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  • 特許-石英ガラス板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】石英ガラス板
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/10 20060101AFI20220620BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20220620BHJP
   G03F 1/64 20120101ALI20220620BHJP
【FI】
C03C27/10 B
H01L21/30 572A
G03F1/64
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018080176
(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公開番号】P2019189470
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】森 竜也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 敦之
(72)【発明者】
【氏名】横澤 裕也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宜正
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-143797(JP,A)
【文献】特開2002-060227(JP,A)
【文献】特表2008-511527(JP,A)
【文献】特開2012-144398(JP,A)
【文献】特開2003-201153(JP,A)
【文献】特開2005-330113(JP,A)
【文献】特開2004-004998(JP,A)
【文献】特開2002-055439(JP,A)
【文献】EXCELICA High-purity synthetic spherical silica,日本,TOKUYAMA Corporation,2011年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 20/00
C03C 27/00-29/00
H01L 21/027
H01L 21/30
H01L 21/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラス板本体と、
該石英ガラス板本体と接着層を介して接着された石英ガラス部材と
を有する石英ガラス板であって、
前記接着層はシリカからなり、
前記接着層に含まれるアルカリ金属イオンであるLi、Na、Kイオンとアルカリ土類金属イオンであるCaイオンの濃度の合計が10質量ppm以下であり、
前記接着層の密度が、1.0g/cm 以上2.0g/cm 以下であることを特徴とする石英ガラス板。
【請求項2】
前記石英ガラス部材と前記接着層を介して接着された前記石英ガラス板本体は、照射総エネルギーが0kJ/cmを超えて20000kJ/cm以下の範囲で紫外線を照射したときの複屈折が100nm/cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の石英ガラス板。
【請求項3】
前記接着層の厚さが、100μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の石英ガラス板。
【請求項4】
前記接着層の接着強度が、照射総エネルギーが0kJ/cmを超えて20000kJ/cm以下の範囲で紫外線を照射したとき、10kgf/cm以上であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の石英ガラス板。
【請求項5】
前記石英ガラス板は、紫外線照射窓用のものであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の石英ガラス板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石英ガラス板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスのフォトリソグラフィ工程では、フォトレジストを塗布したシリコンウェハを露光することでパターン形成を行う。この際に用いるマスクに傷などがあると、露光時にパターンに欠陥ができてしまうため、これを防ぐ目的で、マスクにペリクルを装着することが一般的である。ペリクルにおいて、ペリクル板は、枠状のフレームに接着剤で固定された形で利用される。近年、フォトリソグラフィも微細化が進み、より短い波長でエネルギーが大きい紫外線が利用されるようになり、フレームや接着剤に関しても、高い耐熱性、耐紫外線性を持つ材料が必要になってきている。さらに、ペリクルをマスクに装着させて露光する際、露光する光の光路長が変わるとパターンの位置ずれが起こってしまうため、ペリクル板に接着させるフレームの面精度も厳しいものが要求される。例えば、特許文献1では、高い耐熱性、耐紫外線性を持つ石英ガラスをペリクル板とフレームに利用する方法が報告されている。しかし、ペリクル板とフレームを接着する際、紫外線硬化樹脂を接着剤として利用しているため、短波長の紫外線によって接着強度が低下し、剥がれなどが起こる。さらに、エネルギーが大きい紫外線が照射されると、紫外線硬化樹脂は熱膨張し、剥がれや変形が起こるため、フレームの精度も悪くなる。紫外線に耐性があり、精度良くフレームを接着できる方法が求められている。
