(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】医用画像診断装置、医用画像処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20220620BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20220620BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
A61B6/03 370B
A61B5/055 382
A61B5/02 350
(21)【出願番号】P 2018097017
(22)【出願日】2018-05-21
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 昂彦
【審査官】宮川 数正
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-224564(JP,A)
【文献】特開2017-012366(JP,A)
【文献】特開平05-309074(JP,A)
【文献】特開昭62-094141(JP,A)
【文献】特開昭52-036883(JP,A)
【文献】特表2004-531343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
A61B 5/055
A61B 5/02-5/03
A61B 5/05-5/0538,5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から心音情報及び心電情報を取得し、前記心音情報
と、当該心音情報を取得したセンサの装着位置と、前記心電情報
とに基づいて、撮影又は再構成の時相を特定する特定部と、
前記撮影の時相に基づいて前記被検体の撮影を行い、又は、前記再構成の時相に基づいて前記被検体の再構成を行う処理部と
を備える、医用画像診断装置。
【請求項2】
前記心音情報から前記被検体の疾患を推測する推測部を備え、
前記特定部は、前記疾患に対応する撮影又は再構成の時相を特定する、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
被検体から心音情報を取得し、前記心音情報
と、当該心音情報を取得したセンサの装着位置とに基づいて、前記被検体の疾患を推測する推測部と、
前記疾患に対応する撮影又は再構成の時相を特定する特定部と、
前記撮影の時相に基づいて前記被検体の撮影を行い、又は、前記再構成の時相に基づいて前記被検体の再構成を行う処理部と
を備える、医用画像診断装置。
【請求項4】
前記推測部は、前記被検体の複数の箇所から心音情報を取得し、前記複数の箇所に基づいて心音の分類を行う、
請求項3に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記疾患に対応する診断画像を表示部に表示する、
請求項2~4のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
被検体から取得された心音情報
と、当該心音情報を取得したセンサの装着位置と、心電情報
とに基づいて、再構成の時相を特定する特定部と、
前記再構成の時相に基づいて前記被検体の再構成を行う処理部と
を備える、医用画像処理装置。
【請求項7】
被検体から取得された心音情報
と、当該心音情報を取得したセンサの装着位置とに基づいて、前記被検体の疾患を推測する推測部と、
前記疾患に対応する再構成の時相を特定する特定部と、
前記再構成の時相に基づいて前記被検体の再構成を行う処理部と
を備える、医用画像処理装置。
【請求項8】
被検体から心音情報及び心電情報を取得し、
前記心音情報
と、当該心音情報を取得したセンサの装着位置と、前記心電情報
とに基づいて、撮影又は再構成の時相を特定し、
前記撮影の時相に基づいて前記被検体の撮影を行い、又は、前記再構成の時相に基づいて前記被検体の再構成を行う、
各処理をコンピュータに実行させる、プログラム。
【請求項9】
被検体から心音情報を取得し、
前記心音情報
と、当該心音情報を取得したセンサの装着位置とに基づいて、前記被検体の疾患を推測し、
前記疾患に対応する撮影又は再構成の時相を特定し、
前記撮影の時相に基づいて前記被検体の撮影を行い、又は、前記再構成の時相に基づいて前記被検体の再構成を行う、
各処理をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像診断装置、医用画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置、磁気共鳴イメージング装置又は超音波診断装置等の医用画像診断装置による心臓の撮影に際しては、心臓の動きによる画質劣化を避けるため、従来、心電情報により心臓の収縮期や拡張期等のフェーズが推測され、心臓の動きが小さい時相に撮影が行われていた。
【0003】
しかし、心臓の撮影の一態様として、心臓の弁の状態の撮影が行われる場合、心臓の弁の動きは血流により生ずるものであって、心電情報と直接の関係がないため、心電情報に基づく時相では正確な撮影が行えない場合があった。特に、興奮伝播異常のある患者に対して、心電情報により推測される時相による撮影のタイミングの制御は適切ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、心臓の適切な撮影を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用画像診断装置は、特定部と、処理部とを備える。特定部は、被検体から心音情報及び心電情報を取得し、前記心音情報及び前記心電情報から撮影又は再構成の時相を特定する。処理部は、前記撮影の時相に基づいて前記被検体の撮影を行い、又は、前記再構成の時相に基づいて前記被検体の再構成を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、心音センサの装着位置の例を示す図である。
【
図3】
図3は、ワークステーションの構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態における処理例を示すフローチャートである。
【
図5A】
図5Aは、心音の判定の態様例を示す図(1)である。
【
