(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】脇用汗取りパッド
(51)【国際特許分類】
A61F 13/00 20060101AFI20220620BHJP
A41D 27/13 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
A61F13/00 351
A41D27/13
(21)【出願番号】P 2018061584
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】長谷澤 敦子
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-52498(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147014(WO,A1)
【文献】実開昭61-155325(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/00
A41B9/12
A41D13/05、27/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と前記吸収体の肌側に配置された透液性の表面シートと前記吸収体の衣服側に配置された不透液性の裏面シートとを備え、衣服の脇の下部分の内側に取り付けて使用する脇用汗取りパッドであって、
前記脇用汗取りパッドは、屈曲線で前記裏面シート側に折り曲げられ、その両側がそれぞれ、装着時に衣服の胴部側に配置される胴側領域及び衣服の袖部側に配置される袖側領域を形成し、
前記屈曲線を中心に前記胴側領域及び袖側領域に跨がって、前記吸収体を厚み方向に貫通させた吸収体開口部
が形成され、前記脇用汗取りパッドを前記屈曲線で折り曲げた状態で、前記吸収体開口部の外形線が衣服の袖ぐり形状に沿うように形成されるとともに、前記吸収体開口部の外周部に沿って対向する前記裏面シート同士を接合した接合部が形成され
、
前記吸収体開口部は、少なくとも前記屈曲線に沿って所定の幅で形成された区画用吸収体によって区画されることにより、前記区画用吸収体の両側にそれぞれ離隔して配置された不連続的なパターンで形成されていることを特徴とする脇用汗取りパッド。
【請求項2】
前記吸収体開口部と厚み方向に重なる位置に、前記裏面シートを厚み方向に貫通させた裏面シート開口部が設けられ、前記吸収体開口部と前記裏面シート開口部とがほぼ同じ形状で形成されている請求項1記載の脇用汗取りパッド。
【請求項3】
前記吸収体開口部と厚み方向に重なる位置に、前記裏面シートを厚み方向に貫通させた裏面シート開口部が設けられ、前記裏面シート開口部が前記吸収体開口部より小さな面積で形成されている請求項1記載の脇用汗取りパッド。
【請求項4】
前記裏面シートには開口部が形成されていない請求項1記載の脇用汗取りパッド。
【請求項5】
前記表面シートには開口部が形成されていない請求項1~4いずれかに記載の脇用汗取りパッド。
【請求項6】
前記吸収体開口部の外形線のうち、前記胴側領域及び袖側領域に対向する部分は、外側に膨出する曲線形状で形成されている請求項1~5いずれかに記載の脇用汗取りパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服の脇の下部分の内側に取り付けて使用する脇用汗取りパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前記脇用汗取りパッドとして、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などからなる不透液性裏面シートと、不織布または透孔性プラスチックシートなどからなる透液性表面シートとの間に汗を吸収する吸収体を介在させたものが知られている。
【0003】
前記脇用汗取りパッドは、衣服の袖ぐり(アームホール)で2つ折りにされ、身体側と袖側とに跨がるようにして衣服の脇の下部分の内側に貼着して使用される。
【0004】
このような脇用汗取りパッドとしては、下記特許文献1において、折れ曲がりを容易にするための屈曲用ラインが、シート本体の中央部を通る直線である基準線から離れる側に凸形状をなす弧状に形成されており、かつ、前記基準線の位置に直線状に設けられたものが開示されている。また、下記特許文献2においては、シート本体の中央部に延びる仕切り線の両側に多数のエンボス凹部が形成された脇用汗取りパッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-121000号公報
