IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タクボエンジニアリング株式会社の特許一覧

特許7091161バーチャル塗装のための噴霧情報作成方法及び塗装シミュレーション方法
<>
  • 特許-バーチャル塗装のための噴霧情報作成方法及び塗装シミュレーション方法 図1
  • 特許-バーチャル塗装のための噴霧情報作成方法及び塗装シミュレーション方法 図2
  • 特許-バーチャル塗装のための噴霧情報作成方法及び塗装シミュレーション方法 図3
  • 特許-バーチャル塗装のための噴霧情報作成方法及び塗装シミュレーション方法 図4
  • 特許-バーチャル塗装のための噴霧情報作成方法及び塗装シミュレーション方法 図5
  • 特許-バーチャル塗装のための噴霧情報作成方法及び塗装シミュレーション方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】バーチャル塗装のための噴霧情報作成方法及び塗装シミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/02 20060101AFI20220620BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
B05D1/02 B
B05D3/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018115045
(22)【出願日】2018-06-16
(65)【公開番号】P2019217431
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】593081224
【氏名又は名称】タクボエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104488
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 良夫
(72)【発明者】
【氏名】西川 俊博
(72)【発明者】
【氏名】小島 光
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-286798(JP,A)
【文献】特開平09-075839(JP,A)
【文献】特開2002-172350(JP,A)
【文献】特開2006-218426(JP,A)
【文献】特開平05-324798(JP,A)
【文献】特開2019-000814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B25J 1/00-21/02
G05B 19/18-19/416
19/42-19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装ロボットのスプレーガンから噴霧された塗料がワークに塗着していく現実の塗装を、塗装ロボットに関する外形、機構及び寸法等の基本データ、ワークに関する外形及び寸法等の基本データ、塗装ロボットとワークとの位置情報、スプレーガンとワークとの距離情報、及び、ティーチングにより設定されたスプレーガンの軌道データ等のティーチングデータを予め取り込んだコンピューターにおいて、流体解析によってバーチャルな空間で再現するために必要なバーチャル塗装のための噴霧情報作成方法であって、
スプレー条件を異ならせながら、スプレーガンからの塗料の噴霧を行うとともに、噴霧された塗料粒子の、少なくとも粒子速度、粒子径分布及び噴霧パターンを含む噴霧情報を計測することで、スプレー条件ごとの噴霧情報を多数作成して、現実の噴霧情報のデータベースを作成し、
次に、データベース化された現実の噴霧情報を参考にしながら、現実の塗装をバーチャルな空間で再現するために必要なバーチャルな噴霧情報としての、噴霧された塗料粒子の粒子速度、粒子径分布及び噴霧パターンを算出することで、スプレー条件ごとのバーチャルな噴霧情報を多数作成して、バーチャルな噴霧情報のデータベースを作成して成り、
前記作成したスプレー条件ごとのバーチャルな噴霧情報は、このスプレー条件ごとのバーチャルな噴霧情報を用いて流体解析を行うことで、スプレーガンから噴霧された塗料がワークに塗着していく現実の塗装をバーチャルな空間で再現するためのものであり、
前記スプレー条件は、少なくとも、塗料を霧化するための霧化エアーの圧力、霧化塗料のパターンを形成するためのパターンエアーの圧力、塗料の吐出量、塗料の粘度、塗料の含有成分及びスプレーガンとワークとの距離とし、
前記スプレーガンから噴霧された塗料の噴霧情報の計測は、スプレーガンの位置を上下、左右及び前後にずらしながら、それぞれの位置においてスプレーガンより噴霧された塗料を高速カメラで多数回撮影するとともに、
撮影により得られた塗料粒子のデータを用いて、
噴霧された塗料粒子の、少なくとも粒子速度、粒子径分布及び噴霧パターンを含む噴霧情報を計測することにより行う、ことを特徴とするバーチャル塗装のための噴霧情報作成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバーチャル塗装のための噴霧情報作成方法により作成されたバーチャル噴霧情報のデータベースを用いてバーチャルな空間でワークの塗装を再現する塗装シミュレーション方法であって、