図5B】
図5Bは、心音の判定の態様例を示す図(2)である。
【
図5C】
図5Cは、心音の判定の態様例を示す図(3)である。
【
図6】
図6は、心音情報と心電情報の波形例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態における処理例を示すフローチャートである。
【
図8A】
図8Aは、疾患がある場合の心音の例を示す図(1)である。
【
図8B】
図8Bは、疾患がある場合の心音の例を示す図(2)である。
【
図9】
図9は、正常の場合及び疾患がある場合の心音の詳細な波形例を示す図である。
【
図10】
図10は、第3の実施形態における処理例を示すフローチャート(1)である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態における処理例を示すフローチャート(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、医用画像診断装置、医用画像処理装置及びプログラムの各実施形態を説明する。なお、実施形態は、以下の内容に限られるものではない。また、1つの実施形態や変形例に記載された内容は、原則として他の実施形態や変形例にも同様に適用される。
【0009】
(第1の実施形態)
図1を参照しながら、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成例を示すブロック図である。X線CT装置1は、医用画像診断装置の一例である。X線CT装置1は、
図1に示されるように、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。なお、説明の都合上、
図1では架台装置10が複数描画されているが、基本的に実際の構成として架台装置10は一つである。
図1においては、架台装置10の非チルト状態での回転フレーム16の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とする。
【0010】
架台装置10は、X線管11と、X線検出器15と、回転フレーム16と、X線高電圧装置17と、制御装置18と、ウェッジ19と、コリメータ20と、DAS(Data Acquisition System)21とを有する。また、架台装置10は、心音センサ22と、心音情報取得回路23と、電極24と、心電情報取得回路25とを有する。
【0011】
X線管11は、X線高電圧装置17からの高電圧により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。本実施形態においては、一管球型のX線CT装置にも、X線管と検出器との複数のペアを回転リングに搭載した、いわゆる多管球型のX線CT装置にも適用可能である。また、X線を発生させるハードウェアはX線管11に限られない。例えば、X線管11に代えて、電子銃から発生した電子ビームを集束させるフォーカスコイルと、電磁偏向させる偏向コイルと、被検体Pの半周を囲い偏向した電子ビームが衝突することによってX線を発生させるターゲットリングとを含む第5世代方式を用いてX線を発生させることにしても構わない。
【0012】
X線高電圧装置17は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する高電圧発生回路と、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御回路とを有する。高電圧発生回路は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置17は、高電圧の発生だけでなく、フィラメントへの電源供給、及び、陽極が回転型であるの場合の駆動電源供給等も行う。また、X線高電圧装置17は、回転フレーム16に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(図示しない)側に設けられても構わない。なお、固定フレームは、回転フレーム16を回転可能に支持するフレームである。
【0013】
X線検出器15は、X線管11から照射されて被検体Pを通過したX線を検出し、検出したX線量に対応した信号をDAS21へと出力する。X線検出器15は、例えば、X線管11の焦点を中心とした1つの円弧に沿ってチャネル方向(周回方向)に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。X線検出器15は、例えば、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向、row方向)に複数配列された構造を有する。
【0014】
また、X線検出器15は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドは、コリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、フォトダイオードや光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。なお、X線検出器15は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0015】
回転フレーム16(架台ベース)は、X線管11とX線検出器15とを対向支持し、制御装置18によってX線管11とX線検出器15とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム16は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム16は、X線管11及びX線検出器15に加えて、X線高電圧装置17やDAS21を更に支持することもできる。更に、回転フレーム16は、
図1において図示しない種々の構成を更に支持することもできる。以下では、架台装置10において、回転フレーム16とともに回転移動する部分及び回転フレーム16を回転部とも記載する。なお、X線管11とX線検出器15とが一体として被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-Type(第3世代CT)について説明したが、その他にも、リング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線管11のみが被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-Type(第4世代CT)等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本実施形態へ適用可能である。
