(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】男性用吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/471 20060101AFI20220620BHJP
A61F 5/44 20060101ALI20220620BHJP
A61F 13/47 20060101ALI20220620BHJP
A61F 13/476 20060101ALI20220620BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20220620BHJP
A61F 13/505 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
A61F13/471
A61F5/44 H
A61F13/47 100
A61F13/476
A61F13/56 110
A61F13/505
(21)【出願番号】P 2018047656
(22)【出願日】2018-03-15
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼平 明良
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-058195(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0111073(US,A1)
【文献】特開2010-148662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
A61F5/00-6/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側前立て部と裏側前立て部とを重ね合わせて内側と外側にそれぞれ前立て開口部が備えられた男性用下着に貼着して使用可能な男性用吸収性物品において、
前記男性用吸収性物品の幅方向の一方側に向けて延在するとともに、装着時に基端部から幅方向の他方側に折り返すことにより前記内側の前立て開口部から前記表側前立て部と裏側前立て部との間に挿入可能なウイング部が形成されるとともに、前記ウイング部を前記表側前立て部と裏側前立て部との間に挿入した際、前記裏側前立て部に対向する前記ウイング部の面にズレ止め粘着剤層が形成され、前記ズレ止め粘着剤層が剥離シートによって剥離可能に覆われて
いるとともに、前記剥離シートには、前記ウイング部の基端側に対応する辺に摘み部が設けられており、
前記男性用吸収性物品を男性用下着の内側の股間部に配置した状態で、前記外側の前立て開口部から前記剥離シートを引っ張り出すことにより、前記ウイング部が基端部から折り返され、前記内側の前立て開口部から前記表側前立て部と裏側前立て部との間に挿入されると同時に、前記剥離シートが前記ズレ止め粘着剤層から剥離して前記ズレ止め粘着剤層が前記裏側前立て部に貼着されるようにしたことを特徴とする男性用吸収性物品。
【請求項2】
前記摘み部は、前記剥離シートにおける前記ウイング部の基端側に対応する辺の全長に亘って形成されている請求項
1記載の男性用吸収性物品。
【請求項3】
前記摘み部は、前記男性用吸収性物品を男性用下着の股間部に配置した状態で、該摘み部の先端が前記外側の前立て開口部から男性用下着の外部に突出する形状で形成されている請求項
1、2いずれかに記載の男性用吸収性物品。
【請求項4】
前記ウイング部は、1箇所又は男性用吸収性物品の上下方向に間隔を空けた複数箇所に形成されている請求項1~
3いずれかに記載の男性用吸収性物品。
【請求項5】
前記ウイング部に形成されたズレ止め粘着剤層は、男性用吸収性物品
の上下方向に沿うとともに
、幅方向に間隔を空けて複数条形成されるか、男性用吸収性物品
の幅方向に沿うとともに
、上下方向に間隔を空けて複数条形成されている請求項1~
4いずれかに記載の男性用吸収性物品。
【請求項6】
前記ウイング部は、前記男性用吸収性物品の本体部分における幅方向の一方側の端縁から外方に延在して形成されるか、前記男性用吸収性物品の本体部分における幅方向の一方側寄りの中間位置から延在して形成されている請求項1~
5いずれかに記載の男性用吸収性物品。
【請求項7】
前記ウイング部の基端部に沿って、該ウイング部を切り取り可能な引裂き部が設けられている請求項1~
6いずれかに記載の男性用吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に男性の軽失禁用に適した男性用吸収性物品に係り、詳しくは男性用下着の内側の前立て開口部から表側前立て部と裏側前立て部との間に挿入して固定できるようにしたウイング部を備えた男性用吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、男性用吸収性物品の装着時におけるパッドのズレを防止するため、下着に固定するためのズレ止め粘着剤層を備えたウイング部を有するものが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1においては、本体部の前方部分に、一方の側方に向けて突出するとともに、下着の前開き部分に折り返して固定するためのウイング状フラップが設けられた男性用吸収性物品が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2においては、男性用パンツの前開き打合わせ部の間に挿入する翼部が横方向外方へ延び、前記前開き打合わせ部に対する止着手段が、前記翼部の外面に形成された男性用尿とりパッドが開示されている。