【0003】
深紫外線光源を利用した板洗浄用の紫外線照射装置が開発されている。近年、パッケージ基板、フラットパネル、半導体チップ等の微細化が進み、微細部の洗浄も可能な洗浄力を持つ高出力紫外線照射用装置の開発が進められている。コストダウンの観点からバッチあたりの処理数を多くするため、板の大型化も進み、それに伴って紫外線照射用装置も大型化されてきている。
【0004】
紫外線照射用装置内には、深紫外線を透過することができる石英ガラスが窓板として利用される。高度な洗浄能力を持ち、大型な板にも対応できる紫外線照射装置が要求されるにつれて、それに利用される石英ガラス板も、例えば大型で部分的に段差を有するなど、複雑な形状が要求されるようになってきている。例えば特許文献2では、半導体や液晶等の製造工程でのレジスト除去や、プリント基板の穴あけ加工後に残る有機樹脂の除去を目的とした紫外線処理装置に関する技術が提案されている。この装置内に、段差を有する大型の石英ガラス板が利用されており、段差はHFエッチング、サンドブラスト、研削加工などによって形成される。しかし、この方法では段差の高さの制御が難しく、紫外線処理の際に被処理物と紫外線光源との間のギャップにばらつきが生じ、均一に処理を行うことが難しい。紫外線に耐性があり、精度良く段差を形成できる方法が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-70191号公報
【文献】特開2014-209548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みなされたもので、均一な厚さの段差を形成することができ、紫外線、又は紫外線を含む光の照射による破損が起こりにくい石英ガラス板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、石英ガラス板本体と、該石英ガラス板本体と接着層を介して接着された石英ガラス部材とを有する石英ガラス板であって、前記接着層はシリカからなり、前記接着層に含まれるアルカリ金属イオンであるLi、Na、Kイオンとアルカリ土類金属イオンであるCaイオンの濃度の合計が10質量ppm以下であることを特徴とする石英ガラス板を提供する。
【0008】
本発明の石英ガラス板では、接着層と石英ガラス部材を有することにより均一な厚さの段差を形成することができるとともに、接着層に含まれるアルカリ金属イオン(Li、Na、Kイオン)とアルカリ土類金属イオン(Caイオン)の濃度の合計が10質量ppm以下であることにより、紫外線を含む光の照射による破壊が起こりにくい。
【0009】
このとき、前記石英ガラス部材と前記接着層を介して接着された前記石英ガラス板本体は、照射総エネルギーが0kJ/cmを超えて20000kJ/cm以下の範囲で紫外線を照射したときの複屈折が100nm/cm以下であることが好ましい。
【0010】
石英ガラス板を構成する石英ガラス板本体がこのような複屈折を有することにより、被照射物に十分に均一に紫外線を照射することができる。
【0011】
また、前記接着層の密度が、1.0g/cm以上2.0g/cm以下であることが好ましい。
【0012】
このような範囲の密度を有する接着層であれば、応力が緩和されるとともに、歪による破壊が起こりにくくなる。
【0013】
また、前記接着層の厚さが、100μm以下であることが好ましい。また、前記接着層の接着強度が、照射総エネルギーが0kJ/cmを超えて20000kJ/cm以下の範囲で紫外線を照射したとき、10kgf/cm以上であることが好ましい。
【0014】
このように厚さ100μm以下の接着層であれば、接着強度が高くなる。また、接着層の接着強度が、10kgf/cm以上であれば、石英ガラス板の歪や熱による接着層の破壊が起こりにくくなる。
【0015】
また、前記石英ガラス板は、紫外線照射窓用のものとすることができる。
【0016】
このような構造を持つ石英ガラス板は、上述した物品に適用でき、特に具体的には、紫外線照射窓の用途に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明であれば、均一な厚さの段差を形成することができ、紫外線を含む光の照射による破損が起こりにくい石英ガラス板を提供することができる。特に、本発明の石英ガラス板は、石英ガラス部材によって形成される段差が均一であり、均一に紫外線を照射できる。また、熱や紫外線によって劣化や破損が起こらない石英ガラス板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る石英ガラス板の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明をより具体的に説明する。図1に、本発明に係る石英ガラス板10の一例を示した。石英ガラス板10は、石英ガラス板本体11と、該石英ガラス板本体11と接着層13を介して接着された石英ガラス部材12とを有する。さらに、接着層13はシリカからなる。また、接着層13に含まれるアルカリ金属イオンであるLi、Na、Kイオンとアルカリ土類金属イオンであるCaイオンの濃度の合計が10質量ppm以下である。
【0020】
このような接着層13を有する本発明の石英ガラス板10は、紫外線照射窓の用途に好適に用いることができる。その他、本発明の石英ガラス板10は、紫外線を照射される用途に好適に使用することができる。ただし、本発明の石英ガラス板10は、紫外線照射窓等の用途に限定されず、様々な用途に適用することができる。また、図1では、石英ガラス板本体11に石英ガラス部材12を接着層13で2箇所接着した例を示しているが、これに限定されず、石英ガラス板本体11に接着する石英ガラス部材12の数は特に限定されない。また、用途に合わせて石英ガラス部材12の形状は様々に設計することができる。例えば、様々な長さを有する棒状とすることができるし、環状や四角形状の枠状部材とすることもできる。以下では、紫外線照射窓の用途を中心に本発明の石英ガラス板10を説明する。