処理装置(2)と、該処理装置(2)により制御される表示部(3)を用いて、
現実の噴霧情報に対応したスプレー条件を設定し、
設定したスプレー条件に対応したバーチャル噴霧情報を、バーチャル噴霧情報のデータベースから呼び出し、
呼び出したバーチャル噴霧情報を用いて、表示部(3)にワークの塗装を再現する、ことを特徴とする塗装シミュレーション方法。
【請求項3】
バーチャル噴霧情報のデータベースから呼び出したバーチャル噴霧情報を用いて、表示部(3)にワークの塗装を再現するに際して、データベースから呼び出したバーチャル噴霧情報とともに、予め設定した塗装ロボット及びワークの3Dデータと、スプレーガンを移動させるためのスプレーガンの軌道データを用いて、ワークの塗装を再現することを特徴とする請求項2に記載の塗装シミュレーション方法。
【請求項4】
バーチャル噴霧情報のデータベースから呼び出したバーチャル噴霧情報を用いて表示部(3)にワークの塗装を再現するに際して、塗装ブース内の気流を加味することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の塗装シミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの塗装をバーチャルな空間で再現するために必要な噴霧情報の作成方法、及び、作成された噴霧情報を用いた塗装シミュレーション方法に係り、より詳しくは、現実の塗装における塗料粒子の噴霧情報を加味したバーチャルの噴霧情報を算出してデータベース化して成ることを特徴とするバーチャル塗装のための噴霧情報作成方法、及び、その方法により作成されたバーチャルの噴霧情報のデータベースを用いた塗装シミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗装の分野においては、被塗装物(以下「ワーク」と言う。)を大量に塗装する場合において、塗装ロボットを用いて自動的に塗装を行なう方法が採用されている。そして、このような塗装ロボットを用いて自動的に塗装を行う場合には、塗装の膜厚を均一にするために、塗装ガンの噴射口とワークとの距離や角度を一定に保つ必要がある。
【0003】
そのために、このような塗装ロボットを用いた塗装では、予めワークの外形寸法等に基づいて塗装ロボットにおけるスプレーガンの軌道データを設定するとともに、この軌道データを塗装ロボットに記憶させておくことが必要であり、この作業を一般に「ティーチング」という。
【0004】
そして、このティーチングによって、塗装ロボットは、このティーチングされた軌道データに基づいてスプレーガンを移動することができ、これにより自動的にワークを塗装することが可能となる。従って、このような塗装ロボットを用いた塗装では、特に複数個のワークの塗装を行なう場合には、人件費等の経費を削減することができるとともに、すべてのワークに対して正確に同一の塗装を行なうことができるという利点がある。
【0005】
ここで、従来行われているティーチングについて図6を参照して説明すると、図6において31が塗装ロボット、32がワーク、33が前記塗装ロボットの作動を制御するためのロボットコントローラー、34がティーチングペンダントである。そして、ティーチングは一般的に、前記ティーチングペンダント34を用いて行われる。即ち、このティーチングペンダント34は、リモコンのような物であり、前記ロボットコントローラー33と接続されている。そして、ティーチングを行う際には、塗装ロボット31の近傍において、ティーチングペンダント34を用いて、前記ロボットコントローラー33を介して塗装ロボット31を操作し、所望するスプレーガンの位置を順にロボットコントローラー33に登録し、それにより、ロボットコントローラー33にスプレーガンの軌道を記憶させる方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-184280号公報
【文献】特開2006-315157号公報
【文献】特開2005-238092号公報
【文献】特開2004-114246号公報
【文献】特開2000-288432号公報
【文献】特開平10-264060号公報
【文献】特開平10-264059号公報
【文献】特開平6-31233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述のようなティーチングを行った後には、ティーチングされた軌道データによって正確にワークの塗料を行うことができるかどうかを検証する必要があり、この検証を一般的にシミュレーションと言う。そして、従来このシミュレーションは、塗装ブース内に塗装ロボットとワークを配置して、スプレーガンより実際に塗料を噴射してワークを塗装し、その後に、塗装が必要な面が均一の膜厚で塗装されているかどうかを確認することで行っていた。このように、従来のシミュレーションにおいては、実際にワークを塗装する必要があるため、検証の際には塗料を使用しなければならないとともに、塗装ブース内に発生した塗料ミストを回収するために空調設備を稼働しなければならず、コストがかかってしまっていた。
【0008】
また、シミュレーションの結果、正確な塗装ができていない場合にはティーチングデータを修正し、更にその修正したデータに基づいて、再度、スプレーガンより実際に塗料を噴射して塗装し、その結果をシミュレーションしなければならないため、更に塗料と空調エネルギーが無駄になっていた。
