(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/474 20060101AFI20220620BHJP
A61F 5/44 20060101ALI20220620BHJP
A61F 13/472 20060101ALI20220620BHJP
A61F 13/47 20060101ALI20220620BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
A61F13/474
A61F5/44 H
A61F13/472
A61F13/47 300
A61F13/533 100
(21)【出願番号】P 2018052342
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】國森 彩乃
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-219144(JP,A)
【文献】特開2006-340978(JP,A)
【文献】特開2014-147461(JP,A)
【文献】特開2005-224531(JP,A)
【文献】特開2010-187919(JP,A)
【文献】特開2010-115563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
A61F5/00-6/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部両側部にそれぞれ外方に延出可能な後部フラップを備えた吸収性物品であって、
前記後部フラップに吸収体が配設されるとともに、前記後部フラップが吸収性物品の長手方向に沿
うとともに、吸収性物品の幅方向に所定の間隔をあけて2本以上設けられた折り線で肌側に折り畳まれ、その状態が仮止め手段で維持されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記仮止め手段は、圧搾部及び接着部のいずれか又はこれらの組み合わせからなる請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記後部フラップに配設された吸収体の目付が、吸収性物品の幅方向に沿って変化している請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記後部フラップに配設された吸収体は、前記折り線の位置に、前記折り線に沿って前記吸収体の目付を低くした低目付部が設けられている請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記後部フラップに配設された吸収体は、前記折り線の位置にて吸収性物品の幅方向に分割されている請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記分割された
各吸収体同士は直接接合されておらず、隣り合う吸収体の間には空間部が形成されている請求項5記載の吸収性物品。
【請求項7】
着用者の体液排出部を含む領域に配設された本体吸収体から、前記後部フラップに配設された吸収体に向けて延びる、前記吸収体を窪ませたエンボス溝が形成されている請求項1~6いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項8】
肌側の両側部にそれぞれサイド不織布が配設され、前記サイド不織布が配設された幅内で前記後部フラップが折り畳まれている請求項1~7いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主には生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッド、トイレタリー等に使用される吸収性物品であって、詳しくは後部両側部にそれぞれ外方に延出可能な後部フラップを備え、この後部フラップを含む後側部の幅が調節可能に成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上記吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在するとともに、肌側の両側部にそれぞれ肌側に向けて突出する左右一対の立体ギャザーを形成するギャザー不織布が長手方向に沿って配設されたものが知られている。
【0003】
就寝時などにおける使用に適した夜用の生理用ナプキンでは、下着に対する固定をより確実に図るとともに、臀部側からの漏れ(後漏れ)を効果的に防止するため、ナプキンの長手方向中間両側部に下着のクロッチ部分を折り返して使用するウイング状フラップを設けるとともに、これより後部両側部にそれぞれ外方に延出して着用者の臀部を覆う後部フラップを設けたものが存在する。
【0004】
このような後部フラップを備えた吸収性物品において、前記後部フラップにも吸収体を配設し、体液を吸収できるようにしたものが開発されている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-119020号公報
【文献】特開2016-120211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1、2に記載された吸収性物品では、後部フラップにフラップ吸収体が配設されているため、このフラップ吸収体にも体液が吸収でき、臀部からの体液の漏れが防止できるようになる。
【0007】
ところで、長時間に亘って生理用ナプキンを交換できない場合の漏れの不安を解消するため、就寝時以外の昼間においても夜用の生理用ナプキンを装着する利用者が少なからずいることが発明者らの調査によって明らかになった。
【0008】
