式に応じて推定圧力が得られ、
p’=f(Tm、n、T0)=b×Tm-a×b×n+c、
式中p’は推定圧力であり、パラメータa、b及びcは油温度に関連することが好ましい。
【0017】
[0017] 統合電気ポンプはさらに電気制御装置を備え、圧力制御システムは、電気制御装置に保存され、電気装置によって実行されることが好ましい。
【0018】
[0018] モータを有する統合電気ポンプの油圧制御方法であって、
車両の運転条件に応じて圧力命令p*を出力する工程と、
モータのロータの位置角を得て、位置角と時間との関係に応じてモータ速度を計算する工程と、
圧力命令、温度及びモータ速度に応じて推定機械トルクを得る工程と、
推定機械トルク及びモータ速度に応じて推定電磁気トルクを得る工程と、
モータ速度を制御するためにPWM信号を出力する工程とを備える。
【0019】
[0019] 推定機械トルクを得る工程は、推定機械トルクをフィルタ処理することによってフィルタ済み機械トルクを得るとともに、モータ速度、温度、及びフィルタ済み機械トルクに応じて推定圧力を出力する工程と、圧力命令及び推定圧力に応じて推定機械トルクを出力する工程とを備えることが好ましい。
【0020】
[0020] PWM信号を出力してモータ速度を制御する工程は、
モータの相電流を得るとともに、三相交流上でクラーク変換及びパーク変換を実行してD軸電流及びQ軸電流を得る工程と、
推定電磁気トルクに応じて推定D軸電流及び推定Q軸電流を得る工程と、
推定D軸電流とD軸電流との間の差、推定Q軸電流とQ軸電流との間の差に基づきPI制御を実行することによって、D軸電圧及びQ軸電圧を得る工程と、
D軸電圧、Q軸電圧に応じてPWM信号を生成する工程とを備えることが好ましい。
【0021】
[0021] 推定機械トルクを得る工程は、
実際電磁気トルクを得る工程と、
実際電磁気トルクと推定電磁気トルクとの間の差に基づき、PI制御又はPID制御を実行して、駆動回路内の複数のスイッチの切換え状態を制御する工程とを備えることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】1つの実施形態による圧力制御システムを有する統合電気ポンプを示す図である。
【
図2】
図1の圧力制御システムのブロック図である。
【
図3】
図2の圧力制御システムの圧力補償モジュールのブロック図である。
【
図4】1つの実施形態による油圧、モータ速度及びトルクの特性曲線の概要グラフである。
【
図5】1つの実施形態による油圧、モータ速度及びトルクの特性曲線の概要グラフである。
【
図6】1つの実施形態による油圧制御方法のフローチャートである。
【
図7】
図6の油圧制御方法のサブフローチャートである。
【
図8】
図6の油圧制御方法のサブフローチャートである。
【
図9】
図6の油圧制御方法のサブフローチャートである。
【
図10】20℃での流速及び油圧の特性曲線の概要グラフである。
【
図11】60℃での流速及び油圧の特性曲線の概要グラフである。
【0023】
[0030] 以下の実施は、上記図と併せて本開示の説明に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0031] 以後、本開示の実施形態の技術的解決策が、本開示の実施形態における添付図面と併せて明確かつ完全に説明される。説明した実施形態は、本発明の実施形態の全てではなく、ほんの一部であることは明らかである。本開示の実施形態に基づき、当業者によって創造的作業なしに得られる他のあらゆる実施形態は、本発明の保護範囲内に属する。図面は、参考及び実例を提供することのみを意図し、本開示を限定しないことを理解されたい。本明細書において、図面中の接続は、単に説明の明確性を意図し、接続のタイプを限定しない。
【0025】
[0032] ある構成部品が別の構成部品に「接続された」と記載するとき、それは、別の構成部品に直接接続することができ、又は同時に中間の構成部品が存在できることに注意されたい。本開示の全ての技術用語及び科学用語は、別段の定めがない限り、当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書では、本開示の用語は、実施形態を説明することを意図し、本開示を限定しない。
【0026】
[0033]
図1は、1つの実施形態による圧力制御システムを有する統合電気ポンプを示す。圧力制御システム100は、統合電気ポンプ(IEP)30を備えるハイブリッド車で使用することができる。統合電気ポンプ30は、モータ20によって駆動される油ポンプを含むことができる。圧力制御システム100は、統合電気ポンプ内のモータ20のモータ速度を制御することによって油ポンプの油圧を制御できる。
【0027】