【文献】特開2009-121001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載されるような脇用汗取りパッドでは、2つ折りにして衣服の脇の下部分に取り付けた際に、脇用汗取りパッドを2つ折りにした折り線が直線であるにもかかわらず、袖ぐり形状は曲線であるため、脇用汗取りパッドが袖ぐり形状に沿ってフィットせず、袖ぐりの曲線から浮いた状態で取り付けられることから、腕を動かしたときに脇の下に脇用汗取りパッドの折り曲げ部分が当たって、違和感を感じる場合があった。また、厚みがある吸収体が2つ折りにした部分でよれたり皺になったりするため、装着時にゴワ付き感などを感じる場合があった。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、衣服の袖ぐり形状にフィットし、違和感なく装着できるようにした脇用汗取りパッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、吸収体と前記吸収体の肌側に配置された透液性の表面シートと前記吸収体の衣服側に配置された不透液性の裏面シートとを備え、衣服の脇の下部分の内側に取り付けて使用する脇用汗取りパッドであって、
前記脇用汗取りパッドは、屈曲線で前記裏面シート側に折り曲げられ、その両側がそれぞれ、装着時に衣服の胴部側に配置される胴側領域及び衣服の袖部側に配置される袖側領域を形成し、
前記屈曲線を中心に前記胴側領域及び袖側領域に跨がって、前記吸収体を厚み方向に貫通させた吸収体開口部が形成され、前記脇用汗取りパッドを前記屈曲線で折り曲げた状態で、前記吸収体開口部の外形線が衣服の袖ぐり形状に沿うように形成されるとともに、前記吸収体開口部の外周部に沿って対向する前記裏面シート同士を接合した接合部が形成され、
前記吸収体開口部は、少なくとも前記屈曲線に沿って所定の幅で形成された区画用吸収体によって区画されることにより、前記区画用吸収体の両側にそれぞれ離隔して配置された不連続的なパターンで形成されていることを特徴とする脇用汗取りパッドが提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明では、前記屈曲線を中心に前記胴側領域及び袖側領域に跨がって、前記吸収体を厚み方向に貫通させた吸収体開口部が連続的又は不連続的に形成され、前記脇用汗取りパッドを前記屈曲線で折り曲げた状態で、前記吸収体開口部の外形線が衣服の袖ぐり形状に沿うように形成されているため、腕を動かしたときなどに吸収体の折り曲げ部分による違和感がなく、装着時のゴワ付き感なども生じなくなる。
【0010】
また、前記脇用汗取りパッドを前記屈曲線で折り曲げた状態で、前記吸収体開口部の外周部に沿って対向する前記裏面シート同士を接合した接合部が形成されているため、前記吸収体開口部の外形線が衣服の袖ぐり形状に沿った状態が維持できるとともに、吸収体開口部から汗が漏れることなく、しっかりと汗を吸収することができるようになる。
【0011】
前記吸収体開口部は、少なくとも前記屈曲線に沿って所定の幅で形成された区画用吸収体によって区画されることにより、前記区画用吸収体の両側にそれぞれ離隔して配置された不連続的なパターンで形成されている。これによって、前記区画用吸収体が、腕の動きなどに追従して脇の下にフィットするため、装着時に違和感を感じにくく、脇の汗をより確実に吸収できるようになる。
【0012】
請求項2に係る本発明として、前記吸収体開口部と厚み方向に重なる位置に、前記裏面シートを厚み方向に貫通させた裏面シート開口部が設けられ、前記吸収体開口部と前記裏面シート開口部とがほぼ同じ形状で形成されている請求項1記載の脇用汗取りパッドが提供される。
【0013】
上記請求項2記載の発明は、前記吸収体開口部と厚み方向に重なる位置に、前記裏面シートを厚み方向に貫通させた裏面シート開口部を設けた第1の実施形態例であって、前記吸収体開口部と前記裏面シート開口部とをほぼ同じ形状で形成したものである。これによって、装着時に脇の下の折り曲げ部分の端部まで吸収体が介在するため、汗を確実に吸収することができるようになる。
【0014】
