IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インフィニューム インターナショナル リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-潤滑油組成物及びそれに関連する改善 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】潤滑油組成物及びそれに関連する改善
(51)【国際特許分類】
   C10M 139/00 20060101AFI20220620BHJP
   C10M 163/00 20060101ALI20220620BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20220620BHJP
   C10M 159/22 20060101ALN20220620BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20220620BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220620BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20220620BHJP
【FI】
C10M139/00 A
C10M163/00
C10M159/24
C10M159/22
C10N10:04
C10N30:00 Z
C10N40:25
【請求項の数】 30
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018036126
(22)【出願日】2018-03-01
(65)【公開番号】P2018145421
(43)【公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】17158720.7
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500010875
【氏名又は名称】インフィニューム インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】ジョーセフ ピーター ハートレイ
(72)【発明者】
【氏名】アン ワイ-ユ ヤング
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-133902(JP,A)
【文献】特開2018-065906(JP,A)
【文献】国際公開第2017/011633(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/011683(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1清浄剤、第2清浄剤及び第3清浄剤を含む直噴式火花点火内燃エンジン潤滑油組成物であって、第1清浄剤は非ホウ素化カルシウム清浄剤を含み、第2清浄剤はホウ素化カルシウム清浄剤を含み、第3清浄剤は150mg KOHg-1未満のTBNを有し、該第1及び第2清浄剤が合わせてASTM4951で測定されるカルシウム含有量を潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも0.12質量%提供し、該第2清浄剤が、ASTMD5185で測定されるホウ素含有量を潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも100質量ppm提供することを含む、潤滑油組成物。
【請求項2】
第1清浄剤のカルシウム含有量が、第1清浄剤の質量に対して2質量%から16質量%あり、及び/又は第2清浄剤のカルシウム含有量が、第2清浄剤の質量に対して4質量%から16質量%ある、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
第2清浄剤のホウ素含有量が、第2清浄剤の質量に対して1質量%から10質量%ある、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
第1清浄剤及び第2清浄剤が合わせて、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも0.14質量%カルシウム含有量を潤滑油組成物に提供する、請求項1から3のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
第2清浄剤が、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも150質量ppmホウ素含有量を潤滑油組成物に提供する、請求項1から4のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
第1清浄剤が カルシウムフェナート、カルシウムスルホナート及び/又はカルシウムサリチラート含み、及び/又は第2清浄剤がホウ素化カルシウムフェナート、ホウ素化カルシウムスルホナート及び/又はホウ素化カルシウムサリチラート含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
第2清浄剤が第1清浄剤のカルシウム清浄剤のホウ素化類似体を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
第2清浄剤がカルシウム及びホウ素を、第2清浄剤の質量に基づいてカルシウムの質量%対ホウ素の質量%の比で1:Z含み、Zは少なくとも0.1ある、請求項1から7のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
Zが0.1から4ある、請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
第1清浄剤及び第2清浄剤が、潤滑油組成物の質量に基づいて第1清浄剤の質量%対第2清浄剤の質量%の比で1:Xの割合で存在し、Xは少なくとも0.1ある、請求項1から9のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
Xが0.1から10ある、請求項10に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
潤滑油組成物中のホウ素含有量の少なくとも50%第2清浄剤によって提供される、請求項1から11のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
潤滑油組成物中のホウ素含有量の100%が第2清浄剤によって提供される、請求項12に記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
直噴式火花点火内燃エンジンにおける低速プレイグニッション(LSPI)事象を低減する方法であって、エンジンのクランクケースを請求項1から13のいずれか1項に記載の潤滑油組成物で潤滑するステップを含む、方法
【請求項15】
動作中、エンジン速度が1,000回転/分(rpm)から2,500回転/分、1,500kPaを超え正味平均有効圧力の水準をエンジンが発生させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ホウ素化カルシウム清浄剤がホウ素化過塩基性カルシウム清浄剤を含み、ASTMD2896で測定されるTBNが少なくとも150ある、請求項14又は15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
清浄剤パッケージが追加的に更なる清浄剤を含み清浄剤パッケージが追加的に非ホウ素化カルシウム清浄剤を含む、請求項14から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
潤滑油組成物が、直噴式火花点火内燃エンジンのクランクケースが前記潤滑油組成物によって潤滑される場合、(非ホウ素化)カルシウム清浄剤のみを含む潤滑油組成物によって潤滑される場合に比較して、直噴式火花点火内燃エンジンにおけるLSPI事象の発生を低減する潤滑油組成物である、請求項14から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
組成物が、直噴式火花点火内燃エンジンのクランクケースを潤滑する場合にLSPI事象を低減するための、ホウ素化カルシウム清浄剤を含む清浄剤パッケージの潤滑油組成物における使用であって、該清浄剤パッケージは、第1清浄剤は非ホウ素化カルシウム清浄剤を含み、第2清浄剤はホウ素化カルシウム清浄剤を含み、第3清浄剤は150mg KOHg-1未満のTBNを有する、第1清浄剤、第2清浄剤及び第3清浄剤を含み、該第1及び第2清浄剤が合わせてASTM4951で測定されるカルシウム含有量を潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも0.12質量%提供し、該ホウ素化第2清浄剤が、ASTMD5185で測定されるホウ素含有量を潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも100質量ppm提供する、清浄剤パッケージの使用。
【請求項20】
動作中、1,000回転/分(rpm)から2,500回転/分エンジン速度で、1,500kPaを超え正味平均有効圧力の水準をエンジンが発生させる、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
清浄剤パッケージが追加的に更なる清浄剤をむ、請求項19又は20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
潤滑油組成物が請求項1から13のいずれか1項に記載の潤滑油組成物である、請求項19、20又は21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
第1清浄剤のカルシウム含有量が、第1清浄剤の質量に対して4質量%から10質量%であり、及び/又は第2清浄剤のカルシウム含有量が、第2清浄剤の質量に対して5質量%から10質量%である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項24】
第2清浄剤のホウ素含有量が、第2清浄剤の質量に対して2質量%から8質量%である、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項25】
第1清浄剤及び第2清浄剤が合わせて、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも0.16質量%のカルシウム含有量を潤滑油組成物に提供する、請求項1から3のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項26】
第1清浄剤がカルシウムスルホナート及び/又はカルシウムサリチラートを含み、及び/又は第2清浄剤がホウ素化カルシウムスルホナート及び/又はホウ素化カルシウムサリチラートを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項27】
動作中、エンジン速度が1,000回転/分から2,000回転/分で、2,000kPaを超える正味平均有効圧力の水準をエンジンが発生させる、請求項14に記載の方法。
【請求項28】
ホウ素化カルシウム清浄剤がホウ素化過塩基性カルシウム清浄剤を含み、ASTMD2896で測定されるTBNが少なくとも250である、請求項14又は15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
清浄剤パッケージが追加的に更なる清浄剤を含み、前記清浄剤パッケージが追加的に非ホウ素化カルシウム清浄剤を含む、請求項19又は20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