夜用の生理用ナプキンを就寝時などに使用する場合は、仰臥位などにおける臀部からの漏れを防止するため、より広い範囲の吸収機能の強化を期待して後部フラップが両側に延出し、この後部フラップによって臀部の広い範囲が覆われたタイプのものが好まれる傾向にあるが、この夜用の生理用ナプキンを就寝時以外の昼間に使用する場合は、臀部の広い範囲が後部フラップに覆われ、汗等により蒸れてかぶれやすくなるという問題が生じるため、後部フラップを有さないタイプのものが好まれる傾向にあった。
【0009】
このように、使用する場面や使用者の気分などによって好ましいタイプが異なるため、後部フラップの有無によって、就寝時用の生理用ナプキンと、昼間の長時間交換できないとき用の生理用ナプキンの2種類を買い揃えなければならない手間やコストがかかっていた。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、後部両側部にそれぞれ外方に延出可能な後部フラップを備えた吸収性物品において、後側部の幅を調節可能にすることによって、使用する場面を問わずに1つの吸収性物品で兼用できるようにするとともに、後部両側からの体液の漏れを防止した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、後部両側部にそれぞれ外方に延出可能な後部フラップを備えた吸収性物品であって、
前記後部フラップに吸収体が配設されるとともに、前記後部フラップが吸収性物品の長手方向に沿うとともに、吸収性物品の幅方向に所定の間隔をあけて2本以上設けられた折り線で肌側に折り畳まれ、その状態が仮止め手段で維持されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、前記仮止め手段で後部フラップの折り畳みが維持された状態と、前記仮止め手段を解除して後部フラップを展開した状態とで、吸収性物品の後側部の幅が調節可能となっている。前記後部フラップを折り畳んだ使用状態では、前記後部フラップが臀部の広い範囲を覆うことなく、汗等によってかぶれなどが生じにくいため、昼間の長時間に亘って交換できない場面での使用に適しており、前記後部フラップを展開した使用状態では、後部フラップが臀部の広い範囲を覆うことによって臀部からの漏れが防止できるため、就寝時などでの使用に適している。このように、前記仮止め手段の非解除によって後部フラップを折り畳んだ状態と、前記仮止め手段の解除によって展開した状態とで、吸収性物品の後側部の幅が調節可能となるため、使用する場面を問わずに1つの吸収性物品で様々な場面の使用に対応できるようになる。
【0013】
また、前記後部フラップを肌側に折り畳んだ使用状態では、この折り畳まれた後部フラップが後部両側部において肌側に膨出する障壁として作用するため、後部両側部からの漏れ防止機能が強化できるようになる。この場合、前記折り線は幅方向に所定の間隔をあけて2本以上設けられているため、前記後部フラップを折り畳んだ使用状態で、折り畳んだ後部フラップによる障壁としての機能が確実に発揮できるようになる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記仮止め手段は、圧搾部及び接着部のいずれか又はこれらの組み合わせからなる請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項2記載の発明では、前記仮止め手段として、手で簡単に解除できるものであれば、圧搾部又は接着部によって構成してもよいし、これらの組み合わせによって構成してもよいとしている。
【0016】
請求項3に係る本発明として、前記後部フラップに配設された吸収体の目付が、吸収性物品の幅方向に沿って変化している請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項3記載の発明では、後部フラップに配設された吸収体の目付を吸収性物品の幅方向に沿って変化している。例えば、吸収性物品の幅方向内側から外側に向けて徐々に目付を低くした場合には、後部フラップを展開した使用状態で、幅方向内側の方が吸収容量が高くなるため、後部フラップへの体液の拡散が抑制され、後部からの漏れが確実に防止できるようになる。
【0018】
これとは逆に、後部フラップに配設された吸収体の目付を、吸収性物品の幅方向内側から外側に向けて徐々に高くした場合には、後部フラップを折り畳んだ使用状態で、積層された後部フラップの折り返し部のうち、肌面に近い折り返し部の方が吸収容量が高くなるため、この折り返し部による障壁としての機能がより効果的に発揮できるようになる。
【0019】
請求項4に係る本発明として、前記後部フラップに配設された吸収体は、前記折り線の位置に、前記折り線に沿って前記吸収体の目付を低くした低目付部が設けられている請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項4記載の発明は、前記後部フラップに配設された吸収体によって、後部フラップの折り畳み難さを防止するとともに、展開したときの折り癖による装着時の違和感や肌面との密着性の低下を防止する手段の一つの形態例であり、前記後部フラップに配設された吸収体の前記折り線の位置に、前記折り線に沿って吸収体の目付を低くした低目付部を設けている。前記低目付部を設けることによって、後部フラップが前記折り線にて折り曲げやすくなるとともに、展開したときに折り癖がつきにくくなる。
【0021】
請求項5に係る本発明として、前記後部フラップに配設された吸収体は、前記折り線の位置にて吸収性物品の幅方向に分割されている請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項5記載の発明は、前述の後部フラップの折り畳み難さを防止するとともに、展開したときの折り癖を防止する手段の別の形態例であり、前記後部フラップに配設された吸収体を、前記折り線の位置にて吸収性物品の幅方向に分割している。吸収体を分割することによって、折り畳みが容易になり、折り癖がつきにくくなる。