請求項3に係る本発明として、前記吸収体開口部と厚み方向に重なる位置に、前記裏面シートを厚み方向に貫通させた裏面シート開口部が設けられ、前記裏面シート開口部が前記吸収体開口部より小さな面積で形成されている請求項1記載の脇用汗取りパッドが提供される。
【0015】
上記請求項3記載の発明は、前記吸収体開口部と厚み方向に重なる位置に、前記裏面シートを厚み方向に貫通させた裏面シート開口部を設けた第2の実施形態例であって、前記裏面シート開口部を前記吸収体開口部より小さな面積で形成したものである。これによって、脇の下の折り曲げ部分において両側の吸収体の間に裏面シートが突出して設けられるため(
図7参照。)、折り曲げ部分から汗が漏れるのが確実に防止できる。
【0016】
請求項4に係る本発明として、前記裏面シートには開口部が形成されていない請求項1記載の脇用汗取りパッドが提供される。
【0017】
上記請求項4記載の発明は、前記裏面シートに開口部を形成しない形態例である。この場合には、脇の下の折り曲げ部分から汗が漏れるのがより確実に防止できる。この場合においても、吸収体開口部の外形線が衣服の袖ぐり形状に沿った状態が維持できるように、前記屈曲線で折り曲げた状態で前記吸収体開口部の外周部に沿って対向する裏面シート同士を接合するようにする。
【0018】
請求項5に係る本発明として、前記表面シートには開口部が形成されていない請求項1~4いずれかに記載の脇用汗取りパッドが提供される。
【0019】
上記請求項5記載の発明では、前記表面シートに開口部を形成しないことにより、前記脇用汗取りパッドを前記屈曲線で折り曲げた状態で、表面シートが吸収体開口部の外形線から吸収体開口部内に延在して配置されるようになる。これによって、吸収体開口部内に延在した表面シート部分が脇の下と柔らかく接触し装着感が良好になるとともに、この肌面に接触した表面シートが脇の汗を素早く吸収することによって、脇の汗が肌を伝って流れるのが防止できるようになる。
【0020】
請求項6に係る本発明として、前記吸収体開口部の外形線のうち、前記胴側領域及び袖側領域に対向する部分は、外側に膨出する曲線形状で形成されている請求項1~5いずれかに記載の脇用汗取りパッドが提供される。
【0021】
上記請求項6記載の発明では、前記吸収体開口部の外形線が確実に衣服の袖ぐり形状に沿って形成されるようにするため、前記吸収体開口部の外形線のうち、前記胴側領域及び袖側領域に対向する部分を、外側に膨出する曲線形状で形成している。
【発明の効果】
【0022】
以上詳説のとおり本発明によれば、衣服の袖ぐり形状にフィットし、違和感なく装着できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る脇用汗取りパッド1の一部破断展開図である。
【
図3】屈曲線5で折り曲げた状態を示す、脇用汗取りパッド1の正面図である。
【
図4】屈曲線5で折り曲げた状態を示す、脇用汗取りパッド1の斜視図である。
【
図5】屈曲線5で折り曲げた状態の縦断面図(
図4のV-V線矢視図)である。
【
図6】変形例(その1)に係る脇用汗取りパッド1の裏面図である。
【
図7】変形例(その1)に係る脇用汗取りパッド1を屈曲線5で折り曲げた状態の縦断面図である。
【
図8】変形例(その2)に係る脇用汗取りパッド1の裏面図である。
【
図9】変形例(その2)に係る脇用汗取りパッド1を屈曲線5で折り曲げた状態の縦断面図である。
【
図10】変形例(その3)に係る脇用汗取りパッド1の裏面図である。
【
図11】変形例(その4)に係る脇用汗取りパッド1の裏面図である。
【
図12】変形例(その5)に係る脇用汗取りパッド1の裏面図である。
【
図13】変形例(その5)に係る脇用汗取りパッド1を屈曲線5で折り曲げた状態の縦断面図である。
【
図14】変形例(その6)に係る脇用汗取りパッド1の裏面図である。
【
図15】変形例(その7)に係る脇用汗取りパッド1の裏面図である。
【
図16】変形例(その8)に係る脇用汗取りパッド1の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0025】
〔脇用汗取りパッド1の基本構成〕
本発明に係る脇用汗取りパッド1は、
図1及び