【0009】
そしてこのとき、従来のティーチングでは、スプレーガンとワークの距離やスプレーガンのワークへの狙い目に関しては、作業者が現物のワークを近くで見ながら、経験や勘に頼って行うことが現状であり、その方法では、スプレーガンとワークの距離は現物合わせで行い、スプレーガンの狙い目はスケールや専用冶具を用いて確認する必要があるために、専用冶具をワークに当てないように慎重に作業しなければならず、作業が煩雑になり時間がかかるとともに、ワークとスプレーガンとの距離は目視判断によっていたので曖昧にならざるを得ず、検証によって軌道データの修正が必要になることが少なくなかった。
【0010】
この点、コンピューターを用いて、流体解析によって、スプレーガンからワークに向けて噴霧されてワークに塗着していく塗料粒子を表示部に再現してシミュレーションする方法も考えられ、この方法を用いることで、実際の塗装ロボットとワークを用いて塗料をワークに噴射することなく、ティーチングされた軌道データに基づく塗装状態を目視で確認することを可能であるために、塗料を無駄にすることなく、また空調エネルギーを使用することなく、ティーチングされた軌道データの検証、及び修正を容易に行うことが可能である。
【0011】
しかし、スプレーガンからワークに向けて噴霧された塗料粒子の粒子速度や粒径分布は、塗料の種類、霧化圧、パターン圧、吐出量等の塗料のスプレー条件によって異なるため、塗装シミュレーションを正確に再現するためには、スプレー条件に対応した実際の噴霧状態を数値化して流体解析に取り込む必要がある。
【0012】
そしてこのとき、一般的に塗装ロボットにおいて、スプレーガンは圧縮エアーで塗料を霧化するが、スプレーガンの先端からすぐさま大気開放され、この現象を解析対象とすると膨大な時間が必要になってしまうため、塗装のシミュレーションを行う際に、個々のスプレー条件を同時に解析することは現実的ではない。
【0013】
一方、スプレー条件を考慮せずに代表的な固定値を入力すれば、短時間でシミュレーションが実行されるが、この場合は正確な塗装のシミュレーションを行うことが不可能になる。
【0014】
そこで、本発明は、バーチャルな空間で塗装ロボットによる塗装のシミュレーションを行うに際して、実際の塗料のスプレー条件を加味したシミュレーションを短時間で行うことを可能にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のバーチャル塗装のための噴霧情報作成方法は、塗装ロボットのスプレーガンから噴霧された塗料がワークに塗着していく現実の塗装を、塗装ロボットに関する外形、機構及び寸法等の基本データ、ワークに関する外形及び寸法等の基本データ、塗装ロボットとワークとの位置情報、スプレーガンとワークとの距離情報、及び、ティーチングにより設定されたスプレーガンの軌道データ等のティーチングデータを予め取り込んだコンピューターにおいて、流体解析によってバーチャルな空間で再現するために必要なバーチャル塗装のための噴霧情報作成方法であって、
スプレー条件を異ならせながら、スプレーガンからの塗料の噴霧を行うとともに、噴霧された塗料粒子の、少なくとも粒子速度、粒子径分布及び噴霧パターンを含む噴霧情報を計測することで、スプレー条件ごとの噴霧情報を多数作成して、現実の噴霧情報のデータベースを作成し、
次に、データベース化された現実の噴霧情報を参考にしながら、現実の塗装をバーチャルな空間で再現するために必要なバーチャルな噴霧情報としての、噴霧された塗料粒子の粒子速度、粒子径分布及び噴霧パターンを算出することで、スプレー条件ごとのバーチャルな噴霧情報を多数作成して、バーチャルな噴霧情報のデータベースを作成して成り、
前記作成したスプレー条件ごとのバーチャルな噴霧情報は、このスプレー条件ごとのバーチャルな噴霧情報を用いて流体解析を行うことで、スプレーガンから噴霧された塗料がワークに塗着していく現実の塗装をバーチャルな空間で再現するためのものであり、
前記スプレー条件は、少なくとも、塗料を霧化するための霧化エアーの圧力、霧化塗料のパターンを形成するためのパターンエアーの圧力、塗料の吐出量、塗料の粘度、塗料の含有成分及びスプレーガンとワークとの距離とし、
前記スプレーガンから噴霧された塗料の噴霧情報の計測は、スプレーガンの位置を上下、左右及び前後にずらしながら、それぞれの位置においてスプレーガンより噴霧された塗料を高速カメラで多数回撮影するとともに、
撮影により得られた塗料粒子のデータを用いて、
噴霧された塗料粒子の、少なくとも粒子速度、粒子径分布及び噴霧パターンを含む噴霧情報を計測することにより行う、ことを特徴としている。
【0016】
また、本発明の塗装シミュレーション方法は、前述の方法により作成されたバーチャル噴霧情報のデータベースを用いてバーチャルな空間でワークの塗装を再現する塗装シミュレーション方法であって、
処理装置と、処理装置により制御される表示部を用いて、
現実の噴霧情報に対応したスプレー条件を設定し、
設定したスプレー条件に対応したバーチャル噴霧情報を、バーチャル噴霧情報のデータベースから呼び出し、