【0023】
請求項6に係る本発明として、前記分割された各吸収体同士は直接接合されておらず、隣り合う吸収体の間には空間部が形成されている請求項5記載の吸収性物品が提供される。
【0024】
上記請求項6記載の発明では、前記分割された各吸収体同士は直接接合されておらず、隣り合う吸収体の間には空間部が形成されていることによって、分割された吸収体間を体液が流れやすくなり、幅方向への体液の拡散が低下して、後部両側部からの漏れが防止できるようになる。
【0025】
請求項7に係る本発明として、着用者の体液排出部を含む領域に配設された本体吸収体から、前記後部フラップに配設された吸収体に向けて延びる、前記吸収体を窪ませたエンボス溝が形成されている請求項1~6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0026】
上記請求項7記載の発明では、前記後部フラップを展開した使用状態において、後部フラップに配設された吸収体の吸収容量を有効利用してより多くの体液を吸収できるようにするため、前記エンボス溝を形成することによって、本体部分に吸収された体液の一部を後部フラップに配設された吸収体に誘導している。
【0027】
請求項8に係る本発明として、肌側の両側部にそれぞれサイド不織布が配設され、前記サイド不織布が配設された幅内で前記後部フラップが折り畳まれている請求項1~7いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0028】
上記請求項8記載の発明では、前記サイド不織布が配設された幅内で前記後部フラップが折り畳まれているため、この折り畳まれた後部フラップの後部両側部における障壁としての機能がより効果的に発揮できるようになる。
【発明の効果】
【0029】
以上詳説のとおり本発明によれば、後部両側部にそれぞれ外方に延出可能な後部フラップを備えた吸収性物品において、後側部の幅を調節可能にすることによって、使用する場面を問わずに1つの吸収性物品で兼用できるようになるとともに、後部両側からの体液の漏れが防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
【
図4】後部フラップW
Bを折り畳んだ状態の生理用ナプキン1の平面図である。
【
図6】(A)、(B)は、変形例に係る生理用ナプキン1の横断面図(
図1のIII-III線矢視図)である。
【
図7】変形例に係る生理用ナプキン1の平面図(その1)である。
【
図8】変形例に係る生理用ナプキン1の平面図(その2)である。
【
図10】変形例に係る生理用ナプキン1の平面図(その3)である。
【
図11】変形例に係る生理用ナプキン1の平面図(その4)である。
【
図12】変形例に係る生理用ナプキン1の平面図(その5)である。
【
図13】変形例に係る生理用ナプキン1の平面図(その6)である。
【
図14】他の形態例に係る生理用ナプキン1の横断面図(
図1のIII-III線矢視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0032】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、
図1に示されるように、装着時に、少なくとも着用者の体液排出部Hを覆う股下部Aと、その前側に配置された着用者の下腹部を覆う前側部Bと、前記股下部Aの後側に配置された着用者の臀部を覆う後側部Cとから構成されるとともに、前記後側部Cの長手寸法が前側部Bの長手寸法より長く形成されたものである。前記後側部Cの長手寸法は、前記前側部Bの長手寸法に対して、2~10倍、好ましくは3~5倍程度であるのがよい。
【0033】
本生理用ナプキン1は、
図1~
図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液ともいう。)を速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、肌当接面側の両側部にそれぞれ長手方向のほぼ全長に亘って設けられたサイド不織布7、7とを備え、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、ほぼ体液排出部Hに相当する吸収体側部位置に左右一対のウイング状フラップW、Wが形成されるとともに、これより後部側(臀部側)の後部両側部にそれぞれ外方(側方)に延出可能な後部フラップW
B、W
Bが形成されたものである。なお、図示例では、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体4をクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5で囲繞しているが、この被包シート5は設けなくてもよい。また、後段で詳述するように、前記透液性表面シート3の非肌側に隣接して、親水性の不織布などからなるセカンドシート6を配設してもよい(
図14参照。)。