図2に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性の裏面シート2と、汗を速やかに透過させる透液性の表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された汗を吸収する吸収体4とを備えている。前記裏面シート2、表面シート3及び吸収体4は、これらの外形がほぼ同等の大きさを有し、各層間を接着剤などの接合手段によって接合した構造及び外周部などをヒートシールや超音波シール等の接合手段によって接合した構造のいずれか又は両方としてもよいし、前記吸収体4の周囲において前記吸収体4より外側に延出させた裏面シート2と表面シート3との外縁部を、接着剤やヒートシール、超音波シールなどの接合手段によって接合した構造としてもよい。
【0026】
前記脇用汗取りパッド1は、衣服の脇の下部分の内側に取り付けて使用され、前記表面シート3を肌側、前記裏面シート2を衣服側に向けて装着される。
【0027】
前記脇用汗取りパッド1は、所定の屈曲線5で折り曲げた状態で衣服に取り付けられる。衣服への取り付けに際して、前記屈曲線5は、衣服の胴部と袖部との境界部に設けられた袖ぐり(アームホール)周縁の縫合線にほぼ沿うようにして配置され、前記屈曲線5の両側はそれぞれ、衣服の胴部側に配置される胴側領域6及び衣服の袖部側に配置される袖側領域7を形成する。前記胴側領域6は、前記袖側領域7より大きな面積で形成され、より多くの汗が吸収できるようになっている。
図1では、屈曲線5の上側に袖側領域7が形成され、屈曲線5の下側に胴側領域6が形成されている。前記屈曲線5には、該屈曲線5での折り曲げを容易にするため、屈曲線5に沿って線状のエンボスを施してもよいし、本例のように左右の外形線にそれぞれくびれ部8が形成される場合には特に何も加工を施さなくてもよい。
【0028】
前記胴側領域6及び袖側領域7にはそれぞれ、前記裏面シート2の外面側(衣服当接面側)に、衣服に対する固定のため適宜の塗布パターンによってズレ止め粘着剤層9、10が設けられ、これらズレ止め粘着剤層9、10がそれぞれ剥離シート(図示せず)で覆われている。前記ズレ止め粘着剤層9、10はそれぞれ、前記屈曲線5と直交する方向の外方側端部から所定の内側位置にかけてほぼ全幅に亘って形成されている。前記ズレ止め粘着剤層9、10が形成される前記屈曲線5と直交する方向の範囲としては、好ましくは胴側領域6及び袖側領域7の長さに対して半分以上の範囲、より好ましくは前記胴側領域6及び袖側領域7の長さに対して外方側端部から2/3以上の範囲とするのがよい。また、前記屈曲線5及びその両側の所定の範囲には前記ズレ止め粘着剤層9、10が設けられない領域が脇用汗取りパッド1の全幅に亘って存在している。
【0029】
前記脇用汗取りパッド1の平面形状は、
図1に示されるように、左右の外形線の中間部に左右一対のくびれ部8が形成されている。前記くびれ部8は、前記胴側領域6及び袖側領域7の境界部分において内側に凹む滑らかな凹状の曲線によって形成されている。これにより、前記脇用汗取りパッド1は、略ひょうたん形の平面形状を成している。左右のくびれ部8、8における凹状の曲線の頂部同士を結ぶ位置に、前記屈曲線5が設けられている。前記くびれ部8、8を設けることにより、脇用汗取りパッド1が、このくびれ部8の最もくびれた部分を基点として折り曲がりやすくなる。
【0030】
少なくとも前記胴側領域6の外形線は、
図1に示されるように、円弧又は楕円弧で形成するのが好ましい。つまり、少なくとも胴側領域6において外形線に凹凸が形成されず、外側に膨出する単一の滑らかな曲線で形成するのが好ましい。これにより、肌との擦れが少なくなり、装着感に優れるようになる。なお、図示例のように、袖側領域7の外形線についても、円弧又は楕円弧で形成するのが好ましい。
【0031】
以下、さらに前記脇用汗取りパッド1の構造について詳述すると、
前記裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。非透湿性のものでもよいが、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが好ましい。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。特に好ましいものはポリエチレンフィルムであり、目立ちにくくするためベージュ色又はこれと同系の色とするのがよい。
【0032】
