(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】アイアンヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/06 20150101AFI20220620BHJP
A63B 53/02 20150101ALI20220620BHJP
A63B 53/04 20150101ALI20220620BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20220620BHJP
【FI】
A63B53/06 C
A63B53/02
A63B53/04 E
A63B102:32
(21)【出願番号】P 2018034140
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】513163487
【氏名又は名称】株式会社 ロア・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100068308
【氏名又は名称】後田 春紀
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢司
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇一郎
【審査官】大隈 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-84123(JP,A)
【文献】特開平9-248355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00~53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイアンヘッドのホーゼル部の下方部内において、該ホーゼル部が連結するヒール部のシャフトの延長線位置に形成された
有底のねじ穴に、重量の異なる
チタン、アルミニウム、鉄、タングステンの4種類の金属により、それぞれ同一長さ・ねじ径の同一形状に形成された4種類の重量調整用ねじのうち、いずれか1種類の重量調整用ねじを螺挿固定すると共に、前記ホーゼル部にシャフトを挿入固定することを特徴とするアイアンヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打球時のボールの方向安定性や飛距離のアップを図ることができる低重心のゴルフクラブ用のアイアンヘッドであって、各ゴルファーにとって最適のバランスの良いアイアンヘッドとするため、重量がそれぞれ異なる複数種の金属により、それぞれ複数本の同一形状の重量調整用ねじを作成し、アイアンヘッド製造会社あるいはゴルフ用品販売店等において、各ゴルファーの希望に応じて、前記いずれか1本の重量調整用ねじを、ホーゼル部の下方部内において、該ホーゼル部が連結するヒール部のシャフトの延長線位置に形成された有底のねじ穴に螺挿固定して、重心位置を変えることなく、ゴルファーの希望に応じて重量を調整してバランスの良いアイアンヘッドを提供できる一方、製造会社にとっても迅速にゴルファーの希望に応じた新商品として提供ができるアイアンヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフクラブ用のアイアンヘッドとしては、 鍛造製やロストワックス製のものが公知である。しかし、これら従来のアイアンヘッドは、打球時のボールの方向安定性や飛距離のアップを図る目的から、下記特許文献1の実公平2-41007号公報に開示されているように、断面略三角形状で、且つ保持ピンを一体に突設したセラミックコアを、アイアンヘッドのフェース面および背面の略全面に及ぶように配置して、ロストワックス製法によりアイアンヘッド本体と一体に形成したアイアンヘッドが公知であり、また、下記特許文献2の特開平2-206481号公報に開示されているように、比重の大きい金属素材より成る重心低下用金属片をアイアンヘッドのソール部(底部)に配置して、ロストワックス製法で成型後、鍛造により形成したアイアンヘッドが公知であり、また更に、下記特許文献3の特開平5-15621号公報に開示されているように、アイアンヘッドのソール部近傍に、トウ部およびソール部乃至ホーゼル部に適宜質量部を形成すると共に、該トウ部およびソール部相互をリブにより連結形成したセラミックス等の焼結体より成るインサート部材を配置し、任意金属のヘッド本体と一体化したロストワックス製のアイアンヘッドが公知である。
【0003】