【0005】
更に、下記特許文献3においては、カップ状に形成された本体部と、前記本体部の両側から着用者の左右方向にそれぞれ延在するウイング部とを有し、前記ウイング部が着用者のそけい部に当てられ、着用者の肌とパンツとの間で固定されるようにした男性用失禁パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-58195号公報
【文献】特開2002-282292号公報
【文献】特開2012-200453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、2記載の男性用吸収性物品では、装着のための作業として、ウイング状フラップに備えられたズレ止め粘着剤層を覆う剥離紙を取り除いた後、下着の前開き部分の内側に貼着する必要があり、剥離紙を剥がす工程と、ウイング状フラップを貼着する工程の2工程を要し、手間がかかっていた。また、剥離紙を剥がしてズレ止め粘着剤層を露出した状態で、ウイング状フラップを折り返す作業は、ズレ止め粘着剤層が意図しない部位に貼着したり、ズレ止め粘着剤層同士がくっついたりするおそれがあり、取付け作業が非常に面倒であった。
【0008】
また、上記特許文献3記載の男性用失禁パッドは、ウイング部が着用者の肌とパンツとの間で固定されるものであり、下着の前開き部に固定できる構造とはなっていない。ウイング部を下着の前開き部に固定できるようにすることは、ウイング部を下着の前開き部を折り返した状態で固定することにより、本体部とウイング部とで下着の前開き部を挟み込むようにして固定できるため、しっかりと固定でき、本体部のズレが確実に防止できるようになるなどの効果を奏する。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、ウイング部を下着の前開き部に折り返して固定することにより、装着時のズレを確実に防止するとともに、ウイング部の装着が容易にできるようにした男性用吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、表側前立て部と裏側前立て部とを重ね合わせて内側と外側にそれぞれ前立て開口部が備えられた男性用下着に貼着して使用可能な男性用吸収性物品において、
前記男性用吸収性物品の幅方向の一方側に向けて延在するとともに、装着時に基端部から幅方向の他方側に折り返すことにより前記内側の前立て開口部から前記表側前立て部と裏側前立て部との間に挿入可能なウイング部が形成されるとともに、前記ウイング部を前記表側前立て部と裏側前立て部との間に挿入した際、前記裏側前立て部に対向する前記ウイング部の面にズレ止め粘着剤層が形成され、前記ズレ止め粘着剤層が剥離シートによって剥離可能に覆われているとともに、前記前記剥離シートには、前記ウイング部の基端側に対応する辺に摘み部が設けられており、
前記男性用吸収性物品を男性用下着の内側の股間部に配置した状態で、前記外側の前立て開口部から前記剥離シートを引っ張り出すことにより、前記ウイング部が基端部から折り返され、前記内側の前立て開口部から前記表側前立て部と裏側前立て部との間に挿入されると同時に、前記剥離シートが前記ズレ止め粘着剤層から剥離して前記ズレ止め粘着剤層が前記裏側前立て部に貼着されるようにしたことを特徴とする男性用吸収性物品が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、男性用吸収性物品の幅方向の一方側に向けて延在するとともに、装着時に基端部から幅方向の他方側に折り返し可能なウイング部が形成され、このウイング部にはズレ止め粘着剤層が形成され、このズレ止め粘着剤層が剥離シートによって剥離可能に覆われているとともに、前記前記剥離シートには、前記ウイング部の基端側に対応する辺に摘み部が設けられている。このようなウイング部を備えた男性用吸収性物品を男性用下着に装着するには、前記男性用吸収性物品を男性用下着の内側の股間部に配置した状態で、男性用下着の外側の前立て開口部から手を入れて前記剥離シートを摘んで引っ張り出すことにより、前記ウイング部が基端部から折り返され、前記内側の前立て開口部から前記表側前立て部と裏側前立て部との間に挿入されると同時に、前記剥離シートが前記ズレ止め粘着剤層から剥離して前記ズレ止め粘着剤層が男性用下着の裏側前立て部に貼着されるようにしている。
【0012】
このように、男性用吸収性物品のウイング部を下着の前開き部に折り返して固定する際、剥離シートを引っ張り出すことにより、ウイング部が男性用下着の所定の前立て部の間に配置されると同時に、ズレ止め粘着剤層が所定の面に貼着されるため、ウイング部の装着が非常に容易にできるようになる。また、剥離シートを剥がしてズレ止め粘着剤層が露出すると同時にズレ止め粘着剤層が下着の裏側前立て部に貼着されるため、ズレ止め粘着剤層が意図しない部分にくっついたりすることなく、装着が容易となる。更に、ウイング部が下着の前開き部に折り返して固定されるため、男性用吸収性物品が下着にしっかりと固定でき、装着時のズレが確実に防止できるようになる。
【0013】