【0016】
なお、DAS21が生成した検出データは、回転フレーム16に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40へと転送される。ここで、非回転部分とは、例えば、回転フレーム16を回転可能に支持する固定フレーム(
図1での図示は省略している。)等である。なお、回転フレーム16から架台装置10の非回転部分への検出データの送信方法は、光通信に限らず、回転部分と非回転部分との間でデータ伝送が行えるものであれば如何なる方式を採用しても構わない。
【0017】
制御装置18は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構と、この機構を制御する回路とを含む。制御装置18は、入力インターフェース43や架台装置10に設けられた入力インターフェース等からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う。例えば、制御装置18は、回転フレーム16の回転や架台装置10のチルト、寝台装置30及び天板33の動作等について制御を行う。一例を挙げると、制御装置18は、架台装置10をチルトさせる制御として、入力された傾斜角度(チルト角度)情報により、X軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム16を回転させる。なお、制御装置18は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0018】
ウェッジ19は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ19は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ19は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工して構成される。
【0019】
コリメータ20は、ウェッジ19を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ20は、X線絞りと呼ばれる場合もある。コリメータ20は、図示しないコリメータ調整回路によって、開口度及び位置が調整される。これにより、X線管11が発生させたX線の照射範囲が調整される。
【0020】
DAS21は、X線検出器15の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS21は、例えば、プロセッサにより実現される。DAS21が生成した検出データは、コンソール装置40へと転送される。
【0021】
心音センサ22は、例えば、1個又は複数個のマイクロホンであり、被検体Pの体表面に装着され、心音に応じた電気信号を出力する。心音情報取得回路23は、心音センサ22の出力から、例えば、後続の処理に適したデジタル信号に変換し、変換後の信号はコンソール装置40に転送される。なお、心音情報は、DAS21を介してコンソール装置40に転送されるようにしてもよい。心音の波形を示す信号を心音情報とする。また、心音情報には、心音を取得するために心音センサ22が装着された位置の情報を含めてもよい。
【0022】
図2は、心音センサ22の装着位置の例を示す図である。
図2において、領域A
1は、第2肋間胸骨右縁の大動脈領域であり、大動脈弁及び大動脈の音が最も強く聴診される領域である。領域A
2は、第2肋間胸骨左縁の肺動脈領域であり、肺動脈弁及び肺動脈の音が最も強く聴診される領域である。領域A
3は、第3肋間胸骨左縁のエルプの領域であり、大動脈及び肺動脈起源の音を聴取するのに都合のよい領域である。領域A
4は、第4肋間胸骨左縁の三尖弁領域であり、三尖弁及び右室の音が最も強く聴診される領域である。領域A
5は、左第5肋間と鎖骨中線の交点にある僧房弁領域であり、左室の直上にあり、ときには心尖部が含まれ、僧房弁と左室に関連した音が最も強く聴取される領域である。その他に、図示はしていないが、頸部に心音センサ22が設けられるようにしてもよい。
【0023】
図1に戻り、電極24は、例えば、複数個の吸盤タイプ、シールタイプ又はクリップタイプ等の部材であり、被検体Pから心電信号を取り出す。心電情報取得回路25は、複数個の電極24から取得される心電信号から、例えば、後続の処理に適したデジタル信号に変換し、変換後の信号はコンソール装置40に転送される。複数の電極24は、心電信号取得のための一般的な位置に装着される。なお、心電情報は、DAS21を介してコンソール装置40に転送されるようにしてもよい。心臓の拍動に伴う心筋の活動電位又は活動電流の波形を示す信号を心電情報とする。
【0024】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を、天板33の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。天板33だけを移動させてもよいし、寝台装置30の支持フレームごと移動する方式であってもよい。立位CTに応用される場合は、天板33に相当する患者支持機構を移動する方式であってもよい。架台装置10の天板33の位置関係の相対的な変更を伴うスキャン(ヘリカルスキャンや位置決めスキャン等)実行の際、当該位置関係の相対的な変更は天板33の駆動によって行われてもよいし、架台装置10の走行によって行われてもよく、またそれらの複合によって行われてもよい。歯科用CTに適用される場合には、寝台装置30等は不要となる。
【0025】