呼び出したバーチャル噴霧情報を用いて、表示部にワークの塗装を再現する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明のバーチャル塗装のための噴霧情報作成方法では、現実のスプレーガンから噴霧された塗料粒子の粒子速度と粒子径分布をスプレー条件ごとに多数測定して、スプレー条件ごとの現実の噴霧情報をデータベース化しておき、次に、このデータベース化された現実の噴霧情報について、これをバーチャルな空間で再現するために必要なバーチャルの噴霧情報を算出することで、スプレー条件ごとのバーチャルな噴霧情報を多数作成して、スプレー条件ごとのバーチャルの噴霧情報をデータベース化することで、バーチャル塗装のための噴霧情報を作成することとしている。そして、塗装のシミュレーションを行う際に、スプレー条件を設定し、この設定したスプレー条件に対応した噴霧情報をバーチャルの噴霧情報のデータベースから呼び出し、呼び出した噴霧情報を用いて流体解析を行うことで、ワークの塗装をバーチャルな空間で再現してシミュレーションを行うこととしている。
【0018】
そのために、本発明によれば、塗装のシミュレーションを行う際に、個々のスプレー条件を同時に解析する場合と異なり、塗装シミュレーションの時間短縮を図ることが可能である。
【0019】
また、本発明では、現実にスプレーガンから噴霧された塗料粒子の粒子速度と粒子径分布をスプレー条件ごとに多数測定して作成したバーチャルな噴霧情報のデータベースを用いて塗装のシミュレーションを行うために、スプレー条件を考慮せずに代表的な固定値を入力した場合と異なり、正確な塗装のシミュレーションを行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のバーチャル塗装のための噴霧情報作成方法の実施例を説明するためのフローチャートである。
図2】本発明のバーチャル塗装のための噴霧情報作成方法の実施例における噴霧情報の計測方法を説明するためのイメージ図である。
図3】本発明の塗装シミュレーション方法の実施例を説明するためのフローチャートである。
図4】本発明の塗装シミュレーション方法の実施例における画面表示を説明するための図である。
図5】本発明のバーチャル塗装のための噴霧情報作成方法及び塗装シミュレーション方法の実施例を実施するためのシステムを説明するためのブロック図である。
図6】従来のティーチング方法を説明するためにブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のバーチャル塗装のための噴霧情報作成方法では、まず、塗料を霧化するための霧化エアーの圧力、霧化エアーにより霧化された塗料のパターンを形成するためのパターンエアーの圧力、塗料の吐出量、塗料の粘度、塗料の含有成分、スプレーガンとワークとの距離等のスプレー条件を異ならせながら、多数回に亘り、現実のスプレーガンからの塗料の噴霧を行う。
【0022】
そして、噴霧された塗料粒子について、少なくとも粒子速度、粒子径分布及び噴霧パターンを含む噴霧情報を計測し、それにより、スプレー条件ごとの噴霧情報を多数作成して、スプレー条件に対応した現実の噴霧情報のデータベースを作成する。
【0023】
そして次に、データベース化された現実の噴霧情報について、その噴霧情報をバーチャルな空間で再現するために必要なバーチャルの噴霧情報を算出し、それにより、スプレー条件ごとのバーチャルな噴霧情報を多数作成して、スプレー条件に対応したバーチャルの噴霧情報のデータベースを作成し、このバーチャルの噴霧情報のデータベースに記憶された噴霧情報を、バーチャル塗装のための噴霧情報とする。
【0025】
次に、本発明の塗装シミュレーション方法では、処理装置と、この処理装置により制御される表示部を用いて、スプレーガンからワークに向けて噴霧されてワークに塗着していく塗料粒子を表示部に再現する方法としており、この塗装シミュレーションを実施する場合には、まず、スプレー条件を設定する。
【0026】
そして次に、設定した塗装条件に対応したバーチャルの噴霧情報を、バーチャルの噴霧情報のデータベースから呼び出す。
【0027】
そして、呼び出したバーチャルの噴霧情報を用いて、流体解析を行って、表示部にワークの塗装を再現する。
【0028】
ここで、バーチャルの噴霧情報のデータベースから呼び出したバーチャルの噴霧情報を用いて、表示部にワークの塗装を再現するに際しては、予め設定した塗装ロボット及びワークの3Dデータと、ティーチングしたスプレーガンの軌道データを用いて、塗装ロボットの全部又は一部とワークを表示部に表示し、スプレーガンからワークに向けて塗料が噴霧されてワークに塗着していく状態を再現するとよく、これにより、より現実に近い状況のシミュレーションを行うことが可能となる。
【0029】
また、バーチャルの噴霧情報のデータベースから呼び出したバーチャルの噴霧情報を用いて、表示部にワークの塗装を再現するに際しては、塗装ブース内の気流や、ワークを回転させる場合には回転に伴って発生する気流を加味するとよく、それにより、より精度の高い塗着状況を実現することが可能となる。
【実施例1】
【0030】
本発明のバーチャル塗装のための噴霧情報作成方法の実施例について図1のフローチャートを参照して説明すると、本実施例のバーチャル塗装のための噴霧情報作成方法は、スプレーガンから塗料が噴霧されてワークに向かっていく現実の塗装の状態を、コンピューターの表示部等の、バーチャルな空間で再現するために必要な噴霧情報を、作成する方法としている。また、本実施例におけるスプレーガンは、吐出口から吐出された塗料を、霧化するとともに所定パターンにして噴霧する霧化式のスプレーガンとしている。