そして、特に、現状においては、ゴルファー自身が使用しているアイアンヘッドを、自分の好みの重量のバランスのとれたアイアンヘッドとするため、アイアンヘッドのバックフェース部に鉛を接着材により貼付けたり、またはトウ側を重くしたり、あるいはホーゼル部に挿着されるシャフトの下端部に杭や鉛等を挿入固定して、アイアンヘッドの重量とバランスを調整していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平2-41007号公報
【文献】特開平2-206481号公報
【文献】特開平5-15621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載のアイアンヘッドは、断面略三角形状で、且つ保持ピンを一体に突設したセラミックコアを、アイアンヘッドのフェース面および背面の略全面に及ぶように配置され、金属の外殻により被包される形態になるため、ウエイト配分は、ヘッド周辺部になり、スイートスポットは拡がるが、ウエイト配分的には低重心のヘッドを提供することが困難であり、また、セラミックコアとしてアルミナやジルコニアを使用しているため、金属製のヘッド本体と膨張係数が異なるため、セラミックコアと金属製の ヘッド本体との間に間隙が生じ強度的に低下して破損し、打球時の変音の原因となるという課題があった。
【0006】
更に、前記特許文献2に記載のアイアンヘッドは、比重の大きい金属素材より成る重心低下用金属片をアイアンヘッドのソール部(底部)に配置して、ロストワックス製法で成型後、鍛造により形成したアイアンヘッドであって、比重の大きい金属素材より成る重心低下用金属片をアイアンヘッドのソール部(底部)に配置して、ロストワックス製法により、重心低下用金属片をアイアンヘッド本体の金属中に取り込む形態でヘッドが形成されるが、使用する重心低下用金属片の素材と、ヘッド本体の素材の膨張係数が合致し難いため、どうしても両者の間に間隙が生じ、その状態で鍛造型により鍛造すれば、内部に間隙を残したままアイアンヘッドが形成されるため、重心低下用金属片の位置が不安定になり、ヘッド自体のウエイト配分も微妙に変化するため、設計通りのアイアンヘッドを提供することが困難であるという課題があった。
【0007】
また更に、前記特許文献3に記載のアイアンヘッドは、前記特許文献1および2に記載のアイアンヘッドの課題を解決すべく発明されたものであるが、前記特許文献1および2に記載のアイアンヘッドと同様に、アイアンヘッド本体とは別素材であるセラミックス等の焼結体より成るインサート部材を配置し、任意金属のヘッド本体と一体化してアイアンヘッドが形成されているので、両者を別々に作成した後、両者を一体化するための工程が必要となり、アイアンヘッド作成までに手間と時間がかかり、そのため価格が高価になるという課題があった。
【0008】
そして更に、前記ゴルファー自身が使用いているアイアンヘッドを、自分の好みのバランスのとれたアイアンヘッドとするため、アイアンヘッドのバックフェースに鉛を貼付けたり、あるいはホーゼル部に挿着されるシャフトの下端部に杭や鉛等を挿入固定する方法は、熟練者では可能かもしれないが、一般のゴルファーには困難であるという課題があった。
【0009】
そしてまた、前記特許文献1~3記載のヘッド、および前記ゴルファー自身の改良によるヘッドは、いずれも重心位置がずれてしまうという結果となり、打球時にクラブが異常な動きをして、正確なショットができないという課題があった。
【0010】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたものであって、アイアンヘッドのホーゼル部の下方部内において、該ホーゼル部が連結するヒール部のシャフトの延長線位置に形成された有底のねじ穴に、重量の異なるチタン、アルミニウム、鉄、タングステンの4種類の金属により、それぞれ同一長さ・ねじ径の同一形状に形成された4種類の重量調整用ねじのうち、いずれか1種類の重量調整用ねじを螺挿固定して、アイアンヘッドの重量をゴルファーの所望する重量とした後、前記ホーゼル部にシャフトを挿入固定することにより、重心位置を変えることなく、ゴルファーがそれぞれ希望する重量とバランスを備えたアイアンゴルフシャフトとすることができるアイアンヘッドを提供しようものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、アイアンヘッドのホーゼル部の下方部内において、該ホーゼル部が連結するヒール部のシャフトの延長線位置に形成された有底のねじ穴に、重量の異なるチタン、アルミニウム、鉄、タングステンの4種類の金属により、それぞれ同一長さ・ねじ径の同一形状に形成された4種類の重量調整用ねじのうち、いずれか1種類の重量調整用ねじを螺挿固定すると共に、前記ホーゼル部にシャフトを挿入固定するという手段を採用することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0012】