次いで、前記表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。目付けとしては、10~50g/m2、好ましくは15~35g/m2とするのがよい。
【0033】
前記裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、汗を吸収保持する性質を有するものであれば公知のものを使用できる。たとえば、パルプ、高吸水性樹脂などを含むことができる。また、パルプ中に化学繊維を混入させてもよい。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。前記吸収体4としては、積繊体でもよいが、嵩を小さくできるエアレイド吸収体を用いるのが好ましい。前記エアレイド吸収体としては、パルプのみからなる不織布又はパルプとポリマーとからなる不織布でも良いし、その他バインダが含まれていても良い。また、2層の不織布層間に高吸水性樹脂を配置してなるポリマーシートを用いてもよい。吸収体4の目付けとしては、50~150g/m2とするのがよい。前記吸収体4は、形状保持、および汗を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した汗の逆戻りを防止するためにクレープ紙又は不織布などからなる被包シートによって囲繞してもよい。
〔袖ぐり形状に対する適合構造〕
次に、前記脇用汗取りパッド1を袖ぐり形状に適合させやすくするための構造について説明する。
【0034】
前記脇用汗取りパッド1では、前記屈曲線5を中心に胴側領域6及び袖側領域7に跨がって、前記吸収体4を厚み方向に貫通させた吸収体開口部12が連続的又は不連続的に形成されている。
【0035】
前記吸収体開口部12は、
図1に示されるように、前記脇用汗取りパッド1の平面視で、前記吸収体4の前記屈曲線5が延びる方向及びこれと直交する方向のそれぞれ中間部に形成され、前記吸収体開口部12の周囲には全周に亘って吸収体4が存在している。前記吸収体開口部12の外形線と吸収体4の外縁との離隔距離は、前記屈曲線5が延びる方向に対して、5mm以上、好ましくは8~30mmとするのがよい。また、前記屈曲線5と直交する方向に対して、前記吸収体開口部12は、前記ズレ止め粘着剤層9、10と重ならない範囲であって、前記ズレ止め粘着剤層9、10の間に位置している。
【0036】
前記吸収体開口部12が連続的に形成されるとは、
図1、
図6、
図8、
図10及び
図11に示されるように、前記吸収体開口部12が前記屈曲線5を跨いで胴側領域6及び袖側領域7に連続して設けられた1つの開口部からなることを意味する。また、前記吸収体開口部12が不連続的に形成されるとは、詳細には後段で説明するが、
図12、
図14、
図15及び
図16に示されるように、前記吸収体開口部12が、少なくとも前記屈曲線5に沿って所定の幅で形成された区画用吸収体16によって区画されることにより、前記区画用吸収体16の両側にそれぞれ離隔して配置された複数の不連続的な開口部からなることを意味する。
【0037】
図3及び
図4に示されるように、前記脇用汗取りパッド1を前記屈曲線5で折り曲げた状態で、前記吸収体開口部12の外形線が衣服の袖ぐり形状に沿うように形成されている。すなわち、脇用汗取りパッド1を前記屈曲線5で裏面シート2側に折り曲げた状態で、この折り曲げ部分に、前記吸収体開口部12を略半分にした形状の吸収体4の凹部13が形成され、この吸収体凹部13の外形線が袖ぐり形状に沿うように形成されている。袖ぐり形状に沿うように形成されるとは、一般に袖ぐり形状が円形または楕円形で形成されることから、前記吸収体凹部13の少なくとも一部が円形又は楕円形によって形成されることである。
【0038】
また、本脇用汗取りパッド1では、
図3~
図5に示されるように、前記脇用汗取りパッド1を前記屈曲線5で折り曲げた状態で、前記吸収体開口部12の外周部に沿って対向する裏面シート2、2同士を剥離不能に接合した接着剤やヒートシール、超音波シールなどからなる接合部14が形成されている。前記接合部14は、吸収体開口部12の外周部に沿って、吸収体開口部12のほぼ全周に亘って形成することにより、前記脇用汗取りパッド1を屈曲線5で折り曲げた状態で、略半分に折り返された前記接合部14、14同士が接合されるようにするのが好ましい。本脇用汗取りパッド1は、製品状態において、
図3及び