【0031】
そして、本実施例のバーチャル塗装のための噴霧情報作成方法では、まず、ステップ1においてスプレー条件を設定し、次にステップ2において、設定したスプレー条件に従って、現実にスプレーガンから塗料を噴霧する。
【0032】
ここで、前記スプレー条件について説明すると、本実施例におけるスプレー条件としては、スプレーガンの種類、塗料の吐出量、塗料を霧化するための霧化エアーの圧力、噴霧された塗料を所定のパターンにするためのパターンエアーの圧力、噴霧する塗料の種類、即ち、メタル、パール等の含有成分による塗料の種類、塗料の色、塗料の粘度、スプレーガンとワークとの距離等としている。
【0033】
そして、設定したスプレー条件に従って実際に塗料を噴霧した後に、ステップ3において、噴霧された塗料について、噴霧情報を計測する。そして、本実施例においては、ステップ2におけるスプレーガンからの塗料の噴霧を、スプレー条件を異ならせながら多数回に亘って行い、それとともに、その都度、ステップ3における噴霧された塗料についての噴霧情報の計測を行い、それにより、スプレー条件ごとの噴霧情報を多数作成する。そして、ステップ4において、作成したスプレー条件ごとの現実の噴霧情報を、ハードディスク、USBメモリ等の記憶手段に記憶させ、これにより、現実の噴霧情報のデータベースを作成する。
【0034】
なお、本実施例において噴霧情報としては、噴霧された塗料粒子の粒子速度、粒子径分布、噴霧パターンとしており、本実施例においては、前述したように、スプレー条件を異ならせながら、現実にスプレーガンから噴霧した塗料について、これらの噴霧情報を計測してデータベース化する。
【0035】
ここで、噴霧情報の計測方法について説明すると、本実施例では、スプレーガンより噴霧された塗料を高速カメラで多数回撮影し、その撮影したデータを用いて、計測ソフトによって、噴霧された塗料粒子の粒子速度、粒子径分布、噴霧パターンを算出することとしている。
【0036】
この方法について詳細に説明すると、本実施例においては、スプレーガンから噴霧された塗料粒子について、噴霧方向と直交する方向から高速カメラを向けて、1mm四方の範囲について、高速カメラによって撮影することとしている。
【0037】
そして、この撮影方法は、シャッターを開放した状態で、対向する側からシャッター側に向けて約7ナノ秒に1回の割合でレーザー光を照射し、計測ソフトによって、高速カメラの撮影データを用いて、各塗料粒子の粒子速度や粒子径分布、及び噴霧パターンを算出し、塗料粒子約3,000個分についての算出が終了するまで撮影を継続することによって行うこととしている。
【0038】
即ち、約3,000個分の塗料粒子について、それぞれ、粒子速度、粒子径分布を算出することとしている。スプレーガンから噴霧された塗料粒子を高速カメラによって撮影しているイメージを示した図が図2であり、図において8がスプレーガン、9が高速カメラ、10がレーザー装置、及び、11で示した部分が高速カメラで撮影する範囲である。
【0039】
そして、高速カメラ9は、CPU等の処理装置に接続され、処理装置には高速カメラの撮影データを用いて噴霧情報を算出するための計測ソフトがインストールされ、これにより、高速カメラ9で撮影した撮影データを用いて、スプレーガンから噴霧された塗料粒子の噴霧情報を計測可能としている。
【0040】
また、本実施例では、高速カメラで撮影する際には、スプレーガンの位置を上下、左右、前後にずらして複数個所を撮影することで、噴霧された塗料粒子の噴霧情報を立体的に算出することを可能にしている。
【0041】
なお、高速カメラ9で撮影した撮影データを用いてスプレーガンら噴霧された塗料粒子の噴霧情報を計測するための計測ソフトは、市販のものを用いており、詳細な説明は省略する。
【0042】
次に、本実施例のバーチャル塗装のための噴霧情報作成方法では、前述したように、ステップ4において現実の噴霧情報のデータベースを作成した後に、ステップ5において、現実の噴霧情報と同等の噴霧情報をバーチャル空間で再現するために必要なバーチャルの噴霧情報を演算する。即ち、現実の塗装をバーチャルの空間で再現するために必要な、スプレーガンから噴霧される粒子の初速、粒子速度、粒子径分布、噴霧パターンを、現実の噴霧情報を参考にしながら演算する。そして、この演算を、スプレー条件に対応した現実の噴霧情報ごとに行い、これにより、スプレー条件ごとの、バーチャルな噴霧情報を多数作成する。そしてステップ6において、多数作成したバーチャルの噴霧情報を、バーチャル塗装のためのバーチャルの噴霧情報としてのデータベース化し、これにより、バーチャル塗装のための噴霧情報を作成する。なお、現実の噴霧情報を用いてバーチャルの噴霧情報を算出するための演算は、解析ソフトを用いて、この解析ソフトに現実の噴霧情報のデータを取り込むことにより行うが、解析用の市販の演算ソフトを用いているため、詳細な演算方法は省略する。
【0043】
次に、本発明の塗装シミュレーション方法の実施例について図3のフローチャートを参照して説明すると、本実施例の塗装シミュレーション方法は、前述のようにして作成されたバーチャル塗装のための噴霧情報を用いて、コンピューターにより、バーチャルな空間である表示部に塗装を再現する塗装シミュレーションを行う方法である。