【0034】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非肌側面(外面)にはナプキン長手方向に沿って1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0035】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0036】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性樹脂を混入したものが使用される。前記吸収体4は、図示のように、形状保持、および経血等を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した経血等の逆戻りを防止するために被包シート5によって囲繞するのが望ましい。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。また、前記吸収体4として、嵩を小さくできるエアレイド吸収体や、2層の不織布層間に高吸水性樹脂を配置してなるポリマーシートを用いてもよい。
【0037】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0038】
前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル-酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。
【0039】
本例のように、吸収体4を囲繞する被包シート5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間に被包シート5が介在することになる。前記被包シート5がクレープ紙からなる場合には、吸収性に優れる前記被包シート5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。
【0040】
前記吸収体4は、着用者の体液排出部Hを含む長手区間の幅寸法で長手方向のほぼ全長に亘って配設された本体吸収体10と、前記本体吸収体10の後部両側部から外方に延出して前記後部フラップWBを含む領域に配設されたフラップ吸収体11とにより構成されている。前記本体吸収体10は、前記吸収体4のうち、着用者の体液排出部Hを含む長手区間、即ち左右一対の前記ウイング状フラップW、Wが形成された長手区間における幅寸法で吸収体4の前端から後端に亘って配設されたほぼ等幅の部分である。一方、前記フラップ吸収体11は、前記吸収体4のうち、生理用ナプキン1の後部両側部において、前記本体吸収体10より側方に延出する部分である。前記フラップ吸収体11の外縁の形状は、生理用ナプキン1の外縁の形状に沿った形状で形成するのが好ましい。
【0041】
本生理用ナプキン1では、
図1及び
図3に示されるように、前記本体吸収体10とフラップ吸収体11とが連続する一体の吸収体で構成してもよいし、本体吸収体10とフラップ吸収体11とが分割された別体の吸収体で構成してもよい。連続する一体の吸収体で構成した場合において、前記本体吸収体10とフラップ吸収体11との境界は必ずしも明確である必要はないが、ほぼ体液排出部Hにおける吸収体幅で生理用ナプキン1の長手方向に延びる部分を本体吸収体10と定義し、後部両側部においてこれより両側に延出する部分をフラップ吸収体11と定義することができる。
【0042】
前記透液性表面シート3の幅寸法は、図示例では、
図2及び
図3の横断面図に示されるように、本体吸収体10の幅よりも若干長めとされ、本体吸収体10を覆うだけに止まり、それより外方側は前記透液性表面シート3とは別のサイド不織布7が配設されている。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた親水性の不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13~23g/m
2として作製された不織布を用いるのが望ましい。
【0043】
前記サイド不織布7は、
図2及び
図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置から不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と不透液性裏面シート2との積層シート部分により吸収体4の両側部に吸収体4が介在しないフラップ部が形成されている。このフラップ部は、ほぼ体液排出部Hに相当する吸収体側部位置に左右一対のウイング状フラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側(後部側)位置に形成される後部フラップW
B、W
Bの一部を構成している。前記ウイング状フラップW、Wおよび後部フラップW
B、W
Bの外面側にはそれぞれ粘着剤層(図示せず)が備えられ、ショーツに対するの装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを基端部の折返し線RL位置にてショーツの外面側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するとともに、前記後部フラップW
Bをショーツの内面に止着するようになっている。
【0044】
一方、前記サイド不織布7の内方側部分は、透液性表面シート3の肌側面に積層された状態でホットメルト接着剤などによって接合されている。また、図示しないが、前記サイド不織布7の内方側部分がほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1又は複数本の糸状弾性伸縮部材が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されるとともに、この二重シート部分が生理用ナプキン1の前後端部で、積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、少なくとも体液排出部Hを含むナプキン長手方向の所定の区間内において、肌側に起立する左右対の立体ギャザーが形成されるようにしてもよい。
【0045】
〔後部フラップ〕
本生理用ナプキン1では、
図1に示されるように、後部フラップW