[0034] 統合電気ポンプ30は、電気制御装置(ECU)10、位置センサ12、電流検出器14、油温検出器16を含む。圧力制御システム100は、電気制御装置10のメモリ内に保存し、電気制御装置10によって実行することができる。位置センサ12は、モータ20のロータの位置を感知し、位置信号を出力することができる。電流検出器14は、モータ20の相電流を検出して、電流検出信号を出力することができる。油温検出器16は、統合電気ポンプ30内の油温度を検出して、油温度T0を表わす温度検出信号を出力するように構成される。電気制御装置10は、位置センサ12、電流検出器14及び油温検出器16につながる複数の入出力インタフェース18を含むことができる。
【0028】
[0035] 実施形態では、モータ20は、三相モータとすることができる。統合電気ポンプ30は、モータ20を駆動するためにさらに駆動回路22を含むことができる。実施形態では、電流検出器14は、駆動回路の三相交流を検出することができる。
【0029】
[0036] 圧力制御システム100は、位置信号、電流検出信号及び温度検出信号に応じて油の油圧を制御することができる。
【0030】
[0037]
図2に示すように、圧力制御システム100は、油温度受取りモジュール101、圧力制御モジュール102、位置及び速度計算モジュール103、クラーク/パーク変換モジュール104、圧力補償モジュール105、トルク補償モジュール106、トルク変換モジュール107、PI/DQ切離しモジュール108、及び現場重視制御モジュール109を含むことができる。
【0031】
[0038] 実施形態では、油温度受取りモジュール101は、油温検出器16によって出力された温度検出信号を、複数の入出力インタフェース18の1つを介して受け取ることができる。位置及び速度計算モジュール103は、位置センサ12によって出力された位置信号を、複数の入出力インタフェース18の1つを介して受け取ることができる。クラーク/パーク変換モジュール104は、電流検出器14によって出力された電流検出信号を、複数の入出力インタフェース18の1つを介して受け取ることができる。
【0032】
[0039] 油温度受取りモジュール101は、温度検出信号を圧力補償モジュール105に転送する。位置及び速度計算モジュール103は、正弦信号又は余弦信号である位置信号を得る。位置及び速度計算モジュール103は、ロータの位置角θを得て、位置角θと時間との関係に応じてモータ速度を計算する。実施形態では、位置角θは、ロータの機械角度θr又はロータの電気角θeとすることができる。モータ速度は、角速度ω又は回転速度nとすることができる。別の実施形態では、位置及び速度計算モジュール103は、角速度ω又は回転速度nを同時に得ることができる。実施形態では、角速度ωは、位置及び速度計算モジュール103によって得られる。角速度ωは、機械角速度ωr又は電気角速度ωeとすることができる。クラーク/パーク変換モジュール104は、電流検出信号上で、クラーク変換及びパーク変換を実行して、D軸電流id及びQ軸電流iqを得る。
【0033】
[0040] 圧力制御モジュール102は、車両の運転条件に応じて圧力命令p*を出力する。実施形態では、圧力命令p*は、統合電気ポンプの目標油圧を含むことができる。圧力補償モジュール105は、圧力命令p*、温度T0及び角速度ωに応じてモータの推定機械トルクTm
*を得ることができる。トルク補償モジュール106は、推定機械トルクTm
*及び角速度ωに応じて、推定電磁気トルクTe
*を得ることができる。トルク変換モジュール107は、推定電磁気トルクTe
*に応じて、推定D軸電流id
*及び推定Q軸電流iq
*を得ることができる。
【0034】
[0041] PI/DQ切離しモジュール108は、推定D軸電流id
*、推定Q軸電流iq
*、D軸電流i
d
、Q軸電流i
q
、及び角速度ωを受け取る。PI/DQ切離しモジュール108は、推定D軸電流id
*とD軸電流i
d
との間の差、角速度ωに応じた推定Q軸電流iq
*とQ軸電流i
q
との間の差に基づき、PI制御を実行する。PI制御の後に、推定D軸電流id
*とD軸電流i
d
との間の差、推定Q軸電流iq
*とQ軸電流i
q
との間の差を切り離すことによって、D軸電圧及びQ軸電圧が得られる。現場重視制御モジュール109は、D軸電圧、Q軸電圧及び位置角θに応じて、PWM信号を駆動回路22に出力する。実施形態では、駆動回路22は、三相インバータとすることができる。
【0035】
[0042]
図3は、
図2の圧力補償モジュール105のブロック図である。圧力補償モジュール105は、速度変換サブモジュール1051、圧力推定サブモジュール1052、インバータ1053、加算器1054、PIコントローラ1055及びフィルタ1056を含むことができる。圧力推定サブモジュール1052、インバータ1053、加算器1054、PIコントローラ1055及びフィルタ1056は、閉ループ制御を形成する。