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。なお、コンソール装置40は、架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40又はコンソール装置40の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0026】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ41は、投影データや再構成画像データを記憶する。また、例えば、メモリ41は、X線CT装置1に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。メモリ41は、ハードウェアによる非一過性の記憶媒体としても用いられる。なお、投影データや再構成画像データの記憶は、コンソール装置40のメモリ41が行う場合に限らず、インターネット等の通信ネットワークを介してX線CT装置1と接続可能なクラウドサーバがX線CT装置1からの保存要求を受けて投影データや再構成画像データの記憶を行うようにしてもよい。
【0027】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。また、ディスプレイ42は、表示部の一例である。また、ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。また、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0028】
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパネル等により実現される。また、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0029】
処理回路44は、X線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、スキャン制御機能441、画像生成機能442、表示制御機能443及び制御機能444を有する。処理回路44は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0030】
例えば、処理回路44は、メモリ41からスキャン制御機能441に相当するプログラムを読み出して実行することにより、X線CT装置1を制御してスキャンを実行する。ここで、スキャン制御機能441は、例えば、コンベンショナルスキャンやヘリカルスキャン、ステップアンドシュート方式といった種々の方式でのスキャンを実行することができる。
【0031】
具体的には、スキャン制御機能441は、寝台駆動装置32を制御することにより、被検体Pを架台装置10の撮影口内へ移動させる。また、スキャン制御機能441は、X線高電圧装置17を制御することにより、X線管11へ高電圧を供給させる。また、スキャン制御機能441は、コリメータ20の開口度及び位置を調整する。また、スキャン制御機能441は、制御装置18を制御することにより、回転フレーム16を含む回転部を回転させる。また、スキャン制御機能441は、DAS21に投影データを収集させる。なお、CT画像を再構成するには被検体Pの周囲一周、360°分の投影データが、またハーフスキャン法でも180°+ファン角度分の投影データが必要とされる。いずれの再構成方式に対しても本実施形態へ適用可能である。
【0032】
また、スキャン制御機能441は、心臓の撮影に際し、心音情報と心電情報とに基づいて撮影の時相を特定し、特定された時相での撮影を行うことができる。撮影の時相を特定しない場合、スキャン制御機能441は、拍動の1周期を含む所定期間の撮影を行い、心音情報と心電情報とを同時に記録することができる。また、スキャン制御機能441は、心音情報から心臓の疾患を推測し、推測された疾患に適した撮影の時相を特定することができる。スキャン制御機能441は、心音情報と心電情報とを用いて心臓の疾患を推測してもよい。
【0033】
また、例えば、処理回路44は、メモリ41から画像生成機能442に相当するプログラムを読み出して実行することにより、DAS21から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施したデータを生成する。なお、前処理を施す前のデータ(検出データ)及び前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。また、例えば、画像生成機能442は、CT画像データを生成する。具体的には、画像生成機能442は、前処理後の投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。また、画像生成機能442は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、CT画像データを任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。
【0034】
また、画像生成機能442は、スキャン制御機能441により時相が特定されて撮影された心臓の投影データから再構成を行うことができる。撮影の時相が特定されずに撮影が行われた場合、画像生成機能442は、投影データとともに記録された心音情報と心電情報とに基づいて再構成の時相を特定し、特定された時相で再構成を行うことができる。また、画像生成機能442は、心音情報から心臓の疾患を推測し、推測された疾患に適した再構成の時相を特定することができる。画像生成機能442は、心音情報と心電情報とを用いて心臓の疾患を推測してもよい。スキャン制御機能441又は画像生成機能442は、特定部、処理部又は推測部の一例である。
【0035】
また、例えば、処理回路44は、メモリ41から表示制御機能443に相当するプログラムを読み出して実行することにより、CT画像をディスプレイ42に表示する。また、表示制御機能443は、心臓の再構成の結果に基づき、スキャン制御機能441又は画像生成機能442により疾患が推測されている場合、推測された疾患に適した診断画像(疾患の状態の確認に適した断面画像等)を初期画像として表示することができる。
【0036】
また、例えば、処理回路44は、メモリ41から制御機能444に相当するプログラムを読み出して実行することにより、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路44の各種機能を制御する。
【0037】
なお、