前記剥離シートには、ウイング部の基端側に対応する辺に摘み部が設けられているため、ウイング部を下着の前開き部に固定する際、剥離シートが摘みやすく、ウイング部の装着がより一層容易となる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記摘み部は、前記剥離シートにおける前記ウイング部の基端側に対応する辺の全長に亘って形成されている請求項1記載の男性用吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項2記載の発明では、前記摘み部が剥離シートにおける前記ウイング部の基端側に対応する辺の全長に亘って形成されているため、摘み部を摘んで剥離シートを引っ張ったときに、剥離シートにおけるウイング部の基端側に対応する辺の全長に亘って引張力がほぼ均等に作用するため、剥離シートを引っ張り出しやすくなる。
【0016】
請求項3に係る本発明として、前記摘み部は、前記男性用吸収性物品を男性用下着の股間部に配置した状態で、該摘み部の先端が前記外側の前立て開口部から男性用下着の外部に突出する形状で形成されている請求項1、2いずれかに記載の男性用吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項3記載の発明では、ウイング部が幅方向の一方側に向けて延在した男性用吸収性物品を男性用下着の股間部に配置した状態で、前記摘み部の先端が男性用下着の外側の前立て開口部から外部に突出するため、摘み部が摘みやすくなり、剥離シートを引っ張り出しやすくなる。
【0018】
請求項4に係る本発明として、前記ウイング部は、1箇所又は男性用吸収性物品の上下方向に間隔を空けた複数箇所に形成されている請求項1~3いずれかに記載の男性用吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項4記載の発明では、前記ウイング部は1箇所に形成してもよいし、男性用吸収性物品の上下方向に間隔を空けた複数箇所に形成してもよい。1箇所に形成した場合には、ウイング部の装着作業が簡単になる。一方、複数箇所に形成した場合には、個々のウイング部が股間部に沿いやすくなり、股間部に対するフィット性がより向上できるようになる。
【0020】
請求項5に係る本発明として、前記ウイング部に形成されたズレ止め粘着剤層は、男性用吸収性物品の上下方向に沿うとともに、幅方向に間隔を空けて複数条形成されるか、男性用吸収性物品の幅方向に沿うとともに、上下方向に間隔を空けて複数条形成されている請求項1~4いずれかに記載の男性用吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項5記載の発明では、ウイング部のズレ止め粘着剤層を男性用吸収性物品の上下方向に沿って配置した場合には、ウイング部を下着の前開き部に固定する際、剥離シートが内側のズレ止め粘着剤層から順に剥離して、剥離したズレ止め粘着剤層から順次下着に貼着できるようになる。一方、前記ズレ止め粘着剤層を男性用吸収性物品の幅方向に沿って配置した場合には、ウイング部を下着に固定した際、上下方向にシワが入りにくく、装着時の違和感が軽減できるとともに、装着状態の外観が良好となる。
【0022】
請求項6に係る本発明として、前記ウイング部は、前記男性用吸収性物品の本体部分における幅方向の一方側の端縁から外方に延在して形成されるか、前記男性用吸収性物品の本体部分における幅方向の一方側寄りの中間位置から延在して形成されている請求項1~5いずれかに記載の男性用吸収性物品が提供される。
【0023】
上記請求項6記載の発明では、男性用吸収性物品に対するウイング部を形成する位置について規定している。前記ウイング部を男性用吸収性物品の本体部分における幅方向の一方側の端縁から外方に延在して形成することにより、ウイング部が明確に識別でき、装着時に剥離シートを引っ張り出しやすくなる。また、前記ウイング部を男性用吸収性物品の本体部分における幅方向の一方側寄りの中間位置から延在して形成した場合、男性用吸収性物品の本体部分によって男性用下着の広い範囲が覆われるため、体液の吸収能力が向上できる。
【0024】
請求項7に係る本発明として、前記ウイング部の基端部に沿って、該ウイング部を切り取り可能な引裂き部が設けられている請求項1~6いずれかに記載の男性用吸収性物品が提供される。
【0025】
上記請求項7記載の発明では、ウイング部の基端部に沿って、該ウイング部を切り取り可能な引裂き部が設けられているため、前記引裂き部を引き裂いて前記ウイング部を取り外すことにより、前立て開口部を有さない男性用下着にも使用可能となる。
【発明の効果】
【0026】
以上詳説のとおり本発明によれば、ウイング部を下着の前開き部に折り返して固定することにより、装着時のズレが確実に防止でき、ウイング部の装着が容易にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る男性用吸収性物品1の一部破断裏面図である。
【
図3】装着要領(その1)を示す男性用下着30の正面図である。
【
図5】装着要領(その2)を示す男性用下着30の正面図である。
【
図7】変形例に係る男性用吸収性物品1の裏面図である。
【
図8】変形例に係る男性用吸収性物品1の裏面図である。
【
図9】装着要領を示す男性用下着30の正面図である。
【
図10】変形例に係る男性用吸収性物品1の裏面図である。
【
図11】変形例に係る男性用吸収性物品1の裏面図である。
【
図12】変形例に係る男性用吸収性物品1の裏面図である。
【
図13】装着状態を示す男性用下着30の正面図である。
【