【0036】
[0043] 速度変換サブモジュール1051は、角速度ωを回転速度nに変換する。別の実施形態では、位置及び速度計算モジュール103が回転速度nを出力するとき、速度変換サブモジュール1051は省略できる。圧力推定サブモジュール1052は、回転速度n、温度T0、推定機械トルクTm
*から、フィルタ1056によってフィルタ処理された機械トルクTm’に応じて推定圧力p’を出力する。インバータ1053は、推定圧力p’を反転させて、推定圧力p’を加算器1054に出力する。圧力命令p*と推定圧力p’との間の差は、圧力命令p*とインバータ1053によって反転された推定圧力p’とを加算することによって得られる。PIコントローラ1055は、圧力命令p*と推定圧力p’との間の差を用いてPI制御を実行し、推定機械トルクTm
*を出力する。フィルタ済み機械トルクTm’は、推定機械トルクTm
*をフィルタ1056でフィルタ処理することによって得られる。実施形態では、フィルタ1056は、一等級低域フィルタ又は二等級低域フィルタとすることができる。
【0037】
[0044] 実施形態では、推定圧力p’は、下記公式に応じて圧力推定サブモジュール1052によって得られ、
p’=f(T
m、n、T
0)=b×T
m-a×b×n+c
式中、パラメータa、b及びcは、温度T
0に関連する。電気制御装置
10に参照テーブルを保存することができる。参照テーブルは、異なる温度T
0に対応するパラメータa、b及びcを含む。実際回転速度n、実際機械トルクT
m及び出力圧力pは測定することができ、従って
図4及び
図5に示すように、異なる温度における出力圧力pと実際回転速度n、実際機械トルクT
mとの間の関係曲線を得ることができる。
【0038】
[0045]
図4及び
図5において、実線は、20℃及び60℃における、出力圧力pと実際回転数n、実際機械トルクT
mとの間の関係を表す。点線は、実線を修正することによって得られる。パラメータa、b及びcは、異なる温度における点線から得て、参照テーブルに保存することができる。圧力推定サブモジュール1052は、参照テーブルを検索することによってパラメータにa、b及びcを得ることができる。
【0039】
[0046] トルク補償モジュール106は、推定機械トルクT
m
*及び下記公式に応じる角速度ωに応じて推定電磁気トルクT
e
*を得る。
T
e
*=T
m
*+Fω
r+T
Fe (1)
【0040】
[0047] ここで、Kh>>Kc、Kh>>Keであり、Fはロータの粘性摩擦、TFeはフェライトコア損失に関連するトルク、Khはヒステリシス係数、Kcは標準的渦係数、Keは異常渦電流係数、Bmaxは磁束密度の最大振幅、fは切換え周波数である。
【0041】
[0048] 以下のように公式(1)と公式(2)とを組み合わせることにより公式が得られ、
Te
*=Tm
*+KTl1ωr+KTl2 (3)
式中、KT11=F+KFefであり、KFeは鉄損係数である。KT11及びKT12は、テストで調整し、電気制御装置に保存することができる。
【0042】
[0049] 別の実施形態では、PI/DQ切離しモジュール108は、PID/DQ切離しモジュールとすることができる。PIコントローラ1055は、PIDコントローラとすることができる。
【0043】
[0050] 別の実施形態では、位置及び速度計算モジュール103は省略することができる。圧力制御システム100は、直接、位置センサによって回転速度を得ることができる。
【0044】
[0051] 別の実施形態では、クラーク/パーク変換モジュール104は、圧力制御システム100の外部に配置することができる。
【0045】
[0052] 別の実施形態では、圧力制御システム100は、クラーク/パーク変換モジュール104、圧力補償モジュール105及びPI/DQ切離しモジュール108を含まない。代替実施形態では、圧力制御システム100は、実際電磁気トルクTeを得て推定電磁気トルクTe
*を出力する実際トルク取得モジュールと、推定電磁気トルクTe
*を用いてPI又はPID制御を実行するPI又はPID制御モジュールとを含む。
【0046】
[0053]
図6は、1つの実施形態による油圧制御方法のフローチャートを示す。油圧制御方法を実施する様々なやり方があるので、油圧制御方法は、一例として提示される。以下に説明する油圧制御方法は、例えば
図2に示した構成を用いて実施することができ、これらの図中の様々な要素は、油圧制御方法を説明する際に参考される。