図1においては、スキャン制御機能441、画像生成機能442、表示制御機能443及び制御機能444の各処理機能が単一の処理回路44によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路44は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路44が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。処理回路44はコンソール装置40に含まれる場合に限らず、複数の医用画像診断装置にて取得された検出データに対する処理を一括して行う統合サーバに含まれてもよい。コンソール装置40は、単一のコンソールにて複数の機能を実行するものとして説明したが、複数の機能を別々のコンソールが実行することにしても構わない。後処理はコンソール装置40又は外部のワークステーションのどちらで実施することにしても構わない。また、コンソール装置40とワークステーションの両方で処理することにしても構わない。また、外部のワークステーションにおいて、投影データに基づく再構成を行ってもよい。
【0038】
図3は、ワークステーション50の構成例を示すブロック図である。ワークステーション50は、医用画像処理装置の一例である。
図3において、ワークステーション50は、メモリ51と、ディスプレイ52と、入力インターフェース53と、処理回路54とを有する。処理回路54は、画像生成機能542と、表示制御機能543と、制御機能544とを有する。ワークステーション50のメモリ51、ディスプレイ52、入力インターフェース53及び処理回路54は、X線CT装置1のコンソール装置40のメモリ41、ディスプレイ42、入力インターフェース43及び処理回路44に対応し、ハードウェア構成及び機能は同様である。処理回路54は、例えば、プロセッサにより実現される。ただし、処理回路54は、ワークステーション50が自らスキャン制御を行うことがないため、スキャン制御機能441に対応する機能を有していない。なお、ワークステーション50は、再構成に用いられる投影データ等を、ネットワーク(クラウド)又は記録媒体を介してX線CT装置1のコンソール装置40側から取得する。画像生成機能542は特定部、処理部又は推測部の一例である。
【0039】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ41に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリ41にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0040】
図4は、第1の実施形態における処理例を示すフローチャートであり、X線CT装置1において、心臓の撮影に際し、心音情報と心電情報とに基づいて特定された撮影の時相で撮影が行われ、続けて再構成及び画像表示が行われる場合の処理例である。
【0041】
図4において、スキャン制御機能441は、心音センサ22及び心音情報取得回路23を介して被検体Pから心音情報を取得し、電極24及び心電情報取得回路25を介して被検体Pから心電情報を取得する(ステップS11)。
【0042】
次いで、スキャン制御機能441は、心音情報を主に、心電情報を副に、第I音、第II音等を判定(分類)する(ステップS12)。第I音は、房室弁(僧房弁、三尖弁)が閉じる際に発生する音である。第II音は、動脈弁(大動脈弁、肺動脈弁)が閉じる際に発生する音である。その他にも第III音等がある。第III音は、心房から心室へ血液が流れることで発生する音である。従って、第I音から房室弁(僧房弁、三尖弁)の閉鎖時刻が分かる。第II音から動脈弁(大動脈弁、肺動脈弁)の閉鎖時刻が分かる。心音情報と心電情報とを組み合わせることで、拡張末期時刻等を推測することもできる。
【0043】
図5A~
図5Cは、心音の判定の態様例を示す図である。
図5Aは、1個の心音センサ22の出力による心音情報と、心電情報とに基づいて、判定が行われる場合を示している。この場合、スキャン制御機能441は、1個の心音センサ22の出力による心音情報と心電情報とから、第I音、第II音等を判定する。例えば、第I音と第II音とについては、一般に、第I音は第II音よりも低い周波数帯の音とされ、第I音と第II音の間隔よりも第II音と第I音の間隔の方が長いこと等より、スキャン制御機能441は心音情報の波形の中から第I音と第II音とを仮に特定する。
【0044】
次いで、スキャン制御機能441は、心電情報を用いて第I音と第II音とを特定する。
図6は、心音情報と心電情報の波形例を示す図であり、心電情報におけるR波W
Rの直後に心音情報の第I音W
1が発生し、それに続いて第II音W
2が発生することを示している。従って、スキャン制御機能441は、仮に特定した第I音と第II音とについて、心電情報におけるR波W
Rとの位置関係を考慮することで、第I音と第II音とを特定する。なお、R波との関係についてだけ説明したが、心電情報に含まれる他の特徴的波形と心音との関係を利用することもできる。また、心音情報から充分な判定が行える場合は、心電情報を判定に用いなくてもよい。
【0045】
図5Bは、1個の心音センサ22の出力及び装着位置による心音情報と、心電情報とに基づいて、判定が行われる場合を示している。心音センサ22の装着位置は、予め運用で定められていてもよいし、ユーザが装着位置を入力してもよいし、機械的に装着位置が自動取得されるものでもよい。また、被検体Pの患者情報等に基づいて、候補となる装着位置を装置側からユーザに提案するようにしてもよい。
【0046】
この場合、スキャン制御機能441は、1個の心音センサ22の出力及び装着位置による心音情報と心電情報とから、第I音、第II音等を判定する。
図2において説明されたように、心音センサ22の装着位置によって聞こえやすい音が異なってくるため、第I音と第II音との特定が容易になる。例えば、装着位置によって第I音と第II音とのそれぞれの検出レベルの大小関係や大まかな強度比率が予め把握されているため、現在の装着位置に基づき、検出レベルから第I音と第II音とを区別する判断材料が得られ、前述した周波数帯域等の他の要素と併せて考慮することで、第I音と第II音との特定が容易になる。スキャン制御機能441は、例えば、装着位置毎の第I音と第II音とのそれぞれの検出レベルの大小関係や大まかな強度比率が格納されたテーブル等を参照し、実際に検出された心音情報の検出レベルと比較し、第I音と第II音とのいずれの可能性が高いかを判断し、他の要素による判断と総合して第I音と第II音とを特定する。スキャン制御機能441は、心音情報から第I音、第II音等を仮に判定した後に、