清浄剤パッケージが追加的に更なる清浄剤を含み、前記清浄剤パッケージが追加的に非ホウ素化カルシウム清浄剤であって、150mg KOHg -1 未満のTBNを有する清浄剤を含む、請求項19又は20のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、潤滑油組成物に関する。専らにではないが特に、本発明は火花点火式内燃エンジンにおける、低速プレイグニッション(LSPI)(又は低速プレイグニッション事象)の発生を低減するための潤滑油組成物に関し、そこでは規定された清浄剤パッケージを有する潤滑油組成物が、エンジンクランクケースを潤滑するために用いられる。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
市場における需要は、政府の法律と同様に、自動車製造業者が、継続的に燃料の経済性を改善し、エンジン群全体でCO2排出量を低減しながら同時に性能(馬力)を維持するように導いてきている。小型エンジンを使用して、比出力を高めるためのターボチャージャーまたはスーパーチャージャーを用いることにより、より高い出力密度を与え、給気圧力を高めること、及び低いエンジン速度におけるより高いトルクの発生により可能となるより高い変速比の使用によってエンジンを減速させることは、エンジン製造業者が、摩擦損失およびポンプ損失を低減しつつ優れた性能を提供することを可能とした。しかしながら、より低いエンジン速度におけるより高いトルクは、低速プレイグニッションまたはLSPIとして知られる現象である低速におけるエンジンのランダムなプレイグニッションを引起し、これが極度に高いシリンダーピーク圧力をもたらし、破滅的なエンジンの故障を導く可能性があることが分かってきている。LSPIの可能性は、エンジン製造業者が、このようなより小型の高出力エンジンにおいて、より低いエンジン速度でエンジントルクを十分に最適化することを妨げている。
如何なる特定の理論にも縛られるつもりはないが、LSPIは、少なくとも部分的には、エンジンが低速で作動し、圧縮工程時間が最長(例えば、4,000rpmにおいて7.5ミリ秒という圧縮工程を有するエンジンは、1,250rpmにて動作する際に、24ミリ秒という圧縮工程を有し得る)である間に、高圧下でピストンクレビス(ピストンリングパックとシリンダライナーとの間の空間)から、エンジンの燃焼室に入る液滴(例えば、エンジンオイル、若しくはエンジンオイル、燃料及び/又はデポジットの混合物を含む)の自己点火によって引起される可能性があると信じられている。従って、自己点火に対して抵抗性があり、そのためLSPIの発生を防止し、または改善する潤滑油組成物を特定し、提供することが有利であろう。
【0003】
WO2015/42337は、LSPI事象を低減させるための無灰酸化防止剤添加剤の使用を考察している。WO2015/42340は、LSPI事象を低減させるための過塩基性金属清浄剤の使用を考察している。WO2015/171980は、ホウ素化分散剤又はホウ素含有化合物と非ホウ素化分散剤の混合物を含むホウ素含有化合物を提供することによるLSPI事象を低減する方法に関する。
潤滑油の処方においてカルシウム含有量を減らすことでLSPI事象の低減を導くことができることは当該技術分野において認知されている。例えば、EP2940110を参照。しかしながら、清浄剤は、基本的なエンジンオイルの性能を維持するために必要な添加剤であるとしばしば考えられている。したがって、LSPI事象を低減する潤滑油の処方を提供することにかかる近年の努力は、カルシウム清浄剤を代替的な清浄剤で置き換えることに注がれてきた。しかしながら、現在の直噴式火花点火エンジンでの使用に適し、LSPI事象の発生を低減する潤滑油組成物に対するニーズがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の概要)
本件発明者たちは、驚くべきことに、潤滑油組成物中にホウ素化カルシウム清浄剤を使用することが、直噴式火花点火内燃エンジンにおいて、エンジンのクランクケースが該潤滑油組成物によって潤滑される場合、例えばクランクケースが(非ホウ素化)カルシウム清浄剤のみを含む組成物によって潤滑される場合に比較して、予期せず、著しくLSPI事象の発生を低減することを発見した。
したがって、本件発明は、第一の態様として、カルシウム清浄剤、及びホウ素化カルシウムを含む第2の清浄剤を含む潤滑油組成物を提供し、該第1及び第2の清浄剤はともに、潤滑油組成物に、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも0.12質量%のカルシウム含有量を提供し、該第2の清浄剤は、潤滑油組成物に、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも100質量ppm、例えば少なくとも150質量ppmのホウ素含有量を提供する。
【0005】
第二の態様においては、本件発明は、エンジンクランクケースを、ホウ素化カルシウム清浄剤を含む清浄剤パッケージを含む潤滑油組成物で潤滑することを含む直噴式火花点火内燃エンジンにおける低速プレイグニッション(LSPI)事象を低減する方法を提供し、該清浄剤パッケージは、潤滑油組成物に、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも0.12質量%のカルシウム含有量を提供し、ホウ素化カルシウム清浄剤は、潤滑油組成物に、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも100質量ppm、例えば少なくとも150質量ppmのホウ素含有量を提供する。該潤滑油組成物は本件発明の第一の態様の潤滑油組成物であってよい。
第三の態様において、本件発明は、直噴式火花点火内燃エンジンのクランクケースを組成物が潤滑する際のLSPI事象を低減するための潤滑油組成物中でのホウ素化カルシウム清浄剤を含む清浄剤パッケージの使用を提供し、該清浄剤パッケージは、潤滑油組成物に、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも0.12質量%のカルシウム含有量を提供し、ホウ素化カルシウム清浄剤は、潤滑油組成物に、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも100質量ppm、例えば少なくとも150質量ppmのホウ素含有量を提供する。該潤滑油組成物は本件発明の第一の態様の潤滑油組成物であってよい。
【0006】
本明細書において、以下の用語及び表現は、用いられる場合には、以下に与えられる意味を有する:
「活性成分」又は「(a.i.)」は、希釈剤又は溶媒ではない添加剤物質を指す。
「ヒドロカルビル」とは、通常、水素及び炭素原子のみを含む化合物の化学基を意味し、該基は、炭素原子を介して直接該化合物の残部に結合しているが、基として本質的にヒドロカルビルの性質を減じない限り、ヘテロ原子を含有してもよい。
「油溶性」又は「油分散性」又は同語源の用語は、化合物や添加剤があらゆる比率でオイル中に溶解、可溶化、混和又は懸濁可能であることを必ずしも示さない。しかしながらこれらは、例えば、オイルが用いられる環境において所望の効果を発揮する程度に充分な量オイル中に溶解する又は安定に分散することを意味する。さらに、もし望むのであれば、他の添加剤を追加的に組み込むことが、また他の添加剤を組み込むことを許容し、ある特定の添加剤をより高いレベルで組み込むことも許容することがある。
【0007】
「過半量(major amount)」は、組成物の50質量%を超えることを意味し;
「少量(minor amount)」は、組成物の50質量%以下を意味し;
「TBN」は、ASTM D2896により、mg・KOH/gの単位で測定される全塩基価を意味し;
「リン含有量」は、ASTM D5185により測定され;
潤滑油組成物の、又は添加剤成分の「金属含有量」、例えばモリブデン含有量又は潤滑油組成物の総金属含有量(すなわち、全ての個別の金属含有量の和)はASTM D5185により測定され;
「ホウ素含有量」は、ASTM D5185で測定され;
「カルシウム含有量」は、ASTM 4951で測定され;
「硫黄含有量」は、ASTM D2622により測定され;及び、
「硫酸灰分含有量」は、ASTM D874により測定される。
また、最適、慣習的であると同様に本質的な、用いられる様々な成分は、処方、保存又は使用の条件下で反応する可能性があり、本発明がまた任意のこのような反応の結果として得ることのできる又は該反応の結果得られる生成物も提供するものであることは理解されよう。 更に、本明細書において示された任意の上限及び下限の量、範囲及び比率の限界は、独立に組み合わせることができるものと理解される。更に、本発明の成分は、単離され又は混合物中に存在する場合があり、本発明の範囲内にある。
本発明のある態様について記載された特徴は、本発明の他の態様にも組み入れられてもよいことはもちろん認識されよう。例えば、本発明の方法は、本発明の組成物を参照して記載された任意の特徴を組み入れるものであり、またその逆についても同じである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本明細書の実施例において用いられるようなLSPI事象の発生を決定する方法に従って、エンジン内のLSPI事象の発生を図で示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
ノック、極端なノック(しばしばスーパーノックまたはメガノックと呼ばれる)、面点火、およびプレイグニッション(火花点火に先立って起こる点火)を含む数種の用語が、火花点火式内燃エンジンにおける異常燃焼の様々な形態について存在する。極端なノックは、従来型のノックと同様な方法で起こるが、より高いノックの振幅を伴い、また従来型のノック制御法を利用して緩和することができる。LSPIは、通常低速かつ高負荷において起こる。LSPIにおいて、初期燃焼は比較的緩慢で、かつ正常な燃焼と類似しており、続いて燃焼速度の急な増加が起こる。LSPIは、幾つかの他のタイプの異常燃焼とは違って、暴走現象ではない。LSPIの発生は、予測困難であるが、特性上しばしば周期的である。
LSPIは、直噴式、ブーストされた(ターボチャージャーまたはスーパーチャージャーを備えた)、火花点火式(ガソリン)内燃エンジンにおいて最も発生しやすく、動作中に約1,500kPa(15bar)(ピークトルク)を超える、例えば少なくとも約1,800kPa(18bar)、特に少なくとも約2,000kPa(20bar)の正味平均有効圧力の水準を、エンジン速度約1,000~約2,500回転/分(rpm)、例えばエンジン速度約1,000~約2,000rpmにおいて発生する。本明細書において用いられる場合、「正味平均有効圧力(BMEP)」とは、エンジンサイクル中に達成された仕事を総行程容積で割った値として定義される、即ちエンジン排気量によって規格化されたエンジンのトルクである。「ブレーキ(brake)」という用語は、ダイナモメータで測定されるような、エンジンのフライホイールにおいて利用し得る実際のトルクまたは動力を意味する。即ち、BMEPは、エンジンの有用な出力の一尺度である。
【0010】
WO2015/171978及びWO2015/171981は、亜鉛ジアルキルジチオフォスファート化合物及びホウ素化分散剤を含む潤滑油は、LSPI事象を低減するのに有用であることを開示している。驚くべきことに、本件発明者は、潤滑油の処方への、ホウ素化カルシウム清浄剤を通じたホウ素の導入が、ホウ素化分散剤を通じてホウ素を導入するよりもLSPI事象の発生を低減するのに予期せず効果的であることを発見した。言い換えれば、本件発明者たちは、所与のホウ素濃度を有する潤滑油組成物について、ホウ素含有量がホウ素化カルシウム清浄剤によって提供される処方の方が、ホウ素含有量が主にホウ素化分散剤によって提供される等価の潤滑油組成物よりも、LSPI事象の頻度を低減するのにより効果的であり得ることを発見した。
今や、エンジンにおけるLSPIの発生は、クランクケースをホウ素化カルシウム清浄剤を含む清浄剤パッケージ、例えば、添加剤パッケージが潤滑油組成物に、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも0.12質量%のカルシウム含有量を提供し、ホウ素化カルシウム清浄剤が潤滑油組成物に、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも100質量ppm、例えば少なくとも150質量ppmのホウ素含有量を提供する、潤滑油組成物で潤滑することにより低減することができることが発見された。特定の理論に縛られることを望むわけではないが、本件発明者たちは、ホウ素化カルシウム清浄剤は、対応する(非ホウ素化)カルシウム清浄剤よりもLSPIに敏感ではないと考えている。洗浄剤パッケージは、ホウ素化カルシウム清浄剤とカルシウム清浄剤とを含んでもよい。