図6に示す各ブロックは、油圧制御方法で実施される1つ以上のプロセス、方法又はサブルーチンを表わす。加えて、ブロックの説明順序は一例に過ぎず、ブロックの順序は変更することができる。油圧制御方法は、ブロックS60で始まることができる。実施形態に応じて、追加工程を加えることができ、他の工程を除き、工程の順序を変えることができる。
【0047】
[0054] S60にて、車両の運転条件に応じて圧力命令p*を出力する。実施形態では、圧力命令p*は、統合電気ポンプの目標油圧を含むことができる。
【0048】
[0055] S61にて、ロータの位置角θを得て、位置角θと時間との関係に応じてモータ速度を計算する。実施形態では、位置角θは、ロータの機械角度θr又はロータの電気角θeとすることができる。モータ速度は、角速度ω又は回転速度nとすることができる。
【0049】
[0056] S62にて、油温度T0を得る。
【0050】
[0057] S63にて、圧力命令p*、温度T0及び角速度ωに応じて推定機械トルクTm
*を得る。
【0051】
[0058] S64にて、推定機械トルクTm
*及び角速度ωに応じて推定電磁気トルクTe
*を得る。
【0052】
[0059] S65にて、推定電磁気トルクTe
*に応じてPWM信号を駆動回路に出力する。
【0053】
[0060]
図7は、推定機械トルクT
m
*を得るサブフローチャートを示す。
【0054】
[0061] S630にて、推定機械トルクTm
*をフィルタ処理することによってフィルタ済み機械トルクTm’を得て、回転速度n、温度T0及びフィルタ済み機械トルクT
m
’に応じて、推定圧力p’を出力する。
【0055】
[0062] S632にて、圧力命令p*及び推定圧力p’に応じて推定機械トルクTm
*を出力する。
【0056】
[0063]
図8は、PWM信号を駆動回路に出力するサブフローチャートを示す。
【0057】
[0064] S650にて、モータの三相交流を得て、三相交流上でクラーク変換及びパーク変換を実行して、D軸電流id及びQ軸電流iqを得る。
【0058】
[0065] S651にて、推定電磁気トルクTe
*に応じて、推定D軸電流id
*及び推定Q軸電流iq
*を得る。
【0059】
[0066] S652にて、推定D軸電流id
*とD軸電流i
d
との間の差、推定Q軸電流iq
*とQ軸電流i
q
との間の差に基づきPI制御を実行することによって、D軸電圧及びQ軸電圧を得る。
【0060】
[0067] S653にて、D軸電圧、Q軸電圧及び位置角θに応じてPWM信号を生成する。
【0061】
[0068] S654にて、PWM信号を駆動回路に出力して、駆動回路内の複数のスイッチの切換え状態を制御する。こうして、モータ速度を制御できる。
【0062】
[0069] 別の実施形態では、PID制御は、角速度ωに応じて、推定D軸電流id
*とD軸電流i
d
との間の差、推定Q軸電流iq
*とQ軸電流i
q
との間の差に基づき実行することができる。PID制御の後に、推定D軸電流id
*とD軸電流i
d
との間、推定Q軸電流iq
*とQ軸電流i
q
との間の差を切り離して、D軸線切離し値及びQ軸線切離し値を得る。
【0063】
[0070]
図9は、推定機械トルクT
m
*を得るサブフローチャートを示す。
【0064】
[0071] S658にて、実際電磁気トルクTeを得る。
【0065】
[0072] S659にて、実際電磁気トルクTeと推定電磁気トルクTe
*との間の差に基づきPI制御又はPID制御を実行して、駆動回路内の複数のスイッチの切換え状態を制御する。
【0066】
[0073]
図10及び11は、20℃及び60℃における、流速及び油圧の特性曲線の概要グラフを示す。試験結果は、異なる流量(1.5リットル/分~8リットル/分)及び異なる油温度(20℃及び60℃)における圧力制御の静的な性能である。油圧制御方法は、3バールの油圧につき+30%、5バールの油圧につき+20%、7バールの油圧につき+20%の精度要求を充足できる。
【0067】
[0074] 実施形態では、25℃のもとで3バールから5バールへの応答時間は46ミリ秒であり、25℃のもとで5バールから7バールへの応答時間は44ミリ秒である。
【0068】
[0075] 要約すると、統合電気ポンプは、圧力センサを省略することができ、空間を節約することができ、コストを下げることができる。油圧制御方法は、制御精度及び応答時間を改善することができる。
【0069】
[0076] 上述したのは本開示の例示的な実施形態であり、実施形態は、本開示を限定することを意図しない。本開示の精神及び原理の範囲における全ての修正、均等な置換及び改善は、本開示の保護範囲内に属する。
【符号の説明】
【0070】
10 電気制御装置
12 位置センサ
14 電流検出器
16 温度検出器
20 モータ
22 駆動回路
100 圧力制御システム