図14】変形例に係る男性用吸収性物品1の裏面図である。
【
図15】他の形態例に係る男性用吸収性物品1の裏面図である。
【
図16】装着要領を示す男性用下着30の横断面図(
図3のIV-IV線矢視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0029】
<男性用吸収性物品1の基本構造>
本発明に係る男性用吸収性物品1は、
図1及び
図2に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、尿などの体液を速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4の少なくとも肌側面及び非肌側面を覆うクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5と、幅方向の一方側に向けて延在するウイング部6とから構成されている。また、前記吸収体4の周囲において、前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、外周に吸収体4の存在しないフラップ部Fが形成されている。
【0030】
以下、さらに前記男性用吸収性物品1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0031】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0032】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性樹脂を混入したものが使用される。前記吸収体4は、図示のように、形状保持、および体液を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した体液の逆戻りを防止するために被包シート5によって覆われるのが望ましい。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。また、前記吸収体4として、嵩を小さくできるエアレイド吸収体や、2層の不織布層間に高吸水性樹脂を配置してなるポリマーシートを用いてもよい。
【0033】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0034】
前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル-酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。
【0035】
本例のように、吸収体4を覆う被包シート5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間に被包シート5が介在することになる。前記被包シート5がクレープ紙からなる場合には、吸収性に優れる前記被包シート5によって尿を速やかに拡散させるとともに、これら尿の逆戻りを防止するようになる。
【0036】
前記吸収体4及び被包シート5のいずれか一方又は両方は、白色以外の色、好ましくは黒色や灰色など、比較的暗い、明度が小さな色を有しているのが好ましい。本発明は男性用吸収性物品に関するものなので、比較的暗い色を用いることにより男性用として落ち着いた印象を与えるとともに、暗い色の下着に装着したときに目立ちにくくなり、かつ排尿の跡も目立ちにくくなる。着色方法は特に限定されず、適宜の染色方法、或いは着色原料を用いることができる。また、吸収体4及び被包シート5のいずれか一方又は両方に活性炭を含有することにより、着色を施してもよい。これにより、活性炭による消臭効果も付加できるようになる。
【0037】
図1に示されるように、前記透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に吸収体4が介在された本体部分の前記不透液性裏面シート2の外面(非肌当接面)には、男性用下着30の内面に対する固定のために適宜の塗布パターンによって複数条の、図示例では男性用吸収性物品1の上下方向に沿う2条の本体用ズレ止め粘着剤層7、7が形成されているとともに、これら本体用ズレ止め粘着剤層7…が本体用剥離シート8によって剥離可能に覆われている。
【0038】
前記本体用ズレ止め粘着剤層7を形成する粘着剤としては、たとえばスチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤のいずれかが主成分であるものが好適に使用される。前記スチレン系ポリマーとしては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体等が挙げられるが、これらのうち1種のみを使用しても、二種以上のポリマーブレンドであってもよい。この中でも熱安定性が良好であるという点で、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体が好ましい。また、前記粘着付与剤および可塑剤としては、常温で固体のものを好ましく用いることができ、粘着付与剤ではたとえばC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、前記可塑剤では例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステルのようなポリマー可塑剤が挙げられる。
【0039】