【0011】
特に、今や、LSPI事象は、カルシウム清浄剤を含む第1清浄剤、及びホウ素化カルシウム清浄剤を含む第2清浄剤を含み、該第1及び第2清浄剤はともに潤滑油組成物に、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも0.12質量%のカルシウム含有量を提供し、該第2清浄剤は、潤滑油組成物に、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも100質量ppm、例えば150質量ppmのホウ素含有量を提供する潤滑油組成物を用いることにより低減することができることが発見された。
第1清浄剤は、カルシウム清浄剤を含み、第1清浄剤の質量に対して少なくとも2質量%のカルシウム含有量を有してもよい。第2清浄剤は、ホウ素化カルシウム清浄剤を含み、第2清浄剤の質量に対して、少なくとも4質量%のカルシウム含有量及び少なくとも1質量%、例えば少なくとも2質量%のホウ素含有量を有してもよい。
第1及び第2清浄剤はともに潤滑油組成物に、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも0.14質量%、好ましくは少なくとも0.16質量%、例えば少なくとも0.18質量%のカルシウム含有量を提供してもよい。第1及び第2清浄剤はともに潤滑油組成物に、潤滑油組成物の質量に対して0.12質量%から0.35質量%、例えば0.14質量%から0.30質量%、好ましくは0.16質量%から0.25質量%、例えば0.18質量%から0.20質量%のカルシウム含有量を提供してもよい。
第2清浄剤は、潤滑油組成物に、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも150質量ppm、好ましくは少なくとも200質量ppm、例えば少なくとも220質量ppmのホウ素含有量を提供してもよい。第2清浄剤は、潤滑油組成物に、潤滑油組成物の質量に対して100質量ppmから800質量ppm、場合によっては150質量ppmから750質量ppm、例えば180質量ppmから700質量ppm、好ましくは220質量ppmから650質量ppm、例えば250質量ppmから500質量ppmのホウ素含有量を提供してもよい。
ホウ素化カルシウム清浄剤と(非ホウ素化)カルシウム清浄剤との組合せが、清浄剤の活性とLSPIの低減との間でバランスをとるにあたり特に効果的であるかもしれない。
【0012】
潤滑油組成物は、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも0.14質量%、好ましくは少なくとも0.16質量%、例えば少なくとも0.18質量%のカルシウム含有量を有してもよい。潤滑油組成物は、潤滑油組成物の質量に対して、0.12質量%から0.35質量%、例えば0.14質量%から0.30質量%、好ましくは0.16質量%から0.25質量%、例えば0.18質量%から0.20質量%のカルシウム含有量を有してもよい。潤滑油組成物は、潤滑油組成物の質量に対して少なくとも100質量ppm、例えば少なくとも150質量ppm、好ましくは200質量ppm、例えば少なくとも250質量ppmのホウ素含有量を有してもよい。潤滑油組成物は、潤滑油組成物の質量に対して、100質量ppmから800質量ppm、場合によっては150質量ppmから750質量ppm、例えば180質量ppmから700質量ppm、好ましくは220質量ppmから650質量ppm、例えば250質量ppmから500質量ppmのホウ素含有量を有してもよい。
乗用車モーターオイルとしての使用に適している潤滑油組成物は、従来、過半量の潤滑粘度のオイルと少量の清浄剤を含む性能向上添加剤を含む。便利なことに、ホウ素は、本発明の全ての態様において用いられる潤滑油組成物に、1以上のホウ素化カルシウム清浄剤によって導入される。任意のホウ素化カルシウム清浄剤が適切なホウ素源であろう。適切なホウ素化カルシウム清浄剤の例としては、これらに限られるものではないが、1以上のホウ素化カルシウムフェナート清浄剤、1以上のホウ素化カルシウムスルホナート清浄剤、1以上のホウ素化カルシウムサリチラート清浄剤、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましいホウ素化カルシウム清浄剤は、過塩基性ホウ素化カルシウム清浄剤である。
本発明の全ての態様のホウ素化カルシウム清浄剤は、任意の従来の方法で調製することができる。例えば、ホウ素化カルシウム清浄剤は、カルシウム清浄剤をホウ酸で処置することによって調製することができるだろう。ホウ素化清浄剤を調製する方法は、米国特許第3,480,548号、米国特許第3,679,584号、米国特許第3,829,381号、米国特許第3,909,691号及び米国特許第4,965,004号に開示されている。
【0013】
第1清浄剤は、第1清浄剤の質量に対して、2質量%から16質量%、例えば4質量%から12質量%、例えば6質量%から10質量%のカルシウム含有量を有してもよい。第2清浄剤は、第2清浄剤の質量に対して、4質量%から16質量%、好ましくは5質量%から12質量%、例えば6質量%から10質量%のカルシウム含有量を有してもよい。そのようなカルシウム含有量を有する清浄剤が特に潤滑油添加剤として有用であろう。
第2清浄剤は、第2清浄剤の質量に対して、1質量%から10質量%、好ましくは2質量%から8質量%、例えば2質量%から6質量%のホウ素含有量を有してもよい。そのようなホウ素含有量を有するカルシウム清浄剤は、LSPI低減の効用と製造の利便性の間で特によいバランスを提供するであろう。
金属含有または灰分形成清浄剤は、デポジットを減じまたは除去するための清浄剤および酸中和剤または防錆剤の両方として機能し、それにより磨耗および腐蝕を減じ、かつエンジン寿命を延ばす。清浄剤は、一般的に長い疎水性尾部を有する極性頭部を含む。該極性頭部は、酸性有機化合物の金属塩を含む。該塩は、実質的に化学量論量の金属を含むことができ、その場合においてそれらは通常正塩または中性塩として表現され、0から150未満、例えば0から約80又は100の全塩基価、又はTBN(ASTM D2896によって測定し得る)を有する。過剰量の金属化合物(例えば、酸化物または水酸化物)と酸性ガス(例えば、二酸化炭素)とを反応させることにより、大量の金属塩基を組入れることができる。この得られる過塩基性清浄剤は、金属塩基(例えば、炭酸塩)ミセルの外側層として中和された清浄剤を含む。このような過塩基性清浄剤は、150またはこれを超えるTBNを有し、典型的には200から450、又はこれを超えるTBNを有するであろう。
第1清浄剤は、過塩基性ホウ素化カルシウム清浄剤、例えば全塩基価(TBN)が少なくとも150、好ましくは少なくとも200であるものを含んでもよい。第2清浄剤は、ホウ素化過塩基性カルシウム清浄剤、例えばTBNが少なくとも150、好ましくは少なくとも200であるものを含んでもよい。過塩基性ホウ素化カルシウム清浄剤及び/又はホウ素化過塩基性カルシウム清浄剤はTBNが200から450であってもよい。
第1及び第2の清浄剤は、好ましくはあわせて約4mg・KOH/gから約10mg・KOH/g、好ましくは約5mg・KOH/gから約8mg・KOH/gのTBNを潤滑油組成物に提供する量用いられる。好ましくは、カルシウム以外の金属に基づく過塩基性清浄剤は、過塩基性清浄剤によって与えられる潤滑油組成物のTBNの60%以下、例えば50%以下、又は40%以下を与える量存在する。好ましくは、本発明の潤滑油組成物は、非カルシウムベースの過塩基性灰含有清浄剤を、過塩基性清浄剤が潤滑油組成物に与える総TBNの約40%以下を与える量含む。過塩基性カルシウム清浄剤の組合せ(例えば、2以上の過塩基性カルシウムフェナート、過塩基性カルシウムサリチラート及び過塩基性カルシウムスルホナート、又は2以上のカルシウム清浄剤であってそれぞれが異なる150より大きなTBNを有するものを含む)が用いられ得る。好ましくは、第1及び/又は第2の清浄剤は、少なくとも約200、例えば約200から約500、好ましくは少なくとも約250、例えば約250から約500、より好ましくは少なくとも約300、例えば約300から約450のTBNを有する又は平均として有するであろう。
【0014】
本発明の全ての態様において用い得るカルシウム清浄剤としては、油溶性で中性及び過塩基性の、スルホナート、フェナート、硫化フェナート、チオホスホナート、サリチラート、ナフテナート及びその他の油溶性カルボキシラートのカルシウム、並びにその混合物が挙げられる。適切なカルシウム清浄剤としては、他の金属、特にアルカリ又はアルカリ土類金属、例えば、バリウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及び/又はマグネシウムをまた含み得ることは理解されるであろう。最も一般的に用いられる追加的な金属は、マグネシウム及びナトリウムであり、いずれか又は両方がカルシウム清浄剤及び/又はホウ素化カルシウム清浄剤中に存在してよい。第1及び/又は第2の清浄剤は、過塩基性又は中性又はその両方の清浄剤の組合せを含んでもよい。
スルホナートは、典型的には、例えば石油留分から、又は芳香族炭化水素のアルキル化により得られるもののようなアルキル置換芳香族炭化水素のスルホン化により得られるスルホン酸から調製することができる。例としては、ベンゼン、キシレン、ナフタレン、ジフェニルまたはそのハロゲン誘導体、例えばクロロベンゼン、クロロトルエンおよびクロロナフタレンをアルキル化することによって得られるものが挙げられる。該アルキル化は、触媒の存在下で、約3から70個を超える炭素原子を有するアルキル化剤とともに行うことができる。該アルカリルスルホナートは、通常、アルキル置換芳香族部分当たり、約9個から約80個、又はこれを超える数の炭素原子、好ましくは約16個から約60個の炭素原子を含む。本発明の好ましい実施形態において、スルホナート清浄剤は、トルエンのアルキル化では得ることができない。好ましいスルホナート清浄剤は、アルキルベンゼンスルホナートの金属塩である。
上記油溶性スルホナートまたはアルカリルスルホン酸は、金属のオキシド、ヒドロキシド、アルコキシド、カルボナート、カルボキシラート、スルフィド、ヒドロスルフィド、ニトラート、ボラート及びエーテルによって中和され得る。金属化合物の量は、最終的な生成物の所望のTBNを考慮して選択されるが、典型的には、化学量論的に必要とされる値の、約100質量%から220質量%(好ましくは少なくとも125質量%)の範囲にある。
【0015】
フェノール及び硫化フェノールの金属塩は、適切な金属化合物、例えば、酸化物又は水酸化物との反応により調製され、中性又は過塩基性の生成物を、当該技術分野において既知の方法によって得ることができる。硫化フェノールは、フェノールと硫黄又は硫黄含有化合物、例えば硫化水素、モノハロゲン化硫黄または二ハロゲン化硫黄とを反応させて調製することができ、一般に2またはそれ以上のフェノールが硫黄含有架橋によって架橋されている化合物の混合物である生成物を形成する。
カルボキシラート清浄剤、例えばサリチラートは、芳香族カルボン酸と適当な金属化合物、例えば酸化物または水酸化物とを反応させることにより調製することができ、中性または過塩基性生成物を、当該技術分野において既知の方法によって得ることができる。芳香族カルボン酸の芳香族部分は、例えば窒素及び酸素のようなヘテロ原子を含むことができる。好ましくは、該部分は炭素原子のみを含み、より好ましくは該部分は6個またはそれ以上の炭素原子を含み、例えばベンゼンが好ましい部分である。芳香族カルボン酸は、1以上の芳香族部分、例えば縮合またはアルキレン架橋を介して結合されたベンゼン環を1以上含むことができる。カルボン酸部分は、該芳香族部分に直接または間接的に結合されていてもよい。好ましくは、該カルボン酸基は、該芳香族部分上の炭素原子、例えばベンゼン環上の炭素原子に直接結合されている。より好ましくは、該芳香族部分はまた、第二の官能基、例えばヒドロキシ基またはスルホナート基を含み、それは、該芳香族部分上の炭素原子に直接または間接的に結合することができる。