Bに吸収体4(フラップ吸収体11)が配設されるとともに、左右対の前記後部フラップW
B、W
Bがそれぞれ生理用ナプキン1の長手方向に沿った折り線L1、L2で肌側に折り畳まれ、その状態が仮止め手段(圧搾部12、接着部13)で維持されている(
図4及び
図5参照。)。前記後部フラップW
B、W
Bが折り畳まれた状態では、
図4及び
図5に示されるように、前記後部フラップW
Bが生理用ナプキン1の後側部において幅方向外側に延出することなく、本体吸収体10の両側部の肌側に積層されている。
【0046】
これによって、本生理用ナプキン1では、前記仮止め手段によって後部フラップW
Bが折り畳まれた状態(
図4及び
図5の状態)と、前記仮止め手段を解除して後部フラップW
Bを展開した状態(
図1及び
図3の状態)とで、後部フラップW
Bの幅が調節可能となっている。前記後部フラップW
Bが折り畳まれた状態では、
図4に示されるように、生理用ナプキン1の後側部がほぼウイング状フラップWの後側基端部の幅で形成され、後部フラップW
Bを展開した状態では、生理用ナプキン1の後側部がウイング状フラップWの後側基端部より幅方向両側に延出した幅で形成されている。
【0047】
前述の後部フラップW
Bを折り畳んだ状態では、
図4に示されるように、吸収体が、臀部の広い範囲を覆うことなく、後部においても体液排出部Hに対応する領域と同様に、ウイング状フラップWの後側基端部の幅とほぼ同じ幅で形成されるため、着用者が汗等をかいても、これによってかぶれなどが生じにくく、昼間の長時間に亘って交換できない場面での使用に適している。また、肌側に折り畳まれた後部フラップW
Bは、
図5に示されるように、後部両側部において肌側に膨出する障壁14(立体ギャザー)として機能するため、これによって後部両側部の肌面との密着性が向上して、後部両側部からの漏れ防止機能が強化できるようになる。
【0048】
一方、前述の後部フラップWBを展開した状態では、後部フラップWBによって臀部の広い範囲が覆われ、この後部フラップWBによって臀部からの漏れが確実に防止できるため、就寝時などの夜用としての使用に適している。このとき、後部フラップWBにも吸収体4が配設されているため、体液を吸収できる面積が増加でき、臀部からの漏れがより確実に防止できるようになる。
【0049】
このように、前記仮止め手段の非解除/解除によって生理用ナプキン1の後側部の幅が調節可能となるため、使用する場面を問わずに1つの生理用ナプキン1で様々な場面に兼用できるようになる。
【0050】
前記後部フラップW
Bは、
図4及び
図5に示されるように、折り畳んだ状態で障壁としての機能が効果的に発揮されるように、前記サイド不織布7が配設された幅内で折り畳むのが好ましい。特に、
図5に示されるように、肌側に折り畳んだ後部フラップW
Bの幅方向内側の折り畳み端部15が、サイド不織布7の幅方向内側の端縁7aとほぼ同等か、これより生理用ナプキン1の幅方向外側に位置しているのが好ましい。
【0051】
前記折り線L1、L2は、
図1に示されるように、生理用ナプキン1の幅方向に所定の間隔をあけて2本以上設けるのが好ましい。図示例では、幅方向内側の折り線L1と、その幅方向外側に所定の間隔をあけた折り線L2の2本が設けられている。幅方向内側の折り線L1は、前記ウイング状フラップWの後側の基端部から、生理用ナプキン1の長手方向中心線CLにほぼ平行して、生理用ナプキン1の後端まで延びている。幅方向外側の折り線L2は、前記折り線L1より幅方向外側であって、後部フラップW
Bの幅方向先端までの間の中間部において、後部フラップW
Bを長手方向に貫くように延びている。
【0052】
折り畳み状態の前記後部フラップW
Bは、
図5に示されるように、前記折り線L1で肌側に折り返される第1折り返し部17と、この第1折り返し部17に連続して前記折り線L2で更に肌側に折り返される第2折り返し部18とによって三つ折りとされている。ここで、前記第2折り返し部18のサイド不織布7側の面は、肌当接面を構成している。
【0053】
前記折り線L1、L2の位置としては、
図1に示されるように、前記折り線L1とサイド不織布7の幅方向内側の端縁7aとのナプキン幅方向の距離X1を基準として、折り線L1、L2間のナプキン幅方向の距離X2及び折り線L2と後部フラップW
Bの幅方向外側の先端16とのナプキン幅方向の距離X3がほぼ同等の長さであるのが好ましい(X1=X2=X3)。これにより、後部フラップW
Bを折り畳んだ状態で、
図5に示されるように、本体吸収体10の両側部に配置されたサイド不織布7のほぼ幅内に、折り畳まれた後部フラップW
Bによる障壁14が形成されるようになる。
【0054】
前記折り線の数としては、2本以上であれば特にこだわらない。また、折り線の数は、偶数本でもよいし奇数本もよい。
図4及び
図5に示されるように、偶数本とした場合には、後部フラップW
Bを折り畳んだ状態で、最も肌側に位置する層(第2折り返し部18)の肌側面がサイド不織布7側の面となり、この障壁14の肌当接面における体液の吸収性が確保できるようになる点で好ましい。一方、前記折り線を奇数本とした場合には、最も肌側の層の肌当接面が不透液性裏面シート2側の面となるが、後部フラップW
Bの幅方向の先端16が内側を向くため、障壁14の幅方向外側の全面が不透液性裏面シート2で覆われることとなり、この障壁14より幅方向外側への体液の漏れが確実に防止できるようになる点で好ましい。
【0055】
前記仮止め手段としては、手で簡単に解除できるものであればよく、圧搾部12及び接着部13のいずれか又はこれらの組み合わせで構成するのが好ましい。これにより、後部フラップW
Bの折り畳み状態が意図せず展開するのが防止できる。
図4及び