【0021】
図1に示した石英ガラス板10は、石英ガラス板本体11が接着層13を介して石英ガラス部材12を有している。これにより、この石英ガラス部材12に、段差としての機能を持たせることができる。紫外線照射窓の用途では、石英ガラス板10は、このような段差の高さを調整することで、被照射物との間に一定のスペースを設けることができる。石英ガラス部材12は接着層13を介して石英ガラス板本体11上に接合されているので、例えば、高精度に研磨された石英ガラス板本体11上に石英ガラス部材12を接合することで、紫外線を精度良く均一に被照射物に照射できる装置が製造可能である。この場合、石英ガラス板本体11及び石英ガラス部材12はともに緻密体である。
【0022】
本発明に使用される石英ガラス板本体11は、公知の方法である四塩化珪素の火炎加水分解によって得られた合成石英ガラスを好適に用いることができる。このような石英ガラス板本体11は紫外線照射時の透過率低下が少ない。石英ガラス部材12についても、四塩化珪素の火炎加水分解によって得ることができる。ただし、石英ガラス板本体11及び石英ガラス部材12は、その他の製造方法によって製造されたものであってもよい。
【0023】
本発明の石英ガラス板10において接着層13に含まれるアルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンの濃度の合計は、上記のように、10質量ppm以下である。ここでいうアルカリ金属イオンはLi、Na及びKイオンであり、アルカリ土類金属イオンはCaイオンである。これらのイオン濃度の合計が10質量ppmを越えると、接着層13での紫外線吸収が大きくなり熱となるので、熱膨張によって接着層13が破壊されやすくなる。
【0024】
また、本発明の石英ガラス板10において、石英ガラス板本体11は、照射総エネルギーが0kJ/cmを超えて20000kJ/cm以下の範囲で紫外線を照射したときの複屈折が100nm/cm以下であることが好ましい。ここでの紫外線は、波長150nm以上300nm以下の範囲とすることができる。また、石英ガラス板本体11の複屈折は、石英ガラス部材12と接着層13を介して接着された状態で紫外線を照射した後に測定した値である。また、上記複屈折の条件は、複屈折測定装置によって測定可能な石英ガラス板本体11の任意の位置において満たすことが好ましいが、特に石英ガラス部材12が接着層13を介して接着された部分近傍で大きくなる。石英ガラス板本体11の複屈折が100nmよりも小さければ、この部分近傍と、そこから離れた部分で複屈折の差が小さくなり、歪による内部応力は大きくなりにくく、石英ガラス板本体11が破損しにくくなる。また、上記条件では、石英ガラス板本体の内部歪による紫外線の屈折が小さくなり、紫外線の強度分布差が小さくなるので、被照射物に均一に紫外線を照射することができる。
【0025】
上記のように、接着層13はシリカからなる。この接着層13は球状のシリカ粒子で構成されていることが好ましい。すなわち、接着層13は球状のシリカ粒子同士が融着した状態で、融着部以外に微小な空間を有する状態となっていることが好ましい。
【0026】
接着層13は実質的にシリカのみで構成されているため、Si-O-Siの結合エネルギーが大きく、エネルギーが大きい紫外線が照射されても劣化、着色、破損することが無い。さらに、接着層13が高温になったとしてもシリカの熱膨張係数が小さいので、熱膨張によって破損されることは無い。
【0027】
接着層13の密度は1.0g/cm以上2.0g/cm以下であることが好ましい。接着層13付近に紫外線が照射されると、歪により応力がかかるが、接着層13の密度が上記範囲であることで、応力が緩和され、かつ、強度を保つことができる。接着層13の密度が1.0g/cm以上であれば、接着層13の強度が高くなり、破壊されにくくなる。接着層13の密度が2.0g/cm以下であれば、応力が緩和され、歪による破壊が起こりにくくなる。接着層13の密度は、例えば、上記した球状のシリカ粒子の粒径や粒径分布により調節することができる。
【0028】
接着層13の厚さは、100μm以下であることが好ましい。接着層13の厚さが100μm以下であれば、接着強度が高くなり、紫外線による歪や熱によって接着層13が破壊されることが起こりにくくなる。また、照射総エネルギーが0kJ/cmを超えて20000kJ/cm以下の範囲で紫外線を照射したときの接着層13の接着強度が10kgf/cm以上であることが好ましい。接着強度が10kgf/cm(約98.1N/cm)以上であれば、紫外線によって生じる歪による接着層13の破壊や熱による接着層13の破壊が起こりにくくなる。
【0029】
接着層13を有する石英ガラス板10は以下のようにして作製することができる。ただし、この方法に限定されず、石英ガラス板10は種々の方法で製造することができる。
【0030】
まず、接着層13を作製するための原材料の1つとして、アルコキシシランを加水分解させた溶液を準備する。加水分解するアルコキシシランとしては、テトラエトキシシランを好適に用いることができる。また、原材料の1つとして、シリカ粒子を準備する。上記のように、本発明では、作製する接着層13において、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンの濃度の合計を10質量ppm以下とすることが必要であるので、原材料としてLi、Na、K、Caをほとんど含まないものを用いる必要がある。なお、上記のようにアルコキシシランの加水分解溶液を用いる場合、該溶液に微量に含まれるアルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンも考慮する必要があり、溶液を高純度にする必要がある。その他、工程において外部より混入してくる、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンも考慮する必要がある。