芳香族カルボン酸の好ましい例は、サリチル酸およびその硫化誘導体、例えばヒドロカルビル置換サリチル酸及びその誘導体である。例えば、ヒドロカルビル置換サリチル酸を硫化する方法は、当業者にとっては公知である。サリチル酸は、典型的に、フェノキシドのカルボキシル化、例えばコルベ-シュミット(Kolbe-Schmitt)法によって調製され、その場合、一般に、通常は希釈剤中で、カルボキシル化されていないフェノールとの混合物として得られるであろう。
【0016】
油溶性サリチル酸における好ましい置換基は、アルキル置換基である。アルキル置換サリチル酸において、アルキル基は、有利には5から100個、好ましくは9から30個、特に14から20個の炭素原子を含む。2以上のアルキル基が存在する場合、該アルキル基全体における平均の炭素原子数は、十分な油溶性を保証するために、少なくとも9個であることが好ましい。
本発明の潤滑油組成物の処方において一般的に有用な清浄剤としてはまた、例えば米国特許第6,153,565号;同第6,281,179号;同第6,429,178号;および同第6,429,178号に記載されているように、例えばフェナート/サリチラート、スルホナート/フェナート、スルホナート/サリチラート、スルホナート/フェナート/サリチラートのような混合界面活性剤系とともに形成される「ハイブリッド」清浄剤が挙げられる。
第1清浄剤はカルシウムフェナート、カルシウムスルホナート及び/又はカルシウムサリチラートを含んでもよい。ある実施形態においては、第1清浄剤はカルシウムサリチラートを含む。第2清浄剤はホウ素化カルシウムフェナート、ホウ素化カルシウムスルホナート、ホウ素化カルシウムサリチラート又はそれらの混合物を含んでもよい。ある実施形態においては、第2清浄剤は、ホウ素化カルシウムサリチラートを含む。第2清浄剤は第1の清浄剤のカルシウム清浄剤のホウ素化類似体を含んでもよい。例えば、第1清浄剤がカルシウムサリチラートを含む場合、第2清浄剤はホウ素化カルシウムサリチラートを含むであろう。例えば、第2清浄剤のホウ素化カルシウム清浄剤が第1清浄剤のカルシウム清浄剤のホウ素化によって調製されるであろう。
第2清浄剤はカルシウム及びホウ素を、第2清浄剤の質量に基づいてカルシウムの質量%対ホウ素の質量%比で1:Z含み、式中Zは少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.2、例えば少なくとも0.5であってもよい。Zは0.1から4、好ましくは0.2から3、例えば0.5から2であってもよい。このような比は、清浄剤の活性とLSPIの低減との間で特によいバランスを提供するであろう。
第1清浄剤及び第2清浄剤は、潤滑油組成物の質量に基づいて第1清浄剤の質量%対第2清浄剤の質量%比で1:Xで存在し、式中Xは少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.2、例えば少なくとも0.3であってもよい。Xは0.1から10、好ましくは0.2から5、例えば0.3から3であってもよい。
【0017】
第1清浄剤は、複数のカルシウム清浄剤を含み、及び/又は、第2の清浄剤は複数のホウ素化カルシウム清浄剤を含んでもよい。第1清浄剤の各カルシウム清浄剤は、独立してカルシウムフェナート、カルシウムスルホナート又はカルシウムサリチラートであってもよい。第2清浄剤の各ホウ素化カルシウム清浄剤は、独立して、ホウ素化カルシウムフェナート、ホウ素化カルシウムスルホナート又はホウ素化カルシウムサリチラートであってもよい。好ましくは、第1清浄剤は、実質的にカルシウム清浄剤ではない清浄剤を含まない。好ましくは、第2清浄剤は、実質的にホウ素化カルシウム清浄剤ではない清浄剤を含まない。言い換えれば、第1清浄剤は1以上のカルシウム清浄剤から成ってもよく、及び/又は第2清浄剤は1以上のホウ素化カルシウム清浄剤から成ってもよい。清浄剤が実質的にある特定のタイプの清浄剤以外を含まないと言われる、又はある特定のタイプの清浄剤から成ると言われる時は、該清浄剤は、それにも関わらず痕跡量の他の物質を含み得ることが理解されよう。例えば、清浄剤は、清浄剤を作るために用いた調製プロセスからの残りの他の物質を痕跡量含んでもよい。第1清浄剤はホウ素化清浄剤ではない(言い換えれば、第1清浄剤は非ホウ素化カルシウム清浄剤である)ことが理解され、例えば、第1清浄剤は実質的にホウ素を含まないであろう。
潤滑油組成物の少なくとも75%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、又は100%のカルシウム含有量が第1清浄剤及び第2清浄剤によって提供されてもよい。潤滑油組成物の少なくとも50%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも90%のホウ素含有量が第2清浄剤によって提供されてもよい。潤滑油組成物のカルシウム及び/又はホウ素含有量が主に第1及び第2清浄剤によって提供される場合、組成物の清浄剤及びLSPI低減特性は特に効果的に管理することができるであろう。
組成物は追加的に第3の清浄剤を含んでもよい。好ましくは、第3の清浄剤は、実質的にカルシウム及び/又はホウ素を含まない。第3清浄剤は1以上のフェナート、スルホナート又はサリチラート清浄剤、又はそれらの混合物を含んでよい。第3清浄剤は過塩基性又は中性清浄剤であってよい。第3清浄剤は、1以上の中性金属含有清浄剤(TBNが150未満を有するもの)を含んでもよい。これらの中性金属ベースの清浄剤はマグネシウム塩又はその他のアルカリ又はアルカリ土類金属(カルシウムを除く)の塩であってよい。本発明の全ての態様において、第1及び第2清浄剤は、清浄剤により潤滑油組成物に導入される金属の100%が第1及び第2清浄剤由来であろう単一金属含有清浄剤であってよい。清浄剤により潤滑油組成物に導入される金属の100%がカルシウムであってもよい。
第3清浄剤はまた、例えば、US2005/0277559A1に記載の油溶性ヒドロカルビルフェノールアルデヒド濃縮物のような無灰(金属フリー)清浄剤を含んでよい。
【0018】
好ましくは、清浄剤全体は、潤滑油組成物に、0.2質量%から2.0質量%、例えば、0.2質量%から1.5質量%、又は0.3質量%から1.0質量%、より好ましくは約0.3質量%から約0.8質量%の硫化灰(SASH)を提供する量用いられる。
該組成物は、分散剤、防錆剤、酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤、追加の耐摩耗剤、摩擦調整剤及び粘度調整剤から成るリストから1以上の追加的な添加剤を含んでもよい。
本発明の実施に際して使用するのに適し、潤滑油組成物の処方において有用な潤滑粘度を有するオイルは、その粘度において、軽質留分である鉱油から重質潤滑油、例えばガソリンエンジンオイル、鉱物潤滑油、およびヘビーデューティーディーゼルオイルまでの範囲であり得る。一般に、該オイルの粘度は、100℃で測定して、約2mm2/秒(センチストークス)から約40mm2/秒、特に約3mm2/秒から約20mm2/秒、最も好ましくは約9mm2/秒から約17mm2/秒の範囲にある。
天然オイルとしては、動物油および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油);液状石油オイルおよび水素化精製された、溶媒処理された又は酸処理された、パラフィン系、ナフテン系および混合パラフィン-ナフテン型の鉱物油が挙げられる。石炭またはシェール由来の潤滑粘度を有するオイルも、有用なベースオイルとして供される。
【0019】
合成潤滑油としては、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、例えば重合および共重合(interpolymerized)オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン));アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);並びにアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド並びにこれらの誘導体、類似体および同族体が挙げられる。
アルキレンオキシド重合体および共重合体並びに末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等によって修飾されているそれらの誘導体も、公知の合成潤滑油の別の群を構成する。これらは、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合によって調製されるポリオキシアルキレンポリマー、およびポリオキシアルキレンポリマーのアルキルおよびアリールエーテル(例えば、分子量1,000を有するメチル-ポリイソプロピレングリコールエーテルまたは分子量1,000から1,500を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル);およびこれらのモノ-およびポリ-カルボン酸エステル、例えばテトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合C3-C8脂肪酸エステル、及びC13オキソ酸ジエステルにより例示される。
【0020】
合成潤滑油の別の適切な群はジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸およびアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマール酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)と、様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルを含む。このようなエステルの具体例としては、ジブチルアジパート、ジ(2-エチルヘキシル)セバカート、ジ-n-ヘキシルフマラート、ジオクチルセバカート、ジイソオクチルアゼラート、ジイソデシルアゼラート、ジオクチルフタラート、ジデシルフタラート、ジエイコシルセバカート、リノール酸ダイマーの2-エチルヘキシルジエステル、および1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2-エチルヘキサン酸とを反応させることにより形成される複合エステルが挙げられる。同様に有用なものは、ガス・トゥー・リキッドプロセスから、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)合成された炭化水素由来の合成オイルであり、これらは通常ガス・トゥー・リキッドまたは「GTL」ベースオイルと呼ばれている。
合成オイルとして有用なエステルとしては、またC5~C12モノカルボン酸とポリオールおよびポリオールエステル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールとから作られるものが挙げられる。
ポリアルキル-、ポリアリール、ポリアルコキシ-又はポリアリールオキシシリコーン油及びシリケート油のようなシリコンベースのオイルは、別の有用な合成潤滑剤の群を構成する。そのようなオイルとしては、テトラエチルシリカート、テトライソプロピルシリカート、テトラ-(2-エチルヘキシル)シリカート、テトラ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)シリカート、テトラ-(p-tert-ブチル-フェニル) シリカート、ヘキサ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン及びポリ(メチルフェニル)シロキサンが挙げられる。その他の合成潤滑油としては、リン含有酸の液状エステル(例えば、リン酸トリクレシル、リン酸トリオクチル、デシルホスホン酸のジエチルエステル)およびポリマー系テトラヒドロフランが挙げられる。
【0021】