図4に示されるように、前記屈曲線5で裏面シート2側に折り畳まれ、前記接合部14で裏面シート2、2同士が接合された状態で包装される。
【0039】
以上の構成からなる脇用汗取りパッド1では、前記屈曲線5で折り曲げた状態で、前記吸収体開口部12の外形線が衣服の袖ぐり形状に沿うように形成されているため、脇用汗取りパッド1を衣服の脇の下部分の内側に取り付けた際、吸収体開口部12の外形線が衣服の袖ぐり形状に沿ってフィットし、腕を動かしたときなどに吸収体の折り曲げ部分による違和感がなくなり、装着時のゴワ付き感なども生じなくなる。
【0040】
また、本脇用汗取りパッド1では、前記屈曲線5で折り曲げた状態で、前記吸収体開口部12の外周部に沿って対向する裏面シート2、2同士を接合した接合部14が形成されているため、前記吸収体開口部12の外形線が衣服の袖ぐり形状に沿った状態が維持できるとともに、前記吸収体開口部12に合わせた裏面シート2の開口部を設けた場合でも、これらの吸収体開口部12や裏面シート2の開口部から汗が漏れることがなく、しっかりと汗を吸収できるようになる。
【0041】
更に詳細に前記脇用汗取りパッド1について説明すると、前記裏面シート2には、前記吸収体開口部12に合わせて、該裏面シート2を厚み方向に貫通させた開口部を設けてもよいし、設けなくてもよい。
図1及び
図2に示される形態例では、前記吸収体開口部12と厚み方向に重なる位置に、裏面シート開口部15が設けられ、この裏面シート開口部15が、前記吸収体開口部12とほぼ同じ形状で形成されている。すなわち、
図2に示されるように、吸収体開口部12の外形線と裏面シート開口部15の外形線とが厚み方向にほぼ一致しており、吸収体4及び裏面シート2のいずれか一方が開口部に延在しない状態で配置されている。これによって、前記脇用汗取りパッド1を屈曲線5で折り曲げた状態で、
図4及び
図5に示されるように、折り曲げ部分の端部まで吸収体4が介在するため、汗を確実に吸収することができるようになる。
【0042】
また、前記吸収体開口部12と厚み方向に重なる位置に、裏面シート2を厚み方向に貫通させた裏面シート開口部15を設けた形態において、
図6及び
図7に示されるように、前記裏面シート開口部15が吸収体開口部12より小さな面積で形成されるようにしてもよい。すなわち、裏面シート2が吸収体開口部12の内側に延在するようにしてもよい。これによって、脇用汗取りパッド1を前記屈曲線5で折り曲げた状態で、
図7に示されるように、吸収体開口部12に延在した裏面シート2、2が、両側の吸収体4、4の間から突出するため、この折り曲げ部分からの汗の漏れがより確実に防止できるようになる。このとき、前記接合部14は、図示例のように、吸収体4より吸収体開口部12の内側に延在した裏面シート2部分に設けてもよいし、吸収体4と重なる部分に設けてもよい。汗を吸収体4に確実に吸収できるようにし、両側の吸収体4、4間からの汗の漏れをより確実に防止するという点では前者の方が好ましく、袖ぐり形状に沿って形成された吸収体開口部12の外形線より肌側に接合部14を延在させないことにより、装着感の低下を抑えるという点では後者の方が好ましい。
【0043】
一方、
図8及び
図9に示されるように、前記裏面シート2には開口部を形成しなくてもよい。ここでいう開口部とは、衣服の袖ぐり形状に沿うように形成されたある程度の大きさを有する開口部のことであり、透湿性確保のために設けられた微細な多数の開孔などとは異なるものである。吸収体開口部12からの汗の漏れを防止するという観点からは裏面シート2に開口を形成しないのが好ましいが、裏面シート2に開口を形成しない場合には、
図9に示されるように、前記屈曲線5で折り曲げた状態で、袖ぐり形状に沿って形成された吸収体開口部12の外形線より肌側に、折り返された裏面シート2部分が介在することとなるため、脇の下に接触するシートの柔軟性が若干損なわれ、装着感がわずかながら低下するおそれがある。前記裏面シート2に開口を設けない場合でも、吸収体開口部12の外形線が衣服の袖ぐり形状に沿った状態が維持できるように、脇用汗取りパッド1を前記屈曲線5で折り曲げた状態で、前記吸収体開口部12の外周部に沿って対向する裏面シート2、2同士を接合するようにしている。
【0044】