【0031】
上記のように準備したアルコキシシランを加水分解させた溶液に上記シリカ粒子を投入し、攪拌することによりシリカスラリーを得る。このシリカスラリーを石英ガラス板本体11に塗布する。石英ガラス板本体11に塗布したシリカスラリーに石英ガラス部材12を載せる。次に、必要に応じて、石英ガラス部材12に荷重をかけ、所定時間静置する。シリカスラリーの塗布量や、荷重の大小により、接着層13の厚さや接着強度を調節することができる。その後、必要な箇所以外にはみ出したシリカスラリーを除去する。その後、室温で乾燥する。また、必要に応じて、焼結を行う。この焼結温度は適宜設定することができるが、例えば、300℃以上1200℃以下とすることができる。この乾燥(及び/又は焼結)により、シリカスラリーを接着層13とすることができる。
【0032】
以上のようにして、図1に示した石英ガラス板本体11と、該石英ガラス板本体11と接着層13を介して接着された石英ガラス部材12とを有する石英ガラス板10を製造することができる。なお、接着層13の形成後、必要に応じて石英ガラス部材12を研削加工することができる。
【実施例
【0033】
以下に、本発明の実施例及び比較例をあげてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
[実施例1-1]
以下の工程を経て、図1に示した石英ガラス板10を紫外線照射窓用石英ガラス板として製造した。
【0035】
まず、テトラエトキシシランを加水分解させた溶液1.5gに、シリカ粒子(平均粒径1.5μm、Li、Na、K、Caの合計濃度が4質量ppm)を10g投入した。その後、攪拌機を用いて1分撹拌し、シリカスラリーを得た。
【0036】
次に、研磨加工した300mm×300mm×厚さ5mmの石英ガラス板本体11(合成石英ガラス板)上に、上記シリカスラリーを塗布した。次に、5mm角×200mmの石英ガラス部材12(石英ガラス帯板)を石英ガラス板本体11の上に乗せ、2gf/mm(約0.2N/mm)の荷重をかけてそのまま1時間静置した。なお、石英ガラス部材12(石英ガラス帯板)は2つ用いて、石英ガラス板本体11上の2箇所に接着した。その後、はみ出したシリカスラリーをはがし、1000℃、10時間の条件で焼結させて段差付き石英ガラス板を得た。次に、この段差付き石英ガラス板の段差を、合成石英ガラス板(石英ガラス板本体11)からの高さが0.5mmになるように研削加工した。このようにして紫外線照射窓用石英ガラス板(図1の石英ガラス板10)を得た。
【0037】
この石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー1000kJ/cmとなるように照射した。
【0038】
[実施例1-2]
基本的に実施例1-1と同様にして、石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得たが、実施例1-1から、原材料のシリカ粒子としてLi、Na、K、Caの合計濃度が6質量ppmのものを使用することに変更した。このように製造した石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー1000kJ/cmとなるように照射した。
【0039】
[実施例1-3]
基本的に実施例1-1と同様にして、石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得たが、実施例1-1から、原材料のシリカ粒子としてLi、Na、K、Caの合計濃度が8質量ppmのものを使用することに変更した。このように製造した石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー1000kJ/cmとなるように照射した。
【0040】
[比較例1-1]
基本的に実施例1-1と同様にして、石英ガラス板(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得たが、実施例1-1から、原材料のシリカ粒子としてLi、Na、K、Caの合計濃度が10質量ppmのものを使用することに変更した。このように製造した石英ガラス板(紫外線照射窓用石英ガラス板)に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー1000kJ/cmとなるように照射した。
【0041】
[比較例1-2]
基本的に実施例1-1と同様にして、石英ガラス板(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得たが、実施例1-1から、原材料のシリカ粒子として天然石英を粉砕して得られた粒子を使用することに変更した。このように製造した石英ガラス板(紫外線照射窓用石英ガラス板)に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー1000kJ/cmとなるように照射した。
【0042】
[実施例2-1]
実施例1-1と同様にして、石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得た。この石英ガラス板10に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー5000kJ/cmとなるように照射した。