上記潤滑粘度を有するオイルはグループI、グループII、グループIII、グループIVまたはグループVベースストックまたはこれらベースストックのベースオイルブレンドを含みうる。好ましくは、潤滑粘度のオイルは、グループII、グループIII、グループIVまたはグループVベースストック、またはその混合物、またはグループIベースストックと、1種またはそれ以上のグループII、グループIII、グループIVまたはグループVベースストックの混合物である。該ベースストックまたはベースストックブレンドは好ましくは、少なくとも65%、より好ましくは少なくとも75%、例えば少なくとも85%の飽和物含有量(saturate content)を有する。好ましくは、該ベースストックまたはベースストックブレンドは、グループIII以上のベースストックまたはその混合物、あるいはグループIIベースストックとグループIII以上のベースストックとの混合物またはそれらの混合物である。最も好ましくは、該ベースストックまたはベースストックブレンドは、90%を超える飽和物含有量を有する。好ましくは、該オイルまたはオイルブレンドは1質量%未満、好ましくは0.6質量%未満、最も好ましくは0.4質量%未満、例えば0.3質量%未満の硫黄含有量を有するであろう。
好ましくは、ノアック(Noack)テスト(ASTM D5800)によって測定されるオイルまたはオイルブレンドの揮発性は、30質量%以下、例えば約25質量%未満、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、最も好ましくは13質量%以下である。好ましくは、オイルまたはオイルブレンドの粘度指数(VI)は、少なくとも85、好ましくは少なくとも100、最も好ましくは約105~200である。
【0022】
本発明においてベースストックとベースオイルの定義は、米国石油協会(API)の刊行物である「エンジンオイルのライセンスと認証システム(Engine Oil Licensing and Certification System)」、産業サービス部門(Industry Services Department)、第14版、1996年12月、補遺1、1998年12月において見出される定義と同一である。同刊行物によると、ベースストックは以下のように分類される:
a)グループIベースストックは、以下の表1において指定したテスト法を使用して、90%未満の飽和物および/または0.03%を超える硫黄を含み、また80以上かつ120未満の粘度指数を有する。
b)グループIIベースストックは、以下の表1において指定したテスト法を使用して、90%以上の飽和物および0.03%以下の硫黄を含み、また80以上かつ120未満の粘度指数を有する。
c)グループIIIベースストックは、以下の表1において指定したテスト法を使用して、90%以上飽和物および0.03%以下の硫黄を含み、また120以上の粘度指数を有する。
d)グループIVベースストックは、ポリα-オレフィン(PAO)である。
及び
e)グループVベースストックは、グループI、II、III、またはIVに含まれないあらゆる他のベースストックを含む。
【0023】
【表1】
【0024】
本発明の全ての態様における潤滑油組成物は、更にリン含有化合物を含んでもよい。
適切なリン含有化合物としては、ジヒドロカルビルジチオホスファート金属塩が挙げられ、それは、しばしば耐摩耗剤および酸化防止剤として用いられる。金属は、アルカリまたはアルカリ土類金属、またはアルミニウム、鉛、スズ、マンガン、ニッケルまたは銅であってよい。亜鉛塩が、該潤滑油組成物の全質量に対して、0.1質量%~6質量%、好ましくは0.2質量%~2質量%の量、潤滑油において最も一般的に用いられる。これらは、公知の技術に従って、通常は1以上のアルコールまたはフェノールとP25とを反応させることによって先ずジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を形成し、次いで亜鉛化合物でこの生成されるDDPAを中和することにより調製できる。例えば、ジチオリン酸は、一級および二級アルコールの混合物を反応させることによって作ることができる。あるいは、複数のジチオリン酸を調製することができ、ここでその一方のヒドロカルビル基は、特性上完全に二級であり、他方のヒドロカルビル基は、特性上完全に一級である。該亜鉛塩を製造するためには、任意の塩基性または中性亜鉛化合物を用いることができるが、酸化物、水酸化物および炭酸塩が最も一般的に用いられている。市販の添加剤は、中和反応において過剰量の塩基性亜鉛化合物を使用しているために、しばしば過剰量の亜鉛を含んでいる。
【0025】
好ましい該亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスファートは、ジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性塩であり、また以下の式によって表すことができる:
【化1】
式中、RおよびR’は1~18個、好ましくは2~12個の炭素原子を含む、同一または異なるヒドロカルビル基であってよく、またアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリールおよび脂環式基のような基が挙げられる。RおよびR’基として特に好ましいものは、2~8個の炭素原子を含むアルキル基である。従って、該基は、例えばエチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニル基であってよい。油溶性を得るために、ジチオリン酸中の全炭素原子数(すなわち、RおよびR’)は、一般に約5以上であろう。従って、上記の亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスファート(ZDDP)は、亜鉛ジアルキルジチオホスファートを含むことができる。本発明の実施に有用な潤滑油組成物は好ましくはZDDP又はその他の亜鉛-リン化合物を、潤滑油組成物の全質量に対して、0.01質量%から0.12質量%のリンを導入する量、例えば、0.03質量%から0.10質量%のリン、好ましくは0.04質量%から0.08質量%のリンを導入するよう含むであろう。好ましくは、本発明の潤滑油組成物は適切には約0.08質量%(800質量ppm)以下のリン含有量を有する。
【0026】
酸化防止剤はしばしば酸化を防止するものとして参照される。それらは組成物の酸化に対する耐性を増加し、過酸化物を無害化するようそれらと結合し、修飾することによって、過酸化物を分解することによって、又は酸化触媒を不活性化することによって、作用するであろう。酸化性の劣化は、潤滑剤におけるスラッジ、金属表面におけるワニス様のデポジット、及び粘度の増大を証拠とすることができる。
それらはラジカル捕捉剤(例えば、立体障害性フェノール、芳香族アミン、特に2級芳香族アミンで少なくとも2つの芳香族基(例えばフェニル基)が直接窒素原子に結合するもの、及び有機銅塩);ヒドロキシペルオキシド分解剤(例えば、有機硫黄及び有機リン添加剤):及び多機能性物質(例えば、耐摩耗剤としてもまた機能し得る亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスファート)に分類されてもよい。
【0027】
本発明の全ての態様における潤滑油組成物は、酸化防止剤、より好ましくは無灰酸化防止剤を含んでもよい。適切には、酸化防止剤は、もし存在する場合は、無灰の芳香族アミン酸化防止剤、無灰のフェノール系酸化防止剤又はそれらの組合せである。本発明の全ての態様における潤滑油組成物は、芳香族アミン及びフェノール系酸化防止剤の両方を含んでよい。
適切には、潤滑油組成物中に存在し得る酸化防止剤(例えば、芳香族アミン酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤又はそれらの組合せ)の総量は、潤滑油組成物の総質量に対して、0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上である。適切には、潤滑油組成物中に存在し得る酸化防止剤の総量は、潤滑油組成物の総質量に対して、5.0質量%以下、好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下である。
【0028】
分散剤は、オイルに対して不溶性である、使用中の酸化に起因する物質を懸濁状態に維持し、それによりスラッジの凝集および沈殿、またはその金属部品上への堆積を防止する。本発明の潤滑油組成物は少なくとも1種の分散剤を含み、また複数の分散剤を含んでもよい。該1種または複数の分散剤は、好ましくは窒素含有分散剤であり、また好ましくは該潤滑油組成物に対して、全体として0.04質量%から0.19質量%、例えば0.05質量%から0.18質量%、最も好ましくは0.06質量%から0.16質量%の窒素分をもたらす。
本発明との関連において有用な分散剤としては、潤滑油に添加される場合には、ガソリンおよびディーゼルエンジンにおいて使用する際にデポジットの形成を低減する上で効果的であることが知られている、一連の窒素含有無灰(金属を含まない)分散剤が挙げられ、また分散される粒子と会合することができる官能基を有する油溶性ポリマー性長鎖の主鎖を含む。典型的に、このような分散剤は、しばしば架橋基を介して該ポリマー主鎖に結合したアミン、アミンアルコールまたはアミド極性部分を有する。該無灰分散剤は、例えば長鎖炭化水素-置換モノ-およびポリ-カルボン酸またはその無水物の油溶性塩、エステル、アミノエステル、アミド、イミドおよびオキサゾリン;長鎖炭化水素のチオカルボキシレート誘導体;直接に結合したポリアミン部分を有する長鎖脂肪族炭化水素;および長鎖置換フェノールとホルムアルデヒドおよびポリアルキレンポリアミンとの縮合により形成されるマンニッヒ(Mannich)縮合生成物から選択することができる。
【0029】
一般に、各モノ-又はジカルボン酸生成部分は求核性基(アミン又はアミド)と反応し、ポリアルケニル置換カルボン酸アシル化剤中の官能基の数が、最終分散剤中の求核性基の数を決定するであろう。
本発明に係る分散剤のポリアルケニル部分は、数平均分子量700~3,000、好ましくは950と3,000の間、例えば950と2,800の間、より好ましくは約950~2,500、及び最も好ましくは950~2,400を有する。本発明のある実施形態においては、分散剤は、低分子量分散剤(例えば、数平均分子量が700~1,100を有するもの)と高分子量分散剤であって数平均分子量が少なくとも1,500、好ましくは1,800と3,000の間、例えば、2,000と2,800の間、より好ましくは2,100~2,500、最も好ましくは2,150から2,400を有するものとの組合せを含む。分散剤の分子量は、一般にポリアルケニル部分の分子量によって表されている。というのは、分散剤の正確な分子量範囲は、分散剤を誘導するのに用いられたポリマーの型、官能基の数、および用いられた求核基のタイプを含む多数のパラメータに依存するからである。
高分子量分散剤が由来するポリアルケニル部分は、好ましくは狭い分子量分布(MWD)を有し、該分子量分布は、重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比によって決定されることからまた多分散性と呼ばれる。具体的には、本発明の分散剤が由来するポリマーは、1.5~2.0、好ましくは1.5~1.9、最も好ましくは1.6~1.8のMw/Mnを有する。
【0030】