図6等で示された心電情報との関係を用いて特定を行うが、心音情報から充分な判定が行える場合は、心電情報を判定に用いなくてもよい。
【0047】
図5Cは、複数個の心音センサ22の出力及びそれぞれの装着位置による心音情報と、心電情報とに基づいて、判定が行われる場合を示している。心音センサ22の複数の装着位置は、予め運用で定められていてもよいし、ユーザが複数の装着位置を入力してもよいし、機械的に複数の装着位置が自動取得されるものでもよい。また、被検体Pの患者情報等に基づいて、候補となる複数の装着位置を装置側からユーザに提案するようにしてもよい。
【0048】
この場合、スキャン制御機能441は、複数個の心音センサ22の出力及びそれぞれの装着位置による心音情報と心電情報とから、第I音、第II音等を判定する。
図2において説明されたように、心音センサ22の装着位置によって聞こえやすい音が異なってくるところ、複数の装着位置からの心音を同時かつ総合的に判断できるため、第I音と第II音との特定が容易になる。例えば、装着位置によって第I音と第II音とのそれぞれの検出レベルの大小関係や大まかな強度比率が予め把握されており、現在の複数の装着位置のそれぞれからの検出レベルの状態が分かるため、より精度よく第I音と第II音との特定が可能になる。スキャン制御機能441は、例えば、装着位置毎の第I音と第II音とのそれぞれの検出レベルの大小関係や大まかな強度比率が格納されたテーブル等を参照し、実際に検出された心音情報の検出レベルと比較し、第I音と第II音とのいずれの可能性が高いかを判断し、他の要素による判断と総合して第I音と第II音とを特定する。スキャン制御機能441は、心音情報から第I音、第II音等を仮に判定した後に、
図6等で示された心電情報との関係を用いて特定を行うが、心音情報から充分な判定が行える場合は、心電情報を判定に用いなくてもよい。
【0049】
図4に戻り、スキャン制御機能441は、特定された第I音と第II音とにそれぞれ対応する時相に基づき、撮影の中心となる時相を決定する(ステップS13)。第I音と第II音とにそれぞれ対応する時相は、例えば、心音情報から時相を決定する直前に検出された第I音、第II音等から求められるようにしてもよいし、複数回の検出から平均により求められるようにしてもよい。撮影の中心となる時相は、例えば、僧房弁の撮影については、収縮中期である第I音と第II音との中間の時相に決定されることが望ましい。大動脈弁の撮影については、拡張中期である第II音と第I音との間(第II音から1/3あたり)の時相に決定されることが望ましい。時相は、例えば、第I音から数msec後や、R波から数msec後というように定められる。
【0050】
次いで、スキャン制御機能441は、決定された時相で撮影(X線の曝射及び透過X線の検出)を行う(ステップS14)。予め撮影の時相が決められ、撮影に必要最小限のX線の曝射で済むことから、被爆量の低減が図られる。
【0051】
次いで、画像生成機能442は、撮影によって得られた投影データに基づいて再構成を行い、CT画像データを生成する(ステップS15)。CT画像データは、操作者から受け付けた入力操作等に基づいて、任意断面の断層像データや3次元画像データに変換される。なお、再構成以降の処理は、投影データに基づいてワークステーション50の画像生成機能542において行われてもよい。
【0052】
次いで、表示制御機能443は、再構成により得られたCT画像や任意断面の断層像データや3次元画像データに基づく画像をディスプレイ42に表示する(ステップS16)。再構成がワークステーション50の画像生成機能542において行われた場合、画像表示はワークステーション50の表示制御機能543により行われる。
【0053】
図4に示されたステップS11~S14は、スキャン制御機能441に対応するステップである。ステップS11~S14は、処理回路44がメモリ41からスキャン制御機能441に対応するプログラムを読み出し実行することにより、スキャン制御機能441が実現されるステップである。
【0054】
図4に示されたステップS15は、画像生成機能442又は画像生成機能542に対応するステップである。ステップS15は、処理回路44又は処理回路54がメモリ41又はメモリ51から画像生成機能442又は画像生成機能542に対応するプログラムを読み出し実行することにより、画像生成機能442又は画像生成機能542が実現されるステップである。
【0055】
図4に示されたステップS16は、表示制御機能443又は表示制御機能543に対応するステップである。ステップS16は、処理回路44又は処理回路54がメモリ41又はメモリ51から表示制御機能443又は表示制御機能543に対応するプログラムを読み出し実行することにより、表示制御機能443又は表示制御機能543が実現されるステップである。
【0056】
なお、X線CT装置に適用された実施形態について説明したが、磁気共鳴イメージング装置又は超音波診断装置等の他の医用画像診断装置に同様に適用することができる。
【0057】
本実施形態によれば、心音情報等から撮影の時相が決められ、心臓の適切な撮影を可能にすることができる。また、撮影に必要最小限のX線の曝射で済むことから、被爆量の低減が図られる。
【0058】
(第2の実施形態)
X線CT装置1の構成例、心音センサ22の装着位置の例、及び、ワークステーション50の構成例は、
図1~
図3と同様である。
【0059】
図7は、第2の実施形態における処理例を示すフローチャートであり、X線CT装置1において、心臓の撮影に際し、心音情報及び心電情報から第I音、第II音等が判定され、心音情報から推測された疾患に適した再構成の時相で撮影が行われ、続けて再構成及び画像表示が行われる場合の処理例である。
【0060】
図7において、スキャン制御機能441は、心音センサ22及び心音情報取得回路23を介して被検体Pから心音情報を取得し、電極24及び心電情報取得回路25を介して被検体Pから心電情報を取得する(ステップS21)。
【0061】
次いで、スキャン制御機能441は、心音情報を主に、心電情報を副に、第I音、第II音等を判定する(ステップS22)。第I音、第II音等の判定は、
図5A~
図5Cにおいて説明されたものと同様の態様により行われる。
【0062】