【0043】
[実施例2-2]
実施例1-1と同様にして、石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得た。この石英ガラス板10に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー10000kJ/cmとなるように照射した。
【0044】
[実施例2-3]
実施例1-1と同様にして、石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得た。この石英ガラス板10に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー15000kJ/cmとなるように照射した。
【0045】
[実施例2-4]
実施例1-1と同様にして、石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得た。この石英ガラス板10に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー20000kJ/cmとなるように照射した。
【0046】
[実施例2-5]
実施例1-1と同様にして、石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得た。この石英ガラス板10に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー25000kJ/cmとなるように照射した。
【0047】
[実施例2-6]
実施例1-1と同様にして、石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得た。この石英ガラス板10に、波長254nmの紫外光を照射総エネルギー1000kJ/cmとなるように照射した。
【0048】
[比較例2-1]
基本的に実施例1-1と同様にして、石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得たが、実施例1-1から、原材料のシリカ粒子としてLi、Na、K、Caの合計濃度が10質量ppmのものを使用することに変更した。このように製造した石英ガラス板10に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー5000kJ/cmとなるように照射した。
【0049】
[比較例2-2]
比較例2-1と同様にして、石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得た。この石英ガラス板10に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー10000kJ/cmとなるように照射した。
【0050】
[比較例2-3]
比較例2-1と同様にして、石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得た。この石英ガラス板10に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー20000kJ/cmとなるように照射した。
【0051】
[比較例2-4]
基本的に実施例1-1と同様にして、石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得たが、実施例1-1から、シリカスラリーに変わり、市販のセラミックス接着剤を利用することに変更した。このように製造した石英ガラス板10に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー20000kJ/cmとなるように照射した。
【0052】
[実施例3-1]
基本的に実施例1-1と同様にして、石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得たが、実施例1-1から、原材料としてシリカ粒子を5g投入することに変更した。このように製造した石英ガラス板10に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー1000kJ/cmとなるように照射した。
【0053】
[実施例3-2]
基本的に実施例1-1と同様にして、石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得たが、実施例1-1から、原材料としてシリカ粒子を3g投入することに変更した。このように製造した石英ガラス板10に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー1000kJ/cmとなるように照射した。
【0054】
[実施例4-1]
基本的に実施例1-1と同様にして、石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得たが、実施例1-1から、石英ガラス部材12(石英ガラス帯板)にかける荷重を1gf/mm(約0.1N/mm)に変更した。このように製造した石英ガラス板10に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー1000kJ/cmとなるように照射した。
【0055】
[実施例4-2]