本発明による分散剤の形成において用いられる適切な炭化水素またはポリマーとしては、ホモポリマー、共重合体(interpolymer)またはより低分子量の炭化水素が挙げられる。一群のこのようなポリマーは、エチレンおよび/または少なくとも1つの、式H2C=CHR1を有するC3~C28α-オレフィンのポリマーを含み、式中R1は1~26個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖アルキル基であり、また該ポリマーは、炭素-炭素不飽和、好ましくは高い度合いの末端エテニリデン不飽和を含有する。好ましくは、そのようなポリマーは、エチレン及び少なくとも1つの上記式のαオレフィンとの共重合ポリマー(interpolymers)を含み、該式中、R1は炭素原子数が1から18のアルキル、より好ましくは、炭素原子数1から8のアルキル、より好ましくは、1から2の炭素原子を有するアルキルである。したがって、有用なα-オレフィンモノマー及びコモノマーとしては、例えば、プロピレン、ブテン-1、 ヘキセン-1、 オクテン-1, 4-メチルペンテン-1、 デセン-1、 ドデセン-1、 トリデセン-1、 テトラデセン-1、 ペンタデセン-1、 ヘキサデセン-1、 ヘプタデセン-1、 オクタデセン-1、 ノナデセン-1及びそれらの混合物(例えば、プロピレンとブテン-1の混合物など)が挙げられる。そのようなポリマーの例としては、プロピレンホモポリマー、ブテン-1 ホモポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-ブテン-1 コポリマー、プロピレン-ブテンコポリマーなどがあり、該ポリマーは少なくともいくつかの不飽和末端及び/又は内部不飽和を含有する。好ましいポリマーはエチレンとプロピレン、及びエチレンとブテン-1の不飽和コポリマーである。本発明の共重合ポリマーは、少量(例えば、0.5モル%から5モル%)のC4からC18非共役ジオレフィンコモノマーを含んでもよい。しかしながら、本発明のポリマーはα-オレフィンホモポリマー、α-オレフィンコモノマーの共重合ポリマー及びエチレン及びα-オレフィンコモノマーの共重合ポリマーのみを含むことが好ましい。本発明で用いられるポリマーのモルエチレン含有量は好ましくは0から80%、より好ましくは0から60%の範囲にある。プロピレン及び/又はブテン-1がコモノマーとしてエチレンとともに用いられる場合、そのようなコポリマーのエチレン含有量は、より高い又は低いエチレン含有量が存在し得るが、最も好ましくは15%と50%の間である。
【0031】
これらのポリマーは、α-オレフィンモノマー、又はα-オレフィンモノマーの混合物、又はエチレン及び少なくとも1つのC3からC28α-オレフィンモノマーを含む混合物を、少なくとも1のメタロセン(例えば、シクロペンタジエニル遷移金属化合物)及びアルモキサン化合物を含む触媒系の存在下で重合させることによって調製することができる。このプロセスを用いると、95%以上のポリマー鎖がエテニリデン・タイプの不飽和末端を有するポリマーを提供することができる。エテニリデン不飽和末端を表すポリマー鎖の割合は、FTIRスペクトル解析、滴定又は13C NMRによって決定することができる。後者のタイプの共重合ポリマー(interpolymers)は、式POLY-C(R1)=CH2で特徴づけられ、式中、R1はC1からC26アルキル、好ましくはC1からC18アルキル、より好ましくはC1からC8アルキル、及び最も好ましくはC1からC2アルキル(例えばメチル又はエチル)であり、POLYはポリマー鎖を表す。R1アルキル基の鎖長は重合に用いるため選択されるコモノマーによって異なるであろう。少量のポリマー鎖は、エテニル末端、すなわちビニル、不飽和、すなわちPOLY-CH=CH2を含むことができ、ポリマーの一部は内部モノ不飽和、例えば、POLY-CH=CH(R1)を含むことができ、式中R1は上記規定される通りである。これらの末端不飽和共重合ポリマー(interpolymers)は、公知のメタロセン化学によって調製することができ、また米国特許第5,498,809号;米国特許第5,663,130号;米国特許第5,705,577号;米国特許第5,814,715号;米国特許第6,022,929号及び米国特許第6,030,930号に記載のとおり調製することができる。
別の有用な群のポリマーはイソブテン、スチレン等をカチオン重合することにより調製されるポリマーである。この群からの通常のポリマーは、ブテン含有量35~75質量%、およびイソブテン含有量30~60質量%を有するC4精油所ストリームを、ルイス酸触媒、例えば三塩化アルミニウムまたは三フッ化ホウ素の存在下で重合させることにより得られるポリイソブテンを含む。ポリ-n-ブテンを作るために好ましいモノマー源は、ラフィネートIIのような石油供給流である。これらの供給原料は例えば米国特許第4,952,739号のような既存技術において開示されている。ポリイソブチレンは最も好ましい本発明の主鎖である。何故なら、それはブテン流からカチオン性重合(例えば、AlCl3又はBF3触媒を用いて)によって容易に入手できるからである。そのようなポリイソブチレンは一般に、不飽和残基を、鎖に沿って位置するエチレン性二重結合をポリマー鎖あたり約1つ含有する。好ましい実施形態は、ビニリデンオレフィン末端を有する反応性イソブチレンポリマーを調製するため純イソブチレン流又はラフィネート1流から調製されるポリイソブチレンを用いる。好ましくは、これらのポリマーは、ビニリデン末端含有量が少なくとも65%、例えば70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも85%である高反応性ポリイソブチレン(HR-PIB)として参照される。そのようなポリマーの調製は、例えば、米国特許第4,152,499号に記載されている。HR-PIBは公知であり、HR-PIBはGlissopal(商標)(BASFより)の商品名で商業的に入手可能である。
【0032】
用いられ得るポリイソブチレンポリマーは、一般に700~3,000の炭化水素鎖を基本とするものである。ポリイソブチレンの製法は公知である。ポリイソブチレンは、以下に説明するように、ハロゲン化(例えば、塩素化)、熱「エン(ene)」反応、または触媒(例えば、過酸化物)を用いるフリーラジカルグラフト化により官能化することができる。
炭化水素またはポリマー主鎖は、例えばカルボン酸生成部分(好ましくは酸または無水物部分)を用いて、該ポリマーまたは炭化水素鎖上の炭素-炭素不飽和サイトにおいて選択的に、あるいは鎖に沿ってランダムに、上述の3つの方法の何れかまたはその組み合わせを任意順序で用いて官能化することができる。
ポリマー性炭化水素を不飽和カルボン酸、無水物又はエステルとともに反応させるプロセス及びそのような化合物からの誘導体の調製は、米国特許第3,087,936号;米国特許第3,172,892号;米国特許第3,215,707号;米国特許第3,231,587号;米国特許第3,272,746号;米国特許第3,275,554号;米国特許第3,381,022号;米国特許第3,442,808号;米国特許第3,565,804号;米国特許第3,912,764号;米国特許第4,110,349号;米国特許第4,234,435号;米国特許第5,777,025号;米国特許第5,891,953号と同様にEP0 382 450B1号;CA-1,335,895号及びGB-A-1,440,219号において開示されている。ポリマー又は炭化水素は、例えば、カルボン酸生成部分(好ましくは酸又は無水物)を用いて、ポリマー又は炭化水素を、官能性部分又は作用物質、すなわち酸、無水物、エステル部分等をポリマー又は炭化水素鎖の上への付加を主として炭素-炭素不飽和(エチレン性又はオレフィン性不飽和としてもまた参照される)箇所へハロゲン補助官能化(例えば塩素化)プロセス又は熱「エン」反応を用いてもたらす条件下で反応させることによって、官能化することができる。
【0033】
選択的官能化は、ハロゲン化、例えばポリマー又は炭化水素の質量に対して約1質量%から8質量%、好ましくは3質量%から7質量%の塩素又は臭素を、温度60℃から250℃、好ましくは110℃から160℃、例えば、120℃から140℃で、例えば0.5時間から10時間、好ましくは1時間から7時間、ポリマーを通すことによって、不飽和α-オレフィンポリマーを塩素化又は臭素化することにより達成することができる。ハロゲン化されたポリマー又は炭化水素(以後、「主鎖」と呼ぶ)は、主鎖に求められる数の官能化部分を付加することができる十分なモノ不飽和反応物質(例えば、モノ不飽和カルボン酸反応物質)と、100℃から250℃、通常約180℃から235℃で、例えば約0.5時間から10時間、例えば3時間から8時間、得られた生成物が所望のモル数のモノ不飽和カルボン酸反応物質をハロゲン化主鎖の1モルあたり含有するよう反応させる。あるいは、該主鎖及びモノ不飽和カルボン酸反応物質は混合され、塩素を熱物質に添加させながら加熱される。
通常、塩素化は、出発オレフィンポリマーとモノ不飽和官能化反応物質との反応性を増加させるよう補助するが、本発明における使用において考えられている一部ポリマー又は炭化水素、特に高い末端結合含有量及び反応性を有する好ましいポリマー又は炭化水素については、必要ではない。好ましくは、したがって、該主鎖及びモノ不飽和官能化反応物質、例えばカルボン酸反応物質は、初期熱「エン」反応が引き起こされるよう高温で接触させられる。エン反応は公知である。
炭化水素又はポリマー主鎖は、様々な方法によるポリマー主鎖に沿った官能化部分のランダム付加によって官能化することができる。例えば、ポリマーは、溶液中又は固体状で、上述のモノ不飽和カルボン酸反応物質と、フリーラジカル開始剤の存在下でグラフト化されてもよい。溶液中で行う場合、グラフト化は約100℃から260℃、好ましくは120℃から240℃の範囲の高温で行われる。好ましくは、フリーラジカルによって開始されるグラフト化は、例えば当初の全オイル溶液に対して1質量%から50質量%、好ましくは5質量%から30質量%のポリマーを含有する鉱物潤滑油溶液中で達成される。
【0034】
用いられ得るフリーラジカル開始剤は、過酸化物、ヒドロ過酸化物及びアゾ化合物、好ましくは、沸点が約100℃を超え、フリーラジカルを提供するグラフト化温度範囲内で熱分解するものである。そのようなフリーラジカル開始剤の代表的な例としては、アゾブチロニトリル、2,5-ジメチルヘキサ-3-エン-2, 5-ビス-第三級-ブチルペルオキシド及びジクメンペルオキシドがある。開始剤は、用いられる場合、典型的には反応混合溶液の質量に対して、0.005質量%と1質量%の間の量、用いられる。典型的には、前述のモノ不飽和カルボン酸反応物質及びフリーラジカル開始剤は、質量比が1.0:1から30:1の範囲、好ましくは3:1から6:1の範囲で用いられる。グラフト化は好ましくは不活性雰囲気下、例えば窒素雰囲気下で行われる。結果として得られるグラフト化ポリマーは、ポリマー鎖に沿ってランダムに付加されているカルボン酸(又はエステル又は無水物)部分を有することで特徴づけられる。もちろん、これは、ポリマー鎖のいくつかはグラフト化されないままで残っていると理解される。上述のフリーラジカルグラフト化は、本発明のその他のポリマー及び炭化水素に用いることができる。
主鎖を官能化するために用いられる好ましいモノ不飽和カルボン酸反応物質には、モノ-及びジカルボン酸物質、すなわち酸、無水物、又は酸エステル物質が含まれ、(i)モノ不飽和C4からC10ジカルボン酸であって、(a)カルボキシル基がビシニル(すなわち炭素原子に隣接して位置する)及び(b)少なくとも1つ、好ましくは両方の該隣接する炭素原子が、該モノ不飽和の一部である;(ii)例えば(i)の無水物又はC1からC5アルコール由来のモノ-又はジエステルのような(i)の誘導体;(iii)モノ不飽和C3からC10モノカルボン酸であって、炭素-炭素二重結合がカルボキシル基と共役している、すなわち、-C=C-CO-構造を有する:及び(iv)例えば(iii)のC1からC5アルコール由来モノ-又はジエステルのような(iii)の誘導体、を含む。モノ不飽和カルボン酸物質(i)-(iv)の混合物もまた用いてよい。主鎖との反応にあたって、モノ不飽和カルボン酸反応物質のモノ不飽和が飽和する。こうして、例えば、マレイン酸無水物は主鎖が置換されたコハク酸無水物となり、アクリル酸は主鎖が置換されたプロピオン酸となる。そのようなモノ不飽和カルボン酸反応物質の例としては、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、クロロマレイン酸、クロロマレイン酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、及び前述の下級アルキル(例えばC1からC4アルキル)酸エステル、例えばメチルマレアート、エチルフマラート及びメチルフマラートがある。
【0035】
求められる官能性を提供するため、モノ不飽和カルボン酸反応物質は、好ましくはマレイン酸無水物は、典型的には、ポリマー又は炭化水素のモル数に対して、等モル量から約100質量%過剰、好ましくは5質量%から50質量%過剰量の範囲の量、用いられるであろう。未反応過剰モノ不飽和カルボン酸反応物質は、要すれば例えば、通常真空下で、取り除くことによって最終分散剤生成物から除去することができる。