前記本体用剥離シート8としては、本体用ズレ止め粘着剤層7に対する当接面に対し、例えばシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、または四フッ化エチレン系樹脂などの離型処理液を塗工するかスプレー塗布し離型処理した紙またはプラスチックシートを用いることができる。なお、特別に離型処理をしなくても、実質的に粘着力の低下を招かないものであれば、フィルムそのものであっても、不織布そのものであっても良い。
【0040】
男性用吸収性物品1の本体部分の平面形状としては、
図1に示されるように、股間部へのフィット性を高めるため、上側が幅広で下側が幅狭の略台形状とするのが好ましい。また、この他に、逆三角形状や円形状、楕円形状、多角形状などとしても構わない。男性用吸収性物品1の本体部分の上側の外形幅としては、100~150mmとするのがよく、下側の外形幅としては、60~80mmとするのがよい。
【0041】
<男性用下着>
前記男性用吸収性物品1は、
図3及び
図4に示されるように、前開きタイプの男性用下着30に対し、前身頃中央部の内側面(肌当接面)に貼着して使用可能とされている。前記男性用下着30の前身頃には、表側前立て部31と裏側前立て部32とを重ね合わせることにより、内側(肌当接面側)と外側にそれぞれ、内側前立て開口部33a及び外側前立て開口部33bが備えられている。前記内側前立て開口部33aと外側前立て開口部33bとの間は、表側前立て部31と裏側前立て部32とが積層され、男性用下着30の内側(肌当接面側)と外側とが連通している。
【0042】
前記外側前立て開口部33bは、男性用下着30の外側において、通常着用者の右側に向けて開口しており、前記内側前立て開口部33aは、男性用下着30の内側(肌当接面側)において、通常着用者の左側に向けて開口している。
【0043】
<ウイング部>
図1に示される男性用吸収性物品1の展開状態で、前記ウイング部6は、前記透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に吸収体4が介在された本体部分から、幅方向の一方側、具体的には前記男性用下着30の内側前立て開口部33aが着用者の左側に向けて開口している関係上、男性用吸収性物品1の装着状態で着用者の左側に向けて延在して形成されている。
【0044】
図1及び
図2に示されるように、前記ウイング部6は、本体部分とは別体のウイング用シート9が本体部分に接合されて形成するのが好ましいが、本体部分のシート材、例えば不透液性裏面シート2又は不透液性裏面シート2及び透液性表面シート3を幅方向に延在させることにより形成してもよい。
【0045】
前記ウイング用シート9としては、プラスチックシートを用いるのが好ましいが、不織布シートやポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布などを用いることもできる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有する微多孔性シートを用いてもよい。このウイング用シート9を接合するには、吸収体4の存在しない前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3とが接合されたフラップ部Fに対し、ホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段を用いて行うことができる。
【0046】
前記ウイング部6は、
図5及び
図6に示されるように、男性用吸収性物品1の装着時に、基端部から不透液性裏面シート2側に折り返すことにより、幅方向の他方側、具体的には男性用吸収性物品1の装着状態で着用者の右側に向けて延びるように配置される。このとき、折り返した状態で、前記ウイング部6は、男性用下着30の内側前立て開口部33aから表側前立て部31と裏側前立て部32との間に挿入可能となっている。
【0047】
また、
図5及び
図6に示されるように、前記ウイング部6を基端部から折り返して、表側前立て部31と裏側前立て部32との間に挿入した際、前記ウイング部6の裏側前立て部32に対向する面には、この裏側前立て部32に対する固定のために適宜の塗布パターンによって複数条の、図示例では男性用吸収性物品1の上下方向に沿う2条のウイング用ズレ止め粘着剤層10、10が形成されているとともに、これらウイング用ズレ止め粘着剤層10…がウイング用剥離シート11によって剥離可能に覆われている。
【0048】
前記ウイング用ズレ止め粘着剤層10を形成する粘着剤としては、上述の本体用ズレ止め粘着剤層7と同様に、たとえばスチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤のいずれかが主成分であるものが好適に使用される。前記スチレン系ポリマーとしては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体等が挙げられるが、これらのうち1種のみを使用しても、二種以上のポリマーブレンドであってもよい。この中でも熱安定性が良好であるという点で、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体が好ましい。また、前記粘着付与剤および可塑剤としては、常温で固体のものを好ましく用いることができ、粘着付与剤ではたとえばC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、前記可塑剤では例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステルのようなポリマー可塑剤が挙げられる。