図5に示される形態例では、仮止め手段として、圧搾部12及び接着部13の両方が施されているが、圧搾部12のみ又は接着部13のみで構成してもよい。
【0056】
前記圧搾部12は、折り畳んだ後部フラップW
Bを肌側及び非肌側のいずれか又は両方の外面側から圧搾することにより、三つ折りされた3つの層のうち少なくとも2つの層間に亘って窪ませた窪み部である。前記圧搾部12は、
図4に示されるように、連続的な線状に形成するのではなく、小さなドットを所定の間隔で複数配置したパターンとするのが好ましい。これにより、圧搾部12が手で簡単に解除できるようになる。
図4に示される例では、円形のドット状エンボスを生理用ナプキン1の長手方向に沿って所定の間隔で複数配置している。前記圧搾部12の1個当たりの大きさは1~5mm程度がよく、片側の後部フラップW
Bに設けられる数は2~7個程度がよい。
【0057】
前記接着部13は、折り畳んだ後部フラップW
Bの隣り合う2つの折り畳み部の間に設けられたホットメルト接着剤などからなる粘着剤層であり、少なくとも一方の折り畳み部に対して容易に剥離可能となっている。前記接着部13は、
図5に示されるように、隣り合う折り畳み部のうち、不透液性裏面シート2同士が対面する層間に配置するのが好ましい。これにより、前記接着部13を解除して後部フラップW
Bを展開した状態で、前記接着部13をショーツに対するズレ止め粘着剤として利用することができるようになる。前記仮止め手段の解除後に、接着部13を対面する不透液性裏面シート2、2のうち所定の一方のシート2に存在させるには、他方の不透液性裏面シート2の外面に剥離処理を施すことにより成すことができる。前記剥離処理は、他方の不透液性裏面シート2の接着部13の当接面に対し、例えばシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、または四フッ化エチレン系樹脂などの離型処理液を塗工するかスプレー塗布することによって行うことができる。また、前記剥離処理は、不透液性裏面シート2に直接施してもよいし、剥離処理が施された別体のシート材又は粘着力の低い素材(フィルム等)を不透液性裏面シート2の所定の領域に貼着することにより成してもよい。
【0058】
前記仮止め手段として圧搾部12及び接着部13の両方を設ける場合、
図4及び
図5に示されるように、前記圧搾部12と接着部13とは、生理用ナプキン1の厚み方向に重ならない位置に配置するのが好ましい。これらを厚み方向に重なる位置に配置した場合には、前記圧搾部12を形成する際の熱によって接着部13の接着剤が溶けて、ショーツに対するズレ止めとして利用できなくなるおそれがある。
【0059】
前記仮止め手段として圧搾部12及び接着部13の両方を設けるとき、
図4及び
図5に示されるように、前記圧搾部12を折り畳んだ後部フラップW
Bの幅方向内側に配置するとともに、前記接着部13を幅方向外側に配置するのが好ましい。これにより、折り畳んだ後部フラップW
Bのうち、幅方向内側部分が前記圧搾部12によって仮止めされ、幅方向外側部分が前記接着部13により仮止めされるため、後部フラップW
Bを折り畳んだ使用状態でも後部フラップW
Bの折り畳み状態が確実に維持されるとともに、これらの仮止め手段を解除して後部フラップW
Bを展開した状態で、前記接着部13が後部フラップW
Bの幅方向外側部分に配置されるため、装着時のズレがより確実に防止できるようになる。
【0060】
前記後部フラップW
Bに配設された吸収体4の目付は、
図3に示されるように、ほぼ一定でもよいし、生理用ナプキン1の幅方向に変化させてもよい。幅方向に目付を変化させる場合は、例えば、
図6に示されるように、幅方向内側から外側に向けて徐々に低く又は高くしてもよいし、図示しないが、前記折り線L1、L2など境にして段階的に変化させてもよい。目付を幅方向に徐々に変化させる場合、密度をほぼ一定とすると、幅方向に沿って厚みが変化する勾配が設けられるようになる。このような後部フラップW
Bの目付の変化は、内側の折り線L1より幅方向内側、具体的には、サイド不織布7の内側の端縁7aとほぼ同じ位置又は前記端縁7aと前記折り線L1との中間位置から、後部フラップW
Bの幅方向外側の端部までの間において連続的に形成することにより、後部フラップW
Bに配設された吸収体4の厚みが連続して徐々に変化する直線的な勾配が設けられるようにするのが好ましい。
【0061】
図6(A)では、後部フラップW
Bに配設された吸収体4の目付が、生理用ナプキン1の幅方向内側から外側に向けて徐々に低くなっている。これにより、後部フラップW
Bを展開した使用状態で、幅方向内側の方が吸収容量が高く、より多くの体液を吸収保持できるため、臀部の両側からの漏れがより確実に防止できるとともに、体液の拡散面積をできる限り小さい範囲に抑えることができる。
【0062】
図6(B)では、後部フラップW
Bに配設された吸収体4の目付が、生理用ナプキン1の幅方向内側から外側に向けて徐々に高くなっている。これにより、後部フラップW
Bを折り畳んだ使用状態で、肌面に近い折り返し部の方が吸収容量が高くなるため、この折り返し部による障壁としての機能がより確実に発揮できるようになる。
【0063】
次いで、前記後部フラップWBに吸収体4が介在することによる折りにくさを解消するとともに、後部フラップWBを展開した際の折り癖を防止する手段について説明する。本生理用ナプキン1では、後部フラップWBにも吸収体4が介在しているため、吸収体4の曲げ剛性によって折り返しにくいとともに、折り返し端部の厚みが厚くなったり、硬くなったりすることにより、装着感が悪化するおそれがある。また、仮止め手段を解除して後部フラップWBを展開した際に、折り癖によって後部フラップWBに蛇腹状の凹凸ができ、装着感が悪化するとともに、肌面との密着性が低下して漏れにつながるおそれがある。そこで、次の手段によってこれらの問題を解決するのが好ましい。