官能化された油溶性ポリマー性炭化水素主鎖は、次に窒素含有求核反応体、例えばアミン、アミノアルコール、アミドまたはこれらの混合物で誘導化されて、対応する誘導体を形成する。アミン化合物が好ましい。官能化したポリマーを誘導化する有用なアミン化合物は、少なくとも1つのアミンを含み、1以上の追加的なアミン又は他の反応性又は極性基を含むことができる。これらのアミンは、ヒドロカルビルアミン又は主としてヒドロカルビルアミンであってよく、該ヒドロカルビル基は他の基、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミド基、ニトリル基、イミダゾリン基等を含む。特に有用なアミン化合物は、モノ-及びポリアミン、例えば、ポリアルケン及びポリオキシアルキレンポリアミンで、総炭素原子が2から60個、例えば2から40個(例えば3から20個)で1から12個、例えば3から12個、好ましくは3から9個、最も好ましくは6から約7個の窒素原子を分子当たり有するものがあげられる。アミン化合物の混合物、例えば、アルキレンジハライドとアンモニアの反応によって調製されるものは、有利に用いることができる。好ましいアミンは脂肪族飽和アミンであり、例えば1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、ポリエチレンアミン、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、およびポリプロピレンアミン、例えば1,2-プロピレンジアミン、およびジ-(1,2-プロピレン)トリアミンが挙げられる。PAMとして知られているこのようなポリアミン混合物は商業的に入手可能である。特に好ましいポリアミン混合物は、PAM製品からライトエンド(light ends)を蒸留することにより誘導される混合物である。「重質」PAMまたはHPAMとして知られ、結果として得られる混合物も市況品を入手可能である。PAMおよび/またはHPAMの両方の特性および属性は、例えば米国特許第4,938,881号、同第4,927,551号、同第5,230,714号、同第5,241,003号、同第5,565,128号、同第5,756,431号、同第5,792,730号、および同第5,854,186号に記載されている。
【0036】
その他の有用なアミン化合物としては、 1,4-ジ(アミノメチル) シクロヘキサンのような脂環式ジアミン、及び ヘテロ環式窒素化合物、例えばイミダゾリンが挙げられる。別の有用なアミンの群としては、ポリアミド及び関連アミド-アミンがあり、米国特許第4,857,217号;米国特許第4,956,107号;米国特許第4,963,275号;及び米国特許第5,229,022号において開示されている。また有用なものとしては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TAM)があり、米国特許第4,102,798号;米国特許第4,113,639号;米国特許第4,116,876号;及びUK特許第989,409に記載されている。デンドリマー、星状のアミン及び櫛状のアミンもまた用いてもよい。同様に、米国特許第5,053,152に記載されているような縮合アミンを用いてもよい。官能化されたポリマーはアミン化合物と、例えば、米国特許第4,234,435号及び米国特許第5,229,022号同様にEP-A-208,560号に記載されている従来技術を用いて反応させる。
好ましい分散剤組成物は、少なくとも1種のポリアルケニルコハク酸イミドを含むものであり、ポリアルケニル置換コハク酸無水物(例えば、PIBSA)とポリアミン(PAM)との反応生成物であり、カップリング比0.65~1.25、好ましくは0.8~1.1、最も好ましくは0.9~1を有する。本件開示の文脈において、「カップリング比」とは、PIBSAにおけるスクシニル基の数の、ポリアミン反応体中の一級アミノ基の数に対する比として定義できる。
高分子量無灰分散剤の別の群は、マンニッヒ塩基縮合生成物を含む。一般に、これらの生成物は、例えば米国特許第3,442,808号に開示されているように、約1モルの長鎖アルキル置換モノ又はポリヒドロキシベンゼンを約1から2.5モルのカルボニル化合物(例えば、ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒド)及び約0.5から2モルのポリアルキレンポリアミンとともに縮合することによって調製される。そのようなマンニッヒ塩基縮合生成物としては、ベンゼン基上の置換基としてメタロセン触媒重合のポリマー生成物を含んでもよく、又はコハク酸無水物上で米国特許出願第3,442,808号に記載と同様の方法で置換されたポリマーを含む化合物と反応させてもよい。メタロセン触媒システムを用いて合成され、官能化及び/又は誘導化されたオレフィンポリマーの例は、上記に特定された文献に記載されている。
【0037】
本発明の分散剤は、好ましくは非ポリマー性(例えば、モノ-またはビス-コハク酸イミド)である。
本発明の分散剤、特に低分子量分散剤は、ホウ素化することができる。このような分散剤は、一般的に米国特許第3,087,936号、同第3,254,025号、および同第5,430,105号において教示されているような従来の方法によってホウ素化することができる。分散剤のホウ素化は、アシル窒素含有分散剤を酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸及びホウ酸エステルのようなホウ素化合物により、アシル化窒素組成物の1モルに対して、原子比で0.1~20倍のホウ素を提供するに十分な量で処理することにより、容易に達成される。分散剤によって潤滑油組成物に提供される任意のホウ素が、清浄剤によって提供されるホウ素に追加されるであろうことが理解されるであろう。好ましくは、50質量%以下、例えば25質量%以下、例えば10質量%以下のホウ素が潤滑油組成物中に分散剤によって提供される。
反応性の高いポリイソブチレンから誘導された分散剤は、従来のポリイソブチレンから誘導された対応する分散剤に比べて、潤滑油組成物に摩耗信頼度を与えることが分かっている。この摩耗信頼度は、低減されたレベルの灰分含有耐摩耗剤、例えばZDDPを含む潤滑剤において特に重要である。したがって、好ましい一実施形態において、本発明の潤滑油組成物において使用する少なくとも1種の分散剤は、反応性の高いポリイソブチレンから誘導される。
【0038】
追加的な添加剤を、特に性能要求を満たすことができるよう本発明の組成物に組み込んでもよい。本件発明の潤滑油組成物に含まれ得る添加剤の例としては、金属防蝕剤、粘度指数改善剤、防錆剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、消泡剤、耐摩耗剤及び流動点降下剤がある。いくつかについては下記において詳細に議論する。
最終的なオイルの他の成分と相溶性である、摩擦調整剤および燃費向上剤(fuel economy agent)もまた含めることができる。このような物質の例としては、高級脂肪酸のグリセリルモノエステル、例えばグリセリルモノオレアート;ジオールと長鎖ポリカルボン酸とのエステル、例えばダイマー化した不飽和脂肪酸のブタンジオールエステル;オキサゾリン化合物;およびアルコキシル化アルキル置換モノアミン、ジアミンおよびアルキルエーテルアミン、例えばエトキシル化タロウアミンおよびエトキシル化タロウエーテルアミンが挙げられる。
ベースストックの粘度指数は、粘度調整剤(VM)または粘度指数改善剤(VII)として機能する特定のポリマー材料を、該ベースストックに組込むことにより高められ、または改善される。一般に、粘度調整剤として有用なポリマー材料は、約5,000~約250,000、好ましくは約15,000~約200,000、より好ましくは約20,000~約150,000の数平均分子量(Mn)を有するものである。これら粘度調整剤は、例えばマレイン酸無水物のようなグラフト材料でグラフト化することができ、また該グラフト化された材料を、例えばアミン、アミド、窒素含有複素環式化合物またはアルコールと反応させて、多機能性の粘度調整剤(分散剤-粘度調整剤)を形成することができる。ポリマーの分子量、特にMnは様々な公知の技術により決定することができる。便利な一方法は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法であり、これは追加的に分子量分布に関する情報を与える(W. W. Yau, J. J. KirklandおよびD. D. Bly,「現代のサイズ排除液体クロマトグラフィー(Modern Size Exclusion Liquid Chromatography)」, ジョンウイリー&サンズ(John Wiley and Sons)社, ニューヨーク(New York), 1979を参照のこと)。特に低分子量ポリマーの、分子量を決定するための別の有用な方法は、蒸気圧オスモメトリー(例えば、ASTM D3592を参照のこと)である。
【0039】
粘度調整剤として有用なジブロックコポリマーの一群は、例えばオレフィンコポリマー粘度調整剤との比較において摩耗信頼度を提供することがわかっている。この摩耗信頼度は低レベルの灰分-含有耐摩耗剤、例えばZDDPを含む潤滑剤において特に重要である。したがって、ある好ましい実施形態において、本件発明の潤滑油組成物において用いられる少なくとも1つの粘度調整剤は、直鎖ジプロックコポリマーであって、1ブロックが主として、好ましくは専ら、芳香族ビニル炭化水素モノマーに由来し、1ブロックが主として、好ましくは専ら、ジエンモノマーに由来するものを含む。有用な芳香族ビニル炭化水素モノマーとしては、8から約16個の炭素原子を含むもの、例えばアリール置換されたスチレン、アルコキシ置換されたスチレン、ビニルナフタレン、アルキル置換されたビニルナフタレン等が挙げられる。二重結合を二つ有するジエン又はジオレフィンは、通常共役して1、3関係に位置する。3以上の二重結合を有するオレフィンは、しばしば、ポリエンとして参照され、本明細書で用いられる場合、これもまた「ジエン」の定義の中に入るものと考えられる。有用なジエンとしては、4から約12個の炭素原子を含み、好ましくは8から約16個の炭素原子を含むもの、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、メチルペンタジエン、フェニルブタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエンが挙げられ、1,3-ブタジエン及びイソプレンが好ましい。
【0040】
本明細書においてポリマーブロック組成との関連で用いられるように、「専ら」とは、ポリマーブロックにおける主成分である、特定のモノマーまたはモノマータイプが、該ブロックの少なくとも85質量%の量存在することを意味する。
ジオレフィンを用いて調製されるポリマーは、エチレン系不飽和を含むであろうし、またこのようなポリマーは、好ましくは水素化される。ポリマーが水素化される場合、水素化は、従来技術において公知の任意の技術を用いて達成できる。例えば、水素化は、エチレン性および芳香族性不飽和の両方を、例えば米国特許第3,113,986号および同第3,700,633号において教示されているような方法を用いて転換(飽和)することにより達成することができ、あるいは水素化は、例えば米国特許第3,634,595号、同第3,670,054号、同第3,700,633号および米国Re27,145号において教示されているように、エチレン性不飽和のかなりの部分が転換される一方で芳香族性不飽和が殆どまたは全く転換されないよう選択的に達成することもまたできる。また、これら方法の何れもエチレン性不飽和のみを含み、かつ芳香族性不飽和を含まないポリマーを水素化するのに用いることも可能である。
【0041】
ブロックコポリマーとしては、異なる分子量および/または異なるビニル芳香族含有量を有する上記開示の直鎖ジブロックポリマーの混合物と同様に異なる分子量および/または異なるビニル芳香族含有量を有する直鎖ブロックコポリマーの混合物を挙げてもよい。2以上の異なるポリマーの使用は、処方されたエンジンオイルを生産するのに用いられる場合、該生産物が付与すべく意図されているレオロジー特性によっては、単一のポリマーよりも好ましい場合がある。市場で入手可能なスチレン/水添イソプレン直鎖ジブロックコポリマーの例としては、インフィニウムUSA L.P.およびインフィニウムUK Ltd.から入手できるInfineum SV140(商標)、Infineum SV150(商標)およびInfineum SV160(商標));ルーブリゾール社から入手可能なLubrizol(登録商標) 7318;およびセプトンカンパニーオブアメリカ(クラレグループ)から入手可能なSepton 1001(商標))およびSepton 1020(商標)が挙げられる。適切なスチレン/1,3-ブタジエン水添ブロックコポリマーは、BASF社によりGlissoviscal(商標)という商品名で市販されている。