前記構成より成る本発明アイアンヘッドによれば、予め重量の異なるチタン、アルミニウム、鉄、タングステンの4種類の金属により、それぞれ同一長さ・ねじ径の同一形状に形成された4種類の重量調整用ねじを準備しておき、ゴルファーの所望するアイアンヘッドの重量にすべく、前記4種類の重量調整用ねじの中からいずれか1種類の重量調整用ねじを選択して、該選択した重量調整用ねじを、アイアンヘッドのホーゼル部の下方部内において、該ホーゼル部が連結するヒール部のシャフトの延長線位置に形成された有底のねじ穴に螺挿固定して、アイアンヘッドの重量をゴルファーの所望する重量とした後、前記ホーゼル部にシャフトを挿入固定することにより、重心位置を変えることなく、ゴルファーの所望する重量で、且つバランスの良いアイアンヘッドを提供できる一方、ゴルファーが使用中のアイアンヘッドの重量を変えたいと希望する場合、使用しているアイアンヘッドを、製造会社あるいはゴルフ用品販売店等に持ち込み、ゴルファーの希望に応じて、前記いずれかの重量調整用ねじを、前記ねじ穴に螺挿固定して、ゴルファーの希望に応じて重量を調整してバランスの良いアイアンヘッドを提供でき、更に、製造会社にとっても、ゴルファーの希望に応じた重量のアイアンヘッドの新商品として迅速に何度も提供ができるという優れた効果を奏するのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明アイアンヘッドの一部を切欠いて示す断面図である。
【
図2】本発明アイアンヘッドに使用する重量調整用ねじの斜視図である。
【実施例】
【0014】
ゴルファーは、打球時のボールの方向安定性や飛距離のアップを図るため、バランス良い低重心のアイアンヘッドを使用するものであり、特に、ゴルフ歴の長いゴルファーにとっては、僅か1g程度のアイアンヘッドの重量の違いを認識できる一方、該アイアンヘッドの重量の違いが打球時のボールの方向安定性や飛距離に影響を与えるので、メンタルなスポーツといわれるゴルフを楽しむゴルファーにとっては、使いなれたアイアンヘッドの重量を簡単に調整できれば、ベストスコアを達成できるのではないかと考え、本発明をなしたものである。以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明アイアンヘッドの一部を切欠いて示す断面図である。図に示すアイアンヘッド1の基端部のヒール部2上方には、シャフト3の先方部を挿入して固定するための、中空部4を備えたホーゼル部5が突設して連設されている。そして、前記ホーゼル部5の下方部内において、該ホーゼル部5が連結するヒール部2のシャフト3の延長線位置に、前記アイアンヘッド1の重量を調整するための重量調整用ねじ6を螺挿固定する雌ねじを凹設した
有底のねじ穴7が形成されている。
【0016】
また、前記ねじ穴7に螺挿固定する重量調整用ねじ6は、例えば、
図1・2に示すように、重量の異なる4種種の金属により、いずれも同一形状に重量調整用ねじ6a~6dが形成されており、外周に前記ねじ穴7の雌ねじに螺挿できる雄ねじ8を周設すると共に、頭部9には、ホーゼル部5の上方の開口部10よりドライバー(図示せず)を挿入して、前記ねじ穴7にねじ込むことができるよう、前記ドライバーの先端の刃先に係合するプラス、マイナスあるいはソケット等の係合部11が設けられている。
【0017】
前記重量調整用ねじ6a~6dは、重量の異なる複数種の金属を用いて同一形状にして、複数本形成されている。そして、前記重量調整用ねじ6a~6dの素材となる金属としては、チタン、アルミニウム、鉄およびタングステンにより製造する。前記記載した4種類の各金属の重量は、チタンが一番軽く、以下アルミニウム、鉄、タングステンの順に重くなって行く。
【0018】
そして、重量調整用ねじ6a~6dの一例として、例えば、全長5~7mm、ねじ径1~3mmの重量調整用ねじを、前記各素材を用いて製造する場合、チタンを0.5~6.0g、アルミニウムを0.5~3.0g、鉄を1.0~10.0gまたはタングステンを2.0~15.0gの重量の範囲内において、それぞれ用いて製造することが推奨される。
【0019】
前記のように、重量の異なる複数種の金属で同一形状に形成されている複数本の重量調整用ねじ6a~6dのうち、
図1に示すように、例えば、ゴルファーの希望する重量の重量調整用ねじ6aを選択し、ドライバーの先端の刃先に、前記選択された重量調整用ねじ6aの頭部9の係合部11を係止して、ホーゼル部2の上方の開口部10より前記ドライバーを挿入して、前記ねじ穴7に前記重量調整用ね6aをねじ込み固定し、然る後、前記ホーゼル部5にシャフト3を挿入して、該ホーゼル部5に一体に固定することにより、重量を調整したアイアンヘッド1が形成される。
【符号の説明】
【0020】
1 アイアンヘッド
2 ヒール部
3 シャフト
4 中空部
5 ホーゼル部
6a~6d 重量調整用ねじ
7 ねじ穴
8 雄ねじ
9 頭部
10 開口部
11 係合部