【0064】
第1の手段としては、
図7に示されるように、後部フラップW
Bに配設された吸収体4の前記折り線L1、L2の位置に、該折り線L1、L2に沿って吸収体4の目付を低くした低目付部19を設けることができる。前記低目付部19は、前記折り線L1、L2上に存在する吸収体4の長手方向中間部に形成された、連続的又は間欠的に吸収体4の目付を低くした部分である。前記低目付部19は、前記折り線L1、L2に沿った生理用ナプキン1の長手方向の中間部の吸収体4に対して形成され、ナプキン長手方向の両端部には、他の部分と同じ目付で吸収体4が存在している。このため、吸収体4の連続性が確保され、本体吸収体10とフラップ吸収体11との間で相互に体液の拡散がしやすくなる。前記低目付部19においては、吸収体4が存在しないか、他の部分に比べて低い目付で形成されている。これによって、前記低目付部19を可撓軸として、前記後部フラップW
Bが前記折り線L1、L2にて折り曲げやすくなるとともに、展開した状態で折り癖がつきにくくなる。また、前記低目付部19に体液が流れ込んだとき、吸収体4の下層側(不透液性裏面シート2側)に一気に吸収されるため、体液の拡散性が向上できる。
【0065】
第2の手段としては、
図8及び
図9に示されるように、前記後部フラップW
Bに配設された吸収体が、前記折り線L1、L2の位置にて生理用ナプキン1の幅方向に分割されている。すなわち、前記折り線L1、L2位置にそれぞれ、前記折り線L1、L2に沿って吸収体4をナプキン長手方向に貫く吸収体の間欠部が設けられている。これによって、折り返し端部に吸収体が存在しなくなり、前記折り線L1、L2で折り返しやすくなるとともに、折り癖がつきにくくなる。吸収体を分割することによって、本体吸収体10に吸収された体液が一気に幅方向外側に拡散するのが抑えられ、後部フラップW
Bの幅方向側縁から体液が漏れる可能性が低減できる。吸収体を分割した際、各分割吸収体の目付は一定である必要はなく、任意に設定することが可能である。例えば、幅方向外側の分割吸収体ほど、目付を低くしてもよいし、逆に高くしてもよい。また、最も幅方向外側に位置する分割吸収体の目付を最も高くすることにより、後部フラップW
Bを折り返した使用状態において肌当接面となる折り返し部の吸収容量を増加させるとともに、後部フラップW
Bを展開した使用状態において幅方向外側部分の吸収容量を増加させるようにしてもよい。このように、各分割吸収体の目付を任意に設定することによって、後部フラップW
Bを折り畳んだ使用状態において、障壁14の高さや各部の吸収容量などを任意に設定することができるようになる。
【0066】
後部フラップW
Bに配設された吸収体4を、前記折り線L1、L2の位置にて生理用ナプキン1の幅方向に分割した場合において、
図9に示されるように、分割された吸収体同士は、直接接合しないのが好ましい。すなわち、各分割吸収体は、肌側がサイド不織布7に、非肌側が不透液性裏面シート2にそれぞれホットメルト接着剤等によって接合されることによって、前記サイド不織布7及び不透液性裏面シート2を介して間接的に連結されているが、これら分割吸収体同士は直接接合されておらず、隣り合う分割吸収体の間には空間部が形成され、その空間部の肌側及び非肌側がそれぞれサイド不織布7及び不透液性裏面シート2で覆われている。なお、
図9において、×印が接着剤による接合部を示している。このように、分割吸収体同士の間に空間部が形成されることにより、この空間部に流れ込んだ体液が各分割吸収体の下層側(不透液性裏面シート2側)に吸収されるため、吸収体の厚み方向への拡散が良好となる。
【0067】
前記後部フラップW
Bの外形線の形状は、
図1に示される例では、臀部に対するフィット性を重視して、幅方向外側に膨出する曲線によって形成されているが、これに限定されるものではなく、任意の形状で形成することができる。例えば、
図10に示されるように、幅方向外側に膨出する台形状又は矩形状に形成することにより、後部フラップW
Bを展開した使用状態で、臀部のより広い範囲を覆うことができるようにしてもよい。また、後部フラップW
Bを展開した状態で、前記後部フラップW
Bが形成された長手区間における最大幅(生理用ナプキン1の幅方向に最大となる幅寸法)は、前記ウイング状フラップWが形成された長手区間における最大幅より大きいのが好ましい。これにより、後部フラップW
Bを展開した使用状態で臀部のより広い範囲を覆うことができるとともに、後部フラップW
Bを折り畳んだ使用状態で、体液を塞き止めるのに充分な高さの障壁14を形成することができる。
【0068】
次に、後部フラップW
Bを展開した使用状態で、後部フラップW
Bに配設された吸収体4にも効率よく体液が拡散され、吸収体4の吸収容量を有効活用できるようにするため、エンボス溝20を設けた形態について説明する。前記エンボス溝20は、
図11~
図13に示されるように、前記本体吸収体10からフラップ吸収体11に向けて延びる線状に形成されている。前記エンボス溝20は、少なくとも吸収体4を窪ませた窪み部からなり、その圧搾方向は肌側及び非肌側のいずれか又は両方からとすることができる。特に、前記エンボス溝20に沿った体液の拡散性の向上及びナプキンの変形のしやすさ等の観点から、前記エンボス溝20は、生理用ナプキン1の肌当接面側から吸収体4にかけて一体的に非肌側(不透液性裏面シート2側)に向けて窪ませた窪み部によって形成するのが好ましい。また、前記エンボス溝20は、連続する窪み部からなる連続線で形成してもよいし、溝方向に沿って窪み部と非窪み部とが交互に複数配置された間欠線で形成してもよい。
【0069】
具体的な前記エンボス溝20の実施形態について、
図11~
図13に基づいて説明する。