【0042】
潤滑油(lube oil)フロー向上剤(LOFI)としても知られている流動点降下剤(PPD)は、温度を下げる。VMと比較して、LOFIは、一般に低い数平均分子量を有している。VMと同様、LOFIは、例えばマレイン酸無水物のようなグラフト材料によってグラフト化することができ、またこのグラフト化された材料を、例えばアミン、アミド、窒素含有複素環式化合物またはアルコールと反応させて、多機能性添加剤を形成することができる。
本発明においては、ブレンドの粘度の安定性を維持する添加剤を含めることが必要となる場合がある。したがって、極性基含有添加剤は、ブレンド前の段階において適切な低粘度を達成するが、幾つかの組成物の粘度は長期間に渡り保存した場合、増大することが観察されている。この粘度の増加を管理するのに効果的な添加剤としては、本明細書において上記開示の無灰分散剤の調製に用いられる、モノ-またはジ-カルボン酸または無水物との反応により官能化された長鎖炭化水素が挙げられる。別の好ましい実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、有効量のモノ-またはジ-カルボン酸または無水物との反応により官能化された長鎖炭化水素を含む。
潤滑組成物が1以上の上述の添加剤を含む場合、各添加剤は、典型的には、ベースオイル中に該添加剤が所望の機能を提供できる量ブレンドされる。クランクケース用潤滑剤中で使用される場合、このような添加剤の代表的な有効量を以下に掲載する。掲載された全ての値(清浄剤の値を除く)は、活性成分(A.I.)の質量%として記述されている。本明細書において用いられる場合、A.I.は、希釈剤又は溶媒以外の添加剤物質を指す。

【0043】
好ましくは、完全に処方された潤滑油組成物(潤滑粘度のオイルと全ての添加剤)のノアック揮発性は、20質量%以下、例えば15質量%以下、好ましくは13質量%以下であろう。本件発明の実施に際して有用な潤滑油組成物は、全体の硫酸灰分含有量が0.3質量%から1.2質量%、例えば0.4質量%から1.1質量%、好ましくは0.5質量%から1.0質量%であってよい。
添加剤を含む1以上の添加剤濃縮物(濃縮物は、しばしば添加剤パッケージと呼ばれる)を調製し、それにより数種の添加剤をオイルに同時に添加して、潤滑油組成物を形成することが、必須ではないが望ましいことがあり得る。
最終的な組成物では、5~25質量%、好ましくは5~22質量%、典型的には10~20質量%の該濃縮物を用い、残部は潤滑粘度を有するオイルであってよい。
好ましくは、本発明の第二の態様の方法及び/又は本発明の第三の態様の使用におけるエンジンは、1,500kPaを超える、場合によっては2,000kPaを超える正味平均有効圧力レベルを、1,000~2,500回転/分(rpm)、場合によっては1,000~2,000rpmというエンジン速度において発生するエンジンである。
好ましくは、本発明の第二の態様の方法及び/又は本発明の第三の態様の使用における潤滑油組成物は、潤滑油組成物の質量に対して、少なくとも0.12質量%のカルシウム含有量及び少なくとも100質量ppm、例えば少なくとも150質量ppmのホウ素含有量を有する。少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも90%の潤滑油組成物のホウ素含有量が清浄剤パッケージ、例えばホウ素化カルシウム清浄剤によって提供されてもよい。ホウ素化カルシウム清浄剤は、ホウ素化カルシウム清浄剤の質量に対して少なくとも4質量%、例えば4質量%から16質量%、好ましくは5質量%から12質量%、例えば6質量%から10質量%のカルシウム含有量、及び/又は、少なくとも1質量%、例えば1質量%から10質量%、好ましくは2質量%から8質量%、例えば3質量%から8質量%のホウ素含有量を有してもよい。ホウ素化カルシウム清浄剤は、ホウ素化過塩基性カルシウム清浄剤を含み、TBNが少なくとも150、好ましくは少なくとも200、例えば200から450であってもよい。ホウ素化カルシウム清浄剤はホウ素化カルシウムフェナート、ホウ素化カルシウムスルホナート、ホウ素化カルシウムサリチラート、またこれらの混合物を含んでもよい。ある実施形態では、ホウ素化カルシウム清浄剤はホウ素化カルシウムサリチラートを含む。ホウ素化カルシウム清浄剤は、ホウ素化カルシウム清浄剤の質量に基づいて、カルシウム及びホウ素をカルシウムの質量%に対するホウ素の質量%の比で1:Z含み、式中Zは少なくとも0.2、好ましくは少なくとも0.5であってもよい。潤滑油組成物は、本発明による第一態様の潤滑油組成物であってもよい。
本発明は、以下の実施例を参照することにより更に理解されよう。該実施例において、全ての部は、特に述べない限り質量部であり、また本発明の好ましい形態を含む。
【実施例
【0044】
本発明は特定の実施形態を参照して記載及び例示されてきたが、本件技術分野において通常の知識を有する者は、本発明を本明細書に特定的に例示されていない多くの異なる変化形のために役立てることができることを認識するであろう。可能な特定の変化形が、例としてのみ、ここに記載されるであろう。
以下の実施例において用いられるホウ素化カルシウム清浄剤はホウ素化カルシウムサリチラートであり、次の方法に従って作られる。ディーン・スターク・トラップを備えた反応フラスコに1KgのTBNが225mg・KOH/gの過塩基性カルシウムサリチラートと1Kgのキシレンを充填した。窒素下で撹拌し、124gのホウ酸をゆっくり室温で加えた。続いて2時間かけて温度を115℃に上げ、次いでその後115℃で1時間維持した。反応混合物を90分かけて140℃に加熱し、次いで140℃で40分間維持した。その後反応混合物を冷却し、混合物を遠心分離して、ロータリーエヴァポレーターで減圧濃縮して概ね1Kgのホウ素化カルシウムサリチラート生成物が得られた。ICP分析(ASTM D4951に従って測定)は、生成物が3.09質量%のホウ素と6.77質量%のカルシウムを有することを示した。生成物はTBN(ASTM D2896に従って測定)が186mg・KOH/gであった。
以下の実施例において、LSPIの発生に係るデータは、ターボチャージ処理された、直接噴射式のGMエコテック(Ecotec) 2.0L、4気筒エンジンを用いて得られた。該エンジンの給気レベルは、エンジン速度約2,000rpmにおいて、正味平均有効圧力レベル約2300kPa(約23bar)を発生するように修正された。各サイクル(1サイクルは2ピストンサイクル(アップ/ダウン、アップ/ダウン)に対して、クランク角度分解能0.5°においてデータを収集した。該データの後処理は、燃焼メトリックス(combustion metrics)の計算、操作パラメータが目標範囲内にあることの検証、およびLSPI事象の検出(以下に概説する統計的手順)を含んでいた。上記データから、潜在的なLSPIの発生である異常値を収集した。各LSPIサイクルに対して、記録されたデータは、ピーク圧力(PP)、MFB02(燃焼質量分率(mass fraction burned)2%におけるクランク角度)並びに他の質量分率(10%、50%および90%)、サイクル数およびエンジンシリンダー(engine cylinder)を含んでいた。1サイクルが、燃料のMFB02に対応するクランク角度およびシリンダーPPの何れかまたは両方が異常値である場合に、LSPI事象を有するものと確認された。異常値は、それが生じている特定のシリンダーおよびテストセグメントの分布に対して決定された。「異常値」の決定は、各セグメントおよびシリンダーに関するPPおよびMFB02の平均および標準偏差の計算;および該平均からの標準偏差nを超えるパラメータを有するサイクルの計算を含む、反復的工程であった。異常値を決定するための限界値として用いられる該標準偏差の数値nは、該テストにおけるサイクル数の関数であり、また異常値に関するグラブス(Grubbs’)テストを用いて計算された。異常値は各分布の重度のテイル(severe tail)において確認された。即ち、nが異常値に関するグラブステストから得られた標準偏差数である場合、PPに関する異常値は、ピーク圧の平均+標準偏差nを超えるものとして確認される。同様に、MFB02に関する異常値は、MFB02の平均値から標準偏差nを引いたものよりも低いものが確認された。データを更に検討して、異常値が、電気的センサの誤差による幾つかの他の異常燃焼事象ではなく、むしろLSPIの発生を示していることを確実なものとした。
【0045】
LSPI「事象」は、前後の両方において3つの「正常な」サイクルが存在した場合に1つとして考えた。あるLSPI事象は、1を超えるLSPIサイクル又は異常値を含んでもよい。ここではこの方法を使用したが、このことは本発明の一部ではない。他のものによって行われた研究では、各個々のサイクルが多重サイクル事象の一部であるか否かに関わらず、各サイクルを計数している。LSPI事象に係る本発明の定義は、図1に示されており、そこにおいて1は複数のLSPIサイクルを含む単一のLSPI事象を表している。これは単一のLSPI事象と考えられるが、その理由は各単一のサイクルには前後に3つの正常な事象がなかったためである。2は3を超える正常な事象を表し、また3は単一のLSPIサイクルのみを含む第二のLSPI事象を表す。LSPIのトリガーレベル(trigger level)は4によって表され、用いられるエンジンによって決定され、そのエンジンにとっての通常の機能に関連する。
GF-4仕様を満足する典型的な乗用車用モーターオイルを代表する、一連の5W-30グレードの潤滑油組成物を調製した。これら組成物の処方を下記表2に示す。
【0046】
【表2】

1ホウ素化Caサリチラート清浄剤は、上記記載に従ってホウ素化されたTBNが225のCaサリチラート清浄剤を用いて作った。
【0047】
比較例1において、処方は典型的な、70ppmの低ホウ素濃度を含む。比較例2において、処方は、ホウ素化分散剤によって提供された250ppmの高ホウ素濃度を含む。実施例1において、処方は比較例2と同じホウ素濃度(250ppm)を含むが、ホウ素はホウ素化清浄剤によって提供される。これは、窒素含有量が比較例1のそれに近いことを意味する。
処方はLSPI事象の発生について上述のとおり試験され、結果を表3に示した。
【0048】

実験1、実験2及び実験5はエンジン1で行われ、実験3、実験4及び実験6はエンジン2で行われた。追加的なホウ素が分散剤によって提供された比較例2の処方を用いた実験5は、典型的な低ホウ素濃度を有する比較例1の処方を用いた実験1及び実験2のLSPI事象頻度の平均に比較して14%という小さいLSPI事象頻度の低減を示した。追加的なホウ素がホウ素化カルシウム清浄剤によって提供された実施例1の処方を用いた実験6は、比較例1の処方を用いた実験3及び実験4のLSPI事象頻度の平均に比べ、47%の実質的なLSPI事象の頻度の減少を示した。したがって、表4の結果は、ホウ素が潤滑油組成物にホウ素化清浄剤によって導入された場合、ホウ素化分散剤による場合と比較して、予期しない大きなLSPI事象頻度の低減を示す。
【0049】
上記記載において、整数又は要素が、公知の、明らかな又は予見可能な均等なものを有するものとして言及される場合、そのような均等なものは、あたかも独立的に明らかにされたかのように本明細書に組み込まれる。本発明の真のスコープを決定するため、特許請求の範囲を参照するべきであり、それはそのような均等ないかなるものをも包含するように解釈されるべきである。好ましい、有利な、便利ななどと記載された発明の整数又は特徴は、任意のものであって、独立請求項のスコープを限定するものではないことを読者はまた認識するであろう。更に、そのような任意の整数又は特徴は、本発明のいくつかの実施形態において利点がある可能性がある一方で、望ましくない場合もあり、このため他の実施形態にはない場合があることが理解されるべきである。
図1