【0049】
また、前記ウイング用剥離シート11としては、前記本体用剥離シート8と同様に、ウイング用ズレ止め粘着剤層10に対する当接面に対し、例えばシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、または四フッ化エチレン系樹脂などの離型処理液を塗工するかスプレー塗布し離型処理した紙またはプラスチックシートを用いることができる。なお、特別に離型処理をしなくても、実質的に粘着力の低下を招かないものであれば、フィルムそのものであっても、不織布そのものであっても良い。ウイング用剥離シート11の場合、装着時に、該ウイング用剥離シート11を引っ張って円滑にウイング部6が下着の前開き部から表側前立て部31と裏側前立て部32との間に挿入できるように、可撓性に富むプラスチックシートを用いるのがよい。
【0050】
次いで、上記の構成からなる男性用吸収性物品1を男性用下着30に装着する手順について説明する。先ずはじめに、
図3及び
図4に示されるように、男性用吸収性物品1の本体用剥離シート8を剥がして本体用ズレ止め粘着剤層7、7を男性用下着30の股間部の内側に固定する。このとき、ウイング部6は、幅方向の一方側(着用者の左側)に延在した状態のままとする。
【0051】
この状態で、
図4に示されるように、外側前立て開口部33bから男性用下着30の内側に手を入れてウイング用剥離シート11を摘み、このウイング用剥離シート11を引っ張り出すことにより、
図5及び
図6に示されるように、前記ウイング部6が基端部から折り返され、内側前立て開口部33aから表側前立て部31と裏側前立て部32との間に挿入されると同時に、前記ウイング用剥離シート11が前記ウイング用ズレ止め粘着剤層10から剥離して、ウイング用ズレ止め粘着剤層10が裏側前立て部32に貼着される。
【0052】
このように、本男性用吸収性物品1では、ウイング部6を男性用下着30の前立て開口部に装着するに当たって、前記ウイング用剥離シート11を引っ張り出す動作だけで、ウイング部6が所定の前立て部の間に配置されると同時に、ウイング用ズレ止め粘着剤層10が所定の下着の面に貼着して男性用吸収性物品1を固定できるため、ウイング部6の装着が非常に容易になる。また、ウイング用剥離シート11を剥がしてウイング用ズレ止め粘着剤層10が露出すると同時に、ウイング用ズレ止め粘着剤層10が男性用下着30の裏側前立て部32に貼着されるため、ウイング用ズレ止め粘着剤層10が意図しない部分にくっついたり、ウイング用ズレ止め粘着剤層10同士がくっついたりすることがなく、装着が容易となる。更に、ウイング部6が男性用下着30の前開き部を折り返して裏側前立て部32に固定されるため、男性用吸収性物品1が男性用下着30にしっかりと固定でき、装着時のズレが確実に防止できるようになる。
【0053】
前記ウイング部6について更に詳しく説明すると、前記ウイング部6の平面形状は、
図5に示されるように、男性用下着30との固定性を高めるため、ウイング部6を男性用下着30の表側前立て部31と裏側前立て部32との間に挿入した状態(ウイング部6を基端部から幅方向の他方側に折り返した状態)で、下側が幅狭の略台形状に形成するのが好ましい。この他に、逆三角形状や円形状、楕円形状、多角形状などでも構わない。
【0054】
また、
図5に示されるように、ウイング部6を男性用下着30の表側前立て部31と裏側前立て部32との間に挿入した状態で、前記ウイング部6の男性用下着30の上下方向に延びる長さであるウイング幅A(ウイング部6を基端部から幅方向の他方側に折り返したときの男性用吸収性物品1の上下方向の長さ)は、男性用下着30の前立て開口部の範囲内とするのが好ましい。具体的に前記ウイング幅Aは、30~150mm、好ましくは50~150mmとするのがよい。また、同じくウイング部6を男性用下着30の表側前立て部31と裏側前立て部32との間に挿入した状態で、男性用下着30の幅方向に延びる最大長さであるウイング長さB(ウイング部6を基端部から幅方向の他方側に折り返したときの男性用吸収性物品1の幅方向の最大長さ)は、男性用下着30の表側前立て部31と裏側前立て部32とが重ね合わされた範囲内とするのが好ましい。具体的に前記ウイング長さBは、15~90mm、好ましくは30~90mmとするのがよい。
【0055】
図7に示されるように、前記ウイング用剥離シート11には、前記ウイング部6の基端側に対応する辺11aに摘み部12が設けられるのが好ましい。前記摘み部12は、
図3に示されるように、男性用吸収性物品1を男性用下着30の内側の股間部に配置した状態で、外側前立て開口部33bから表側前立て部31と裏側前立て部32との間に手を入れて剥離シート11を引っ張り出しやすくするために設けられるものである。前記摘み部12は、剥離シート11の男性用吸収性物品1の本体側、すなわち、
図3に示されるように、男性用吸収性物品1を男性用下着30の内側の股間部に配置した状態で、外側前立て開口部33bから表側前立て部31と裏側前立て部32との間に手を入れたときに、最も内側前立て開口部33aに近い側の辺11aに、該辺11aからウイング部6の基端側(男性用吸収性物品1の本体側)、すなわち、