【0044】
そして、本実施例の塗装シミュレーション方法では、まず、ステップ11において、予め、塗装ロボットとワークの3D情報をコンピューターに取り込み、更に、ステップ12において、ティーチングにより設定されたスプレーガンの軌道データをコンピューターに取り込む。即ち、ティーチングにおいては、塗装ロボットの位置や、ワークの位置、及び、ティーチングにより設定されたスプレーガンの軌道データ等のティーチングデータがロボットコントローラーに記憶されるが、本実施例の塗装シミュレーションにおいては、ステップ11及び12において、ティーチングによってロボットコントローラー等に記憶されたティーチングデータを、コンピューターに取り込む。なお、塗装ロボットとワークの3Dデータやスプレーガンの軌道データの取り込み先は特に限定されないが、シミュレーションを実施するためのコンピューターの内蔵ハードディスク、外付けハードディスク、USBメモリ等のいずれでもよい。
【0045】
次に、ステップ13において、塗装のシミュレーションを行うスプレー条件を設定する。そして、その後に、ステップ14において、バーチャルの噴霧情報のデータベースより、設定したスプレー条件に合致するスプレー条件において作成されたバーチャルの噴霧情報を呼び出す。
【0046】
そして次に、ステップ15おいて、呼び出した噴霧情報を用いて流体解析を行い、噴霧塗料がワークに塗着していく状態を再現するためのデータを作成する。
【0047】
そしてその後、ステップ16において、塗装、即ちスプレーガンから塗料が噴霧され、この噴霧された塗料粒子がワークに塗着していく状態を再現し、シミュレーションの表示を行う。即ち、ステップ11、12で取り込んだ、塗装ロボットやワークの3Dデータ、スプレーガンの軌道データを用いて、ワークとスプレーガンをコンピューターの表示部に表示する。即ち、ティーチングにより設定されたティーチングデータを用いて、スプレーガンとワークの3D表示データを生成するとともに、これらの3D表示データに基づいて表示部に、少なくともスプレーガンと、ワークを3Dで表示する。
【0048】
そしてそれとともに、流体解析の結果のデータを用いて、スプレーガンから塗料が噴霧され、噴霧された塗料粒子がワークに塗着していく様子を、表示部に表示したスプレーガン及びワークとともに表示し、それにより、表示部に塗装を再現して、塗装のシミュレーションの表示を行う。
【0049】
またこのとき、本実施例の塗装シミュレーション方法では、表示部のワークを回転させるとともに、スプレーガンを軌道データに従って移動し、噴霧された塗料粒子をワークに向けて移動させていく。即ち、コンピューターに取り込んだ塗装ロボットやワークの3Dデータ、スプレーガンの軌道データ、及びバーチャルの噴霧情報の流体解析の結果を用いて、現実の塗装と同等のシミュレーションを表示部に表示する。
【0050】
このシミュレーションの一部を静止画として示した図が図4であり、図4では、コンピューターの表示部に、ワーク12、スプレーガン8、及び、スプレーガン8からワーク12に向けて噴霧されてワークに塗着していく塗料粒子を示している図である。
【0051】
即ち、図において8はスプレーガンであり、本実施例の軌道データのシミュレーション方法では、表示部3にスプレーガン8を表示するとともに、シミュレーションにおいては、この表示部3に表示したスプレーガン8を、ティーチングされた軌道データに従い移動させている。
【0052】
また、図4において前記ワーク12は、回動自在の支柱14の上部に治具15を介して放射状に複数個が取り付けられており、シミュレーションにおいては、矢印で示すように、支柱14及び治具15の回転によって時計回りに円状に移動させている。但し、ワークは必ずしも回転させる必要はなく、ワークを静止させた状態で塗装を行ってもよい。またワークの数も特に限定されない。
【0053】
次に、スプレーガン8は、軌道データに従って移動しながら、ワーク12に向けて塗料を噴霧することとしている。そして、図4では、ワーク12が時計回りに円状に移動し、スプレーガン8は塗料を噴霧しながら軌道データに従って移動し、及びスプレーガン8から噴霧された塗料粒子13がワーク12に向けて移動してワーク12に塗着していく状態の過程を静止画で示している。なお、図4においてはスプレーガン8のみを表示しているが、スプレーガン8のみではなく、スプレーガンを含んだ塗装ロボットの全体、あるいは、スプレーガンを含んだ塗装ロボットの一部を表示してもよい。
【0054】
なお、塗装ブース内ではワークに付着しなかった塗料ミストを回収するために塗装ブース内の気流を一定方向に流しており、スプレーガンから噴霧された塗料はこの気流の影響を受けるため、本実施例においては、バーチャルの噴霧情報を用いて塗料粒子の流体解析を行う際には、塗装ブース内の気流を加味することとしている。
【0055】
また、本実施例において前記ワークは、前述したように、回動自在の治具を介して放射状に複数個が取り付けられ、塗装の際には、ワークを回転させることとしており、このワークの回転によっても塗装ブース内に気流が発生するため、本実施例においては、ワークの回転により発生する気流をもスプレー条件に加味することとしている。但し、前述したように、本発明の塗装シミュレーションでは、必ずしもワークを回転させる必要はない。そのために、ワークを回転させずに塗装を行う場合には、当然、ワークの回転により発生する気流は無いので、スプレー条件に加味する必要は無い。