本脇用汗取りパッド1では、前記表面シート3には開口部を形成しないのが好ましい。ここでいう開口部とは、衣服の袖ぐり形状に沿うように形成されたある程度の大きさを有する開口部のことであり、透液性の向上などのために設けられた微細な多数の開孔などとは異なるものである。前記表面シート3に開口部を形成しないことにより、前記脇用汗取りパッド1を前記屈曲線5で折り曲げた際に、前記屈曲線5で折り返された表面シート3が、吸収体開口部12において吸収体4の端縁から吸収体開口部12内に延在して配置されるようになる。すなわち、吸収体開口部12が胴側領域6と袖側領域7とに跨がる連続的な1つの開口からなる場合、脇用汗取りパッド1を屈曲線5で折り曲げた際の吸収体凹部13(
図4参照。)には吸収体が介在せず、表面シート3のみが配置されるようになる。これによって、吸収体開口部12内に延在した表面シート3が着用者の脇の下と柔らかく接触し、装着感を向上させるとともに、この脇の下に接触した表面シート3部分が脇の汗を素早く吸収することによって、脇の汗が肌を伝って流れるのが防止できる。また、前記吸収体開口部12内に延在した表面シート3部分は、いずれの部材にも固定されないため、身体の動きに追従して容易に変形でき、装着感がより一層向上するとともに、脇の下に対する追従性が高くなる。なお、上述の前記裏面シート2に開口部が形成されない形態例(
図8及び
図9)において、前記吸収体開口部12で表面シート3と裏面シート2とを接合してもよいし、接合しなくてもよい。これらを接合する場合は、裏面シート2及び表面シート3にそれぞれ前記吸収体開口部12に対応する接着剤の非塗布領域を設けなくてもよい分、製造が簡略化できる。一方、これらを接合しない場合は、前記屈曲線5で折り曲げた状態で表面シート3と裏面シート2がそれぞれ独立的に変形できるため、脇の下に接触したときの柔軟性を高めることができる。
【0045】
前記吸収体開口部12の平面形状は、屈曲線5に沿う方向に長い横長の形状であるのが好ましい。具体的には、楕円形やラグビーボール形状、レモン形状、人の瞳形状などで形成するのがよい。これにより、
図3及び
図4に示されるように、脇用汗取りパッド1を前記屈曲線5で折り曲げた状態で、この折り曲げ部分に、前記吸収体開口部12を長軸方向の中心線で略半分にした曲線形状の凹部13が形成されるようになる。また、前記吸収体開口部12の平面形状は、
図10及び
図11に示されるように、前記吸収体開口部12の外形線のうち、少なくとも前記胴側領域6及び袖側領域7に対向する部分12a、12bがそれぞれ、外側に膨出する曲線形状で形成されていれば、両側部12c、12cは、直線形状(
図10)や内側に膨出する凸形状(
図11)などとしてもよい。少なくとも胴側領域6及び袖側領域7に対向する部分12a、12bがそれぞれ袖ぐり形状に沿った曲線形状で形成されていれば装着感が損なわれないため、両側部12cは任意の形状で形成することができる。また、両側部12cを直線形状などとすることにより、吸収体開口部12を楕円形状などの両側部が外側に膨出する形状とした場合に比べ、吸収体開口部12の両側部分の吸収体幅を大きくとることができ、体液の吸収性能が向上できる。
【0046】
上記形態例では、前記吸収体開口部12が、前記屈曲線5を中心に胴側領域6及び袖側領域7に跨がる連続的なパターンで形成されていたが、変形例として、
図12~
図16に示されるように、前記吸収体開口部12が、少なくとも前記屈曲線5に沿って所定の幅で形成された区画用吸収体16によって区画されることにより、前記区画用吸収体16の両側にそれぞれ離隔して配置された不連続的なパターンで形成してもよい。前記区画用吸収体16は、周囲の吸収体4から連続して延在する吸収体部分であり、連続する1枚のシート状の吸収体に対して前記吸収体開口部12…に対応する部分に開口処理を施すことによって形成されるものであり、素材や目付等は周囲の吸収体4と同様に形成されている。前記区画用吸収体16を設けることにより、
図13に示されるように、脇用汗取りパッド1を屈曲線5で折り曲げた状態で、少なくとも両端が固定された前記区画用吸収体16が折り曲げ部分の頂部に折り曲げ部分に沿って配置されるため、前記区画用吸収体16が表面シート3とともに身体の動きに合わせて自由に動くことができ、装着時の違和感を生じることなく、前記区画用吸収体16によって効果的に脇の汗を吸収することができるようになる。
【0047】
図12に示されるように、前記区画用吸収体16の幅Bとしては、前記吸収体開口部12の開口処理を施す際に、区画用吸収体16が破断しない寸法であれば特に限定しないが、好ましくは前記吸収体開口部12、12の全体の大きさAに対して、1/4以上、1/2以下とするのがよい(A/4≦B≦A/2)。