図3に示されるように、男性用吸収性物品1を男性用下着30の内側の股間部に配置した状態で、男性用下着30の内側前立て開口部33aに向けた側に突出して設けられている。
【0056】
前記摘み部12は、前記ウイング用剥離シート11を延在させることにより形成してもよいし、前記ウイング用剥離シート11と異なる素材又は同じ素材からなる摘み部12を前記ウイング用剥離シート11の所定の部位に接合するようにしてもよい。
【0057】
前記摘み部12は、
図7に示されるように、前記ウイング用剥離シート11におけるウイング部6の基端側に対応する辺11aの略中央部に、該辺11aの長さより短い幅で形成してもよいが、
図8に示されるように、ウイング用剥離シート11におけるウイング部6の基端側に対応する辺11aの全長に亘って形成するのが望ましい。すなわち、摘み部12の基端部の幅と、ウイング用剥離シート11におけるウイング部6の基端側に対応する辺11aの幅とがほぼ同等に形成されるのが望ましい。これにより、摘み部12を摘んでウイング用剥離シート11を引っ張ったときに、ウイング用剥離シート11におけるウイング部6の基端側に対応する辺11aの全長に亘って引張力がほぼ均等に作用するため、ウイング用剥離シート11を引っ張り出しやすくなる。
【0058】
また、前記ウイング用剥離シート11を引っ張り出しやすくするため、
図9に示されるように、前記男性用吸収性物品1を男性用下着30の股間部に配置した状態で、前記摘み部12の先端が男性用下着30の外側前立て開口部33bから外部に突出する形状で形成するのが好ましい。これにより、摘み部12が摘みやすくなり、ウイング用剥離シート11を引っ張り出しやすくする。前記男性用吸収性物品1を男性用下着30の股間部に配置した状態で、前記摘み部12は、男性用下着30の内側前立て開口部33aから表側前立て部31と裏側前立て部32との間に挿入され、摘み部12の先端が男性用下着30の外側前立て開口部33bから外部に突出するように配置される。この場合の前記摘み部12の素材としては、前記摘み部12を表側前立て部31と裏側前立て部32との間に挿入しやすいように、コシのある厚手のプラスチックシートを用いるのが好ましい。
【0059】
前記摘み部12の平面形状は任意である。例えば、
図7に示されるように、略半割れの楕円形状や円形状、多角形状などで形成することができる。特に、
図9に示されるように、男性用吸収性物品1を男性用下着30の股間部に配置した状態で、摘み部12の先端を男性用下着30の外側前立て開口部33bから外部に突出させる場合、前記ウイング用剥離シート11におけるウイング部6の基端側の辺11aの両端から直線的に延びる三角形状で形成するのが望ましい。これにより、男性用下着30の外側前立て開口部33bから外部に突出する摘み部12の先端が鋭角状になって摘みやすくなるとともに、この摘み部12を男性用下着の表側前立て部31と裏側前立て部32との間に配置する際に、摘み部12が折れ曲がったり、よれたりするのが抑えられ、配置しやすくなる。
【0060】
前記ウイング部6は、
図1に示されるように、男性用吸収性物品1の本体部分の上下方向の略中央部に1つ形成されるようにしてもよいし、
図10に示されるように、男性用吸収性物品1の上下方向に間隔を空けて複数箇所、図示例では2箇所に形成されるようにしてもよい。1箇所に形成した形態では、ウイング部6の装着作業が必ず1回で済むため、作業が簡略化できる点で好ましい。一方、複数箇所に形成した形態では、各ウイング部6がそれぞれの部位において股間部の形状に沿って下着に貼着されるため、股間部に対するフィット性が向上できる点で好ましい。
【0061】
図10に示される例では、各ウイング部6、6に設けられたウイング用ズレ止め粘着剤層10、10を、それぞれ別のウイング用剥離シート11で覆っているが、複数のウイング部6、6に設けられたウイング用ズレ止め粘着剤層10、10…を、1つのウイング用剥離シート11で一体的に覆うようにしてもよい(図示せず)。これにより、ウイング部6の装着が1回の手間で済むようになる。
【0062】
前記ウイング用ズレ止め粘着剤層10は、
図1に示されるように、前記ウイング部6に対して、男性用吸収性物品1
の上下方向に沿うとともに
、幅方向に間隔を空けて複数条形成するようにしてもよいし、
図11に示されるように、男性用吸収性物品1
の幅方向に沿うとともに
、上下方向に間隔を空けて複数条形成されるようにしてもよい。男性用吸収性物品1
の上下方向に沿うとは、
図5に示されるように、ウイング部6を男性用下着30の表側前立て部31と裏側前立て部32との間に挿入した状態(ウイング部6を基端部から幅方向の他方側に折り返した状態)で、男性用吸収性物品1の上下方向に沿って配置されることである。同様に、男性用吸収性物品1
の幅方向に沿うとは、
図5に示されるように、ウイング部6を男性用下着30の表側前立て部31と裏側前立て部32との間に挿入した状態(ウイング部6を基端部から幅方向の他方側に折り返した状態)で、男性用吸収性物品1の幅方向に沿って配置されることである。
【0063】
前記ウイング用ズレ止め粘着剤層10を男性用吸収性物品1の上下方向に沿って配置した場合には、ウイング部6を男性用下着30の内側前立て開口部33aから表側前立て部31と裏側前立て部32との間に挿入する際、剥離シート11が内側のウイング用ズレ止め粘着剤層10から順に剥離して、剥離したウイング用ズレ止め粘着剤層10が順次男性用下着30に貼着するため、下着に対する固定性が良好となる。また、ウイング用剥離シート11を引っ張り出す際に、ウイング用ズレ止め粘着剤層10の全長に亘って、ウイング部6を幅方向の他方側に折り返す引張力が作用するため、ウイング部6が確実に折り返されながら男性用下着30の表側前立て部31と裏側前立て部32との間に挿入されるようになる。