【0056】
このように、本実施例の軌道データのシミュレーション方法では、実際に塗料がどのように噴霧されてワークに向けて移動してワーク12に塗着していくかを表示部3で確認することができるので、ティーチングされた軌道データの検証を行う場合に、実際にワークに塗料を噴射することが不要であるので、検証時の塗料の無駄を無くするとともに、空調エネルギーを使用することも不要で、コストを大幅に抑えることが可能である。
【0057】
そしてこのとき、本実施例の塗装シミュレーション方法では、実際にスプレーガンから噴霧された塗料粒子の噴霧情報をスプレー条件ごとに多数個作成して現実の噴霧情報としてデータベース化し、このデータベースの噴霧情報を用いて、現実の噴霧情報と同等の噴霧情報をバーチャル空間で再現するために必要なバーチャルの噴霧情報を演算してデータベース化し、シミュレーションを行う際に、設定されたスプレー条件に応じて、この設定したスプレー条件に対応したバーチャルの噴霧情報を用いて噴霧塗料の流体解析を行うために、正確な塗装シミュレーションを行うことが可能である。
【0058】
なお、本実施例における塗装シミュレーションを行うに際しては、設定したスプレー条件に対応したバーチャルの噴霧情報を用いて噴霧塗料の流体解析を行うが、この流体解析は流体解析ソフトを用いて行われている。そして、流体解析方法には種々の方法があるため、具体的な計算方法等の詳細は省略するが、一例としては、塗料粒子が移動する空間を多数の要素に分け、その間を計算させることで、塗料粒子の移動を、呼び出したバーチャルの噴霧情報に対応するように、バーチャルとして実現する方法が考えられる。また、本実施例においては、塗装シミュレーションの表示は、ティーチングデータ及び流体解析の結果を用いて、塗装ソフトを用いて行うこととしている。
【0059】
次に、前述したバーチャル塗装のための噴霧情報作成方法、及び塗装シミュレーション方法の実施例を実施するためのシステムの実施例について説明すると、図5は本実施例のシステムを示すブロック図である。
【0060】
そして、図において1は、全体の処理を行うためのコンピューターであり、本実施例においてこのコンピューター1は、制御装置と演算装置を有する処理装置としてのCPU2を有している。そして、CPU2には、表示部3、キーボードやマウス等の入力手段4、RAM、ROM等の記憶手段5、電源6が接続されている。
【0061】
また、本実施例においてコンピューター1には、スプレーガンから噴霧された塗料粒子の現実の噴霧情報の計測を行うための高速カメラ9、レーザー装置10が接続され、CPU2は、高速カメラ9とレーザー装置10の作動を制御するとともに、高速カメラ9の撮影データの解析を行い現実の噴霧情報を計測することとしている。
【0062】
また、本実施例においては、ティーチングによりティーチングデータが記憶されるロボットコントローラー7、あるいはティーチングによりロボットコントローラー7に記憶されたティーチングデータを記憶したUSB等のメモリ手段が有線あるいは無線でCPU2に接続され、これにより、ティーチングデータをCPUに取り込むことを可能にしている。
【0063】
ここで、前記記憶手段5について説明すると、本実施例において、前記記憶手段5には、高速カメラで撮影された撮影データを用いて、スプレーガンから噴霧された塗料粒子の現実の噴霧情報を計測するための計測ソフト、現実の噴霧情報を用いてバーチャルの噴霧情報を算出するための演算ソフト、及びバーチャルな噴霧情報やティーチングデータを用いて流体解析を行い、表示部で塗装のシミュレーションを行うためのデータを作成するための流体解析ソフト、流体解析ソフトにより作成されたデータを用いて塗装のシミュレーションを表示するための塗装ソフトがインストールされており、これにより、バーチャル塗装のための噴霧情報の作成、塗装シミュレーションを可能にしている。
【0064】
また、本実施例において前記記憶手段5には、ティーチングデータ領域を有しており、このティーチングデータ領域には、ロボットコントローラー7やUSB等の記憶手段から取り込んだティーチングデータが格納される。なお、ティーチングデータ領域に取り込まれるデータとしては、ティーチングの際の初期設定においてロボットコントローラーに記憶される情報と、ティーチングによってロボットコントローラーに記憶される各種情報がある。
【0065】
そして、ティーチングの際の初期設定においてロボットコントローラーに記憶される情報としては、塗装ロボットに関する外形、機構、寸法等の基本データや、ワークに関する外形、寸法等の基本データ、及び塗装ロボットとワークとの位置情報、スプレーガンとワークとの距離情報がある。
【0066】
また、ティーチングによってロボットコントローラーに記憶される情報としては、スプレーガンの軌道データや、ワークとスプレーガンとの距離データ等がある。
【0067】
次に、前記記憶手段5は、計測ソフトによって計測された現実の噴霧情報を格納する現実の噴霧情報のデータベースを有しており、この現実の噴霧情報のデータベースは、スプレー条件とそのスプレー条件に対応した噴霧情報が、多数記憶されている。なお、現実の噴霧情報のデータベースは、必ずしもコンピューター1に内蔵する必要は無く、外付けのハードディスク、USBメモリ等の記憶手段に作成してもよい。