【0048】
前記区画用吸収体16は、いずれの部材にも接合しないようにしてもよいが、
図13に示されるように、透液性表面シート3に対して接着剤などによって接合するのが好ましく、これによって脇用汗取りパッド1を屈曲線5で折り曲げた状態で、区画用吸収体16が皺やヨレを生じることなく、透液性表面シート3とともに腕の動きに合わせて変形しやすくなる。
【0049】
図12に示される形態例では、前記区画用吸収体16が全長に亘ってほぼ等幅に形成され、その両側にそれぞれ略半楕円形の吸収体開口部12、12が配置されるようになっている。前記区画用吸収体16を全長に亘ってほぼ等幅に形成することにより、装着時に脇の下に配置したときの違和感が軽減できるようになる。
【0050】
図14に示される形態例では、前記区画用吸収体16が中央部で幅広に形成されている。この幅広の部分は、吸収体開口部12の外形線に合わせたほぼ同心楕円形状に形成するのが好ましい。これによって、前記区画用吸収体16の両側に配置された吸収体開口部12が、ほぼ等幅の略半リング状に形成されるようになる。前記区画用吸収体16の中央部を幅広に形成することにより、両端部の幅狭部分によって変形の自由度が向上するとともに、装着時に脇の下に配置したときに幅広の区画用吸収体16部分によって脇の汗をしっかりと吸収できるようになる。
【0051】
また、
図15及び
図16に示されるように、前記区画用吸収体16の平面形状として、屈曲線5に沿って延びる部分の中央部から前記屈曲線5と直交する方向に延びる部分を備えた略十字形に形成することにより、前記吸収体開口部12、12…が4つに区画されるようにしてもよい。これにより、区画用吸収体16の変形の自由度を抑えつつ、略十字形に形成された区画用吸収体16によって脇の汗の吸収効率を高めることができるようになる。
【0052】
次に、前記脇用汗取りパッド1の製造方法について説明する。
図1及び
図2に示されるように、前記吸収体開口部12と裏面シート開口部15とがほぼ同じ形状で形成された脇用汗取りパッド1では、接着剤などによって接合した前記吸収体4及び裏面シート2の積層体をダイカッターなどの切断装置に導入し、前記吸収体開口部12及び裏面シート開口部15の外形線に沿って前記吸収体4及び裏面シート2を一体的に切断する。また、
図6及び
図7に示されるように、吸収体開口部12と裏面シート開口部15とが異なる大きさで形成された脇用汗取りパッド1では、吸収体4及び裏面シート2をそれぞれダイカッターなどの切断装置に導入し、吸収体開口部12又は裏面シート開口部15をそれぞれ形成した後、これらの開口部12、15がそれぞれ形成された吸収体4及び裏面シート2を接着剤などによって接合する。更に、
図8及び
図9に示されるように、裏面シート2に開口部が設けられない場合、吸収体4をダイカッターなどの切断装置に導入し、吸収体開口部12を形成した後、裏面シート2を接着剤などによって接合する。
【0053】
このようにして形成した吸収体4と裏面シート2の積層体に、表面シート3を積層し、これら表面シート3、吸収体4及び裏面シート2を一体的に外形線に沿ってダイカッターなどの切断装置で切断する。
【0054】
個々の製品形状に切断された前記裏面シート2の外面に、前記接合部14及びズレ止め粘着剤層9、10に対応する粘着剤をそれぞれ塗布し、前記ズレ止め粘着剤層9、10をそれぞれ剥離シートで覆う。その後、前記屈曲線5で折り曲げ、前記接合部14によって前記吸収体開口部12の外周部に沿った部分の前記裏面シート2、2同士を剥離不能に接合する。
【0055】
以上のようにして製造された脇用汗取りパッド1は、前記屈曲線5で折り曲げた状態で1枚ずつ又は複数枚まとめて包装される。
【0056】
次に、前記脇用汗取りパッド1を衣服に装着する手順について説明すると、前記ズレ止め粘着剤層9、10を覆う剥離シートを剥がして、前記屈曲線5を衣服の袖ぐり形状に合わせつつ、前記ズレ止め粘着剤層9、10をそれぞれ衣服の胴部側及び袖部側に貼着する。
【符号の説明】
【0057】
1…脇用汗取りパッド、2…裏面シート、3…表面シート、4…吸収体、5…屈曲線、6…胴側領域、7…袖側領域、8…くびれ部、9・10…ズレ止め粘着剤層、12…吸収体開口部、13…吸収体凹部、14…接合部、15…裏面シート開口部、16…区画用吸収体