【0064】
一方、前記ウイング用ズレ止め粘着剤層10を男性用吸収性物品1の幅方向に沿って配置した場合には、ウイング部6を男性用下着30に固定した際、男性用下着30に上下方向に沿ったシワが入りにくく、装着時の違和感が軽減できるとともに、装着状態における外観が良好となる。また、ウイング用剥離シート11がウイング用ズレ止め粘着剤層10から剥離する際、各ウイング用ズレ止め粘着剤層10の長手方向の端部から徐々に剥がれるので、剥離の際の抵抗力が小さく抑えられ、剥離が容易となる。
【0065】
前記ウイング用ズレ止め粘着剤層10を複数条で形成する場合には、各粘着剤層の目付は同じでもよいし、異なっていてもよい。異なる目付とする場合、例えば、前記ウイング用ズレ止め粘着剤層10を男性用吸収性物品1の上下方向に沿って配置したときに、男性用吸収性物品1の本体側(ウイング部6の基端側)に近い方が目付が高くなるようにすることにより、ウイング用剥離シート11を引っ張った初期の引張力がウイング部6に大きく作用し、ウイング部6が幅方向の他方側に折り返りやすくなるとともに、下着に対して、ウイング部6の基端側の方が強固に固定できるので、装着時の男性用吸収性物品1のズレがより確実に防止できるようになる。
【0066】
前記ウイング部6は、
図1に示されるように、男性用吸収性物品1の本体部分における幅方向の一方側の端縁から、前記本体部分より外方に延在して形成してもよいし、
図12に示されるように、男性用吸収性物品1の本体部分における幅方向の一方側寄りの中間位置から、前記本体部分と一部又は全部が重なるように幅方向の一方側に延在して形成してもよい。本体部分の幅方向端縁から外側に延在して形成した場合には、ウイング部6が明確に識別でき、装着時にウイング用剥離シート11の位置が判りやすく、ウイング用剥離シート11を引っ張り出しやすくする。一方、本体部分の中間位置に形成した場合には、
図13に示されるように、男性用吸収性物品1の本体部分によって男性用下着30の広い範囲が覆われるため、男性用吸収性物品1の体液の吸収能力が向上できる。前記ウイング部6を本体部分の中間位置に形成する場合にも、
図12に示されるように、内側前立て開口部33aの傾斜に合わせて又は男性用吸収性物品1の本体部分の幅方向両端の外形線の傾斜に合わせて、傾斜して配置するのが好ましい。これにより、ウイング部6が男性用下着30の所定位置に固定しやすくなる。
【0067】
図14に示されるように、本男性用吸収性物品1では、前記ウイング部6の基端部に沿って、該ウイング部6を切り取り可能な引裂き部13を設けてもよい。これにより、前記引裂き部13を引き裂いてウイング部6を取り外すことができ、前立て開口部を有さない男性用下着30にも装着可能となる。前記引裂き部13は、ウイング部6の全幅に亘って形成されたミシン目、圧搾線などの易引き裂き部である。
【0068】
〔他の形態例〕
上記形態例では、前記本体用剥離シート8とウイング用剥離シート11とを、それぞれ別体のシートで構成していたが、
図15に示されるように、本体用剥離シート8とウイング用剥離シート11とが連続した一体の剥離シートで構成されるようにしてもよい。すなわち、この一体の剥離シートは、本体用ズレ止め粘着剤層7…を覆う本体用剥離シート8の部分と、ウイング用ズレ止め粘着剤層10…を覆うウイング用剥離シート11の部分と、これらを連結する連結シート14の部分とからなる一体のシートで構成されている。前記剥離シートは、1枚のシートで構成してもよいし、2枚以上のシートを接合して一体化してもよい。
【0069】
この一体の剥離シートを備えた男性用吸収性物品1を男性用下着30に装着するには、
図16に示されるように、前記剥離シートのうち、本体用剥離シート8の部分を剥がして本体用ズレ止め粘着剤層7…を男性用下着30の股間部の内側に固定する。このとき、前記剥離シートのうち、ウイング用剥離シート11の部分はウイング用ズレ止め粘着剤層10…を覆った状態に維持され、このウイング用剥離シート11の男性用吸収性物品1の本体側に連続して、いずれにも固定されない自由な前記本体用剥離シート8の部分及び連結シート14の部分が延在した状態となっている。
【0070】
次いで、外側前立て開口部33bから男性用下着30の内側に手を入れてウイング用剥離シート11を引っ張り出す。このとき、前記ウイング用剥離シート11の内側に延在する前記本体用剥離シート8又は連結シート14は、ウイング用剥離シート11を引っ張り出す際の摘み部として利用することができる。このため、本形態例では、ウイング用剥離シート11が引っ張り出しやすくなり、ウイング部の装着が更に容易にできるなどの利点がある。
【符号の説明】
【0071】
1…男性用吸収性物品、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…被包シート、6…ウイング部、7…本体用ズレ止め粘着剤層、8…本体用剥離シート、9…ウイング用シート、10…ウイング用ズレ止め粘着剤層、11…ウイング用剥離シート、12…摘み部、13…引裂き部、30…男性用下着、31…表側前立て部、32…裏側前立て部、33a…内側前立て開口部、33b…外側前立て開口部