次いで、スキャン制御機能441は、心音情報から疾患を推測する(ステップS23)。なお、疾患の推測に心電情報を併せて用いてもよい。疾患は、例えば、心音情報に含まれる心雑音から判定される。
図8A及び
図8Bは、疾患がある場合の心音の例を示す図である。なお、
図8A及び
図8Bでは、第I音のタイミングを「I」、第II音のタイミングを「II」で表し、心雑音についても簡略化して示してある。
図9は、正常の場合及び疾患がある場合の心音の詳細な波形例を示す図であり、aは正常時(Normal)の心音情報の波形例、bは大動脈弁狭窄症(aortic stenosis,AS)の心音情報の波形例、cは僧帽弁閉鎖不全症又は僧帽弁逆流症(mitral regurgitation,MR)の心音情報の波形例、dは大動脈弁閉鎖不全症(aortic regurgitation,AR)の心音情報の波形例、eは僧帽弁狭窄症(mitral stenosis,MS)の心音情報の波形例、fは動脈管開存症(patent ductus arteriosus,PDA)の心音情報の波形例である。
図8Aは、
図9のcを簡略的に示している。
図8Bは、
図9のdを簡略的に示している。
【0063】
図8Aでは、第I音と第II音との間に収縮期逆流性の心雑音W
11が検出されることから、疾患として僧房弁閉鎖不全症が推測される。
図8Bでは、第II音の後に拡張期灌水様(逆流性)の心雑音W
12が検出されることから、疾患として大動脈弁閉鎖不全症が推測される。なお、心音センサ22の装着位置によって心雑音の聞こえ方にも違いがあるため、心音情報に装着位置の情報が含まれる場合には、疾患の推測がより容易になる。例えば、装着位置によって心臓の部分毎の心雑音の一般的な検出レベルが予め把握されているため、現在の1つ又は複数の装着位置に基づき、検出レベルから心雑音を発している部分の絞り込みが可能になり、疾患の推測がより容易になる。スキャン制御機能441は、例えば、装着位置毎の心臓の部分毎の心雑音の一般的な検出レベルが格納されたテーブル等を参照し、実際に検出された心音情報の心雑音の検出レベルと比較し、心雑音を発している部分を絞り込み、疾患を推測する。なお、推測される疾患は、心臓の弁に関する疾患に限られず、心筋等に関する心臓の疾患も含まれる。
【0064】
図7に戻り、次いで、スキャン制御機能441は、推測された疾患に対応した、撮影の中心となる時相を決定する(ステップS24)。例えば、スキャン制御機能441は、
図8Aで僧房弁閉鎖不全症が推測される場合、逆流時における僧房弁の乖離の確認のために、肺静脈と左心室の圧格差が大きい第I音と第II音との中間の時相、又は僧房弁が乖離している時相である、雑音が最も大きい時相に、撮影の中心となる時相を決定する。また、スキャン制御機能441は、
図8Bで大動脈弁閉鎖不全症が推測される場合、逆流時における大動脈弁の乖離の確認のために、大動脈と左心室の圧格差が大きい第II音の直後の時相、又は、大動脈弁が乖離している時相である、雑音が最も大きい時相に、撮影の中心となる時相を決定する。なお、第I音と第II音とにそれぞれ対応する時相は、例えば、心音情報から時相を決定する直前に検出された第I音、第II音等から求められるようにしてもよいし、複数回の検出から平均により求められるようにしてもよい。スキャン制御機能441は、疾患が有効に推測されなかった場合、一般的な撮影の時相に決定する。
【0065】
図7に戻り、スキャン制御機能441は、決定された時相で撮影(X線の曝射及び透過X線の検出)を行う(ステップS25)。撮影に必要最小限の曝射で済むことから、被爆量の低減が図られる。
【0066】
次いで、画像生成機能442は、撮影によって得られた投影データに基づいて再構成を行い、CT画像データを生成する(ステップS26)。CT画像データは、操作者から受け付けた入力操作等に基づいて、任意断面の断層像データや3次元画像データに変換される。なお、再構成以降の処理は、投影データに基づいてワークステーション50の画像生成機能542において行われてもよい。
【0067】
次いで、表示制御機能443は、再構成により得られたCT画像や任意断面の断層像データや3次元画像データに基づく画像をディスプレイ42に表示する(ステップS27)。この際、表示制御機能443は、疾患が推測されている場合、推測された疾患に適した断面画像を初期画像として表示することができる。例えば、僧房弁閉鎖不全症が推測されている場合、僧房弁の状態が分かりやすい断面画像を初期画像として表示することができる。再構成がワークステーション50の画像生成機能542において行われた場合、画像表示はワークステーション50の表示制御機能543により行われる。
【0068】
図7に示されたステップS21~S25は、スキャン制御機能441に対応するステップである。ステップS21~S25は、処理回路44がメモリ41からスキャン制御機能441に対応するプログラムを読み出し実行することにより、スキャン制御機能441が実現されるステップである。
【0069】
図7に示されたステップS26は、画像生成機能442又は画像生成機能542に対応するステップである。ステップS26は、処理回路44又は処理回路54がメモリ41又はメモリ51から画像生成機能442又は画像生成機能542に対応するプログラムを読み出し実行することにより、画像生成機能442又は画像生成機能542が実現されるステップである。
【0070】
図7に示されたステップS27は、表示制御機能443又は表示制御機能543に対応するステップである。ステップS27は、処理回路44又は処理回路54がメモリ41又はメモリ51から表示制御機能443又は表示制御機能543に対応するプログラムを読み出し実行することにより、表示制御機能443又は表示制御機能543が実現されるステップである。
【0071】
なお、X線CT装置に適用された実施形態について説明したが、磁気共鳴イメージング装置又は超音波診断装置等の他の医用画像診断装置に同様に適用することができる。
【0072】
本実施形態によれば、心音情報等から疾患が推測され、疾患に適した撮影の時相が決められ、心臓の適切な撮影を可能にすることができる。また、撮影に必要最小限のX線の曝射で済むことから、被爆量の低減が図られる。
【0073】
(第3の実施形態)