基本的に実施例1-1と同様にして、石英ガラス板10(紫外線照射窓用石英ガラス板)を得たが、実施例1-1から、石英ガラス部材12(石英ガラス帯板)にかける荷重を0.5gf/mm(約0.05N/mm)に変更した。このように製造した石英ガラス板10に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー1000kJ/cmとなるように照射した。
【0056】
[比較例3-1]
研磨加工した300mm×300mm×厚さ6mmの合成石英ガラス板を、高さ0.5mm、長さ200mmの段差(段差は2箇所)ができるように研削加工した。段差以外は合成石英ガラス板を5mmの厚さに研削、研磨加工した。このようにして、紫外線照射窓用石英ガラス板を得た。この紫外線照射窓用石英ガラス板に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー1000kJ/cmとなるように照射した。
【0057】
[比較例3-2]
研磨加工した300mm×300mm×厚さ5mmの合成石英ガラス板上にアクリレート系紫外線硬化樹脂を塗布し、5mm角×200mmの石英ガラス帯板をその上に乗せ(2箇所)、そのまま1時間静置した。その後、はみ出した紫外線硬化樹脂をはがし、波長365nmの紫外線を30秒照射させ、段差付き石英ガラス板を得た。段差付き石英ガラス板の段差を、合成石英ガラス板からの高さが0.5mmになるように研削加工し、紫外線照射窓用石英ガラス板を得た。この紫外線照射窓用石英ガラス板に、波長172nmのエキシマランプ光を照射総エネルギー1000kJ/cmとなるように照射した。
【0058】
[測定方法]
・接着層におけるアルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンの合計濃度
各実施例、比較例の接着層を取り出し、ICP-AES(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析)により測定した。
【0059】
・複屈折
複屈折については、複屈折測定装置EXICOR350AT(Hinds社製)を用いて波長632.8nmにおける複屈折を測定した。石英ガラス板本体(比較例3-1では研削加工により段差を形成した以外の箇所)について、測定装置により測定可能な複数の任意の位置で複屈折を測定し、そのうち最大の複屈折を最大複屈折とした。
【0060】
・接着層の密度
接着層の体積と質量(重量)から、接着層の密度を算出した。
【0061】
・接着層の厚さ
石英ガラス部材の接着前に、石英ガラス部材と石英ガラス板本体の厚さをマイクロメーターで測定し、接着後に接着層を含む段差と石英ガラス板本体の合計厚さをマイクロメーターで測定し、前者の値を引き算して接着層の厚さを測定した。
【0062】
・接着強度
次のような接着強度測定用サンプルを作製した。各実施例、比較例と同様の条件で、10mm角×20mmの石英ガラスを2つ接着させ、波長172nmのエキシマランプ光(実施例2-6は波長254nmの紫外光)を照射後、3点曲げ試験で圧子が接着層上になるように接着強度測定用サンプルを破壊させ、破壊する直前の最大強度を接着強度とした。
【0063】
上記実施例と比較例の結果を下記の表1、表2に示す。表中の「一部破損」、「一部剥離」は、石英ガラス部材12の破損、剥離が一部であり実用上の問題はないことを示す。また、「ごく一部が破損」はその程度が特に軽いことを示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
接着層におけるアルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンの濃度合計(質量ppm)が10質量ppm以下である実施例1-1~1-3では、石英ガラスの破損、段差(石英ガラス部材)の剥離、着色は無かった。接着層におけるアルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンの濃度合計(質量ppm)が10質量ppmを超えた比較例1-1、1-2では、段差(石英ガラス部材)の剥離及び接着層の着色が発生した。
【0067】
実施例1-1、2-1~2-5の比較から、照射総エネルギーが0kJ/cmを超えて20000kJ/cm以下の範囲で紫外線を照射したときの石英ガラス板における石英ガラス本体の複屈折は100nm/cm以下であることが好ましいことがわかる。また、紫外線の照射総エネルギー量の指標は紫外線の波長にほぼ依存しないことが実施例1-1と実施例2-6の比較からわかる。
【0068】
実施例2-1~2-5、比較例2-1~2-3から、接着層におけるアルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンの濃度合計が10ppmを超えた石英ガラス板は接着強度が10kgf/cmを下回り、段差剥離が起こることがわかる。
【0069】
実施例2-4と比較例2-4から、石英ガラス板における石英ガラス本体の複屈折は本発明で利用した接着剤のほうが小さくなり、石英ガラス本体の破損が起こらないことがわかる。
【0070】
また、実施例1-1、3-1、3-2の比較から、石英ガラス部材の接着層の密度が1.0g/cm以上であることが、接着強度が高く好ましいことがわかる。
【0071】
また、実施例1-1、4-1、4-2の比較から、接着層の厚さが100μm以下であることが好ましいことがわかる。
【0072】
段差の形成を研削加工で行った比較例3-1では段差高さのばらつきが大きくなった。また、比較例3-2では段差(石英ガラス部材)の剥離及び着色が発生した。
【0073】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0074】
10…石英ガラス板、 11…石英ガラス板本体、 12…石英ガラス部材、
13…接着層。
図1