図11では、前記エンボス溝20は、本体吸収体10の幅方向中間部から幅方向外側に向けて徐々に後側に傾斜する直線によって形成され、生理用ナプキン1の長手方向中心線CLの両側にそれぞれ長手方向に離隔して、左右対で複数配置されている。各エンボス溝20が延びる方向は、その中央部を外側に向けて延ばしたナプキン幅方向の仮想線Tと交差する点におけるナプキン外形線の接線Sとほぼ平行であるのが好ましい。これにより、前記エンボス溝20とナプキン外形線との間の部分が、エンボス溝20の区間内においてほぼ等幅に形成され、このほぼ等幅に形成された吸収体部分に沿って、本体吸収体10に吸収された体液が後部フラップW
Bに効率よく誘導されるようになる。また、生理用ナプキン1の長手方向の前側から後側に向けて拡散する体液が分散して幅方向に誘導されるように、生理用ナプキン1の長手方向に離隔して配置された複数のエンボス溝20…のうち、幅方向内側(長手方向中心線CL側)の端縁は、生理用ナプキン1の幅方向に対してほぼ一致している(生理用ナプキン1の長手方向に整列している)又は後側に配置されたエンボス溝20の方が幅方向内側(長手方向中心線CL側)に位置するようにするのが好ましい。一方、前記エンボス溝20の幅方向外側の端縁は、図示例ではサイド不織布7の幅方向内側の端縁7aより内側に位置しているが、前記端縁7aと内側の折り線L1との間に位置してもよい。また、前記エンボス溝20は、ナプキン外形線と同様に外側に膨出する曲線で形成してもよいし、内側に膨出する曲線で形成してもよい。
【0070】
次いで、
図12に示す実施形態では、前記エンボス溝20は、本体吸収体10の幅方向中間部から生理用ナプキン1の幅方向に平行な直線で形成され、生理用ナプキン1の長手方向中心線CLの両側にそれぞれ生理用ナプキン1の長手方向に離隔して、左右対で複数配置されている。これにより、後側に向けて拡散する体液が前記エンボス溝20によって塞き止められ、このエンボス溝20に沿って後部フラップW
Bに拡散しやすくなる。また、生理用ナプキン1を身体の前後の丸みに沿って前後方向に湾曲させる際、幅方向に延びる前記エンボス溝20が可撓軸となって湾曲しやすくなる。前記エンボス溝20は、後側に配置されるものほど長い長さで形成することにより、後側に配置されたエンボス溝20の方が体液の塞き止め効果が高くなるようにしてもよい。また、前記エンボス溝20は、前側又は後側に膨出する曲線で形成してもよい。
【0071】
図11及び
図12に示される実施形態では、前記エンボス溝20は、左右に2本ずつ配置されているが、
図13に示されるように、ウイング状フラップWより後側の後側部が長い場合には、3本以上ずつ、図示例では3本ずつ形成してもよい。前記エンボス溝20の本数は、左右にそれぞれ、2~8本ずつ、好ましくは2~5本ずつとするのがよい。
【0072】
ところで、前記吸収体4を構成する高吸水性ポリマーは、本体吸収体10とフラップ吸収体11とで同じものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。異なるものを用いる場合の一例としては、フラップ吸収体11の高吸水性ポリマーとして、本体吸収体10の高吸水性ポリマーより吸収速度が速いものを用いることができる。これにより、フラップ吸収体11に体液が拡散した場合に、高吸水性ポリマーが体液を素早く吸収して幅方向端縁からの漏れがより確実に防止できるようになる。
【0073】
また、前記吸収体4の密度は、本体吸収体10とフラップ吸収体11とでほぼ同じでもよいし、繊維の密度差に伴う毛管作用によって低密度領域から高密度領域に体液が拡散しやすいことを利用して、フラップ吸収体11が本体吸収体10より高密度に形成されるようにしてもよい。フラップ吸収体11を本体吸収体10より高密度に形成するには、フラップ吸収体11のパルプ繊維として、本体吸収体10のパルプ繊維より繊維径が細いもの、短いもの又は柔軟なものを用いることにより成すことができる。吸収体4を拡散する体液は、毛管作用により高密度領域に拡散しやすい性質を有しているため、前述のパルプ繊維の繊維径が細いもの、短いもの又は柔軟なものを用いることによって高密度化されたフラップ吸収体11に体液が拡散しやすくなる。
【0074】
〔他の形態例〕
図14に示されるように、前記透液性表面シート3と吸収体4との間に親水性のセカンドシート6を配設した場合、少なくとも前記セカンドシート6が後部フラップW
Bのサイド不織布7と吸収体4(フラップ吸収体11)との間に延在して配置されるようにするのが好ましい。これにより、後部フラップW
Bにおいてもサイド不織布7からフラップ吸収体11に体液が浸透しやすくなる。特に、図示例のように、前記透液性表面シート3及びセカンドシート6をサイド不織布7とフラップ吸収体11との間に延在して配置することにより、透液性表面シート3を拡散する体液が後部フラップW
Bに移行しやすくなる点で好ましいが、透液性表面シート3は体液排出部Hにおける吸収体幅とし、セカンドシート6のみを側方に延在させるようにしてもよい。
【0075】
前記セカンドシート6は、体液に対して親水性を有するものであればよい。具体的には、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。また、前記セカンドシート6は、コシを持たせるため、裏面側(吸収体4)に多孔のフィルム層を有していてもよく、また被包シートとの積層シートとしてもよく、更にはパルプを含む素材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…被包シート、6…セカンドシート、7…サイド不織布、10…本体吸収体、11…フラップ吸収体、12…圧搾部(仮止め手段)、13…接着部(仮止め手段)、14…障壁、19…低目付部、20…エンボス溝