上述した実施形態では、先に撮影の時相を決定し、決定された時相で撮影を行うものであったが、第3の実施形態では、先に時相を特定せずに撮影を行い、撮影時の収集データに基づいて再構成を行うものである。X線CT装置1の構成例、心音センサ22の装着位置の例、及び、ワークステーション50の構成例は、
図1~
図3と同様である。
【0074】
図10は、第3の実施形態における処理例を示すフローチャートであり、X線CT装置1において、心臓の撮影に際し、撮影の時相を特定せずに、拍動の1周期を含む所定期間の撮影を行う処理例を示している。
【0075】
図10において、スキャン制御機能441は、心音センサ22及び心音情報取得回路23を介して被検体Pから心音情報を取得し、電極24及び心電情報取得回路25を介して被検体Pから心電情報を取得しつつ、撮影(X線の曝射及び透過X線の検出)を行い(ステップS30-1)、データ収集を行う(ステップS30-2)。
図11は、収集データの例を示す図であり、心音情報に対応する心音データと、心電情報に対応する心電データと、透過X線の検出により得られた投影データとが含まれている。なお、心音データは、心音センサ22が複数個設けられる場合には、心音センサ22の個数分だけ含まれる。心音データには、装着位置の情報が含まれない場合と含まれる場合とがある。
【0076】
図10に示されたステップS30は、スキャン制御機能441に対応するステップである。ステップS30は、処理回路44がメモリ41からスキャン制御機能441に対応するプログラムを読み出し実行することにより、スキャン制御機能441が実現されるステップである。
【0077】
図12は、第3の実施形態における処理例を示すフローチャートであり、撮影後に収集データから再構成及び画像表示が行われる処理例である。
【0078】
図12において、画像生成機能442は、収集データから心音情報と心電情報とを取得する(ステップS31)。
【0079】
次いで、画像生成機能442は、心音情報を主に、心電情報を副に、第I音、第II音等を判定する(ステップS32)。第I音、第II音等の判定は、
図5A~
図5Cにおいて説明されたものと同様の態様により行われる。
【0080】
次いで、画像生成機能442は、心音情報から疾患を推測する(ステップS33)。なお、疾患の推測に心電情報を併せて用いてもよい。疾患の推測は、
図8A及び
図8Bにおいて説明されたものと同様に行われる。
【0081】
次いで、画像生成機能442は、推測された疾患に対応した、再構成の中心となる時相を決定する(ステップS34)。例えば、前述したように、スキャン制御機能441は、僧房弁閉鎖不全症が推測される場合、逆流時における僧房弁の乖離の確認のために、肺静脈と左心室の圧格差が大きい第I音と第II音との中間の時相、又は僧房弁が乖離している時相である、雑音が最も大きい時相に、撮影の中心となる時相を決定する。また、スキャン制御機能441は、大動脈弁閉鎖不全症が推測される場合、逆流時における大動脈弁の乖離の確認のために、大動脈と左心室の圧格差が大きい第II音の直後の時相、又は、大動脈弁が乖離している時相である、雑音が最も大きい時相に、撮影の中心となる時相を決定する。なお、第I音と第II音とにそれぞれ対応する時相は、例えば、心音情報から時相を決定する直前に検出された第I音、第II音等から求められるようにしてもよいし、複数回の検出から平均により求められるようにしてもよい。画像生成機能442は、疾患が有効に推測されなかった場合、一般的な再構成の時相に決定する。
【0082】
次いで、画像生成機能442は、決定された時相で、収集データに含まれる投影データに基づいて再構成を行い、CT画像データを生成する(ステップS35)。CT画像データは、操作者から受け付けた入力操作等に基づいて、任意断面の断層像データや3次元画像データに変換される。
【0083】
次いで、表示制御機能443は、再構成により得られたCT画像や任意断面の断層像データや3次元画像データに基づく画像をディスプレイ42に表示する(ステップS36)。この際、表示制御機能443は、疾患が推測されている場合、推測された疾患に適した断面画像を初期画像として表示することができる。
【0084】
図12のフローチャートに示される収集データの取得から再構成の処理は、ワークステーション50の画像生成機能542で行ってもよく、画像表示は表示制御機能543により行ってもよい。
【0085】
図12に示されたステップS31~S35は、画像生成機能442又は画像生成機能542に対応するステップである。ステップS31~S35は、処理回路44又は処理回路54がメモリ41又はメモリ51から画像生成機能442又は画像生成機能542に対応するプログラムを読み出し実行することにより、画像生成機能442又は画像生成機能542が実現されるステップである。
【0086】
図12に示されたステップS36は、表示制御機能443又は表示制御機能543に対応するステップである。ステップS36は、処理回路44又は処理回路54がメモリ41又はメモリ51から表示制御機能443又は表示制御機能543に対応するプログラムを読み出し実行することにより、表示制御機能443又は表示制御機能543が実現されるステップである。
【0087】
本実施形態によれば、心音情報等から疾患が推測され、疾患に適した再構成の時相が決められ、心臓の適切な撮影を可能にすることができる。
【0088】
なお、第3の実施形態では、収集データに基づく再構成に先だって疾患の推測が行われるものであったが、疾患の推測を伴わず、心音情報や心電情報に基づいて決定された再構成の中心となる時相で再構成されるようにしてもよい。再構成の中心となる時相は、例えば、僧房弁の再構成については、収縮中期である第I音と第II音との中間の時相に決定されることが望ましい。大動脈弁の再構成については、拡張中期である第II音と第I音との間(第II音から1/3あたり)の時相に決定されることが望ましい。
【0089】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、心臓の適切な撮影を可能にすることができる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0091】
1 X線CT装置
22 心音センサ
23 心音情報取得回路
24 電極
25 心電情報取得回路
40 コンソール装置
44 処理回路
441 スキャン制御機能
442 画像生成機能
50 ワークステーション
54 処理回路
542 画像生成機能
543 表示制御機能