【0068】
また、前記記憶手段5は、演算ソフトによって算出されたバーチャルの噴霧情報を格納するバーチャルの噴霧情報のデータベースを有しており、このバーチャルの噴霧情報のデータベースには、現実の噴霧情報と同等の噴霧情報をバーチャル空間で再現するために必要なバーチャルの噴霧情報が、多数個、スプレー条件に対応して格納されている。なお、バーチャルの噴霧情報のデータベース7は、必ずしもコンピューター1に内蔵する必要は無く、外付けのハードディスク、USBメモリ等の記憶手段に作成してもよい。
【0069】
更に前記記憶手段5には、塗装シミュレーションに際して流体解析ソフトにより行われた流体解析の結果のデータも記憶され、新たに塗装シミュレーションを行う際において、スプレー条件やティーチングデータが記憶された流体解析の場合と同一の場合には、新たに流体解析ソフトによる流体解析を行うこと無く、記憶された流体解析の結果のデータを用いることを可能にしている。
【0070】
このように構成される本実施例のシステムでは、現実の噴霧情報の計測を行う場合には、CPU2は、高速カメラ9とレーザー装置10の作動を制御しながら、計測ソフトによって、高速カメラ9の撮影データの解析を行い現実の噴霧情報を計測し、その計測データを記憶手段の現実の噴霧情報のデータベースに格納する。
【0071】
また、バーチャルの噴霧情報を算出する場合には、CPU2は、現実の噴霧情報を用いて、現実の噴霧情報と同等の噴霧情報をバーチャル空間で再現するために必要なバーチャルの噴霧情報を演算し、その演算結果のデータを記憶手段のバーチャルの噴霧情報のデータベースに格納する。
【0072】
そして、塗装シミュレーションを行う場合には、CPU2は、設定されたスプレー条件に対応したバーチャルの噴霧情報をデータベースから呼び出し、この呼び出したバーチャルの噴霧情報と、記憶手段5に記憶されたティーチングデータやロボットコントローラーやUSB等の記憶手段から取り込んだティーチングデータを用いて流体解析を行い、設定されたスプレー条件に対応した塗装を表示部で再現するためのデータを作成し、更に、この解析結果のデータを用いて、表示部に塗装を再現して塗装シミュレーションを行う。
【0073】
このように、本実施例のシステムを用いることにより、実際にスプレーガンから噴霧された塗料粒子の噴霧情報をスプレー条件ごとに多数個作成して現実の噴霧情報としてデータベース化し、このデータベースの噴霧情報を用いて、現実の噴霧情報と同等の噴霧情報をバーチャル空間で再現するために必要なバーチャルの噴霧情報を演算してデータベース化し、塗装シミュレーションを行う際に、設定されたスプレー条件に応じたバーチャルの噴霧情報を用いることができるので、正確な塗装シミュレーションを行うことが可能である。
【0074】
なお、前述の説明では、1台のコンピューター1を用いて、現実の噴霧情報の計測とデータベース化、バーチャルの噴霧情報の算出とデータベース化、塗装シミュレーションのためのデータの作成、及び表示部での塗装シミュレーションを行う場合を説明したが、本発明の噴霧情報作成方法及び塗装シミュレーション方法を実施するためのシステムは、必ずしも1台のコンピューターにする必要は無い。
【0075】
従って、例えば、現実の噴霧情報の計測を行うコンピューター、バーチャルの噴霧情報の算出とデータベース化及び塗装シミュレーションのための流体解析を行うコンピューター、及び流体解析の結果のデータを用いて表示部で塗装シミュレーションを行うためのコンピューターを別個に設けても良い。
【0076】
そしてこの場合は、現実の噴霧情報の計測を行うコンピューターは、計測ソフトによる、現実の噴霧情報の計測を行い、バーチャルの噴霧情報の算出とデータベース化及び塗装シミュレーションのためのデータの作成を行うコンピューターは、演算ソフトによる、現実の噴霧情報を用いたバーチャルの噴霧情報の算出と、流体解析ソフトによる、塗装のシミュレーションを行うためのデータの作成を行い、表示部で塗装シミュレーションを行うためのコンピューターは、塗装ソフトによる、流体解析の結果を用いた塗装のシミュレーションの表示を行う。
【0077】
あるいは、その他、現実の噴霧情報の計測とデータベース化、バーチャルの噴霧情報の算出とデータベース化、塗装シミュレーションのためのデータの作成、及び表示部での塗装シミュレーションを、任意の複数台のコンピューターで分散して行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、スプレー条件に対応した現実の噴霧情報に基づいた塗装シミュレーションを行うことが可能であるため、塗装シミュレーションの全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 コンピューター
2 CPU
3 表示部
4 入力手段
5 記憶手段
6 電源
7 ロボットコントローラー
8 スプレーガン
9 高速カメラ
10 レーザー装置
11 撮影範囲
12 ワーク
13 塗料粒子
14 支柱
15 治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6